説明

光走査装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】簡単な構成にてハウジング内の温度上昇を十分に抑制するとともに、光学部材等をハウジングに精度良く配置する光走査装置及びそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】光走査装置19は、走査光学系35とポリゴンミラー34及びポリゴンモーター39とを収納し、ポリゴンモーター39の回転軸41を回転可能に支持する軸受部43を有するハウジング31を備える。軸受部43は、回転軸41の全周を回転可能に支持する円形の第1嵌合部43aと、第1嵌合部43aの周縁部からハウジング31の外縁側に延出し、第1嵌合部43aと同じ半径長で形成される円弧面を有する第2嵌合部43bと、第2嵌合部43bの周方向の一部を切り欠いて形成され回転軸41の外周面41aの一部をハウジング31から露出させる切り欠き放熱部43cと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光走査により被走査面上に像を形成する光走査装置及びそれを備えた複写機、プリンター、ファクシミリ、それらの複合機等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置に用いる光走査装置は、像担持体の表面を露光走査し、像担持体上に潜像を形成している。像担持体上でビーム光を露光走査するために、ビーム光を偏向する際、ポリゴンミラー等の回転多面鏡は高速回転し、回転多面鏡を回転駆動するモーターの回転軸及びそのベアリングが発熱する。また、モーターを駆動制御するための駆動回路等の回路基板上の電子制御部品も発熱する。モーターや電子制御部品で発生した熱が光走査装置のハウジング内にこもってしまい、ハウジングが高温になる。ハウジングが高温になると、ハウジングとともにハウジングに収納されるレンズやミラー等の光学部材が熱変形してしまうおそれがあり、ハウジングや光学部材の熱変形によって、潜像担持体の表面に良好な潜像を形成することができなくなる。
【0003】
そこで、モーターや電子制御部品で発生した熱による光走査装置の温度上昇を抑える種々の技術が知られている。例えば、特許文献1の光走査装置では、ハウジングの底部に開口部を形成し、この開口部に基板を取り付けている。基板の下面側に、モーターのコイル、磁石等の動力部とモーターを駆動させる駆動回路とを配置し、基板を貫通して上面側に突出したモーターの回転軸に回転多面鏡を固定している。これによって、モーターの動力部及び駆動回路とハウジングの内側とが基板によって遮断され、モーターの動力部及び駆動回路によって発生する熱がハウジング内へ侵入するのを抑えている。
【0004】
また、特許文献2の光走査装置は、ハウジングと、ハウジングの内部を塞ぐ蓋部材と、ハウジング内部に収納される光学系及びモーターブロックとを備える。モーターブロックは、ポリゴンミラーを備えるポリゴンモーターと、ポリゴンモーターを支持するとともにハウジングに取り付けられる金属性のプレートと、ポリゴンモーターを覆ってプレートに固定される金属製のカバーとを有して構成される。プレートには、ハウジングから外部に露出した放熱フィンが設けられ、また、カバーには、蓋部材から外部に露出した放熱フィンが設けられ、これらの放熱フィンによって、ポリゴンモーターで発生する熱を外部に放出している。
【0005】
また、特許文献3の光走査装置は、ハウジングと、ハウジングの内部を塞ぐ蓋部材と、ハウジング内部に収納される光学系及びモーターブロックとを備える。モーターブロックは、ポリゴンミラーと、ポリゴンミラーを回転駆動するポリゴンモーターと、モーターの回転軸と、回転軸を支持する軸受部とを有して構成される。軸受部はモーター取り付け板を介してハウジングに取り付けられ、また軸受部の底面には、ハウジングより熱伝導率の高い、また熱容量の大きい円柱形状をなす接触部材が配設されている。接触部材は、回転軸の軸方向に向けてバネ部材によって付勢され、軸受部の底面に対して圧接することでモーターブロックからの熱を吸収し、モーターブロックからの熱がハウジングに伝導するのを低減させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−330061号公報(段落[0006]、[0007]、第5図)
【特許文献2】特開2006−119276号公報(段落[0024]〜[0032]、第1図)
