説明

光電変換装置

【課題】 集光板の凸レンズ状部と結晶半導体粒子とを位置決め良く配設することができ、また配設後の各材料の位置ずれや熱膨張差等による応力を緩和させることが可能な光電変換装置を提供すること。
【解決手段】 光電変換装置は、導電性基板1の主面に間隔をおいて設置された複数の結晶半導体粒子2と、下面に各結晶半導体粒子2を覆う凹部10が形成されるとともに上面に各結晶半導体粒子2に集光させる凸レンズ状部9が形成された集光板8とを具備しており、集光板8の厚さ11に対する凹部10の深さ13と凸レンズ状部9の高さ12の和の比が1以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶シリコン粒子等の結晶半導体粒子からなる光電変換素子を用いた集光型の光電変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の集光型の太陽電池としての光電変換装置は、結晶シリコン等から成る結晶半導体の板状体を切断して小面積の光電変換素子を作製し、それらの光電変換素子を間隔を置いて配置し、各光電変換素子上に集光レンズを設けた構成のものが提案されている(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
また、特許文献3に開示されている、結晶半導体粒子(シリコン球)を用いた従来の光電変換装置を図5に示す。第1のアルミニウム箔23に開口を形成し、その開口にp型中心核21の上にn型外郭22を持つシリコン球を挿入し、シリコン球の裏側のn型外郭22を除去し、第1のアルミニウム箔23及びn型外郭22を除去したシリコン球の表面に、絶縁層24を形成し、シリコン球の裏側頂上部の絶縁層を除去した後に、シリコン球と第2のアルミニウム箔26とを、金属接合部25を介して接合して成るものである。なお、図5において、27はシリコン球に集光させるための球状レンズである。
【0004】
この場合、シリコン球間に隙間が生じてしまい、結果として光電変換ロスとなる。そこで、シリコン球間の隙間に入射した光エネルギーを隙間に隣接するシリコン球に引き込むために、シリコン球上にその曲面に平行に球状レンズ27を形成している。
【特許文献1】特開平8−330619号公報
【特許文献2】特開平6−37344号公報
【特許文献3】米国特許第5419782号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2に示された光電変換装置に用いられる光電変換素子は、結晶シリコン等からなる結晶半導体の板状体を切断して小面積の光電変換素子を作製し、光電変換素子間の隔てられた距離をタブ等で接続していく必要があり、製造工程数が多くなり製造が煩雑となるという問題点があった。
【0006】
また、特許文献3に示された光電変換装置は、結晶半導体粒子(シリコン球)の曲面に平行に形成された球状レンズを用いているが、その球状レンズを作製する際に、球状レンズと結晶半導体粒子との位置決めが困難であった。
【0007】
従って、本発明は上記従来の技術における問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、光電変換素子を結晶半導体の板状体を切断する等の煩雑な製造工程を経ずに簡易に製造でき、凸レンズ状部と結晶半導体粒子とを位置決め良く配設することができ、更に配設後の各材料の熱膨張差を緩和させることが可能であり、その結果、半導体の使用量が少なく、軽量化、低コスト化された信頼性の高い光電変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光電変換装置は、導電性基板の主面に間隔をおいて設置された複数の結晶半導体粒子と、下面に前記各結晶半導体粒子を覆う凹部が形成されるとともに上面に前記各結晶半導体粒子に集光させる凸レンズ状部が形成された集光板とを具備しており、前記集光板の厚さに対する前記凹部の深さと前記凸レンズ状部の高さの和の比が1以上であることを特徴とする。
【0009】
