説明

光量調節装置及び光学機器

【課題】コンパクトな構成で光量調節と瞳時分割とを行えるようにした光量調節装置を提供する。
【解決手段】光量調節装置7は、開口7pを形成する複数の遮光部材7a,7bと、該複数の遮光部材を移動可能に保持するベース部材7mと、該複数の遮光部材をベース部材に対して移動させて該開口の大きさを変化させる第1のアクチュエータ7cと、該複数の遮光部材をベース部材に対して移動させて該開口の位置を、該開口を含む面内でシフトさせる第2のアクチュエータ7dとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の遮光部材を駆動して開口サイズを変更することで光量調節を行うとともに、開口の位置を変化させて焦点検出用の複数の像を形成させる光量調節装置及びこれを備えた撮像装置等の光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
光量調節装置には、被写体からの光束が通過する開口のサイズ(径)を変化させて像面に到達する光量を変化させる光量調節機能に加えて、該開口の位置を変化させるいわゆる瞳時分割機能を有するものがある。この瞳時分割機能によって撮像素子上に時系列的に形成された2像のずれ量(位相差)を演算することで、位相差検出方式AFを行うことができる。
【0003】
このような瞳時分割機能を有する光量調節装置は、例えば特許文献1にて開示されたものがある。この光量調節装置では、2つのモータによって2つの遮光部材を独立に駆動可能な構成を有する。光量調節時には、該2つの遮光部材を互いに反対方向に移動させることで開口のサイズを変更する。また、瞳時分割時には、該2つの遮光部材を互いに同じ方向に移動させることで、開口の位置をシフトさせる。
【0004】
また特許文献1には、2つの遮光部材を2つのモータで移動させることで開口のサイズを変更し、該2つの遮光部材と2つのモータを保持する部材を別のモータで遮光部材の移動方向に直交する方向に移動させて開口の位置をシフトさせる構成も開示されている。
【特許文献1】特開2004−038114号公報(段落0011〜0015,0031、図2,図7等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のうち特に2つの遮光部材と2つのモータを保持する保持部材を別のモータで移動させて開口をシフトさせる構成では、遮光部材を保持、位置決め及びガイドする保持部材自体を移動させる。このため、光学機器内に該保持部材の移動スペースを確保する必要があり、また保持部材の位置決めや移動ガイドのための構成が新たに必要となる。しかも、開口サイズの変更(光量調節)と保持部材の移動(瞳時分割)のために3つのモータが使用される。これらにより、該光量調節装置やこれを搭載する光学機器の大型化が問題となる。
【0006】
そこで、本発明は、コンパクトな構成で光量調節と瞳時分割とを行えるようにした光量調節装置及びこれを備えた光学機器を提供することを目的の1つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としての光量調節装置は、開口を形成する複数の遮光部材と、該複数の遮光部材を移動可能に保持するベース部材と、該複数の遮光部材をベース部材に対して移動させて該開口の大きさを変化させる第1のアクチュエータと、該複数の遮光部材をベース部材に対して移動させて該開口の位置を、該開口を含む面内でシフトさせる第2のアクチュエータとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光量調節装置では、1つのアクチュエータによって複数の遮光部材をベース部材に対して移動させて光量調節を行い、もう1つのアクチュエータによって該複数の遮光部材をベース部材に対して移動させて瞳時分割を行う。すなわち、2つのアクチュエータを用いるだけで、かつベース部材を移動させることなく光量調節と瞳時分割とを行うことができる。したがって、本発明によれば、簡単かつコンパクトな構成でありながらも光量調節機能と瞳時分割機能とを有する光量調節装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0010】
図1及び図2には、本発明の実施例1であるビデオカメラの構成を示す。本実施例のビデオカメラは、物体側から凸凹凸凸の4つのレンズユニットを有する変倍光学系としての撮影光学系を有する。図1はビデオカメラの分解斜視図、図2はその主要な断面図である。