【特許文献3】特開2006−227577号公報(段落[0043]〜[0045]、第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1、2の光走査装置では、レンズやミラー等の光学部材はハウジングに保持される一方、ポリゴンミラーを有するポリゴンモーターは基板やプレート等の中間部材に保持され、中間部材がハウジングに取り付けられるので、中間部材の介在によって、ポリゴンミラーに対する光学部材の配置精度が低下する。通常、光学部材とポリゴンミラーとの高い配置精度を得るには、部材の良好な加工及び組み立て精度とともに部材の配置位置の良好な測定精度が必要である。しかし、特許文献1、2の光走査装置では、例えば光学部材の保持部の位置を測定する場合、ハウジングにおける中間部材の取り付け部(例えばネジ孔)を基準として、光学部材の保持部を測定し、一方、ポリゴンミラーの保持部の位置を測定する場合、中間部材におけるハウジングの取り付け部(例えばネジ孔)を基準として、ポリゴンミラーの保持部を測定することになり、光学部材及びポリゴンミラーの各保持部の測定精度が光走査装置全体として低下するおそれがある。このことは、光走査装置本体に光学部材及びポリゴンミラーを取り付ける際の部材間の配置精度の低下となり、潜像担持体の表面に良好な潜像を形成することができなくなるという不都合があった。
【0008】
また上述した特許文献3の光走査装置では、モーターブロックからの熱を吸収する接触部材が配設されることで装置が大型で複雑な構成となるという不都合があった。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、簡単な構成にてハウジング内の温度上昇を十分に抑制するとともに、光学部材等をハウジングに精度良く配置する光走査装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために第1の発明の光走査装置は、光源部からのビーム光を被走査面に対して偏向走査する回転多面鏡と、該回転多面鏡によって偏向走査されたビーム光を被走査面上に結像させるレンズと、前記回転多面鏡が固定される回転軸を有し前記回転多面鏡を回転駆動させるモーターと、前記レンズと回転多面鏡及びモーターとを収納し、前記モーターの回転軸を回転可能に支持する軸受部を有するハウジングと、を備え、前記軸受部は、前記回転軸の全周を回転可能に支持する円形の第1嵌合部と、該第1嵌合部の周縁部から前記ハウジングの外縁側に延出し、前記第1嵌合部と同じ半径長で形成される円弧面を有する第2嵌合部と、該第2嵌合部の周方向の一部を切り欠いて形成され前記回転軸の外周面の一部を前記ハウジングから露出させる切り欠き放熱部と、を有することを特徴としている。
【0011】
また、第2の発明では、上記の光走査装置において、前記第2嵌合部の円弧面は、前記第1嵌合部の円周長に対して1/2以上の円弧長を有することを特徴としている。
【0012】
また、第3の発明では、上記の光走査装置において、前記第2嵌合部は少なくとも二つ形成され、前記円弧面は、前記第1嵌合部の中心を通り互いに直交する2本の直線に交差するように形成されることを特徴としている。
【0013】
また、第4の発明では、上記の光走査装置において、前記切り欠き放熱部は、前記第2嵌合部を挟んで互いに対向する二箇所に形成されることを特徴としている。
【0014】
また、第5の発明では、上記の光走査装置において、前記ハウジングに取り付けられる基部と、該基部から延びて前記切り欠き放熱部を介して前記回転軸の外周面に接触する当接部と、を有し、熱伝導率が前記ハウジングより大きい放熱部材を更に備えることを特徴としている。
【0015】
また、第6の発明では、上記の光走査装置において、前記放熱部材は、前記基部の外面から突出して形成される放熱フィンを有し、該放熱フィンは、前記切り欠き放熱部が配置される方向に延在することを特徴としている。
【0016】
