説明

光送受信器

【課題】光空間伝送において、光送信器と光受信器の位置関係が変化する環境において、消光比の値を検知し、その値を基に、偏光した光信号と偏光フィルタの偏光面を一致させる光送受信器を提供することを目的とする。
【解決手段】送信データを2分岐し、一方の信号を偏光した光信号に変換し、もう一方の信号は論理反転を行ってから偏光した光信号に変換し、2つの光信号の偏光面は互いに直交している特徴を有する光送信器と、互いに直交した偏光フィルタを通して、2つの受光部で電気信号に変換し、受光した光信号の消光比を基に、偏光フィルタの偏光角度を調整し、一方の受光信号を反転して他方の受光信号と加算する特徴を有する光受信器とから構成され、光信号の消光比が最大となるように偏光フィルタの偏光角度を設定することによって、光信号と光受信器の偏光フィルタの偏光面を一致させる機能を有する光送受信器を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自給空間中を光伝送してデータ伝送を行う光空間伝送において、偏光した光信号を用いてデータ伝送を行い、光信号の偏光面と光受信器の偏光フィルタの偏光面を調整する方法、及びそれを用いて外乱光成分を低減する光伝送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光空間伝送を用いた高速なデジタル伝送の検討が行われるようになってきている。その背景は、高精細な映像信号が伝送されるなど、各種ネットワークでブロードバンド伝送が盛んに行われるようになり、そうしたネットワークと接続するため、光空間伝送においても高速なデータ伝送が要求されるようになってきているためである。
【0003】
光空間伝送では、光送信器において電気信号を光信号に変換して、自由空間中に光信号を送出し、光受信器で光信号を電気信号に変換してデータ伝送が行われる。伝送路として光ファイバなどが存在しないため、光受信器には光送信器からの光信号だけでなく、外乱光と呼ばれるその他の光(太陽光、照明光など)が混在し、光受信器の性能は外乱光による影響を受けることになる。光信号として、赤外光などの目に見えない光を用いる場合には、外乱光を光学フィルタで除去して光信号を透過することで改善を図ることができるが、可視光を用いて光空間伝送を行う場合には、光信号と外乱光の波長が同じであるため、光学フィルタを用いて外乱光を除去することが困難になる。
【0004】
従来の技術について、図9を用いて説明する。特許文献1にあるように、光送信器1はデータ送信部10からのデータ信号を発光部13で光信号に変換し、偏光フィルタ部14を介することで、偏光した光信号9を送出する。光受信器2では偏光フィルタ部29aを通して受光部20aで受光した信号1(光信号+外乱光)と、偏光フィルタを通さず受光部20bで受光した信号2の2つを受光する。受光部20bで受光した信号2は、増幅部232で増幅され、受光部20aで受光した信号1は、増幅部232に比べて、無偏光の光に対する偏光フィルタ部29aでのロス分αだけ大きなゲインをもって、増幅部231で増幅する。外乱光に関しては、外乱光は無偏光であると考えられるため、信号1と信号2に含まれる外乱光の成分は等しくなる。この際、光送信器1から出力される偏光した光信号9と、光受信器2の偏光フィルタ部29aの偏光面が同じであるとすると、上述のように外乱光は信号1と信号2で同じであるが、光信号9は偏光フィルタ部29aでのロスがないため、偏光フィルタ部29aを通した信号2は、α倍だけ信号1より大きくなる。そこで、差動増幅部271で、信号1と信号2の差動増幅を行うことで、外乱光成分は除去されて、光信号のみを取り出すことが可能となる構成が示されている。