【0011】
これらの図において、物体側から順に、L1は固定の第1レンズユニット、L2は光軸方向に移動することにより変倍を行う第2レンズユニット、L3は固定の第3レンズユニット、L4は光軸方向に移動して焦点調節を行う第4レンズユニットである。
【0012】
また、1は第1レンズユニットL1を保持する前玉鏡筒、2は第2レンズユニットL2を保持するズーム移動枠である。3は第3レンズユニットL3を保持する第3レンズ鏡筒を一体化した固定鏡筒である。4は第4レンズユニットを保持するフォーカス移動枠である。
【0013】
5はCCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子6が固定される撮像素子ホルダである。
【0014】
前玉鏡筒1は、固定鏡筒3に対して3本のビスにより前方から結合される。また、撮像素子ホルダ5は、固定鏡筒3に対して3本のビスで後方から結合される。
【0015】
7は光量調節ユニット(光量調節装置)である。該光量調節ユニット7は、2枚の絞り羽根(遮光部材)7a,7bによって光が通過する開口(可変開口)を形成する。光量調節ユニット7は、ガルバノメータ等により構成される第1のアクチュエータとしての絞りモータ7cによって絞り羽根7a,7bを図中の上下方向(第1の方向)における互いに反対方向に移動させることで、開口径を変化させる。光量調節ユニット7は、いわゆるギロチン式の光量調節ユニットである。
【0016】
また、光量調節ユニット7は、第2のアクチュエータとしての瞳移動モータ7dによって絞り羽根7a,7bを図中の左右方向(第2の方向)に移動させる。これにより、絞り羽根7a,7bによって形成された開口の位置を、その開口を含む面内でシフトさせる。これらの機能については、後述する。なお、光量調節ユニット7は、固定鏡筒3に設けられた開口部3aを通して下方から組み込まれ、撮影光学系の瞳位置又はその周辺に配置される。
【0017】
図1において、8,9は固定鏡筒3と前玉鏡筒1によりその両端が保持されたガイドバーである。また、10,11は固定鏡筒3と撮像素子ホルダ5によりその両端が保持されたガイドバーである。
【0018】
ズーム移動枠2は、ガイドバー8,9により光軸方向に移動可能に支持されている。また、フォーカス移動枠4は、ガイドバー10,11により光軸方向に移動可能に支持されている。なお、ズーム移動枠2及びフォーカス移動枠4はそれぞれ、光軸方向に特定の長さを有するスリーブ部2a,4aを有し、各スリーブ部にて一方のガイドバーに光軸方向に移動可能に係合する。これにより、各移動枠の光軸方向への倒れが防止される。また、各移動枠はU溝部を有し、このU溝部で他方のガイドバーに係合する。これにより、各移動枠の上記一方のガイドバー回りでの回転が阻止される。
【0019】
12,13はフォトインタラプタにより構成されるズームリセットスイッチとフォーカスリセットスイッチである。これらリセットスイッチ12,13はそれぞれ、ズーム移動枠2及びフォーカス移動枠4に形成された遮光部2b,4bの光軸方向移動による遮光状態と透光状態との切り換わりを光学的に検出する。該リセットスイッチ12,13からの出力変化によって、第2及び第4レンズユニットL2,L4がそれぞれ、その移動量を計測するための基準位置に位置しているか否かを検出することができる。
【0020】
ズームリセットスイッチ12及びフォーカスリセットスイッチ13はそれぞれ、補強板を介してビスにより固定鏡筒3に固定されている。
【0021】
14は第2レンズユニットL2を光軸方向に移動させるアクチュエータとしてのステッピングモータ(以下、ズームモータという)である。15は第4レンズユニットL4を光軸方向に移動するアクチュエータとしてのステッピングモータ(以下、フォーカスモータという)である。
【0022】
ズームモータ14及びフォーカスモータ15の出力軸にはそれぞれ、リードスクリューが形成されている。ズームモータ14及びフォーカスモータ15はそれぞれ、2本のビスと一箇所の引っ掛け部(不図示)により固定鏡筒3に固定される。
【0023】
16,17はラックであり、ズーム及びフォーカス移動枠2,4に取り付けられている。これらラック16,17はそれぞれ、ズームモータ14及びフォーカスモータ15のリードスクリューに噛み合う。ズームモータ14及びフォーカスモータ15が回転すると、ードスクリューの回転力がラック16,17によって光軸方向の駆動力に変換される。これにより、ズーム移動枠2及びフォーカス移動枠4が光軸方向に駆動される。
