説明

光電変換素子の製造方法、光電変換素子、および光電気化学電池

【課題】変換効率が高く、廉価な光電変換素子および光電気化学電池を提供する。
【解決手段】導電性支持体上に色素が吸着された多孔質半導体微粒子を有する感光層、電荷移動層、および対極を含む積層構造よりなる光電変換素子の製造方法であって、半導体微粒子以外の固形分の含量が半導体微粒子分散液全体の10質量%以下の分散液を前記導電性支持体上に塗布し加熱することにより多孔質半導体微粒子を得る工程、及び該多孔質半導体微粒子を下記一般式1で表される構造を有する色素で増感する工程を含有する光電変換素子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変換効率の高い光電変換素子の製造方法、光電変換素子および光電気化学電池に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子は各種の光センサー、複写機、太陽電池等に用いられている。この光電変換素子には金属を用いたもの、半導体を用いたもの、有機顔料や色素を用いたもの、あるいはこれらを組み合わせたものなどの様々な方式が実用化されている。中でも、非枯渇性の太陽エネルギーを利用した太陽電池は、燃料が不要であり、無尽蔵なクリーンエネルギーとして、その本格的な実用化が大いに期待されている。この点、シリコン系太陽電池は古くから研究開発が進められてきた。各国の政策的な配慮もあって普及が進んではいる。しかし、シリコンは無機材料であり、スループット及び分子修飾には自ずと限界がある。
【0003】
上記のような課題を解決する次世代の技術として色素増感型太陽電池の研究が精力的に行われている。とくに、スイスのローザンヌ工科大学のGraetzel等がポーラス酸化チタン薄膜の表面にルテニウム錯体からなる色素を固定した色素増感型太陽電池を開発し、アモルファスシリコン並の変換効率を実現したことにより、一躍世界の研究者から注目を集めるようになった。
【0004】
特許文献1〜3には、この技術を応用した、色素によって増感された半導体微粒子を用いた色素増感光電変換素子が記載されている。この色素増感光電変換素子は半導体微粒子を含む高粘度の分散液を電極支持体上に塗布し、これを比較的高温(400〜500℃)で溶媒を揮発させ、これに色素を吸着させることで製造されている。しかし、この溶媒揮発の工程が、時間やエネルギーが低コスト化の障害となる。さらに、半導体微粒子層を担持する電極支持体の種類が限定されるために、プラスチック基板などへの電極層形成が困難であった。この問題に対し特許文献5では、半導体微粒子と分散溶媒を除く添加剤の含量が分散液の1質量%以下の分散液を支持体に塗布し、250℃以下で加熱することにより、半導体微粒子にルテニウム錯体色素を吸着する方法が記載されている。
【0005】
しかしながら、増感色素に用いられるルテニウム錯体色素は極めて高価である。またルテニウムは供給性に懸念があり、次世代のクリーンエネルギーを支える技術として本格的に対応するにはまだ十分といえず、むしろ実用化に向けた研究開発はその緒に就いたばかりである。このような理由から、廉価かつ資源的制約の小さい有機材料によって増感され、かつ十分な変換効率を有する光電変換素子の開発が望まれており、有機色素を増感剤として用いたものが報告され始めている(特許文献4参照)。しかし、このものは500℃という高温で多孔質半導体微粒子層を形成する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5463057号明細書
【特許文献2】米国特許第5525440号明細書
【特許文献3】特開平7−249790号公報
【特許文献4】特開2008−135197号公報
【特許文献5】特開2002−280587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、変換効率が高く、廉価な光電変換素子および光電気化学電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、特定の半導体微粒子分散液を導電性支持体に塗布乾燥させ、その後に特定の色素で半導体微粒子を増感させることで、変換効率の高い光電気化学電池を提供することができることを見出した。本発明はこの知見に基づきなされるに至ったものである。
本発明の課題は、以下の手段によって達成された。
【0009】
<1>導電性支持体上に色素が吸着された多孔質半導体微粒子を有する感光層、電荷移動層、および対極を含む積層構造よりなる光電変換素子の製造方法であって、半導体微粒子以外の固形分の含量が半導体微粒子分散液全体の10質量%以下の分散液を前記導電性支持体上に塗布し加熱することにより多孔質半導体微粒子を得る工程、及び該多孔質半導体微粒子を下記一般式(1)で表される構造を有する色素で増感する工程を含有することを特徴とする光電変換素子の製造方法、
【化1】

[一般式(1)中、Aは炭素−窒素結合とともに環を形成するために必要な原子群を表す。YとYは少なくともどちらか一方は酸性基を表し、両方とも酸性基を表す場合は、互いに同じでも異なっていてもよく、一方のみが酸性基を表す場合は、他方は電子求引基を表す。Dは色素残基を表し、nは1以上の整数を表す。Lは、単結合又は2価の連結基を表す。Yは酸性基を表す。]
<2>前記導電性支持体が導電性の高分子材料であることを特徴とする<1>に記載の光電変換素子の製造方法、
<3>前記多孔質半導体微粒子を得る工程が、前記半導体微粒子分散液が塗布された導電性支持体を100℃以上250℃以下で加熱する工程であることを特徴とする<1>又は<2>に記載の光電変換素子の製造方法、
<4>前記一般式(1)で表される構造を有する色素が、下記一般式(2)〜(5)のいずれかで表されることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法、
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

[一般式(2)〜(5)中、YとYは少なくともどちらか一方は酸性基を表し、両方とも酸性基を表す場合は、互いに同じでも異なっていてもよく、一方のみが酸性基を表す場合は、他方は電子求引基を表す。LLは、アルケニレン基、アルキニレン基及びアリーレン基からなる群から選ばれた少なくとも1種の二価の連結基を表す。Yは酸性基を表す。R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、脂肪族基、芳香族性基又は炭素原子で結合する複素環基を表す。R及びRはLL上の置換基とともに環を形成していても良い。]
<5>前記一般式(2)で表される構造を有する色素が、下記一般式(6)で表されることを特徴とする<4>に記載の光電変換素子の製造方法、
【化6】

[一般式(6)中、YとYは少なくともどちらか一方は酸性基を表し、両方とも酸性基を表す場合は、互いに同じでも異なっていてもよく、一方のみが酸性基の場合は、他方は電子求引基を表す。LLは、アルケニレン基、アルキニレン基及びアリーレン基からなる群から選ばれた少なくとも1種の二価の連結基を表す。Yは酸性基を表す。R、Rはそれぞれ独立に水素原子、脂肪族基、芳香族性基又は炭素原子で結合する複素環基を表す。Bはベンゼン環上の2つの炭素原子および窒素原子とともに環を形成するために必要な原子群を表す。]
<6>前記一般式(5)で表される構造を有する色素が、下記一般式(7)で表されることを特徴とする<4>に記載の光電変換素子の製造方法、
【化7】

