光記録媒体
【課題】一層当たり25GB程度以上の大容量で追記型の光記録媒体に対応可能であり、多層記録層構成としたときに良好な記録特性を有する光記録媒体を提供する。
【解決手段】基板21と、2層以上4層以下の記録層221,222を有し、これら記録層221,222のうち少なくとも1以上の記録層222は、PdOと、PdO2とを含むと共に、完全に酸化された、In、Zn、Al、Sn(すなわち、In2O3、ZnO、Al2O3、SnO2)のうち少なくとも1つを含む組成の特定記録層とする。そして、この特定記録層に隣接して、In及びAlの少なくともいずれかを主成分とするIn/Al酸化物層より成る誘電体層232a、232bを設ける。
【解決手段】基板21と、2層以上4層以下の記録層221,222を有し、これら記録層221,222のうち少なくとも1以上の記録層222は、PdOと、PdO2とを含むと共に、完全に酸化された、In、Zn、Al、Sn(すなわち、In2O3、ZnO、Al2O3、SnO2)のうち少なくとも1つを含む組成の特定記録層とする。そして、この特定記録層に隣接して、In及びAlの少なくともいずれかを主成分とするIn/Al酸化物層より成る誘電体層232a、232bを設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク等の光記録媒体に関し、特に高記録密度で記録可能な光記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大容量光ディスクとしてブルーレイディスク(BD:Blu-ray Disc(登録商標)、以下本明細書では「大容量光ディスク」と記す)が製品化されている。この大容量光ディスクは、記録再生用光波長を405nm程度、記録再生用光学系の集光レンズの開口数NAを0.85程度として、約25GBの記録容量を実現している。
【0003】
この大容量光ディスク型の光記録媒体において、追記可能な記録層材料が種々検討されている。従来の追記型光ディスクの記録層材料としては、有機色素材料が知られている。一方、有機色素材料を用いる場合の生産性、また記録信号の長期安定保存性の問題点を改善するため、無機材料を追記型記録層材料に用いることが種々検討されている。例えば下記特許文献1には、昇温により高速で結晶化して光学変化を生じさせるTe−O等を含む記録層を有する光記録媒体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−112556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した大容量光ディスク型の追記型光記録媒体において更に大容量化を図るために、多層化が進められている。単層の大容量光ディスクに対してはジッター、変調度、エラーレート等の記録特性に関する適切な範囲が設定されており、多層型の媒体においてもこの範囲の記録特性を達成することが求められている。
【0006】
以上の課題に鑑みて、本発明は、上述した大容量光ディスク型であって追記型の光記録媒体に対応可能であり、多層化による記録特性の低下を抑制し、単層記録層構成と同程度の記録特性を有する光記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による光記録媒体は、基板と、2層以上4層以下の記録層を有し、これら記録層のうち少なくとも1以上の記録層は、PdOと、PdO2とを含む。更に、完全に酸化された、In、Zn、Al、Sn(すなわちIn2O3、ZnO、Al2O3、SnO2)のうち少なくとも1つを含む組成の特定記録層とする。そして、この特定記録層に隣接して、In又はAlの少なくともいずれかを主成分とするIn/Al酸化物層が設けられる構成とする。
【0008】
なお、本明細書において、In又はAlの少なくともいずれかを主成分とする、とは、Inを主成分とする酸化物層か、Alを主成分とする酸化物層か、又はInとAlとの和を主成分とする酸化物層であればよい。
【0009】
上述したように、本発明の光記録媒体においては、記録層を2層以上4層以下の多層構成とすると共に、少なくとも一以上の記録層を特定記録層として、その組成にPdOとPdO2を含むものとする。この特定記録層にレーザ光を照射すると、その他のIn2O3やAl2O3のような安定した酸化物ではなく、PdO、PdO2が反応する。すなわち、記録用光の照射によってPdOはPdとO2に分解し、またPdO2はPdOとO2に分解するように反応する。このときO2が発生することで、平坦な薄膜状の記録層に膨れが生ずる構造となる。このため記録用光を照射した位置に、周囲とは反射率の異なる記録マークが形成される。
【0010】
また、この特定記録層は、PdO、PdO2に加え、完全に酸化されたIn、Zn、Al、Snのうち少なくとも1つを含むものである。このような組成とする場合、組成比を調整することによって透過率を精度良く制御することができる。例えば、Znの組成比を大きくすると透過率は低下し、Alの組成比を大きくすると透過率は増加する。また、Pdの組成比を大きくすると透過率は大きく低下し、逆にPdの組成比を小さくすると透過率は大きく増加する傾向がある。このような組成比に対する透過率の変化を利用して、容易に且つ精度良く記録層の透過率を調整することができるという利点を有する。
【0011】
また本発明による光記録媒体は、この特定記録層に隣接して、In又はAlの少なくともいずれかを主成分とするIn/Al酸化物層を設けるものである。このような酸化物層を特定記録層の光入射側とは反対側に設ける場合、記録パワーのマージンがより広くなる。一方、光入射側に設ける場合は、その厚さを調整することによって、特定記録層を含む全体の反射率と透過率を個別に調整することが可能となる。したがって、特定記録層の上下いずれかに隣接してIn/Al酸化物層を設けることによって、多層記録媒体とする場合に良好な記録特性を実現できる。これにより、大容量光ディスク型の光記録媒体において、2層以上4層以下の多層記録層構成とすることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、大容量型光ディスクであって追記型の光記録媒体において、単層記録層構成と同等の記録特性を有する多層記録層構成の光記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係る光記録媒体の概略断面構成図である。
【図2】本発明の他の実施の形態に係る光記録媒体の概略断面構成図である。
【図3】本発明の他の実施の形態に係る光記録媒体の概略断面構成図である。
【図4】本発明の光記録媒体の特定記録層を単層構成とした第1の参考例における記録特性を示す図である。
【図5】本発明の光記録媒体の特定記録層を単層構成とした第2の参考例における記録層の特性を比較例の記録層の特性と比較して示す図である。
【図6】本発明の光記録媒体の特定記録層を単層構成とした第3の参考例における記録層の特性を示す図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る光記録媒体の各記録層の特性を示す図である。
【図8】本発明の他の実施の形態に係る光記録媒体の記録層の特性を示す図である。
【図9】本発明の他の実施の形態に係る光記録媒体の記録層の特性を示す図である。
【図10】本発明の他の実施の形態に係る光記録媒体の各記録層の特性を示す図である。
【図11】本発明の他の実施の形態に係る光記録媒体の記録層(L3)の特性を示す図である。
【図12】本発明の他の実施の形態に係る光記録媒体の記録層(L3)の特性を示す図である。
【図13】本発明の更に他の実施の形態に係る光記録媒体の各記録層の特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態とする)について説明する。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.光記録媒体の構成(記録層を2層、3層及び4層構成とする例)
2.参考例(特定記録層のみの単層構成とした光記録媒体の記録特性)
3.実施例(記録層を2層、3層及び4層構成とする例の記録特性)
【0015】
<1.光記録媒体の構成>
[光記録媒体の構造]
図1は、本発明の一実施の形態に係る光記録媒体10の概略断面構成図である。図1に示すように、この光記録媒体10は、基板11上に、2層の記録層121(L0)及び122(L1)が形成される。なお、多層記録媒体においては通常、基板に最も近い記録層をL0、次いでL1、L2、・・・とするので、便宜上併記して示す。
【0016】
本例の光記録媒体10は、上述した大容量光ディスク(Blu-ray Disc、(登録商標))型の構成とする場合は、厚みが約1.1mmで、外径が約120mmの円盤状の基板11が用いられる。そしてその一面側、例えばウォブリンググルーブとしての凹凸が形成された面の上に、記録層121及び122が光透過性材料より成る中間層14を介して形成される。また、各記録層121及び122の上又は下、図示の例では上下に隣接して、誘電体層131a及び131b、132a及び132bが設けられる。この誘電体層は、上又は下のいずれか一方に隣接して設けられていてもよい。これらの記録層121及び122のうち、少なくとも一層、好ましくは光入射側の記録層122は、PdOと、PdO2とを含む。更に、完全に酸化された、In、Zn、Al、Sn(すなわちIn2O3、ZnO、Al2O3、SnO2)のうち少なくとも1つを含む組成の特定記録層とする。また、特定記録層の上下に隣接する誘電体層131a、131b、132a、132bのうち少なくともいずれかは、In又はAlを主成分とするIn/Al酸化物層として構成する。
【0017】
更に記録層122の上には光透過性材料より成る保護層15が形成される。この保護層15の厚さは、記録層121から上の層の厚さの総和が約100μmとなるように選定され、基板11を含む全体の厚さが1.2mmとして構成される。大容量光ディスク型構成とする場合、記録用光の入射側は保護層15側とされる。なお、本発明は大容量光ディスク型構成とする場合に限定されるものではなく、ディスク状ではなくカード状等の基板を用いるとか、また基板11や保護層15の厚さ、ディスク状とする場合の外径等は用途に応じて適宜選定可能である。
【0018】
図2及び図3は、本発明の他の実施の形態に係る光記録媒体20及び30の概略断面構成図である。
図2に示す例においては、記録層を3層構成とする光記録媒体20の構成を示す。この例では、基板21上に、図1に示す例と同様にウォブリンググルーブとしての凹凸が形成され、その凹凸形成面の上に、基板21側から順に記録層221(L0)、222(L1)及び223(L2)が、中間層241及び242を介して形成される。図示の例では、記録層221、222及び223の上下に隣接して誘電体層231a及び231b、232a及び232b、233a及び233bがそれぞれ設けられる。そして記録層221〜223のうち少なくともいずれか、好ましくは記録層222、223の少なくともいずれかは、上述の組成による特定記録層として構成する。また特定記録層の上下に隣接して設けられる誘電体層のうち少なくともいずれかは、In/Al酸化物層として構成する。記録層223(L2)の上には、保護層25が形成される。図1に示す例と同様に、大容量光ディスク型の構成とする場合は、基板21の外径や厚さ、保護層25の厚さを図1に示す例と同様とすることが好ましい。
【0019】
図3は、記録層を4層とする場合の光記録媒体30の構成を示す。この例では、基板31上に、図1に示す例と同様にウォブリンググルーブとしての凹凸が形成される。そしてこの凹凸形成面の上に、基板31側から順に記録層321(L0)、322(L1)、323(L2)、324(L3)が、中間層341、342、343を介して形成される。また記録層321〜324の上下に隣接して、誘電体層331a及び331b、332a及び332b、333a及び333b、334a及び334bが設けられる。この場合も、記録層321〜324のうち少なくともいずれか、好ましくは記録層322〜324のうち少なくともいずれかを上述した組成の特定記録層として構成する。また、この特定記録層の上下に隣接して設ける誘電体層のうち、少なくともいずれかを、In/Al酸化物層より構成する。そして記録層324(L3)の上には、保護層35が形成される。この場合も図1に示す例と同様に、大容量光ディスク型の構成とする場合は、基板31の厚さや外径、保護層35の厚さを図1に示す例と同様とすることが好ましい。
【0020】
次に、図1〜図3に示す各実施の形態に係る光記録媒体における基板、記録層、中間層及び保護層の各部の適用可能な構造や材料等について説明する。
【0021】
[基板の構造]
