説明

光硬化性組成物、インク組成物及びそれを用いたインクジェット記録方法

【課題】感度が高く、固体表面に対して高い密着性を有する硬化膜を形成しうる光硬化性組成物、該組成物を含む、硬化感度が高く、色再現性に優れ、被記録媒体に対する高い密着性を有する画像を形成することができ、インクジェット記録用として好適なインク組成物及びそれを用いたインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】(i)下記一般式(I)で示される増感色素と、(ii)下記一般式(II)で示される光重合開始剤と、(iii)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物と、を含有する光硬化性組成物。Xは、O、S、又はNRを表し、Rは、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。nは、0又は1を表す。R〜Rは、水素原子又は1価の置換基を示す。Aは2価の芳香族縮合環基を表し、Ar1は複素環基等を表す。R21〜R24はアルキル基、アリール基、アルケニル基等を表す。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性光線の照射により高感度で硬化する光硬化性組成物、それを用いたインクジェット記録用として好適に用いられるインク組成物、インクジェット記録方法に関するものである。詳しくは、活性放射線の照射に対して、高感度で硬化する光硬化性組成物、該光硬化性組成物を含むことで、高感度で硬化し、インク硬化後にも硬化物が充分な柔軟性を有するインクジェット記録用に好適なインク組成物、インクジェット記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像データ信号に基づき、紙などの被記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式などがある。電子写真方式は、感光体ドラム上に帯電及び露光により静電潜像を形成するプロセスを必要とし、システムが複雑となり、結果的に製造コストが高価になるなどの問題がある。また熱転写方式は、装置は安価であるが、インクリボンを用いるため、ランニングコストが高く、かつ廃材が出るなどの問題がある。
一方、インクジェット方式は、安価な装置で、且つ、必要とされる画像部のみにインクを吐出し被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率良く使用でき、ランニングコストが安い。さらに、騒音が少なく、画像記録方式として優れている。
【0003】
紫外線などの活性放射線の照射により硬化可能なインク組成物(放射線硬化型インク組成物)、例えば、インクジェット記録用インク組成物としては、高感度で硬化し、高画質の画像を形成しうるものが求められている。高感度化を達成することにより、活性放射線の照射により高い硬化性が付与されるため、消費電力の低減や活性放射線発生器への負荷軽減による高寿命化などの他、充分な硬化が達成されることにより、未硬化の低分子物質の揮発、形成された画像強度の低下などを抑制することができるなど、種々の利点をも有することになる。
【0004】
紫外線光による硬化型インクジェット方式は、比較的低臭気であり、速乾性、インク吸収性の無い被記録媒体への記録ができる点で、近年注目されつつある。特に、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ミヒラーケトン、アントラキノン、アクリジン、フェナジン、ベンゾフェノン、2−エチルアントラキノン等が光重合開始剤として一般的に用いられてきた(例えば、非特許文献1参照。)。しかしながら、これらの光重合開始剤を用いた場合、光重合性組成物の硬化の感応度が低いので画像形成における像露光に長時間を要した。このため細密な画像の場合には、操作にわずかな振動があると良好な画質の画像が再現されず、さらに露光の光源のエネルギー放射量を増大しなければならないためにそれに伴う多大な発熱の放射を考慮する必要があった。また、インクジェット記録方式に用いられるインクとしては、保存により物性の変化あるいは沈澱物等を生じない事(溶液安定性)、ノズルの目詰まりを生じない事(吐出安定性)等の諸特性が必要である。
【0005】
一般に、放射線硬化型の重合性化合物における、放射線に対する感度を高める方法として、種々の重合開始系を使用することが開示されている(非特許文献1、特許文献1、特許文献2、特許文献3)。しかし、走査露光に十分な感度と保存安定性、吐出安定性を満たした重合開始系をインクジェット記録用インクにおいて採用した例はない。
このため、低出力の放射線に対しても高感度で硬化し、高画質の画像を形成することができ、且つ、保存安定性、吐出安定性が良好な、インクジェット記録用として好適に用いられるインク組成物が切望されている。
【非特許文献1】ブルース M.モンロー(Bruce M.Monroe)ら著,ケミカル レビュー(Chemical Reviews),第93巻,(1993年),p.435−448.
【特許文献1】米国特許第4134813号明細書
【特許文献2】特開平1−253731号公報
【特許文献3】特開平6−308727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、活性放射線の照射に対して感度が高く、固体表面に対して高い密着性を有する硬化膜を形成しうる光硬化性組成物を提供することにある。
また、本発明のさらなる目的は、活性放射線の照射に対して感度が高く、色再現性に優れ、更に、被記録媒体に対する高い密着性を有する画像を形成することができ、インクジェット記録用として好適なインク組成物及び該インク組成物を用いたインクジェット記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、特定の開始剤に対して特定の増感色素が高い増感効果を有し、それらを開始系とするインク組成物は、高感度で硬化し、柔軟な画像を形成しうることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の光硬化性組成物は、(i)下記一般式(I)で示される増感色素と、(ii)下記一般式(II)で示される光重合開始剤と、(iii)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物と、を含有することを特徴とする。
【0008】
【化1】

【0009】
(一般式(I)中、Xは、O、S、又はNRを表し、Rは、水素原子、アルキル基、又はアシル基を表す。nは、0、又は1を表す。R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を示す。R、R、R、及びRは、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成していてもよい。R又はRと、R又はRと、が互いに連結して脂肪族環を形成してもよいが、芳香族環を形成することはない。)
【0010】
【化2】

【0011】
前記式(II)においてAは、炭素原子数4〜16を含む2価の芳香族縮合環基を表し、芳香族ヘテロ縮合環基であってもよい。Ar1は、下記(II−2)で示される基を表す。
21およびR22は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、またはアルケニル基を表し、R21とR22とが互いに結合して炭素原子数2〜8のアルキレン基、炭素原子数3〜9のオキサアルキレン基、又は、炭素原子数3〜9のアザアルキレン基を形成してもよい。R23およびR24は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アルケニル基、またはCOR10を表し、これらは互いに結合して炭素原子数2〜6のアルキレン基、炭素原子数2〜6のオキサアルキレン基、炭素原子数2〜6のチアアルキレン基又は炭素原子数2〜6のアザアルキレン基を形成してもよい。ここで、R10は、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基を表す。
【0012】
【化3】

【0013】
一般式(II−2)中、R25、R26、R27、R28およびR29はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、またはハロゲン原子を表す。また、R25〜R29は、一体となって芳香環を形成してもよい。
【0014】
また、本発明のインク組成物は、前記本発明の光硬化性組成物を含むことを特徴とする。
本発明のインク組成物により着色画像を形成する場合には、インク組成物にさらに、着色剤を含有することが好ましい。また、本発明のインク組成物は、放射線照射により高感度で硬化しうるため、インクジェット記録用として好適である。
【0015】
本発明のインクジェット記録方法は、(a)被記録媒体上に、本発明のインク組成物を吐出する工程、及び、(b)吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して、インク組成物を硬化する工程、を含むことを特徴とする。
このときの活性放射線の照射は、発光ピーク波長が340nm〜370nmの範囲にあり、かつ、被記録媒体表面での最高照度が10mW/cm〜2,000mW/cmとなる紫外線を発生する発光ダイオードにより照射される紫外線であることが好ましい。
【0016】
本発明の作用としては、以下のように推測される。
本発明においては、一般式(II)で示される光重合開始剤と、一般式(I)で示される特定の増感色素とを併用する開始系を採用しており、この特定増感色素は、三重項励起エネルギーが高く、一般式(II)で示される特定重合開始剤に対して効率良く三重項エネルギー移動を起こすため、特定重合開始剤の高いラジカル発生効率と、発生したラジカル種が酸素重合阻を受けにくいという特性と相俟って、高感度で硬化しうるものと考えられる。また、特定増感色素は、一般的に使用されるチオキサントン系化合物よりも溶解性が高く、結晶性が低いため、インク組成物の溶液としての安定性に優れ、且つ、これを含有するインク組成物をインクジェット記録用として用いた場合、優れた吐出安定性が得られるものと考えられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、活性放射線の照射に対して感度が高く、固体表面に対して高い密着性を有する硬化膜を形成しうる光硬化性組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、活性放射線の照射に対して感度が高く、色再現性に優れ、更に、被記録媒体に対して高い密着性を有する画像を形成しうるインク組成物、及び、該インク組成物を用いたインクジェット記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[光硬化性組成物]
まず、本発明の光硬化性組成物について詳述する。
本発明の光硬化性組成物は、(i)下記一般式(I)で示される増感色素(以下、適宜、特定増感色素と称する)と、(ii)下記一般式(II)で示される光重合開始剤(以下、適宜、特定重合開始剤と称する)と、(iii)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物と、を含有する。
本発明のインク組成物は、インクジェット記録用に好適に使用することができる。
以下、本発明のインク組成物に必須の成分について順次説明する。
【0019】
<(i)一般式(I)で示される増感色素>
本発明の硬化性組成物は、重合開始剤の活性光線照射による分解を促進させるために増感色素を含有するが、その増感色素として、以下に詳述する特定増感色素を必須成分として含有する。
一般に、増感色素は、特定の活性放射線を吸収して電子励起状態となる。電子励起状態となった増感色素は、重合開始剤と接触して、電子移動、エネルギー移動、発熱などの作用を生じ、これにより重合開始剤の化学変化、即ち、分解、ラジカル、酸或いは塩基等の活性種の生成を促進させ、ここで発生した活性種が後述する重合性化合物の重合、硬化反応を生起、促進させるものである。
【0020】
増感色素は、インク組成物に使用される重合開始剤に開始種を発生させる活性放射線の波長に応じた化合物を使用すればよいが、一般的なインク組成物の硬化反応に使用されることを考慮すれば、好ましい増感色素の例としては、350nmから450nm域に吸収波長を有するものを挙げることができる。
本発明の光硬化性組成物は、下記一般式(I)で表される増感色素(特定増感色素)を含有することを要する。
【0021】
【化4】

