説明

光触媒作用を有する粉末状酸化チタンの分散方法及びその分散方法で得られた粉末状酸化チタンを用いた印刷用塗工紙の製造方法。

【課題】 光触媒能を有する粉末状の酸化チタンを良好に分散する方法を提供することにあり、その分散方法で得られた粉末状酸化チタンを用いて、操業性に優れ、印刷品質が良好であり、尚かつ光が当たることによって有害物質を分解する作用を併せ持った印刷用塗工紙を提供することにある。
【解決手段】
光触媒作用を有する粉末状の酸化チタンとシリカゾル又はアルミナゾルを両物質を合計した固形分が45〜60重量%である状態で、シリカゾル又はアルミナゾルを酸化チタンとシリカゾル又はアルミナゾルの比率が2:1〜1:2となるように混合処理を行うことを特徴とする光触媒作用を有する粉末状酸化チタンの分散方法、及びその分散方法で得られた粉末状酸化チタンを含有した塗工液を原紙に塗工することを特徴とする印刷用塗工紙の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒作用を有する粉末状酸化チタンの良好な分散方法及びその分散方法で得られた粉末状酸化チタンを用いた印刷用塗工紙の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生活環境に対する関心の高揚に伴い、悪臭などの日常生活における有害物質の除去の要求が増えてきている中、酸化チタンが注目を集めている。酸化チタンは従来から製紙用に優れた不透明性を持つ顔料として使用されてきたが、微粒の酸化チタンは光エネルギーを利用して酸化還元反応を引き起こし、空気中の各種有害物質を分解することが知られており、この技術を有効利用するため紙に坦持させるよう開発が進められている。例えば、水溶性高分子と酸化チタン等の光触媒作用を持つ物質を紙に内添した光触媒紙が開示されている(特許文献1参照)が、光触媒物質は光に当たることによりその触媒作用を発揮するため、紙層内部に光触媒物質を有する方法は効率的とは言いがたく、効果も充分とは言えない。触媒効率を高めるためには、できるだけ紙の表層部に光触媒物質を坦持させる方がよく、紙に塗工することが最も有効であると考えられる。例えば、酸化チタン微粉末をシリカゾル等の無機結着剤と結合させ、その周りを有機接着剤で結合させる手段を開示している(特許文献2、3参照)。しかし、酸化チタン、シリカゾル混合塗料を塗工する場合、酸化チタン及びシリカゾルの粒子径が小さく、塗料の流動性が悪く、塗工適性に劣り、また、塗料による被覆性が不十分であり、また、それを用いた印刷用塗工紙は、印刷品質に劣る問題があった。
【0003】
【特許文献1】特開平10−226983号公報
【特許文献2】特開2000−129595号公報
【特許文献3】特開平11−117196号公報 一方、酸化チタンは粉末状とスラリー状の製品がある。光触媒性能を有する酸化チタンは粒子径が小さいため、スラリー状の製品は流動性に劣り、塗料を調成する際の作業適性に著しく劣る。この流動性を改善するためにはスラリーの固形分濃度を薄める必要があるが、その場合は最終的な塗料の固形分の低下を引き起こし、塗工適性に劣り、良好な印刷用塗工紙を製造することができない。また、粉末状の製品は水中で分散する必要があるが、高濃度で分散を行った場合には流動性の劣った分散スラリーができ、低濃度で分散を行った場合には未分散酸化チタンが多く発生し、塗工時に凝集酸化チタンに由来するストリークと呼ばれる引っ掻き傷が発生する、酸化チタンが凝集しているため比表面積が小さくなり光触媒性能が劣るといった問題が起こる。
【0004】
