説明

光記録媒体

【課題】高密度記録に優れた光記録媒体を提供すること
【解決手段】波長λの光ビーム及び開口数NAのレンズにより処理される光記録媒体は、トラック又はピット列を備え、前記トラック又はピットの幅TPが、0.480≦TP×NA/λ<1.026の条件を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、光ビームを照射することで状態を可逆的に変化させ、情報を記録する光記録媒体に関し、特に状態変化が、記録を保持する薄膜の原子配列が非晶質と結晶質の間を遷移する相変化光記録媒体に関する。また、この光記録媒体を処理する情報再生装置、情報再生方法、情報記録装置、及び情報記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のデジタル情報処理機器の普及に伴い、例えば、高密度・大容量・高速オーバーライトに優れた相変化光記録媒体が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
ここで、光記録媒体の記録再生の限界について説明する。超解像現象等の回折限界以下の物理現象を応用しない、いわゆるCD、DVD等の光ディスク、もしくは光記録媒体において、該媒体に記録するとき、および記録された信号を読み出す、再生過程におけるマーク・サイズの限界値、下限は用いられるレンズ等の光学系と媒体の構成によって決定される。特に光ピックアップに用いる対物レンズのNA(開口数)と媒体の光入射側の基板厚、またはカバー層厚は、用いる光の波長と共に非常に重要な構成要素である。すなわち、光の回折現象によって、用いる光をどの程度まで縮小することができるのかが、用いる対物レンズのNAによって決まる。CD、DVD等の光記録媒体においては、おおむね回折限界程度にまで用いる光、すなわちレーザービームを絞り、記録及び再生に用いてきた。再生に関しては、種々信号処理技術を用いることで、主に媒体の半径方向とは直行する方向、ピットの並び方向、すなわちタンデンシャル方向に対しては、回折限界以下の信号を読み取る、すなわち再生する方法が提案されているものの、実際には信号を記録できていない場合、もしくは記録されていても非常に弱い場合、すなわち検出できない場合を想定して、信号処理方法を工夫しているため、記録できているかどうかは再生される信号にほとんど影響を与えない。そのため、回折限界以下の信号を読み取っているとは言い難い。一方、記録方法については明確な方法は開示されておらず、多くの研究の余地が残されていた。加えて、回折限界程度のビームを用いて、回折限界以下の信号を記録、または再生すること、通常の考えではシステムの限界を超えているとの認識から、ほとんど検討されていないと言っても良い状況にあった。
【0004】
ビーム径や回折限界について、種々定義することができるが、ここでは以下のように定義する。ビーム径は、レーザ光を想定し、その強度分布が、いわゆるガウシアン分布で近似できると仮定して良い。このときのビーム強度が1/e2となるビームの直径をビーム径と定義する。以下で述べる回折限界以下のピット・サイズとは、媒体の半径方向とは直行する方向、ピットの並び方向については、ビーム径に概ね1/3以下のサイズと定義する。現在実証されているレベルは、33%以下であった。すなわち、回折限界ぎりぎりに絞った光では正確に読み出すことが難しい領域のピット・サイズを指す。一方、媒体の半径方向、すなわちラジアル方向については書き込み、または読み出すトラック、またはピット列の幅が、ビーム径の概ね1/2以下の場合を指す。なお、現在実証されているレベルは、66%以下であった。従って、書き込み、または読み出しを行わないトラックのサイズは、無関係である。同様に回折限界ぎりぎりに絞った光では正確に読み出すことが難しい領域のトラック幅を指す。
【0005】
なお、ビーム径は最もビームを絞った領域で定義される。レーザ光を用いる場合には、いわゆるビーム・ウエスト近傍となる。従って、ビーム径は光ピックアップに用いられるレンズ系のNA、記録媒体の基板厚などから規定される。
【特許文献1】特開2005−135490
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の情報量の増大傾向により、さらなる高密度記録に優れた光記録媒体が要望されている。
【0007】
本発明の目的は、高密度記録に優れた光記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態の一例に係る光記録媒体は、波長λの光ビーム及び開口数NAのレンズにより処理される光記録媒体であって、トラック又はピット列を備え、前記トラック又はピットの幅TPが、0.480≦TP×NA/λ<1.026の条件を満たす。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高密度記録に優れた光記録媒体を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
発明者らは、上記の観点を熟慮した結果、以下に示す点が重要であるとの結論に至った。すなわち、光記録媒体のトラック幅(TB)、もしくはピット列の幅(TB)と該光記録媒体を記録再生する光ディスク装置に用いられる光ピックアップの光学系の開口数NA、記録再生に用いる光の波長λとから、TP×NA/λが0.480以上、1.026未満である光記録媒体が好適である。波長780[nm]を用いた場合には、TP×NA/λが0.769以上、1.026未満が更に好適である。なお、上限としたTP×NA/λ=1.026は従来技術でも対応できるが、それ以下では困難であった。一方、下限値であるTP×NA/λ=0.480以下では、用いるビーム径に対してトラック幅が小さくなり過ぎるため、効果が小さくなってしまうため、好適ではなくなる。波長650[nm]を用いた場合には、TP×NA/λが0.530以上、0.683未満が更に好適である。同様に上限としたTP×NA/λ=0.683は従来技術でも対応できるが、それ以下では困難であった。一方、下限値であるTP×NA/λ=0.530以下では、用いるビーム径に対してトラック幅が小さくなり過ぎるため、効果が小さくなってしまうため、好適ではなくなる。波長405[nm]を用いた場合には、TP×NA/λが0.481以上、0.672未満が更に好適である。同様に上限としたTP×NA/λ=0.672は従来技術でも対応できるが、それ以下でき困難であった。一方、下限値であるTP×NA/λ=0.481以下では、用いるビーム径に対してトラック幅が小さくなり過ぎるため、本実施形態の効果が小さくなってしまうため、好適ではなくなる。
【0011】
光記録媒体のトラック幅(TB)、もしくはピット列の幅(TB)と該光記録媒体を記録再生する光ディスク装置に用いられる光ピックアップの光学系の開口数NA、記録再生に用いる光の波長λとから、次のTP×NA/λが0.480以上、1.026未満である光記録媒体を記録再生する記録再生装置が好適である。波長780[nm]を用いた場合には、TP×NA/λが0.769以上、1.026未満が、波長650[nm]を用いた場合には、TP×NA/λが0.530以上、0.683未満が、波長405[nm]を用いた場合には、TP×NA/λが0.481以上、0.672未満が、更に好適である。条件に関する状況は、前記の通りである。
【0012】
また、光記録媒体のトラック幅(TB)、もしくはピット列の幅と該光記録媒体を記録再生する光ディスク装置に用いられる光ピックアップの光学系の開口数NA、記録再生に用いる光の波長λとから、次のTP×NA/λが0.480以上、1.026未満である光記録媒体に記録再生する方法が好適である。波長780[nm]を用いた場合には、TP×NA/λが0.769以上、1.026未満が、波長650[nm]を用いた場合には、TP×NA/λが0.530以上、0.683未満が、波長405[nm]を用いた場合には、TP×NA/λが0.481以上、0.672未満が、更に好適である。同様に条件に関する状況は、前記の通りである。
【0013】
また、光記録媒体において、記録膜が少なくともGeと、Sbと、Teとを含有し、その組成GexSbyTez かつx+y+z=100とするとき、GeSbTe三元相図上で、x=55・z=45と、x=45・z=55と、x=10・y=28・z=42と、x=10・y=36・z=54とで囲まれた組成であることが好適である。
【0014】
記録膜は、前記組成のスパッタリング・ターゲットを用いて、該スパッタリング・ターゲットをAr等の不活性ガスを用いてスパッタすることにより得られる。なお、記録膜中のGeは、比較的酸化し易い。出発原料のスパッタリング・ターゲット、およびスパッタに用いるAr等の不活性ガス中に微量ながら酸素が含まれる。そのため、該記録膜には微量の酸素の混入は避けられない。また、該記録膜と接する層に酸化物薄膜を用いる場合、酸素は微量に記録膜中に拡散するため更に酸素量は増えることになる。このように記録膜にGe、Sb、およびTe以外に酸素(O)などが検出されても本実施形態の趣旨を逸脱するものではない。記録膜についても同様にスパッタリング・ターゲットの組成と種々の条件で形成された薄膜の組成との間には若干の組成ずれがあることは良く知られている。一般的には±1[at.%]程度の差は、特別な場合を除いては同じ組成と認識されていると言える。以下同様である。
【0015】
また、光記録媒体において、前記記録膜の組成の一部をビスマスBiおよび/またはインジウムInおよび/またはスズSnで置換し、置換後の組成を(Ge(1-w) Snwx (Sb(1-v)(Bi(1-u) In u) vy Tez かつx+y+z=100で表したときに、この組成におけるw、vおよびuが、0≦w<0.5かつ0<v<1かつ0≦u≦0.7を満たすのが好適である。
【0016】
また、光記録媒体において、記録膜が少なくともGeと、Biと、Teとを含有し、その組成GexBiyTez かつx+y+z=100とするとき、GeBiTe三元相図上で、x=55・z=45と、x=45・z=55と、x=10・y=28・z=42と、x=10・y=36・z=54とで囲まれた組成であることが好適である。
【0017】