本発明の光電変換装置は好ましくは、前記集光板は、その下面に、上面に凹状部を有するとともに下面に凸状部を有する、前記導電性基板の側面に係止される突出部が形成されており、前記突出部の厚さに対する前記凹状部の深さと前記凸状部の高さの和の比が1以上であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、前記集光板は、表面に紫外線吸収材を含有した紫外線吸収層が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光電変換装置は、導電性基板の主面に間隔をおいて設置された複数の結晶半導体粒子と、下面に各結晶半導体粒子を覆う凹部が形成されるとともに上面に各結晶半導体粒子に集光させる凸レンズ状部が形成された集光板とを具備しており、集光板の厚さに対する凹部の深さと凸レンズ状部の高さの和の比が1以上であることから、凹部の底が凸レンズ状部側に入り込む形状となるため、凸レンズ状部が比較的変形し易くなり、各部材の位置ずれや熱膨張等による変形を凸レンズ状部が吸収して、光電変換装置に余計な残留応力等が生じるのを抑制することができる。
【0012】
本発明の光電変換装置は好ましくは、集光板は、その下面に、上面に凹状部を有するとともに下面に凸状部を有する、導電性基板の側面に係止される突出部が形成されており、突出部の厚さ(突出部全体の高さ)に対する凹状部の深さと凸状部の高さの和の比が1以上であることから、導電性基板の側面に係止される突出部が形成されていることによって、集光板を結晶半導体粒子上に透明な充填剤等を介して配設する際に、集光板の凸レンズ状部と結晶半導体粒子とが位置決め良く配設されることとなる。
【0013】
また、突出部の厚さ(突出部全体の高さ)に対する凹状部の深さと凸状部の高さの和の比が1以上であるために、凹状部の底が凸状部へ入り込む形状となり、凸状部が比較的変形し易くなり、各部材の位置ずれや熱膨張等による変形を凸状部が吸収して、光電変換装置に余計な残留応力等が生じるのをさらに抑制することができる。従って、より信頼性が高い光電変換装置を提供することが可能となる。
【0014】
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、集光板は、表面に紫外線吸収材を含有した紫外線吸収層が設けられていることから、紫外線による集光板等の劣化を抑えて、光電変換装置の耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の光電変換装置について実施の形態の例を図面に基づいて以下に詳細に説明する。
【0016】
図1〜図4は、本発明の光電変換装置の実施の形態の例を示す断面図である。これらの図において、1は導電性基板、2は粒状光電変換体を構成する結晶半導体粒子、3は絶縁層、4は粒状光電変換体を構成する半導体層(半導体部)、5は透光性導電層、6は導電性基板1を成す例えばアルミニウムと結晶半導体粒子を成す例えばシリコンとの合金層、7は透明な第1充填層、8は集光板、9は集光板8の凸レンズ状部、10は集光板8の凹部、14は集光板8の導電性基板1の側面に係止される突出部、18は集光板8の表面に形成された紫外線吸収層、19は第2充填層、20は裏面保護層である。
【0017】
本発明の光電変換装置は、導電性基板1の主面に間隔をおいて設置された複数の結晶半導体粒子2と、下面に各結晶半導体粒子2を覆う凹部10が形成されるとともに上面に各結晶半導体粒子2に集光させる凸レンズ状部9が形成された集光板8とを具備しており、集光板8の厚さ(集光板8全体の厚み)11に対する凹部10の深さ13と凸レンズ状部9の高さ12の和の比が1以上である構成である。
【0018】
本発明の導電性基板1は、アルミニウム,アルミニウムの融点以上の融点を有する金属,セラミックス等から成ればよく、例えばアルミニウム,アルミニウム合金,鉄,ステンレススチール,ニッケル合金,アルミナセラミックス等から成る。導電性基板1の材料がアルミニウム以外の場合、その材料からなる基板上にアルミニウムから成る導電層を形成したものとする。また、導電性基板1は、それ自体がアルミニウムからなるものでもよく、また、絶縁基板の上にアルミニウム等から成る導電層を設けたものとしてもよい。
