説明

光配線ユニット

【課題】 コネクタ支持ユニットと光分岐モジュールとの間隔を狭めて配置しても、規定の曲げ半径を確保する。
【解決手段】 光コネクタアダプタ8は、光モジュール108から引き出された光ファイバ191,192の光コネクタ193との接続光軸Aが、光コネクタ193が挿入される入口よりも奥側が上となるように傾斜する向きでコネクタ支持ユニット5に支持されており、光ファイバ191,192に、光ファイバ挿通口194よりも下側に撓まされた湾曲下端部191a,192aが形成されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブルをコネクタ接続を介して光ファイバ心線へ接続する光配線ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、光ファイバネットワークにおいて、例えば、光ファイバケーブルを光コネクタ接続により光ファイバ心線へ分岐接続するには、多数の局内外光ファイバを成端して大群構成とする光配線架等の光配線ユニットが使用される。特に加入者系伝送路に用いられる光配線架としては、FTM(Fiber Termination Module)が用いられる。光配線架としては、架体(ラック)に光パルス試験器を搭載し、この光パルス試験器から出力した試験光を光線路に送入して線路管理を行うようにした構成のものが広く採用されている。(例えば、特許文献1等参照。)。
【特許文献1】特開平9−258055号公報
【0003】
図6、図7、図8は、上述した光配線架101の一例を示す。
図6において、符号102はラック、103はモジュール収納棚、104はコネクタ支持ユニット、106は光スイッチ、107は光スイッチコントローラである。
なお、図6〜図8において、上側を「上」、下側を「下」として説明する。
光配線架101は、光分岐モジュール108を収納するモジュール収納棚103と、このモジュール収納棚103上に設置されたコネクタ支持ユニット104とを具備してなるモジュール収納ユニット103Aを、ラック102に上下多段に搭載した構成になっている。
【0004】
図7において、モジュール収納棚103は、光分岐モジュール108を収納するものである。光分岐モジュール108は、外観薄板状に形成されたケース状のモジュール本体110内に光カプラ112等の光部品、光ファイバ109等を収納しており、架体(ラック102)の前面側(図7左側)に配線された光ファイバ109cが前記光ファイバ109と接続され、モジュール本体110に取り付けられた光コネクタ(ここでは光コネクタアダプタ111)に架体背面側(図7右側)に配線された光ファイバ109dが接続されることで、架体の両側の光ファイバ109c、109dが、モジュール本体110内の光ファイバ109を介して光接続されるようになっている。これにより、例えば、光ファイバ109cとして採用した多心光ファイバテープ心線と、複数本の単心の光ファイバ109dとの分岐接続を実現できる。
光分岐モジュール108は、モジュール収納棚103に、モジュール本体110の一端部の光コネクタアダプタ111が架体背面側となる向きで、縦置き横並びに複数配列させて収納されるようになっており、架体背面側の光ファイバ109dは、該光ファイバ109d先端の光コネクタ109eを光コネクタアダプタ111に接続することで、モジュール本体110内側から光コネクタアダプタ111にコネクタ接続されている光ファイバ109と、光コネクタアダプタ111を介して光接続される。
【0005】
光コネクタアダプタ111としては、例えば、SC形(SC:Single fiber Coupling optical fiber connector)の多連(4連、8連等)光コネクタアダプタであり、光ファイバ109d先端の光コネクタ109e(この場合、光コネクタアダプタに対応して、SC形光コネクタ(光コネクタプラグ)を採用する)が切り替え可能にコネクタ接続される構成が広く採用されている。但し、モジュール本体110内の光ファイバ109と光ファイバ109dとを接続する光コネクタアダプタ111及び光コネクタ109eとしてはこれに限定されず、例えば、SC形光コネクタ以外の単心用の光コネクタや、MPO形光コネクタ(MPO:Multifiber Push-On。JIS C 5982に制定されるもの等)等の多心用の光コネクタを採用することも可能である。また、光分岐モジュール108としては、光ファイバ109d先端の光コネクタ109eが接続されるポートが1つのみの光コネクタアダプタを複数集合設置した構成や、前述の多連のSC形光コネクタアダプタのように複数のポートを有する多連のものを1又は複数設置した構成を適宜選択可能である。
【0006】
