説明

光給電システムおよび光給電方法

【課題】 計測装置の構成を簡略化し、かつ、コストを抑制する光給電システムおよび光給電方法を提供する。
【解決手段】 給電装置4は、光強度が周期的に変化する給電光を発生し、伝送路2を介して受電装置10へ送出する。パルス発生部6は所定の周期およびデューティ比をもつパルス電力を発生し、光源8はパルス電力を受けてパルス状の給電光を発生する。受電装置10は、給電光を電力とクロック信号とに変換して計測装置100へ出力する。分配部12は、給電光を所定の比率で2つに分配する。光電気変換部14は、給電光に含まれる光エネルギーを電気エネルギーに変換して電力として出力する。光電気変換部16は、給電光に含まれる周期成分に応じて、クロック信号を発生して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は光給電システムおよび光給電方法に関し、特に電力に加えて、クロック信号を出力する光給電システムおよび光給電方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、たとえば、産業プラントなどにおいて、複数の計測装置において計測されたデータを収集して、集中的に監視する遠隔監視システムが実用化されている。このような遠隔監視システムでは、分散して配置される多くの計測装置に対して、計測およびその計測データを送信するための電力が必要であるが、すべての計測装置の設置場所において電源を確保することは容易ではない。そのため、データ収集を行なう監視センタから各計測装置に対して、電力ケーブルを介して電力を供給するように構成される場合もある。
【0003】
しかしながら、電力ケーブルを介して電力を供給する場合には、計測装置と監視センタとの距離が長くなるにつれて電圧降下の影響が大きくなるため、よりケーブル径の大きい電力ケーブルが必要となり、コストおよび作業時間が増加する。さらに、可燃性ガスなどが存在する防爆対策が必要な環境では、電気火花により爆発の危険性もあるため、電力ケーブルを容易に敷設することもできない。
【0004】
そこで、監視センタから光ファイバを介して光エネルギーを送出し、その光エネルギーを電気エネルギーに変換して各計測装置へ供給する光給電方式が考案されている。
【0005】
たとえば、特開平8−107386号公報(特許文献1)には、双方向通信を行なう光信号伝送装置において、一方の光伝送装置から他方の光伝送装置へ光により電力を伝送する発明が開示されている。また、特開平8−321810号公報(特許文献2)には、特許文献1に開示される光信号伝送装置において、受信した光エネルギーを分配受信して、光電気変換効率を向上させる発明が開示されている。さらに、特公平8−014501号公報(特許文献3)には、光エネルギーから変換された電気エネルギーの量を検出し、その検出量のデータを返信することで、観測点への電力供給量を制御する発明が開示されている。
【特許文献1】特開平8−107386号公報
【特許文献2】特開平8−321810号公報
【特許文献3】特公平8−014501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
各計測装置は、信号処理を行なう演算装置や、画像の撮影を行なうためのカメラモジュールなどを備える。このような演算装置やカメラモジュールなどは、電力に加えて、クロック信号を受けて駆動される。そのため、各計測装置では、クロック信号の発生手段を備える必要があった。
【0007】
遠隔監視システムでは、多くの計測装置からデータを収集するように構成されることが多く、システム全体のコストを抑制するためには、各計測装置における構成を可能な限り簡素化することが望ましい。しかしながら、上述のように、各計測装置においてクロック信号を生成する必要があったため、各計測装置の構成が複雑化し、さらに、コストも増加するという問題があった。
【0008】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、計測装置の構成を簡略化し、かつ、コストを抑制する光給電システムおよび光給電方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明によれば、伝送路と、伝送路を介して、光強度が周期的に変化する給電光を送出する給電装置と、給電装置から送出された給電光の光エネルギーを受けて電力を出力するとともに、給電光の周期成分からクロック信号を出力する受電装置とを備える、光給電システムである。
【0010】
