説明

光走査装置および画像形成装置

【課題】 光走査装置の筐体とカバー部材との間を封止する弾性部材による筐体の変形量を低減すること。
【解決手段】 光走査装置40は、光源47、光偏向器41、および光学部材60,61,62を収容する筐体85と、光源、光偏向器、および光学部材を防塵するために筐体の側壁85sに取り付けられるカバー部材70と、カバー部材に取り付けられ、カバー部材が筐体に取り付けられる際に側壁に当接することによって弾性変形する第1の当接部75cと、カバー部材が側壁に取り付けられた状態において側壁に沿うように設けられ、第1の当接部の変形に追従して弾性変形し側壁に当接する第2の当接部75bとを有する弾性部材75と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置およびそれを備える画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、電子写真画像形成プロセスを用いて、記録媒体に画像を形成する。画像形成装置としては、例えば、電子写真複写機、電子写真プリンタ(例えば、カラーレーザビームプリンタ、カラーLEDプリンタ等)、MFP(マルチファンクションプリンタ)、ファクシミリ装置、及びワードプロセッサがある。
【0003】
画像形成装置は、光走査装置を有する。光走査装置は、画像情報に従って変調された光ビームが画像形成装置に備えられる感光体を走査するように光ビームを偏向する。光ビームによって走査されることによって感光体上に静電潜像が形成される。
【0004】
図6は、光走査装置の光学素子を示す図である。光源47は、画像情報に従って変調された光ビームを射出する。光ビームは、コリメータレンズ43により平行光ビームにされる。平行光ビームは、シリンドリカルレンズ44により集光されて光偏向器41の反射鏡面に光スポットとして入射する。光偏向器41により偏向された光ビームは、1枚以上のfθレンズ45を通過する。fθレンズ45を通過することにより光ビームは感光体の表面を等速で移動する走査光となる。fθレンズ45を通過した光ビームは、反射ミラー46により感光体の表面を等速度で移動する光スポットとして結像される。
【0005】
シリンドリカルレンズ44およびfθレンズ45は、走査特性の向上を目的として、非球面に代表される特殊なレンズ有効面の採用が加速している。反射ミラー46は、画像形成速度の高速化にともなう光量損失を減らすために、高反射ミラーが採用されることが多くなってきている。
【0006】
光偏向器41は、多数の反射鏡面を外周に有する回転多面鏡を高速回転することで、入射された光ビームを所望の方向に偏向する構成が多く採用されている。
【0007】
感光体上へ導かれる光ビームの光量は、画像濃度に影響を与える。光ビームの光量が意図せず変動するようなことが起こると、記録媒体に形成された画像の濃度が「薄い」または「濃い」という問題を引き起こす原因となる。
【0008】
特に、光走査装置の内部に塵埃などが浸入し、光学素子に塵埃が付着した場合、塵埃等の汚れが光ビームの一部を遮るので、画像濃度が低下する。近年、大気汚染により、大気中に1μm以下の寸法の微細粉塵の量や化学物質の量が増加しており、従来に増して光学素子の汚れによる画像劣化の問題が深刻になってきている。
【0009】
現在、光走査装置の外周部の隙間を発泡部材により封止する方法が多く用いられている。しかし、光走査装置の内部に配置された光偏向器つまり回転多面鏡が高速回転することによって気流が発生し、発泡部材の張り合わせ箇所や連続的につながった気泡内を結ぶ微細な空間内を空気が流れることがある。ある箇所では光走査装置の内部から外部へ、また、ある箇所では光走査装置の外部から内部へと空気が流れる。
【0010】
この際、光走査装置の外部から内部へ流れる空気は、微細粉塵を含んでいる。光走査装置の稼動時間が長くなるほど、光走査装置の内部へ入り込む微細粉塵の量が増え、光走査装置の内部の光学素子の表面や光走査装置の筐体の内表面に付着する微細粉塵の量が増える。
【0011】
特に、回転多面鏡は、画像形成速度の高速化に伴い高速で回転され、回転多面鏡の周囲の空気流にのった塵埃が回転多面鏡の反射面に付着しやすい。回転多面鏡は多角形であるが故に、回転多面鏡が回転することでカルマン渦や乱気流が発生し、塵埃を載せた空気流が鏡面に激しくぶつかるためである。結果として、回転多面鏡の表面に微細な粉塵が蓄積される。衝突する空気流の量が多い鏡面の部分から汚れが進行し、反射率が低下していく。そして、像担持体の表面上の光スポットの光量が下がり、画像濃度が薄くなるという問題が発生する。
【0012】