一方、架体前面側の光ファイバ109cと、モジュール本体110内の光ファイバ109との光接続部は、モジュール本体110内に収納される。図7に示す例では、光ファイバ109、109c同士の光接続部として光コネクタ113を採用しているが、これに限定されず、例えば、融着接続部等も採用可能である。また、光接続部から延びる光ファイバ109cは、モジュール本体110の他端部(光コネクタアダプタ111が取り付けられている一端部とは逆の側)から光分岐モジュール108の外側に延出されている。
【0007】
前述の光分岐モジュール108では、架体両側の光ファイバ109c、109dを、モジュール本体110内の光ファイバ109を介して接続すると、光ファイバ109の途中に設けられている光カプラ112が、光ファイバ109、109c、109dによって構成される光線路の途中に介在される。光ファイバ109は、光カプラ112を介して別の光ファイバ191、192と光接続されており、光分岐モジュール108内の光ファイバ109を介して光ファイバ109c、109dが接続されると、光ファイバ109、109c、109dによって構成される光線路が、光カプラ112を介して、前記光ファイバ191、192に光分岐される。
【0008】
光ファイバ191、192は、光分岐モジュール108のモジュール本体110の他端部の上部に設けられている光ファイバ挿通口194から光分岐モジュール108の外に引き出されている。この光ファイバ191、192のモジュール本体110から延びる先端は、光コネクタ193によってコネクタ接続可能に成端されており、モジュール収納棚103上のコネクタ支持ユニット104の前面側端部(図7左側)に取り付けられている光コネクタ141に着脱可能に接続される。
光コネクタ141は、ラック102に搭載されている光スイッチ106(ファイバセレクタ)とコネクタ支持ユニット104との間を接続する光ファイバ142をコネクタ接続可能に成端するものであり、具体的には、図8に示すように、前記光ファイバ142のコネクタ支持ユニット104内に収納された先端をコネクタ接続可能に成端した光コネクタ17を収納した構造の光コネクタアダプタである(以下、光コネクタ141を光コネクタアダプタとも言う)。光ファイバ191、192先端の光コネクタ193は、架体前面側から光コネクタアダプタ141に押し込むようにして挿入することで、光コネクタアダプタ141内の光コネクタと接続される。光コネクタ17,193としては、例えば、MT形光コネクタ(MT:Mechanically Transferable。JIS C 5981に制定されるもの等)などが好適に用いられる。
なお、符号107の光スイッチコントローラは、光スイッチ106の駆動を制御するものである。
【0009】
モジュール収納棚103に収納された光分岐モジュール108から架体前面側に向けて延出する光ファイバ191、192先端の光コネクタ193を、コネクタ支持ユニット104の光コネクタアダプタ141に接続するには、光ファイバ191、192を半円あるいはU字を描くように湾曲させて、先端の光コネクタ193(具体的には、光コネクタ193先端の接続端面)が架体背面側(図8右側)を向くように、先端の向きを反転させ、架体前面側から光コネクタアダプタ141に押し込むようにして挿入する。この接続作業の完了後も、光ファイバ191、192自身の剛性によって、光ファイバ191、192の、半円状あるいはU字状の湾曲状態は維持される。光コネクタアダプタ141に挿入した光コネクタ193は、光コネクタアダプタ141に回転自在に枢着されている板バネ状の押さえ片31を回転操作して、この押さえ片31に突設されている弾性片である押さえ部35を光コネクタアダプタ141の入口(光コネクタ193が挿入される入口。光コネクタアダプタ141の架体前面側の端部に開口している)に配置させることで、押さえ部35の弾性によって、光コネクタアダプタ141内の光コネクタ17に押さえ込まれるとともに、光コネクタ17、193同士の突き合わせ力が与えられる。なお、光コネクタアダプタ141は、押さえ片31の回転操作によって、押さえ部35を光コネクタアダプタ141の入口を塞がない位置に待避させるように変位させる(図8中、仮想線31a)ことで、光コネクタ193の挿脱を自在に行える。
【0010】
前記光コネクタ141は、コネクタ支持ユニット104の前面側端部に横並びに配列させて複数取り付けられている。各光コネクタアダプタ141の後側(光コネクタ193が挿入される入口側(架体前面側)とは逆の側)から延びる光ファイバ142は、コネクタ支持ユニット104の外側に延出された部分の先端が光スイッチ106に接続されている。光スイッチ106は、該光スイッチ106に接続された複数本の光ファイバ142を、光パルス試験器(図示略)側の光ファイバと選択的に光接続するものであり、光ファイバ109c、109dには、この光スイッチ106にて光パルス試験器側の光ファイバと接続された光ファイバ142を介して、光パルス試験器から出力された試験光が送入される。すなわち、光ファイバ109cには、光ファイバ142、光ファイバ191,192を介して、光パルス試験器からの試験光が送入され、光ファイバ109dには、光ファイバ142、光ファイバ191,192を介して、光パルス試験器からの試験光が送入される。また、光スイッチ106にて、光パルス試験器側の光ファイバと接続する光ファイバ142を切り替えることで、光パルス試験器からの試験光を送入する試験対象の光ファイバ109c、109dが切り替えられる(具体的には、光ファイバ109c、109d内の裸光ファイバの選択)。
