説明

光電気複合配線板の製造方法、及び前記製造方法により製造された光電気複合配線板

【課題】光導波路と電気回路を高密着に複合化でき、受発光素子と光回路の結合損失や、光導波路の損失のない光電気複合配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】基板16上に形成された第1クラッド層12上にコア13を形成するコア形成工程と、第1クラッド層12上に形成されたコアを埋設するように、未硬化の樹脂組成物を含む第2クラッド材料層17を積層してクラッド層を形成するクラッド層形成工程と、前記第2クラッド材料層17上に、少なくとも片側の表面が粗面化された金属基材層16を形成する金属基材層形成工程と、前記第2クラッド材料層17の未硬化樹脂組成物を硬化して第2クラッド層18とする硬化工程と、前記金属基材層16上に電気回路を形成する電気回路形成工程と、を有することを特徴とする光電気複合配線板の製造方法を用いる。金属基材の表面粗さRzが、0.5μm以上5μm以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電気複合配線板の製造方法、前記製造方法により製造された光電気複合配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来において、FTTH(Fiber To The Home)や車載分野の長距離、中距離通信における伝送媒体として光ファイバーが用いられることが主流であった。しかしながら、近年1m以内の短距離においても光媒体を用いた高速伝送が必要となってきている。この短距離での高速伝送では、前記光ファイバーではなく、高密度配線(狭ピッチ、分岐、交差、多層化等)、表面実装性、電気基板との一体化、小径での曲げが可能であることから、光導波路型の光配線板が適している。
【0003】
前記光配線板とするには、大別すると2種類の置き換えが必要である。1つはプリント配線板に使用されてきたプリント基板(PWB)の置き換えであり、もう1つは小型端末機器のヒンジに使用するフレキシブルプリント基板(FPC)の置き換えである。いずれのタイプも、受発光素子であるVCSEL(Vertical Cavity Surface Emmiting Laser)、PD(Photo Diode)、又はIC等を動作させるための電気配線や低速信号の伝送が不可欠であることから、光回路と電気回路が混載された光電気複合配線板の形態が理想的である。
【0004】
上述のような光電気複合配線板の形態とするために光導波路と電気回路を複合化する方法として、例えば、光導波路に直接金属層を形成する方法がある。光導波路に直接金属層を形成させるためには、材料が化学的処理により凹凸が形成させ、アンカー効果が得られるようにする必要がある。しかしながら、通常の材料は透明性を有しているために組織が均一であり、この材料にメッキの前処理である過マンガン酸処理を行ったとしても、エッチングレートが等しく、全体的に厚みが減少するだけで凹凸が得られにくい。
【0005】
そこで、通常ベースの材料よりも化学処理されやすいもの、又は化学処理されにくいものを配合することで材料に対して不均一性を持たせることも可能であるが、これらを配合することで材料が不透明になることが多い。そのため、極度の透明性を要求される用途において、透明性と密着性を両立できる材料とすることができないのが現状である。また、メッキ性のある不透明な材料を接着した場合、電気回路上に実装した発光素子や受光素子と光導波路との間において光が結合できなくなるといった問題も生じてしまう。
【0006】
また、光導波路と電気回路を複合化する方法として、他に、光導波路上に接着層を介してプリント配線板を貼り付ける方法がある(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このような方法では、光回路と電気回路を別々に作製し後にこれらを貼り付けるため、電気回路と導波路の位置精度が悪くなる。その結果、確実な受発光素子の実装ができなくなり、受発光素子の歩留りが悪くなる場合がある。
【0007】
また、プリント配線板は通常不透明であるため、貼り付ける前にあらかじめ開口しておく必要がある。しかしながら、開口部分に接着層が回りこんでしまい、プリント配線板表面に凹凸が生じてしまうため、結合効率が低下してしまう場合がある。さらに、プリント配線板は比較的厚みのある構造であるために、その厚さと接着層により受発光素子と導波路間との距離が広がり、結合損失が大きくなることがある。