また、第7の発明では、前記光走査装置と、該光走査装置からのビーム光によって走査される被走査面を有する像担持体と、を備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明によれば、回転多面鏡を回転させるためにモーターが回転駆動し、モーターで発生する熱は回転軸に伝導するが、回転軸の外周面は切り欠き放熱部にてハウジングから露出しているために、回転軸の熱は回転軸の外周面から欠き放熱部を介して外部に放出される。このように軸受部の一部を切り欠くという簡単な構成にて、ハウジング内の温度上昇が十分に抑制される。また、回転多面鏡を回転させるモーターの回転軸及びレンズ等光学部材はともにハウジングに保持されるために、回転多面鏡に対する光学部材の配置精度が良好である。さらに、回転多面鏡に対する光学部材の保持部の寸法を測定する場合、回転軸を支持する軸受部が第1嵌合部から延出する第2嵌合部を有する構成であるために、測定用のプローブを軸受部に確実に当接させることができ、これによって軸受部(嵌合部)の中心を把握し測定基準として、嵌合部から光学部材の保持部までの寸法を正確に測定することが可能となる。このように測定したハウジングの各取り付け部に回転多面鏡や光学部材を取り付けることで、回転多面鏡と光学部材が高い位置精度でハウジングに配置される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態である光走査装置を備えた画像形成装置の概略構成を示す断面図
【図2】第1実施形態である光走査装置を示す斜視図
【図3】第1実施形態である光走査装置の底面部を示す斜視図
【図4】第1実施形態である光走査装置のポリゴンモーター取り付け部の周辺を示す構成図
【図5】第1実施形態であるポリゴンモーターの回転軸の軸受部を示す平面図
【図6】ポリゴンモーターの回転軸の軸受部の変形例を示す平面図
【図7】ポリゴンモーターの回転軸の軸受部の別の変形例を示す平面図
【図8】第2実施形態である光走査装置の放熱部材を設けた底面部を示す斜視図
【図9】第2実施形態である放熱部材を設けた軸受部を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、この実施形態に限定されない。また発明の用途やここで示す用語等はこれに限定されるものではない。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態である光走査装置を備える画像形成装置の全体構成を示す概略構成図であり、右側を画像形成装置の前方側として図示している。画像形成装置1の装置本体1aの下部には、積載された用紙を収容する給紙カセット2が配置されている。この給紙カセット2の上方には、装置本体1aの前方から後方へ略水平に延び、更に上方へ延びて装置本体1aの上面に形成された排紙部3に至る用紙搬送路4が形成されている。この用紙搬送路4に沿って上流側から順に、ピックアップローラー5、フィードローラー6、中間搬送ローラー7、レジストローラー対8、画像形成部9、定着部10及び排出ローラー対11が配置されている。
【0021】
給紙カセット2には、給紙カセット2に対して回動自在に支持された用紙積載板12が設けられている。用紙積載板12上に積載された用紙がピックアップローラー5によって用紙搬送路4に向けて送出され、ピックアップローラー5によって複数枚の用紙が同時に送出された場合には、フィードローラー6とリタードローラー13とによって用紙が捌かれ、最上位の1枚のみが搬送されるように構成されている。用紙搬送路4に送出された用紙は、中間搬送ローラー7によって装置本体1aの後方へと搬送方向を変えられてレジストローラー対8へと搬送され、レジストローラー対8によってタイミングを調整されて画像形成部9へと供給される。
【0022】
画像形成部9は、電子写真プロセスによって用紙に所定のトナー像を形成するものであり、図1において時計回りに回転可能に軸支された像担持体である感光体14と、この感光体14の周囲に配置される帯電装置15、現像装置16、クリーニング装置17、用紙搬送路4を挟んで感光体14に対向するように配置される転写ローラー18及び感光体14の上方に配置される光走査装置19から構成されており、現像装置16の上方には、現像装置16へトナーを補給するトナーコンテナ20が配置されている。
【0023】
帯電装置15には、図示しない電源が接続された導電性ゴムローラー15aが備えられており、この導電性ゴムローラー15aが感光体14に当接するよう配置されている。そして、感光体14が回転すると、導電性ゴムローラー15aが感光体14の表面に接触して従動回転し、この時、導電性ゴムローラー15aに所定の電圧を印加することにより、感光体14の表面が一様に帯電させられることになる。
【0024】