なお、光パルス試験器は、周知のOTDR(Optical Time Domain Reflect meter)であり、試験光の入射によって光ファイバ109c、109dで発生する後方散乱光を光カプラ112を経由して当該光パルス試験器の受光部で受光し、次いで、受光された後方散乱光の波形を解析することにより光線路の損失異常をモニタするものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上述した光配線架101においては、以下のような不満があった。
(a)モジュール収納棚103(具体的には、モジュール収納棚103に収納されている光分岐モジュール108)とコネクタ支持ユニット104との間隔を狭めることによる小型化や高密度化が要求されている。しかし、光ファイバ191、192のモジュール本体110からの引き出し寸法が規格化された一定の寸法になっていることが多く、コネクタ支持ユニット104とモジュール収納棚103との間隔を狭めると、光分岐モジュール103と光コネクタアダプタ141との間にて湾曲される光ファイバ191、192に規定の曲げ半径(一般にはr=30mm)を確保することが難しくなるため、間隔を狭めることには限界があった。特に、図9に示すように、光ファイバ挿通口194から口出しされている光ファイバ191,192に硬いゴム製のブーツ(5から10mm)195が取り付けられている場合には、光ファイバ191,192が光ファイバ挿通口194よりも下側に撓みにくくなるため、その分、規定の曲げ半径を確保することがより難しくなっていた。
(b)コネクタ支持ユニット104の光コネクタアダプタ141と光分岐モジュール108との間に湾曲される光ファイバ191、192の、架体前面側への突出が大きく、作業者が不用意に接触してしまいやすい。また、落下物、衝突物によって、光ファイバ191、192を傷めてしまうこともある。
(c)コネクタ支持ユニット104は、上下方向の寸法の縮小に鑑みて、外観薄板状の箱形のものが広く採用されているが、図8等に例示したように、上下に多段(図8では2段)に光ファイバ191、192先端の光コネクタ193が接続される構成の光コネクタアダプタ141を採用した場合、上下方向の寸法の縮小に限界がある。また、コネクタ支持ユニット104内では、光コネクタアダプタ141からコネクタ支持ユニット104内に延びる光ファイバ142が重なり合って配線されるため、コネクタ支持ユニット104内で光ファイバ142の切替等の作業を行う際に、作業対象の光ファイバ142を見付け出しづらいなどといった不満がある。
【0012】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、コネクタ支持ユニットと光モジュールとの間隔を狭めて配置しても、規定の曲げ半径を確保することができる光配線ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に係る発明は、光モジュールを収納する収納棚と、この収納棚の上方に配置され、光コネクタアダプタを支持するコネクタ支持ユニットとを有し、前記収納棚に収納された前記光モジュールの光ファイバ挿通口から引き出された光ファイバを反転させるように湾曲させ、前記光ファイバ先端に設けられている光コネクタが前記光コネクタアダプタに挿入して接続することで、前記光ファイバが前記コネクタ支持ユニット側の光ファイバと接続されるようになっている光配線ユニットであって、前記光コネクタアダプタは、前記光モジュールから引き出された前記光ファイバの前記光コネクタとの接続光軸が、前記光コネクタが挿入される入口よりも奥側が上となるように傾斜する向きで前記コネクタ支持ユニットに支持されており、前記光ファイバに、前記光ファイバ挿通口よりも下側に撓まされた湾曲下端部が形成されるようになっていることを特徴とする光配線ユニットである。