光走査装置の光学素子の汚れの問題を解決するために、筺体とカバー部材との間の隙間に連続的に形成された気泡のないゴム材を配置することが提案されている。
【0013】
特許文献1に記載の光走査装置によれば、カバー部材と一体に形成された弾性部材を筐体に当接させることにより光走査装置を密閉している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2004−262118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、特許文献1において、弾性部材は、弾性部材が筐体に取り付けられている根元部から先端部までの全域で筺体に押しつけられている。このため、弾性部材と筺体との間の位置精度を非常に厳しく管理し実現しなければ、弾性部材と筐体との間に隙間が発生してしまう。また、たとえ、弾性部材を筐体に隙間無く押しつけることができたとしても、弾性部材は、根元部から先端部まで筐体に押し付けられているので、弾性部材の大きな反発力により筺体が変形することがある。筐体の変形は、光走査装置の光学特性を劣化させる。
【0016】
そこで、本発明は、筐体とカバー部材との間を封止する弾性部材による筐体の変形量を低減することができる光走査装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の光走査装置は、光源と、前記光源から射出された光ビームが感光体を走査するように前記光ビームを偏向する光偏向器と、前記光偏向器により偏向された光ビームを像担持体に導く光学部材と、前記光源、前記光偏向器、および前記光学部材を収容する筐体と、前記光源、前記光偏向器、及び前記光学部材を防塵するために前記筐体の側壁に取り付けられるカバー部材と、前記カバー部材に取り付けられ、前記カバー部材が前記筐体に取り付けられる際に前記側壁に当接することによって弾性変形する第1の当接部と、前記カバー部材が前記側壁に取り付けられた状態において前記側壁に沿うように設けられ、前記第1の当接部の変形に追従して弾性変形し前記側壁に当接する第2の当接部とを有する弾性部材と、を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、筐体とカバー部材との間を封止する弾性部材による筐体の変形量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による弾性部材を示す図。
【図2】本実施例による光走査装置を示す図。
【図3】カバー部材を筐体に固定するための固定部材を示す図。
【図4】弾性部材の変形を説明するための図。
【図5】本実施例による画像形成装置を示す図。
【図6】光走査装置の光学素子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施例を説明する。
【0021】
(画像形成装置)
図5は、本実施例による画像形成装置100を示す図である。画像形成装置100の一例として、タンデム型のカラーレーザビームプリンタを説明する。
画像形成装置100は、4つの画像形成ユニット10(10Y、10M、10C、10Bk)を含む画像形成部を有する。画像形成ユニット10Yは、イエロートナー画像を形成する。画像形成ユニット10Mは、マゼンタトナー画像を形成する。画像形成ユニット10Cは、シアントナー画像を形成する。画像形成ユニット10Bkは、ブラックトナー画像を形成する。
【0022】
画像形成ユニット10のそれぞれは、感光体ドラム(像担持体)50(50Y、50M、50C、50Bk)を有する。画像形成ユニット10のそれぞれは、感光体ドラム50の周りに配置された帯電ローラ12、現像装置13、一次転写ローラ15、およびクリーニング装置16を有する。
【0023】
現像装置13(13Y、13M、13C、13Bk)は、トナーとキャリアを混合した二成分現像剤を収納している。現像装置13Y、13M、13C、および13Bkは、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、およびブラックトナーを、それぞれ収納している。
【0024】
画像形成ユニット10の上方に、感光体ドラム50のそれぞれに接触して中間転写ベルト20が配置されている。中間転写ベルト20は、無端ベルトである。中間転写ベルト20は、一対のベルト搬送ローラ21および22にかけ回されており、矢印Hで示す方向に回転させられる。中間転写ベルト20は、一次転写ローラ15(15Y、15M、15C、15Bk)により感光体ドラム50にそれぞれ接触させられて、一次転写部T1を形成している。中間転写ベルト20は、無端ベルトである。中間転写ベルト20は、一対のベルト搬送ローラ21および22にかけ回されており、矢印Hで示す方向に回転させられる。中間転写ベルト20は、一次転写ローラ15(15Y、15M、15C、15Bk)により感光体ドラム50にそれぞれ接触させられて、一次転写部T1を形成している。