基板11(21、31)は、例えばポリカーボネート等の樹脂等の材料より成り、射出成形等によって、マスタリング原盤からトラッキング用のウォブリンググルーブの凹凸形状が転写されて形成される。なお、本発明の光記録媒体においてグルーブ形状は必須ではなく、トラッキングが可能で、且つ記録トラック間クロストークが適切に抑制される構造であればよい。また、記録トラックは光入射側から見てグルーブ上又はランド上とすることができ、記録方式を問わない。
【0022】
[記録層材料]
本例において少なくとも1以上の記録層、例えば記録層122、223、324等は、上述したように、PdOと、PdO2とを含むものとする。更に、完全に酸化された、In、Zn、Al、Snのうち少なくとも1つを含む組成の特定記録層として構成する。
【0023】
この特定記録層に、例えば中心波長405nm近傍のレーザ等の光を照射したときに、PdOはPdとO2に、PdO2はPdOとO2に分解し、O2の発生によって構造的に膨れを生じる。これにより、周囲と反射率の異なる記録マークが形成される。
【0024】
そしてこの特定記録層は、完全に酸化された、In、Zn、Al又はSnのうち少なくとも1つ、すなわちIn2O3、ZnO、Al2O3、SnO2のうち少なくとも1つを含むものとする。上述したように、Znの組成比を大きくすると透過率は低下し、Alの組成比を大きくすると透過率は増加する。また、Pdの組成比を大きくすると透過率は大きく低下し、逆にPdの組成比を小さくすると透過率は大きく増加する傾向がある。このような組成比に対する透過率の変化を利用して、容易に且つ精度良く記録層の透過率を調整することができる。このため、記録層を多層構成とする場合に、記録層のいずれかの層を特定記録層とすることで、大容量光ディスク型構成で且つ多層構成とする光記録媒体において良好な記録特性を実現できる。
【0025】
すなわちこの特定記録層は、2層以上4層以下とする記録層全てに適用する必要はなく、特に光入射側の記録層の1層以上に設けることが好ましい。例えば2層構成とする場合は、第2の記録層122(L1)のみを特定記録層としてもよい。3層構成とする場合は、第2の記録層222か第3の記録層223のいずれか、又は第2及び第3の記録層222及び223を特定記録層とすることができる。また、4層構成とする場合は、第2、第3又は第4の記録層322、323又は324のいずれかを特定記録層としてもよい。また、第2及び第3の記録層322及び323か、第3及び第4の記録層323及び324を特定記録層としてもよい。更に、第2〜第4の記録層322〜324を全て特定記録層としてもよい。
【0026】
一方、光入射側とは反対側の記録層、すなわち大容量光ディスクの場合、最も基板11(21、31)側の記録層121(又は221又は321、L0)は、特定記録層として構成しなくてもよく、その他の材料を用いてもよい。その他の材料としては、多層記録層構成とした場合に良好な記録層としての記録特性が得られる材料であれば利用可能であり、特に限定されない。例えば、別の追記型の記録材料や書き換え型記録材料より成る記録層を設けることも可能であり、或いは再生専用型の記録層を設けることもできる。
【0027】
なお、この特定記録層には、その他In、Zn、Al、Snのうち完全酸化物とする元素以外の元素の不完全酸化物を含んでいてもよい。いずれの場合でも、共通の成膜装置を利用して記録層の形成が可能である材料より構成すれば、生産性上好適である。
【0028】
特定記録層以外の記録層として適用可能な材料として、例えばPdOとPdO2とを含む記録層材料が挙げられる。この場合、少なくともZn、In、Snのいずれかを含むことが好ましい。すなわち、Zn−Pd−O、In−Pd−O、Sn−Pd−Oのいずれかとすることができる。また、Zn−In−Pd−O、Zn−Sn−Pd−O、In−Sn−Pd−O、Zn−In−Sn−Pd−Oのいずれかとしてもよい。いずれの場合も透過率に対して影響が少なく、記録特性に大きな違いを生じることがない。そして、OはZn、InまたはSnを完全酸化させたとき(ZnO、In2O3、SnO2)の化学量論組成よりも多く含まれるようにする。このようにすることで、上述したようにこの記録層がPdO又はPdO2を含み、大容量光ディスク型構成とした場合に良好な記録特性が得られ、また上述した特定記録層と共通の成膜装置を利用して記録層形成が可能であり、生産性上好適である。なお、本明細書において「元素−O」とは、その元素と酸素とを成分として含む材料を示し、その元素と酸素とを含む化合物、その元素の酸化物(完全酸化に限らない)を含む。
【0029】
また、特定記録層の上下片側又は両側に隣接して設けるIn/Al酸化物層は、他の誘電体材料を含んでもよい。他の材料としては例えばZn−O、Sn−O、Ga−O、Si−O、Ti−O、V−O、Cr−O、Nb−O、Zr−O、Hf−O、Ta−O、Bi−O等の酸化物(完全酸化に限らない)等が挙げられる。また、SiN、AlN等の窒化物、SiC等の炭化物も含んでいてもよい。
【0030】
In又はAlの組成比は、O、NやCを除いた他の元素、すなわちZn、Sn、Ga、Si、Ti、V、Cr、Nb、Zr、Hf、Ta、Bi等の元素に対する組成比が30原子%を超え、好ましくは50原子%以上とすることが好ましい。また、InとAlとを両方含む場合は、これらの組成比の和が30原子%を超える値、好ましくは50原子%以上であればよい。このような組成の酸化物層を特定記録層に隣接して設ける場合、特定記録層の耐久性を高めることができると共に、多層構成としても良好な記録特性が得られる。
【0031】
この様な構成とするIn/Al酸化物層は、特定記録層の上層又は下層に隣接して設けてもよく、上下に隣接して設けてもよい。上層、すなわち光入射側に設ける場合はその厚さを調整することによって、反射率と透過率を精度良く制御することができる。また、下層、すなわち光入射側とは反対側に設ける場合は、記録パワーのマージンを広げることができる。したがって、上層又は下層のいずれか、好ましくは上下に隣接して設けることで、多層記録層構成とする場合の特定記録層における記録特性を良好に保持することが可能である。また、他の材料の誘電体層を隣接して設ける場合と同様に、耐久性の向上の効果を得ることもできる。
【0032】
またこのIn/Al酸化物層とする誘電体層131a、131b(231a、231b・・等)の厚さは、数nm〜数十nmであればよく、好ましくは3nm以上50nm以下であればよい。3nm未満とする場合、膜厚精度を保つことが難しく、また2層から4層構成とする場合の好ましい透過率、反射率の範囲とすることが難しい。一方、50nmを超える膜厚としても他の効果は得られず、成膜時間が長くなり生産性に影響する。このため、膜厚は3nm以上50nm以下とすることが好ましい。
【0033】
また特定記録層の上層又は下層に隣接して設ける、酸化物層から成る誘電体層を、特に、In−Sn−O層(ITO層)やIn−Si−Zr−O層等とした場合には、保存信頼性を向上することができる。
【0034】
In/Al酸化物層より成る誘電体層を設けない場合、或いは設けない側に特定記録層に隣接して、保護膜としての機能をもつ他の材料より成る誘電体層を設けてもよい。この場合は、厚さ数nm〜数十nm程度の光透過性の誘電体材料であればよい。適用可能な材料を例示すると、In−O、Zn−O、Al−O、Sn−O、Ga−O、Si−O、Ti−O、V−O、Cr−O、Nb−O、Zr−O、Hf−O、Ta−O、Bi−O等の酸化物が挙げられる。また、SiN、AlN等の窒化物、SiC等の炭化物も利用可能である。これらの材料を用いる場合においても、記録層の耐久性を高めることができる。
【0035】
また図1に示す記録層121と記録層122の間等、各記録層の間には、光透過性材料より成る中間層14(241、242、341〜343)が形成される。中間層14(241等)の材料としては、記録特性に影響を及ぼさない十分な光透過性があればよく、その厚さは層間クロストークを所定値以下に抑えられる範囲であればよい。適用可能な材料としては紫外線硬化性樹脂等が挙げられる。
【0036】
[製造方法]
特定記録層を含む各記録層121(122、221、・・・等)の成膜は蒸着法やスパッタ法等により行うことができる。例えば特定記録層をスパッタリング法により形成する場合、Pdターゲットと、その他にIn2O3、ZnO、Al2O3、SnOのいずれか1つ以上のターゲットを使用する。または、目的とする組成比の合金ターゲットを用いてもよい。そして、O2ガスに加え、ArガスやN2ガスを流しながら、スパッタ法により成膜する。
【0037】
このとき、特にN2ガスを用いて特定記録層を形成することにより、Pdと酸素との結合状態を制御することができる。これにより、特定記録層の透過率及び反射率を所望の値に制御することが可能になる。特に、特定記録層の透過率を高く、かつ反射率を低くすることが可能になる。
【0038】
上述したように特定記録層はPdOとPdO2を含むものである。このようにPdOとPdO2を含む記録層を形成する際に、O2ガスとArガスのみを用いてスパッタ法により成膜すると、記録層中のPdと酸素との結合状態を制御することにより、記録層の透過率を高くすることができる。
【0039】
これに対して、酸素ガスに加えて窒素ガスを流してスパッタ法により成膜する場合は、記録層中のPdと酸素との結合状態を制御して、記録層の透過率をさらに高くすることが可能になる。酸素ガスに加えて窒素ガスを流した場合には、2つの酸素原子と結合している状態(PdO2)よりも、1つの酸素原子と結合している状態(PdO)のPd原子が増える傾向が見られる。
【0040】
よって、特定記録層を形成する場合、特に光入射側に特定記録層を設ける場合は、その成膜時にO2ガスに加えN2ガスを流してスパッタ法により成膜することが好ましいといえる。なお、酸素ガス及び窒素ガスの流量は、任意の量とすることが可能であるが、より好ましくは、酸素ガスの流量を10sccm〜100sccmの範囲内とし、窒素ガスの流量を2sccm〜50sccmの範囲内とする。
【0041】
また、各誘電体層131a、131b、・・・334a、334bを形成する場合も、同様に、各誘電体層の材料をターゲットに用いたスパッタ法等により成膜することができる。
【0042】
中間層14(241等)の材料としては、例えば紫外線硬化性樹脂等の、光硬化性、又は熱硬化性の樹脂等を用いることができる。この場合、スピンコート等により塗布した後、加熱又は光照射により形成される。
【0043】
また、記録用光入射側に設ける保護層13(23、33)は、熱又は光硬化性の樹脂材料が利用可能である。これらの材料をスピンコート法等により塗布して成膜した後、加熱や光照射、例えば紫外線照射により硬化して形成することができる。または、紫外線硬化性樹脂等とポリカーボネート等の樹脂シートや、接着層とポリカーボネート等の樹脂シート用いて保護層13を形成することもできる。
【0044】
なお、図示しないが、保護層13(23、33)の表面(レーザ照射面)に、例えば機械的な衝撃、傷に対する保護、また利用者の取り扱い時の塵埃や指紋の付着等から、情報信号の記録再生品質を保護するためのハードコートを設けてもよい。ハードコートには、機械的強度を向上させるためにシリカゲルの微粉末を混入したものや、溶剤タイプ、無溶剤タイプ等の紫外線硬化性樹脂を用いることができる。機械的強度を有し、撥水性や撥油性を持たせるには、厚さを1μmから数μm程度とすることが好ましい。
【0045】
このような構成の光記録媒体10(20、30)によれば、後述の実験例において述べるように、非常に良好な記録再生特性を得ることができた。例えば再生信号の反射率、透過率、記録感度、記録マージン等の点で、大容量光ディスクとして十分な特性が得られた。
【0046】
<2.参考例(特定記録層の単層構成とした光記録媒体の記録特性)>
まず、特定記録層を含む多層光記録媒体の記録特性を検討する前に、特定記録層単独構成とした光記録媒体の記録特性について、参考例として検討した。
第1の参考例では、光記録媒体の基板として、外径120mm、厚さ1.1mmのディスク状のポリカーボネートより成る基板を用いた。この基板上に、In−Zn−Oより成る厚さ15nmの下層誘電体層、In−Zn−Sn−Al−Pd−Oより成る厚さ40nmの特定記録層、In−Zn−Oより成る厚さ15nmの上層誘電体層を形成した。更にこの上に、記録用光入射側最表面のいわゆるカバー層として、紫外線硬化性樹脂より成る厚さ100μmの保護層を形成した。
【0047】
各層は、それぞれターゲットを用いて成膜した。下層及び上層の誘電体層を成膜する際のターゲットはIn2O3、ZnOを用い、特定記録層を成膜する際のターゲットとしては、In2O3、ZnO、SnO、Al2O3、Pdを用いた。各層ともに各ターゲットのスパッタ電力をコントロールすることで組成を調整した。上下の誘電体層の組成比は、In:Zn=8:2とし、すなわちInを主成分とする酸化物により構成した。また、特定記録層の組成比は、In:Zn:Sn:Al:Pd=48:16:4:12:20とした。
