説明

光硬化型インク用容器およびインクパック

【課題】金属粒子を含む光硬化型インクを長期にわたって安定的に保存可能な光硬化型インク用容器およびインクパックを提供すること。
【解決手段】光硬化型インク用容器10は、金属粒子と重合性化合物と光重合開始剤とを含む光硬化型インク100を収容する容器であって、内部に、光硬化型インク100を収容可能な第1の空間21と、酸素透過性を有する隔壁4を介して第1の空間21に隣接し、酸素含有ガスを収容した第2の空間22と、を有する外装を有し、外装2が実質的に水蒸気を透過しないものであることを特徴とするものである。これにより、第2の空間22から第1の空間21へと水蒸気を含まない乾燥した酸素が継続的に供給されるため、酸素による重合禁止効果が継続的に発揮され、光硬化型インク100の重合反応を長期にわたって防止するとともに光硬化型インク100の吸湿を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化型インク用容器およびインクパックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属光沢を有する印刷物を作製する際には、アルミニウム粒子等の金属粒子を含むインキによるグラビア印刷やスクリーン印刷等の他、金属箔を用いた箔押し印刷や熱転写印刷等が知られている。
しかしながら、これらの印刷法は、大規模または高価な装置が必要な上、印刷後に廃棄されるインキや金属箔も少なくないため、ランニングコストが高い。さらに印刷時の騒音が大きい等の課題も抱えている。
【0003】
近年、これらの課題を解消する印刷法としてインクジェット印刷の利用が拡大している。インクジェット印刷は、紙等の印刷面にインクを吐出し、定着させる方式であるため、インクの使用量が少ない。一方、インクを吐出するという原理上、インクの粘性を抑える必要がある。しかしながら、インクの粘性が低下することにより、吐出したインクが滲み易くなり、高精細な印字結果を得ることが難しくなる。特に、インクの吸収性が低い印刷面(例えば紙以外の媒体)に印刷するときには、その傾向が強くなるので、インクジェット印刷用のインクには十分な速乾性が求められる。
【0004】
そこで、上記の課題を解決すべく、光の照射により硬化する光硬化型インクが提案されている。例えば、特許文献1には、ビニルエーテル基含有アクリル酸エステル類からなる重合性化合物と、光重合開始剤とを含む紫外線硬化型インクジェットインク組成物が開示されている。光硬化型インクを吐出するとともに光を照射すれば、吐出された光硬化型インクが滲み始める前に硬化させることができるため、高精細な印字結果が得られる。
【0005】
このような背景から、インクジェット印刷により光硬化型インクを吐出することで金属光沢を有する印刷物を作製する技術の実用化が期待されており、金属成分を含む光硬化型インクの開発が進められている。この光硬化型インクには、金属粒子、重合性反応物、光重合開始剤等が含まれ、このインクから得られる印刷物は金属粒子に起因する光沢を有するものとなる。
【0006】
ところが、金属粒子を含む光硬化型インクは、その保存性において課題を抱えている。通常、金属粒子を含む光硬化型インクは、空気との接触を避けるため十分に脱気処理が施された上で、遮光された気密容器内に封入された状態で保存されるが、インク中に金属粒子が含まれていると、これが前述した重合性反応物の重合反応(硬化)を促進する触媒として機能するため、保存中にインクが硬化してしまう。しかも、この重合反応において、酸素は重合禁止効果を有するものであるため、気密性の高い容器内で脱気されたインクを保存した場合、酸素による重合禁止効果が阻害されてしまい、かえって重合反応が一層促進されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−280383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、金属粒子を含む光硬化型インクを長期にわたって安定的に保存可能な光硬化型インク用容器およびインクパックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の光硬化型インク用容器は、金属粒子と重合性化合物と光重合開始剤とを含む光硬化型インクを収容する容器であって、
内部に、前記光硬化型インクを収容可能な第1の空間と、酸素透過性を有する隔壁を介して前記第1の空間に隣接し、酸素を含むガスを収容した第2の空間と、を有する外装を有し、
前記外装は、前記第2の空間の圧力が外部の圧力を下回ったときに外気を導入し、それ以外のときは実質的に水蒸気を透過しないよう構成されていることを特徴とする。
これにより、金属粒子を含む光硬化型インクを長期にわたって安定的に保存可能な光硬化型インク用容器が得られる。
【0010】
本発明の光硬化型インク用容器では、前記酸素を含むガスは、酸素濃度が20体積%以上100体積%以下であることが好ましい。
これにより、光硬化型インクをより長期にわたって安定的に保存することができる。
本発明の光硬化型インク用容器では、前記外装に設けられ、前記第2の空間の圧力が外部の圧力を下回ったときに外気を導入する逆止弁を有することが好ましい。
これにより、第2の空間の圧力が低下し、それに伴って光硬化型インクが取り出し難くなるのを防止することができる。
【0011】
本発明の光硬化型インク用容器では、前記第2の空間の内部の圧力を高め得る送気手段を有することが好ましい。
これにより、第2の空間の圧力が低下し、それに伴って光硬化型インクが取り出し難くなるのを防止することができる。
本発明の光硬化型インク用容器では、前記第2の空間に設けられた吸湿剤を有することが好ましい。
これにより、第2の空間に封入された酸素を含むガスが水分を含んでいる場合でも、吸湿剤がこの水分を吸収し、第1の空間に封入された光硬化型インクが吸湿するのを防止する。
【0012】
本発明の光硬化型インク用容器は、金属粒子と重合性化合物と光重合開始剤とを含む光硬化型インクを収容する容器であって、
内部に、前記光硬化型インクを収容可能な第1の空間と、酸素透過性を有する隔壁を介して前記第1の空間に隣接し、貫通孔を介して外部と連通した第2の空間と、を有する外装と、
前記第2の空間に設けられた吸湿剤と、を有することを特徴とする。
これにより、金属粒子を含む光硬化型インクを長期にわたって安定的に保存可能な光硬化型インク用容器が得られる。
【0013】
本発明の光硬化型インク用容器では、前記吸湿剤の構成材料は、シリカゲルおよびゼオライトのうちの少なくとも一方であることが好ましい。
これらの吸湿剤は、吸湿性が高く、かつ吸湿した水分を再放出させ難いことから、第2の空間に配置する吸湿剤として有用である。
本発明の光硬化型インク用容器では、前記隔壁のJIS K 7126−2に準拠した方法により測定された酸素透過度は、1000[cc/m・day・atm]以上30000[cc/m・day・atm]以下であることが好ましい。
これにより、第1の空間に封入した光硬化型インクに対して必要かつ十分な量の酸素が長期にわたって供給され、著しい粘性の上昇を抑え得る十分な重合禁止効果が持続的に発揮される。その結果、光硬化型インクを長期にわたって安定的に保存可能な光硬化型インク用容器が得られる。
【0014】
本発明の光硬化型インク用容器では、前記隔壁は、ポリオレフィン系樹脂製のフィルムであることが好ましい。
これにより、ポリオレフィン系樹脂製のフィルムに加工等を施すことなくそのまま良好な隔壁として用いることができ、しかも、このフィルムは水蒸気透過性については比較的低いため、光硬化型インクの吸湿による変質、劣化を防止することができる。
【0015】
本発明の光硬化型インク用容器では、前記外装は、当該光硬化型インク用容器を自立させ得る程度の剛性を有していることが好ましい。
これにより、光硬化型インク用容器は、第1の空間に光硬化型インクを封入したときはもちろん、封入しないときでも折れ曲がり難いものとなる。このため、光硬化型インク用容器は、封入した光硬化型インクを滞りなく取り出すことのできる保形性の高いものとなる。また、光硬化型インク用容器の取り扱い性が向上する。