【0025】
二次転写ローラ60は、中間転写ベルト20を挟んでベルト搬送ローラ21に対向して配置され、二次転写ローラ60と中間転写ベルト20との間に二次転写部T2を形成している。
【0026】
4つの画像形成ユニット10は、中間転写ベルト20の下に並列的に配置されている。4つの画像形成ユニット10は、中間転写ベルト20の回動方向Hに沿ってイエロー画像形成ユニット10Y、マゼンタ画像形成ユニット10M、シアン画像形成ユニット10Cおよびブラック画像形成ユニット10Bkの順に配置されている。
【0027】
光走査装置40は、4つの画像形成ユニット10の下に配置されている。光走査装置40は、それぞれの色の画像情報に従って変調された光ビームを、画像形成ユニット10の感光体ドラム50のそれぞれに射出する。一つの光走査装置40は、4つの画像形成ユニット10に共用されている。
【0028】
光走査装置40は、4つの光源(半導体レーザ)47(図2(b))、光偏向器(ポリゴンモータユニット)41、反射ミラー60、第一結像レンズ61、および第二結像レンズ62を有する。4つの光源47は、それぞれの色の画像情報に従って変調された光ビーム(レーザ光)A(AY、AM、AC、ABk)を発光する。光偏向器41は、高速回転して光ビームAを偏向し走査する。光ビームAは、反射ミラー60、第一結像レンズ61、および第二結像レンズ62により案内されて、光走査装置40の上部に設けられた照射窓42を通してそれぞれの感光体ドラム50を照射する。光ビームAは、感光体ドラム50の軸線方向(主走査方向)に沿って走査される。
【0029】
給紙カセット2は、画像形成装置100の装置本体1の下部で、光走査装置40の下に配置されている。給紙カセット2は、装置本体1の側面から装置本体1に着脱可能に装着されている。給紙カセット2は、記録媒体(以下、シートという。)Pを収納している。シートPは、ピックアップローラ24により一枚ずつ送り出されて、給送ローラ25により給送される。リタードローラ26は、給送ローラ25に対向して配置されて、シートPの重送を防止する。
【0030】
シート搬送路27は、装置本体1の右側面に沿って略垂直に設けられている。給紙カセット2から給送されたシートPは、シート搬送路27に沿って、レジストレーションローラ対29および二次転写部T2を通り、定着器3へ搬送される。定着器3は、二次転写部T2の真上に設けられている。
【0031】
(画像形成動作)
画像形成動作を以下に説明する。感光体ドラム50は、中間転写ベルト20の矢印Hで示す方向(反時計回り方向)の回転に同期して、図5の矢印で示す方向(時計回り方向)に回転する。感光体ドラム50の表面は、帯電ローラ12(12Y、12M、12C、12Bk)によりそれぞれ均一に帯電される。
【0032】
光走査装置40は、均一に帯電された感光体ドラム50Yの表面にイエローの画像情報に従って変調された光ビームAYを照射して、イエロー画像用の静電潜像を感光体ドラム50Yの上に形成する。同様に、光走査装置40は、均一に帯電された感光体ドラム50Mの表面にマゼンタの画像情報に従って変調された光ビームAMを照射して、マゼンタ画像用の静電潜像を感光体ドラム50Mの上に形成する。同様に、光走査装置40は、均一に帯電された感光体ドラム50Cの表面にシアンの画像情報に従って変調された光ビームACを照射して、シアン画像用の静電潜像を感光体ドラム50Cの上に形成する。同様に、光走査装置40は、均一に帯電された感光体ドラム50Bkの表面にブラックの画像情報に従って変調された光ビームABkを照射して、ブラック画像用の静電潜像を感光体ドラム50Bkの上に形成する。
【0033】
現像装置13(13Y、13M、13C、13Bk)は、感光体ドラム50の上のそれぞれの静電潜像をそれぞれの色のトナーで現像して、イエロートナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像、およびブラックトナー像にする。
所定の転写バイアス電圧が一次転写ローラ15(15Y、15M、15C、15Bk)に印加され、感光体ドラム50と一次転写ローラ15との間の一次転写部T1のそれぞれに電界が形成される。感光体ドラム50の上のそれぞれの色のトナー像は、クーロン力で中間転写ベルト20の上に順次一次転写され、重ね合わされる。
クリーニング装置16(16Y、16M、16C、16Bk)は、一次転写後に感光体ドラム50の上に残留したトナーを除去する。
