説明

光電変換素子

【課題】優れた光電変換効率を有する光電変換素子を提供する。
【解決手段】基板T上に形成された2つの電極Y間に、導電性高分子dと電子受容体aを含有する光電変換層Eを有する光電変換素子Pであって、該導電性高分子dが、下記一般式(1)で示されるポリセレノフェン誘導体を含有することを特徴とする、光電変換素子を用いることで優れた光電変換効率を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子に関する。詳しくは、例えば、太陽電池素子や光センサー素子に使用される光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子を利用したデバイスの代表例として太陽電池素子が挙げられる。光電変換素子は、太陽電池素子において光電変換層と呼ばれ、光電変換層を根拠として大別すると、Si、GaAs 等の無機物を用いた無機太陽電池と、導電性高分子等の有機物を用いた有機太陽電池に分類される。
【0003】
無機太陽電池素子としては、シリコン太陽電池素子等が挙げられるが、その製造過程における環境負荷が大きく、無機であるが為に、多様性に欠ける事、高コスト等、多数の問題点を抱えている。それと比較し、有機太陽電池素子は低環境負荷、多様性、低コスト等、無機太陽電池素子の問題点を解決出来得る事から、注目を浴びている。
【0004】
有機太陽電池素子としては、有機半導体と金属薄膜間で生じるショットキー障壁を利用したショットキー障壁型太陽電池素子や、TiO上にRu等の色素を担持させ、これに電解質を満たした色素増感太陽電池素子、光電変換層として電子受容体(以降、電子輸送層と呼ぶ)と正孔受容体(以降、正孔輸送層と呼ぶ)を使用した有機薄膜太陽電池素子等が挙げられる。
【0005】
ショットキー障壁型太陽電池素子とは、有機半導体と金属薄膜を接合させる事で、半導体部分に、金属の仕事関数と半導体の持つ電子親和力の差が、障壁(ショットキー障壁)として現れ、これに光照射する事で、電化分離が発生する素子の事である。しかし、ショットキー障壁型太陽電池素子は光電変換効率が0.1%以下と非常に低く、実用的ではない。
【0006】
また、色素増感太陽電池素子とは、光照射により色素が励起状態となり、電子を放出する事で電化分離が発生する素子の事である。色素増感太陽電池素子は10%という高い光電変換効率を達成しているが、高効率を得る為にはRu色素やPt電極等の高価な材料が必要である。最近、非Ru色素が検討されており、例えば、本発明のポリセレノフェン誘導体と同様、又は類似の構造も見受けられる(特許文献1)が、Ru色素以外では高い変換効率が得られていない。また、液体電解質を用いている為にその長期安定性も優れているとは言えない。
【0007】
一方、有機薄膜太陽電池素子は、他の太陽電池素子に比べて、特に製造工程が容易、かつ低コストである事から注目されている。例えば、電子輸送層と正孔輸送層を兼ねた導電性高分子を積層したバイレイヤー型有機薄膜太陽電池素子、電子輸送層と正孔輸送層を兼ねた導電性高分子の配合液を塗布したバルクへテロ接合型有機薄膜太陽電池素子等が挙げられる。
【0008】
バイレイヤー型有機薄膜太陽電池素子は、電子輸送層と、正孔輸送層を兼ねた導電性高分子とを接合させる事により、2層の界面でpn接合を形成させ、光電変換を起こすものである。例えば、電子輸送層としてペリレン誘導体を用い、正孔輸送層として銅フタロシアニンを用いたもの等が挙げられる。
しかし、キャリアの再結合を防ぎ、電流を観測する為には膜厚を約20nm 程度とする必要があり、この膜厚では光吸収が不充分で、光電変換効率は1%以下となる。
【0009】
一方、バルクへテロ接合型有機薄膜太陽電池素子では、電子輸送層と、正孔輸送層を兼ねた導電性高分子が混在した電子正孔輸送層という単一層構造となっており、光電変換層中に於いて、分子レベルでのpn接合となる事で、光電変換に関与する体積の増加が可能である。例えば、導電性高分子(正孔輸送層)としてポリチオフェン誘導体(ポリ−3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル(以下、P3HTと呼ぶ))を用い、電子輸送層としてフラーレン誘導体[6,6]−フェニル−C61ブチリックアシッドメチルエステル(以下、PCBMと呼ぶ)を用いたもの等が挙げられる(特許文献2)。これにより光電変換効率は大幅に改善されたが、P3HTの正孔輸送能が低い為、未だその変換効率は不充分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−135656号公報
【特許文献2】特開2006−245073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の様に、有機薄膜太陽電池素子として、様々な検討が行われているが、P3HT以降、良好な特性を持つ導電性高分子(正孔輸送層)が見受けられず、電子輸送能が不足している太陽電池では、高い光電変換効率を得る事が期待出来ない。つまり、高い正孔輸送能を有する導電性高分子(正孔輸送層)を開発する事が、有機薄膜太陽電池素子の光電変換効率を向上させる為には不可欠である。
本発明の目的は高い正孔輸送能を有する導電性高分子を有することにより、光電変換効率が向上した光電変換素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、基板(T)上に形成された2つの電極(Y)間に、導電性高分子(d)と電子受容体(a)を含有する光電変換層(E)を有する光電変換素子(P)であって、該導電性高分子(d)が、下記一般式(1)で示されるポリセレノフェン誘導体(D)を含有することを特徴とする、光電変換素子(P)。
【化1】

[式中nは5以上の整数を表す。Rはヒドロキシル基、シアノ基、リン酸基、スルホン酸基、ハロゲン原子からなる群より選ばれ、Rは置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、ポリオキシアルキレンアルキル(アリ−ル)エーテル基からなる群より選ばれる基であって、炭素数が1〜20である基である。]
