説明

光触媒膜、水分解用半導体光電極およびこれを用いた水分解装置

【課題】紫外光および可視光の両方に感度を有する光触媒膜、この光触媒膜と色素増加型太陽電池を重ね合わせた構造であり、水から水素と酸素を生成するのに適した水分解半導体光電極およびこれを用いた水分解装置を提供すること。
【解決手段】透明基板15の一面に有する透明導電膜19a上に形成された第1光触媒膜18と、この第1光触媒膜18上に形成された第2光触媒膜21とを有してなり、第1光触媒膜18が、酸素欠損となる化学量論比で酸素とチタンを含有するTiOx膜(x<2.0)からなり、第2光触媒膜21がTiO2膜からなる光触媒膜、これを用いた水分解用半導体光電極および水分解装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒膜、水分解用半導体光電極およびこれを用いた水分解装置に関し、さらに詳しくは、光により水を水素と酸素に分解する水分解装置およびこれに用いられる水分解用半導体光電極と光触媒膜に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、地球温暖化を防止するために温室効果ガスの排出量削減が求められており、この施策の一つとして、風力および太陽光などのクリーンエネルギーの導入が推進されている。また、水素を主要なエネルギー源と想定した水素社会実現に向け、燃料電池、水素製造技術、水素貯蔵・輸送技術などが、現在活発に研究されている。
水素は、現状、石炭、石油や天然ガスなどの化石燃料を原料として製造することができるが、将来的には、水、バイオマスなどの非化石燃料とクリーンエネルギーを用いた水素製造技術が望まれている。
【0003】
ところで、太陽光などの光を受光して光起電力を発生し、その光起電力により電気化学反応を引き起こす半導体光触媒として、二酸化チタン(TiO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)等の金属酸化物半導体が知られている。水中に白金電極と二酸化チタン電極とを配置し、二酸化チタン電極に紫外線を照射すると、水を水素と酸素に分解できることが知られている。
【0004】
水の電気分解が可能で、太陽光を十分利用できる半導体光触媒や半導体光電極の条件としては、水の電解電圧(理論値1.23V)以上の光起電力を有すること、すなわち伝導帯のエネルギー準位が水素発生電位よりもマイナスであり、かつ価電子帯のエネルギー準位が酸素発生電位よりプラスであること、および半導体光触媒や半導体光電極自身が電解液中で光溶解を起こさない化学的な安定性を有することなどが必要である。
【0005】
代表的な光触媒である二酸化チタンは、エネルギーバンドギャップが約3.2eVと大きく水分解に必要な電位条件を満たすので、水の分解が可能であり、電解液中で溶解しないという長所があるが、太陽光スペクトルの約380nmより長い波長の光に対してほとんど感度がなく、太陽光に対する光電変換効率が極めて低いという問題がある。
【0006】
また、二酸化チタンは、上述したように水分解に必要な電位条件を満たすので、水の分解は原理上可能であるが、実際には、二酸化チタンの伝導帯のエネルギー準位は水素発生電位より僅かにマイナスに位置しているだけなので、バイアスなしで水素を十分に発生させることはできていない。そこで一般的には、外部電源を用いてバイアスする、あるいは二酸化チタンをアルカリ性溶液に、白金電極を酸性溶液にそれぞれ浸漬することで生じるpH差を利用した化学的バイアスなどが用いられている。
【0007】
エネルギーバンドギャップの小さい材料、例えば酸化タングステンでは約2.7eV、三酸化二鉄では約2.3eV、を用いた場合、酸化タングステンでは波長約460nm以下の光を、三酸化二鉄では波長約540nm以下の光を吸収することができる。しかし、これらの材料の伝導帯のエネルギー準位は水素発生電位よりもプラスであり、バイアスなしでは水素を発生することはできない。
【0008】
そこで、例えば特許文献1および特許文献2に記載されているように、電解質水溶液に浸漬された光触媒と色素増感型太陽電池を積層し、電気的に接続したタンデムセルが知られている。このタンデムセルの概略を、図8を用いて説明する。まず、光触媒となる酸化物膜3では紫外から青または緑色部分の太陽光を吸収して電子と正孔を生じる。酸化物膜3の裏面に重ね合わされた色素増感型太陽電池では緑または黄色から赤色部分の太陽光を吸収して光起電力を生じる。光触媒となる酸化物膜3と色素増感型太陽電池の対極8を電気的に接続し、色素増感型太陽電池のTiO2膜6と水素発生用触媒カソード10を電気的に接続5することにより、色素太陽電池の起電力がバイアスとして機能し、電子のエネルギー準位を水素発生電位よりもマイナスに押し上げ、水素を発生させることができる。
【0009】
また、二酸化チタンは太陽光スペクトルの約380nmより長い波長の光に対してほとんど感度がなく、太陽光に対する光電変換効率が極めて低いという上記問題に対し、酸化チタン膜中の酸素の化学量論比を酸素欠損になるように成膜すると、この酸素欠損酸化チタン膜(TiOx膜(x<2.0))は波長450nm付近までの可視光を吸収し、かつ光触媒活性を示すことが非特許文献1に開示されている。