【0034】
ピックアップローラ24は、給紙カセット2の中のシートPを送り出す。給送ローラ25は、シートPをレジストレーションローラ対29へ給送する。シートPは、レジストレーションローラ対29でいったん停止する。レジストレーションローラ対29は、中間転写ベルト20の上の重ね合わされたトナー像とタイミングを合わせて、シートPを二次転写部T2へ搬送する。
二次転写部T2において、中間転写ベルト20の上の重ね合わされたトナー像は、シートPに一括して二次転写される。
【0035】
トナー像が転写されたシートPは、シート搬送路27に沿って定着器3へ搬送される。定着器3は、シートPを加熱および加圧して、トナー像をシートPに定着し、フルカラー画像を形成する。
フルカラー画像が形成されたシートPは、排出ローラ28により、装置本体1の上部に設けられた排出トレイ1aの上に排出される。
【0036】
(光走査装置)
次に、光走査装置40を説明する。
図2は、本実施例による光走査装置40を示す図である。図2(a)は、光走査装置40の縦断面図である。図2(b)は、筐体85に収容されている入射光学系を示す図である。
【0037】
光走査装置40は、光源47と、光偏向器41と、結像光学素子(光学部材)(60,61,62)と、筐体85と、カバー部材70と、弾性部材75を有する。光走査装置40の筐体85は、光源47と、光偏向器41と、結像光学素子(60,61,62)とを収容している。筐体85は、底壁85uと、側壁85sと、側壁85sにより画定される開口部86とを有する。
【0038】
図2(b)に示すように、二つの光源ユニット48が、筐体85の側壁85sに取り付けられている。それぞれの光源ユニット48は、縦に(副走査方向に)並べて配置された二つ光源47を有する。光源47は、光ビーム(レーザ光)A(AY,AM,AC,およびABk)を射出する。光ビームAは、コリメータレンズ43およびシリンドリカルレンズ44を介して光偏向器41へ入射する。光偏向器41は、光源47からの光ビームAを偏向する。
【0039】
結像光学素子(60,61,62)は、光偏向器41により偏向された光ビームを感光体ドラム50の表面(被走査面)上に結像する。結像光学素子(60,61,62)は、光ビームを感光体ドラム50上に結像する第一結像レンズ61および第二結像レンズ62、および光ビームを感光体ドラム50へ案内する反射ミラー60を有する。
光偏向器41および結像光学素子(60,61,62)は、筐体85の開口部86を通して筐体85へ収容される。カバー部材70は、筐体85の開口部86を覆う。
弾性部材75は、筐体85の側壁85sとカバー部材70との間に配置されて、筐体85とカバー部材70との間を封止するシール部材として機能する。図2(c)は、カバー部材70の裏面を示す図である。弾性部材75は、図2(c)の破線で示すように、カバー部材70の裏面の縁部に略沿って連続的に設けられている。
【0040】
(弾性部材)
以下、図1を用いて、弾性部材75を説明する。図1は、本発明による弾性部材75を示す図である。図1(a)は、図2(a)の円IAにより囲まれた部分の拡大図である。
弾性部材75は、連続する無端状に閉じた部材である。弾性部材75は、カバー部材70に結合部(取付部)73で取り付けられている。弾性部材75の基端部は、カバー部材70に取り付けられる取付部75aを構成する。弾性部材75が取り付けられるカバー部材70の取付部70aは、カバー部材70の裏面の縁部に略沿って連続的に設けられている。
【0041】
結合部73において、弾性部材75の取付部75aは、カバー部材70の取付部70aに取り付けられている。弾性部材75は、カバー部材70に接着剤などの固定手段で結合されていてもよいが、本実施例において、弾性部材75は、カバー部材70と一体に成型されている。
【0042】
弾性部材75は、二色成型によりカバー部材70と一体に成型されるとよい。もしくは、カバー部材70を成形した後、カバー部材70を再度、別型内へ設置して追加で弾性部材75を成型してもよい。
弾性部材75は、カバー部材70と一体に成型されているので、従来のカバー部材に手作業で弾性部材を貼付する方法に比べて、光走査装置40の組立の作業性を大幅に上げることができる。
なお、本実施例において、弾性部材75は、結合部73でカバー部材70に結合されているが、本発明は、これに限定されるものではない。弾性部材75は、例えば、カバー部材70の縁部に沿って延在する溝孔に嵌め込まれてカバー部材70に取り付けられていてもよい。
【0043】