このように従来の手法では、光触媒能を有する酸化チタンの分散性が良好であり、それを用いることにより、操業性に優れ、印刷品質が良好で、尚かつ優れた空気清浄効果を有する印刷用塗工紙を製造するのは困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この様な状況に鑑みて、本発明の課題は、光触媒能を有する粉末状の酸化チタンを良好に分散する方法を提供することにあり、その分散方法で得られた粉末状酸化チタンを用いて、操業性に優れ、印刷品質が良好であり、尚かつ光が当たることによって有害物質を分解する作用を併せ持った印刷用塗工紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題について鋭意研究した結果、光触媒作用を有する粉末状の酸化チタンとシリカゾル又はアルミナゾルを両物質を合計した固形分が45〜60重量%で、シリカゾル又はアルミナゾルを酸化チタンとシリカゾル又はアルミナゾルの比率が2:1〜1:2となるように混合処理を行うことにより、光触媒作用を有する粉末状酸化チタンの優れた分散方法を見出した。また、光触媒作用を有する粉末状の酸化チタンとシリカゾル又はアルミナゾルを両物質を合計した固形分が45〜60重量%である状態で混合処理を行った後に、シリカゾル又はアルミナゾルを酸化チタンとシリカゾル又はアルミナゾルの比率が2:1〜1:2となるように更に添加し混合処理を行うことにより、光触媒作用を有する粉末状酸化チタンの優れた分散方法を見出した。
また、上記分散方法で得られた光触媒作用を有する粉末状酸化チタンを、顔料100重量部当たり1〜30重量部、及び接着剤を含有する塗工液を、原紙に塗工することにより、操業性に優れ、印刷品質が良好であり、尚かつ光が当たることによって有害物質を分解する作用を併せ持った印刷用塗工紙が得られることを見出した。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、光触媒能を有する粉末状の酸化チタンを良好に分散することができ、その分散方法で得られた粉末状酸化チタンを用いることにより、操業性に優れ、印刷品質が良好であり、尚かつ光が当たることによって有害物質を分解する作用を併せ持った印刷用塗工紙を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明においては、酸化チタンとシリカゾル又はアルミナゾルを両物質の合計した固形分が45〜60重量%、好ましくは45〜55重量%、更に好ましくは45〜50重量%とした状態で混合することである。両者を混合することにより、酸化チタンとシリカゾル又はアルミナゾルが衝突しあい、良好な分散状態となる。固形分が45重量%未満の場合、スラリーの濃度が低すぎて、この衝突が充分に行わず、凝集した未分散の酸化チタンが多く発生し、塗工時に凝集酸化チタンに由来するストリークと呼ばれる引っ掻き傷が発生しやすく、酸化チタンが凝集しているため比表面積が小さくなり光触媒性能が劣るといった問題も発生する。60重量%を超える場合、スラリーの粘度が高くなり、塗料製造時のハンドリングに劣り、操業性が著しく悪化する。また、酸化チタンとシリカゾル又はアルミナゾルを、酸化チタンとシリカゾル又はアルミナゾルの比率が2:1〜1:2となるように一定時間混合し、あるいは一定時間混合後に更にシリカズル又はアルミナゾルを添加し混合処理して酸化チタンとシリカゾル又はアルミナゾルの比率が2:1〜1:2となるようにすることにより、分散性や光触媒性能が優れるものである。この最初に混合処理する一定時間は、20分以上が好ましく、より好ましくは40分以上である。更に混合処理する時間は、分散状態が良好になるように適宜行えば良い。酸化チタンと混合するものとしては、光透過性の点からシリカゾルを使用することが好ましい。
粉末状の酸化チタンとしては、二酸化チタンの他、水和酸化チタン、メタチタン酸、オルトチタン酸、含水酸化チタン、水酸化チタンと呼称されているチタン酸化物または水酸化物全てのものを用いることができる。酸化チタンの好ましい二次粒子の平均粒子径は300〜2000nmであり、より好ましくは500〜1500nm、更に好ましくは700〜1300nmである。二次粒子の平均粒子径が300nm未満では、酸化チタンスラリーの分散性、塗料の流動性が悪いため、生産性が低下し、更に酸化チタンの欠落による印刷品質、印刷作業性が低下する。一方、二次粒子の平均粒子径が2000nmを超える場合は、塗工紙の平滑性が低下し、印刷品質が低下する。また、酸化チタンの好ましい一次粒子径は5〜100nmである。一次粒子径が5nm未満では、酸化チタンスラリーの分散性、塗料の流動性が悪くなりやすく、操業性に劣る。また、100nmを超えると表面積が小さくなるため、光触媒性能が充分でない傾向がある。また、酸化チタンの比表面積は10〜350m/gが好ましい。