【0019】
以下、本発明の光電変換装置の製造方法にしたがって各部について説明する。
【0020】
まず、複数(例えば数千個〜数10万個)の第1導電型(例えばp型)の結晶半導体粒子2を導電性基板1上に間隔を置いて配設する。この結晶半導体粒子2は、Si等に、p型を呈するためのB,Al,Ga等またはn型を呈するためのP,As等の元素が微量含まれているものである。
【0021】
なお、以下の実施の形態では、導電性基板1がアルミニウム、結晶半導体粒子2がシリコンからなる場合について説明する。
【0022】
結晶半導体粒子2の形状としては、凸曲面を持つことによって入射光の光線角度の依存性を小さくできる球状等の形状がよい。隣接する結晶半導体粒子2同士の間の間隔は、結晶半導体粒子2の使用量を少なくするために広い方がよいが、より好適には結晶半導体粒子2の半径(粒径の1/2)よりも広い間隔がよく、その場合結晶半導体粒子2を最密に配設したときに比べて結晶半導体粒子2の個数が約1/2以下となる。
【0023】
結晶半導体粒子2の粒径は0.2〜0.8mmがよい。0.8mmを超えると、そのシリコン使用量が、従来の結晶シリコンの板状体(母板:ウエハ)から切り出して作製する板状体(バルク)タイプの光電変換装置であって、切削部も含めた光電変換装置におけるシリコン使用量と変わらなくなり、結晶半導体粒子2を用いるメリットがなくなる。また、0.2mmよりも小さいと、導電性基板1へのアッセンブルがしにくくなるという問題が発生する。従って、結晶半導体粒子2の粒径は、シリコン使用量との関係から0.2〜0.6mmがより好適である。
【0024】
本発明の結晶半導体粒子2は、シリコン等の融液を落下させつつ固化し粒状とする溶融落下法(ジェット法)等の方法により形成される。
【0025】
次に、導電性基板1上に結晶半導体粒子2を間隔を置いて配設した後、結晶半導体粒子2の上方から一定の加重をかけて導電性基板1を成すアルミニウムと結晶半導体粒子2を成すシリコンとの共晶温度(577℃)以上に加熱することによって、導電性基板1と結晶半導体粒子2の合金層6を形成し、その合金層6を介して導電性基板1と結晶半導体粒子2を接合させる。
【0026】
次に、結晶半導体粒子2間の導電性基板1上に絶縁層3を形成する。この絶縁層3は、正極と負極の分離を行うための絶縁材料からなり、例えばSiO,B,Al,CaO,MgO,P,LiO,SnO,ZnO,BaO,TiO等を任意成分とする材料の低温焼成用ガラス材料、上記材料の1種または複数種から成るフィラーを複合したガラス組成物、或いはシリコーン樹脂等の有機系の絶縁物質などから成る。
【0027】
上記絶縁材料のペースト、溶液、又は液体を結晶半導体粒子2上から塗布して、アルミニウムとシリコンの共晶温度である577℃以下の温度で加熱することによって、結晶半導体粒子2間の隙間に充填し、焼成固化或いは熱硬化させて絶縁層3とする。この場合、加熱温度が577℃を超えると、アルミニウムとシリコンとの合金層6が溶融し始めるために、導電性基板1と結晶半導体粒子2との接合が不安定となり、場合によっては結晶半導体粒子2が導電性基板1から離脱して発電電流を取り出せなくなる。また、絶縁層3を形成した後、結晶半導体粒子2の表面を洗浄するために、弗酸を含む洗浄液で洗浄する。
【0028】
結晶半導体粒子2の表層には半導体層4が形成されているが、半導体層4の形成は、結晶半導体粒子2の導電性基板1への接合前に行ってよく、または接合後に行うこともできる。
【0029】
半導体層4は例えば、オキシ塩化リンをバブリングさせた石英管中で高温に保持することで結晶半導体粒子2の表面に、リンをドーピングさせることによってn型層を形成する。また、気相成長法等で例えばシラン化合物の気相に、n型を呈するためのリン系化合物の気相、またはp型を呈するためのホウ素系化合物の気相を微量導入して形成する。半導体層4の膜質としては、結晶質、非晶質、結晶質と非晶質とが混在するもののいずれでもよいが、光線透過率を考慮すると、結晶質または結晶質と非晶質とが混在するものでもよい。
