説明

光通信システム、光通信ハーネス及び光分配装置

【課題】電気信号で行なわれていた所定のプロトコルに基づく通信を光通信でも実現することができる光通信システム、光通信ハーネス及び前記光通信システムを構成する光分配装置を提供する。
【解決手段】相互に接続される各光分配部2a,2b,2c夫々に、スター型に光通信装置10a,10b,10cを接続する。光通信装置10a,10b,10cは夫々異なる波長の光信号を送信する。光分配部2a,2b,2cは夫々、光入力部20a,20b,20c及び光出力部21a,21b,21cを備え、1つの光入力部20bに入力された光は複数の光出力部21bから出力される。光出力部21bと光入力部20aとの間に介装されるフィルタ40bは光分配器2aから光分配器2bへ出力された光が光分配器2aへ戻ることを防ぎ、光アンプ41bは光分配器2bから出力される光の波長を1つの波長へ変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号にて通信を行なうことによって電気通信線におけるリンギングを回避し、通信装置間の通信品質を向上させることができる通信システムに関し、電気信号で行なわれていた既存プロトコルに基づく通信を光通信にて実現させることが可能な光通信システム、光通信ハーネス及び光分配装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、複数の通信装置を接続し、各通信装置に夫々機能を割り振って相互にデータを交換し、連携して多様な処理を行なわせるシステムが各分野で利用されている。例えば、車両に配される車載LAN(Local Area Network)の分野では、ECU(電子制御装置;Electronic Control Unit)に通信機能を持たせ、各ECUに夫々特化させた処理を行なわせて相互にデータを交換することにより、システムとして多様な機能を実現させている。
【0003】
各ECUの機能が特化していく一方で、通信システム全体で可能となるべき機能は増大化する傾向にあるので、通信手段を備える装置(ノード)の数は増大化している。しかしながら、通信線に多くのノードを接続するとリンギングなどが発生しやすくなり、通信障害の発生頻度が増加するという問題がある。現行のCAN(Controller Area Network)を採用した通信では、通信線に接続可能なノード数に制限を設けている。
【0004】
通信システム全体の機能が増大して機器の数が増えることで通信線及び他の信号線への電磁ノイズの影響が無視できない。特に、車両の分野ではEV(Electric Vehicle)及びHEV(Hybrid EV)の普及により車両内に高電圧ケーブルが配策されている。電磁ノイズの影響を排除するために通信線にはシールド処理されたもの(STP:Shielded Twisted Pair)を用いることが望ましい。しかしながら、従来から用いられているECUは、UTPにて信号を送受信するように構成されており、STPへ対応させるためにコネクタ等を全て変更することは現実的でない。
【0005】
リンギング防止のためには、通信線を複数に分け、異なる通信線にECUを夫々接続して1つの通信線に接続するノードの数に制限を設けるように構成される。これらの構成では、異なる通信線間はデータの送受信を制御するゲートウェイ(GW:Gate Way)により接続される。しかしながら、一通信線あたりのノード数制限のためにGWを通信システムに含める構成では、通信システム全体の部品点数が増加しシステム全体のコストが上がる。
【0006】
そこで、電磁ノイズの影響を受けない光ケーブルを介した光通信を採用することが考えられる。車両の分野でも一部を光通信によって実現する構成が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−219353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一部のみならず、ECU間の通信を全て光通信に代替することも考えうる。この場合、従来のECUを全て作り変えることなくシステムを構築できることが望ましい。そのためには各ECUが有する従来の通信プロトコルの通信機能を利用できるようにシステムを実現することが求められる。
【0009】
車載通信におけるプロトコルはCANが広く採用されている。CANのプロトコルでは特に、通信の衝突に対する調停処理を行なうために、各ノードは通信線を常に監視する。各ノードは自身が送信する場合も、通信線を送信されている信号と自身が送信した信号とを比較して一致する場合は送信処理を続行し、不一致の場合は送信処理を停止する。全てを光通信とした場合でも、自ら送信する信号も他からの信号をも全て各ノードが検出できるように、光通信と電気的通信との間を構成する必要がある。
【0010】
一方、光通信によって通信システムを構築する場合、光パワーの低下を抑制するため、複数のネットワークに分け、各ネットワークではスターカプラ(パッシブ)を用いて光通信装置をスター型に接続する構成が好ましい。このとき、異なるネットワークのカプラ間を光通信線(光ファイバ)で接続することによって異なるネットワーク間での光信号の交換が可能でありGWを必要としない。カプラ(パッシブ)は、入力された光を合配する光デバイスである。CANのプロトコルを利用するためには、各カプラを介しても当該通信プロトコルに適した通信が行なわれるような構成が必要となる。
【0011】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、電気信号で行なわれていた所定のプロトコルに基づく通信を光通信でも実現することができる光通信システム、光通信ハーネス及び前記光通信システムを構成する光分配装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明に係る光通信システムは、複数の光入力部及び複数の光出力部を有し、1つの光入力部から入力された光を、複数の光出力部へ分配して出力し、相互に光入力部及び光出力部で接続された少なくとも3つの光分配器と、各光分配器にスター型に接続され、前記光分配器の光入力部へ光信号を送信し、前記光分配器の光出力部から光信号を受信する複数の光通信装置とを備え、各光通信装置が送信する光信号の波長は、接続されている光分配器別に異なるようにしてあり、各光分配器が相互に接続される光入力部及び光出力部の間に、光入力部側の光分配器に接続される光通信装置が送信する光信号の波長の光を遮断するフィルタ、該フィルタを透過した光信号を前記波長と異なる波長の光信号へ変換する変換部、又は、光出力部側の光分配器に接続される光通信装置が送信する光信号の波長の光のみを透過させるフィルタが介装されていることを特徴とする。
【0013】
第2発明に係る光通信システムは、複数の光入力部及び複数の光出力部を夫々有し、1つの光入力部から入力された光を、複数の光出力部へ分配して出力し、相互に光入力部及び光出力部で順列に接続された第1、第2、第3及び第4の光分配器と、第1、第2、第3及び第4の光分配器夫々にスター型に光通信線を介して接続され、前記光分配器の光入力部へ夫々第1、第2、第3又は第4の波長の光信号を送信し、前記光分配器の光出力部から光信号を受信する複数の第1、第2、第3及び第4の光通信装置とを備え、第1、第2、第3及び第4の光通信装置は、接続されている光分配器別に、夫々異なる第1、第2、第3及び第4の波長の光信号を送信するようにしてあり、第1及び第4光分配器の各1つの光出力部と、該各1つの光出力部に夫々接続された他の光分配器の光入力部の間に介装され、夫々前記他の光分配器に接続されている光通信装置が送信する光信号の波長の光を遮断するフィルタと、第2の光分配器の各1つの光出力部と、該各1つの光出力部に接続された他の光分配器の光入力部の間に夫々介装され、夫々前記他の光分配器に接続されている光通信装置が送信する光信号の波長の光を遮断するフィルタ及び該フィルタを透過した光信号を第2の波長の光信号へ変換する変換部と、第3の光分配器の各1つの光出力部と、該各1つの光出力部に接続された他の光分配器の光入力部の間に夫々介装され、夫々前記他の光分配器に接続されている光通信装置が送信する光信号の波長の光を遮断するフィルタ及び該フィルタを透過した光信号を第3の波長の光信号へ変換する変換部とを備えることを特徴とする。
【0014】
第3発明に係る光通信システムは、複数の光入力部及び複数の光出力部を夫々有し、1つの光入力部から入力された光を、複数の光出力部へ分配して出力し、相互に光入力部及び光出力部で順列に接続された第1、第2及び第3の光分配器、並びに第2の光分配器に相互に光入力部及び光出力部で接続された第4の光分配器と、第1、第3及び第4の光分配器夫々にスター型に光通信線を介して接続され、前記光分配器の光入力部へ夫々第1、第3及び第4の波長の光信号を送信し、前記光分配器の光出力部から光信号を受信する複数の第1、第3及び第4の光通信装置とを備え、第1、第3及び第4の光通信装置は、接続されている光分配器別に、夫々異なる第1、第3及び第4の波長の光信号を送信するようにしてあり、第1、第3及び第4の光分配器の各1つの光出力部と、該各1つの光出力部に接続された第2光分配器の光入力部との間に介装され、第1、第3及び第4の波長の光のみを透過するフィルタと、第2光分配器の複数の光出力部と、各光出力部に接続された第1、第3及び第4光分配器の光入力部の間に夫々介装され、第1、第3及び第4の波長の光を夫々遮断するフィルタ及び該フィルタを透過した光信号を光入力部側に接続された光分配器に接続されている光通信装置が送信する光信号と異なる波長の光信号へ変換する変換部とを更に備えることを特徴とする。
【0015】
第4発明に係る光通信システムは、前記光通信装置は、送信中の光信号と受信中の光信号とを比較し、送信の成功の可否を判断する手段を備えることを特徴とする。
【0016】
第5発明に係る光通信システムは、前記光通信装置は、CANプロトコルに基づき光信号を送受信するようにしてあることを特徴とする。
【0017】
第6発明に係る光通信システムは、前記光通信装置は、2Mbps以下の通信速度にて情報の送受信を行なうことを特徴とする。
【0018】
第7発明に係る光通信ハーネスは、複数の光入力部及び複数の光出力部を有し、1つの光入力部から入力された光を、複数の光出力部へ分配して出力し、相互に光入力部及び光出力部で接続された少なくとも3つの光分配器と、前記複数の光入力部及び光出力部の内の任意の光入力部及び光出力部に夫々接続される光通信線とを備え、各光分配器が相互に接続される光入力部及び光出力部の間に、光入力部側の光分配器に接続される光通信装置が送信する光信号の波長の光を遮断するフィルタ、該フィルタを透過した光信号を前記波長と異なる波長の光信号へ変換する変換部、又は、光出力部側の光分配器に接続される光通信装置が送信する光信号の波長の光のみを透過させるフィルタが介装されていることを特徴とする。
【0019】
第8発明に係る光通信ハーネスは、前記フィルタは、光通信線の他の光分配器への接続コネクタ内部に設けられていることを特徴とする。
【0020】
第9発明に係る光分配装置は、複数の光入力部及び複数の光出力部を有し、1つの光入力部から入力された光を、複数の光出力部へ分配して出力する光分配器と、前記複数の光出力部夫々に接続され、相異なる波長の光を遮断する複数のフィルタ、該フィルタを透過した光信号を前記波長と異なる波長の光信号へ変換する変換部、又は、光出力部側の光分配器に接続される光通信装置が送信する光信号の波長の光のみを透過させるフィルタとを備えることを特徴とする。
【0021】
本発明では、複数の光入力部及び光出力部を有し、1つの光入力部から入力された光を複数の光出力部へ分配して出力する少なくとも3つの光分配器が備えられ、各光分配器には夫々、光分配器が有する光入力部へ光信号を送信し、光出力部から出力される光信号を受信する複数の光通信装置がスター型に接続される。同一の光分配器に接続する光通信装置は同一の波長の光信号を送信するようにしてあり、当該波長は接続する光分配器によって異なる構成とされる。
これにより、1つの光分配器(第1の光分配器)に接続される光通信装置が光信号(第1の波長)を送信した場合、送信された光信号は1つの光分配器の光入力部に入力されるので、当該1つの光分配器の複数の光出力部全てから出力される。複数の光出力部の内の1つは、光信号を送信した光通信装置に接続されているから、当該光通信装置は、自身が送信した光信号を受信して監視することが可能となる。光分配器の光出力部から、スター型に接続されている他の光通信装置へも出力されて各光通信装置が受信できる。また、他の光分配器の光入力部に接続されている光出力部からも当該光信号は出力され、他の光分配器へも到達する。当該他の光分配器でも同様に、1つの光入力部に入力された光信号は複数の光出力部から出力されて接続されている光通信装置へ分配される。このようにして、異なる光分配器に接続されている光通信装置も同一の光信号を受信する。
これにより、光通信であっても衝突検知、アービトレーションなどを必須とするCAN等のプロトコルによる通信が可能である。
【0022】
更に本発明では、光分配器どうしが接続する光入力部及び光出力部の間には、光入力部側の光分配器に接続される光通信装置が送信する光信号の波長を遮断するフィルタが介装される。