【0016】
本発明の光硬化型インク用容器では、当該光硬化型インク用容器は、前記第1の空間と外部とを連通可能な開口部を備えていることが好ましい。
これにより、開口部を介して光硬化型インクを外部に取り出すことができ、開口部を閉じることで光硬化型インク用容器を気密的に封止することができる。
本発明のインクパックは、本発明の光硬化型インク用容器の前記第1の空間に、脱気処理を施した前記光硬化型インクを封入してなることを特徴とする。
これにより、液滴吐出装置において安定的に吐出可能な光硬化型インクを封入し、このインクを長期にわたって安定的に保存可能なインクパックが得られる。
本発明のインクパックでは、前記第1の空間には実質的に隙間がないように前記光硬化型インクが封入されていることが好ましい。
これにより、脱気した光硬化型インク中に再び気体が巻き込まれるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の光硬化型インク用容器の第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】本発明の光硬化型インク用容器の第2実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明の光硬化型インク用容器の第3実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の光硬化型インク用容器の第4実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
≪光硬化型インク用容器およびインクパック≫
<第1実施形態>
まず、本発明の光硬化型インク用容器およびインクパックの第1実施形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明のインクパックの第1実施形態を示す斜視図、図2は、図1のA−A線断面図である。
図1に示すインクパック1は、光硬化型インク用容器10内に光硬化型インク100を封入してなるものである。
このうち、光硬化型インク用容器10は、直方体形状をなす外装2と、外装2の内部に設けられ、平面視で長方形をなす封筒状の隔壁4と、外装2および隔壁4の短辺の一部に設けられた開口部3と、を有している。
【0020】
隔壁4の内部は、開口部3を介して外部と連通しており、光硬化型インク100を封入可能な第1の空間21である。一方、外装2の内部空間20のうち、第1の空間21以外の空間が第2の空間22である。第2の空間22は、外部と連通していない閉空間である。また、隔壁4は、酸素透過性を有している。
ここで、第2の空間22には酸素を含むガス(以下、「酸素含有ガス」という。)が封入される一方、第1の空間21には前述したように光硬化型インク100が封入される。こうすると第2の空間22からは第1の空間21に対して継続的に酸素が供給されることとなる。これにより、光硬化型インク100には、酸素による重合禁止効果が継続的に付与されることとなり、保存中の硬化が防止される。その結果、金属粒子を含む光硬化型インク100を長期にわたって安定的に保存することができる。
【0021】
また、外装2は、第2の空間22の圧力が外部の圧力を下回ったときには外気を導入し、それ以外のときには実質的に水蒸気を透過しないよう構成されたものである。このため、第2の空間22に封入された酸素含有ガスは、封入当初の乾燥した状態を維持することができる。その結果、酸素とともに水蒸気が第1の空間21へと供給されてしまい、光硬化型インク100が吸湿して変質・劣化するのを防止することができる。また、酸素含有ガスが消費されたりして圧力が低下したときや光硬化型インク100を取り出すときなどは、第2の空間22に外気を導入し、酸素含有ガスを補充したり、あるいは光硬化型インク100を取り出し易くすることができる。
【0022】
以下、光硬化型インク用容器10の各部について詳述する。
(外装)
本実施形態では、外装2は、前述したように、実質的に水蒸気を透過しないよう構成されている。具体的には、外装2の水蒸気透過度が50[g/m・day]以下程度であるのが好ましく、30[g/m・day]以下程度であるのがより好ましい。外装2の水蒸気透過度が前記範囲内であれば、外装2の外部から内部空間20への水蒸気の移動が防止され、吸湿に伴う光硬化型インク100の変質、劣化が防止される。
なお、上記の水蒸気透過度は、JIS K 7129に準拠した方法で測定される値であり、測定温度は25℃である。
【0023】
また、外装2は、水蒸気だけでなく、酸素をはじめとする各種気体をできるだけ透過しないよう構成されているのが好ましい。これにより、外装2は、第2の空間22に封入した酸素含有ガスが外部に漏れ出たり、酸素以外の不要な気体が第2の空間22に侵入し、ひいては第1の空間21に侵入するのを防止することができる。具体的には、外装2の酸素透過度は、50[g/m・day]以下程度であるのが好ましく、30[g/m・day]以下程度であるのがより好ましい。外装2の酸素透過度が前記範囲内であれば、第2の空間22に封入した酸素が外部に漏れ出てしまったり、その他の気体が第2の空間22に侵入してくるのを確実に防止することができる。その結果、酸素による重合禁止効果が継続的に付与されることとなり、保存中の光硬化型インク100の硬化を確実に防止することができる。
【0024】
なお、上記の酸素透過度は、JIS K 7126−2に準拠した方法で測定される値であり、測定温度は25℃である。
また、外装2は、遮光性を有している。これにより、光硬化型インク用容器10は、外光の侵入を防止して光硬化型インク100の意図しない硬化が防止される。
外装2は、例えば、軟質のフィルムで構成されたものでもよいが、好ましくは、樹脂製、金属製、セラミックス製、ガラス製等の硬質のケースで構成されたものとされる。このような硬質のケースで構成されることにより、外装2は、より高度な遮光性および遮蔽性を有するとともに、光硬化型インク用容器10に適度な剛性を付与する。その結果、光硬化型インク用容器10は、第1の空間21に光硬化型インク100を封入したときはもちろん、封入しないときでも折れ曲がり難いものとなる。このため、光硬化型インク用容器10は、封入した光硬化型インク100を開口部3から滞りなく取り出すことのできる保形性の高いものとなる。また、光硬化型インク用容器10自体が自立し易いものとなるため、光硬化型インク用容器10の取り扱い性が向上する。
【0025】
ここで、ケースを構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル酸、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせたものが用いられる。
これらの中でも特にポリオレフィン系樹脂で構成されたケースが好ましく用いられる。ポリオレフィン系樹脂は、水蒸気透過性が特に低いため、光硬化型インク100の吸湿を確実に防止し得る外装2を実現することが可能である。
【0026】
このような硬質のケースで構成された外装2は、前述したように光硬化型インク用容器10に自立性を付与する程度の剛性を有していればよいが、具体的には、曲げ強さが600kg/m以上であるものが好ましく、800kg/m以上であるのがより好ましい。
また、ケースの形状は、特に限定されず、直方体以外にも、円柱、楕円柱、円錐、角柱、角錐等の形状であってもよい。
【0027】
