説明

光電変換素子の製造方法

【課題】製造コストを抑えつつ、製造工程に起因する性能劣化を抑制することができる光電変換素子の製造方法を提供する。
【解決手段】第1の電極と、第1の電極上方に形成された第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に形成された、受光した光に応じて電荷を生成する光電変換層を有する有機層と、第1の電極、第2の電極および有機層を封止する封止層とを有する光電変換素子の製造方法である。第1の電極の上方に有機層を形成する有機層形成工程と、有機層の上方に第2の電極を形成する第2の電極形成工程と、第2の電極の上方に封止層を形成する封止層形成工程とを有する。有機層形成工程から封止層形成工程の各工程が真空下でなされる。さらに有機層形成工程と第2の電極形成工程との間に製造途中の光電変換素子中間体を300lux・h以下の照射光量の非真空下に置く工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光した光に応じて電荷を生成する光電変換層を有する有機層を備えた光電変換素子の製造方法に関し、特に、製造コストを抑えつつ、製造工程に起因する性能劣化を抑制することができる光電変換素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、一対の電極と、この一対の電極の間に設けられる有機材料を用いた光電変換層とを有する光電変換素子が知られている。特許文献1には、光電変換効率の向上を目的に、光電変換層として、フラーレンまたはフラーレン誘導体を用いた光電変換素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−123707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、有機材料は水分や酸素による影響を受けて特性が変化してしまうことが知られている。このため、光電変換素子を製造する際には、全ての工程を真空一貫で行うことが望ましいというのが常識として考えられてきた。
一方、真空一貫工程を実現しようとすると、製造設備が大がかりとなるため、光電変換素子の製造コストが増大するという懸念がある。そこで、製造コストを抑えながら、性能劣化のない光電変換素子を得る方法が望まれていた。
【0005】
本発明の目的は、前記従来技術に基づく問題点を解消し、製造コストを抑えつつ、製造工程に起因する性能劣化を抑制することができる光電変換素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、第1の電極と、前記第1の電極上方に形成された第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に形成された、受光した光に応じて電荷を生成する光電変換層を有する有機層と、前記第1の電極、前記第2の電極および前記有機層を封止する封止層とを有する光電変換素子の製造方法であって、前記第1の電極の上方に前記有機層を形成する有機層形成工程と、前記有機層の上方に前記第2の電極を形成する第2の電極形成工程と、前記第2の電極の上方に前記封止層を形成する封止層形成工程とを有し、前記有機層形成工程から前記封止層形成工程の各工程は、真空下で行なわれ、さらに、前記有機層形成工程と前記第2の電極形成工程との間に、製造途中の光電変換素子中間体を300lux・h以下の照射光量の非真空下に置く工程を有することを特徴とする光電変換素子の製造方法を提供するものである。
本発明において、非真空下とは、酸素および水がいずれも1000ppm以上の環境のことである。
【0007】
前記有機層形成工程の前に、基板の上方に前記第1の電極を形成する第1の電極形成工程を有してもよい。
例えば、前記有機層形成工程は、前記第1の電極上に電子ブロッキング層を形成する工程と、前記電子ブロッキング層上に前記光電変換層を形成する工程とを有する。
前記非真空下に置く工程は、照射光量が200lux・h以下でなされることが好ましい。また、前記光電変換層は、p型有機半導体とn型有機半導体のバルクへテロ構造体を有することが好ましい。
【0008】
さらに、前記p型有機半導体は、一般式(1)で表される化合物を含むことが好ましい。また、前記n型有機半導体は、フラーレンまたはフラーレン誘導体を含むことが好ましい。
【0009】
【化1】