【0048】
また、スパッタ成膜時のガスの流量は、誘電体層の成膜時はAr:70sccm、O2:30sccm、記録層の成膜時はAr:70sccm、O2:30sccm、N2:10sccmとした。
【0049】
このようにして作製した光記録媒体に対し、Blu-ray Disc(登録商標)用の評価装置において1倍速記録(クロック66MHz、線速4.92m/s)にて連続5トラックを記録し、中央のトラックのジッターを測定した。この評価装置における記録用光の波長は405nm、集光レンズの開口数NAは0.85、一層当たりの記録容量は約25GBを実現する記録方式である。この結果、ジッターボトム値は4.4%と良好な結果が得られた。図4にこの光記録媒体のジッターの記録特性を示す。
【0050】
なお、この光記録媒体の記録層について、その組成や膜厚、上下に隣接して設ける誘電体層の膜厚により、反射率をコントロールすることができる。
また、主に、記録層の組成により、透過率をコントロールすることができる。例えば、Alの添加量を上げるほど透過率は少しずつ高くすることができる。Znは添加量を上げるほど、逆に透過率が少しずつ低くなる。一方、Pdは添加量を上げると透過率は大きく減少し、添加量を下げれば透過率は大きく増大する。
【0051】
上記の第1の参考例による光記録媒体の記録層は、反射率6.0%、透過率65%である。これは、例えば2層構成の光記録媒体における記録用光入射側の第2の記録層122(L1)に、また3層構成の場合は第2又は第3の記録層222及び223(L1及びL2)に用いると好適である。また、4層構成の場合は第2の記録層322(L1)に用いると好適である。
その他、組成や厚さを変えることで、他の記録層に用いることが可能である。
【0052】
第2の参考例では、光記録媒体の基板として、第1の参考例と同じく、外径120mm、厚さ1.1mmのディスク状のポリカーボネートより成る基板を用いた。この基板上に、In−Sn−Oより成る厚さ8nmの下層誘電体層、Zn−W−Pd−Oより成る厚さ30nmの特定記録層、In−Sn−Oより成る厚さ15nmの上層誘電体層を形成した。更にこの上に、記録用光入射側最表面のいわゆるカバー層として、紫外線硬化性樹脂より成る厚さ100μmの保護層を形成した。
【0053】
各層は、それぞれターゲットを用いて成膜した。下層及び上層の誘電体層を成膜する際のターゲットはIn2O3、SnOを用い、特定記録層を成膜する際のターゲットとしては、ZnO、W、Pdを用いた。各層ともに各ターゲットのスパッタ電力をコントロールすることで組成を調整した。上下の誘電体層の組成比は、In:Sn=9:1とし、すなわちInを主成分とする酸化物により構成した。また、特定記録層の組成比は、Zn:W:Pd=60:25:15とした。
また、スパッタ成膜時のガスの流量は、誘電体層の成膜時はAr:50sccm、O2:5sccm、特定記録層の成膜時はAr:30sccm、O2:30sccmとした。
このようにして、第2の参考例の光記録媒体を作製した。
【0054】
さらに、特定記録層に対して、上下のIn−Sn−O誘電体層を設けないで、特定記録層の単膜のみとして、その他は第2の参考例と同様の構成とした、比較例の光記録媒体を作製した。
【0055】
このようにして作製したそれぞれの光記録媒体に対し、第1の参考例と同様の評価装置において、2倍速記録(クロック132MHz、線速7.68m/s)にて連続5トラックを記録し、中央のトラックのi−MLSEを測定した。
図5に、第2の参考例及び比較例の光記録媒体のi−MLSE(次世代光ディスク用評価基準)の記録特性を示す。図5中○印は第2の参考例の結果を示し、●印は比較例の結果を示す。
【0056】
図5より、特定記録層の上下にIn−Sn−O膜を設けた第2の参考例の場合、比較例の特定記録層の単膜の場合と比較して、i−MLSE値も記録パワーマージンも大幅に向上していることがわかる。
従って、特定記録層をZnWPdOとした場合も、Inを含む誘電体層を設けることにより、非常に良好な特性が得られ、i−MLSE値も記録パワーマージンも非常に良好な結果が得られている。
【0057】
第3の参考例では、特定記録層のZn−W−Pd−Oの厚さを40nmとし、組成比をZn:W:Pd=70:20:10とし、In−Sn−Oより成る下層誘電体層の厚さを10nmとして、その他は第2の参考例と同じ構成とした光記録媒体を作製した。
また、スパッタ成膜時のガスの流量は、誘電体層の成膜時はAr:50sccm、O2:5sccm、特定記録層の成膜時はAr:30sccm、O2:30sccmとした。
【0058】
第3の参考例の光記録媒体について、第1の参考例と同様の評価装置を用いて、特定記録層におけるエラーレートを調べた。エラーレートの結果を、図6に示す。
図6より、エラーレートが充分低く、パワーマージンも非常に良好な結果が得られた。
【0059】
第2の参考例及び第3の参考例の光記録媒体においては、特定記録層がZnWPdOであり、特定記録層にInを含んでいないが、良好な結果が得られた。
したがって、特定記録層に隣接してIn−Sn−O誘電体層を設けていることにより、特定記録層にInを含んでいなくても、良好な記録特性が得られることがわかる。
【0060】
第2の参考例及び第3の参考例による光記録媒体の記録層も、例えば2層構成の光記録媒体における記録用光入射側の第2の記録層122(L1)に、また3層構成の場合は第2又は第3の記録層222及び223(L1及びL2)に用いると好適である。また、4層構成の場合は第2の記録層322(L1)に用いると好適である。さらに、組成や厚さを変えることで、他の記録層に用いることが可能である。
【0061】
<3.実施例(記録層を2層、3層及び4層構成とする例の記録特性)>
次に、上述した特定記録層を含む2層〜4層の光記録媒体を作製し、その記録特性をそれぞれ検討した。各例共に、光記録媒体の基板としては、外径120mm、厚さ1.1mmのディスク状のポリカーボネートより成る基板を用いた。中間層としてはアクリル系の紫外線硬化性樹脂を用い、また記録用光入射側の最表面の保護層、いわゆるカバー層として、アクリル系の紫外線硬化性樹脂を用いた。第1の記録層から保護層までの全厚さを100μmとなるように構成し、全体として1.2mmの厚さとなるようにした。またこれら中間層及び保護層は、スピンコート法により成膜した後紫外線を照射して硬化することにより形成した。以下各実施例について詳細に説明する。
【0062】
(1)実施例1(2層構成、図1参照)
上述した構成の基板11上に、下記の第1の記録層121(L0)、中間層14、第2の記録層122(L1)、保護層15を形成した。各記録層121及び122の上下に隣接して、In/Al酸化物として、この場合はInを主成分とする酸化物より成る下層の誘電体層131a、132a及び上層の誘電体層131b、132bを設ける構成とした。各層の材料及び厚さは下記の通りである。
【0063】
(第1の記録層L0):下層誘電体層In−Zn−Sn−O(厚さ5nm)/記録層In−Zn−Sn−Pd−O(厚さ40nm)/上層誘電体層In−Zn−Sn−O(厚さ5nm)
(第2の記録層L1):下層誘電体層In−Zn−Sn−O(厚さ10nm)/記録層In−Zn−Sn−Pd−O(厚さ40nm)/上層誘電体層In−Zn−Sn−O(厚さ15nm)
【0064】
各層はそれぞれターゲットを用いて成膜した。ガスの流量は、各誘電体層の成膜時はAr:70sccm、O2:30sccmとした。また記録層の成膜時は、L0の場合はAr:70sccm、O2:30sccm、L1の場合は、Ar:70sccm、O2:30sccm、N2:10sccmとした。
【0065】
また、各層の組成を原子%の比で表すと下記の通りである。
(L0上下誘電体層)In:Zn:Sn=70:20:10
(L0記録層)In:Zn:Sn:Pd=25:35:5:35
(L1上下誘電体層)In:Zn:Sn=70:20:10
(L1記録層)In:Zn:Sn:Pd=35:35:10:20
【0066】
なお、第1の記録層121(L0)の反射率は7.7%、第2の記録層122(L1)の反射率は7.5%、透過率は56%である。
【0067】
この実施例1における光記録媒体に対し、上述の参考例と同様の評価装置において1倍速記録(クロック66MHz、線速4.92m/s)にて連続5トラックを記録し、中央のトラックのジッターを測定した。この場合一層当たりの記録容量は約25GBを実現する記録方式である。この結果、ジッターボトム値は第1の記録層121(L0)で4.6%、第2の記録層122(L1)で5.2%と良好な結果が得られた。図7にこの光記録媒体のジッターの記録特性を示す。図7中実線a1及びa2はそれぞれ第1の記録層121、第2の記録層122の結果を示す。
【0068】
この場合、第1及び第2の記録層121及び122を特定記録層とし、またその上下にIn/Al酸化物層より成る誘電体層131a、131b、132a、132bを設けている。そして誘電体層131a及び131bと、誘電体層132a及び132bをそれぞれ同一の材料としているが、上下で異なる材料、組成比とすることも可能であり、同様に良好な記録特性を得ることが可能である。
【0069】
(2)実施例2(3層構成、図2参照)
上述した構成の基板21上に、下記の第1の記録層221(L0)、中間層241、第2の記録層222(L1)、中間層242、第3の記録層223(L2)、保護層25を形成した。この例では、各記録層221〜223を全て特定記録層とし、その上下の誘電体層231a、231b、・・・233a、233bを全て、In/Al酸化物、この場合Inを主成分とする酸化物より成る誘電体により構成した。各層の材料及び厚さは下記の通りである。
【0070】
(第1の記録層L0):下層誘電体層In−Sn−O(厚さ10nm)/記録層In−Zn−Sn−Al−Pd−O(厚さ40nm)/上層誘電体層In−Sn−O(厚さ15nm)
(第2の記録層L1):下層誘電体層In−Zn−Ga−O(厚さ10nm)/記録層In−Zn−Sn−Al−Pd−O(厚さ40nm)/上層誘電体層In−Zn−Ga−O(厚さ25nm)
(第3の記録層L2):下層誘電体層In−Si−Zr−O(厚さ10nm)/記録層In−Zn−Sn−Al−Pd−O(厚さ40nm)/上層誘電体層In−Si−Zr−O(厚さ30nm)
【0071】
各層はそれぞれターゲットを用いて成膜した。ガスの流量は、各誘電体層の成膜時はAr:70sccm、O2:30sccmとした。また記録層の成膜時は、L0の場合はAr:70sccm、O2:30sccm、L1及びL2の場合は、Ar:70sccm、O2:30sccm、N2:10sccmとした。
【0072】
また、各層の組成を原子%の比で表すと下記の通りである。
(L0上下誘電体層)In:Sn=90:10
(L0記録層)In:Zn:Sn:Al:Pd=48:16:4:12:20
(L1上下誘電体層)In:Zn:Ga=86:7:7
(L1記録層)In:Zn:Sn:Al:Pd=55:15:5:13:12
(L2上下誘電体層)In:Si:Zr=50:20:30
(L2記録層)In:Zn:Sn:Al:Pd=55:15:5:15:10
【0073】
なお、第1の記録層221(L0)の反射率は3.1%、第2の記録層222(L1)の反射率は2.7%、透過率は75%である。また、第3の記録層223(L2)の反射率は3.0%、透過率は80%である。
【0074】
この実施例2における光記録媒体に対し、上述の参考例及び実施例1と同様の評価装置において2倍速記録(クロック132MHz、線速7.36m/s)にて連続5トラックを記録し、中央のトラックのi−MLSE(次世代光ディスク用評価基準)を測定した。この場合の一層当たりの記録容量は約33.4GBを実現する記録方式である。この結果、i−MLSEの値は第1の記録層221(L0)で9.7%、第2の記録層222(L1)で10.0%、第3の記録層223(L2)で10.2%と良好な結果が得られた。図8にこの光記録媒体のi−MLSEの記録特性を示す。図8中実線b1〜b3はそれぞれ第1の記録層221、第2の記録層222及び第3の記録層223の結果を示す。
【0075】
この場合、第1〜第3の記録層221〜223を特定記録層とし、またその上下にIn/Al酸化物層より成る誘電体層231a、231b、・・・233a、233bを設けている。そして特定記録層を挟む上下の誘電体層231a及び231b、・・・、233a及び233bをそれぞれ同一の材料としているが、上下で異なる材料、組成比とすることも可能であり、その場合も同様に良好な記録特性を得ることが可能である。
【0076】
(3)実施例3(4層構成、図3参照)