【0024】
18,19はコイルばねであり、ラック16,17をズーム及びフォーカス移動枠2,4のそれぞれに対して光軸方向一方に向けて片寄せしている。また、コイルばね18,19は、ラック16,17をリードスクリューに噛み合う方向に付勢する機能も有する。
【0025】
図3には、本実施例のビデオカメラの電気的構成を示している。なお、図1及び図2中の構成要素と共通するものには、図1及び図2と同じ符号を付している。
【0026】
225はバリエータである第2レンズユニットL2の光軸方向での位置を検出するためのズームエンコーダである。227は第4レンズユニットL4の光軸方向での位置を検出するためのフォーカスエンコーダである。これらのエンコーダはそれぞれ、ズーム及びフォーカスリセットスイッチ12,13により検出された基準位置からの第2及び第4レンズユニットL2,L4の光軸方向での位置(移動量=駆動パルス数)を検出する。
【0027】
なお、ズームモータ14及びフォーカスモータ15としては、上述したステッピングモータに限らず、DCモータや振動型モータを用いることもできる。また、第2及び第4レンズユニットL2,L4の位置を検出するために、エンコーダ以外の位置検出器を用いてもよい。
【0028】
226は絞りエンコーダであり、第1及び第2の絞りモータ7c,7dの内部にホール素子(hall element)を配置し、ロータとステータの回転位置関係を検出する方式のもの等を用いることができる。なお、絞り羽根7a,7bには、いわゆる小絞り回折による画質劣化を防止するためにNDフィルタ(図示せず)が貼り付けられている。ただし、NDフィルタを絞り羽根7a,7bとは独立して設け、専用のモータによってNDフィルタを光路に出し入れしてもよい。
【0029】
228はカメラ信号処理回路であり、撮像素子6からの出力に対して増幅処理やガンマ補正処理等を施す。これらの処理を経て生成された映像信号は、不図示のディスプレイに表示されたり、不図示の記録媒体(半導体メモリ、光ディスク、ハードディスク、磁気テープ等)に記録されたりする。
【0030】
また、映像信号のうち輝度信号Yは、AE(自動露出)ゲート229、AF(オートフォーカス)ゲート230及び位相差AF回路250に入力される。AEゲート229及びAFゲート230は、全画面のうち露出決定及びピント合わせのために最適な信号取り出し範囲を設定する。これらのゲート229,230による信号取り出し範囲の大きさは可変であってもよいし、ゲートが複数設けられていてもよい。
【0031】
231はTV−AFに用いられる信号を生成するAF信号処理回路である。AF信号処理回路231は、AFゲート230の数に応じて、映像信号の高周波成分に関する1若しくは複数のAF評価値信号を生成する。
【0032】
位相差AF回路250は、光量調節ユニット7の開口の中心位置がシフトしたそれぞれの状態で取得した画像(輝度信号)のずれ量、すなわち位相差を算出する。算出した位相差の情報はCPU232に出力される。本実施例のビデオカメラでは、静止画撮影も可能である。そして、TV−AFよりも素早いAF動作が必要な静止画撮影において、この位相差情報を用いた位相差検出方式での撮影光学系の焦点状態の検出及びフォーカス制御(瞳時分割AF)が行われる。但し、動画撮影においても素早いAFが要求される場合には、該位相差情報を用いた瞳時分割AFを行ってもよい。
【0033】
233はズームスイッチであり、ユーザの操作に応じてズーム指令をコントローラとしてのCPU232に出力する。
【0034】
234はズームトラッキングメモリであり、変倍に際して、被写体距離と第2レンズユニットL2の位置に対して合焦を維持するための第4レンズユニットL4の位置情報を記憶する。ズームトラッキングメモリとして、CPU232内のメモリを使用してもよい。
【0035】
ズームスイッチ233が操作されると、CPU232は以下の動作を行う。CPU232は、ズームトラッキングメモリ234内の位置情報(メモリ位置)に基づき、第2及び第4レンズユニットL2,L4が被写体距離に応じた特定の位置関係を維持するように両レンズユニットL2,L4を移動させる。すなわち、ズームエンコーダ225で得られる第2レンズユニットL2の移動位置と被写体距離に対応するメモリ位置に対して、フォーカスエンコーダ227で得られる第4レンズユニットL4の位置が一致するようにフォーカスモータ15の駆動を制御する。