【特許文献1】特開平5−167536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成では、光信号9の偏光面と、偏光フィルタ部29aの偏光面とが一致して初めてその効果が得られるものであり、偏光面が一致していないと、外乱光成分を打ち消して光信号を取り出すことはできない。光送信器1が天井や照明などに設置され、光受信器2はユーザが保持して移動するような場合を考えると、光送信器1と光受信器2の位置関係は常に変化するため、光信号9と偏光フィルタ部29aの偏光面の関係もまた常に変化することになり、結果として外乱光成分を打ち消すことができない、という課題を有していた。また、偏光フィルタ部29aの偏光角度の調整を行う構成を考えた場合、光送信器1と光受信器2がそれぞれ固定されていて、位置関係が変化しないような場合には、光送信器1からの光信号9の偏光面が変化したとしても、光受信器2の偏光フィルタ部29aの偏光角度を調節すれば受光パワーが変動しないため、受光パワーを基に、光信号9と偏光フィルタ部29aの偏光面を一致させることは可能である。しかし、受光パワーを用いて偏光面を制御しようとすると、ユーザが光受信器2を持ち運ぶなどして光送信器1との距離が変化すると、受光パワーそのものが変化するため、受光パワーの変化が、偏光面が変わったことによるものなのか、それとも距離が変化したために生じたものなのか、を検知できず、偏光フィルタ部29aを制御することが難しくなる、という課題も有していた。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、光信号と光受信器の偏光フィルタの偏光面の関係が変化する環境において、消光比の値を基に、偏光した光信号と偏光フィルタの偏光面を一致させる光送受信器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の光送受信器は、光信号を用いてデータ伝送を行う光送受信器において、送信データを出力するデータ送信部と、前記データ送信部からの出力を2分岐する分岐部と、前記分岐部の一方の出力を論理反転して出力する論理反転部と、前記分岐部の他方の出力を、偏光した光信号に変換する第1の発光部と、前記論理反転部の出力を、偏光した光信号に変換する第2の発光部とを有し、前記第1の発光部と前記第2の発光部からの出力光の偏光面は、略直交している特徴を持つ光送信器と、前記第1の発光部からの光信号を受光して電気信号に変換する第1の受光部と、前記第2の発光部からの光信号を受光して電気信号に変換する第2の受光部と、前記第1の受光部の前面に設置される第1の偏光フィルタ部と、前記第2の受光部の前面に設置される第2の偏光フィルタ部と、前記第1の偏光フィルタ部と、前記第2の偏光フィルタ部の偏光面を調整する偏光フィルタ調整部と、前記第1の受光部の出力を増幅する第1の増幅部と、前記第2の受光部の出力を反転増幅する第2の増幅部と、前記第1の増幅部の出力と、前記第2の増幅部の出力を合成する信号合成部と、前記信号合成部の出力から受信データを決定するデータ受信部とを有する光受信器と、を備えることを特徴としている。
【0008】
更に本発明の光送受信器は、前記偏光フィルタ調整部は、前記第1の発光部からの出力光の偏光面と、前記第1の偏光フィルタ部の偏光面が略一致し、且つ前記第2の発光部からの出力光の偏光面と、前記第2の偏光フィルタ部の偏光面が略一致するよう調整することを特徴としている。
【0009】
更に本発明の光送受信器は、前記偏光フィルタ調整部は、前記第1、第2の受光部のどちらか一方、もしくはその両方の出力から、前記第1及び第2の受光部が受光する光信号の消光比を検知する消光比検知部を有し、前記消光比検知部の出力を基に、前記第1、第2の偏光フィルタ部の偏光角度を調整することを特徴としている。
【0010】
更に本発明の光送受信器は、前記光送信器は、前記光受信器とデータ伝送を行う前に制御信号を伝送し、前記偏光フィルタ調整部は、前記制御信号に対して、前記第1、第2の偏光フィルタ部の偏光角度を調節して前記消光比検知部の出力の最大値を記憶部に記憶し、前記光送信器と前記光受信器がデータ伝送を開始し、前記消光比検知部の出力が、前記記憶部の出力に対して所定の割合以下になると、前記消光比検知部の出力が前記記憶部の出力に対して所定の割合以上になるよう、前記第1、第2の偏光フィルタ部の偏光角度を調整することを特徴としている。
【0011】
