説明

光電変換素子を利用した染料感応太陽電池

【課題】光電変換素子を利用した染料感応太陽電池を提供する。
【解決手段】半導体電極110、半導体電極110に対向するように配置された対向電極120、半導体電極110及び対向電極120の間に介在し、染料が吸着されている酸化物半導体層130、半導体電極110及び対向電極120の間に充填された電解質溶液140、半導体電極110及び対向電極120間を所定間隔に離隔するように区画し、単位セル142を形成するスペーサ160、隣接する一対の単位セル142間に少なくとも部分的にパターニングされた金属配線150を含む染料感応太陽電池である。これにより、励起電子の電極への移動速度が速くなり、染料感応太陽電池の大面積化及びモジュール時に起こる効率低下現象が改善される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池に係り、さらに詳細にはナノ粒子の遷移金属酸化物の半導体電極を含む染料感応太陽電池に関わり、特にモジュールを構成する単位セル間の空間に金属配線が位置し、励起電子の電極への移動速度を速め、大面積モジュール製造時に発生する光電変換効率の低下現象を画期的に改善し、光電流が増加する染料感応太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
現在まで知られている従来の染料感応太陽電池は、一般的にグラツェルセル(Graetzel cell)と呼ばれる感光性染料分子と、ナノ粒子の酸化チタンとからなる酸化物半導体を利用した光電気学的な太陽電池であり、既存のシリコン太陽電池に比べて製造コストが安く、かつ透明な電極により建物外壁ガラス窓やガラス温室などへの応用が可能であり、多くの研究がなされている。
【0003】
図1は、かかる染料感応太陽電池を概略的に図示したものであり、図面を参照すれば、第1及び第2電極1,2が備わっており、その間に染料5が吸着された多孔質膜3と電解質4とが介在されている。図1で、染料感応太陽電池内に太陽光熱が入射すれば、光量子は、まず染料5に吸収され、励起状態になった染料5が多孔質膜3をなす遷移金属酸化物の伝導帯に電子を送る。ここで、電子は、第1電極1に移動した後、外部回路に流れて電気エネルギーを伝達し、エネルギーを伝達しただけ低いエネルギー状態になって第2電極2に移動する。染料5は、多孔質膜3の遷移金属酸化物に伝達した電子の数に対応して電解質4から電子の供給を受けて元の状態に戻るようになるが、電解質4は、酸化還元により第2電極2から電子を受けて染料5に伝達する役割を担当する。
【0004】
かかる太陽電池は、製造コストが低廉であり、かつ親環境的であるという利点があるが、多孔質膜が塗布された第1電極と電解質との界面での電子とホールとの再結合によってエネルギー変換効率が低く、実際に適用するのに制限があり、これを解決するために、図2のような構造の太陽電池が創案された。
【0005】
図2を参照すれば、2つの板状電極である第1電極10及び第2電極20が互いに対向したサンドイッチ構造が開示されているが、第1電極10の一の面には、ナノ粒子からなる多孔質膜30が塗布されており、多孔質膜30のナノ粒子表面には、可視光を吸収して電子が励起される光感応染料が吸着されている。第1電極10及び第2電極20は、支持台60により接合されて固定され、それらの間の空間は、酸化還元用電解質40で充填されている。
【0006】
第1電極10としては、透明なプラスチック基板またはガラス基板11上に、スズ含有酸化インジウム(ITO)などを含む伝導性フィルム12がコーティングされたものを使用する。第1電極10の一の面には、少なくとも二層で備わった緩衝層50が形成される。緩衝層50は、その上に形成される多孔質膜30の伝導帯エネルギー準位以下の伝導帯エネルギー準位を有する物質からなる第1層51と、第1層51の伝導帯エネルギー準位以上の伝導帯エネルギー準位を有する第2層52とを備える。それら第1層51と第2層52は、多孔質膜30のナノ粒子よりさらに小径な粒子を有し、かつ組織が稠密である。第1層51により、第1電極10と電解質40との界面特性を改善させ、界面でのホール・電子再結合を減らして電子集積特性を向上させる。
【0007】
第2電極20としては、基板21上に、ITOなどを含む第1の伝導性フィルム22及びPtまたは貴金属物質を含む第2の伝導性フィルム23が順番にコーティングされたものを使用する。
【0008】