上述した構成の基板31上に、下記の第1の記録層321(L0)、中間層341、第2の記録層322(L1)、中間層342、第3の記録層323(L2)を形成した。更にその上に、中間層343、第4の記録層324(L3)、保護層35を形成した。この例では、各記録層321〜324を全て特定記録層とした。またその上下の誘電体層331a、331b、・・・、334a、334bを全て、In/Al酸化物、この場合Inを主成分とする酸化物より成る誘電体により構成した。各層の材料及び厚さは下記の通りである。
【0077】
(第1の記録層L0):下層誘電体層In−Zn−Sn−O(厚さ5nm)/記録層In−Zn−Sn−Pd−O膜(厚さ40nm)/上層誘電体層In−Zn−Sn−O(厚さ5nm)
(第2の記録層L1):下層誘電体層In−Zn−O(厚さ10nm)/記録層In−Zn−Sn−Al−Pd−O膜(厚さ40nm)/上層誘電体層In−Zn−O(厚さ15nm)
(第3の記録層L2):下層誘電体層In−Zn−Ga−O(厚さ10nm)/記録層In−Zn−Sn−Al−Pd−O膜(厚さ40nm)/上層誘電体層In−Zn−Ga−O(厚さ25nm)
(第4の記録層L3):下層誘電体層In−Zn−Al−O(厚さ10nm)/記録層In−Zn−Sn−Al−Pd−O膜(厚さ40nm)/上層誘電体層In−Zn−Al−O(厚さ30nm)
【0078】
各層はそれぞれターゲットを用いて成膜した。ガスの流量は、各誘電体層の成膜時はAr:70sccm、O2:30sccmとした。また記録層の成膜時は、L0の場合はAr:70sccm、O2:30sccm、L1〜L3の場合は、Ar:70sccm、O2:30sccm、N2:10sccmとした。
【0079】
各層の組成を原子%の比で表すと下記の通りである。
(L0上下誘電体層)In:Zn:Sn=70:20:10
(L0記録層)In:Zn:Sn:Pd=25:35:5:35
(L1上下誘電体層)In:Zn=80:20
(L1記録層)In:Zn:Sn:Al:Pd=48:16:4:12:20
(L2上下誘電体層)In:Zn:Ga=86:7:7
(L2記録層)In:Zn:Sn:Al:Pd=55:15:5:13:12
(L3上下誘電体層)In:Zn:Al=50:10:40
(L3記録層)In:Zn:Sn:Al:Pd=55:15:5:15:10
【0080】
なお、第1の記録層321(L0)の反射率は2.5%、第2の記録層322(L1)の反射率は3.3%、透過率は65%である。また、第3の記録層323(L2)の反射率は3.2%、透過率は75%、第4の記録層324(L3)の反射率は3.6%、透過率は80%である。
【0081】
この実施例3における光記録媒体に対し、上述の参考例、実施例1及び2と同様の評価装置において、まず1倍速記録(クロック66MHz、線速4.92m/s)にて連続5トラックを記録し、中央のトラックのジッターを測定した。この場合の一層当たりの記録容量は約25GBを実現する記録方式である。この結果、ジッターボトム値は第1の記録層321(L0)で5.1%、第2の記録層322(L1)で5.1%、第3の記録層323(L2)で4.7%、第4の記録層324(L3)で4.7%と良好な結果が得られた。図9にこの光記録媒体のジッターの記録特性を示す。図9中実線c1〜c4はそれぞれ第1の記録層321〜第4の記録層324の結果を示す。
【0082】
次に、同様の評価装置において、2倍速記録(クロック132MHz、線速7.68m/s)にて連続5トラックを記録し、中央のトラックのi−MLSEを測定した。この場合の一層当たりの記録容量は約32GBを実現する記録方式である。この結果、i−MLSEの値は第1の記録層321(L0)で9.3%、第2の記録層322(L1)で8.4%、第3の記録層323(L2)で8.8%、第4の記録層324(L3)で8.8%と良好な結果が得られた。図10にこの光記録媒体のi−MLSEの記録特性を示す。図10中実線d1〜d4はそれぞれ第1の記録層321〜第4の記録層324の結果を示す。また、この場合の第4の記録層324(L3)におけるエラーレートと変調度を図11及び図12に示す。
【0083】
この場合においても、第1〜第4の記録層321〜324を特定記録層とし、またその上下にIn/Al酸化物層より成る誘電体層331a、331b、・・・334a、334bを設けている。そして特定記録層を挟む上下の誘電体層331a及び331b、・・・、334a及び334bをそれぞれ同一の材料としているが、上下で異なる材料、組成比とすることも可能である。これらの例を含め、一層当たりの記録容量を約25GB、約32GBとする場合のいずれにおいても良好な記録特性を得ることが可能である。
【0084】
(4)実施例4(4層構成、実施例3の変形例)
実施例3において、第1の記録層321のみを特定記録層とせず、別の材料を用いて光記録媒体を構成し、その記録特性を測定した。この例における第1の記録層321の材料及び厚さは下記の通りである。なお、基板31と第1の記録層321との間にAgより成る厚さ100nmの反射層を形成した。
【0085】
(第1の記録層L0):下層誘電体層InSnO(厚さ10nm)/記録層ZnS−SiO2(厚さ10nm)/記録層Sb−ZnS−SiO2(厚さ20nm)/上層誘電体層InSnO(厚さ20nm)
【0086】
また、記録層を構成する各層の組成比は下記の通りである。
(In−Sn−O層)In:Sn=90:10
(ZnS−SiO2層)ZnS:SiO2=80:20
(Sb−ZnS−SiO2層)Sb:ZnS−SiO2=4:6
(ただしZnS−SiO2についてはZnS:SiO2=80:20)
【0087】
このような構成の第1の記録層321(L0)とする場合においても、上述の各例と同様の評価装置において、2倍速記録(クロック132MHz、線速7.68m/s)にて連続5トラックを記録し、中央のトラックのi−MLSEを測定した。この場合の一層当たりの記録容量は約32GBを実現する記録方式である。この結果、i−MLSE=9.8%が得られた。
【0088】
以上説明した各実施例1〜4において、ジッター及びi−MLSEの値は非常に小さく、記録パワーマージンは十分得られており、非常に良好な記録特性が得られた。
特に、3層構成とする実施例2において、一層当たりの記録容量を33.4GB、4層構成とする実施例3及び4において一層当たりの記録容量を32GBとする場合においても、非常に良好な記録特性が得られることが分かった。
【0089】
(5)実施例5(4層構成)
上述した構成の基板31上に、下記の第1の記録層321(L0)、中間層341、第2の記録層322(L1)、中間層342、第3の記録層323(L2)を形成した。更にその上に、中間層343、第4の記録層324(L3)、保護層35を形成した。この例では、各記録層321〜324を全て特定記録層とした。またその上下の誘電体層331a、331b、・・・、334a、334bを全て、In/Al酸化物、この場合Inを主成分とする酸化物より成る誘電体により構成した。各層の材料及び厚さは下記の通りである。
【0090】
(第1の記録層L0):下層誘電体層In−Sn−O(厚さ10nm)/記録層Zn−Pd−O膜(厚さ30nm)/上層誘電体層In−Sn−O(厚さ5nm)
(第2の記録層L1):下層誘電体層In−Sn−O(厚さ10nm)/記録層Zn−W−Pd−O膜(厚さ30nm)/上層誘電体層In−Sn−O(厚さ15nm)
(第3の記録層L2):下層誘電体層In−Sn−O(厚さ10nm)/記録層Zn−W−Pd−O膜(厚さ30nm)/上層誘電体層In−Sn−O(厚さ22nm)
(第4の記録層L3):下層誘電体層In−Si−Zr−O(厚さ10nm)/記録層Zn−W−Pd−O膜(厚さ30nm)/上層誘電体層In−Si−Zr−O(厚さ30nm)
【0091】
各層はそれぞれターゲットを用いて成膜した。誘電体層を成膜する際のターゲットはIn2O3、SnO、SiO2、ZrO2を用い、特定記録層を成膜する際のターゲットとしては、ZnO、W、Pdを用いた。ガスの流量は、In−Sn−O誘電体層の成膜時はAr:50sccm、O2:5sccm、In−Si−Zr−O誘電体層の成膜時はAr:50sccm、O2:1sccmとした。また各記録層の成膜時は、Ar:30sccm、O2:30sccmとした。
【0092】
各層の組成を原子%の比で表すと下記の通りである。
(L0上下誘電体層)In:Sn=9:1
(L0記録層)Zn:Pd=60:40
(L1上下誘電体層)In:Sn=9:1
(L1記録層)Zn:W:Pd=60:20:20
(L2上下誘電体層)In:Sn=9:1
(L2記録層)Zn:W:Pd=60:30:10
(L3上下誘電体層)In:Si:Zr=50:25:25
(L3記録層)Zn:W:Pd=60:30:10
【0093】
この実施例5における光記録媒体に対し、上述の参考例、実施例1〜4と同様の評価装置において、2倍速記録(クロック132MHz、線速7.68m/s)にて連続5トラックを記録し、中央のトラックのi−MLSEを測定した。この場合の一層当たりの記録容量は約32GBを実現する記録方式である。この結果、i−MLSEの値は第1の記録層321(L0)で9.5%、第2の記録層322(L1)で9.1%、第3の記録層323(L2)で9.3%、第4の記録層324(L3)で9.0%と良好な結果が得られた。図13にこの光記録媒体のi−MLSEの記録特性を示す。図13中実線e1〜e4はそれぞれ第1の記録層321〜第4の記録層324の結果を示す。
【0094】
実施例5では、特定記録層に隣接する誘電体層に、InSnO層(ITO層)やInSnZrO層を使用した。これらInSnO層(ITO層)やInSnZrO層は、実施例1〜実施例4の特定記録層の材料やその他の特定記録層の材料に対しても同様に、特定記録層に隣接する誘電体層として使用することができる。
【0095】
なお、本発明の光記録媒体は上述の各実施例における構成に限定されるものではなく、特定記録層を1層のみ設ける場合においても、同様に良好な記録特性を実現できる。また、特定記録層に隣接して設けるIn/Al酸化物層も、上述の各実施例の構成に限定されるものではなく、上又は下側にのみ設けるとか、また上下で異なる材料とすることも可能である。
更に、複数の特定記録層を設けてその上下、又は片側にIn/Al酸化物層を隣接して設ける場合、各特定記録層に隣接して設けるIn/Al酸化物層は、上述の各例においては異なる組成を含んでいる。これに対して、各特定記録層に隣接して設けるIn/Al酸化物層を全て同一の組成とし、膜厚のみを変化させる構成としてもよい。
その他、本発明は上述の例に限定されることなく、本発明構成を逸脱しない範囲で種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0096】
10,20,30.光記録媒体、11,21,31.基板、121,122,221,222,223,321,322,323,324.記録層、131a,131b,132a,132b,231a,231b,232a,232b,233a,233b,331a,331b,332a,332b,333a,333b,334a,334b.誘電体層、14,241,242,341,342,343.中間層、15,25,35.保護層
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク等の光記録媒体に関し、特に高記録密度で記録可能な光記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大容量光ディスクとしてブルーレイディスク(BD:Blu-ray Disc(登録商標)、以下本明細書では「大容量光ディスク」と記す)が製品化されている。この大容量光ディスクは、記録再生用光波長を405nm程度、記録再生用光学系の集光レンズの開口数NAを0.85程度として、約25GBの記録容量を実現している。
【0003】
この大容量光ディスク型の光記録媒体において、追記可能な記録層材料が種々検討されている。従来の追記型光ディスクの記録層材料としては、有機色素材料が知られている。一方、有機色素材料を用いる場合の生産性、また記録信号の長期安定保存性の問題点を改善するため、無機材料を追記型記録層材料に用いることが種々検討されている。例えば下記特許文献1には、昇温により高速で結晶化して光学変化を生じさせるTe−O等を含む記録層を有する光記録媒体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−112556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した大容量光ディスク型の追記型光記録媒体において更に大容量化を図るために、多層化が進められている。単層の大容量光ディスクに対してはジッター、変調度、エラーレート等の記録特性に関する適切な範囲が設定されており、多層型の媒体においてもこの範囲の記録特性を達成することが求められている。
【0006】