請求項2に係る発明は、請求項1記載の光配線ユニットであって、前記光コネクタアダプタは、前記光コネクタが挿入されるコネクタ穴が形成されているハウジングと、このハウジングに挿入された光コネクタを押さえ込んで、前記光コネクタアダプタ内に組み込まれている光コネクタとの突き合わせ接続状態を維持する押さえ片とを有し、前記押さえ片は、前記ハウジングに枢着され、しかも、回転操作によって前記コネクタ穴入口を開閉するためのレバー部が突設されており、前記レバー部の操作によって前記押さえ片を前記ハウジングの前記コネクタ穴入口から待避させて前記コネクタ穴入口を開放すると、前記コネクタアダプタに前記光コネクタを抜差可能となり、前記レバー部の操作によって、前記押さえ片を前記コネクタ穴入口に配置すると、前記押さえ片が、前記光コネクタアダプタに挿入された前記光コネクタを光コネクタアダプタに押さえ込むようになっていることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1または2記載の光配線ユニットであって、前記コネクタ支持ユニットは、複数の前記光コネクタアダプタが横並びに配列させて取り付けられるコネクタ取付板と、通線ゲート部と、この通線ゲート部から前記コネクタ取付板までの間にて、各光コネクタアダプタから延びる光ファイバが前記通線ゲート部までの間に湾曲配線される湾曲配線部とを有し、前記湾曲配線部では、各光コネクタアダプタから延びる光ファイバが上に凸の山形に湾曲されて収納されるようになっていることを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の光配線ユニットであって、前記光コネクタアダプタの接続光軸は、光コネクタが挿入される入口よりも奥側が上となるように、水平軸に対して角度θが25°〜35°の範囲に傾斜させられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光モジュールから引き出された光ファイバは、光コネクタアダプタの接続光軸が傾斜させられていることにより、引き出された光ファイバの距離を稼ぐことができるので、規定の湾曲半径を維持したままで光コネクタアダプタと接続することができ、コネクタ接続ユニットと光モジュールとの間隔が狭まっても、規定の湾曲半径を維持することができる。また、湾曲した光ファイバの突出が小さくできる。このため、作業者が不用意に光ファイバに接触することを防止できるとともに、落下物が光ファイバに衝突することを回避することもできる。また、光コネクタアダプタが下方を向けられていることにより、アダプタ穴内にゴミや埃が侵入する可能性を低減することができる。
また、前記コネクタ支持ユニットが複数の前記光コネクタアダプタが横並びに配列させて取り付けられるコネクタ取付板と、通線ゲート部と、この通線ゲート部から前記コネクタ取付板までの間にて、各光コネクタアダプタから延びる光ファイバが前記通線ゲート部までの間に湾曲配線される湾曲配線部とを有している構成を採用すれば、湾曲配線部において、光ファイバが上に凸の山形に湾曲されて収納されるので、湾曲配線部は小型に出来る。また、光ファイバが上に凸の山形に湾曲されて収納されることにより、例えば、振り分け配線部が、取り外し可能な上蓋を有する構成である場合は、上蓋を取り外すと、各光コネクタアダプタから延びる光ファイバ中から、作業対象の目的の光ファイバを取り出す作業を容易に行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。
図1から図5はこの発明の一実施の形態を示す図であり、この発明を、光配線ユニットの一例として光配線架に適用した場合のものである。図1は光配線ユニットを示す側面図、図2(a)はコネクタ支持ユニットと光分岐モジュールとを示す側面図、図2(b)は
図2(a)における各数値を記載した側面図、図3はコネクタ支持ユニットを示す平面図、図4はコネクタ支持ユニットに固定されている光コネクタアダプタを示す側断面図、図5は光コネクタアダプタの正面図である。なお、この実施の形態で用いられる光分岐モジュール108は、光ファイバ挿通口194にブーツが取り付けられていない構成とされている。
なお、光配線架は床上に設置されるものであり、図1、図2、図4では、図中下側が下、上側が上である。
【0016】
図1に示す光配線架1は、前述した図6に示す光配線架101におけるモジュール収納ユニット103Aのコネクタ支持ユニット104を、符号5のコネクタ支持ユニットに変更した構成になっている。
コネクタ支持ユニット5の架体前面側(図1左側、図2(a)左側)の端面を形成するコネクタ取付板25には、光分岐モジュール108から引き出された光ファイバ191,192先端の光コネクタ193が着脱可能に接続される光コネクタアダプタ8が取り付けられている。
なお、光ファイバ191,192は、ここでは、単心又は多心の光ファイバテープ心線を採用している。光ファイバ191,192先端の光コネクタ193としては、ここでは、MT形光コネクタ(MT:Mechanically Transferable。例えばJIS C 5981に制定される光コネクタ)を採用しており、光コネクタアダプタ8内に収納される光コネクタ17(後述)としても、光コネクタ193と接続可能なMT形光コネクタが採用される。
【0017】