【0009】
本発明においては、空気清浄効果を印刷用塗工紙に付与するために塗工液を配合する顔料の一部に、上記で得られた光触媒性能を有する粉末状の酸化チタンを特定の配合率で用いることが重要である。配合率は、顔料100重量部のうち1〜30重量部であり、好ましくは1〜20重量部、より好ましくは2〜10重量部である。酸化チタンの配合率が1重量部未満の場合、光触媒の量が少なすぎて、充分な空気清浄効果が得られない。本発明では高い光触媒効果を有する微粒の酸化チタンを使用することが重要であるが、微粒の酸化チタンは塗工紙の分野で一般的に使用されるクレーや炭酸カルシウムと比較してスラリー化可能である固形分濃度が低い。この為、30重量部を超えて配合した場合、空気清浄効果は得られるが、塗料濃度が大幅に低下するため、一定値以上の塗工量を塗布することが困難となる上、一般的な塗工紙で塗布される塗工量で比較した場合、印刷面感、表面強度に劣る。
【0010】
また、本発明では、耐チョーキング性を付与するために、予め粉末状の酸化チタンとシリカゾル又はアルミナゾルとを混合しておくことが重要である。ここで言う耐チョーキング性とは、光照射後、塗工層表面及び原紙層が光触媒反応により分解され劣化することによる粉落ちへの耐性を示すものである。また、粉末状の酸化チタンは粒子径が細かいため、上記の分散方法を用いることが重要である。
【0011】
また、本発明では上記顔料の他に、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、クレー、カオリン、エンジアードカオリン、デラミネーテッドクレー、タルク、硫酸カルシウム、通常の製紙用に用いる二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、サチンホワイト等の無機顔料や、プラスチックピグメント等の有機顔料を使用することができる。本発明において、炭酸カルシウム、特に重質炭酸カルシウムを用いた方が製造コストの点、インキ乾燥性向上の点から用いた方が好ましく、特にレーザー回折式の測定法で平均粒子径が0.3〜2.0μm、より好ましくは0.3〜0.8μmの微粒の重質炭酸カルシウムを用いる方が好ましい。配合量は、顔料100重量部に対して、炭酸カルシウムが30重量部以上が好ましく、より好ましくは50重量部以上である。
【0012】
本発明において用いる接着剤は、塗工紙用に従来から用いられている、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体、あるいはポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成接着剤、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパクなどのタンパク質類、酸化澱粉、カチオン化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などの澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体などのから、1種以上を適宜選択して使用することができる。これらの接着剤は、顔料100重量部に対して、5〜30重量部の範囲で使用されることが好ましく、より好ましくは8〜25重量部でり、更に好ましくは8〜20重量部である。50重量部を超える場合は、塗料の粘度が高くなり、配管やスクリーンを通過しづらくなるといった操業性の問題が生じる等のデメリットが生じ好ましくない。また、酸化チタンが接着剤により被覆され、空気清浄効果が低下するため好ましくない。5重量部未満の場合は、十分な表面強度が得られず好ましくない。印刷品質、表面強度、空気清浄効果をバランスよく良好にするためには、有機接着剤として共重合体ラテックスを有機接着剤中50重量%以上が好ましく、更に好ましくは60重量%以上である。一般的に印刷用塗工紙の製造においては、ラテックスと澱粉が併用されることが多い。