説明

光配向用偏光光照射装置

【課題】300nm以下の波長領域でも良好な消光比の偏光光を得ことができ、また、この波長領域において、偏光素子に入射する光の角度が異なっても、透過率が変化せず、また偏光軸が回転することがない光配向用偏光光照射装置を提供すること。
【解決手段】ワーク4が図中矢印方向に搬送され、光照射部6からの光はワイヤーグリッド型偏光素子1により偏光され、光照射部6の下を搬送されるワーク4に照射され、光配向処理が行われる。ワイヤーグリッド型偏光素子1のグリッドは酸化チタン(TiOx)により形成されており、波長240nm−300nmの範囲において、消光比が15:1以上の偏光光を得ることができ、波長が300nm以下の領域において、偏光素子に入射する光の角度が異なっても透過率が変化することがなく、ワイヤーグリッド型偏光素子に入射する光の角度が異なっても、偏光軸が回転することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルの配向膜や、視野角補償フィルムの配向層などに所定の波長の偏光光を照射して配向を行なう光配向用偏光光照射装置に関し、特に、線状の光源である棒状ランプとワイヤーグリッド型偏光素子を組み合わせた光配向用偏光光照射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネルの配向膜や、視野角補償フィルムの配向層などの配向処理に関し、配向膜に所定の波長の偏光光を照射することにより配向を行なう、光配向と呼ばれる技術が採用されるようになってきている。
以下、上記光により配向を行う配向膜や配向層を設けたフィルムのことを総称して光配向膜と呼ぶ。光配向膜は、液晶パネルの大型化と共に大面積化(例えば一辺が2m以上の四角形)しており、それと共に光配向膜に偏光光を照射する偏光光照射装置も大型化している。
近年、このような大面積の光配向膜に対して光配向を行うために、棒状ランプとワイヤーグリッド状のグリッドを有する偏光素子(以下、ワイヤーグリッド型偏光素子という)を組み合せた光照射装置が提案されている(例えば特許文献1や特許文献2参照)。
光配向膜用の偏光光照射装置において棒状ランプは、発光長が比較的長いものを作ることができる。そのため、配向膜の幅に応じた発光長を備えた棒状ランプを使用し、該ランプからの光を照射しながら、配向膜をランプの長手方向に直交する方向に移動させれば、広い面積の配向膜を比較的短時間で光配向処理を行なうことができる。
【0003】
図8に、線状の光源である棒状ランプとワイヤーグリッド型偏光素子を組み合わせた偏光光照射装置の構成例を示す。
同図において、光配向膜であるワーク40は、例えば視野角補償フィルムのような帯状の長尺ワークであり、送り出しロールR1から送り出され、図中矢印方向に搬送され、後述するように偏光光照射により光配向処理され、巻き取りロールR2により巻き取られる。
偏光光照射装置の光照射部20は、光配向処理に必要な波長の光(紫外線)を放射する棒状ランプ21、例えば高圧水銀ランプや水銀に他の金属を加えたメタルハライドランプと、棒状ランプ21からの紫外線をワーク40に向けて反射して集光する集光鏡22備える。 上記のように、棒状ランプ21の長さは、発光部が、ワーク40の搬送方向に直交する方向の幅に対応する長さを備えたものを使用する。光照射部20は、ランプ21の長手方向がワーク40の幅方向(搬送方向に対して直交方向)になるように配置する。
【0004】
光照射部20の光出射側には、偏光素子であるワイヤーグリッド型偏光素子10が設けられる。光照射部20からの光はワイヤーグリッド型偏光素子10により偏光され、光照射部20の下を搬送されるワーク40に照射され、光配向処理が行われる。
ワイヤーグリッド型偏光素子については、例えば特許文献3や特許文献4に詳細が示されている。
図9にワイヤーグリッド型偏光素子の概略の構造を示す。
ワイヤーグリッド型偏光素子10は、偏光したい光の波長(光配向の場合は、光配向を行うために必要な紫外線の波長)を透過する基板(例えば石英)10bの表面に、長さが幅よりもはるかに長い複数の直線状の電気導体(例えばクロムやアルミニウム等の金属線、以下グリッド10aと呼ぶ)を、ピッチPの等間隔で平行に配置したものである。
なお、基本的には、グリッド10aのピッチPを狭くすると、偏光する光の波長が短くなる。
【0005】
光路中にこの偏光素子を挿入すると、グリッドの長手方向に平行な偏光成分は大部分反射され、直交する偏光成分は通過する。したがって、ワイヤーグリッド型偏光素子を通過した光は、偏光素子のグリッドの長手方向に直交する方向の偏光軸を有する偏光光となる。