[一般式(7)中、YとYの少なくともどちらか一方は酸性基を表し、両方とも酸性基を表す場合は、互いに同じでも異なっていてもよく、一方のみが酸性基の場合は、他方は電子求引基を表す。LLは、アルケニレン基、アルキニレン基及びアリーレン基からなる群から選ばれた少なくとも1種の二価の連結基を表す。Yは酸性基をあらわす。R、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族性基又は炭素原子で結合する複素環基を表す。Bはベンゼン環上の2つの炭素原子および窒素原子とともに環を形成するために必要な原子群を表す。]
<7>前記Y及びYの酸性基がカルボン酸基であることを特徴とする<1>〜<6>のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法、
<8><1>〜<7>のいずれか1項に記載の方法で製造されることを特徴とする光電変換素子、及び
<9><8>に記載の光電変換素子を備えることを特徴とする光電気化学電池。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、変換効率の高い光電変換素子を廉価で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明によって製造される光電変換素子の一実施態様について模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、半導体微粒子以外の固形分の含量が特定量以下の半導体微粒子分散液を前記導電性支持体上に塗布し加熱することにより、多孔質半導体微粒子を得る工程、及び該多孔質半導体微粒子を特定の色素で増感する工程を含有する方法により、光電変換素子を製造することで、変換効率の高い光電変換素子を製造することができることを見出した。
【0013】
本発明方法により製造される光電変換素子の好ましい実施態様を、図面を参照して説明する。図1に示すように、光電変換素子10は、導電性支持体1、導電性支持体1上に設置される色素が吸着された多孔質半導体微粒子を有する感光層2、電荷移動層3及び対極4からなる。感光層2を設置した導電性支持体1は光電変換素子10において作用電極として機能する。この光電変換素子10を外部回路6で仕事をさせる電池用途に使用できるようにして、光電気化学電池(図示しない)として作動させることができる。
【0014】
受光電極5は、導電性支持体1および導電性支持体上に塗設される色素21の吸着した半導体微粒子22の感光層(半導体膜)2よりなる電極である。感光層(半導体膜)2に入射した光は色素を励起する。励起色素はエネルギーの高い電子を有しており、この電子が色素21から半導体微粒子22の伝導帯に渡され、さらに拡散によって導電性支持体1に到達する。このとき色素21の分子は酸化体となっているが、電極上の電子が外部回路で仕事をしながら色素酸化体に戻るのが光電気化学電池であり、受光電極5はこの電池の負極として働く。
【0015】
以下に本発明の光電変換素子に用いる材料と、該光電変換素子の製造方法について詳述する。
(A)導電性支持体
本発明の光電変換素子の製造方法においては、導電性支持体を用いる。導電性支持体としては、金属のように支持体そのものに導電性があるものか、または表面に導電膜層を有するガラスや高分子材料を使用することができる。導電性支持体は実質的に透明であることが好ましい。実質的に透明であるとは光の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であることが好ましく、80%以上が特に好ましい。導電性支持体としては、ガラスや高分子材料に導電性の金属酸化物を塗設したものが好ましい。このときの導電性の金属酸化物の塗布量は、ガラスや高分子材料の支持体1m2当たり、0.1〜100gが好ましい。透明導電性支持体を用いる場合、光は支持体側から入射させることが好ましい。好ましく使用される高分子材料の一例として、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAR)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエステルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ等を挙げることができる。導電性支持体上には、表面に光マネージメント機能を施してもよく、例えば、特開2003−123859記載の高屈折膜及び低屈性率の酸化物膜を交互に積層した反射防止膜、特開2002−260746記載のライトガイド機能が上げられる。
【0016】
導電性支持体上には、紫外光を遮断する機能を持たせることが好ましい。例えば、特開2001−185242に記載の紫外光を可視光に変えることが出来る蛍光材料を透明支持体中または、透明支持体表面に存在させる方法が挙げられる。また、別の好ましい方法して、紫外線吸収剤を用いる方法も挙げられる。好ましい態様として例えば、特開平11−345991号公報、特開2002−25634号公報、特開2003−21769号公報、特開2004−227843号公報、特開2004−349129号公報、特開2002−134178号公報、及び特開2003−100358号公報に開示のものが挙げられる。
導電性支持体上には、特開平11−250944号公報、特開2003−308892号公報、及び特開2003−282163号公報に記載の機能を付与してもよい。
【0017】
好ましい導電膜としては金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等)、炭素、もしくは導電性の金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)が挙げられる。好ましい導電膜の態様及び製法としては、特開2003−151355号公報、特開2004−311174号公報、特開2004−311175号公報、特開2004−311176号公報、特開2005−85699号公報、特開2005−85670号公報、特開2005−116391号公報、特開2003−323818号公報、特開2004−165080号公報、及び特開2005141981号公報に記載のものが挙げられる。
導電膜層の厚さは0.01〜30μmであることが好ましく、0.03〜25μmであることが更に好ましく、特に好ましくは0.05〜20μmである。
導電性支持体は表面抵抗が低い程よい。好ましい表面抵抗の範囲としては50Ω/cm2以下であり、さらに好ましくは10Ω/cm2以下である。この下限に特に制限はないが、通常0.1Ω/cm2程度である。
【0018】
導電膜の抵抗値はセル面積が大きくなると大きくなる為、集電電極を配置してもよい。好ましい集電電極の形状及び材質としては、特開平11−266028号公報、特開2005−108467号公報、特開2003−203681号公報、特開2004−146425号公報、特開2004−128267号公報、特開2004−164970号公報、特開2004−327226号公報、特開2004−164950号公報、特開2005−78857号公報、特開2005−197176号公報、特開2004−164950号公報、特開2000−285977号公報、特開2002−314108号公報、及び特開2003−123858号公報が挙げられる。
【0019】
特開2000−285974号公報に記載のように、支持体と透明導電膜の間にガスバリア膜及び/又はイオン拡散防止膜を配置しても良い。ガスバリア層としては、樹脂膜(例えば、特開2000−282163号公報、特開2005−142086号公報)または、無機膜(特開2005−142086号公報)のどちらでもよい。
また、特開2005−142084号公報または2005−142085号公報のように、透明電極と多孔質半導体電極光触媒含有層を設けてもよい。
【0020】
透明導電層は積層構造でも良く、好ましい方法としてたとえば、ITO上にFTOを積層する特開2003−323818号公報に記載の方法の他、特開2005−44544号公報、特開2005−142088号公報、特開2005−19205号公報、特開2004−241228号公報、特開2004−319872号公報が挙げられる。
【0021】
(B)半導体微粒子
本発明の光電変換素子の製造方法においては、半導体微粒子以外の固形分の含量が半導体微粒子分散液全体の10質量%以下の半導体微粒子分散液を、前記の導電性支持体に、塗布し加熱して、多孔質半導体微粒子を得る。
半導体微粒子は、好ましくは金属のカルコゲニド(例えば酸化物、硫化物、セレン化物等)またはペロブスカイトの微粒子が用いられる。金属のカルコゲニドとしては、好ましくはチタン、スズ、亜鉛、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、もしくはタンタルの酸化物、硫化カドミウム、セレン化カドミウム等が挙げられる。ペロブスカイトとしては、好ましくはチタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム等が挙げられる。これらのうち酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化タングステンが特に好ましい。
【0022】
半導体には伝導に関わるキャリアーが電子であるn型とキャリアーが正孔であるp型が存在するが、本発明の素子ではn型を用いることが変換効率の点で好ましい。n型半導体には、不純物準位をもたず伝導帯電子と価電子帯正孔によるキャリアーの濃度が等しい固有半導体(あるいは真性半導体)の他に、不純物に由来する構造欠陥により電子キャリアー濃度の高いn型半導体が存在する。本発明で好ましく用いられるn型の無機半導体は、TiO、TiSrO、ZnO、Nb、SnO、WO、Si、CdS、CdSe、V、ZnS、ZnSe、SnSe、KTaO、FeS、PbS、InP、GaAs、CuInS、CuInSeなどである。これらのうち最も好ましいn型半導体はTiO、ZnO、SnO、WO、ならびにNbである。また、これらの半導体の複数を複合させた半導体材料も好ましく用いられる。
【0023】
半導体微粒子の粒径は、半導体微粒子分散液の粘度を高く保つ目的で、一次粒子の平均粒径が2nm以上50nm以下であることが好ましく、また一次粒子の平均粒径が2nm以上30nm以下の超微粒子であることがより好ましい。粒径分布の異なる2種類以上の微粒子を混合してもよく、この場合小さい粒子の平均サイズは5nm以下であるのが好ましい。また、入射光を散乱させて光捕獲率を向上させる目的で、上記の超微粒子に対して平均粒径が50nmを越える大きな粒子を、低含率で添加することもできる。この場合、大粒子の含率は、平均粒径が50nm以下の粒子の質量の50%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。上記の目的で添加混合する大粒子の平均粒径は、100nm以上が好ましく、250nm以上がより好ましい。
【0024】
半導体微粒子の作製法としては、作花済夫の「ゾル・ゲル法の科学」アグネ承風社(1998年)、技術情報協会の「ゾル・ゲル法による薄膜コーティング技術」(1995年)等に記載のゾル・ゲル法、杉本忠夫の「新合成法ゲル・ゾル法による単分散粒子の合成とサイズ形態制御」、まてりあ,第35巻,第9号,1012〜1018頁(1996年)に記載のゲル・ゾル法が好ましい。またDegussa社が開発した塩化物を酸水素塩中で高温加水分解により酸化物を作製する方法も好ましい。半導体微粒子が酸化チタンの場合、上記ゾル・ゲル法、ゲル・ゾル法、塩化物の酸水素塩中での高温加水分解法はいずれも好ましいが、さらに清野学の「酸化チタン 物性と応用技術」技報堂出版(1997年)に記載の硫酸法および塩素法を用いることもできる。さらにゾル・ゲル法として、バルべらのジャーナル・オブ・アメリカン・セラミック・ソサエティー,第80巻,第12号,3157〜3171頁(1997年)に記載の方法や、バーンサイドらのケミストリー・オブ・マテリアルズ,第10巻,第9号,2419〜2425頁に記載の方法も好ましい。
【0025】
この他に、半導体微粒子の製造方法として、例えば、チタニアナノ粒子の製造方法として好ましくは、四塩化チタンの火炎加水分解による方法(特表平06−511113号公報)、四塩化チタンの燃焼法(特開2003−327432号公報)、安定なカルコゲナイド錯体の加水分解(特開2001−85076号公報)、オルトチタン酸の加水分解(特開2004−161589号公報、特開2004−238213号公報)、可溶部と不溶部から半導体微粒子を形成後可溶部を溶解除去する方法(特開2002−246620号公報)、過酸化物水溶液の水熱合成(特開2003−92154号公報)、またはゾルゲル法によるコア/シェル構造の酸化チタン微粒子の製造方法(特開2004−10403号公報)が挙げられる。
【0026】
チタニアの結晶構造としては、アナターゼ型、ブルッカイト型、または、ルチル型があげられ、アナターゼ型、ブルッカイト型が好ましい。好ましい例として、特開平11−339867号公報、特開2001−43907号公報、特開2001−43907号公報に記載の例が挙げられる。また、好ましい酸化チタンの物性としては、欧州特許1338563(A2)号公報、米国特許2004−0161380号公報、米国特許第6075203号明細書、米国特許第6444189号明細書、米国特許第6720202号明細書、中国特許1540772(A)号公報、特開2001−283942号公報、及び特開2001−212457号公報に記載の例などが挙げられる。
【0027】
チタニアナノチューブ・ナノワイヤー・ナノロッドをチタニア微粒子に混合してもよい。好ましい例としては、特開2003−168495号公報、特開2003−251194号公報、特開2004−175586号公報、特開2004−175587号公報、特開2004−175588号公報、特開2004−311354号公報、特開2004−311355号公報、特開2004−319661号公報、及び特開2005−162584号公報に記載の例が挙げられる。
【0028】
チタニアは、非金属元素などによりドーピングされていても良い。好ましい例としては、特開2000−235874号公報、特開2003−252624号公報、特開2002−25637号公報、特開2003−187881号公報、特開2003−187882号公報、特開2003−179244号公報、特開2004−87148号公報、特開2004−119279号公報、特開2005−93944号公報、特開2005−64493号公報、特開2003−257507号公報、及び特開2003−323920号公報に記載の例などが挙げられる。チタニアへの添加剤としてド―パント以外に、ネッキングを改善する為のバインダーや逆電子移動防止の為に表面へ添加剤を用いても良い。好ましい添加剤の例としては、ITO、SnO粒子(特開平11−283682号公報、特開2001−345125号公報)、ウイスカー(特開2003−163037号公報)、繊維状グラファイト・カーボンナノチューブ(特開2003−163037号公報)、酸化亜鉛ネッキング結合子(特開2003−273381号公報)、セルロース等の繊維状物質(特開2003−123861号公報)、金属(特開2000−285975号公報、特開2001−35551号公報)、有機シリコン(特開2000−294304号公報)、ドデシルベンゼンスルホン酸(特開2000−260493号公報)、シラン化合物等の電荷移動結合分子(特開2000−323192号公報、特開2001−102103号公報)、及び電位傾斜型デンドリマー(特開2004−213908号公報)などが挙げられる。
【0029】
チタニア上の表面欠陥を除去するなどの目的で、色素吸着前にチタニアを酸塩基又は酸化還元処理しても良い。酸塩基処理の例としては、例えば特開2000−101106号公報、特開2002−293541号公報、特開2003−297441号公報、特開2003−297442号公報、特開2004−235240号公報などがあげらられる。また、特開平08−81222号公報、特開2000−285980号公報、特開2004−158243号公報、及び特開2004−247104号公報等に記載のようにエッチング、酸化処理、過酸化水素処理、脱水素処理、UV−オゾン、酸素プラズマなどで処理してもよい。
【0030】
(C)半導体微粒子分散液
本発明の光電変換素子の製造方法においては、半導体微粒子以外の固形分の含量が、半導体微粒子分散液全体の10質量%以下よりなる半導体微粒子分散液を前記の導電性支持体に塗布し、適度に加熱することにより、多孔質半導体微粒子を得る工程を含有する。