一般式(1)中、Zは少なくとも2つの炭素原子を含む環であって、5員環、6員環、または5員環および6員環の少なくともいずれかを含む縮合環を表す。L、L、およびLはそれぞれ独立に無置換メチン基、または置換メチン基を表す。Dは原子群を表す。nは0以上の整数を表す。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製造コストを抑えつつ、製造工程に起因する光電変換素子の性能劣化を抑制することができる。さらには、性能劣化が抑制され、所定の性能を有する撮像素子、および撮影装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態の光電変換素子を示す模式的断面図である。
【図2】本発明の実施形態の撮像素子を示す模式的断面図である。
【図3】(a)〜(c)は、本発明の実施形態の撮像素子の製造方法を工程順に示す模式的断面図である。
【図4】(a)〜(c)は、本発明の実施形態の撮像素子の製造方法を工程順に示す模式的断面図であり、図3(c)の後工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の光電変換素子の製造方法を詳細に説明する。
【0013】
図1に示す光電変換素子100は、基板102上に第1の電極104が形成されており、この第1の電極104上に有機層106が形成されている。この有機層106上に第2の電極108が形成されている。有機層106が第1の電極104と第2の電極108との間に設けられている。有機層106は、光電変換層112と電子ブロッキング層114とを有し、電子ブロッキング層114が第1の電極104上に形成されている。
第2の電極108を覆うようにして、第1の電極104、第2の電極108および有機層106を封止する封止層110が設けられている。
【0014】
基板102としては、シリコン基板、ガラス基板等を用いることができる。
第1の電極104は、有機層106(光電変換層112)で発生した電荷のうちの正孔を捕集するための電極である。第1の電極104は、TiN(窒化チタン)等の導電性材料で構成されている。
なお、基板102としては、第1の電極104として、例えば、TiN電極が形成されたTiN基板を用いることが好ましい。
【0015】
有機層106の光電変換層112は、光を受光し、その光量に応じた電荷を発生するものであり、有機の光電変換材料を含んで構成されている。例えば、光電変換層112は、p型有機半導体(p型有機化合物)と、n型有機半導体であるフラーレンまたはフラーレン誘導体とを混合したバルクへテロ構造を有する。なお、光電変換層112の詳細については、後述する。
【0016】
電子ブロッキング層114は、第1の電極104から有機層106に電子が注入されることを防ぐための層であり、単層又は複数層で構成されている。電子ブロッキング層114は、有機材料単独膜で構成されてもよいし、複数の異なる有機材料の混合膜で構成されていてもよい。電子ブロッキング層114は、隣接する第1の電極104からの電子注入障壁が高くかつ正孔輸送性が高い材料で構成することが好ましい。電子注入障壁としては、隣接する電極の仕事関数よりも、電子ブロッキング層114の電子親和力が1eV以上小さいことが好ましい、より好ましくは1.3eV以上、特に好ましいのは1.5eV以上である。
電子ブロッキング層114は、第1の電極104と有機光電変換層112の接触を十分に抑制し、また第1の電極104表面に存在する欠陥やゴミの影響を避けるために、20nm以上であることが好ましい、より好ましくは40nm以上、特に好ましいのは60nm以上である。
電子ブロッキング層114を厚くしすぎると、有機光電変換層112に適切な電界強度を印加するために必要な、供給電圧が高くなってしまう問題や、電子ブロッキング層114中のキャリア輸送過程が、光電変換素子の性能に悪影響を与えてしまう問題が生じる。電子ブロッキング層114の総膜厚は、300nm以下であることが好ましい、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。
【0017】
第2の電極108は、有機層106で発生した電荷のうちの電子を捕集する電極である。第2の電極108には、有機層106に光を入射させるために、有機層106が感度を持つ波長の光に対して十分に透明な導電性材料(例えば、ITO)が用いられる。第2の電極108および第1の電極104間にバイアス電圧を印加することで、有機層106で発生した電荷のうち、正孔を第1の電極104に、電子を第2の電極108に移動させることができる。
【0018】
封止層110は、水、酸素等の有機材料を劣化させる因子が有機材料を含む有機層106に侵入するのを防ぐための層である。封止層110は、第1の電極104、電子ブロッキング層114、有機層106、および第2の電極108を覆っており、基板102との間に封止している。
【0019】
このように構成された光電変換素子100では、第2の電極108を光入射側の電極としており、第2の電極108上方から光が入射すると、この光が第2の電極108を透過して有機層106に入射し、ここで電荷が発生する。発生した電荷のうちの正孔は第1の電極104に移動する。この第1の電極104に移動した正孔を、その量に応じた電圧信号に変換して読み出すことで、光を電圧信号に変換して取り出すことができる。
【0020】
なお、電子ブロッキング層114は、複数層であってもよい。複数層とすることで、電子ブロッキング層114を構成する各層の間に界面ができ、各層に存在する中間準位に不連続性が生じる。この結果、中間準位等を介した電荷の移動がしにくくなるため、電子ブロッキング効果を高めることができる。但し、電子ブロッキング層114を構成する各層が同一材料であると、各層に存在する中間準位が全く同じとなる場合も有り得るため、電子ブロッキング効果を更に高めるために、各層を構成する材料を異なるものにすることが好ましい。
【0021】
次に、光電変換素子100の製造方法について説明する。
なお、本発明の光電変換素子100の製造方法においては、光電変換素子100を製造するための供給原料または製造途中の中間製造物である中間体(光電変換素子中間体)が所定の経路で搬送され、搬送された供給原料または中間体に対して各種の方法で各種の層、膜が形成されるが、特に説明のない場合であっても、搬送経路および各種の層および膜の形成環境や空間は、図示しない真空排気手段等により、所定の真空度に保たれている場合がある。すなわち、特に説明のない場合であっても、供給原料または中間体(光電変換素子中間体)に対して真空下で各種の層および膜の形成、ならびに搬送が行われている場合がある。
【0022】
まず、第1の電極104として、例えば、TiN電極が基板102上に形成されたTiN基板を用意する。
TiN基板は、例えば、第1の電極材料としてTiNが、スパッタ法により所定の真空下で基板102上に成膜されて、第1の電極104として、TiN電極が形成されたものである。
なお、TiN基板を用いることなく、例えば、基板102の上に、例えば、TiNをスパッタ法により所定の真空下で成膜して第1の電極104を形成してもよい。
【0023】
次に、第1の電極104上に、電子ブロッキング材料、例えば、カルバゾール誘導体を、更に好ましくはビフルオレン誘導体を、例えば、蒸着法を用いて所定の真空下で成膜して、有機層106を構成する電子ブロッキング層114を形成する。
【0024】
次に、電子ブロッキング層114上に、光電変換材料として、例えば、p型有機半導体とフラーレンまたはフラーレン誘導体とを、蒸着法を用いて所定の真空下で蒸着して成膜し、有機層106を構成する光電変換層112を形成する(有機層形成工程)。
次に、光電変換層112上に、第2の電極材料、例えば、ITOをスパッタ法を用いて所定の真空下で成膜して第2の電極108を形成する(第2の電極形成工程)。
次に、第2の電極108および基板102上に、封止材料、例えば、Al(アルミナ)を、例えば、蒸着法を用いて所定の真空下で成膜して封止層110を形成する(封止層形成工程)。
【0025】
本実施形態の製造方法においては、電子ブロッキング層114の形成工程および光電変換層112の形成工程を含む有機層形成工程、第2の電極形成工程、および封止層形成工程の各工程において、成膜中に水および酸素等の有機膜の劣化因子が膜に混入して膜の性質が劣化してしまうこと等を防ぐために、上記各製造工程および各製造工程間の搬送は所定の真空下で実施している。
電子ブロッキング層114と光電変換層112とは、同じ成膜室、または別々の成膜室内で形成することができる。別々の成膜室の場合、電子ブロッキング層114を形成した後、光電変換層112を形成する際の搬送も所定の真空下でなされる。
これまでは、光電変換層112を形成してから、第2の電極108を形成するまで間に、製造途中の中間製造物を非真空下に置くと、水分や酸素等によって光電変換層112、場合によっては電子ブロッキング層114を構成する有機材料が劣化し、光電変換素子の性能が劣化してしまうと考えられていた。
【0026】
しかしながら、本発明者は、鋭意検討の結果、光電変換層112の成膜後から第2の電極108の成膜開始までの間、製造途中の中間製造物を非真空下に置いても、照射光量が300lux・h以下であれば、最終的に製造される光電変換素子100の素子性能が劣化しないことを見出した。なお、照射光量は、200lux・h以下が好ましく、理想的には、照射光量はゼロである。
ここで、照射光量は、光源にWランプ蛍光灯を用い、Wランプ蛍光灯下にて照度計を用いて測定した値である。本発明の照射光量は、Wランプ蛍光灯換算の値である。
また、非真空下とは、酸素および水がいずれも1000ppm以上の環境のことである。
さらには、酸素および水がいずれも100ppm以下であれば、光照射による性能劣化がないことを知見している。真空下、所定の真空状態では、酸素および水がいずれも100ppm以下である。
【0027】
本実施形態の製造方法では、光電変換層112の形成工程(有機層形成工程)と第2の電極108の形成工程(第2電極形成工程)との間に、非真空下に曝す期間(以下、非真空期間ともいう)を設けることができる。このため、光電変換層112を形成する装置から第2の電極108を形成する装置までの間、中間体(光電変換素子中間体)の搬送を真空状態でする必要がなくなる。この結果、光電変換素子100の製造設備を簡素化することができ、製造コストを削減することが可能となる。しかも、最終的に製造される光電変換素子100は、性能劣化が抑制される。
【0028】
次に、光電変換素子100を用いた撮像素子について説明する。
図2は、本発明の実施形態の撮像素子を示す模式的断面図である。図3および図4は、本発明の実施形態の撮像素子の製造方法を工程順に示す模式的断面図である。