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、導電性高分子(正孔輸送層)として、ポリセレノフェン誘導体を用いる事で、正孔輸送性が向上し、高い光電変換効率を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の光電変換素子の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0015】
(T) 基板
(Y) 電極
(i−1) 正孔取出し層
(E) 光電変換層
(i−2) 電子取出し層
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の光電変換素子は、基板上に形成された二つの電極の間にポリセレノフェン誘導体(D)を含有する導電性高分子と電子受容体とを含有する光電変換層を設けた光電変換素子である。
【0017】
ポリセレノフェン誘導体(D)は上記一般式(1)で示される。
このポリセレノフェン誘導体(D)は正孔輸送性の観点から、式中n(重合度)は5以上が好ましく、5〜1000がより好ましく、100〜500がさらに好ましい。
はヒドロキシル基、シアノ基、リン酸基、スルホン酸基、ハロゲン原子で示される基であり、Rは炭素数が1〜20である基であって、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、ポリオキシアルキレンアルキル(アリ−ル)エーテル基である。ここで芳香族炭化水素基とは、フェニル基以外の芳香族環を有する基、および、複素環である芳香族環を有する基も含むものとする。ポリオキシアルキレンアルキル(アリ−ル)エーテル基とは、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル基、又はポリオキシアルキレンアリ−ルエーテル基をいうものとする。
置換基を有しても良い脂肪族炭化水素基としては、例えばn−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、2−エチルヘキシル基、2−エチルオクチル基、3−シアノオクチル基、9−スルホニルノニル基等が挙げられる。
置換基を有してもよい芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、ピレン基、4−メトキシフェニル基等が挙げられる。
ポリオキシアルキレンアルキル(アリ−ル)エーテル基としては、トリエチレングリコールメチルエーテル基、テトラプロピレングリコールエチルエーテル基等が挙げられる。
なお、リン酸基、スルホン酸基とは、各々以下の一般式(2)〜(3)で示される基である。
【0018】
【化2】

【0019】
上記の中でRはハロゲン原子が好ましく、ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
上記の中でRは置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基が好ましい。
式中n(重合度)が5未満であると、またはR、Rが上記以外の有機基であると、又は主鎖芳香五員環のヘテロ原子がSe以外では、ポリセレノフェン誘導体(D)の正孔輸送性が低下する為、好ましくない。
【0020】
ポリセレノフェン誘導体(D)の好ましい具体例としては、例えば、以下の実施例に記載した一般式(4)〜一般式(8)で示される化合物が挙げられる。
【0021】
ポリセレノフェン誘導体(D)の製造方法
セレノフェン1当量に対して、臭素を例えば4当量を加えた溶液(例えばクロロホルム溶液)を、例えば12時間、25℃で攪拌する事でテトラブロモセレノフェンを得る事ができ、このテトラブロモセレノフェン1当量に還元試薬(例えば亜鉛粉末)を例えば2当量加えた溶液(例えば酢酸水溶液)を、例えば12時間、還流する事で、3,4−ジブロモセレノフェンを得る事ができる。
この3,4−ジブロモセレノフェンの3位と4位を別個に、例えばグリニヤー反応、ウィリアムソンエーテル合成法、フッ素置換反応を行う事で3,4−置換セレノフェンを得る事ができる。
この3,4−置換セレノフェン1当量に対して、グリニヤー試薬を例えば1当量、及びニッケル触媒(例えばNi(dppp)Cl)を例えば0.02等量を加えた溶液(例えばテトラヒドロフラン溶液)を、例えば12時間、還流する事で、ポリセレノフェン誘導体(D)を得る事ができる。
具体的な製造方法は、Chemistry of Materials,2005年,17号,3317−3319頁、または、Journal of the American Chemical Society,1995年,117号,233−244頁等に記載の方法で行なう事ができる。
【0022】
本発明の光電変換素子は、基板(T)上に形成された2つの電極(Y)間に、導電性高分子(d)と電子受容体(a)を含有する光電変換層(E)を有する光電変換素子(P)である。1例として図1にその代表的な構造の概略断面図を示す。以下に各構成部位についてその詳細を説明する。
【0023】
(1)基板(T)
本発明における基板について説明する。基板は透明、不透明いずれでも良いが、基板面が受光体となる場合には透明基板が望ましい。この透明基板としては、光電変換素子外部から侵入する水分やガスの遮断性、耐溶剤性、耐候性等に優れているものが望ましく、例えば、石英ガラスなどの剛直板、透明樹脂フィルム等のフレキシブル基板が挙げられる。更に、優れた加工性、低コスト、軽量化といった観点から、本発明においては、フレキシブル基板である事が望ましい。透明樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
【0024】
(2)電極(Y)
続いて、本発明における電極について説明する。
