説明

光酸発生剤およびこれを含むフォトレジスト

【課題】光酸発生剤化合物(PAG)の合成のための新規の方法、新規の光酸発生剤化合物およびこのPAGを含むフォトレジスト組成物が提供する。
【解決手段】1)SO部分;2)1個以上のフッ素化炭素;および3)エステルケト基によって直接的にまたは非直接的に置換されている1個以上のフッ素化炭素を含む、新規な光酸発生剤化合物。好ましくは、下記式(I)の構造を含む光酸発生剤化合物。


(Rは水素、または非水素置換基であり;XおよびYはそれぞれ独立して水素もしくは非水素置換基であり;pは0もしくは正の整数であり;mは正の整数であり;M+は対イオンである。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光酸発生剤化合物(PAG)の合成方法、新規の光酸発生剤化合物、およびこのPAG化合物を含むフォトレジスト組成物に関する。特に、本発明は、1)SO部分;2)1個以上のフッ素化炭素;および3)エステルケト基で直接的にまたは非直接的に置換されている1個以上のフッ素化炭素;を含む光酸発生剤に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトレジストは像を基体に転写するための感光膜である。これはネガ型またはポジ型の像を形成する。フォトレジストを基体上にコーティングした後で、この塗膜はパターン化されたフォトマスクを通して活性化エネルギー源、例えば、紫外光に露光されてフォトレジスト塗膜中に潜像を形成する。このフォトマスクは下にある基体に転写されるのが望まれる像を画定する活性化放射線に対して不透明の領域および透明の領域を有する。
【0003】
既知のフォトレジストは、既存の多くの商業的用途に充分な解像度およびサイズを有するフィーチャーを提供することができる。
【0004】
機能的特性の性能を向上させるために、フォトレジスト組成物の構成を変える様々な試みがなされてきた。とりわけ、様々な光活性化合物がフォトレジスト組成物における使用のために報告されてきた。米国特許第6,664,022号および第6,849,374号を参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,664,022号明細書
【特許文献2】米国特許第6,849,374号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、多くの他の用途のためには、サブミクロン寸法の高解像の像を提供できる新規のフォトレジストについての必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一形態においては、本発明者は、ポジ型またはネガ型フォトレジスト組成物において使用するためのスルホン酸(SO)成分を含む新規の光酸発生剤化合物(PAG)を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の好ましいPAGは1)SO部分;2)1個以上のフッ素化炭素(例えば、1個以上の−CF−、−CHF−);および3)エステルケト基、例えば、−C(=O)OR(式中、Rは水素もしくは好ましくは好ましくない置換基である)で直接的にまたは非直接的に置換されている1個以上のフッ素化炭素の;を含む。フッ素化されていない炭素および/またはヘテロ原子がフッ素化炭素とエステルケト基との間に挿入されている場合には、フッ素化炭素はエステルケト基、例えば−C(=O)ORによって非直接的に置換されており、フッ素化されていない炭素および/またはヘテロ原子がフッ素化炭素とエステルケト基との間に挿入されていない場合には、フッ素化炭素はエステルケト基、例えば、−C(=O)ORによって直接置換されている。多くの形態においては、フッ素化炭素がエステルケト基で直接置換されていることが好ましい。1個以上のフッ素化炭素(例えば、ジフルオロカーボン)(例えば、−CHF−、−CF−)を含むPAGも好ましく、特に、−CF−部分はSO部分に直接結合されている(すなわち、−CF−SO)。
【0009】
本発明の特に好ましい光酸発生剤化合物は下記式(I)の構造を含むことができる:
【化1】

