光部品
【課題】カメラ等の観察系のための高価な装置を必要とすることなく、レンズ設計や導波路設計に依存しない、多芯の光導波路とレンズアレイとの容易な調芯が可能な光部品を提供すること。
【解決手段】複数の出力ポートに接続される光導波路10と、ダミーポートに接続されるダミー光導波路11を有する多芯の光導波路アレイと、前記光導波路10の複数の出力ポートから出力される光を集光する複数のレンズ50aと、前記光導波路アレイのダミーポートから出力される光を当該ダミーポートに反射する反射光学部品50bとが並設されるレンズアレイ5と、を備え、前記ダミーポートを介してダミー光導波路に反射された反射光を用いて多芯の光導波路アレイに対するレンズアレイ5の調芯が可能な光部品。好ましくは、レンズアレイ5が調芯された位置にあるときに、前記反射光の強度が最大となるように、前記反射光学部品50bを設定することである。
【解決手段】複数の出力ポートに接続される光導波路10と、ダミーポートに接続されるダミー光導波路11を有する多芯の光導波路アレイと、前記光導波路10の複数の出力ポートから出力される光を集光する複数のレンズ50aと、前記光導波路アレイのダミーポートから出力される光を当該ダミーポートに反射する反射光学部品50bとが並設されるレンズアレイ5と、を備え、前記ダミーポートを介してダミー光導波路に反射された反射光を用いて多芯の光導波路アレイに対するレンズアレイ5の調芯が可能な光部品。好ましくは、レンズアレイ5が調芯された位置にあるときに、前記反射光の強度が最大となるように、前記反射光学部品50bを設定することである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光部品に関し、製造の際のレンズ調芯が容易な光部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ファイバ伝送の普及に伴い、CDMA、OFDM、QPSK等の様々な通信方式の光通信が開発されている(非特許文献1、2、3)。これらの光通信に用いられる光通信装置には、光ファイバ、平面光導波回路(PLC)、レンズ、フォトダイオード、レーザダイオードなどの複数の光部品が設けられている。これらの光部品を備えた光通信装置の製造時に、レンズと他の光部品とを光接続する際の調芯には特に高い精度が求められる。例えば、光ファイバとレンズとを光接続する場合には、レンズ出射光の方向をカメラ等で観察することにより調芯している。
【0003】
図1にレンズアレイ200と多芯の光ファイバ100との従来の調芯方法を示す。レンズアレイ200とカメラ300を正対させて固定し、多芯の光ファイバ100を移動させる。多芯の光ファイバ100を移動させる毎に、多芯の光ファイバ100の一端から一心づつ入射した光Lをカメラ300で観察する。多芯の光ファイバ100の各ポートから出力された光はレンズアレイ200のレンズ部分20を介してカメラ300に入射される。各ポートから出射された光の進行方向をカメラ300で観察し、この観察結果に基づき光ファイバ100とレンズアレイ200とを位置決めする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Hossam M.H.Shalaby, ‘‘Chip-Level Detection in Optical Code Division Multiple Access’’, JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY, Vol.16, No.6, June 1998
【非特許文献2】Yan Tang, et al, ‘‘Optimum Design for RF-to-Optical Up-Converter in Coherent Optical OFDM Systems’’, IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS, Vol.19, No.7, APRIL 1,2007
【非特許文献3】Jeremie Renaudier, et al, ‘‘Linear Fiber Impairments Mitigation of 40-Gbit/s Polarization-Multiplexed QPSK by Digital Processing in a Coherent Receiver’’, JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY, Vol.26, No.1, January 1,2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図2に示すように、PLCなどの多芯の光導波路101とレンズアレイ200とを接続する場合は、図1の方法では調芯が困難である。これは、第1に、多芯の光導波路101の出力は分岐回路や干渉回路の出力の場合が多いからである。各ポートから分岐や干渉された光が出力されると、カメラで観察して単芯ごとに独立して光の進行方向を判別しがたく、調芯が困難となる。また、第2に、多芯の光導波路101はポート間ピッチも小さいことが多く、出射光が干渉してしまうからである。このような構成で多芯の光導波路101からの光Lの出射方向を観察するためには、高度な参照軸出しや観察系が必要となり、装置が複雑化し、また、それにより実装構造や工程が制約される。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、カメラ等の観察系のための高価な装置を必要とすることなく、レンズ設計や導波路設計に依存しない、多芯の光導波路とレンズアレイとの容易な調芯が可能な光部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の本発明は、複数の出力ポートに接続される光導波路と、ダミーポートに接続されるダミー光導波路を有する多芯の光導波路アレイと、前記光導波路の複数の出力ポートから出力される光を集光する複数のレンズと、前記光導波路アレイのダミーポートから出力される光を当該ダミーポートに反射する反射光学部品とが並設されるレンズアレイと、を備え、前記ダミーポートを介してダミー光導波路に反射された反射光を用いて多芯の光導波路アレイに対するレンズアレイの調芯が可能な光部品。