電極は基板(T)上に層状をなしていても、層状をなしていなくてもよいが、層状であることが好ましい。電極は必ずしも透光性を有する必要はないが、基板(T)上に層状をなしている場合は、少なくとも一方が透光性を有することが好ましい。電極は二つからなり、二つの層状を成していることが好ましい。電極は導電性を有するものであればいずれでも良く、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成される。光透過性電極としては、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)、フッ素ドープSnO(FTO)、SnO等の導電性透明材料からなる金属薄膜が好ましく、光遮光性電極としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属薄膜が好ましい。この電極の厚さは、特に限定されないが、例えば80〜100nm程度である。
【0025】
(3)光電変換層(E)
続いて、本発明に用いられる光電変換層について説明する。本発明における光電変換層は、導電性高分子(d)及び電子輸送層(電子受容体)(a)を含有しており、好ましくは正孔輸送層(正孔受容体)(s)を兼ねた導電性高分子(d)、及び電子輸送層(電子受容体)(a)を含有している。
上記、含有される導電性高分子(正孔輸送層、正孔受容体)と電子輸送層(電子受容体)の形態は特に限定されるものではないが、好ましくは両者が混在した電子正孔輸送層という単一層構造、つまり、バルクヘテロ接合である。この構造をとることにより分子レベルでのpn接合が可能となり、このため光電変換に関与する体積の増加が可能となるという効果が得られる。
上述のような光電変換層(E)は、導電性高分子(d)と電子受容体(a)の混合溶液から溶媒を除去する事で得る事ができる。
【0026】
本発明においては、導電性高分子(d)(正孔輸送層、正孔受容体)として少なくともポリセレノフェン誘導体(D)を含むものである。これを用いる事で、正孔輸送性が向上し、高い光電変換効率が得られる。
この理由として、以下のことが推定される。
(i)本発明の導電性高分子(d)(正孔輸送層、正孔受容体)は、フロンティア軌道の観点から、導電性高分子のHOMO−LUMOギャップが小さく、正孔の移動速度が十分大きい。
(ii)本発明の導電性高分子(d)(正孔輸送層、正孔受容体)は、電子輸送層との相溶性が良く、バルクへテロ接合の緻密さが十分である。
【0027】
上記で説明したように、導電性高分子(d)としては、正孔輸送層(正孔受容体)(s)として機能するものが好ましく、ポリセレノフェン誘導体が好ましい。一方、電子輸送層(電子受容体(a))に関しては、例えば[6,6]−フェニル−C61ブチリックアシッドメチルエステル(以下PCBMと呼ぶ)等のフラーレン誘導体等が挙げられる。
【0028】
本発明において、上述した光電変換層に用いる導電性高分子(d)と電子輸送層(電子受容体)(a)の重量比率としては、良好な電子輸送能を有する電子正孔輸送層を形成すれば特に限定されるものでは無いが、例えば(d)/(a)=1/10〜1/0.4が好ましく、他の各構成材料種の組み合わせによって、最適な混合比に適宜変更する事が好ましい。
【0029】
導電性高分子(d)が、更にポリセレノフェン誘導体(D)以外の導電性高分子(d’)を含有してもよい。導電性高分子(d’)としては、例えば、ポリチオフェン、ポリフルオレン等が挙げられ、ポリセレノフェン誘導体(D)と導電性高分子(d’)の重量比率としては、良好な電子輸送能を有する電子正孔輸送層を形成すれば特に限定されるものでは無いが、例えば(D)/(d’)=20/0〜16/4が好ましく、18/2〜17/3がより好ましく、他の各構成材料種の組み合わせによって、最適な混合比に適宜変更する事が好ましい。
【0030】
本発明において、上述した光電変換層の膜厚は特に限定されるものでは無く、いずれでも良い。ただし、膜厚が薄過ぎると短絡し、厚過ぎると、膜抵抗が高くなる為、一般的な光電変換素子に用いられている膜厚が好ましく、例えば、20〜800nmである。
【0031】
本発明において、上述した光電変換層の形成法は、所定の膜厚に均一に形成する事が出来る方法であれば特に限定されるものでは無く、いずれでも良い。例えば、スピンコート法またはダイコート法等が挙げられる。
【0032】
本発明において、上述した光電変換層の数は、一層でも複数層でも良く、特に限定されるものでは無いが、例えば1〜5層が好ましい。
【0033】
(5)その他の構成
本発明に用いられるその他の構成について説明する。本発明の光電変換素子内部に、電荷の移動を促進する目的で、電荷取出し層(i)を形成しても良い。
構成する化合物、層数は特に限定されるものでは無いが、例えば、正孔取り出し層(i−1)としては、ポリ(スチレンスルホン酸塩)/ポリ(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ダイオキシン)(以下「PEDOT/PSS」と呼ぶ)、電子取り出し層(i−2)としては二酸化チタン(以下TiOと呼ぶ)等が挙げられる。
【0034】
本発明の光電変換素子(P)を太陽電池素子(S)として使用する場合は、基板(T)上に形成された2つの電極(Y)間に、導電性高分子(d)と電子受容体(a)を含有する光電変換層(E)を有する太陽電池素子(S)であり、それらの構成等は、上記光電変換素子(P)で説明したものが好ましい。
【0035】
本発明の太陽電池素子(S)をタンデム型太陽電池素子(S1)として使用する場合は、それらの構成等は、上記太陽電池素子(S)で説明したものが好ましい。また、その積層数は特に限定されるものではなく、例えば、1〜5層程度であり、各々の太陽電池素子(S)の接続様態は並列、直列いずれでも良いが、取り出す電流を大きくしたい場合には並列が好ましく、取り出す電圧を大きくしたい場合には直列が好ましい。
【0036】
本発明の光電変換素子(P)を光センサー素子(U)として使用する場合は、基板(T)上に形成された2つの電極(Y)間に、導電性高分子(d)と電子受容体(a)を含有する光電変換層(E)を有する光センサー素子(U)であり、それらの構成等は、上記光電変換素子(P)で説明したものが好ましい。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