式中、Rは水素、または好ましくは非水素置換基、例えば、場合によって置換されたアルキル、例えば、場合によって置換されたC1−30アルキル、場合によって置換されたC3−30シクロアルキル、場合によって置換されたアルコキシ、例えば、場合によって置換されたC1−30アルコキシ、場合によって置換された炭素環式基、例えば、C6−30炭素環式基、場合によって置換されたヘテロ脂環式基、例えば、1、2もしくは3個のN、Oおよび/またはS環原子を含むC3−30ヘテロ脂環式基などであり;
XおよびYはそれぞれ独立して水素もしくは非水素置換基、例えば、ハロ(特に、フルオロ)、シアノ、ニトロ、またはRについて上に説明されたような非水素置換基であり;
pは0もしくは正の整数であり、好ましくはpは1、2、もしくは3であり;
は正の整数であり、好ましくは1、2もしくは3であり、より好ましくは1もしくは2であり;Mは対イオンであり、好ましくは有機オニウム塩成分、例えば、スルホニウムもしくはヨードニウムカチオン成分、特に、三置換スルホニウムカチオンもしくは二置換ヨードニウムカチオンである。
【0010】
ある形態においては、本発明の特に好ましい光酸発生剤化合物は下記式(II)の構造を含むことができる:
【化2】

式中、R、p、nおよびMは上記式Iについて特定されるのと同じである。
【0011】
ある形態においては、上記式(I)および/または(II)の好ましいR基には、炭素脂環式基、例えば、場合によって置換されたアダマンチル、例えば、アダマンチル、ヒドロキシアダマンチル、シアノアダマンチル;およびヘテロ脂環式基、例えば、環状ラクトン;などが挙げられる。
【0012】
好ましい形態においては、スルホン酸アニオン成分を含む本発明のPAGは、(i)スルホン酸部分(SO)と(ii)(a)非飽和部分(例えば、フェニルもしくは他の炭素環式アリール)、ケト(カルボニル)、エステルなど、もしくは(b)脂環式基、例えば、シクロヘキシルなどとの間に、少なくとも4つの飽和非環式原子(典型的には、炭素もしくはヘテロ、N、OもしくはS、より典型的には炭素もしくは酸素、さらにより典型的には飽和鎖の各結合メンバーが炭素である)を有する鎖も含む。典型的なアニオン成分には、下記式:RO(C=O)(CH(CFSO(式中、nとmとの合計は少なくとも4であり、Rは水素もしくは式(I)および(II)について上で特定されるような非水素である)の成分が挙げられうる。
【0013】
好ましくは、本発明のPAGはポジ型もしくはネガ型化学増幅型フォトレジストにおいて使用され、すなわち、ネガ型レジスト組成物は光酸促進架橋反応を受けて、レジストの塗膜層の露光領域を未露光領域よりも低い現像剤可溶性にし、ポジ型レジスト組成物は1種以上の組成物成分の酸不安定基の光酸促進脱保護反応を受けて、レジストの塗膜層の露光領域を未露光領域よりも水性現像剤中でより可溶性にする。エステルのカルボキシル酸素に共有結合した第三級非環式アルキル炭素または第三級脂環式炭素を含むエステル基は、概して、本発明のフォトレジストに使用される樹脂の好ましい光酸不安定基である。アセタール基も好適な光酸不安定基である。
【0014】
本発明のフォトレジストの好ましい波長には、サブ(sub)300nmの波長、例えば、248nm、およびサブ200nmの波長、例えば、193nm、並びにEUVが挙げられる。
【0015】
本発明の特に好ましいフォトレジストは、像形成に有効な量の本明細書に開示される1種以上のPAG、および下記の群から選択される樹脂を含む:
1)248nmでの像形成に特に好適な化学増幅ポジ型レジストを提供できる、酸不安定(acid labile)基を含むフェノール系樹脂。この種の特に好ましい樹脂には、以下のものが挙げられる:i)ビニルフェノールおよびアクリル酸アルキルの重合単位を含むポリマー、ここにおいて、重合されたアクリル酸アルキル単位は光酸の存在下でデブロッキング(deblocking)反応を受けうる。光酸誘起デブロッキング反応を受けうる代表的なアクリル酸アルキルには、例えば、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸メチルアダマンチル、メタクリル酸メチルアダマンチル、および光酸誘起反応を受けうる他の非環式アルキルおよび脂環式アクリラート、例えば、米国特許第6,042,997号および第5,492,793号におけるポリマーが挙げられ、これら文献は参照によって本明細書に組み込まれる:ii)ビニルフェノール、場合によって置換されている(ヒドロキシもしくはカルボキシ環置換基を含まない)ビニルフェニル(例えばスチレン)、および上記ポリマーi)で記載されたデブロッキング基を有するもののようなアクリル酸アルキルの重合単位を含むポリマー;例えば、米国特許第6,042,997号に記載されたポリマー、この文献は参照によって本明細書に組み込まれる:およびiii)光酸と反応しうるアセタールもしくはケタール部分を含む繰り返し単位、および場合によってフェニルもしくはフェノール性基のような芳香族繰り返し単位を含むポリマー。
【0016】
2)サブ−200nmの波長、例えば、193nmで像形成するのに特に好適な化学増幅ポジ型レジストを提供できる、フェニルもしくは他の芳香族基を実質的にもしくは完全に含まない樹脂。この種の特に好ましい樹脂には以下のものが挙げられる:i)芳香族でない環式オレフィン(環内二重結合)、例えば、場合によって置換されたノルボルネンの重合単位を含むポリマー;例えば、米国特許第5,843,624号に記載されているポリマー、この文献は参照により本明細書に組み込まれる:ii)アクリル酸アルキル単位、例えば、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸メチルアダマンチル、メタクリル酸メチルアダマンチル、並びに他の非環式アルキルおよび脂環式アクリラートを含むポリマー;このようなポリマーは米国特許第6,057,083号に記載されている。
【0017】
本発明のレジストは異なるPAGの混合物、典型的には2または3種の異なるPAGの混合物、より典型的には全部で2種類の異なるPAGからなる混合物を含むこともできる。
【0018】
本発明は、本発明のフォトレジストのレリーフ像を形成する方法、例えば、サブクォーターミクロン寸法以下、例えば、サブ0.2もしくはサブ0.1ミクロン寸法の高解像でパターン形成されたフォトレジスト像(例えば、本質的に垂直の側壁を有するパターン形成された線)を形成する方法も提供する。
【0019】
本発明はさらに、基体上にコーティングされた本発明のフォトレジストおよびレリーフ像を有する、マイクロエレクトロニクスウェハまたはフラットパネルディプレイ基体のような基体を含む製造物品を提供する。本発明の他の形態は以下に開示される。
【0020】
論じられるように、本発明の特に好ましい光酸発生剤化合物は下記式(I)または(II)のいずれかまたは双方の構造を含むことができる:
【化3】