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光部品であって、レンズアレイが調芯された位置にあるときに、前記反射光の強度が最大となるように、前記反射光学部品を設定することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の光部品であって、前記反射光学部品は、レンズアレイが調芯された位置にあるときに、前記反射光の強度が最大となるように、屈折率分布が設定されたレンズであることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の光部品であって、前記反射光学部品は、シングルモードファイバであることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の光部品であって、レンズアレイが調芯された位置にあるときに、前記反射光の強度が最大となるダミー導波路を用いることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の光部品であって、前記ダミー導波路は、レンズアレイが調芯された位置にあるときに、前記反射光の強度が最大となるモードフィールド径を有することを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の光部品であって、前記ダミー導波路は、レンズアレイが調芯された位置にあるときに、前記反射光の強度が最大となる光軸方向の長さを有するスラブ導波路であることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれかに記載の光部品であって、前記光導波路は、レンズアレイの光軸に対し導波路が平行に延在する第1の光導波路領域と、第1の光導波路領域の導波路から所定角度折り曲げられて延在する、出力端側に設けられる第2の光導波路領域とを有し、前記ダミー光導波路は、レンズアレイの光軸に対し導波路が平行に延在する第1のダミー光導波路領域と、第1のダミー光導波路領域の導波路から所定角度折り曲げられて延在する第2のダミー光導波路領域と、第2のダミー光導波路領域から所定角度折り曲げられてレンズアレイの光軸に対し導波路が平行に延在する、出力端側に設けられる第3のダミー光導波路領域とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、ダミーポートの反射光を用いた調芯を行うことにより、カメラ等の観察系のための高価な装置を必要とすることなく、レンズ設計や導波路設計に依存しない、多芯の光導波路とレンズアレイとの容易な調芯が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来のレンズ調芯方法の一例を説明するための図である。
【図2】従来のレンズ調芯方法の他の一例を説明するための図である。
【図3】本発明の光部品を搭載可能な光モジュールの概略構成を示す図である。
【図4】本発明にかかる光部品の構成の一例を説明するための図である。
【図5】本発明にかかる光部品の構成の他の一例を説明するための図である。
【図6】本発明にかかる光部品の構成の他の一例を説明するための図である。
【図7】本発明にかかる光部品の構成の他の一例を説明するための図である。
【図8】本発明にかかる光部品の構成の他の一例を説明するための図である。
【図9】本発明にかかる光部品の構成の他の一例を説明するための図である。
【図10】本発明にかかる光部品の構成の他の一例を説明するための図である。
【図11】第5の実施形態の切替領域Wの構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。図3は、本発明の光部品を搭載可能な光モジュールの概略構成を示す図である。図3に示す光モジュール500は、例えば、100G/DP−QPSK(Dual Polarization Differential Quadrature Phase Shift Keying)の光モジュールとして用いられる。光モジュール500は、PLC(Planar Lightwave circuit:平面光導波回路)510と、レンズアレイ部520と、フォトダイオード(PD:Photodiode)530と、TIA(トランスインピーダンスアンプ)540とを備えて構成される。
【0018】
PLC510には、信号光を入力するための入力ポートS1と局発光を入力するための入力ポートS2とが設けられている。また、PLC510には、光導波路によって接続されたPBS(Polarization Beam Splitter:偏向ビームスプリッタ)511a、511bと光ミキサ512a、512bとが設けられている。
【0019】
光モジュール500において、PLC510の入力ポートS1、S2から入力された信号光および局発光は、それぞれPBS511a、512bによりX偏向とY偏向に分岐される。さらに信号光および局発光のX偏向成分は、光ミキサ512aで90度ハイブリッド混合された後、さらに4つの出力光に分岐されて出力される。信号光および局発光のY偏向成分は、光ミキサ512bで光ミキサ512aと同様に処理され、4分岐されて出力される。これらの分岐出力は、光導波路を介してレンズアレイ部520に出力される。
【0020】
レンズアレイ部520は、PLC510からの出力光をPD530に結合するためのレンズで構成される。例えば、図示のように、PLCの出力端に固定したマイクロレンズアレイ513a、513bと、PD530に固定したマイクロレンズアレイ514a、514bとで構成される。なお、レンズアレイ部520を1枚レンズで構成してもよいが、本発明の光部品は、マイクロレンズアレイで構成した場合に好ましく適用できる。PD530は、受光したPLCからの出力光を電気信号に変換する。
【0021】
PD530には、TIA540が電気的に接続されており、PD530の出力電流がTIA540により差動電圧出力に変換される。光モジュール500の差動出力は、ADC、DSP等を集積した集積回路(LSI)600に接続される。
【0022】
本発明の光部品は、光モジュール500のPLC510とマイクロレンズアレイ513a、513bによって構成される部分に適用することができる。
【0023】
以下、本発明の光部品について説明する。
(第1の実施形態)
図4は本発明の第1の実施形態にかかる光部品の構成を説明するための図である。本光部品は、ダミーポートを有する多芯の光導波路アレイ1と、ダミーポートを有するレンズアレイ5とを備えている。多芯の光導波路アレイ1は、1〜複数の入力ポート、複数の出力ポートを有し、レンズアレイ5は複数の入力ポート、出力ポートを有しており、光導波路アレイ1のダミーポートと、レンズアレイ5のダミーポートを調芯(位置合わせ)したときに、光導波路アレイ1の複数の出力ポートとレンズアレイ5の複数の入力ポートも調芯される。
【0024】
多芯の光導波路アレイ1は、複数の出力ポートに接続された複数の光導波路10と、2つのダミーポートに接続された2本のダミー導波路11とを備えている。この場合、光導波路10は、複数の分岐によって、4つの出力ポートに接続されている。
【0025】