これにより、第1の光分配器に接続されている光通信装置が送信した光信号は、第1の光分配器に入力され、第1の光分配器に接続されている第1の光通信装置へ出力されると共に、接続されている第2の光分配器の光入力部へも入力される。第2の光分配器では、光入力部から入力された光を各光出力部から出力するので、第1の光分配器から出力されて入力された光も区別なく出力する。第2の光分配器の光出力部の内、第1の光分配器に接続されている光出力部は、第1の光分配器の1つの光入力部に接続されているが、当該光入力部及び光出力部の間には、光入力部側即ち第1の光分配器に接続されている第1の光通信装置が送信する光信号の波長即ち第1の波長の光を遮断するフィルタが介装されている。同様にして第1の光分配器の、第2の光分配器に接続されている光出力部は、第2の光分配器の1つの光入力部に接続されているが、当該光入力部及び光出力部の間には、光入力部側即ち第2の光分配器に接続されている第2の光通信装置が送信する光信号の波長即ち第2の波長の光を遮断するフィルタが介装されている。また、第2の光分配器の光出力部の内、第3の光分配器に接続されている光出力部には、第3の光分配器に接続されている光通信装置が送信する光信号の波長即ち第3の波長の光を遮断するフィルタが備えられている。したがって、第1の光分配器から出力されて第2の光分配器に入力された光は、第2の光分配器から再度出力されるものの、フィルタによって遮断されるので第1の光分配器へ戻らない。更に第3の光分配器から出力されて第2の光分配器に入力された光も、第2の光分配器から再度出力されるものの、フィルタによって遮断されるので第3の光分配器へ戻らない。したがって、光分配器間の光信号の無限の送受信が回避される。
【0023】
更に本発明では、光分配器の光出力部と光入力部との間のフィルタが介装されている場合であっても、各フィルタを透過する光信号を光出力部側の光分配器に接続される光通信装置が送信する光信号へ変換する変換部が介装される。
これにより、第1の光分配器に接続されている光通信装置が送信した光信号は、第1の光分配器に入力され、第1の光分配器に接続されている第2の光分配器の光入力部へも入力される。当該光信号は第2の光分配器の光出力部から第3の光分配器の光入力部へも向かい、フィルタは透過するものの第3の光分配器に接続されている光通信装置が送信する光信号とは異なる波長例えば第2の波長の光信号へ変換される。1つ以上離れている光分配器に接続されている光通信装置から送信される光信号の情報は、相互に伝わるものの、当該波長の光は同一の光通信線内に混在しない。したがって、1つ以上離れている光分配器に接続されている光通信装置は、同一の波長の光信号を送信する構成としてもよい。
また本発明では、光分配器の光出力部と光入力部との間に、光出力部側の光分配器に接続される光通信装置が送信する光信号の波長のみを透過させるフィルタが介装される。
これにより、第2の光分配器から出力されて第1の光分配器に入力された光は、第1の光分配器から再度出力されるものの、フィルタによって遮断されるので第2の光分配器へ戻らない。したがって、光分配器間の光信号の無限の送受信が回避される。
【0024】
本発明では、光通信装置は、送信中の光信号と、受信中の光信号とを比較して送信の成否を判断する所定のプロトコルに基づき通信を行なう。本発明では、光分配器へ送信した光信号を入力するようにしてあるので、送信中であっても自身の送信した光信号が帰還され、所定のプロトコルによる通信が可能となる。所定のプロトコルは、例えばCANである。
【0025】
本発明では、複数の光分配器と、各光分配器に接続される光通信線と、各光分配器に接続される光通信装置が送信する光信号の波長と異なる波長の光を減衰させるフィルタとが予め接続されてハーネスが構成されてある。当該ハーネスに、光通信装置を接続することにより容易に、所定のプロトコル通信が可能な光通信システムを構成することができる。
【0026】
本発明では、光通信装置間に介在する光分配器の数、及び光通信線の長さと、CAN等である所定のプロトコルにおける通信の規定とに基づき、最大2Mbpsの通信速度による通信が可能となる。
【0027】
本発明では、ハーネス同士の接続コネクタ内部にフィルタが設けられてもよく、これにより、ハーネス同士を接続することで容易に、所定のプロトコル通信が可能な光通信システムを構成することができる。
【0028】
本発明では、フィルタは光分配器と共に光分配装置を構成してもよい。フィルタが減衰させる光の波長が異なる複数の光分配装置を接続し、各光分配装置にフィルタの波長に対応する光通信装置を接続することにより、容易に、所定のプロトコル通信が可能な光通信システムを構成することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明による場合、少なくとも3つの光分配器に夫々複数の光通信装置が接続され、更に光分配器間が接続されて通信システムが構成される。これにより、光通信としても各光通信装置は、自身が送信した信号をも含めて通信線に送信された信号を常に監視することが可能になる。光通信であっても衝突検知、アービトレーションなどを必須とするCAN等のプロトコルによる通信を実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施の形態1における車載光通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1における光通信装置の構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1における光分配器及びコネクタの構成及び光分配器及びコネクタを介した光信号の送受信を模式的に示す模式図である。
【図4】実施の形態1におけるコネクタの変形例の構成を模式的に示す模式図である。
【図5】実施の形態1におけるコネクタの他の変形例の構成を模式的に示す模式図である。
【図6】実施の形態2における車載光通信システムの構成を示すブロック図である。
【図7】実施の形態2における光分配器及びコネクタの構成及び光分配器及びコネクタを介した光信号の送受信を模式的に示す模式図である。
【図8】実施の形態2におけるコネクタの変形例の構成を模式的に示す模式図である。
【図9】実施の形態3における車載光通信システムの構成を示すブロック図である。
【図10】実施の形態3における光分配器及びコネクタの構成及び光分配器及びコネクタを介した光信号の送受信を模式的に示す模式図である。
【図11】実施の形態4における車載光通信システムの構成を示すブロック図である。
【図12】実施の形態4における光分配装置の構成を示すブロック図である。
【図13】実施の形態4における光分配装置の構成を示すブロック図である。
【図14】CANにおけるビットタイミングを示す説明図である。
【図15】光通信装置間に介在する複数の装置の接続の例を模式的に示す模式図である。
【図16】図15に示した光通信装置間における通信可能範囲の限界を示す説明図である。
【図17】図15に示した光通信装置間における通信可能範囲の限界の他の例を示す説明図である。
【図18】光通信装置間に介在する複数の装置の接続の他の一例を模式的に示す模式図である。
【図19】図18に示した光通信装置間における通信可能範囲の限界を示す説明図である。
【図20】図18に示した光通信装置間における通信可能範囲の限界の他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
なお、以下の説明では、本発明に係る光通信システムを、車両内に配設される各種制御用の機器間を接続してCANに基づきデータを送受信する車載通信システムに適用した例を挙げて説明する。
【0032】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における車載光通信システムの構成を示すブロック図である。実施の形態1における車載光通信システムは、車両1に設置され、複数の光通信装置10a,10a,…、10b,10b,…、10c,10c,…と、光分配器2a,2b,2cと、光通信線3,3,…と、コネクタ4a,4b,4c,4dとを備える。光分配器2a、光通信線3及びコネクタ4aで光通信ハーネス5aを構成する。同様に光分配器2b、光通信線3及びコネクタ4b,4cで光通信ハーネス5bを構成し、光分配器2c、光通信線3及びコネクタ4dで光通信ハーネス5cを構成する。
【0033】
複数の光通信装置10a,10a,…は夫々、光通信線3を介してスター型に光分配器2aに接続されている。光通信装置10b,10b,…も同様に、夫々光通信線3を介してスター型に光分配器2bに接続されており、光通信装置10c,10c,…も、夫々光通信線3を介してスター型に光分配器2cに接続されている。
【0034】
光分配器2aには光通信線3を介してコネクタ4aが接続されている。光分配器2bには光通信線3を介してコネクタ4b及びコネクタ4cが接続されている。コネクタ4aとコネクタ4bとを接続することにより、光分配器2aと光分配器2bとが接続されている。光分配器2cには光通信線3を介してコネクタ4dが接続されている。コネクタ4cとコネクタ4dとを接続することにより、光分配器2bと光分配器2cとが接続されている。
【0035】
光通信線3は光ファイバである。光通信装置10aから光分配器2aへの上り線と、光分配器2aから光通信装置10aへの下り線とは夫々区別されている。同様に、光通信装置10bから光分配器2bへの上り線と、光分配器2bから光通信装置10bへの下り線とが夫々区別されている。光通信装置10cから光分配器2cへの上り線と、光分配器2cから光通信装置10cへの下り線とが区別されている。同様にして、光分配器2a,2b,2cの間の光通信線3も、光分配器2aから光分配器2bへの線と、光分配器2bから光分配器2aへの線とが区別され、光分配器2bから光分配器2cへの線と、光分配器2cから光分配器2bへの線とが区別されている。
【0036】
図2は、実施の形態1における光通信装置10a(10b,10c)の構成を示すブロック図である。光通信装置10aは、マイクロコンピュータ(図2中、μCと記載)11と、光トランシーバ12とを備える。光通信装置10aは、車両に搭載される各機器の制御を行なうECUである。なお、光通信装置10a、光通信装置10b及び光通信装置10cは、光トランシーバから送信する光信号の波長が後述する通り異なるのみで、他は同様の構成であるので、光通信装置10b及び光通信装置10cの内部構成の詳細な説明は省略する。
【0037】
マイクロコンピュータ11は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサがROM(Read Only Memory)に記憶されてあるプログラムを読み出して車載機器を制御する処理を実行する(いずれも図示せず)。マイクロコンピュータ11は、CANコントローラ13の機能を有する。これによりマイクロコンピュータ11は、CANプロトコルに基づきデータを送受信し、受信したデータに基づき制御処理を実行する。
【0038】
CANコントローラ13は、マイクロコンピュータ11内のプロセッサからの指示に基づき、CANプロトコルのデータ形式に従った送信用データに変換した送信信号Txを、光トランシーバ12へ出力する。またCANコントローラ13は、光トランシーバ12から受信信号Rxを入力し、CANプロトコルに基づいて信号を解釈し、内容をプロセッサへ通知する。CANコントローラ13は、送信信号Txを1ビットずつ順次出力しつつ、受信信号Rxを入力し、受信信号Rxの後述のアービトレーションフィールドを自身の送信信号Txのアービトレーションフィールドと比較する。CANコントローラ13は、送信信号Txと受信信号Rxのアービトレーションフィールドが一致する場合は送信信号Txの出力を継続し、不一致の場合は受信モードとなって送信信号Txの出力を停止する。これにより、複数の光通信装置10a(又は光通信装置10b若しくは光通信装置10c)から同時に信号が送信されたときの調停処理が実現される。
【0039】
CANプロトコルにて送受信される信号は、アービトレーションフィールド、コントロールフィールド、データフィールド、CRC(Cyclic Redundancy Check)フィールド、及びACK(ACKnowledgement)フィールド等の複数のフィールドで構成されるデジタル信号である。マイクロコンピュータ11のプロセッサから与えられるデータは、データフィールドに格納される。アービトレーションフィールドは、通信で衝突が発生した場合に前述の調停処理を行なうためのフィールドであり、信号の優先度に応じた値が格納される。送信側のCANコントローラ13は、送信した信号のACKフィールドのACKビットの有無により、受信されたか否かを判断し、再送の要否を判断する。CANプロトコルではデジタル信号の「0(ドミナント)」の方が「1(レセッシブ)」よりも優先される。
【0040】
光トランシーバ12は、CANコントローラ13にてCANプロトコルに従って生成された送信信号Txを光信号に変換して光通信線3へ送出する。光トランシーバ12は、CANプロトコルにおける「0(ドミナント)」/「1(レセッシブ)」を夫々、光の「有」/「無」に対応させて変換する。逆に光トランシーバ12は、光通信線3を介して受信された信号即ち光の「有」/「無」を、「0(ドミナント)」/「1(レセッシブ)」へ変換したデジタル信号を受信信号RxとしてCANコントローラ13へ出力する。
【0041】
光通信装置10aの光トランシーバ12、光通信装置10bの光トランシーバ12、及び光通信装置10cの光トランシーバ12は夫々、送信する光信号の波長が異なる。光通信装置10aの光トランシーバ12は、例えば650nmの波長の光信号を用いてCANプロトコルに従う信号を送信する。光通信装置10bの光トランシーバ12は、例えば550nmの波長の光信号を用い、光通信装置10cの光トランシーバ12は、例えば750nmの光信号を用いる。光通信装置10aの光トランシーバ12、光通信装置10bの光トランシーバ12、及び光通信装置10cの光トランシーバ12が用いる波長同士は、50〜100nm以上離れていることが好ましい。
【0042】
光通信装置10a、光通信装置10b及び光通信装置10cの光トランシーバ12は、波長の区別なく光信号を受信し、光信号をデジタル信号Rxに変換してCANコントローラ13へ通知する。ただし、光通信装置10a、光通信装置10b及び光通信装置10cの光トランシーバ12はいずれも、所定のパワーよりも弱い光信号については受信できたとしても無視する。