【0036】
また、TV−AF動作では、CPU232は、AF信号処理回路231からのAF評価値がピーク値を示すように、フォーカスモータ15の駆動を制御する。
【0037】
さらに、CPU232は、位相差AF回路250から入力された位相差情報に基づいて、被写体に対するデフォーカス量を求め、さらにこのデフォーカス量から第4レンズユニットL4の合焦位置までの駆動量を算出する。そして、第4レンズユニットL4が合焦位置に到達するようにフォーカスモータ15の駆動を制御する。
【0038】
また、CPU232は、AEゲート229を通過した輝度信号Yの平均値が適正露出を得るための値になるように、第1及び第2の絞りモータ7c,7dの駆動を制御して、開口径をコントロールする。
【0039】
次に、本実施例における光量調節ユニット7の構成及び機能について、図4〜図6を用いて説明する。図4〜図6は、光量調節ユニット7を、光が通過する方向(以下、光軸方向という)から見た図である。
【0040】
これらの図において、7mは光量調節ユニット7のベース部材となる地板である。この地板7mは、2枚の絞り羽根7a,7b、絞りモータ7c及び瞳移動モータ7dを保持する。また、地板7mには、固定開口7nが形成されている。遮光部材としての絞り羽根7a,7bはそれぞれ、その下部に円形穴部7aa,7baを有し、これらの円形穴部7aa,7baに対して第1の伝達部材であるアーム7gの両端に形成されたボス7h,7iが挿入されて係合している。また、絞り羽根7a,7bにはそれぞれ、図中の上下方向(矢印503,504の方向)に延びるガイド溝穴部7q,7rが形成されている。これらガイド溝穴部7q,7rには、ガイドピン7kが挿入されている。
【0041】
なお、実際には、絞り羽根7a,7bを図の紙面に垂直な方向から押さえる機能を有する押さえ板が地板7mに組み合わされるが、図4〜図6では押さえ板の図示を省略している。
【0042】
前述した絞りモータ7cによってアーム7gがその軸部7jを中心として回動すると、絞り羽根7a,7bは、ガイドピン7kによってガイドされながら矢印503,504の方向(第1の方向)において互いに反対側に移動する。これにより、絞り羽根7a,7bによって形成される可変開口7pのサイズ及び形状が変化し、光量調節機能を果たす。このとき、可変開口7pの中心は、地板7mに形成された固定開口7nの中心(前述した撮影光学系の光軸が通る位置:以下、光軸中心という)Aに一致したままである。
【0043】
また、瞳移動モータ7dの出力軸には一体的にアーム7fが設けられている。アーム7fは瞳移動モータ7dの作動により回動する。アーム7fの先端には、ピン7faが形成されており、該ピン7faは第2の伝達部材である駆動部材7eに上下方向に延びるように形成された長溝部7eaに係合している。これにより、アーム7fが回動すると、駆動部材7eは図中左右方向(矢印511の方向)に移動する。
【0044】
ここで、前述した光量調節機能において絞り羽根7a,7bを上下方向にガイドする役割を果たしていたガイドピン7kは、駆動部材7eに一体的に設けられている。このため、駆動部材7eが左右方向に移動すると、このガイドピン7kを介して絞り羽根7a,7bに左右方向への駆動力が作用する。
【0045】
絞り羽根7a,7bは、それぞれの円形穴部7aa,7baが前述したアーム7gのボス7h,7iに対して回動可能に係合している。このため、左右方向への駆動力を受けた絞り羽根7a,7bはそれぞれ、ボス7h,7iによって回転ガイドされながら左右方向における互いに同一方向に回動する。
【0046】
図4では、絞り羽根7a,7bにより形成された可変開口7pが開放径状態にあり、かつその中心が光軸中心Aに一致している。また、可変開口7pの開放径(直径)は、固定開口7nの直径に一致している。
【0047】
図5では、駆動部材7eからの駆動力によって絞り羽根7a,7bが図中の左方向に回動した状態を示している。この図においても、可変開口7pは開放径状態に設定されている。すなわち、絞りモータ7cは図4の状態から停止したままである。
【0048】