【0008】
さらに、光導波路と電気回路を複合化する方法として、クラッド樹脂付き銅箔上にコア及びクラッドを順次形成し、基板に貼り付けるといった方法がある(例えば、特許文献2,3参照)。しかしながら、このような方法では、フォトリソグラフィーにてコアを形成させていることから、UV光がクラッドを通過し、凹凸を有する銅箔で乱反射することによりコア側壁が荒れてしまい、導波損失が悪くなる場合がある。また、光導波路と電気回路との位置を併せにくいといった問題も生じうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−344684号公報
【特許文献2】特開2005−300930号公報
【特許文献3】特開2006−39231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記従来技術の課題に鑑みなされたもので、その目的は光導波路と電気回路を高密着に複合化でき、受発光素子と光回路の結合損失や、光導波路の損失のない光電気複合配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る光電気複合配線板の製造方法は、基板上に形成された第1クラッド層上にコアを形成するコア形成工程と、前記第1クラッド層上に形成されたコアを埋設するように、未硬化の樹脂組成物を含む第2クラッド材料層を積層する第2クラッド材料層積層工程と、前記第2クラッド材料層上に、少なくとも片側の表面が粗面化された金属基材層を形成する金属基材層形成工程と、前記第2クラッド材料層の未硬化樹脂組成物を硬化して第2クラッド層とする硬化工程と、前記金属基材層上に電気回路を形成する電気回路形成工程と、を有することを特徴とするものである。
【0012】
このような構成によれば、表面が粗面化された金属基材を未硬化樹脂に対して積層させるため、金属表面の凹凸部に十分に樹脂が充填することとなり、硬化させた後の樹脂と金属との密着性に優れたものとすることができる。また、第1クラッド上に形成されたコアを埋設するように未硬化樹脂組成物を含む第2クラッド材料層を形成させ、金属材料層を積層し、さらに前記未硬化樹脂組成物を硬化させていることから、光導波路形成と金属膜とを同時に形成させることが可能である。また、光導波路形成工程の数を増やすことなく金属膜を形成させることができる。更に、未硬化樹脂を積層させる際にラミネート工法を用いていることから、ビルドアップが可能であるため、生産性にも優れることになる。
【0013】
また、前記金属基材の表面粗さRzは、0.5μm以上5μm以下であることが好適である。
【0014】
また、前記樹脂組成物はドライフィルムであることが好適である。
【0015】
また、本発明にかかる光電気複合配線板は、前記光電気複合配線板の製造方法によって得られたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、光導波路と電気回路を高密着に複合化でき、受発光素子と光回路の結合損失や、光導波路の損失のない光電気複合配線板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る光電気複合配線板の製造方法を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0019】
本発明に係る光電気複合配線板の製造方法は、基板上に形成された第1クラッド層上にコアを形成するコア形成工程と、前記第1クラッド層上に形成されたコアを埋設するように、未硬化の樹脂組成物を含む第2クラッド材料層を積層する第2クラッド材料層積層工程と、前記第2クラッド材料層上に、少なくとも片側の表面が粗面化された金属基材層を形成する金属基材層形成工程と、前記第2クラッド材料層の未硬化樹脂組成物を硬化して第2クラッド層とする硬化工程と、前記金属基材層上に電気回路を形成する電気回路形成工程と、を有することを特徴とする光電気複合配線板の製造方法。
【0020】
図1は、本発明の第1実施形態に係る光電気複合配線板の製造方法を説明するための概略図である。図1(a)は、コア形成工程を説明するための概略断面図である。図1(b)は、傾斜面の形成を説明するための概略断面図である。図1(c)は、第1クラッド層に形成されたコアを説明するための概略図である。図1(d)は、図1(c)に示す積層体の、切断面線d−dから見た概略断面図である。図1(e)は、第2クラッド材料層積層工程を説明するための概略図である。図1(f)は、金属基材層形成工程を説明するための概略図である。図1(g)は、電気回路形成工程を説明するための概略図である。