なお、必要に応じて、上記樹脂材料に遮光性を付与するフィラーを添加してもよい。このようなフィラーとしては、例えば、カーボンブラック(CB)、黒鉛、アニリンブラック、シアニンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブのような炭素系材料、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、ウォラストナイト、雲母のようなケイ酸塩、酸化鉄、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、酸化ホウ素のような金属酸化物、硫酸カルシウム、硫酸バリウムのような金属硫酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトのような炭酸塩、ケイ化クロム、ケイ化タンタル、ケイ化ジルコニウムのようなケイ化物、炭化クロム、炭化ケイ素、炭化タンタルのような炭化物、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化クロム、窒化タンタルのような窒化物、各種金属粉末等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が用いられる。
【0028】
上記フィラーを添加する場合、外装2中のフィラーの含有量は、0.5質量%以上20質量%以下であるのが好ましく、1質量%以上15質量%以下であるのがより好ましい。フィラーの含有量を前記範囲内とすることにより、外装2は遮光性と水蒸気不透過性とを高度に両立し得るものとなる。すなわち、フィラーの含有量が前記下限値を下回る場合、外装2の遮光性が低下して光硬化型インク100が硬化するおそれがあり、一方、フィラーの含有量が前記上限値を上回る場合、水蒸気透過性が高くなって光硬化型インク100が変質、劣化するおそれがある。
【0029】
なお、用いられるフィラーの平均粒径は、特に限定されないが、1nm以上100μm以下であるのが好ましく、2nm以上80μm以下であるのがより好ましい。フィラーの平均粒径を前記範囲内とすることにより、外装2の遮光性と水蒸気不透過性とを高度に両立することができる。
また、ケースの表面に遮光性を有する遮光膜を成膜するようにしてもよい。このような遮光膜としては、例えば、アルミニウム、チタン、クロム、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、銀、スズ、金、鉛、またはこれらを含む合金、化合物等が挙げられる。なお、これらの材料を、各種蒸着法、各種塗布法で成膜したり、あるいは箔として積層すること等により、遮光膜を製造することができる。なお、これらの材料で構成された遮光膜は、遮蔽膜としての優れた機能も併せ持つ。
【0030】
また、ケースの表面に遮蔽膜を成膜するようにしてもよい。遮蔽膜の構成材料としては、ガスや水分等の透過を防止する遮蔽性を有する材料であればよく、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムのような金属酸化物等が挙げられる。
遮光膜や遮蔽膜の平均厚さは、構成材料に応じて異なるものの、1μm以上100μm以下程度であるのが好ましく、3μm以上50μm以下程度であるのがより好ましい。
【0031】
また、ケースに遮光膜や遮蔽膜を成膜する場合、金属を含む層は最内層以外に配置されるのが好ましい。これにより、金属を含む層が光硬化型インク100に対して硬化触媒として機能するのを防止し、光硬化型インク100を長期にわたって安定的に保存することができる。
上記の観点から、最内層には樹脂材料からなる層が配置されるのが好ましく、金属を含む層については、耐擦性を確保する観点から最内層と最外層との間に配置されるのが好ましい。
【0032】
また、外装2は、容易に分解し得るように構成されているのが好ましい。これにより、第1の空間21に封入した光硬化型インク100を取り出して使用した後に、外装2を分解し、再び組み立てることが可能になる。したがって、外装2を再利用することが可能になる。
このような外装2の平均厚さは、構成材料に応じて異なるものの、100μm以上5mm以下程度であるのが好ましく、200μm以上3mm以下程度であるのがより好ましい。外装2の平均厚さを前記範囲内とすることにより、外装2は、軽量化と剛性と水蒸気不透過性とを高度に両立し得るものとなる。
【0033】
なお、上記では、外装2が遮光性を有するものとして説明したが、後述する隔壁4が遮光性を有している場合、外装2は必ずしも遮光性を有していなくてもよい。
外装2は、開口部3に対して接着または融着により固定される。この際、酸素含有ガス中で接着または融着を行うことにより、第2の空間22内に酸素含有ガスを封入することができる。
【0034】
なお、外装2には、必要に応じて第2の空間22の内部と外部とを連通する開口部が設けられていてもよい。これにより、随時、第2の空間22に酸素含有ガスを封入したり、あるいは、置換したりすることができる。
また、外装2には、外気(空気)を第2の空間22に取り入れる逆止弁6が設けられている。この逆止弁6により、第2の空間22が減圧状態になったとき、それを補うように外気が導入され、外装2の内外の圧力が平衡すると、弁が閉じるので、外気導入が終了する。これにより、第1の空間21に封入された光硬化型インク100を開口部3を介して取り出したとき、それに伴って第2の空間22の圧力が低下し、その結果、光硬化型インク100が取り出し難くなるのを防止することができる。また、第2の空間22に封入された酸素含有ガス中の酸素が光硬化型インク100に溶解し、それに伴って第2の空間22の圧力が低下したときも同様である。この場合、酸素による重合禁止効果の延長を図り、より長期にわたって光硬化型インク100を保存することができる。
【0035】
逆止弁6としては、例えば、スイング式逆止弁、チルチングディスク式逆止弁、デュアルプレート式逆止弁、リフト逆止弁、ストップ逆止弁、フート弁、軸心流れ形ばね付逆止弁、ダイアフラム逆止弁、コンプレッサー弁、自動再循環逆止弁、複合バタフライ逆止弁等の各種逆止弁が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、逆止弁6は、逆止弁の機能が付随した開口部3で代替することもできる。このような開口部3としては、例えば、二重管構造になっていて、内側と外側とで独立した流路を形成し得るノズル等が用いられる。
【0036】
(隔壁)
隔壁4は、前述したように、外装2の内部空間20中に設けられ、内部に光硬化型インク100を封入できるように袋状(封筒状)をなしている。
このような隔壁4は、分子レベルで酸素(O)を透過する酸素透過性を有する一方、第1の空間21に封入した光硬化型インク100を保持するための不透液性を有している。具体的には、例えば、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンビニルアセテートのようなポリオレフィン系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリブタジエンフィルム等が挙げられ、これらの1種または2種以上を積層してなる積層フィルムが用いられる。
【0037】
これらの中でも隔壁4としては、特にポリオレフィン系フィルムが好ましく用いられる。ポリオレフィン系フィルムは、それ自体が比較的高い酸素透過性を有するため、加工等を施すことなく用いることができ、しかも、水蒸気透過性については比較的低いため、光硬化型インク100の吸湿による変質、劣化を防止する。
また、隔壁4として、通気性を高めるフィラーを添加したフィルムも用いることができる。このようなフィラーとしては、例えば、ゼオライト、多孔性セラミックスのような無機系多孔質粒子が挙げられる。これらのフィラーを用いることにより、フィルムの基材の種類によらず、酸素透過性を有する隔壁4を得ることができる。また、通気性を高めるフィラーを添加する場合、その添加量は、隔壁4中において0.5質量%以上20質量%以下であるのが好ましく、1質量%以上10質量%以下であるのがより好ましい。
【0038】
また、隔壁4には、貫通孔を形成したフィルムも用いられる。貫通孔の大きさは、必要な酸素透過度と光硬化型インク100を保持するために必要な不透液性とを両立する程度に適宜設定されるが、好ましくは10nm以下に設定される。貫通孔の大きさが前記範囲内であれば、透過した酸素の気泡が液滴吐出装置の吐出安定性を低下させるおそれが小さくなる。