また、光記録媒体において、記録膜が少なくともGeと、Sbと、Te、とN(窒素)を含有し、うちGe、Sb、Teの間の組成をGexSbyTez かつx+y+z=100であらわすとき、GeSbTe三元相図上で、x=55・z=45と、x=45・z=55と、x=10・y=28・z=42と、x=10・y=36・z=54とで囲まれた組成領域のGeSbTe系化合物にN(窒素)を1〜5at.%添加することが好適である。
【0018】
一方、こちらも同様になお、記録膜中のGeは、比較的酸化し易い。記録膜は、前記組成のスパッタリング・ターゲットを用いて、該スパッタリング・ターゲットをAr等の不活性ガスを用いてスパッタすることにより得られる。なお、記録膜中のGeは、比較的酸化し易い。出発原料のスパッタリング・ターゲット、およびスパッタに用いるAr等の不活性ガス中に微量ながら酸素が含まれる。加えて、スパッタガスに窒素(N2)を含むガスを用いる場合には、スパッタガス中に微量の酸素(O)がやはり含まれる。そのため、該記録膜には微量の酸素の混入は避けられない。また、該記録膜と接する層に酸化物薄膜を用いる場合、酸素は微量に記録膜中に拡散するため更に酸素量は増えることになる。このように記録膜にGe、Sb、およびTe以外に酸素(O)などが検出されても本実施形態の趣旨を逸脱するものではない。以下同様である。
【0019】
また、光記録媒体において、前記記載の記録膜の組成の一部をビスマスBiおよび/またはインジウムInおよび/またはスズSnで置換し、置換後の組成を(Ge(1-w) Snwx (Sb(1-v)(Bi(1-u) In u) v y Tez かつx+y+z=100で表したときに、この組成におけるw、vおよびuが、0≦w<0.5かつ0<v<1かつ0≦u≦0.7となるように構成され、前記組成を持つGeSnSbTe、GeSnSbTeIn、GeSbTeIn、GeSbTeBiIn、GeSbSnTeBiIn、GeSbTeBi、GeSnSbTeBi、GeSnSbTeBiIn系化合物に窒素Nを1ないし5at.%添加することが好適である。
【0020】
また、光記録媒体において、記録膜が少なくともGeと、Biと、Teと、N(窒素)を含有し、うちGe、Bi、Teの間の組成をGexBiyTezかつx+y+z=100であらわすとき、GeBiTe三元相図上で、x=55・z=45と、x+=45・z=55と、x=10・y=28・z=42と、x=10・y=36・z=54とで囲まれた組成領域のGeBiTe系化合物にN(窒素)を1〜5at.%添加することが好適である。
【0021】
また、光記録媒体において、記録膜が少なくともSbと、Teとを含有し、その組成をSbaTe1-a で表すときaが0.6以上、0.81以下の組成であることが好適である。
【0022】
また、光記録媒体において、記録膜が少なくともGaと、Sbとを含有し、その組成をGabSb1-b で表すときbが0.09以上、0.35以下の組成であることが好適である。
【0023】
また、光記録媒体において、記録膜が少なくともInと、Sbとを含有し、その組成をIncSb1-c で表すときcが0.15以上、0.4以下の組成であることが好適である。
【0024】
また、光記録媒体において、記録膜が少なくともGaと、Sbとを含有し、その組成をGedSb1-d で表すときdが0.10以上、0.35以下の組成であることが好適である。
【0025】
また、光記録媒体において、記録膜が少なくともGaと、Inと、Sbとを含有し、その組成を(InSb)e(GaSb)1-e で表すときeが0以上、1未満の組成であることが好適である。
【0026】
また、光記録媒体において、記録膜として前記記載のGeSbTe、GeBiTe、GeSbTeBi、他とこれらに窒素を添加した記録膜等を用い、かつ記録膜と接する層の少なくとも一方に、GeN、GeCrN、ZrO2+Cr2O3、ZrSiO4、Y2O3を含有するZrO2-xNx、Y2O3を含有するZrO2-x Nx+ Cr2O3、ZrSiO4-xNxから選ばれる界面層を用いることが好適である。なお、以下ではY2O3を含有するZrO2-xNxやY2O3を含有するZrO2-x Nx+ Cr2O3、についてY2O3を含有すると記さないこともある。
【0027】
また、光記録媒体において、記録膜として前記記載のSbTe系、InSb系、GaSb系、GeSb系等の記録膜を用い、かつ記録膜と接する層の少なくも一方に、SiN、GeN、SiCから選ばれる層を用いることが好適である。
【0028】
また、光記録再生装置および記録再生方法であって、記録時に用いる光のパルスの立ち上がりを0.9[nsec]以下、0.1[nsec]以上とする波形、もしくはパルス列、もしくはいわゆる緩和振動を用いることが好適である。
【0029】
これらの記録膜の材料系および組成は、必要とされる結晶化速度や媒体の感度、それから媒体の反射率、コントラスト、透過率と言った光学特性などにより選択されるが、上記の範囲が好適であった。
【0030】
以下、図面を参照し、詳細に説明する。
【0031】
本実施形態に係る記録媒体の層構成の一例を図1A及び図1Bに示す。図1Aは、片面単層媒体、図1Bは片面二層媒体の一例である。片面単層媒体の場合には、光入射側から、透明基板1上に、第1干渉膜11、下部界面膜12、記録膜13、上部界面膜14、第2干渉膜15、反射膜16を順次積層し、成膜していない基板と接着剤層18を用いて貼り合わせた構造を有する。片面二層媒体の場合には、光入射側から、L0情報層19は透明基板1上に、第1干渉膜11、下部界面膜12、記録膜13、上部界面膜14、第2干渉膜15、反射膜16、第3干渉膜17を順次積層し、L1情報層20は逆に透明基板1上に、反射膜16、第2干渉膜15、上部界面膜14、記録膜13、下部界面膜12、第1干渉膜11を順次積層し、接着剤層である層間分離層18を用いて貼り合わせた構造を有する。
【0032】
なお、本発明の実施形態に係る相変化光記録媒体の構成は図1A及び図1Bに示したものに限定されるものではない。例えば、第2干渉膜15と反射膜16の間に他の誘電体膜を設けてもよい。干渉膜を全て界面膜の材料で置き換えて干渉膜を省略してもよい。反射膜を省略してもよい。反射膜を複数の金属膜で構成してもよい。反射膜の上にさらに誘電体膜を設けてもよい。一方、最小の構成は、光入射側から、L0情報層19は透明基板1上に、第1干渉膜11、記録膜13、第2干渉膜15、反射膜16、第3干渉膜17を順次積層し、L1情報層20は逆に透明基板1上に、反射膜16、第2干渉膜15、記録膜13、第1干渉膜11を順次積層し、接着剤層である層間分離層18を用いて貼り合わせた構造を有する。
【0033】
また、二層媒体の場合には、上記のような構成を有する光入射面に近い第1情報層(L0)と光入射面から遠い第2情報層(L1)とを作製し、これらを2つの情報層を接着剤層によって接着して層間分離する。3層以上の多層媒体の場合も同様である。
【0034】
さらに、基板上に各種の膜を成膜し、その上に0.1mm程度の薄い透明シートを接着し、その透明シートを介して光を入射する形式の媒体(このような媒体は0.85程度の高NAの対物レンズを用いることを想定している)であってもよい。これは、光入射側に0.1mm程度の薄い透明カバー層を用いる場合でも、本実施形態にて主に用いた0.6mmの透明基板を用いる場合でも、用いられる記録膜、界面層材料、保護膜材料および反射膜材料に要求される特性としては大きな違いは無いからである。
【0035】
以下に説明する実施形態では、片面二層媒体の一例を示した。単層媒体は、片面二層媒体のL1とほぼ同様である。また、試作した光ディスクの測定データは、各実験のL0、L1の各ランド(L)とグルーブ(G)の中で一番悪い値を代表値として示した。例えば、SbERであれば、得られたデータの中から一番大きな値を、CNRや消去率(ER)であれば、得られたデータの中から一番小さい値を代表値として示した。試作した光記録媒体の透過率、反射率等は、分光光度計を用いて測定されたものである。また、薄膜中の各元素の濃度は、ICP(Induced Coupled Plasma)、RBS(ラザフォード後方散乱)、SIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy)、TOF-SIMS、XPS(X線光電子分光分析)等の分析手法を用いた。膜中の各元素間の結合形態は、XPS、IR(赤外分光法)測定等により明らかとした。薄膜の熱伝導率、熱拡散率、および積層薄膜間の界面熱抵抗は、サーモ・リフレクタンス法により評価した。
【0036】
記録に用いる従来のライト・ストラテジー、例えばいわゆるマルチ・パルス、またはブロック・ストラテジー等には光のパルスの立ち上がりを0.9[nsec]以下にすることは通常の半導体レーザーを、大きな工夫なしに用いる必要があるため難しかった。これを光のパルスの立ち上がりを0.9[nsec]以下にすることにより本実施形態の効果は更に高まる。これらの記録時に用いる光のパルスの立ち上がりを0.9[nsec]以下、0.1[nsec]以上とする波形、もしくはパルス列を発生させ具体的な方法を以下に示す。
【0037】
図3は、本発明の実施の形態が適用可能な情報記録再生装置(光ディスク装置)の構成の一例を示す。
【0038】
図3に示す情報記録再生装置、すなわち光ディスク装置200は、光ピックアップ(PUHアクチュエータ)210から出射されるレーザ光を、記録媒体すなわち光ディスクDの情報記録層に集光することにより、光ディスクDに情報を記録し、また光ディスクDから情報を再生できる。
【0039】
光ディスクDは、図示しないディスクモータの図示しないターンテーブルに支持され、ディスクモータが所定の回転数で回転されることにより、所定の速度で回転される。
【0040】
PUH(光ピックアップ)210は、図示しないピックアップ送り用モータにより情報の記録または再生もしくは消去の各動作時のそれぞれにおいて、光ディスクDの径方向に、所定の速度で移動される。
【0041】
PUH210には、図4を用いて以下に説明するように、所定波長、例えば波長が405nmのレーザ光(光ビーム)を出力するレーザダイオード(LD)221と、LD(レーザダイオード)221から出力された光ビームを、光ディスクDの記録面に集光するとともに光ディスクDの記録面(信号面)から反射された反射光ビームを捕捉する対物レンズ225が組み込まれている。
【0042】