図2(a)に示すように、光分岐モジュール108のモジュール本体110は、水平方向に直交とされた側端部110aと、この側壁部110aから水平方向に湾曲された湾曲壁部110bと、この湾曲壁部110bを介して水平となる水平壁部110cから水平方向から上方に突出し、段状とされた端部110dと、この端部110dに形成された光ファイバ挿通口194とを有している。光分岐モジュール108のモジュール本体110の光ファイバ挿通口194から引き出されている光ファイバ191、192の長さは、一般的には、150mm(±5mm)と規定されているものである。この光ファイバ191、192は、モジュール本体110の光ファイバ挿通口194から、この光ファイバ挿通口194よりも下側に撓まされた湾曲下端部191a,192aが形成されていて、この湾曲下端部191a,192aから反転させるようにして、半円状あるいはU字状に湾曲されて、端部に設けられている光コネクタ193を光コネクタアダプタ8に挿入して接続される。
【0018】
光コネクタアダプタ8としては、図8等を参照して説明した光コネクタアダプタ141と同様の構造のものである。
光コネクタアダプタ8の構造について、具体的に説明する。
図4及び図5に示すように、光コネクタアダプタ8は、光コネクタ193を2つ接続するものであって、光コネクタ193が挿入されるコネクタ穴27が2つ形成されているハウジング28と、このハウジング28に挿入された光コネクタ193を押さえ込んで、予め光コネクタアダプタ8内に組み込まれている光コネクタ17との突き合わせ接続状態を維持する押さえ片31とから概略構成されている。この光コネクタアダプタ8の接続光軸Aは、前述したように、光コネクタ193が挿入される入口よりも奥側(図2(a)左側)が上となるように、水平軸に対して角度θが25°〜35°の範囲に傾斜させられてコネクタ支持ユニット5に固定されている。
ハウジング28の湾曲配線部24側(図4左側)には、係合爪32が形成されている。この係合爪32は、湾曲配線部24側からコネクタ穴27に挿入される光コネクタ17を湾曲配線部24側に抜け落ちることを防止する抜け止めとして機能するものである。光コネクタ17はさらに、ハウジング28内のストッパ(図示略)によって、コネクタ穴27入口側への移動が規制されている。これにより、光コネクタアダプタ8に光コネクタ17を組み込むことができる。
【0019】
押さえ片31は、ハウジング28の2つのコネクタ穴27に対応して両側に2個設けられているものであって、枢着部33を介してハウジング28に枢着されており、枢着部33を基点として回転自在とされている。押さえ片31は、開閉動作させるために形成されたレバー部34と、光コネクタ193を押さえ込むためにレバー部34の両側にバネなどの弾性部材により形成された押さえ部35とを有している。押さえ片31の動作について説明すると、レバー部34の押さえ片31の回転操作によって、押さえ部35を光コネクタアダプタ139の入口を塞がない位置に待避させるように変位させる(図4中、仮想線31a)。これにより、コネクタ穴27が開放されて光コネクタアダプタ8に光コネクタ193を抜差可能となる。また、レバー部34の閉鎖操作により、コネクタ穴27入口から退避していた押さえ部35が、コネクタ穴27に配置される。これにより、挿入した光コネクタ193の後端に押圧を与えて、光コネクタアダプタ8に光コネクタ193を押さえ込み、固定するものである。
【0020】
図3に示すように、コネクタ支持ユニット5は、前述した光ファイバ191,192と光ファイバ9とを接続して、光スイッチ(図6に示す符号106)と接続するものである。コネクタ支持ユニット5は、トレイ状に形成されたユニット本体22と、このユニット本体22に着脱自在に被せられるユニット蓋部材23とを有している。このユニット本体22とユニット蓋部材23とにより形成される空間は、湾曲配線部24(後述)とされている。このユニット本体22には、複数の光コネクタアダプタ8を横並びに配列させて取付けるコネクタ取付板25が形成されている。図4に示すように、コネクタ取付板25は、コネクタ取付板25の端面26と光コネクタアダプタ8の接続光軸Aとが直交するように固定するものであって、端面26の水平軸に対して角度θは、55°〜65°に傾斜して設けられている。このため、端面26と直交する光コネクタアダプタ8の接続光軸Aは、光コネクタ193が挿入される入口よりも奥側(図4右側)が上となるように、水平軸に対に対する角度θを25°〜35°の範囲に傾斜されている。コネクタ取付板25には、光コネクタアダプタ8を挿入するための貫通孔(アダプタ収納孔25a)が形成されており、この貫通孔に挿入された光コネクタアダプタ8は、例えば、ネジ止め等により、コネクタ取付板25に固定される。
【0021】
図3に示すように、湾曲配線部24は、通線ゲート部(以下、ホース固定部ともいう)36に配置された光ファイバ9を集線するホース21からコネクタ取付板25までの間にて、光コネクタアダプタ8から延びる光ファイバ9が湾曲配線されるものであって、光コネクタアダプタ8に接続された光ファイバ9が上に凸の山形に湾曲されて収納されている縦湾曲配線領域38と、ホース21から引き出された光ファイバ9が振り分けられて配線されている振り分け配線領域39とから構成されている。ホース固定部36は、ホース21を湾曲配線部24に引き入れるとともに、固定する機能を有するものである。なお、本実施の形態では、コネクタ支持ユニット5内の光ファイバ9を集線する手段として、ホース21を用いたが、これに限るものではなく、例えば、インシュロックタイ等を用いてもよい。