【0022】
上記一般式(I)中、Xは、O、S、又はNRを表し、Rは、水素原子、アルキル基、又はアシル基を表す。nは、0、又は1を表す。R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を示す。R、R、R、及びRは、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成していてもよい。R又はRと、R又はRと、が互いに連結して脂肪族環を形成してもよいが、芳香族環を形成することはない。
【0023】
一般式(I)において、Xとしては、O、又はSであることが好ましく、Sであることがより好ましい。
ここで、nが0の場合、(CR)は存在せず、Xと、R及びRと結合した炭素原子と、が直接結合して、Xを含む5員のヘテロ環を構成することになる。
【0024】
、R、R、R、R、R、R、及びRはそれぞれ独立に水素原子、または一価の置換基を表す。
、R、R、R、R、R、R及びRが1価の置換基を表す場合の、1価の置換基としては、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、スルフィニル基、ホスホリル基、アシル基、カルボキシル基又はスルホ基などが挙げられ、なかでも、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子である。
【0025】
なお、一般式(I)におけるR、R、R、R、R、R、R及びRが1価の置換基を表す場合のアルキル基としては、炭素数1〜10個のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基のような炭素数1〜4個のものがより好ましい。
同様に、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基のような炭素数1〜4個のものが好ましく挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができる。
【0026】
、R、R、及び、Rは、それぞれ隣接する2つが互いに連結、例えば、縮合、して環を形成していてもよい。
これらが環を形成する場合の環構造としては、5〜6員環の脂肪族環、芳香族環などが挙げられ、炭素原子以外の元素を含む複素環であってもよく、また、形成された環同士がさらに組み合わさって2核環、例えば、縮合環を形成していてもよい。さらにこれらの環構造は、前記一般式(I)において、R乃至Rが1価の置換基を表す場合に例示した置換基をさらに有していてもよい。形成された環構造が複素環である場合のヘテロ原子の例としては、N、O、及びSを挙げることができる。
【0027】
n=1の場合、RまたはRと、RまたはRは互いに連結して脂肪族環を形成してもよいが、芳香族環を形成することはない。脂肪族環の環員数は、3〜6員環が好ましく、さらに好ましくは5員環、もしくは6員環が好ましい。
【0028】
より好適に用いることのできる増感色素としては、下記一般式(I−A)で示される増感色素が挙げられる。
【0029】
【化5】

【0030】
前記式(I−A)において、XはO又はSを表す。nは0又は1を表す。R1A、R2A、R3A、R4A、R5A、R6A、R7A及びR8Aはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシル基又はスルホ基を表す。R1A、R2A、R3A、及び、R4Aは、それぞれ隣接する2つが互いに連結(縮合)して環を形成していてもよい。R5AまたはR6Aと、R7AまたはR8Aは互いに連結して脂肪族環を形成してもよいが、芳香族環を形成することはない。
【0031】
さらに好適に用いることのできる増感色素としては、下記一般式(I−B)で示される増感色素が挙げられる。
【0032】
【化6】

【0033】
前記式(I−B)において、XはO又はSを表す。R1B、R2B、R3B、R4B、R5B、R6B、R7B及びR8Bはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシル基又はスルホ基を表す。また、R1B、R2B、R3B、及び、R4Bは、それぞれ隣接する2つが互いに連結(縮合)して環を形成していてもよい。R5BまたはR6Bと、R7BまたはR8Bは互いに連結して脂肪族環を形成してもよいが、芳香族環を形成することはない。
【0034】
さらに好適に用いることのできる増感色素としては、下記一般式(I−C)で示される増感色素が挙げられる。
【0035】
【化7】

【0036】
前記式(I−C)において、R1C、R2C、R3C、R4C、R5C、R6C、R7C及びR8Cはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシル基又はスルホ基を表す。
1C、R2C、R3C、及び、R4Cは、それぞれ隣接する2つが互いに縮合して5〜6員環の脂肪族環、芳香族環を形成していてもよく、これらの環は、炭素原子以外の元素を含む複素環であってもよく、また、形成された環同士がさらに組み合わさって2核環、例えば、縮合環を形成していてもよい。さらにこれらの環構造は、前記一般式(I)において、R、R、R、R、R、R、R及びRが1価の置換基を表す場合に例示した各置換基をさらに有していてもよい。環構造が複素環の場合、ヘテロ原子の例としては、N、O、及びSを挙げることができる。R5CまたはR6Cと、R7CまたはR8Cは互いに連結して脂肪族環を形成してもよいが、芳香族環を形成することはない。
【0037】
また、R1C、R2C、R3C、R4C、R5C、R6C、R7C、及びR8Cの少なくとも一つはハロゲン原子であることが好ましい。ハロゲン原子の好ましい置換位置としては、R1C、R2C、R3C、R4Cが挙げられ、R2Cが最も好ましい。好ましいハロゲン原子の数としては好ましくは一つ、又は二つ、更に好ましくは一つである。
【0038】
更に、R2Cは水素以外の置換基であることが好ましく、中でも、アルキル基、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基が好ましく、特に、アルキル基、ハロゲン原子が好ましく、その場合、光源とのマッチングがよく高感度である。
【0039】
7C及びR8Cのいずれかは水素以外の置換基であるほうが好ましく、両方とも水素以外の置換基であることがさらに好ましい。好ましい置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基があげられ、中でもアルキル基、アルコキシカルボニル基が好ましく、アルキル基が最も好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができ、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。
1C、R2C、R3C、R4C、R5C、R6C、R7C、及びR8Cのいずれかがアルキル基である場合、そのアルキル基としては、炭素数1〜10個のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基のような炭素数が1〜4個のものがより好ましい。
1C、R2C、R3C、R4C、R5C、R6C、R7C、及びR8Cのいずれかがハロゲン原子である場合、そのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができ、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。
【0040】
1C、R2C、R3C、R4C、R5C、R6C、R7C、及びR8Cのいずれかがアシルオキシ基である場合、そのアシルオキシ基としては炭素数2〜10個の脂肪族アシルオキシ基が好ましく、炭素数が2〜5個の脂肪族アシルオキシ基がより好ましい。
1C、R2C、R3C、R4C、R5C、R6C、R7C、及びR8Cのいずれかがアルコキシカルボニル基である場合、そのアルコキシカルボニル基としては、炭素数2〜10個の脂肪族アルコキシカルボニル基が好ましく、炭素数が2〜5個のアルコキシカルボニル基がより好ましい。
【0041】
本発明に好適に用いることのできる、特定増感色素の具体例〔例示化合物(I−1)〜(I−133)〕を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
【化8】