【0021】
<コア形成工程>
図1(c)に示すような光導波路を作成する。光導波路は、入力された導波光を屈折率の異なるコア13と第2クラッド層12との界面で全反射させることにより伝搬して出力するものであり、この光導波路によって光回路が提供される。
【0022】
具体的には、第1クラッド層12を備えた基板11の、前記第1クラッド層12上にコア13を形成する。
【0023】
まず、基板11の表面に第1クラッド層12を形成する。前記基板11としては、各種有機基板や無機基板が特に限定なく用いられる。有機基板の具体例としては、エポキシ基板、アクリル基板、ポリカーボネート基板、及びポリイミド基板等が挙げられる。また、無機基板としては、シリコン基板やガラス基板等が挙げられる。また、基板上に予め回路が形成されたプリント回路基板のようなものであってもよい。
【0024】
前記第1クラッド層12の形成方法としては、前記基板11の表面に、前記第1クラッド層12を形成するための所定の屈折率を有する硬化性樹脂材料からなる樹脂フィルムを貼り合せた後、硬化させる方法や、前記第1クラッド層12を形成するための液状の硬化性樹脂材料を塗布した後、硬化させる方法や、前記第1クラッド層12を形成するための硬化性樹脂材料のワニスを塗布した後、硬化させる方法等が挙げられる。なお、前記第1クラッド層12を形成させる際には、密着性を高めるために、予め、前記基板11の表面にプラズマ処理等を施しておくことが好ましい。
【0025】
前記第1クラッド層12を形成するために樹脂フィルムを貼り合せた後、硬化させる具体的な方法としては、例えば、以下のような方法が用いられる。まず、前記基板11表面に硬化性樹脂からなる樹脂フィルムを重ねるように載置した後、加熱プレスにより貼り合せる、又は、前記基板11表面に硬化性樹脂からなる樹脂フィルムを、透明性の接着剤により貼り合わせる。そして、貼り合せられた樹脂フィルムに光を照射すること、又は、加熱することにより硬化させる。
【0026】
また、前記第1クラッド層12を形成するための、液状の硬化性樹脂材料、または、硬化性樹脂材料のワニスを塗布した後、硬化させる具体的な方法としては、例えば、以下のような方法が用いられる。まず、前記基板11表面に液状の硬化性樹脂材料又は硬化性樹脂材料のワニスを、スピンコート法、バーコート法、又は、ディップコート法等を用いて塗布させる。そして、塗布された液状の硬化性樹脂材料又は硬化性樹脂材料のワニスに光を照射すること、又は、加熱することにより硬化させる。
【0027】
前記第1クラッド層12を形成するための硬化性樹脂材料としては、後に形成されるコア13の材料よりも導波光の伝送波長における屈折率が低くなるようなものが用いられる。その伝送波長における屈折率としては、例えば、1.5〜1.55程度のものが挙げられる。このような硬化性樹脂材料の種類としては、上記のような屈折率を有する、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂等が挙げられる。
【0028】
前記第1クラッド層12の厚みは、特に限定されないが、例えば、5〜15μm程度であることが好ましい。
【0029】
次に、形成された前記第1クラッド層12の外表面に、感光性材料からなるコアを形成する。
【0030】
ここで、感光性材料とは、エネルギ線が照射された部分の、後述する現像で用いる液体に対する溶解性が変化する材料である。具体的には、例えば、エネルギ線を照射する前には、後述する現像で用いる液体に対して溶解しにくいが、エネルギ線を照射した後には、溶解しやすくなる材料が挙げられる。また、他の例としては、エネルギ線を照射する前には、後述する現像で用いる液体に対して溶解しやすいが、エネルギ線を照射した後には、溶解しにくくなる材料が挙げられる。感光性材料とは、具体的には、例えば、感光性高分子材料等が挙げられる。
【0031】
また、エネルギ線とは、溶解性を変化させることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、取扱の容易さ等から、紫外線が好ましく用いられる。感光性材料としては、一般的に、紫外線が照射された部分の、溶解性が変化する感光性高分子材料が好ましく用いられる。より具体的には、紫外線が照射された部分が硬化されて、後述する現像で用いる液体に対して溶解しにくくなる感光性高分子材料が好ましく用いられる。