【0043】
図3は、実施の形態1における光分配器2a,2b,2c及びコネクタ4a,4b,4c,4dの構成及び光分配器2a,2b,2c及びコネクタ4a,4b,4c,4dを介した光信号の送受信を模式的に示す模式図である。
【0044】
光分配器2aは、一側に複数の光入力部20aを有し、他側に複数の光出力部21aを有する。光入力部20a及び光出力部21aの数は問わない。光入力部20aは、光通信線3からの光信号を導入するガイドであり、光出力部21aは、光分配器2a内に伝播された光を接続される光通信線3へ導入するガイドである。1つの光入力部20aに入力された光は、複数の光出力部21a全てから出力される。光出力部21aは受光素子を備えて改めて光を受光して光通信線3へ出力するようにしてもよい。
【0045】
光分配器2aは、2入力2出力の安価な光カプラを12個用いて構成される。12個の光カプラを4つずつ前段(入力側)、中段、後段(出力側)とし、前段の4つの光カプラが夫々有する2つの出力部を、中段4つの光カプラの内の2つの異なる光カプラの一方の入力部へ接続し、中段4つの光カプラ夫々の2つの出力部を更に、後段4つの光カプラの内の2つの異なる光カプラの一方の入力部へ接続する。これにより、前段の4つの光カプラが夫々有する入力部(全部で8つ)の内の1つに入力された光は、中段の光カプラを経由して後段の4つの光カプラへ夫々出力され、後段の4つの光カプラが夫々有する2つの出力部全てから出力される。なお光分配器2aは、円柱又は角柱状の透明樹脂又はガラスなどの透明な材料で形成され、1つの光入力部20aに入力された光は内部全体に伝播し、複数の光出力部21a全てから出力されるようにしてもよい。なお光分配器2aを、前段2つ、後段2つの4つの光カプラを用いて4入力4出力で構成してもよい。
【0046】
光分配器2bは、光分配器2a同様に、一側に複数の光入力部20bを有し、他側に複数の光出力部21bを有する。光分配器2bは、光分配器2a同様に、2入力2出力の安価な光カプラを12個用いて構成され、1つの光入力部20bに入力された光は、複数の光出力部21b全てから出力される。
【0047】
光分配器2cは、光分配器2a同様に、一側に複数の光入力部20cを有し、他側に複数の光出力部21cを有する。光分配器2cは、光分配器2a同様に、2入力2出力の安価な光カプラを12個用いて構成され、1つの光入力部20cに入力された光は、複数の光出力部21c全てから出力される。
【0048】
コネクタ4a,4b,4c,4dは、接続されている光通信線3を伝播してくる光信号をガイドし、他の光通信線3へ導入する。
【0049】
コネクタ4aは、光分配器2aの1つの光出力部21aと、光分配器2bの1つの光入力部20bとの間を接続している。コネクタ4aは内部にフィルタ40a及び光アンプ41aを有する。
フィルタ40aは光学フィルタであり、光入力部20b側の隣接する光分配器2bに接続されている光通信装置10bの光トランシーバ12が送信する光信号の波長の光を遮断(減衰)させる光学フィルタであり、例えば、図中、太い実線で示す550nmの光信号を遮断し、550nmよりも波長が長い光を透過させるLPF(Low Pass Filter)である。
光アンプ41aは内部に受光素子及び発光素子を有する。光アンプ41aでは、波長に関係なく受光素子にて光信号を受光して一旦電気信号へ変換する。光アンプ41aの発光素子は、与えられた電気信号を、光分配器2aに接続されている光通信装置10aの光トランシーバ12が送信する光信号と同一の波長の光信号を出力する。つまり、光アンプ41aは、受光した光信号を、図中の細い実線で示す650nmの波長の光信号へ変換して出力する。仮に、フィルタ4aを650nm及び750nmの光信号がいずれも透過した場合、これらの光信号にて送信される情報は、光アンプ41aを出力後は650nmの光信号で伝達される。
【0050】
コネクタ4bは、光分配器2bの1つの光出力部21bと、光分配器2aの1つの光入力部20aとの間を接続している。コネクタ4bの構成は、コネクタ4aと同様であるが、フィルタ40bは、光入力部20a側の隣接する光分配器2aに接続されている光通信装置10aから送信される光信号の波長の光を遮断(減衰)させる光学フィルタであり、例えば、650nmの光信号を遮断させ、550nm及び750nmの波長の光を透過させるBRF(Band Rejection Filter)である。光アンプ41bの構成は、光アンプ41a同様であるが、光アンプ41bは光分配器2bに接続されている光通信装置10bから送信される光信号の波長の光信号、即ち、550nmの光信号へ変換して出力する。
【0051】
コネクタ4cは、光分配器2bの他の1つの光出力部21bと、光分配器2cの1つの光入力部20cとの間に介装されている。コネクタ4cの構成は、コネクタ4aと同様であるが、フィルタ40cは、光入力部20c側の隣接する光分配器2cに接続されている光通信装置10cから送信される光信号の波長の光を遮断(減衰)する光学フィルタであり、例えば図中、破線で示す750nmの光信号を遮断し、750nmよりも波長が短い光を透過させるHPF(High Pass Filter)である。光アンプ41cの構成は、光アンプ41bと同様であるが、光アンプ41cは光分配器2bに接続されている光通信装置10bから送信される光信号の波長の光信号、即ち、550nmの光信号へ変換して出力する。
【0052】
コネクタ4dは、光分配器2cの他の1つの光出力部21cと、光分配器2bの1つの光入力部20bとの間に介装されている。コネクタ4dの構成は、コネクタ4aと同様であるが、フィルタ40dは、光入力部20b側の隣接する光分配器2bに接続される光通信装置10bから送信される光信号の波長の光を遮断(減衰)する光学フィルタであり、例えば550nmの光信号を遮断し、550nmよりも波長が長い光を透過させるLPF(Low Pass Filter)である。光アンプ41dの構成は、光アンプ41aと同様であるが、光アンプ41dは光分配器2cに接続されている光通信装置10cから送信される光信号の波長の光信号、即ち、750nmの光信号へ変換して出力する。
【0053】
このような構成により、実施の形態1のように車載光通信システムを全て光通信化したとしても、光通信装置10a、光通信装置10b及び光通信装置10cは夫々、CANプロトコルに従った通信が可能である。通信可能であることを具体例にて説明する。
【0054】
まず、光通信装置10aは、自身の処理により得られたデータを他の光通信装置10a、光通信装置10b又は光通信装置10cが使用できるよう、データ信号を送信する場合を考える。データ信号は、650nmの波長の光信号で送信される。この光信号は光通信線3を介して接続されている光分配器2aの1つの光入力部20aに入力される。
【0055】
光分配器2aは、1つの光入力部20aに入力された光信号を全ての光出力部21aから出力する。光分配器2aが有する光出力部21aの内、光分配器2bと接続されていないものは、送信元である光通信装置10aを含む複数の光通信装置10aに接続されている。したがって、光分配器2aに接続されている光通信装置10a全てで送信元からのデータ信号を受信できる。これにより、送信元の光通信装置10aでは、CANコントローラ13が、自身から出力中のデータ信号のアービトレーションフィールドと、入力される受信信号のアービトレーションフィールドとを比較することが可能であり、CANプトロコルに従った通信が実現できる。
【0056】
光分配器2aが有する光出力部21aの内の残りの1つは、他の光分配器2bの光入力部20bへフィルタ40aを内蔵するコネクタ4aを介して接続されている。光出力部21aと、光分配器2bの光入力部20bとの間に介装されているフィルタ40aは、550nmよりも長い波長の光信号を透過させるので、光通信装置10aから送信された光信号の波長(650nm)の光は透過する。そして光アンプ41aは、いずれの波長の光信号をも受光し、650nmの波長の光信号として出力するので、光通信装置10aから送信された光信号は、分配器2bへ到達する。
【0057】
光分配器2bの1つの光入力部20bに入力された光信号は、光分配器2bが有する複数の光出力部21b全てから出力される。複数の光出力部21bの内、光分配器2a及び光分配器2cと接続されているもの以外は、複数の光通信装置10bに夫々光通信線3を介して接続されている。複数の光通信装置10bは夫々、これらの光出力部21bから出力された光信号を波長によらず受信するから、光通信装置10aから送信されて光分配器2bへ到達した650nmの光信号を受信できる。このように、光通信装置10aから送信された光は、光通信装置10bでも受信できる。
【0058】
光分配器2bが有する複数の光出力部21bの内の1つは、フィルタ40cを内蔵するコネクタ4cを介して光分配器2cへ接続されている。光通信装置10aから送信され、光分配器2aから出力され、光アンプ41aにて光電変換を経て到達した光信号(650nm)は、光分配器2bへ入力された後、光分配器2cの光入力部20cと接続されている光出力部21bからも出力される。当該光出力部21bと、光分配器2cの光入力部20cとの間に介装されているフィルタ40cは、750nmよりも短い波長の光信号を透過させるので、光通信装置10aから送信された光信号の波長(650nm)の光は透過する。フィルタ40cを透過した650nmの光信号は、光アンプ41cにて一旦電気信号へ変換された後、光分配器2bに接続された光通信装置10bから送信された光信号と共に550nmの光信号として出力され、光分配器2cへ到達する。
【0059】
光分配器2cの1つの光入力部20cに入力された光信号(550nm)は、光分配器2cが有する複数の光出力部21c全てから出力される。複数の光出力部21cの内、光分配器2bと接続されているもの以外は、複数の光通信装置10cに夫々光通信線3を介して接続されている。複数の光通信装置10cは夫々、これらの光出力部21cから出力された光信号を波長によらず受信するから、光通信装置10aから送信されて光分配器2cへ到達した光信号を受信できる。このように、光通信装置10aから送信された光は、光通信装置10cでも受信できる。
【0060】
また、光分配器2bが有する複数の光出力部21bの内の1つ、詳細には光分配器2aの光出力部21bからの光信号を入力する光入力部20bと対となる光出力部21bは、フィルタ40bを内蔵するコネクタ4bを介して光分配器2aへ接続されている。光通信装置10aから送信され、光分配器2aから出力された光信号は、光分配器2bへ入力された後、他の光信号と区別なく光分配器2bの出力部21bから出力され、再度光分配器2aへ戻ろうとする。しかしながら、光出力部21bと、光入力部20aとの間に介装されているコネクタ4bのフィルタ40bは、650nmの光を遮断し、フィルタ40bの後段には、光アンプ41bが存在する。したがって、光通信装置10aから送信され、光分配器2aから出力された650nmの光信号は、光分配器2bへ入力された後、光分配器2aへ戻ろうとしてもフィルタ40bにてパワーが弱くなり、光アンプ41bにて受光できないので出力されず、光分配器2aへ到達しない。
【0061】
次に、光通信装置10bが、自身の処理により得られたデータを他の光通信装置10b又は光通信装置10a若しくは光通信装置10cが使用できるよう、データ信号を送信する場合を考える。光通信装置10bから送信された光信号(550nm)は、光分配器2bの1つの光入力部20bへ入力し、光分配器2bが有する複数の光出力部21bの全てから出力される。このように、送信元を含む光分配器2bに接続された光通信装置10bにて光通信装置10bからの光信号を受信することが可能である。
【0062】
光通信装置10bが送信した光信号は、光分配器2bが有する複数の光出力部21bから区別なく出力され、フィルタ40bを内蔵するコネクタ4bを介して光分配器2a側へも出力される。フィルタ40bは、650nmの波長の光信号を遮断し、他の波長の光信号は透過させるから、光通信装置10bからの光信号は透過する。したがって、光通信装置10bから送信された光信号は光アンプ41bで一旦光電変換、電光変換を経て650nmの光信号として光分配器2aへ到達する。当該光信号は、光分配器2aの光入力部20aへ入力されて、全ての光出力部21aから出力されるから、光分配器2aに接続する各光通信装置10aは光通信装置10bからの光信号を受信できる。また、光通信装置10bが送信した光信号は、一旦光分配器2aへ到達し、光分配器2aが有する光出力部21aの内、光分配器2bへ接続されている光出力部21aからも出力される。しかしながら、光出力部21aと、光分配器2bの光入力部20bとの間に介装されているコネクタ4aのフィルタ40aは、550nmの光を遮断し、フィルタ40aの後段には、光アンプ41aが存在する。したがって、光通信装置10bからの550nmの光信号は、光分配器2aから光分配器2bへ戻ろうとしてもフィルタ40aにてパワーが弱くなり、光アンプ41aにて受光できないので光分配器2bへ到達しない。
【0063】
また、光通信装置10bが送信した550nmの光信号は、光分配器2bが有する光出力部21bから区別なく出力されるから、フィルタ40bを内蔵するコネクタ4b側のみならず、コネクタ4c側へも出力される。光出力部21bと、光分配器2cの光入力部20cとの間に介装されているフィルタ40cは、750nmよりも短い波長の光信号は透過させるから、光通信装置10bからの光信号は透過する。光通信装置10bから送信された光信号は光アンプ41cで一旦光電変換、電光変換を経て550nmの光信号として光分配器2bへ到達する。当該光信号は、光分配器2cの光入力部20cへ入力されて、全ての光出力部21cから出力されるから、光分配器2cに接続する各光通信装置10cは光通信装置10bからの光信号を受信できる。また、光通信装置10bが送信した光信号は、一旦光分配器2cへ到達し、光分配器2cが有する光出力部21cの内、光分配器2bへ接続されている光出力部21cからも出力される。しかしながら、光出力部21cと、光分配器2bの光入力部20bとの間に介装されているフィルタ40dは、550nmの光を遮断し、フィルタ40dの後段には、光アンプ41dが存在する。したがって、光通信装置10bからの550nmの光信号が光分配器2cから光分配器2bへ戻ろうとしてもフィルタ40dでパワーが弱くなり、光アンプ41dにて受光できないので分配器2bへ到達しない。