前記のような構造の従来の染料感応太陽電池において、太陽電池の光電変換効率は、太陽光の吸収により生成された電子の量に比例するので、効率を高めるためには、Pt電極の反射率を上げるか、または数ミクロンサイズの半導体酸化物の光散乱子を製造して太陽光の吸収を増加させるか、または、染料の吸着量を上げて電子の生成量を増やす方法、生成された励起電子が再び電子−ホール再結合が起きて消滅することを防ぐ方法、ならびに励起電子の移動速度を上げるための各界面及び電極の表面抵抗改善などの方法が考慮された。しかし、大面積に製造したり、またはモジュールで製造したりする時に、低くなる光電変換効率により、実際の応用には多くの制限があり、大型化するのにも多くの問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、染料感応太陽電池の問題点のうちの一つである大面積化及びモジュール製造時に、透明電極の線抵抗上昇による励起電子の移動速度の減少によって光電変換効率が急激に落ちるという短所を解決するために、酸化物半導体電極用の透明電極上に金属配線を設置し、電子移動速度を速めて効率低下現象を改善するところにその目的がある。
【0010】
特に、金属配線をモジュール単位セルと直接接触せずに、スペーサ部分に配置することにより、電解液および酸化物半導体層との直接接触を避けて短絡を防止し、電解液による腐蝕現象をなくして既存の金属配線層で要求される付加的な遮蔽層の不要な染料感応太陽電池を提供するところに発明の目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するための本発明による光電変換素子を利用した染料感応太陽電池は、半導体電極と、前記半導体電極に対向するように配置された対向電極と、前記半導体電極及び前記対向電極の間に介在し、染料が吸着されている酸化物半導体層と、前記半導体電極及び前記対向電極の間に充填された電解質溶液と、前記半導体電極及び前記対向電極間を所定間隔に離隔するように区画し、単位セルを形成するスペーサと、隣接する一対の前記単位セル間に少なくとも部分的にパターニングされた金属配線と、を含むことを特徴とする。
【0012】
ここで、前記金属配線は、前記隣接する一対の単位セル間全体にパターニングされることも可能である。
【0013】
前記半導体電極は、半導体電極用基板と、当該半導体電極用基板上に形成される半導体電極用の透明導電性薄膜と、を含む。
【0014】
また、前記対向電極は、対向電極用基板、当該対向電極用基板上に形成される対向電極用の透明導電性薄膜、及び当該対向電極用の透明導電性薄膜上に形成される導電性薄膜層を含む。
【0015】
前記導電性薄膜層は、Ptを含むことが望ましい。
【0016】
一方、前記金属配線は、Au、Ag、Al、Pt、Cu、Fe、Ni、Ti、及びZrからなる群より選択される1または2以上の金属の合金を含むことが望ましい。
【0017】
前記金属配線は、前記金属のペーストを、スクリーン印刷法、印刷法、及びディスペンサ法のうち、1つの方法でパターニングして形成可能である。
【0018】
前記金属配線は、前記金属のコロイド溶液を、スクリーン印刷法、印刷法、及びディスペンサ法のうち、1つの方法でパターニングして形成可能である。
【0019】
ここで、前記金属配線は、化学蒸着法、スパッタリング蒸着法、及び電着法のうち、1つの方法とリソグラフィ工程とを組み合わせ、前記金属の薄膜をエッチングして形成可能である。
【0020】
前記金属配線は、前記スペーサにより前記電解質溶液と隔離されている。
【0021】
前記金属配線の幅は、前記スペーサの幅より小さいことが望ましい。
【0022】
特に、前記金属配線の厚さは、0.1μmないし30μmであることが望ましい。
【0023】
前記単位セルは、正方形であることが望ましい。
【0024】
前記単位セルの一辺の長さは、0.1mmないし30mmでありうる。
【0025】
前記隣接する一対の単位セルの数は、1以上である。
【0026】
