説明

光酸化器および測定装置

【課題】 処理液の置換性を損なわずに処理液と光触媒との充分な接触面積が確保でき、効率の良い光酸化を行うことが可能な光酸化器およびこの光酸化器を用いた測定装置を提供する。
【解決手段】 外筒1と、外筒1内に挿通された直線状の第1光源2と、外筒1と第1光源2との間の水密性を保つためのシール材3と、外筒1内に挿入され、第1光源2の外周側に配置された波板状の触媒板4と、外筒1の外周側に配置された螺旋状の第2光源5と、第2光源5の外側を覆うように配置された環状ミラー6とを備える光酸化器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理液を酸化するための光酸化器およびこの光酸化器を用いた測定装置に関する。さらに詳しくは、超純水等の全有機炭素含量(TOC)の測定等に好適な光酸化器および測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水の清浄度を表す方式の一つとして、水中の有機物に含まれている炭素量で汚染度を表す全有機炭素含量(以下、TOC値ということもある。)がある。
かかるTOC値を測定する方法として、紫外線(UV)酸化を用いる方法が広く利用されている。具体的には、処理液に紫外線を照射することによって処理液中の有機化合物を酸化して二酸化炭素を発生させ、二酸化炭素の濃度変化に応じて生じる導電率変化を測定し、これに基づいて処理液のTOC値を求めている。
【0003】
かかる紫外線酸化方式のTOC計では、酸化促進のために、酸化器に酸化チタン等の光触媒が広く用いられている。この場合、酸化反応は処理液と光触媒との接触面で進行するため、効率の良い光酸化を行うためには、酸化光が到達する領域で、処理液と光触媒との接触面積の増加を図ることが重要である。
処理液と光触媒との接触面積の増加を図るため、酸化反応容器内に光触媒を被覆した中空ガラスビーズやスポンジを収容することが行われている(例えば、特許文献1等参照)。また、酸化反応器壁面を、螺旋状の突起を有する光触媒体で構成することも提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
酸化効率に優れた光酸化器は、TOC計に限らず、処理液を酸化してから分析する用途において広く求められている。たとえば、全リンや全窒素の測定は、処理液を酸化して試薬で呈色させることにより、比色分析によって行うことができる。
【特許文献1】特開平11−138156号公報
【特許文献2】特開2001−232357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のように、酸化反応容器内に光触媒を被覆した中空ガラスビーズやスポンジを収容する方法では、ビーズやスポンジにより処理液の流通が妨げられるため置換性が悪かった。そのため、この方法による光酸化器を用いた場合、酸化に時間を要するという問題があった。
一方、特許文献2のように、酸化反応器壁面に凹凸を設ける方法では、処理液の置換性は確保しやすいが、処理液と光触媒との接触面積が充分でなく、この方法による光酸化器を用いた場合も、酸化効率の点で限界があった。
したがって、これら従来の光酸化器を用いた測定装置では、充分に酸化をして精度良く測定を行おうとすると時間がかかり、迅速な測定をしようとすると充分な測定精度が得られないという問題があった。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、処理液の置換性を損なわずに処理液と光触媒との充分な接触面積が確保でき、効率の良い光酸化を行うことが可能な光酸化器を提供することを課題とする。
また、光酸化器を用いて、精度良く、かつ迅速な測定が可能な測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本件発明は、以下の態様を含む。
[1]処理液が導入される反応管と、両面に光触媒がコーティングされており、反応管の軸方向に延在するように反応管内に挿入された触媒板と、触媒板の一方の面に酸化光を照射する第1の酸化光源と、触媒板の他方の面に酸化光を照射する第2の酸化光源とを備えることを特徴とする光酸化器。
【0008】
[2]反応管の軸方向に直交する断面が環状であり、反応管の軸方向に直交する触媒板の断面が環状であり、第1の酸化光源が反応管の内周側に、第2の酸化光源が反応管の外周側全体に、各々配置されている[1]に記載の光酸化器。
[3]触媒板が、反応管の軸方向に直交する断面が波形の波板状である[1]又は[2]に記載の光酸化器。
【0009】
[4][1]から[3]の何れかに記載の光酸化器を用いて処理液を酸化することにより、処理液の性状を測定することを特徴とする測定装置。
[5]全有機炭素含量測定装置である[4]に記載の測定装置。
【発明の効果】
【0010】
[1]の態様の発明によれば、触媒板の両面で酸化反応を進行させることができるので、効率的な酸化が可能となる。また、ビーズ等の充填物を要さないので、処理液の置換性も良好である。
[2]の態様の発明によれば、反応管と光源を環状に配置するので、光酸化器全体をコンパクトに構成することができる。
[3]の態様の発明によれば、触媒板を波板状としたので、酸化光の照射を充分に受けながら処理液と接触する面積を増大させることができる。したがって、より効率的な酸化が可能となる。また、反応管の軸方向に直交する方向を波形としたので、処理液の流通を妨げることがない。
[4]の態様の発明によれば、上記[1]から[3]の何れかの光酸化器を用いているので、精度良く、かつ迅速な測定が可能な測定装置とすることができる。
[5]の態様の発明によれば、上記[1]から[3]の何れかの光酸化器を用いているので、精度良く、かつ迅速に全有機炭素含量を測定することが可能な測定装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1から図3は、本発明の一実施形態に係る光酸化器を示すもので、図1は斜視図、図2は縦断面図、図3は横断面図である。なお、図3は図2のIII−III断面図であり、図2は図3のII−II断面図である。
本実施形態の光酸化器は、外筒1と、外筒1内に挿通された直線状の第1光源2(第1の酸化光源)と、外筒1と第1光源2との間の水密性を保つためのシール材3、3と、外筒1内に挿入され、第1光源2の外周側に配置された触媒板4と、外筒1の外周側に配置された螺旋状の第2光源5(第2の酸化光源)と、第2光源5の外側を覆うように配置された環状ミラー6とから構成されている。
【0012】
