説明

光部品及びその製造方法並びに光通信モジュール

【課題】接続される光素子を交換可能とした光部品
【解決手段】プレート1p上に、フィルム状の透明部材10と、波長選択性ミラー20、レセプタクル15a及び15bを配置し(3.A)、シリコンゴム枠2srで4面を囲い(3.B)、光硬化性樹脂液40を充填する(3.C)。コネクタ16a、16bをそれぞれに接続した光ファイバ30a、30bを用いて、硬化光を光硬化性樹脂液40に照射する(3.D)。硬化物41が波長選択性ミラー20を分岐点として、フィルム状の透明部材10並びにレセプタクル15a及び15bを接合する(3.E)。未硬化の光硬化性樹脂液40を除去し(3.F)、光硬化性樹脂液45から成るクラッド材を充填し、光硬化させ、クラッド45cを形成する(3.G)。波長選択性ミラー20を分岐点としたコア41により、フィルム状の透明部材10、レセプタクル15a及び15bが接合され、クラッド45cにより覆われた、光部品200が得られる(3.H)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本願出願人らによる、自己形成光導波路に関する。自己形成光導波路とは、未硬化の光硬化性樹脂に硬化光を照射し、硬化物により硬化光が集光されることで自己形成的に軸状に硬化物を得てコアとした光導波路である。
【背景技術】
【0002】
本願出願人らは、液状の未硬化の光硬化性樹脂(以下、単に光硬化性樹脂液と言う)を充填した透明筐体に光ファイバを挿入し、当該光ファイバから光硬化性樹脂液に硬化光を照射して、軸状のコアを形成する技術を開発し、多数報告している。これらは、完成品としては、透明筐体に光ファイバが挿入され、形成されたコアと、それを覆うクラッドとが当該透明筐体内部に保持されるものを基本としている。形成されたコア端に、例えば受発光素子(受光素子及び発光素子を包括的に言うもの。以下同じ)を結合させれば、光ファイバを介して光通信が可能である。本願出願人らは、コア形成の際にミラー、ハーフミラー、波長選択性ミラー(フィルタ、例えば所望に設計された誘電体多層膜)に向けてコアを成長させることで、ミラーによる90度屈曲したコアや、分岐コアを有し、複数個の受発光素子と結合させた、光ファイバとの複数波長による光通信モジュールについても報告している。
【0003】
一方、上記構成では、透明筐体と内部に保持されるクラッド及びコアとの膨張率の差による、高温高湿下におけるコアの断裂又はコア端の透明筐体及び光ファイバ端からの剥離が問題であるとして、下記特許文献1による解決方法が報告されている。特許文献1に記載の技術は、従来、透明筐体中にコア形成用の光硬化性樹脂液を保持して光ファイバ端から所望の透明筐体面までコアを形成した点を改め、コア形成用の光硬化性樹脂液を適当な保持部材中に保持し、光ファイバ端から受発光素子までコアを形成するものである。これにより、光ファイバ端からコアにより接続された受発光素子までを、コア形成用の保持部材から取り外して、例えば洗浄の後、それら全体をクラッド材で覆い、例えば硬化させる。これにより、透明筐体を用いないで光通信モジュールが形成されるので、膨張率の差の問題は解消される。コアが光ファイバ端や受発光素子から剥離する可能性は小さいので、高温高湿下でも使用に耐えうる光通信モジュールを構成できる。
【0004】
特許文献1の技術の概略を図5.Aに示す。光硬化性樹脂液40を配置するための領域2を有する型1に、光ファイバ30、波長選択性ミラー20、受発光素子50a及び50bを配置させる。型1における各部材の配置は次の通りである。光ファイバ30は外部から挿入され、少なくともそのコア30cの端面30cfが、型1の領域2内部で光硬化性樹脂液40に接する。波長選択性ミラー20は、形成されるコアの分岐点となる部分が、型1の領域2内部で光硬化性樹脂液40に接する。受発光素子50a及び50bは、少なくともその受光面全体又は発光面全体が、型1の領域2内部で光硬化性樹脂液40に接する。このように配置された後、光ファイバ30の他端に硬化光を導入すると、コア30cの端面30cfから型1の領域2内部で光硬化性樹脂液40に対して硬化光が放射される。これにより、自己形成的に、軸状のコア41が成長する。