以下、特に記載のないかぎり、「部」「wt」は「重量部」、%は重量%を意味する。
【0038】
(製造例1)
ポリセレノフェン誘導体として、ポリ−3−シアノ−4−(2−メトキシエトキシ)セレノフェン−2,5−ジイル[以降、PC(MOEO)Sと呼ぶ。一般式(4)で示される化合物]を合成した。
【0039】
【化3】

【0040】
PC(MOEO)S[一般式(4)]の合成
セレノフェン2.5g(アルドリッチ(株)製)をクロロホルム4mlに溶解させた後、臭素4.32ml(和光純薬(株)製)を30分かけて滴下し、この溶液を50℃で24時間攪拌した。クロロホルム50mlを加え、濃度1Mの水酸化ナトリウム水溶液で有機層を3回洗浄した後、濃度1Mのチオ硫酸ナトリウム水溶液で有機層を2回洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;n−ヘキサン)で精製し、2,3,4,5−トリブロモセレノフェン(以降、TriBSと呼ぶ)6.57gを得た。この合成法はOrganic Syntheses,1973年,5号,149−151頁記載の方法に準拠した。
【0041】
亜鉛粉末2.50g(和光純薬(株)製)を水2.7mlと氷酢酸11.0ml(和光純薬(株)製)の混合溶液に懸濁させた後、この溶液を100℃で2時間攪拌した。25℃まで冷却した後、TriBS 6.57gをクロロホルム10mlの溶解させたものを加え、100℃で6時間攪拌した。クロロホルム50mlを加え、濃度1Mの炭酸水素カリウム水溶液で有機層を3回洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;n−ヘキサン)で精製し、3,4−ジブロモセレノフェン(以降、DBSと呼ぶ)4.90gを得た。
【0042】
DBS 2.10gと、Zn(CN) 1.18g(和光純薬(株)製)、Pd(PPh 0.35g(和光純薬(株)製)をDMF 50mlに加え、反応容器内を窒素置換し、100℃で24s時間攪拌した。酢酸エチル60mlを加え、水で有機層を3回洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;n−ヘキサン)で精製し、3−ブロモ−4−シアノセレノフェン(以降、BCSと呼ぶ)1.55gを得た。この合成法はJournal of Organic Chemistry,2000年,65号,7984−7989頁記載の方法に準拠した。
【0043】
NaH 0.6g(和光純薬(株)製)をDMF2.5mlに懸濁させた後、反応容器内を窒素置換し、0℃まで冷却した。2−メトキシエタノール3.65ml(和光純薬(株)製)を30分かけて滴下し、1時間攪拌した。BCS 2.35gとCuBr 0.14g(和光純薬(株)製)を反応溶液に加え、110℃で30分攪拌した。濃度1Mの塩化アンモニウム水溶液を加え、ジエチルエーテルで抽出し、濃度1Mの塩化アンモニウム水溶液で有機層を3回洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;n−ヘキサン)で精製し、3−シアノ−4(2−メトキシエトキシ)セレノフェン(以降、C(MOEO)Sと呼ぶ)1.33gを得た。この合成法はChemistry of Materials,2005年,17号,3317−3319頁記載の方法に準拠した。
【0044】
C(MOEO)S 1.58gをテトラヒドロフラン70mlに溶解させた後、反応容器内を窒素置換し、0℃まで冷却した。N−ブロモスクシンイミド2.44g(和光純薬(株)製)をテトラヒドロフラン7mlに溶解させたものを5分かけて滴下した後、0℃で1時間攪拌した。n−ヘキサン50mlを加え、濃度1Mのチオ硫酸ナトリウム水溶液で有機層を2回洗浄し、飽和食塩水で有機層を2回洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;n−ヘキサン)で精製し、2,5−ジブロモ−3−シアノ−4−(2−メトキシエトキシ)セレノフェン(以降、DBC(MOEO)Sと呼ぶ)1.98gを得た。この合成法はJournal of American chemical Society,2006年,128号,10930−10933頁記載の方法に準拠した。
【0045】
DBC(MOEO)S 2.39gをテトラヒドロフラン70mlに溶解させた後、反応容器内を窒素置換し、メチルマグネシウムブロミド(1M n−ヘキサン溶液)6.16ml(東京化成(株)製)を30分かけて滴下した後、室温で30分攪拌した。Ni(dppp)Cl 10mgをテトラヒドロフラン10mlに懸濁させたものを5分かけて滴下し、還流条件下、12時間攪拌した。25℃まで冷却し、濃度1Mの塩酸12mlとメタノール247mlの混合溶液を加え、析出物を濾取した。ソックスレー抽出器を用いて、ヘキサン、メタノールの順に洗浄し、クロロホルムで抽出した。メタノールを加え、析出物を濾取し、ポリ−3−シアノ−4−(2−メトキシエトキシ)セレノフェン−2,5−ジイル(以降、PC(MOEO)Sと呼ぶ)1.3gを得た。この合成法はChemistry of Materials,2005年,17号,3317−3319頁、及びJournal of American chemical Society,1995年,117号,233−244頁、及びAdvanced Materials,1999年,11号,250−253頁、及びMacromolecules,2001年,34号,4324−4333頁記載の方法に準拠した。
【0046】
(製造例2)
ポリセレノフェン誘導体として、ポリ−3−ホスフォニル−4−(3−ピリジニル)セレノフェン−2,5−ジイル(以降、PPPSと呼ぶ。一般式(5)で示される化合物)を合成した。
【0047】
【化4】

【0048】
PPPS(一般式(5))の合成