【0010】
【特許文献1】特表2003−504799号公報
【特許文献2】特表2004−504934号公報
【非特許文献1】竹内雅人、安保正一、平尾孝、伊藤信久、岩本信也:表面科学Vol22,No9(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、本発明者らが、非特許文献1に記載の酸素欠損酸化チタン膜について検討したところ、酸素欠損酸化チタン膜の可視光応答性は、酸素を化学量論比より少なくすることにより発現するが、酸素欠損が多すぎると結晶性が悪くなり、光電変換特性が低下することが分かった。特に、可視光領域に吸収を生じさせると紫外光領域の光電変換効率が低下し、全体として低い光電変換効率の膜しか得られないケースが多く見られる結果となった。
【0012】
また、特許文献1および2に記載のタンデムセル構造では、光触媒膜と色素増感型太陽電池との間をリード線などで配線しなければならず、モジュール化する場合に煩雑な作業を要する課題が残されている。
【0013】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、紫外光および可視光の両方に感度を有する光触媒膜、この光触媒膜と色素増加型太陽電池を重ね合わせた構造であり、水から水素と酸素を生成するのに適した水分解半導体光電極およびこれを用いた水分解装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かくして、本発明によれば、透明基板の一面に有する透明導電膜上に形成された第1光触媒膜と、この第1光触媒膜上に形成された第2光触媒膜とを有してなり、前記第1光触媒膜が、酸素欠損となる化学量論比で酸素とチタンを含有するTiOx膜(x<2.0)からなり、前記第2光触媒膜がTiO2膜からなる光触媒膜が提供される。
また、本発明の別の観点によれば、受光面側から、第2光触媒膜/第1触媒膜を有する前記光触媒膜と、第1透明導電膜と、透明基板/第2透明導電膜/電解質層および色素を担持させた半導体層/金属基板を有する色素増感型太陽電池とを少なくとも備えてなり、前記透明基板に、透明基板の表裏面の前記透明導電膜を電気的に接続するための導電部材が設置されてなる水分解用半導体光電極が提供されてなる。
また、本発明のさらに別の観点によれば、受光面側が透明な筐体中に、前記水分解用半導体光電極と電解質水溶液とを有してなり、前記筐体が、水素および酸素の取り出し口を有する水分解装置が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光触媒膜によれば、太陽光といった光の紫外領域のみならず可視光領域にも良好な光電変換特性が得られる。
また、本発明の水分解用半導体光電極によれば、この半導体光電極を用い、水から酸素と水素を効率よく生成することができる水分解装置を作製可能であり、かつ光触媒と色素増感型太陽電池とをリード線などの外部配線を用いずにモジュール化することが可能となり、モジュール化の煩雑さを軽減することができる。また、透明基板の表裏面の第1、第2透明導電膜を電気的に接続するための導電部材が設置されているため、リード線による接続が不要であり、光触媒膜と色素増感型太陽電池とをモジュール化する煩雑さを軽減することができる。
また、本発明の水分解装置によれば、簡素な構造でありながら、水から酸素と水素を効率よく生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明(第1の発明)の光触媒膜は、透明基板の一面に有する透明導電膜上に形成された第1光触媒膜と、この第1光触媒膜上に形成された第2光触媒膜とを有してなり、前記第1光触媒膜が、酸素欠損となる化学量論比で酸素とチタンを含有するTiOx膜(x<2.0)からなり、前記第2光触媒膜がTiO2膜からなり、紫外光に対するTiO2膜による光電変換機能だけでなく可視光に対するTiOx膜による光電変換機能を付加して、光触媒膜全体として高い光電変換効率が得られることを特徴としている。
この光触媒膜は、後述する第2の発明である水分解用半導体光電極に用いられ、この水分解用半導体光電極は後述する第3の発明である水分解装置に用いられる。
以下、実施形態を示す図面に基いて本発明を詳説する。
【0017】
<実施形態1>
図1は実施形態1の水分解装置を示す概略側断面図であり、図2はこの水分解装置を受光面側から見た概略正面図である。なお、図1において、符合33で示す矢印は太陽光を表している。
【0018】
(光触媒膜の説明)
光触媒膜22は、酸素欠損となる化学量論比で酸素とチタンを含有する酸素欠損酸化チタン膜であるTiOx膜18(x<2.0)と、このTiOx膜18上に積層されたTiO2膜21とからなる。TiOx膜18は、透明基板15の第1面上に形成された第1透明導電膜19a上に形成されており、TiO2膜21はTiOx膜18上に形成されている。なお、透明基板15は、後述の色素増感型太陽電池Sの一構成部品である。
