説明

光結合デバイス及び光結合デバイスの実装方法

【課題】光量の損失を抑えることができる光結合デバイス及び光結合デバイスの実装方法を提供すること。
【解決手段】光結合デバイス1は、光ファイバ11を保持する光ファイバホルダ10と、蛍光体31と光学特性整合部材32とからなる波長変換部材33を保持する波長変換部材ホルダ30とを接合する際に、光ファイバ11と波長変換部材33とを光結合する。光結合デバイス1は、光ファイバホルダ10と波長変換部材ホルダ30とが接合する際に、光結合する光ファイバ11の端面11bと波長変換部材33の端面32bとに形成され、光ファイバ11を透過し波長変換部材33に入射するレーザ光を遮光する異物3が光ファイバ11の光軸11a上と波長変換部材33の光軸33a上とから除去されている領域71と、光ファイバホルダ10と波長変換部材ホルダ30とが接合する際に、領域71の外側に形成され、領域71から除去された異物3が流動する領域72と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光結合デバイス及び光結合デバイスの実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、光ファイバ保持部材の端部に取り付け可能な新たな光学部品及びこの光学部品を用いる発光装置が開示されている。
【0003】
光学部品は、光ファイバと、光ファイバを持つ光ファイバ保持部材と、光変換部材と、光ファイバ保持部材と光変換部材とが挿入可能な内孔を有するキャップとを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−76798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に開示されている光学部品において、キャップの内孔における光ファイバの光軸上には、異物が残留してしまう。この異物は、光学部品が組み立てられる際に取り除くことができずに残留したものや、光ファイバと光変換部材とが光学的に結合(以下、光結合)する際に互いが擦り合うことで光ファイバと光変換部材との少なくとも一方から発生する削りかす等である。
【0006】
これら異物が光ファイバの端面や光変換部材の端面を含む光軸上に残留すると、異物が光を遮光し、光量の損失が発生する。
【0007】
そのため本発明は、これらの事情に鑑みてなされたものであり、光量の損失を抑えることができる光結合デバイス及び光結合デバイスの実装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は目的を達成するために、光ファイバを保持する光ファイバホルダと、蛍光体と前記蛍光体の光学特性を所望に整合する光学特性整合部材とからなる波長変換部材を保持する波長変換部材ホルダとを接合する際に、前記光ファイバと前記波長変換部材とを光結合する光結合デバイスであって、前記光ファイバホルダと前記波長変換部材ホルダとが接合する際に、光結合する前記光ファイバの端面と前記波長変換部材の端面とに形成され、前記光ファイバを透過し前記波長変換部材に入射するレーザ光を遮光する異物が前記光ファイバの光軸上と前記波長変換部材の光軸上とから除去されている第1の領域と、前記光ファイバホルダと前記波長変換部材ホルダとが接合する際に、前記第1の領域の外側に形成され、前記第1の領域から除去された前記異物が流動する第2の領域と、を具備することを特徴とする光結合デバイスを提供する。
【0009】
また本発明は目的を達成するために、光ファイバを保持する光ファイバホルダと、蛍光体と前記蛍光体の光学特性を所望に整合する光学特性整合部材とからなる波長変換部材を保持する波長変換部材ホルダとを接合する際に、前記光ファイバと前記波長変換部材とを光結合する光結合デバイスの実装方法であって、前記光ファイバの光軸と前記波長変換部材の光軸とを同一直線上に配置するように、前記波長変換部材ホルダと前記光ファイバホルダとを相対的に位置調整する位置調整工程と、前記光ファイバの端面と前記波長変換部材の端面とのいずれか一方を他方に向かって押し込むように、前記光ファイバホルダと前記波長変換部材ホルダとのいずれか一方を他方に向かって押圧する押圧工程と、前記光ファイバを透過し前記波長変換部材に入射するレーザ光を遮光する異物が前記光ファイバの光軸上と前記波長変換部材の光軸上とから除去されている第1の領域を押圧によって形成する第1の領域形成工程と、前記第1の領域から除去された前記異物が流動する第2の領域を前記第1の領域の外側に押圧によって形成する第2の領域形成工程と、を具備することを特徴とする光結合デバイスの実装方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光量の損失を抑えることができる光結合デバイス及び光結合デバイスの実装方法を提供することを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る光結合デバイスを組み立てる際の組み立て図である。