PUH210にはまた、LD221から出力された光ビームが光ディスクDの記録面で反射された反射光ビームを受光してその光強度に対応する電流または電圧を出力する光検出器(PD)211および対物レンズ225を光ディスクDの面と垂直な方向へ移動させる図示しないフォーカス制御コイル、および対物レンズ225を光ディスクDの径方向へ移動させるトラッキング制御コイル226等が組み込まれている。
【0043】
光検出器211により検出された信号は、後段に設けられる信号処理部において、情報の再生に用いられるデータ信号に、利用可能に処理される。また、光検出器211からの出力は、対物レンズ225(PUH210)の位置を、光ディスクDの記録面に対して所定の位置関係に位置させるための制御信号、すなわちフォーカス制御コイルにフォーカス制御信号を供給するために利用されるフォーカスエラー信号ならびにトラッキング制御コイル226にトラッキング制御信号を供給するために利用されるトラックエラー信号等に、利用可能に処理される。
【0044】
なお、本発明の光ピックアップ(PUH)210が少なくともトラッキング制御のための反射光ビームが読み込み可能な光ディスクDとしては、例えば新規格で現行のDVD規格の光ディスクに比較してさらに高密度記録が可能な(次世代)DVD(以下「HD DVD」と呼称する)規格の光ディスクが利用可能である。また、現行のDVD規格で情報の記録と消去が可能なDVD−RAMディスクおよびDVD−RWディスクや、新たな情報の書き込みのみが可能なDVD−Rディスク、もしくは既に情報が記録されているDVD−ROMディスク等の、周知のさまざまな種類のディスクのそれぞれも利用可能であることはいうまでもない。
【0045】
光ディスクDから反射したレーザ光は、PUH210のフォトディテクタ(PD)211で電気信号として検出される。PD211の出力信号は、プリアンプ212で増幅され、コントローラ(レンズ位置制御量設定装置(主制御装置))201と接続されたサーボ回路(レンズ位置制御装置)201、RF信号処理回路(出力信号処理回路)202、およびアドレス信号処理回路203に出力される。
【0046】
サーボ回路201では、PUH210に支持されている対物レンズ225のフォーカスサーボ(対物レンズの焦点位置に対する光ディスクDの記録層と対物レンズとの間の距離の差の制御)信号およびトラッキングサーボ(対物レンズの光ディスクDのトラックを横切る方向の位置の制御)信号が生成され、各信号が、それぞれ、PUH210の図示しないフォーカスアクチュエータとトラッキングアクチュエータ(レンズ位置制御機構)とに出力される。
【0047】
RF信号処理回路202では、PD211により検出され、再生された信号からユーザーデータや管理情報が取り出され、アドレス信号処理回路203では、アドレス情報、すなわちPUH210の対物レンズが現在対向している光ディスクDのトラックまたはセクタを示す情報が取り出され、コントローラ201に出力される。
【0048】
コントローラ201により、アドレス情報に基づいて、所望の位置のユーザーデータ等のデータを読み出すために、あるいは所望の位置にユーザーデータや管理情報を記録するために、PUH210の位置が制御される。
【0049】
また、コントローラ201では、情報の記録や情報の再生に際し、レーザ素子(LD)から出力されるレーザ光の強度が指示される。なお、コントローラ201の指示により、所望の位置のアドレス(トラックあるいはセクタ)に既に記録されているデータが消去可能である。
【0050】
光ディスクへの情報の記録時には、(コントローラ201の制御により)記録信号処理回路204において、光ディスクへの記録に適した記録波形信号に変調された記録データすなわち記録信号がレーザ駆動回路(LDD)205に供給される。PUH210のレーザ素子からは、LDD205から供給されるレーザ駆動信号に対応して、記録すべき情報に応じて強度が変化されたレーザ光が出力される。これにより、光ディスクDに情報が記録される。
【0051】
図4は、図3に示した光ディスク装置のPUH(光ピックアップ)の一例を示す。
【0052】
PUH210は、例えば半導体レーザ素子であるLDすなわち光源221を含む。LD221から出力されるレーザ光の波長は、例えば405nmである。
【0053】
LD(光源)221からのレーザ光は、コリメートレンズ222によりコリメート(平行光化)されるとともに、予め所定の位置に設けられている偏光ビームスプリッタ(PBS)223および1/4波長板(偏光制御素子)224を通り抜けた後に、集光素子すなわち対物レンズ(OL)225により捕獲される。対物レンズ225に捕獲されたレーザ光は、対物レンズ225により所定の収束性が与えられる(LD221からのレーザ光は、対物レンズ225に案内され、対物レンズ225の焦点位置で最小光スポットを呈する)。なお、対物レンズ225は、例えばプラスチック製で、その開口数NAは、例えば0.65である。或いは、その開口数NAは、例えば0.85である。
【0054】
光ディスクDの情報記録面で反射されたレーザ光は、対物レンズ225により捕捉され、概ね平行な断面ビーム形状が与えられて、偏光ビームスプリッタ223に戻される。なお、光ディスクDから反射された反射レーザ光は、1/4波長板224により、光ディスクDに向かうレーザ光の偏光の方向と偏光の方向が90度変化される。
【0055】
偏光ビームスプリッタ223に戻された反射レーザ光は、1/4波長板224により偏光の方向が90度回転された結果、偏光ビームスプリッタ223で反射され、フォーカスレンズ227により、フォトディテクタ211の受光面に結像される。また、反射レーザ光は、フォーカスレンズ227により所定の収束性が与えられる前段で、光分割素子228を通過されることにより、フォトディテクタ(PD)211に予め与えられている検出領域の配列に対応して、所定数に分割される。
【0056】
より詳細には、半導体レーザ(LD)221から発したレーザ光は、コリメートレンズ222によりコリメートされる。このレーザ光は、直線偏光であり、PBS(偏光ビームスプリッタ)223を透過し、1/4波長板224により偏光面が円偏光に変化(回転)され、対物レンズ225により、光ディスクDに集光される。
【0057】
光ディスクDに集光されたレーザ光は、光ディスクに記録されている記録マーク(記録マーク列)や、グルーブ等で変調される。
【0058】
光ディスクDの記録面で反射あるいは回折した反射レーザ光は、対物レンズ225で再びほぼ平行化され、1/4波長板224を再び通過されて、往路とは偏光の方向が90度変化される。
【0059】
このようにして、偏光の方向が往路と90度変化された反射レーザ光は、PBS(偏光ビームスプリッタ)223の偏光面で反射され、光分割素子228を通過されることにより、フォトディテクタ(PD)211に予め与えられる検出領域に対応する複数の光束に分割されて、所定の方向に偏向される(分割されたレーザ光毎に、それぞれのレーザ光に対応して設けられているフォトディテクタの受光領域に向けて中心からの距離が変化される)。
【0060】
以下、所定数に分割された反射レーザ光は、レンズ227により、フォトディテクタ211の所定の受光領域に、集光される。
【0061】
図5は、レーザダイオードの構成(共振器長)を説明する概略図である。
【0062】
レーザダイオード(LD)221は、図示しないハウジング内に、図5に概略を示すような半導体レーザチップ230を含む。
【0063】
レーザチップ230は、例えば厚さ(上下方向)tが0.15mm、長さ(左右方向)Lが0.5mm、横幅(奥行き方向)dが0.2mm程度の微小ブロックである。
【0064】
レーザチップ230は、活性層231が上下方向から第1および第2のクラッド232,233により挟み込まれたもので、それぞれのクラッドの上端232aおよび下端233aが、「−(マイナス)」電極(232a)と「+(プラス)」電極(233a)である。
【0065】
第1および第2のクラッド層232,233は、それぞれ、活性層231の屈折率に対して、例えば5%程度低くなるよう材料選択されており、活性層231にて発生した光は、上下のクラッド層との境界を反射しながら活性層231内を進行し、鏡面230f,230r間を進行する間に次第に増幅され、所定のレベルまで増幅された時点で、鏡面230fおよび230rから、レーザ光として放出される。すなわち、レーザ光は、図5の例では、活性層231が広がる方向と平行な方向であるx方向に出力される。なお、第1および第2の鏡面230f−230r間距離が、共振器長Ltである。
【0066】
図5に示すレーザチップ230において、第1および第2の鏡面230f,230r間距離Lは、要求されるレーザ光のパルス長に依存して規定されるが、この例では、共振器長Ltは約0.8mmである。なお、後述する緩和振動の周期は、半値全幅で約100ps(ピコ秒)である。
【0067】
LD221は、図3に示したLDD(レーザ駆動回路)205から駆動電流が供給されることによりレーザ光を出射(発振)する。なお、LDD205からLD221に供給される駆動電流の立上がり時間は、約1ns(ナノ秒)である。
【0068】
次に、図6(a)〜図6(d)を用いて、記録媒体すなわち光ディスクDの図示しない記録膜に情報を記録するために利用可能な記録パルスの生成方法(レーザ駆動方法)について説明する。
【0069】
図6(a)および図6(b)は、半導体レーザ素子において、一般的なレーザ駆動電流とレーザ駆動電流供給された場合のレーザ光の出射(レーザ出力)との関係を示し、図6(c)は、緩和振動パルス(特徴的なレーザ出力)を得ることのできるレーザ駆動電流の供給例であり、図6(d)はこのようなレーザ電流が駆動された場合のレーザ出力を示す。
【0070】
図6(a)および図6(c)に示す通り、駆動電流は、バイアス電流Ibiとピーク電流Ipeの2レベルに制御されている。なお、バイアス電流がさらに2つのレベル、あるいは、3つのレベルに細分化されて制御される場合もあるがここでは、説明の簡易化のため、バイアス電流とピーク電流がそれぞれ1レベルずつの場合を用いて説明する。
【0071】
通常の記録パルス生成の場合、LDD205は、図6(a)に示すように、LD221がレーザ発振を開始する閾値電流Ithよりもやや高いレベルに設定されたバイアス電流Ibiをまず生成し、LD221を予備的に駆動する。その後、時刻Bにてバイアス電流Ibiへと引き下げられるまでの間、時刻Aにて、所望のピークパワーを得るためのピーク電流Ipeが印加される。このように、時刻Aから時刻Bまでの間、ピーク電流Ipeが印加されることで、図6(b)に示すようなレーザ出力(レーザ出射光強度の時間変化)が得られる。