図2(a)に示すように、縦湾曲配線領域38には、光コネクタアダプタ8から延びる光ファイバ9が、上に凸の山形に湾曲され、その後下方のユニット本体22に向けて湾曲して配線されている。この間、光ファイバ9は、次第に90°に捻られており、ユニット本体22の底板22aに沿うような湾曲を可能とされている。
図3に示すように振り分け配線領域39は、縦湾曲配線領域38からホース固定部36まで延びる光ファイバ9がユニット本体22の底板22aに沿ってされて配線されている領域である。この振り分け配線領域39は、それぞれの光ファイバ9が、縦湾曲配線領域38から次第に集線させられてホース固定部36まで配線されており、ホース21に収納されるものである。
【0022】
図2(a),図4に示すように、光分岐モジュール108から引き出された光ファイバ191,192の光ファイバ193を光コネクタアダプタ8に接続するには、光コネクタアダプタ8のレバー部34を開放操作して、押さえ部35をコネクタ穴27から退避させ(図4中、仮想線31a)、コネクタ穴27に光コネクタ193を抜差可能な状態(具体的には、図5に示す符号Bのコネクタ穴27の状態)とする。そして、抜差可能となったコネクタ穴27に光ファイバ191,192の先端部に設けられた光コネクタ193を挿入する。このとき、光コネクタアダプタ8の対向する側には、コネクタ支持ユニット5内に収納されている光ファイバ191,192の端部に設けられている光コネクタ17が予め接続されており、光コネクタ193を挿入することにより、光コネクタ193の接合端面を光コネクタ17の接合端面に接続することができる。その後、レバー部34を閉鎖操作して、押さえ部35をコネクタ穴27に配置させ、押さえ部35により光コネクタ193の後端に押圧を与えて、光コネクタアダプタ8に押さえ込み固定する。
【0023】
このとき、光ファイバ191,192は、モジュール本体110の光ファイバ挿通口194から引き出され、前記光ファイバ挿通口194よりも下側に撓まされた湾曲下端部191a,192aが形成され、この湾曲下端部191a,192aから反転するように湾曲させられて、光コネクタアダプタ8に接続される。ここで、光コネクタアダプタ8は、接続光軸Aの角度θが25°〜35°の範囲とされてコネクタ取付板25に固定されていることにより、光ファイバ191,192の光コネクタ193の接続光軸も傾斜させて光コネクタアダプタ8に接続する。このとき、モジュール本体110から引き出された光ファイバ191,192の長さは、規定の寸法(150mm)であるが、接続光軸Aを傾斜して接続されているため、接続光軸が水平の場合と比較すると、規定の湾曲を維持しやすくなっているので、規定の湾曲半径以上を確保したままで光コネクタアダプタ8に接続することができる。
図2(b)において、aは光分岐モジュール108のモジュール本体110の側端部110aから段状の端部110dに形成された光ファイバ挿通口194までの距離(モジュール本体110の長手方向(図2(b)の左右方向)における寸法)、bは光ファイバ挿通口194から光分岐モジュール108を取り付ける架体102の支柱102aまでの距離(モジュール本体110の長手方向(図2(b)の左右方向)における寸法)、cは光ファイバ挿通口194(中心軸線)から光コネクタアダプタ8(コネクタ取付板25のアダプタ収納孔25aの中央)までの高さ、dは架体の支柱102aから架体前面側へのコネクタ支持ユニット5の突出寸法、Lは光ファイバ挿通口194からの光ファイバ191、192の引き出し長である。
【0024】
以下、広く用いられている光配線ユニット1のサイズの具体例において角度θの適正範囲について説明する。この例では、図2(b)において、aが62mm、bが30、cが48〜54mm、dが91.5mm、である光配線ユニット1における角度θの適正範囲の検証を説明する。なお、光ファイバ191、192の長さは、150mm(±5mm)である。
図2(a)、(b)において、角度θ(図4参照)が25°を下回ると、光ファイバ191、192自体の剛性によって、光ファイバ191、192の内の光コネクタアダプタ8から架体前面側へ延びる部分(光コネクタアダプタ8から、光ファイバ191、192の延在向きが反転する湾曲部(詳細には、この湾曲部の内、架体前面側への突出が最も大きい部分)までの部分)の位置が高くなり、光分岐モジュール108と光コネクタアダプタ8との間に配線されている光ファイバ191、192全体の位置が高くなることから、結局、湾曲された光ファイバ191、192の架体前面側への突出が最も大きい部分付近では湾曲が窮屈な状態となり、光ファイバ191,192の湾曲を緩やかにする効果が十分に得られない。また、光ファイバ挿通口194よりも下側に撓む湾曲下端部191a,192aがほとんど(あるいは全く)形成されてなくなってしまうとともに、湾曲された光ファイバ191,192の架体前面側への突出も大きくなってしまう。