半導体微粒子分散液を作製する方法としては、前述のゾル・ゲル法の他に、半導体を合成する際に溶媒中で微粒子として析出させそのまま使用する方法、微粒子に超音波などを照射して超微粒子に粉砕する方法、あるいはミルや乳鉢などを使って機械的に粉砕しすり潰す方法、等が挙げられる。分散溶媒としては、水および/または各種の有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、メタノール,エタノール,イソプロピルアルコール,シトロネロール,ターピネオールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、酢酸エチルなどのエステル類、ジクロロメタン、アセトニトリル等が挙げられる。
分散の際、必要に応じて例えばポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのようなポリマー、界面活性剤、酸、またはキレート剤等を分散助剤として少量用いてもよい。しかし、これらの分散助剤は、導電性支持体上へ製膜する工程の前に、ろ過法や分離膜を用いる方法、あるいは遠心分離法などによって大部分を除去しておくことが好ましい。本発明で使用される半導体微粒子分散液は、半導体微粒子以外の固形分の含量が分散液全体の10質量%以下である。この濃度は好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは3%以下であり、特に好ましくは1%以下である。さらに好ましくは0.5%以下であり、特に好ましくは0.2%である。すなわち、半導体微粒子分散液中に、溶媒と半導体微粒子以外の固形分を半導体微分散液全体の10質量%以下であれば含有してもよいが、実質的に半導体微粒子と分散溶媒のみからなることが好ましい。半導体微粒子分散液中における半導体微粒子以外の固形分が多すぎる場合は、変換効率が下がり、好ましくない。
半導体微粒子分散液の粘度が高すぎると分散液が凝集してしまい製膜することができず、逆に半導体微粒子分散液の粘度が低すぎると液が流れてしまい製膜することができない。したがって分散液の粘度は、25℃で10〜300N・s/mが好ましい。さらに好ましくは、25℃で50〜200N・s/mである。
【0031】
半導体微粒子分散液の塗布方法としては、アプリケーション系の方法としてローラ法、ディップ法等を使用することができる。またメータリング系の方法としてエアーナイフ法、ブレード法等を使用することができる。またアプリケーション系の方法とメータリング系の方法を同一部分にできるものとして、特公昭58−4589号に開示されているワイヤーバー法、米国特許2681294号明細書、同2761419号明細書、同2761791号明細書等に記載のスライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法等が好ましい。また汎用機を使用してスピン法やスプレー法で塗布するのも好ましい。湿式印刷方法としては、凸版、オフセットおよびグラビアの3大印刷法をはじめ、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等が好ましい。これらの中から、液粘度やウェット厚さに応じて、好ましい製膜方法を選択する。また本発明の半導体微粒子分散液は粘度が高く、粘稠性を有するため、凝集力が強いことがあり、塗布時に支持体とうまく馴染まない場合がある。このような場合に、UVオゾン処理で表面のクリーニングと親水化を行うことにより、塗布した半導体微粒子分散液と導電性支持体表面の結着力が増し、半導体微粒子分散液の塗布が行い易くなる。
半導体微粒子層全体の好ましい厚さは0.1〜100μmである。半導体微粒子層の厚さはさらに1〜30μmが好ましく、2〜25μmがより好ましい。半導体微粒子の支持体1m当りの担持量は0.5g〜400gが好ましく、5〜100gがより好ましい。
【0032】
塗布した半導体微粒子の層に対し、半導体微粒子同士の電子的接触の強化と、支持体との密着性の向上のため、また塗布した半導体微粒子分散液を乾燥させるために、加熱処理が施される。この加熱処理により多孔質半導体微粒子層を形成することができ、従来の焼成工程を必要としない。加熱処理の温度範囲としては特に制限はないが、導電性支持体として前記の導電性の高分子材料(例えば、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAR)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエステルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ等)を用いた場合には、100℃以上250℃以下が好ましい。
導電性支持体の加熱による抵抗上昇や変形を小さくする目的から、好ましい温度の範囲は100℃以上150℃以下である。さらに好ましくは、120℃以上150℃以下である。導電性支持体として、融点や軟化点の低い支持体を用いる場合は、熱処理温度はできる限り150℃以下であるのが好ましい。
【0033】
また、加熱処理に加えて光のエネルギーを用いることもできる。例えば、半導体微粒子として酸化チタンを用いた場合に、紫外光のような半導体微粒子が吸収する光を与えることで表面を活性化してもよいし、レーザー光などで半導体微粒子表面のみを活性化することができる。半導体微粒子に対して該微粒子が吸収する光を照射することで、粒子表面に吸着した不純物が粒子表面の活性化によって分解され、上記の目的のために好ましい状態とすることができる。加熱処理と紫外光を組み合わせる場合は、半導体微粒子に対して該微粒子が吸収する光を照射しながら、加熱が100℃以上250℃以下あるいは好ましくは100℃以上150℃以下、さらに好ましくは、120℃以上150℃以下で行われることが好ましい。このように、半導体微粒子を光励起することによって、微粒子層内に混入した不純物を光分解により洗浄するとともに、微粒子の間の物理的接合を強めることができる。
【0034】
また、半導体微粒子分散液を前記の導電性支持体に塗布し、加熱や光を照射する以外に他の処理を行ってもよい。好ましい方法として例えば、通電、化学的処理などが挙げられる。
塗布後に圧力をかけても良く、圧力をかける方法としては、特表2003−500857号公報、特開2002−93475号公報、特開2003−282160号公報、及び特開2004−214129号公報が挙げられる。光照射の例としては、特開2001−357896号公報、特開平11−219734号公報、特開2004−314313号公報、特開2005−142446号公報、特開2001−247314号公報が挙げられる。プラズマ・マイクロ波・通電の例としては、特開2002−353453号公報、特開2003−308893号公報、特開2004−265662号公報、特開2004−327369号公報、特開2004−342319号公報、特開2005−116415号公報、特開2005−139498号公報、及び特開2004−273770号公報が挙げられる。化学的処理としては、例えば特開2001−357896号公報、特開2002−280327号公報、特開2003−281947号公報、特表2005−520314号公報、特開2003−297442号公報が挙げられる。
【0035】
上述の半導体微粒子を導電性支持体上に塗設する方法は、半導体微粒子分散液を導電性支持体上に塗布する方法、特許第2664194号公報に記載の半導体微粒子の前駆体を導電性支持体上に塗布し空気中の水分によって加水分解して半導体微粒子膜を得る方法などの(1)湿式法に含まれる。湿式法の製造方法としては、上述の方法のほかに、半導体微粒子の分散液を作成する方法としては乳鉢ですり潰す方法、ミルを使って粉砕しながら分散する方法、あるいは半導体を合成する際に溶媒中で微粒子として析出させそのまま使用する方法等が挙げられるが、好ましくは、特開平11−144772号公報、特開2005−100792号公報、欧州特許1300897(A1)号公報、特開2002−324591号公報、特開2002−145615号公報、特開2003−176130号公報、及び特開2004−79610号公報が挙げられる。(1)湿式法の塗布液の分散媒としては水または各種の有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、t−ブタノール、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル等)が挙げられるが、好ましくは、特表平06−511113号公報、中国特許144292号公報、特開平11−11912号公報、特開2000−294814号公報、特開2000−319018号公報、特開2000−319018号公報、特開2000−319018号公報、特開2002−145614号公報、特開2002−75477号公報、特開2004−193321号公報、WO02/067357号公報、特開2004−207205号公報、特開2004−111348号公報、特開2004−186144号公報、特開2003−282162号公報、特開2005−142011号公報、特開2005−174695号公報、特開2005−85500号公報、特開平11−343118号公報、特開平11−354169号公報、特開2000−106222号公報、特開2003−246621号公報、特開2003−51345号公報、特開2004−158551号公報、特開2001−358348号公報、特開2003−217693号公報などが挙げられる。。分散の際、必要に応じてポリマー、界面活性剤、酸、もしくはキレート剤などを分散助剤として少量であれば用いてもよい。
【0036】
半導体微粒子を導電性支持体上に塗設する方法として、上述の(1)湿式法とともに、(2)乾式法、(3)その他の方法を併用しても良い。
(2)乾式法として好ましくは、特開2000−231943号公報、特開2002−170602号公報、特開2001−345124号公報、特開2003−197280号公報、特開2003−123854号公報、特開2003−123852号公報、特開2003−123853号公報、特開2005−39013号公報、特開2004−39286号公報、特開2005−104760号公報が挙げられる。
(3)その他の方法として、好ましくは、特開2002−134435号公報、米国特許2004/0123896号公報、特開2004−327265号公報、特開342397号公報、特公表2003−500857号公報、特開2005−85491号公報、特開2003−98977号公報、特開2002−299665号公報、特開2003−243053号公報、特開2004−253331号公報、特開平11−310898号公報、特開2003−257507号公報、特開2003−323920号公報、米国特許2004/0084080号公報、米国特許2004/0121068号公報、特開2004−319873号公報、特開平10−112337号公報、特開平11−6098号公報、特開2000−178791号公報、特開2000−178792号公報、特開2004−103420号公報、及び特開2003−301283号公報が挙げられる。
【0037】
半導体微粒子は多くの色素を吸着することができるように表面積の大きいものが好ましい。例えば半導体微粒子を支持体上に塗設した状態で、その表面積が投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがより好ましい。この上限には特に制限はないが、通常5000倍程度である。好ましい半導体微粒子の構造としては、特開2001−93591号公報、特開2001−257012号公報、特開2001−196106号公報、特開2001−273936号公報、及び欧州特許1207572(A1)公報が挙げられる。
【0038】
一般に、半導体微粒子の層の厚みが大きいほど単位面積当たりに担持できる色素の量が増えるため光の吸収効率が高くなるが、発生した電子の拡散距離が増すため電荷再結合によるロスも大きくなる。半導体微粒子層の好ましい厚みは素子の用途によって異なるが、典型的には0.1〜100μmである。光電気化学電池として用いる場合は1〜50μmであることが好ましく、3〜30μmであることがより好ましい。半導体微粒子は、支持体に塗布した後に粒子同士を密着させるために、100〜800℃の温度で10分〜10時間焼成してもよい。支持体としてガラスを用いる場合、製膜温度は400〜600℃が好ましい。
支持体としてプラスチックを用いる場合、300℃以下で製膜することが好ましく、250℃以下が更に好ましい。250℃以下で製膜する方法としては、(1)湿式法、(2)乾式法、(3)電気泳動法(電析法を含む)の何れでも良く、好ましくは、(1)湿式法、又は(2)乾式であり、更に好ましくは、(1)湿式法である。
【0039】
湿式法とは、半導体層又はその前駆体を湿式で塗布するなどして、プラスティックフイルム上に膜を形成しそれを更に活性化する方法であり、例えば、特開平10−290018号公報に記載の半導体と導電性化合物の混合物を低温で加熱する方法、前駆体を用いる方法(前駆体として例えば、特開2001−110462号公報記載の(NHTiF、特開2001−247314号公報記載の過酸化チタン、特開平11−219734号公報記載の金属アルコキシド・金属錯体・金属有機酸塩が挙げられる。)、特表2005−520314号公報記載の金属有機酸化物(アルコキシドなど)を共存させたスラリーを塗布し加熱処理、光処理などで半導体膜を形成する方法、特開2003−2819847号公報記載の無機系前駆体を共存させたスラリー、及び特開2005−056627号公報記載のスラリーのpHと分散させたチタニア粒子の性状を特定した方法が挙げられる。
これらスラリーには、少量であればバインダーを添加しても良く、バインダーとしては、例えば、特開2003−109678号公報、または特開2003−123861号公報記載のセルロース、特開2003−272722号公報記載のフッ素ポリマー、特開2004−47261号公報記載の架橋ゴム、特表2005−516365号公報記載のポリブチルチタネート、及び特開2005−135798号公報記載のカルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
【0040】
半導体又はその前駆体層の形成に関する技術としては、特開2003−308890号公報記載のコロナ放電、プラズマ、UVなどの物理的な方法で親水化する方法、アルカリ(特開2004−119120号公報)やポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸(特開2005−169228号公報)などによる化学処理、特開2003−297443号公報記載のポリアニリンなどの接合用中間膜の形成などが挙げられる。
【0041】
乾式法としては、蒸着やスパッタリング、エアロゾルデポジション法などがあげられ、好ましくは、特開2005−39013号公報、特開2004−074609号公報、特許第3265481号、特開2003−100359号公報、及び特開2004−39286号公報記載の方法が挙げられる。
また、特開2002−100146号公報、及び特開2004−311354号公報記載の電気泳動法・電析法を用いても良い。
【0042】
また、耐熱基盤上でDSCをいったん作成した後、プラスチック等のフィルムに転写する方法を用いても良い。好ましくは、特開2002−184475号公報記載のEVAを介して転写する方法、特開2003−98977号公報記載の紫外線、水系溶媒で除去可能な無機塩を含む犠牲基盤上に半導体層・導電層を形成後、有機基盤に転写後、犠牲基盤を除去する方法などが挙げられる。
なお、半導体微粒子の支持体1m当たりの塗布量は0.5〜500g、さらには5〜100gが好ましい。
【0043】
(D)感光層
本発明の光電変換素子の製造方法においては、前記の導電性支持体上に、前記の半導体微粒子分散液を塗布し加熱して得られた多孔質半導体微粒子層に、特定の色素を吸着することにより、感光層を得ることができる。感光層は目的に応じて設計され、単層構成でも多層構成でもよい。一層の感光層中の色素は一種類でも多種の混合でもよいが、そのうちの少なくとも1種は、後述(E)の色素を用いる。本発明方法により製造される光電変換素子の感光層には、この色素が吸着した半導体微粒子を含む。
【0044】
(E)色素
本発明の光電変換素子の製造方法は、上記の工程により得られた多孔質半導体微粒子を色素で増感する工程を含有する。下記一般式(1)で表される色素(色素化合物)によって、多孔質半導体微粒子を増感する工程を含有して製造される光電変換素子は、高い光電変換効率を発揮することができる。
【0045】
【化8】