好ましくは、受電装置は、給電光を所定の比率で第1および第2の光信号に分配する分配部と、分配部により分配された第1の光信号を電力に変換する第1の光電気変換部と、分配部により分配された第2の光信号の周期成分に基づいて、クロック信号に変換する第2の光電気変換部とを含む。
【0011】
好ましくは、受電装置は、給電光を周期的に変化する電気信号に変換する光電気変換部と、光電気変換部により変換された電気信号から電力を抽出する第1の抽出手段と、光電気変換部により変換された電気信号からクロック信号を抽出する第2の抽出手段とを含む。
【0012】
好ましくは、第1の抽出手段は、電気信号を平滑化して電力を生成する平滑部を含む。
好ましくは、第2の抽出手段は、電気信号に含まれる周期成分をクロック信号に整形する波形整形部とを含む。
【0013】
好ましくは、受電装置は、給電光を周期的に変化する電気信号に変換する光電気変換部と、光電気変換部により変換された電気信号を平滑化して電力として出力する平滑部と、光電気変換部により変換された電気信号の周期成分からクロック信号を取出す取出部とを含む。
【0014】
好ましくは、給電装置は、パルス状の光強度をもつ給電光を送出する。
好ましくは、複数の受電装置をさらに備え、給電装置は、複数の受電装置へ給電光を送出する。
【0015】
また、この発明によれば、給電装置から給電光を送出し、給電装置と伝送路を介して接続された受電装置から電力とクロック信号とを外部へ出力する光給電方法であって、給電装置が周期的に変化する光強度の給電光を送出するステップと、受電装置が、給電装置から送出された給電光の光エネルギーを受けて電力を出力するとともに、給電光の周期成分からクロック信号を出力するステップとを含む。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、給電装置から光強度が周期的に変化する給電光を供給し、受電装置において、その給電光の光エネルギーを受けて電力を出力するとともに、その周期成分からクロック信号を出力する。そのため、計測装置において、駆動に必要なクロック信号の発生手段が不要となり、構成を簡略化できる。さらに、構成を簡略化することにより、そのコストを抑制できる。よって、計測装置の構成を簡略化し、かつ、コストを抑制する光給電システムおよび光給電方法を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0018】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1に従う光給電システム101の概略構成図である。
【0019】
図1を参照して、光給電システム101は、計測装置100と接続され、計測装置100へ電力とクロック信号とを供給する。そして、光給電システム101は、給電装置4と、受電装置10と、伝送路2とからなる。
【0020】
給電装置4は、光強度が周期的に変化する給電光を発生し、伝送路2を介して受電装置10へ送出する。そして、給電装置4は、パルス発生部6と、光源8とからなる。
【0021】
パルス発生部6は、所定の周期およびデューティ比をもつパルス電力を発生し、光源8へ与える。そして、パルス発生部6が発生するパルス電力の周期は、計測装置100へ出力されるクロック信号と一致するように決定され、パルス電力のデューティ比は、計測装置100へ出力される電力に応じて決定される。
【0022】
光源8は、たとえば、レーザダイオード(LD:Laser Diode)などのレーザ発振器で構成され、パルス発生部6から受けたパルス電力によりパルス状の給電光(レーザ光)を発生する。
【0023】
伝送路2は、光ファイバで構成され、給電装置4と受電装置10とを接続し、給電装置4から送出された給電光を受電装置10へ伝搬させる。
【0024】
受電装置10は、給電装置4から給電光を受け、電力とクロック信号とに変換し、計測装置100へ出力する。そして、受電装置10は、分配部12と、光電気変換部(O/E)14および16とからなる。
【0025】
分配部12は、伝送路2と接続され、伝送路2を介して受けた給電光を所定の比率で2つに分配し、それぞれ光電気変換部14および16へ出力する。
【0026】
光電気変換部14は、たとえば、フォトダイオード(PD:Photo Diode)などの受光素子からなり、分配部12から受けた給電光に含まれる光エネルギーを電気エネルギーに変換し、電力として出力する。
【0027】
光電気変換部16は、たとえば、フォトダイオードなどの受光素子からなり、分配部12から受けた給電光に含まれる周期成分に応じて、クロック信号を発生して出力する。
【0028】