【特許文献1】特開2005−347441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、光ファイバから所望の受発光素子までを、透明筐体を介さずにコアで接続できる。しかし逆に言えば、樹脂の対流、重力などにより設計された位置でコアが形成されず、受発光素子とコアとの位置ずれ(光軸のずれ)が生じたとしても、容易には、或いは全く、修正することができないという問題がある。図5.Bは、波長選択性ミラー20で反射した硬化光により形成されるコア41aや、波長選択性ミラー20を透過した硬化光により形成されるコア41bが、各々、所望の光軸方向から時計回りにずれて成長する場合を示している。このような光軸ずれが生じると、受発光素子50a及び50bと、コア41a及び41bとの光結合損失が生じることが理解できる。受発光素子50aとコア41aとは接合しており、当該接合部を破壊しなければ光軸ずれを解消できない。受発光素子50bとコア41bについても同様である。また、一旦作製された光通信モジュールの受発光素子に故障が生じたとしても、交換は容易にはできないという問題もある。
【0006】
そこで本発明者らは上記の課題について検討し、全く新しい構成の光部品を着想した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、自己形成的に光硬化性樹脂を硬化させたコアを有し、コア端の少なくとも一つが、コアの光軸に垂直方向に広がりを有し、且つ少なくとも所定の波長光に対して実質的に透明な部材と接合されて、他の光部品と光結合可能なチャネルを形成しており、コアの各コア端に接続された各部材は、コアを介して拘束されている他は互いに機械的接触無く独立しており、コアの各コア端に接続された各部材同士は、コア以外の部材と接触していないことを特徴とする光部品である。
本発明において「透明部材」とは、例えば剛性の無い透明フィルム、剛性を有する透明板、レンズ、所定帯域にのみ透明である光選択フィルタ、或いはそれら透明フィルム、透明板、波長選択性フィルタ又はレンズを有し、他の光部品と接続可能に治具を設けたコネクタ又はいわゆるコネクタレセプタクルを含むものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の光部品のコアを、クラッド材で覆った構成を有し、コアの各コア端に接続された各部材同士は、コア及びクラッド材以外の部材と接触していないことを特徴とする。
請求項3に係る発明は、コアはハーフミラー又は波長選択性ミラーを分岐点とする分岐を有していることを特徴とする。
請求項4に係る発明は、光ファイバコネクタを接続するためのレセプタクルがコアの少なくとも1端に接続されていることを特徴とする。
請求項5に係る発明は、チャネル、又は複数個のチャネルの少なくとも1箇所に受光素子及び/又は発光素子が結合された構成を有する光通信モジュールである。
【0009】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の光部品の製造方法において、コアを形成するための未硬化の液状の光硬化性樹脂に対して、透明な部材及び/又はレセプタクルを介して硬化光を導入することを特徴とする光部品の製造方法である。
請求項7に係る発明は、更に、未硬化の液状の光硬化性樹脂に直接接触した光ファイバ端からも硬化光を導入することを特徴とする。
請求項8に係る発明は、硬化光は、合計2箇所以上から導入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
自己形成光導波路に接続される受発光素子その他の光部品を交換可能とするためには、コア端に、それら受発光素子その他の光部品に光結合可能な部材と接合していれば良い。この際、各コア端の部材が例えば透明筐体のような連続した部材であると、特許文献1に記載された従来の問題点が発生する。そこで適当な大きさの、各コア端が独立しているような透明部材を用いる。これにより、透明筐体を用いた場合の例えば温度変化その他による透明筐体からのコアの分離の問題は生じない。また、各コア端の透明部材を介して光結合させる受発光素子その他の光部品は、公知の技術で所望に交換可能に結合される。受発光素子その他の光部品を光結合させる際、光軸合わせは容易である。また、受発光素子その他の光部品に故障が生じた場合、公知の技術で所望に交換可能となる。
【0011】
コアのみの構成では、言わば肉の無い骨格状であって使用時の耐性に乏しいので、クラッド材で覆うようにすると良い。この際も、「筐体」に対して受発光素子その他の光部品や、コアや分岐点がある場合のハーフミラーや波長選択性ミラーが拘束されると、特許文献1に記載された従来の問題点が発生する。そこで、それら光部品等は、コアとクラッド材以外には直接接触しないようにし、クラッド材を何らかの筐体等で支持する構成とすると良い。或いはクラッド材により十分な強度が得られるのであれば、筐体は必要ない。