また、レンズアレイ5には、光導波路アレイ1の複数の出力ポートから出力される光を集光する複数のレンズ50aが並設されている。レンズアレイ5のダミーポートは、光導波路アレイ1のダミーポートから出力される光を光導波路アレイ1のダミーポートに反射する反射光学部品が設けられており、図4では、レンズアレイ5の2つのダミーポートにはそれぞれダミーレンズ50bが設けられている。図4では、出力ポートのレンズ50a、ダミーポートのレンズ50bとして、光軸と直交方向にレンズ内部の屈折率を変化させたGRINレンズを採用した。
【0026】
レンズアレイ5のダミーレンズ50bの反射端Rは、ダミー導波路11のダミーポートから入射される調芯のための光(テスト光)を観察可能な程度に反射できればよく、例えば、ダミーレンズ50bの反射端Rの表面に金属薄膜や誘電体多層膜を設けて反射率を調整してもよい。反射率は後述する光パワーメータ13の感度に応じて設定されてもよいし、反射端Rの反射率に応じて光パワーメータ13の感度を変更してもよい。反射端Rで反射した反射光を調芯のために利用することにより、複雑な装置によらず、レンズ調芯が容易に行える。
【0027】
因みに、ダミーポートの反射光を利用するのではなく、図5に示すように、ダミーレンズ50bから出射された光を観察して調芯することも考えられるが、カメラ等の観察系のために製造装置が複雑化したりするので好ましくない。
【0028】
ダミー導波路11の上流(テスト光入射側)には、サーキュレータ12が設けられており、レンズを調芯する際には、サーキュレータの一端に光パワーメータ13を接続する。なお、テスト光は、任意の波長の光を使用することができる。ダミー導波路11の入力ポートからテスト光を入力すると、テスト光はダミーレンズ50bの反射端Rで反射して、反射光がダミー導波路11内を入射光と反対方向に伝搬する。サーキュレータ12は、ダミー導波路11を伝搬する反射光を光パワーメータ13にドロップする。光導波路アレイ1に対するレンズアレイ5の位置を少しずつ変化させ(図示の上下方向および紙面の奥と手前方向にレンズアレイを移動させる)ながら、テスト光を入射してドロップされた反射光を光パワーメータ13で測定する。この測定結果に基づいて、レンズアレイ5の位置決めを行う。本光部品は、光導波路からの出力光をコリメート光として出力する構成であり、光導波路からの出力光をコリメート光に変換する平板状の分布屈折率(GRIN)レンズ6個を並べたレンズアレイを用いている。この構成によれば、レンズアレイ5が正しく調芯された位置にあるときに、ダミーレンズ50bの反射端Rで反射される反射光の強度が最大となるので、光パワーメータ13のモニタ結果に基づき、反射光の強度が最も大きくなった時の位置にレンズアレイ5を位置決めする。2次元的に位置決めするために、ダミーポートは2箇所に設けている。
【0029】
このように第1の実施の形態では、光導波路とレンズアレイにそれぞれ2つのダミーポートを設け、ダミーポートの反射光の光パワーが最大となるように調心すれば良いので、光導波路の回路パターンによらず、かつ複雑な装置を用いて出射ビームを観察することなく、簡便にレンズアレイを調心することが可能である。
【0030】
(第2の実施の形態)
図6は第2の実施形態にかかる光部品の構成を示す図である。この実施形態では、ダミーレンズ50bとしてのGRINレンズの屈折率分布(NA(開口数))を調整することで、レンズアレイ7が正しく調芯された位置にあるときに、ダミーポートの反射光の強度が最大となるようにしている。
【0031】
本実施形態では、ダミーレンズ50bの屈折率分布は、ダミー導波路11の中心とダミーレンズ50bの中心とが一致したときに、テスト光の波面が反射端Rと平行となるように、すなわち反射端Rに垂直にテスト光が入射されるように設定される。出力ポートのレンズ50aの屈折率分布は、ダミーレンズ50bとは関係なく、光部品に要求される出射光の焦点距離に応じて設定する。すなわち、出力ポートのレンズ50aとダミーレンズ50bとは、屈折率分布が同じであってもよいし、図示の例のように屈折率分布が異なっていてもよい。図示の例では、出力ポートのレンズ50aは、光導波路10からの光が端面Eにおいて斜めに入射するように、すなわち端面Eと入射光の波面が平行とならないように屈折率分布が設定されている。これは、光部品の出射光の焦点距離が比較的短く設定される場合の構成である。
【0032】
また、図6の例では、出力レンズ50bとしてGRINレンズを用いた場合を例に挙げて説明しているが、出力レンズ50a、ダミーレンズ50bとして、GRINレンズではなく、ガラス表面形状を成型したマイクロレンズを用いてもよい。成型マイクロレンズを用いる場合は、テスト光がマイクロレンズの表面(屈折面)に垂直入射するようにマイクロレンズの曲率等の表面形状を設定すればよい。
【0033】
この実施形態によれば、光導波路の出力ポートとダミーポートに対応するレンズ設計は必ずしも同一である必要はなく、最適な調心位置で反射光パワーが最大となるようにダミーレンズを設計しておけば、光導波路の出力ポートに対応するレンズを自由に設計できるという効果がある。
【0034】
(第3の実施形態)
図7は第3の実施形態にかかる光部品の構成を示す図である。この実施形態では、実施形態1におけるダミーレンズ50bの代わりに、シングルモードファイバ51を用いている。シングルモードファイバ51は、ダミー導波路11と同じモードフィールド径を有し、光導波路アレイ1のダミーポートから入射された光の一部を反射する。シングルモードファイバ51の反射端Rは、空気と接するために、特に反射膜を設けなくても反射が可能であるが、反射端Rに前述の反射膜を形成したほうが望ましい。
【0035】
この構成によれば、レンズアレイが正しく調芯された位置にあるとき、すなわち、シングルモードファイバ51の中心とダミー導波路11の中心とが一致したときに、光パワーメータ(図示せず)で測定される反射光のパワーが最大となる。
【0036】
この実施形態によれば、ダミーポートに対応するレンズは必ずしも集光・拡散性を有するレンズでなくとも、シングルモードファイバでも良い。シングルモードファイバを用いれば、ダミーレンズの設計に応じて調心プログラムを変更することなく、入力側光ファイバの調心と同じプログラムで容易に調心ができるという効果を奏する。
【0037】
(第4の実施形態)
図8は第4の実施形態にかかる光部品の構成を示す図である。上記2つの実施形態では、所望の反射光を得るようにレンズアレイを構成していたが、本実施形態ではダミー導波路の構成により所望の反射光が得られるようにする。具体的には、この実施形態では、ダミーポート(ダミー導波路の出力端)11aにおけるモードフィールド径を調整することによって、レンズアレイ5が正しく調芯された位置にあるときに、反射光の強度が最大となるようにしている。なお、レンズアレイ5にはダミーレンズ50bが設けられているが、このレンズ50bは、レンズアレイ5の出力ポートのレンズ50aと特に異なる構成とする必要はない。
【0038】