次いで、光走査装置19から射出されるビーム光により、入力された画像データに基づく静電潜像が感光体14上に形成され、現像装置16により静電潜像にトナーが付着して感光体14の表面にトナー像が形成される。そして、レジストローラー対8から感光体14と転写ローラー18とのニップ部(転写位置)に用紙が所定のタイミングで供給され、転写ローラー18により用紙上に感光体14の表面のトナー像が転写される。
【0025】
トナー像が転写された用紙は、感光体14から分離されて定着部10に向けて搬送される。この定着部10は、画像形成部9の用紙搬送方向の下流側に配置されており、画像形成部9においてトナー像が転写された用紙は、定着部10に備えられた加熱ローラー21、及びこの加熱ローラー21に圧接される加圧ローラー22によって加熱、加圧され、用紙に転写されたトナー像が定着される。
【0026】
画像形成された用紙は、排出ローラー対11によって排紙部3に排出される。一方、転写後に感光体14の表面に残留しているトナーはクリーニング装置17により除去され、感光体14は帯電装置15によって再び帯電され、以下同様にして画像形成が行われる。
【0027】
図2は、画像形成装置1に用いられる光走査装置19を示す斜視図である。尚、図2では、光走査装置19内部の構成を示すためにハウジングの上蓋を取り除いている。
【0028】
光走査装置19は、光源部33と、回転多面鏡であるポリゴンミラー34と、ポリゴンミラー34を回転駆動させるポリゴンモーター39と、走査光学系35と、さらに折り返しミラー36と、検知センサー38とを備える。
【0029】
光源部33は、レーザー光を出力するレーザーダイオード等の光源と、レーザー光のビーム径を整形するシリンドリカルレンズやコリメートレンズ等を有し、図示しないパソコン等から入力される画像データに基づいて変調されたビーム光を出力する。
【0030】
ポリゴンミラー34は、ポリゴンモーター39によって所定の速度で回転しており、側面に有する反射ミラー面によって光源部33から出力されたビーム光を偏向させる。ポリゴンモーター39は回路基板40に設けたドライバー回路によって駆動制御される。
【0031】
走査光学系35は、複数のレンズから構成され、ポリゴンミラー34で反射したビーム光が一定の速度で走査されるように変換するとともに、被走査面にビーム光を結像させる。折り返しミラー36は、走査光学系35から射出したビーム光を走査光学系35の下側に向けて反射させ感光体14(図1参照)に導く。
【0032】
検知センサー38は、走査方向の露光範囲を制御するための信号を出力するものであり、露光範囲外に配置された検知ミラー37を介して走査光学系35を通過したビーム光を受光する。
【0033】
上記の構成において、光源部33は画像データに基づいて変調されたビーム光をポリゴンミラー34に向けて出力する。ポリゴンミラー34は光源部33からのビーム光を反射させ、その回転によって反射光を偏向走査する。走査光学系35はポリゴンミラー34で反射したビーム光を等速走査に変換し、折り返しミラー36を介して被走査面である感光体14(図1参照)上に結像させる。これによって、光走査装置19が感光体14上の走査方向の所定の範囲を露光走査し、感光体14上に静電潜像が形成される。
【0034】
光源部33、ポリゴンミラー34、ポリゴンモーター39、走査光学系35、折り返しミラー36は、ハウジング31内に配設される。
【0035】
ハウジング31は、底壁部31aと、底壁部31aの周縁から立ち上がる側壁部31bと、側壁部31bの上縁に取り付けられる図示しない上蓋とを有して、所定の形状に樹脂にて成形される。底壁部31aと側壁部31b及び上蓋によって形成される空間内には、光源部33と、ポリゴンミラー34と、ポリゴンモーター39と、走査光学系35と、折り返しミラー36が収納される。
【0036】
走査光学系35と検知ミラー37及び検知センサー38は底壁部31aの所定位置に固定されている。折り返しミラー36は、射出口31cを介してビーム光を感光体14(図1参照)に向けて反射させるために、底壁部31aに対して所定の角度だけ傾斜して底壁部31aに固定されている。
【0037】
ポリゴンミラー34は、ポリゴンモーター39の回転軸に一体に取り付けられ、ポリゴンモーター39は回路基板40を介在させて底壁部31aに固定される。回路基板40は、ポリゴンモーター39の回転駆動を制御するドライバーIC等を搭載し、底壁部31aに固定される。尚、回路基板40は、底壁部31aの他の部分に配設してもよく、また上蓋等のハウジング31の上部に配設してもよい。
