説明

光走査装置

【課題】描画の高速化、高密度化を達成しつつ、濃度むらを低減でき、熱クロストークなどの影響を排除して高品質な画像を得ることのできる光走査装置を得る。
【解決手段】複数の発光点17を平面上に2次元的に配列した光源16を備えた光走査装置。各発光点17から放射されたビームは同時にポリゴンミラーで偏向され、感光体上に結像/走査される。複数の発光点17は、M×N(M,Nは6以上の整数)の格子点をもつ平行四辺形の格子点上に配列され、かつ、中央に位置する(M−4)×(N−4)個の格子点上には配置されていない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置、特に、プリンタや複写機などの電子写真法による画像形成装置に搭載される光走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、この種の光走査装置としては、画像の高密度化や画像形成の高速化に対応するために、光源に複数の発光点を有するVCSEL(面発光レーザ)を用いたものが提供されている。
【0003】
特許文献1には、境界付近の光量を低めに設定して、相反則不軌による筋状濃度むらを目立たなくする技術が提案されている。また、特許文献2には、複数本のビームを等間隔に飛び越し走査させて、境界付近の濃度むらを目立たなくする技術が提案されている。さらに、特許文献3には、走査領域の一部が重複するように発光点を間引いて配置する技術が提案されている。
【0004】
しかしながら、境界付近の光量を低めに設定する技術では、画像パターンによっては、隣接走査線を順次走査するようなパターンと、同時にしか走査しないパターンが混在しているとき、順次露光する場合に合わせて光量を下げた状態で同時にしか露光しないと画像が薄めになり、画像むらを生じてしまう問題点を有している。また、等間隔に飛び越し走査する技術では、一度に走査する領域が広がり、例えば感光体の駆動むらのような時間的に変動する誤差の影響を受けやすくなるという問題点を有している。
【0005】
さらに、発光点を間引いて配置する技術では、発光点の配置個数のわりに周辺の発光点が光軸から離れてしまい、光軸付近に配置されている発光点との光学性能差が大きくなるという問題点を有している。即ち、熱クロストークの影響や、中央付近の発光点への配線の引き回しに起因して、発光点を近づけるには限界があるため、発光点が光軸から離れてしまい、光学系の収差の影響を受けやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−182139号公報
【特許文献2】特開2004−77714号公報
【特許文献3】特開2007−168299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、描画の高速化、高密度化を達成しつつ、濃度むらを低減でき、熱クロストークなどの影響を排除して高品質な画像を得ることのできる光走査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態である光走査装置は、
複数の発光点を平面上に2次元的に配列した光源と、
前記各発光点から放射されたビームを主走査方向に偏向する偏向器と、
前記各発光点から放射されたビームを前記偏向器へ導く第1光学系と、
前記偏向器によって偏向されたビームを感光体上に集光するように導く第2光学系と、
を備え、
前記複数の発光点は、M×N(M,Nは6以上の整数)の格子点をもつ平行四辺形の格子点上に配列され、かつ、中央に位置する(M−4)×(N−4)個の格子点上には配置されていないこと、
を特徴とする。
【0009】
前記光走査装置においては、複数の発光点を同時に発光させて感光体上を露光するため、高密度にかつ高速での描画が可能であり、走査領域の端部を飛び越し走査することになり、相反則不軌による濃度むらが低減され、かつ、中央部分には発光点が配置されていないので熱クロストークや発光点への配線に起因する影響が排除される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、描画の高速化、高密度化を達成しつつ、濃度むらを低減でき、熱クロストークなどの影響を排除して高品質な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例である光走査装置を示す斜視図である。
【図2】光源における発光点の配置を示す説明図である。
【図3】第1実施例を模式的に示す説明図である。
【図4】第2実施例を模式的に示す説明図である。
【図5】第3実施例を模式的に示す説明図である。
【図6】第4実施例を模式的に示す説明図である。
【図7】第5実施例を模式的に示す説明図である。
【図8】第6実施例を模式的に示す説明図である。
【図9】第7実施例を模式的に示す説明図である。
【図10】第8実施例を模式的に示す説明図である。
【図11】第9実施例を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る光走査装置の実施例について添付図面を参照しながら説明する。
【0013】
(光走査装置の概略構成、図1参照)
光走査装置10は、図1に示すように、光源(面発光ダイオード)16、コリメータレンズ18、シリンドリカルレンズ20、ポリゴンミラー22、走査レンズ24,26,28,30及び折り返しミラー32を含んでいる。光源16は、複数のビームBを同時に放射する。図1では、図が煩雑になることを避けるために、ビームBは1本だけ示してある。
【0014】