【0072】
すなわち、レーザ駆動電流の大きさが、バイアス電流Ibiである時刻Aまでの間は、出射光強度は、LD221から出力されるレーザ光は、光ディスクDにデータを記録することができない極く低いパワーであるが、ピーク電流Ipeが印加され、レーザ光の強度が記録パワーまで増大される。時刻B以降は、出射光の強度は、再び低パワーとなることはいうまでもない。
【0073】
より詳細に出射光強度を観測すると、図6(b)においては、時刻Aにおいて強度が記録パワーまで引き上げられた際に、定常の記録パワーに安定するまでに、強度が瞬間的に上昇して低下する様子が伺える(図中の矢印c部分)。これは、LD221の緩和振動によるものであり、通常の記録パルス生成においては、この緩和振動がなるべく小さくなるように制御を行なう。
【0074】
緩和振動とは、このように半導体レーザにおいて、駆動電流があるレベルから閾値電流を大きく超える一定のレベルまで急激に上昇した際に生ずる、過渡的な振動現象である。
【0075】
なお、緩和振動は、振動を繰り返す毎に小さくなり、やがて振動は治まる。
【0076】
本発明のより好適な光記録装置においては、この緩和振動を積極的に記録に利用するものである。
【0077】
すなわち、本来は、発生を抑制すべき緩和振動であるが、緩和振動に特有の「パルス長が短い」、「エネルギー量(光出力としてのレーザパワーの積分値)は、光ディスクDの記録膜を記録レベルに変化させることができる場合がある」ことを利用して、パルス長が短く急峻な記録パルスを『安定に』得ることを、本発明で達成しようとするものである。
【0078】
図6(c)に示す通り、LD221に、LDD205から所定の特性の駆動電流を供給すると、図6(d)に見られる通り、振動を伴うが、ピークレベルの高いレーザ出力が、僅かな時間だけ得られる。
【0079】
より詳細には、LD221に、閾値電流Ithより低いレベルに設定されたバイアス電流Ibiを供給し、所定のタイミングすなわち時刻Aにて、通常の記録パルス生成よりも早い立ち上がり時間で急激に、駆動電流を閾値電流Ithよりも高いピーク電流レベルIpeまで引き上げ、通常の記録パルス生成よりも短いナノ秒レベルの僅かな時間経過後の時刻Dにて、バイアス電流Ibiに戻す。
【0080】
この場合、図6(d)に見られるように、レーザ出力(レーザ出射光強度の時間変化)が得られる。
【0081】
すなわち、図6(d)において、閾値電流Ithよりも低いバイアス電流Ibiにより駆動されている時刻Aまでは、LD221はレーザ発振を開始しておらず、無視できる程度のレベルであって、発光ダイオードとしての光出射がある程度である。その後、時刻Aにおいて急激に電流が印加されることで、緩和振動が生じて出射光強度も急激に上昇する。
【0082】
以下、緩和振動の振幅は次第に定常レベルに収束するが、所定の時間すなわち時刻Cを定めて、駆動電流を閾値電流Ithよりも低いIbiに設定することで、あるエネルギー量のレーザ光が得られる。なお、時刻Cは、図6(c)および図6(d)から明らかなように、緩和振動の2周期目のパルスが生成されたタイミングとしている。
【0083】
このように、緩和振動によるパルスは、通常の記録パルスに比べて、非常に短い時間で出射光強度が上昇し、半導体レーザの構造によって決まる一定の周期で出射光強度が低下するという特徴を持っている。従って、緩和振動によるパルスを記録パルスに用いることにより、通常の記録パルスでは得られない、短い立ち上がり・立下り時間を持ち、かつ強いピーク強度を持った短パルスを得ることができる。
【0084】
ところで、緩和振動の周期は、図5により説明した半導体レーザ素子(LD)のレーザチップの共振器長と関連があることが知られている。
【0085】
一般的に知られた関係として、LDの共振器長をLと緩和振動周期Tには、
T = k・{2 nL /c} …(1)
ここで、kは定数、
nは半導体レーザの活性層の屈折率、
cは光速(3.0×10(m/s))
の関係がある。
【0086】
従って、レーザチップの共振器長と緩和振動周期ひいては、緩和振動により生じる急峻なパルスのパルス幅は、比例関係があり、緩和振動パルス幅を長くしたい場合は、共振器長を長く、緩和振動パルス幅を短くしたい場合には、共振器長を短くすればよいことになる。
【0087】
以下、緩和振動により生じる緩和振動パルスのパルス幅を、レーザチップの共振器長を制御して、任意に設定する方法を簡単に説明する。
【0088】
図7は、共振器長が650μmの半導体レーザによる緩和振動波形の計測結果である。
【0089】
緩和振動パルス幅(FWHM)Wrは、半値全幅で、およそ81ps(ピコ秒)であることが解る。
【0090】
LD221のレーザチップ230の共振器長と緩和振動パルス幅は、上述の通り、比例関係にあるから、レーザチップ230の共振器長Ltと、得られる緩和振動パルス幅(FWHM)Wrの変換式として、
Wr(ps)=L(μm)/8.0(μm/ps)…(2)
の関係が得られる。
【0091】
図8(a)〜図8(c)は、LDD(レーザ駆動回路)からLD(レーザ素子)に供給されるレーザ駆動電流の時間発展(a)、LDから出射されるレーザ波形(b)、ならびに出力レーザ波形によって光ディスクDの記録膜に形成されるマーク(記録マーク)の形状を示す(c)。
【0092】
図8(a)において、光ディスクDの記録膜上のレーザ光の集光点が記録マークを形成しない場所にある領域(A)の区間では、LD221から出射されるレーザ光のパワーは、光ディスクD上の位置情報を読み出すためと、サーボをかけておくために光ディスクDから情報を再生する際に用いられる再生用のパワーに制御されている。すなわち、レーザ発振可能な駆動電流の閾値であるIthよりも大きなI2の大きさの駆動電流がLD221に供給される。
【0093】
また、区間(C)においては、I2よりもさらに大きなI3のレーザ駆動電流がLD221に供給され、最大値がP1に達する緩和振動パルスレーザ光(図8(b)参照)が出力される。
【0094】
なお、緩和振動パルス光が出力される領域(C)の直前の所定時間T1の間、すなわち領域(B)の間、閾値Ithよりも小さいI1の大きさのレーザ駆動電流が、LD221に供給される。
【0095】
また、緩和振動終了後すなわち領域(D)におけるレーザ駆動電流の大きさは、再び、閾値Ithよりも大きな前述のI2としている。
【0096】
すなわち、緩和振動により得られる急峻なパルスレーザを用いて光ディスクDに情報を記録する本発明においては、光ディスクDに記録されている情報を再生するために必要なレーザパワー(再生パワー)に比較して、記録時に照射するレーザ光の時間平均パワーが小さく、光ディスクDから情報を再生した直後に記録を始めた場合には、レーザから出射される平均レーザパワーを変動させる。
【0097】
平均レーザパワーが変動することによりLD221の温度が変化してLD221の閾値電流も変動することになる。
【0098】
この閾値の変動は、同じ電流をLD221に駆動している場合においても温度変化の前後で、レーザ強度を変化させる。よって、このような閾値の変化は、光ディスクDの記録膜に良好なマークを記録するためには、生じないことが望ましい。
【0099】
このような問題を避けるために、再生時と記録時のレーザの平均パワーを略等しくすることが望ましい。なお、記録時と再生時のレーザの平均パワーは、例えば再生時に用いる第1の平均パワー(A)と、記録時に用いる第2の平均パワー(B)について、
0.8 < A/B < 1.2
の範囲内において、概ね温度変化の影響を無視できる程度であることが確認されている。
【0100】
図9は、LD(レーザ素子)に供給される駆動時間の電流値をI1に設定する時間T1と緩和振動の最大強度P1との関係を示している。LDは、波長405nm、共振器長800μm、レーザ発振閾値35mAで、駆動電流を20mAから立ち上がり時間150psで急激に、駆動電流を120mAまで流している。
【0101】
既に説明した通り、緩和振動は、半導体レーザ(発振系)において、駆動電流があるレベルから閾値電流を大きく超える一定のレベルまで急激に上昇した際に生ずる、過渡的な振動現象であるから、記録パルスとして利用するためには、パルス幅(記録パルス長)が安定であることが必須である。なお、時間T1が小さい場合には、緩和振動によって生じるレーザの最大パワーP1が小さく、T1が長くなるにつれて、定常発振パワーの2.2倍程度までは、P1も大きくなることが確認されている。また、P1は、その後収束するが、本実施例では、緩和振動が収束した後のレーザ強度を、0.45×P1としている。
【0102】
緩和振動の先頭のピークパワーP1が大きい場合には、定常パワー発振での記録に比べて、トータルの記録エネルギーが小さくなることが分かっている。これは熱記録(レーザ光として供給される熱エネルギー量)によって記録マークが記録される光ディスクにおいては、通常の低パワーで長時間レーザを照射してマークを記録する場合に比較して熱拡散時間が1ns程度であるために、これより長い時間で記録する通常の記録波形では、レーザを照射している間も熱が拡散してしまうのに対して、緩和振動では、1ns以下の短い時間に大きなパワーを照射するために、レーザを照射している時間は熱の拡散が小さい。そのために、通常の1nsを超える記録方法に比べて、パワーを時間積分した記録エネルギーは緩和振動を使った記録方法のほうが、小さくなる。上記のような、先頭の緩和振動のピークパワーP1が通常の定常レーザ強度の2.2倍になる場合には、記録エネルギーが通常の定常発振レーザの40%程度に低下する。これによって、ピックアップヘッドの消費エネルギーも小さくなり、ピックアップヘッドの温度上昇が抑えられる。ピックアップヘッドの対物レンズやミラーなどの光学素子は温度上昇によって、熱膨張を起こし、変形するために、対物レンズで集光されるスポット径が大きくなり、記録されるマークの大きさが大きくなる。しかしながら緩和振動を使って記録を行えば、温度上昇が抑えられるために、このような問題を小さくすることができる。
【0103】
特に、このような通常の定常なレーザの照射に比べて、記録エネルギーが小さくなる効果は、P1が定常レーザの2倍以上ある場合にこのような効果が顕著に見られるために、緩和振動を使ってマークを記録する場合には、P1が飽和する値の90%の値になる、T1の期間が1ns以上であることが望ましいことがわかる。