【0043】
【化9】

【0044】
【化10】

【0045】
【化11】

【0046】
【化12】

【0047】
【化13】

【0048】
【化14】

【0049】
【化15】

【0050】
【化16】

【0051】
【化17】

【0052】
なお、本発明に係る特定増感色素は、例えば、特開2004−189695公報、「Tetrahedron」第49巻,p939(1993年)、「Journal of Organic Chemistry」 p893(1945年)、及び、「Journal of Organic Chemistry」 p4939(1965年)などに記載の公知の方法によって合成することができる。
【0053】
本発明の光硬化性組成物における特定増感色素の含有量は、光硬化性組成物に対して固形分で、0.05質量%〜30質量%程度が好ましく、0.1質量%〜20質量%であることが更に好ましく、0.2質量%〜10質量%であることがより好ましい。
なお、この特定増感色素は、可視光領域における吸収が殆どないため、効果を発現しうる量を添加しても光硬化性組成物の色相に影響を与える懸念がないという利点をも有するものである。
含有量について、後述する特定重合開始剤との関連において述べれば、特定重合開始剤:特定増感色素の質量比で200:1〜1:200、好ましくは、50:1〜1:50、より好ましくは、20:1〜1:5の量で含まれることが好適である。
【0054】
〔その他の増感色素〕
本発明においては、前記した特定増感色素に加え、公知の増感色素を本発明の効果を損なわない限りにおいて併用することができる。その他の増感色素は、特定増感色素に対して、特定増感色素:他の増感色素の質量比で1:5〜100:1、好ましくは、1:1〜100:1、より好ましくは、2:1〜100:1の量で添加することが可能である。
併用しうる公知の増感色素の例としては、ベンゾフェノン、チオキサントン、特にまたイソプロピルチオキサントン、アントラキノン及び3−アシルクマリン誘導体、ターフェニル、スチリルケトン及び3−(アロイルメチレン)チアゾリン、ショウノウキノン、エオシン、ローダミン及びエリスロシンなどが挙げられる。
【0055】
併用可能な増感色素のさらなる例は、下記のとおりである。
(1)チオキサントン
チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−ドデシルチオキサントン、2,4−ジ−エチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−メトキシカルボニルチオキサントン、2−エトキシカルボニルチオキサントン、3−(2−メトキシエトキシカルボニル)チオキサントン、4−ブトキシカルボニルチオキサントン、3−ブトキシカルボニル−7−メチルチオキサントン、1−シアノ−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−エトキシチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−アミノチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−フェニルスルフリルチオキサントン、3,4−ジ−〔2−(2−メトキシエトキシ)エトキシカルボニル〕チオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−(1−メチル−1−モルホリノエチル)チオキサントン、2−メチル−6−ジメトキシメチルチオキサントン、2−メチル−6−(1,1−ジメトキシベンジル)チオキサントン、2−モルホリノメチルチオキサントン、2−メチル−6−モルホリノメチルチオキサントン、n−アリルチオキサントン−3,4−ジカルボキシミド、n−オクチルチオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、N−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)チオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、1−フェノキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メトキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メチルチオキサントン、チオキサントン−2−ポリエチレングリコールエステル、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロリド;
【0056】
(2)ベンゾフェノン
ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−メトキシベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジメチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−(4−メチルチオフェニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチル−2−ベンゾイルベンゾアート、4−(2−ヒドロキシエチルチオ)ベンゾフェノン、4−(4−トリルチオ)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N,N−トリメチルベンゼンメタンアミニウムクロリド、2−ヒドロキシ−3−(4−ベンゾイルフェノキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロリド一水和物、4−(13−アクリロイル−1,4,7,10,13−ペンタオキサトリデシル)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−〔2−(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ〕エチルベンゼンメタンアミニウムクロリド;
【0057】
(3)3−アシルクマリン
3−ベンゾイルクマリン、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジ(プロポキシ)クマリン、3−ベンゾイル−6,8−ジクロロクマリン、3−ベンゾイル−6−クロロクマリン、3,3’−カルボニルビス〔5,7−ジ(プロポキシ)クマリン〕、3,3’−カルボニルビス(7−メトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−イソブチロイルクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジメトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジエトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジブトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジ(メトキシエトキシ)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジ(アリルオキシ)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−イソブチロイル−7−ジメチルアミノクマリン、5,7−ジメトキシ−3−(1−ナフトイル)クマリン、5,7−ジメトキシ−3−(1−ナフトイル)クマリン、3−ベンゾイルベンゾ〔f〕クマリン、7−ジエチルアミノ−3−チエノイルクマリン、3−(4−シアノベンゾイル)−5,7−ジメトキシクマリン;
【0058】
(4)3−(アロイルメチレン)チアゾリン
3−メチル−2−ベンゾイルメチレン−β−ナフトチアゾリン、3−メチル−2−ベンゾイルメチレンベンゾチアゾリン、3−エチル−2−プロピオニルメチレン−β−ナフトチアゾリン;
【0059】
(5)アントラセン
9,10−ジメトキシ−アントラセン、9,10−ジエトキシ−アントラセン、9,10−ジメトキシ−2−エチル−アントラセン、
【0060】
(6)他のカルボニル化合物
アセトフェノン、3−メトキシアセトフェノン、4−フェニルアセトフェノン、ベンジル、2−アセチルナフタレン、2−ナフトアルデヒド、9,10−ナフトラキノン、9−フルオレノン、ジベンゾスベロン、キサントン、2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン、α−(パラ−ジメチルアミノベンジリデン)ケトン、例えば、2−(4−ジメチルアミノベンジリデン)インダン−1−オン又は3−(4−ジメチルアミノフェニル)−1−インダン−5−イルプロペノン、3−フェニルチオフタルイミド、N−メチル−3,5−ジ(エチルチオ)フタルイミド。
【0061】
<重合開始剤>
本発明の光硬化性組成物は、重合開始剤を含有する。
本発明においては、以下に詳述する特定重合開始剤を含有することを特徴とするが、さらに、公知の重合開始剤を併用することもできる。本発明における重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
【0062】
〔(ii)一般式(II)で示される光重合開始剤〕
以下、本発明の特徴的な成分である特定重合開始剤について詳細に説明する。
本発明に好適に使用される重合開始剤は、下記一般式(II)で示される化合物である。
【0063】
【化18】

【0064】
前記一般式(II)中、R21およびR22は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、またはアルケニル基を表し、R21とR22とが互いに結合して炭素原子数2〜8のアルキレン基、炭素原子数3〜9のオキサアルキレン基、又は、炭素原子数3〜9のアザアルキレン基を形成してもよい。
21は、アルキル基、アリール基、またはアルケニル基であり、詳しくは、炭素原子数1〜18の線状もしくは枝分かれもしくは環状のアルキル基、またはアルケニル基、炭素原子数4〜18のアリール基である。
【0065】
一般式(II)中の置換基R21におけるアルキル基としては、炭素原子数1〜18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルキル基が挙げられ、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、tert−オクチル基、ネオペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボロニル基、4−デシルシクロヘキシル基などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
一般式(II)中の置換基R21におけるアリール基としては、ヘテロ原子を含んでよい炭素原子数4〜18の単環または縮合多環アリール基が挙げられ、具体例としては、フェニル基、1ーナフチル基、2−ナフチル基、9−アンスリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、5−ナフタセニル基、1−インデニル基、2−アズレニル基、1−アセナフチル基、2−フラニル基、2−ピロリル基、9−フルオレニル基、2−フリル基、2−チエニル基、2−インドリル基、3−インドリル基、6−インドリル基、2−ベンゾフリル基、2−ベンゾチエニル基、4−キノリニル基、4−イソキノリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−アクリジニル基、3−フェノチアジニル基、2−フェノキサチイニル基、3−フェノキサジニル基、3−チアントレニル基などが挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
一般式(II)中の置換基R21における炭素原子数1〜18の線状もしくは枝分かれもしくは環状のアルケニル基としては、炭素原子数1〜18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルケニル基が挙げられ、それらは構造中に複数の炭素−炭素二重結合を有していてもよく、具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、1,3−ブタジエニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロペンタジエニル基などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
上記置換基のうち、R21としては合成の難易度の面や、ラジカル発生剤としての感度の点で、アルキル基またはアルケニル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、ベンジル基、p−メチルベンジル基、または2−プロペニル基が特に好ましい。
【0069】
また、一般式(II)における置換基R22は、R21と同義であるが、これらが互いに結合して炭素原子数2〜8からなるアルキレン基、または炭素原子数3〜9の、オキサアルキレン基もしくはアザアルキレン基を形成してもよい。
一般式(II)中の置換基R22とR21とが結合して形成される炭素原子数2〜8からなるアルキレン基におけるアルキレン基としては、R22がR21、及び、それらが結合している炭素原子と共同して、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環などを形成する態様を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
一般式(II)中の置換基R22とR21とが結合して形成される炭素原子数3〜9の、オキサアルキレン基もしくはアザアルキレン基である場合のオキサ−もしくはアザアルキレン基としては、R22がR21、及び、それらが結合している炭素原子と共同して、テトラヒドロフラン環、ピロリジン環、ピペリジン環などを形成する態様を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
23およびR24は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アルケニル基、またはCOR10を表し、これらは互いに結合して炭素原子数2〜6のアルキレン基、炭素原子数2〜6のオキサアルキレン基、炭素原子数2〜6のチアアルキレン基又は炭素原子数2〜6のアザアルキレン基を形成してもよい。ここで、R10は、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基を表す。
【0072】
ここで、R23、R24がアルキル基、アリール基を表す場合のアルキル基、アリール基としては、前記R21の説明におけるアルキル基、アリール基と同義である。
一般式(II)中の置換基R23およびR24がアルケニル基を表す場合のアルケニル基としては、炭素原子数1〜18の線状もしくは枝分かれもしくは環状のアルケニル基であり、炭素原子数1〜18の線状もしくは枝分かれのアルケニル基としては、炭素原子数1〜18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルケニル基が挙げられ、それらは構造中に複数の炭素−炭素二重結合を有していてもよく、具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、1,3−ブタジエニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロペンタジエニル基などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
ここで、置換基R10は、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基を表すが、ここにおけるアルキル基、アリール基、アルケニル基は、前記R21におけるのと同義である。
10がアルコキシ基を表す場合のアルコキシ基としては、炭素原子数1〜18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルコキシ基があげられ、具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、イソペンチルオキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、sec−ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、tert−オクチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、アダマンチルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、ボロニルオキシ基、4−デシルシクロヘキシルオキシ基、2−テトラヒドロフラニルオキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
10がアリールオキシ基を表す場合のアリールオキシ基としては、ヘテロ原子を含んでよい炭素原子数4〜18の単環または縮合多環アリールオキシ基が挙げられ、具体例としては、フェノキシ基、1ーナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、9−アンスリルオキシ基、9−フェナントリルオキシ基、1−ピレニルオキシ基、5−ナフタセニルオキシ基、1−インデニルオキシ基、2−アズレニルオキシ基、1−アセナフチルオキシ基、9−フルオレニルオキシ基、2−フラニルオキシ基、2−チエニルオキシ基、2−インドリルオキシ基、3−インドリルオキシ基、2−ベンゾフリルオキシ基、2−ベンゾチエニルオキシ基、2−カルバゾリルオキシ基、3−カルバゾリルオキシ基、4−カルバゾリルオキシ基、9−アクリジニルオキシ基などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
一般式(II)中の置換基R23とR24とが結合して炭素原子数2〜6のアルキレンを形成する場合のアルキレン基としては、R23がR24、及び、それらが結合している窒素原子と共同して、プロピレンイミン環、ピロリジン環、ピペリジン環、またはピペコリン環などを形成する態様を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
一般式(II)中の置換基R23とR24が互いに結合して炭素原子数2〜6の、オキサアルキレン基、チアアルキレン基もしくはアザアルキレン基を形成する場合のオキサアルキレン、チアアルキレンもしくはアザアルキレン基としては、R23がR24、及び、それらが結合している窒素原子と共同して、モルホリン環、チオモルホリン環、チアゾリジン環、ピペラジン環、またはホモピペラジン環などを形成する態様を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
上記置換基のうち、置換基R23およびR24としては合成の難易度の面や、ラジカル発生剤としての感度の点で、アルキル基、アルケニル基、置換基R23およびR24が互いに結合して炭素原子数2〜6のアルキレン基、炭素原子数2〜6の、オキサアルキレン基、チアアルキレン基もしくはアザアルキレン基を形成する態様が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、またはピペラジノ基が特に好ましい。
【0077】
前述したR21〜R24で示される1価の置換基、或いは、R21とR22、R23とR24が互いに結合して形成される2価の基は、さらに、置換基を有するものであってもよく、これらに導入可能な置換基としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、またはハロゲン原子などが挙げられる。
【0078】
前記式(II)中、Aは、炭素原子数4〜16を含む2価の芳香族縮合環基を表し、芳香族ヘテロ縮合環基であってもよい。
ここで、芳香族縮合環基とは、2つ以上の環が縮合したものであって、少なくとも1つの環が芳香族環であるものに由来する基を示す。特に、前記芳香族縮合環は、一般式(II)における2つのカルボニル基のうちの少なくとも一方と共役するように結合していることが好ましい。
ここで、芳香族縮合環基は、ヘテロ原子を含むものであってもよいが、ヘテロ原子の種類、ヘテロ原子の数、ヘテロ原子の置換位置について特に限定はない。
効果の観点からは、ヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、又は、硫黄原子が好ましく、含まれるヘテロ原子の数は、0〜4個が好ましい。
ヘテロ原子を含む場合、2価の芳香族縮合環基におけるヘテロ原子の置換位置は、特に限定はないが、Aの含む芳香族環と一般式(II)の2つのカルボニル基のうちの少なくとも一方との共役を遮らないように結合していることが好ましい。
【0079】
Aで示される2価の芳香族縮合環基としては、より具体的には、下記一般式(II−3)、一般式(II−4)、一般式(II−5)、または一般式(II−6)で表わされるものが好ましい。
【0080】
【化19】