そして、この図において、絞り羽根7a,7bにより形成された可変開口7pは、地板7mに形成された固定開口7nに対して左方向にシフトしている。このため、固定開口7nのうち右側端部の周辺部の領域が絞り羽根7a,7bによって覆われている。したがって、図中にハッチングで示した実際に光が通過する開口領域(固定開口7nと可変開口7pとが光軸方向において重なる領域:以下、光通過領域という)の中心Bが光軸中心Aに対してΔLだけ左方向にシフトしている。なお、可変開口7pの動きは厳密には回動であるが、本実施例ではこれも含めてシフトという。
【0049】
一方、図6では、駆動部材7eからの駆動力によって絞り羽根7a,7bが図中の右方向に回動した状態を示している。この図においても、可変開口7pは開放径状態に設定されている。すなわち、絞りモータ7cは図4及び図5の状態から停止したままである。
【0050】
そして、この図において、絞り羽根7a,7bにより形成された可変開口7pは、地板7mに形成された固定開口7nに対して右方向にシフトしている。このため、固定開口7nのうち左側端部の周辺部の領域が絞り羽根7a,7bによって覆われている。したがって、図中にハッチングで示した光通過領域の中心Cが光軸中心Aに対してΔLだけ右方向にシフトしている。
【0051】
この光通過領域の中心Bの左右へのシフトにより、瞳時分割機能が果たされる。
【0052】
なお、図5及び図6に示す状態での光通過領域は、図4に示す円形からつぶれた形状となる。この状態での該領域の「中心B」とは、光軸中心Aを通り、シフト方向に沿った水平ライン上での領域幅の中心を意味する。
【0053】
また、図5及び図6では、絞り羽根7a,7bにより形成される可変開口7pを開放径状態に設定して左右にシフトする様子を示したが、可変開口7pを適宜絞り込んだ後に左右にシフトさせてもよい。また、可変開口7pが固定開口7m内でシフトするように可変開口7pの大きさを設定してもよい。
【0054】
以下、本実施例の光量調節ユニット7を用いた瞳時分割AFについて説明する。このAFに対しては、特にCMOSセンサのような高速画像処理が可能な撮像素子を用いることが有効である。
【0055】
通常のビデオ出力では、1画像の出力は、NTSC方式で60分の1秒である。本実施例の撮像素子6としてのCMOSセンサは高速読み出しが可能であり、1回の画像出力の間に複数回の画像を取り込むことも可能である。例えば、60分の1秒の間に6つの画像を順次取り込むことができる。
【0056】
この場合の6つの画像のうちの1つとして、60分の1秒を6分の1した時間の間に、光量調節ユニット7を図5の状態(ただし、可変開口7pのサイズは任意である:以下、図6及び図4の状態に関しても同じ)にして第1の位相差検出用画像を取り込む。さらに、上記6つの画像のうちの他の1つとして、60分の1秒を6分の1した時間の間に、光量調節ユニット7を図6の状態にして第2の位相差検出用画像を取り込む。
【0057】
他の4つの画像は、光量調節ユニット7を図4に示す状態として取り込み、これら4つの画像を合成して出力画像とする。
【0058】
図5及び図6の状態では、瞳位置での被写体光束の中心が光軸中心Aに対してΔLだけずれているので、被写体に対して非合焦状態では、2つの位相差検出用画像に非合焦の度合いに応じたずれが生ずる。
【0059】
したがって、位相差AF回路250によって2つの位相差検出用画像のずれ量(位相差)を求めることで、CPU232では、該ずれ量からデフォーカス量を計算することができる。そして、CPU232は、そのデフォーカス量に基づいて第4レンズユニットL4(フォーカスモータ15)をコントロールすることにより、合焦を得ることができる。特に、撮像素子6としてCMOSセンサを用いることで、高速で高性能なAFを実現できる。
【実施例2】
【0060】
図7には、本発明の実施例2である光量調節ユニットを示している。この光量調節ユニットも、実施例1で説明したビデオカメラに搭載され、光量調節機能と瞳時分割機能とを有する。なお、本実施例において、実施例1で説明した光量調節ユニット7と共通する構成要素又は共通する機能、実施例1と同符号を付す。
【0061】
7mは本実施例の光量調節ユニット107のベース部材となる地板である。この地板7mは、2枚の絞り羽根7a,7b、絞りモータ7c及び瞳移動モータ7dを保持する。また、地板7mには、固定開口7nが形成されている。遮光部材としての絞り羽根7a,7bはそれぞれ、その下部に図中の左右方向(矢印511の方向)に延びる長穴部7ab,7bbを有し、これらの長穴部7ab,7bbに対してアーム7gの両端に形成されたボス7h,7iが挿入されて係合している。