カバー部材70は、図1(a)の矢印Vで示す装着方向に筐体85に装着される。弾性部材75とカバー部材70との結合部73は、筐体85にカバー部材70を装着する装着方向Vから見たときに、筐体85の開口部86の内側へずれて配置されている。弾性部材75が筐体85の内側に配置されているので、光走査装置40を小型化することができる。
カバー部材70を筺体85に取り付けることで弾性部材75の一部が筺体85と接触するように構成されている。
【0044】
図3は、カバー部材70を筐体85に固定するための固定部材88を示す図である。図3(a)は、光走査装置40の斜視図である。図3(b)は、図3(a)の 円IIIBにより囲まれた部分の拡大図である。
【0045】
固定部材88は、カバー部材70に設けられたスナップフィット部材80と、筐体85に設けられた突起部81とを有する。カバー部材70は、筐体85の上部の開口部86を覆うように装着方向Vから装着される。カバー部材70のスナップフィット部材80は、筐体85の突起部81を乗り越えて、スナップフィット部材80の溝孔80aに突起部81が嵌合する。カバー部材70は、スナップフィット部材80と突起部81との間の係合により、筐体85から脱落しないように筐体85に固定される。
【0046】
カバー部材70は、弾性部材75の反発力により、カバー部材70の表面へ向かう方向(矢印Uで示す方向)に押圧される。弾性部材75の反発力により、スナップフィット部材80の位置決め面80Bが突起部81の位置決め面81aに当接して、カバー部材70は、筐体85に対して精度良く位置決めされる。
【0047】
弾性部材75は、縦断面において、取付部(基端部)75aから少なくとも二股に分岐して少なくとも2つの方向に延在する第1の当接部75cおよび第2の当接部75bを有する。第1の当接部75cおよび第2の当接部75bは、弾性部材75の取付部75aに沿って延在するつば部(突縁部)である。弾性部材75が筐体85の側壁85sとカバー部材70との間に配置されたときに、第1の当接部75cおよび第2の当接部75bは、筐体85の側壁85sに沿って延在する。
第1の当接部75cおよび第2の当接部75bは、第1の当接部75cの変形に追従して第2の当接部75bが変形するように取付部75aから分岐している。
第1の当接部75cは、カバー部材70が筐体85に取り付けられる際に側壁85sに当接することによって弾性変形する。第2の当接部は、カバー部材70が側壁85sに取り付けられた状態において側壁85sに沿うように設けられ、第1の当接部75cの変形に追従して弾性変形し側壁85sに当接する。
以下に、図4を参照して、第1の当接部75cおよび第2の当接部75bの変形を説明する。
図4は、弾性部材75の変形を説明するための図である。図4(a)は、カバー部材70を筐体85に装着する前の、弾性部材75が筐体85の側壁85sに接触していない状態を示す図である。図4(b)および図4(c)は、カバー部材70を筐体85に装着する途中の、弾性部材75が筐体85の側壁85sに接触している状態を示す図である。図4(d)は、カバー部材70を筐体85に装着した後の弾性部材75を示す図である。
カバー部材70を筐体85に装着するために、図4(a)に示すように、カバー部材70を筐体85へ向けて矢印Vで示す方向へ移動させる。
図4(b)に示すように、弾性部材75の第2の当接部75bは、筐体85の側壁85sの内壁面85aに接触し、弾性部材75が矢印Vで示す方向へ移動されるにつれて、第2の当接部75bの先端部75b1は、まくり上がるように変形する。弾性部材75の第1の当接部75cの先端部75c1は、筐体85の側壁85sの頂面85bと接触する。
なお、第1の当接部75cの先端部75c1が側壁85sの頂面85bと接触したときに、図4(c)に示すように、第2の当接部75bの先端部75b1は、側壁85sの内壁面85aに接触していなくてもよい。
【0048】
さらに、カバー部材70を筐体85へ向けて矢印Vで示す方向へ移動させると、第1の当接部75cの先端部75c1は、側壁85sの頂面85bに押されて矢印Eで示す方向へ変形する。第1の当接部75cの変形は、弾性部材75の取付部75aを結合部73の周りに回転させ、第2の当接部75bを矢印Rで示す方向に変形させる。すなわち、第2の当接部75bは、第1の当接部75cの変形に追従するように、第1の当接部75cへ向かって変形する。よって、第2の当接部75bの先端部75b1は、さらに、側壁85sの内壁面85aを押圧するように変形する。
カバー部材70を筐体85に装着したときに、第2の当接部75bは、第2の当接部75bの先端部75b1が筐体85の内壁面85aと接触して変形する。図1(a)において、第2の当接部75bの先端部75b1は、まくり上がるように内壁面85aと接触しているが、先端部75b1が湾曲するようにまたは折れ曲がるように内壁面85aと接触してもよい。また、第1の当接部75cは、第1の当接部75cの先端部75c1の側部が筐体85の頂面85bと接触する。