以上の課題に鑑みて、本発明は、上述した大容量光ディスク型であって追記型の光記録媒体に対応可能であり、多層化による記録特性の低下を抑制し、単層記録層構成と同程度の記録特性を有する光記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による光記録媒体は、基板と、2層以上4層以下の記録層を有し、これら記録層のうち少なくとも1以上の記録層は、PdOと、PdO2とを含む。更に、完全に酸化された、In、Zn、Al、Sn(すなわちIn2O3、ZnO、Al2O3、SnO2)のうち少なくとも1つを含む組成の特定記録層とする。そして、この特定記録層に隣接して、In又はAlの少なくともいずれかを主成分とするIn/Al酸化物層が設けられる構成とする。
【0008】
なお、本明細書において、In又はAlの少なくともいずれかを主成分とする、とは、Inを主成分とする酸化物層か、Alを主成分とする酸化物層か、又はInとAlとの和を主成分とする酸化物層であればよい。
【0009】
上述したように、本発明の光記録媒体においては、記録層を2層以上4層以下の多層構成とすると共に、少なくとも一以上の記録層を特定記録層として、その組成にPdOとPdO2を含むものとする。この特定記録層にレーザ光を照射すると、その他のIn2O3やAl2O3のような安定した酸化物ではなく、PdO、PdO2が反応する。すなわち、記録用光の照射によってPdOはPdとO2に分解し、またPdO2はPdOとO2に分解するように反応する。このときO2が発生することで、平坦な薄膜状の記録層に膨れが生ずる構造となる。このため記録用光を照射した位置に、周囲とは反射率の異なる記録マークが形成される。
【0010】
また、この特定記録層は、PdO、PdO2に加え、完全に酸化されたIn、Zn、Al、Snのうち少なくとも1つを含むものである。このような組成とする場合、組成比を調整することによって透過率を精度良く制御することができる。例えば、Znの組成比を大きくすると透過率は低下し、Alの組成比を大きくすると透過率は増加する。また、Pdの組成比を大きくすると透過率は大きく低下し、逆にPdの組成比を小さくすると透過率は大きく増加する傾向がある。このような組成比に対する透過率の変化を利用して、容易に且つ精度良く記録層の透過率を調整することができるという利点を有する。
【0011】
また本発明による光記録媒体は、この特定記録層に隣接して、In又はAlの少なくともいずれかを主成分とするIn/Al酸化物層を設けるものである。このような酸化物層を特定記録層の光入射側とは反対側に設ける場合、記録パワーのマージンがより広くなる。一方、光入射側に設ける場合は、その厚さを調整することによって、特定記録層を含む全体の反射率と透過率を個別に調整することが可能となる。したがって、特定記録層の上下いずれかに隣接してIn/Al酸化物層を設けることによって、多層記録媒体とする場合に良好な記録特性を実現できる。これにより、大容量光ディスク型の光記録媒体において、2層以上4層以下の多層記録層構成とすることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、大容量型光ディスクであって追記型の光記録媒体において、単層記録層構成と同等の記録特性を有する多層記録層構成の光記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係る光記録媒体の概略断面構成図である。
【図2】本発明の他の実施の形態に係る光記録媒体の概略断面構成図である。
【図3】本発明の他の実施の形態に係る光記録媒体の概略断面構成図である。
【図4】本発明の光記録媒体の特定記録層を単層構成とした第1の参考例における記録特性を示す図である。
【図5】本発明の光記録媒体の特定記録層を単層構成とした第2の参考例における記録層の特性を比較例の記録層の特性と比較して示す図である。
【図6】本発明の光記録媒体の特定記録層を単層構成とした第3の参考例における記録層の特性を示す図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る光記録媒体の各記録層の特性を示す図である。
【図8】本発明の他の実施の形態に係る光記録媒体の記録層の特性を示す図である。
【図9】本発明の他の実施の形態に係る光記録媒体の記録層の特性を示す図である。
【図10】本発明の他の実施の形態に係る光記録媒体の各記録層の特性を示す図である。
【図11】本発明の他の実施の形態に係る光記録媒体の記録層(L3)の特性を示す図である。
【図12】本発明の他の実施の形態に係る光記録媒体の記録層(L3)の特性を示す図である。
【図13】本発明の更に他の実施の形態に係る光記録媒体の各記録層の特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態とする)について説明する。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.光記録媒体の構成(記録層を2層、3層及び4層構成とする例)
2.参考例(特定記録層のみの単層構成とした光記録媒体の記録特性)
3.実施例(記録層を2層、3層及び4層構成とする例の記録特性)
【0015】
<1.光記録媒体の構成>
[光記録媒体の構造]
図1は、本発明の一実施の形態に係る光記録媒体10の概略断面構成図である。図1に示すように、この光記録媒体10は、基板11上に、2層の記録層121(L0)及び122(L1)が形成される。なお、多層記録媒体においては通常、基板に最も近い記録層をL0、次いでL1、L2、・・・とするので、便宜上併記して示す。
【0016】
本例の光記録媒体10は、上述した大容量光ディスク(Blu-ray Disc、(登録商標))型の構成とする場合は、厚みが約1.1mmで、外径が約120mmの円盤状の基板11が用いられる。そしてその一面側、例えばウォブリンググルーブとしての凹凸が形成された面の上に、記録層121及び122が光透過性材料より成る中間層14を介して形成される。また、各記録層121及び122の上又は下、図示の例では上下に隣接して、誘電体層131a及び131b、132a及び132bが設けられる。この誘電体層は、上又は下のいずれか一方に隣接して設けられていてもよい。これらの記録層121及び122のうち、少なくとも一層、好ましくは光入射側の記録層122は、PdOと、PdO2とを含む。更に、完全に酸化された、In、Zn、Al、Sn(すなわちIn2O3、ZnO、Al2O3、SnO2)のうち少なくとも1つを含む組成の特定記録層とする。また、特定記録層の上下に隣接する誘電体層131a、131b、132a、132bのうち少なくともいずれかは、In又はAlを主成分とするIn/Al酸化物層として構成する。
【0017】
更に記録層122の上には光透過性材料より成る保護層15が形成される。この保護層15の厚さは、記録層121から上の層の厚さの総和が約100μmとなるように選定され、基板11を含む全体の厚さが1.2mmとして構成される。大容量光ディスク型構成とする場合、記録用光の入射側は保護層15側とされる。なお、本発明は大容量光ディスク型構成とする場合に限定されるものではなく、ディスク状ではなくカード状等の基板を用いるとか、また基板11や保護層15の厚さ、ディスク状とする場合の外径等は用途に応じて適宜選定可能である。
【0018】
図2及び図3は、本発明の他の実施の形態に係る光記録媒体20及び30の概略断面構成図である。
図2に示す例においては、記録層を3層構成とする光記録媒体20の構成を示す。この例では、基板21上に、図1に示す例と同様にウォブリンググルーブとしての凹凸が形成され、その凹凸形成面の上に、基板21側から順に記録層221(L0)、222(L1)及び223(L2)が、中間層241及び242を介して形成される。図示の例では、記録層221、222及び223の上下に隣接して誘電体層231a及び231b、232a及び232b、233a及び233bがそれぞれ設けられる。そして記録層221〜223のうち少なくともいずれか、好ましくは記録層222、223の少なくともいずれかは、上述の組成による特定記録層として構成する。また特定記録層の上下に隣接して設けられる誘電体層のうち少なくともいずれかは、In/Al酸化物層として構成する。記録層223(L2)の上には、保護層25が形成される。図1に示す例と同様に、大容量光ディスク型の構成とする場合は、基板21の外径や厚さ、保護層25の厚さを図1に示す例と同様とすることが好ましい。
【0019】
図3は、記録層を4層とする場合の光記録媒体30の構成を示す。この例では、基板31上に、図1に示す例と同様にウォブリンググルーブとしての凹凸が形成される。そしてこの凹凸形成面の上に、基板31側から順に記録層321(L0)、322(L1)、323(L2)、324(L3)が、中間層341、342、343を介して形成される。また記録層321〜324の上下に隣接して、誘電体層331a及び331b、332a及び332b、333a及び333b、334a及び334bが設けられる。この場合も、記録層321〜324のうち少なくともいずれか、好ましくは記録層322〜324のうち少なくともいずれかを上述した組成の特定記録層として構成する。また、この特定記録層の上下に隣接して設ける誘電体層のうち、少なくともいずれかを、In/Al酸化物層より構成する。そして記録層324(L3)の上には、保護層35が形成される。この場合も図1に示す例と同様に、大容量光ディスク型の構成とする場合は、基板31の厚さや外径、保護層35の厚さを図1に示す例と同様とすることが好ましい。
【0020】
次に、図1〜図3に示す各実施の形態に係る光記録媒体における基板、記録層、中間層及び保護層の各部の適用可能な構造や材料等について説明する。
【0021】
[基板の構造]
基板11(21、31)は、例えばポリカーボネート等の樹脂等の材料より成り、射出成形等によって、マスタリング原盤からトラッキング用のウォブリンググルーブの凹凸形状が転写されて形成される。なお、本発明の光記録媒体においてグルーブ形状は必須ではなく、トラッキングが可能で、且つ記録トラック間クロストークが適切に抑制される構造であればよい。また、記録トラックは光入射側から見てグルーブ上又はランド上とすることができ、記録方式を問わない。
【0022】
[記録層材料]
本例において少なくとも1以上の記録層、例えば記録層122、223、324等は、上述したように、PdOと、PdO2とを含むものとする。更に、完全に酸化された、In、Zn、Al、Snのうち少なくとも1つを含む組成の特定記録層として構成する。
【0023】
この特定記録層に、例えば中心波長405nm近傍のレーザ等の光を照射したときに、PdOはPdとO2に、PdO2はPdOとO2に分解し、O2の発生によって構造的に膨れを生じる。これにより、周囲と反射率の異なる記録マークが形成される。
【0024】
そしてこの特定記録層は、完全に酸化された、In、Zn、Al又はSnのうち少なくとも1つ、すなわちIn2O3、ZnO、Al2O3、SnO2のうち少なくとも1つを含むものとする。上述したように、Znの組成比を大きくすると透過率は低下し、Alの組成比を大きくすると透過率は増加する。また、Pdの組成比を大きくすると透過率は大きく低下し、逆にPdの組成比を小さくすると透過率は大きく増加する傾向がある。このような組成比に対する透過率の変化を利用して、容易に且つ精度良く記録層の透過率を調整することができる。このため、記録層を多層構成とする場合に、記録層のいずれかの層を特定記録層とすることで、大容量光ディスク型構成で且つ多層構成とする光記録媒体において良好な記録特性を実現できる。
【0025】
すなわちこの特定記録層は、2層以上4層以下とする記録層全てに適用する必要はなく、特に光入射側の記録層の1層以上に設けることが好ましい。例えば2層構成とする場合は、第2の記録層122(L1)のみを特定記録層としてもよい。3層構成とする場合は、第2の記録層222か第3の記録層223のいずれか、又は第2及び第3の記録層222及び223を特定記録層とすることができる。また、4層構成とする場合は、第2、第3又は第4の記録層322、323又は324のいずれかを特定記録層としてもよい。また、第2及び第3の記録層322及び323か、第3及び第4の記録層323及び324を特定記録層としてもよい。更に、第2〜第4の記録層322〜324を全て特定記録層としてもよい。
【0026】
一方、光入射側とは反対側の記録層、すなわち大容量光ディスクの場合、最も基板11(21、31)側の記録層121(又は221又は321、L0)は、特定記録層として構成しなくてもよく、その他の材料を用いてもよい。その他の材料としては、多層記録層構成とした場合に良好な記録層としての記録特性が得られる材料であれば利用可能であり、特に限定されない。例えば、別の追記型の記録材料や書き換え型記録材料より成る記録層を設けることも可能であり、或いは再生専用型の記録層を設けることもできる。