【0038】
ポリゴンモーター39は、ローターとしてのマグネットと、コア部材にコイルを巻きつけたステーターとを備え、ベアリングを介して回転軸を回転自在に支持し、ベアリング内部にオイルを封入するために、回転軸の端面が樹脂製接着材によって封止されている。ポリゴンモーター39が長時間高速で回転すると、ポリゴンモーター39のコイル等が発熱し、その熱が回転軸に伝導し、また回路基板40のドライバー回路等から発熱し、ハウジング31内が昇温する。
【0039】
そこで、本実施形態では、ハウジング31内の温度上昇を十分に抑制するために、ポリゴンモーター39の回転軸を図3〜図5に示すように配設している。図3はハウジング31の底面部を示す斜視図であり、図4はポリゴンモーター39の回転軸41の支持部の周辺を示す構成図であり、図5は回転軸41を支持する軸受部43を示す平面図である。尚、図4は、図3のX方向に回転軸41の周辺を断面したものである。
【0040】
図3に示すように、ポリゴンモーター39の回転軸41は、ハウジング31の底壁部31aから外部に露出するとともに底壁部31aに形成した軸受部43によって回転可能に支持されている。
【0041】
軸受部43は、第1嵌合部43a(図4参照)と、第2嵌合部43bと、切り欠き放熱部43cとを有する。
【0042】
図4に示すように、第1嵌合部43aは、回転軸41の軸方向に所定長を有して回転軸41の外周面41aの全周に嵌合し、回転軸41を回転可能に支持している。第1嵌合部43aの外縁側(図4の上方向)には、第2嵌合部43b(図3、図5参照)と、切り欠き放熱部43cとが形成される。
【0043】
切り欠き放熱部43cは、第2嵌合部43bの一部をX方向に切り欠いて形成され(図3参照)、回転軸41の外周面41aの一部を底壁部31aから外部に露出させている。回転軸41の外周面41aがハウジング31から露出することにより、ポリゴンモーター39のコイル等から回転軸41に伝導した熱は回転軸41の外周面41aから外部に放出される。このようにポリゴンモーター39から発生する熱を回転軸41の外周面41aから放出することにより、回転軸41の端面をオイル封止して、回転軸41の端面から放熱することが難しいタイプのモーター等、種々のポリゴンモーターに広く適用することができる。
【0044】
また、切り欠き放熱部43cは、軸受部43の互いに対向する位置に二つ配設される。装置本体1a(図1参照)に冷却風を送るファンを設けておき、一方の切り欠き放熱部43cから他方の切り欠き放熱部43cに向けてファンから冷却風が送られることで、回転軸41の外周面41aから一層良好に放熱される。
【0045】
二つの切り欠き放熱部43cの周方向における両側には、二つの第2嵌合部43bが形成される(図3、図5参照)。
【0046】
図5に示すように、第2嵌合部43bは、第1嵌合部43aから底壁部31aの外縁側(図4の上方向)に延出し、第1嵌合部43aと同じ半径長を有する円弧面にて形成される。二つの第2嵌合部43bは、回転軸41の端面まで延出して回転軸41に部分的に嵌合することで、回転軸41を回転可能に支持している。このように、軸受部43は、切り欠き放熱部43cを有することで、切り欠き放熱部43cを介して回転軸41の外周面41aから良好に放熱するとともに、第1嵌合部43aとともに第2嵌合部43bを有することで、回転軸41の嵌合部が軸方向に長くなり、回転軸41を安定して回転させることができる。
【0047】
また、二つの第2嵌合部43bは、切り欠放熱部43cを形成することが可能な範囲で、第1嵌合部43aの円周長に対して合算して1/2以上の円弧長を有する。さらに、第2嵌合部43bの円弧面は、第1嵌合部43aの中心OZを通り、互いに直交する2本の直線LX、LYに交差するように形成される。このように構成することにより、軸受部43に対する走査光学系35(図2参照)等のレンズ保持部の各部分の寸法を測定するための測定基準を正確に設定することが可能となる。
【0048】
通常、感光体14(図1参照)上に良好な潜像を形成するためには、走査光学系35(図2参照)の各レンズが夫々ハウジング31の所定の位置に取り付けられ、また、ポリゴンミラー34に対して、走査光学系35、折り返しミラー36(図2参照)等の光学部材がハウジング31の所定の位置に取り付けられることが重要となる。このためには、ハウジング31において光学部材やポリゴンミラー34を取り付ける保持部の位置を正確に測定することが必要になる。ポリゴンミラー34に対する光学部材の保持部の位置を測定するには、回転軸41の軸受部43、つまり第1及び第2嵌合部43a、43bを基準として測定することになる。