これらの単体での紫外線の透過率は同等塗工量で比較した場合ほぼ同じであるが、澱粉はラテックスに比べ接着力に劣るため、同等の表面強度を選るにはラテックスより多く配合することが必要となる。有機接着剤中のラテックスの配合量が50重量%未満の場合、代わりに澱粉を多く配合することが必要となり、総有機接着剤配合量が増加することに繋がり、これによって光透過性の低下、酸化チタンが有機接着剤に被覆される等の理由で光触媒効果が低下する傾向にある。また、使用される共重合体ラテックスとしては、ガラス転移温度−20〜40℃の共重合体ラテックスを使用することが好ましく、より好ましくは−20〜30℃、更に好ましくは0〜30℃である。ガラス転移温度が40℃を超える場合、印刷に耐えうる充分な表面強度が得られない。また、ガラス転移温度が−20℃未満の場合には、光触媒効果が充分でない傾向があり、またロールへのベタツキなどにより操業性が低下する傾向にある。粒子中に異なるガラス転移温度を持つコア−シェル型などの共重合体ラテックスについては、シェル層(表面層)のガラス転移温度が上記の温度の範囲にはいることが好ましく、更にコア層(内層)のガラス転移温度がシェル層より低いことが好ましい。また、共重合体ラテックスの粒子径は印刷品質、表面強度の点から40〜130nmが好ましい。澱粉などの水溶性高分子接着剤は10重量部以下とすることが好ましい。
【0013】
本発明の塗工液には、助剤として分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、染料、蛍光染料等の通常使用される各種助剤を使用することができる。
【0014】
本発明における原紙は、パルプ、填料と各種助剤から成る。パルプとしては、化学パルプ、機械パルプ、古紙パルプ等を用いることができるが、機械パルプ、機械パルプ由来の古紙パルプを多量に用いると光があたった場合劣化して変色するため、機械パルプは全パルプの60重量%以下の含有量が好ましく、印刷品質の点からは、最も好ましいのは化学パルプ100重量%である。
【0015】
また、本発明においては、原紙に用いる填料として、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、カオリン、クレー、無定型シリケート、無定型シリカ、酸化チタン、軽質炭酸カルシウム−シリカ複合体、合成樹脂填料等の公知の填料を使用することができ、填料の配合量はパルプ重量に対して1〜30重量%程度であり、好ましくは3〜20重量%である。これら填料は、紙料スラリーの抄紙適性や強度特性を調節する目的で、単独あるいは2種類以上を混合使用しても良い。
【0016】
また、必要に応じて通常抄紙工程で使用される薬品類、例えば紙力増強剤、サイズ剤、消泡剤、着色剤、柔軟化剤、嵩高剤(低密度化剤)などを、本発明の効果を阻害しない範囲で、紙料に添加し抄紙することができる。
【0017】
原紙の抄紙方法については、特に限定されるものではなく、トップワイヤー等を含む長網マシン、丸網マシン、ギャップフォーマーマシンを用いて、酸性抄紙、中性抄紙、アルカリ抄紙方式で抄紙した原紙のいずれであっても良い。また、サイズプレス、ゲートロールコーター、ビルブレード等を用いて、澱粉、ポリビニルアルコールなどを予備塗工した原紙等も使用可能である。塗工原紙としては、一般の塗工紙に用いられる坪量が25〜400g/m程度のものが好ましく使用され、より好ましくは50〜150g/mである。
【0018】
塗工原紙に調整された塗工液を塗工する方法としては、ブレードコーター、バーコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、リバースロールコーター、カーテンコーター、サイズプレスコーター、ゲートロールコーター、スプレーコーター等を用いて、一層もしくは二層以上を原紙上に片面あるいは両面塗工する。本発明が効果的である塗工量の範囲は、印刷品質、光触媒効果、塗工適性の点から片面当たり4g/m以上30g/m以下が好ましく、より好ましくは8g/m以上20g/m以下である。また、本発明においては、塗工層に光触媒酸化チタンを配合した場合、塗工層の上層に分布した酸化チタンが光触媒効果に有効である。そのため、本発明では2層以上の塗工層を設け、その最外層に上記で規定した酸化チタンを含む塗工層を設け、その内側層に最外層とは別の調製した塗工層を設けることにより、光触媒効果を有し、更に印刷品質、表面強度等が向上した印刷用塗工紙を設けることができる。その場合、内側層に含まれる無機顔料としては、白色度の点から重質炭酸カルシウムを50重量部以上含むことが好ましく、より好ましくは70重量部以上であり、更に好ましくは100重量部である。この時、光触媒チタンを含む最外層の好ましい塗工量は、片面あたり2g/m〜15g/m、より好ましくは3g/m〜12g/m、更に好ましくは5g/m〜10g/mである。