かかる本発明によれば、太陽電池の電極の光効率向上を期待することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、染料感応太陽電池の酸化物半導体電極として使われた透明電極上に、金属配線層を追加設置することによって、染料から生成された励起電子の電極への移動速度を速め、染料感応太陽電池の大面積化及びモジュール化時に起こる効率低下現象を改善し、既存の配線層のない場合に比べて35%の効率向上をもたらし、かつ既存の金属配線層と異なり、対向電極との短絡防止及び電解質充填のためにスペーサ内部(下部)に配置することによって、電解液もしくは酸化物層と金属配線との短絡現象防止、及び電解液による金属配線の腐蝕を防止する保護膜層または遮蔽層と呼ばれる特別なコーティング層を製造する工程を減らすことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、添付された図面を参照しつつ、本発明による光電変換素子を利用した染料感応太陽電池の望ましい実施の形態を詳細に説明する。
【0029】
図3は、本発明の望ましい実施の形態によって製造された染料感応太陽電池を概略的に図示した断面図であり、図4は、図3の太陽電池の概略的な斜視図である。
【0030】
図3及び図4に示されたように、本発明の望ましい実施の形態による光電変換素子を利用した染料感応太陽電池は、2つの板状電極である半導体電極110と対向電極120とが互いに対向したサンドイッチ構造であり、半導体電極110と対向電極120との間には、染料が吸着されている酸化物半導体層130が介在する。特に、酸化物半導体層130は、半導体電極110の一の面に形成される。
【0031】
半導体電極110及び対向電極120の間には、酸化還元用の電解質溶液140が充填される。半導体電極110及び対向電極120の間には、その空間を所定間隔に離隔するように区画する隔壁の役割を果たして、単位セル142を形成するスペーサ160が形成される。また、隣接する一対の単位セル142の間、すなわち単位セルと単位セルとが区画される空間には、金属配線150がパターニングされる。
【0032】
半導体電極110は、半導体電極用基板111と、その一の面に形成された半導体電極用の透明導電性薄膜112とを含む。基板材料は、透光性が良好であって太陽電池の負極として使用可能であるガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、及びポリカーボネート(PC)などが使用可能である。半導体電極用基板111の一の面にコーティングされる半導体電極用の透明導電性薄膜112は、ITOまたはフッ素含有酸化スズ(FTO)などの透明伝導性物質が使われることが望ましい。従って、図3に示されたように、太陽光は、透明な半導体電極110に入射して透過することが可能である。
【0033】
一方、前記のような構造の半導体電極110に対向して位置する対向電極120は、対向電極用基板121と、その基板上の一の面に形成される対向電極用の透明導電性薄膜122を備え、対向電極用の透明導電性薄膜122には、Ptまたは貴金属物質を含む導電性薄膜層123が形成される。
【0034】
対向電極120を構成する対向電極用基板121は、PET、PEN、PC、PP(ポリプロピレン)、PI(ポリイミド)、及びTAC(トリアセチルセルロース)のうち、いずれか一つを含む透明なプラスチック基板またはガラス基板であることが望ましい。一方、対向電極用の透明導電性薄膜122は、ITO及びFTOなどからなる透明導電性薄膜である。
【0035】
対向電極用の透明導電性薄膜122の一の面に形成される導電性薄膜層123は、対向電極用の透明導電性薄膜122上に有機溶剤(メタノール、エタノール、及びIPA(イソプロピルアルコール)など)に溶解されたHPtCl溶液を湿式コーティングした後で、400℃以上の空気中または酸素雰囲気で高温熱処理などの方法で形成されるか、または電解メッキまたはPVD(Physical Vapor Deposition)(スパッタリング及び電子ビーム蒸着など)を介してPtからなる導電性薄膜層でありうる。ここで、湿式コーティングは、スピンコーティング、ディップコーティング、及びフローコーティングなどが使われる。
【0036】
すなわち、本発明の太陽電池は、光感応染料分子の吸着された半導体電極110と、Ptを含む導電性薄膜層123がコーティングされた対向電極120と、半導体電極110と対向電極120との間に充填された酸化−還元電解質溶液140とからなる。半導体電極110は、ITO及びFTOなどがコーティングされた透明導電性の基板である半導体電極用基板111を含む。透明導電性薄膜112で覆われた半導体電極用基板111上に形成されて酸化物半導体層130を支持し、電解質溶液140を充填するために単位セル142を形成するように設置されるスペーサ160の位置に金属配線150が乾式あるいは湿式の方法で配置される。