更に本発明の光送受信器は、前記記憶部は、前記消光比検知部の出力が所定値以下である時間が、所定の時間以上、継続すると、保持している前記消光比検知部の出力の最大値を消去することを特徴としている。
【0012】
更に本発明の光送受信器は、前記記憶部は、前記送信器からデータ伝送終了を示す信号を、前記データ受信部が受信すると、前記記憶部が保持している前記消光比検知部の出力の最大値を消去することを特徴としている。
【0013】
更に本発明の光送受信器は、光信号を用いてデータ伝送を行う光送受信器において、送信データを出力するデータ送信部と、前記データ送信部からの出力を2分岐する分岐部と、前記分岐部の一方の出力を論理反転して出力する論理反転部と、前記分岐部の他方の出力を、偏光した光信号に変換する第1の発光部と、前記論理反転部の出力を、偏光した光信号に変換する第2の発光部とを有し、前記第1の発光部と前記第2の発光部からの出力光の偏光面は、略直交している特徴を持つ光送信器と、前記第1の発光部からの光信号を受光して電気信号に変換する第1の受光部と、前記第2の発光部からの光信号を受光して電気信号に変換する第2の受光部と、前記第1の受光部の前面に設置される第1の偏光フィルタ部と、前記第2の受光部の前面に設置される第2の偏光フィルタ部と、前記第1の偏光フィルタ部と、前記第2の偏光フィルタ部の偏光面を調整する偏光フィルタ調整部と、前記第1の受光部若しくは前記第2の受光部の受光パワーを検知する受光パワー検知部と、前記第1の受光部の出力を増幅する第1の増幅部と、前記第2の受光部の出力を反転増幅する第2の増幅部と、前記第1の増幅部の出力と、前記第2の増幅部の出力を合成する信号合成部と、前記信号合成部の出力から受信データを決定するデータ受信部と、前記受光パワー検知部で検知される受光パワーが所定の値以上になると、前記偏光フィルタ部が前記第1及び第2の偏光フィルタ部の調整を開始する光受信器と、を備えることを特徴としている。
【0014】
更に本発明の光送受信器は、前記偏光フィルタ調整部は、前記第1の発光部からの出力光の偏光面と、前記第1の偏光フィルタ部の偏光面が略一致し、且つ前記第2の発光部からの出力光の偏光面と、前記第2の偏光フィルタ部の偏光面が略一致するよう調整することを特徴としている。
【0015】
更に本発明の光送受信器は、前記偏光フィルタ調整部は、前記第1、第2の受光部のどちらか一方、もしくはその両方の出力から、前記第1及び第2の受光部が受光する光信号の消光比を検知する消光比検知部を有し、前記消光比検知部の出力を基に、前記第1、第2の偏光フィルタ部の偏光角度を調整することを特徴としている。
【0016】
更に本発明の光送受信器は、前記光送信器は、前記光受信器とデータ伝送を行う前に制御信号を伝送し、前記偏光フィルタ調整部は、前記受光パワー検知部で検知される受光パワーが所定の値以上になると、前記制御信号に対して、前記第1、第2の偏光フィルタ部の偏光角度を調節して前記消光比検知部の出力の最大値を記憶部に記憶し、前記光送信器と前記光受信器がデータ伝送を開始し、前記消光比検知部の出力が、前記記憶部の出力に対して所定の割合以下になると、前記消光比検知部の出力が前記記憶部の出力に対して所定の割合以上になるよう、前記第1、第2の偏光フィルタ部の偏光角度を調整することを特徴としている。
【0017】
更に本発明の光送受信器は、前記記憶部は、前記消光比検知部の出力が所定値以下である時間が、所定の時間以上、継続すると、保持している前記消光比検知部の出力の最大値を消去することを特徴としている。
【0018】
更に本発明の光送受信器は、前記記憶部は、前記送信器からデータ伝送終了を示す信号を、前記データ受信部が受信すると、前記記憶部が保持している前記消光比検知部の出力の最大値を消去することを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明の光送受信器によれば、光信号と光受信器の偏光フィルタの偏光面を一致させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における光送信器と光受信器のブロック図である。