【0039】
前述したように、隔壁4は酸素透過性を有しているが、その酸素透過度は、1000[cc/m・day・atm]以上30000[cc/m・day・atm]以下程度であるのが好ましく、2000[cc/m・day・atm]以上20000[cc/m・day・atm]以下程度であるのがより好ましい。隔壁4の酸素透過度を前記範囲内に設定することにより、第1の空間21に封入した光硬化型インク100に対して必要かつ十分な量の酸素が長期にわたって供給され、粘性の著しい上昇を抑えるのに十分な重合禁止効果が持続的に発揮される。その結果、光硬化型インク100を長期にわたって安定的に保存可能な光硬化型インク用容器10が得られる。
【0040】
なお、酸素透過度が前記下限値未満である場合、十分な量の酸素が供給されないので、保存中の光硬化型インク100が硬化してしまうおそれがある。一方、酸素透過度が前記上限値を上回る場合、酸素供給量が多過ぎて、酸素による重合禁止効果が短時間しか維持されなかったり、光硬化型インク100が脱気されているにもかかわらず、著しく多くの酸素が溶存してしまい、インクジェット印刷における光硬化型インク100の吐出が不安定になるおそれがある。
【0041】
また、上記の酸素透過度は、JIS K 7126−2に準拠した方法で測定される値であり、測定温度は25℃である。
なお、隔壁4の形状は、光硬化型インク100を封入可能な形状であれば、いかなる形状であってもよい。ただ、図1に示すように、隔壁4で画成された第1の空間21が、薄く広がった略直方体をなしている場合、隔壁4は、内部空間20において比較的大きな表面積を得ることができる。これにより、光硬化型インク100と隔壁4とが接触する面積も大きくなり、光硬化型インク100に対してムラなく均一に酸素を供給することができる。その結果、保存中の光硬化型インク100が一部でも硬化してしまうのを避けることができる。
【0042】
また、図2に示すインクパック1では、第1の空間21と外部との間に第2の空間22が配置されているため、第2の空間22が第1の空間21にとっての断熱層として機能する。このため、光硬化型インク100は外気温の影響を受け難くなり、外気温の変化に伴う粘性や特性の急激な変化から光硬化型インク100を保護することができる。その結果、光硬化型インク100の保存性がより向上し、かつ、光硬化型インク100を液滴吐出装置で吐出したときの吐出安定性が向上する。
光硬化型インク用容器10の内部空間20において、第2の空間22が占める割合は、光硬化型インク100の保存期間、隔壁4の酸素透過度等に応じて適宜設定されるが、好ましくは5体積%以上90体積%以下であるのが好ましく、10体積%以上80体積%以下であるのがより好ましい。
【0043】
(開口部)
開口部3は、第1の空間21の内部と外部とを連通するものであり、開閉自在に設けられている。具体的には、開口部3は、第1の空間21の内部と外部とを連通させる連通孔31を有する案内部32と、案内部32に着脱可能で連通孔31を開閉するキャップ33とを有している。案内部32の外表面と隔壁4とは接着または融着により封止されており、キャップ33を閉めると第1の空間21は気密的に封止される。一方、キャップ33を開けると、連通孔31を介して光硬化型インク100を外部に取り出すことができるようになる。
【0044】
なお、開口部3は、液滴吐出装置のインク供給系に接続されるよう構成されていてもよい。これにより、第1の空間21に封入された光硬化型インク100を、外気に触れることなく液滴吐出装置内に供給することができる。
開口部3の構成材料は、遮光性および遮蔽性を有する材料であればよく、例えば、各種熱可塑性樹脂、各種熱硬化性樹脂、各種金属等が挙げられる。
また、これらの構成材料には、必要に応じて、染料、顔料等が含まれていてもよい。
【0045】
(吸湿剤)
図1に示すインクパック1は、第2の空間22に設けられた吸湿剤5を有している。吸湿剤5を設けることにより、第2の空間22に封入された酸素含有ガスが水分を含んでいる場合でも、吸湿剤5がこの水分を吸収し、第1の空間21に封入された光硬化型インク100が吸湿するのを防止する。その結果、保存中の光硬化型インク100が変質・劣化するのを防止することができる。
【0046】
吸湿剤5は、第2の空間22内のいかなる位置に配置されていてもよく、例えば、図1、2に示すように外装2の内壁面に配置される。また、設けられる吸湿剤5の量は、特に限定されず、第2の空間22の容積やインクパック1の製造時の気候等に応じて適宜設定される。
吸湿剤5としては、例えば、酸化ナトリウム(NaO)、酸化カリウム(KO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化バリウム(BaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ケイ素(SiO)、硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、硫酸カルシウム(CaSO)、硫酸マグネシウム(MgSO)、硫酸コバルト(CoSO)、硫酸ガリウム(Ga(SO)、硫酸チタン(Ti(SO)、硫酸ニッケル(NiSO)、塩化カルシウム(CaCl)、塩化マグネシウム(MgCl)、塩化ストロンチウム(SrCl)、塩化イットリウム(YCl)、塩化銅(CuCl)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化タンタル(TaF)、フッ化ニオブ(NbF)、臭化カルシウム(CaBr)、臭化セリウム(CeBr)、臭化セレン(SeBr)、臭化バナジウム(VBr)、臭化マグネシウム(MgBr)、ヨウ化バリウム(BaI)、ヨウ化マグネシウム(MgI)、過塩素酸バリウム(Ba(ClO)、過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO)等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
これらの中でも吸湿剤5としては、シリカゲル(酸化ケイ素)およびゼオライト(アルミノケイ酸塩)の少なくとも一方が好ましく用いられる。これらの吸湿剤は、吸湿性が高く、かつ吸湿した水分を再放出させ難いことから、第2の空間22に配置する吸湿剤5として有用である。
なお、このような吸湿剤5を設けることで、第2の空間22に封入する酸素含有ガスは必ずしもドライガス(実質的に水分を含んでいないガス)である必要性はなくなる。このため、単に空気を封入するだけでもインクパック1を製造することができ、インクパック1の製造容易性が高くなる。
また、本実施形態では、吸湿剤5は必要に応じて設ければよく、省略することもできる。
【0048】
(酸素含有ガス)
第2の空間22に封入する酸素含有ガスは、酸素を含むガスであればいかなる種類のガスであってもよいが、好ましくは酸素濃度が20体積%以上100体積%以下であるガスとされ、より好ましくは30体積%以上100体積%以下であるガスとされる。酸素含有ガスの酸素濃度を前記範囲内にすることにより、光硬化型インク100をより長期にわたってより安定的に保存することができる。
【0049】
なお、酸素含有ガスを酸素と他の成分との混合ガスとする場合、他の成分としては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等が挙げられる。このうち、窒素が好ましく用いられる。隔壁4に用いられるような一般的なフィルムにおいて、窒素の透過性は酸素よりも数倍劣るため、酸素含有ガスとして酸素と窒素との混合ガスを用いた場合、酸素が優先的に隔壁4を透過し、窒素が選択的に第2の空間22に残存することとなる。したがって、混合ガス中の酸素濃度を適宜設定することで、第1の空間21に対する酸素供給速度を自在に調整することができ、かつ、混合ガスを用いたとしても酸素以外の成分が第1の空間21に供給されるのを抑制することができる。