【図2】図2は、図1に示す光結合デバイスを組み立てる際の組み立て図である。
【図3】図3は、組み立てられた図1と図2とに示す光結合デバイスを示す図である。
【図4】図4は、第1の実施形態の第1の変形例における組み立てられた光結合デバイスを示す図である。
【図5】図5は、第1の実施形態の第2の変形例における組み立てられた光結合デバイスを示す図である。
【図6A】図6Aは、第1の実施形態の第3の変形例における光結合デバイスを組み立てる際の組み立て図である。
【図6B】図6Bは、第1の実施形態の第3の変形例における図6Aに示す光結合デバイスを組み立てる際の組み立て図である。
【図6C】図6Cは、第1の実施形態の第3の変形例における組み立てられた図6Aと図6Bとに光結合デバイスを示す図である。
【図7】図7は、本発明の第2の実施形態に係る光結合デバイスを組み立てる際の組み立て図である。
【図8】図8は、組み立てられた図7に示す光結合デバイスを示す図である。
【図9】図9は、本発明の第2の実施形態に係る組み立てられた光結合デバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1乃至図3を参照して第1の実施形態について説明する。
なお以下において、光ファイバ11の光軸11a方向をZ軸方向、Z軸方向に直交する方向をX軸方向、Z軸方向とX軸方向とに直交する方向をY軸方向と称する。なおZ軸方向は、レーザ光が出射する方向であり、レーザ光が光ファイバ11と蛍光体31(波長変換部材33)とを透過する方向である。なお光結合とは、光ファイバ11の光軸11aと波長変換部材33の光軸33aとが一致するように光ファイバホルダ10と波長変換部材ホルダ30とが位置調整された後に、光ファイバ11と波長変換部材33とが結合することを示す。
【0013】
図1に示すように、光結合デバイス1は、レーザ光を透過可能な光ファイバ11を保持する光ファイバホルダ10と、波長変換部材33を保持する波長変換部材ホルダ30と、光ファイバホルダ10と波長変換部材ホルダ30との間に介在し、光ファイバ11と波長変換部材33とが光結合するように、光ファイバホルダ10と波長変換部材ホルダ30とが相対的に位置調整された後に、硬化することで光ファイバホルダ10と波長変換部材ホルダ30とを接合する接合部材である接着剤50とを有している。
また図3に示すように、光結合デバイス1は、光ファイバホルダ10と波長変換部材ホルダ30とが接着剤50によって接合する際に、光結合する光ファイバ11の端面11bと波長変換部材33の端面32bとに形成され、光ファイバ11を透過し波長変換部材33に入射するレーザ光を遮光する異物3が光ファイバ11の光軸11a上と波長変換部材33の光軸33a上とから除去されている領域71と、光ファイバホルダ10と波長変換部材ホルダ30とが接着剤50によって接合する際に、領域71の外側に形成され、領域71から除去された異物3が流動する領域72とを有している。
【0014】
光ファイバホルダ10は、例えばセラミックやステンレスなどである。光ファイバホルダ10(フェルール)は、光ファイバ11を保持するための孔10aを有している。この孔10aの直径は、光ファイバ11の直径と略同一である。この光ファイバ11がこの孔10aに対して嵌合または接着することで、光ファイバホルダ10は、光ファイバ11を保持することとなる。光ファイバホルダ10は、孔10aを光ファイバ11と同数有している。1つの孔10aには、1本の光ファイバ11が嵌合または接着する。なお本実施形態では、図示の簡略化のために、1つの孔10aと1本の光ファイバ11を図示している。孔10aと光ファイバ11との数は、同数であればよく、限定はされない。
【0015】
なお孔10aから抜き出ている光ファイバ11の基端部11c側は、ジャケット12によって被覆されている。光ファイバ11の基端部11c側とジャケット12とは、接着剤51などによって光ファイバホルダ10の基端部と接着している。
【0016】
波長変換部材33は、蛍光体31と光学特性整合部材32とからなり、レーザ光の波長を所望に変換する。
【0017】
蛍光体31は、光ファイバ11から出射されたレーザ光を照射されることで所望の波長の光を励起する。光学特性整合部材32は、蛍光体31の光学特性(例えば屈折率)を所望に整合する。光学特性整合部材32は、例えば透明なシリコン樹脂部材である。レーザ光に対する光学特性整合部材32の透過率と屈折率とは、レーザ光に対する光ファイバ11の透過率と屈折率とに近似している。光学特性整合部材32は、光ファイバ11と蛍光体31との間隔を所望に保持している。本実施形態では、光学特性整合部材32は、蛍光体31とは別体である。
【0018】