計測装置100は、計測センサ、カメラモジュールおよび演算装置などから構成され、受電装置10から出力される電力を受けて、温度・圧力・電圧・電流などの物理量を計測し、または、周囲の画像または映像を撮影する。さらに、計測装置100は、図示しないデータ送信手段を用いて、監視センタへそのデータを送信する。
【0029】
カメラモジュールを構成するCCD(Charge Coupled Device)や演算装置を構成するCPU(Central Processing Unit)などは、クロック信号に従い処理を実行するので、計測装置100は、受電装置10から出力されるクロック信号を受けて、カメラモジュールや演算装置を駆動する。
【0030】
また、光給電システム101から出力されるクロック信号を受け、計測装置100に含まれる複数の装置、たとえば、記憶部などの周辺装置および計測部は、互いに同期した処理を実行することができる。さらに、光給電システム101から出力されるクロック信号を受け、複数の計測装置100間は、互いに同期した処理を実行することができる。
【0031】
なお、計測装置100は、光給電システム101から出力されるクロック信号を受け、収集する計測データにタイムスタンプ(時間情報)を付加することもできる。
【0032】
上述のように、光給電システム101は、光強度が周期的に変化する給電光を介して、計測装置100へ電力とクロック信号とを供給する。
【0033】
次に、給電装置4および伝送路2についてより詳細に説明する。一般的に、伝送路2を伝搬する給電光の光強度が所定のレベルを超えると、光学非線形効果が生じて給電光の光強度が不安定となり、またはその光強度が大幅に低下する。そのため、給電装置4は、受電装置10へ安定した十分な光エネルギーを送ることができなくなる。
【0034】
この光学非線形効果は、給電光全体の光強度ではなく、波長領域における各光強度が所定のレベルを超えた場合に生じる。すなわち、給電光に含まれるそれぞれの波長成分が所定のレベル以下であれば、光学非線形効果は生じない。したがって、光学非線形効果の発生を回避し、かつ、送出する光エネルギーを増大させるためには、給電光に含まれる波長帯域幅(スペクトル)を拡大させる必要がある。
【0035】
そこで、給電装置4は、パルス状の光強度をもつ給電光を発生し、給電光に含まれる波長帯域幅を拡大する。なお、パルス幅が短くなるほど、波長帯域幅は拡大するので、光学非線形効果を抑制するためには、給電光のパルス幅を短くする方が望ましいが、計測装置100へ出力されるクロック信号の周期に応じて給電光の周期が予め決定されるので、パルス幅を短くすると、デューティ比が低下する。したがって、デューティ比の低下による送出電力の減少と、光学非線形効果による送出電力の減少とのトレードオフに基づいて、最適なパルス幅(デューティ比)を決定する。
【0036】
次に、受電装置10についてより詳細に説明する。上述したように、光電気変換部14は、給電光に含まれる光エネルギーを電気エネルギーに変換する機能をもつため、給電光に含まれる周期成分にかかわらず、出力電力の電圧または電流が一定となるように変換を行なうことが望ましい。一方、光電気変換部16は、給電光に含まれる周期成分に基づいて、急峻なクロック信号となるように変換を行なうことが望ましい。
【0037】
そのため、光電気変換部14は、光電気変換部16と比較して、光エネルギーを効率よく電気エネルギーに変換でき、かつ、光強度の変化に対する応答速度が遅い受光素子から構成される。また、光電気変換部16は、光電気変換部14と比較して、光強度の変化に対する応答速度が早い受光素子から構成される。
【0038】
また、光電気変換部16から出力されるクロック信号は、トリガー信号として用いられるため、その電力は少なくて済む。そのため、分配部12は、伝送路2を介して受けた給電光のうち分配率rを乗じた給電光を光電気変換部14へ出力し、残余の給電光を光電気変換部16へ出力する。すなわち、分配部12は、給電装置4から送出された給電光の光エネルギーPを受け、そのうち分配率rを乗じた光エネルギーrPを光電気変換部14へ与え、残余の光エネルギー(1−r)Pを光電気変換部16へ与える。そして、分配率rは、計測装置100の構成に応じて決定され、たとえば、分配率r=0.99などに設定される。
【0039】
なお、実施の形態1においては、光電気変換部14が第1の光電気変換部を実現し、光電気変換部16が第2の光電気変換部を実現する。
【0040】
この発明の実施の形態1によれば、給電装置から光強度が周期的に変化する給電光を供給し、受電装置において、その給電光の光エネルギーを受けて電力を出力するとともに、その周期成分からクロック信号を出力する。そのため、計測装置において、駆動に必要なクロック信号の発生手段が不要となり、構成の簡略化を実現できる。さらに、構成を簡略化することにより、そのコストの抑制を実現できる。