【0046】
まず、本発明で使用される上記一般式(1)で表される構造を有する色素について説明する。当該色素は、本発明の光電気化学電池において増感色素として作用する。
従来、色素増感光電変換素子に使用される色素の開発は、主にドナー部位に着目して行われていた。そこで吸着部位に環状化合物を導入した色素に着目し、鋭意検討を重ねた結果、炭素原子と窒素原子からなる環状構造の窒素原子に単結合又は2価の連結基を介して酸性基が結合するとともに、該環状構造のエキソメチレンが1つ以上の酸性基で置換された特定の色素(色素化合物)を増感色素として用いることで、太陽光のうち比較的長波長領域まで吸収することができ、変換効率の高い光電気化学電池を提供することができる。
【0047】
本発明の一般式(1)〜(7)のいずれかで表される構造を少なくとも1つ有する色素について説明する。当該色素は、本発明の光電気化学電池において増感色素として作用する。
一般式(1)中、Aは炭素−窒素結合とともに環を形成するために必要な原子群を表す。Aによって形成される環として好ましくは、ヘテロ環酸性核からカルボニル基又はチオカルボニル基を除いたものである。ヘテロ環酸性核としてT.H.James著「The Theory of the photografic process. forth edition.」Macmillan publishing社,1977年刊の199ページに記載のものが挙げられる。Aによって形成される環として更に好ましくは、ロダニン、ヒダントイン、チオヒダントイン、バルビツール酸、チオバルビツール酸、ピラゾリジンジオン、ピラゾロン、インダンジオン、イソオキサゾロンからカルボニル基又はチオカルボニル基を除いたもの、さらに好ましくは、ロダニン、ヒダントイン、チオヒダントイン、バルビツール酸、チオバルビツール酸からカルボニル基又はチオカルボニル基を除いたもの、特に好ましくはロダニンからカルボニル基又はチオカルボニル基を除いたものである。
【0048】
とYは少なくともどちらか一方は酸性基を表し、両方とも酸性基を表す場合は、同じでも異なっていてもよく、一方のみが酸性基の場合は、他方は電子求引基を表す。Yは酸性基を表す。
酸性基とは、その基を構成する最も酸性の水素原子のpKaが13以下の基である。酸性基の例として例えばカルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、フェノール性水酸基、アルキルスルフォニルカルバモイル基、リン酸基が挙げられ、好ましくはカルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、フェノール性水酸基、さらに好ましくは、カルボン酸基、スルホン酸基、特に好ましくはカルボン酸基である。
【0049】
電子吸引基としては、後述の効果(−I効果、−M効果)を持つ置換基が挙げられる。一般に、電子吸引基は分子の特定の位置について電子密度を減弱させる。電子求引性あるいは電子供与性は単に電気陰性度の差だけでは説明できない。すなわち、誘起効果やメソメリー効果などが複合的に作用するので、芳香性や共役系の存在やトポロジー的な位置関係によって現れ方が変わってくる。これらの効果を、パラ及びメタ置換安息香酸の酸解離定数をもとに定量的に評価、予測する経験則としてハメット則が知られる。誘起効果の場合、電子求引性のものを−I効果、電子供与性のものを+I効果と表すが、炭素よりも電気陰性度の高い原子は−I効果を示す。また、アニオンは+I効果を、カチオンは−I効果を示す。メソメリー効果の場合は、電子求引性のものを−M効果、電子供与性のものを+M効果と表す。電子求引基の例として例えば以下のものが挙げられる。
誘起効果
(−I効果)
・−O > −N
・−N > −P > …
・−O > −S > …
・−N > −NO > −SOR > −SOR
・−SOR > −SO
・−N > −NR
・−O > −OR
・−S > −SR
・−F > −Cl > −Br > −I
・=O > =NR > =CR
・=O > −OR
・≡N > ≡CR
・≡N > =NR > −NR
・−C≡CR > −CR=CR > −CRCR
メソメリー効果
(−M効果)
・=N > =NR
・=O > =NR > =CR
・=S > =O > ≡N
電子吸引基として、好ましくはシアノ基、ニトロ基、スルフォニル基、スルフォキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基であり、さらに好ましくはシアノ基、ニトロ基、スルフォニル基、特に好ましくはシアノ基である。
【0050】
一般式(1)において、Dは色素残基を表す。色素残基とは、一般式(1)のY以外の構造とともに全体として色素を構成するのに必要な原子群を示す。例えば、Yによって形成される色素としてはメロシアニン、ヘミシアニン、スチリル、オキソノール、シアニンなどのポリメチン色素、アクリジン、キサンテン、チオキサンテンなどを含むジアリールメチン、トリアリールメチン、クマリン、インドアニリン、インドフェノール、ジアジン、オキサジン、チアジン、ジケトピロロピロール、インジゴ、アントラキノン、ペリレン、キナクリドン、ナフトキノン、ビピリジル、ターピリジル、テトラピリジル、フェナントロリンなどが挙げられる。好ましくは、ポリメチン色素、ポリアリール色素等が挙げられる。
nは1以上の整数を表し、好ましくは1〜5、さらに好ましくは、1〜3であり、特に好ましくは1である。
【0051】
一般式(1)〜(7)において、Lは単結合又は2価の連結基を表し、好ましくは単結合または2価の連結基である。2価の連結基としては、特に限定されないが、好ましくは炭素数0〜30の2価の連結基であり、例えばアルキレン基やアリーレン基などが挙げられる。2価の連結基はヘテロ原子を含んでいても良い。Lとして好ましくは、メチレン、エチレン、プロピレン、フェニレン、エテニレンなどが挙げられる。
【0052】
一般式(2)〜(7)中のR、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子、脂肪族基、芳香族性基又は炭素原子で結合する複素環基を表す。さらに好ましくは脂肪族基、芳香族性基、特に好ましくは脂肪族基である。R3として好ましくは、水素原子である。
【0053】
脂肪族基として例えば、アルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)が挙げられる。好ましい脂肪族基として、炭素数1から30の、更に好ましくは炭素数1から25の、特に好ましくは炭素数1から20のアルキル基、アルケニル基であり、置換基を有していても良い。
【0054】
芳香族性基として例えば、ベンゼン環、フラン環、ピロール環、ピリジン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、ピリミジン環、ピラジン環もしくはこれらが縮環した環であり、これらは置換されていてもよい。好ましくはベンゼン環、ピロール環、ピリジン環、チオフェン環、さらに好ましくはベンゼン環、チオフェン環である。特に好ましくはベンゼン環である。これらは置換されていてもよい。
【0055】
炭素原子で結合する複素環基として、3〜6員の置換もしくは無置換の複素環基、更に好ましくは5もしくは6員の無置換の複素環基、特に好ましくは6員環の複素環基(例えば、ピペリジン、モルフォリン)である。これらは置換基を有していても良い。
【0056】
一般式(2)〜(7)において、LLは、アルケニレン基、アルキニレン基及びアリーレン基からなる群から選ばれた少なくとも1種の二価の連結基を表す。これらの組み合わせでも良く、置換基を有していても良い。
アルケニレン基としては、例えば、エテニレンが挙げられる。アルキニレン基としては、エチニレンを挙げることができる。アリーレン基としては、例えば、ベンゼン環フラン環、ピロール環もしくはこれらが縮環した2価の環を挙げることができる。LLの例として例えば、下記式で挙げたものなどを挙げることができる。下記式のうち、好ましくは、L−a、L−b、L−c、L−e、さらに好ましくはL−a、L−b、L−eであり、特に好ましくは、L−bである。
【0057】
【化9】