【0019】
湿潤塗工層を乾燥させる手法としては、例えば、蒸気加熱ヒーター、ガスヒーター、赤外線ヒーター、電気ヒータ、熱風加熱ヒーター、マイクロウェーブ、シリンダードライヤー等の通常の方法が用いられる。
【0020】
乾燥後、必要に応じて、後加工であるスーパーカレンダー、高温ソフトカレンダー等の仕上げ工程によって平滑性を付与することが可能である。ただし、所望の品質の塗工紙が得られれば、いずれのカレンダー処理、あるいは未カレンダー処理でもよい。ただし、カレンダー処理により、塗工層が密な構造となり、さらに平滑性が高くなることにより、空気との表面積が小さくなるため、塗工層に配合した光触媒と空気中の有害成分との接触確率が低下し、空気清浄効果が低下してしまう。そのため、本発明では線圧が150kN/m以下の弱カレンダー処理が好ましく、より好ましくは未カレンダー処理である。
【0021】
また、本発明においては、印刷品質が良好で、光触媒機能を有するためには、PPSラフネスを0.5〜5.0μmの範囲とすることが重要である。使用する印刷用インキとしては、オフセット枚葉用(平版用)インキやオフセット輪転印刷用インキ、グラビア印刷用インキ等であって新聞インキ以外のものがより適している。PPSラフネスが5.0μmを超える場合、平滑性が劣るため、印刷時のインキ着肉性が悪くなり、印刷面感や印刷光沢等に劣る。一方、PPSラフネスが0.5μmより低い場合、平滑性は高いが塗工層が密な構造となり、また空気と接触する表面積が小さくなるため、塗工層に配合した光触媒と空気中の有害成分との接触確率が低下し、空気清浄効果が低下してしまう。光触媒効果をより発揮させて印刷品質等を良好にするためには、PPSラフネスは、好ましくは1.0〜4.0μm、より好ましくは2.0〜4.0μmである。PPSラフネスは、カレンダー処理条件、パルプ配合、塗料配合、塗工量等により調製することができる。
【実施例】
【0022】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、もちろんこれらの例に限定される物ではない。なお、特に断らない限り、例中の部および%は、それぞれ重量部、重量%を示す。なお、塗工液及び得られた印刷用塗工紙について以下に示す様な評価法に基づいて試験を行った。
(評価方法)
(1)酸化チタンの粒子測定:電子顕微鏡で撮影した写真より算出した。粉体状の微粒酸化チタンを水中に分散したもの、若しくは酸化チタンスラリー品を電子顕微鏡用紙料台上に薄く塗布し、40℃に設定した乾燥機にて乾燥した。その後、FE−SEM(電界放射走査型電子顕微鏡/日本電子(株)製JSM−6700F)の撮影倍率10,000倍のにて撮影して粒子を観察して測定した。二次粒子については、100個の粒子径を計測した平均値を二次粒子の平均粒子径とした。
(2)PPSラフネス:ISO8791/4に基づいて測定した。なお、バッキング材は硬度95IRHDのハードバッキング材を、クランプ圧力は1,000kPaで測定した。
(3)印刷光沢度:ローランド平判印刷機(4色)にて、平判印刷用インキ(東洋インキ製造製 ハイユニティ ネオL)を用いて印刷速度8000枚/時にて印刷紙、得られた印刷物(4色ベタ印刷部)の表面をJIS P8142に基づいて測定した。
(4)印刷面感:ローランド平判印刷機(4色)にて、平判印刷用インキ(東洋インキ製造製 ハイユニティ ネオL)を用いて印刷速度8000枚/時にて印刷紙、得られた印刷物のインキ着肉ムラ、印刷光沢度ムラを4段階で目視評価した。
◎:非常に優れる、○:優れる、△:やや問題有り、×:問題有り