【0064】
最後に、光通信装置10cが、自身の処理により得られたデータを他の光通信装置10c又は光通信装置10a若しくは光通信装置10bが使用できるよう、データ信号を送信する場合を考える。光通信装置10cから送信された光信号(750nm)は、光分配器2cの1つの光入力部20cへ入力し、光分配器2cが有する複数の光出力部21cの全てから出力される。これにより、送信元を含む光分配器2cに接続された光通信装置10cにて光通信装置10cからの光信号を受信することが可能である。
【0065】
光分配器2cが有する光出力部21cの内の残りの1つは、他の光分配器2bの光入力部20bへフィルタ40dを内蔵するコネクタ4dを介して接続されている。光出力部21cと、光分配器2bの光入力部20bとの間に介装されているフィルタ40dは、550nmよりも長い波長の光信号を透過させるので、光通信装置10cから送信された光信号の波長(750nm)の光は透過する。したがって、光通信装置10cから送信された光信号は光アンプ41dで一旦光電変換、電光変換を経て750nmの光信号として分配器2bへ到達する。
【0066】
光分配器2bの1つの光入力部20bに入力された750nmの光信号は、光分配器2bが有する複数の光出力部21b全てから出力される。複数の光出力部21bの内、光分配器2a及び光分配器2cと接続されているもの以外は、複数の光通信装置10bに夫々光通信線3を介して接続されている。複数の光通信装置10bは夫々、これらの光出力部21bから出力された光信号を波長によらず受信するから、光通信装置10cから送信されて光分配器2bへ到達した光信号を受信できる。このように、光通信装置10cから送信された光は、光通信装置10bでも受信できる。
【0067】
光分配器2bが有する複数の光出力部21bの内の1つは、フィルタ40bを内蔵するコネクタ4bを介して光分配器2aへ接続されている。光通信装置10cから送信され、光分配器2cから出力された光信号(750nm)は、光分配器2bへ入力された後、光分配器2aの光入力部20aと接続されている光出力部21bからも出力される。当該光出力部21bと、光分配器2aの光入力部20aとの間に介装されているフィルタ40bは、650nmの光を遮断し、他の波長の光信号を透過させる特徴を持つ。したがって、フィルタ40bは光通信装置10cから送信された光信号の波長(750nm)の光は透過する。フィルタ40bを透過した750nmの光信号は、光アンプ41bにて一旦電気信号へ変換された後、光分配器2bに接続された光通信装置10bから送信された光信号と共に550nmの光信号として出力され、光分配器2aへ到達する。
【0068】
光分配器2aの1つの光入力部20aに入力された光信号(550nm)は、光分配器2aが有する複数の光出力部21a全てから出力される。複数の光出力部21aの内、光分配器2bと接続されているもの以外は、複数の光通信装置10aに夫々光通信線3を介して接続されている。複数の光通信装置10aは夫々、これらの光出力部21aから出力された光信号を波長によらず受信するから、光通信装置10cから送信されて光分配器2aへ到達した光信号を受信できる。このように、光通信装置10cから送信された光は、光通信装置10aでも受信できる。
【0069】
また、光分配器2bが有する複数の光出力部21bの内の1つ、詳細には光分配器2cの光出力部21cからの光信号を入力する光入力部20bと対となる光出力部21bは、フィルタ40cを内蔵するコネクタ4cを介して光分配器2cへ接続されている。光通信装置10cから送信され、光分配器2cから出力された光信号は、光分配器2bへ入力された後、他の光信号と区別なく光分配器2bの出力部21bから出力され、再度光分配器2cへ戻ろうとする。しかしながら、コネクタ4cのフィルタ40cは、750nmの光を遮断する。フィルタ40cの後段には、光アンプ41cが存在する。したがって、光通信装置10cから送信され、光分配器2cから出力された光信号は、光分配器2bへ入力された後、光分配器2cへ戻ろうとしてもフィルタ40cでパワーが弱くなり、光アンプ41cにて受光できないので光分配器2cへ到達しない。
【0070】
このように、光分配器2a、光分配器2b及び光分配器2cを接続して、光通信装置10a、光通信装置10b及び光通信装置10cがCANに基づく光信号の送受信ができる。そして、光通信装置10a、光通信装置10b及び光通信装置10cが、夫々異なる波長の光信号を送信し、これに応じて光分配器2a、光分配器2b及び光分配器2cの間にフィルタ40a、フィルタ40b、フィルタ40c及びフィルタ40d、並びに光アンプ41a、光アンプ41b、光アンプ41c及び光アンプ41dを介装することにより、光分配器2a及び光分配器2bの間、並びに光分配器2b及び光分配器2cの間での光信号のループ現象を回避することができる。
【0071】
なお、実施の形態1では各コネクタ4a,4b,4c,4dがいずれもフィルタ40a,40b,40c,40d及び光アンプ41a,41b,41c,41dを備える構成とした。しかしながら、実施の形態1ではこれに限らず、フィルタの構成を変更してもよいし、光アンプを不要としてもよい。
【0072】
図4は、実施の形態1におけるコネクタ4a,4b,4c,4dの変形例の構成を模式的に示す模式図である。
【0073】
図4に示す変形例では、光分配器2bから光分配器2a及び光分配器2bへの接続の間に介装されるコネクタ4b及び4cが夫々、光アンプ41bと光アンプ41cを備えない。また、図4に示す変形例では、光分配器2a及び光分配器2bから光分配器2bへの接続の間に介装されるコネクタ4a及び4dが備えるフィルタの特性が、出力側に接続される光分配器2a,2cに接続される光通信装置10a,10cが送信する光信号の波長のみ透過させる点で異なる。
【0074】
変形例では、光通信装置10cから送信された光信号(図中破線、750nm)は、光分配器2cから光アンプ41dにおける光電変換、電光変換を経て光分配器2bへ入力された後、当該光分配器2bの光出力部21bから出力されてフィルタ40bを透過して光分配器2aの光入力部20aへ750nmの波長のまま到達し、光通信装置10aでも受信できる。更に変形例では、光通信装置10cを送信元とする750nmの光信号は、光分配器2aの光出力部21aからも出力されるが、光分配器2aの光出力部21aの光分配器2bへ接続するコネクタ4aが、光通信装置10aが送信する光信号の波長の光(650nm)のみ透過させるフィルタ42aを用いる構成とするため、光分配器2b及び光分配器2cへ戻らず、ループを回避することができる。
【0075】
同様にして、光通信装置10aから送信された光信号(図中細い実線、650nm)は、光分配器2aから光アンプ41aにおける光電変換、電光変換を経て光分配器2bへ入力された後、当該光分配器2bの光出力部21bから出力されてフィルタ40cを透過して光分配器2cの光入力部20cへ650nmの波長のまま到達し、光通信装置10cでも受信できる。更に変形例では、光通信装置10aを送信元とする650nmの光信号は、光分配器2cの光出力部21cからも出力されるが、光分配器2cの光出力部21cの光分配器2bへ接続するコネクタ4dが、光通信装置10cが送信する光信号の波長の光(750nm)のみ透過させるフィルタ42dを用いる構成とするため、光分配器2b及び光分配器2cへ戻らず、ループを回避することができる。
【0076】
図5は、実施の形態1におけるコネクタ4a,4b,4c,4dの他の変形例の構成を模式的に示す模式図である。
【0077】
図5に示す変形例では、光分配器2bの光出力部21bの光分配器2aへ接続するコネクタ4bの光アンプ41b、及び光分配器2bの光出力部21bの光分配器2cへ接続するコネクタ4cの光アンプ41cが存在しないことに加え、光コネクタ4aでも光アンプ41aを用いず、光コネクタ4dでも光アンプ41dを備えない構成とする。
【0078】
図5に示す例でも、光通信装置10cを送信元とする750nmの光信号は、光分配器2c及び光分配器2bを経て光分配器2aへ到達し、光分配器2aの光出力部21aからも出力されるが、フィルタ42aで遮断されるので、光分配器2b及び光分配器2cへ戻ることはなく、光信号がループすることが回避される。
【0079】
同様に、光通信装置10aを送信元とする650nmの光信号は、光分配器2a及び光分配器2bを経て光分配器2cへ到達し、光分配器2cの光出力部21cからも出力されるが、フィルタ42dで遮断されるので、光分配器2b及び光分配器2aへ戻ることはなく、光信号がループすることが回避される。
【0080】
以上の変形例で示したように、3つの光分配器2a,2b,2cを接続する構成では、光アンプ41a,41b,41c,41dが存在せずとも、3つの異なる波長の光信号を用い、フィルタを適宜選択することにより、光分配器2a及び光分配器2bの間、並びに光分配器2b及び光分配器2cの間での光信号のループを回避して光通信におけるCAN通信を実現することができる。
【0081】
実施の形態1の図1に示したように、光通信ハーネス5a,5b,5cを構成しておき、夫々に光通信装置10a,10a,…、10b,10b,…,10c,10c,…を接続すればよいだけとしておくことで、GWなしにCANに基づく光通信を実現する光通信システムを容易に構築することができる。これにより、電磁ノイズ及びリンギングの影響を抑制しつつ、従来のCANプロトコルに基づく光通信システムを実現することができる。
【0082】
(実施の形態2)
実施の形態1では、3つの光分配器2a,2b,2cを順に接続し、夫々にスター型に光通信装置10a,10a,…、10b,10b,…,10c,10c,…を接続する構成とした。実施の形態2では、3番目の光分配器2cに更に4番目の光分配器2dを接続してシリーズ型とし、光分配器2dに光通信装置10d,10d,…を接続する構成とする。
【0083】
なお、以下の説明では、実施の形態2における車載光通信システムの内、実施の形態1と共通する構成について、実施の形態1と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0084】
図6は、実施の形態2における車載光通信システムの構成を示すブロック図である。実施の形態2における車載光通信システムは、車両1に設置され、複数の光通信装置10a,10a,…、10b,10b,…,10c,10c,…,10d,10d,…と、光分配器2a,2b,2c,2dと、光通信線3,3,…と、コネクタ4a,4b,4c,4d,4e,4fとを備える。光通信ハーネス5a,5bのほか、光分配器2c、光通信線3及びコネクタ4d,4eで光通信ハーネス5cを構成し、光分配器2d、光通信線3及びコネクタ4fで光通信ハーネス5dを構成する。
【0085】
光通信装置10d,10d,…は夫々、光通信線3を介してスター型に光分配器2dに接続されている。
【0086】
光分配器2cには、光通信線3を介してコネクタ4dに加え、光分配器2dと接続するコネクタ4eが接続されている。光分配器2dには、光通信線3を介してコネクタ4fが接続されている。コネクタ4eとコネクタ4fとを接続することにより、光分配器2cに更に光分配器2dが接続されている。
【0087】
光通信線3は、光分配器2cから光分配器2dへの線と、光分配器2dから光分配器2cへの線とで区別されている。
【0088】
図示を省略するが、光通信装置10dは実施の形態1における光通信装置10aと同様の構成を有し、マイクロコンピュータ11と、光トランシーバ12と、CANコントローラ13とを備える。光通信装置10dでも、光トランシーバ12の機能によってマイクロコンピュータ11は従来のCANに基づく入出力つまりCANコントローラ13を利用して通信を行なうことができる。光通信装置10dの光トランシーバ12は、他の光通信装置10a,10b,10cの各光トランシーバ12が送信する光信号の波長の内、光通信装置10aが送信する光信号と同一の波長、即ち650nmの光信号を送信する。なお、光通信装置10dの光トランシーバ12は、光通信装置10a、光通信装置10b及び光通信装置10cのいずれも異なる波長の光信号、即ち450nmの波長の光信号を送信する構成としてもよい。
【0089】
光通信装置10a、光通信装置10b、光通信装置10c及び光通信装置10dの光トランシーバ12は、波長の区別なく光信号を受光し、光信号をデジタル信号Rxに変換してCANコントローラ13へ通知する。ただし、光通信装置10a、光通信装置10b、光通信装置10c及び光通信装置10dの光トランシーバ12はいずれも、所定のパワーよりも弱い光信号については受信できたとしても無視する。
【0090】
図7は、実施の形態2における光分配器2a,2b,2c,2d及びコネクタ4a,4b,4c,4d,4e,4fの構成及び光分配器2a,2b,2c,2d及びコネクタ4a,4b,4c,4d,4e,4fを介した光信号の送受信を模式的に示す模式図である。
【0091】
光分配器2dは、光分配器2a,2b,2cと同様に、一側に複数の光入力部20dを有し、他側に複数の光出力部21dを有する。光分配器2dは、光分配器2a,2b,2cと同様に、2入力2出力の安価な光カプラを12個用いて構成され、1つの光入力部20dに入力された光は、複数の光出力部21d全てから出力される。
【0092】
コネクタ4e,4fは、接続されている光通信線3を伝播してくる光信号をガイドし、他の光通信線3へ導入する。