【0081】
一般式(II−3)中、Yは−O−、−S−、>S=O、>SO2、−N(R11)−、−CO−、−CH2−、−CH2CH2−、−CH=CH−、炭素原子数2〜6のアルキリデン基又は単結合を表し、Zは、−O−、−S−、>S=O、>SO2、−N(R11)−、−CO−、−CH2−、−CH2CH2−、−CH=CH−、炭素原子数2〜6のアルキリデン基もしくは単結合を表す。
【0082】
【化20】

【0083】
一般式(II−4)中、Uは、−O−、−S−、または−N(R11)−を表し、ここで、R11は、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環基、又は、複素環オキシ基を表す。
置換基R11における、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、またはアリールキシ基としては、前記した置換基R25〜R29おけるアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基と同義であり、好ましい例も同様である。
置換基R11として好ましい具体例を挙げれば、2個以上の酸素原子(−O−)を鎖中に含むアルキル基、2個以上の−O−を鎖中に含むによりアルコキシル基が挙げられる。 2個以上の−O−を鎖中に含んで形成されるアルコキシル基としては、炭素数2から18であり2個以上の−O−で中断されている直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルコキシル基が挙げられ、−O−(CH−O)−CH(ここでkは2から10である)、−O−CH−CH−O−CH−O−CH−CH、−O−(CH−CH−O)−CH(ここでnは2から8である)、−O−(CH−CH−CH−O)−CH(ここでmは2から5である)、−O−CH−CH−O−CH−CH(CH)−O−CH−CH、−O−CH−CH−(OCH等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
【化21】

【0085】
【化22】

【0086】
一般式(II−5)及び一般式(II−6)中、Uは、一般式(II−4)におけるのと同議である。
Aとしては、より具体的には、ナフチル基、アントリル基、フェナントレニル基、ナフタセニル基、ピレニル基、フェニルナフチル基、インデニル基、アズレニル基、アセナフチレニル基、アセナフテニル基、フラニル基、ピロリル基、チエニル基、インドリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インデニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、フルオレニル基ジベンゾ〔b,e〕〔1,4〕ジオキシニル基、フェノキサチイニル基、フェノチアジニル基、チアントレニル基、キサンテニル基、チオキサンテニル基、フェノキサジニル基、フェナジニル基、アクリジニル基、キサントニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンズイミダゾリル基、インダゾリル基、1,2−ベンズイソキサゾリル基、フェナナントリジニル基、フェナントロリニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、イミノスチルベニル基、アクリドニル基、トリフェニルアミン基、N−フェニルピロリル基などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0087】
Ar1は、下記(II−2)で示される基又は複素環基を表す。
【0088】
【化23】

【0089】
一般式(II−2)中、R25、R26、R27、R28およびR29はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、またはハロゲン原子を表す。また、R25〜R29は、一体となって芳香環を形成してもよい。
【0090】
また、Arが複素環基を表す場合の複素環基としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子を含む、炭素原子数2〜24の芳香族あるいは脂肪族の複素環基が挙げられ、2−チエニル基、2−ベンゾチエニル基、ナフト[2,3−b]チエニル基、3−チアントレニル基、2−チアンスレニル基、2−フリル基、2−ベンゾフリル基、ピラニル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、キサンテニル基、フェノキサチイニル基、2H−ピロリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、3H−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、1H−インダゾリル基、プリニル基、4H−キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサニリル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、4aH−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、β−カルボリニル基、フェナントリジニル基、2−アクリジニル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェナルサジニル基、イソチアゾリル基、フェノチアジニル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、3−フェニキサジニル基、イソクロマニル基、クロマニル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピラゾリニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、キヌクリジニル基、モルホリニル基、チオキサントリル基、4−キノリニル基、4−イソキノリル基、3−フェノチアジニル基、2−フェノキサチイニル基、3−クマリニル基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0091】
Arにおけるアルキル基、アリール基、複素環基等の1価の基は、さらに置換基を有するものであってもよく、導入可能な置換基としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、またはハロゲン原子などが挙げられる。
以下に、本発明における一般式(II)で表される化合物の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0092】
【化24】