ここで、本発明において、酸素欠損酸化チタン膜とは、チタン原子に対する酸素原子の組成比が2.0未満、特に1.99以下である酸化チタン膜を意味する。
【0019】
図3は、酸素原子組成比が異なる3種類の酸素欠損酸化チタン膜(TiOx膜:x=1.9、1.93、1.95)および二酸化チタン膜についての吸光度と光波長との関係を示すグラフである。この図3で示されたデータは、各酸素欠損酸化チタン膜(膜厚1μm)および二酸化チタン膜(膜厚1μm)を透明基板上に成膜し、可視紫外分光光度計によって測定したものである。なお、各TiOx膜(x=1.9、1.93、1.95)の酸素原子の組成比はオージェ電子分光法で測定した。
図3から、TiOx膜(x=1.9、1.93、1.95)はTiO2膜に比して900付近〜400nm付近の可視光の吸光度が高く、酸素原子組成比が1.95を越えて2に近づくにつれてTiO2膜の吸光度に近づき可視光域の光吸収が減少することが分かる。このことから、本発明における光触媒膜は、可視光域の光電変換特性が良好であるためには、TiOx膜18中のチタン原子に対する酸素原子の組成比は、オージェ電子分光法で測定した場合に1:1.9〜1.95(1.9≦x≦1.95)が好ましい。なお、TiOx膜18の可視光応答性は、チタン原子に対する酸素原子の化学量論比より少なくする(2.0より小さくする)ことにより発現するが、xを1.9より小さくして酸素欠損が多すぎると、結晶性が悪くなり光電変換特性が低下する。
【0020】
また、上述のようにTiOx膜18において1.9≦x≦1.95であるとき、TiOx膜18およびTiO2膜21の各膜厚は、可視光および紫外光に対して良好な光電変換特性が得られる組み合わせであることが好ましく、その組み合わせは、TiOx膜18の膜厚が0.7〜1μm、TiO2膜21の膜厚が0.2〜0.6μmであることを実験的に確認した。特に、TiOx膜18の膜厚が0.7μm、TiO2膜21の膜厚が0.4μmである組み合わせが、最も高い光電流値が得られる上で好ましい。よって、TiOx膜18の膜厚0.7〜1μmおよびTiO2膜21の膜厚0.2〜0.6μmの範囲を逸脱すると、光電流値が低下するため好ましくない。これは、本発明の各光触媒膜の膜厚が薄すぎると光を吸収するのに不十分であり、かつ膜厚が厚すぎると、各光触媒膜で発生したキャリアの再結合中心として作用する結晶欠陥が多くなることにより、光電変換効率が低下するためであると考えられる。なお、TiOx膜18とTiO2膜21の積層順位を逆にすると、TiOx膜の部分で紫外光が吸収されてTiO2膜による紫外光の受光量が減少し、TiO2膜による紫外光領域の光電変換効率が低下し、結果として2層化した光触媒層全体としての光電変換効率が本発明に比して低下する。
【0021】
光触媒膜22において、TiOx膜18は、上記組成比および膜厚に高精度に制御できる成膜方法であれば特に限定されないが、例えばルチル型結晶構造のTiO2焼結体をターゲットとして用いたマグネトロンスパッタ法が好ましい。この場合、成膜条件は使用する成膜装置にも依存するが、例えばRF電源パワーは250から350W、基板温度は550〜700℃、ガス組成比はAr:O2=25:0(sccm)、成膜圧力は1〜3Pa、基板−ターゲット間距離は60〜80mm、成膜開始チャンバー内真空度は9×10-4Pa以下を挙げることができる。なお、TiOx膜18の膜厚は成膜時間により調整する。
【0022】
また、TiO2膜21も上記膜厚に高精度に制御できる成膜方法であれば特に限定されないが、TiOx膜18と同様のマグネトロンスパッタ法が同一装置で成膜できる上で好ましい。この場合も、成膜条件は使用する成膜装置にも依存するが、例えばRF電源パワーは250から350W、基板温度は200〜400℃、ガス組成比はAr:O2=25:1〜5(sccm)、成膜圧力は1〜3Pa、基板−ターゲット間距離は60〜80mm、成膜開始チャンバー内真空度は2×10-3Pa以下を挙げることができる。なお、TiO2膜21の膜厚は成膜時間により調整する。
【0023】
(水分解装置の説明)
水分解装置は、受光面側が透明な筐体中に、水分解用半導体光電極30と電解質水溶液31とを有してなる。筐体は、水分解用半導体光電極30の周囲部を嵌め込んで保持するフレーム32と、このフレーム32の受光面側の開口部を覆うカバーガラス26とを備え、フレーム32にて保持された水分解用半導体光電極30とカバーガラス26との間には前記電解質水溶液31を入れる空間部が設けられている。
【0024】
この実施形態1では、水分解用半導体光電極30は正面視四角形であり、フレーム32も四角形に形成されており、フレーム32の上辺には、電解質水溶液31の循環と内部で発生した水素(H2)35および酸素(O2)34の取り出しのための2つの開口部36a、37aが設けられており、これらの開口部36a、37aはパイプ36、37を介して外部の電解質水溶液循環装置および水素35と酸素34を分離するための水素分離膜または高分子膜を備えた公知のガス分離装置に接続されている。
電解質水溶液31としては、水酸化ナトリウム水溶液、硫酸カリウム水溶液などを用いることができる。また、フレーム32は、電解質水溶液31によって腐食しない金属材料、例えばアルミニウム、ステンレス、真鍮等にて形成される。