本発明の実施形態の撮像素子は、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等の撮像装置に用いることができる。更には電子内視鏡および携帯電話機等の撮像モジュール等に搭載して用いられる。
【0029】
図2に示す撮像素子10は、基板12と、絶縁層14と、画素電極16と、有機層18と、対向電極20と、封止層(保護膜)22と、応力緩和層24と、カラーフィルタ26と、隔壁28と、遮光層29と、保護層30とを有する。
なお、画素電極16は、上述の図1に示す光電変換素子100の第1の電極104に対応し、対向電極20は、上述の光電変換素子100の第2の電極108に対応し、有機層18は、上述の光電変換素子100の有機層106に対応し、封止層22は、上述の光電変換素子100の封止層110に対応する。基板12には読出し回路40と、対向電極電圧供給部42とが形成されている。
【0030】
基板12は、例えば、ガラス基板またはSi等の半導体基板が用いられる。基板12上には公知の絶縁材料からなる絶縁層14が形成されている。絶縁層14には、表面に複数の画素電極16が形成されている。画素電極16は、例えば、1次元または2次元状に配列される。
また、絶縁層14には、画素電極16と読出し回路40とを接続する第1の接続部44が形成されている。さらには、対向電極20と対向電極電圧供給部42とを接続する第2の接続部46が形成されている。第2の接続部46は、画素電極16および有機層18に接続されない位置に形成されている。第1の接続部44および第2の接続部46は、導電性材料で形成されている。
また、絶縁層14の内部には、読出し回路40および対向電極電圧供給部42を、例えば、撮像装置10の外部と接続するための導電性材料からなる配線層48が形成されている。
上述のように、基板12上の絶縁層14の表面14aに、各第1の接続部44に接続された画素電極16が形成されたものを回路基板11という。なお、この回路基板11はCMOS基板ともいう。
【0031】
複数の画素電極16を覆うとともに、第2の接続部46を避けるようにして有機層18が形成されている。有機層18は、光電変換層50と電子ブロッキング層52とを有する。なお、有機層18は、上述したように、図1に示す光電変換素子100の有機層106に対応するので、光電変換層50および電子ブロッキング層52は、それぞれ光電変換層112および電子ブロッキング層114に対応することは言うまでもない。
【0032】
有機層18は、電子ブロッキング層52が画素電極16側に形成されており、電子ブロッキング層52上に光電変換層50が形成されている。
電子ブロッキング層52は、画素電極16から光電変換層50に電子が注入されるのを抑制するための層である。
光電変換層50は、入射光L等の受光した光の光量に応じた電荷を発生するものであり、有機の光電変換材料を含むものである。光電変換層50および電子ブロッキング層52は、画素電極16上では一定の膜厚であれば、それ以外で膜厚が一定でなくてもよい。光電変換層50については、後に詳細に説明する。
【0033】
対向電極20は、画素電極16と対向する電極であり、光電変換層50を覆うようにして設けられている。画素電極16と対向電極20との間に光電変換層50が設けられている。
対向電極20は、光電変換層50に光を入射させるため、入射光に対して透明な導電性材料で構成されている。対向電極20は、光電変換層50よりも外側に配置された第2の接続部46と電気的に接続されており、第2の接続部46を介して対向電極電圧供給部42に接続されている。
【0034】
対向電極20(第2の電極108)の材料としては、例えば、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属硼化物、有機導電性化合物、これらの混合物等が挙げられる。具体例としては、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウムタングステン(IWO)、酸化チタン等の導電性金属酸化物、TiN等の金属窒化物、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)等の金属、更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性化合物、これらとITOとの積層物、などが挙げられる。透明導電膜の材料として特に好ましいのは、ITO、IZO、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、弗素ドープ酸化錫(FTO)、酸化亜鉛、アンチモンドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)のいずれかの材料である。この対向電極20(第2の電極108)の材料中でも特に好ましい材料は、ITOである。
【0035】
対向電極電圧供給部42は、第2の接続部46を介して対向電極20に所定の電圧を印加するものである。対向電極20に印加すべき電圧が撮像素子10の電源電圧よりも高い場合は、チャージポンプ等の昇圧回路によって電源電圧を昇圧して上記所定の電圧を供給するものである。
【0036】
画素電極16は、画素電極16とそれに対向する対向電極20との間にある光電変換層50で発生した電荷を捕集するための電荷捕集用の電極である。画素電極16は、第1の接続部44を介して読出し回路40に接続されている。この読出し回路40は、複数の画素電極16の各々に対応して基板12に設けられており、対応する画素電極16で捕集された電荷に応じた信号を読出すものである。
【0037】
画素電極16(第1の電極104)の材料としては、例えば、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属硼化物、有機導電性化合物、これらの混合物等が挙げられる。具体例としては、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウムタングステン(IWO)、酸化チタン等の導電性金属酸化物、TiN等の金属窒化物、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)等の金属、更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性化合物、これらとITOとの積層物、などが挙げられる。透明導電膜の材料として特に好ましいのは、ITO、IZO、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、弗素ドープ酸化錫(FTO)、酸化亜鉛、アンチモンドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)のいずれかの材料である。この画素電極16(第1の電極104)の材料中でも特に好ましい材料は、TiNである。
【0038】
画素電極16の端部において画素電極16の膜厚に相当する段差が急峻だったり、画素電極16の表面に顕著な凹凸が存在したり、画素電極16上に微小な塵埃(パーティクル)が付着したりすると、画素電極16上の層が所望の膜厚より薄くなったり亀裂が生じたりする。そのような状態で層上に対向電極20(第2の電極108)を形成すると、欠陥部分における画素電極16と対向電極20の接触や電界集中により、暗電流の増大や短絡などの画素不良が発生する。更に、上記の欠陥は、画素電極16とその上の層の密着性や有機光電変換素子10の耐熱性を低下させるおそれがある。
【0039】
上記の欠陥を防止して素子の信頼性を向上させるためには、画素電極16の表面粗さRaが0.6nm以下であることが好ましい。画素電極16の表面粗さRaが小さいほど、表面の凹凸が小さいことを意味し、表面平坦性が良好である。また、画素電極16上のパーティクルを除去するため、電子ブロッキング層52を形成する前に、半導体製造工程で利用されている一般的な洗浄技術を用いて、画素電極16等を洗浄することが特に好ましい。
【0040】
読出し回路40は、例えば、CCD、MOS回路、またはTFT回路等で構成されており、絶縁層14内に設けられた遮光層(図示せず)によって遮光されている。なお、読出し回路40は、一般的なイメージセンサ用途ではCCDまたはCMOS回路を採用することが好ましく、ノイズおよび高速性の観点からはCMOS回路を採用することが好ましい。
なお、図示しないが、例えば、基板12にp領域によって囲まれた高濃度のn領域が形成されており、このn領域に接続部44が接続されている。p領域に読出し回路40が設けられている。n領域は光電変換層50の電荷を蓄積する電荷蓄積部として機能するものである。n領域に蓄積された電荷は読出し回路40によって、その電荷量に応じた信号に変換されて、例えば、配線層48を介して撮像素子10外部に出力される。
【0041】
封止層(保護膜)22は、有機物を含む光電変換層50を水分子などの劣化因子から保護するためのものである。封止層22は、対向電極20を覆うようして形成されている。
封止層22(封止層110)としては、次の条件が求められる。
第一に、素子の各製造工程において溶液、プラズマなどに含まれる有機の光電変換材料を劣化させる因子の浸入を阻止して光電変換層を保護することが挙げられる。
第二に、素子の製造後に、水分子などの有機の光電変換材料を劣化させる因子の浸入を阻止して、長期間の保存/使用にわたって、光電変換層50の劣化を防止する。
第三に、封止層22を形成する際は既に形成された光電変換層を劣化させない。
第四に、入射光は封止層22を通じて光電変換層50に到達するので、光電変換層50で検知する波長の光に対して封止層22は透明でなくてはならない。
【0042】
封止層22は、単一材料からなる薄膜で構成することもできるが、多層構成にして各層に別々の機能を付与することで、封止層22全体の応力緩和、製造工程中の発塵等によるクラック、ピンホールなどの欠陥発生の抑制、材料開発の最適化が容易になることなどの効果が期待できる。例えば、封止層22は、水分子などの劣化因子の浸透を阻止する本来の目的を果たす層の上に、その層で達成することが難しい機能を持たせた「封止補助層」を積層した2層構成を形成することができる。3層以上の構成も可能だが、製造コストを勘案するとなるべく層数は少ない方が好ましい。
【0043】
応力緩和層24は、封止層22上に封止層22を覆うようにして形成されている。
封止層22の内部応力が引張応力で、その大きさが大きい場合など、その内部応力を緩和するために設けられるものである。例えば、スパッタ法などの物理的気相成膜(PVD)法で形成され、金属酸化物、金属窒化物、金属窒化酸化物などのセラミクスで構成される。
応力緩和層24により、封止層22全体の応力が緩和され、封止層22自体の信頼性が高まるのみならず、封止層22の応力による光電変換層50などの性能の悪化、および封止層22の応力により光電変換層50を破壊してしまう等の不良の発生を、顕著に抑制することができる。