【0104】
さらに、T1が3ns以上であればほぼ飽和パワーと等しくなり、これ以上ではT1の期間のレーザ出力に対する影響がほぼ無いことが確認されている。従って、T1は、3ns以上であれば更に望ましい。
【0105】
反面、LDD205からLD221に入射される電流の立ち上がり時間Trと立ち下がり時間Tf(それぞれ、LD221に流れる最大電流の10%から90%まで変動するのに要する時間とする)は、LD221,LDD205及び、LDD205からLD221までの図示しない配線の電気容量、誘導係数を全て考慮した状態で、それぞれ150psである。
【0106】
なお、立ち下がり時間が遅い場合には、LDD205に閾値以下の電流値に設定してからLD221に実際に流れる電流値が閾値以下になるまでの時間が長くなる。この時間は、ほぼ立ち下がり時間Tfと等しいため、適当な大きさの緩和振動を発生させるためには、Tf+0.85ns以上の間隔のTを用意することが有益である。すなわち、Tfが150psであれば、T1は、1000ps以上であることが好ましい。
【0107】
図10は、図11に示すような駆動電流をLDに加えた場合のLDからのレーザ出力の波形である。つまり、以下の様にして電流を流す。レーザ発振閾値Ith以下のI10A電流から、急激にLDに閾値以上の電流I10Bを流し、その後この電流を維持する。その場合に図10に示されるようなレーザ波形が得られる。つまり一定時間の間、4〜5回、緩和振動が発生した後に、定常出力のレーザ発振になる。
【0108】
図10に示すように、LD221のレーザチップ230の共振器長が800μmである場合、ピークパワーP1を「1」とした場合に、0.45×P1に収束する時間は、概ね1ns(図10の範囲を、緩和振動と規定した場合であっても1.5ns)である。なお、緩和振動が収束するまでの発生する緩和振動の回数はLDの共振器長に依らない。一方、緩和振動の周期は前記のように、共振器長に比例するために、共振器長Lt(μm)に対して、緩和振動が収束するまでの時間は、Lt/800(ns)である。また、緩和振動を使った記録の場合には、緩和振動を伴わない定常パワーレーザ出力が長い場合には、マークの品位が低下する。これは、レーザが緩和振動している状態で、レーザを照射した時のディスクの記録層の上昇温度が、レーザが定常状態になっている状態でレーザを照射した時の上昇温度に比べて大きい。そのために、レーザが緩和振動している状態で記録したマーク幅はレーザが定常状態になっている状態で記録したマークに比べて幅が大きくなる。これによって、マークの幅が不均一になってしまい、マーク品位が低下する。よって、このような問題を防ぐために、記録パルス幅は緩和振動が定常状態に移行する時間よりも小さいことが望ましい。
【0109】
従って、共振器長が800μmである場合には、記録パルス長、すなわち図8における区間(C)の長さは、1500ps(1.5ns)よりも短い長さであればよい。
【0110】
以上説明したように、緩和振動を使った記録においては、緩和振動により誘発された急峻な記録レーザパルスのパルス幅が、一般的な駆動電流の供給により生じるレーザ出力に比較して、1.5ns以下と短く、ピーク出力P1が大きなレーザ光が出射される。
【0111】
これにより、熱記録(レーザ光として供給される熱エネルギー量)によって記録マークが記録される光ディスクにおいては、通常の低パワーで長時間レーザを照射してマークを記録する場合に比較して、緩和振動を使った記録方法では、記録エネルギーを小さくできる。
【0112】
すなわち、緩和振動により得られる記録パルスを用いることで、光ディスクDの記録膜にレーザ光が照射される時間は、緩和振動がないレーザ光を用いる場合よりも短縮されることにより、光ディスクの記録層のレーザが照射されている場所から他の場所に拡散する熱量が小さくなる。
【0113】
このことは、記録パルスとして要求される平均のレーザパワーも、従来の記録方法に比べて小さくできることを示している。
【0114】
なお、図3〜図11により説明した「サブナノパルス記録」においては、光ディスク(情報記録媒体)に記録される記録マーク列の1つひとつであるマーク長に対してレーザの発光時間が10%を切る(1%−10%)ようなレーザのパルス発光が行われるため、レーザ光の記録時のパワーの平均値は、再生時のパワーを下回ることがある。
【0115】
一方で、記録媒体としての光ディスクの材質により、マーク部とスペース部の反射率差が低いものがある。このため、みかけ上のコントラストを向上させるため、情報記録が行なわれた状態のとき、マーク部またはスペース部の反射率が2%程度まで下がるようにした記録媒体が開発されている。
【0116】
このような記録媒体への情報記録に、サブナノパルスによる記録方法を適用した場合、記録中に光ヘッド内の光検出器に戻ってくる平均光量が極めて小さくなる。このため検出信号の信号品位が著しく劣化し、そこから誤差信号を得て対物レンズを記録層の所定位置にとどめる動作(フォーカス・トラッキングサーボ)が不可能になることがある。
【0117】
そこで発明者は、記録パルス間に高周波信号を重畳することにより平均光量を上げて、サブナノパルスによる記録を行いながら、かつ、正常にフォーカストラッキングサーボを実行できるようにした情報記録再生装置として、図3に示した光ディスク装置を提案済みである。
【0118】
しかし、サブナノパルスを用いて記録パルスを生成した場合において、記録パルス間に高周波信号が重畳されたとき、記録パルスのエッジの電位(又電流)レベルに連続する高周波信号の電位(又は電流)レベルとの差が大きいと、LD(レーザ素子)221に、不要な(意図しない)緩和振動を発生される虞がある。不要な緩和振動があると、レーザ光にムラが生じ、記録マークの乱れ、再生信号の乱れを生じることになる。
【0119】
そこで、不要な緩和振動を生じさせないように高周波信号を、記録パルス間に重畳するようにしている。
【0120】
その一例としては、図12に示すが、記録されるデータ(NRZI)と、それに対応するレーザダイオード(LD)の駆動電流波形が、記録パルス期間(V1)と、高周波信号重畳期間(V2)を含むとき、記録パルス242aは、マーク部241aで1回もしくは複数回出力される。また、記録パルス期間(V1)以外では、高周波信号242bが、マーク部241a、スペース部241bに関係なく出力される。これにより、レーザダイオードの平均光強度が維持される。
【0121】
記録パルス期間(V1)の駆動電流により、LD221は、高周波信号重畳期間(V2)の発光強度よりも記録パルス期間(V1)で強く発光する。この強発光により、光ディスクの記録層に熱変化が発生し、記録マークが形成される。高周波信号重畳期間(V2)の駆動電流は、レーザダイオードの平均光強度が光ディスクの記録層に熱または光変化を起こさせない程度の強度となるような電流値である。
【0122】
この光強度は、多くの場合、光ディスクの記録層から情報を読み出すときの強度である。図に示す閾値電流のレベルは、レーザダイオードが発光を開始する或いは発光を停止する境目となるレベルである。緩和振動を得るためには、レーザダイオードは、この閾値電流レベル以下のレベルから急峻に変化する記録パルスが必須である。したがって、記録のためには、光ディスクの記録層から情報を読み出すときの光強度を得る電流値から、一旦、閾値電流以下に低下させて、急峻に変化する記録パルス242aを得る必要がある。記録モードにおいて、光ディスクから情報を読み出すときの光強度としては、アドレスなどを読取るときに必要である。なお、記録パルス242aと高周波信号242bの間には、駆動電流が、バイアス電流として一定になる期間が設けられてもよい。
【0123】
上記したように、サブナノパルスを使用した記録では、レーザダイオードに緩和振動と呼ばれる状態を作り出し、高い発光強度の光を得る。そのため、記録パルス242a以後駆動電流を止めた後も、発光強度が減衰しながら発光が持続する。緩和振動が収まるまで記録パルス242aの後に駆動電流が一定のバイアス期間を設けることにより、安定な記録が可能となる。なお、記録パルス242aは、図3に示したレーザ駆動回路(LDD)205に、図示しないが、高周波信号242bを出力可能に、高周波重畳回路を追加すればよいことは、容易に理解される。
【0124】
上記した説明において、レーザダイオードの駆動電流と、NRZI波形の関係については、説明をわかりやすくするために、図12のように1種類を示した。しかし、チャンネルデータに応じてNRZI波形としては各種の波形が用いられる。またこのNRZI波形に応じて、記録媒体に対して効果的にマーク部、スペース部を形成するための記録パルスが生成される。この方法を用いれば、緩和振動を伴って発生するサブナノクラスのレーザ光のパルス幅、すなわち記録パルス長が安定化される。これにより、記録密度を向上することができる。以下の実施例でも同様な効果を発揮した。
【0125】
[実施形態1]
再び、図1A及び図1Bを参照し、光記録媒体について説明する。記録方式にはランド(L)とグルーブ(G)の両者に記録する方式(ランド・グルーブ記録)とグルーブ、またはランドのみに記録する方式(いわゆる、グルーブ記録)がある。また、光記録再生装置の記録・読み出し系に用いる光ピックアップにNAが0.65のレンズを用いる場合と0.85のレンズを用いる場合がある。本実施形態では前者の方式を用いる場合を述べる。基板には、射出成形で形成された厚さ0.6[mm]ないし、0.59[mm]のポリカーボネート(PC)基板を使用した。ランド・グルーブ記録方式を用いる場合、グルーブ・ピッチ0.6[μm]から0.68[μm]でグルーブを形成したものを用いた。すなわち、TP×NA/λは、0.481から0.546である。このときグルーブおよびランドの幅はほぼ均等で、TB=0.3[μm]から0.34[μm]であった。TBの定義は、図2A及び図2Bに示した。ランド・グルーブ記録の場合には、トラック幅をTB、グルーブ記録はトラック・ピッチの幅をTBと定義する。
【0126】