【0012】
透明部材を有する光部品のコアを自己形成的に硬化させる際、当該透明部材から硬化光を導入可能であり、これにより、少なくとも当該導入部である透明部材との接合点におけるコア光軸を設計位置とすることが容易となる。また、複数箇所から硬化光を導入すると、いわゆる光はんだ効果により、硬化物が一体化する際、お互いに光軸のずれを補償するように接続される。これによりコアの分岐点その他での光伝送損失を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に用いる光硬化性樹脂液は、入手可能な任意のものを適用できる。硬化機構も、ラジカル重合、カチオン重合其の他任意である。硬化光は一般的にはレーザ光が好ましい。レーザの波長と強度で、光硬化性樹脂液の硬化速度を調整すると良い。尚、光硬化開始剤(光重合開始剤)は光硬化性樹脂液とレーザの波長に応じ、入手可能な任意のものを適用できる。これらについては、本願出願人が共願人である例えば特開2004−149579に次のものが列挙されている。
【0014】
構造単位中にフェニル基等の芳香族環を一つ以上含んだものが高屈折率、脂肪族系のみからなる場合は低屈折率となる。屈折率を下げるために構造単位中の水素の一部をフッ素に置換したものであっても良い。
脂肪族系としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコール。
芳香族系としてはビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールZ、ビスフェノールF、ノボラック、o-クレゾールノボラック、p-クレゾールノボラック、p-アルキルフェノールノボラック等の各種フェノール化合物等。
これら、あるいはこれらから任意に1種乃至複数種選択された多価アルコールのオリゴマー(ポリエーテル)の構造を有する比較的低分子(分子量3000程度以下)骨格に、反応基として次の官能基等を導入したもの。
〔ラジカル重合性材料〕
ラジカル重合可能なアクリロイル基等のエチレン性不飽和反応性基を構造単位中に1個以上、好ましくは2個以上有する光重合性モノマー及び/又はオリゴマー。エチレン性不飽和反応性基を有するものの例としては、(メタ)アクリル酸エステル、イタコン酸エステル、マレイン酸エステル等の共役酸エステルを挙げることができる。
〔カチオン重合性材料〕
カチオン重合可能なオキシラン環(エポキシド)、オキセタン環等の反応性エーテル構造を構造単位中に1個以上、好ましくは2個以上有する、光重合性のモノマー及び/又はオリゴマー。オキシラン環(エポキシド)としては、オキシラニル基の他、3,4-エポキシシクロヘキシル基なども含まれる。またオキセタン環とは、4員環構造のエーテルである。
【0015】
〔ラジカル重合開始剤〕
ラジカル重合性モノマー及び/又はオリゴマーから成るラジカル重合性材料の重合反応を光によって活性化する化合物である。具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインプロピルエーテル等のベンゾイン類、アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-(4-(メチルチオ)フェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン及びN,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類、2-メチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン及び2-アミルアントラキノン等のアントラキノン類、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン及び2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、アセトフェノンジメチルケタール及びベンジルジメチルケタール等のケタール類、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4'-ジクロロベンゾフェノン、4,4'-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーズケトン及び4-ベンゾイル-4'-メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン類、並びに2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等が挙げられる。尚、ラジカル重合開始剤は単独で使用しても、2種以上を併用しても良く、また、これらに限定されることはない。