【0044】
また、封止層22(封止層110)は、例えば、以下のようにして形成することができる。
有機光電変換材料は水分子などの劣化因子の存在で顕著にその性能が劣化してしまう。そのために、水分子を浸透させない緻密な金属酸化膜・金属窒化膜・金属窒化酸化膜等で光電変換層全体を被覆して封止することが必要である。従来から、酸化アルミニウム、酸化珪素、窒化珪素、窒化酸化珪素やそれらの積層構成、それらと有機高分子の積層構成などを封止層として、各種真空成膜技術で形成されている。従来の封止層は、基板表面の構造物、基板表面の微小欠陥、基板表面に付着したパーティクルなどによる段差において、薄膜の成長が困難なので(段差が影になるので)平坦部と比べて膜厚が顕著に薄くなる。このために段差部分が劣化因子の浸透する経路になってしまう。この段差を封止層22で完全に被覆するには、平坦部において1μm以上の膜厚になるように成膜して、封止層22全体を厚くする必要がある。
【0045】
画素寸法が2μm未満、特に1μm程度の撮像素子10において、カラーフィルタ28と光電変換層50との距離、すなわち、封止層22の膜厚が大きいと、封止層22内で入射光が回折または発散してしまい、混色が発生する。このために、画素寸法が1μm程度の撮像素子10は、封止層22全体の膜厚を減少させても素子性能が劣化しないような封止層材料、およびその製造方法が必要になる。
【0046】
原子層堆積(ALD)法は、CVD法の一種で、薄膜材料となる有機金属化合物分子、金属ハロゲン化物分子、金属水素化物分子の基板表面への吸着/反応と、それらに含まれる未反応基の分解を、交互に繰返して薄膜を形成する技術である。基板表面へ薄膜材料が到達する際は上記低分子の状態なので、低分子が入り込めるごくわずかな空間さえあれば薄膜が成長可能である。そのために、従来の薄膜形成法では困難であった段差部分を完全に被覆し(段差部分に成長した薄膜の厚さが平坦部分に成長した薄膜の厚さと同じ)、すなわち段差被覆性が非常に優れる。そのため、基板表面の構造物、基板表面の微小欠陥、基板表面に付着したパーティクルなどによる段差を完全に被覆できるので、そのような段差部分が光電変換材料の劣化因子の浸入経路にならない。封止層22の形成を原子層堆積(ALD)法で行なった場合は従来技術よりも効果的に必要な封止層膜厚を薄くすることが可能になる。
【0047】
原子層堆積法で封止層22を形成する場合は、上述の好ましい封止層に対応した材料を適宜選択できる。しかしながら、有機光電変換材料が劣化しないような、比較的に低温で薄膜成長が可能な材料に制限される。アルキルアルミニウムやハロゲン化アルミニウムを材料とした原子層堆積法によると、有機光電変換材料が劣化しない200℃未満で緻密な酸化アルミニウム薄膜を形成することができる。特にトリメチルアルミニウムを使用した場合は100℃程度でも酸化アルミニウム薄膜を形成することができるため好ましい。酸化珪素や酸化チタンも材料を適切に選択することで酸化アルミニウムと同様に200℃未満で、封止層22として、緻密な薄膜を形成することができるため好ましい。
【0048】
原子層堆積法により形成した薄膜は、段差被覆性、緻密性という観点からは比類なく良質な薄膜形成を低温で達成できる。しかし、薄膜がフォトリソグラフィ工程で使用する薬品で劣化してしまうことがある。例えば、原子層堆積法で成膜した酸化アルミニウム薄膜は非晶質なので、現像液や剥離液のようなアルカリ溶液で表面が侵食されてしまう。このような場合には、原子層堆積法で形成した酸化アルミニウム薄膜上に、耐薬品性に優れる薄膜が必要である。すなわち、封止層22を保護する機能層となる応力緩和層24(封止補助層)が必要である。
【0049】
特に、第一封止層(封止層22)上に、スパッタ法で形成された、酸化アルミニウム、酸化珪素、窒化珪素、窒化酸化珪素のいずれか1つを含む第二封止層(応力緩和層24)を有する構成とすることが好ましい。また、封止層22(第一封止層)は、膜厚が0.05μm以上、0.2μm以下であることが好ましい。さらには、封止層22(第一封止層)は、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化チタンのいずれかを含むことが好ましい。
【0050】
カラーフィルタ26は、応力緩和層24上の各画素電極16と対向する位置に形成されている。隔壁28は、応力緩和層24上のカラーフィルタ26同士の間に設けられており、カラーフィルタ26の光透過効率を向上させるためのものである。遮光層29は、封止層22上のカラーフィルタ26および隔壁28を設けた領域(有効画素領域)以外に形成されており、有効画素領域以外に形成された光電変換層50に光が入射することを防止するものである。
【0051】
保護層30は、カラーフィルタ26を後工程等から保護するためのものであり、カラーフィルタ26、隔壁28および遮光層29を覆うようにして形成されている。保護層30は、オーバーコート層ともいう。
撮像素子10においては、有機層18、対向電極20およびカラーフィルタ26が上方に設けられた画素電極16、1つが単位画素になる。
【0052】
保護層30は、アクリル系樹脂、ポリシロキサン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、弗素樹脂などのような高分子材料や、酸化珪素、窒化珪素のような無機材料を適宜使用できる。ポリスチレン系などの感光性樹脂を使用すると、フォトリソグラフィ法によって保護層30をパターニングできるので、ボンディング用パッド上の周辺遮光層、封止層、絶縁層などを開口する際のフォトレジストとして使用すること、保護層30自体をマイクロレンズとして加工することが容易になり好ましい。一方、保護層30を反射防止層として使用することも可能であり、カラーフィルタ26の隔壁として使用した各種低屈折率材料を成膜することも好ましい。また、後工程に対する保護層としての機能、反射防止層としての機能を追求するために、保護層30を上記材料を組合せた2層以上の構成にすることも可能である。
【0053】
なお、本実施形態においては、画素電極16は、絶縁層14の表面に形成された構成であるが、これに限定されるものではなく、絶縁層14の表面部に埋設された構成でもよい。また、第2の接続部46および対向電極電圧供給部42を1つ設ける構成としたが、複数であってもよい。例えば、対向電極20の両端部から対向電極20へ電圧を供給することにより、対向電極20での電圧降下を抑制することができる。第2の接続部46および対向電極電圧供給部42のセットの数は、素子のチップ面積を勘案して、適宜増減すればよい。
【0054】
次に、本発明の実施形態の撮像素子10の製造方法について説明する。
なお、本発明の撮像素子10の製造方法においては、撮像素子10を製造するための供給原料または製造途中の中間製造物が所定の経路で搬送され、搬送された供給原料または中間製造物に対して各種の方法で各種の層、膜が形成されるが、特に説明のない場合であっても、搬送経路および各種の層および膜の形成環境や空間は、図示しない真空排気手段等により、所定の真空度に保たれている場合がある。すなわち、特に説明のない場合であっても、供給原料または製造途中の中間製造物に対して真空下で各種の層および膜の形成、ならびに搬送が行われている場合がある。
【0055】
本発明の実施形態の撮像素子10の製造方法においては、まず、図3(a)に示すように、読出し回路40と対向電極電圧供給部42とが形成された基板12上に、第1の接続部44と第2の接続部46と、配線層48が設けられた絶縁層14が形成され、更に絶縁層14の表面14aに、各第1の接続部44に接続された画素電極16が形成された回路基板11(CMOS基板)を用意する。この場合、上述の如く、第1の接続部44と読出し回路40とが接続されており、第2の接続部46と対向電極電圧供給部42とが接続されている。画素電極16は、例えば、TiNで形成される。
【0056】
次に、電子ブロッキング層52の成膜室(図示せず)に所定の搬送経路で搬送し、図3(b)に示すように、第2の接続部46上を除き、かつ全ての画素電極16を覆うようにして、電子ブロッキング材料を、例えば、蒸着法を用いて所定の真空下で成膜し、電子ブロッキング層52を形成する。電子ブロッキング材料には、例えば、カルバゾール誘導体、更に好ましくはビフルオレン誘導体が用いられる。次工程の光電変換層50の形成工程に移行する。
【0057】
次に、光電変換層50の成膜室(図示せず)に所定の搬送経路で搬送し、図3(c)に示すように、電子ブロッキング層52の表面52aに、例えば、p型有機半導体とフラーレンまたはフラーレン誘導体とを、蒸着法を用いて所定の真空下で形成する。これにより、光電変換層50が形成されて、有機層18が形成される。図3(c)に示すように、撮像素子10を製造するための製造途中のものを中間体13(光電変換素子中間体)という。
電子ブロッキング層52と光電変換層50とは、同じ成膜室、または別々の成膜室内で形成することができる。別々の成膜室の場合、電子ブロッキング層52を形成した後、光電変換層50を形成する際の搬送も所定の真空下でなされる。
また、有機層形成工程は、電子ブロッキング層50の形成工程および光電変換層52の形成工程を含む。
【0058】
次に、中間体13を、次工程の対向電極20の形成工程に移行する間、すなわち、対向電極20の成膜室(図示せず)に所定の搬送経路で搬送する際、非真空下で搬送する。この場合、非真空下の環境の光量、すなわち、中間体13が曝される環境の照射光量は300lux・h以下とする。好ましくは、非真空下の環境の光量、すなわち、中間体13が曝される環境の照射光量は200lux・h以下であり、理想的には、非真空下の環境の光量(照射光量)はゼロである。
非真空下の環境の光量、すなわち、中間体13が曝される環境の照射光量は300lux・h以下とすることにより、撮像素子10の製造工程における劣化を抑制できる。
【0059】
次に、対向電極20の成膜室(図示せず)に所定の搬送経路で搬送した後、図4(a)に示すように、光電変換層18を覆い、かつ第2の接続部46上に形成されるパターンで対向電極20を、例えば、スパッタ法により所定の真空下で形成する。対向電極材料には、例えば、ITOが用いられる。次工程の封止層22の形成工程に移行する。
次に、封止層22の成膜室(図示せず)に所定の搬送経路で搬送し、図4(b)に示すように、対向電極20を覆うようにして、絶縁層14の表面14aに、封止層22を、例えば、原子層堆積(ALD)法により所定の真空下で形成する。封止材料には、例えば、Al(アルミナ)が用いられる。次工程の応力緩和層24の形成工程に移行する。
【0060】
次に、応力緩和層24の成膜室(図示せず)に所定の搬送経路で搬送し、図4(c)に示すように、封止層22の表面22aに、応力緩和層24を、例えば、スパッタ法により所定の真空下で形成する。応力緩和材料には、例えば、SiON(酸窒化珪素)が用いられる。