【0027】
なお、この特定記録層には、その他In、Zn、Al、Snのうち完全酸化物とする元素以外の元素の不完全酸化物を含んでいてもよい。いずれの場合でも、共通の成膜装置を利用して記録層の形成が可能である材料より構成すれば、生産性上好適である。
【0028】
特定記録層以外の記録層として適用可能な材料として、例えばPdOとPdO2とを含む記録層材料が挙げられる。この場合、少なくともZn、In、Snのいずれかを含むことが好ましい。すなわち、Zn−Pd−O、In−Pd−O、Sn−Pd−Oのいずれかとすることができる。また、Zn−In−Pd−O、Zn−Sn−Pd−O、In−Sn−Pd−O、Zn−In−Sn−Pd−Oのいずれかとしてもよい。いずれの場合も透過率に対して影響が少なく、記録特性に大きな違いを生じることがない。そして、OはZn、InまたはSnを完全酸化させたとき(ZnO、In2O3、SnO2)の化学量論組成よりも多く含まれるようにする。このようにすることで、上述したようにこの記録層がPdO又はPdO2を含み、大容量光ディスク型構成とした場合に良好な記録特性が得られ、また上述した特定記録層と共通の成膜装置を利用して記録層形成が可能であり、生産性上好適である。なお、本明細書において「元素−O」とは、その元素と酸素とを成分として含む材料を示し、その元素と酸素とを含む化合物、その元素の酸化物(完全酸化に限らない)を含む。
【0029】
また、特定記録層の上下片側又は両側に隣接して設けるIn/Al酸化物層は、他の誘電体材料を含んでもよい。他の材料としては例えばZn−O、Sn−O、Ga−O、Si−O、Ti−O、V−O、Cr−O、Nb−O、Zr−O、Hf−O、Ta−O、Bi−O等の酸化物(完全酸化に限らない)等が挙げられる。また、SiN、AlN等の窒化物、SiC等の炭化物も含んでいてもよい。
【0030】
In又はAlの組成比は、O、NやCを除いた他の元素、すなわちZn、Sn、Ga、Si、Ti、V、Cr、Nb、Zr、Hf、Ta、Bi等の元素に対する組成比が30原子%を超え、好ましくは50原子%以上とすることが好ましい。また、InとAlとを両方含む場合は、これらの組成比の和が30原子%を超える値、好ましくは50原子%以上であればよい。このような組成の酸化物層を特定記録層に隣接して設ける場合、特定記録層の耐久性を高めることができると共に、多層構成としても良好な記録特性が得られる。
【0031】
この様な構成とするIn/Al酸化物層は、特定記録層の上層又は下層に隣接して設けてもよく、上下に隣接して設けてもよい。上層、すなわち光入射側に設ける場合はその厚さを調整することによって、反射率と透過率を精度良く制御することができる。また、下層、すなわち光入射側とは反対側に設ける場合は、記録パワーのマージンを広げることができる。したがって、上層又は下層のいずれか、好ましくは上下に隣接して設けることで、多層記録層構成とする場合の特定記録層における記録特性を良好に保持することが可能である。また、他の材料の誘電体層を隣接して設ける場合と同様に、耐久性の向上の効果を得ることもできる。
【0032】
またこのIn/Al酸化物層とする誘電体層131a、131b(231a、231b・・等)の厚さは、数nm〜数十nmであればよく、好ましくは3nm以上50nm以下であればよい。3nm未満とする場合、膜厚精度を保つことが難しく、また2層から4層構成とする場合の好ましい透過率、反射率の範囲とすることが難しい。一方、50nmを超える膜厚としても他の効果は得られず、成膜時間が長くなり生産性に影響する。このため、膜厚は3nm以上50nm以下とすることが好ましい。
【0033】
また特定記録層の上層又は下層に隣接して設ける、酸化物層から成る誘電体層を、特に、In−Sn−O層(ITO層)やIn−Si−Zr−O層等とした場合には、保存信頼性を向上することができる。
【0034】
In/Al酸化物層より成る誘電体層を設けない場合、或いは設けない側に特定記録層に隣接して、保護膜としての機能をもつ他の材料より成る誘電体層を設けてもよい。この場合は、厚さ数nm〜数十nm程度の光透過性の誘電体材料であればよい。適用可能な材料を例示すると、In−O、Zn−O、Al−O、Sn−O、Ga−O、Si−O、Ti−O、V−O、Cr−O、Nb−O、Zr−O、Hf−O、Ta−O、Bi−O等の酸化物が挙げられる。また、SiN、AlN等の窒化物、SiC等の炭化物も利用可能である。これらの材料を用いる場合においても、記録層の耐久性を高めることができる。
【0035】
また図1に示す記録層121と記録層122の間等、各記録層の間には、光透過性材料より成る中間層14(241、242、341〜343)が形成される。中間層14(241等)の材料としては、記録特性に影響を及ぼさない十分な光透過性があればよく、その厚さは層間クロストークを所定値以下に抑えられる範囲であればよい。適用可能な材料としては紫外線硬化性樹脂等が挙げられる。
【0036】
[製造方法]
特定記録層を含む各記録層121(122、221、・・・等)の成膜は蒸着法やスパッタ法等により行うことができる。例えば特定記録層をスパッタリング法により形成する場合、Pdターゲットと、その他にIn2O3、ZnO、Al2O3、SnOのいずれか1つ以上のターゲットを使用する。または、目的とする組成比の合金ターゲットを用いてもよい。そして、O2ガスに加え、ArガスやN2ガスを流しながら、スパッタ法により成膜する。
【0037】
このとき、特にN2ガスを用いて特定記録層を形成することにより、Pdと酸素との結合状態を制御することができる。これにより、特定記録層の透過率及び反射率を所望の値に制御することが可能になる。特に、特定記録層の透過率を高く、かつ反射率を低くすることが可能になる。
【0038】
上述したように特定記録層はPdOとPdO2を含むものである。このようにPdOとPdO2を含む記録層を形成する際に、O2ガスとArガスのみを用いてスパッタ法により成膜すると、記録層中のPdと酸素との結合状態を制御することにより、記録層の透過率を高くすることができる。
【0039】
これに対して、酸素ガスに加えて窒素ガスを流してスパッタ法により成膜する場合は、記録層中のPdと酸素との結合状態を制御して、記録層の透過率をさらに高くすることが可能になる。酸素ガスに加えて窒素ガスを流した場合には、2つの酸素原子と結合している状態(PdO2)よりも、1つの酸素原子と結合している状態(PdO)のPd原子が増える傾向が見られる。
【0040】
よって、特定記録層を形成する場合、特に光入射側に特定記録層を設ける場合は、その成膜時にO2ガスに加えN2ガスを流してスパッタ法により成膜することが好ましいといえる。なお、酸素ガス及び窒素ガスの流量は、任意の量とすることが可能であるが、より好ましくは、酸素ガスの流量を10sccm〜100sccmの範囲内とし、窒素ガスの流量を2sccm〜50sccmの範囲内とする。
【0041】
また、各誘電体層131a、131b、・・・334a、334bを形成する場合も、同様に、各誘電体層の材料をターゲットに用いたスパッタ法等により成膜することができる。
【0042】
中間層14(241等)の材料としては、例えば紫外線硬化性樹脂等の、光硬化性、又は熱硬化性の樹脂等を用いることができる。この場合、スピンコート等により塗布した後、加熱又は光照射により形成される。
【0043】
また、記録用光入射側に設ける保護層13(23、33)は、熱又は光硬化性の樹脂材料が利用可能である。これらの材料をスピンコート法等により塗布して成膜した後、加熱や光照射、例えば紫外線照射により硬化して形成することができる。または、紫外線硬化性樹脂等とポリカーボネート等の樹脂シートや、接着層とポリカーボネート等の樹脂シート用いて保護層13を形成することもできる。
【0044】
なお、図示しないが、保護層13(23、33)の表面(レーザ照射面)に、例えば機械的な衝撃、傷に対する保護、また利用者の取り扱い時の塵埃や指紋の付着等から、情報信号の記録再生品質を保護するためのハードコートを設けてもよい。ハードコートには、機械的強度を向上させるためにシリカゲルの微粉末を混入したものや、溶剤タイプ、無溶剤タイプ等の紫外線硬化性樹脂を用いることができる。機械的強度を有し、撥水性や撥油性を持たせるには、厚さを1μmから数μm程度とすることが好ましい。
【0045】
このような構成の光記録媒体10(20、30)によれば、後述の実験例において述べるように、非常に良好な記録再生特性を得ることができた。例えば再生信号の反射率、透過率、記録感度、記録マージン等の点で、大容量光ディスクとして十分な特性が得られた。
【0046】
<2.参考例(特定記録層の単層構成とした光記録媒体の記録特性)>
まず、特定記録層を含む多層光記録媒体の記録特性を検討する前に、特定記録層単独構成とした光記録媒体の記録特性について、参考例として検討した。
第1の参考例では、光記録媒体の基板として、外径120mm、厚さ1.1mmのディスク状のポリカーボネートより成る基板を用いた。この基板上に、In−Zn−Oより成る厚さ15nmの下層誘電体層、In−Zn−Sn−Al−Pd−Oより成る厚さ40nmの特定記録層、In−Zn−Oより成る厚さ15nmの上層誘電体層を形成した。更にこの上に、記録用光入射側最表面のいわゆるカバー層として、紫外線硬化性樹脂より成る厚さ100μmの保護層を形成した。
【0047】
各層は、それぞれターゲットを用いて成膜した。下層及び上層の誘電体層を成膜する際のターゲットはIn2O3、ZnOを用い、特定記録層を成膜する際のターゲットとしては、In2O3、ZnO、SnO、Al2O3、Pdを用いた。各層ともに各ターゲットのスパッタ電力をコントロールすることで組成を調整した。上下の誘電体層の組成比は、In:Zn=8:2とし、すなわちInを主成分とする酸化物により構成した。また、特定記録層の組成比は、In:Zn:Sn:Al:Pd=48:16:4:12:20とした。
【0048】
また、スパッタ成膜時のガスの流量は、誘電体層の成膜時はAr:70sccm、O2:30sccm、記録層の成膜時はAr:70sccm、O2:30sccm、N2:10sccmとした。
【0049】
このようにして作製した光記録媒体に対し、Blu-ray Disc(登録商標)用の評価装置において1倍速記録(クロック66MHz、線速4.92m/s)にて連続5トラックを記録し、中央のトラックのジッターを測定した。この評価装置における記録用光の波長は405nm、集光レンズの開口数NAは0.85、一層当たりの記録容量は約25GBを実現する記録方式である。この結果、ジッターボトム値は4.4%と良好な結果が得られた。図4にこの光記録媒体のジッターの記録特性を示す。
【0050】
なお、この光記録媒体の記録層について、その組成や膜厚、上下に隣接して設ける誘電体層の膜厚により、反射率をコントロールすることができる。
また、主に、記録層の組成により、透過率をコントロールすることができる。例えば、Alの添加量を上げるほど透過率は少しずつ高くすることができる。Znは添加量を上げるほど、逆に透過率が少しずつ低くなる。一方、Pdは添加量を上げると透過率は大きく減少し、添加量を下げれば透過率は大きく増大する。
【0051】
上記の第1の参考例による光記録媒体の記録層は、反射率6.0%、透過率65%である。これは、例えば2層構成の光記録媒体における記録用光入射側の第2の記録層122(L1)に、また3層構成の場合は第2又は第3の記録層222及び223(L1及びL2)に用いると好適である。また、4層構成の場合は第2の記録層322(L1)に用いると好適である。
その他、組成や厚さを変えることで、他の記録層に用いることが可能である。
【0052】
第2の参考例では、光記録媒体の基板として、第1の参考例と同じく、外径120mm、厚さ1.1mmのディスク状のポリカーボネートより成る基板を用いた。この基板上に、In−Sn−Oより成る厚さ8nmの下層誘電体層、Zn−W−Pd−Oより成る厚さ30nmの特定記録層、In−Sn−Oより成る厚さ15nmの上層誘電体層を形成した。更にこの上に、記録用光入射側最表面のいわゆるカバー層として、紫外線硬化性樹脂より成る厚さ100μmの保護層を形成した。
【0053】
各層は、それぞれターゲットを用いて成膜した。下層及び上層の誘電体層を成膜する際のターゲットはIn2O3、SnOを用い、特定記録層を成膜する際のターゲットとしては、ZnO、W、Pdを用いた。各層ともに各ターゲットのスパッタ電力をコントロールすることで組成を調整した。上下の誘電体層の組成比は、In:Sn=9:1とし、すなわちInを主成分とする酸化物により構成した。また、特定記録層の組成比は、Zn:W:Pd=60:25:15とした。
また、スパッタ成膜時のガスの流量は、誘電体層の成膜時はAr:50sccm、O2:5sccm、特定記録層の成膜時はAr:30sccm、O2:30sccmとした。