【0050】
ただし、酸素含有ガスは、前述したようにできるだけ水蒸気を含まないことが好ましい。具体的には、水蒸気濃度は0.1体積%以下であるのが好ましく、0.01体積%以下であるのがより好ましい。水蒸気がこれより多く含まれていると、隔壁4を介して水蒸気が第1の空間21に供給され、光硬化型インク100が変質、劣化するおそれがある。
また、第2の空間22に封入する酸素含有ガスの圧力は、第1の空間21に光硬化型インク100を封入しない状態において、大気圧以上であるのが好ましく、1.1気圧(110kPa)以上であるのがより好ましい。第2の空間22の圧力を大気圧超にすることで、第2の空間22が一定の剛性を有するものとなり、光硬化型インク用容器10からの光硬化型インク100の取り出しや、光硬化型インク用容器10の取り扱いが容易になる。なお、上限値は特に設定されないが、好ましくは2気圧以下とされる。酸素含有ガスの圧力が前記上限値以下であれば、第1の空間21に対し長期にわたって継続的に酸素が供給されることとなり、光硬化型インク100の保存期間を特に長くすることができる。また、前記上限値以下であれば、多くの光硬化型インク用容器10の耐圧力以下となり、容器の破損を防止することができる。
【0051】
<第2実施形態>
次に、本発明の光硬化型インク用容器およびインクパックの第2実施形態について説明する。
図3は、本発明のインクパックの第2実施形態を示す断面図である。
以下、第2実施形態について説明するが、以下の説明では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0052】
図3に示すインクパック1は、第2の空間22が閉空間ではなく、外部に開放された開放空間になっており、この第2の空間22に吸湿剤5が設けられている以外は、図2に示すインクパック1と同様である。
図3に示す外装2には、その側面を貫通する貫通孔25が多数形成されている。これにより、第2の空間22は、外部との間で十分な換気が図られており、常時新鮮な空気(外気)を満たしていることになる。空気は酸素を含有しているため、第1の空間21にはこの空気中の酸素が常時供給されることとなり、第1実施形態と同様の重合禁止効果が得られる。すなわち、図3に示すインクパック1は、第1実施形態と同様の作用・効果を奏する。加えて、いわゆるドライガスを第2の空間22に封入する手間が省けるため、インクパック1を製造する際の工程を簡略化することができ、インクパック1の低コスト化を図ることができる。
【0053】
また、空気は、通常水分(水蒸気)を含んでいるが、第2の空間22に吸湿剤5を設けることによって、少なくとも第2の空間22中に存在する空気からは水分が徐々に除去され、乾燥状態に維持される。このため、隔壁4を透過するガスは、水分量の少ない乾燥したガスとなり、吸湿に伴う光硬化型インク100の変質、劣化を防止することができる。
なお、貫通孔25の個数や配置は特に限定されないが、インクパック1全体に均一に設けられているのが好ましい。これにより、第2の空間22中に存在する空気からムラなく水分を除去することができる。
【0054】
ただ、貫通孔25の形成条件は、吸湿剤5の吸湿容量に応じて適宜設定されるのが好ましい。具体的には、空気中の酸素が第1の空間21へと透過する速度と、吸湿剤5により空気中の水分を吸湿する速度とが、それぞれ一定になるよう貫通孔25の総面積および吸湿剤5の総吸湿容量の少なくとも一方を設定するのが好ましい。これにより、光硬化型インク100の保存環境が一定に保たれ、長期にわたって安定的に保存することができる。
一例として、貫通孔25の総面積は、外装2の表面積の0.1%以上30%以下程度であるのが好ましい。
【0055】
<第3実施形態>
次に、本発明の光硬化型インク用容器およびインクパックの第3実施形態について説明する。
図4は、本発明のインクパックの第3実施形態を示す断面図である。
以下、第3実施形態について説明するが、以下の説明では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0056】
図4に示すインクパック1は、隔壁4の内部に2つの空間が画成されており、このうち一方の空間に光硬化型インク100が封入されており、他方の空間に酸素含有ガスが封入されるよう構成されている以外は、図2に示すインクパック1と同様である。
すなわち、図4に示す隔壁4の内部には、光硬化型インク100が封入された第1の空間21と、酸素含有ガスが封入された第3の空間23とが形成されている。
このようなインクパック1では、第1の空間21の外側のみでなく内側にも酸素含有ガスが封入された空間が設けられているので、光硬化型インク100が隔壁4と接触する面積を特に大きくすることができる。その結果、光硬化型インク100の保存性を特に高めることができる。
【0057】
<第4実施形態>
次に、本発明の光硬化型インク用容器およびインクパックの第4実施形態について説明する。
図5は、本発明のインクパックの第4実施形態を示す断面図である。
以下、第4実施形態について説明するが、以下の説明では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0058】
図5に示すインクパック1は、逆止弁に代えて第2の空間22に送気して圧力を高めることのできる送気手段7を有している以外は、第1実施形態と同様である。
送気手段7は、送気ポンプ71と、送気ポンプ71と第2の空間22とを接続する配管72と、で構成されている。このような送気手段7を設けることにより、第1実施形態と同様、第2の空間22の圧力が低下したときでも、それを補うように送気を行うことができ、その結果、光硬化型インク100が取り出し難くなるのを防止することができる。特に、第2の空間22の圧力が大気圧以上になるよう加圧することで、光硬化型インク100を滞りなくスムーズに取り出すことができ、有用である。この場合、送気するガスは、必ずしも酸素を含んでいなくてもよく、限定されない。また、第2の空間22の圧力を適宜調整することにより、光硬化型インク100の単位時間当たりの取り出し量を制御することができる。その結果、インクパック1を液滴吐出装置に接続し、光硬化型インク100を吐出するときの吐出安定性が向上する。
【0059】
一方、送気を行うことで、酸素による重合禁止効果の延長が図られ、より長期にわたって光硬化型インク100を保存することができる。この場合、送気するガスは酸素を含んでいるものであればいかなるものでもよいが、水蒸気の濃度はできるだけ低い方が好ましい。
なお、送気手段7の起動は、適宜手動で、あるいは、第2の空間22の圧力低下に伴って自動的に行われる。第2の空間22の圧力低下は、第2の空間22につながった送気ポンプ71中の圧力変化をモニターすることで検出することができる。また、必要に応じて、外装2に圧力センサーを設け、この圧力センサーの検出値に基づいて起動させるようにしてもよい。
送気ポンプ71としては、例えば、電動式あるいは油圧式の送気ポンプ、コンプレッサーが挙げられる。また、送気ポンプ71は、貯気槽、ガスボンベ、ガス発生装置等で代替することもできる。
【0060】
≪光硬化型インク≫
前述したように、インクパック1は、光硬化型インク用容器10内に光硬化型インク100を封入してなるものである。
光硬化型インク100は、例えば液滴吐出装置により吐出され、これを硬化させることで被膜を形成し得るインク組成物である。
このような光硬化型インク100は、金属粒子と重合性化合物と光重合開始剤とを含んでなるものである。
【0061】
以下、光硬化型インク100の各構成成分について説明する。
(金属粒子)
金属粒子としては、金属を含む粒子であればいかなるものでもよく、含まれる金属としては、アルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、スズ、亜鉛、インジウム、チタン、銅のような金属の単体あるいはこれらの合金、混合物が挙げられる。また、光硬化型インク100中に含まれる金属粒子は、2種以上であってもよい。