【0037】
半導体電極110と対向電極120は、Pt成分の導電性薄膜層123と酸化物半導体層130とが対面するように配列した後、電極間にサーリン(Surlyn,Dupont社製)のような高分子層をスペーサ160として金属配線150上に正確に位置するように配置し、約100℃の温度で圧着して付着させる。スペーサ160としては、サーリン以外にも各種高分子接着剤をディスペンサ法で配置して塗布する。
【0038】
酸化−還元電解質溶液140は、ヨウ素(ヨード)補給源として、0.5Mのヨウ化テトラプロピルアンモニウムあるいは0.8Mのヨウ化リチウム(LiI)を0.05Mのヨウ素(I)と共にアセトニトリルに溶解させ製造する。
【0039】
一方、金属配線150は、スペーサ160により単位セル142に充填された電解質溶液140と隔離されている。かかる金属配線150は、Au、Ag、Al、Pt、Cu、Fe、Ni、Ti、及びZrのうち、1または2以上の金属の合金から形成されることが望ましい。
【0040】
特に、金属配線150は、Au、Ag、Al、Pt、Cu、Fe、Ni、Ti、及びZrのうち、1または2以上の金属のペーストを公知のパターニング方法であるスクリーン印刷法、印刷法、及びディスペンサ法のうち、1つの方法でパターニングして形成可能である。選択的に、金属配線150は、Au、Ag、Al、Pt、Cu、Fe、Ni、Ti、及びZrのうち、1または2以上の金属のコロイド溶液をスクリーン印刷法、印刷法、及びディスペンサ法のうち、1つの方法でパターニングして形成可能である。
【0041】
金属配線150は、Au、Ag、Al、Pt、Cu、Fe、Ni、Ti、及びZrのうち、1または2以上の金属の薄膜を、リソグラフィ工程を含む化学蒸着法、スパッタリング蒸着法、及び電着法のうち、1つの方法によりエッチングして形成することも可能である。
【0042】
特に、金属配線150を電解質溶液140と隔離させるために、金属配線150の幅は、スペーサ160の幅より小さく形成される。すなわち、金属配線150は、スペーサ160により埋め込まれ、それぞれの単位セル142と単位セル142との間に形成されたスペーサ160の経路に沿って形成される。
【0043】
図4に示されたように、金属配線150はスペーサ160により区画された単位セル142間の境界部に沿って、単位セル142を包囲する形態で形成される。従って、単位セルの数が増えても、それぞれの単位セル142を区画するスペーサ160に埋め込まれて金属配線150が形成されるので、単位セルの数が増加して太陽電池の面積が大型化されてモジュール化されても、それにより金属配線も拡張設置が可能であるので、励起電子の電極への移動速度を速められるようになり、効率低下現象が防止される。
【0044】
また、金属配線の厚さは、0.1μmないし30μmであることが望ましい。一方、単位セル142は、矩形(四角形)をなすのが一般的であるが、必ずしもそれに限定されるものではなく、スペーサ160が区画する単位セル142の形状によって、金属配線150は、スペーサ160に埋め込まれ、対向電極120または電解質溶液140に露出されないように形成されねばならない。
【0045】
一方、単位セル142の形状が矩形をなすならば、単位セル142の一辺の長さは、0.1mmないし30mmであることが望ましい。また、隣接する一対の単位セル142の数は、1以上であることが可能である。この場合、金属配線150は、それぞれの単位セル142を区画するスペーサ160の経路に沿って半導体電極110上に形成され、スペーサ160により埋め込まれる。
【0046】
次に、本発明が提示する金属配線層が形成された半導体電極を備えた太陽電池の具体的製造段階について説明する。
【0047】
基板材料としては、透光性が良好であって太陽電池の負極として使用可能であるガラス、PET、PEN、及びPCなどがあり、ITO及びFTOなどの透明伝導性物質層がコーティングされたものも使用可能である。
【0048】
図4を参照すれば、基板の導電層上に酸化物半導体が位置する位置と、モジュール形成時に各単位セル142間で電極間の短絡を防止し、かつ電解質溶液の充填空間を付与するためのスペーサ160の位置とが決まり、本発明の金属配線150は、スペーサの置かれる位置に同じパターンで形成されねばならず、金属配線150の幅は、スペーサ160の幅以下に維持されて初めて、金属配線150がスペーサ160外部に露出せずに電解質溶液140との直接接触が防止される。