【0032】
前記コアの形成方法としては、前記第1クラッド層12の外表面に、前記コアを形成するための所定の屈折率を有する感光性高分子材料からなる樹脂フィルム(感光性フィルム)を貼り合せる方法や、前記コアを形成するための液状の感光性高分子材料を塗布する方法や、前記コア13を形成するための感光性高分子材料のワニスを塗布した後、乾燥させる方法等が挙げられる。なお、前記コアを形成させる際にも、前記第1クラッド層12の外表面を活性化させて密着性を高めるために、予め、プラズマ処理等を施しておくことが好ましい。
【0033】
前記感光性高分子材料からなる樹脂フィルム(感光性フィルム)としては、半硬化状態の感光性高分子材料をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等に塗布して得られるドライフィルムが好ましい。ドライフィルムにすることで取り扱い性が向上するとともに、コアに対して積層するときに気泡の巻き込みを防止できる。なお、このようなドライフィルムは、通常、保護フィルムにより保護されている。
【0034】
前記コアを形成するための感光性高分子材料としては、前記第1クラッド層12の材料よりも導波光の伝送波長における屈折率が高いものが用いられる。その伝送波長における屈折率としては、例えば、1.55〜1.6程度のものが挙げられる。
【0035】
前記コアを形成するための感光性高分子材料の種類としては、上記のような屈折率を有する、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂等を樹脂成分とする感光性材料が挙げられる。これらの中でも特に、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、前記コアを形成するための感光性高分子材料としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂と光カチオン硬化剤とを含有する樹脂組成物が、耐熱性の高い導波路が得られるために、プリント基板等と複合化することができる点から好ましい。なお、前記コアと前記第1クラッド層12との接着性の観点から、前記コアを形成するための感光性高分子材料は、前記第1クラッド層12を形成するための硬化性樹脂材料と同系統のものであることが好ましい。
【0036】
前記コアの厚みは、特に限定されないが、例えば、20〜100μm程度であることが好ましい。
【0037】
前記コアを形成する具体的な方法としては、例えば、前記コアを形成するために樹脂フィルムを貼り合せる方法や、前記コアを形成するための、液状の硬化性樹脂材料、又は、硬化性樹脂材料のワニスを塗布する方法等が用いられる。
【0038】
前記コアを形成するために樹脂フィルムを貼り合せる具体的な方法としては、例えば、前記第1クラッド層12の外表面に硬化性樹脂からなる樹脂フィルムを重ねるように載置した後、加熱プレスにより貼り合せる、又は、前記第1クラッド層12の外表面に硬化性樹脂からなる樹脂フィルムを、透明性の接着剤により貼り合わせる。
【0039】
また、前記コアを形成するための液状の硬化性樹脂材料、又は、硬化性樹脂材料のワニスを塗布する方法の具体的な方法としては、前記第1クラッド層12の外表面に液状の硬化性樹脂材料又は硬化性樹脂材料のワニスを、スピンコート法、バーコート法、又は、ディップコート法等を用いて塗布した後、必要に応じて乾燥させる。
【0040】
前記コアを露光して硬化等させる前に、前記コアに熱処理を施してもよい。そうすることにより、前記コアの表面の凹凸、気泡、ボイド等を消失させて平滑になる。熱処理温度は、前記コアの表面の凹凸、気泡、ボイド等が消失して平滑になるような粘度になる温度が好ましく、前記コアを形成する硬化性樹脂材料の種類によって適宜選択される。また、熱処理時間としては、10〜30分間程度であることが、上記効果が充分に得られる点から好ましい。なお、熱処理の手段は特に限定されず、所定の温度に設定したオーブン中で処理する方法やホットプレートで加熱する等の方法が用いられる。
【0041】