(5)表面強度:RI−II型印刷試験機にて、東洋インキ製造製SMXタックグレード16(墨)を使用し、ドライピック強度を比較し、強度を4段階で評価した。
◎:非常に優れる、○:優れる、△:やや問題有り、×:問題有り
(6)耐チョーキング性:ブラックライトで2.5mW/cmの強度の紫外線を5時間照射後、塗工紙表面にセロハンテープを貼付、その後ゆっくり剥がしセロハンテープへの付着しにくい程度を4段階で目視評価した。
◎:非常に優れる、○:優れる、△:やや問題有り、×:問題有り
(7)光触媒効果:光触媒性能評価試験法IIb「ガスバックB法」にて評価した。20時間紫外線を照射した後のアセトアルデヒド分解率(%)を測定し、分解率により4段階で評価した。
◎:非常に優れる(分解率:99%以上)、○:優れる(同:99〜50%)、△:やや問題有り(同:49〜10%)、×:問題有り(同:10%以下)
(8)操業性:本発明の印刷用塗工紙を製造するにあたり発生する操業上の問題について4段階で評価した。ここで言う操業上の問題とは、例えば塗料製造時及び塗料をコーターに送付するときの配管詰まり、塗工時のストリークの発生等のことである。
◎:非常に優れる、○:優れる、△:やや問題有り、×:問題有り

[実施例1]
〈粉末状微粒酸化チタンの調製〉
粉末状微粒酸化チタン(堺化学社製 SSP−25;一次粒子径20〜30nm、二次粒子の平均粒子径1200nm)5部、コロイダルシリカ(日本化学工業社製 シリカドール30)5部をセリエミキサーにて1時間攪拌した。この時の、両物質を合計した固形分量は46.2%である。1時間の攪拌後、さらにコロイダルシリカ3部を加え攪拌して粉末状微粒酸化チタンスラリーを調製した(酸化チタンとシリカゾルの比率1:1.6)。
〈上塗り塗工液Aの調製〉
上記粉末状微粒酸化チタンスラリーに、重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製 FMT−90)60部、2級クレー(IMERYS社製 KCS)35部からなる顔料に、分散剤としてポリアクリル酸ソーダを添加して(対無機顔料 0.2部)セリエミキサーで分散した顔料スラリーを加え、固形分68%の顔料スラリーを調製した。このようにして得た顔料スラリーに、スチレンブタジエン共重合体ラテックスA(ガラス転移温度0℃、粒子径100nm)13部、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉(ペンフォード社製 PG295)5部を加え、更に水を加えて固形分濃度63%の塗工液を得た。
〈下塗り塗工液の調製〉
重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製 FMT−90)100部からなる顔料スラリーにスチレンブタジエン共重合体ラテックスA6部、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉5部を加え、更に水を加えて固形分濃度68%の塗工液を得た。
【0023】
塗工原紙は、填料として軽質炭酸カルシウムを原紙重量あたり12%含有し、製紙用パルプとして化学パルプを100%配合した坪量100g/mの上質紙を用いた。
【0024】
上記の原紙に、下塗り塗工液を片面あたりの塗工量が8g/mになるように600m/分の塗工速度でブレードコーターを用いて両面塗工した。さらに、上塗り塗工液Aを片面あたりの塗工量が8g/mになるように600m/分の塗工速度でブレードコーターを用いて両面塗工を行い、塗工紙水分が5%となる様に乾燥して、印刷用塗工紙を得た。
[実施例2]
実施例1において、上塗り塗工液Aの粉末状微粒酸化チタン5部、コロイダルシリカ8部、重質炭酸カルシウム60部、2級クレー35部の代わりに、粉末状微粒酸化チタン20部、コロイダルシリカ32部、重質炭酸カルシウム55部、2級クレー25部と変更した以外は、実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[実施例3]
