説明

光配線方法及び光ファイバケーブル

【課題】窓枠の形状に合わせて容易に光配線を行うことができる光配線方法及び光ファイバケーブルを提供する。
【解決手段】コイル状に加工された光ファイバケーブルを、窓枠の凹凸に沿わせて配線する光配線方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光配線方法及び光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のFTTH化に伴い、屋外に布設された光ファイバケーブル内の光ファイバと屋内の配線とを接続する光配線の必要性が増大している。
光配線を想定した光配線用の配管が設けられていない建物においては、エアコンのダクト等の空隙を利用して配線する、あるいは壁に穴を空けて光配線用の配管を設けて配線する、等の方法が行われる。
【0003】
また、エアコンのダクト等がない場合や、賃貸住宅等で壁に穴を空けることが困難である場合には、窓の戸と窓枠との間の隙間に平坦形状の光コードを通して配線することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、光コードを窓と窓枠の間の空隙に通した場合、窓枠の凹凸で光コードが小さな径で曲げられ、主にガラス材料で構成される光ファイバが破断するおそれがある。これを解決するために、2次元的な面の中に光ファイバを斜めに配置した光コードや、外装内に光ファイバを波型に配置した光コードが提案されている(例えば、特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−147754号公報
【特許文献2】特開2007−316404号公報
【特許文献3】特開2008−304557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、2次元的な面の中に光ファイバ素線を斜めに配置した光コードを用いた場合は、光コードの幅が大きくなるという問題がある。また、外装内に光ファイバを波型に配置した光コードを用いた場合には、窓枠の凹凸部の曲げ部分に波型の山と谷の間がくるように、光コードを設計しなければならず、配線が難しいという問題点がある。
【0007】
本発明の課題は、窓枠の形状に合わせて容易に光配線を行うことができる光配線方法及び光ファイバケーブルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、光配線方法であって、コイル状に加工された光ファイバケーブルを、窓枠の凹凸に沿わせて配線することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光配線方法において、前記光ファイバケーブルのケーブル外径d、配線後の巻き径D及び窓枠の凹凸の高さHが以下の式(1)で示す関係にあることを特徴とする。
(H+d)≦D≦H+3d…(1)
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の光配線方法において、前記コイル状に加工された光ファイバケーブルは、複数の異なる巻き径でコイル状に巻かれていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光配線方法において、前記光ファイバケーブルの片端もしくは両端にコネクタが接続されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、光ファイバケーブルであって、複数の異なる巻き径でコイル状に加工されたことを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の光ファイバケーブルであって、片端もしくは両端にコネクタが接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、窓枠の形状、大きさに合わせて光ファイバケーブルを作成する必要がなく、容易に光配線を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る光ファイバケーブル1Aを示す図である。
【図2】図1のII−II矢視断面図である。
【図3】光ファイバケーブル1Aを窓枠50に配線した状態を示す斜視図である。
【図4】窓枠50と窓の戸60とを閉じた状態を示す斜視図である。
【図5】図4のV−V矢視断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る光ファイバケーブル1Bを示す図である。
【図7】他の形状の光ファイバケーブル1Cを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明の実施形態に係る光ファイバケーブル1Aを示す図であり、図2は図1のII−II矢視断面図である。光ファイバケーブル1Aは、コイル状に加工されており、光ファイバ心線10と、テンションメンバ20と、シース30とから概略構成される。
【0017】
光ファイバ心線10は、光ファイバ素線11を被覆材12で被覆してなる。光ファイバ素線11には、例えば紫外線硬化樹脂等により被覆されたコアとクラッドからなる石英製ガラス光ファイバを用いることができる。また、光ファイバ素線として、コアの周囲に複数の空孔を配置した空孔アシスト光ファイバ(HAF)を用いてもよい。HAFには曲げ損失が小さいという特質がある。
被覆材12には、例えば紫外線硬化樹脂等を用いることができる。
【0018】