【0025】
水分解用半導体光電極30は、正面視四角形の色素増感型太陽電池Sと、この色素増感型太陽電池Sの受光面に前記第1透明導電膜19aを介して形成された正面視四角形の前記光触媒膜22とを備えてなる。なお、光触媒膜22は、色素増感型太陽電池Sよりも少し小さいサイズに形成されている。
【0026】
(色素増感型太陽電池の説明)
前記色素増感型太陽電池Sは、前記第1透明導電膜19aが形成された第1面を有する透明基板15と、この透明基板15の第1面と反対側の第2面に形成された第2透明導電膜19bと、金属基板25と、この金属基板25と第2透明導電膜19bとの間に形成された電解質層29および色素を担持させた半導体層27と、第1透明導電膜19aと第2透明導電膜19bとを電気的に接続するための導電部材17aと、一端が第2透明導電膜19bと電気的に接続され、他端が光触媒膜22の受光面に沿って光触媒膜22と接触せずに延びるワイヤ電極23とを有してなる。
【0027】
透明基板15としては、通常、色素増感型太陽電池に使用されるものであれば特に限定されず、例えば、ガラス基板、プラスチック基板などが挙げられ、透明性の高い基板が好ましい点で特にガラス基板が好ましい。透明基板15の厚さは、太陽電池を構造的に支持し得る程度であればよく、例えば、0.1〜5mm程度である。また、透明基板15の大きさは、水分解用半導体電極として用いるのに適当な大きさであればよく、例えば縦100〜500mm、横100〜500mmが好ましい。
【0028】
第1および第2透明導電膜19a、19bは、通常、色素増感型太陽電池に使用されるものであれば特に限定されるものではなく、例えばITO(In23−SnO2)膜、FドープSnO2膜などが挙げられ、形成方法としては、材料となる成分の真空蒸着法、スパッタリング法、熱CVD法、PVD法などの気相法、ゾルゲル法によるコーティング法などの公知の方法が挙げられる。第1および第2透明導電膜19a、19bの膜厚は、0.1〜0.5μm程度が好ましい。
【0029】
金属基板25としては、ステンレス、Ti、Ptなどが挙げられ、特にステンレス基板が好ましく、厚さは、0.1〜1mmが好ましい。
【0030】
この色素増感型太陽電池Sは、複数の太陽電池セルから構成されていてもよい。図1の場合、受光面側から、第2透明導電膜19b、半導体層27、電解質層29および金属基板25がこの順に積層されてなる第1太陽電池セルと、受光面側から、第2透明導電膜19b、電解質層29、半導体層27および金属基板25がこの順に積層されてなる第2太陽電池セルの、2つ太陽電池セルから色素増感型太陽電池Sが構成されている。この2つの太陽電池セルは、第2透明電極19bを二分割し、一方の第2透明導電膜19b上に一方の半導体層27を形成し、他方の第2透明導電膜19bと対向する領域の金属基板25上に他方の半導体層27を形成し、半導体層27−金属基板25間および第2透明導電膜19b−半導体層27間に一括して電解液を流し込んで封入することにより形成されている。第2透明導電膜19bを分離する方法としては、レーザーによるスクライブにより除去する方法が挙げられる。
なお、図示省略するが、色素増感型太陽電池Sは、第2透明導電膜19bを分割せず、第2透明導電膜19bのほぼ全面あるいは金属基板25のほぼ全面に半導体層27を形成して電解液を流し込むことにより、1つの太陽電池セルを構成してなるものであってもよい。
【0031】
色素担持させた半導体層27を構成する半導体としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウムなどの公知の半導体が挙げられ、これらの半導体は2種類以上を混合して用いることもできる。これらの中でも、光電変換効率、安定性、安全性の点から酸化チタンが特に好ましい。このような酸化チタンとしては、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、無定形酸化チタン、メタチタン酸、オルソチタン酸などの種々の酸化チタン、含酸化チタン複合体などが挙げられるが、これらはいずれであってもよい。
【0032】
半導体層27は、次のようにして第2透明導電膜19bおよび金属基板25上に形成することができる。
まず、材料となる半導体微粒子を、高分子材料などの有機化合物と共に、分散剤、有機溶媒、水などに加え、分散させて懸濁液を調製する。得られた懸濁液を、ドクターブレード法、スキージ法、スピンコート法、スクリーン印刷法など公知の方法により、金属基板25上に塗布する。
【0033】
その後、得られた塗膜を乾燥・焼成することにより、多孔性の半導体層27を得る。
乾燥・焼成においては、使用する金属基板や半導体微粒子の種類により、温度、時間、雰囲気などの条件を適宜調整する必要がある。焼成は、例えば、大気雰囲気下また不活性ガス雰囲気下、50〜800℃程度の温度で、10秒〜12時間程度で行うことができる。この乾燥および焼成は、単一の温度で1回または温度を変化させて2回以上行うことができる。
半導体層27の膜厚は、特に限定されるものではないが、透過性、光電変換効率などの観点から、0.5〜35μm程度が好ましい。