次に、応力緩和層24の表面24aに、カラーフィルタ26、隔壁28および遮光層29を、例えば、フォトリソグラフィー法を用いて形成する。カラーフィルタ26、隔壁28および遮光層29には、有機固体撮像素子に用いられる公知のものが用いられる。カラーフィルタ26、隔壁28および遮光層29の形成工程は、非真空下であってもよい。
次に、カラーフィルタ26、隔壁28および遮光層29を覆うようにして、保護膜30を、例えば、塗布法を用いて形成する。これにより、図2に示す撮像素子10を形成することができる。保護膜30には、有機固体撮像素子に用いられる公知のものが用いられる。保護膜30の形成工程は、非真空下であってもよい。
【0061】
撮像素子10の製造工程においても、光電変換層50の形成工程(有機層形成工程)と対向電極20の形成工程(第2の電極形成工程)との間で、中間体13を非真空下におく工程、すなわち、非真空期間を設ける。これにより、光電変換層50を形成するための成膜室から対向電極20を形成するための成膜室までに至る搬送経路を真空状態にする必要がなくなる。この結果、撮像素子10の製造設備を簡素化することができ、ひいては製造コストを削減することが可能となる。しかも、最終的に製造される撮像素子10は、性能劣化が抑制されたものである。
本実施形態においては、例えば、スパッタ法により所定の真空下で、画素電極材料にTiNを用いて画素電極16を形成する工程があってもよい。
なお、本実施形態において、有機層形成工程から第2の電極形成工程は真空下でなされるが、各形成工程に反応性スパッタ法を用いることもできる。反応性スパッタ法では、例えば、酸素ガスが成膜室内に導入されるが、この酸素ガス供給前の成膜室内の雰囲気が真空であれば、真空下でなされたとする。
【0062】
次に、有機層18を構成する光電変換層50および電子ブロックキング層52について詳細に説明する。
光電変換層50は、p型有機半導体とn型有機半導体とを含むものである。p型有機半導体とn型有機半導体を接合させてドナ−アクセプタ界面を形成することにより励起子解離効率を増加させることができる。このために、p型有機半導体とn型有機半導体を接合させた構成の光電変換層は高い光電変換効率を発現する。特に、p型有機半導体とn型有機半導体を混合した光電変換層は、接合界面が増大して光電変換効率が向上するので好ましい。
【0063】
本実施形態において、光電変換層50は、p型半導体およびn型半導体を含むバルクヘテロ接合構造の層を有することが好ましい。このように、バルクへテロ接合構造を有することにより、光電変換層50のキャリア拡散長が短いという欠点を補い、光電変換層50の光電変換効率を向上させることができる。なお、バルクへテロ接合構造については、特開2005−303266号公報において詳細に説明されている。
【0064】
光電変換層50の厚さは、10nm以上1000nm以下が好ましく、更に好ましくは50nm以上800nm以下であり、特に好ましくは100nm以上500nm以下である。光電変換層50の厚さを10nm以上とすることにより、好適な暗電流抑制効果が得られ、光電変換層50の厚さを1000nm以下とすることにより、好適な光電変換効率が得られる。
【0065】
p型有機半導体(化合物)は、ドナー性有機半導体(化合物)であり、主に正孔輸送性有機化合物に代表され、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。更に詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。したがって、ドナー性有機化合物は、電子供与性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物、ピラゾリン化合物、スチリルアミン化合物、ヒドラゾン化合物、トリフェニルメタン化合物、カルバゾール化合物、ポリシラン化合物、チオフェン化合物、フタロシアニン化合物、シアニン化合物、メロシアニン化合物、オキソノール化合物、ポリアミン化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピラゾール化合物、ポリアリーレン化合物、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体等を用いることができる。なお、これに限らず、上記したように、n型(アクセプター性)化合物として用いた有機化合物よりもイオン化ポテンシャルの小さい有機化合物であればドナー性有機半導体として用いてよい。
【0066】
n型有機半導体(化合物)は、アクセプター性有機半導体であり、主に電子輸送性有機化合物に代表され、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。更に詳しくは、n型有機半導体とは、2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。したがって、アクセプター性有機化合物は、電子受容性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有する5〜7員のヘテロ環化合物(例えば、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、イソキノリン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、トリアゾロピリダジン、トリアゾロピリミジン、テトラザインデン、オキサジアゾール、イミダゾピリジン、ピラリジン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、ジベンズアゼピン、トリベンズアゼピン等)、ポリアリーレン化合物、フルオレン化合物、シクロペンタジエン化合物、シリル化合物、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体などが挙げられる。なお、これに限らず、上記したように、p型(ドナー性)化合物として用いた有機化合物よりも電子親和力の大きな有機化合物であればアクセプター性有機半導体として用いてよい。
【0067】
p型有機半導体、またはn型有機半導体としては、いかなる有機色素を用いても良いが、好ましくは、シアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素(ゼロメチンメロシアニン(シンプルメロシアニン)を含む)、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素、クマリン色素、アリーリデン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、スピロ化合物、メタロセン色素、フルオレノン色素、フルギド色素、ペリレン色素、ペリノン色素、フェナジン色素、フェノチアジン色素、キノン色素、ジフェニルメタン色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キナクリドン色素、キノフタロン色素、フェノキサジン色素、フタロペリレン色素、ジケトピロロピロール色素、ジオキサン色素、ポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、金属錯体色素、縮合芳香族炭素環系色素(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)が挙げられる。
【0068】
n型有機半導体として、電子輸送性に優れた、フラーレンまたはフラーレン誘導体を用いることが特に好ましい。フラーレンとは、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC80、フラーレンC82、フラーレンC84、フラーレンC90、フラーレンC96、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブを表し、フラーレン誘導体とはこれらに換基が付加された化合物のことを表す。
【0069】
フラーレン誘導体の置換基として好ましくは、アルキル基、アリール基、または複素環基である。アルキル基として更に好ましくは、炭素数1〜12までのアルキル基であり、アリール基、および複素環基として好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、ベンズイミダゾール環、イミダゾピリジン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、またはフェナジン環であり、更に好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピリジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、またはチアゾール環であり、特に好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、またはピリジン環である。これらは更に置換基を有していてもよく、その置換基は可能な限り結合して環を形成してもよい。なお、複数の置換基を有しても良く、それらは同一であっても異なっていても良い。また、複数の置換基は可能な限り結合して環を形成してもよい。
【0070】
光電変換層がフラーレンまたはフラーレン誘導体を含むことで、フラーレン分子またはフラーレン誘導体分子を経由して、光電変換により発生した電子を画素電極16または対向電極20まで早く輸送できる。フラーレン分子またはフラーレン誘導体分子が連なった状態になって電子の経路が形成されていると、電子輸送性が向上して光電変換素子の高速応答性が実現可能となる。このためにはフラーレンまたはフラーレン誘導体が光電変換層に40%(体積比)以上含まれていることが好ましい。もっとも、フラーレンまたはフラーレン誘導体が多すぎるとp型有機半導体が少なくなって接合界面が小さくなり励起子解離効率が低下してしまう。
【0071】
光電変換層50において、フラーレンまたはフラーレン誘導体と共に混合されるp型有機半導体として、特許第4213832号公報等に記載されたトリアリールアミン化合物を用いると光電変換素子の高SN比が発現可能になり、特に好ましい。光電変換層内のフラーレンまたはフラーレン誘導体の比率が大きすぎるとトリアリールアミン化合物が少なくなって入射光の吸収量が低下する。これにより光電変換効率が減少するので、光電変換層に含まれるフラーレンまたはフラーレン誘導体は85%(体積比)以下の組成であることが好ましい。
【0072】
光電変換層50に用いられるp型有機半導体材料は、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0073】
【化2】