第1の当接部75cおよび第2の当接部75bは、筐体85の異なる面85aおよび85bを異なる方向に押圧する。
【0049】
弾性部材75の取付部(基端部)75aは、筐体85にカバー部材70を装着する装着方向Vから見たときに、筐体85の開口部86の内側に配置されている。すなわち、弾性部材75の第2の当接部75bにより押圧される筐体85の内壁面85aに対して垂直な平面において、カバー部材70と弾性部材75の結合部73は、第2の当接部75bにより押圧される内壁面85aよりも光走査装置40の内側に位置している。これによって、弾性部材75を、筐体85の外壁面85cよりも内側に配置することが可能となり、光走査装置40の小型化を達成することができる。
【0050】
第2の当接部75bの先端部75b1は、筐体85の側壁85sの内壁面85aを、装着方向Vに対して垂直な方向に押圧する。第2の当接部75bの先端部75b1は、側壁85sの内壁面85aから、装着方向Vに対して垂直な方向に反発力Fを受ける。
一方、第1の当接部75cの先端部75c1の側部は、筐体85の側壁85sの頂面85bを、装着方向Vに押圧する。第1の当接部75cの先端部75c1の側部は、側壁85sの頂面85bから、装着方向Vと反対の方向に反発力Gを受ける。
【0051】
図1(b)に示すように、弾性部材75は、筐体85の内壁面85aの反発力Fおよび頂面85bの反発力Gと釣り合うように変形して、安定した位置に維持される。弾性部材75は、反発力Fによる筐体85から離れる方向以外のカバー部材70へ向かう反発力Gを発生させることができ、安定した封止性能を確保できる。よって、弾性部材75は、高い封止性能と安定した封止性能を発揮することができる。
【0052】
弾性部材75の第1の当接部75cおよび第2の当接部75bが筐体85の内壁面85aおよび頂面85bをそれぞれ押圧するように配置された状態で、弾性部材75および筐体85は、第2の当接部75bと第1の当接部75cとの間に閉空間90を形成する。閉空間90が存在するので、弾性部材75の柔軟性を十分に発揮することができる。弾性部材75は、弾性部材75の柔軟性を十分に発揮した状態でカバー部材70と筐体85との間を確実にシールすることができる。よって、筐体85の変形による照射位置変動などの光学特性劣化を防止することができる。
【0053】
光走査装置40の長時間の使用により光走査装置の温度が上昇して筐体85が変形しても、本実施例の弾性部材75は、第1の当接部75cおよび第2の当接部75bの柔軟な変形によりカバー部材70と筐体85との間を確実にシールすることができる。よって、光走査装置40の内外の温度変動が起きた場合においても、弾性部材75は、カバー部材70と筐体85との間から微細粉塵が侵入することを防止することができる。よって、光走査装置40の内部に設置された光学素子の汚れを防止できる。
本実施例においては、弾性部材75の第2の当接部75bへの反発力Fの方向は、第1の当接部75cへの反発力Gの方向に対して垂直である。よって、弾性部材75が筐体85へ与える押圧力の方向を直交させることができる。したがって、弾性部材75による筐体85の変形量が小さくなる。よって、本実施例の弾性部材75は、従来技術の弾性部材の押圧力による筐体の変形に起因する光学素子の光学特性の劣化を、大幅に低減することができる。
【0054】
本実施例において、弾性部材75の第2の当接部75bが筐体85へ与える押圧力の方向は、第1の当接部75cが筐体85へ与える押圧力の方向に対して垂直である。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。弾性部材75の第2の当接部75bが筐体85へ与える押圧力の方向は、第1の当接部75cが筐体85へ与える押圧力の方向と異なっていればよい。弾性部材75が筐体85に与える押圧力を、直交する二方向に分散させることにより、弾性部材75による筐体85の変形量を小さくすることができる。
【0055】
本実施例において、弾性部材75は、カバー部材70と一体に形成されている。しかし、弾性部材75は、筐体85と一体に形成されてもよい。弾性部材75が筐体85と一体に形成されている場合に、弾性部材75に設けられた複数の当接部がカバー部材70の異なる面を異なる方向に押圧するように構成する。このような変形例においても、本実施例と同様の効果を奏することができる。
【0056】