【0034】
半導体微粒子としては、市販されているもののうち、透過型電子顕微鏡により観察される粒径が1〜500nm程度である、上記のような半導体の粒子が挙げられる。光電変換効率を向上させるためには、より多くの色素を半導体層27に吸着させることが必要であり、このために半導体の比表面積は大きなものが好ましく、1〜200m2/g程度が好ましい。
【0035】
半導体層27に担持させて光増感剤として機能する色素としては、種々の可視光領域および/また赤外光領域に吸収を有するものであれば、特に限定されない。半導体層27に色素を強固に吸着させるためには、色素分子中にカルボキシル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、スルホン酸基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基などのインターロック基を有するものが好ましく、これらの中でも、カルボキシル基が特に好ましい。なお、インターロック基は、励起状態の色素と多孔性半導体層27の伝導帯端との間の電子移動を容易にする電気的結合を提供する。
【0036】
インターロック基を有する色素としては、例えば、ルテニウム錯体色素、クマリン系色素、アゾ系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポリフィリン系色素、フタロシアニン系色素、ベリレン系色素、インジゴ系色素、ナフタロシアニン系色素などが挙げられる。
【0037】
半導体層27に色素を吸着させる方法としては、例えば、半導体層を色素を溶解した溶液(色素吸着用溶液)に浸漬する方法が挙げられる。
色素を溶解するために用いる溶媒としては、色素を溶解し得るものであれば、特に限定されず、例えば、(無水)エタノールなどのアルコール系、アセトンなどのケトン系、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリルなどの窒素化合物類、クロロホルムなどのハロゲン化脂肪族炭化水素類、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、ベンゼンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチルなどのエステル類、水などが挙げられる。これらの溶剤は2種類以上を混合して用いることもできる。
色素吸着用溶液中の色素濃度は、使用する色素および溶媒の種類により適宜調整することができ、吸着機能を向上させるためにはある程度高濃度である方が好ましい。例えば5×10-5モル/リットル以上であればよい。
半導体層27を色素吸着用溶液に浸漬する際の条件、すなわち、雰囲気、温度、圧力および浸漬時間は特に限定されるものではなく、使用する色素、溶媒の種類、溶液の濃度などにより適宜調整することができる。例えば、大気圧下、室温程度が挙げられる。
【0038】
また、半導体層27を形成しない領域の第2透明導電膜19b上および金属基板25上に、触媒層(例えば白金20)を形成してもよい。
【0039】
前記導電部材17aは、四角形の透明基板15の一辺に沿って所定間隔で複数形成された貫通孔に導電性材料を埋め込むことにより形成されている。なお、透明基板15の前記一辺との対向辺に沿って、かつ前記複数の導電部材17aに対応する位置に、所定間隔で複数の別の貫通孔が形成されると共に、これら貫通孔に導電部材17bが埋め込まれている。透明基板15における複数の導電部材17bを有する部分は、電解質水溶液31側に露出している。このように、透明基板15の表裏面の第1、第2透明電極19a、19bを電気的に接続するための導電部材17a、17bが埋設されているため、リード線による接続が不要であり、光触媒膜と色素増感型太陽電池とをモジュール化する煩雑さを軽減することができる。
前記ワイヤ電極23は、その一端が、透明基板15における前記複数の導電部材17bにそれぞれ導電性接着剤により接続されて複数本設けられている。また、ワイヤ電極23は、光触媒膜22と接触しないよう折り曲げられ、光触媒の受光面に沿って隙間をもって延びている。このワイヤ電極23は、水分解装置を横へ寝かせたり傾斜させて使用してもワイヤ電極23の先端が光触媒膜22と接触しないように、例えば白金にて適度な剛性を持たせるように形成することが好ましいが、先端をカバーガラス26に固定してもよい。このように、ワイヤ電極を光触媒膜側へ近接して対向配置することにより、色素増感型太陽電池を電解質液中に浸漬する構造を避けて耐久性の向上を図ることができると共に、アノードとなる二酸化チタン膜とカソードとなるワイヤ電極との距離を近づけて抵抗を減らすことができる。
【0040】
(水分解装置の作製)
次に、上述の水分解装置の作製手順の一例を説明する。