【0074】
上記一般式(1)中、Zは少なくとも2つの炭素原子を含む環であって、5員環、6員環、または、5員環および6員環の少なくともいずれかを含む縮合環を表す。L、L、およびLはそれぞれ独立に無置換メチン基、または置換メチン基を表す。Dは原子群を表す。nは0以上の整数を表す。
【0075】
は少なくとも2つの炭素原子を含む環であって、5員環、6員環、または、5員環および6員環の少なくともいずれかを含む縮合環を表す。5員環、6員環、または、5員環および6員環の少なくともいずれかを含む縮合環としては、通常メロシアニン色素で酸性核として用いられるものが好ましく、その具体例としては例えば以下のものが挙げられる。
【0076】
(a)1,3−ジカルボニル核:例えば1,3−インダンジオン核、1,3−シクロヘキサンジオン、5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン等。
(b)ピラゾリノン核:例えば1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−(2−ベンゾチアゾイル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン等。
(c)イソオキサゾリノン核:例えば3−フェニル−2−イソオキサゾリン−5−オン、3−メチル−2−イソオキサゾリン−5−オン等。
(d)オキシインドール核:例えば1−アルキル−2,3−ジヒドロ−2−オキシインドール等。
(e)2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核:例えばバルビツル酸または2−チオバルビツル酸およびその誘導体等。誘導体としては例えば1−メチル、1−エチル等の1−アルキル体、1,3−ジメチル、1,3−ジエチル、1,3−ジブチル等の1,3−ジアルキル体、1,3−ジフェニル、1,3−ジ(p−クロロフェニル)、1,3−ジ(p−エトキシカルボニルフェニル)等の1,3−ジアリール体、1−エチル−3−フェニル等の1−アルキル−1−アリール体、1,3−ジ(2―ピリジル)等の1,3位ジヘテロ環置換体等が挙げられる。
(f)2−チオ−2,4−チアゾリジンジオン核:例えばローダニンおよびその誘導体等。誘導体としては例えば3−メチルローダニン、3−エチルローダニン、3−アリルローダニン等の3−アルキルローダニン、3−フェニルローダニン等の3−アリールローダニン、3−(2−ピリジル)ローダニン等の3位ヘテロ環置換ローダニン等が挙げられる。
【0077】
(g)2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン(2−チオ−2,4−(3H,5H)−オキサゾールジオン核:例えば3−エチル−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン等。
(h)チアナフテノン核:例えば3(2H)−チアナフテノン−1,1−ジオキサイド等。
(i)2−チオ−2,5−チアゾリジンジオン核:例えば3−エチル−2−チオ−2,5−チアゾリジンジオン等。
(j)2,4−チアゾリジンジオン核:例えば2,4−チアゾリジンジオン、3−エチル−2,4−チアゾリジンジオン、3−フェニル−2,4−チアゾリジンジオン等。
(k)チアゾリン−4−オン核:例えば4−チアゾリノン、2−エチル−4−チアゾリノン等。
(l)2,4−イミダゾリジンジオン(ヒダントイン)核:例えば2,4−イミダゾリジンジオン、3−エチル−2,4−イミダゾリジンジオン等。
(m)2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン(2−チオヒダントイン)核:例えば2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン、3−エチル−2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン等。
(n)イミダゾリン−5−オン核:例えば2−プロピルメルカプト−2−イミダゾリン−5−オン等。
(o)3,5−ピラゾリジンジオン核:例えば1,2−ジフェニル−3,5−ピラゾリジンジオン、1,2−ジメチル−3,5−ピラゾリジンジオン等。
(p)ベンゾチオフェン−3−オン核:例えばベンゾチオフェン−3−オン、オキソベンゾチオフェンー3−オン、ジオキソベンゾチオフェンー3−オン等。
(q)インダノン核:例えば1−インダノン、3−フェニル−1−インダノン、3−メチル−1−インダノン、3,3−ジフェニル−1−インダノン、3,3−ジメチル−1−インダノン等。
【0078】
で形成される環として好ましくは、1,3−ジカルボニル核、ピラゾリノン核、2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核(チオケトン体も含み、例えばバルビツル酸核、2−チオバルビツール酸核)、2−チオ−2,4−チアゾリジンジオン核、2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン核、2−チオ−2,5−チアゾリジンジオン核、2,4−チアゾリジンジオン核、2,4−イミダゾリジンジオン核、2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン核、2−イミダゾリン−5−オン核、3,5−ピラゾリジンジオン核、ベンゾチオフェン−3−オン核、インダノン核であり、より好ましくは1,3−ジカルボニル核、2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核(チオケトン体も含み、例えばバルビツル酸核、2−チオバルビツール酸核)、3,5−ピラゾリジンジオン核、ベンゾチオフェン−3−オン核、インダノン核であり、更に好ましくは1,3−ジカルボニル核、2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核(チオケトン体も含み、例えばバルビツル酸核、2−チオバルビツール酸核)であり、特に好ましくは1,3−インダンジオン核、バルビツル酸核、2−チオバルビツール酸核およびそれらの誘導体である。
【0079】
、L、およびLはそれぞれ独立に、無置換メチン基、または置換メチン基を表す。置換メチン基同士が結合して環(例、6員環、例えば、ベンゼン環)を形成してもよい。置換メチン基の置換基は置換基Wが挙げられるが、L、L、Lは全てが無置換メチン基である場合が好ましい。
〜Lは互いに連結して環を形成しても良く、形成する環として好ましくはシクロヘキセン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、チオフェン環等が挙げられる。
【0080】
nは0以上の整数を表し、好ましくは0以上3以下の整数を表し、より好ましくは0である。nを増大させた場合、吸収波長域が長波長にする事ができるか、熱による分解温度が低くなる。可視域に適切な吸収を有し、かつ蒸着成膜時の熱分解を抑制する点でn=0が好ましい。
【0081】
は原子群を表す。Dは−NR(R)を含む基であることが好ましく−NR(R)が置換したアリーレン基を表す場合が更に好ましい。R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表す。
【0082】
が表すアリーレン基としては、好ましくは炭素数6〜30のアリーレン基であり、より好ましくは炭素数6〜18のアリーレン基である。アリーレン基は、後述の置換基Wを有していてもよく、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよい炭素数6〜18のアリーレン基である。例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、ピレニレン基、フェナントレニレン基、メチルフェニレン基、ジメチルフェニレン基等が挙げられ、フェニレン基またはナフチレン基が好ましい。
【0083】
、Rで表される置換基としては後述の置換基Wが挙げられ、好ましくは、脂肪族炭化水素基(好ましくは置換されてよいアルキル基、アルケニル基)、アリール基(好ましくは置換されてよいフェニル基)、またはヘテロ環基である。
【0084】
、Rが表すアリール基としては、それぞれ独立に、好ましくは炭素数6〜30のアリール基であり、より好ましくは炭素数6〜18のアリール基である。アリール基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜18のアリール基を有していてもよい炭素数6〜18のアリール基である。例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ピレニル基、フェナントレニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ビフェニル基等が挙げられ、フェニル基またはナフチル基が好ましい。
【0085】
、Rが表すヘテロ環基としては、それぞれ独立に、好ましくは炭素数3〜30のヘテロ環基であり、より好ましくは炭素数3〜18のヘテロ環基である。ヘテロ環基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜18のアリール基を有していてもよい炭素数3〜18のヘテロ環基である。また、R、Rが表すヘテロ環基は縮環構造であることが好ましく、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環からから選ばれる環の組み合わせ(同一でも良い)の縮環構造が好ましく、キノリン環、イソキノリン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、チエノチオフェン環、ビチエノベンゼン環、ビチエノチオフェン環が好ましい。
【0086】
、R、およびRが表すアリーレン基およびアリール基はベンゼン環または縮環構造であることが好ましく、ベンゼン環を含む縮環構造であることがより好ましく、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環、フェナントレン環を挙げることができ、ベンゼン環、ナフタレン環またはアントラセン環がより好ましくは、ベンゼン環またはナフタレン環が更に好ましい。
【0087】
置換基Wとしてはハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基といっても良い)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールおよびヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH))、ホスファト基(−OPO(OH))、スルファト基(−OSOH)、その他の公知の置換基が挙げられる。
【0088】
、Rが置換基(好ましくはアルキル基、アルケニル基)を表す場合、それらの置換基は、−NR(R)が置換したアリール基の芳香環(好ましくはベンゼン環)骨格の水素原子、または置換基と結合して環(好ましくは6員環)を形成してもよい。
、Rは互いに置換基同士が結合して環(好ましくは5員または6員環、より好ましくは6員環)を形成してもよく、また、R、RはそれぞれがL(L、L、Lのいずれかを表す)中の置換基と結合して環(好ましくは5員または6員環、より好ましくは6員環)を形成してもよい。
【0089】
一般式(1)で表される化合物は、特開2000−297068号公報に記載の化合物であり、前記公報に記載のない化合物も、前記公報に記載の合成方法に準じて製造することができる。一般式(1)で表される化合物は一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0090】
【化3】