【0030】
半導体層4中の微量元素の濃度は、例えば1×1016〜1×1021原子/cm程度である。さらに、半導体層4は、結晶半導体粒子2の表面の凸形曲面に沿って形成されることが好ましい。結晶半導体粒子2の凸形曲面の表面に沿って形成されることによって、pn接合の面積を広く稼ぐことができ、結晶半導体粒子2の内部で生成したキャリアを効率よく収集することが可能となる。
【0031】
なお、第1導電型の結晶半導体粒子2の外郭に、第2導電型、つまり結晶半導体粒子2がp型の場合にn型を呈するP,As等、または結晶半導体粒子2がn型の場合にp型を呈するB,Al,Ga等の元素が微量含まれている結晶半導体粒子2を用いる場合には、結晶半導体粒子2の表面に形成した半導体層4はなくてもよい。この場合、結晶半導体粒子2の外郭(表層部)に、P,As等またはB,Al,Ga等の元素を熱拡散法等によって拡散させればよく、半導体層4は結晶半導体粒子2自体の表面から深さ方向に形成されたもの(半導体部)となる。また、この場合、結晶半導体粒子2の上に透光性導電層5を直接形成してもよい。
【0032】
次に、半導体層(半導体部)4上に、導電性基板1を一方の電極とした場合に他方の電極を兼ねる透光性導電層5を形成する。
【0033】
この透光性導電層5は、SnO,In,ITO,ZnO,TiO等から選ばれる1種または複数種の酸化物系膜等から成り、スパッタリング法、気相成長法、あるいは塗布焼成法等で形成される。透光性導電層5は、膜厚を選べば反射防止膜としての効果も付与できる。
【0034】
なお、透光性導電層5は透明であり、結晶半導体粒子2がない部分で入射光の一部が透光性導電層5を透過し、下方の導電性基板1で反射して結晶半導体粒子2に照射されることによって、光電変換装置全体に照射される光エネルギーを効率よく結晶半導体粒子2に導いて照射させることが可能となる。
【0035】
透光性導電層5は、半導体層(半導体部)4の表面に沿って形成されること、即ち結晶半導体粒子2の凸形曲面に沿って形成されることが好ましい。この場合、pn接合の面積を広く稼ぐことができ、結晶半導体粒子2の内部で生成したキャリアを効率よく収集することができる。
【0036】
また、半導体層4あるいは透光性導電層5上に保護層(不図示)を形成してもよい。このような保護層としては、透明誘電体の特性を持つものがよく、CVD法やPVD法等によって、例えば酸化珪素,酸化セシウム,酸化アルミニウム,窒化珪素,酸化チタン,酸化タンタル,酸化イットリウム等を、単一組成または複数組成で、単層または複数層の積層構造として、半導体層4または透光性導電層5上に形成する。この保護層は、光の入射側にあるために、透明性が必要であり、また半導体層4または透光性導電層5と外部との間の電流リークを防止するために、誘電体であることが必要である。なお、保護層の膜厚を最適化すれば、反射防止膜としての機能も付与できる。
【0037】
透光性導電層5と外部端子との間の直列抵抗値を低くするために、隣接する結晶半導体粒子2間の透光性導電層5の上に、集電極として一定間隔のフィンガー電極(不図示)及びバスバー電極(不図示)から成るパターン電極を設けて、半導体層4と電気的に接続してもよい。結晶半導体粒子2上を避けてフィンガー電極を設けることによって、フィンガー電極によって結晶半導体粒子2上に陰を形成する領域ができるのをなくすことができ、入射光を効率よく光電変換することが可能となる。
【0038】
次に、透光性導電層5及び集電極上に、各結晶半導体粒子2上に凸レンズ状部9が配置されるように、透明樹脂等からなる集光板8を配置する。集光板8の光入射面(上面)には、入射光を効率良く各結晶半導体粒子2に照射させるための凸レンズ状部9を形成する。また、集光板8の下面には各結晶半導体粒子を覆う凹部10を形成する。凹部10は、各結晶半導体粒子2の表面の曲面にほぼ合致した曲面を有していれば良く、導電性基板1上に集光板8を配置して、集光板8と光電変換素子を第1充填層7を介して配設する際に、集光板8の凸レンズ状部9と光電変換素子の結晶半導体粒子2とが位置決め良く配設されることが可能となる。