実施の形態1は、光送信器1、データ送信部10、分岐部11、反転部12、発光部13a、13b、偏光フィルタ部14a、14b、光受信器2、受光部20a、20b、消光比検知部22、増幅部23、反転増幅部24、データ受信部25、信号加算部27、偏光フィルタ角度設定部28、偏光フィルタ部29a、29bより成る。光送信器1と光受信器2は、光信号9a、9bによってデータ信号を伝送し、光受信器2には外乱光8が入射している構成となっている。データ送信部10は、送信するデータを分岐部11に出力し、分岐部11はデータ信号を2つに分岐する。分岐部11の一方の出力は、発光部13aで電気/光変換されて、偏光フィルタ部14aを通して光信号9aとして出力される。分岐部11のもう一方の出力は、反転部12で論理反転されて出力される。反転部12の出力は発光部13bで電気/光変換されて、偏光フィルタ部14bを通して光信号9bとして出力される。このとき、偏光フィルタ部14aと14bの偏光面は互いに略直交し、図6に示すように、光信号9a、9bは互いに略直交している設定とする。
【0022】
このようにして出力された光信号9a、9bは互いに論理反転した光信号となっており、このまま受光しても直流光しか出力されない(図6右(9a+9b))。そこで、図7右にあるように、偏光フィルタ部29aの偏光面を光信号9aの偏光面と一致させ、偏光フィルタ部29bの偏光面を光信号9bの偏光面と一致させることを考える。このとき、偏光フィルタ部29a、29bの偏光面を光信号9a、9bと一致させるために、偏光フィルタ部29aを透過した光信号9aの消光比の値を利用する。偏光フィルタ部29aを透過した光信号9aを受光部20aで光/電気変換し、その信号の消光比を消光比検知部22において検出する。ここで、互いに直交し、且つ論理反転している光信号9a、9bを、偏光フィルタ部29aを介して受光した場合の受光波形について説明する。図7左には、互いに直交した光信号9a、9bに対して、偏光フィルタ部29a、29bが角度45度ずれている状態を示している。この状態において偏光フィルタ部29aを透過する光は、光信号9a、9bのそれぞれ1/2が合成された光信号である。すなわち、偏光フィルタ部29aを透過する光は、互いに論理反転した光信号が1/2ずつの割合となっており、受光部20aで受光される光信号は直流光(消光比=0dB)となる。一方、図7右のように、互いに直交した光信号9a、9bに対して、偏光フィルタ部29a、29bが一致している状態だと、偏光フィルタ部29aを透過する光は光信号9aだけであり、受光部20aで受光される光信号の消光比は、光信号9bによって劣化することなく最大となる。
【0023】
したがって、偏光フィルタ部29aを透過する光信号9aの消光比を検知し、消光比が最大となるように、偏光フィルタ角度設定部28が偏光フィルタ部29aの偏光面の角度を設定することで、偏光フィルタ部29aと光信号9aの偏光面を一致させることが可能となる。また、偏光フィルタ部29aと偏光フィルタ部29bは互いに直交し、光信号9a、9bもまた互いに直交しているので、偏光フィルタ部29bと光信号9bの偏光面も同時に一致することになる。図8に、消光比検出部22の構成の一例を示す。図8の消光比検知部22では、消光比検知部22内部の最大値検知部31と最小値検知部32で、受光部20aの出力の最大値と最小値を検知し、消光比計算部33でその比をとることで消光比を検知している。
【0024】
この状態において、受光部20a、20bは、互いに論理反転した光信号9a、9bを受光する。この状態において、外乱光8の影響を考えると、外乱光8は無偏光として考えることが可能であり、受光部20a、20bには同じ外乱光成分が含まれることになる。受光部20aの出力は増幅部23において増幅されて信号加算部27に入力される。一方、受光部20bの出力は、反転増幅部24において論理反転されて増幅されて信号加算部27に入力される。信号加算部27においては、増幅部23、反転増幅部24の出力を加算し、データ受信部25へ入力され、データ受信部25においてデータが再生される。このとき、外乱光8の影響を考えると、上述のように、受光部20a、20bにはおなじ外乱光成分が含まれており、増幅部23、反転増幅部24において互いに反転した外乱光成分に変換されることになる。そして信号加算部27で加算されることにより、外乱光成分は互いに打ち消しあうことになり、データ受信部25には外乱光成分は入力されないことになる。