【0062】
また、金属粒子の形状としては、特に限定されず、略球状、平板状、針状等の形状が挙げられる。
なお、略球状の金属粒子の平均粒径は、特に限定されないが、0.5μm以上10μm以下であるのが好ましく、1μm以上5μm以下であるのがより好ましい。
また、平板状または針状の金属粒子の場合、平均長径が前記範囲内であるのが好ましい。
【0063】
また、金属粒子は、必要に応じて、表面に各種の表面処理を施したものでもよい。表面処理としては、例えば、各種カップリング剤、アルコキシシラン化合物を結合させる処理が挙げられる。
光硬化型インク100中の金属粒子の含有量は、0.1質量%以上5質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%3質量%以下であるのがより好ましい。
【0064】
(重合性化合物)
重合性化合物としては、単官能または多官能であるモノマーやオリゴマーが挙げられ、具体的には、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸のような不飽和カルボン酸を含むものが好ましく用いられる。より具体的には、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(1−ビニロキシエトキシ)エチルのような(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸を含むものが挙げられる。
光硬化型インク100中の重合性化合物の含有量は、40質量%以上80質量%以下であるのが好ましく、45質量%以上75質量%以下であるのがより好ましい。
【0065】
(光重合開始剤)
光重合開始剤としては、紫外線等のエネルギー線が照射されることにより、活性化してラジカルを生成するラジカル型光重合開始剤や、活性化して水素イオンを生成するカチオン型光重合開始剤等が挙げられる。
具体的には、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドのようなアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、2,4−ジエチルチオキサントンのようなチオキサントン系光重合開始剤等が挙げられる。
光硬化型インク100中の光重合開始剤の含有量は、5質量%以上15質量%以下であるのが好ましく、8質量%以上12質量%以下であるのがより好ましい。
【0066】
(重合禁止剤)
光硬化型インク100は、必要に応じて、重合禁止剤を含んでいてもよい。重合禁止剤は、重合性化合物の重合反応に対し、禁止効果を有する化合物である。
具体的には、p−ハイドロキノン、p−メトキシフェノールのようなフェノール系の重合禁止剤、p−ベンゾキノン、2,5−ジ−tert−ブチルベンゾキノンのようなキノン系の重合禁止剤等が挙げられる。
【0067】
光硬化型インク100中の重合禁止剤の含有量は、0.05質量%以上1質量%以下であるのが好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下であるのがより好ましい。
なお、重合禁止剤が作用するためには、酸素が必要になる場合が多い。したがって、重合禁止剤を含む光硬化型インク100を、空気との接触を避けた状態で保存した場合、重合禁止効果が働かず、保存中にインクが硬化してしまう。これに対し、重合禁止剤を含む光硬化型インク100を光硬化型インク用容器10内に封入することにより、重合禁止効果の発現に必要な酸素が継続的に供給されるため、重合禁止効果が長期にわたって発現し、重合禁止剤を含む光硬化型インク100を安定的に保存することができる。
(その他の成分)
光硬化型インク100は、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、顔料や染料のような色材、レベリング剤、分散剤、重合促進剤、浸透促進剤、乾燥抑制剤、表面張力調整剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0068】
≪インクパックの製造方法≫
次に、図1に示すインクパック1の製造方法について説明する。この製造方法は、上述した光硬化型インク用容器10の第1の空間21に光硬化型インク100を封入し、インクパック1を得る方法である。
まず、第1の空間21に光硬化型インク100を注入する。
注入する光硬化型インク100には、あらかじめ脱気処理を施し、インク中に溶存する気体を排出する。脱気処理には、例えば、超音波脱気処理、減圧脱気処理、遠心脱気処理等の各種脱気処理の1つまたは複数を組み合わせて用いることができる。このような脱気処理を施すことにより、光硬化型インク100は、液滴吐出装置において安定的に吐出可能なものとなる。
【0069】
次いで、第1の空間21内の空気を一旦吸引し、第1の空間21の容積をほぼゼロにした後、空気を巻き込まないように光硬化型インク100を注入する。そして、第1の空間21内に光硬化型インク100を充填し、開口部3のキャップ33を閉める。これにより、第1の空間21内に光硬化型インク100が封入される。この際、第1の空間21内において、光硬化型インク100が充填された空間以外に実質的に隙間が生じないように封入されるのが好ましい。これにより、脱気した光硬化型インク100中に再び気体が巻き込まれるのを防止することができる。また、隙間に含まれた成分が光硬化型インク100に意図しない作用を及ぼすことが防止されることにもなり、光硬化型インク100の保存性が向上する。
【0070】
次いで、光硬化型インク100を封入した隔壁4を、外装2の内側に収容する。そして、外装2と開口部3とを接着し、第2の空間22を封止する。このとき、封止作業の雰囲気を酸素含有ガス雰囲気にしておくことで、第2の空間22に酸素含有ガスを封入することができる。
以上のようにしてインクパック1が得られる。なお、図3、4に示すインクパック1も上記と同様の方法で製造することができる。
【0071】
このようにして製造されたインクパック1の状態で光硬化型インク100を保存すれば、隔壁4を介して第2の空間22から第1の空間21へと継続的に酸素が供給されることとなる。酸素は、気泡としてではなく分子レベルのサイズで供給されるため、脱気した光硬化型インク100は、気泡を巻き込むことなく、酸素による重合禁止効果が働いて硬化反応が抑えられる。また、光硬化型インク100への水分の移行を防止することができるので、光硬化型インク100の変質、劣化を防止することができる。その結果、光硬化型インク100を長期にわたって安定的に保存することができる。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0072】
例えば、本発明の光硬化型インク用容器の構成は、上記のものに限定されず、第1の空間が複数に分割されていたり、開口部が複数個設けられていたりしてもよい。
また、吸湿剤は、第2の空間に配置されるのではなく、外装に組み込まれていたり、混合(混練)されていたりしてもよい。
また、外装が、水蒸気を実質的に透過せず、かつ圧力差が生じたときに酸素等を透過し得る材料で構成されていれば、逆止弁や送気手段を省略することもできる。このような材料には、例えば、各種の気体選択透過フィルム等が用いられる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
1.インクパックの製造
(実施例1)
まず、図1、2に示すような光硬化型インク用容器を作製した。具体的には、2枚の隔壁用フィルムを重ね合わせ、その外縁部を熱融着により封止した。また、2枚の隔壁用フィルムの間に開口部を取り付け、第1の空間内に空気が入らないように、脱気処理を施した下記の組成の光硬化型インクを封入した。これにより内装部を得た。
【0074】
次いで、外装となる樹脂ケースを用意し、下記の条件の酸素含有ガス中で、外装中に内装部を収容した。そして、外装と開口部とを接着剤により封止し、インクパックを得た。なお、樹脂ケース内には、シリカゲルからなる吸湿剤を封入した。