【0039】
そして、集光板8と裏面保護層20あるいは導電性基板1との熱膨張差による応力を緩和させるために、図2(a),(b)に示す様に、集光板8の厚さ11に対する、凸レンズ状部9の高さ12と凹部10の深さ13との和(高さ12+深さ13)の比{(高さ12+深さ13)/厚さ11}を1以上にする。なお、図2(b)に示すように、集光板8の表面に紫外線吸収層18が形成されている場合、集光板8の厚さ11は、紫外線吸収層18の厚みを加えたものとする。
【0040】
この構成により、凹部10の底が凸レンズ状部9側に入り込む形状となるため、凸レンズ状部9が比較的変形し易くなり、各部材の位置ずれや熱膨張等による変形を凸レンズ状部9が吸収して、光電変換装置に余計な残留応力等が生じるのを抑制することができる。即ち、集光板8全体の凹凸を蛇腹のように機能させることによって集光板8に伸縮性をもたせて、各部材の熱膨張差による応力を集光板8全体で緩和させることができる。
【0041】
上記の比{(高さ12+深さ13)/厚さ11}は、1以上1.6以下であることが好ましい。1.6を超えると、凸レンズ状部9の厚みが薄くなり強度が低下すると共に、第1充填層7の体積が大きくなり高コストになり易い。
【0042】
なお、集光板8の厚さ11は0.35〜0.6mm程度、凸レンズ状部9の高さ12は0.2〜0.35mm程度、凹部10の深さ13は0.1〜0.3mm程度がよい。
【0043】
集光板8の厚さ11が0.35mm未満では、金型等を用いて形成できる凸レンズ状部9の厚みが制限されて望ましい集光率が得られないとともに、薄い個所の厚みがとれず破損しやすくなる。集光板8の厚さ11が0.6mmを超えると、微細に形状加工された2枚の金型等によって挟み込んで加熱成型して集光板8を作製するときに、表面と内部の中央部とに温度差が生じて集光板8の形状が崩れ易くなる。
【0044】
凸レンズ状部9の高さ12が0.2mm未満では、集光率が低下して、少ないシリコン等の半導体材料を用いて高い光電変換効率を維持することが難しくなる。凸レンズ状部9の高さ12が0.35mmを超えると、太陽光等の光が斜めから入射するときに望ましい集光率が得られ難い。
【0045】
凹部10の深さ13が0.1mm未満では、導電性基板1に接合されたが結晶半導体粒子2を凸レンズ状部9により十分に覆うことができず、その結果結晶半導体粒子2に対して凸レンズ状部9が水平方向にずれ易くなる。凹部10の深さ13が0.3mmを超えると、結晶半導体粒子2の高さよりも深い凹部となってしまうため、結晶半導体粒子2上にEVA等の透明樹脂シートを介して集光板8を載置し高い圧力をかけて透明樹脂シートを熱硬化させるときに、集光板8が変形したり位置ずれを起こして、光電変換装置の設計形状がゆがんでしまい、望ましい集光率が得られ難くなる。
【0046】
本発明の光電変換装置において好ましくは、図3に示すように、導電性基板1の側面に係止される突出部14を集光板8に予め設けておくことによって、導電性基板1上に集光板8を配置する際に位置決め良く配置させることが可能となる。
【0047】
この場合にも、図4に示すように、突出部14の厚さ15に対する、突出部14の凸状部の高さ16と突出部14の凹部の深さ17との和の比{(高さ16+深さ17)/厚さ15}を1以上にすることが好ましい。
【0048】
この構成によって、凹状部の底が凸状部へ入り込む形状となり、凸状部が比較的変形し易くなり、各部材の位置ずれや熱膨張等による変形を凸状部が吸収して、光電変換装置に余計な残留応力等が生じるのをさらに抑制することができる。即ち、集光板8全体の凹凸を蛇腹のように機能させることによって集光板8に伸縮性をもたせて、各部材の熱膨張差による応力を集光板8全体で緩和させるという効果をさらに高めることができる。
【0049】
上記の比{(高さ16+深さ17)/厚さ15}は、1以上3以下であることが好ましい。3を超えると、凸状部の側部の厚みが薄くなり強度が低下する。