波長変換部材ホルダ30は、例えば真鍮やセラミックやステンレスなどである。波長変換部材ホルダ30は、レーザ光の出射(進行)方向に向かって拡径する例えば円錐台形形状の中空部30aを有している。波長変換部材ホルダ30は、中空部30aにおいて、例えば光ファイバホルダ10(端面10c)から最も離れた位置などの所望な位置に蛍光体31を有している。中空部30aは、波長変換部材33の光軸33aを中心に配設されており、波長変換部材ホルダ30を貫通している。
【0019】
この中空部30aには、光学特性整合部材32が埋め込まれている。この場合、光学特性整合部材32は、図示しない接着剤によって、中空部30aに固定される。この接着剤は、中空部30aの先端部30e側の開口部30f(後述する端面32b側)以外の部分、例えば中空部30aの基端部30g側の開口部30hから流し込まれて、硬化する。
【0020】
図1乃至図3に示すように、光ファイバホルダ10と波長変換部材ホルダ30とは、互いに対向する端面10c,30cを有している。つまり光ファイバホルダ10は、波長変換部材ホルダ30の端面30cと対向する端面10cを有している。また波長変換部材ホルダ30は、光ファイバホルダ10の端面10cと対向する端面30cを有している。この端面10cと端面30cとの少なくとも一方は、異物3が後述する突起部90と端面11bとの間から端面10c側と端面30c側とに、押し出されるため、及び接着剤50における接着面を多く確保するためにテーパ形状を有している。
【0021】
なお端面10cと端面30cとは、領域72に含まれる。また端面10cには光ファイバ11の端面11bが含まれず、端面30cには光学特性整合部材32の端面32bが含まれない。
【0022】
次に光ファイバ11と光学特性整合部材32との関係について説明する。
図1に示すように、光ファイバ11と光学特性整合部材32とは、互いに対向する端面11b,32bを有している。つまり光ファイバ11は、光学特性整合部材32の端面32bと対向する端面11bを有している。光学特性整合部材32は、光ファイバ11の端面11bと対向する端面32bを有している。端面11bは光ファイバ11の光軸11a上に配置され、端面32bは波長変換部材33の光軸33a上に配置されているものとする。端面32bは、波長変換部材33の端面でもある。端面11bと端面32bとの少なくとも一方は、他方に向かって突起する突起部90となるように形成されている。突起部90は、図1乃至3に示すように、光ファイバ11の光軸11a上と波長変換部材33の光軸33a上とに配置されている。
【0023】
例えば図1乃至図3に示すように端面32bは、開口部30fから端面10cに向かって突起し、端面30cよりも突起している突起部90として形成されている。この場合、端面32b(突起部90)は、端面30cよりも突起している光学特性整合部材32の一部(透明な樹脂部材)であり、光学特性整合部材32と一体化しているものである。また突起部90の頂点91は、波長変換部材33の光軸33a上に配置される。突起部90は、開口部30fから突出している。
【0024】
また例えば図4に示すように、端面11bは、孔10aの先端部から端面30cに向かって突起し、端面10cよりも突起している突起部90として形成されている。この場合、端面11b(突起部90)は、端面10cよりも突起している光ファイバ11の一部であり、光ファイバ11と一体化しているものである。また突起部90の頂点91は、光ファイバ11の光軸11a上に配置される。
【0025】
このように突起部90は、波長変換部材ホルダ30の端面30cよりも突起するように波長変換部材33の一部である光学特性整合部材32の端面32bに形成され、及び/または光ファイバホルダ10の端面10cよりも突起するように光ファイバ11の端面11bに形成されている。
【0026】
なお本実施形態では、図1乃至図3に示すように、端面32bが突起部90として形成されているものとする。この場合、端面11bは、平面となっている。端面11b,32bと突起部90とは、領域71に含まれる。
【0027】
なお光ファイバホルダ10と波長変換部材ホルダ30とが接着剤50によって接合する前において、Z軸方向における突起部90と端面11bとの間、より詳細には、突起部90と端面11bとの間における光ファイバ11の光軸11a上と波長変換部材33の光軸33a上とには、レーザ光を遮光する異物3が残留している。この異物3は、光結合デバイス1が組み立てられる際に取り除くことができずに残留したものや、光ファイバ11と波長変換部材33とが光結合する際に光ファイバ11と波長変換部材33とが擦り合うことで光ファイバ11と波長変換部材33との少なくとも一方から発生する削りかす等である。なお突起部90が端面11b,32bに形成されている場合は、異物3はこれら突起部90の間に残留している。また突起部90が端面11bに形成されている場合は、異物3は突起部90と端面32bとの間における光ファイバ11の光軸11a上と波長変換部材33の光軸33a上とに残留している。