酸素含有ガスの条件、光硬化型インク用容器の構成および光硬化型インクの組成は、以下の通りである。
【0075】
<酸素含有ガスの条件>
・酸素濃度 :100体積%
・圧力 :1.1気圧(110kPa)
<外装用樹脂ケースの構成>
・ケース構成
:カーボンブラック(平均粒径20μm)含有ポリスチレンケース(平均厚さ1mm、カーボンブラック含有量5質量%)
・酸素透過度 :0[cc/m・day・atm]
・水蒸気透過度:0[g/m・day]
【0076】
<隔壁用フィルムの構成>
・層構成
:低密度ポリエチレンフィルム(LDPE、平均厚さ100μm、比重0.920)
・酸素透過度 :2000[cc/m・day・atm]
<光硬化型インクの組成>
・金属粒子(2質量%)
:平板状アルミニウム粒子(平均長径1μm、平均厚さ0.03μm)
・重合性化合物(合計87.6質量%)
:アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル((株)日本触媒製)
:フェノキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製)
・光重合開始剤(合計10質量%)
:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン(株)製、IRGACURE819)
:2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン(株)製、DAROCUR TPO)
:2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬(株)製、KAYACURE DETX−S)
・重合禁止剤(0.2質量%)
:p−メトキシフェノール
・レベリング剤(0.2質量%)
:シリコーン系表面調整剤(ビックケミー・ジャパン(株)製、BYK−UV3500)
【0077】
(実施例2)
隔壁用フィルムの平均厚さを60μmに変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
<隔壁用フィルムの構成>
・層構成
:低密度ポリエチレンフィルム(LDPE、平均厚さ40μm、比重0.920)
・酸素透過度 :5000[cc/m・day・atm]
【0078】
(実施例3)
隔壁用フィルムの平均厚さを20μmに変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
<隔壁用フィルムの構成>
・層構成
:低密度ポリエチレンフィルム(LDPE、平均厚さ20μm、比重0.920)
・酸素透過度 :10000[cc/m・day・atm]
【0079】
(実施例4)
隔壁用フィルムの構成を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
<隔壁用フィルムの構成>
・層構成
:超低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE、平均厚さ100μm、比重0.910)
・酸素透過度 :7000[cc/m・day・atm]
【0080】
(実施例5)
隔壁用フィルムの構成を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
<隔壁用フィルムの構成>
・層構成
:高密度ポリエチレンフィルム(HDPE、平均厚さ100μm、比重0.950)
・酸素透過度 :600[cc/m・day・atm]
【0081】
(実施例6)
隔壁用フィルムの構成を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
<隔壁用フィルムの構成>
・層構成 :二軸延伸ポリエステルフィルム(PET、平均厚さ100μm)
・酸素透過度 :20[cc/m・day・atm]
【0082】
(実施例7)
隔壁用フィルムの構成を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
<隔壁用フィルムの構成>
・層構成 :無延伸ポリプロピレンフィルム(PP、平均厚さ100μm)
・酸素透過度 :1000[cc/m・day・atm]
【0083】
(実施例8)
隔壁用フィルムの構成を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
<隔壁用フィルムの構成>
・層構成 :ポリスチレンフィルム(PS、平均厚さ100μm)
・酸素透過度 :1100[cc/m・day・atm]
【0084】
(実施例9)
隔壁用フィルムの構成を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
<隔壁用フィルムの構成>
・層構成 :ポリメチルペンテンフィルム(PMP、平均厚さ40μm)
・酸素透過度 :40000[cc/m・day・atm]
【0085】
(実施例10)
隔壁用フィルムの構成を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
<隔壁用フィルムの構成>
・層構成 :ポリメチルペンテンフィルム(PMP、平均厚さ100μm)
・酸素透過度 :15000[cc/m・day・atm]
【0086】
(実施例11)
第2の空間の圧力を1.2気圧(120kPa)に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
(実施例12)
第2の空間の圧力を1気圧(100kPa)に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
【0087】
(実施例13)
酸素含有ガスを、酸素濃度を50体積%の酸素−窒素混合ガスに変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
(実施例14)
酸素含有ガスを、酸素濃度を20体積%の酸素−窒素混合ガスに変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
【0088】
(実施例15)
酸素含有ガスを、酸素濃度を5体積%の酸素−窒素混合ガスに変更した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
(実施例16)
吸湿剤を省略した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
【0089】
(実施例17)
図3に示すような光硬化型インク用容器を作製し、これを用いるようにした以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
(実施例18)
図4に示すような光硬化型インク用容器を作製し、これを用いるようにした以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
(実施例19)
図5に示すような光硬化型インク用容器を作製し、これを用いるようにした以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
【0090】
(比較例1)
光硬化型インク用容器において隔壁を省略した以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
(比較例2)
隔壁用フィルムとして、酸素透過度が0[cc/m・day・atm]の3層フィルムを用いるようにした以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。なお、3層フィルムの層構成は、以下に示す通りである。
<3層フィルムの構成>
・層構成 :3層構造フィルム
第1層(最内層):ポリプロピレンフィルム(平均厚さ60μm)
第2層(中間層):アルミニウム層(平均厚さ10μm)