【0058】
前記一般式(6)及び(7)中、Bはベンゼン環上の2つの炭素原子および窒素原子とともに環を形成するために必要な原子群を表す。
【0059】
前記一般式(1)〜(7)における酸性基(例えば、カルボン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基等)は、解離して対カチオンを有していても良い。対カチオンとしては特に制限はなく、有機、無機のいずれでもよい。代表的な例としてはアルカリ金属イオン(リチウム、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属イオン(マグネシウム、カルシウム等)、アンモニウム、アルキルアンモニウム(例えばジエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等)、ピリジニウム、アルキルピリジニウム(例えばメチルピリジニウム)、グアニジニウム、テトラアルキルホスホニウム等のカチオンが挙げられる。
【0060】
(任意の置換基)
本発明においては、適宜、置換基(以下、置換基Wとする。)を有してもよい。例えば下記に示すものを挙げることができる。
・ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、
・アルキル基〔直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。]、
・アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]、
・アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル)、アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、
・芳香族性基(例えば、ベンゼン環、フラン環、ピロール環、ピリジン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、ピリミジン環、ピラジン環もしくはこれらが縮環した環)
・ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、
・シアノ基、
・ヒドロキシル基、
・ニトロ基、
・カルボキシル基、
・アルコキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、
・アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、
・シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、
・ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾールー5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、
・アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、
・カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、
・アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、
・アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、
・アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、
・アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、
・アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、
・アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、
・アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、
・スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、
・アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、
・メルカプト基、
・アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、
・アリールチオ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、
・ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、
・スルファモイル基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、
・スルホ基、
・アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、
・アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、
・アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2から30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4から30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニル)、
・アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、
・アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、
・カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、
・アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、
・イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、
・ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、
・ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、
・ホスフィニルオキシ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、
・ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、
・シリル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)。
また、置換基は更に置換されていても良い。その際、置換基の例としては、上述の置換基Wを挙げることができる。
【0061】
以下に、前記一般式(1)〜(7)のいずれかで表される構造を少なくとも1つ有する色素の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0062】
【化10】