光源16から放射されたビームBをポリゴンミラー22へ導く第1光学系において、コリメータレンズ18は、光源16が放射した拡散光であるビームBを略平行光に整形する。また、シリンドリカルレンズ20は、ポリゴンミラー22の反射面において副走査方向zに線状となるように、ビームBを集光する。
【0015】
ポリゴンミラー22はビームBを主走査方向yに偏向する。偏向されたビームBを感光体ドラム50上に集光するように導く第2光学系において、走査レンズ24,26,28,30は、ビームBを感光体ドラム50上に各種収差を補正して結像させる。折り返しミラー32は、走査レンズ30を透過したビームBを感光体ドラム50側へと反射する。なお、矢印xはビームBの進行方向を示している。
【0016】
感光体ドラム50は、円筒形状をなしており、一方向に定速で回転駆動される。ビームBが感光体ドラム50の周面上を主走査方向yに所定の時間間隔で繰り返し走査されること、及び感光体ドラム50が定速で回転することにより、感光体ドラム50の周面に2次元の静電潜像が形成される。このようにして感光体ドラム50上に静電潜像を形成し、現像して記録紙上に転写、定着するプロセスは周知であり、詳細な説明は省略する。
【0017】
(光源の構成)
光源16は、図2に示すように、複数の発光点17を有する面発光ダイオードが用いられている。複数の発光点17は、M×N(M,Nは6以上の整数)の格子点をもつ平行四辺形の格子点上に配列され、かつ、中央に位置する(M−4)×(N−4)個の格子点上には配置されていない。具体的には、42個(6×7)の格子点のうち、中央の6点以外に配置された36個の発光点17を有している。
【0018】
各発光点17は、長方形に並んで配置され、主走査方向yに対して傾斜して配置されている。中央付近に発光点17を配置すると、それらに対する配線を外側の発光点17の間をすり抜けるように配置せざるを得ず、発光点17の間隔を広めに設定することが必要となる。本実施例のように、中央付近の発光点を省略することで、配線による光源16の広面積化を回避し、熱クロストークで熱が中央部の発光点に集中することを回避することができる。換言すれば、光源16の小型化が可能となる。
【0019】
また、各発光点17が複数のビームBの中心(光軸)からの距離に大きな差を生じていると、それぞれのビームBに光学性能に差が生じてしまう。しかし、本実施例では、中央付近の発光点を省略することで、それぞれのビームBの光軸からの距離差を少なくし、ビームBごとの光学性能の差を極力減少させることができる。
【0020】
(第1実施例、図3参照)
以上の構成からなる光源16によって感光体ドラム50を走査する第1実施例(走査例)について図3を参照して説明する。図3において(以下に示す図4〜図11でも同様であるが)、△、●、□、○の記号は、ある瞬間の感光体ドラム上でのビームの集光位置を示している。同じ記号で示した集光位置は同時に露光され、異なる記号で示した集光位置はポリゴンミラーの他の面によって偏向されたビームによるものであり、同時に露光されたものではない。中央付近の縦線は、同時に露光される集光点のうち副走査方向zについて最も上流側に位置する集光点を結んだ補助線である。横線はポリゴンミラーの回転に伴って集光点が主走査方向yに移動する走査線を示している。△の集光点に対応する走査線は細線で示し、●の集光点に対応する走査線は太線で示し、□の集光点に対応する走査線は点線で示し、○の集光点に対応する走査線は一点鎖線で示す。
【0021】
集光点は図2に示した各発光点17と同じ配置になっている。実際には、光学系の倍率が主走査方向yと副走査方向zとで異なっている場合がある。異なっていれば、縦横に伸び縮みした形状となる。但し、相対的な位置関係は変わらない。
【0022】
図3に示す第1実施例において、同時に走査される走査線に着目すると、最上流側の1本は、他の走査線から離れており、2本目の走査線との間に他のポリゴン面で偏向された走査線S1が入っている。2本目と3本目の走査線は隣接しているが、3本目と4本目の走査線の間には他のポリゴン面で偏向された走査線S2が入っている。同様に見ていくと、隣接している走査線の本数は、1,2,3,4,2,4,4,4,2,4,3,2,1と、副走査方向zの両端で少なく、中央部分で多くなっている。このように副走査方向zに関して隣接する走査線の本数を徐々に変化させることで、境界を目立たなく(濃度むらを低減)することができる。
【0023】
また、図3に示した範囲の上部や下部では走査線に隙間が空いた形になっているが、中間部では同時に走査された走査線の隙間が他のポリゴン面で偏向された走査線によって補われ、全体として走査線が等間隔に並んだ形になっている。また、同時に走査される走査線は互いに重なることはないが、隣接するポリゴン面で偏向される走査線と一部で重なっている。走査線が重なる領域では、互いに光量を低下させて、重なっていない走査線との光量差が生じないように制御する。光量を低下させる方法は、各発光点の発光光量を下げてもよいし、各発光点の発光時間を短くしてもよい。
【0024】
(第2実施例、図4参照)
図4に示す第2実施例では、発光点の個数は前記第1実施例と同様であるが、配列を二つの正三角形を底辺で結合させた菱形としている。光源において、発熱による隣接する発光点への影響を考慮すると、正三角形に配列することは放熱効率が良好である。また、第1実施例と比較すると、隣接するポリゴン面で偏向された全ての走査線の重なり状態が異なっている。即ち、隣接するポリゴン面で偏向された8本の走査線S3が重なり、さらにそれに隣接するポリゴン面で偏向された6本の走査線S4が重なっている。
【0025】
(第3実施例、図5参照)