式中、R、X、Y、p、nおよびMは式(I)および(II)について上で特定されたのと同じである。
【0021】
特に好ましい形態においては、置換基Rは、式(III)で表されるアダマンタンもしくは置換アダマンタン構造を含むことができる:
【化4】

式(III)において、XはHもしくはOHである。
【0022】
さらなる好ましい形態においては、Rは、例えば下記式(IV)および(V)によって表されうるように、ラクトン官能基を含む二環式または多環式(例えば、2、3、4、5もしくは6つの共有結合したまたは縮合した環)構造を含むことができる:
【化5】

式(IV)および(V)のそれぞれにおいては、Xはメチレン基(−CH−)または酸素原子(−O−)である。
【0023】
さらに追加の好ましい形態においては、Rは、例えば下記式(VI)によって表されうるように、スルホン官能基を含む二環式または多環式(例えば、2、3、4、5もしくは6つの共有結合したまたは縮合した環)構造を含むことができる:
【化6】

式(VI)においては、Xはメチレン基(−CH−)または酸素原子(−O−)である。
【0024】
さらに追加の好ましい形態においては、Rはステロイド構造を有する炭化水素でもあり得る。本明細書において言及される場合、ステロイド構造は、一般式(VII):
【化7】

で表されるような、一緒に縮合した3つの6員環と1つの5員環とを有する構造の化合物を指定する。
【0025】
本発明のPAGの一般的に好ましいオニウム塩成分には、スルホニウムおよびヨードニウム塩光酸発生剤、例えば、欧州特許出願公開第0708368A1号に開示された化合物が挙げられる。このような塩には、下記式(VIII)および(IX)で表される塩が挙げられる:
【化8】