【0063】
【化11】

【0064】
【化12】

【0065】
【化13】

【0066】
前記一般式(1)〜(7)のいずれかで表される構造を少なくとも1つ有する色素(色素化合物)は、例えば、F.M.Harmer著「Heterocyclic Compounds−Cynaine Dyes and Related Compounds」John Willey & Sons社,NewYork and London,1994年刊などに記載、引用もしくはこれらに類似の方法により合成することができる。
【0067】
半導体微粒子に色素を吸着させるには、溶液と本発明の色素よりなる色素吸着用色素溶液の中に、よく乾燥した半導体微粒子を長時間浸漬するのが好ましい。色素吸着用色素溶液に使用される溶液は、本発明の色素が溶解できる溶液なら特に制限なく使用することができる。例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール、トルエン、t-ブタノール、アセトニトリル、アセトン、n-ブタノールなどを使用することができる。その中でも、エタノール、トルエンを好ましく使用することができる。
溶液と本発明の色素よりなる色素吸着用色素溶液は必要に応じて50℃ないし100℃に加熱してもよい。色素の吸着は半導体微粒子の塗布前に行っても塗布後に行ってもよい。また、半導体微粒子と色素を同時に塗布して吸着させてもよい。未吸着の色素は洗浄によって除去する。塗布膜の焼成を行う場合は色素の吸着は焼成後に行うことが好ましい。焼成後、塗布膜表面に水が吸着する前にすばやく色素を吸着させるのが特に好ましい。吸着する色素は1種類でもよいし、数種混合して用いてもよい。混合する場合、本発明の色素を2種以上混合してもよいし、米国特許4927721号、同4684537号、同5084365号、同5350644号、同5463057号、同5525440号の各明細書、および特開平7−249790号公報に記載の錯体色素と本発明の色素を混合してもよい。光電変換の波長域をできるだけ広くするように、混合する色素が選ばれる。色素を混合する場合は、すべての色素が溶解するようにして、色素吸着用色素溶液とすることが必要である。
【0068】
色素の使用量は、全体で、支持体1m当たり0.01〜100ミリモルが好ましく、より好ましくは0.1〜50ミリモル、特に好ましくは0.1〜10ミリモルである。この場合、本発明の色素の使用量は5モル%以上とすることが好ましい。
また、色素の半導体微粒子に対する吸着量は半導体微粒子1gに対して0.001〜1ミリモルが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5ミリモルである。
このような色素量とすることによって、半導体における増感効果が十分に得られる。これに対し、色素量が少ないと増感効果が不十分となり、色素量が多すぎると、半導体に付着していない色素が浮遊し増感効果を低減させる原因となる。
【0069】
また、会合など色素同士の相互作用を低減する目的で無色の化合物を共吸着させてもよい。共吸着させる疎水性化合物としてはカルボキシル基を有するステロイド化合物(例えばコール酸、ピバロイル酸)等が挙げられる。
色素を吸着した後に、アミン類を用いて半導体微粒子の表面を処理してもよい。好ましいアミン類としては4−tert−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン等が挙げられる。これらは液体の場合はそのまま用いてもよいし有機溶媒に溶解して用いてもよい。
【0070】
以下、電荷移動層および対向電極について詳しく説明する。電荷移動層は、色素の酸化体に電子を補充する機能を有する層であり、受光電極と対極との間に設けられる。代表的な例としては、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体をポリマーマトリクスに含浸したいわゆるゲル電解質、酸化還元対を含有する溶融塩などが挙げられる。
【0071】
酸化還元対としては、例えばヨウ素とヨウ化物(例えばヨウ化リチウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラプロピルアンモニウム等)との組み合わせ、アルキルビオローゲン(例えばメチルビオローゲンクロリド、ヘキシルビオローゲンブロミド、ベンジルビオローゲンテトラフルオロボレート)とその還元体との組み合わせ、ポリヒドロキシベンゼン類(例えばハイドロキノン、ナフトハイドロキノン等)とその酸化体との組み合わせ、2価と3価の鉄錯体(例えば赤血塩と黄血塩)の組み合わせ等が挙げられる。これらのうちヨウ素とヨウ化物との組み合わせが好ましい。これらを溶かす有機溶媒としては、非プロトン性の極性溶媒(例えばアセトニトリル、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−ジメチルイミダゾリノン、3−メチルオキサゾリジノン等)、特開2002−110262記載の含水電解液、特開2000−36332号公報、特開2000−243134号公報、及び再公表WO/00−54361号公報記載の電解質溶媒などが挙げられるが、アセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンが好ましい。
【0072】
電解質への添加物として、前述の4−tert−ブチルピリジンのほか、特開2003−331986号公報記載のピリジン及びピリジン系化合物、特開2004−47229号公報、特開2004−171821号公報などに記載のアミノピリジン系化合物、特開2004−273272号公報のベンズイミダゾール系化合物、特開2005−38711号公報記載のアミノトリアゾール系化合物及びアミノチアゾール系化合物、特開2005−108663号公報記載のイミダゾール系化合物、キノリン系化合物(特開2005−135782号公報)、アミノトリアジン系化合物(特開2005−183166号公報)、尿素誘導体(特開2003−168493号公報)、アミド化合物(特開2004−103404号公報)、ピリミジン系化合物(特開2004−247158号公報)、及び窒素を含まない複素環(特開2005−166612号公報、特開2005−166613号公報、及び特開2005−16615号公報)が挙げられる。
【0073】
また、効率を向上する為に、電解液の水分を制御する方法をとっても良い。水分を制御する好ましい方法としては、濃度を制御する方法(特開2000−323189号公報、特開2001−76774号公報)、脱水剤を共存させる方法(特開2002−237335号公報、特開2002−237335号公報)などが挙げられる。
【0074】
特開2004−235011号公報に記載のごとくヨウ素の毒性軽減のために、ヨウ素とシクロデキストリンの包摂化合物を使用してもよく、特開2003−25709号公報記載のように逆に水分を常時補給する方法を用いても良い。特許第3462115号記載のように環状アミジンを用いても良く、酸化防止剤(特開2004−39292号公報)、加水分解防止剤(特開2004−111276号公報)、分解防止剤(特開2004−111277号公報)、及びヨウ化亜鉛(特開2004−152613号公報)を加えてもよい。
【0075】
電解質として溶融塩を用いても良く、好ましい溶融塩としては、イミダゾリウム又はトリアゾリウム型陽イオンを含むイオン性液体(特表平09−507334号公報、特開平08−259543号公報、特開2003−031270号公報、特開2005−112733号公報、特開2005−116367号公報、特開2005−112733号公報、特開2003−68374号公報、特開2003−92153号公報、特開2004−241378号公報、特開2005−85587号公報、特開2004−87387号公報)、オキサゾリウム系(特開2000−53662号公報)、ピリジニウム系(特開2000−58891号公報、特開2001−23705号公報、特開2001−167630号公報、特開2001−256828号公報、特開2001−266962号公報)、グアニジウム系(特開2001−35253号公報)、およびこれらの組み合わせ(特開2000−90991号公報、特開2001−35552号公報)が挙げられる。これらカチオン系に対して特定のアニオンと組み合わせても良く、例えば、特開2002−75442号公報、特開2001−75443号公報、特開2002−170426号公報、特開2002−298913号公報、特開2002−367426号公報、特開2003−017148号公報などが挙げられる。これらの溶融塩に対しては添加物を加えても良く、好ましい添加物としては、特開2001−67931号公報、特開2001−160427号公報、特開2002−289267号公報、特開2002−289268号公報、特開2000−90991号公報、特開2000−100485号公報、特開2001−283943号公報)などに記載のものなどが挙げられる。特開2002−319314号公報又は特開2002−343440号公報のごとく液晶性の置換基を持っていてもよい。また、特開2005−104845号公報、特開2005−104846号公報、特開2005−179254号公報などに記載の四級アンモニウム塩系の溶融塩を用いても良い。
【0076】
これら以外の溶融塩としては、例えば特開2005−139100号公報、特開2005−145927号公報、及びヨウ化リチウムと他の少なくとも1種類のリチウム塩(例えば酢酸リチウム、過塩素酸リチウム等)にポリエチレンオキシドを混合することにより、室温での流動性を付与したもの等が挙げられる。この場合のポリマーの添加量は1〜50質量%である。また、γ−ブチロラクトンを電解液に含んでいてもよく、これによりヨウ化物イオンの拡散効率が高くなり変換効率が向上する。
【0077】
電解質と溶媒からなる電解液にゲル化剤を添加してゲル化させることにより、電解質を擬固体化しても良い。ゲル化剤としては、分子量1000以下の有機化合物(特開平11−185836号公報、特開2000−36608号公報、特開2000−58140号公報)、分子量500−5000の範囲のSi含有化合物(特開2003−203520号公報)、特定の酸性化合物と塩基性化合物から出来る有機塩(特開2003−203520号公報)、ソルビトール誘導体(特開2003−346928号公報)、ポリビニルピリジン(特開2004−227920号公報、特開2005−093370号公報)が挙げられる。
【0078】
また、マトリックス高分子、架橋型高分子化合物又はモノマー、架橋剤、電解質及び溶媒を高分子中に閉じ込める方法を用いても良い。
マトリックス高分子として好ましくは、含窒素複素環を主鎖あるいは側鎖の繰り返し単位中に持つ高分子及びこれらを求電子性化合物と反応させた架橋体(特開平11−126917号公報、及び特開2000−86724号公報など)、トリアジン構造を持つ高分子、ウレイド構造をもつ高分子(特開2000−251532号公報)、液晶性化合物を含むもの(特開2000−319260号公報、特開2002−246066号公報)、エーテル結合を有する高分子(特開2000−150006号公報、特開2002−63813号公報、特開2001−338700号公報、特開2002−75480号公報)、ポリフッ化ビニリデン系(特開2003−303628号公報)、メタクリレート・アクリレート系(特開2001−28276号公報、特開2001−210390号公報)、熱硬化性樹脂(特開2002−363414号公報、特開2002−305041号公報)、架橋ポリシロキサン(特開2002−216861号公報)、PVA(特開2002−175841号公報)、ポリアルキレングリールとデキストリンなどの包摂化合物(特開2004−327271号公報)、含酸素または含硫黄高分子(特開2005−108845号公報)を添加した系、天然高分子(特開2005−71688号公報)などが挙げられる。これらにアルカリ膨潤型高分子(特開2002−175482号公報)、一つの高分子内にカチオン部位とヨウ素との電荷移動錯体を形成できる化合物を持った高分子(特開2005−63791号公報)などを添加しても良い。
マトリックスポリマーとして2官能以上のイソシアネートを一方の成分として、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基などの官能基と反応させた架橋ポリマーを含む系を用いても良い。この例として例えば、特開2000−228234号公報、特開2002−184478号公報、特開2002−289271号公報、及び特開2003−303630号公報)が挙げられる。また、ヒドロシリル基と二重結合性化合物による架橋高分子(特開2003−59548号公報)、ポリスルホン酸又はポリカルボン酸などを2価以上の金属イオン化合物と反応させる架橋方法(特開2003−86258号公報)などを用いても良い。
【0079】
上記擬固体の電解質との組み合わせで好ましく用いることが出来る溶媒としては、特定のりん酸エステル(特開2000−100486号公報、特開2003−16833号公報)、エチレンカーボネートを含む混合溶媒(特開2004−87202号公報)、特定の比誘電率を持つ溶媒(特開2004−335366号公報)、及び特開2003−16833号公報及び特開2003−264011号公報に記載の溶媒などが挙げられる。
固体電解質膜あるいはあるいは細孔に液体電解質溶液を保持させても良く、その方法として好ましくは、導電性高分子膜(特開平11−339866号公報)、繊維状固体(特開2000−357544号公報)、フィルタなどの布上固体(特開2001−345125号公報)が挙げられる。特開2003−157914号公報記載のゲル電解質と導電性樹脂対極の特定の組み合わせを用いても良い。
【0080】
以上の液体電解質及び擬固体電解質の代わりにp型半導体あるいは正孔輸送材料などの固体電荷輸送系を用いても良い。P型半導体として好ましくは、CuI(特開2001−156314号公報、特開2001−185743号公報、特開2001−185743号公報、特開2001−230434号公報、特開2003−273381号公報、特開2003−234485号公報、特開2003−243681号公報、特開2003−234486号公報)、CuSCN、及びp−SbAl(特開2003−258284号公報)が挙げられる。これら正孔輸送材料の製造方法としてこのましくは、特開2003−331938号公報、特開2001−168359号公報、特開2001−196612号公報、特開2001−257370号公報、特開2002−246623号公報、特開2002−246624号公報、及び特開2003−289151号公報が挙げられる。
【0081】
本発明の色素を吸着させた半導体微粒子の感光層に隣接して、正孔輸送体が設けられた積層体を用いることにより、変換効率が高い光電気化学電池を得ることができる。正孔輸送体としては特に制限されないが、有機正孔輸送材を使用することができる。正孔輸送体として好ましくは、ポリチオフェン(特開2000−106223号公報、特開2003−364304号公報)、ポリアニリン(特開2003−264304号公報)、ポリピロール(特開2000−106224号公報、特開2003−264304号公報)、及びポリシラン(特開2001−53555号公報、特開2001−203377号公報)などの導電性高分子、及び2個の環がC、Siなど四面体構造をとる中心元素を共有するスピロ化合物(特表平11−513522号公報、特表2001−525108号公報)、トリアリールアミンなどの芳香族アミン誘導体(特開平11−144773号公報、特開平11−339868号公報、特開2003−123856号公報、特開2003−197942号公報、特開2004−356281号公報)、トリフェニレン誘導体(特開平11−176489号公報)、含窒素複素環誘導体(特開2001−85077号公報、特開2001−85713号公報)、液晶性シアノ誘導体(特許第3505381号)が挙げられる。
【0082】
酸化還元対は、電子のキャリアになるので、ある程度の濃度が必要である。好ましい濃度としては合計で0.01モル/l以上であり、より好ましくは0.1モル/lであり、特に好ましくは0.3モル/l以上である。この場合の上限には特に制限はないが、通常5モル/l程度である。
【0083】
対向電極は、光電気化学電池の正極として働くものである。対向電極は、通常前述の導電性支持体と同義であるが、強度が十分に保たれるような構成では支持体は必ずしも必要でない。ただし、支持体を有する方が密閉性の点で有利である。対向電極の材料としては、白金、カーボン、導電性ポリマー、などがあげられる。好ましい例としては、白金(特開2001−102102号公報)、カーボン(特開2002−298936号公報、特開2003−297446号公報、特開2004−127849号公報、特開2004−152747号公報、特開2004−165015号公報、特開2004−111216号公報、特開2004−241228号公報、特開2004−319872号公報)、導電性ポリマー(特開2003−317814号公報、特開2004−319131号公報、特開2005−116301号公報)が挙げられるが、特開2001−43908号公報、特開2003−142168号公報、特開2004−127849号公報、特開2004−152747号公報の例で示されるものを用いても良い。
【0084】
対極の構造としては、集電効果が高い構造が好ましい。好ましい例としては、特開平10−505192号公報、特開2004−296669号公報、特開2005−11609号公報、特開2005−141996号公報、特開2005−142090号公報、特開2005−158470号公報、特開2000−348784号公報、特開2005−158379号公報、特開2000−294305号公報、特開2001−243995号公報、特開2004−241228号公報、特開2004−296203号公報、特開2004−319872号公報、特開2005−197097号公報の例などが挙げられる。
【0085】
受光電極は酸化チタンと酸化スズ(TiO/SnO)などの複合電極を用いても良く、チタニアの混合電極として例えば、特開2000−113913号公報、特開2004−95387号公報、特開2001−155791号公報、特開2003−272723号公報、特開平05−504023号公報、特開2000−114563号公報、特開2002−75476号公報、特開2002−8741号公報、中国特許1350334(A)号公報、特開2003−272724号公報、特開2003−308891号公報、特開2005−174934号公報、特開2001−358348号公報、特開2003−123862号公報、特開2004−103420号公報、特開2005−39013号公報及び特開2003−317815号公報が挙げられる。チタニア以外の混合電極として例えば、特開2001−185243号公報、特開2003−282164号公報、特開2003−289151号公報、特開2003−321299号公報、特開2002−93471号公報、特開2002−141115号公報、特開2002−184476号公報、特開2002−356400号公報、特開2002−246623号公報、特開2002−246624号公報、特開2002−261303号公報、特開2003−243053号公報、特開2004−6235号公報、特開2003−323920号公報、特開2004−277197号公報、特開2004−210605号公報、特開2005−135798号公報、特開2005−135799号公報、特開2001−196105号公報、特開2002−100418号公報、特開2002−100419号公報、特開2002−280084号公報、特開2003−272724号公報、特開2004−124124号公報、特開平09−237641号公報、特開平11−273755号公報、特開2004−247105号公報が挙げられる。
【0086】
受光電極は、入射光の利用率を高めるなどのためにタンデム型にしても良い。好ましいタンデム型の構成例ととしては、特開2002−90989号公報、特開2002−222971号公報、特開2003−168496号公報、特開2003−249275号公報、特開2005−166313号公報、特開平11−273753号公報、特開2002−167808号公報、特開2005−129259号公報、特開2002−231324号公報、特開2005−158620号公報、特開2005−158621号公報、特開2005−191137号公報、特開2003−333757号公報に記載の例が挙げられる。
【0087】
受光電極層内部で光散乱、反射を効率的に行う光マネージメント機能を設けてもよい。好ましくは、特開2002−93476号公報、特開2004−296373号公報、特開2002−352868号公報、特開2003−142170号公報、特開2003−59549号公報、特開2002−289274号公報、特開2002−222968号公報、特開2003−217688号公報、特開2004−172110号公報、特開2003−303629号公報、特開2004−343071号公報、特開2005−116302号公報、特開平09−259943号公報、特開平10−255863号公報、特開2003−142171号公報、特開2002−110261号公報、及び特開2004−311197号公報が挙げられる。
【0088】
導電性支持体と多孔質半導体微粒子層の間には、電解液と電極が直接接触することによる逆電流を防止する為、短絡防止層を形成することが好ましい。好ましい例としては、特開平06−507999号公報、特開平06−51113号公報、特開2000−178792号公報、特開平11−312541号公報、特開2000−285974号公報、特開2000−285979号公報、特開2001−143771号公報、特開2001156314号公報、特開2001−307785号公報、特開2002−151168号公報、特開2002−75471号公報、特開2003−163359号公報、特開2003−163360号公報、特開2003−123856号公報、WO03/038909号公報、特開2002−289270号公報、特開2002−319439号公報、特開2003−297443号公報、特開2004−87622号公報、特開2003−331934号公報、特開2003−243054号公報、特開2004−319130号公報、特開2004−363069号公報、特開2005−71956号公報、特開2005−108807号公報、特開2005−108836号公報、特開2005−142087号公報が挙げられる。
【0089】
受光電極と対極の接触を防ぐ為に、スペーサーやセパレータを用いることが好ましい。好ましい例としては、特開2001−283941号公報、特開2003−187883号公報、特開2000−294306号公報、特開2002−175844号公報、特開2002−367686号公報、特開2004−253333号公報が挙げられる。
【実施例】
【0090】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0091】
(合成例1)例示色素D−1の調製
下記のスキーム1の方法に従って例示色素D−1を調製した。
【化14】