【0093】
【化25】

【0094】
【化26】

【0095】
【化27】

【0096】
【化28】

【0097】
【化29】

【0098】
【化30】

【0099】
【化31】

【0100】
【化32】

【0101】
【化33】

【0102】
【化34】

【0103】
【化35】

【0104】
【化36】

【0105】
【化37】

【0106】
一般式(II)で示される特定重合開始剤としては、例えば、特開2006−206799号公報の段落番号〔0103〕〜〔0127〕、特開2008−31280号公報段落番号〔0101〕〜〔0105〕に記載の化合物等が挙げられ、これらも本発明に使用しうる。また、特定重合開始剤は、前記各公報に記載の方法により合成することができる。
【0107】
本発明の光硬化性組成物には、(ii)特定光重合開始剤を1種のみ用いてもよく、2種以上を併用することもできる。
本発明の光硬化性組成物における前記一般式(II)で示される特定重合開始剤の含有量は、0.1〜30質量%の範囲であることが好ましく、0.2〜20質量%の範囲であることがより好ましい。
【0108】
〔他の重合開始剤〕
本発明の光硬化性組成物は、光重合開始剤として、少なくとも上記特定重合開始剤を含むことを要するが、本発明の効果を損なわない限りにおいて、他の光重合開始剤を併用して用いてもよい。
併用可能な公知の重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)アシルフォスフィン化合物、(c)芳香族オニウム塩化合物、(d)有機過酸化物、(e)チオ化合物、(f)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(g)ケトオキシムエステル化合物、(h)ボレート化合物、(i)アジニウム化合物、(j)メタロセン化合物、(k)活性エステル化合物、(l)炭素ハロゲン結合を有する化合物、並びに(m)アルキルアミン化合物等が挙げられる。
上述したラジカル重合開始剤の例としては、例えば、特開2006−085049号公報の明細書の段落番号[0135]〜[0208]に記載されたラジカル重合開始剤を挙げることができる。
上記のごとき、ラジカル重合開始剤は、一種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0109】
本発明の光硬化性組成物における重合開始剤の含有量は、後述する(iii)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物100質量部に対して、好ましくは0.01〜35質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜30質量部、さらに好ましくは0.5〜25質量部の範囲で含有されるのが適当である。なお、ここで重合開始剤の含有量とは、特定重合開始剤及び併用しうる他の重合開始剤を含む重合開始剤の総含有量を意味する。
【0110】
<(iii)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物>
本発明の光硬化性組成物には重合性化合物を含有する。
本発明に好適に使用しうる重合性化合物とは、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物であり、分子中にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物であればどのようなものでもよく、モノマー、オリゴマー、ポリマー等の化学形態を持つものが含まれる。
ラジカル重合性化合物は1種のみ用いてもよく、また目的とする特性を向上するために任意の比率で2種以上を併用してもよい。好ましくは2種以上併用して用いることが、反応性、物性などの性能を制御する上で好ましい。
【0111】
エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エチレン性不飽和基を有する無水物、アクリロニトリル、スチレン、更に種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。
具体的には、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エポキシアクリレート等のアクリル酸誘導体、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等のメタクリル誘導体、その他、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体が挙げられ、更に具体的には、山下晋三編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年大成社);加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、79頁、(1989年、シーエムシー);滝山栄一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品もしくは業界で公知のラジカル重合性乃至架橋性のモノマー、オリゴマー及びポリマーを用いることができる。
【0112】
ラジカル重合性化合物としては、例えば、特開平7−159983号、特公平7−31399号、特開平8−224982号、特開平10−863号、特開平9−134011号等の各公報に記載されている光重合性組成物に用いられる光硬化型の重合性化合物が挙げられる。
【0113】
感度、滲み、記録媒体との密着性をより改善するためには、ラジカル重合性化合物として、モノアクリレートと、分子量400以上、好ましくは500以上の多官能アクリレートモノマー又は多官能アクリレートオリゴマーを併用することが好ましい。特に、PETフィルムやPPフィルムといった柔軟な被記録媒体への記録に使用するインク組成物においては、上記化合物群の中から選ばれるモノアクリレートと、多官能アクリレートモノマー又は多官能アクリレートオリゴマーとの併用は、膜に可撓性を持たせて密着性を高めつつ、膜強度を高められるため好ましい。
さらに、単官能、二官能、三官能以上の多官能モノマーの少なくとも3種の重合性化合物を併用する態様が、安全性を維持しつつ、更に、感度、滲み、被記録媒体との密着性をより改善することができるという観点から好ましい。
【0114】
モノアクリレートとしては、ステアリルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソミスチルアクリレート、イソステアリルアクリレートが感度も高く、低収縮性でカールの発生を防止できるとともに、滲み防止、印刷物の臭気、照射装置のコストダウンの点で好ましい。
モノアクリレートと併用しうるオリゴマーとしては、エポキシアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマーが特に好ましい。
なお、メタクリレートは、皮膚低刺激性がアクリレートより良好である。
上記化合物の中でもアルコキシアクリレートを70質量%未満の量で使用し、残部をアクリレートとする場合、良好な感度、滲み特性、臭気特性を有するため好ましい。
【0115】
本発明の光硬化性組成物は、前記(i)〜(iii)の成分を必須成分として含有するが、光硬化性組成物の使用目的に応じて、本発明の効果を損なわない範囲において、添加剤として公知の他の成分を併用することができる。
以下、本発明の光硬化性組成物を最適な用途であるインク組成物に適用した場合を例に挙げて、好ましい任意成分について説明する。
【0116】
<着色剤>
本発明の光硬化性組成物を、インク組成物や平版印刷版の画像部形成などの用途に適用する場合には、光硬化性組成物により形成された画像部の視認性を向上するため、或いは、インク組成物を用いて着色画像を形成しようとするときは、着色剤を含有することができる。
【0117】
本発明に使用することのできる着色剤としては、特に制限はないが、耐候性に優れ、色再現性に富んだ(1)顔料及び(2)油溶性染料が好ましく、溶解性染料等の任意の公知の着色剤から選択して使用することができる。本発明のインク組成物又はインクジェット記録用インク組成物に好適に使用し得る着色剤は、活性放射線による硬化反応の感度を低下させないという観点からは、硬化反応である重合反応において重合禁止剤として機能しない化合物を選択することが好ましい。
【0118】
(1)顔料
本発明に使用できる顔料としては、特に限定されるわけではないが、例えばカラーインデックスに記載される下記の番号の有機又は無機顔料が使用できる。
赤あるいはマゼンタ顔料としては、例えば、Pigment Red 3、5、19、22、31、38、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、88、104、108、112、122、123、144、146、149、166、168、169、170、177、178、179、184、185、208、216、226、257、Pigment Violet 3、19、23、29、30、37、50、88、Pigment Orange 13、16、20、36、等が挙げられる。
青又はシアン顔料としては、例えば、Pigment Blue 1、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17−1、22、27、28、29、36、60、等が挙げられる。
緑顔料としては、例えば、Pigment Green 7、26、36、50、等が挙げられる。
黄顔料としては、例えば、Pigment Yellow 1、3、12、13、14、17、34、35、37、55、74、81、83、93、94,95、97、108、109、110、137、138、139、153、154、155、157、166、167、168、180、185、193、等が挙げられる。
黒顔料としては、例えば、Pigment Black 7、28、26、等が挙げられる。
白色顔料としては、例えば、Pigment White 6、18、21、等が挙げられる。
これらの顔料は、目的に応じて適宜選択して使用できる。
【0119】
(2)油溶性染料
以下に、本発明で使用することのできる油溶性染料について説明する。
本発明で使用することのできる油溶性染料とは、水に実質的に不溶な染料を意味する。具体的には、25℃での水への溶解度(水100gに溶解できる染料の質量)が1g以下であり、好ましくは0.5g以下、より好ましくは0.1g以下であるものを指す。従って、油溶性染料とは、所謂水に不溶性の顔料や油溶性色素を意味し、これらの中でも油溶性色素が好ましい。
【0120】
本発明に使用可能な油溶性染料のうち、イエロー染料としては、任意のものを使用することができる。例えば、カップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラゾロン類、ピリドン類、開鎖型活性メチレン化合物類を有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカップリング成分として開鎖型活性メチレン化合物類を有するアゾメチン染料;例えばベンジリデン染料やモノメチンオキソノール染料等のようなメチン染料;例えばナフトキノン染料、アントラキノン染料等のようなキノン系染料;等が挙げられ、これ以外の染料種としてはキノフタロン染料、ニトロ・ニトロソ染料、アクリジン染料、アクリジノン染料等を挙げることができる。
【0121】
本発明に使用可能な油溶性染料のうち、マゼンタ染料としては、任意のものを使用することができる。例えばカップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類を有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカップリング成分としてピラゾロン類、ピラゾロトリアゾール類を有するアゾメチン染料;例えばアリーリデン染料、スチリル染料、メロシアニン染料、オキソノール染料のようなメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料のようなカルボニウム染料;例えばナフトキノン、アントラキノン、アントラピリドンなどのようなキノン系染料;例えばジオキサジン染料等のような縮合多環系染料;等を挙げることができる。
【0122】
本発明に適用可能な油溶性染料のうち、シアン染料としては、任意のものを使用することができる。例えばインドアニリン染料、インドフェノール染料あるいはカップリング成分としてピロロトリアゾール類を有するアゾメチン染料;シアニン染料、オキソノール染料、メロシアニン染料のようなポリメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料のようなカルボニウム染料;フタロシアニン染料;アントラキノン染料;例えばカップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類を有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;インジゴ・チオインジゴ染料;等を挙げることができる。
【0123】
前記の各染料は、クロモフォア(発色性の原子団)の一部が解離して初めてイエロー、マゼンタ、シアンの各色を呈するものであってもよく、その場合のカウンターカチオンはアルカリ金属や、アンモニウムのような無機のカチオンであってもよいし、ピリジニウム、4級アンモニウム塩のような有機のカチオンであってもよく、さらにはそれらを構造に有するポリマーカチオンであってもよい。
【0124】
以下に限定されるものではないが、好ましい具体例としては、例えば、C.I.ソルベント・ブラック 3,7,27,29及び34;C.I.ソルベント・イエロー 14,16,19,29,30,56,82,93及び162;C.I.ソルベント・レッド 1,3,8,18,24,27,43,49,51,72,73,109,122,132及び218;C.I.ソルベント・バイオレット 3;C.I.ソルベント・ブルー 2,11,25,35,38,67及び70;C.I.ソルベント・グリーン 3及び7;並びにC.I.ソルベント・オレンジ 2;等が挙げられる。
これらの中で特に好ましいものは、Nubian Black PC−0850、Oil Black HBB、Oil Yellow 129、Oil Yellow 105、Oil Pink 312、Oil Red 5B、Oil Scarlet 308、Vali Fast Blue 2606、Oil Blue BOS(オリエント化学(株)製)、Aizen Spilon Blue GNH(保土ヶ谷化学(株)製)、NeopenYellow 075、Neopen Mazenta SE1378、Neopen Blue 808、Neopen Blue FF4012、Neopen Cyan FF4238(BASF社製)等である。
【0125】
本発明においては、油溶性染料は1種単独で用いてもよく、また、数種類を混合して用いてもよい。
また、着色剤として油溶性染料を使用する場合には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、他の水溶性染料、分散染料、顔料等の着色剤を併用することもできる。
【0126】
(3)分散染料
また、本発明においては、水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で分散染料を用いることもできる。分散染料は一般に水溶性の染料も包含するが、本発明においては水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で用いることが好ましい。分散染料の好ましい具体例としては、C.I.ディスパースイエロー 5,42,54,64,79,82,83,93,99、100,119,122,124,126,160,184:1,186,198,199,201,204,224及び237;C.I.ディスパーズオレンジ 13,29,31:1,33,49,54,55,66,73,118,119及び163;C.I.ディスパーズレッド 54,60,72,73,86,88,91,92,93,111,126,127,134,135,143,145,152,153,154,159,164,167:1,177,181,204,206,207,221,239,240,258,277,278,283,311,323,343,348,356及び362;C.I.ディスパーズバイオレット 33;C.I.ディスパーズブルー 56,60,73,87,113,128,143,148,154,158,165,165:1,165:2,176,183,185,197,198,201,214,224,225,257,266,267,287,354,358,365及び368;並びにC.I.ディスパーズグリーン 6:1及び9;等が挙げられる。
【0127】
本発明に使用することができる着色剤は、光硬化性組成物、例えば、後述する本発明のインク組成物又はインクジェット記録用インク組成物に添加された後、適度に当該インク内で分散することが好ましい。着色剤の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各分散装置を用いることができる。
【0128】
また、着色剤の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。分散剤としては、その種類に特に制限はないが、好ましくは高分子分散剤を用いることであり、高分子分散剤としては、例えば、Zeneca社のSolsperseシリーズが挙げられる。また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。本発明において、これらの分散剤及び分散助剤は、着色剤100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。
【0129】
着色剤は、本発明の光硬化性組成物、インク組成物の調製に際して、各成分とともに直接添加により配合してもよいが、分散性向上のため、あらかじめ溶剤、又は本発明における特定の単官能(メタ)アクリル酸誘導体や、所望により併用される他の重合性化合物のような分散媒体に添加し、均一分散或いは溶解させた後、配合することもできる。
【0130】
本発明において、溶剤が硬化画像に残留する場合に懸念される画像部の耐溶剤性の経時的な低下の問題を避けるためにも、着色剤は、特定の単官能(メタ)アクリル酸誘導体を含む重合性化合物のいずれか1つ又はそれらの混合物に予め添加して、配合することが好ましい。なお、分散適性の観点のみを考慮した場合、着色剤の添加に使用する重合性化合物は、最も粘度の低いモノマーを選択することが好ましい。
【0131】
着色剤は、インク組成物の使用目的に応じて、1種又は2種以上を適宜選択して用いればよい。