媒体としては、片面単層媒体と片面二層媒体の例を示すが、片面三層以上の多層媒体についても同様に実施できる。それぞれのPC基板のグルーブが形成された面に、スパッタリング装置を用いて、片面単層媒体の場合には、情報層として、ZnS:SiO2、界面層、記録膜層、界面層、ZnS:SiO2、Ag合金を順次成膜した。同様に片面二層媒体の場合には、光入射側に近い方に設けた情報層L0は、ZnS:SiO2、界面層、記録膜層、界面層、ZnS:SiO2、Ag合金、ZnS:SiO2を順次成膜し、一方光入射側に遠い方に設けた情報層L1は、PC基板上から順にAg合金、ZnS:SiO2、界面層、記録膜層、界面層、ZnS:SiO2を順次成膜した。なお、より膜総数の少ない系として単層媒体はZnS:SiO2、記録膜層、ZnS:SiO2、Ag合金を順次成膜した媒体、片面二層媒体のL0として、ZnS:SiO2、記録膜層、ZnS:SiO2、Ag合金、ZnS:SiO2を、L1としてPC基板上から順にAg合金、ZnS:SiO2、記録膜層、ZnS:SiO2を順次成膜した媒体なども作成した。単層媒体はZnS:SiO2、SiO2、ZnS:SiO2、記録膜層、ZnS:SiO2、Ag合金を順次成膜した媒体、該媒体の記録膜と誘電体層との間のいずれか一方、もしくは両側に界面層を配置した媒体も作成した。
【0127】
本実施形態に係るスパッタ装置は、各層をそれぞれ異なる成膜室でスパッタ成膜する、いわゆる枚葉式スパッタ成膜装置である。枚葉式スパッタ成膜装置では、基板を装着するロードロック室、搬送室、そして各膜を成膜するプロセス・チャンバーからなる。図13に一つのプロセス・チャンバーの構成図を示す。
【0128】
プロセス・チャンバーは、スパッタリング・ターゲット材ST及び基板Bにより、各膜を成膜する。プロセス・チャンバーは、カソード版102A、アノード版104A、膜厚計106A、内圧センサー108A、基板回転モータ110A、マグネット111A、電源装置112A、排気装置114A、ガスボンベ116A、スパッタリング制御装置120Aを備えている。排気装置114Aは、チャンバー内を排気する。スパッタガスには、主にAr等の希ガスが用いられ、必要に応じて酸素や窒素ガスなども用いられる。スパッタ時の放電の形式は、成膜する材料や求める膜質などに応じてRF電源、DC電源などが用いられる。成膜時のプロセス・フローは図14に示す通りである。
【0129】
即ち、以下の手順で成膜される。
【0130】
ST100:基板装着
ST101:ロードロック室の真空引き
ST102:ロードロック室の真空度の条件満足なら次のステップへ遷移
ST103:基板を所望のプロセス・チャンバーへ移動
ST104:基板及びカソードのマグネット回転
ST105:プロセス・チャンバーへガス導入
ST106:プラズマ着火
ST107:成膜
ST108:プロセス・チャンバーへガス導入停止
ST109:成膜処理継続ならST104へ遷移し、非継続なら次のステップへ遷移
ST110:基板及びカソードのマグネット回転停止
ST111:基板をロードロック室へ搬送
ST112:ロードロック室をリーク、基板取り出し
後に詳しく述べるが、記録膜層は、Ge、Sb、Teからなり、その組成をGexSbyTez と表すときx+y+z=100で、GeSbTe三元相図上で、x=55・z=45と、x=45・z=55と、x=10・y=28・z=42と、x=10・y=36・z=54とで囲まれた組成から選択されたものと、これらの記録膜の組成の一部をビスマスBiおよび/またはインジウムInおよび/またはスズSnで置換し、置換後の組成を(Ge(1-w) Snwx (Sb(1-v)(Bi(1-u) In u) v y Tez かつx+y+z=100で表したときに、この組成におけるw、vおよびuが、0≦w<0.5かつ0<v<1かつ0≦u≦0.7を満たすGeSnSbTe、GeSnSbTeIn、GeSbTeIn、GeSbTeBiIn、GeSbSnTeBiIn、GeSbTeBi、GeSnSbTeBi、GeSnSbTeBiIn、更には記録膜層が、Ge、Bi、Teからなり、その組成をGexBiyTez と表すときx+y+z=100で、GeBiTe三元相図上で、x=55・z=45と、x=45・z=55と、x=10・y=28・z=42と、x=10・y=36・z=54とで囲まれた組成から選択されたもの等を用いた。多くの組成について検討したが、その一例を表4に示した。なお、記録膜の膜厚は、10[nm]以下とした。
【0131】
界面層には、以下で述べるように種々の材料から選択したが、一例としてZrO2+Cr2O3などが挙げられる。ZrO2とCr2O3を混合したターゲットを用いて成膜した。ZnS:SiO2膜はZnSにSiO2を混合したターゲットを用いて成膜した。用いたスパッタ装置は、各層をそれぞれ異なる成膜室でスパッタ成膜する、いわゆる枚葉式スパッタ成膜装置である。各媒体の作成後、分光光度計により反射率、透過率が測定される。
【0132】
初期化装置で各層の媒体全面の記録膜を結晶化した。初期化後、成膜した面を内側にしてUV樹脂によって接着し、層間分離層を形成した。層間分離層の厚さは、20[μm]である。評価には、パルステック(株)製のディスク評価装置ODU−1000を用いた。同装置には、波長405nmの青紫色半導体レーザーと、NA=0.65の対物レンズを備えたのものを用意した。ランド・グルーブ記録の形式によって記録実験をおこなった。
【0133】
ディスクの特性を評価する実験は、大きく分けて以下の2つの評価を行った。
【0134】
(1) ビット・エラー・レート(SbER:Simulated bit Error Rate)の測定
一つはデータの誤り率を測定するビット・エラー・レート(SbER : Simulated bit Error Rate)の測定である。もう一つは、読み出し信号品質を判断するためのアナログ測定である。SbER測定は、まず2Tから13Tまでのパターンがランダムに含まれたマーク列を10回オーバーライトした。次に、前記トラックの両側の隣接トラックに同じランダムパターンを10回オーバーライトした。その後、真中のトラックに戻り、SbERを測定した。
【0135】
なお、近年はライト・ワンス・メディアとして相変化記録媒体も用いられるようになっている。ライト・ワンス・メディアの場合には書き換え特性は要求されない。1回記録の特性が重要である。そこで、本発明媒体をライト・ワンス・メディアとして用いる場合を想定して、1回書きの特性も評価した。この場合には2Tから13Tまでのパターンがランダムに含まれたマーク列を1回し、前記トラックの両側の隣接トラックに同じランダムパターンを記録、その後、最初に記録しのトラックに戻り、SbERを測定した。
【0136】
(2)アナログ測定
アナログ測定は、次のように行った。やはりまず2Tから13Tまでのパターンがランダムに含まれたマーク列を10回オーバーライトした。次に、そのマーク列に9Tのシングルパターンを1回オーバーライトし、9Tマークの信号周波数の信号対ノイズ比(以下、CNR)をスペクトラムアナライザーによって測定した。次に、消去パワーレベルのレーザービームをディスク一回転分照射し、記録マークを消去した。その際の、9Tマークの信号強度の減少分を測定し、これを消去率(ER)と定義する。
【0137】
各評価を行う場合の線速は、いわゆる1X、等速の条件として、線速v=4.7〜5.6[m/sec]にて評価した。LDの立ち上がりを0.9[nsec]以下、0.1[nsec]以上についても実施した。これらの立ち上がり時間は現行のLDの通常のLDの発光モードでは非常に困難である。本発明者らは、いわゆる緩和振動のモードを用いて実現した。2Tや3T等の短いマーク以外の長いマークの場合は、従来技術と同様にマルチ・パルスを用いることが可能である。また、高速記録媒体を実現するためには、2T周期のマルチ・パルスを用いる方法や、いわゆるブロック・ストラテジーを用いる方法などがある。以下の実施形態の例も全て、上記の条件を共通に用いた。以下の一例では、上記の作成の評価結果から最も悪いデータを示している。
【0138】
以下の実施形態の一例も全て、上記の条件を共通に用いた。同様に試作、評価した媒体の記録膜材料の主なものを整理すると表1のようになる。
【表1】

【0139】
また、それぞれの組成の間の組成についても検討した。
【0140】
それぞれの記録膜の実施形態について界面層を用いない場合は全て検討した。一方界面層を用いた場合には、記録膜No.1から13に対してはGeN、GeCrN、ZrSiO4、ZrO2+Cr2O3、ZrO2-xNx+Cr2O3のそれぞれを用いた場合、記録膜No.14から23に対してはGeN、GeCrN、SiN、SiCをそれぞれ用いた場合を検討した。
【0141】
表2に示すようにいずれのサンプルについてもSbERは書き換え記録の場合には、ランド・グルーブともに10−5台以下であり、実用的なエラーレートが得られた。アナログデータに関しても、いずれもCNRがランド・グルーブともに52dB以上と優れた結果となった。加えて、1回書きの特性もSbERで10−8台と非常に良好な結果を得た。
【表2】

【0142】
なお、本実施形態で示したように従来よりTBを小さくしても記録が可能であり、かつTBを小さくした場合に問題となるクロス・トーク(XT)、クロス・イレース(XE)が問題とならなかった。なお、TBは、トラック・ピッチ(TP)と呼ぶ場合も有る。TP=0.34[μm]でさえ、ビーム系と比率からすると、XT、XEが発生しておかしくない条件であり、それ以下のTPにおいて、XT、XEが発生しなかったことは、本実施形態の媒体、記録再生装置、記録再生方法の特徴に他ならない。加えて、これらには用いたレーザーの照射ビームの立ち上がり時間を短くした場合には更に特性を向上されることに寄与していた。緩和振動全体のパルス幅は前述のようにいくつものパルス列からなるが、光強度の弱い部分は記録に寄与していないと考えられる。特にXEが小さく抑えられた原因は本実施形態の重要な部分であるので、その理由を探索した。種々検討を試みたが、熱解析による検討がより分かり易かったので、ここに記す。熱解析は、3次元の有限要素法(FEM)を用い、いわゆる、非定常解析の一つを実施した。ここで非定常解析の一つとは、具体的にはレーザーの照射および媒体の温度変化の時間依存性を解析した。用いた熱物性値は、サーモ・リフレクタンス法を用いて10[nm]のオーダーの膜厚のサンプルについて実施され、また界面熱抵抗を考慮した。従来技術では10[nm]のオーダーの膜厚のサンプルやそれらの界面熱抵抗を測定することはできないので、下記の解析は解析精度としては従来以上であり、実際の現象をより正確に再現するものと期待できる。XEが発生するかしないかは記録したトラックの最近接トラックの温度が記録膜の結晶化温度(Tc)以上に加熱されるかどうかで判断した。なお、非常に短い時間であれば、記録膜がTc以上に加熱されたとしても記録膜が結晶化するとは限らないが、今回の解析では前述のように比較的厳しい条件で判定した。表3にTBと記録トラックの最隣接トラック温度の関係の一例を示す。この例では、Tc=190[℃]、記録膜の融点Tm=630[℃]の記録膜の例を示した。従って、記録トラックの最隣接トラック温度が結晶化温度Tcより低ければ、XEは生じないと推定される。NAは、0.65、光入射側の基板厚は0.6[mmt]、v=5.6[m/sec]とし、片面二層媒体のL0の例を示した。比較のためにレーザーの立ち上がり時間1[nsec]の場合の例も同様に列挙した。本実施形態の一例としたのは、緩和振動を用いたパルスを用いた場合で、比較例としては従来と同様に1[nsec]以上のレーザーの立ち上がり時間のパルスを用いて記録した場合である。