次に、前記コアに対して、フォトマスクを介して露光光を照射して、前記コアに対して所定形状のパターン露光を行う。また、前記露光は、感光性材料を光により変質(硬化等)させうる波長の光を必要な光量で露光する方法であれば、特に限定なく用いることができる。具体的には、例えば、前記露光光として、紫外線等のエネルギ線を用いる方法等が挙げられる。そして、取扱の容易さ等から、紫外線が好ましく用いられる。また、フォトマスクを前記コアの表面に接触するように載置して露光するコンタクト露光や、前記コアの外表面に接触しないように所定の間隔を保持した状態で露光する投影型露光等の、何れの露光方法を用いてもよい。
【0042】
また、露光条件としては、感光性材料の種類に応じて適宜選択されるが、例えば、前記露光光として、高圧水銀ランプを使用して、500〜3500mJ/cmとなるように露光する条件等が選ばれる。
【0043】
そして、前記露光後に、熱による後キュアを行うことも硬化を確実にする点から有効である。後キュアの条件としては、温度80〜160℃程度、時間20〜120分間程度が好ましい。
【0044】
次に、現像処理を行う。現像処理としては、前記コアの感光性材料がポジ型の場合には、露光されなかった部分、ネガ型の場合には、露光された部分を現像液で洗い流すことにより、不要な部分を除去する工程である。前記現像液としては、例えば、アセトンやイソプロピルアルコール、トルエン、エチレングリコール、又は、これらを所定割合で混合させたもの等が挙げられる。さらに、例えば、特開2007−292964号公報で開示されているような水系の現像液も好ましく用いられ得る。現像方法としてはスプレーにより現像液を噴射する方法や超音波洗浄を利用する方法等が挙げられる。
【0045】
以上により、第1クラッド層12の上にコア13が形成される。
【0046】
次に、コア13に、光を反射させるための傾斜面15aを形成する。その方法としては、後述する傾斜面を形成することができれば、特に限定されない。ここでの傾斜面とは、コア13の第1クラッド層12と接触している側とは反対側から入射される光をコア13内に誘導又はコア13から出射される光を第1クラッド層12と接触している側とは反対側に導出するように、光を反射させるための傾斜面である。そして、傾斜面の形成方法としては、具体的には、例えば、ダイシングブレードで切り込む方法やレーザアブレーションによる方法等が挙げられる。より具体的には、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0047】
図1(b)に示すように、刃先の一方の面が、刃の面方向に平行な面で、他方の面が、刃の面方向に対する角度が所定の角度、例えば、45°である面である刃14を用いて、コア13を切り込んで、凹部15を形成する。すなわち、刃14を、コア13に対して略垂直となるように回転させながら、コア13に垂下させる。その際、凹部15が、第1クラッド層12の反対側から入射される光をコア13内に誘導又はコア13から出射される光を第1クラッド層12の反対側に導出するように、光を反射させるための傾斜面15aを有する凹部15となるように、コア13を切り込む。また、凹部15は、第1クラッド層12に平行な断面積が第1クラッド層12に近づくほど徐々に小さくなるように、傾斜面15aが形成されている。なお、刃14は、円盤状の回転刃物であって、円周部に刃先があるもの、例えば、ダイシングブレード等が用いられる。また、凹部15の形状は、傾斜面15aが形成されるものであれば、特に限定されず、例えば、溝状等が挙げられる。
【0048】
コア13を刃14で切り込む際、必要に応じて、基板11や刃14等を加熱することにより、コア13を軟化させながら切り込んでもよい。また、刃14の刃先が、第1クラッド層12に達するように切り込んでも、達しないように切り込んでもよい。
【0049】
なお、傾斜面15a上に金属層からなるミラー部を形成することもできる。前記ミラー部の形成方法としては、傾斜面15a上に金属基材16を積層する方法であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、傾斜面15aに、レジストを塗布する。その後、傾斜面15a上のレジストのみが、現像処理によって除去されないように、フォトマスク等を介してUV照射する。そして、現像処理を施すことによって、傾斜面15a上のレジストのみを残存させる。その後、エッチング処理を施した後、レジストを剥離する。そうすることによって、傾斜面15a上に金属層からなるミラー部16aを形成することができる。