まず、図4(a)に示すように、横100mm×縦100mm×厚さ1mmのガラス基板15に直径0.5mmの貫通孔を2列×4個形成し、その貫通孔にAgペーストをディスペンサーなどにより充填し、約250℃で焼成して、Ag導電部材17a、17bを形成する。次に、ガラス基板15の第1面に、Ag導電部材17aの1列を覆うようにITO(In23−SnO2)からなる第1透明導電膜19aをスパッタ法にて膜厚約0.1μmで成膜する。続いて、ガラス基板15の第2面に、各列のAg導電部材17a、17bを覆い、かつ基板中央で分離された一対の第2透明導電膜19bを第1透明導電膜19aと同様の方法、膜厚で形成する(図4(b))。
【0041】
次に、図4(c)に示すように、ガラス基板15の第1面側の第1透明導電膜19a上のAg導電部材17bを除く領域に、酸素欠損酸化チタン膜であるTiOx膜18(x=1.93)を95mm×90mmのサイズでかつ膜厚約0.7μmで成膜する。成膜に際しては、高周波マグネトロンスパッタ装置を用い、ターゲットは直径7インチで厚み5mmのルチル型結晶構造の二酸化チタン(TiO2)焼結体を用い、ガラス基板15を試料ホルダーに設置し、基板加熱ヒーターで約600℃に加熱して、高周波スパッタリングを行うことにより、TiOx膜18(x<2.0)を形成できる。なお、その他の成膜条件は上記範囲に設定することができる。
【0042】
次に、図4(d)に示すように、同じ装置を用いて、TiOx膜18上にTiO2膜21を膜厚約0.4μmで成膜する。これにより、TiOx膜18とTiO2膜21とが積層した光触媒膜22を形成できる。なお、成膜条件は上記範囲に設定することができる。
【0043】
次に、ガラス基板15をチャンバーから取り出し、ガラス基板15の第2面側の一方の第2透明導電膜19b上に、色素増感型太陽電池の発電層となる酸化チタン層27を膜厚5〜10μmで形成する。この酸化チタン層27の形成に際しては、酸化チタン粒子を含むペーストをスクリーン印刷法により印刷し、約400℃で焼成して形成できる。このとき、もう一方の第2透明導電膜19b上に予め塩化白金酸のメタノール溶液を薄く塗布しておくことにより、焼成後、第2透明導電膜19b上に触媒層としての白金20が析出する(図4(e))。
【0044】
次に、図5(a)に示すように、露出している各Ag導電部材17bのそれぞれに導電性接着剤24にて白金ワイヤ電極23の一端を固定する。
次いで、図5(b)に示すように、ガラス基板15と同サイズで厚さが約0.1mmのステンレス基板25の略半分の領域に、酸化チタン粒子を含むペーストをスクリーン印刷法により印刷し、約400℃で焼成して、色素増感型太陽電池の発電層となる酸化チタン層27を膜厚5〜10μmで形成する。このとき、ステンレス基板25の残りの略半分の領域に予め塩化白金酸のメタノール溶液を薄く塗布しておくことにより、焼成後、触媒層としての白金20がステンレス基板25上に析出する。
【0045】
その後、上記工程を経たガラス基板15とステンレス基板25を色素増感剤溶液に約12時間浸漬し、乾燥させることにより、色素増感剤を各酸化チタン層27に担持させる。
次いで、図5(c)に示すように、光触媒膜22を有するガラス基板15とステンレス基板25とを重ね合わせ、その周囲の電解質溶液注入用の注入口以外の部分をエポキシ樹脂28で封止する。そして、ヨウ素電解質溶液29を注入口から注入し、注入口をエポキシ樹脂で封止し、水分解用半導体光電極30を形成する。
続いて、図5(d)に示すように、この水分解用半導体光電極30とカバーガラス26の4辺をアルミ製のフレーム32で固定しモジュール化する。
その後、フレーム32の一方の開口部36から水分解用半導体光電極30とカバーガラス26の間に0.1MNaOH水溶液からなる電解質水溶液31を入れることにより、図1に示した水分解装置を得ることができる。
【0046】
この本発明の水分解装置は、図1に示すように、水分解用半導体光電極30の光触媒膜22側から電解質水溶液31を介して太陽光33を照射することにより、太陽光33のスペクトルのうち波長約380nm以下の光はTiO2膜21で吸収され、波長約380〜500nmの光はTiOx膜18で吸収され、電子(e-)と正孔(h+)を生じる。TiO2膜21と電解質水溶液31の接触電位差により、TiO2膜21およびTiOx膜18中で励起された電子は、ガラス基板15上の第1透明導電膜19aで集められ、Ag導電部材17aを通って色素増感型太陽電池Sの対向電極となる第2透明導電膜19bに流れる。一方、正孔はTiO2膜21の表面に移動する。TiO2膜21の表面の正孔は、次の式のように、水を酸化して酸素34を発生させる。
4h+ + 2H2O → O2 + 4H+
【0047】
光触媒膜22を透過した波長約500nm以上の太陽光33のスペクトルは、色素増感型太陽電池Sの酸化チタン層27で吸収され、光起電力を生じる。色素増感型太陽電池Sは、光触媒膜22で励起された電子のエネルギー準位を水素発生電位よりも十分にマイナスに押し上げる。したがって、水素発生電極であるワイヤ電極23では、次の式のように水分子が還元されて水素35が発生する。
4H+ + 4e- → 2H2
【0048】