〔カチオン重合開始剤〕
カチオン重合性モノマー及び/又はオリゴマーから成るカチオン重合性材料の重合反応を光によって活性化する化合物である。具体例としては、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレニウム塩、ピリジニウム塩、フェロセニウム塩、ホスホニウム塩、チオピリニウム塩が挙げられるが、熱的に比較的安定であるジフェニルヨードニウム、ジトリルヨードニウム、フェニル(p-アニシル)ヨードニウム、ビス(p-t-ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(p-クロロフェニル)ヨードニウムなどの芳香族ヨードニウム塩、ジフェニルスルホニウム、ジトリルスルホニウム、フェニル(p-アニシル)スルホニウム、ビス(p-t-ブチルフェニル)スルホニウム、ビス(p-クロロフェニル)スルホニウムなどの芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩光重合開始剤が好ましい。芳香族ヨードニウム塩および芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩光重合開始剤を使用する場合、アニオンとしてはBF4-、AsF6-、SbF6-、PF6-、B(C6F5)4-などが挙げられる。尚、カチオン重合開始剤は単独で使用しても、2種以上を併用しても良く、また、これらに限定されることはない。
【0016】
透明部材は、少なくとも所望の波長又は波長帯域の光に対して実質的に透明である部材であれば、任意のものを選択できる。実質的に透明とは、当該所望の波長又は波長帯域の光に対して透過率が66%以上が好ましい。透過率は80%以上が好ましく、より好ましくは90%以上である。但し波長選択性フィルタ(剛性のあるもの又はないもの)の場合は、他の波長帯域を遮断することに重きを置く場合は、最大透過率を与える所望の波長又は波長帯域の光に対して透過率が66%未満でも構わない。
【0017】
コネクタ又はコネクタレセプタクルとしては、以下では光ファイバコネクタに対するレセプタクルを例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、何らかのコネクタの一部をなし、自己形成光導波路であるコアに接続された部分が少なくとも所望の波長又は波長帯域の光に対して実質的に透明である部材であるような任意のコネクタ又はコネクタレセプタクルを用いうる。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明の具体的な第1の実施例に係る光部品100及び光通信モジュール100Mの製造方法を示す工程図である。本発明の本質を説明するため、本実施例及び実施例2においては工程を概念的に説明する。
【0019】
まず、図1.Aのように、光硬化性樹脂液40を配置するための直方体状の領域2を有する型1を用意し、板状の透明部材10a及び10bを領域2の奥面2Eと右面2Rに密着させる。また、領域2の左面2Lから光ファイバ30を挿入し、コア30cの端面30cfを透明部材10bに相対させる。また、波長選択性ミラー20を、図1.Aのように奥面2Eと右面2Rの二等分面に平行に配置する。こうして、光硬化性樹脂液40を直方体状の領域2に充填し、光ファイバ30の他端から硬化光を導入してコア30cの端面30cfから硬化物41を軸状に形成し、成長させる。硬化物41はコア30cの端面30cfから、硬化光の方向に成長し、波長選択性ミラー20で分岐41a及び41bを形成し、各々板状の透明部材10a及び10bに向かって成長する(図1.B)。こうして、領域2を有する型1をはずし、未硬化の光硬化性樹脂液40を除去すると、硬化物である41、41a及び41bから成るコアと、それらの集合点(コアの分岐点)に位置する波長選択性ミラー20、コアの分岐41aに接続された板状の透明部材10a、コアの分岐41bに接続された板状の透明部材10b、及び、コア41に接続された光ファイバ30から成る光部品100が形成される(図1.C)。この後、板状の透明部材10aのコア41aの反対側に、コア41aと光軸を合わせて受発光素子50aを、板状の透明部材10bのコア41bの反対側に、コア41bと光軸を合わせて受発光素子50bを結合させれば、光通信モジュール100Mを構成できる(図1.D)。