一方、角度θが35°を上回ると、光コネクタアダプタ8付近での湾曲が窮屈になってしまう。具体的には、光ファイバ191、192が光分岐モジュール108と干渉してしうとともに、光ファイバ9がコネクタ支持ユニット5と接触してしまう、曲率を確保するためには、コネクタ支持ユニット5の厚みが必要となる。しかし、当初目的である高密度化が図れなくなってしまう。
【0025】
次に、図2(a)及び3に示すように湾曲配線部24内の光ファイバ9の配線について説明すると、光コネクタアダプタ8から延びる光ファイバ9は、光コネクタアダプタ8の奥側(図2(a)左側)を上に向けて傾斜されていることにより、上に凸の山形に湾曲されて縦湾曲配線領域38に収納されている。この間の光ファイバ9は、規定の湾曲半径(前述した図6,7に示す光ファイバ191,192の湾曲半径と同様にr=30mm)を保持されている。これにより、例えば、光コネクタ17を切替する場合には、光ファイバ9が上に突出しているので、光ファイバ9を発見しやすくなり、取り出しやすくなっている。
振り分け配線領域39は、光ファイバ9が次第に集線させられてホース固定部36まで配線されていて、集線された光ファイバ9がホース21に収納される。
また、ホース21の余長を調整するため、ホース21の余長を湾曲収容するスペースが必要となる。そこで、図2に示すような湾曲部24の形状としてコネクタ支持ユニット5上面にホース余長収納スペース51を確保することで、コネクタ支持ユニット5内で光ファイバ9の曲率を確保するとともに、ホース21の余長を収納することを両立することを実現する。
【0026】
上記の構成によれば、光コネクタアダプタ8の接続光軸Aが、傾斜させられてコネクタ取付板25に固定されているので、光コネクタアダプタ8に接続される光ファイバ191,192を規定の湾曲半径に維持することができる。したがって、コネクタ支持ユニット5と光分岐モジュール108との間隔が狭まった配置であっても、モジュール本体110から引き出された光ファイバ191,192の規定以上の湾曲半径を確保することができるので、光配線ユニット1の小型化や、高密度化を実現することができる。
また、光ファイバ挿通口194から引き出された光ファイバ191,192が、光ファイバ挿通口194よりも下側に撓まされた湾曲下端部191a,192aから反転するように湾曲しているので、より確実に規定以上の湾曲半径を確保することができる。
また、湾曲した光ファイバ191,192の突出が小さいため、作業者の不用意な接触を防止することができるとともに、上からの落下物の衝突を回避することができる。また、光コネクタアダプタ8が下方を向けられていることにより、上からの落下物が光コネクタアダプタ8に衝突して破損するようなことを回避することができる。また、光コネクタアダプタ8が下方を向いていることにより、光ファイバアダプタ8内に塵や埃が入りづらくなるので、光コネクタアダプタ8内の清掃作業を簡便にすることができるとともに、清掃作業に掛かるコストも低減することができる。また、接続光軸Aが水平とされている場合と比較して、光コネクタアダプタ8の下側のレバー部34が、光コネクタアダプタ8に接続されている光ファイバ191,192と接触しないので、レバー部34と接触することにより光ファイバ191,192に窮屈な湾曲が生ずることを防止することができる。
また、コネクタ支持ユニット5の湾曲配線部24において、光ファイバ9が縦方向と横方向に湾曲配線されていることにより、従来の湾曲配線部と比較すると配線面積が少なくてすむので、湾曲配線部24の小型化も実現することができる。
【0027】
なお、本発明は、前述の実施形態に限定されず、各種変更が可能である。
本実施の形態で用いられている光コネクタとしては、MT形光コネクタ(MT:Mechanically Transferable。例えばJIS C 5981に制定される光コネクタ)を採用したが、これに限るものではなく、例えばSC形光コネクタ(JIS C 5973に制定されるもの等。SC:Single fiber Coupling optical fiber connector)、SC2形光コネクタ、MU形光コネクタ(JIS C 5983に制定されるもの等。MU:Miniature-Unit coupling optical fiber connector)等を採用することもできる。また光コネクタアダプタ8は、使用する光コネクタ193を接続可能な形式が採用される。接続光軸Aの傾斜角度θの範囲は、水平線に対して25°〜35°としたが、30°に設定するのがより好ましい。これにより、より確実に規定の湾曲半径を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】光配線ユニットを示す側面図である。