【0062】
また、絞り羽根7a,7bにはそれぞれ、図中の上下方向(矢印503,504の方向)に延びるガイド溝穴部7q,7rが形成されている。これらガイド溝穴部7q,7rには、ガイドピン7ta,7tbが挿入されている。
【0063】
なお、実際には、絞り羽根7a,7bを図の紙面に垂直な方向から押さえる機能を有する押さえ板が地板7mに組み合わされるが、図12では押さえ板の図示を省略している。
【0064】
絞りモータ(図示せず)によってアーム7gがその軸部7jを中心として回動すると、絞り羽根7a,7bは、ガイドピン7ta,7tbによってガイドされながら矢印503,504の方向(第1の方向)において互いに反対側に移動する。これにより、絞り羽根7a,7bによって形成される可変開口7pのサイズ及び形状が変化し、光量調節機能を果たす。このとき、可変開口7pの中心は、光軸中心Aに一致したままである。
【0065】
また、瞳移動モータ7dの出力軸には一体的にアーム7fが設けられている。アーム7fは瞳移動モータ7dの作動により回動する。アーム7fの先端には、ピン7faが形成されており、該ピン7faは駆動部材7sに上下方向に延びるように形成された長溝部7saに係合している。これにより、アーム7fが回動すると、駆動部材7sは図中左右方向に移動する。
【0066】
ここで、前述した光量調節機能において絞り羽根7a,7bを上下方向にガイドする役割を果たしていたガイドピン7ta,7tbは、駆動部材7sに一体的に設けられている。このため、駆動部材7sが左右方向に移動すると、このガイドピン7ta,7tbを介して絞り羽根7a,7bに左右方向への駆動力が作用する。
【0067】
絞り羽根7a,7bは、それぞれの長穴部7ab,7bbが前述したアーム7gのボス7h,7iに対して左右方向に移動可能に係合している。このため、左右方向への駆動力を受けた絞り羽根7a,7bはそれぞれ、ボス7h,7iによってガイドされて左右方向(第2の方向)に移動する。このとき、絞りモータ7cは停止したままであり、絞り羽根7a,7bにより形成された可変開口7pのサイズは変化しない。
【0068】
この絞り羽根7a,7bの左右方向への移動により、絞り羽根7a,7bにより形成された可変開口7pは、地板7mに形成された固定開口7nに対して左右方向にシフトする。これにより、固定開口7nと可変開口7pとが光軸方向において重なる光通過領域の中心Bが光軸中心Aに対してΔLずつ左右方向にシフトする。これにより、瞳時分割機能が果たされる。
【0069】
本実施例でも、可変開口7pがシフトした状態での光通過領域は円形とはならない。このため、実施例1と同様に、光通過該領域の「中心B」は、光軸中心Aを通り、シフト方向に沿った水平ライン上での領域幅の中心を意味する。
【0070】
図126では、絞り羽根7a,7bにより形成される可変開口7pを開放径状態に設定して左右にシフトするように説明したが、可変開口7pを適宜絞り込んだ後に左右にシフトさせてもよい。また、可変開口7pが固定開口7n内でシフトするように可変開口7pの大きさを設定してもよい。
【実施例3】
【0071】
図8〜図10には、本発明の実施例3としてのいわゆる虹彩絞り型の光量調節ユニットを示す。この光量調節ユニットも、実施例1で説明したビデオカメラに搭載され、光量調節機能と瞳時分割機能とを有する。図8は、本実施例の光量調節ユニット607の正面図、図9はその背面図である。
【0072】
これらの図において、607mは光量調節ユニット607のベース部材となる地板である。地板607mは、6枚の絞り羽根607a〜607f、絞りモータ7c及び瞳移動モータ7dを保持する。また、地板607mには、固定開口607nが形成されている。絞り羽根607a〜607fは、その基端部が地板607mにおける周方向6箇所に形成されたピン607g〜604lに対して回動可能に取り付けられている。また、絞り羽根607a〜607fには、カム溝部607r〜607wが形成されている。
【0073】
601は駆動リングであり、その周方向6箇所には駆動ピン601a〜601fが形成されている。駆動ピン601a〜601fはそれぞれ、絞り羽根607a〜607fのカム溝部607r〜607wに挿入されて係合している。また、駆動リング601の内周部601nは、地板607の固定開口607nより大きな径を有する。また、駆動リング601の外周の一部には、ギヤ部601gが形成されている。