【0092】
(i)化合物D−1−bの調製
シアノ酢酸メチル112gとチオイソシアナト酢酸メチルをDMF中、0℃で2時間攪拌後、ブロモ酢酸メチルを添加し、70℃で2時間攪拌した。酢酸エチルで抽出し濃縮し、MeOHで晶析することで化合物D−1−bを11.2g得た。
(ii) 化合物D−1−cの調製
化合物D−1−b 5gを酢酸/塩酸=1/1中で攪拌すし、カラムクロマトグラフィーで精製することにより、化合物D−1−c 0.4gを得た。
(iii)化合物D−1−dの調製
4−ヨードフェノール9.9gと1−ヨードヘキサン11.7gとをDMAc 50mlに室温で攪拌溶解し、これに炭酸カリウム9.3gを添加し室温で3.5時間攪拌した。水とヘキサンを加えて分液し、有機層を濃縮、カラムクロマトグラフィーで精製することで化合物D−1−d 12.8gを得た。
(vi)化合物D−1−eの調製
インドリン3.5g、化合物D−1−d 7.6g、炭酸カリウム4.2g、および臭化銅1.4gをスルホラン10mlに攪拌溶解し、外温設定200℃で3.5時間攪拌し、酢酸エチルで水から抽出、濃縮物をカラムクロマトグラフィーで精製することにより、化合物D−13−e 1.7gを得た。
(vii)化合物D−1−fの調製
DMF 6mlに氷冷下オキシ塩化リン2mlを加え15分攪拌し、化合物D−13−b 1.0gをこれに加え室温で3時間攪拌した。反応液に水を加え攪拌し、さらに10%水酸化ナトリウム水溶液を加え、1時間撹拌した。酢酸エチルで抽出、濃縮後、MeOHから再結晶することで化合物D−1−f 0.98gを得た。
(v)例示色素D−1の調製
化合物D−1−f 540mgとD−1−c 380mgとを酢酸25mlに室温攪拌溶解した。これに酢酸アンモニウム158mgを加え90℃で4時間加温攪拌した。冷却後水を加え、析出した結晶を濾取し、MeOH/CHCl系で再結晶することで例示色素D−1 420mgを得た。
【0093】
(合成例2)例示色素D−3の調製
下記のスキーム2の方法に従って上記、例示色素D−1と同様の方法、及びJ. Am. Chem Soc,. 2004, 126, 12218を参考に例示色素D−3を調製した。
例示色素D−3を調製した。
【0094】
【化15】

【0095】
(そのほかの例示色素の合成と最大吸収波長の測定)
合成例1と同様にして例示色素D−2、D−7、およびD−12を合成した。
例示色素D−1、D−2、D−7、およびD−12の最大吸収波長を測定した。測定は、色素をエタノールに溶解させて、分光光度計(日立ハイテク株式会社製、商品名「U−4100」)によって行った。結果は、D−1、D−2、D−7、D−12の順にそれぞれ、490nm、470nm、475nm、516nmであった。
【0096】
(実施例1)
下記の方法に従って、光電気化学電池を作製し、評価した。その結果を表1に示す。
(1)透明導電性支持体の作製
厚さ1.9mmの無アルカリガラスの基板に、CVD法によってフッ素ドープ型の二酸化スズを全面に均一にコーティングし、厚さ600nm、面抵抗約15Ω/cm、光透過率(500nm)が85%の導電性二酸化スズ膜を片面に被覆した透明導電性支持体を形成した。
【0097】
(2)半導体微粒子の準備
(i)半導体微粒子a
C.J.BarbeらのJ.Am.Ceramic Soc.80巻、p.3157の論文に記載の製造方法に従い、チタン原料にチタニウムテトライソプロポキシドを用い、オートクレーブ中での重合反応の温度を230℃に設定して、二酸化チタン濃度11質量%のアナターゼ型二酸化チタンの分散液を合成した。得られた二酸化チタン粒子の一次粒子のサイズは10〜30nmであった。得られた分散液を、超遠心分離機にかけて、粒子を分離し、凝集物を乾燥した後、メノウ乳鉢上で粉砕して白色粉末の半導体微粒子aを得た。
(ii)半導体微粒子b
日本アエロジル社製のP−25(商品名)を使用した。P−25は、気相中の焼成法によって作られた一次粒径20nm、BET比表面積50m/g、アナターゼ含有率77%の酸化チタン微粒子である。
(iii)半導体微粒子c
アルドリッチ社製のアナターゼ型酸化チタン(アナターゼ含有率99%)を使用した。
【0098】
(3)多孔質半導体微粒子層の作製
水とアセトニトリルの容量比4:1からなる混合溶媒100ccに、上記(2)の半導体微粒子a、b、cをそれぞれ、溶媒100ccあたり32gの濃度で添加し、自転/公転併用式のミキシングコンディショナーを使って均一に分散、混合した。この結果、得られた白色の半導体微粒子分散液は、半導体微粒子a、bについては50〜150N・s/mの高粘度のペースト状となり、このまま塗布に用いるのに適した液物性をもっていることがわかった。しかし、半導体微粒子cについては粘度が低く、一定の厚さの塗膜を得ることができなかった。そこで、(1)で作製した導電性二酸化スズ膜が被覆された透明導電性支持体に、アプリケータを用いて、半導体微粒子aおよびbを用いて得られた分散液を塗布し、室温下で1時間乾燥させることにより、40〜70μmの均一な厚さの塗布層を形成した。さらに、この塗布層を120℃で30分間乾燥した後に、100Wの水銀灯紫外線光源のUV光に30分間露光して、後処理を行った。このようにして色素増感のための多孔質半導体微粒子層を作製した。多孔質半導体微粒子層の最終的な平均膜厚は半導体微粒子aを用いた基板aは6.5μm、半導体微粒子bを用いた基板bは6.2μmであった。
【0099】
分散液中に含まれる半導体微粒子以外の固形分の重量を調べるために、上記半導体微粒子層を空気中、350℃で0.5時間加熱し、加熱前後の重量変化を測定した。この結果、分散液中に固形分として半導体微粒子層a、b以外を含まない試料No.1〜23および25の、単位面積当たりの重量減少はいずれも0.3%であった。試料番号24および26では、平均分子量が50万のポリエチレングリコール(PEG)の粉末を、それぞれ、溶媒100cc当たり7.7g、11.7g配合したもので実験したところ、固形分含量はそれぞれ、8.0%と12.0%であった。
【0100】
(4)色素吸着溶液の調製
後述の表1記載の比較色素R−1(特許第4148374号公報に記載の色素)を、乾燥したアセトニトリル:t−ブタノール:エタノールを体積比で2:1:1の混合溶媒に、色素濃度が3×10−4モル/リットルとなるように溶解した。この色素溶液に添加剤として、p−C19−C−O−(CHCH−O)−(CH−SONaの構造の有機スルホン酸誘導体を0.025モル/リットルの濃度となるように溶解して、色素吸着用溶液を調製した。
また後述の表1記載の本発明の色素を、乾燥したエタノールに濃度3×10−4モル/リットルとなるように溶解して、色素吸着溶液を得た。
【0101】
(5)色素の吸着
上記の多孔質半導体微粒子層を塗設した基板a、bを、上記の吸着用色素溶液に浸漬して、攪拌下40℃で3時間放置した。
このようにして半導体微粒子層に色素を吸着させ、感光層に用いる色素増感電極(感光性電極)を作製した。
【0102】
(6)光電気化学電池の作製
色素吸着した多孔質半導体微粒子層をかき落として、受光面積1.0cm(直径約1.1cm)の円型の感光性電極を形成した。この電極に対して、対極の白金蒸着ガラス基板を、熱圧着性のポリエチレンフイルム製のフレーム型スペーサー(厚さ20μm)を挿入して重ね合わせ、スペーサー部分を120℃に加熱し両基板を圧着した。さらにセルのエッジ部をエポキシ樹脂接着剤でシールした。対極の基板のコーナー部にあらかじめ設けた電解液注液用の小孔を通して、電解液として、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージド/ヨウ素=50:1(質量比)の組成から成る室温溶融塩を基板の小孔から毛細管現象を利用して電極間の空間にしみこませた。以上のセル組立て工程と、電解液注入の工程をすべて上記の露点−60℃の乾燥空気中で実施した。溶融塩の注入後、真空下でセルを数時間吸引し感光性電極および溶融塩を含めたセル内部の脱気を行い、最終的に小孔を低融点ガラスで封じた。これにより、導電性支持体、色素が吸着された多孔質半導体微粒子電極(感光性電極)、電解液、対極および支持体が順に積層された光電気化学電池が作製された。
【0103】
(7)光電変換効率の測定
500Wのキセノンランプ(ウシオ電気)に太陽光シミュレーション用補正フィルター(Oriel社製AM1.5direct)を装着し、上記光電気化学電池に対し、入射光強度が100mW/cmの模擬太陽光を、多孔質半導体微粒子電極(感光性電極)の側から照射した。素子は恒温装置のステージ上に密着して固定し、照射中の素子の温度を50℃に制御した。電流電圧測定装置(ケースレー製ソースメジャーユニット238型)を用いて、素子に印加するDC電圧を10mV/秒の定速でスキャンし、素子の出力する光電流を計測することにより、光電流―電圧特性を測定した。これにより求められた上記の各種素子のエネルギー変換効率(η)を、セルの構成要素(半導体微粒子、増感色素)の内容とともに表1に記載した。
【0104】
【表1】