【0025】
以上より、偏光した光信号を伝送する場合において、光信号の偏光面と偏光フィルタ部の偏光面を一致させることが可能となり、外乱光成分を除去することが可能となる。
【0026】
なお、受光部20aの出力の消光比を検知する構成としたが、受光部20bの出力の消光比を検知してもよいし、受光部20a、20bの両出力の消光比を検知する構成であってもよい。
【0027】
なお、偏光フィルタ部29aと光信号9aの偏光面を一致させる構成としたが、偏光フィルタ部29aと光信号9bの偏光面を一致させる構成であっても同じ効果が得られるため、偏光フィルタ部29aは光信号9a、9bの偏光面のどちらかと一致させる構成であればよい。
【0028】
なお、増幅部23、反転増幅部24の出力を、信号加算部27において加算する構成としたが、反転増幅部24の代わりに増幅部(もしくは増幅部23の代わりに反転増幅部)を設置し、信号加算部27の代わりに差動増幅器を置く構成であっても同様の効果が得られるため、受光部20a、20bで受光される信号が反転して加算されて外乱光成分が互いに打ち消される構成であればよい。
【0029】
なお、消光比検知部22は、受光部20aの出力の最大値と最小値から消光比を算出する構成としたが、受光部20aの出力に対して、平均値と振幅値を検知して消光比を算出する構成など、消光比を検知できる構成であればよい。
【0030】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2の光送信器と光受信器のブロック図である。図2において、図1と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0031】
本実施の形態2では、消光比検知部22で検知される消光比の最大値を、記憶部26が記憶する形態となっている。光送信器1と光受信器2がデータ伝送を行う前に、光送信器は制御信号(例えばアイドル信号や、01交番符号など)を伝送する。制御信号に対して、消光比検知部22で検知される消光比が最大となるように、偏光フィルタ角度設定部28は偏光フィルタ部29a、29bの偏光面の角度を調整する。このとき、消光比の最大値を記憶部26に記憶し、その後、光送信器1と光受信器2はデータ伝送を開始する。
【0032】
ここで、光送信器1が固定されていて、光受信器2はユーザが持ち運んでいる状況を考えると、上述のように、消光比が最大となるようにデータ伝送の前に偏光フィルタ部29a、29bを設定しても、ユーザが光受信器2を移動させるため、光信号9a、9bと偏光フィルタ部29a、29bの偏光面がずれてしまい、偏光フィルタ部29a、29bを透過する光信号の消光比が劣化し、性能が劣化することになる。そこで、記憶部26に記憶されている消光比の最大値に対して、消光比検知部22が検知している現在の消光比の値が、所定の割合以下に低下したことを検知すると、偏光フィルタ角度設定部28は、所定の割合以上となるように偏光フィルタ部29a、29bの偏光面の角度を設定する。以上の動作により、受光部20a、20bで受光される光信号の消光比は所定の値以上に保持され、光送信器1、光受信器2の性能が維持することができる。
【0033】
また、光送信器1と光受信器2の間のデータ伝送が終了すると、消光比検知部22で検知される消光比の値は、雑音成分に対して検知される消光比の値となるため、データ伝送時に比べて小さな値となる。記憶部26は、消光比検知部22の出力が、ある時間以上、所定値以下の状態が継続すると、記憶していた消光比の最大値を消去する。以上の動作により、光送信器1と光受信器2の間のデータ伝送が終了して、また新たにデータ伝送が始まるときに、消光比が最大となるように偏光フィルタ部29a、29bを再設定することが可能となる。
【0034】