【0020】
本実施例による図1.Cの光部品100は、分岐を有するコア(41、41a、41b)を有し、2つのコア端に2つの板状の透明部材10a及び10bを有しているので、当該2つの板状の透明部材10a及び10bに、任意の光部品又は光素子を配置させることができる。コア41a、41bを仮想的に板状の透明部材10a及び10b内部に延長させた場合の重なりが「チャネル」である。当該チャネルに、外部に接続する光部品、例えば受発光素子の受光面又は発光面の中心を配置すると良い。また、その際、光部品又は光素子と、コア41a及び41bとの光軸合わせが容易にできる。本実施例による図1.Dの光通信モジュール100Mは、受発光素子50a及び50bに故障が生じたとしても、容易に交換可能である。図1.Cの光部品100、図1.Dの光通信モジュール100Mは所望のクラッド材で覆うことができる。その際、受発光素子50a及び50b及び、それらを配置させるべき2つの板状の透明部材10a及び10bの面をクラッド材で覆わないようにできる。
【実施例2】
【0021】
図1においては、波長選択性ミラー20での2つの分岐41a及び41bが、コア41と90度及び0度を成さず、光軸がずれた図を示して、そのような場合でも本願発明が有効であることを示した。本実施例においては、本願発明により、全分岐が所望の方向に成長させることができることを示す。
【0022】
図2は、本発明の具体的な第2の実施例に係る光部品110及び光通信モジュール110Mの製造方法を示す工程図である。まず、図2.Aのように、光硬化性樹脂液40を配置するための直方体状の領域2’を有する型1’を用意し、板状の透明部材10a及び10bを領域2’の奥面2Eと右面2Rに密着させる。ここで、本実施例の型1’が実施例1の型1と異なる点は、奥面2Eと右面2Rに密着させた板状の透明部材10a及び10bに対し、光ファイバ30a及び30bを外部から挿入して当接させることができることである。また、領域2の左面2Lから光ファイバ30を挿入し、コア30cの端面30cfを透明部材10bに相対させる。また、波長選択性ミラー20を、図2.Aのように奥面2Eと右面2Rの二等分面に平行に配置する。
【0023】
次に、光硬化性樹脂液40を直方体状の領域2に充填し、光ファイバ30、30a及び30bの他端から硬化光を導入してコア30cの端面30cf、コア30acに当接した透明部材10a、コア30bcに当接した透明部材10bから硬化物41、41a’及び41b’を軸状に形成し、成長させる(2.B)。硬化物41はコア30cの端面30cfから、硬化光の方向に成長し、波長選択性ミラー20に達する。同様に、硬化物41a’はコア30acから硬化光の方向に成長し、波長選択性ミラー20に達し、硬化物41b’はコア30bcから硬化光の方向に成長し、波長選択性ミラー20に達する。こうして、各光ファイバ30、30a及び30bから導入する硬化光の強度を調整すると、ほぼ波長選択性ミラー20付近で硬化物41、41a’及び41b’が合体するようにでき、他の方向には成長しないようにできる。この際、いわゆる光はんだの効果も利用して、波長選択性ミラー20を透過又は反射した硬化光による硬化物を合体させることも可能である。
【0024】
こうして、領域2’を有する型1’をはずし、未硬化の光硬化性樹脂液40を除去すると、硬化物である41、41a’及び41b’から成るコアと、それらの集合点(コアの分岐点)に位置する波長選択性ミラー20、コアの分岐41a’に接続された板状の透明部材10a、コアの分岐41b’に接続された板状の透明部材10b、及び、コア41に接続された光ファイバ30から成る光部品110が形成される(図2.C)。この後、板状の透明部材10aのコア41a’の反対側に、コア41a’と光軸を合わせて受発光素子50aを、板状の透明部材10bのコア41b’の反対側に、コア41b’と光軸を合わせて受発光素子50bを結合させれば、光通信モジュール110Mを構成できる(図2.D)。
【0025】
本実施例の、透明部材10a及び10bをも介した3方向からの硬化光の導入によれば、波長選択性ミラー20の配置ずれにより実施例1にて生じていた、コア41、41a、41bの光軸のずれを解消することが可能である。また、本実施例においてもコア41a’、41b’を仮想的に板状の透明部材10a及び10b内部に延長させた場合の重なりが「チャネル」であるが、当該チャネルは、光ファイバ30a及び30bのコア30ac、30bcを仮想的に板状の透明部材10a及び10b内部に延長させた場合の重なりと重なる。即ち、当該チャネルは光ファイバ30a及び30bのコア30ac、30bcから硬化光を照射した時に仮想的に存在していたものである。