なお、グリッドを形成する製造方法や材質については、改良や新しい提案がなされており、そのようなものに例えば特許文献5がある。
【0006】
従来、光配向膜用の偏光光照射装置として、線状の光源である棒状ランプにワイヤーグリッド型偏光素子を組み合わせることが行われていたのは次のような理由からである。
棒状ランプからの光は発散光であり、ランプの出射側に偏光素子を配置して偏光光を得ようとしても、偏光素子にはさまざまな角度の光が入射する。
偏光素子としては、蒸着膜やブリュースタ角を利用したものが知られている。
しかし、これらの偏光素子は、偏光素子に決まった角度で入射する光しか偏光することができず、それ以外の角度で入射した光は、ほとんど偏光せずに通過してしまう。そのため、光源が発散光の場合、蒸着膜やブリュースタ角を利用した偏光素子を使用すると、偏光素子に入射する光を平行光にして入射角度をそろえた場合に比べると、得られる偏光光の消光比が悪くなる。
また、有機膜を利用した偏光素子もあるが、これは、光配向のために使用される紫外域の光を長時間照射すると特性が劣化するので、工業的に使用することは難しい。
【0007】
これに対して、ワイヤーグリッド型偏光素子は、偏光素子に入射する光の角度に対する出射する偏光光の消光比の依存性が小さい。そのため、棒状ランプから出射する光のような発散光であっても、入射角度が±45°の範囲であれば、光が照射される領域全体にわたって、比較的良好な消光比の偏光光が得られる。
そのため、棒状ランプの長さを、光配向膜の幅に対応させて設け、光配向膜を偏光光照射装置に対して相対的に一方向に移動させれば、原理的には1本のランプで、広い面積の光配向膜の配向処理を行うことができる。
棒状ランプにワイヤーグリッドの偏光素子を組み合わせれば、光源からの光を平行光とするための光学素子が不要であり、装置全体を安価に製作することができる。
【0008】
【特許文献1】特開2004−163881号公報
【特許文献2】特開2004−144884号公報
【特許文献3】特開2002−328234号公報
【特許文献4】特表2003−508813号公報
【特許文献5】特開2007−178763号公報
【非特許文献1】H.Shitomi.et.al.「Optically Controlled Alignment of Liquid Crystal on Polyimide Films Exposed to Undulator Radiation」Proc.Int.Conf.SRMS-2 Jpn.J.Appl.Phys.Vol.38(1999).pp.176-179
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来は波長300nm−500nmの偏光光で配向する光配向膜が多かった。しかし、最近、波長300nm以下(200nm〜300nm)の偏光光で配向する光配向膜も作られるようになってきた(非特許文献1参照)。
そのため、偏光光照射装置として、波長300nm以下(200nm−300nm)の偏光光を出射する装置、特に260nm±10nm(望ましくは260nm±20nm)の波長領域で消光比が15:1以上の偏光光が得られるような装置が求められるようになってきた。
しかし、そのような装置を、棒状ランプとワイヤーグリッド型偏光素子の組み合わせで製作しようとすると、次のような問題がある。
ワイヤーグリッド型偏光素子のグリッドはエッチングにより形成される。そのため、グリッドの材料として、従来は、加工が容易なアルミが使われることが多かった。しかし、グリッドをアルミで形成した場合、以下の3つの問題が生じることを、本発明者は発見した。
【0010】
(その1):波長が300nm以下の領域では、偏光光の消光比が低下し、約250nm以下の波長領域では消光比が1:1になる(偏光しなくなる)。
(その2):波長が340nm以下の領域では、ワイヤーグリッド型偏光素子に入射する光の角度によって、透過率が変化する。上記したように、棒状ランプからの光は発散光である。そのため、偏光素子に入射する光の角度は場所により異なる(ランプの直下即ち偏光素子の中央部では入射角度の小さな光の成分が多く、周辺部では入射角度の大きな光の成分が多い)。したがって、偏光素子に入射する光の角度によって透過率が変化すると、出射する偏光光には照度むらが生じる(偏光光照射領域の照度分布が大きくなる)。
(その3):ワイヤーグリッド型偏光素子に入射する光の角度が大きくなると、偏光素子から出射する偏光光の方向が変化する。即ち、偏光素子への入射角度が大きくなるにつれて、出射する偏光光の偏光軸の回転角度が大きくなる。