【0049】
例えば、被測定部にプローブを接触させプローブの位置に基づいて寸法を測定する測定器を用いて、第1及び第2嵌合部43a、43bに対する各光学部材の保持部の寸法を測定する。この測定の手順は、まず、測定基準として第1及び第2嵌合部43a、43bの中心OZを設定する。測定基準を設定するには、測定器のプローブを図5の例えばLX方向に作動させて第1及び第2嵌合部43a、43bに当接させ、その座標を測定し、次に、測定器のプローブを、LX方向と直交方向にあるLY方向に作動させて第1及び第2嵌合部43a、43bに当接させ、その座標を測定する。これら四つの座標に基づいて、第1及び第2嵌合部43a、43bの中心OZの座標を算出し、算出した中心OZの座標を基準座標とする。次に、プローブを光学部材の保持部に当接させ、その光学部材の座標を測定する。基準座標と光学部材の保持部の座標とに基づいて、第1及び第2嵌合部43a、43bに対する光学部材の保持部の位置が測定されることになる。
【0050】
基準座標を測定するために、プローブを第1及び第2嵌合部43a、43bに当接させる場合、作業者の目視によって、プローブをLX方向及びLY方向に作動させることになる。この測定作業において、二つの第2嵌合部43bの円弧長が長く、また、それらの円弧面が2本の直線LX、LYに交差するように形成しておくと、プローブを操作するための作業性が良好となる。また、第2嵌合部43bの軸方向の長さを大きく、例えば1mm以上に設定しておくと、ハウジング31の成形時に第2嵌合部43bの端面が丸みを帯びた状態になり、或いはバリが発生しても、丸みやバリを避けて、プローブを第1及び第2嵌合部43a、43bに確実に当接させることが可能となる。このように軸受部43の中心OZの測定誤差が小さく抑えられるために、軸受部43に対する走査光学系35(図2参照)等のレンズ保持部の各部分の寸法を測定するための測定基準を正確に設定することが可能となる。
【0051】
このように測定したハウジング31の各取り付け部にポリゴンモーター39や光学部材を取り付けることで、ポリゴンモーター39と光学部材が高い位置精度でハウジング31に配置される。また、ポリゴンモーター39の回転軸41及び光学部材はともにハウジング31に保持されるために、ポリゴンモーター39に対する光学部材の配置精度が良好なものとなる。
【0052】
軸受部43は、図6のように構成してもよい。図6は軸受部43の変形例を示す平面図である。この変形例では、第2嵌合部43bが四つ形成されている。
【0053】
二つの第2嵌合部43bが直線LX方向に形成され、各第2嵌合部43bは、その円弧面が直線LXに交差し、互いに対向して配置される。また、別の二つの第2嵌合部43bが直線LY方向に形成され、各第2嵌合部43bは、その円弧面が直線LYに交差し、互いに対向して配置される。四つの第2嵌合部43bは第1嵌合部43aの円周長に対して合算して1/2以上の円弧長を有するのが望ましい。第1及び第2嵌合部43a、43bの中心OZを測定基準に設定するには、測定器のプローブを、互いに直交方向に作動させて第1及び第2嵌合部43a、43bに当接させ、測定した四つの座標に基づいて、中心OZの座標を算出する。この構成によって、ハウジング31の測定基準の測定のための作業性が良好になり、軸受部43に対する走査光学系35(図2参照)等のレンズ保持部の各部分の寸法を測定するための測定基準を正確に設定することが可能となる。
【0054】
二つの第2嵌合部43bの周方向の空間には、切り欠き放熱部43cが形成される。従って、切り欠き放熱部43cは四つ形成され、二つの切り欠き放熱部43cは互いに対向し、また、別の二つの切り欠き放熱部43cは互いに対向して配置されることになる。四つの切り欠き放熱部43cを有することで、ポリゴンモーター39で発生した熱は、切り欠き放熱部43cを介して回転軸41の外周面41aから良好に放出される。また、第1嵌合部43aとともに第2嵌合部43bを有することで、回転軸41の嵌合部が軸方向に長くなり、回転軸41を安定して回転させることができる。
【0055】