【実施例3】
【0026】
図3は、本発明の具体的な第3の実施例に係る光部品200(図3.H)の製造方法を示す工程図である。本実施例においては、プレート1pとシリコンゴム枠2srとにより、実施例1及び2における直方体状の領域を有する型を形成する。また、本実施例においては、フィルム状の透明部材10として、東レ製のルミラーU34を、波長選択性ミラー20として硬化光の波長488nmにおいて50%反射し50%透過する誘電体多層膜を用いた。
【0027】
図3.Aに示すように、プレート1p上に、フィルム状の透明部材10と、波長選択性ミラー20、光ファイバコネクタに対するレセプタクル15a及び15bを配置させる。図3.Bに示すように、シリコンゴム枠2srで、4面を囲い、光硬化性樹脂液40を配置する直方体状の領域を形成する。尚、上面(紙面手前側)は開放しておく。フィルム状の透明部材10、波長選択性ミラー20、光ファイバコネクタに対するレセプタクル15a及び15bの配置は次の通りである。光ファイバコネクタに対するレセプタクル15a及び15bを光軸を一致させて向かい合わせ、それに対して45度を成すように波長選択性ミラー20を配置させる。レセプタクル15aの光軸が波長選択性ミラー20により反射され、元の光軸から90度の角度方向を、中心における法線とするようにフィルム状の透明部材10を配置させる。フィルム状の透明部材10はシリコンゴム枠2sr奥面に貼り付ける。
【0028】
次に、光硬化性樹脂液40をプレート1pとシリコンゴム枠2srとで形成された直方体状の領域内部に充填する(図3.C)。コア形成用の光硬化性樹脂液40としては、EO変性ビスフェノールAジアクリレートとポリプロピレングリコールジアクリレートの混合物に光重合開始剤を添加した組成物を用いた。次に、コネクタ16aを一端に接続した光ファイバ30aと、コネクタ16bを一端に接続した光ファイバ30bとを用意し、コネクタ16aをレセプタクル15aに、コネクタ16bをレセプタクル15bに結合させる。光ファイバ30a及び30bとしては、旭硝子製Lucina(コア径120μm)を用いた。こうして、光ファイバ30a及び光ファイバ30bの他端からアルゴンレーザによる波長488nmの硬化光を導入し、レセプタクル15a及び15bを介して光硬化性樹脂液40に照射する(図3.DでL)。光ファイバ30a及び30bのそれぞれに導入する硬化光の強度及び照射時間を適切にすると、軸状の硬化物41が、波長選択性ミラー20を分岐点として、フィルム状の透明部材10並びにレセプタクル15a及び15bを接合する(図3.E)。この後、コネクタ16aを一端に接続した光ファイバ30aと、コネクタ16bを一端に接続した光ファイバ30bとを、各々レセプタクル15a及び15bから分離し、未硬化の光硬化性樹脂液40をプレート1pとシリコンゴム枠2srとで形成された直方体状の領域内部から除去する(図3.F)。次に、光硬化性樹脂液45から成るクラッド材をプレート1pとシリコンゴム枠2srとで形成された直方体状の領域内部に充填し、光硬化させ、硬化物(クラッド)45cを形成する(図3.G)。この際、クラッド形成用の光硬化性樹脂液45としては、ポリプロピレングリコールジアクリレートに光重合開始剤を添加した組成物を用いた。また、光硬化には紫外線ランプを用いた。こうして、プレート1pとシリコンゴム枠2srとをはずせば、波長選択性ミラー20を分岐点としたコアである硬化物41により、フィルム状の透明部材10並びにレセプタクル15a及び15bが接合され、クラッドである硬化物45cにより覆われた、光部品200が得られる(図3.H)。
【0029】
〔その他〕
本発明は基本的には筐体を有しない光部品又は光通信モジュールを特徴とするものであるが、そのような光部品又は光通信モジュールを筐体又は何らかの支持体に拘束させることは本願発明から逸脱しない。この際、例えば、次のようなことも可能である。