上記のように、偏光素子に入射する光の角度は、偏光素子の中央部では入射角度の小さな光の成分が多く、周辺部では入射角度の大きな光の成分が多い。そのため、偏光光が照射される照射領域の中央部では、偏光光の偏光軸の方向は所望の方向に向いていたとしても、周辺部では、偏光光の偏光軸の方向は、所望の方向から回転してずれる。即ち、偏光光の照射領域において、偏光軸に方向にばらつきが生じる。
偏光光の照射領域において、偏光光の照度むらや偏光軸の方向にばらつきがある状態で処理すると、配向膜に、所望の配向特性が得られない部分が生じることがある。
【0011】
本発明は、上述した事情によりなされたものであって、線状の光源とワイヤーグリッド型偏光素子を組み合わせ、光配向膜に対して偏光光を照射する偏光光照射装置において、300nm以下の波長領域でも良好な消光比の偏光光を得ことができ、また、波長が300nm以下の領域において、偏光素子に入射する光の角度が異なっても透過率が変化することがなく、さらに、ワイヤーグリッド型偏光素子に入射する光の角度が異なっても、出射する偏光光の方向が変化する(偏光軸が回転する)ことがない光配向用偏光光照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者が鋭意検討の結果、ワイヤーグリッド型偏光素子のグリッドを、酸化チタン(TiOx)により形成することにより、上記の課題を解決することができることを見出した。
すなわち、酸化チタン(TiOx)で形成したグリッドを有する偏光素子を用いれば、300nm以下の波長領域でも良好な消光比の偏光光を得ことができ、光配向膜の感度が200〜300nmの範囲にあるワークであっても、効果的に光配向処理を行うことができる。
以上に基づき、本発明においては、線状の光源からの光をワイヤーグリッド型偏光素子により偏光して出射する光照射部を備え、該光照射部からの偏光光を、配向膜に対して照射する光配向用偏光光照射装置において、上記ワイヤーグリッド型偏光素子のグリッドを、酸化チタン(TiOx)により形成する。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、以下の効果を得ることができる。
(1)ワイヤーグリッド型偏光素子のグリッドを、酸化チタン(TiOx)により形成することにより、300nm以下の波長領域でも、良好な消光比の偏光光が得られる。
具体的には、260nm±20nmの範囲で、15:1以上の消光比を得ることができる。
このため、上記ワイヤーグリッド型偏光素子と線状の光源を用いて、光配向用偏光光照射装置の光照射部を構成することにより、光配向膜の感度が200〜300nmの範囲にあるワークの光配向を効果的に行うことが可能となる。
(2)上記ワイヤーグリッド型偏光素子を用いることにより、波長が300nm以下の領域において、偏光素子に入射する光の角度が異なっても、透過率が変化することがほとんどない。
(3)また、上記ワイヤーグリッド型偏光素子を用いることにより、ワイヤーグリッド型偏光素子に入射する光の角度が異なっても、出射する偏光光の方向が変化する(偏光軸が回転する)ことがほとんどない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に、本発明の実施例の偏光光照射装置の構成例を示す。
光照射部6には、図8と同様に、線状の光源である、高圧水銀ランプや、水銀に金属を加えたメタルハライドランプ等の棒状のランプ2と、ランプ2からの光を反射する樋状の反射鏡3が内蔵されている。また光出射側にはワイヤーグリッド型偏光素子1が設けられている。ここで、棒状の高圧水銀ランプやメタルハライドランプは、波長300nm以下の光を放射する光源として知られている。
なお、同図では、図8と異なり、光配向膜が形成されているワーク4は、帯状のワークではなく光透過性の基板上に光配向膜4aが形成されたパネル基板であり、ワークステージ5上に載置される。この光配向膜4aの感度は例えば200〜300nmの範囲にある。
【0015】
パネル基板の場合も、帯状ワークの場合と同様に、パネル基板の幅に対応する発光長を備えたランプを使用し、ワーク4を、偏光光が照射されている領域に対して、ランプ2の長手方向に対して直交方向に相対的に移動させて光配向処理を行う。
すなわち、ワーク4が図中矢印方向に搬送され、光照射部6からの光はワイヤーグリッド型偏光素子1により偏光され、光照射部6の下を搬送されるワーク4に照射され、光配向処理が行われる。
以下、線状の光源として棒状ランプを例にして説明するが、近年は、紫外光を放射するLEDやLDも実用化されており、このようなLEDまたはLDを直線状に並べて配置し線状光源としても良い。なおその場合は、LEDまたはLDを並べる方向がランプの長手方向に相当する。