このように、本発明の水分解装置に太陽光を照射することにより、水を酸素と水素に分解することができる。また、光触媒膜22は、酸素欠損酸化チタン膜であるTiOx膜18上に二酸化チタン膜21(TiO2膜)を積層しているため、太陽光はまず二酸化チタン膜21に照射される。光触媒膜22の積層順を逆にした場合、つまり最初に酸素欠損酸化チタン膜に太陽光が照射される場合と比較して、光電変換効率が向上し、より多くの水素を生成することができる。
【0049】
<実施形態2>
図6は本発明の水分解装置の実施形態2を示す概略側断面図である。この実施形態2は、電解質水溶液31を収容した空間部において酸素34と水素35を分離した状態で発生させるように構成されたこと以外は、実施形態1と同様の構成である。以下、実施形態2における実施形態1とは異なる点を主に説明する。なお、図6において、図1と同様の要素には同一の符合を付している。
【0050】
この水分解装置は、筐体の空間部における光触媒膜22とワイヤ電極23との間に、イオン導電膜40が設けられると共に、フレーム32のイオン導電膜40を挟んだ両側部分に電解質水溶液31を流出させる開口部38a、39aが形成されている。このように構成することにより、水分解装置に太陽光33が照射すると、TiO2膜21の表面から酸素34が発生し、かつワイヤ電極23の表面から水素35が発生し、酸素34および水素35はイオン導電膜40を透過せずに個別の開口部38a、39aから電解質水溶液31と一緒に外部に流出する。これらの開口部38a、39aは、図示しないパイプを介して外部の電解質水溶液循環装置に接続されており、パイプの電解質水溶液循環装置の手前部分で酸素34および水素35はそれぞれ回収される。したがって、実施形態1では必要であったガス分離装置が実施形態2では不要となる。なお、図示省略するが、筐体の空間部内に電解質水溶液31を流入させるための開口部は、フレーム32の光触媒膜22側およびワイヤ電極23側の両方に形成され、各開口部はパイプを介して電解質水溶液循環装置と接続される。
【0051】
<他の実施形態>
実施形態1および2では、色素増感型太陽電池Sが、第1太陽電池セルと第2太陽電池セルとをモジュール化して構成された場合を例示したが、隣接する太陽電池セルの半導体層27と電解質層29の積層順位を逆にさせて3つ以上の太陽電池セルをモジュール化してもよい。さらには、図1〜6で説明した水分解用半導体光電極を1単位として、複数単位の水分解用半導体光電極を1つの筐体内に設けてユニット化してもよい。
【実施例】
【0052】
一面に透明導電膜を有する複数枚の透明基板を用意し、各透明基板の透明導電膜上に、異なる膜厚のTiOx膜(x=1.93)を形成し、各TiOx膜上に異なる膜厚のTiO2膜を形成して、20種類の光触媒膜を形成した。
TiOx膜の成膜に際しては、高周波マグネトロンスパッタ装置を用い、ターゲットは直径7インチで厚み5mmのルチル型結晶構造の二酸化チタン(TiO2)焼結体を用い、基板温度600℃、高周波パワー350W、真空チャンバーの真空度2Pa、導入ガスはアルゴンガスのみ、基板−ターゲット間距離75mmの条件に設定し、成膜時間を変えて膜厚を0.5μm、0.7μm、1μm、1.2μmおよび1.5μmの5種類のTiOx膜を形成した。
TiO2膜の成膜に際しては、同じ装置を用い、基板温度400℃、高周波パワー300W、真空チャンバーの真空度2Pa、導入ガスはアルゴンガスと酸素の混合ガス(混合比25:3)、基板−ターゲット間距離75mmの条件に設定し、成膜時間を変えて膜厚を0.2μm、0.4μm、0.6μmおよび0.8μmの4種類のTiO2膜を形成した。
【0053】
(比較例1)
透明基板の透明導電膜上に、実施例と同様のTiOx膜の成膜条件にて膜厚1.5μmのTiOx膜(x=1.93)のみ形成したものを、比較例1とした。
(比較例2)
透明基板の透明導電膜上に、実施例と同様のTiO2膜の成膜条件にて膜厚0.8μmのTiO2膜のみ形成したものを、比較例2とした。
【0054】
実施例、比較例1および2の光触媒膜について光電気化学測定を行い、光電流を評価した。その結果を表1に示す。測定には、電解液として0.1MNaOH水溶液、対極はPt、参照電極は銀塩化銀電極、光源は波長350nm以下のカットオフフィルターを備えた300Wキセノンランプを用いた。光電流値は、電気化学測定で得られた電流−電位曲線の0.5V時の電流値(単位:mA/cm2)を表1に示した。
【0055】
【表1】

【0056】
表1から、TiOx膜単独およびTiO2膜単独よりも、TiOx膜とTiO2膜との積層膜が良好な光電変換効率を得られ易いことが分かり、さらに、TiO2膜の膜厚を一定とした場合にTiOx膜は0.7〜1μmが良好な光電変換効率を得られ、TiOx膜の膜厚を一定とした場合にTiO2膜は0.2〜0.6μmが良好な光電変換効率を得られることが分かった。また、TiOx膜の膜厚が0.7〜1μmであり、TiO2膜の膜厚が0.2〜0.6μmである場合に高い光電変換効率が得られることが分かった。さらに、TiOx膜18の膜厚が0.7〜1μm、TiO2膜21の膜厚が0.4μmである組み合わせがより高い光電流値を得られ、特にTiOx膜18の膜厚が0.7μm、TiO2膜21の膜厚が0.4μmである組み合わせが最も高い光電変換効率を得られることが分かった。
【0057】