【図2】(a)コネクタ支持ユニットと光分岐モジュールとを示す側面図、(b)は(a)における各数値を記載した側面図である。
【図3】コネクタ支持ユニットを示す平面図である。
【図4】コネクタ支持ユニットに固定されている光コネクタアダプタを示す側断面図である。
【図5】光コネクタアダプタの正面図である。
【図6】光配線ユニットを示す概略構成図である。
【図7】従来の光配線ユニットを示す側面図である。
【図8】コネクタ支持ユニットと光分岐モジュールとを示す側面図である。
【図9】ブーツを取り付けた場合のコネクタ支持ユニットと光分岐モジュールとを示す側面図である。
【符号の説明】
【0029】
5…コネクタ支持ユニット、8…光コネクタアダプタ、9…光ファイバ(光ファイバテープ心線)、24…湾曲配線部、25…コネクタ取付板、27…コネクタ穴、31…押さえ片、34…レバー部、35…押さえ部、36…通線ゲート部(ホース固定部)、101…光配線ユニット(光配線架)、103…収納棚(モジュール収納棚)、108…光モジュール(光分岐モジュール)、191,192…光ファイバ(光ファイバテープ心線)、191a,192a…湾曲下端部、193…光コネクタ、A…接続光軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光モジュール(108)を収納する収納棚(103)と、この収納棚の上方に配置され、光コネクタアダプタ(8)を支持するコネクタ支持ユニット(5)とを有し、
前記収納棚に収納された前記光モジュールの光ファイバ挿通口(194)から引き出された光ファイバ(191,192)を反転させるように湾曲させ、前記光ファイバ先端に設けられている光コネクタ(193)が前記光コネクタアダプタに挿入して接続することで、前記光ファイバが前記コネクタ支持ユニット側の光ファイバと接続されるようになっている光配線ユニット(101)であって、
前記光コネクタアダプタは、前記光モジュールから引き出された前記光ファイバの前記光コネクタとの接続光軸(A)が、前記光コネクタが挿入される入口よりも奥側が上となるように傾斜する向きで前記コネクタ支持ユニットに支持されており、前記光ファイバに、前記光ファイバ挿通口よりも下側に撓まされた湾曲下端部(191a,192a)が形成されるようになっていることを特徴とする光配線ユニット。
【請求項2】
前記光コネクタアダプタは、前記光コネクタが挿入されるコネクタ穴(27)が形成されているハウジング(28)と、このハウジングに挿入された光コネクタを押さえ込んで、前記光コネクタアダプタ内に組み込まれている光コネクタ(17)との突き合わせ接続状態を維持する押さえ片(31)とを有し、
前記押さえ片は、前記ハウジングに枢着され、しかも、回転操作によって前記コネクタ穴入口を開閉するためのレバー部(34)が突設されており、
前記レバー部の操作によって前記押さえ片を前記ハウジングの前記コネクタ穴入口から待避させて前記コネクタ穴入口を開放すると、前記コネクタアダプタに前記光コネクタを抜差可能となり、
前記レバー部の操作によって、前記押さえ片を前記コネクタ穴入口に配置すると、前記押さえ片が、前記光コネクタアダプタに挿入された前記光コネクタを光コネクタアダプタに押さえ込むようになっていることを特徴とする請求項1記載の光配線ユニット。
【請求項3】
前記コネクタ支持ユニットは、複数の前記光コネクタアダプタが横並びに配列させて取り付けられるコネクタ取付板(25)と、通線ゲート部(36)と、この通線ゲート部から前記コネクタ取付板までの間にて、各光コネクタアダプタから延びる光ファイバ(9)が前記通線ゲート部までの間に湾曲配線される湾曲配線部(24)とを有し、
前記湾曲配線部では、各光コネクタアダプタから延びる光ファイバが上に凸の山形に湾曲されて収納されるようになっていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の光配線ユニット。
【請求項4】
前記光コネクタアダプタの接続光軸は、光コネクタが挿入される入口よりも奥側が上となるように、水平軸に対して角度θが25°〜35°の範囲に傾斜させられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光配線ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−23502(P2006−23502A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200988(P2004−200988)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(591044647)株式会社 スズキ技研 (36)
【Fターム(参考)】