【0093】
コネクタ4eは、光分配器2cの1つの光出力部21cと、光分配器2dの1つの光入力部20dとの間に介装されている。コネクタ4eは内部にフィルタ40e及び光アンプ41eを有する。
フィルタ40eは、光入力部20d側の隣接する光分配器2dに接続されている光通信装置10dの光トランシーバ12が送信する光信号の波長の光を遮断(減衰)させる光学フィルタであり、例えば、650nmの光信号を遮断し、450nm、550nm及び750nmの波長の光信号を透過させるBRF(Band Rejection Filter)である。
光アンプ41eは光アンプ41a同様に受光素子及び発光素子を有し、いずれの波長の光信号も受光して光電変換し、電気信号を、光分配器2cに接続されている光通信装置10cの光トランシーバ12が送信する光信号の波長の光信号、即ち、750nmの光信号へ変換して出力する。
【0094】
コネクタ4fは、光分配器2dの1つの光出力部21dと、光分配器2cの1つの光入力部20cとの間に介装されている。コネクタ4fは内部にフィルタ40f及び光アンプ41fを有する。フィルタ40fは、光入力部20c側の隣接する光分配器2cに接続されている光通信装置10cの光トランシーバ12が送信する光信号の波長の光を遮断(減衰)させる光学フィルタであり、例えば750nm以上の波長の長い光信号を遮断するHPF(Hi Pass Filter)である。光アンプ41fは光アンプ41a同様に受光素子及び発光素子を有し、いずれの波長の光信号も受光して光電変換し、電気信号を、光分配器2dに接続されている光通信装置10dの光トランシーバ12が送信する光信号の波長の光信号、即ち、650nmの光信号へ変換して出力する。
【0095】
このような構成により、実施の形態2のように車載光通信システムを全て光通信化したとしても、光通信装置10a、光通信装置10b、光通信装置10c及び光通信装置10dは夫々、CANプロトコルに従った通信が可能である。
【0096】
光通信装置10aが送信したデータ信号は、650nmの波長の光信号で送信される。光通信装置10aから送信された光信号は、光分配器2aの光入力部20aに入力され、光分配器2aが有する複数の光出力部20aの内、フィルタ40aが接続されている光出力部20aからも出力され、フィルタ40aを透過して、光アンプ41aにおける光電変換、電光変換を経て光分配器2bへ到達する。光通信装置10aが送信したデータ信号は、650nmの光信号にて光分配器2bでも、光入力部20bに入力されてフィルタ40cが接続されている光出力部21bからも出力され、フィルタ40cを透過する。ここで、650nmの光信号として出力されたデータ信号は、光アンプ41cにて一旦電気信号へ変換された後、光分配器2bに接続された光通信装置10bから送信された光信号と共に550nmの光信号として出力され、光分配器2cへ到達する。光通信装置10aが送信したデータ信号は、光分配器2cでは550nmの光信号で光入力部20cに入力されてフィルタ40eが接続されている光出力部21cからも出力される。当該光出力部21cと、光分配器2dの光入力部20dとの間に介装されているフィルタ40eは、650nmの光を遮断し、他の波長の光信号を透過させるので、光通信装置10aを送信元とするデータ信号である光信号(550nm)はフィルタ40eを透過する。当該光信号は光アンプ41eにて他の光信号と共に750nmの光信号へ変換されて出力され、光分配器2dへ到達する。
【0097】
光分配器2dの1つの光入力部20dに入力された光信号は、光分配器2dが有する複数の光出力部21d全てから出力される。複数の光出力部21dの内、光分配器2cと接続されているもの以外は、複数の光通信装置10dに夫々光通信線3を介して接続されている。複数の光通信装置10dは夫々、これらの光出力部21dから出力された光信号を波長によらず受信するから、光通信装置10aから送信されて光分配器2dへ到達したデータ信号を受信できる。このように、光通信装置10aから送信された光は、光通信装置10dでも受信できる。
【0098】
光通信装置10b及び光通信装置10cから送信された光信号も、光通信装置10aから送信された光信号同様に、光分配器2cの光出力部21c全てから出力される。したがって、光通信装置10b及び光通信装置10cから送信されたデータ信号も、光分配器2dとコネクタ4eを介して接続されている光出力部21cから出力され、650nmの光を遮断するフィルタ40eを透過して、光アンプ41eにおける光電変換、電光変換を経て、750nmの光信号として光分配器2dへ到達する。したがって、光通信装置10b及び光通信装置10cから送信されたデータ信号も、光分配器2dの複数の光出力部21d全てから出力され、光分配器2dに接続されている複数の光通信装置10dで受信できる。
【0099】
光通信装置10dが、自身の処理により得られたデータを他の光通信装置10d、光通信装置10a、光通信装置10b若しくは光通信装置10cが使用できるようデータ信号を送信する場合を考える。光通信装置10dからのデータ信号は、光通信装置10aと同一の650nmの光信号で送信される。光通信装置10dから送信された光信号は、光分配器2dの1つの光入力部20dに入力し、光分配器2dが有する複数の光出力部21dの全てから出力される。これにより、送信元を含む光分配器2dに接続された光通信装置10dにて光通信装置10dからの光信号を受信することが可能である。
【0100】
光通信装置10dが送信した650nmの光信号は、光分配器2dが有する複数の光出力部21dから区別なく出力され、フィルタ40fを内蔵するコネクタ4fを介して光分配器2c側へも出力される。光分配器2dの光出力部21dと、光分配器2cの光入力部20cとの間に介装されるフィルタ40fは、750nmよりも短い波長の光信号を透過させるから、光通信装置10dから送信された光信号の波長(650nm)の光信号はフィルタ40fを透過し、光アンプ41fで一旦光電変換、電光変換を経て光分配器2cへ到達する。
【0101】
光分配器2cの1つの光入力部20cに入力された650nmの光信号は、光分配器2cが有する複数の光出力部21c全てから出力される。したがって、光通信装置10dから送信された光信号は、光分配器2cの光出力部21cに直接的に接続されている光通信装置10cで受信が可能である。そして光通信装置10dから送信された光信号は、光分配器2cから光分配器2b、更に光分配器2aへ、750nm、550nmへと波長を変換されながら到達し、光分配器2bから光通信装置10bでも受信でき、光分配器2aから光通信装置10aでも受信することが可能である。
【0102】
光分配器2cが有する複数の光出力部21cの内の1つ、詳細には光分配器2dの光出力部21dからの光信号を入力する光入力部20cと対となる光出力部21cは、フィルタ40eを内蔵するコネクタ4eを介して光分配器2dへ接続されている。光通信装置10dから送信され、光分配器2dから出力された光信号は、コネクタ4fを経て光分配器2cの光入力部20cへ入力された後、他の光信号と区別なく光分配器2cの光出力部21cから出力され、再度光分配器2dへ戻ろうとする。しかしながら、光出力部21cと、光入力部20dとの間に介装されているコネクタ4eのフィルタ40eは、650nmの光を遮断し、フィルタ40eの後段には、光アンプ41eが存在する。したがって、光通信装置10dから送信され、光分配器2dから出力された650nmの光信号は、光分配器2cへ入力された後、光分配器2dへ戻ろうとしてもフィルタ40eにてパワーが弱くなり、光アンプ41eにて受光できないので出力されず、光分配器2dへ到達しない。
【0103】
また、光通信装置10cから送信され、光分配器2cから出力された750nmの光信号は、コネクタ4eを経て光分配器2dの光入力部20dへ入力された後、他の光信号と区別なく光分配器2dの光出力部21dから出力され、再度光分配器2cへ戻ろうとする。しかしながら、光分配器2dの光出力部21dと、光分配器2cの光入力部20cとの間に介装されているコネクタ4fのフィルタ40fは、750nmの光を遮断し、フィルタ40fの後段には、光アンプ41fが存在する。したがって、光通信装置10cから送信され、光分配器2cから出力された750nmの光信号は、光分配器2dへ入力された後、光分配器2cへ戻ろうとしてもフィルタ40fでパワーが弱くなり、光アンプ41fにて受光できないので出力されず、光分配器2cへ到達しない。
【0104】
このように、光分配器2a、光分配器2b、光分配器2c及び光分配器2dを順にシリーズ型に接続した構成でも、光通信装置10a、光通信装置10b、光通信装置10c及び光通信装置10dは、相互に光信号の送受信ができる。そして、光通信装置10a、光通信装置10b、光通信装置10c及び光通信装置10dが、異なる波長の光信号を送信し、これに応じて光分配器2a、光分配器2b、光分配器2c及び光分配器2dの間にフィルタ40a、フィルタ40b、フィルタ40c、フィルタ40d、フィルタ40e、フィルタ40f及び光アンプ41a、光アンプ41b、光アンプ41c、フィルタ41d、フィルタ41e、フィルタ41fを介装することにより、光分配器2c及び光分配器2dの間でも光信号のループ現象を回避しつつ、且つ、用いる光信号の波長を3種類に抑えて自身の送信した光信号をモニタしてCANプロトコルに基づく通信を実現することができる。更に、光分配器2dの先に更に光分配器を接続することができ、この場合、光分配器に接続される光通信装置は、光分配器2bに接続される光通信装置10bと同一の波長、即ち550nmの波長の光信号を送信するようにし、光分配器2dと新たな光分配器との間をコネクタ4a及びコネクタ4bと同一のコネクタで接続する構成とすればよい。
【0105】
なお、実施の形態2でも各コネクタ4a,4b,4c,4d,4e,4fがいずれもフィルタ40a,40b,40c,40d,40e,40f及び光アンプ41a,41b,41c,41d,41e,41fを備える構成とした。しかしながら、実施の形態2ではこれに限らず、フィルタの構成を変更してもよいし、光アンプを不要としてもよい。
【0106】
図8は、実施の形態2におけるコネクタ4a,4b,4c,4d,4e,4fの変形例の構成を模式的に示す模式図である。
【0107】
図8に示す変形例では、光分配器2bから光分配器2aへ、及び光分配器2cから光分配器2dへの接続の間に介装されるコネクタ4b及び4eが夫々、光アンプ41bと光アンプ41eを備えない。また、図8に示す変形例では、光分配器2aから光分配器2bへ、及び光分配器2dから光分配器2cへの接続の間に介装されるコネクタ4a及び4fが備えるフィルタの特性が、出力側に接続される光分配器2a,2dに接続される光通信装置10a,10dが送信する光信号の波長のみ透過させる点で異なる。
【0108】
変形例では、光通信装置10cから送信された光信号(図中破線、750nm)は、光分配器2cから光アンプ41dにおける光電変換、電光変換を経て光分配器2bへ入力された後、当該光分配器2bの光出力部21bから出力されてフィルタ40bを透過して光分配器2aの光入力部20aへ750nmの波長のまま到達し、光通信装置10aでも受信できる。更に変形例では、光通信装置10cを送信元とする750nmの光信号は、光分配器2aの光出力部21aからも出力されるが、光分配器2aの光出力部21aの光分配器2bへ接続するコネクタ4aが、光通信装置10aが送信する光信号の波長の光(650nm)のみ透過させるフィルタ42aを用いる構成とするため、光分配器2b及び光分配器2cへ戻らず、ループを回避することができる。
【0109】
同様にして、光通信装置10bから送信された光信号(図中太い実線、550nm)は、光分配器2bから光アンプ41cにおける光電変換、電光変換を経て光分配器2cへ入力された後、当該光分配器2cの光出力部21cから出力されてフィルタ40eを透過して光分配器2dの光入力部20dへ550nmの波長のまま到達し、光通信装置10dでも受信できる。更に変形例では、光通信装置10bを送信元とする550nmの光信号は、光分配器2dの光出力部21dからも出力されるが、光分配器2dの光出力部21dの光分配器2bに接続するコネクタ4fが、光通信装置10dが送信する光信号の波長の光(650nm)のみ透過させるフィルタ42fを用いる構成とするため、光分配器2b及び光分配器2cへ戻らず、ループを回避することができる。
【0110】
以上の変形例で示したように、3つの光分配器2a,2b,2cを接続する構成では、光アンプ41a,41b,41e,41fが有さずとも、3つの異なる波長の光信号を用い、フィルタの特性を適宜選択することにより、光分配器2a及び光分配器2bの間、並びに光分配器2c及び光分配器2dの間での光信号のループを回避して光通信におけるCAN通信を実現することができる。
【0111】
実施の形態2の図6に示したように、光通信ハーネス5a,5b,5c,5dを構成しておき、夫々に光通信装置10a,10a,…、10b,10b,…,10c,10c,…,10d,10d,…を接続すればよいだけとしておくことで、GWなしにCANに基づく光通信を実現する光通信システムを容易に構築することができる。これにより、電磁ノイズ及びリンギングの影響を抑制しつつ、従来のCANプロトコルに基づく光通信システムを実現することができる。
【0112】
(実施の形態3)
実施の形態1では、3つの光分配器2a,2b,2cを順に接続し、夫々にスター型に光通信装置10a,10a,…、10b,10b,…,10c,10c,…を接続する構成とした。実施の形態2では、新たな光分配器2dを光分配器2cに接続し、シリーズ型とした。これに対し、実施の形態3では、マスタとなる光分配器8を中心に、光分配器2a,2b,2c,2dをスター型に接続し、各光分配器2a,2b,2c,2dに、光通信装置10a,10a,…、10b,10b,…,10c,10c,…、10d,10d,…を接続する構成とする。