ダミー導波路11のダミーポート11aのモードフィールド径は、テスト光の波長とダミーレンズ50bの厚さDおよび開口数NAに基づいて設定される。図示のように、ダミー導波路11のダミーポートの中心とダミーレンズ50bの中心とが一致したときに、上記実施例と同様、テスト光の波面が反射端Rに平行に入射するように、ダミーレンズ50bの入力端であるビームウエスト位置の間隔Bが決定される。ダミー導波路11のダミーポート11aの出力端におけるモードフィールド径Mは、このビームウエスト位置の間隔Bと同じ大きさに設定される。モードフィールド径を設定する手段は、ファイバのコア径を調整するなど、既知の方法を使用することができる。
【0039】
図8に示す例では、ダミー導波路11のダミーポート11aのモードフィールド径が次第に拡大するテーパ形状を採用しているが、ダミー光導波路11の全経路においてモードフィールド径をMに一致させるようにしてもよい。
【0040】
この実施形態によれば、レンズアレイの出力ポートとダミーポートの設計を特に異なるものを用いずとも、光導波路のダミーポートの出力モードフィールド径を調整すれば、ダミーポートの反射を用いた調心が可能となる。一般にレンズアレイにおいてレンズごとに異なる設計を行うのは技術的に難易度が高く高価になりがちで、作製方法によっては不可能な場合もある。本実施形態の構成によればこれらの問題なく光導波路とレンズアレイの調心が可能となるという効果がある。
【0041】
(第5の実施形態)
図9は第5の実施形態にかかる光部品の構成を示す図である。本実施形態でもダミー導波路の構成により所望の反射光が得られるようにする。この実施形態では、ダミー導波路11の出力端に所定の大きさのスラブ導波路11bを配置することによって、レンズアレイ5が正しく調芯された位置にあるときに、ダミー導波路11に反射される反射光の強度が最大となるようにしている。
【0042】
スラブ導波路11bは、テスト光の波長とダミーレンズ50bの厚さDおよび開口数NAに基づいて光軸方向の長さSが設定される。すなわち、ダミー導波路11におけるダミーポートの中心とダミーレンズ50bの中心とが一致したときに、テスト光の波面が反射端Rに平行に入射するように、ダミー導波路11のスラブ導波路11bからダミーレンズ50bの反射端Rまでの長さ(図示ではD+S)が決定される。したがって、スラブ導波路11bの長さSは、この決定された長さからダミーレンズ50bの厚さを減じた値に設定すればよい。
【0043】
この実施形態によれば、ダミーレンズの設計自由度が格段に高まるという効果が生じる。すなわち、第4の実施形態の場合には、光導波路のモードフィールド径の調整範囲は限界があり、例えば限られた回路スペースで多モード化させずに数10μm以上のモードフィールド径を得るのは実際のところ容易ではない。これに対して、本実施形態は、モードフィールド径を調整するのではなく、スラブ導波路を用いて光導波路の出射端位置を変化させるものであるので、モードフィールド径調整の制約を受けない。なお、実際には、第4、第5の実施形態を併用するのが効果的である。すなわち、スラブ導波路の長さSによって光導波路出射端位置を調整するとともに、スラブ導波路に入力する光導波路のモードフィールド径を調整すれば良い。
【0044】
(第6の実施形態)
図10は第6の実施形態にかかる光部品の構成を示す図である。この実施形態は、上記実施形態(第1乃至第5の実施形態)において、光部品からの出射角度を傾けるために、光導波路10のパターンをその出力ポート付近の切替領域Wにおいて折曲げて構成する場合に好ましく用いられる構成である。ダミー導波路11の出力ポート付近のパターンは、レンズアレイ7のダミーレンズ50bに垂直に入射するように形成される。
【0045】
図11に、図10の切替領域Wについて示す。出力ポートの光導波路10は、出射端付近の切替領域Wにおいて、光導波路10のパターンを一定の角度で曲げて、ポート位置をFだけずらしている。一方、ダミー導波路11は、レンズアレイ7のダミーレンズ50bに垂直に入射するように出力端部分W1のパターンが形成され、その他の部分W2が光導波路10の切替領域W3よりも急角度に折り曲げられて、切替領域Wにおいてポート位置がFだけずれるようにパターンを設定する。
【0046】
この実施形態によれば、ダミーレンズ50bに対してはテスト光が垂直に入射されるので、光部品からの出射角度がレンズアレイに対して傾いている場合でも、製造の際のレンズ調芯が容易に行える。
【0047】
以上の実施形態において、特に説明のない限り、レンズ50、51は、GRINレンズ、マイクロレンズなどのレンズアレイを構成し得るレンズであれば特に限定されない。
【符号の説明】
【0048】
1 多芯の光導波路
5、6、7、8 レンズアレイ
10 本ポートの光導波路
11 ダミーポートの光導波路
20 レンズ部分
50 レンズ
51 シングルモードファイバ
100 多芯の光ファイバ
200 レンズアレイ
300 カメラ
L 光
R 反射端
【技術分野】
【0001】
本発明は光部品に関し、製造の際のレンズ調芯が容易な光部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ファイバ伝送の普及に伴い、CDMA、OFDM、QPSK等の様々な通信方式の光通信が開発されている(非特許文献1、2、3)。これらの光通信に用いられる光通信装置には、光ファイバ、平面光導波回路(PLC)、レンズ、フォトダイオード、レーザダイオードなどの複数の光部品が設けられている。これらの光部品を備えた光通信装置の製造時に、レンズと他の光部品とを光接続する際の調芯には特に高い精度が求められる。例えば、光ファイバとレンズとを光接続する場合には、レンズ出射光の方向をカメラ等で観察することにより調芯している。
【0003】
図1にレンズアレイ200と多芯の光ファイバ100との従来の調芯方法を示す。レンズアレイ200とカメラ300を正対させて固定し、多芯の光ファイバ100を移動させる。多芯の光ファイバ100を移動させる毎に、多芯の光ファイバ100の一端から一心づつ入射した光Lをカメラ300で観察する。多芯の光ファイバ100の各ポートから出力された光はレンズアレイ200のレンズ部分20を介してカメラ300に入射される。各ポートから出射された光の進行方向をカメラ300で観察し、この観察結果に基づき光ファイバ100とレンズアレイ200とを位置決めする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Hossam M.H.Shalaby, ‘‘Chip-Level Detection in Optical Code Division Multiple Access’’, JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY, Vol.16, No.6, June 1998