【0049】
金属配線層のパターンは、さまざまな方法で形成可能であるが、そのうちの一つは、半導体電極基板の表面に直接パターンを形成することである。すなわち、導電性の高いAu、Au合金、Ag、Ag合金、Pt、及びPt合金のうち、いずれか1つの成分を有する金属性微粒子の金属ペーストまたは金属性コロイド溶液を、スクリーン印刷技法、印刷法、及びディスペンサ法のうち、選択された1つの方法によりパターンを形成でき、これ以外にパターン形成のためにリソグラフィ工程を含むCVD(Chemical Vapor Deposition)及びスパッタリングのような蒸着方法を利用して形成することも可能である。また、電着法により形成された金属薄膜にエッチングを介してパターンを形成することもできる。
【0050】
上記の方法のうち、選択された1つの方法で所望のパターンを形成した後、金属配線間に酸化物半導体電極を形成するために、酸化物半導体のペーストを塗布した後で、熱処理工程を介して酸化物粒子間にネッキングを形成する。かように形成された電極基板構造物を光感応染料、例えば、Al、Pt、Pd、Eu、Pb、及びIrなどの金属錯体形態の化合物、望ましくはRu染料分子(Ru−dye)を吸着させて酸化物半導体電極110を完成する。
【0051】
一方、対向電極120は、ITO、FTO、及び透明導電性高分子フィルムなどがコーティングされた透明導電性ガラス基板上に、有機溶剤(メタノール、エタノール、及びIPAなど)に溶解されたHPtCl溶液の湿式コーティング(スピンコーティング、ディップコーティング、及びフローコーティングなど)後、400℃以上の空気中または酸素雰囲気での高温熱処理などの方法で形成されるか、あるいは、電解メッキまたはPVD(スパッタリング及び電子ビーム蒸着など)でPt成分の導電性薄膜層123をコーティングして形成される。
【0052】
本発明で提示されているように製造された半導体電極と対向電極は、導電性薄膜層と酸化物半導体層とが対面するように配列した後、電極間にサーリンのような高分子層をスペーサとして酸化物半導体層の金属配線上に正確に位置するように配置し、約100℃の温度で圧着して付着する。スペーサとしては、サーリン以外にも各種高分子接着剤をディスペンサ法で配置して塗布することも可能である。
【0053】
単位セル142に充填される酸化−還元電解質溶液140は、ヨウ素補給源として、0.5Mのヨウ化テトラプロピルアンモニウムあるいは0.8Mのヨウ化リチウムを0.05Mのヨウ素と共にアセトニトリルに溶解させて製造する。かかる成分の電解質溶液140は、組み立てられた半導体電極及び対向電極において対向電極を貫通して形成された注入口136を介して注入され、充填後に注入口136は、エポキシ樹脂あるいはサーリンにより形成された密封部134によりシーリングされ、その上部に注入口封入用ガラス132が形成されて太陽電池を完成する。
【0054】
本発明は、図面に示された実施の形態を参考に説明されたが、それは例示的なものに過ぎず、本技術分野の当業者ならば、これから多様な変形及び均等な他の実施の形態が可能であるという点を理解できるであろう。従って、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の思想によって決まるものである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、太陽電池の大面積化及びモジュール化時に起こる効率低下現象を改善し、製造工程を単純化させるための染料感応太陽電池に関わる技術分野に広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】従来の染料感応太陽電池の概略図である。
【図2】従来の他の染料感応太陽電池を概略的に図示した断面図である。
【図3】本発明の望ましい実施形態によって製造された染料感応太陽電池を概略的に図示した断面図である。
【図4】図3の太陽電池の斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
110 半導体電極、
111 半導体電極用基板、
112 半導体電極用の透明導電性薄膜、
120 対向電極、
121 対向電極用基板、
122 対向電極用の透明導電性薄膜、
123 導電性薄膜層、
130 酸化物半導体層、
132 注入口封入用ガラス、