【0074】
606はリングベースであり、駆動リング601を回転可能に保持している。該リングベース606は、地板607mによって、該地板607mに形成されたガイド部607yに沿って図中の上下方向にシフト可能に保持されている。
【0075】
605は駆動部材であり、長穴部605aを有する。この長穴部605aには、リングベース606に設けられた駆動ピン606aが挿入されて係合している。
【0076】
絞りモータ7cは、ギヤ603及びギヤ部601gを介して駆動リング601を光軸中心A回りで回動させる。これにより、駆動リング601の駆動ピン601a〜601fと絞り羽根607a〜607fのカム溝部607r〜607wとの係合によるカム作用によって絞り羽根607a〜607fが基端部を中心に回動する。これにより、絞り羽根607a〜607fによって形成された可変開口607pの大きさが変化する。このとき、リングベース606及び駆動リング601は、可変開口607pの中心が光軸中心Aに一致する位置に保持されている。
【0077】
絞りモータ7cを停止させた状態(任意の可変開口7pを設定した後)で瞳移動モータ7dを駆動部材605が下方に回動するよう駆動する。これにより、駆動部材605の長穴部605aに対して駆動ピン606aが係合したリングベース606が、ガイド部607yに沿って下方に移動する。このリングベース606の移動とともに駆動リング601も下方に移動する。なお、このとき、駆動リング601に形成されたギヤ部601gは停止している絞りモータ7cに出力部であるギヤ603と噛み合っているので、駆動リング601(及びリングベース606は、絞りモータ7c回りで回動する。
【0078】
そして、駆動リング601が下方に移動(回動)すると、これに設けられている駆動ピン601a〜601fとこれに係合するカム溝部607r〜607wを介して、絞り羽根607a〜607fが下方に回動される。これにより、可変開口607pが下方にシフトする。
【0079】
こうして可変開口607pが下方にシフトすることで、固定開口7nと可変開口7pとが光軸方向において重なる光通過領域(図では、可変開口607pに一致する)の中心Bが光軸中心Aに対してΔHだけ下方にシフトする。
【0080】
一方、瞳移動モータ7dを駆動部材605が上方に回動するよう駆動することで、光通過領域の中心Bが光軸中心Aに対してΔHだけ上方にシフトする。これにより、瞳時分割機能が果たされる。
【0081】
なお、上下にシフトした光通過領域は、図8の円形からつぶれた形状となる。この状態での該領域の「中心B」とは、光軸中心Aを通り、シフト方向に沿った垂直ライン上での領域幅の中心を意味する。
【0082】
また、可変開口607pをシフトさせるときの該可変開口607pの大きさは任意に設定できる。
【0083】
上記各実施例の光量調節ユニットでは、1つの絞りモータ7cによって複数の絞り羽根をベース部材としての地板に対して移動させて光量調節を行い、他の1つの瞳移動モータ7dによって該複数の絞り羽根を地板に対して移動させて瞳時分割を行う。このため、2つのモータを用いるだけで、かつベース部材を移動させることなく、簡単かつコンパクトな構成で、光量調節機能と瞳時分割機能を有する光量調節ユニットを実現できる。
【0084】
したがって、この光量調節ユニットを搭載するビデオカメラに、その大型化を招くことなく、瞳時分割AF機能を装備することができる。
【0085】
さらに、上記実施例1,2では、それぞれ絞り羽根7a,7bに係合して絞りモータ7c及び瞳移動モータ7dの駆動力を絞り羽根に伝達するアーム7g及び駆動部材7e,7sを有する。そして、絞り羽根7a,7bは、絞りモータ7cの駆動力により移動するときには駆動部材7e,7sとの係合によりその移動方向にガイドされる。一方、絞り羽根7a,7bは、瞳移動モータ7dの駆動力により移動するときにはアーム7gとの係合によりその移動方向にガイドされる。このようにアーム7g及び駆動部材7e,7sに、絞り羽根7a,7bの駆動の役割と自ら駆動しないときのガイドの役割とを持たせることで、光量調節ユニットの構成をより簡単、かつよりコンパクトにすることができる。
【0086】
なお、上記各実施例で説明した絞り羽根の駆動方向は例にすぎず、任意の方向に移動させてよい。
【0087】