【非特許文献2】Yan Tang, et al, ‘‘Optimum Design for RF-to-Optical Up-Converter in Coherent Optical OFDM Systems’’, IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS, Vol.19, No.7, APRIL 1,2007
【非特許文献3】Jeremie Renaudier, et al, ‘‘Linear Fiber Impairments Mitigation of 40-Gbit/s Polarization-Multiplexed QPSK by Digital Processing in a Coherent Receiver’’, JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY, Vol.26, No.1, January 1,2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図2に示すように、PLCなどの多芯の光導波路101とレンズアレイ200とを接続する場合は、図1の方法では調芯が困難である。これは、第1に、多芯の光導波路101の出力は分岐回路や干渉回路の出力の場合が多いからである。各ポートから分岐や干渉された光が出力されると、カメラで観察して単芯ごとに独立して光の進行方向を判別しがたく、調芯が困難となる。また、第2に、多芯の光導波路101はポート間ピッチも小さいことが多く、出射光が干渉してしまうからである。このような構成で多芯の光導波路101からの光Lの出射方向を観察するためには、高度な参照軸出しや観察系が必要となり、装置が複雑化し、また、それにより実装構造や工程が制約される。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、カメラ等の観察系のための高価な装置を必要とすることなく、レンズ設計や導波路設計に依存しない、多芯の光導波路とレンズアレイとの容易な調芯が可能な光部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の本発明は、複数の出力ポートに接続される光導波路と、ダミーポートに接続されるダミー光導波路を有する多芯の光導波路アレイと、前記光導波路の複数の出力ポートから出力される光を集光する複数のレンズと、前記光導波路アレイのダミーポートから出力される光を当該ダミーポートに反射する反射光学部品とが並設されるレンズアレイと、を備え、前記ダミーポートを介してダミー光導波路に反射された反射光を用いて多芯の光導波路アレイに対するレンズアレイの調芯が可能な光部品。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光部品であって、レンズアレイが調芯された位置にあるときに、前記反射光の強度が最大となるように、前記反射光学部品を設定することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の光部品であって、前記反射光学部品は、レンズアレイが調芯された位置にあるときに、前記反射光の強度が最大となるように、屈折率分布が設定されたレンズであることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の光部品であって、前記反射光学部品は、シングルモードファイバであることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の光部品であって、レンズアレイが調芯された位置にあるときに、前記反射光の強度が最大となるダミー導波路を用いることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の光部品であって、前記ダミー導波路は、レンズアレイが調芯された位置にあるときに、前記反射光の強度が最大となるモードフィールド径を有することを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の光部品であって、前記ダミー導波路は、レンズアレイが調芯された位置にあるときに、前記反射光の強度が最大となる光軸方向の長さを有するスラブ導波路であることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれかに記載の光部品であって、前記光導波路は、レンズアレイの光軸に対し導波路が平行に延在する第1の光導波路領域と、第1の光導波路領域の導波路から所定角度折り曲げられて延在する、出力端側に設けられる第2の光導波路領域とを有し、前記ダミー光導波路は、レンズアレイの光軸に対し導波路が平行に延在する第1のダミー光導波路領域と、第1のダミー光導波路領域の導波路から所定角度折り曲げられて延在する第2のダミー光導波路領域と、第2のダミー光導波路領域から所定角度折り曲げられてレンズアレイの光軸に対し導波路が平行に延在する、出力端側に設けられる第3のダミー光導波路領域とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、ダミーポートの反射光を用いた調芯を行うことにより、カメラ等の観察系のための高価な装置を必要とすることなく、レンズ設計や導波路設計に依存しない、多芯の光導波路とレンズアレイとの容易な調芯が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来のレンズ調芯方法の一例を説明するための図である。
【図2】従来のレンズ調芯方法の他の一例を説明するための図である。
【図3】本発明の光部品を搭載可能な光モジュールの概略構成を示す図である。
【図4】本発明にかかる光部品の構成の一例を説明するための図である。
【図5】本発明にかかる光部品の構成の他の一例を説明するための図である。
【図6】本発明にかかる光部品の構成の他の一例を説明するための図である。
【図7】本発明にかかる光部品の構成の他の一例を説明するための図である。
【図8】本発明にかかる光部品の構成の他の一例を説明するための図である。
【図9】本発明にかかる光部品の構成の他の一例を説明するための図である。
【図10】本発明にかかる光部品の構成の他の一例を説明するための図である。
【図11】第5の実施形態の切替領域Wの構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。図3は、本発明の光部品を搭載可能な光モジュールの概略構成を示す図である。図3に示す光モジュール500は、例えば、100G/DP−QPSK(Dual Polarization Differential Quadrature Phase Shift Keying)の光モジュールとして用いられる。光モジュール500は、PLC(Planar Lightwave circuit:平面光導波回路)510と、レンズアレイ部520と、フォトダイオード(PD:Photodiode)530と、TIA(トランスインピーダンスアンプ)540とを備えて構成される。