本実施例において、弾性部材75とカバー部材70との結合部73は、筐体85にカバー部材70を装着する装着方向Vから見たときに、筐体85の開口部86の内側へずれて配置されている。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。図1(c)に示すように、弾性部材75とカバー部材70との結合部73は、筐体85にカバー部材70を装着する装着方向Vから見たときに、筐体85の開口部86の外側へずれて配置されていてもよい。この場合、第2の当接部75bが側壁85sの外壁面85cに接触する。第1の当接部75cおよび第2の当接部75bは、筐体85の側壁85sの異なる面85aおよび85cを異なる方向に押圧する。図1(c)に示す実施例も、図1(b)に示す実施例と同様の封止効果を得ることができる。
【0057】
本実施例によれば、筐体85の変形量を低減することができる。よって、光走査装置40により感光体ドラム50の上に静電潜像を高精度に再現して、良質な画像を形成することができる。
【0058】
本実施例によれば、微細塵埃による光学素子の汚れを防止することができるので、静電潜像を形成するための光ビームの光量を所望の値に安定して維持することができる。本実施例によれば、光走査装置40の防塵性能を向上させることができる。
【0059】
本実施例においては、弾性部材75は、第1の当接部75cおよび第2の当接部75bを有する。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。弾性部材75の先端部が少なくとも二方向に分割され、それぞれが筐体またはカバー部材の異なる部分を異なる方向に押圧するように接触すればよい。
【0060】
本実施例によれば、弾性部材75は、弾性部材75の柔軟性を十分に発揮できるように閉空間90を形成しているので、弾性部材75の取り付け位置の精度の影響を受けにくく、筐体とカバー部材との間を確実に封止することができる。
【符号の説明】
【0061】
40 光走査装置
41 光偏向器
47 光源
50 感光体ドラム(像担持体)
60 反射ミラー(結像光学素子)
61 第一結像レンズ(結像光学素子)
62 第二結像レンズ(結像光学素子)
70 カバー部材
75 弾性部材
75b 第2の当接部
75c 第1の当接部
85 筐体
85s 側壁
86 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から射出された光ビームが感光体を走査するように前記光ビームを偏向する光偏向器と、
前記光偏向器により偏向された光ビームを像担持体に導く光学部材と、
前記光源、前記光偏向器、および前記光学部材を収容する筐体と、
前記光源、前記光偏向器、及び前記光学部材を防塵するために前記筐体の側壁に取り付けられるカバー部材と、
前記カバー部材に取り付けられ、前記カバー部材が前記筐体に取り付けられる際に前記側壁に当接することによって弾性変形する第1の当接部と、前記カバー部材が前記側壁に取り付けられた状態において前記側壁に沿うように設けられ、前記第1の当接部の変形に追従して弾性変形し前記側壁に当接する第2の当接部とを有する弾性部材と、を備えることを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記第1の当接部は、前記側壁の頂面に当接し、前記第2の当接部は、前記側壁の内壁面または外壁面に当接することを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記カバー部材と一体に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記弾性部材および前記筐体は、前記第1の当接部及び前記第2の当接部との間に閉空間を形成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記弾性部材は、前記筐体に前記カバー部材を装着する装着方向から見たときに、前記筐体の開口部の内側に配置されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の光走査装置。
【請求項6】
画像形成装置であって、
像担持体と、
前記像担持体の表面に光ビームを照射する請求項1ないし5のいずれか一項に記載の光走査装置と、
を有する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−113957(P2013−113957A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258648(P2011−258648)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】