【表3】

【0143】
上記表3から分かるように、本実施形態の媒体においてTBを小さくできた大きな理由の一つは、いわゆる緩和振動を用いた短いパルスを照射したことが寄与しているものと推察される。なお、解析結果は上記の条件では従来の媒体ではTB=0.32[μm]程度が限界と推定される。上記の条件では、TB=0.32[μm]は難しいと考えられていた。解析結果は、更に高密度化が可能であると示唆している。なお、従来と同様に1[nsec]以上のレーザーの立ち上がり時間のパルスを用いた場合も実現が完全に不可能とまでは言えないものの、やはり実際に製品とするためには各種特性のマージンが小さくならざるをえないと言える。従って、緩和振動を用いた方式がより好適と言える。
【0144】
[実施形態2]
対物レンズのNAに0.85のレンズを用いる場合基板には、射出成形で形成された厚さ1.1[mm]のポリカーボネート(PC)基板を使用した。光入射側のカバー層の厚みは、およそ0.1[mm]である。実施形態1と同様にランド・グルーブ記録とグルーブ記録の両者を用いることができるが、以下ではグルーブ記録の例のみ示す。トラック・ピッチを0.28[μm]から0.31[μm]としたものを用いた。すなわち、TP×NA/λは、0.588から0.651である。これらのPC基板のグルーブが形成された面に、実施形態1と同様にスパッタリング装置を用いて媒体としては、片面単層媒体と片面二層媒体の例を示すが、片面三層以上の多層媒体についても同様に実施できる。それぞれのPC基板のグルーブが形成された面に、スパッタリング装置を用いて、例えば片面単層媒体の場合には、情報層として、ZnS:SiO2、界面層、記録膜層、界面層、ZnS:SiO2、Ag合金を順次成膜した。同様に片面二層媒体の場合には、光入射側に近い方に設けた情報層L0は、L1上の層間分離層上にZnS:SiO2、Ag合金、ZnS:SiO2、界面層、記録膜層、界面層、ZnS:SiO2の順に、他方光入射側から遠い方に設けた情報層L1は、PC基板上から順にAg合金、ZnS:SiO2、界面層、記録膜層、界面層、ZnS:SiO2を順次成膜した。なお、より膜総数の少ない系として単層媒体はPC基板上にAg合金、ZnS:SiO2、記録膜層、ZnS:SiO2を順次成膜した媒体、片面二層媒体のL0として、L1上の層間分離層上にZnS:SiO2、Ag合金、ZnS:SiO2、記録膜層、ZnS:SiO2を、L1としてPC基板上から順にAg合金、ZnS:SiO2、記録膜層、ZnS:SiO2を順次成膜した媒体なども作成した。単層媒体はZnS:SiO2、SiO2、ZnS:SiO2、記録膜層、ZnS:SiO2、Ag合金を順次成膜した媒体、該媒体の記録膜と誘電体層との間のいずれか一方、もしくは両側に界面層を配置した媒体も作成した。
【0145】
検討した記録膜材料、界面層材料は実施形態1と同様である。
【0146】
初期化装置で各層の媒体全面の記録膜を結晶化した。UV樹脂によって形成した、層間分離層の厚さは、20[μm]である。評価には、パルステック(株)製のディスク評価装置ODU−1000を用いた。同装置には、波長405nmの青紫色半導体レーザーと、NA=0.85の対物レンズを備えてある。グルーブ記録の形式によって記録実験をおこなった。その他の条件は実施形態1と同様である。
【0147】
評価結果を表4に示す。表4に示すようにいずれのサンプルについてもSbERは書き換え記録の場合には、10−5台以下であり、実用的なエラーレートが得られた。アナログデータに関しても、いずれもCNRが52dB以上と優れた結果となった。加えて、1回書きの特性もSbERで10−8台と非常に良好な結果を得た。
【表4】

【0148】
本実施形態で示したように従来よりTBを小さくしても記録が可能であり、かつTBを小さくし場合に問題となるクロス・トーク(XT)、クロス・イレース(XE)が問題とならなかった。これは実施形態1と同様に用いたレーザーの照射ビームの立ち上がり時間を短くしたことが特性向上に寄与していると推定される。
【0149】
[実施形態3]
波長780[nm]、対物レンズのNAに0.5のレンズを用いる場合基板には、射出成形で形成された厚さ1.2[mm]のポリカーボネート(PC)基板を光入射側の基板として使用した。反射膜側にはUV効果のカバー層を設けた。実施形態1と同様にランド・グルーブ記録とグルーブ記録の両者を用いることができるが、以下ではグルーブ記録の例のみ示す。トラック・ピッチを1.2[μm]から1.59[μm]としたものを用いた。すなわち、TP×NA/λは、0.769から1.091である。トラック・ピッチを1.6[μm]の場合に、TP×NA/λ=1.026となるので、トラック・ピッチを1.59[μm]の条件は実質的にはTP×NA/λが1.026未満の条件を表している。これらのPC基板のグルーブが形成された面に、スパッタリング装置を用いて、例えば片面単層媒体の場合には、情報層として、ZnS:SiO2、記録膜層、ZnS:SiO2、Al合金を順次成膜した。検討した記録膜材料、界面層材料は実施形態1と同様である。
【0150】
初期化装置で各層の媒体全面の記録膜を結晶化した。評価には、パルステック(株)製のディスク評価装置DDU−1000を用いた。同装置には、波長780nmの赤外半導体レーザーと、NA=0.5の対物レンズを備えてある。なお、線速は、1.2[m/sec]とした。グルーブ記録の形式によって記録実験をおこなった。また、表記の指標の一部はSbERではなくジッター値とした。その他の条件は実施形態1と同様である。
【0151】
評価結果を表5に示す。表5に示すようにいずれのサンプルについても、ジッターは書き換え記録の場合には、5[%]以下であり、実用的な値が得られた。アナログデータに関しても、いずれもCNRが54dB以上と優れた結果となった。加えて、1回書きの特性もジッター5[%]以下と非常に良好な結果を得た。
【表5】

【0152】
本実施形態で示したように従来よりTBを小さくしても記録が可能であり、かつTBを小さくし場合に問題となるクロス・トーク(XT)、クロス・イレース(XE)が問題とならなかった。これは実施形態1と同様に用いたレーザーの照射ビームの立ち上がり時間を短くしたことが特性向上に寄与していると推定される。
【0153】
[実施形態4]
波長650[nm]、対物レンズのNAに0.6のレンズを用いる場合基板には、基板には、射出成形で形成された厚さ0.6[mm]ないし、0.59[mm]のポリカーボネート(PC)基板を使用した。ランド・グルーブ記録方式を用いる場合、トラック・ピッチ0.59[μm]から0.739[μm]でグルーブを形成したものを用いた。すなわち、TP×NA/λは、0.545から0.682である。実施形態1と同様にランド・グルーブ記録とグルーブ記録の両者を用いることができるが、以下ではランド・グルーブ記録の例のみ示す。トこれらのPC基板のグルーブが形成された面に、スパッタリング装置を用いて、例えば片面単層媒体の場合には、情報層として、ZnS:SiO2、界面層、記録膜層、界面層、ZnS:SiO2、Al合金を順次成膜した。検討した記録膜材料、界面層材料は実施形態1と同様である。
【0154】
初期化装置で各層の媒体全面の記録膜を結晶化した。評価には、パルステック(株)製のディスク評価装置DDU−1000を用いた。同装置には、波長650nmの赤外半導体レーザーと、NA=0.6の対物レンズを備えてある。なお、線速は、6.98[m/sec]とした。グルーブ記録の形式によって記録実験をおこなった。また、表記の指標の一部はSbERではなくジッター値とした。その他の条件は実施形態1と同様である。
【0155】
評価結果を表6に示す。表6に示すようにいずれのサンプルについても、ジッターは書き換え記録の場合には、6[%]以下であり、実用的な記録特性が得られた。アナログデータに関しても、いずれもCNRが53dB以上と優れた結果となった。加えて、1回書きの特性もジッター5[%]以下と非常に良好な結果を得た。
【表6】

【0156】
本実施形態で示したように従来よりTBを小さくしても記録が可能であり、かつTBを小さくし場合に問題となるクロス・トーク(XT)、クロス・イレース(XE)が問題とならなかった。これは実施形態1と同様に用いたレーザーの照射ビームの立ち上がり時間を短くしたことが特性向上に寄与していると推定される。
【0157】
[比較例1〜5]
次に比較例を示す。比較例としては、波長405[nm]、対物レンズのNA0.65を用いた場合に更にTBを小さくした場合、実施形態1と同様な媒体を従来のレーザーでパルスの立ち上がり時間を1.2[nsec]以上とした場合の評価した。それぞれの評価結果を表7、表8に示す。表7、表8に示すようにいずれのサンプルについてもSbERは書き換え記録の場合には、10−5台以下を得られるのはTB0.34までであった。アナログデータに関しては、いずれもCNRが52dB以上と優れた結果となった。1回書きの特性もSbERで10−5台以下を得られるのはTB0.34までであった。従って、従来より大きくTBを小さくすることは難しいと言える。
【表7】

【0158】
【表8】

【0159】
前記で説明したように、光記録媒体のトラック幅(TB)、もしくはピット列の幅と該光記録媒体を記録再生する記録再生装置に用いられる光ピックアップの光学系の開口数NA、波長λとから、次のTP×NA/λが0.480以上、1.026未満と高密度ですぐれた光記録媒体が提供できる。