【0018】
PLC510には、信号光を入力するための入力ポートS1と局発光を入力するための入力ポートS2とが設けられている。また、PLC510には、光導波路によって接続されたPBS(Polarization Beam Splitter:偏向ビームスプリッタ)511a、511bと光ミキサ512a、512bとが設けられている。
【0019】
光モジュール500において、PLC510の入力ポートS1、S2から入力された信号光および局発光は、それぞれPBS511a、512bによりX偏向とY偏向に分岐される。さらに信号光および局発光のX偏向成分は、光ミキサ512aで90度ハイブリッド混合された後、さらに4つの出力光に分岐されて出力される。信号光および局発光のY偏向成分は、光ミキサ512bで光ミキサ512aと同様に処理され、4分岐されて出力される。これらの分岐出力は、光導波路を介してレンズアレイ部520に出力される。
【0020】
レンズアレイ部520は、PLC510からの出力光をPD530に結合するためのレンズで構成される。例えば、図示のように、PLCの出力端に固定したマイクロレンズアレイ513a、513bと、PD530に固定したマイクロレンズアレイ514a、514bとで構成される。なお、レンズアレイ部520を1枚レンズで構成してもよいが、本発明の光部品は、マイクロレンズアレイで構成した場合に好ましく適用できる。PD530は、受光したPLCからの出力光を電気信号に変換する。
【0021】
PD530には、TIA540が電気的に接続されており、PD530の出力電流がTIA540により差動電圧出力に変換される。光モジュール500の差動出力は、ADC、DSP等を集積した集積回路(LSI)600に接続される。
【0022】
本発明の光部品は、光モジュール500のPLC510とマイクロレンズアレイ513a、513bによって構成される部分に適用することができる。
【0023】
以下、本発明の光部品について説明する。
(第1の実施形態)
図4は本発明の第1の実施形態にかかる光部品の構成を説明するための図である。本光部品は、ダミーポートを有する多芯の光導波路アレイ1と、ダミーポートを有するレンズアレイ5とを備えている。多芯の光導波路アレイ1は、1〜複数の入力ポート、複数の出力ポートを有し、レンズアレイ5は複数の入力ポート、出力ポートを有しており、光導波路アレイ1のダミーポートと、レンズアレイ5のダミーポートを調芯(位置合わせ)したときに、光導波路アレイ1の複数の出力ポートとレンズアレイ5の複数の入力ポートも調芯される。
【0024】
多芯の光導波路アレイ1は、複数の出力ポートに接続された複数の光導波路10と、2つのダミーポートに接続された2本のダミー導波路11とを備えている。この場合、光導波路10は、複数の分岐によって、4つの出力ポートに接続されている。
【0025】
また、レンズアレイ5には、光導波路アレイ1の複数の出力ポートから出力される光を集光する複数のレンズ50aが並設されている。レンズアレイ5のダミーポートは、光導波路アレイ1のダミーポートから出力される光を光導波路アレイ1のダミーポートに反射する反射光学部品が設けられており、図4では、レンズアレイ5の2つのダミーポートにはそれぞれダミーレンズ50bが設けられている。図4では、出力ポートのレンズ50a、ダミーポートのレンズ50bとして、光軸と直交方向にレンズ内部の屈折率を変化させたGRINレンズを採用した。
【0026】
レンズアレイ5のダミーレンズ50bの反射端Rは、ダミー導波路11のダミーポートから入射される調芯のための光(テスト光)を観察可能な程度に反射できればよく、例えば、ダミーレンズ50bの反射端Rの表面に金属薄膜や誘電体多層膜を設けて反射率を調整してもよい。反射率は後述する光パワーメータ13の感度に応じて設定されてもよいし、反射端Rの反射率に応じて光パワーメータ13の感度を変更してもよい。反射端Rで反射した反射光を調芯のために利用することにより、複雑な装置によらず、レンズ調芯が容易に行える。
【0027】
因みに、ダミーポートの反射光を利用するのではなく、図5に示すように、ダミーレンズ50bから出射された光を観察して調芯することも考えられるが、カメラ等の観察系のために製造装置が複雑化したりするので好ましくない。
【0028】
ダミー導波路11の上流(テスト光入射側)には、サーキュレータ12が設けられており、レンズを調芯する際には、サーキュレータの一端に光パワーメータ13を接続する。なお、テスト光は、任意の波長の光を使用することができる。ダミー導波路11の入力ポートからテスト光を入力すると、テスト光はダミーレンズ50bの反射端Rで反射して、反射光がダミー導波路11内を入射光と反対方向に伝搬する。サーキュレータ12は、ダミー導波路11を伝搬する反射光を光パワーメータ13にドロップする。光導波路アレイ1に対するレンズアレイ5の位置を少しずつ変化させ(図示の上下方向および紙面の奥と手前方向にレンズアレイを移動させる)ながら、テスト光を入射してドロップされた反射光を光パワーメータ13で測定する。この測定結果に基づいて、レンズアレイ5の位置決めを行う。本光部品は、光導波路からの出力光をコリメート光として出力する構成であり、光導波路からの出力光をコリメート光に変換する平板状の分布屈折率(GRIN)レンズ6個を並べたレンズアレイを用いている。この構成によれば、レンズアレイ5が正しく調芯された位置にあるときに、ダミーレンズ50bの反射端Rで反射される反射光の強度が最大となるので、光パワーメータ13のモニタ結果に基づき、反射光の強度が最も大きくなった時の位置にレンズアレイ5を位置決めする。2次元的に位置決めするために、ダミーポートは2箇所に設けている。
【0029】
このように第1の実施の形態では、光導波路とレンズアレイにそれぞれ2つのダミーポートを設け、ダミーポートの反射光の光パワーが最大となるように調心すれば良いので、光導波路の回路パターンによらず、かつ複雑な装置を用いて出射ビームを観察することなく、簡便にレンズアレイを調心することが可能である。
【0030】
(第2の実施の形態)
図6は第2の実施形態にかかる光部品の構成を示す図である。この実施形態では、ダミーレンズ50bとしてのGRINレンズの屈折率分布(NA(開口数))を調整することで、レンズアレイ7が正しく調芯された位置にあるときに、ダミーポートの反射光の強度が最大となるようにしている。
【0031】
本実施形態では、ダミーレンズ50bの屈折率分布は、ダミー導波路11の中心とダミーレンズ50bの中心とが一致したときに、テスト光の波面が反射端Rと平行となるように、すなわち反射端Rに垂直にテスト光が入射されるように設定される。出力ポートのレンズ50aの屈折率分布は、ダミーレンズ50bとは関係なく、光部品に要求される出射光の焦点距離に応じて設定する。すなわち、出力ポートのレンズ50aとダミーレンズ50bとは、屈折率分布が同じであってもよいし、図示の例のように屈折率分布が異なっていてもよい。図示の例では、出力ポートのレンズ50aは、光導波路10からの光が端面Eにおいて斜めに入射するように、すなわち端面Eと入射光の波面が平行とならないように屈折率分布が設定されている。これは、光部品の出射光の焦点距離が比較的短く設定される場合の構成である。