【0041】
また、この発明の実施の形態1によれば、給電装置からパルス状の給電光が送出されるので、給電光の波長帯域幅(スペクトル)が拡大する。そのため、給電光の光エネルギーを増大した場合においても、各波長における光強度の増加量が緩和されるため、光学非線形効果が生じにくい。よって、より多くの光エネルギー、すなわちより多くの電力供給を実現できる。
【0042】
[実施の形態2]
上述の実施の形態1においては、それぞれ電力およびクロック信号を生成する2つの光電気変換部で構成される受電装置について説明した。一方、実施の形態2においては、1つの光電気変換部で構成される受電装置について説明する。
【0043】
図2は、この発明の実施の形態2に従う光給電システム102の概略構成図である。
図2を参照して、光給電システム102は、計測装置100と接続され、計測装置100へ電力とクロック信号とを供給する。そして、光給電システム102は、給電装置4と、受電装置20と、伝送路2とからなる。
【0044】
給電装置4および伝送路2については、実施の形態1と同様であるので詳細な説明は繰返さない。
【0045】
受電装置20は、光電気変換部(O/E)18と、平滑部22と、波形整形部24とからなる。
【0046】
光電気変換部18は、たとえば、フォトダイオードなどの受光素子からなり、伝送路2を介して受けた給電光をそのパルス状の光強度に応じた電気信号に変換する。
【0047】
平滑部22は、たとえば、コンデンサなどの蓄電素子からなり、光電気変換部18から受けた電気信号の周期成分を除いて平滑化し、一定の電圧をもつ電力として計測装置100へ出力する。
【0048】
波形整形部24は、たとえば、帯域通過フィルタや高域通過フィルタなどの周波数フィルタからなり、光電気変換部18から受けた電気信号をクロック信号に整形して計測装置100へ出力する。すなわち、周波数フィルタからなる波形整形部24は、伝送路2における波長分散や光電気変換部18を構成する受光素子のショット雑音により生じるノイズ成分を電気信号から除去し、歪みの少ないクロック信号に整形する。
【0049】
また、波形整形部24は、たとえば、ツェナーダイオードやショットキーダイオードなどからなる同期クランプ回路で構成してもよい。同期クランプ回路からなる波形整形部24は、入力する電気信号の電圧レベルが所定範囲内となる期間だけ一定の電圧レベルを出力するので、波形歪みが生じた電気信号をパルス信号に再生することができる。そのため、波形整形部24は、光電気変換部18から出力される電気信号の波形歪みを整形し、クロック信号を出力できる。
【0050】
計測装置100については、実施の形態1と同様であるので詳細な説明は繰返さない。
上述のように、光給電システム102は、1つの光電気変換部18を用いて、計測装置100へ電力とクロック信号とを供給する。そのため、光電気変換部18は、給電光に含まれる光エネルギーを電気エネルギーに変換する機能と、給電光に含まれるパルス成分をクロック信号に変換する機能とを併せ持つので、光エネルギーを効率よく電気エネルギーに変換でき、かつ、光強度の変化に対する応答速度が早い受光素子から構成される。
【0051】
なお、実施の形態2においては、平滑部22が第1の抽出手段を実現し、波形成形部24が第2の抽出手段を実現する。
【0052】
この発明の実施の形態2によれば、実施の形態1における効果に加えて、受電装置が1つの光電気変換部で構成できるので、受電装置の構成を簡略化することができる。よって、受電装置を小型化することができ、狭い空間に配置される計測装置に対しても、電力とクロック信号との供給を実現できる。
【0053】
[実施の形態3]
上述の実施の形態1においては、送出された給電光をそのままクロック信号に変換する構成について説明した。一方、実施の形態3においては、より長距離伝送に適した構成について説明する。
【0054】
図3は、この発明の実施の形態3に従う光給電システム103の概略構成図である。
図3を参照して、光給電システム103は、計測装置100と接続され、計測装置100へ電力とクロック信号とを供給する。そして、光給電システム103は、給電装置4と、受電装置30と、伝送路2とからなる。
【0055】
給電装置4および伝送路2については、実施の形態1と同様であるので詳細な説明は繰返さない。
【0056】
受電装置30は、図1に示す受電装置10において、分散補償部32を追加したものである。
【0057】