DBS(製造例1の中間体)4.04gをテトラヒドロフラン5mlに溶解させた後、[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)クロリド(以降、Ni(dppp)Clと呼ぶ)0.152g(和光純薬(株)製)を懸濁させ、反応容器内を窒素置換した後、ピリジンマグネシウムブロミド(1M THF溶液)50ml(3−ブロモピリジン7.90g(和光純薬(株)製)とマグネシウム1.21g(和光純薬(株)製)をTHF溶液41mlに加え、室温で20時間攪拌した溶液)を30分かけて滴下した後、室温で40時間攪拌した。n−ヘキサン50mlを加え、3M 塩酸50mlで中和した後、硫酸マグネシウムで水溶液を飽和させる事で水層と有機層を分離させ、分液により有機層を得た。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;n−ヘキサン)で精製し、3−ブロモ−4−(3−ピリジニル)セレノフェン(以降、BPSと呼ぶ)0.79gを得た。この合成法はThin Solid Films,2008年,516号,3978−3988頁、及びChemistry of Materials,1994年,6号,640−649頁記載の方法に準拠した。
【0049】
BPS 2.87gと亜りん酸トリエチル2.49g(和光純薬(株)製)を混合し、100℃で20時間攪拌した。25℃まで冷却し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;酢酸エチル)で精製し、3−ジエチルホスフォニル−4−(3−ピリジニル)セレノフェン(以降、PEPSと呼ぶ)1.86gを得た。この合成法はSynthesis,2004年,5号,668−670頁記載の方法に準拠した。
【0050】
PEPS 1.22gを濃度6Mの塩酸水溶液100mlに加え、100℃で10時間攪拌した。酢酸エチル100mlを加え、有機層を分取し、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;酢酸エチル)で精製し、3−ホスフォニル−4−(3−ピリジニル)セレノフェン(以降、PPSと呼ぶ)0.55gを得た。この合成法はTetrahedron Letters,2007年,48号,4051−4054頁記載の方法に準拠した。
【0051】
PPS 1.98gをテトラヒドロフラン70mlに溶解させた後、反応容器内を窒素置換し、0℃まで冷却した。N−ブロモスクシンイミド2.44g(和光純薬(株)製)をテトラヒドロフラン7mlに溶解させたものを5分かけて滴下した後、0℃で1時間攪拌した。n−ヘキサン50mlを加え、濃度1Mのチオ硫酸ナトリウム水溶液で有機層を2回洗浄し、飽和食塩水で有機層を2回洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;酢酸エチル)で精製し、2,5−ジブロモ−3−ホスフォニル−4−(3−ピリジニル)セレノフェン(以降、DBPPSと呼ぶ)2.10gを得た。この合成法はJournal of American chemical Society,2006年,128号,10930−10933頁記載の方法に準拠した。
【0052】
DBPPS 2.75gをテトラヒドロフラン70mlに溶解させた後、反応容器内を窒素置換し、メチルマグネシウムブロミド(1M n−ヘキサン溶液)6.16ml(東京化成(株)製)を30分かけて滴下した後、室温で30分攪拌した。Ni(dppp)Cl 10mgをテトラヒドロフラン10mlに懸濁させたものを5分かけて滴下し、還流条件下、12時間攪拌した。25℃まで冷却し、濃度1Mの塩酸12mlとメタノール247mlの混合溶液を加え、析出物を濾取した。ソックスレー抽出器を用いて、ヘキサン、メタノールの順に洗浄し、クロロホルムで抽出した。メタノールを加え、析出物を濾取し、ポリ−3−ホスフォニル−4−(3−ピリジニル)セレノフェン−2,5−ジイル(以降、PPPSと呼ぶ)1.5gを得た。この合成法はChemistry of Materials,2005年,17号,3317−3319頁、及びJournal of American chemical Society,1995年,117号,233−244頁、及びAdvanced Materials,1999年,11号,250−253頁、及びMacromolecules,2001年,34号,4324−4333頁記載の方法に準拠した。
【0053】
(製造例3)
ポリセレノフェン誘導体として、ポリ−3−スルフォニル−4−フェニルセレノフェン−2,5−ジイル(以降、PSPSと呼ぶ。一般式(6)で示される化合物)を合成した。
【0054】
【化5】

【0055】
PSPS(一般式(6))の合成
DBS(製造例1の中間体)4.04gをテトラヒドロフラン5mlに溶解させた後、[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)クロリド(以降、Ni(dppp)Clと呼ぶ)0.152g(和光純薬(株)製)を懸濁させ、反応容器内を窒素置換した後、フェニルマグネシウムブロミド(2M THF溶液)50ml(東京化成(株)製)を30分かけて滴下した後、室温で40時間攪拌した。n−ヘキサン50mlを加え、3M 塩酸50mlで中和した後、硫酸マグネシウムで水溶液を飽和させる事で水層と有機層を分離させ、分液により有機層を得た。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;n−ヘキサン)で精製し、3−ブロモ−4−フェニルセレノフェン(以降、BPhSと呼ぶ)1.57gを得た。この合成法はThin Solid Films,2008年,516号,3978−3988頁、及びChemistry of Materials,1994年,6号,640−649頁記載の方法に準拠した。
【0056】