【0032】
また、図6の例では、出力レンズ50bとしてGRINレンズを用いた場合を例に挙げて説明しているが、出力レンズ50a、ダミーレンズ50bとして、GRINレンズではなく、ガラス表面形状を成型したマイクロレンズを用いてもよい。成型マイクロレンズを用いる場合は、テスト光がマイクロレンズの表面(屈折面)に垂直入射するようにマイクロレンズの曲率等の表面形状を設定すればよい。
【0033】
この実施形態によれば、光導波路の出力ポートとダミーポートに対応するレンズ設計は必ずしも同一である必要はなく、最適な調心位置で反射光パワーが最大となるようにダミーレンズを設計しておけば、光導波路の出力ポートに対応するレンズを自由に設計できるという効果がある。
【0034】
(第3の実施形態)
図7は第3の実施形態にかかる光部品の構成を示す図である。この実施形態では、実施形態1におけるダミーレンズ50bの代わりに、シングルモードファイバ51を用いている。シングルモードファイバ51は、ダミー導波路11と同じモードフィールド径を有し、光導波路アレイ1のダミーポートから入射された光の一部を反射する。シングルモードファイバ51の反射端Rは、空気と接するために、特に反射膜を設けなくても反射が可能であるが、反射端Rに前述の反射膜を形成したほうが望ましい。
【0035】
この構成によれば、レンズアレイが正しく調芯された位置にあるとき、すなわち、シングルモードファイバ51の中心とダミー導波路11の中心とが一致したときに、光パワーメータ(図示せず)で測定される反射光のパワーが最大となる。
【0036】
この実施形態によれば、ダミーポートに対応するレンズは必ずしも集光・拡散性を有するレンズでなくとも、シングルモードファイバでも良い。シングルモードファイバを用いれば、ダミーレンズの設計に応じて調心プログラムを変更することなく、入力側光ファイバの調心と同じプログラムで容易に調心ができるという効果を奏する。
【0037】
(第4の実施形態)
図8は第4の実施形態にかかる光部品の構成を示す図である。上記2つの実施形態では、所望の反射光を得るようにレンズアレイを構成していたが、本実施形態ではダミー導波路の構成により所望の反射光が得られるようにする。具体的には、この実施形態では、ダミーポート(ダミー導波路の出力端)11aにおけるモードフィールド径を調整することによって、レンズアレイ5が正しく調芯された位置にあるときに、反射光の強度が最大となるようにしている。なお、レンズアレイ5にはダミーレンズ50bが設けられているが、このレンズ50bは、レンズアレイ5の出力ポートのレンズ50aと特に異なる構成とする必要はない。
【0038】
ダミー導波路11のダミーポート11aのモードフィールド径は、テスト光の波長とダミーレンズ50bの厚さDおよび開口数NAに基づいて設定される。図示のように、ダミー導波路11のダミーポートの中心とダミーレンズ50bの中心とが一致したときに、上記実施例と同様、テスト光の波面が反射端Rに平行に入射するように、ダミーレンズ50bの入力端であるビームウエスト位置の間隔Bが決定される。ダミー導波路11のダミーポート11aの出力端におけるモードフィールド径Mは、このビームウエスト位置の間隔Bと同じ大きさに設定される。モードフィールド径を設定する手段は、ファイバのコア径を調整するなど、既知の方法を使用することができる。
【0039】
図8に示す例では、ダミー導波路11のダミーポート11aのモードフィールド径が次第に拡大するテーパ形状を採用しているが、ダミー光導波路11の全経路においてモードフィールド径をMに一致させるようにしてもよい。
【0040】
この実施形態によれば、レンズアレイの出力ポートとダミーポートの設計を特に異なるものを用いずとも、光導波路のダミーポートの出力モードフィールド径を調整すれば、ダミーポートの反射を用いた調心が可能となる。一般にレンズアレイにおいてレンズごとに異なる設計を行うのは技術的に難易度が高く高価になりがちで、作製方法によっては不可能な場合もある。本実施形態の構成によればこれらの問題なく光導波路とレンズアレイの調心が可能となるという効果がある。
【0041】
(第5の実施形態)
図9は第5の実施形態にかかる光部品の構成を示す図である。本実施形態でもダミー導波路の構成により所望の反射光が得られるようにする。この実施形態では、ダミー導波路11の出力端に所定の大きさのスラブ導波路11bを配置することによって、レンズアレイ5が正しく調芯された位置にあるときに、ダミー導波路11に反射される反射光の強度が最大となるようにしている。
【0042】
スラブ導波路11bは、テスト光の波長とダミーレンズ50bの厚さDおよび開口数NAに基づいて光軸方向の長さSが設定される。すなわち、ダミー導波路11におけるダミーポートの中心とダミーレンズ50bの中心とが一致したときに、テスト光の波面が反射端Rに平行に入射するように、ダミー導波路11のスラブ導波路11bからダミーレンズ50bの反射端Rまでの長さ(図示ではD+S)が決定される。したがって、スラブ導波路11bの長さSは、この決定された長さからダミーレンズ50bの厚さを減じた値に設定すればよい。
【0043】
この実施形態によれば、ダミーレンズの設計自由度が格段に高まるという効果が生じる。すなわち、第4の実施形態の場合には、光導波路のモードフィールド径の調整範囲は限界があり、例えば限られた回路スペースで多モード化させずに数10μm以上のモードフィールド径を得るのは実際のところ容易ではない。これに対して、本実施形態は、モードフィールド径を調整するのではなく、スラブ導波路を用いて光導波路の出射端位置を変化させるものであるので、モードフィールド径調整の制約を受けない。なお、実際には、第4、第5の実施形態を併用するのが効果的である。すなわち、スラブ導波路の長さSによって光導波路出射端位置を調整するとともに、スラブ導波路に入力する光導波路のモードフィールド径を調整すれば良い。
【0044】
(第6の実施形態)
図10は第6の実施形態にかかる光部品の構成を示す図である。この実施形態は、上記実施形態(第1乃至第5の実施形態)において、光部品からの出射角度を傾けるために、光導波路10のパターンをその出力ポート付近の切替領域Wにおいて折曲げて構成する場合に好ましく用いられる構成である。ダミー導波路11の出力ポート付近のパターンは、レンズアレイ7のダミーレンズ50bに垂直に入射するように形成される。
【0045】