実施例1において、上塗り塗工液AのラテックスA13部、澱粉5部の代わりに、ラテックスA9部、澱粉13部と変更した以外は、実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[実施例4]
実施例1において、上塗り塗工液Aのみを原紙に片面あたりの塗工量が16g/mとなる様にシングル塗工した以外は、実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[実施例5]
実施例1において、塗工紙乾燥後に金属ロール表面温度100℃、通紙速度700m/分、線圧150kN/m、カレンダーニップ数2ニップの条件で高温ソフトニップカレンダー処理を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[実施例6]
実施例1において、上塗り塗工液の粉末状微粒酸化チタン5部、コロイダルシリカ8部、重質炭酸カルシウム60部、2級クレー35部の代わりに、粉末状微粒酸化チタン5部、コロイダルシリカ8部、微粒クレー(CADAM社、Amazonplus)75部、微粒重質炭酸カルシウム(ファイマテック社、FMT-97)20部とし、金属ロール表面温度160℃、通紙速度500m/分、線圧220kN/m、カレンダーニップ数6ニップの条件で高温ソフトニップカレンダー処理を行ったこと以外は、実施例1と同様な方法で印刷用塗工紙を得た。

[比較例1]
実施例1において、上塗り塗工液Aの粉末状微粒酸化チタン5部、コロイダルシリカ8部、重質炭酸カルシウム60部、2級クレー35部の代わりに、重質炭酸カルシウム65部、2級クレー35部と変更した以外は、実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[比較例2]
実施例1において、上塗り塗工液Aの粉末状微粒酸化チタン5部、コロイダルシリカ8部、重質炭酸カルシウム60部、2級クレー35部の代わりに、粉末状微粒酸化チタン40部、コロイダルシリカ64部、重質炭酸カルシウム40部、2級クレー20部と変更した。この時、上塗り塗工液の固形分濃度は48%となり、塗工紙の水分を5%とするために、塗工速度を400m/分とした。他の条件については、実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[比較例3]
〈上塗り塗工液Bの調製〉
微粒酸化チタンスラリー(堺化学社製 CSB−M;一次粒子径20〜30nm、二次粒子の平均粒子径1000nm)5部(固形分)、コロイダルシリカ(日本化学工業社製 シリカドール30)8部をセリエミキサーにて1時間攪拌した。その中に、重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製 FMT−90)60部、2級クレー(IMERYS社製 KCS)35部からなる顔料に、分散剤としてポリアクリル酸ソーダを添加して(対無機顔料 0.2部)セリエミキサーで分散した顔料スラリーを加え、固形分68%の顔料スラリーを調製した。このようにして得た顔料スラリーに、スチレンブタジエン共重合体ラテックスA(ガラス転移温度0℃、粒子径100nm)13部、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉(ペンフォード社製 PG295)5部を加え、更に水を加えて固形分濃度63%の塗工液を得た。
【0025】
実施例1において、上塗り塗工液Aの代わりに上塗り塗工液Bと変更した以外は、実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。上塗り塗工液Bを製造する際に、微粒酸化チタンスラリーの流動性が悪く、塗料調整時に時間を費やした。
[比較例4]
〈上塗り塗工液Cの調製〉