BPhS 1.57gと亜硫酸水素ナトリウム0.22g(和光純薬(株)製)をイオン交換水4mlに溶解させた後、pH7.6になるまで濃度30%の水酸化ナトリウムを加えた。CuCl 0.045gを加えた後、140℃で16時間攪拌した。40℃まで冷却した後、沈殿物を濾去し、濃塩酸0.75mlを加えた。析出してきた未反応のBPhSを濾去した後、塩化カリウム1.2g(和光純薬(株)製)を加え、100℃で1時間攪拌した。5℃で16時間静置した後、析出物を濾取し、3−スルフォニル−4−フェニルセレノフェン(以降、SPSと呼ぶ)1.05gを得た。この合成法はJournal of Medicinal Chemistry,1987年,30号,678−682頁記載の方法に準拠した。
【0057】
SPS 1.97gをテトラヒドロフラン70mlに溶解させた後、反応容器内を窒素置換し、0℃まで冷却した。N−ブロモスクシンイミド2.44g(和光純薬(株)製)をテトラヒドロフラン7mlに溶解させたものを5分かけて滴下した後、0℃で1時間攪拌した。n−ヘキサン50mlを加え、濃度1Mのチオ硫酸ナトリウム水溶液で有機層を2回洗浄し、飽和食塩水で有機層を2回洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;酢酸エチル)で精製し、2,5−ジブロモ−3−スルフォニル−4−フェニルセレノフェン(以降、DBSPSと呼ぶ)2.06gを得た。この合成法はJournal of American chemical Society,2006年,128号,10930−10933頁記載の方法に準拠した。
【0058】
DBSPS 2.74gをテトラヒドロフラン70mlに溶解させた後、反応容器内を窒素置換し、メチルマグネシウムブロミド(1M n−ヘキサン溶液)6.16ml(東京化成(株)製)を30分かけて滴下した後、室温で30分攪拌した。Ni(dppp)Cl 10mgをテトラヒドロフラン10mlに懸濁させたものを5分かけて滴下し、還流条件下、12時間攪拌した。25℃まで冷却し、濃度1Mの塩酸12mlとメタノール247mlの混合溶液を加え、析出物を濾取した。ソックスレー抽出器を用いて、ヘキサン、メタノールの順に洗浄し、クロロホルムで抽出した。メタノールを加え、析出物を濾取し、ポリ−3−スルフォニル−4−フェニルセレノフェン−2,5−ジイル(以降、PSPSと呼ぶ)1.4gを得た。この合成法はChemistry of Materials,2005年,17号,3317−3319頁、及びJournal of American chemical Society,1995年,117号,233−244頁、及びAdvanced Materials,1999年,11号,250−253頁、及びMacromolecules,2001年,34号,4324−4333頁記載の方法に準拠した。
【0059】
(製造例4)
ポリセレノフェン誘導体として、ポリ−3−ブロモ−4−(2−エチルヘキシル)セレノフェン−2,5−ジイル(以降、PBEHSと呼ぶ。一般式(7)で示される化合物)を合成した。
【0060】
【化6】

【0061】
PBEHS(一般式(7))の合成
DBS(製造例1の中間体)4.04gをテトラヒドロフラン5mlに溶解させた後、[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)クロリド(以降、Ni(dppp)Clと呼ぶ)0.152g(和光純薬(株)製)を懸濁させ、反応容器内を窒素置換した後、2−エチルヘキシルマグネシウムブロミド(1M ジエチルエーテル溶液)57ml(アルドリッチ(株)製)を30分かけて滴下した後、室温で40時間攪拌した。n−ヘキサン50mlを加え、3M 塩酸50mlで中和した後、硫酸マグネシウムで水溶液を飽和させる事で水層と有機層を分離させ、分液により有機層を得た。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;n−ヘキサン)で精製し、3−ブロモ−4−(2−エチルヘキシル)セレノフェン(以降、BEHSと呼ぶ)1.14gを得た。この合成法はThin Solid Films,2008年,516号,3978−3988頁、及びChemistry of Materials,1994年,6号,640−649頁記載の方法に準拠した。
【0062】
BEHS 2.21gをテトラヒドロフラン70mlに溶解させた後、反応容器内を窒素置換し、0℃まで冷却した。N−ブロモスクシンイミド2.44g(和光純薬(株)製)をテトラヒドロフラン7mlに溶解させたものを5分かけて滴下した後、0℃で1時間攪拌した。n−ヘキサン50mlを加え、濃度1Mのチオ硫酸ナトリウム水溶液で有機層を2回洗浄し、飽和食塩水で有機層を2回洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;n−ヘキサン)で精製し、2,5−ジブロモ−3−ブロモ−4−(2−エチルヘキシル)セレノフェン(以降、TBEHSと呼ぶ)2.12gを得た。この合成法はJournal of American chemical Society,2006年,128号,10930−10933頁記載の方法に準拠した。
【0063】
TBEHS 2.96gをテトラヒドロフラン70mlに溶解させた後、反応容器内を窒素置換し、メチルマグネシウムブロミド(1M n−ヘキサン溶液)6.16ml(東京化成(株)製)を30分かけて滴下した後、室温で30分攪拌した。Ni(dppp)Cl 10mgをテトラヒドロフラン10mlに懸濁させたものを5分かけて滴下し、還流条件下、12時間攪拌した。25℃まで冷却し、濃度1Mの塩酸12mlとメタノール247mlの混合溶液を加え、析出物を濾取した。ソックスレー抽出器を用いて、ヘキサン、メタノールの順に洗浄し、クロロホルムで抽出した。メタノールを加え、析出物を濾取し、ポリ−3−ブロモ−4−(2−エチルヘキシル)セレノフェン−2,5−ジイル(以降、PBEHSと呼ぶ)1.8gを得た。この合成法はChemistry of Materials,2005年,17号,3317−3319頁、及びJournal of American chemical Society,1995年,117号,233−244頁、及びAdvanced Materials,1999年,11号,250−253頁、及びMacromolecules,2001年,34号,4324−4333頁記載の方法に準拠した。