【0091】
一般式(2)中、Z、L21、L22、L23、およびnは一般式(1)におけるZ、L、L、L、およびnと同義であり、その好ましい例も同様である。D21は置換または無置換のアリーレン基を表す。D22、およびD23はそれぞれ独立に、置換若しくは無置換のアリール基または置換若しくは無置換のヘテロ環基を表す。
【0092】
21が表すアリーレン基としては、Dが表すアリーレン環基と同義であり、その好ましい例も同様である。D22、およびD23が表すアリール基としては、それぞれ独立に、R、およびRが表すヘテロ環基と同義であり、その好ましい例も同様である。
【0093】
以下に一般式(1)で表される化合物の好ましい具体例を、一般式(3)を用いて示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0094】
【化4】

【0095】
一般式(3)中、Zは以下に示す化5におけるA−1〜A−12のいずれかを表す。L31がメチレンを表し、nが0を表す。D31がB−1〜B−9のいずれかであり、D32、およびD33がC−1〜C−16のいずれかを表す。Zとしては、A−2が好ましく、D32、およびD33はC−1、C−2、C−15、C−16から選択されることが好ましく、D31はB−1またはB−9であることが好ましい。
【0096】
【化5】

【0097】
特に好ましいp型有機材料としては、染料若しくは5個以上の縮環構造を持たない材料(縮環構造を0〜4個、好ましは1〜3個有する材料)が挙げられる。有機薄膜太陽電池で一般的に使用されている顔料系p型材料を用いると、pn界面での暗時電流が増大しやすい傾向になること、結晶性の粒界でのトラップにより光応答が遅くなりがちであることから、撮像素子用として用いることが難しい。このため、結晶化しにくい染料系のp型材料、若しくは5個以上の縮環構造を持たない材料が撮像素子用に好ましく用いることができる。
【0098】
一般式(1)で表される化合物の更に好ましい具体例は、一般式(3)における以下に示す置換基、連結基および部分構造の組み合わせであるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0099】
【化6】