最も高い光電流値を示した膜厚0.7μmのTiOx膜と膜厚0.4μmのTiO2膜との積層膜(実施例)および比較例1、2における光の各波長での光電変換効率を図7に示した。この際、300Wキセノンランプと波長フィルターを組み合わせて、特定の波長を有する光を照射した。変換効率は、照射光のエネルギー値から光子数を求め、電気化学測定で得られた電流−電位曲線の0.5V時の光電流値から電子数を求め、この電子数を光子数で除して求めた。なお、図7のグラフの縦軸は得られた光電流の最大値で規格化している。
【0058】
図7から、本発明の光触媒膜は、紫外光領域でも良好な光電変換効率を示し、可視光領域でも光電変換特性を有していることが分かる。この結果は、本発明の光触媒膜における膜厚0.4μmの二酸化チタン膜(TiO2膜)が約380nm以下の光を吸収するのに十分であり、かつ膜厚0.7μmの酸素欠損酸化チタン膜(TiOx膜)が波長約380〜500nmの光を吸収するのに十分であること、および、発生したキャリアの再結合中心として作用する結晶欠陥が少ない二酸化チタン膜(TiO2膜)および酸素欠損酸化チタン膜(TiOx膜)を形成したことによる再結合の減少との複合効果によるものであると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の水分解装置は、非化石燃料に代わるクリーンエネルギーである水素を製造する水素発生装置として好適であり、太陽光が照射される例えば建築物の屋上や屋根に設置して水素を発生させることができるため、省エネルギーにも貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の水分解装置の実施形態1を示す概略側断面図である。
【図2】図1の水分解装置の正面図である。
【図3】酸素欠損二酸化チタン膜および二酸化チタン膜についての吸光度と光波長との関係を示すグラフである。
【図4】図1の水分解装置の製造プロセスを示す概略断面図である。
【図5】図3の製造プロセスの続きを示す概略断面図である。
【図6】水分解装置の実施形態2を示す概略側断面図である。
【図7】実施例の光触媒膜の光電変換効率を示すグラフである。
【図8】従来の水分解装置を示す概略側断面図である。
【符号の説明】
【0061】
15 透明基板(ガラス基板)
17 導電部材(Ag導電部材)
18 酸素欠損酸化チタン膜(TiOx膜)
19a 第1透明導電
19b 第2透明導電膜、
20 白金
21 二酸化チタン膜(TiO2膜)
22 光触媒膜
23 ワイヤ電極(Ptワイヤ電極)
24 導電性接着剤
25 金属基板(ステンレス基板)
26 カバーガラス
27 半導体層(酸化チタン層)
28 エポキシ樹脂
29 電解質層(ヨウ素電解質溶液)
30 水分解用半導体光電極
31 電解質水溶液
32 フレーム
33 太陽光
34 酸素
35 水素
36 パイプ
36a、37a、38a、39a 開口部
37 パイプ
40 イオン導電膜
S 色素増感型太陽電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板の一面に有する透明導電膜上に形成される第1光触媒膜と、この第1光触媒膜上に形成された第2光触媒膜とを有してなり、前記第1光触媒膜が、酸素欠損となる化学量論比で酸素とチタンを含有するTiOx膜(x<2.0)からなり、前記第2光触媒膜がTiO2膜からなることを特徴とする光触媒膜。
【請求項2】
前記TiOx膜の膜厚が0.7〜1μmであり、前記TiO2膜の膜厚が0.2〜0.6μmである請求項1に記載の光触媒膜。
【請求項3】
前記TiOx膜において、xが1.9〜1.95である請求項1または2に記載の光触媒膜。
【請求項4】
受光面側から、第2光触媒膜/第1触媒膜を有する前記請求項1〜3のいずれか1つに記載の光触媒膜と、第1透明導電膜と、透明基板/第2透明導電膜/電解質層および色素を担持させた半導体層/金属基板を有する色素増感型太陽電池とを少なくとも備えてなり、
前記透明基板に、透明基板の表裏面の前記透明導電膜を電気的に接続するための導電部材が設置されてなることを特徴とする水分解用半導体光電極。
【請求項5】
一端が前記第2透明導電膜と電気的に接続され、他端が前記第2光触媒膜の受光面に沿って第2光触媒膜と接触せずに延びるワイヤ電極をさらに有してなる請求項4に記載の水分解用半導体光電極。
【請求項6】
色素増感型太陽電池が、1つまたは複数の太陽電池セルからなる請求項4または5に記載の水分解用半導体光電極。
【請求項7】
受光面側が透明な筐体中に、請求項4〜6のいずれか1つに記載の水分解用半導体光電極と電解質水溶液とを有してなり、前記筐体が、水素および酸素の取り出し口を有する水分解装置。

【図3】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−117811(P2007−117811A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−310268(P2005−310268)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】