分散補償部32は、伝送路2を伝搬することにより給電光に生じる波長分散を補償する。そして、分散補償部32は、たとえば、伝送路2の波長分散と同じ大きさで、かつ反対の符号の波長分散を有する分散補償ファイバ(DCF:Dispersion Compensation Fiber)などからなる。
【0058】
分配部12と、光電気変換部14および16とについては、実施の形態1と同様であるので詳細な説明は繰返さない。
【0059】
また、計測装置100については、実施の形態1と同様であるので詳細な説明は繰返さない。
【0060】
波長分散は、給電光に含まれるそれぞれの波長における伝送路2の伝搬速度(群速度)が異なるため、給電光が長距離を伝搬するに従い伝搬遅延が生じ、その時間波形が歪む現象である。特に、パルス幅の短い給電光ではその波長帯域幅が広いため、短波長側と長波長側との速度差が大きく、より大きく歪む。なお、波長分散は、伝送路2の種類や構造などに応じて、材料分散、構造分散およびモード分散に分類される。
【0061】
上述したように、光電気変換部16は、給電光のパルス成分に基づいてクロック信号を生成し、計測装置100へ出力する。そのため、波長分散により給電光の時間波形が歪むと、光電気変換部16は、正しいクロック信号を出力することができない。
【0062】
図4は、波長分散を説明するための図である。
図4(a)は、給電装置4から送出される給電光の時間波形である。
【0063】
図4(b)は、伝送路2の伝搬過程において波長分散が与えられた給電光の時間波形である。
【0064】
図4(a)を参照して、給電装置4は、所定の周期でパルス状の光強度をもつ給電光を送出する。
【0065】
図4(b)を参照して、給電光は、伝送路2を伝搬する過程において波長分散が蓄積されるため、時間軸上のパルス幅が広がり、かつ、その立ち上がりも急峻ではなくなる。さらに、波長分散が蓄積されると、隣接するパルス間で干渉生じる。そのため、光電気変換部16は、クロック信号を出力することができなくなる。
【0066】
そこで、分散補償部32は、給電光に蓄積された波長分散と同じ大きさで、かつ反対の符号の波長分散を与えることで、給電光の時間波形を図4(a)に示すようなパルス状の時間波形に戻す。
【0067】
このような分散補償部32を光電気変換部16の前段に挿入することで、給電装置4と受電装置30との距離が長くなった場合においても、正確なクロック信号を計測装置100へ出力することができる。
【0068】
なお、分配部12から光電気変換部14へ出力される給電光は、その光エネルギーが電気エネルギーに変換されるため、時間波形のひずみは問題にならない。そのため、分散補償による光エネルギーの損失を抑制するため、光電気変換部16へ出力する給電光については、分散補償を行なわないことが望ましい。
【0069】
この発明の実施の形態3によれば、実施の形態1における効果に加えて、給電装置から送出される給電光が長距離伝送される場合において、その波長分散による波形ひずみの影響を抑制し、正確なクロック信号を出力できる。よって、監視センタから計測装置までの距離が長くなった場合においても、計測装置へ正確なクロック信号の供給を実現できる。
【0070】
[実施の形態4]
上述の実施の形態1〜3においては、1つの給電装置から1つの受電装置に対して給電光を送出する光給電システムについて説明した。一方、実施の形態4においては、1つの給電装置から複数の受電装置に対して給電光を送出する光給電システムについて説明する。
【0071】
図5は、この発明の実施の形態4に従う光給電システム104の概略構成図である。
図5を参照して、光給電システム104は、複数の計測装置100と接続され、それぞれの計測装置100へ電力とクロック信号とを供給する。そして、光給電システム104は、給電装置4と、分岐部40と、伝送路2.1,2.2,・・・,2.nと、受電装置10.1,10.2,・・・,10.nとからなる。
【0072】
給電装置4については、実施の形態1と同様であるので詳細な説明は繰返さない。
分岐部40は、給電装置4から送出された給電光を均等に分配して、それぞれ伝送路2.1,2.2,・・・,2.nへ送出する。
【0073】
伝送路2.1,2.2,・・・,2.nは、それぞれ分岐部40から受けた分配された給電光を受電装置10.1,10.2,・・・,10.nへ伝搬する。その他については、実施の形態1における伝送路2と同様であるので詳細な説明は繰返さない。
【0074】
受電装置10.1,10.2,・・・,10.nは、それぞれ伝送路2.1,2.2,・・・,2.nを介して給電光を受け、電力とクロック信号とを計測装置100へ出力する。その他については、実施の形態1における受電装置10と同様であるので詳細な説明は繰返さない。