外筒1は、処理液Sの入口1aと両端に底を有する筒状本体1bと出口1cとを有している。外筒1の材質としては、紫外線透過性、紫外線耐性を備えたものが用いられる。このような材質としては、石英硝子が特に好ましい。
【0013】
第1光源2および第2光源5としては、主として、低圧水銀放電灯等の冷陰極管が用いられるが、熱陰極管、重水素ランプ、キセノンランプ、蛍光式ブラックライト、エキシマランプ等、他の紫外線照射が可能な光源も使用できる。
外筒1と第1光源2の周面との間に処理液Sが導入されるようになっており、本発明における反応管を構成している。
【0014】
触媒板4の縦断面は、図2に示すように、反応管を形成する外筒1の軸方向に延在する直線状とされているが、横断面は図3に示すように波形とされている。波形の各屈曲部は、図3に示すように曲線状としてもよいし、角状としてもよい。
触媒板4の両面には、光触媒がコーティングされている。光触媒としては、たとえば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イリジウム等が使用できる。
【0015】
環状ミラー6は、断面筒状の筒体の内部に反射面が設けられたもので、これにより、第1光源2および第2光源5からの酸化光を外筒1内部に効率よく照射すると共に、光酸化器外部への酸化光の漏洩を防ぐようになっている。
【0016】
本実施形態の光酸化器で処理液Sを酸化する際は、処理液を入口1aから出口1cに向けて処理液Sを流し、外筒1内に処理液Sを満たす。なお、光酸化器全体を、入口1aが出口1cよりも下方になるように保持し、処理液Sを下方から上方に流すことが好ましい。これにより外筒1内に気泡等が残留することを防止できる。
処理液を充分に流通させて、外筒1内の液体がすべて酸化すべき処理液で置換された後に処理液の流れを停止し、第1光源2および第2光源5からの光照射を開始する。これにより、第1光源の酸化光が触媒板4の内側面に、第2光源の酸化光が触媒板4の外側面に各々到達し、処理液Sが酸化される。
【0017】
本実施形態によれば、触媒板4が波板状とされているので、光触媒と処理液との接触界面を大きな面積とすることができる。しかも、触媒板4の両面における接触界面全体に酸化光が到達するので、酸化反応が進行可能な界面を広く確保することができる。したがって、効率の良い光酸化を行うことができる。
また、触媒板4の縦断面は直線状とされているので、処理液Sの流通を妨げることがない。そのため、処理液Sの良好な置換性が得られる。
なお、酸化反応が進行可能な界面を広くすることを目的として、触媒板4の表面をエンボス加工することも検討した。しかし、この場合、一旦エンボス加工による凹部に入った処理液Sは、その場に滞留してしまうので、置換性の点で不適当であった。
【0018】
なお、本実施形態では、第1光源2が外筒1の内周側に、第2光源5が外筒1の外周側に各々配置される構成としたが、断面矩形の反応容器の外周における相対する2面の外側に、各々光源を配置するようにしてもよい。この場合、触媒板4は、前記相対する2面の略中央に、これらと平行に配置することが好ましい。
【0019】
本発明の測定装置は、本発明の光酸化器と、処理液の特性を検出するセンサによって構成することができる。センサの種類に限定はなく、測定対象に応じて、導電率検出器、光検出器、pH検出器、酸化還元電位検出器等を適宜採用することができる。センサの配置場所は、光酸化器内でも光酸化器の下流側でもよい。また、光酸化器を含む循環流路中に配置してもよい。
【0020】
本発明の測定装置を用いた処理液の性状測定は、酸化の前後における処理液の特性変化をセンサで検出するとによって行うことができる。また、処理液の酸化反応を完全に終了させるために長時間を要する場合は、光照射の開始後一定の時間後における特性変化を求め、これを同一条件で酸化した標準液の場合と比較することによって、処理液の性状を求めてもよい。
【0021】
たとえば、光触媒として酸化チタンを用い、185nm付近の紫外光を照射すると、処理液中の有機炭素を酸化して、有機酸や二酸化炭素に変化させることができる。そして、これにより得られる処理液の導電率変化を、導電率センサによって検出し、得られた導電率変化に基づいて処理液中の全有機炭素含量(TOC)を求めることができる。
また、処理液を酸化後に発色試薬を添加し、比色分析により全リン濃度や全窒素濃度を測定することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る光酸化器の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る光酸化器の縦断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る光酸化器の横断面図である。
【符号の説明】
【0023】
S・・・処理液、1・・・外筒、2・・・第1光源、3・・・シール材、
4・・・触媒板、5・・・第2光源、6・・・環状ミラー



【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液が導入される反応管と、両面に光触媒がコーティングされており、反応管の軸方向に延在するように反応管内に挿入された触媒板と、触媒板の一方の面に酸化光を照射する第1の酸化光源と、触媒板の他方の面に酸化光を照射する第2の酸化光源とを備えることを特徴とする光酸化器。
【請求項2】
反応管の軸方向に直交する断面が環状であり、反応管の軸方向に直交する触媒板の断面が環状であり、第1の酸化光源が反応管の内周側に、第2の酸化光源が反応管の外周側全体に、各々配置されている請求項1に記載の光酸化器。
【請求項3】
触媒板が、反応管の軸方向に直交する断面が波形の波板状である請求項1または請求項2記載の光酸化器。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れかに記載の光酸化器を用いて処理液を酸化することにより、処理液の性状を測定することを特徴とする測定装置。
【請求項5】
全有機炭素含量測定装置である請求項4に記載の測定装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−75731(P2006−75731A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−262773(P2004−262773)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】