第3層(最外層):ナイロンフィルム(平均厚さ15μm)
・酸素透過度 :0[cc/m・day・atm]
・水蒸気透過度:0[g/m・day]
【0091】
(比較例3)
吸湿剤を省略した以外は、図3に示すような光硬化型インク用容器を作製し、これを用いるようにした以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
(参考例)
光硬化型インクとして金属粒子を含まないものを用いるようにした以外は、実施例1と同様にしてインクパックを得た。
【0092】
2.インクパックの評価
2.1.粘度評価
各実施例、各比較例および参考例で得られたインクパック中の光硬化型インクについて、加熱前後における粘度変化を以下のようにして評価した。
まず、各インクパック中の光硬化型インクの初期粘度をPhysica社製の粘度計MCR−300により測定した。
次いで、各インクパックを80℃の温度で5日間加熱した。そして、加熱後の光硬化型インクの粘度を再び測定した。その上で、加熱前の粘度(初期粘度)を1としたときの加熱後の粘度の相対値を算出し、これを以下の評価基準に基づいて評価した。
【0093】
<粘度の評価基準>
◎ :加熱後の粘度の相対値が1.1未満である
○ :加熱後の粘度の相対値が1.1以上1.5未満である
△ :加熱後の粘度の相対値が1.5以上2未満である
× :加熱後の粘度の相対値が2以上である
××:加熱途中で完全硬化してしまう
【0094】
2.2.硬化性評価
各実施例、各比較例および参考例で得られたインクパック中の光硬化型インクについて、加熱前後における硬化性変化を以下のようにして評価した。
まず、加熱前の各インクパック中の光硬化型インクをガラス基板上に滴下し、ピーク波長365nmの紫外線を照射して滴下した組成物が硬化するまでの時間を測定した。なお、照射強度は20mW/cmとした。
次いで、各インクパックを80℃の温度で5日間加熱した。そして、加熱後の光硬化型インクについて上述したようにして硬化時間を測定した。その上で、加熱前の硬化時間を1としたときの加熱後の硬化時間の相対値を算出し、これを以下の評価基準に基づいて評価した。
【0095】
<硬化時間の評価基準>
◎ :加熱後の硬化時間の相対値が1.1未満である
○ :加熱後の硬化時間の相対値が1.1以上1.5未満である
△ :加熱後の硬化時間の相対値が1.5以上2未満である
× :加熱後の硬化時間の相対値が2以上である
××:パック中でインクが硬化し、評価できない
【0096】
一方、別の各インクパックを80℃の温度で10日間加熱した。そして、上記と同様にして加熱後の硬化時間を評価した。
また、さらに別の各インクパックを80℃の温度で60日間加熱した。そして、上記と同様にして加熱後の硬化時間を評価した。
以上、2.1、2.2の評価結果を表1に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
表1に示すように、各実施例で得られたインクパック中の光硬化性インク組成物は、長期の加熱処理を施したとしても、著しい粘度上昇を伴うことがなかった。また、加熱後のインクパックを液滴吐出装置のインク供給系に接続し、封入していたインク組成物の吐出を行ったところ、いずれのインクパックについても安定的に吐出可能であることが認められた。
また、参考例で得られたインクパック中の光硬化型インクには、金属粒子が含まれていないため、保存中の粘度上昇は生じなかった。そして、各実施例で用いた光硬化型インク用容器によれば、金属粒子を含む光硬化型インクを保存した場合でも、参考例と同程度の保存安定性を実現していることが認められた。
【0099】
一方、各比較例で得られたインクパックの中には、加熱によりインク組成物に著しい粘度上昇が認められたものがあった。また、粘度上昇が認められたインクパックを5日加熱した後、液滴吐出装置のインク供給系に接続して封入していたインク組成物の吐出を行ったところ、ノズルのつまりが発生した。さらに、10日後にはパック中で完全に硬化してしまった。
また、各実施例および参考例で得られたインクパック中の光硬化性インク組成物は、いずれも10日間保存した後でも、保存前とほとんど変わらない優れた硬化性を示した。
一方、各比較例で得られたインクパック中の光硬化性インク組成物は、5日間保存したところ、硬化性の低下が認められた。
【符号の説明】
【0100】
1…インクパック 10…光硬化型インク用容器 100…光硬化型インク 2…外装 20…内部空間 21…第1の空間 22…第2の空間 23…第3の空間 25…貫通孔 3…開口部 31…連通孔 32…案内部 33…キャップ 4…隔壁 5…吸湿剤 6…逆止弁 7…送気手段 71…送気ポンプ 72…配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粒子と重合性化合物と光重合開始剤とを含む光硬化型インクを収容する容器であって、
内部に、前記光硬化型インクを収容可能な第1の空間と、酸素透過性を有する隔壁を介して前記第1の空間に隣接し、酸素を含むガスを収容した第2の空間と、を有する外装を有し、
前記外装は、前記第2の空間の圧力が外部の圧力を下回ったときに外気を導入し、それ以外のときは実質的に水蒸気を透過しないよう構成されていることを特徴とする光硬化型インク用容器。
【請求項2】
前記酸素を含むガスは、酸素濃度が20体積%以上100体積%以下である請求項1に記載の光硬化型インク用容器。
【請求項3】
前記外装に設けられ、前記第2の空間の圧力が外部の圧力を下回ったときに外気を導入する逆止弁を有する請求項1または2に記載の光硬化型インク用容器。
【請求項4】
前記第2の空間の内部の圧力を高め得る送気手段を有する請求項1または2に記載の光硬化型インク用容器。
【請求項5】
前記第2の空間に設けられた吸湿剤を有する請求項1ないし5のいずれかに記載の光硬化型インク用容器。
【請求項6】
金属粒子と重合性化合物と光重合開始剤とを含む光硬化型インクを収容する容器であって、
内部に、前記光硬化型インクを収容可能な第1の空間と、酸素透過性を有する隔壁を介して前記第1の空間に隣接し、貫通孔を介して外部と連通した第2の空間と、を有する外装と、
前記第2の空間に設けられた吸湿剤と、を有することを特徴とする光硬化型インク用容器。
【請求項7】
前記吸湿剤の構成材料は、シリカゲルおよびゼオライトのうちの少なくとも一方である請求項5または6に記載の光硬化型インク用容器。
【請求項8】
前記隔壁のJIS K 7126−2に準拠した方法により測定された酸素透過度は、1000[cc/m・day・atm]以上30000[cc/m・day・atm]以下である請求項1ないし7のいずれかに記載の光硬化型インク用容器。
【請求項9】
前記隔壁は、ポリオレフィン系樹脂製のフィルムである請求項1ないし8のいずれかに記載の光硬化型インク用容器。
【請求項10】
前記外装は、当該光硬化型インク用容器を自立させ得る程度の剛性を有している請求項1ないし9のいずれかに記載の光硬化型インク用容器。
【請求項11】
当該光硬化型インク用容器は、前記第1の空間と外部とを連通可能な開口部を備えている請求項1ないし10のいずれかに記載の光硬化型インク用容器。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の光硬化型インク用容器の前記第1の空間に、脱気処理を施した前記光硬化型インクを封入してなることを特徴とするインクパック。
【請求項13】
前記第1の空間には実質的に隙間がないように前記光硬化型インクが封入されている請求項12に記載のインクパック。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−171248(P2012−171248A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36363(P2011−36363)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】