【0016】
図2に本発明の実施例のワイヤーグリッド型偏光素子の構成を示す。
同図に示すように、ワイヤーグリッド型偏光素子のグリッドを、酸化チタン(TiOx)により形成する。
酸化チタンのグリッド1aは、200nm〜300nmの波長の光を透過する基板(例えば石英やフッ化マグネシウム等)1bの表面に形成する。グリッドのピッチは150nmである。また、グリッド1aの高さは100nm以上である。
なお、ワイヤーグリッド型の偏光素子は大きなものは作れないので、実際に光照射部6の光出射側に配置する際には、図3に示すように、フレーム1cに、同じ種類のワイヤーグリッド型偏光素子1を複数並べて構成する。偏光素子の個数は、偏光光を照射する領域の大きさに合わせて適宜選択する。
【0017】
図4に、ワイヤーグリッド型偏光素子に入射する非偏光光の波長と、出射する偏光光の消光比との関係を示す。同図において、横軸は光の波長(nm)であり、縦軸は消光比を対数で示したものである。
図4において、A(菱形プロット)はグリッドを酸化チタンで形成した場合であり、B(三角プロット)はグリッドをアルミで形成した場合である。なお、両者ともグリッドのピッチは150nmである。
同図に示されるように、グリッドをアルミで形成した場合、波長300nm以上の領域では、50:1以上の良好な消光比が得られる。しかし、波長300nm以下の領域では、消光比は低下し、波長約270nmにおいて、消光比は約10:1になり、波長約250nmにおいて、消光比は約1:1になり偏光光が得られなくなる。
これに対して、グリッドを酸化チタンで形成した場合、波長300nm以下の領域における消光比は、アルミの場合に比べて良好で、波長240nm−300nmの範囲において、消光比が15:1以上の偏光光を得ることができる。なお、240nm以下の点線は推測値である。
【0018】
上記したように、現在、260nm±10nm(望ましくは260nm±20nm)の波長領域で消光比が15:1以上の偏光光が得られるような装置が求められているが、グリッドを酸化チタンで形成したワイヤーグリッド型偏光素子を用いれば、この要請にこたえることができる。
なお、理論的には、グリッドをアルミで形成しても、ピッチを狭くすれば、短い波長の光を偏光することができるはずである。しかし、実際にピッチを狭くすると、グリッドが欠けたり、蛇行したりして、出射する偏光光の質が低下し、その結果、消光比が15:1以上の偏光光を得ることができなかった。現状では、150nmよりも狭いピッチのワイヤーグリッド型偏光素子であって、工業的に使用できるものを作ることは困難である。
【0019】
図5に、ワイヤーグリッド型偏光素子に入射する非偏光光の角度と、その角度で入射した光の分光透過率を示す。図5(a)はグリッドを酸化チタンで形成した場合の実験結果であり、図5(b)はグリッドをアルミで形成した場合の実験結果である。
両方の図とも、横軸はワイヤーグリッド型偏光素子に入射する光の波長(nm)であり、縦軸は光の透過率(%)である。それぞれ、ワイヤーグリッド型偏光素子に入射する光の角度(入射角)が、0°(垂直入射)の場合、30°の場合、45°の場合について測定した。
グリッドを酸化チタンで形成した場合も、アルミで形成した場合も、波長が340nm以上の領域では、偏光素子に入射する光の角度が変化しても透過率は変わらない。
しかし、図5(b)に示されるように、グリッドをアルミで形成した場合は、波長が340nm以下の領域では、入射角が大きくなると、特定の波長領域において透過率が低下している。
【0020】
例えば、偏光素子に入射する角度が30°の光の透過率は、波長270nm〜300nmの領域において、入射角度が0°の光に比べて、透過率が約10%低下することがある。また、偏光素子に入射する角度が45°の光の透過率は、波長280nm〜340nmの領域において、入射角度が0°の光に比べて、透過率が約15%低下することがある。 上記したように、光源として棒状ランプを使用する場合、棒状ランプからの光は発散光であり、ランプの直下即ち偏光素子の中央部では入射角度の小さな光の成分が多く、周辺部では入射角度の大きな光の成分が多い。
したがって、上記のように、光の入射角度が大きくなることで光の透過率が低下すると、偏光光が照射される領域の周辺部では偏光光の照度が小さくなる。したがって、偏光光照射領域の周辺部では、光配向膜の光配向処理が十分に行えない。