【0028】
光ファイバホルダ10と波長変換部材ホルダ30とが接合する際に、突起部90は、光ファイバ11の光軸11aと波長変換部材33の光軸33aとに沿って、例えば図2に示すように端面11bを押し込む、または端面11bによって押し込まれることで、光ファイバ11の光軸11a上と波長変換部材33の光軸33a上とにおける異物3を、光ファイバ11の光軸11a上と波長変換部材33の光軸33a上とから除去し、図2と図3とに示すように光ファイバホルダ10と波長変換部材ホルダ30とが接合する際に領域71と領域72とを形成する。
【0029】
なお端面32bを含む突起部90の先端部92は曲面を有しており、図2に示すように、先端部92を含む突起部90は押し込みまたは押し込まれた際に光ファイバ11の光軸11a上と波長変換部材33の光軸33a上との外側(端面10c側と端面30c側)に向かって広がるように変形する。そのため先端部92は、例えば端面11bを押圧することで、曲面から端面11bと同様に平面となるように変形し、端面11bと密着する。
【0030】
図2に示すように先端部92が変形によって端面10c側と端面30c側とに向かって広がることで、突起部90は、光ファイバ11の光軸11a上と波長変換部材33の光軸33a上とから、端面10c側と端面30c側とに、異物3を押し出し、異物3をZ軸方向における突起部90と端面11bとの間から除去する。同時に、突起部90は、図3に示すように領域71,72を形成する。
【0031】
なお図4に示すように端面11bが突起部90として形成されている場合、突起部90は、押し込みまたは押し込まれる際に異物3が摺動する先鋭な先端部92を有している。突起部90は、先鋭な先端部92に対して異物3を摺動させて、光ファイバ11の光軸11a上と波長変換部材33の光軸33a上とから、端面10c側と端面30c側とに異物3を押し出し、異物3をZ軸方向における突起部90と端面32bとの間から除去する。同時に、突起部90は、領域71,72を形成する。なお先端部92は、異物3を摺動できれば、先鋭でなくても、光軸11aに対して所望な角度を有していればよい。
【0032】
接着剤50は、UV光を照射されることで硬化するUV硬化型のエポキシ系接着剤である。この接着剤50は、端面11bを含む端面10cと突起部90を含む端面30cとの間に介在し、アクティブアライメントが行われ(光ファイバホルダ10と波長変換部材ホルダ30とが所望の相対位置に調整され、光ファイバ11と蛍光体31とが光結合し)た後に、UV光を照射されることで硬化する。接着剤50は、硬化によって端面10cと端面30cとを接着し、光ファイバホルダ10と波長変換部材ホルダ30とを接合する。そのため端面10cと端面30cとは、接着面(接合面)となる。レーザ光に対する接着剤50の透過率と屈折率は、レーザ光に対する光ファイバ11の透過率と屈折率と近似している。
【0033】
また硬化する前の接着剤50は、自身の粘性などによって、突起部90が異物3を押し出すことを補助する。
【0034】
なお上述した領域71は、異物3がZ軸方向における突起部90と端面11bとの間(光ファイバ11の光軸11a上と波長変換部材33の光軸33a上と)から除去された状態で光ファイバ11と蛍光体31とが光結合するためのスペースでもある。
また上述した領域72は、領域71の外側、つまり端面10c側と端面30c側とに確保(形成)され、領域71から除去された(押し出された)異物3が残留するスペースである。
【0035】
次に本実施形態における光結合デバイス1の実装方法について説明する。
図1に示すように、蛍光体31が中空部30aに配設された状態で、光学特性整合部材32は、接着剤によって、中空部30aに固定される。このとき、突起部90(端面32b)は、開口部30fから端面10cに向かって突起し、端面30cよりも突起している。また頂点91は、波長変換部材33の光軸33a上に配置される。この接着剤は、例えば中空部30aの基端部30g側の開口部30hから流し込まれ硬化する(Step1)。
【0036】
図1に示すように、接着剤50は、端面11bを含む端面10cに塗布される(Step2)。
【0037】
光ファイバホルダ10と波長変換部材ホルダ30とは、それぞれ図示しない固定治具に配設される(Step3)。
【0038】
レーザ光は、図示しない光源から出射され、光ファイバ11を透過する。光ファイバ11を透過したレーザ光は、波長変換部材ホルダ30に入射され、光学特性整合部材32を介して蛍光体31を照射する。蛍光体31は、レーザ光を照射されることで所望の波長の光を励起する(Step4)。
【0039】
蛍光体31におけるレーザ光の光量は、図示しない測定部によって測定される(Step5)。