式(VIII)および(IX)においては、R〜Rはそれぞれ独立してアルキル基または置換もしくは非置換のアリール基を表す。アリール基の好ましい例には、C6−14単環式もしくは縮合環アリール基が挙げられる。アリール基上の置換基の好ましい例には、アルキル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、メルカプト基、およびハロゲン原子が挙げられる。
【0026】
本発明の特に好ましいアニオン(スルホナート)化合物には、下記構造:
【化9】

の1つを含む化合物が挙げられる。
【0027】
本発明の特に好ましいアニオン(スルホナート)化合物には下記の化合物:
【化10】

が挙げられる。
【0028】
本明細書において上述のように、本発明のPAGの様々な置換基は場合によって置換されうる。置換される部分は、例えば、F、Cl、Brおよび/もしくはIのようなハロゲン、ニトロ、シアノ、スルホノ、アルキル、例えば、C1−16アルキル(C1−8アルキルが好ましい)、ハロアルキル、例えば、フルオロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、およびペルハロアルキル、例えば、ペルフルオロC1−4アルキル、アルコキシ、例えば、1以上の酸素結合を有するC1−16アルコキシ(C1−8アルコキシが好ましい)、アルケニル、例えば、C2−12アルケニル(C2−8アルケニルが好ましい)、アルケニル、例えば、C2−12アルケニル(C2−8アルキニルが好ましい)、アリール、例えば、フェニルもしくはナフチル、および置換アリール、例えば、ハロ、アルコキシ、アルケニル、アルキニルおよび/もしくはアルキル置換アリール(好ましくは、対応する基について上で言及された炭素原子の数を有する)によって1以上の可能な位置で好適に置換される。好ましい置換アリール基には、置換フェニル、アントラセニルおよびナフチルが挙げられる。
【0029】
本明細書において使用される場合、本発明のPAG化合物のアルコキシ基は1つ以上の酸素結合、典型的には1〜約5または6つの酸素結合を有する。本明細書において使用される場合、炭素環式アリールとは、1〜3個の別個のもしくは縮合した環を有し、かつ6〜約18個の炭素環メンバーを有する非ヘテロ芳香族基をいい、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アセナフチル、フェナントラシルなどが挙げられうる。フェニルおよびナフチルが多くの場合好ましい。好適なヘテロ芳香族もしくはヘテロアリール基は1〜3個の環を有し、各環において3〜8個の環メンバーおよび1〜約3個のヘテロ原子(N、OもしくはS)を有しうる。特に好適なヘテロ芳香族またはヘテロアリール基には、例えば、クマリニル、キノリニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、フリル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、インドリル、ベンゾフラニルおよびベンゾチアゾールが挙げられる。
【0030】
本発明の光酸発生剤化合物は容易に製造されうる。典型的な合成は以下の実施例で説明される。例えば、フッ素化酸(例えば、HOC(=O)(CH(CFBr(式中、pは0〜10であり、mは1〜10である))はエステル化されることができ、(式IおよびIIについて上で定義したようなR基を提供して、例えば、化合物HOC(=O)(CH(CFBrを提供し)、次いで、スルホン酸を形成するための酸化を行い、これは過酸化水素のような酸化剤での処理および触媒NaWO・2HOの使用を含むことができる。
【0031】
上述のように、本発明のPAGは、ポジ型およびネガ型化学増幅型レジスト組成物の双方をはじめとするフォトレジスト組成物における感放射線成分として有用である。
【0032】
本発明のフォトレジストは、典型的には、樹脂バインダーおよび上述のような本発明の光活性成分を含む。好ましくは、樹脂バインダーはレジスト組成物に水性アルカリ現像可能性を付与する官能基を有する。例えば、ヒドロキシルまたはカルボキシラートのような極性官能基を含む樹脂バインダーが好ましい。好ましくは、樹脂バインダーはレジスト組成物において、レジストをアルカリ水溶液に現像可能にするのに充分な量で使用される。
【0033】
好ましくは、本発明の光酸発生剤化合物は化学増幅ポジ型レジストにおいて使用される。このような多くのレジスト組成物が、例えば、米国特許第4,968,581号;第4,883,740号;第4,810,613号;および第4,491,628号;並びにカナダ国特許出願公開第2,001,384号に記載されており、化学増幅ポジ型レジストを製造および使用するこれらの教示については、これら文献の全ては参照により本明細書に組み込まれる。本発明に従って、感放射線成分として、本発明の光活性成分に置き換えることによって、これら先行技術のレジスト組成物は改変される。