以上より、光送信器1と光受信器2の位置関係が変化した場合においても、光信号9a、9bと偏光フィルタ部29a、29bの偏光面の関係は維持することが可能となる。
【0035】
(実施の形態3)
図3は、本発明の実施の形態3の光送信器と光受信器を示すブロック図である。図3において、図1、2と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0036】
図3において、光送信器1と光受信器2の間のデータ伝送が終了する際、光送信器1はデータ伝送の終了を示す信号を伝送し、データ受信部25は、データ伝送の終了を示す信号を受取ると、記憶部26に記憶部26が記憶していた消光比の最大値を消去する信号を出力し、記憶部26はその信号に従って消去する。以上の動作により、実施の形態2と同様に、光送信器1と光受信器2の間のデータ伝送が終了して、また新たにデータ伝送が始まるときに、消光比が最大となるように偏光フィルタ部29a、29bを再設定することが可能となる。
【0037】
(実施の形態4)
図4は、本発明の実施の形態4の光送信器と光受信器を示すブロック図である。図4において、図1、2、3と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0038】
図4において、受光パワー検知部21は、受光部20aの受光パワーを検知し、その結果を偏光フィルタ角度設定部28に出力している。偏光フィルタ角度設定部28は、光送信器1と光受信器2のデータ伝送が行われる前において、受光部20aの受光パワーが所定値以上になると、消光比検知部22と記憶部26の出力を用いて、偏光フィルタ部29a、29bの偏光面の角度の調整を開始する。また、受光部20aの受光パワーが所定値以下になると、偏光フィルタ部29a、29bの偏光面の角度の調整を停止する。上述の受光パワーの所定値を、例えばエラーフリーとなる最小受光パワーとすれば、符号誤りが生じる受光パワーではデータ伝送をしない、などの設定が可能となり、偏光フィルタ部29a、29bの角度調整を実施する必要のない状況(例えば、符号誤りが多発する、受光パワーがゼロ(つまり光送信器1がない状態)、など)において、その動作を停止することが可能となり、消費電力を低減する、符号誤りによる誤動作、誤ったデータの伝送を防止する、などの効果を得ることができる。
【0039】
以上より、受光パワーが所定値以上のときに、偏光フィルタ部29a、29bの調整を行う構成とすることで、光受信器2において、より高度な制御を実現することが可能となる。
【0040】
なお、受光部20aの受光パワーを検知する構成としたが、受光部20bの受光パワーを検知してもよいし、受光部20a、20bの両方の受光パワーを検知する構成であってもよい。
【0041】
なお、受光パワーの所定値を最小受光パワーとする構成としたが、各種アプリケーションによって許容される符号誤り率が異なるため、必要とされる符号誤り率を満たす受光パワーを所定値とする構成であってもよい。
【0042】
(実施の形態5)
図5は、本発明の実施の形態5の光送信器と光受信器を示すブロック図である。図5において、図1〜4と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0043】
図5において、光送信器1と光受信器2の間のデータ伝送が終了する際、光送信器1はデータ伝送の終了を示す信号を伝送し、データ受信部25は、データ伝送の終了を示す信号を受取ると、記憶部26に記憶部26が記憶していた消光比の最大値を消去する信号を出力し、記憶部26はその信号に従って消去する。以上の動作により、実施の形態2と同様に、光送信器1と光受信器2の間のデータ伝送が終了して、また新たにデータ伝送が始まるときに、消光比が最大となるように偏光フィルタ部29a、29bを再設定することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明にかかる光送受信器は、自由空間中で光信号を用いてデータ伝送を行う光送受信器において、偏光した光信号と光受信器の位置関係が変化した場合においても、光受信器の偏光フィルタを調整できる特徴を有し、光空間伝送を用いてデータ伝送を行う機器および装置の入出力インターフェース等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の光送信器と光受信器の構成を示すブロック図