【0040】
なおStep1乃至5において、光ファイバ11と蛍光体31との間隔が光学特性整合部材32によって所望に保持されているために、所望の光量が光ファイバ11から蛍光体31に照射され、所望の光量が蛍光体31から確保される。
【0041】
光ファイバホルダ10と波長変換部材ホルダ30とのいずれか一方は、固定冶具によって位置を固定される(Step6)。以下において、光ファイバホルダ10が固定されていると仮定する。
【0042】
図1に示すように、光ファイバ11の光軸11aと波長変換部材33の光軸33aとが同一直線上に配置され、測定部によって測定されるレーザ光の光量が最大となるように、波長変換部材ホルダ30は、固定装置によって光ファイバホルダ10に対して相対的に位置調整される(Step7、位置調整工程)。
【0043】
なおこのとき、図1に示すように、Z軸方向における突起部90と端面11bとの間、より詳細には、突起部90と端面11bとの間における光ファイバ11の光軸11a上と波長変換部材33の光軸33a上とには、レーザ光を遮光する異物3が残留している。
【0044】
図2に示すように、例えば突起部90が端面11bを押し込むように、波長変換部材ホルダ30は、固定装置によって光ファイバホルダ10に向かって移動し、光ファイバホルダ10を押圧する(Step8、押圧工程)。
【0045】
突起部90において、先端部92(端面32b)は、端面11bを押圧することで、曲面から端面11bと同様に平面となるように変形する(Step9)。
【0046】
先端部92(端面32b)は、変形によって端面10c側と端面30c側とに向かって広がる。これにより突起部90は、Z軸方向における突起部90と端面11bとの間から、端面10c側と端面30c側とに、異物3を押し出し、異物3を突起部90と端面11bとの間から除去する(Step10)。
【0047】
なおStep9,10において、図3に示すように先端部92(端面32b)は、端面11bを押圧することで、端面11bと同様に平面に変形し、端面11bと密着することとなる。また頂点91が波長変換部材33の光軸33a上に配置されることで、Step9,10において、先端部92は光軸33aから端面10c,30c側に均等に広がり、異物3はムラなく押し出される。
【0048】
また端面10cと端面30cとはテーパ形状であるため、Step10において異物3はテーパに沿って除去される。このとき硬化する前の接着剤50は、自身の粘性などによって、先端部92が異物3を押し出すことを補助する。
【0049】
また図2と図3とに示すように、Step10と同時に、異物3がZ軸方向における突起部90と端面11bとの間から除去されている領域71が押圧によって形成される。つまり光ファイバホルダ10と波長変換部材ホルダ30とが接合する際に、レーザ光を遮光する異物3がZ軸方向における突起部90と端面11bとの間から除去された状態で光ファイバ11と蛍光体31とが光結合するためのスペースである領域71が、突起部90によって、Z軸方向における端面11bと突起部90(端面32b)との間に確保(形成)される(Step11、領域71形成工程)。
【0050】
またStep10,11と同時に、押圧によって領域71の外側に領域71から図2と図3とに示すように、除去された異物3が流動する領域72が形成される。つまり光ファイバホルダ10と波長変換部材ホルダ30とが接合する際に、領域71から除去された(押し出された)異物3が残留するスペースである領域72が、領域71の外側、つまり端面10c側と端面30c側とに確保(形成)される(Step12、領域72形成工程)。
【0051】
この状態で接着剤50は、図示しないUV照射装置から照射されるUV光を、所望な時間照射され、図3に示すように、硬化し、光ファイバホルダ10と波長変換部材ホルダ30とを接合する。なお接着剤50は、端面10cと端面30cとがテーパ形状であるために、端面10cと端面30cが平面である場合に比べて光ファイバホルダ10と波長変換部材ホルダ30とにおいて多く接着する(Step13)。
【0052】
これにより光ファイバホルダ10と波長変換部材ホルダ30との相対位置が調整され、光ファイバ11の光軸11aと波長変換部材33の光軸33aとが同一直線上に配置され、異物3が除去され、この状態で光ファイバホルダ10と波長変換部材ホルダ30とが接着剤50によって接合され、光ファイバ11と蛍光体31とが光結合し、アクティブアライメントが終了する。このように光結合デバイス1は、実装される。
【0053】
このように本実施形態では、光ファイバホルダ10と波長変換部材ホルダ30とを接合する際に、異物3がZ軸方向における突起部90と端面11bとの間(突起部90と端面11bとの間における光ファイバ11の光軸11a上と波長変換部材33の光軸33a上)から除去された状態で光ファイバ11と蛍光体31とが光結合するためのスペースである領域71と、領域71から除去された(押し出された)異物3が残留するスペースである領域72とを確保(形成)することで、光量の損失を抑えることができる。