【0105】
比較色素R−1(特許第4148374号に記載の化合物)
【化16】

【0106】
表1の結果から、固形分の含量が10質量%以下の分散液を支持体に塗布し加熱することにより多孔質半導体微粒子層を作製し、本発明の色素を吸着させた場合は、比較色素を吸着させた場合と比較して、高い変換効率の光電気化学電池が得られたことがわかる(試料番号101〜108)。半導体微粒子以外の固形分含量が0.3%の分散液を支持体に塗布し、本発明の色素を吸着させた場合には、特に高い変換効率の光電気化学電池を得ることができた(試料番号101〜107)。
一方、半導体微粒子以外の固形分含量が0.3%の分散液を支持体に塗布し、比較色素を吸着させた場合には、それに比べて変換効率は低くなった(試料番号109)。
また、半導体微粒子以外の固形分含量が10%を越える12%の分散液を支持体に塗布した場合は、本発明の色素を吸着させても変換効率は0.1%と、きわめて低くなった(試料番号110)。
【0107】
(実施例2)
下記の方法に従って、光電気化学電池を作製し、評価した。その結果を表3に示す。
(1)透明導電性支持体の作製
感光性電極用支持体として、表面がフッ素コートされた厚さ0.4mmのシートの片面に、導電性の酸化スズの薄膜を厚さ200nmで均一にコーティングして可撓性のある透明導電性支持体を使用した。
(2)対極用の導電性シートの作製
厚さ0.4mmのポリイミド製カプトン(登録商標)フィルムの片面に、真空スパッタリング法によって厚さ300nmの白金膜で均一に被覆した。面抵抗は5Ω/cmであった。
(3)半導体微粒子分散液の調製
実施例1と同様にして、実施例1で用いた半導体微粒子aを用いて、半導体微粒子分散液を調製した。試料番号41および46では、平均分子量が50万のポリエチレングリコール(PEG)の粉末を、それぞれ、溶媒100cc当たり7.7g、11.7g配合した。その他の半導体微粒子分散液には、半導体微粒子以外の固形分は加えなかった。
【0108】
(4)半導体微粒子分散液中の固形分の測定
厚さ1.9mmの無アルカリガラスの基板に分散液をアプリケーターで塗布し、40〜70μmの厚さで塗布し、室温で1時間乾燥させた。その後、空気中、350℃で0.5時間加熱し、加熱前後の重量変化を測定したところ、前記試料番号41と46の半導体微粒子以外の固形分含量はそれぞれ、順に8.0%と12.0%であった。それ以外試料の半導体微粒子以外の固形分含量は、0.3%であった。
(5)半導体微粒子層の作製
(1)で用意した透明導電性支持体に、(3)で調製した分散液をアプリケータで塗布し、室温下で1時間乾燥させることにより、40〜70μmの均一な厚さの塗布層を形成した。さらに、この塗布層を表2記載の条件で処理して、色素増感のための多孔質半導体微粒子層を作製した。多孔質半導体微粒子層の最終的な平均膜厚は、いずれも6〜7μmであった。
【0109】
(5)色素の吸着
上記の多孔質半導体微粒子層が形成された支持体を、実施例1と同様にして作製した吸着用色素溶液に浸漬して、攪拌下40℃で3時間放置した。
このようにして半導体微粒子層に色素を吸着させ、感光層に用いる色素増感電極(感光性電極)を作製した。
(6)光電気化学電池の評価
上記の色素が吸着された半導体微粒子電極を用いて、実施例1と同様に光電気化学電池を作製し、光電変換効率を測定した。その結果を表2に示す。
【0110】
【表2】

【0111】
表2に示すように、導電性高分子製の支持体に本発明の色素を吸着させた多孔質半導体微粒子層を形成した場合に、実用レベルの光電変換効率を有する電気化学電池が得られた(試料番号201〜214)。特に半導体微粒子以外の固形分含量が0.3%の分散液を支持体に塗布し、熱処理を120〜150℃で行いその後紫外線照射し、その後本発明の色素を吸着させて多孔質半導体微粒子層を作製した場合は、光電変換効率が2%以上と高くなった(試料番号201〜204、208〜210)。
また、固形分の含量が10質量%以下の分散液を導電性高分子製の支持体に塗布し加熱することにより多孔質半導体微粒子層を作製し、本発明の色素を吸着させた場合は、比較色素を吸着させた場合と比較して、高い変換効率の光電気化学電池が得られることがわかった(試料番号201〜214と試料番号215〜219との比較)。固形分の含量が10質量%を越える分散液を導電性高分子製の支持体に塗布し加熱することにより多孔質半導体微粒子層を使用した場合は、本発明の色素を吸着させた場合であっても、光電変換効率は0.1%と非常に低くなった(試料番号220)。
【0112】
以上のように、本発明の製造方法により作製した多孔質半導体微粒子層を感光層に用いることによって、高温での加熱工程を要することなく、色素増感型の光電変換素子を、廉価な手段で作ることができる。また導電性高分子など可撓性に優れた基板を用いて、光電気化学電池としても有用な性能を備えた素子を変換効率高く提供することができる。
【符号の説明】
【0113】
1 導電性支持体
2 感光体
21 色素化合物
22 半導体微粒子
23 電解質
3 電荷移動体
4 対極
5 受光電極
6 回路
10 光電変換素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に色素が吸着された多孔質半導体微粒子を有する感光層、電荷移動層、および対極を含む積層構造よりなる光電変換素子の製造方法であって、半導体微粒子以外の固形分の含量が半導体微粒子分散液全体の10質量%以下の分散液を前記導電性支持体上に塗布し加熱することにより多孔質半導体微粒子を得る工程、及び該多孔質半導体微粒子を下記一般式(1)で表される構造を有する色素で増感する工程を含有することを特徴とする光電変換素子の製造方法。
【化1】

[一般式(1)中、Aは炭素−窒素結合とともに環を形成するために必要な原子群を表す。YとYは少なくともどちらか一方は酸性基を表し、両方とも酸性基を表す場合は、互いに同じでも異なっていてもよく、一方のみが酸性基を表す場合は、他方は電子求引基を表す。Dは色素残基を表し、nは1以上の整数を表す。Lは、単結合又は2価の連結基を表す。Yは酸性基を表す。]
【請求項2】
前記導電性支持体が導電性の高分子材料であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項3】
前記多孔質半導体微粒子を得る工程が、前記半導体微粒子分散液が塗布された導電性支持体を100℃以上250℃以下で加熱する工程であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項4】
前記一般式(1)で表される構造を有する色素が、下記一般式(2)〜(5)のいずれかで表されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法。
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

[一般式(2)〜(5)中、YとYは少なくともどちらか一方は酸性基を表し、両方とも酸性基を表す場合は、互いに同じでも異なっていてもよく、一方のみが酸性基を表す場合は、他方は電子求引基を表す。LLは、アルケニレン基、アルキニレン基及びアリーレン基からなる群から選ばれた少なくとも1種の二価の連結基を表す。Yは酸性基を表す。R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、脂肪族基、芳香族性基又は炭素原子で結合する複素環基を表す。R及びRはLL上の置換基とともに環を形成していても良い。]
【請求項5】
前記一般式(2)で表される構造を有する色素が、下記一般式(6)で表されることを特徴とする請求項4に記載の光電変換素子の製造方法。
【化6】

[一般式(6)中、YとYは少なくともどちらか一方は酸性基を表し、両方とも酸性基を表す場合は、互いに同じでも異なっていてもよく、一方のみが酸性基の場合は、他方は電子求引基を表す。LLは、アルケニレン基、アルキニレン基及びアリーレン基からなる群から選ばれた少なくとも1種の二価の連結基を表す。Yは酸性基を表す。R、Rはそれぞれ独立に水素原子、脂肪族基、芳香族性基又は炭素原子で結合する複素環基を表す。Bはベンゼン環上の2つの炭素原子および窒素原子とともに環を形成するために必要な原子群を表す。]
【請求項6】
前記一般式(5)で表される構造を有する色素が、下記一般式(7)で表されることを特徴とする請求項4に記載の光電変換素子の製造方法。
【化7】

[一般式(7)中、YとYの少なくともどちらか一方は酸性基を表し、両方とも酸性基を表す場合は、互いに同じでも異なっていてもよく、一方のみが酸性基の場合は、他方は電子求引基を表す。LLは、アルケニレン基、アルキニレン基及びアリーレン基からなる群から選ばれた少なくとも1種の二価の連結基を表す。Yは酸性基をあらわす。R、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族性基又は炭素原子で結合する複素環基を表す。Bはベンゼン環上の2つの炭素原子および窒素原子とともに環を形成するために必要な原子群を表す。]
【請求項7】
前記Y及びYの酸性基がカルボン酸基であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法で製造されることを特徴とする光電変換素子。
【請求項9】
請求項8に記載の光電変換素子を備えることを特徴とする光電気化学電池。

【図1】
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【公開番号】特開2011−71071(P2011−71071A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223451(P2009−223451)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】