【0113】
なお、以下の説明では、実施の形態3における車載光通信システムの内、実施の形態1及び2と共通する構成について、実施の形態1及び2と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0114】
図9は、実施の形態3における車載光通信システムの構成を示すブロック図である。実施の形態3における車載光通信システムは、車両(図示を省略)に設置され、複数の光通信装置10a,10a,…、10b,10b,…,10c,10c,…,10d,10d,…と、光分配器2a,2b,2c,2d,8と、光通信線3,3,…と、コネクタ6a,6b,6c,6d及びコネクタ8a,8b,8c,8dとを備える。実施の形態3では、光通信ハーネスは光分配器2a、光通信線3、及びコネクタ6aの単位で構成される。
【0115】
光分配器2aには光通信線3を介してコネクタ6aが接続されている。光分配器2bには光通信線3を介してコネクタ6bが接続されている。光分配器2cには光通信線3を介してコネクタ6cが接続されている。光分配器2dには光通信線3を介してコネクタ6dが接続されている。
【0116】
メインとなる光分配器8には、4方向へ接続するコネクタ8a,8b,8c,8dが接続されている。コネクタ6aとコネクタ8aとを接続することにより、光分配器2aと光分配器8とが接続される。同様に、コネクタ6bとコネクタ8bとを接続して光分配器2bと光分配器8とを接続し、コネクタ6cとコネクタ8cとを接続して光分配器2cと光分配器8とが接続される。また、コネクタ6dとコネクタ6dとを接続して光分配器2dと光分配器8とが接続される。
【0117】
実施の形態3における光通信装置10a,10b,10c,10dの光トランシーバ12は夫々、650nm、550nm、750nm、及び450nmの波長の光信号を送信し、波長の区別なくいずれも良好に受信する。
【0118】
図10は、実施の形態3における光分配器2a,2b,2c,2d,8及びコネクタ6a,6b,6c,6d,8a,8b,8c,8dの構成及び光分配器2a,2b,2c,2d,8及びコネクタ6a,6b,6c,6d,8a,8b,8c,8dを介した光信号の送受信を模式的に示す模式図である。
【0119】
光分配器8は、光分配器2a,2b,2c,2d同様、一側に複数の光入力部80を有し、他側に光出力部81を有する。光入力部80及び光出力部81の数は問わない。光入力部80は、光通信線3からの光信号を導入するガイドであり、光出力部81は、光分配器8内に伝播された光を接続される光通信線3へ導入するガイドである。1つの光入力部80に入力された光は、複数の光出力部81全てから出力される。光出力部81は受光素子を備えて改めて光を受光して光通信線3へ出力するようにしてもよい。
【0120】
コネクタ6a,6b,6c,6d及びコネクタ8a,8b,8c,8dは、接続されている光通信線3を伝播してくる光信号をガイドし、他の光通信線3へ導入する。
【0121】
コネクタ6aは、光分配器2aの1つの光出力部21aと、光分配器8の1つの光入力部80との間を接続している。コネクタ6aは内部にフィルタ60a及び光アンプ61aを有する。
フィルタ60aは、光出力部21側の隣接する光分配器2aに接続されている光通信装置10aが送信する光信号の波長の光のみを透過させ、他を遮断する光学フィルタ(Band Pass Filter)であり、例えば、650nmの光信号のみ透過させる。
光アンプ61aは内部に受光素子及び発光素子を有する。受光素子は、いずれの波長の光信号も受光して光電変換する。発光素子は電気信号を、光出力部21aの光分配器2aに接続されている光通信装置10aから送信される光信号と同一の波長の光信号、即ち、650nmの光信号へ変換して出力する。なお、コネクタ6aは、光アンプ61aを有さない構成でもよい。
【0122】
コネクタ6bは、光分配器2bの1つの光出力部21bと、光分配器8の1つの光入力部80との間を接続している。コネクタ6bの構成はコネクタ6aと同様であるが、フィルタ60bは、光出力部21b側の隣接する光分配器2bに接続されている光通信装置10bが送信する光信号の波長の光のみを透過させ、他を遮断する光学フィルタであり、例えば、550nmの光信号のみ透過させる。光アンプ61bの構成は、光アンプ61aと同様であるが、光分配器2bに接続されている光通信装置10bから送信される光信号と同一の波長の光信号、即ち、550nmの光信号へ変換して出力する。なお、コネクタ6bは、光アンプ61bを有さない構成でもよい。
【0123】
コネクタ6cは、光分配器2cの1つの光出力部21cと、光分配器8の1つの光入力部80との間を接続している。コネクタ6cの構成はコネクタ6aと同様であるが、フィルタ60cは、光出力部21c側の隣接する光分配器2cに接続されている光通信装置10cが送信する光信号の波長の光のみを透過させ、他を遮断する光学フィルタであり、例えば、750nmの光信号のみ透過させる。光アンプ61cの構成は、光アンプ61aと同様であるが、光分配器2cに接続されている光通信装置10cから送信される光信号と同一の波長の光信号、即ち、750nmの光信号へ変換して出力する。なお、コネクタ6cは、光アンプ61cを有さない構成でもよい。
【0124】
コネクタ6dは、光分配器2dの1つの光出力部21dと、光分配器8の1つの光入力部80との間を接続している。コネクタ6dの構成はコネクタ6aと同様であるが、フィルタ60dは、光出力部21d側の隣接する光分配器2dに接続されている光通信装置10dが送信する光信号の波長の光のみを透過させ、他を遮断する光学フィルタであり、例えば、450nmの光信号のみ透過させる。光アンプ61dの構成は、光アンプ61aと同様であるが、光分配器2dに接続されている光通信装置10dから送信される光信号と同一の波長の光信号、即ち、450nmの光信号へ変換して出力する。なお、コネクタ6dは、光アンプ61dを有さない構成でもよい。
【0125】
コネクタ8aは、光分配器8の1つの光出力部81と、光分配器2aの1つの光入力部20aとの間を接続している。コネクタ8aは内部にフィルタ82a及び光アンプ83aを有する。
フィルタ82aは、光入力部20a側の隣接する光分配器2aに接続されている光通信装置10aが送信する光信号の波長を遮断し、他の波長の光を透過させる光学フィルタであり、例えば、650nmの光信号のみを遮断するBRF(Band Rejection Filter)である。
光アンプ83aは内部に受光素子及び発光素子を有する。光アンプ83aの受光素子は、いずれの波長の光信号も受光して光電変換する。光アンプ83aの発光素子は、受光素子からの電気信号を、光入力部20a側の光分配器2aに接続されている光通信装置10aから送信される光信号と異なる波長の光信号、例えば、図10の太い実線で示すように、光通信装置10bが送信する光信号と同じ550nmの光信号へ変換して出力する。なお、コネクタ8aは、光アンプ83aを有さない構成としてもよい。
【0126】
コネクタ8bは、光分配器8の1つの光出力部81と、光分配器2bの1つの光入力部20bとの間を接続している。コネクタ8bの構成はコネクタ8aと同様であるが、フィルタ82bは、光入力部20b側の隣接する光分配器2bに接続されている光通信装置10bが送信する光信号の波長を遮断し、他の波長の光を透過させる光学フィルタであり、例えば、550nmの光信号のみを遮断するBRF(Band Rejection Filter)である。光アンプ83bの構成は、光アンプ83aと同様であるが、光アンプ83bは光入力部20b側の光分配器2bに接続されている光通信装置10bから送信される光信号と異なる波長の光信号、例えば、図10の破線で示すように、光通信装置10cが送信する光信号と同じ750nmの光信号へ変換して出力する。なお、コネクタ8bは、光アンプ83bを有さない構成としてもよい。
【0127】
コネクタ8cは、光分配器8の1つの光出力部81と、光分配器2cの1つの光入力部20cとの間を接続している。コネクタ8cの構成はコネクタ8aと同様であるが、フィルタ82cは、光入力部20c側の隣接する光分配器2cに接続されている光通信装置10cが送信する光信号の波長を遮断し、他の波長の光を透過させる光学フィルタであり、例えば、750nm以上の波長の長い光信号を遮断するBRF(Hi Pass Filter)である。光アンプ83cの構成は、光アンプ83aと同様であるが、光アンプ83cは光入力部20c側の光分配器2cに接続されている光通信装置10cから送信される光信号と異なる波長の光信号、例えば、図10の一点鎖線で示すように、光通信装置10dが送信する光信号と同じ450nmの光信号へ変換して出力する。なお、コネクタ8cは、光アンプ83cを有さない構成としてもよい。
【0128】
コネクタ8dは、光分配器8の1つの光出力部81と、光分配器2dの1つの光入力部20dとの間を接続している。コネクタ8dの構成はコネクタ8aと同様であるが、フィルタ82dは、光入力部20d側の隣接する光分配器2dに接続されている光通信装置10dが送信する光信号の波長を遮断し、他の波長の光を透過させる光学フィルタであり、例えば、450nm以下の波長の短い光信号を遮断するLPF(Low Pass Filter)である。光アンプ83dの構成は、光アンプ83aと同様であるが、光アンプ83dは光入力部20d側の光分配器2dに接続されている光通信装置10dから送信される光信号と異なる波長の光信号、例えば、図10の細い実線で示すように、光通信装置10aが送信する光信号と同じ650nmの光信号へ変換して出力する。なお、コネクタ8dは、光アンプ83dを有さない構成としてもよい。
【0129】
このような構成により、実施の形態3のように車載光通信システムを全て光通信化したとしても、光通信装置10a、光通信装置10b、光通信装置10c及び光通信装置10dは夫々、CANプロトコルに従った通信が可能である。
【0130】
光通信装置10aが送信したデータ信号は、650nmの波長の光信号で送信される。光通信装置10aから送信された光信号は、光分配器2aの光入力部20aに入力され、光分配器2aが有する複数の光出力部20aの内、光通信装置10aが接続されている光出力部20aからも出力されるので、送信元を含む光通信装置10aにて受信できる。また、光通信装置10aから送信された光信号は、フィルタ60aが接続されている光出力部20aからも出力され、フィルタ60aを透過し、光アンプ61aにて光電変換、電光変換を経て光分配器8へ到達する。光通信装置10aが送信したデータ信号は、650nmの光信号として光分配器8の光入力部80へ入力されると全ての光出力部81から出力され、フィルタ82bを透過して光アンプ83bにて750nmの光信号へ変換されて光分配器2bへ到達する。同様にして、光通信装置10aが送信し、650nmの光信号として出力された光信号は、光分配器8の光出力部81から、フィルタ82cを透過して光アンプ83cにて450nmの光信号へ変換されて光分配器2cへ、フィルタ82dを透過して光アンプ83dにて650nmの光信号へ変換されて光分配器2dへ到達する。これにより、光通信装置10aが送信したデータ信号は、光分配器2b、光分配器2c及び光分配器2dへ夫々到達するから、夫々の光出力部20b、光出力部20c、及び光出力部20dから出力され、各光通信装置10b、光通信装置10c及び光通信装置10dで受信することができる。
【0131】
光通信装置10bが送信したデータ信号も同様にして、550nmの光信号で出力されてフィルタ61bを透過し、光アンプ61bにおける光電変換、電光変換を経て光分配器8へ到達する。光分配器8へ到達した光信号は、複数の出力部81から出力され、夫々、フィルタ82aを透過して光アンプ83aにて550nmの光信号へ変換されて光分配器2aへ、フィルタ82cを透過して光アンプ83cにて450nmの光信号へ変換されて光分配器2cへ、フィルタ82dを透過して光アンプ83dにて650nmの光信号へ変換されて光分配器2dへ到達する。これにより、光通信装置10bが送信したデータ信号は、光分配器2a、光分配器2b、光分配器2c及び光分配器2dへ夫々到達するから、夫々の光出力部20a、光出力部20c、及び光出力部20dから出力され、各光通信装置10a、光通信装置10c及び光通信装置10dで受信することができる。
【0132】
同様にして、光通信装置10cが送信したデータ信号も、光通信装置10dが送信したデータ信号も、光通信装置10a,…,10b,…,10c,…,10d,…で受信することができる。
【0133】
実施の形態3でも、フィルタ60a,60b,60c,60d及びフィルタ82a,82b,82c,82d、更には光アンプ61a,60b,60c,60d及び光アンプ83a,83b,83c,83dにより、光信号が無用にループする現象を回避することができる。
【0134】
光分配器8が有する光出力部81と、光分配器2aの光入力部20aとの間に介装されているフィルタ82aは、650nmの光信号を遮断するから、光通信装置10aから送信され、分配器2aから出力された光信号が、光分配器8を経由して光分配器2aへ戻ろうとしても、後段の光アンプ83aで受光されず、550nmの光信号として出力されないので光分配器2aへ戻らない。同様にして、光通信装置10bから送信され、分配器2bから出力された光信号が、光分配器8の光出力部81から光分配器2bへ戻ろうとしても、フィルタ82bにて遮断され、光アンプ83bで受光されないので出力されず、光分配器2bへ戻らない。光通信装置10cから送信され、分配器2cから出力された光信号が、光分配器8の光出力部81から光分配器2cへ戻ろうとしても、フィルタ82cにて遮断され、光アンプ83cで受光されないので出力されず、光分配器2cへ戻らない。光通信装置10dから送信され、分配器2dから出力された光信号が、光分配器8の光出力部81から光分配器2dへ戻ろうとしても、フィルタ82dにて遮断され、光アンプ83dで受光されないので出力されず、光分配器2dへ戻らない。