テンションメンバ20は光ファイバケーブル1Aに作用する張力を負担する。テンションメンバ20には、例えば金属線や、アラミド繊維等を用いることができる。なお、図2においては、光ファイバ心線10の周囲に3本のテンションメンバ20が配置されているが、その数は任意である。
【0019】
シース30は、光ファイバ心線10及びテンションメンバ20を一括被覆する。シース30には、例えば難燃ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0020】
次に、光ファイバケーブル1Aを窓の戸と窓枠との間に配線する光配線方法について説明する。図3は光ファイバケーブル1Aを窓枠50に配線した状態を示す斜視図であり、図4は窓枠50と窓の戸60とを閉じた状態を示す斜視図であり、図5は図4のV−V矢視断面図である。図3〜図5に示すように、窓枠50には、3本の突条51、52、53が設けられ、突条51、52の間に溝54が、突条52、53の間に溝55がそれぞれ形成されている。また、図4、図5に示すように、窓の戸60には突条61、62が設けられ、突条61、62の間には溝63が設けられている。
窓の戸60を閉めると、溝54、55内に突条61、62が入り込み、溝63内に突条52が入り込む。
なお、図5に示すように、窓枠50及び窓の戸60には、衝撃を吸収するダンパー56、66がそれぞれ設けられている。
【0021】
本実施の形態においては、図3に示すように、突条51から突条52までで1巻き、突条52から突条53までで1巻きとなるように、コイル状の光ファイバケーブル1Aを配置する。すると、図4、図5に示すように、窓の戸60を閉めた状態で、窓枠50と窓の戸60との間の隙間に光ファイバケーブル1Aが収まる。光ファイバケーブル1Aがコイル状であるため、図3〜図5に示すように、光ファイバケーブル1Aは突条51、52、53、61、62に対して斜めに配置される。
【0022】
もし、光ファイバケーブル1Aを突条51、52、53、61、62に対して直交するように配置した場合には、突条51、52、53、61、62に沿って小さな曲げ半径で光ファイバケーブル1Aを曲げる必要がある。
これに対して、本実施の形態では、コイル状に巻いた光ファイバケーブルを配置しており、光ファイバケーブル1が窓枠の突条51、52、53を斜めに横断することになる。このため、曲げ径がコイルの巻き径となるため、曲げ径をより大きくすることができ、光ファイバ素線11の曲げ損失を低減することができる。また、光ファイバ素線11の破断の確率が小さくなる。
このように、コイル状の光ファイバケーブル1を使用することにより、窓枠50の凹凸形状にとらわれずに配線することができる。
【0023】
ここで、突条51、52、53の高さをH(図3参照)、窓枠50に沿って配線した光ファイバケーブル1Aの巻き径をD(図5参照)、外径をd(図2参照)とすると、すべての窓枠の凸部の各々において以下の式(1)が成立することが好ましい。
H+d≦D≦H+3d…(1)
ここで、巻き径Dは、窓枠の凸部を横断する位置での配線したコイル状の光ファイバケーブルの外周側の径である。図5に示す高さH1に対する巻き径はD1であり、H2に対する巻き径はD2となる。
【0024】
D<H+dの場合には、光ファイバケーブル1Aが溝54、55の底まで到達しないため、溝54、55内に入り込む突条61、62に光ファイバケーブル1Aが押され、シース30が損傷するおそれがある。一方、H+3d<Dの場合には、光ファイバケーブル1Aが突条51、52、53から浮き上がった状態に配置されるため、突条52を溝63内に入り込ませたときに光ファイバケーブル1Aが溝63内で動き、シース30が損傷するおそれがある。
【0025】
なお、光ファイバケーブルの巻き径は一様でなくてもよく、例えば図6(a)、図6(b)に示すように、複数の異なる巻き径で巻かれた光ファイバケーブル1Bを用いてもよい。突条51、52、53の高さが異なる場合には、図6(a)に示すように、巻き径が1巻き毎に異なる光ファイバケーブル1Bを用いることで、突条51、52、53の異なる高さに対応することができる。また、図6(b)に示すように、巻き径が数巻き毎に異なる光ファイバケーブル1Bを用いることで、突条51、52、53の高さによって窓枠に配線する部分を適宜選択することができる。
【0026】
また、光ファイバケーブルの断面形状は円形でなくてもよい。図7は他の形状の光ファイバケーブル1Cを示す断面図である。図7に示すように、光ファイバケーブル1Cは、光ファイバ心線10と、光ファイバ心線10の両側部に配置された2本のテンションメンバ20と、光ファイバ心線10及びテンションメンバ20を一括して被覆するシース30とから概略構成される。光ファイバ心線10及び2本のテンションメンバ20は、図7の断面において長辺方向に配列されている。
図7の断面において、シース30の長辺の中央部には、シース30を引き裂いて光ファイバ心線10を取り出すためのノッチ31がそれぞれ設けられている。
【0027】
このような断面形状の光ファイバケーブル1Cでは、テンションメンバ20を2本有しているため、曲げ方向が一意的に決まることとなる。したがって、光ファイバケーブル1Cをコイル状にした場合、(1)式のdは図7の断面において短辺の長さとなる。
【0028】
さらに、光ファイバケーブルの断面は円状、矩形状のほか、楕円形状等になっていてもよい。
なお、以上の実施形態において、光ファイバケーブルの片端または両端にコネクタが接続されていてもよい。