【0050】
なお、突出部14の厚さ15は0.4〜1mm程度、突出部14の凸状部の高さ16は0.2〜0.7mm程度、突出部14の凹部の深さ17は0.2〜0.35mm程度がよい。
【0051】
突出部14の厚さ15が0.4mm未満では、導電性基板1(厚み0.3〜0.6mm)の貫通孔への挿入長さ及び導電性基板1の側面への係止長さが短くなり、集光板8が突出部14の部位ですぐに浮き上がってしまい、突出部14によって集光板8が安定に係止され難くなる。突出部14の厚さ15が1mmを超えると、突出部14の側部が薄くなり強度が低下し易くなる。
【0052】
突出部14の凸状部の高さ16が0.2mm未満では、結晶半導体粒子2の径が大きかったり、集光板8と導電性基板1の間に充填されている透明樹脂等の厚みが厚くなったときに、集光板8の位置決めが困難になる。突出部14の凸状部の高さ16が0.7mmを超えると、導電性基板1の厚みより長くなってしまい、外部の部品や装置のじゃまになる場合がある。
【0053】
突出部14の凹部の深さ17が0.2mm未満では、突出部14が硬くなりすぎて、導電性基板1の貫通孔に入り難くなる。突出部14の凹部の深さ17が0.35mmを超えると、突出部14の形が崩れ易くなり、突出部14を導電性基板1の貫通孔に挿入する際に突出部14が破損し易くなる。
【0054】
また、図3のように、導電性基板1の主面に貫通孔を形成しておき、その貫通孔に集光板8に設けた突出部14を挿入することにより、集光板8の位置決めをより確実にすることもできる。
【0055】
集光板8の材料としては、透明で成形性がよいものであればよく、例えばアクリル,ポリエチレン,EVA(エチレンビニルアセテート),シリコーン系樹脂,ポリカーボネート,ポリアミド,その他の透明樹脂がよい。より好ましくは、建築物の屋根等に設置される場合に隣接家屋の火災時の延焼防止という製品の性格上、難燃性の材料であればよく、シリコーン系樹脂,ポリカーボネート,ポリアミド等がよい。
【0056】
集光板8を形成する方法としては、上記の透明樹脂からなるシートを、導電性基板1上に配設された多数の結晶半導体粒子2のネガ形状(多数の凸形状)を有する下金型と、凸レンズ状部9のネガ形状(多数の凹形状)を有する上金型との間に挟み込んで、圧縮成形法等の成形方法で形成する。
【0057】
さらに、集光板8の耐候性及び耐光性(耐紫外線性等)を向上させるために、集光板8の表面に紫外線吸収層18を設ける。紫外線吸収層18は、紫外線吸収材を含有させた透明材料がよく、例えば主材料としてポリフッ化ビニル(PVF),エチレン−4フッ化エチレン共重合体(ETFE),ポリ3フッ化塩化エチレン(PCTFE)等のフッ素樹脂、アクリル系樹脂、シリカ化合物系の材料等に、ベンゾフェノン系,ベンゾトリアゾ−ル系,ベンゾエート系,サリシエート系,シアノアクリレート系等の紫外線吸収材を0.1〜5重量%、より好ましくは0.4〜4重量%程度含有させた樹脂で構成する。また主材料が集光板8よりも屈折率の低い材料で構成しても良く、この場合、集光板8の表面反射を低減させて、入射光の利用効率を向上させることもできる。
【0058】
また、導電性基板1の上面及び下面には、第1充填層7と第2充填層19を、集光板8の材料と同様の材料を使って設け、さらに第2充填層19の下面には裏面保護層20を積層してもよい。裏面保護層20の材料としては、例えばポリフッ化ビニル(PVF),エチレン−4フッ化エチレン共重合体(ETFE),ポリ3フッ化塩化エチレン(PCTFE)等のフッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂が単層または複層で構成される。また裏面保護層20としては、これらの樹脂を使ってアルミ箔や金属酸化膜を挟んで張り合わせたシート,ガラス,ステンレス等の金属シート等もある。
【0059】