図5に示す第3実施例は、前記第2実施例の変形例ともいえるものであり、発光点に関して、上から3本、下から3本の発光点を省略している。隣接するポリゴン面で偏向された8本の走査線S5が重なっているのは第2実施例と同様であるが、さらにそれに隣接するポリゴン面で偏向された6本の走査線が重なっていたのは解消されている。また、本第3実施例では、光軸から離れて配置されている上下で三つずつの発光点が省略されているので、各発光点から放射されたビームの光学性能を揃えることは第2実施例と比較して容易である。
【0026】
(第4実施例、図6参照)
図6に示す第4実施例は、光源において、48個(6×8)の格子点のうち中央付近の8個の格子点及び最も上と下の格子点以外に配置された38個の発光点を有している。それゆえ、本第4実施例では、隣接するポリゴン面で偏向された8本の走査線S6が重なり、さらにそれに隣接するポリゴン面で偏向された2本の走査線S7が重なっている。
【0027】
(第5実施例、図7参照)
図7に示す第5実施例は、光源において、54個(6×9)の格子点のうち中央付近の10個の格子点及び最も上と下の格子点以外に配置された42個の発光点を有している。それゆえ、本第5実施例では、隣接するポリゴン面で偏向された8本の走査線S8が重なっている。
【0028】
(第6実施例、図8参照)
図8に示す第6実施例は、光源において、60個(6×10)の格子点のうち中央付近の12個の格子点以外に配置された48個の発光点を有している。それゆえ、本第6実施例では、隣接するポリゴン面で偏向された8本の走査線S9が重なっている。
【0029】
(第7実施例、図9参照)
図9に示す第7実施例は、光源において、56個(7×8)の格子点のうち中央付近の12個の格子点及び最も上と下の格子点以外に配置された42個の発光点を有している。それゆえ、本第7実施例では、隣接するポリゴン面で偏向された8本の走査線S10が重なり、さらにそれに隣接するポリゴン面で偏向された2本の走査線S11が重なっている。
【0030】
(第8実施例、図10参照)
図10に示す第8実施例は、光源において、72個(8×9)の格子点のうち中央付近の20個の格子点以外に配置された52個の発光点を有している。それゆえ、本第8実施例では、隣接するポリゴン面で偏向された8本の走査線S12が重なっている。
【0031】
(第9実施例、図11参照)
図11に示す第9実施例は、前記第1実施例の変形例ともいえるものであり、一部の発光点を間引いて隣接するポリゴン面で偏向された走査線が重ならないようにしたものである。本第9実施例では第1実施例と比較して、調整や制御は容易になるが、集光位置の位置ずれの影響が大きめになる。
【0032】
(発光点に関するまとめ)
光源の発光点に関して、格子点を構成するM×Nの値は、描画の高速化、高密度化を達成するために、いずれも6以上の整数であることが必要となる。この意味で、MとNのうち小さい方が6であることが好ましい。しかし、M,Nはいずれも10以下であることが好ましい。光源の大型化を避けるためである。また、MとNとの差は1であることが好ましい。各発光点の光軸からの距離のばらつきを小さくするためである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、光走査装置に有用であり、特に、高速、高密度で高品質な画像を形成できる点で優れている。
【符号の説明】
【0034】
B…ビーム
10…光走査装置
16…光源
17…発光点
18…コリメータレンズ
20…シリンドリカルレンズ
22…ポリゴンミラー
24,26,28,30…走査レンズ
50…感光体ドラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光点を平面上に2次元的に配列した光源と、
前記各発光点から放射されたビームを主走査方向に偏向する偏向器と、
前記各発光点から放射されたビームを前記偏向器へ導く第1光学系と、
前記偏向器によって偏向されたビームを感光体上に集光するように導く第2光学系と、
を備え、
前記複数の発光点は、M×N(M,Nは6以上の整数)の格子点をもつ平行四辺形の格子点上に配列され、かつ、中央に位置する(M−4)×(N−4)個の格子点上には配置されていないこと、
を特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記平行四辺形の対角に位置する発光点からのビームが感光体上で副走査方向に隣接する走査線上に集光するように配置され、
前記偏向器による偏向と感光体の移動又は回転による複数回の走査にあっては、感光体上の一度の走査領域と次回の走査領域が部分的に重複していること、
を特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記平行四辺形の各格子点のうち、副走査方向について最も上流側と最も下流側の格子点上には発光点が配置されていないこと、を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光走査装置。
【請求項4】
M,Nはいずれも10以下であること、を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の光走査装置。
【請求項5】
MとNとの差が1であること、を特徴とする請求項4に記載の光走査装置。
【請求項6】
MとNのうち小さいほうが6であること、を特徴とする請求項4に記載の光走査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−186184(P2011−186184A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51343(P2010−51343)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】