なお、本発明の硬化性組成物、インク組成物中において、固体のまま存在する顔料などの着色剤を使用する際には、着色剤粒子の平均粒径は、好ましくは0.005〜0.5μm、より好ましくは0.01〜0.45μm、さらに好ましくは、0.015〜0.4μmとなるよう、着色剤、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定することが好ましい。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性及び硬化感度を維持することができるので好ましい。
【0132】
本発明の光硬化性組成物、インク組成物中における着色剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、インク物性、着色性を考慮すれば、一般的には、組成物全体の質量に対して、1〜10質量%であることが好ましく、2〜8質量%含有することがより好ましい。
【0133】
<その他の成分>
本発明の光硬化性組成物には、必要に応じて、他の成分を添加することができる。その他の成分としては、例えば、重合禁止剤、溶剤、等が挙げられる。
(重合禁止剤)
重合禁止剤は、保存性を高める観点から添加され得る。また、本発明の光硬化性組成物をインクジェト記録用インク組成物として使用する場合には、40〜80℃の範囲で加熱、低粘度化して吐出することが好ましく、熱重合によるヘッド詰まりを防ぐためにも、重合禁止剤を添加することが好ましい。重合禁止剤は、本発明のインク組成物全量に対し、200〜20,000ppm添加することが好ましい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl等が挙げられる。
【0134】
(溶剤)
本発明のインク組成物及びインクジェット記録用インク組成物が放射線硬化型インク組成物であることに鑑み、インク組成物着弾直後に速やかに反応しかつ硬化し得るよう、溶剤を含まないことが好ましい。しかし、インク組成物の硬化速度等に影響がない限り、所定の溶剤を含めることができる。本発明において、溶剤としては、有機溶剤、水が使用できる。特に、有機溶剤は、被記録媒体(紙などの支持体)との密着性を改良するために添加することができる。
有機溶剤を添加する場合の添加量としては、本発明の光硬化性組成物を、例えば、インク組成物に用いる場合には、全体の質量に対し、例えば、0.1〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3質量%の範囲である。
【0135】
(その他の成分)
この他に、必要に応じて公知の化合物を本発明の光硬化性組成物に添加することができる。例えば、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワッス類等を適宜選択して添加することができる。また、ポリオレフィンやPET等の被記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーを含有させることも好ましい。具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6頁に記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環属アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香属アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などが挙げられる。
また、本発明の効果を阻害しない範囲で、所望により、熱可塑性高分子化合物、充填剤、消泡剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤、安定剤等の各種樹脂添加物等を通常の使用の範囲で添加用することができる。
【0136】
本発明の光硬化性組成物は、放射線硬化型のインク組成物の他、3次元光造形、ホログラフィー、平版印刷版、カラープルーフ、フォトレジスト及びカラーフィルターといった画像形成材料や、塗料、接着剤等の光硬化樹脂材料用途等に用いることができる。
【0137】
〔インク組成物〕
本発明のインク組成物は、前述の本発明の光硬化性組成物を含むことを特徴とする。
即ち、本発明のインク組成物は(i)一般式(I)で示される増感色素(特定増感色素)と、(ii)一般式(II)で示される光重合開始剤と、(iii)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物と、を含有し、必要に応じて、着色剤等を含有するものである。
これらの成分は、本発明のインク組成物全体の全質量に対して、(i)特定増感色素が、好ましくは0.1重量%〜20重量%、より好ましくは0.3重量%〜10重量%、(ii)特定重合開始剤が、(iii)重合性化合物に対して、好ましくは0.01〜35質量%、より好ましくは、0.1〜30質量%の量、さらに好ましくは0.5〜30質量%、(iii)重合性化合物が好ましくは10重量%〜95重量%、より好ましくは30重量%〜93重量%、更に好ましくは50重量%〜90重量%であり、また、着色剤を用いる場合、着色剤が好ましくは1重量%〜20重量%、より好ましくは2重量%〜8重量%であって、各成分の合計が100重量%となるように含有することが適当である。
【0138】
−インク組成物の性質−
本発明のインク組成物は、分子拡散しやすさの観点で、低粘度のほうが三重項エネルギー移動増感には有利であること、また、溶液としての安定性に優れることからインクジェット記録用インクとして好適に使用することができる。インクジェット記録用インクとしての使用態様における好ましい物性について説明する。
インク組成物をインクジェット記録用インクとして使用する場合には、吐出性を考慮し、吐出時の温度(例えば、40〜80℃、好ましくは25〜50℃)において、粘度が、好ましくは7〜30mPa・sであり、より好ましくは7〜25mPa・sである。例えば、本発明のインク組成物の室温(25〜30℃)での粘度は、好ましくは35〜500mPa・s、より好ましくは35〜200mPa・sである。
本発明のインク組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な被記録媒体を用いた場合でも、被記録媒体中へのインク浸透を回避し、未硬化モノマーの低減、臭気低減が可能となる。更にインク液滴着弾時のインクの滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善される。
【0139】
本発明のインク組成物の表面張力は、好ましくは20〜30mN/m、より好ましくは23〜28mN/mである。ポリオレフィン、PET、コート紙、非コート紙など様々な被記録媒体へ記録する場合、滲み及び浸透の観点から、20mN/m以上が好ましく、濡れ性の点はで30mN/m以下が好ましい。
【0140】
[インクジェット記録方法]
次に、本発明のインクジェット記録方法、及び当該方法に適用しうるインクジェット記録装置について説明する。
本発明のインクジェット記録方法は、本発明の前記インク組成物をインクジェット記録用として被記録媒体(支持体、被記録材料等)上に吐出し、被記録媒体上に吐出されたインク組成物に活性放射線を照射し、インクを硬化して画像を形成する方法である。
【0141】
即ち、本発明のインクジェット記録方法は、(1)被記録媒体上に、本発明のインク組成物を吐出する工程、及び、(2)吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して、該インク組成物を硬化する工程、を含むことを特徴とする。
本発明のインクジェット記録方法は、上記(1)及び(2)工程を含むことにより、被記録媒体上において硬化したインク組成物により画像が形成される。
ここで、(2)工程での活性放射線のピーク波長は、200nm〜600nmであることが好ましく、300nm〜450nmであることがより好ましく、350nm〜420nmであることがより好ましい。また、活性放射線の出力は、2,000mJ/cm以下であることが好ましく、より好ましくは10mJ/cm〜2,000mJ/cmであり、さらに好ましくは20mJ/cm〜1,000mJ/cmであり、特に好ましくは50mJ/cm〜800mJ/cmである。
【0142】
本発明のインクジェット記録方法における(1)工程には、以下に詳述するインクジェット記録装置が用いることができる。
【0143】
<インクジェット記録装置>
本発明の記録方法に用いられるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、目的とする解像度を達成しうる公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。即ち、市販品を含む公知のインクジェット記録装置であれば、いずれも、本発明のインクジェット記録方法の(1)工程における被記録媒体へのインクの吐出を実施することができる。
本発明で用いることのできるインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、活性放射線源を含む装置が挙げられる。
インク供給系は、例えば、本発明のインク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、1〜100pl、好ましくは、8〜30plのマルチサイズドットを例えば、320×320〜4000×4000dpi、好ましくは、400×400〜1600×1600dpi、より好ましくは、720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0144】
上述したように、放射線硬化型インクは、吐出されるインクを一定温度にすることが望ましいことから、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温を行うことができる。温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断もしくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、あるいは熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0145】
次に、(2)吐出されたインク組成物に活性放射線を照射してインク組成物を硬化する工程について説明する。
被記録媒体上に吐出されたインク組成物は、活性放射線を照射することによって硬化する。これは、本発明のインク組成物に含まれる重合開始剤が活性放射線の照射により分解して、ラジカル、酸、塩基などの開始種を発生し、その開始種の機能により、特定の単官能(メタ)アクリル酸誘導体や所望により併用される他の重合性化合物の重合反応が、生起、促進されてインク組成物が硬化するためである。このとき、インク組成物において重合開始剤とともに増感色素が存在すると、系中の増感色素が活性放射線を吸収して励起状態となり、重合開始剤と接触することによって重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させる。
【0146】
ここで、使用される活性放射線は、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光又は赤外光などが使用され得る。活性放射線のピーク波長は、増感色素の吸収特性にもよるが、例えば、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、350〜420nmであることがさらに好ましい。
また、本発明では、重合開始系は、低出力の活性放射線であっても充分な感度を有するものである。従って、活性放射線の出力は、2,000mJ/cm以下であることが好ましく、より好ましくは、10〜2,000mJ/cmであり、さらに好ましくは、20〜1,000mJ/cmであり、特に好ましくは、50〜800mJ/cmである。
また、活性放射線は、露光面照度が、例えば、10〜2,000mW/cm、好ましくは、20〜1,000mW/cmで照射されることが適当である。
【0147】
活性放射線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェット記録用インクの硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。しかしながら、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更にLED(UV−LED),LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。
【0148】
また、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を活性放射線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。更に一層短い波長が必要とされる場合、米国特許番号第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性放射線を放出し得るLEDを開示している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい活性放射線源は、UV−LEDであり、特に好ましくは、340〜370mにピーク波長を有するUV−LEDである。
また、LEDの被記録媒体上での最高照度は10mW/cm〜2,000mW/cmであることが好ましく、20mW/cm〜1,000mW/cmであることがより好ましく、特に好ましくは50mW/cm〜800mW/cmである。
【0149】
本発明においては、(2)工程での活性放射線は、発光ピーク波長が340nm〜370nmの範囲にあり、かつ、被記録媒体表面での最高照度が10〜2,000mW/cmとなる紫外線を発生する発光ダイオード(UV−LED)により照射される紫外線であることが好ましい。
【0150】
本発明のインク組成物は、このような活性放射線に、例えば、0.01〜120秒、好ましくは、0.1〜90秒照射されることが適当である。
活性放射線の照射条件並びに基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、インクの吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査することによって行われる。活性放射線の照射は、インク着弾後、一定時間(例えば、0.01〜0.5秒、好ましくは、0.01〜0.3秒、より好ましくは、0.01〜0.15秒)をおいて行われることになる。このようにインク着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、被記録媒体に着弾したインクが硬化前に滲むことを防止するこが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインクが浸透する前に露光することができるため、未反応モノマーの残留を抑えられ、その結果として臭気を低減することができる。
更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させてもよい。WO99/54415号パンフレットでは、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されており、このような硬化方法もまた、本発明の記録方法に適用することができる。
【0151】
上述したようなインクジェット記録方法を採用することにより、表面の濡れ性が異なる様々な被記録媒体に対しても、着弾したインクのドット径を一定に保つことができ、画質が向上する。なお、カラー画像を得るためには、明度の低い色から順に重ねていくことが好ましい。明度の低いインクから順に重ねることにより、下部のインクまで照射線が到達しやすくなり、良好な硬化感度、残留モノマーの低減、臭気の低減、密着性の向上が期待できる。また、照射は、全色を吐出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
このようにして、本発明インク組成物は、活性放射線の照射により高感度で硬化し、疎水性画像を被記録媒体表面上に形成する。
【0152】
ここでインクの硬化に用いられる活性放射線源或いはその好ましい照射条件もまた、インクジェット記録方法において述べたのと同様である。
本発明のインク組成物は、活性放射線により高感度で硬化し、支持体との密着性や膜質に優れた疎水性領域を形成することができる。このため、着色画像の形成やマーキングなどに加え、例えば、平版印刷版の画像部の形成にも使用することができ、この用途に適用することで、高画質で耐刷性にも優れた平版印刷版を得ることも可能である。
本発明のインク組成物は、前記理由により、インクジェット記録用として優れているが、一般的に使用されるインク組成物としても有用であることはいうまでもない。
【実施例】
【0153】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例における形態に限定されるものではない。なお、以下の実施例は各色のUVインクジェット用インク組成物に係るものである。また、以下の説明においては、特に断りのない限り、「部」はすべて「質量部」を意味する。
【0154】
〔実施例1〕
以下の成分を、高速水冷式撹拌機により撹拌し、白色のUVインクジェット用インク組成物を得た。
(白色インク組成物)
・ライトアクリレートL−A 22.9部
〔アクリル酸ラウリルエステル:単官能アクリレート〕
・Actilane 421(Akcros社製アクリレートモノマー) 27.0部
〔プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート:2官能アクリレート〕
・Photomer 2017(EChem社製UV希釈剤) 15.0部
・Solsperse 36000(Noveon社製分散剤) 2.0部
・MICROLITH WHITE R−A 15.0部
(Ciba Specialty Chemicals社製顔料)
・Genorad 16(Rahn社製安定剤) 0.05部
・Rapi−Cure DVE−3 8.0部
(ISP Europe社製ビニルエーテル)
・特定増感色素〔化合物A:下記構造〕 4.0部
・特定重合開始剤〔化合物(1):下記構造〕 8.5部
(Ciba Specialty Chemicals社製光重合開始剤)
・Irgacure 907〔特定重合開始剤〕 6.0部
(Ciba Specialty Chemicals社製光重合開始剤)
・Byk 307(BYK Chemie社製消泡剤) 0.05部
【0155】
【化38】