なお、本発明においては、上述した構成の光電変換素子(1個の結晶半導体粒子2を有する光電変換の単位体)を1つ設けるか、または複数を接続(直列、並列または直並列に接続)した光電変換装置とすることができる。さらに、光電変換装置を1つ設けるか、または複数を接続(直列、並列または直並列に接続)したものを発電手段として用い、この発電手段から直接直流負荷へ発電電力を供給するようにしてもよい。また、その発電手段をインバータ等の電力変換手段を介して発電電力を適当な交流電力に変換した後、この発電電力を商用電源系統や各種の電気機器等の交流負荷に供給することが可能な発電装置としてもよい。さらに、このような発電装置を日当たりのよい建物の屋根や壁面に設置する等して、各種態様の太陽光発電システム等の光発電装置として利用することも可能である。
【実施例1】
【0060】
本発明の光電変換装置の実施例を図1〜図4に基づいて説明する。
【0061】
まず、光電変換装置を以下のようにして作製した。アルミニウム製の導電性基板1の主面上に、結晶半導体粒子2として直径約0.3mmのp型の結晶シリコン粒子の多数個(3万個)を、その直径の約0.6倍の間隔を互いにあけて配置し、結晶シリコン粒子の上方から加熱板によって0.05MPaの圧力を加えつつアルミニウムとシリコンの共晶温度である577℃以上の温度で約10分加熱して、多数個の結晶シリコン粒子を導電性基板1上に接合した。
【0062】
次に、導電性基板1上の多数個の結晶シリコン粒子の間に、ポリイミドからなる絶縁層3を充填し形成した。その後、結晶シリコン粒子の上部表面を洗浄し、結晶シリコン粒子及び絶縁層3の上に、オキシ塩化リンを用いた熱拡散法によって、n型の結晶質シリコンからなる半導体層4を、300nmの厚みで形成した。
【0063】
次に、透光性導電層5としてのITO膜を、半導体層4上に80nmの厚みで形成した。透光性導電層5と外部端子との間の直列抵抗値を低くするために、隣接する結晶シリコン粒子間の透光性導電層5上に、集電極として熱硬化型の銀ペーストからなる一定間隔のフィンガー電極及び銅箔からなるバスバー電極を設け、1つのユニットの光電変換装置を作製し、複数のユニットをバスバー電極である銅箔の端部を電気的に接続することによって、直列に接続した。
【0064】
次に、表面に紫外線吸収層18として厚み約40μmの紫外線吸収材を含有させたアクリル層を設けた、集光板8となるポリカーボネートフィルムを、上金型と下金型の間に挟み込んで、断面形状が図2の形状になるように、真空圧縮成形法によって集光板8を作製した。このとき、圧縮時間、ポリカーボネートフィルムの厚み及び金型の形状を変えることによって、各種形状の集光板8を成形した。
【0065】
作製した集光板8と、上記の複数のユニットを接続して成る光電変換装置との間に、厚み60μmのEVAからなる第1充填層7を挟み込み、更に光電変換装置の導電性基板1の下面に厚み0.4mmのEVAからなる第2充填層19及びPVF層/PET層/PVF層の3層構造からなる裏面保護層20を積層して、真空ラミネーターで貼り合わせて光電変換装置を各10個作製した。各種光電変換装置について、その反り、及び実施例1aの平均値を1としたときの光電変換効率の平均値(光電変換効率比)を、表1に示す。
【0066】
なお、表1において、集光板8の厚さ11に対する、凸レンズ状部9の高さ12と凹部10の深さ13の和の比をレンズ部比とした。また、集光板8に予め設けておいた導電性基板1の側面に係止される突出部14の厚さ15に対する、突出部14の凸状部の高さ16と突出部14の凹状部の深さ17の和の比を突出部比とした。
【表1】

【0067】
比較例1,2に示すように、レンズ部比が小さくなるにしたがって反りが大きくなり、光電変換特性も低下した。
【0068】
一方、レンズ部比が1以上の実施例1a,1bは、反りがきわめて小さくなり、光電変換特性も変わらなかった。
【0069】
また、実施例1d,1eに示すように、突出部比が小さくなるにしたがって反りが大きくなったが、突出部比が1以上の実施例1a,1cは反りがきわめて小さくなった。
【0070】
以上より、集光板8が伸縮する構造になることによって光電変換装置の応力を緩和したものと考えられる。