【0135】
同様にして、光分配器8の複数の光出力部81から出力された各光信号は、各光分配器2a,2b,2c,2dへ到達して各光出力部21a,21b,21c,21dから出力されても、夫々フィルタ60a,60b,60c,60dで遮断され、後段の光アンプ61a,61b,61c,61dで受光されないので出力されず、光分配器8へ戻らない。
【0136】
このように、光分配器2a、光分配器2b、光分配器2c及び光分配器2dを、光分配器8を中心にスター型に接続した構成でも、光通信装置10a、光通信装置10b、光通信装置10c及び光通信装置10dは、相互に光信号の送受信ができる。そして、光通信装置10a、光通信装置10b、光通信装置10c及び光通信装置10dが、夫々異なる波長の光信号を送信し、これに応じて光分配器2a、光分配器2b、光分配器2c及び光分配器2dと、分配器8との間にフィルタ60a、フィルタ60b、フィルタ60c及びフィルタ60d、光アンプ61a、光アンプ61b、光アンプ61c及び光アンプ61d、並びにフィルタ82a、フィルタ82b、フィルタ82c及びフィルタ82d、更に、光アンプ83a、光アンプ83b、光アンプ83c及び光アンプ83dを介装することにより、光信号のループ現象を回避しつつ、自身の送信した光信号をモニタしてCANプロトコルに基づく通信を実現することができる。
【0137】
なお、実施の形態3の構成では、いずれのコネクタ6a,6b,6c,6d及び8a,8b,8c,8dは、光アンプを有さない構成としてもよいとした。各分配器2a,2b,2c,2dから分配器8へ到達して出力される光信号はフィルタ82a、フィルタ82b、フィルタ82c及びフィルタ82dにて遮断されてパワーが弱まるので、各光通信装置10a,10a,…、10b,10b,…,10c,10c,…,10d,10d,…で受信できずにループを回避できる。また、分配器8から各分配器2a,2b,2c,2dへ到達して出力される光信号は、フィルタ60a、フィルタ60b、フィルタ60c及びフィルタ60dにて遮断されてパワーが弱まる。
【0138】
実施の形態3の図9に示したように、光分配器2a(2b,2c又は2d)、光分配器8、光通信線3、コネクタ6a(6b,6c又は6d)、及びコネクタ8a(8b,8c又は8d)にて光通信ハーネスを構成しておき、夫々に適宜光通信装置10a,10a,…(10b,10b,…,10c,10c,…,又は10d,10d,…)を接続すればよいだけとしておくことで、GWなしにCANに基づく光通信を実現する光通信システムを容易に構築することができる。これにより、電磁ノイズ及びリンギングの影響を抑制しつつ、従来のCANプロトコルに基づく光通信システムを実現することができる。
【0139】
(実施の形態4)
実施の形態1では、各フィルタ40a,40b,40c,40d及び光アンプ41a,41b,41c,41dは、光通信線3が接続されるコネクタ4a,4b,4c,4d内に含まれる構成とした。これに対し、実施の形態4では、各フィルタ40a,40b,40c,40d及び光アンプ41a,41b,41c,41dを光分配器2a,2b,2cと一体化させた構成とする。
【0140】
実施の形態4における車載光通信システムの構成は、実施の形態1における構成と同様である。ただし、光分配器2a及びコネクタ4aに代替して、光分配装置7aとフィルタ40a及び光アンプ41aを備えないコネクタとを含み、光分配器2b及びコネクタ4b,4cに代替して、光分配装置7bとフィルタ40b,40c及び光アンプ41b,41cを備えないコネクタとを含み、光分配器2c及びコネクタ4dに代替して、光分配装置7cとフィルタ40d及び光アンプ41dを備えないコネクタとを含む構成とする。
【0141】
図11は、実施の形態4における車載光通信システムの構成を示すブロック図である。実施の形態4における車載光通信システムは、車両1に設置され、複数の光通信装置10a,10a,…、10b,10b,…,10c,10c,…と、光分配装置7a,7b,7cと、光通信線3,3,…とを備える。光分配器7a及び光通信線3で光通信ハーネス9aを構成し、光分配器7b及び光通信線3で光通信ハーネス9bを構成し、光分配器7c及び光通信線3で光通信ハーネス9cを構成する。なお図11では、実施の形態4における光分配装置7a,7b,7c間のコネクタの図示を省略した。
【0142】
複数の光通信装置10a,10a,…は夫々光通信線3を介して、スター型に光分配装置7aに接続されている。複数の光通信装置10b,10b,…も同様に夫々光通信線3を介してスター型に光分配装置7bに接続されている。複数の光通信装置10b,10b,…も同様に夫々光通信線3を介してスター型に光分配装置7cに接続されている。光分配装置7a、光分配装置7b及び光分配装置7cは相互に、光通信線3を介して接続されている。光分配装置7a,7b,7c間を接続する光通信線3は、光分配装置7aから光分配装置7bへの線と、光分配装置7bから光分配装置7aへの線とで区別され、光分配装置7bから光分配装置7cへの線と、光分配装置7cから光分配装置7bへの線とで区別されている。
【0143】
図12は、実施の形態4における光分配装置7aの構成を示すブロック図である。光分配装置7a及び光分配装置7cの構成は同様であるので、以下では光分配装置7aについて詳細を説明し、光分配装置7cの詳細な説明は省略する。
【0144】
光分配装置7aは、光分配器70aとフィルタ74aと光アンプ75aとを備える。
【0145】
光分配器70aは実施の形態1における光分配器2aと同様に、2入力2出力の安価な光カプラを複数用いて構成され、一側に複数の光入力部71aを有し、他側に複数の光出力部72aを有する。光分配器70aは、円柱又は角柱状の透明樹脂又はガラスなどの透明な材料で形成されてもよい。光分配器70aの複数の光入力部71aは、光通信装置10aと接続されるように、接続端子と光通信線を介して接続されており、残りの1つは、他の光分配装置7bと接続されるように端子73aと光通信線を介して接続されている。複数の光出力部72aの内の1つは、フィルタ74aに接続されており、他の光出力部72aは、光通信装置10aと接続されるように接続端子と光通信線を介して接続されている。
【0146】
フィルタ74aは光学フィルタである。フィルタ74aは実施の形態1におけるフィルタ40aと同一であり、光出力部72a側の光分配装置7aに接続される光通信装置10aが送信する光信号の波長(650nm)の光を透過させ、光入力部側の光分配装置7bに接続される光通信装置10bが送信する光信号の波長(550nm)の光を遮断するLPF(low Pass Filter)である。
【0147】
光アンプ75aはフィルタ74aを透過してきた光を受光して光電変換し、電気信号を再度電光変換して出力し、光分配装置7bと接続されるように端子76aと接続されている。光アンプ75aは、実施の形態1における光アンプ41aと同一であり、受光素子にて波長に関係なく光信号を受光して光電変換し、受光素子から得られた電気信号を、光出力部72a側の光分配装置7aに接続される光通信装置10aが送信する光の波長(650nm)の光信号を出力する。
【0148】
図示しないが、光通信装置10cに接続される光分配装置7cに内蔵されるフィルタ74cは、実施の形態1におけるフィルタ40dと同一であり、光分配装置7cに接続される光通信装置10cが送信する光信号の波長(750nm)の光を透過させ、光分配装置7bに接続される光通信装置10bが送信する光信号の波長(550nm)の光を遮断するLPF(Low Path Filter)である。
【0149】
図13は、実施の形態4における光分配装置7bの構成を示すブロック図である。
【0150】
光分配装置7bは、光分配器70bとフィルタ74b及び光アンプ75bとフィルタ76b及び光アンプ77bとを備える。
【0151】
光分配器70bは実施の形態1における光分配器2bと同様に、2入力2出力の安価な光カプラを複数用いて構成され、一側に複数の光入力部71bを有し、他側に複数の光出力部72bを有する。光分配器70bは、円柱又は角柱状の透明樹脂又はガラスなどの透明な材料で形成されてもよい。光分配器70bの複数の光入力部71bは、光通信装置10bと接続されるように、接続端子と光通信線を介して接続されている。複数の光入力部71bは、他の光分配装置7aと接続されるように端子73bと光通信線を介して接続されている。複数の光出力部72bの内の1つは、フィルタ74aに接続されており、他の1つはフィルタ76bに接続されている。他の光出力部72bは、光通信装置10bと接続されるように接続端子と光通信線を介して接続されている。
【0152】
フィルタ74bは光学フィルタであり、後段の光アンプ75bを介し、光分配装置7aと接続されるように端子78aと光通信線を介して接続されている。フィルタ74bは実施の形態1におけるフィルタ40bと同一であり、光分配装置7aに接続される光通信装置10aが送信する光信号の波長(650nm)の光を遮断するBRF(Band Rejection Filter)である。
【0153】
光アンプ75bは、フィルタ74bを透過してきた光を受光して光電変換し、電気信号を再度電光変換して出力し、光分配装置7aと接続されるように端子78bと接続されている。光アンプ75bは、実施の形態1における光アンプ41bと同一であり、光出力部72b側の光分配装置7bに接続される光通信装置10bが送信する光信号の波長(550nm)へ変換して出力する。
【0154】
フィルタ76bは光学フィルタであり、後段の光アンプ77bを介し、光分配装置7cと接続されるように端子78bと光通信線を介して接続されている。フィルタ76bは実施の形態1におけるフィルタ40cと同一であり、光分配装置7cに接続される光通信装置10cが送信する光信号の波長(750nm)の光を遮断するHPF(High Pass Filter)である。
【0155】
光アンプ77bは、フィルタ76bを透過してきた光を受光して光電変換し、電気信号を再度電光変換して出力し、光分配装置7cと接続されるように端子78bと接続されている。光アンプ77bは、実施の形態1における光アンプ41cと同一であり、光出力部72b側の光分配装置7bに接続される光通信装置10bが送信する光信号の波長(550nm)へ変換して出力する。
【0156】
このように構成される光分配装置7a、光分配装置7b及び光分配装置7cを、光通信線3によって端子73aと端子78bと、端子76aと端子73bとで接続し、端子78bと端子73c、端子73bと端子76cとで接続し、光分配装置7aの接続端子に光通信装置10a,10a,…を、光分配装置7bの接続端子に光通信装置10b,10b,…、光分配装置7cの接続端子に光通信装置10c,10c,…を接続する。これにより、実施の形態1における図3に示した構成と同様の構成となり、光通信装置10a、光通信装置10b及び光通信装置10c間で、光信号によるCANに基づく信号の送受信ができると共に、フィルタ74a、フィルタ74b、フィルタ76b及びフィルタ74c、並びに光アンプ75a、光アンプ75b、光アンプ77b及び光アンプ75cを備えることで光分配装置7a及び光分配装置7b間、並びに光分配装置7b及び光分配装置7c間での光信号のループ現象を回避することができる。
【0157】
実施の形態4の図11に示したように、光通信ハーネス9a,9b,9cを構成しておき、夫々に光通信装置10a,10a,…、10b,10b,…、10c,10c,…を接続すればよいだけとしておくことで、GWなしにCANに基づく光通信を実現する光通信システムを容易に構築することができる。これにより、電磁ノイズ及びリンギングの影響を抑制しつつ、従来のCANプロトコルに基づく光通信システムを実現することができる。
【0158】
次に、実施の形態1乃至4に示した車載光通信システムにて実現できる通信速度について考察する。従来の電気通信線に基づくCAN通信では、実現される通信速度は1Mbpsまでであった。以下、実施の形態1乃至4の内、特に実施の形態1における車載光通信システムにおいて、通信速度を2Mbpsとしても通信が成立するか否かを考察する。
【0159】
図14は、CANにおけるビットタイミングを示す説明図である。光通信装置10aのCANコントローラ13が送受信するデジタルデータ信号の単位である1ビットは、N個のTQ(Timing Quanta)で構成される。1個のTQは、マイクロコンピュータ11が内蔵するCANモジュールへのクロック周波数及びボーレートプリスケーラ分周値で決まる。
【0160】
図14中のサンプリングポイントとは、1ビットを構成するタイムセグメント(複数個のTQ)で決まり、各ビットをサンプリングするポイントである。トランシーバ12は、1ビットの先頭に存在するシンクロナイゼーションセグメントから1つ目のタイミングセグメントが終わる時点で、1ビットが0なのか1なのかのサンプリングを行なう。以下の考察では、先頭からサンプリングポイントまでの長さをTsamplingとし、サンプリングポイントまでのTQの数をTsとする。なお、通信速度が2Mbpsの場合1ビットは500ナノ秒(ns)である。
【0161】
2MbpsでのCAN通信が成立するための条件は、以下のように、
dall<Tsampling
が成立する必要がある。ここで、Tdallは1つの光通信装置10aから他の光通信装置10a,10b,10cで受信するまでの総遅延時間であり、以下の式(1)にて求められる。なお、Lは通信経路の最大バス長であり、Tdfotは、1回の光電変換による遅延時間であり、Nfot は最も離れた光通信装置10aと光通信装置10cとの間の光電変換が行なわれる数である。
【0162】
【数1】

【0163】
式(1)における(500/N)の項は、光通信装置10a,10b,10c間のクロックのズレを考慮した項であり、最後の2倍の項は、CANではACKの受信を送信元で確認するために考慮される項である。