粉末状微粒酸化チタン(堺化学社製 SSP−25;一次粒子径20〜30nm、二次粒子の平均粒子径1200nm)5部(固形分)、コロイダルシリカ(日本化学工業社製 シリカドール30)1.5部をセリエミキサーにて3時間攪拌した。この時の、両物質を合計した固形分量は65%である。3時間の攪拌後、さらにコロイダルシリカ6.5部を加え攪拌した。その中に、重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製 FMT−90)60部、2級クレー(IMERYS社製 KCS)35部からなる顔料に、分散剤としてポリアクリル酸ソーダを添加して(対無機顔料 0.2部)セリエミキサーで分散した顔料スラリーを加え、固形分68%の顔料スラリーを調製した。このようにして得た顔料スラリーに、スチレンブタジエン共重合体ラテックスA(ガラス転移温度0℃、粒子径100nm)13部、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉(ペンフォード社製 PG295)5部を加え、更に水を加えて固形分濃度63%の塗工液を得た。
【0026】
実施例1において、上塗り塗工液Aの代わりに上塗り塗工液Cと変更した以外は、実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。上塗り塗工液Cは酸化チタンの分散時に粘度が高く流動性に劣り分散に時間を費やした。
[比較例5]
〈上塗り塗工液Dの調製〉
粉末状微粒酸化チタン(堺化学社製 SSP−25;一次粒子径20〜30nm、二次粒子の平均粒子径1200nm)5部(固形分)、コロイダルシリカ(日本化学工業社製 シリカドール30)8部をセリエミキサーにて1時間攪拌した。この時の、両物質を合計した固形分量は41%である。1時間の攪拌後、その中に、重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製 FMT−90)60部、2級クレー(IMERYS社製 KCS)35部からなる顔料に、分散剤としてポリアクリル酸ソーダを添加して(対無機顔料 0.2部)セリエミキサーで分散した顔料スラリーを加え、固形分68%の顔料スラリーを調製した。このようにして得た顔料スラリーに、スチレンブタジエン共重合体ラテックスA(ガラス転移温度0℃、粒子径100nm)13部、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉(ペンフォード社製 PG295)5部を加え、更に水を加えて固形分濃度63%の塗工液を得た。
【0027】
実施例1において、上塗り塗工液Aの代わりに上塗り塗工液Dと変更した以外は、実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。上塗り塗工液D塗工時に、未分散の酸化チタン凝集物に由来するストリーク状の傷が多数認められた。
[比較例6]
実施例1において、上塗り塗工液Aのみを原紙に片面あたりの塗工量が3g/mとなる様にシングル塗工した以外は、実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
以上の結果を表1に示した。

【0028】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒作用を有する粉末状の酸化チタンとシリカゾル又はアルミナゾルを両物質を合計した固形分が45〜60重量%で、酸化チタンとシリカゾル又はアルミナゾルの比率が2:1〜1:2となるように混合処理を行うことを特徴とする光触媒作用を有する粉末状酸化チタンの分散方法。
【請求項2】
光触媒作用を有する粉末状の酸化チタンとシリカゾル又はアルミナゾルを両物質を合計した固形分が45〜60重量%である状態で混合処理を行った後に、シリカゾル又はアルミナゾルを酸化チタンとシリカゾル又はアルミナゾルの比率が2:1〜1:2となるように更に添加し混合処理を行うことを特徴とする光触媒作用を有する粉末状酸化チタンの分散方法。
【請求項3】
請求項1または2の分散方法で得られた粉末状酸化チタンを顔料100重量部当たり1〜30重量部、及び接着剤を含有する塗工液を原紙に塗工することを特徴とする印刷用塗工紙の製造方法。

【公開番号】特開2008−246339(P2008−246339A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−89306(P2007−89306)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】