【0064】
(製造例5)
ポリセレノフェン誘導体として、ポリ−3−ヒドロキシ−4−ヘキシルセレノフェン−2,5−ジイル(以降、PHHSと呼ぶ。一般式(8)で示される化合物)を合成した。
【0065】
【化7】

【0066】
PHHS(一般式(8))の合成
DBS(製造例1の中間体)4.04gをテトラヒドロフラン5mlに溶解させた後、[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)クロリド(以降、Ni(dppp)Clと呼ぶ)0.152g(和光純薬(株)製)を懸濁させ、反応容器内を窒素置換した後、n−ヘキシルマグネシウムブロミド(1M n−ヘキサン溶液)50ml(東京化成(株)製)を30分かけて滴下した後、室温で40時間攪拌した。n−ヘキサン50mlを加え、濃度3Mの塩酸50mlで中和した後、硫酸マグネシウムで水溶液を飽和させる事で水層と有機層を分離させ、分液により有機層を得た。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;n−ヘキサン)で精製し、3−ブロモ−4−ヘキシルセレノフェン(以降、BHSと呼ぶ)1.08gを得た。この合成法はThin Solid Films,2008年,516号,3978−3988頁、及びChemistry of Materials,1994年,6号,640−649頁記載の方法に準拠した。
【0067】
BHS 1.02gとマグネシウム0.11gをTHF3mlに加え、反応容器内を窒素置換した後、BH(90% SMe溶液)(アルドリッチ(株)製)0.06gを加え、還流条件下、3時間攪拌した。25℃まで冷却した後、水1ml、濃度1Mの水酸化ナトリウム水溶液1.8ml、濃度30%の過酸化水素水溶液の順に加え、10℃で1時間攪拌した。濃塩酸1ml、酢酸エチル50mlを加え、有機層を分離し、飽和食塩水で有機層を洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;n−ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、3−ヒドロキシ−4−ヘキシルセレノフェン(以降、HHSと呼ぶ)0.45gを得た。この合成法はChemistry a European journal,2003年,9号,1922−1932頁記載の方法に準拠した。
【0068】
HHS 2.02gをテトラヒドロフラン70mlに溶解させた後、反応容器内を窒素置換し、0℃まで冷却した。N−ブロモスクシンイミド1.22g(和光純薬(株)製)をテトラヒドロフラン7mlに溶解させたものを5分かけて滴下した後、0℃で1時間攪拌した。n−ヘキサン50mlを加え、濃度1Mのチオ硫酸ナトリウム水溶液で有機層を2回洗浄し、飽和食塩水で有機層を2回洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;n−ヘキサン)で精製し、2,5−ジブロモ−3−ヒドロキシ−4−ヘキシルセレノフェン(以降、DBHHSと呼ぶ)2.25gを得た。この合成法はJournal of American chemical Society,2006年,128号,10930−10933頁記載の方法に準拠した。
【0069】
DBHHS 2.40gをテトラヒドロフラン70mlに溶解させた後、反応容器内を窒素置換し、メチルマグネシウムブロミド(1M n−ヘキサン溶液)6.16ml(東京化成(株)製)を30分かけて滴下した後、室温で30分攪拌した。Ni(dppp)Cl 10mgをテトラヒドロフラン10mlに懸濁させたものを5分かけて滴下し、還流条件下、12時間攪拌した。25℃まで冷却し、濃度1Mの塩酸12mlとメタノール247mlの混合溶液を加え、析出物を濾取した。ソックスレー抽出器を用いて、ヘキサン、メタノールの順に洗浄し、クロロホルムで抽出した。メタノールを加え、析出物を濾取し、ポリ−3−ヒドロキシ−4−ヘキシルセレノフェン−2,5−ジイル(以降、PHHSと呼ぶ)0.94gを得た。この合成法はChemistry of Materials,2005年,17号,3317−3319頁、及びJournal of American chemical Society,1995年,117号,233−244頁、及びAdvanced Materials,1999年,11号,250−253頁、及びMacromolecules,2001年,34号,4324−4333頁記載の方法に準拠した。
【0070】
(実施例1)
(透明電極(Y)の作成)
透明基板及び透明導電膜として、大きさが25mm角でシート抵抗が10Ω/cm−2のITO膜付きポリエチレンテレフタレート(以降、PETと呼ぶ)フィルムを用いた。そして、そのITO膜上に所定形状のマスクを形成した後、これを1N塩酸に1時間浸漬する事でITO膜のパターニングを行い、透明電極を形成した。
【0071】
(正孔取出し層(i−1)の作成)
上記の様にしてITO膜からなる透明電極が形成されたPETフィルム上に1.3重量%のポリ(スチレンスルホン酸塩)/ポリ(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ダイオキシン)(以降、「PEDOT/PSS」と呼ぶ)(バイエル社製、品名BaytronP)をスピンコートし、120℃で30分間乾燥する事で厚さが約100nmのPEDOT/PSS膜を形成し、これを正孔取出し層(i−1)とした。
【0072】
(光電変換層(E)の作成)
更に、PEDOT/PSS膜よりも少し大きい範囲にPC(MOEO)S(製造例1で合成したポリセレノフェン誘導体)/PCBM(フロンティアカーボン(株)製)(重量比は1/0.5)の混合溶液(5.0mLのクロロベンゼン中にPFHS:PCBM=75mg:37.5mgを溶解させたもの)を前記正孔取出し層(i−1)上にスピンコートした後、窒素気流下で6分150℃で乾燥を行い、光電変換層(E)を形成した。
【0073】
(電子取出し層(i−2)の作成)