【0164】
式(1)における光電変換の数Nfot は、光通信システムの構成による。実施の形態1に示したように各コネクタ4a,4b,4c,4d全てに光アンプ41a,41b,41c,41dが含まれる場合(図3)と、コネクタ4bと4cには光アンプ41b及び光アンプ41cが含まれない場合(図4)とが考えられる。
【0165】
まず、実施の形態1の図3に示したように各コネクタ4a,4b,4c,4d全てに光アンプ41a,41b,41c,41dが含まれる場合を考える。図15は、光通信装置間10a,10c間に介在する複数の装置の接続の例を模式的に示す模式図である。実施の形態1における光通信システムでの通信速度の考察のためには、図15に示すように、最も離れた光通信装置10aと光通信装置10cとの間での通信遅延について考えればよい。光通信装置10aから光通信装置10cまでの間には、光分配器2a、光アンプ41a、光分配器2b、光アンプ41c、及び光分配器2cが介在する。図15中、黒丸印にて、光電変換が行なわれる箇所を示す。光電変換は、光通信装置10aでの送信時点、光アンプ41aの入出力時点、光アンプ41cの入出力時点、及び光通信装置10cでの受信時点で行なわれる。つまり、当該構成での光電変換の数Nfot は「6」である。光電変換の数Nfot は「6」である場合に、2Mbpsでの通信が成立する場合の例を表に示して説明する。
【0166】
図16は、図15に示した光通信装置10a,10c間における通信可能範囲の限界を示す説明図である。図16は、1ビットが16TQである場合(Ns=13)に、通信が成立する最大バス長Lと、1回の光電変換による遅延時間Tdfotとの条件を示している。
【0167】
図16に示すように、1回の光電変換による遅延時間Tdfotを20nsに抑えられる場合は、最大バス長Lは10mまでCAN通信が成立する。遅延時間Tdfotが25nsとなる場合は、最大バス長Lは4mまででしかCAN通信は成立しない。遅延時間Tdfotが30nsとなる場合は、最大バス長Lは1mでもCAN通信は成立しない。
【0168】
図17は、図15に示した光通信装置10a,10c間における通信可能範囲の限界の他の例を示す説明図である。図17は、1ビットが20TQである場合(Ns=17)に、通信が成立する最大バス長Lと、1回の光電変換による遅延時間Tdfotとの条件を示している。
【0169】
図17に示すように、1回の光電変換による遅延時間Tdfotを20nsに抑えられる場合は、最大バス長Lは10mまでCAN通信が成立する。遅延時間Tdfotが25nsとなる場合は、最大バス長Lは7mまでCAN通信が成立する。遅延時間Tdfotが30nsとなる場合は、最大バス長Lは1mまでしかCAN通信は成立しない。遅延時間Tdfotが35nsとなる場合は、最大バス長Lは1mでもCAN通信は成立しない。
【0170】
光電変換の数Nfot を減じることにより、遅延時間Tdfotはより長いものが許される。したがって次に、図4に示したように、コネクタ4bとコネクタ4cには光アンプ41b及び光アンプ41cが含まれない場合、即ちコネクタ4a及びコネクタ4dのみ光アンプ41a及び光アンプ41dを有する場合を考える。
【0171】
図18は、光通信装置間10a,10c間に介在する複数の装置の接続の他の一例を模式的に示す模式図である。光通信装置10aから光通信装置10cまでの間には、光分配器2a、光アンプ41a、光分配器2b、及び光分配器2cが介在する。図18中、黒丸印にて、光電変換が行なわれる箇所を示す。光電変換は、光通信装置10aでの送信時点、光アンプ41aの入出力時点、及び光通信装置10cでの受信時点で行なわれる。つまり、当該構成での光電変換の数Nfot は「4」である。光電変換の数Nfot は「4」である場合に、2Mbpsでの通信が成立する場合の例を表に示して説明する。
【0172】
図19は、図18に示した光通信装置10a,10c間における通信可能範囲の限界を示す説明図である。図16は、1ビットが16TQである場合(Ns=13)に、通信が成立する最大バス長Lと、1回の光電変換による遅延時間Tdfotとの条件を示している。
【0173】
図19に示すように、1回の光電変換による遅延時間Tdfotを30nsまでに抑えられる場合は、最大バス長Lは10mまでCAN通信が成立する。遅延時間Tdfotが35nsとなる場合は、最大バス長Lは7m以上でCAN通信は成立しなくなる。遅延時間Tdfotが40nsとなる場合は、最大バス長Lは2mまでしかCAN通信は成立しない。遅延時間Tdfotが45nsとなる場合は、最大バス長Lは1mでもCAN通信は成立しない。
【0174】
図20は、図18に示した光通信装置10a,10c間における通信可能範囲の限界の他の例を示す説明図である。図20は、1ビットが20TQである場合(Ns=17)に、通信が成立する最大バス長Lと、1回の光電変換による遅延時間Tdfotとの条件を示している。
【0175】
図20に示すように、1回の光電変換による遅延時間Tdfotを30nsまでに抑えられる場合は、最大バス長Lは10mまでCAN通信が成立する。遅延時間Tdfotが35nsとなる場合は、最大バス長Lは9mまでCAN通信が成立する。遅延時間Tdfotが40nsとなる場合は、最大バス長Lは5mまでしかCAN通信は成立しない。遅延時間Tdfotが45nsとなる場合は、最大バス長Lは1mまでしかCAN通信は成立しない。遅延時間Tdfotが50nsとなる場合は、最大バス長Lは1mでもCAN通信は成立しない。
【0176】
このように、光通信を用いることにより、1回の光電変換による遅延時間Tdfotを20ns又は30ns程度に抑えられる光電変換素子を用いて、最大バス長を10mとしても2MbpsでCAN通信を実現することができる。しかも、各光通信装置10a,…,10b,…,10c,…,10d,…におけるマイクロコンピュータ11のCANコントローラ13の機能はそのまま変更せずに使用できる点、非常に有用である。
【0177】
実施の形態1乃至4は、CANに基づく光通信ができるシステムについて説明した。しかしながら本発明はCANに限定するものではなく、通信線へ送信されている信号、特に自分自身が送信する信号をも含めて常時監視し、衝突を検知するプロトコルに基づく通信を光信号にて実現するシステム全般に適用できる。
【0178】
また実施の形態1乃至4では、車載ネットワークに適用した例について説明した。しかしながら本発明は、車載に限定するものではなく、FA(Factory Automation)などのCAN通信への適用も可能である。
【0179】
なお、開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0180】
10a,10b,10c,10d 光通信装置
2a,2b,2c,2d,8 光分配器
20a,20b,20c,20d,80 光入力部
21a,21b,21c,21d,81 光出力部
3 光通信線
40a,40b,40c,40d,40e,40f フィルタ
41a,41b,41c,41d,41e,41f 光アンプ(変換部)
5a,5b,5c,5d 光通信ハーネス
60a,60b,60c,60d フィルタ
61a,61b,61c,61d 光アンプ(変換部)
82a,82b,82c,82d フィルタ
83a,83b,83c,83d 光アンプ(変換部)
7a,7b,7c,7d 光分配装置
74a,74b,76b,74c フィルタ
75a,75b,77b,75c フィルタ
9a,9b,9c,9d 光通信ハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光入力部及び複数の光出力部を有し、1つの光入力部から入力された光を、複数の光出力部へ分配して出力し、相互に光入力部及び光出力部で接続された少なくとも3つの光分配器と、
各光分配器にスター型に接続され、前記光分配器の光入力部へ光信号を送信し、前記光分配器の光出力部から光信号を受信する複数の光通信装置と
を備え、
各光通信装置が送信する光信号の波長は、接続されている光分配器別に異なるようにしてあり、
各光分配器が相互に接続される光入力部及び光出力部の間に、光入力部側の光分配器に接続される光通信装置が送信する光信号の波長の光を遮断するフィルタ、該フィルタを透過した光信号を前記波長と異なる波長の光信号へ変換する変換部、又は、光出力部側の光分配器に接続される光通信装置が送信する光信号の波長の光のみを透過させるフィルタが介装されていること
を特徴とする光通信システム。
【請求項2】
複数の光入力部及び複数の光出力部を夫々有し、1つの光入力部から入力された光を、複数の光出力部へ分配して出力し、相互に光入力部及び光出力部で順列に接続された第1、第2、第3及び第4の光分配器と、
第1、第2、第3及び第4の光分配器夫々にスター型に光通信線を介して接続され、前記光分配器の光入力部へ夫々第1、第2、第3又は第4の波長の光信号を送信し、前記光分配器の光出力部から光信号を受信する複数の第1、第2、第3及び第4の光通信装置と
を備え、
第1、第2、第3及び第4の光通信装置は、接続されている光分配器別に、夫々異なる第1、第2、第3及び第4の波長の光信号を送信するようにしてあり、
第1及び第4光分配器の各1つの光出力部と、該各1つの光出力部に夫々接続された他の光分配器の光入力部の間に介装され、夫々前記他の光分配器に接続されている光通信装置が送信する光信号の波長の光を遮断するフィルタと、
第2の光分配器の各1つの光出力部と、該各1つの光出力部に接続された他の光分配器の光入力部の間に夫々介装され、夫々前記他の光分配器に接続されている光通信装置が送信する光信号の波長の光を遮断するフィルタ及び該フィルタを透過した光信号を第2の波長の光信号へ変換する変換部と、
第3の光分配器の各1つの光出力部と、該各1つの光出力部に接続された他の光分配器の光入力部の間に夫々介装され、夫々前記他の光分配器に接続されている光通信装置が送信する光信号の波長の光を遮断するフィルタ及び該フィルタを透過した光信号を第3の波長の光信号へ変換する変換部と
を備えることを特徴とする光通信システム。
【請求項3】
複数の光入力部及び複数の光出力部を夫々有し、1つの光入力部から入力された光を、複数の光出力部へ分配して出力し、相互に光入力部及び光出力部で順列に接続された第1、第2及び第3の光分配器、並びに第2の光分配器に相互に光入力部及び光出力部で接続された第4の光分配器と、
第1、第3及び第4の光分配器夫々にスター型に光通信線を介して接続され、前記光分配器の光入力部へ夫々第1、第3及び第4の波長の光信号を送信し、前記光分配器の光出力部から光信号を受信する複数の第1、第3及び第4の光通信装置と
を備え、
第1、第3及び第4の光通信装置は、接続されている光分配器別に、夫々異なる第1、第3及び第4の波長の光信号を送信するようにしてあり、
第1、第3及び第4の光分配器の各1つの光出力部と、該各1つの光出力部に接続された第2光分配器の光入力部との間に介装され、第1、第3及び第4の波長の光のみを透過するフィルタと、
第2光分配器の複数の光出力部と、各光出力部に接続された第1、第3及び第4光分配器の光入力部の間に夫々介装され、第1、第3及び第4の波長の光を夫々遮断するフィルタ及び該フィルタを透過した光信号を光入力部側に接続された光分配器に接続されている光通信装置が送信する光信号と異なる波長の光信号へ変換する変換部と
を更に備えることを特徴とする光通信システム。
【請求項4】
前記光通信装置は、
送信中の光信号と受信中の光信号とを比較し、送信の成功の可否を判断する手段を備えること
を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光通信システム。
【請求項5】
前記光通信装置は、CANプロトコルに基づき光信号を送受信するようにしてあること
を特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の光通信システム。
【請求項6】
前記光通信装置は、2Mbps以下の通信速度にて情報の送受信を行なうこと
を特徴とする請求項5に記載の光通信システム。
【請求項7】
複数の光入力部及び複数の光出力部を有し、1つの光入力部から入力された光を、複数の光出力部へ分配して出力し、相互に光入力部及び光出力部で接続された少なくとも3つの光分配器と、
前記複数の光入力部及び光出力部の内の任意の光入力部及び光出力部に夫々接続される光通信線と
を備え、
各光分配器が相互に接続される光入力部及び光出力部の間に、光入力部側の光分配器に接続される光通信装置が送信する光信号の波長の光を遮断するフィルタ、該フィルタを透過した光信号を前記波長と異なる波長の光信号へ変換する変換部、又は、光出力部側の光分配器に接続される光通信装置が送信する光信号の波長の光のみを透過させるフィルタが介装されていること
を特徴とする光通信ハーネス。
【請求項8】
前記フィルタは、光通信線の他の光分配器への接続コネクタ内部に設けられていること
を特徴とする請求項7に記載の光通信ハーネス。
【請求項9】
複数の光入力部及び複数の光出力部を有し、1つの光入力部から入力された光を、複数の光出力部へ分配して出力する光分配器と、
前記複数の光出力部夫々に接続され、相異なる波長の光を遮断する複数のフィルタ、該フィルタを透過した光信号を前記波長と異なる波長の光信号へ変換する変換部、又は、光出力部側の光分配器に接続される光通信装置が送信する光信号の波長の光のみを透過させるフィルタと
を備えることを特徴とする光分配装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−10101(P2012−10101A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144165(P2010−144165)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】