また、各実施例にて使用した絞りモータ7c及び瞳移動モータ7dとしては、ガルバノメータだけでなく、ステッピングモータ、DCモータなど様々なアクチュエータを使用できる。
【0088】
また、上記各実施例では、ビデオカメラについて説明したが、本発明の瞳時分割機能を有する光量調節装置は、デジタルスチルカメラや交換レンズ等の他の光学機器にも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施例1であるビデオカメラの分解斜視図。
【図2】実施例1のビデオカメラにおけるレンズ鏡筒の断面図。
【図3】実施例1のビデオカメラの電気回路構成を示すブロック図。
【図4】実施例1の光量調節ユニットの構成を示す正面図。
【図5】実施例1の光量調節ユニットの構成(左シフト状態)を示す正面図。
【図6】実施例1の光量調節ユニットの構成(右シフト状態)を示す正面図。
【図7】本発明の実施例2である光量調節ユニットの構成を示す正面図。
【図8】本発明の実施例3である光量調節ユニットの構成を示す正面図。
【図9】実施例3の光量調節ユニットの構成を示す背面図。
【図10】実施例3の光量調節ユニットの構成(下シフト状態)を示す正面図。
【符号の説明】
【0090】
L1〜L4 第1〜第4レンズユニット
1 前玉鏡筒
2 ズーム移動枠
3 固定鏡筒
4 フォーカス移動枠
5 CCDホルダ
6 撮像素子
7,107,607 光量調節ユニット
7a,7b,607a〜607f 絞り羽根
7c 絞りモータ
7d 瞳移動モータ
7e,7s,605 駆動部材
7g アーム
7m,607m 地板
601 駆動リング
605 駆動部材
606 リングベース


【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を形成する複数の遮光部材と、
該複数の遮光部材を移動可能に保持するベース部材と、
該複数の遮光部材を前記ベース部材に対して移動させて前記開口の大きさを変化させる第1のアクチュエータと、
前記複数の遮光部材を前記ベース部材に対して移動させて前記開口の位置を、該開口を含む面内でシフトさせる第2のアクチュエータとを有することを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
前記第2のアクチュエータは、前記第1のアクチュエータが停止した状態で前記複数の遮光部材を移動させることを特徴とする請求項1に記載の光量調節装置。
【請求項3】
前記第1のアクチュエータは、前記遮光部材を前記ベース部材に対して第1の方向に移動させ、
前記第2のアクチュエータは、前記遮光部材を前記ベース部材に対して前記第1の方向とは異なる第2の方向に移動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の光量調節装置。
【請求項4】
それぞれ前記遮光部材に係合して、前記第1及び第2のアクチュエータの駆動力を該遮光部材に伝達する第1及び第2の伝達部材を有し、
前記遮光部材は、前記第1のアクチュエータの駆動力により移動するときには前記第2の伝達部材との係合によりその移動方向にガイドされ、前記第2のアクチュエータの駆動力により移動するときには前記第1の伝達部材との係合によりその移動方向にガイドされることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の光量調節装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の光量調節装置と、
該光量調節装置の前記開口を通過した光束により像を形成させる光学系とを有することを特徴とする光学機器。
【請求項6】
前記第2のアクチュエータの動作により前記開口の位置をシフトさせて前記光学系の焦点状態を検出することを特徴とする請求項5に記載の光学機器。


【図7】
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【図10】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−129106(P2008−129106A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310992(P2006−310992)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】