これに対し、図5(a)に示されるように、グリッドを酸化チタンで形成した場合は、入射角が0°、30°、45°のいずれ場合においても、200nm〜300nmの波長領域において透過率にほとんど差がない。したがって、偏光光が照射される照射領域において、偏光光の照度むらのない(照度均一度の高い)照射ができる。したがって、偏光光が照射される全領域において、光配向膜の光配向処理を十分に行うことができる。
【0021】
図6に、ワイヤーグリッド型偏光素子に入射する非偏光光の角度と、出射する偏光光の偏光軸の回転量の関係を示す。横軸はワイヤーグリッド型偏光素子に入射する光の角度(°)であり、縦軸は出射する偏光光の偏光軸の回転量(°)である。
偏光軸の回転量は、入射角度が0°の場合の偏光軸の方向を基準として、そこからの回転角度を示している。
なお、ワイヤーグリッド型偏光素子に入射する光の波長は、グリッドを酸化チタンで形成した偏光素子の場合は254nmであり、グリッドをアルミで形成した偏光素子の場合は365nmである。
同図に示されるように、グリッドをアルミで形成した場合、光の入射角度が大きくなるにつれて、出射する偏光光の偏光軸の回転量が大きくなり、入射角度が45°の場合、偏光軸は約6°回転する。
【0022】
上記したように、偏光素子の中央部では入射角度の小さな光の成分が多く、周辺部では入射角度の大きな光の成分が多ので、光の入射角度が大きくなることで偏光光の偏光軸の回転量が大きくなると、偏光光が照射される領域の周辺部では、偏光光の偏光軸の方向が所望の方向から大きく回転してしまう(ずれてしまう)。したがって、偏光光照射領域の周辺部では、光配向膜を所望の方向に光配向処理することができなくない。
これに対して、グリッドを酸化チタンで形成した場合、光の入射角度が変化しても、出射する偏光光の偏光軸はほとんど回転しない。
したがって、偏光光が照射される領域全体にわたって、偏光軸のばらつきのない照射ができる。したがって、偏光光が照射される全領域において、光配向膜を所望の方向に光配向処理することができる。
【0023】
図7に、本発明の偏光光照射装置の他の構成例を示す。
同図は、棒状ランプ2と集光鏡3、及びグリッドを酸化チタンで形成したワイヤーグリッド型偏光素子1を備えた光照射部6を、複数、ワーク4が搬送される方向に並べて設けたものである。光配向膜4aが形成されているワーク4はワークステージ5上に載置され、同図の矢印方向に搬送される。
光照射部6を複数設けることにより、ワーク4上の光配向膜4aに照射される偏光光の照射量を増やすことができるので、ワーク4の搬送速度を早くすることがでる。したがって、光配向のスループット(単位時間当たりの処理枚数)を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例の偏光光照射装置の構成例を示す図である。
【図2】本発明の実施例のワイヤーグリッド型偏光素子の構成例を示す図である。
【図3】複数の偏光素子を並べて配置したワイヤーグリッド型偏光素子の構成例を示す図である。
【図4】ワイヤーグリッド型偏光素子に入射する非偏光光の波長と、出射する偏光光の消光比との関係を示す図である。
【図5】ワイヤーグリッド型偏光素子に入射する非偏光光の角度と、その角度で入射した光の分光透過率を示す図である。
【図6】ワイヤーグリッド型偏光素子に入射する非偏光光の角度と、出射する偏光光の偏光軸の回転量の関係を示す図である。
【図7】本発明の偏光光照射装置の他の構成例を示す図である。
【図8】棒状ランプとワイヤーグリッド型偏光素子を組み合わせた偏光光照射装置の構成例を示す図である。
【図9】ワイヤーグリッド型偏光素子の概略の構造を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
1 ワイヤーグリッド型偏光素子
1a ワイヤーグリッド
1b 基板
1c フレーム
2 棒状のランプ
3 反射鏡
4 ワーク
4a 光配向膜
5 ワークステージ
6 光照射部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状の光源からの光をワイヤーグリッド型偏光素子により偏光して出射する光照射部を備え、該光照射部からの偏光光を配向膜に対して照射する光配向用偏光光照射装置において、
上記ワイヤーグリッド型偏光素子のグリッドは、酸化チタンにより形成されている
ことを特徴とする光配向用偏光光照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−265290(P2009−265290A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113421(P2008−113421)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】