【0034】
また、本発明のPAGは、好ましくは、1種以上の光酸不安定基を有し、かつ実質的に、本質的にまたは完全にフェニルもしくは他の芳香族基を含まないポリマーと共に使用される。このようなフォトレジスト組成物は特に、サブ200nm放射線、例えば、193nm放射線で像形成するのに有用である。
【0035】
例えば、好ましいポリマーは約5モルパーセント未満しか芳香族基を含まず、より好ましくは約1または2モルパーセント未満しか芳香族基を含まず、より好ましくは約0.1、0.02、0.04および0.08モルパーセント未満しか芳香族基を含まず、さらにより好ましくは約0.01モルパーセント未満しか芳香族基を含まない。特に好ましいポリマーは完全に芳香族基を含まない。芳香族基は、サブ200nm放射線を非常に吸収することができ、よってこのような短波長の放射線で像形成されるフォトレジストにおいて使用されるポリマーには望ましくない。
【0036】
実質的にもしくは完全に芳香族基を含まず、かつサブ200nm像形成のためのフォトレジストを提供するために本発明のPAGと配合されうる好適なポリマーは、シプレイカンパニーの欧州特許出願公開第930542A1号に開示されている。
【0037】
実質的にまたは完全に芳香族基を含まない好適なポリマーは、アクリル酸メチルアダマンチル、メタクリル酸メチルアダマンチル、アクリル酸エチルフェンキル、メタクリル酸エチルフェンキルなどの重合により提供されうる様な光酸不安定アクリラート単位をはじめとするアクリラート単位;ノルボルネン化合物もしくは環内炭素−炭素二重結合を有する他の脂環式化合物の重合により提供されうるような縮合非芳香族脂環式基;無水マレイン酸の重合により提供されうるような酸無水物;など;を好適に含む。
【0038】
本発明の好ましいネガ型組成物は酸への曝露の際に硬化、架橋または固化しうる物質と、本発明の光活性成分との混合物を含む。
【0039】
特に好ましいネガ型組成物はフェノール系樹脂のような樹脂バインダー、架橋剤成分および本発明の光活性成分を含む。このような組成物およびその使用は欧州特許出願公開第0164248号および第0232972号、並びに米国特許第5,128,232号(Thackerayら)に開示されている。樹脂バインダー成分として使用するのに好ましいフェノール系樹脂には、ノボラックおよびポリ(ビニルフェノール)、例えば、上述したものが挙げられる。好ましい架橋剤には、アミンベースの物質、例えば、メラミン、グリコールウリル、ベンゾグアナミンベースの物質、および尿素ベースの物質が挙げられる。メラミン−ホルムアルデヒド樹脂が一般的に最も好ましい。このような架橋剤は市販されており、例えば、メラミン樹脂はサイメル(Cymel)300、301および303の商品名でアメリカンシアナミドによって販売されている。グリコールウリル樹脂はサイメル1170、1171、1172の商品名でアメリカンシアナミドによって販売されており;尿素ベースの樹脂はビートル(Beetle)60、65および80の商品名で販売されており;ベンゾグアナミン樹脂はサイメル1123および1125の商品名で販売されている。
【0040】
本発明のフォトレジストは他の物質を含むこともできる。例えば、他の任意の添加剤には、化学線染料(actinic dyes)およびコントラスト染料、ストリエーション防止剤(anti−striation agents)、可塑剤、速度向上剤、増感剤などが挙げられる。比較的高濃度、例えば、レジストの乾燥成分の合計重量の5〜30重量パーセントの量で存在することができる充填剤および染料を除いて、このような任意の添加剤は、典型的には、フォトレジスト組成物中に低濃度で存在するであろう。
【0041】
本発明のレジストの好ましい任意成分の添加剤は追加塩基、特にテトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)であり、これは現像されたレジストレリーフ像の解像度を向上させることができる。追加塩基は好適には比較的少量で、例えば、PAGに対して約1〜10重量パーセント、より典型的には1〜約5重量パーセントで使用される。他の好適な塩基性添加剤には、スルホン酸アンモニウム塩、例えば、p−トルエンスルホン酸ピペリジニウム、およびp−トルエンスルホン酸ジシクロヘキシルアンモニウム;アルキルアミン、例えば、トリプロピルアミンおよびドデシルアミン;アリールアミン、例えば、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、アミノフェノール、2−(4−アミノフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどを挙げることができる。