【図2】本発明の光送信器と光受信器の構成を示すブロック図
【図3】本発明の光送信器と光受信器の構成を示すブロック図
【図4】本発明の光送信器と光受信器の構成を示すブロック図
【図5】本発明の光送信器と光受信器の構成を示すブロック図
【図6】本発明の送信光の偏光面と受信波形を示す図
【図7】本発明の送信光の偏光面と偏光フィルタの偏光面の関係を示すブロック図
【図8】本発明の光受信器の構成の一部を示すブロック図
【図9】従来の光送信器と光受信器の構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0046】
1 光送信器
2 光受信器
10 データ送信部
11 分岐部
12 反転部
13a,13b 発光部
14,14a,14b 偏光フィルタ部
20a,20b 受光部
21 受光パワー検知部
22 消光比検知部
23 増幅部
24 反転増幅部
25 データ受信部
26 記憶部
27 信号加算部
28 偏光フィルタ角度設定部
29a,29b 偏光フィルタ部
31 最大値検知部
32 最小値検知部
33 消光比計算部
8 外乱光
9,9a,9b 光信号
231,232 増幅部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を用いてデータ伝送を行う光送受信器において、
送信データを出力するデータ送信部と、
前記データ送信部からの出力を2分岐する分岐部と、
前記分岐部の一方の出力を論理反転して出力する論理反転部と、
前記分岐部の他方の出力を、偏光した光信号に変換する第1の発光部と、
前記論理反転部の出力を、偏光した光信号に変換する第2の発光部とを有し、
前記第1の発光部と前記第2の発光部からの出力光の偏光面は、略直交している特徴を持つ光送信器と、
前記第1の発光部からの光信号を受光して電気信号に変換する第1の受光部と、
前記第2の発光部からの光信号を受光して電気信号に変換する第2の受光部と、
前記第1の受光部の前面に設置される第1の偏光フィルタ部と、
前記第2の受光部の前面に設置される第2の偏光フィルタ部と、
前記第1の偏光フィルタ部と、前記第2の偏光フィルタ部の偏光面を調整する偏光フィルタ調整部と、
前記第1の受光部の出力を増幅する第1の増幅部と、
前記第2の受光部の出力を反転増幅する第2の増幅部と、
前記第1の増幅部の出力と、前記第2の増幅部の出力を合成する信号合成部と、
前記信号合成部の出力から受信データを決定するデータ受信部とを有する光受信器と、
を備える光送受信器。
【請求項2】
前記偏光フィルタ調整部は、前記第1の発光部からの出力光の偏光面と、前記第1の偏光フィルタ部の偏光面が略一致し、且つ前記第2の発光部からの出力光の偏光面と、前記第2の偏光フィルタ部の偏光面が略一致するよう調整することを特徴とする、請求項1記載の光送受信器。
【請求項3】
前記偏光フィルタ調整部は、前記第1、第2の受光部のどちらか一方、もしくはその両方の出力から、前記第1及び第2の受光部が受光する光信号の消光比を検知する消光比検知部を有し、前記消光比検知部の出力を基に、前記第1、第2の偏光フィルタ部の偏光角度を調整することを特徴とする、請求項2記載の光送受信器。
【請求項4】
前記光送信器は、前記光受信器とデータ伝送を行う前に制御信号を伝送し、
前記偏光フィルタ調整部は、前記制御信号に対して、前記第1、第2の偏光フィルタ部の偏光角度を調節して前記消光比検知部の出力の最大値を記憶部に記憶し、前記光送信器と前記光受信器がデータ伝送を開始し、前記消光比検知部の出力が、前記記憶部の出力に対して所定の割合以下になると、前記消光比検知部の出力が前記記憶部の出力に対して所定の割合以上になるよう、前記第1、第2の偏光フィルタ部の偏光角度を調整することを特徴とする、請求項3記載の光送受信器。
【請求項5】