【0054】
また本実施形態では、光ファイバホルダ10と波長変換部材ホルダ30とを接合する際に、変形可能な突起部90(先端部92)と端面11bとを互いに押圧し、Z軸方向における突起部90と端面11bとの間における異物3を端面10c側と端面30c側とに押し出すことができる。これにより本実施形態では、端面11bを傷つけることなく、Z軸方向における突起部90と端面11bとの間に残留する異物3を、実装時にZ軸方向における突起部90と端面11bとの間から効率よく除去でき、領域71,72を形成することができる。
【0055】
また本実施形態では、突起部90を端面10c側と端面30c側とに向かって広げるように変形させることで、容易に異物3を押し出しでき、異物3をZ軸方向における突起部90と端面11bとの間から除去することができる。
また本実施形態では、図4に示すように先端部92を先鋭としても、上記同様に、容易に異物3を押し出しでき、異物3をZ軸方向における突起部90と端面11bとの間から除去することができる。なおこの場合は、端面32bがシリコン樹脂部材となっているために、先端部92が先鋭となっていても、端面32bの傷つきは防止される。
【0056】
また本実施形態では、光学特性整合部材32によって光ファイバ11と蛍光体31との間隔を所望に保持できるために、所望の光量を光ファイバ11から蛍光体31に照射でき、蛍光体31から所望の光量を確保することできる。
【0057】
また本実施形態では、異物3を除去するために、先端部92(端面32b)を端面11bに押圧させることで、先端部92を端面11bと同様に平面に変形でき、先端部92を端面11bに密着できる。これにより本実施形態では、端面11bと先端部92とにおけるレーザ光の漏れを防止でき、光量の損失を抑えることができる。
【0058】
また本実施形態では、端面10cと端面30cとの少なくとも一方をテーパ形状とすることで、異物3を容易に除去することができ、また光ファイバホルダ10と波長変換部材ホルダ30とにおける接着剤50のための接着面を多く確保することができ、結果的に光ファイバホルダ10と波長変換部材ホルダ30との接合強度を高めることができる。
【0059】
また本実施形態では、頂点91を波長変換部材33の光軸33a上に配置することで、
先端部92を光軸33aから端面10c,30c側に均等に広げることができ、異物3を容易に端面10c,30c側にムラなく押し出すことができる。
【0060】
また本実施形態では、接着剤50によって、異物3を容易に端面10c,30c側に押し出すことができる。
なお本実施形態では、接着剤50をUV光によって硬化させているが、熱によって硬化させてもよい。この場合、光結合デバイス1が熱雰囲気中に配設されることで、接着剤50は硬化し光ファイバホルダ10と波長変換部材ホルダ30とを接合する。
【0061】
また本実施形態では、蛍光体31と光学特性整合部材32とを別体としているが、これに限定する必要はない。図5に示すように、蛍光体31は、光学特性整合部材32の成分を有していてもよい。この場合、蛍光体31の先端部が突起部90となり、突起部90は蛍光体31の一部となる。
【0062】
また本実施形態では、図6Aと図6Bと図6Cとに示すように、光ファイバホルダ10と波長変換部材ホルダ30との間に、異物流動促進部材93が介在してもよい。異物流動促進部材93は、突起部90が異物3をZ軸方向における突起部90と端面11bとの間、より詳細には、突起部90と端面11bとの間における光ファイバ11の光軸11a上と波長変換部材33の光軸33a上とから端面10c,30c側に押し出すことを促進し、光ファイバ11の光軸11a上と波長変換部材33の光軸33a上とから端面10c,30c側への異物3の流動を促進する。この異物流動促進部材93は、光ファイバホルダ10と波長変換部材ホルダ30とを接合する。異物流動促進部材93は、異物3の流動を促進するために、少なくともZ軸方向における突起部90と端面11bとの間、より詳細には、突起部90と端面11bとの間における光ファイバ11の光軸11a上と波長変換部材33の光軸33a上とに配設されている。
【0063】
本実施形態では、図6Cに示すように、接着剤50は、異物流動促進部材93を覆うように配設されている。異物流動促進部材93の粘度は、接着剤50の粘度に比べて低い。レーザ光に対する異物流動促進部材93の透過率と屈折率とは、レーザ光に対する光ファイバ11と蛍光体31との透過率と屈折率とに近似している。異物流動促進部材93は、例えばマッチングオイルなどである。
【0064】