【0100】
なお、上記化6中のA−1〜A−12、B−1〜B−9、およびC−1〜C−16は上記化5に示したものと同義である。以下に、一般式(1)で表される化合物の特に好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0101】
【化7】

【0102】
(分子量)
一般式(1)で表される化合物は、成膜適性の観点から、分子量が300以上1500以下であることが好ましく、350以上1200以下であることがより好ましく、400以上900以下であることが更に好ましい。分子量が小さすぎる場合では、成膜した光電変換膜の膜厚が揮発により減少してしまい、逆に分子量が大きすぎる場合では蒸着ができず、光電変換素子を作製できない。
【0103】
(融点)
一般式(1)で表される化合物は、蒸着安定性の観点から、融点が200℃以上であることが好ましく、220℃以上がより好ましく、240℃以上が更に好ましい。融点が低いと蒸着前に融解してしまい、安定に成膜できないことに加え、化合物の分解物が多くなるため、光電変換性能が劣化する。
【0104】
(吸収スペクトル)
一般式(1)で表される化合物の吸収スペクトルのピーク波長は、可視領域の光を幅広く吸収するという観点から400nm以上700nm以下であることが好ましく、480nm以上700nm以下がより好ましく、510nm以上680nm以下であることが更に好ましい。
【0105】
(ピーク波長のモル吸光係数)
一般式(1)で表される化合物は、光を効率よく利用する観点から、モル吸光係数は高ければ高いほどよい。吸収スペクトル(クロロホルム溶液)が、波長400nmから700nmまでの可視領域において、モル吸光係数は20000M−1cm−1以上が好ましく、30000M−1cm−1以上がより好ましく、40000M−1cm−1以上が更に好ましい。
【0106】
電子ブロッキング層52には、電子供与性有機材料を用いることができる。具体的には、低分子材料では、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)や4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等の芳香族ジアミン化合物、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、ポリアリールアルカン、ブタジエン、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、ポルフィン、テトラフェニルポルフィン銅、フタロシアニン、銅フタロシアニン、チタニウムフタロシアニンオキサイド等のポリフィリン化合物、トリアゾール誘導体、オキサジザゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アニールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体、カルバゾール誘導体、ビフルオレン誘導体などを用いることができ、高分子材料では、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、インドール、ピレン、ピロール、ピコリン、チオフェン、アセチレン、ジアセチレン等の重合体や、その誘導体を用いることができる。電子供与性化合物でなくとも、充分な正孔輸送性を有する化合物であれば用いることは可能である。
【0107】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明の光電変換素子の製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
【実施例】
【0108】
以下、本発明において、非真空下で光照射量300lux・h以下とすることによる効果を具体的に説明する。本実施例においては、吸収波長の異なる化合物1(500〜600nm)、化合物2(600〜700nm)および化合物3(400〜500nm)を用いて、下記表1に示す実施例1〜6、比較例1〜8、および基準例1〜3の撮像素子を作製し、本発明の効果を確認した。
なお、下記表1に示す非真空下とは、上述のように、酸素および水がいずれも1000ppm以上の環境のことである。下記表1に示す照射光量は、光源にWランプ蛍光灯を用い、Wランプ蛍光灯下にて照度計を用いて測定した値である。
【0109】
本実施例では、本発明の効果を確認するために、実施例1〜6、比較例1〜8の相対感度を測定した。その結果を下記表1に示す。
なお、基準例1は、実施例1、2、比較例1〜4と光電変換層の化合物が同じであり、これらの基準とした。また、基準例2は、実施例3、4、比較例5、6と光電変換層の化合物が同じであり、これらの基準とした。また、基準例3は、実施例5、6、比較例7、8と光電変換層の化合物が同じであり、これらの基準とした。
下記表1に示す相対感度は、基準例1、基準例2、基準例3の数値をそれぞれ100としたものである。
【0110】
相対感度は、各実施例1〜6、比較例1〜8の撮像素子に、2×10V/cmの電場で印加したときの最大感度波長での外部量子効率の値を測定し、この外部量子効率の値を、各基準となる基準例1〜3の外部量子効率の値で除して得られたものである。すなわち、相対感度は、実施例1〜6、比較例1〜8の外部量子効率の値/各基準となる基準例1〜3の外部量子効率の値である。
なお、外部量子効率の値は、量子効率測定装置(IPCE)を用いて、作製した実施例1〜6、比較例1〜8の各の撮像素子の対向電極に2×10V/cmの外部電界を与えた場合に得られる電流値から算出された値である。
以下、実施例1〜6、比較例1〜8および基準例1〜3の撮像素子について説明する。
【0111】
(実施例1)
まず、画素電極が形成されているCMOS基板を有機蒸着室に移動し、CMOS基板を基板ホルダーに取り付け、室内を1×10−4Pa以下に減圧した。その後、基板ホルダーを回転させながら、画素電極上に、抵抗加熱蒸着法により、化合物4を電子ブロッキング材料として、蒸着速度1.0〜1.2Å/Secで厚み1000Åとなるように蒸着し、電子ブロッキング層を形成した。
次に、化合物1とフラーレンC60(下記表1ではC60と表記)を、それぞれ蒸着速度1.6〜1.8Å/Sec、2.5〜2.8Å/Secで厚さが4000Åとなるように蒸着して光電変換層を形成した。これにより、図3(c)に示す中間体13に相当するものが得られる。
次に、中間体を非真空下、300lux・hの光照射下においた後、この中間体をスパッタ室に搬送し、スパッタ室内を所定の真空度にした後、光電変換層上に、ITOをRFマグネトロンスパッタ法により厚み100Åとなるようにスパッタし、対向電極を形成した。その後、ALD室へ搬送し、ALD室内を所定の真空度にした後、Al(アルミナ)膜を、ALD法により厚み2000Åとなるように成膜し、封止層(保護膜)を形成した。その後、スパッタ室に搬送し、スパッタ室内を所定の真空度にした後、SiON膜をRFマグネトロンスパッタ法により厚み1000Åとなるように成膜し、応力緩和層を形成した。
なお、光電変換層を形成した後、対向電極を形成するスパッタ室に搬送する間以外は、各工程間は所定の真空度に保たれていた。
【0112】
(実施例2)
非真空下の光照射量を200lux・hに変更した以外は、実施例1と同様にして撮像素子を作製した。
(実施例3)
化合物1を化合物2に変更した以外は、実施例1と同様にして撮像素子を作製した。
(実施例4)
化合物1を化合物2に変更し、非真空下の光照射量を200lux・hに変更した以外は、実施例1と同様にして撮像素子を作製した。
(実施例5)
化合物1を化合物3に変更した以外は、実施例1と同様にして撮像素子を作製した。
(実施例6)
化合物1を化合物3に変更し、非真空下の光照射量を200lux・hに変更した以外は、実施例1と同様にして撮像素子を作製した。
【0113】
(比較例1)
非真空下の光照射量を500lux・hに変更した以外は、実施例1と同様にして撮像素子を作製した。
(比較例2)
非真空下の光照射量を1250lux・hに変更した以外は、実施例1と同様にして撮像素子を作製した。
(比較例3)
非真空下の光照射量を2500lux・hに変更した以外は、実施例1と同様にして撮像素子を作製した。
(比較例4)
非真空下の光照射量を5000lux・hに変更した以外は、実施例1と同様にして撮像素子を作製した。
(比較例5)
化合物1を化合物2に変更した以外は、比較例1と同様にして撮像素子を作製した。
(比較例6)
化合物1を化合物2に変更し、非真空下の光照射量を1250lux・hに変更した以外は、比較例1と同様にして撮像素子を作製した。
(比較例7)
化合物1を化合物3に変更した以外は、比較例1と同様にして撮像素子を作製した。
(比較例8)
化合物1を化合物3に変更し、非真空下の光照射量を1250lux・hに変更した以外は、比較例1と同様にして撮像素子を作製した。
【0114】
(基準例1)
光電変換層を形成した後、対向電極を形成するスパッタ室に搬送する間の環境をNガス(窒素ガス)下とし、かつ光照射量を5000lux・hに変更した以外は、実施例1と同様にして撮像素子を作製した。
(基準例2)
化合物1を化合物2に変更した以外は、基準例1と同様にして撮像素子を作製した。
(基準例3)
化合物1を化合物3に変更した以外は、基準例1と同様にして撮像素子を作製した。
【0115】
【化8】

【0116】
【化9】

【0117】
【化10】

【0118】
【化11】

【0119】
【表1】

【0120】
上記表1に示すように、実施例1、2と比較例1〜4との比較から、非真空下では光照射量300lux・h以下で感度の劣化が見られなくなり、200lux・hでは感度の向上が見られた。
また、実施例3、4と比較例5、6との比較から吸収波長の異なる化合物2でも、化合物1と同様の結果が得られた。
実施例5、6と比較例6、7との比較から吸収波長の異なる化合物3でも、化合物1と同様の結果が得られた。
また、基準例1〜3から、窒素ガス下では光照射量、化合物の種類(吸収波長)に依存することなく感度の劣化が見られない。
【符号の説明】
【0121】
10 撮像素子
12 基板
14 絶縁層
16 画素電極
18、106 有機層
20 対向電極
22 封止層
24 応力緩和層
26 カラーフィルタ
30 保護層
40 読出し回路
42 対向電極電圧供給部
44 第1の接続部
46 第2の接続部
50 光電変換層
52 電子ブロッキング層
100 光電変換素子
102 基板
104 第1の電極
108 第2の電極
110 封止層
112 光電変換層
114 電子ブロッキング層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、前記第1の電極上方に形成された第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に形成された、受光した光に応じて電荷を生成する光電変換層を有する有機層と、前記第1の電極、前記第2の電極および前記有機層を封止する封止層とを有する光電変換素子の製造方法であって、
前記第1の電極の上方に前記有機層を形成する有機層形成工程と、前記有機層の上方に前記第2の電極を形成する第2の電極形成工程と、前記第2の電極の上方に前記封止層を形成する封止層形成工程とを有し、
前記有機層形成工程から前記封止層形成工程の各工程は、真空下で行なわれ、
さらに、前記有機層形成工程と前記第2の電極形成工程との間に、製造途中の光電変換素子中間体を300lux・h以下の照射光量の非真空下に置く工程を有することを特徴とする光電変換素子の製造方法。
【請求項2】
前記有機層形成工程の前に、基板の上方に前記第1の電極を形成する第1の電極形成工程を有する請求項1に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項3】
前記有機層形成工程は、前記第1の電極上に電子ブロッキング層を形成する工程と、前記電子ブロッキング層上に前記光電変換層を形成する工程とを有する請求項1または2に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項4】
前記非真空下に置く工程は、照射光量が200lux・h以下でなされる請求項1〜3のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項5】
前記光電変換層は、p型有機半導体とn型有機半導体のバルクへテロ構造体を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項6】
前記p型有機半導体は、一般式(1)で表される化合物を含む請求項5に記載の光電変換素子の製造方法。
【化1】

一般式(1)中、Zは少なくとも2つの炭素原子を含む環であって、5員環、6員環、または5員環および6員環の少なくともいずれかを含む縮合環を表す。L、L、およびLはそれぞれ独立に無置換メチン基、または置換メチン基を表す。Dは原子群を表す。nは0以上の整数を表す。
【請求項7】
前記n型有機半導体は、フラーレンまたはフラーレン誘導体を含む請求項5または6に記載の光電変換素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−55248(P2013−55248A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193070(P2011−193070)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】