前記記憶部は、前記消光比検知部の出力が所定値以下である時間が、所定の時間以上、継続すると、保持している前記消光比検知部の出力の最大値を消去することを特徴とする、請求項4記載の光送受信器。
【請求項6】
前記記憶部は、前記送信器からデータ伝送終了を示す信号を、前記データ受信部が受信すると、前記記憶部が保持している前記消光比検知部の出力の最大値を消去することを特徴とする、請求項4記載の光送受信器。
【請求項7】
光信号を用いてデータ伝送を行う光送受信器において、
送信データを出力するデータ送信部と、
前記データ送信部からの出力を2分岐する分岐部と、
前記分岐部の一方の出力を論理反転して出力する論理反転部と、
前記分岐部の他方の出力を、偏光した光信号に変換する第1の発光部と、
前記論理反転部の出力を、偏光した光信号に変換する第2の発光部とを有し、
前記第1の発光部と前記第2の発光部からの出力光の偏光面は、略直交している特徴を持つ光送信器と、
前記第1の発光部からの光信号を受光して電気信号に変換する第1の受光部と、
前記第2の発光部からの光信号を受光して電気信号に変換する第2の受光部と、
前記第1の受光部の前面に設置される第1の偏光フィルタ部と、
前記第2の受光部の前面に設置される第2の偏光フィルタ部と、
前記第1の偏光フィルタ部と、前記第2の偏光フィルタ部の偏光面を調整する偏光フィルタ調整部と、
前記第1の受光部若しくは前記第2の受光部の受光パワーを検知する受光パワー検知部と、
前記第1の受光部の出力を増幅する第1の増幅部と、
前記第2の受光部の出力を反転増幅する第2の増幅部と、
前記第1の増幅部の出力と、前記第2の増幅部の出力を合成する信号合成部と、
前記信号合成部の出力から受信データを決定するデータ受信部と、
前記受光パワー検知部で検知される受光パワーが所定の値以上になると、前記偏光フィルタ部が前記第1及び第2の偏光フィルタ部の調整を開始する光受信器と、
を備える光送受信器。
【請求項8】
前記偏光フィルタ調整部は、前記第1の発光部からの出力光の偏光面と、前記第1の偏光フィルタ部の偏光面が略一致し、且つ前記第2の発光部からの出力光の偏光面と、前記第2の偏光フィルタ部の偏光面が略一致するよう調整することを特徴とする、請求項7記載の光送受信器。
【請求項9】
前記偏光フィルタ調整部は、前記第1、第2の受光部のどちらか一方、もしくはその両方の出力から、前記第1及び第2の受光部が受光する光信号の消光比を検知する消光比検知部を有し、前記消光比検知部の出力を基に、前記第1、第2の偏光フィルタ部の偏光角度を調整することを特徴とする、請求項8記載の光送受信器。
【請求項10】
前記光送信器は、前記光受信器とデータ伝送を行う前に制御信号を伝送し、
前記偏光フィルタ調整部は、前記受光パワー検知部で検知される受光パワーが所定の値以上になると、前記制御信号に対して、前記第1、第2の偏光フィルタ部の偏光角度を調節して前記消光比検知部の出力の最大値を記憶部に記憶し、前記光送信器と前記光受信器がデータ伝送を開始し、前記消光比検知部の出力が、前記記憶部の出力に対して所定の割合以下になると、前記消光比検知部の出力が前記記憶部の出力に対して所定の割合以上になるよう、前記第1、第2の偏光フィルタ部の偏光角度を調整することを特徴とする、請求項9記載の光送受信器。
【請求項11】
前記記憶部は、前記消光比検知部の出力が所定値以下である時間が、所定の時間以上、継続すると、保持している前記消光比検知部の出力の最大値を消去することを特徴とする、請求項10記載の光送受信器。
【請求項12】
前記記憶部は、前記送信器からデータ伝送終了を示す信号を、前記データ受信部が受信すると、前記記憶部が保持している前記消光比検知部の出力の最大値を消去することを特徴とする、請求項10記載の光送受信器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−4839(P2009−4839A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161070(P2007−161070)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】