【0156】
【化39】

【0157】
<インク組成物の評価>
<インクの評価>実施例1で得られたインク組成物をポリ塩化ビニル製のシート上に打滴し、紫外発光ダイオード(UV−LED)の光線下に特定の速度で通過させることにより照射を行って、インクを硬化させ、印刷物を得た。
本実施例では、インクの吐出は、ピエゾ型インクジェットノズルを有する市販のインクジェット記録装置により行い、硬化のための発光ダイオード(UV−LED)は、日亜化学製NCCU033を用いた。前記LEDは1チップから波長365nmの紫外光を出力するものであって、約500mAの電流を通電することにより、チップから約100mWの光が発光される。これを7mm間隔に複数個配列し、被記録媒体(以下、メディアとも言う。)表面で0.3W/cmのパワーが得られる。打滴後露光されるまでの時間、及び露光時間はメディアの搬送速度及びヘッドとLEDの搬送方向の距離により変更可能である。本実施例では着弾後、約0.5秒後に露光される。
メディアとの距離及び搬送速度の設定に応じて、メディア上の露光エネルギーを0.01〜15J/cmの間で調整することができる。
このとき、以下の評価を行った。
【0158】
―硬化感度―
印刷後の表面のベトツキがなくなる露光エネルギーによって硬化感度を定義した。
印刷後の表面のベトツキの有無は、印刷直後に普通紙(富士ゼロックス社製コピー用紙C2)を押し付け、色移りが起きる場合はベトツキあり、色移りが起きない場合はベトツキなしと判断した。
エネルギー値が低いほど硬化感度が高いと評価し、以下の基準で評価した。
【0159】
〈評価基準〉
◎:露光エネルギー1000mJ/cm以下で表面のベトツキがなくなった。
○:露光エネルギー1000mJ/cmを超え、1500mJ/cm以下で表面のベトツキがなくなった。
△:露光エネルギー1500mJ/cmを超え、2000mJ/cm以下で表面のベトツキがなくなった。
×:表面のベトツキがなくなるのに2500mJ/cmを超える露光エネルギーが必要であった。
【0160】
−インクの密着性の評価−
打滴され、硬化した画像形成面にカッターで切込みを入れ、セロハンテープを貼り、セロハンテープをはがした。このとき、メディア上に硬化したインクが残っているかを、以下の基準により判断した。
なお、密着性試験に用いた印刷物は、いずれも硬化性(タックフリー感度)試験において、2000mJ/cm2の露光エネルギーで露光したものを用いた。
〈評価基準〉
○:全てのインクが残っている。
△:切れ込み部分周辺のインクがテープに移っている。
×:テープと密着した殆ど全てがテープ側に移っている。
【0161】
〔実施例2〕
以下の成分を、高速水冷式撹拌機により撹拌し、マゼンタ色のUVインクジェット用インク組成物を得た。
(マゼンタ色インク組成物)
・ライトアクリレートL−A 19.4部
・Actilane 421(Akcros社製アクリレートモノマー) 33.5部
・Photomer 2017(EChem社製UV希釈剤) 20.0部
・Solsperse 32000(Noveon社製分散剤) 0.4部
・Cinquasia Mazenta RT−355 D
(Ciba Specialty Chemicals社製顔料) 3.6部
・Genorad 16(Rahn社製安定剤) 0.05部
・Rapi−Cure DVE−3 8.0部
(ISP Europe社製ビニルエーテル)
・特定増感剤〔化合物A:上記構造〕 4.0部
・特定重合開始剤〔化合物 (2):下記構造〕 6.0部
(Ciba Specialty Chemicals社製光重合開始剤)
・Byk 307(BYK Chemie社製消泡剤) 0.05部
実施例2で得られたインク組成物を実施例1と同様に評価した。
結果を下記表1に示す。
【0162】
【化40】