更に光電変換層(E)の上に、電子取り出し層(i−2)としてチタンテトライソプロポキシド(和光純薬(株)製)10μLをエタノール3mLに溶解させたものをスピンコートした後、室内に30分放置する事で加水分解を起こさせ、二酸化チタン(TiO)層を形成した。
【0074】
(対抗電極の作成)
最後に、電子取出し層(i−2)の上に、対抗電極として、厚さ125nmのAl膜を前記光電変換層上に真空蒸着により形成した。以上の様にして光電変換素子(P−1)を製造した。
【0075】
(実施例2)
実施例1における、PC(MOEO)S/PCBM混合溶液を、PPPS(製造例2で合成したポリセレノフェン誘導体)/PCBM混合溶液に置き換えた以外は、実施例1と同様にして光電変換素子(P−2)を形成した。具体的な混合溶液としては、5.0mLのクロロベンゼン中にPPPS:PCBM=75mg:37.5mgを含むものを用いた。
【0076】
(実施例3)
実施例1における、PC(MOEO)S/PCBM混合溶液を、PSPS(製造例3で合成したポリセレノフェン誘導体)/PCBM混合溶液に置き換えた以外は、実施例1と同様にして光電変換素子(P−3)を形成した。具体的な混合溶液としては、5.0mLのクロロベンゼン中にPSPS:PCBM=75mg:37.5mgを含むものを用いた。
【0077】
(実施例4)
実施例1における、PC(MOEO)S/PCBM混合溶液を、PBEHS(製造例4で合成したポリセレノフェン誘導体)/PCBM混合溶液に置き換えた以外は、実施例1と同様にして光電変換素子(P−4)を形成した。具体的な混合溶液としては、5.0mLのクロロベンゼン中にPBEHS:PCBM=75mg:37.5mgを含むものを用いた。
【0078】
(実施例5)
実施例1における、PC(MOEO)S/PCBM混合溶液を、PHHS(製造例5で合成したポリセレノフェン誘導体)/PCBM混合溶液に置き換えた以外は、実施例1と同様にして光電変換素子(P−5)を形成した。具体的な混合溶液としては、5.0mLのクロロベンゼン中にPHHS:PCBM=75mg:37.5mgを含むものを用いた。
【0079】
(比較例1)
実施例1における、PFHS/PCBM混合溶液を、ポリ−3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル(以降、P3HTと呼ぶ)(和光純薬株式会社製、品名044746)/PCBM混合溶液に置き換えた以外は、実施例1と同様にして光電変換素子(P’−1)を形成した。具体的な混合溶液としては、5.0mLのクロロベンゼン中にP3HT:PCBM=75mg:37.5mgを含むものを用いた。
【0080】
(光電変換素子の評価方法)
ソーラーシュミレーター(関西科学機械(株)製:XES−502S)の擬似光(空気通過量AM1.5G、入射エネルギー100mW/cm)を光電変換素子に照射し、光電変換素子特性を測定した。照射条件:温度25℃
【0081】
KEITHLEY MODEL2400ソースメーターを使用して、I(電流)−V(電圧)曲線を測定し、Isc(短絡電流)、Voc(開放電圧)、IMAX(最大出力点における電流)、VMAX(最大出力点における電圧)を得た。
一般に光電変換素子の光電変換効率は次式で示される。
光電変換効率η=Jsc(短絡電流密度)×Voc(開放電圧)×ff(形状因子)/入射エネルギー
ここで、Jsc(短絡電流密度)、およびff(形状因子)は次式で求めた。
形状因子ff=(IMAX×VMAX)/(Isc×Voc
短絡電流密度Jsc=Isc/S(有効受光面積)
ただし、S=2.5cm×2.5cm=6.25cm
測定結果を表1に示した。
【0082】
【表1】

【0083】
前記評価結果より、本発明における、導電性高分子(正孔受容体、正孔輸送層)としてのポリセレノフェン誘導体は、従来の導電性高分子(正孔受容体、正孔輸送層)と比較し、優れた光電変換効率を示す事が立証された。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、太陽電池やカラーセンサー等としての利用に限らず、光電変換素子を備える電子機器、電子部品に広く適用する事ができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(T)上に形成された2つの電極(Y)間に、導電性高分子(d)と電子受容体(a)を含有する光電変換層(E)を有する光電変換素子(P)であって、該導電性高分子(d)が、下記一般式(1)で示されるポリセレノフェン誘導体(D)を含有することを特徴とする、光電変換素子(P)。
【化1】

[式中nは5以上の整数を表す。Rはヒドロキシル基、シアノ基、リン酸基、スルホン酸基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれ、Rは置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、ポリオキシアルキレンアルキル(アリ−ル)エーテル基からなる群より選ばれる基であって、炭素数が1〜20である基である。]
【請求項2】
一般式(1)において、Rはハロゲン原子、Rは置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基である、請求項1に記載の光電変換素子(P)。
【請求項3】
太陽電池素子(S)である請求項1又は2に記載の光電変換素子(P)。
【請求項4】
太陽電池素子(S)がタンデム型太陽電池素子(S1)である請求項3に記載の光電変換素子(P)。
【請求項5】
光センサー素子(U)である請求項1〜4のいずれか1項に記載の光電変換素子(P)。


【図1】
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【公開番号】特開2010−238957(P2010−238957A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86023(P2009−86023)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】