図4.Aは、図1.Cと同様であって、実施例1に従って形成された光部品100である。図1.Cにも示した通り、コア41の光軸と分岐41aの光軸とは90度を成さず、コア41の光軸と分岐41bの光軸とは一致していない。そこで例えば、10a及び10bとして剛性のある板状の透明部材を用いている場合はそれらを、10a及び10bとして剛性の無いフィルム状の透明部材を用いている場合は、分岐41a及び41bのそれらとの接合部付近を、図4.Aの矢印に示す方向に移動させて(コアである分岐41a及び41bに力を加えて)、分岐41a及び透明部材10aの接続部と、分岐41b及び透明部材10bの接続部とを本来の位置に配置させることも可能である(図4.Bの光部品100’)。この後受発光素子50a及び50bを当該修正された分岐41a及び透明部材10aの接続部と、分岐41b及び透明部材10bの接続部と位置合わせをすることで、設計通りの配置の光通信モジュール100’Mとすることもできる(図4.C)。図4.Bの光部品100’、図4.Cの光通信モジュール100’Mはコア41、41a、41b及び/又は透明部材10a及び10b更には波長選択性ミラー20に応力が係った状態であるので、筐体等に拘束させる必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施例に係る光部品100及び光通信モジュール100Mの製造方法を示す工程図。
【図2】本発明の第2の実施例に係る光部品110及び光通信モジュール110Mの製造方法を示す工程図。
【図3】本発明の第3の実施例に係る光通信モジュール200Mの製造方法を示す工程図。
【図4】光部品100を補正した光部品100’及びそれを用いた光通信モジュール100’Mの説明図。
【図5】特許文献1の技術の説明図。
【符号の説明】
【0031】
1:型
1p:プレート
2:光硬化性樹脂液40を配置する直方体状の領域
2sr:シリコンゴム枠
10a、10b:板状の透明部材
10:フィルム状の透明部材
20:波長選択性ミラー
30、30a、30b:光ファイバ
30c、30ac、30bc:光ファイバのコア
40:光硬化性樹脂液
41:光硬化性樹脂液40の硬化物(コア)
41a、41a’、41b、41b’:光硬化性樹脂液40の硬化物(コア、分岐)
45:光硬化性樹脂液
45c:光硬化性樹脂液45の硬化物(クラッド)
50a、50b:受発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己形成的に光硬化性樹脂を硬化させたコアを有し、
前記コア端の少なくとも一つが、前記コアの光軸に垂直方向に広がりを有し、且つ少なくとも所定の波長光に対して実質的に透明な部材と接合されて、他の光部品と光結合可能なチャネルを形成しており、
前記コアの各コア端に接続された各部材は、前記コアを介して拘束されている他は互いに機械的接触無く独立しており、
前記コアの各コア端に接続された各部材同士は、前記コア以外の部材と接触していないことを特徴とする光部品。
【請求項2】
請求項1に記載の光部品の前記コアを、クラッド材で覆った構成を有し、
前記コアの各コア端に接続された各部材同士は、前記コア及び前記クラッド材以外の部材と接触していないことを特徴とする請求項1に記載の光導波路部品。
【請求項3】
前記コアはハーフミラー又は波長選択性ミラーを分岐点とする分岐を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光部品。
【請求項4】
光ファイバコネクタを接続するためのレセプタクルが前記コアの少なくとも1端に接続されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の光部品。
【請求項5】
前記チャネル、又は複数個の前記チャネルの少なくとも1箇所に受光素子及び/又は発光素子が結合された構成を有する光通信モジュール。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の光部品の製造方法において、
前記コアを形成するための未硬化の液状の光硬化性樹脂に対して、
前記透明な部材及び/又は前記レセプタクルを介して硬化光を導入することを特徴とする光部品の製造方法。
【請求項7】
更に、前記未硬化の液状の光硬化性樹脂に直接接触した光ファイバ端からも前記硬化光を導入することを特徴とする請求項6に記載の光部品の製造方法。
【請求項8】
前記硬化光は、合計2箇所以上から導入することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の光部品の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−152173(P2008−152173A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342397(P2006−342397)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】