【0160】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1A】本発明の一実施形態に係る光記録媒体(片面単層媒体)の断面図を説明する図である。
【図1B】本発明の一実施形態に係る光記録媒体(片面二層媒体)の断面図を説明する図である。
【図2A】本発明の一実施形態に係る光記録媒体のランド・グルーブ記録におけるトラック幅(TB)の定義を説明する図である。
【図2B】本発明の一実施形態に係る光記録媒体のグルーブ記録におけるトラック幅(TB)の定義を説明する図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る情報記録再生装置(光ディスク装置)の一例を示す概略図である。
【図4】図1に示した光ディスク装置に組み込まれる光ヘッド(PUH)の一例を示す概略図である。
【図5】図2に示したPUHに組み込まれるレーザ素子における共振器長を説明する概略図である。
【図6】図3に示したレーザ素子の発光とレーザ駆動電流の関係を説明する概略図である。
【図7】図3に示したレーザ素子により出力されるパルスレーザの出力波形の一例を示す概略図である。
【図8】図2に示したPUHのレーザ素子に供給される駆動電流とレーザ出力波形と記録膜に形成される記録マーク(の形成過程)の関係を説明する概略図である。
【図9】図6に示したレーザ出力波形と「T1」期間との関係を説明する概略図である。
【図10】図2に示したPUHに組み込まれるレーザ素子における共振器長が800μmである場合の緩和振動パルスの波形を説明する概略図である。
【図11】図8に示したレーザ出力波形が得られるレーザ発振条件の一例を説明する概略図である。
【図12】図1〜図9により説明した「サブナノパルス記録」における、記録されるデータ(NRZI)と、それに対応するレーザダイオード(LD)の駆動電流波形との関係の一例を説明する概略図である。
【図13】本発明の一実施形態に係るプロセス・チャンバーの概略図である。
【図14】本発明の一実施形態に係る成膜プロセスを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0162】
1…PC基板、11…第1干渉膜、12…下部界面膜、13…相変化光記録膜、14…上部界面膜、15…第2干渉膜、16…反射膜、17…第3干渉膜、18…接着剤層である層間分離層、19…L0情報層、20…L1情報層、21…干渉膜または誘電体膜、22…界面膜材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長λの光ビーム及び開口数NAのレンズにより処理される光記録媒体であって、
トラック又はピット列を備え、
前記トラック又はピットの幅TPが、0.480≦TP×NA/λ<1.026の条件を満たす光記録媒体。
【請求項2】
前記波長λが405nm、開口数NAが0.65の条件で処理される請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項3】
前記波長λが405nm、開口数NAが0.85の条件で処理される請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項4】
前記トラックに対応した記録膜を備え、
前記記録膜が、少なくともGeと、Sbと、Teとを含有し、その組成GexSbyTez 、かつx+y+z=100とするとき、GeSbTe三元相図上で、x=55・z=45と、x=45・z=55と、x=10・y=28・z=42と、x=10・y=36・z=54とで囲まれた組成である請求項1〜3のいずれか一つに記載の光記録媒体。
【請求項5】
前記記録膜の組成の一部をビスマスBiおよび/またはインジウムInおよび/またはスズSnで置換し、置換後の組成を(Ge(1-w) Snwx (Sb(1-v)(Bi(1-u) In u) vy Tez かつx+y+z=100で表したときに、この組成におけるw、vおよびuが、0≦w<0.5かつ0<v<1かつ0≦u≦0.7の条件を満たす請求項4に記載の光記録媒体。
【請求項6】
前記トラックに対応した記録膜を備え、
前記記録膜が、少なくともGeと、Biと、Teとを含有し、その組成GexBiyTez かつx+y+z=100とするとき、GeBiTe三元相図上で、x=55・z=45と、x=45・z=55と、x=10・y=28・z=42と、x=10・y=36・z=54とで囲まれた組成である請求項1〜3のいずれか一つに記載の光記録媒体。
【請求項7】
前記トラックに対応した記録膜を備え、
前記記録膜が、少なくともGeと、Sbと、Te、とN(窒素)を含有し、うちGe、Sb、Teの間の組成をGexSbyTez かつx+y+z=100であらわすとき、GeSbTe三元相図上で、x=55・z=45と、x=45・z=55と、x=10・y=28・z=42と、x=10・y=36・z=54とで囲まれた組成領域のGeSbTe系化合物にN(窒素)を1〜5at.%添加した請求項1〜3のいずれか一つに記載の光記録媒体。
【請求項8】
前記記録膜の組成の一部をビスマスBiおよび/またはインジウムInおよび/またはスズSnで置換し、置換後の組成を(Ge(1-w) Snwx (Sb(1-v)(Bi(1-u) In u) v y Tez かつx+y+z=100で表したときに、この組成におけるw、vおよびuが、0≦w<0.5かつ0<v<1かつ0≦u≦0.7の条件を満たし、
前記組成を持つGeSnSbTe、GeSnSbTeIn、GeSbTeIn、GeSbTeBiIn、GeSbSnTeBiIn、GeSbTeBi、GeSnSbTeBi、GeSnSbTeBiIn系化合物にNを1ないし5at.%添加した請求項7に記載の光記録媒体。
【請求項9】
前記トラックに対応した記録膜を備え、
前記記録膜が、少なくともGeと、Biと、Teと、N(窒素)を含有し、うちGe、Bi、Teの間の組成をGexBiyTezかつx+y+z=100であらわすとき、GeBiTe三元相図上で、x=55・z=45と、x+=45・z=55と、x=10・y=28・z=42と、x=10・y=36・z=54とで囲まれた組成領域のGeBiTe系化合物にN(窒素)を1〜5at.%添加した請求項1〜3のいずれか一つに記載の光記録媒体。
【請求項10】
前記トラックに対応した記録膜を備え、
前記記録膜が、少なくともSbと、Teとを含有し、その組成をSbaTe1-a で表すときaが0.6以上、0.81以下の組成である請求項1〜3のいずれか一つに記載の光記録媒体。
【請求項11】
前記トラックに対応した記録膜を備え、
前記記録膜が、少なくともGaと、Sbとを含有し、その組成をGabSb1-b で表すときbが0.09以上、0.35以下の組成である請求項1〜3のいずれか一つに記載の光記録媒体。
【請求項12】
前記トラックに対応した記録膜を備え、
前記記録膜が、少なくともInと、Sbとを含有し、その組成をIncSb1-c で表すときcが0.15以上、0.4以下の組成である請求項1〜3のいずれか一つに記載の光記録媒体。
【請求項13】
前記トラックに対応した記録膜を備え、
前記記録膜が、少なくともGaと、Sbとを含有し、その組成をGedSb1-d で表すときdが0.10以上、0.35以下の組成である請求項1〜3のいずれか一つに記載の光記録媒体。
【請求項14】
前記トラックに対応した記録膜を備え、
前記記録膜が、少なくともGaと、Inと、Sbとを含有し、その組成を(InSb)e(GaSb)1-e で表すときeが0以上、1未満の組成である請求項1〜3のいずれか一つに記載の光記録媒体。
【請求項15】
前記記録膜と接する層の少なくとも一方に、GeN、GeCrN、ZrO2+Cr2O3、ZrSiO4、Y2O3を含有するZrO2-xNx、Y2O3を含有するZrO2-x Nx+ Cr2O3、ZrSiO4-xNxから選ばれる界面層を用いた請求項4〜9のいずれか一つに記載の光記録媒体。
【請求項16】
前記記録膜と接する層の少なくも一方に、SiN、GeN、SiCから選ばれる層を用いた請求項10〜14のいずれか一つに記載の光記録媒体。
【請求項17】
波長λの光ビームを出射するレーザと、
前記レーザから出射された光ビームを光記録媒体へ集光させる開口数NAの対物レンズと、
を備え、
0.480≦トラック又はピットの幅TP×NA/λ<1.026の条件を満たすトラック又はピットを備えた光記録媒体から情報を再生する情報再生装置。
【請求項18】
前記波長λが405nm、開口数NAが0.65である請求項17に記載の情報再生装置。
【請求項19】
前記波長λが405nm、開口数NAが0.85である請求項17に記載の情報再生装置。
【請求項20】
波長λの光ビームを出射し、
前記出射された光ビームを開口数NAの対物レンズにより光記録媒体へ集光し、0.480≦トラック又はピットの幅TP×NA/λ<1.026の条件を満たすトラック又はピットを備えた光記録媒体から情報を再生する情報再生方法。
【請求項21】
波長λの光ビームを出射するレーザと、
前記レーザから出射された光ビームを光記録媒体へ集光させる開口数NAの対物レンズと、
を備え、
0.480≦トラック又はピットの幅TP×NA/λ<1.026の条件を満たすトラック又はピットを備えた光記録媒体に対して情報を記録する情報記録装置。
【請求項22】
前記波長λが405nm、開口数NAが0.65である請求項21に記載の情報記録装置。
【請求項23】
前記波長λが405nm、開口数NAが0.85である請求項21に記載の情報記録装置。
【請求項24】
前記レーザは、光のパルスの立ち上がりを0.9[nsec]以下、0.1[nsec]以上とする波形、もしくはパルス列に基づき、前記波長λの光ビームを出射する請求項19に記載の情報記録装置。
【請求項25】
波長λの光ビームを出射し、
前記出射された光ビームを開口数NAの対物レンズにより光記録媒体へ集光し、0.480≦トラック又はピットの幅TP×NA/λ<1.026の条件を満たすトラック又はピットを備えた光記録媒体に対して情報を記録する情報記録方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−134833(P2009−134833A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311420(P2007−311420)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】