このようにして、第2の参考例の光記録媒体を作製した。
【0054】
さらに、特定記録層に対して、上下のIn−Sn−O誘電体層を設けないで、特定記録層の単膜のみとして、その他は第2の参考例と同様の構成とした、比較例の光記録媒体を作製した。
【0055】
このようにして作製したそれぞれの光記録媒体に対し、第1の参考例と同様の評価装置において、2倍速記録(クロック132MHz、線速7.68m/s)にて連続5トラックを記録し、中央のトラックのi−MLSEを測定した。
図5に、第2の参考例及び比較例の光記録媒体のi−MLSE(次世代光ディスク用評価基準)の記録特性を示す。図5中○印は第2の参考例の結果を示し、●印は比較例の結果を示す。
【0056】
図5より、特定記録層の上下にIn−Sn−O膜を設けた第2の参考例の場合、比較例の特定記録層の単膜の場合と比較して、i−MLSE値も記録パワーマージンも大幅に向上していることがわかる。
従って、特定記録層をZnWPdOとした場合も、Inを含む誘電体層を設けることにより、非常に良好な特性が得られ、i−MLSE値も記録パワーマージンも非常に良好な結果が得られている。
【0057】
第3の参考例では、特定記録層のZn−W−Pd−Oの厚さを40nmとし、組成比をZn:W:Pd=70:20:10とし、In−Sn−Oより成る下層誘電体層の厚さを10nmとして、その他は第2の参考例と同じ構成とした光記録媒体を作製した。
また、スパッタ成膜時のガスの流量は、誘電体層の成膜時はAr:50sccm、O2:5sccm、特定記録層の成膜時はAr:30sccm、O2:30sccmとした。
【0058】
第3の参考例の光記録媒体について、第1の参考例と同様の評価装置を用いて、特定記録層におけるエラーレートを調べた。エラーレートの結果を、図6に示す。
図6より、エラーレートが充分低く、パワーマージンも非常に良好な結果が得られた。
【0059】
第2の参考例及び第3の参考例の光記録媒体においては、特定記録層がZnWPdOであり、特定記録層にInを含んでいないが、良好な結果が得られた。
したがって、特定記録層に隣接してIn−Sn−O誘電体層を設けていることにより、特定記録層にInを含んでいなくても、良好な記録特性が得られることがわかる。
【0060】
第2の参考例及び第3の参考例による光記録媒体の記録層も、例えば2層構成の光記録媒体における記録用光入射側の第2の記録層122(L1)に、また3層構成の場合は第2又は第3の記録層222及び223(L1及びL2)に用いると好適である。また、4層構成の場合は第2の記録層322(L1)に用いると好適である。さらに、組成や厚さを変えることで、他の記録層に用いることが可能である。
【0061】
<3.実施例(記録層を2層、3層及び4層構成とする例の記録特性)>
次に、上述した特定記録層を含む2層〜4層の光記録媒体を作製し、その記録特性をそれぞれ検討した。各例共に、光記録媒体の基板としては、外径120mm、厚さ1.1mmのディスク状のポリカーボネートより成る基板を用いた。中間層としてはアクリル系の紫外線硬化性樹脂を用い、また記録用光入射側の最表面の保護層、いわゆるカバー層として、アクリル系の紫外線硬化性樹脂を用いた。第1の記録層から保護層までの全厚さを100μmとなるように構成し、全体として1.2mmの厚さとなるようにした。またこれら中間層及び保護層は、スピンコート法により成膜した後紫外線を照射して硬化することにより形成した。以下各実施例について詳細に説明する。
【0062】
(1)実施例1(2層構成、図1参照)
上述した構成の基板11上に、下記の第1の記録層121(L0)、中間層14、第2の記録層122(L1)、保護層15を形成した。各記録層121及び122の上下に隣接して、In/Al酸化物として、この場合はInを主成分とする酸化物より成る下層の誘電体層131a、132a及び上層の誘電体層131b、132bを設ける構成とした。各層の材料及び厚さは下記の通りである。
【0063】
(第1の記録層L0):下層誘電体層In−Zn−Sn−O(厚さ5nm)/記録層In−Zn−Sn−Pd−O(厚さ40nm)/上層誘電体層In−Zn−Sn−O(厚さ5nm)
(第2の記録層L1):下層誘電体層In−Zn−Sn−O(厚さ10nm)/記録層In−Zn−Sn−Pd−O(厚さ40nm)/上層誘電体層In−Zn−Sn−O(厚さ15nm)
【0064】
各層はそれぞれターゲットを用いて成膜した。ガスの流量は、各誘電体層の成膜時はAr:70sccm、O2:30sccmとした。また記録層の成膜時は、L0の場合はAr:70sccm、O2:30sccm、L1の場合は、Ar:70sccm、O2:30sccm、N2:10sccmとした。
【0065】
また、各層の組成を原子%の比で表すと下記の通りである。
(L0上下誘電体層)In:Zn:Sn=70:20:10
(L0記録層)In:Zn:Sn:Pd=25:35:5:35
(L1上下誘電体層)In:Zn:Sn=70:20:10
(L1記録層)In:Zn:Sn:Pd=35:35:10:20
【0066】
なお、第1の記録層121(L0)の反射率は7.7%、第2の記録層122(L1)の反射率は7.5%、透過率は56%である。
【0067】
この実施例1における光記録媒体に対し、上述の参考例と同様の評価装置において1倍速記録(クロック66MHz、線速4.92m/s)にて連続5トラックを記録し、中央のトラックのジッターを測定した。この場合一層当たりの記録容量は約25GBを実現する記録方式である。この結果、ジッターボトム値は第1の記録層121(L0)で4.6%、第2の記録層122(L1)で5.2%と良好な結果が得られた。図7にこの光記録媒体のジッターの記録特性を示す。図7中実線a1及びa2はそれぞれ第1の記録層121、第2の記録層122の結果を示す。
【0068】
この場合、第1及び第2の記録層121及び122を特定記録層とし、またその上下にIn/Al酸化物層より成る誘電体層131a、131b、132a、132bを設けている。そして誘電体層131a及び131bと、誘電体層132a及び132bをそれぞれ同一の材料としているが、上下で異なる材料、組成比とすることも可能であり、同様に良好な記録特性を得ることが可能である。
【0069】
(2)実施例2(3層構成、図2参照)
上述した構成の基板21上に、下記の第1の記録層221(L0)、中間層241、第2の記録層222(L1)、中間層242、第3の記録層223(L2)、保護層25を形成した。この例では、各記録層221〜223を全て特定記録層とし、その上下の誘電体層231a、231b、・・・233a、233bを全て、In/Al酸化物、この場合Inを主成分とする酸化物より成る誘電体により構成した。各層の材料及び厚さは下記の通りである。
【0070】
(第1の記録層L0):下層誘電体層In−Sn−O(厚さ10nm)/記録層In−Zn−Sn−Al−Pd−O(厚さ40nm)/上層誘電体層In−Sn−O(厚さ15nm)
(第2の記録層L1):下層誘電体層In−Zn−Ga−O(厚さ10nm)/記録層In−Zn−Sn−Al−Pd−O(厚さ40nm)/上層誘電体層In−Zn−Ga−O(厚さ25nm)
(第3の記録層L2):下層誘電体層In−Si−Zr−O(厚さ10nm)/記録層In−Zn−Sn−Al−Pd−O(厚さ40nm)/上層誘電体層In−Si−Zr−O(厚さ30nm)
【0071】
各層はそれぞれターゲットを用いて成膜した。ガスの流量は、各誘電体層の成膜時はAr:70sccm、O2:30sccmとした。また記録層の成膜時は、L0の場合はAr:70sccm、O2:30sccm、L1及びL2の場合は、Ar:70sccm、O2:30sccm、N2:10sccmとした。
【0072】
また、各層の組成を原子%の比で表すと下記の通りである。
(L0上下誘電体層)In:Sn=90:10
(L0記録層)In:Zn:Sn:Al:Pd=48:16:4:12:20
(L1上下誘電体層)In:Zn:Ga=86:7:7
(L1記録層)In:Zn:Sn:Al:Pd=55:15:5:13:12
(L2上下誘電体層)In:Si:Zr=50:20:30
(L2記録層)In:Zn:Sn:Al:Pd=55:15:5:15:10
【0073】
なお、第1の記録層221(L0)の反射率は3.1%、第2の記録層222(L1)の反射率は2.7%、透過率は75%である。また、第3の記録層223(L2)の反射率は3.0%、透過率は80%である。
【0074】
この実施例2における光記録媒体に対し、上述の参考例及び実施例1と同様の評価装置において2倍速記録(クロック132MHz、線速7.36m/s)にて連続5トラックを記録し、中央のトラックのi−MLSE(次世代光ディスク用評価基準)を測定した。この場合の一層当たりの記録容量は約33.4GBを実現する記録方式である。この結果、i−MLSEの値は第1の記録層221(L0)で9.7%、第2の記録層222(L1)で10.0%、第3の記録層223(L2)で10.2%と良好な結果が得られた。図8にこの光記録媒体のi−MLSEの記録特性を示す。図8中実線b1〜b3はそれぞれ第1の記録層221、第2の記録層222及び第3の記録層223の結果を示す。
【0075】
この場合、第1〜第3の記録層221〜223を特定記録層とし、またその上下にIn/Al酸化物層より成る誘電体層231a、231b、・・・233a、233bを設けている。そして特定記録層を挟む上下の誘電体層231a及び231b、・・・、233a及び233bをそれぞれ同一の材料としているが、上下で異なる材料、組成比とすることも可能であり、その場合も同様に良好な記録特性を得ることが可能である。
【0076】
(3)実施例3(4層構成、図3参照)
上述した構成の基板31上に、下記の第1の記録層321(L0)、中間層341、第2の記録層322(L1)、中間層342、第3の記録層323(L2)を形成した。更にその上に、中間層343、第4の記録層324(L3)、保護層35を形成した。この例では、各記録層321〜324を全て特定記録層とした。またその上下の誘電体層331a、331b、・・・、334a、334bを全て、In/Al酸化物、この場合Inを主成分とする酸化物より成る誘電体により構成した。各層の材料及び厚さは下記の通りである。
【0077】
(第1の記録層L0):下層誘電体層In−Zn−Sn−O(厚さ5nm)/記録層In−Zn−Sn−Pd−O膜(厚さ40nm)/上層誘電体層In−Zn−Sn−O(厚さ5nm)
(第2の記録層L1):下層誘電体層In−Zn−O(厚さ10nm)/記録層In−Zn−Sn−Al−Pd−O膜(厚さ40nm)/上層誘電体層In−Zn−O(厚さ15nm)
(第3の記録層L2):下層誘電体層In−Zn−Ga−O(厚さ10nm)/記録層In−Zn−Sn−Al−Pd−O膜(厚さ40nm)/上層誘電体層In−Zn−Ga−O(厚さ25nm)
(第4の記録層L3):下層誘電体層In−Zn−Al−O(厚さ10nm)/記録層In−Zn−Sn−Al−Pd−O膜(厚さ40nm)/上層誘電体層In−Zn−Al−O(厚さ30nm)
【0078】
各層はそれぞれターゲットを用いて成膜した。ガスの流量は、各誘電体層の成膜時はAr:70sccm、O2:30sccmとした。また記録層の成膜時は、L0の場合はAr:70sccm、O2:30sccm、L1〜L3の場合は、Ar:70sccm、O2:30sccm、N2:10sccmとした。
【0079】
各層の組成を原子%の比で表すと下記の通りである。
(L0上下誘電体層)In:Zn:Sn=70:20:10
(L0記録層)In:Zn:Sn:Pd=25:35:5:35
(L1上下誘電体層)In:Zn=80:20
(L1記録層)In:Zn:Sn:Al:Pd=48:16:4:12:20
(L2上下誘電体層)In:Zn:Ga=86:7:7
(L2記録層)In:Zn:Sn:Al:Pd=55:15:5:13:12
(L3上下誘電体層)In:Zn:Al=50:10:40
(L3記録層)In:Zn:Sn:Al:Pd=55:15:5:15:10
【0080】
なお、第1の記録層321(L0)の反射率は2.5%、第2の記録層322(L1)の反射率は3.3%、透過率は65%である。また、第3の記録層323(L2)の反射率は3.2%、透過率は75%、第4の記録層324(L3)の反射率は3.6%、透過率は80%である。
【0081】
この実施例3における光記録媒体に対し、上述の参考例、実施例1及び2と同様の評価装置において、まず1倍速記録(クロック66MHz、線速4.92m/s)にて連続5トラックを記録し、中央のトラックのジッターを測定した。この場合の一層当たりの記録容量は約25GBを実現する記録方式である。この結果、ジッターボトム値は第1の記録層321(L0)で5.1%、第2の記録層322(L1)で5.1%、第3の記録層323(L2)で4.7%、第4の記録層324(L3)で4.7%と良好な結果が得られた。図9にこの光記録媒体のジッターの記録特性を示す。図9中実線c1〜c4はそれぞれ第1の記録層321〜第4の記録層324の結果を示す。