図11に、図10の切替領域Wについて示す。出力ポートの光導波路10は、出射端付近の切替領域Wにおいて、光導波路10のパターンを一定の角度で曲げて、ポート位置をFだけずらしている。一方、ダミー導波路11は、レンズアレイ7のダミーレンズ50bに垂直に入射するように出力端部分W1のパターンが形成され、その他の部分W2が光導波路10の切替領域W3よりも急角度に折り曲げられて、切替領域Wにおいてポート位置がFだけずれるようにパターンを設定する。
【0046】
この実施形態によれば、ダミーレンズ50bに対してはテスト光が垂直に入射されるので、光部品からの出射角度がレンズアレイに対して傾いている場合でも、製造の際のレンズ調芯が容易に行える。
【0047】
以上の実施形態において、特に説明のない限り、レンズ50、51は、GRINレンズ、マイクロレンズなどのレンズアレイを構成し得るレンズであれば特に限定されない。
【符号の説明】
【0048】
1 多芯の光導波路
5、6、7、8 レンズアレイ
10 本ポートの光導波路
11 ダミーポートの光導波路
20 レンズ部分
50 レンズ
51 シングルモードファイバ
100 多芯の光ファイバ
200 レンズアレイ
300 カメラ
L 光
R 反射端
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の出力ポートに接続される光導波路と、ダミーポートに接続されるダミー光導波路を有する多芯の光導波路アレイと、
前記光導波路の複数の出力ポートから出力される光を集光する複数のレンズと、前記光導波路アレイのダミーポートから出力される光を当該ダミーポートに反射する反射光学部品とが並設されるレンズアレイと、
を備え、
前記ダミーポートを介してダミー光導波路に反射された反射光を用いて多芯の光導波路アレイに対するレンズアレイの調芯が可能な光部品。
【請求項2】
レンズアレイが調芯された位置にあるときに、前記反射光の強度が最大となるように、前記反射光学部品を設定することを特徴とする請求項1に記載の光部品。
【請求項3】
前記反射光学部品は、レンズアレイが調芯された位置にあるときに、前記反射光の強度が最大となるように、屈折率分布が設定されたレンズであることを特徴とする請求項2に記載の光部品。
【請求項4】
前記反射光学部品は、シングルモードファイバであることを特徴とする請求項2に記載の光部品。
【請求項5】
レンズアレイが調芯された位置にあるときに、前記反射光の強度が最大となるダミー導波路を用いることを特徴とする請求項1に記載の光部品。
【請求項6】
前記ダミー導波路は、レンズアレイが調芯された位置にあるときに、前記反射光の強度が最大となるモードフィールド径を有することを特徴とする請求項5に記載の光部品。
【請求項7】
前記ダミー導波路は、レンズアレイが調芯された位置にあるときに、前記反射光の強度が最大となる光軸方向の長さを有するスラブ導波路であることを特徴とする請求項5に記載の光部品。
【請求項8】
前記光導波路は、レンズアレイの光軸に対し導波路が平行に延在する第1の光導波路領域と、第1の光導波路領域の導波路から所定角度折り曲げられて延在する、出力端側に設けられる第2の光導波路領域とを有し、
前記ダミー光導波路は、レンズアレイの光軸に対し導波路が平行に延在する第1のダミー光導波路領域と、第1のダミー光導波路領域の導波路から所定角度折り曲げられて延在する第2のダミー光導波路領域と、第2のダミー光導波路領域から所定角度折り曲げられてレンズアレイの光軸に対し導波路が平行に延在する、出力端側に設けられる第3のダミー光導波路領域とを有することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の光部品。
【請求項1】
複数の出力ポートに接続される光導波路と、ダミーポートに接続されるダミー光導波路を有する多芯の光導波路アレイと、
前記光導波路の複数の出力ポートから出力される光を集光する複数のレンズと、前記光導波路アレイのダミーポートから出力される光を当該ダミーポートに反射する反射光学部品とが並設されるレンズアレイと、
を備え、
前記ダミーポートを介してダミー光導波路に反射された反射光を用いて多芯の光導波路アレイに対するレンズアレイの調芯が可能な光部品。
【請求項2】
レンズアレイが調芯された位置にあるときに、前記反射光の強度が最大となるように、前記反射光学部品を設定することを特徴とする請求項1に記載の光部品。
【請求項3】
前記反射光学部品は、レンズアレイが調芯された位置にあるときに、前記反射光の強度が最大となるように、屈折率分布が設定されたレンズであることを特徴とする請求項2に記載の光部品。
【請求項4】
前記反射光学部品は、シングルモードファイバであることを特徴とする請求項2に記載の光部品。
【請求項5】
レンズアレイが調芯された位置にあるときに、前記反射光の強度が最大となるダミー導波路を用いることを特徴とする請求項1に記載の光部品。
【請求項6】
前記ダミー導波路は、レンズアレイが調芯された位置にあるときに、前記反射光の強度が最大となるモードフィールド径を有することを特徴とする請求項5に記載の光部品。
【請求項7】
前記ダミー導波路は、レンズアレイが調芯された位置にあるときに、前記反射光の強度が最大となる光軸方向の長さを有するスラブ導波路であることを特徴とする請求項5に記載の光部品。
【請求項8】
前記光導波路は、レンズアレイの光軸に対し導波路が平行に延在する第1の光導波路領域と、第1の光導波路領域の導波路から所定角度折り曲げられて延在する、出力端側に設けられる第2の光導波路領域とを有し、
前記ダミー光導波路は、レンズアレイの光軸に対し導波路が平行に延在する第1のダミー光導波路領域と、第1のダミー光導波路領域の導波路から所定角度折り曲げられて延在する第2のダミー光導波路領域と、第2のダミー光導波路領域から所定角度折り曲げられてレンズアレイの光軸に対し導波路が平行に延在する、出力端側に設けられる第3のダミー光導波路領域とを有することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の光部品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−191647(P2011−191647A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59330(P2010−59330)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、総務省、「超高速光伝送システム技術の研究開発(デジタルコヒーレント光送受信技術)」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、総務省、「超高速光伝送システム技術の研究開発(デジタルコヒーレント光送受信技術)」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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