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0029】
〔光ファイバケーブル〕
直径125μmの石英製ガラス光ファイバに紫外線硬化樹脂を被覆した外径が250μmの光ファイバ素線に外径が0.5mmとなるようにさらに紫外線硬化樹脂で被覆した光ファイバ心線を用意した。この光ファイバ心線の周りに420dtexのアラミド繊維を3本縦添えし、外径dがφ1.0mm、φ1.1mm、φ1.5mmとなるように難燃ポリオレフィンで被覆してなる光ファイバケーブルを作製した。これらの光ファイバケーブルをコイル状に形成した。
上記光ファイバケーブルを、窓枠の凹凸の高さHが10mmまたは12mmの窓枠に配線し、窓の戸の開け閉めを行った。その際の光ファイバ素線の断線の有無と、シースの損傷有無の確認を行った。
なお、配線後の光ファイバケーブルの巻き径Dはφ8mm、φ10mm、φ11mm、φ12mm、φ13mm、φ14mm、φ15mmであった。配線後の光ファイバケーブルの巻き径Dは、配線前の光ファイバケーブルの巻き径を調整することで調整可能である。結果を表1に示す。表1において、光ファイバ素線の断線がなかった場合を○、あった場合を×とした。また、シースの損傷がなかった場合を○、あった場合を×とした。
【0030】
【表1】

【0031】
表1からも明らかなように光ファイバケーブルの外径d、巻き径Dと窓枠の凹凸の高さHで(1)式の関係が成り立てば、窓の戸と窓枠の間の空隙に光ファイバケーブルを配線し、窓の戸の開け閉めを行っても、光ファイバ素線の断線がなく、シースにも影響がないことがわかる。D<H+dの場合、窓枠の凹凸部を光ファイバケーブルが横断する際、窓枠の突条の角部にて光ファイバケーブルが強く押し当てられ、シースに損傷をもたらすものと考えられる。また、D>H+3dの場合、窓枠の溝よりはみ出た光ファイバケーブルが窓と窓枠の隙間に収まりきらないため、窓と窓枠により光ファイバケーブル外被に損傷がもたらされた。
【実施例2】
【0032】
図7に示すように、断面略矩形の光ファイバケーブルを用いた実施例を示す。断面において、短辺1.0mm×長辺1.5mm、及び1.5mm×1.5mmの光ファイバケーブルを用いた。
上記光ファイバケーブルを、配線後の光ファイバケーブルの巻き径Dがφ8mm、φ10mm、φ11mm、φ12mm、φ13mm、φ14mm、φ15mmとなるように、窓の戸と窓枠の間の空隙に配線し、窓の戸の開け閉めを行った。
その際の光ファイバ素線の断線の有無と、シースの損傷有無の確認を行った。窓枠の凹凸の高さHは10mmまたは12mmとした。光ファイバ素線の断線がなかった場合を○、あった場合を×とした。また、シースの損傷がなかった場合を○、あった場合を×とした。
結果を表2に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
表2からも明らかなように、光ファイバケーブルの断面が円状の場合と同様、光ファイバケーブルの外径d、巻き径Dと窓枠の凹凸の高さHで(1)式の関係が成り立てば、窓の戸と窓枠の間の空隙に光ファイバケーブルを配線し、窓の戸の開け閉めを行っても、光ファイバ素線の断線がなく、シースにも影響がないことがわかる。
【0035】
なお、本実施例において光ファイバ素線として外径が250μmの最も一般的な光ファイバ素線を用いたが、たとえば外径を70μm以上125μm以下とした細径の光ファイバ素線を用いることもできる。
このような光ファイバ素線を用いることで、たとえば実施例1に示す光ファイバケーブルの外径dをφ0.7mm以下とすることができ、より窓枠への配線に適した構造となる。
【符号の説明】
【0036】
1A、1B、1C 光ファイバケーブル
10 光ファイバ心線
11 光ファイバ素線
12 被覆材
20 テンションメンバ
30 シース
31 ノッチ
50 窓枠
51、52、53、61、62 突条
54、55、63 溝
60 窓の戸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル状に加工された光ファイバケーブルを、窓枠の凹凸に沿わせて配線することを特徴とする光配線方法。
【請求項2】
前記光ファイバケーブルのケーブル外径d、配線後の巻き径D及び窓枠の凹凸の高さHが以下の式(1)で示す関係にあることを特徴とする請求項1に記載の光配線方法。
(H+d)≦D≦H+3d…(1)
【請求項3】
前記コイル状に加工された光ファイバケーブルは、複数の異なる巻き径でコイル状に巻かれていることを特徴とする請求項1または2に記載の光配線方法。
【請求項4】
前記光ファイバケーブルの片端もしくは両端にコネクタが接続されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光配線方法。
【請求項5】
複数の異なる巻き径でコイル状に加工されたことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項6】
片端もしくは両端にコネクタが接続されていることを特徴とする請求項5に記載の光ファイバケーブル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−22168(P2011−22168A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164324(P2009−164324)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】