【0082】
次に、同様の評価装置において、2倍速記録(クロック132MHz、線速7.68m/s)にて連続5トラックを記録し、中央のトラックのi−MLSEを測定した。この場合の一層当たりの記録容量は約32GBを実現する記録方式である。この結果、i−MLSEの値は第1の記録層321(L0)で9.3%、第2の記録層322(L1)で8.4%、第3の記録層323(L2)で8.8%、第4の記録層324(L3)で8.8%と良好な結果が得られた。図10にこの光記録媒体のi−MLSEの記録特性を示す。図10中実線d1〜d4はそれぞれ第1の記録層321〜第4の記録層324の結果を示す。また、この場合の第4の記録層324(L3)におけるエラーレートと変調度を図11及び図12に示す。
【0083】
この場合においても、第1〜第4の記録層321〜324を特定記録層とし、またその上下にIn/Al酸化物層より成る誘電体層331a、331b、・・・334a、334bを設けている。そして特定記録層を挟む上下の誘電体層331a及び331b、・・・、334a及び334bをそれぞれ同一の材料としているが、上下で異なる材料、組成比とすることも可能である。これらの例を含め、一層当たりの記録容量を約25GB、約32GBとする場合のいずれにおいても良好な記録特性を得ることが可能である。
【0084】
(4)実施例4(4層構成、実施例3の変形例)
実施例3において、第1の記録層321のみを特定記録層とせず、別の材料を用いて光記録媒体を構成し、その記録特性を測定した。この例における第1の記録層321の材料及び厚さは下記の通りである。なお、基板31と第1の記録層321との間にAgより成る厚さ100nmの反射層を形成した。
【0085】
(第1の記録層L0):下層誘電体層InSnO(厚さ10nm)/記録層ZnS−SiO2(厚さ10nm)/記録層Sb−ZnS−SiO2(厚さ20nm)/上層誘電体層InSnO(厚さ20nm)
【0086】
また、記録層を構成する各層の組成比は下記の通りである。
(In−Sn−O層)In:Sn=90:10
(ZnS−SiO2層)ZnS:SiO2=80:20
(Sb−ZnS−SiO2層)Sb:ZnS−SiO2=4:6
(ただしZnS−SiO2についてはZnS:SiO2=80:20)
【0087】
このような構成の第1の記録層321(L0)とする場合においても、上述の各例と同様の評価装置において、2倍速記録(クロック132MHz、線速7.68m/s)にて連続5トラックを記録し、中央のトラックのi−MLSEを測定した。この場合の一層当たりの記録容量は約32GBを実現する記録方式である。この結果、i−MLSE=9.8%が得られた。
【0088】
以上説明した各実施例1〜4において、ジッター及びi−MLSEの値は非常に小さく、記録パワーマージンは十分得られており、非常に良好な記録特性が得られた。
特に、3層構成とする実施例2において、一層当たりの記録容量を33.4GB、4層構成とする実施例3及び4において一層当たりの記録容量を32GBとする場合においても、非常に良好な記録特性が得られることが分かった。
【0089】
(5)実施例5(4層構成)
上述した構成の基板31上に、下記の第1の記録層321(L0)、中間層341、第2の記録層322(L1)、中間層342、第3の記録層323(L2)を形成した。更にその上に、中間層343、第4の記録層324(L3)、保護層35を形成した。この例では、各記録層321〜324を全て特定記録層とした。またその上下の誘電体層331a、331b、・・・、334a、334bを全て、In/Al酸化物、この場合Inを主成分とする酸化物より成る誘電体により構成した。各層の材料及び厚さは下記の通りである。
【0090】
(第1の記録層L0):下層誘電体層In−Sn−O(厚さ10nm)/記録層Zn−Pd−O膜(厚さ30nm)/上層誘電体層In−Sn−O(厚さ5nm)
(第2の記録層L1):下層誘電体層In−Sn−O(厚さ10nm)/記録層Zn−W−Pd−O膜(厚さ30nm)/上層誘電体層In−Sn−O(厚さ15nm)
(第3の記録層L2):下層誘電体層In−Sn−O(厚さ10nm)/記録層Zn−W−Pd−O膜(厚さ30nm)/上層誘電体層In−Sn−O(厚さ22nm)
(第4の記録層L3):下層誘電体層In−Si−Zr−O(厚さ10nm)/記録層Zn−W−Pd−O膜(厚さ30nm)/上層誘電体層In−Si−Zr−O(厚さ30nm)
【0091】
各層はそれぞれターゲットを用いて成膜した。誘電体層を成膜する際のターゲットはIn2O3、SnO、SiO2、ZrO2を用い、特定記録層を成膜する際のターゲットとしては、ZnO、W、Pdを用いた。ガスの流量は、In−Sn−O誘電体層の成膜時はAr:50sccm、O2:5sccm、In−Si−Zr−O誘電体層の成膜時はAr:50sccm、O2:1sccmとした。また各記録層の成膜時は、Ar:30sccm、O2:30sccmとした。
【0092】
各層の組成を原子%の比で表すと下記の通りである。
(L0上下誘電体層)In:Sn=9:1
(L0記録層)Zn:Pd=60:40
(L1上下誘電体層)In:Sn=9:1
(L1記録層)Zn:W:Pd=60:20:20
(L2上下誘電体層)In:Sn=9:1
(L2記録層)Zn:W:Pd=60:30:10
(L3上下誘電体層)In:Si:Zr=50:25:25
(L3記録層)Zn:W:Pd=60:30:10
【0093】
この実施例5における光記録媒体に対し、上述の参考例、実施例1〜4と同様の評価装置において、2倍速記録(クロック132MHz、線速7.68m/s)にて連続5トラックを記録し、中央のトラックのi−MLSEを測定した。この場合の一層当たりの記録容量は約32GBを実現する記録方式である。この結果、i−MLSEの値は第1の記録層321(L0)で9.5%、第2の記録層322(L1)で9.1%、第3の記録層323(L2)で9.3%、第4の記録層324(L3)で9.0%と良好な結果が得られた。図13にこの光記録媒体のi−MLSEの記録特性を示す。図13中実線e1〜e4はそれぞれ第1の記録層321〜第4の記録層324の結果を示す。
【0094】
実施例5では、特定記録層に隣接する誘電体層に、InSnO層(ITO層)やInSnZrO層を使用した。これらInSnO層(ITO層)やInSnZrO層は、実施例1〜実施例4の特定記録層の材料やその他の特定記録層の材料に対しても同様に、特定記録層に隣接する誘電体層として使用することができる。
【0095】
なお、本発明の光記録媒体は上述の各実施例における構成に限定されるものではなく、特定記録層を1層のみ設ける場合においても、同様に良好な記録特性を実現できる。また、特定記録層に隣接して設けるIn/Al酸化物層も、上述の各実施例の構成に限定されるものではなく、上又は下側にのみ設けるとか、また上下で異なる材料とすることも可能である。
更に、複数の特定記録層を設けてその上下、又は片側にIn/Al酸化物層を隣接して設ける場合、各特定記録層に隣接して設けるIn/Al酸化物層は、上述の各例においては異なる組成を含んでいる。これに対して、各特定記録層に隣接して設けるIn/Al酸化物層を全て同一の組成とし、膜厚のみを変化させる構成としてもよい。
その他、本発明は上述の例に限定されることなく、本発明構成を逸脱しない範囲で種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0096】
10,20,30.光記録媒体、11,21,31.基板、121,122,221,222,223,321,322,323,324.記録層、131a,131b,132a,132b,231a,231b,232a,232b,233a,233b,331a,331b,332a,332b,333a,333b,334a,334b.誘電体層、14,241,242,341,342,343.中間層、15,25,35.保護層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
2層以上4層以下の記録層を有し、
前記記録層のうち少なくとも1以上の記録層は、PdOと、PdO2とを含むと共に、完全に酸化された、In、Zn、Al、Snのうち少なくとも1つを含む組成の特定記録層とされ、
前記特定記録層に隣接して、In及びAlの少なくともいずれかを主成分とするIn/Al酸化物層が設けられる
光記録媒体。
【請求項2】
前記特定記録層の下層及び上層の両側に隣接して、前記In/Al酸化物層が設けられる請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項3】
前記記録層のうち、記録用光の入射側とは反対側の一層を除いて少なくとも1以上の記録層が、前記特定記録層とされる請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項4】
前記記録層は、記録用光の波長405nm、集光レンズの開口数NA0.85の光学系に対して、一層当たりの記録容量が25GB以上とされる請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項5】
前記記録層が3層以上とされ、
前記記録層は、記録用光の波長405nm、集光レンズの開口数NA0.85の光学系に対して、一層当たりの記録容量が30GB以上とされる請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項6】
前記In/Al酸化物層がInSnO層又はInSiZrO層である請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項7】
前記特定記録層がZn及びWを含み、前記特定記録層に隣接してInを主成分とする酸化物層が設けられる請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項8】
前記特定記録層に隣接する前記Inを主成分とする酸化物層がInSnO層又はInSiZrO層である請求項7に記載の光記録媒体。
【請求項1】
基板と、
2層以上4層以下の記録層を有し、
前記記録層のうち少なくとも1以上の記録層は、PdOと、PdO2とを含むと共に、完全に酸化された、In、Zn、Al、Snのうち少なくとも1つを含む組成の特定記録層とされ、
前記特定記録層に隣接して、In及びAlの少なくともいずれかを主成分とするIn/Al酸化物層が設けられる
光記録媒体。
【請求項2】
前記特定記録層の下層及び上層の両側に隣接して、前記In/Al酸化物層が設けられる請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項3】
前記記録層のうち、記録用光の入射側とは反対側の一層を除いて少なくとも1以上の記録層が、前記特定記録層とされる請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項4】
前記記録層は、記録用光の波長405nm、集光レンズの開口数NA0.85の光学系に対して、一層当たりの記録容量が25GB以上とされる請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項5】
前記記録層が3層以上とされ、
前記記録層は、記録用光の波長405nm、集光レンズの開口数NA0.85の光学系に対して、一層当たりの記録容量が30GB以上とされる請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項6】
前記In/Al酸化物層がInSnO層又はInSiZrO層である請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項7】
前記特定記録層がZn及びWを含み、前記特定記録層に隣接してInを主成分とする酸化物層が設けられる請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項8】
前記特定記録層に隣接する前記Inを主成分とする酸化物層がInSnO層又はInSiZrO層である請求項7に記載の光記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−243270(P2011−243270A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22171(P2011−22171)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
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