また、軸受部43は、図7のように構成してもよい。図7は軸受部43の別の変形例を示す平面図である。この変形例では、第2嵌合部43b、切り欠き放熱部43cは夫々一つ形成されている。
【0056】
第2嵌合部43bは、切り欠放熱部43cを形成することが可能な範囲で、第1嵌合部43aの円周長に対して1/2以上の円弧長を有する。第1及び第2嵌合部43a、43bの中心OZを測定基準に設定するには、測定器のプローブを、互いに直交方向に作動させて第1及び第2嵌合部43a、43bに当接させ、測定した四つの座標に基づいて、中心OZの座標を算出する。この構成によって、ハウジング31の測定基準の測定のための作業性が良好になり、軸受部43に対する走査光学系35(図2参照)等のレンズ保持部の各部分の寸法を測定するための測定基準を正確に設定することが可能となる。
【0057】
第2嵌合部43bと同じ周方向に切り欠き放熱部43cを有することで、ポリゴンモーター39で発生した熱は、切り欠き放熱部43cを介して回転軸41の外周面41aから良好に放出される。また、第1嵌合部43aとともに第2嵌合部43bを有することで、回転軸41の嵌合部が軸方向に長くなり、回転軸41を安定して回転させることができる。
【0058】
(第2実施形態)
図8、図9は、第2実施形態である軸受部43の周辺を示す斜視部及び断面図である。尚、図9は、図8のX方向に回転軸41の周辺を断面したものである。第2実施形態は、さらに放熱部材を備える構成であり、第1実施形態と異なる、放熱部材の構成、配置について主に説明し、以降、第1実施形態と同じ部分の説明を省略する。
【0059】
図8に示すように、ハウジング31の底壁部31aには軸受部43が形成され、軸受部43によってポリゴンモーター39の回転軸41が回転可能に支持されている。軸受部43は、第1実施形態と同様に、第1嵌合部43a(図4参照)と、一対の第2嵌合部43bと、一対の切り欠き放熱部43cとを有する。一対の第2嵌合部43b及び一対の切り欠き放熱部43cは夫々対向して配置される。
【0060】
また、底壁部31aの外面側には、二つの放熱部材45が取り付けられる。放熱部材45は、ハウジング31の材料より熱伝導率が大きい、アルミニウムや鉄等の金属材料で形成され、略矩形で平面状である基部45aと、複数の放熱フィン45bと、回転軸41に接触する当接部45c(図9参照)とを有する。
【0061】
基部45aは、底壁部31aにビス等により取り付けられ、底壁部31aへの対向面とその反対側の外面とを有し、その外面には放熱フィン45bが形成される。放熱フィン45bは、基部45aの外面から突出して形成されるとともに、一対の切り欠き放熱部43cが配置される方向(図8のX方向)に長く延びて形成される。
【0062】
図9に示すように、当接部45cは屈曲した舌片状に形成され、その一端部が基部45aの一辺部から延び、切り欠き放熱部43cの空間を経由してその他端部が回転軸41の外周面41aに接触している。当接部45cの他端部は、回転軸41の回転を妨げないように、また回転軸41の外周面41aに広く接触させるために、回転軸41の外周面41aに沿う円弧状に形成される。
【0063】
ポリゴンモーター39から回転軸41に伝導した熱は、回転軸41の外周面41aから切り欠き放熱部43cを介して外部に放出されるとともに、放熱部材45の当接部45cを介して基部45aに伝導し、また、放熱フィン45bに伝導し、外部に放出される。このようにしてハウジング31内の温度上昇が十分に抑制される。
【0064】
装置本体1aに冷却風を送るファンを更に設けておき、複数の放熱フィン45bが配置される方向に向けてファンから冷却風が送られることで、回転軸41の外周面41aから一層良好に放熱される。
【0065】
尚、上記第2実施形態では、二つの放熱部材45を設ける構成を示したが、本発明はこれに限らず、放熱部材45はいずれか一つで構成してもよい。また、二つの放熱部材45を一体に構成してもよい。
【0066】