134 密封部、
136 注入口、
140 酸化還元電解質溶液、
142 単位セル、
150 金属配線、
160 スペーサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体電極と、
前記半導体電極に対向するように配置された対向電極と、
前記半導体電極及び前記対向電極間に介在し、染料が吸着されている酸化物半導体層と、
前記半導体電極及び前記対向電極間に充填された電解質溶液と、
前記半導体電極及び前記対向電極間を所定間隔に離隔するように区画し、単位セルを形成するスペーサと、
隣接する一対の前記単位セル間に少なくとも部分的にパターニングされた金属配線と、
を含む光電変換素子を利用した染料感応太陽電池。
【請求項2】
前記金属配線は、前記隣接する一対の単位セル間全体にパターニングされたことを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子を利用した染料感応太陽電池。
【請求項3】
前記半導体電極は、半導体電極用基板と、当該半導体電極用基板上に形成される半導体電極用の透明導電性薄膜と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子を利用した染料感応太陽電池。
【請求項4】
前記対向電極は、対向電極用基板、当該対向電極用基板上に形成される対向電極用の透明導電性薄膜、及び当該対向電極用の透明導電性薄膜上に形成される導電性薄膜層を含むことを特徴とする請求項3に記載の光電変換素子を利用した染料感応太陽電池。
【請求項5】
前記導電性薄膜層は、Ptを含むことを特徴とする請求項4に記載の光電変換素子を利用した染料感応太陽電池。
【請求項6】
前記金属配線は、Au、Ag、Al、Pt、Cu、Fe、Ni、Ti、及びZrからなる群より選択される1または2以上の金属の合金を含むことを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子を利用した染料感応太陽電池。
【請求項7】
前記金属配線は、前記金属のペーストを、スクリーン印刷法、印刷法、及びディスペンサ法のうち、1つの方法でパターニングして形成されることを特徴とする請求項6に記載の光電変換素子を利用した染料感応太陽電池。
【請求項8】
前記金属配線は、前記金属のコロイド溶液を、スクリーン印刷法、印刷法、及びディスペンサ法のうち、1つの方法でパターニングして形成されることを特徴とする請求項6に記載の光電変換素子を利用した染料感応太陽電池。
【請求項9】
前記金属配線は、化学蒸着法、スパッタリング蒸着法、及び電着法のうち、1つの方法とリソグラフィ工程とを組み合わせ、前記金属の薄膜をエッチングして形成されることを特徴とする請求項6に記載の光電変換素子を利用した染料感応太陽電池。
【請求項10】
前記金属配線は、前記スペーサにより前記電解質溶液と隔離されていることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子を利用した染料感応太陽電池。
【請求項11】
前記金属配線の幅は、前記スペーサの幅より小さいことを特徴とする請求項10に記載の光電変換素子を利用した染料感応太陽電池。
【請求項12】
前記金属配線の厚さは、0.1μmないし30μmであることを特徴とする請求項10に記載の光電変換素子を利用した染料感応太陽電池。
【請求項13】
前記単位セルは、矩形であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子を利用した染料感応太陽電池。
【請求項14】
前記単位セルの一辺の長さは、0.1mmないし30mmであることを特徴とする請求項13に記載の光電変換素子を利用した染料感応太陽電池。
【請求項15】
前記隣接する一対の単位セルの数は、1以上であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子を利用した染料感応太陽電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−19278(P2006−19278A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−187462(P2005−187462)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】