【0042】
本発明のレジストの樹脂バインダー成分は、典型的には、レジストの露光された塗膜層を、アルカリ水溶液などを用いて現像可能にするのに充分な量で使用される。より詳細には、樹脂バインダーは好適に、レジストの全固形分の50〜約90重量%を構成しうる。光活性成分は、レジストの塗膜層中の潜像の形成を可能にするのに充分な量で存在すべきである。より詳細には、光活性成分は、好適には、レジストの全固形分の約1〜40重量%の量で存在しうる。典型的には、より少ない量の光活性成分が化学増幅型レジストに好適であり得る。
【0043】
本発明のフォトレジストは、このようなフォトレジストの配合において使用される先行技術の光活性化合物を本発明のPAGと置き換えることを除いて、既知の手順に従って一般的に製造される。例えば、本発明のレジストは、フォトレジストの成分を好適な溶媒に溶解することによりコーティング組成物として製造されることができ、この好適な溶媒には、例えば、グリコールエーテル、例えば、2−メトキシエチルエーテル(ジグリム)、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル;乳酸エステル、例えば、乳酸エチルまたは乳酸メチル、乳酸エチルが好ましい;プロピオン酸エステル、特にプロピオン酸メチルおよびプロピオン酸エチル;セロソルブエステル、例えば、メチルセロソルブアセタート;芳香族炭化水素、例えば、トルエンもしくはキシレン;またはケトン、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンおよび2−ヘプタノンが挙げられる。フォトレジストの固形分量は、典型的には、フォトレジスト組成物の全重量の5〜35重量パーセントで変化する。
【0044】
本発明のフォトレジストは既知の手順に従って使用されうる。本発明のフォトレジストはドライフィルムとして適用されうるが、本発明のフォトレジストは好ましくは液体コーティング組成物として基体上に適用され、加熱により乾燥させられ、好ましくは塗膜層が粘着性でなくなるまで溶媒を除去し、フォトマスクを通して活性化放射線に露光され、場合によっては露光後ベークされて、レジスト塗膜層の露光領域と未露光領域との間の溶解度差を作り出すかまたは大きくし、次いで、好ましくは水性アルカリ現像剤で現像されてレリーフ像を形成する。本発明のレジストが適用され好適に処理される基体は、マイクロエレクトロニクスウェハのような、フォトレジストを伴うプロセスに使用されるあらゆる基体であり得る。例えば、基体は、ケイ素、二酸化ケイ素、アルミニウム−酸化アルミニウムマイクロエレクトロニクスウェハでありうる。ガリウムヒ素、セラミック、石英または銅基体も使用されうる。液晶ディスプレイおよび他のフラットパネルディスプレイ用途に使用される基体、例えば、ガラス基体、インジウムスズ酸化物コーティング基体なども好適に使用される。液体コーティングレジスト組成物はスピニング、ディッピング、またはローラーコーティングのようなあらゆる標準的な手段で適用されうる。露光エネルギーは、感放射線システムの光活性成分を効果的に活性化して、レジスト塗膜層にパターン形成された像を生じさせるのに充分であるべきである。好適な露光エネルギーは典型的には約1〜300mJ/cmの範囲である。上述のように、好ましい露光波長には、サブ200nm、例えば、193nmが挙げられる。好適な露光後ベーク温度は約50℃以上、より具体的には約50〜140℃である。酸硬化性ネガ型レジストについては、望まれる場合には、現像により形成されたレリーフ像をさらに硬化させるために約100〜150℃の温度で数分以上で現像後ベークが使用されうる。現像および何らかの現像後硬化の後で、現像によって露出させられた基体表面は、次いで、選択的に処理、例えば、フォトレジストが除かれた基体領域を、当該技術分野で知られている手順に従って化学エッチングまたはめっきすることができる。好適なエッチング剤には、フッ化水素酸エッチング溶液およびプラズマガスエッチング、例えば、酸素プラズマエッチングが挙げられる。
以下の非限定的な実施例は本発明の例示である。
【実施例】
【0045】
実施例1:PAG合成
TPS 3OH−AdTFBuSの合成
TPS 3OH−AdTFBuSの4工程合成が以下のスキーム1および以下に記載される。
【0046】
【化11】