また、図6に示すように、軸受部43が四つの切り欠き放熱部43cを有する構成である場合、放熱部材45に四つの当接部45cを形成し、各当接部45cを各切り欠き放熱部43cを介して回転軸41の外周面41aに接触させてもよく、或いは、所望の放熱が得られるように、適宜、当接部45cの数を設定して設けてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、ハウジング31の各部の配置寸法を測定する際に、測定基準として、軸受部43の中心OZを測定するために、測定器のプローブを互いに直交方向に作動させて、得られた第1及び第2嵌合部43a、43bの四つの座標に基づいて、中心OZの座標を算出する構成を示した。しかし、本発明はこの構成に限らず、測定器のプローブを第1及び第2嵌合部43a、43bの3箇所に当接させ、得られた三つの座標に基づいて中心OZの座標を算出するようにしてよい。この場合には、第2嵌合部43bの円弧長を短くすることが可能であり、切り欠き放熱部43cが広がり放熱効果が大きくなる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、露光走査により被走査面上に像を形成する光走査装置及びそれを備えた複写機、プリンター、ファクシミリ、それらの複合機等の画像形成装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 画像形成装置
1a 装置本体
14 感光体(像担持体)
19 光走査装置
31 ハウジング
31a 底壁部
31b 側壁部
33 光源部
34 ポリゴンミラー(回転多面鏡)
35 走査光学系
36 折り返しミラー
37 検知ミラー
38 検知センサー
39 ポリゴンモーター(モーター)
41 回転軸
41a 外周面
43 軸受部
43a 第1嵌合部
43b 第2嵌合部
43c 切り欠き放熱部
45 放熱部材
45a 基部
45b 放熱フィン
45c 当接部
LX、LY 直線
OZ 中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源部からのビーム光を被走査面に対して偏向走査する回転多面鏡と、
該回転多面鏡によって偏向走査されたビーム光を被走査面上に結像させるレンズと、
前記回転多面鏡が固定される回転軸を有し前記回転多面鏡を回転駆動させるモーターと、
前記レンズと回転多面鏡及びモーターとを収納し、前記モーターの回転軸を回転可能に支持する軸受部を有するハウジングと、を備え、
前記軸受部は、前記回転軸の全周を回転可能に支持する円形の第1嵌合部と、該第1嵌合部の周縁部から前記ハウジングの外縁側に延出し、前記第1嵌合部と同じ半径長で形成される円弧面を有する第2嵌合部と、該第2嵌合部の周方向の一部を切り欠いて形成され前記回転軸の外周面の一部を前記ハウジングから露出させる切り欠き放熱部と、を有することを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記第2嵌合部の円弧面は、前記第1嵌合部の円周長に対して1/2以上の円弧長を有することを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記第2嵌合部は少なくとも二つ形成され、前記円弧面は、前記第1嵌合部の中心を通り互いに直交する2本の直線に交差するように形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記切り欠き放熱部は、前記第2嵌合部を挟んで互いに対向する二箇所に形成されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の光走査装置。
【請求項5】
前記ハウジングに取り付けられる基部と、該基部から延びて前記切り欠き放熱部を介して前記回転軸の外周面に接触する当接部と、を有し、熱伝導率が前記ハウジングより大きい放熱部材を更に備えることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の光走査装置。
【請求項6】
前記放熱部材は、前記基部の外面から突出して形成される放熱フィンを有し、該放熱フィンは、前記切り欠き放熱部が配置される方向に延在することを特徴とする請求項5に記載の光走査装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の光走査装置と、該光走査装置からのビーム光によって走査される被走査面を有する像担持体と、を備えた画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−97083(P2013−97083A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238203(P2011−238203)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】