【0075】
また、計測装置100については、実施の形態1と同様であるので詳細な説明は繰返さない。
【0076】
上述のように、光給電システム104は、1つの給電装置4から出力された給電光を分配し、それぞれ受電装置10.1,10.2,・・・,10.nへ送出する。そのため、分散して配置される複数の計測装置100に対して、それぞれ電力とクロック信号とを供給することができる。
【0077】
この発明の実施の形態4によれば、1つの給電装置から複数の受電装置に対して給電光を送出する。そのため、1つの給電装置から1つの受電装置に対して給電光を送出する場合に比較して、より少ない構成で複数の計測装置で電力とクロック信号とを出力できる。よって、監視センタに複数の計測装置が接続される遠隔監視システムをより低いコストで実現できる。
【0078】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】この発明の実施の形態1に従う光給電システム101の概略構成図である。
【図2】この発明の実施の形態2に従う光給電システム102の概略構成図である。
【図3】この発明の実施の形態3に従う光給電システム103の概略構成図である。
【図4】波長分散を説明するための図である。
【図5】この発明の実施の形態4に従う光給電システム104の概略構成図である。
【符号の説明】
【0080】
2,2.1,2.2,・・・,2.n 伝送路、4 給電装置、6 パルス発生部、8 光源、10,10.1,10.2,・・・,10.n,20,30 受電装置、12 分配部、14,16,18 光電気変換部、22 平滑部、24 波形整形部、32 分散補償部、40 分岐部、100 計測装置,101,102,103,104 光給電システム、P 光エネルギー、r 分配率。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送路と、
前記伝送路を介して、光強度が周期的に変化する給電光を送出する給電装置と、
前記給電装置から送出された前記給電光の光エネルギーを受けて電力を出力するとともに、前記給電光の周期成分からクロック信号を出力する受電装置とを備える、光給電システム。
【請求項2】
前記受電装置は、
前記給電光を所定の比率で第1および第2の光信号に分配する分配部と、
前記分配部により分配された前記第1の光信号を電力に変換する第1の光電気変換部と、
前記分配部により分配された前記第2の光信号の周期成分に基づいて、前記クロック信号に変換する第2の光電気変換部とを含む、請求項1に記載の光給電システム。
【請求項3】
前記受電装置は、
前記給電光を周期的に変化する電気信号に変換する光電気変換部と、
前記光電気変換部により変換された前記電気信号から前記電力を抽出する第1の抽出手段と、
前記光電気変換部により変換された前記電気信号から前記クロック信号を抽出する第2の抽出手段とを含む、請求項1に記載の光給電システム。
【請求項4】
前記第1の抽出手段は、前記電気信号を平滑化して電力を生成する平滑部を含む、請求項3に記載の光給電システム。
【請求項5】
前記第2の抽出手段は、前記電気信号に含まれる周期成分を前記クロック信号に整形する波形整形部とを含む、請求項3または4に記載の光給電システム。
【請求項6】
前記給電装置は、パルス状の光強度をもつ前記給電光を送出する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光給電システム。
【請求項7】
複数の前記受電装置をさらに備え、
前記給電装置は、前記複数の受電装置へ前記給電光を送出する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光給電システム。
【請求項8】
給電装置から給電光を送出し、前記給電装置と伝送路を介して接続された受電装置から電力とクロック信号とを外部へ出力する光給電方法であって、
前記給電装置が周期的に変化する光強度の給電光を送出するステップと、
前記受電装置が、前記給電装置から送出された前記給電光の光エネルギーを受けて電力を出力するとともに、前記給電光の周期成分からクロック信号を出力するステップとを含む、光給電方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−49612(P2007−49612A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−234419(P2005−234419)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】