【0163】
〔実施例3〕
以下の成分を、高速水冷式撹拌機により撹拌し、シアン色のUVインクジェット用インク組成物を得た。
(シアン色インク組成物)
・ライトアクリレートL−A 22.9部
・Actilane 421(Akcros社製アクリレートモノマー) 30.0部
・Photomer 2017(EChem社製UV希釈剤) 20.0部
・Solsperse 32000(Noveon社製分散剤) 0.4部
・Irgalite Blue GLVO 3.6部
(Ciba Specialty Chemicals社製顔料)
・Genorad 16(Rahn社製安定剤) 0.05部
・Rapi−Cure DVE−3(ISP Europe社製ビニルエーテル)
8.0部
・特定増感剤〔化合物B:下記構造〕 4.0部
・特定重合開始剤〔化合物 (3):下記構造〕 6.0部
・Byk 307(BYK Chemie社製消泡剤) 0.05部
実施例3で得られたインク組成物を実施例1と同様に評価した。結果を下記表1に示す。
【0164】
【化41】

【0165】
【化42】

【0166】
〔実施例4〕
以下の成分を、高速水冷式撹拌機により撹拌し、イエロー色のUVインクジェット用インク組成物を得た。
(イエロー色インク組成物)
・ライトアクリレートL−A 14.0部
・Actilane 421(Akcros社製アクリレートモノマー) 42.9部
・Photomer 2017(EChem社製UV希釈剤) 20.0部
・Solsperse 32000(Noveon社製分散剤) 0.4部
・Cromophtal Yellow LA 3.6部
(Ciba Specialty Chemicals社製顔料)
・Genorad 16(Rahn社製安定剤) 0.05部
・Rapi−Cure DVE−3 4.0部
(ISP Europe社製ビニルエーテル)
・特定増感色素〔化合物C:下記構造〕 4.0部
・特定重合開始剤〔化合物 (4):下記構造〕 6.0部
・Byk 307(BYK Chemie社製消泡剤) 0.05部
実施例4で得られたインク組成物を実施例1と同様に評価した。結果を下記表1に示す。
【0167】
【化43】

【0168】
【化44】

【0169】
〔実施例5〕
以下の成分を、高速水冷式撹拌機により撹拌し、黒色のUVインクジェット用インク組成物を得た。
(黒色インク組成物)
・ライトアクリレートL−A 26.9部
・Actilane 421(Akcros社製アクリレートモノマー) 31.0部
・Photomer 2017(EChem社製UV希釈剤) 20.0部
・Solsperse 32000(Noveon社製分散剤) 0.4部
・Microlith Black C−K 2.6部
(Ciba Specialty Chemicals社製顔料)
・Genorad 16(Rahn社製安定剤) 0.05部
・Rapi−Cure DVE−3 5.0部
(ISP Europe社製ビニルエーテル)
・特定増感剤〔化合物D:下記構造〕 4.0部
・特定重合開始剤〔化合物 (5):下記構造〕 6.0部
・Byk 307(BYK Chemie社製消泡剤) 0.05部
実施例5で得られたインク組成物を実施例1と同様に評価した。結果を下記表1に示す。
【0170】
【化45】

【0171】
【化46】

【0172】
〔実施例6〕
以下の成分を、高速水冷式撹拌機により撹拌し、黒色のUVインクジェット用インク組成物を得た。
(黒色インク組成物)
・ライトアクリレートL−A 26.9部
・Actilane 421(Akcros社製アクリレートモノマー) 31.0部
・Photomer 2017(EChem社製UV希釈剤) 20.0部
・Solsperse 32000(Noveon社製分散剤) 0.4部
・Microlith Black C−K 2.6部
(Ciba Specialty Chemicals社製顔料)
・Genorad 16(Rahn社製安定剤) 0.05部
・Rapi−Cure DVE−3 5.0部
(ISP Europe社製ビニルエーテル)
・特定増感剤〔化合物E:下記構造〕 4.0部
・特定重合開始剤〔化合物(6):下記構造〕 6.0部
・Byk 307(BYK Chemie社製消泡剤) 0.05部
実施例6で得られたインク組成物を実施例1と同様に評価した。結果を下記表1に示す。
【0173】
【化47】

【0174】
【化48】

【0175】
〔実施例7〕
以下の成分を、高速水冷式撹拌機により撹拌し、黒色のUVインクジェット用インク組成物を得た。
(黒色インク組成物)
・ライトアクリレートL−A 22.9部
・Actilane 421(Akcros社製アクリレートモノマー) 31.0部
・Photomer 2017(EChem社製UV希釈剤) 20.0部
・Solsperse 32000(Noveon社製分散剤) 0.4部
・Microlith Black C−K 2.6部
(Ciba Specialty Chemicals社製顔料)
・Genorad 16(Rahn社製安定剤) 0.05部
・Rapi−Cure DVE−3 5.0部
(ISP Europe社製ビニルエーテル)
・特定増感剤〔化合物A:前記構造〕 4.0部
・特定重合開始剤〔化合物(4):前記構造〕 6.0部
・Irgacure TPO 4.0部
(Ciba Specialty Chemicals社製光重合開始剤)
・Byk 307(BYK Chemie社製消泡剤) 0.05部
実施例7で得られたインク組成物を実施例1と同様に評価した。結果を下記表1に示す。
【0176】
〔比較例1〜6〕
実施例1における、特定増感剤 化合物A、特定重合開始剤 化合物(1)を表1に示す増感剤および重合開始剤に代えた以外は、実施例1と同様にして白色インク組成物を調整し、実施例1と同様に評価した。
なお、比較例に用いた比較増感色素F及び比較増感色素G、比較重合開始剤C−1の構造を以下に示す。
【0177】
【化49】

【0178】
【表1】

【0179】
表1から明らかなように、本発明の硬化性組成物を適用した実施例1〜7のインク組成物は、いずれも高感度で硬化し、記録媒体との密着性に優れるものであった。また、各色のインク組成物により形成された硬化画像を目視で観察したところ、いずれの色相においても色再現性に優れていることがわかった。
他方、本発明に係る増感色素を含まないか、或いは、比較増感色素を用いた比較例1〜7の白色インク組成物は。硬化感度、密着性共に、実施例に比較して劣るものであった。また、比較増感色素を用いた比較例3〜7では、白色インクにより形成された硬化画像が比較増感色素に起因すると推定される黄着色のため、白色画像の色再現性が良好でなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)下記一般式(I)で示される増感色素と、(ii)下記一般式(II)で示される光重合開始剤と、(iii)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物と、を含有する光硬化性組成物。
【化1】


(一般式(I)中、Xは、O、S、又はNRを表し、Rは、水素原子、アルキル基、又はアシル基を表す。nは、0、又は1を表す。R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を示す。R、R、R、及びRは、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成していてもよい。R又はRと、R又はRと、が互いに連結して脂肪族環を形成してもよいが、芳香族環を形成することはない。)
【化2】


前記式(II)においてAは、炭素原子数4〜16を含む2価の芳香族縮合環基を表し、芳香族ヘテロ縮合環基であってもよい。Ar1は、下記(II−2)で示される基又は複素環基を表す。
21およびR22は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、またはアルケニル基を表し、R21とR22とが互いに結合して炭素原子数2〜8のアルキレン基、炭素原子数3〜9のオキサアルキレン基、又は、炭素原子数3〜9のアザアルキレン基を形成してもよい。R23およびR24は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アルケニル基、またはCOR10を表し、これらは互いに結合して炭素原子数2〜6のアルキレン基、炭素原子数2〜6のオキサアルキレン基、炭素原子数2〜6のチアアルキレン基又は炭素原子数2〜6のアザアルキレン基を形成してもよい。ここで、R10は、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基を表す。
【化3】


一般式(II−2)中、R25、R26、R27、R28およびR29はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、またはハロゲン原子を表す。また、R25〜R29は、一体となって芳香環を形成してもよい。
【請求項2】
請求項1に記載の光硬化性組成物を含むインク組成物。
【請求項3】
さらに着色剤を含有する請求項2に記載のインク組成物。
【請求項4】
インクジェット記録用である請求項2又は請求項3に記載のインク組成物。
【請求項5】
(a)被記録媒体上に、請求項4に記載のインク組成物を吐出する工程、及び(b)吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して、インク組成物を硬化する工程、を含むことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項6】
前記活性放射線が、発光ピーク波長が340nm〜370nmの範囲にあり、かつ、被記録媒体表面での最高照度が10mW/cm〜2,000mW/cmとなる紫外線を発生する発光ダイオードにより照射される紫外線である請求項5に記載のインクジェット記録方法。

【公開番号】特開2010−24291(P2010−24291A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185052(P2008−185052)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】