このように本実施形態では、異物流動促進部材93によって異物3をZ軸方向における突起部90と端面11bとの間から端面10c,30c側に容易に押し出すことができ、異物3を除去することができ、領域71と領域72とを容易に確保することができ、光量の損失をより抑えることができる。
【0065】
次に、本発明に係る第2の実施形態について図7と図8とを参照して説明する。なお、第1の実施形態と同一の構成については、第1の実施形態と同一の参照符号を付すことにより説明を省略する。
本実施形態における端面10cと端面30cとの少なくとも一方は、異物3を収容可能な溝30jを有している。溝30jの領域71(光軸11a,31a)側に配設されている壁面30kは、テーパ形状を有している。端面10cと端面30cとにおける溝30jは、X軸方向とY軸方向とにおいて、ずれて配設されていてもよいし、Z軸方向に同一直線上に配設されていてもよい。
【0066】
本実施形態では、領域72に溝30jを配設することで、異物3を収容でき、異物3をより確実に除去することができる。これにより本実施形態では、実装時にZ軸方向における突起部90と端面11bとの間に残留する異物3をより効率的に除去でき、領域71と領域72とを容易に確保することができ、光量の損失をより抑えることができる。
【0067】
また本実施形態では、溝30jにテーパ形状の壁面30kを配設することで、異物3をより容易に溝30jに収容することができる。
【0068】
次に、本発明に係る第3の実施形態について図9を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同一の構成については、第1の実施形態と同一の参照符号を付すことにより説明を省略する。
本実施形態の端面11bと端面32bとには突起部90が形成されておらず、端面11bと端面32bとは平面となっている。そして本実施形態の端面11bと端面32bとの間には、光ファイバ11の光軸11a上と波長変換部材33の光軸33a上とに配置されるように中間部材95が介在している。光ファイバホルダ10と波長変換部材ホルダ30とが接合する際に、中間部材95は、押圧されることで、光ファイバ11の光軸11a上と波長変換部材33の光軸33a上との外側に向かって広がるように変形可能である。中間部材95は、この変形によって、Z軸方向における突起部90と端面11bとの間、より詳細には、突起部90と端面11bとの間における光ファイバ11の光軸11a上と波長変換部材33の光軸33a上とから端面10c,30c側に向けて、異物3を押し出して除去し、領域71と領域72とを形成する。
【0069】
中間部材95は、端面11bと端面32bとを傷つけることを防止するために、端面11bと端面32bとの当接面に曲面を有している。中間部材95は、例えば透明なシリコン樹脂などである。レーザ光に対する中間部材95の透過率と屈折率は、レーザ光に対する光ファイバ11の透過率と屈折率と近似している。
【0070】
本実施形態では、中間部材95によって、光ファイバ11と波長変換部材33と(端面11bと端面32b)が共にガラスのような硬質部材であっても、光ファイバ11と波長変換部材33とを傷つけることなく、異物3を除去することができ、光量の損失を抑えることができる。
【0071】
また本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。
【符号の説明】
【0072】
1…光結合デバイス、3…異物、10…光ファイバホルダ、10a…孔、10c…端面、11…光ファイバ、11a…光軸、11b…端面、30…波長変換部材ホルダ、31…蛍光体、32b…端面、32…光学特性整合部材、33…波長変換部材、33a…光軸、50…接着剤、71…領域、72…領域、90…突起部、91…頂点、92…先端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを保持する光ファイバホルダと、蛍光体と前記蛍光体の光学特性を所望に整合する光学特性整合部材とからなり、前記光ファイバを透過し自身に入射するレーザ光の波長を所望に変換する波長変換部材を保持する波長変換部材ホルダとを接合する際に、前記光ファイバと前記波長変換部材とを光結合する光結合デバイスであって、
前記光ファイバホルダと前記波長変換部材ホルダとが接合する際に、光結合する前記光ファイバの端面と前記波長変換部材の端面とに形成され、前記レーザ光を遮光する異物が前記光ファイバの光軸上と前記波長変換部材の光軸上とから除去されている第1の領域と、
前記光ファイバホルダと前記波長変換部材ホルダとが接合する際に、前記第1の領域の外側に形成され、前記第1の領域から除去された前記異物が流動する第2の領域と、
を具備することを特徴とする光結合デバイス。
【請求項2】
前記光ファイバホルダと前記波長変換部材ホルダとの間に介在し、前記光ファイバと前記波長変換部材とが光結合するように、前記光ファイバホルダと前記波長変換部材ホルダとが相対的に位置調整された後に、硬化することで前記光ファイバホルダと前記波長変換部材ホルダとを接合する接合材と、
をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の光結合デバイス。
【請求項3】
前記光ファイバの光軸上と前記波長変換部材の光軸上とに配置され、前記光ファイバホルダと前記波長変換部材ホルダとが接合する際に、前記光ファイバの光軸と前記波長変換部材の光軸とに沿って押し込むまたは押し込まれることで、前記光ファイバの光軸上と前記波長変換部材の光軸上とにおける前記異物を、前記光ファイバの光軸上と前記波長変換部材の光軸上とから除去し、前記第1の領域と前記第2の領域とを形成する突起部と、
をさらに具備することを特徴とする請求項2に記載の光結合デバイス。
【請求項4】
前記突起部は、前記波長変換部材ホルダの端面よりも突起するように前記波長変換部材の端面に形成され、及び/または前記光ファイバホルダの端面よりも突起するように前記光ファイバの端面に形成されている請求項3に記載の光結合デバイス。
【請求項5】
前記突起部の先端部は曲面を有しており、前記先端部を含む前記突起部は押し込みまたは押し込まれた際に前記光ファイバの光軸上と前記波長変換部材の光軸上との外側に向かって広がるように変形する請求項4に記載の光結合デバイス。
【請求項6】
前記突起部は、押し込みまたは押し込まれる際に前記異物が摺動する先鋭な先端部を有している請求項4に記載の光結合デバイス。
【請求項7】
前記光ファイバの光軸上と前記波長変換部材の光軸上とに配置されるように前記光ファイバの端面と前記波長変換部材の端面との間に介在し、前記光ファイバホルダと前記波長変換部材ホルダとが接合する際に、押圧されることで前記光ファイバの光軸上と前記波長変換部材の光軸上との外側に向かって広がるように変形可能で、前記光ファイバの光軸上と前記波長変換部材の光軸上とにおける前記異物を、変形によって、前記光ファイバの光軸上と前記波長変換部材の光軸上とから除去し、前記第1の領域と前記第2の領域とを形成する中間部材と、
をさらに具備することを特徴とする請求項2に記載の光結合デバイス。
【請求項8】
前記光学特性整合部材は、前記光ファイバと前記蛍光体との間隔を所望に保持することを特徴とする請求項3乃至7のいずれかに記載の光結合デバイス。
【請求項9】
前記光ファイバホルダと前記波長変換部材ホルダとは、互いに対向する端面を有し、
前記光ファイバホルダの端面と前記波長変換部材ホルダの端面との少なくとも一方は、テーパ形状を有していることを特徴とする請求項3乃至8のいずれかに記載の光結合デバイス。
【請求項10】
少なくとも前記光ファイバの端面と前記波長変換部材の端面との間に介在し、前記突起部が前記異物を前記光ファイバの光軸上と前記波長変換部材の光軸上とから押し出すことを促進する異物流動促進部材と、
をさらに具備することを特徴とする請求項3乃至9のいずれかに記載の光結合デバイス。
【請求項11】
前記光ファイバホルダと前記波長変換部材ホルダとは、互いに対向する端面を有し、
前記光ファイバホルダの端面と前記波長変換部材ホルダの端面との少なくとも一方は、溝を有していることを特徴とする請求項3乃至10のいずれかに記載の光結合デバイス。
【請求項12】
光ファイバを保持する光ファイバホルダと、蛍光体と前記蛍光体の光学特性を所望に整合する光学特性整合部材とからなり、前記光ファイバを透過し自身に入射するレーザ光の波長を所望に変換する波長変換部材を保持する波長変換部材ホルダとを接合する際に、前記光ファイバと前記波長変換部材とを光結合する光結合デバイスの実装方法であって、
前記光ファイバの光軸と前記波長変換部材の光軸とを同一直線上に配置するように、前記波長変換部材ホルダと前記光ファイバホルダとを相対的に位置調整する位置調整工程と、
前記光ファイバの端面と前記波長変換部材の端面とのいずれか一方を他方に向かって押し込むように、前記光ファイバホルダと前記波長変換部材ホルダとのいずれか一方を他方に向かって押圧する押圧工程と、
前記レーザ光を遮光する異物が前記光ファイバの光軸上と前記波長変換部材の光軸上とから除去されている第1の領域を押圧によって形成する第1の領域形成工程と、
前記第1の領域から除去された前記異物が流動する第2の領域を前記第1の領域の外側に押圧によって形成する第2の領域形成工程と、
を具備することを特徴とする光結合デバイスの実装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−253015(P2011−253015A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126187(P2010−126187)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】