【0047】
1. 4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロ酪酸の合成:
4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブタノール(30g、133.35mmol)および150mlの水中の硫酸水素テトラエチルアンモニウム(20mg)の混合物に100mlの水中の過マンガン酸ナトリウム(26.5gの溶液)の溶液を滴下添加する。過マンガン酸塩溶液の添加完了後に、反応混合物は65℃で4時間攪拌される。反応混合物は室温まで冷却され、沈殿物がろ過される。濾液(水溶液)がメチルt−ブチルエーテルで2回抽出される。この水溶液は濃硫酸でpH=1になるまで酸性にされる。この混合物は分離漏斗に移されて、無色の下層が分けられ(純粋生成物の第1の画分)、水性相は100mlのメチルt−ブチルエーテルで2回抽出される。一緒にされたメチルt−ブチルエーテル溶液が硫酸マグネシウムで乾燥させられ、ろ過され、そして減圧下でメチルt−ブチルエーテルが完全に除去されて、純粋生成物の第2の画分を生じさせる。全体収率=27g(85%)。
【0048】
2. 3OH−AdTFBuSNaの合成:
250mlのフラスコに、15gの4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロ酪酸(63.1mmol)および150mlの無水テトラヒドロフラン(THF)を窒素(N)スイープ下で入れた。この混合物に、1’,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI、11.2g)を30分間にわたって複数ポーションで添加する。この添加が完了した後で、反応系は室温で3時間保持される。この混合物は還流加熱され、次いで3−ヒドロキシメチル−アダマンタン−1−オール(11.5g)が5分間にわたって添加される。この混合物はさらに15時間還流に維持される。この反応物は25℃に冷却され、分離漏斗に入れられ、次いで4〜5倍の体積の水が添加される。下層が集められ、上層は300mlの酢酸エチルで洗浄される。琥珀色のオイルおよび酢酸エチル溶液が一緒にされて、次いで脱イオン水200ml×4回で洗浄される。この洗浄水のpHが〜9から〜6.5になる。酢酸エチルはMgSO上で乾燥させられ、減圧下で除去されて、オイルを生じさせ、これはさらなる精製なしに使用されうる。
【0049】
上記オイルは26.6gのチオ亜硫酸ナトリウム、19.3gの炭酸水素ナトリウム、150mlのアセトニトリルおよび150mlの脱イオン水と一緒にされる。この混合物は60℃で一晩(16時間)保持される。この混合物は室温に冷却される。アセトニトリル層が集められて、別の500mlフラスコに入れられて、そして100mlの脱イオン水が添加され、次いで、13gの30%過酸化水素および60mgの触媒(NaWO・2HO)が添加される。この溶液は室温で2〜3時間攪拌される。反応が完了した後で、13gの亜硫酸水素ナトリウムがゆっくりと添加されて、残留するHを中和する。この薄黄色の1相系に30gの塩化ナトリウムが添加されて2相系になる。上層が集められ、MgSOで乾燥させられて、そして次いで、1.4Lの攪拌したメチルt−ブチルエーテルにゆっくりと添加されて、生成物である3OH−AdTFBSuNaを生じさせる。この生成物はろ過され、乾燥されて、工程3において使用される。
【0050】
3. TPS 3OH−AdTFBuSの合成:
10gの3OH−AdTFBSuNa、50mlの塩化メチレン中の8gのトリフェニルスルホニウムブロミド、および50mlの脱イオン水からなる混合物が室温で18時間攪拌される。層が分離し、下部有機層は脱イオン水500ml×10回で洗浄される。塩化メチレンはMgSOで乾燥させられ、次いで約40%まで体積を減少させる。塩化メチレン溶液は10Lのメチルt−ブチルエーテルにゆっくりと添加され、生成物である3OH−AdTFBSuを生じさせ、これはろ過されそして乾燥させられうる。
【0051】
実施例2:フォトレジスト製造およびリソグラフィー処理
本発明のフォトレジストは、レジスト組成物の全重量を基準にした重量パーセントとして表された量で下記成分を混合することにより製造される:
【0052】
【表1】