【実施例2】
【0071】
実施例1と同様にして、紫外線吸収層18の厚みを変えて集光板8を作製し、実施例1と同様にして光電変換装置を作製した。
【0072】
実施例2aはレンズ部比を1.17、突出部比を1.10とし、実施例2bはレンズ部比を1.17、突出部比を1.10としたものである。また、実施例2cはレンズ部比を1.17、突出部比を1.10とし、実施例2dはレンズ部比を1.17、突出部比を1.10としたものである。
【0073】
これらの光電変換装置について、紫外線照射装置(岩崎電気社製、スーパーUVテスター(SUV))を用いて、100℃の環境下で紫外線照射試験を1000時間行い、試験前後の光電変換効率の変化を測定した結果を表2に示す。なお、表2の光電変換効率比は、試験前の光電変換効率を1としたときの試験後の光電変換効率の比を示す。
【表2】

【0074】
実施例2a,2bは光電変換効率比が0.91以上であり、光電変換効率の低下の変化率が10%以内であり、光電変換効率の低下は小さかった。
【0075】
一方、実施例2c,2dは光電変換効率比が0.89,0.82と光電変換効率の低下の変化率が10%を超えており、光電変換効率の低下が大きくなった。
【0076】
以上の結果より、紫外線吸収層18の厚みは20μm以上がよいことが分かった。
【0077】
なお、本発明は、上記の実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の光電変換装置について実施の形態の1例を示す断面図である。
【図2】(a),(b)は本発明の光電変換装置における集光板の実施の形態の2例をそれぞれ示す断面図である。
【図3】本発明の光電変換装置について実施の形態の他例を示す断面図である。
【図4】本発明の光電変換装置における集光板の実施の形態の1例を示す要部断面図である。
【図5】従来の光電変換装置の1例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0079】
1・・・導電性基板
2・・・結晶半導体粒子
3・・・絶縁層
4・・・半導体層
5・・・透光性導電層
7・・・第1充填層
8・・・集光板
9・・・凸レンズ状部
10・・・凹部
11・・・集光板の厚さ
12・・・凸レンズ状部の高さ
13・・・凹部の深さ
14・・・突出部
15・・・突出部の厚さ
16・・・凸状部の高さ
17・・・凹状部の深さ
18・・・紫外線吸収層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基板の主面に間隔をおいて設置された複数の結晶半導体粒子と、下面に前記各結晶半導体粒子を覆う凹部が形成されるとともに上面に前記各結晶半導体粒子に集光させる凸レンズ状部が形成された集光板とを具備しており、前記集光板の厚さに対する前記凹部の深さと前記凸レンズ状部の高さの和の比が1以上であることを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記集光板は、その下面に、上面に凹状部を有するとともに下面に凸状部を有する、前記導電性基板の側面に係止される突出部が形成されており、前記突出部の厚さに対する前記凹状部の深さと前記凸状部の高さの和の比が1以上であることを特徴とする請求項1記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記集光板は、表面に紫外線吸収材を含有した紫外線吸収層が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の光電変換装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−60207(P2008−60207A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233301(P2006−233301)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】