【0053】
樹脂バインダーは(メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチル/ベータ−ヒドロキシ−ガンマ−ブチロラクトンメタクリラート/メタクリル酸シアノ−ノルボルニル)のターポリマーである。光酸発生剤は上記実施例1で製造される化合物、TPS DHC−TFBSである。これら樹脂およびPAG成分は乳酸エチル溶媒中で混合される。
配合されたレジスト組成物はHMDS蒸気前処理された4インチシリコンウェハ上にスピンコートされ、90℃で60秒間、真空ホットプレートでソフトベークされる。レジスト塗膜層はフォトマスクを通した193nmで露光され、次いで露光された塗膜層は110℃で露光後ベークされる。次いで、コーティングされたウェハは0.26Nのテトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で処理され、像形成されたレジスト層を現像する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)SO部分;
2)1個以上のフッ素化炭素;
3)エステルケト基で直接的にまたは非直接的に置換されている1個以上のフッ素化炭素;
を含む光酸発生剤化合物。
【請求項2】
下記式(I):
【化1】

(Rは水素、または非水素置換基であり;
XおよびYはそれぞれ独立して水素もしくは非水素置換基であり;
pは0もしくは正の整数であり;
mは正の整数であり;
は対イオンである)
の構造を含む請求項1に記載の光酸発生剤化合物。
【請求項3】
下記式(II):
【化2】

の構造を含む請求項2に記載の光酸発生剤化合物。
【請求項4】
pとnとの合計が少なくとも4である、請求項2または3に記載の光酸発生剤。
【請求項5】
Rが炭素脂環式もしくはヘテロ脂環式基である、請求項2〜4のいずれか1項に記載の光酸発生剤。
【請求項6】
がスルホニウムもしくはヨードニウムカチオンである、請求項2〜5のいずれか1項に記載の光酸発生剤。
【請求項7】
下記:
【化3】

から選択される構造を光酸発生剤化合物が含む、請求項1に記載の光酸発生剤化合物。
【請求項8】
下記:
【化4】

から選択される構造を光酸発生剤化合物が含む、請求項1に記載の光酸発生剤化合物。
【請求項9】
樹脂成分、並びに請求項7〜8のいずれか1項に記載の光酸発生剤化合物を含むフォトレジスト組成物。
【請求項10】
a)請求項9のフォトレジスト組成物の塗膜層を基体上に適用し;
b)パターン化した活性化放射線にフォトレジスト塗膜層を露光し、および露光したフォトレジスト層を現像してレリーフ像を提供する;
ことを含む、フォトレジストレリーフ像を形成する方法。

【公開番号】特開2011−231104(P2011−231104A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−76477(P2011−76477)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】