また、このような方法により、ミラー部16aを形成させると、得られた光電気複合配線板の、受光素子や発光素子等の実装精度が優れたものとなる。
【0050】
上記のような工程を経て、図1(c)の下部に示すような光導波路が形成される。形成された光導波路は、前記コア13と第1クラッド層12によって形成されたものであり、前記コア13は第1クラッド層12よりも屈折率が高く、内部を伝搬する光を全反射によってコア内に閉じこめるものである。このような光導波路は、主としてマルチモード導波路として形成される。前記光導波路の前記コア13のサイズは、例えば、20〜100μmの矩形形状、第1クラッド層12の厚みはそれぞれ5〜15μm、コアと第1クラッド層との屈折率差は0.5〜3%程度が適当であるがこれに限られるものではない。
【0051】
<第2クラッド材料層積層工程>
本発明の製造方法における第2クラッド材料層積層工程は、図1(e)に示すように、コア13を埋設するように、上述の金属基材に積層された第2クラッド材料層17をさらに積層して形成される。
【0052】
前記第2クラッド材料層17の積層方法としては、前記コア13を埋設するように、前記金属機材に積層された第2クラッド材料層17を貼り合わせた後、光、熱等で硬化させる方法等が挙げられる。
【0053】
第2クラッド材料層17を形成するための硬化性樹脂材料としては、コア13の材料よりも導波光の伝送波長における屈折率が低くなるような硬化性樹脂材料であれば、特に限定なく用いられ、通常は、第1クラッド層12を形成した材料と同様の種類の硬化性樹脂材料が用いられる。
【0054】
前記硬化性樹脂としては、後に形成されるコア13の材料よりも導波光の伝送波長における屈折率が低くなるようなものが用いられる。その伝送波長における屈折率としては、例えば、1.5〜1.55程度のものが挙げられる。
【0055】
<金属基材層形成工程>
次に、図1(b)に示すように、上述のクラッド層上に、少なくとも片側の表面が粗面化された金属基材層16を形成する。
【0056】
金属基材16を形成させる方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば、真空蒸着法等の蒸着法、スパッタ法、及びナノペースト法等が挙げられる。
【0057】
前記金属基材16としては、銅箔、アルミニウム箔、タングステン箔、鉄箔等を用いることができるが、特に銅箔を用いることが好ましい。
【0058】
また、前記銅箔は、膜厚、表面粗さ、表面処理等、必要な特性に応じた銅箔を選定することができる。
【0059】
そして、前記金属基材16は少なくとも片側の表面が荒らされていることが必要である。金属基材16の表面を荒らす方法としては、適宜の手法で行うことができるが、例えば、エッチング処理や表面酸化処理等が挙げられる。前記処理を行うことで金属基材16のアンカー効果を得ることができ、上述の樹脂組成物を含む第2クラッド層の密着性が向上する。
【0060】
また、銅以外の亜鉛やニッケル等によりバリア層を形成したものを使用することもできる。またクロメート処理により防錆層を形成したものを使用しても良い。更に密着性を向上するためにシランカップリング処理による処理を形成したものを使用することも可能である。
【0061】
前記金属基材16の表面粗さRzは、密着性やパターニング性の観点から、0.5μm以上5μm以下であることが好ましく、1μm以上3μm以下のであることがより好ましい。表面粗さRzが0.5μm未満であると、金属基材のアンカー効果が得られにくくなるため、樹脂組成物との密着性が低くなる。また、5μmより大きいと金属基材のファインパターンが得られにくくなる。
【0062】
前記金属基材16の厚みは、パターニング性と電気特性の観点から、3μm以上50μm以下であることが好ましく、5μm以上20μm以下であることがより好ましい。金属基材16の厚みが、3μm未満であると、基材が取り扱いにくくなると共に、抵抗値を確保するために幅を大きくしなければならないような設計となり制約が生じてしまう。また、50μmより大きいと金属パターニング時に時間を要すると共に、サイドエッチングが発生しやすくなり品質の安定性で問題となる。
【0063】
<硬化工程>
図1(c)に示すように、クラッド材料層12を硬化させることによって、クラッド材料層12は、コア13を埋設するように形成された第2クラッド層(上部クラッド層)13となる。
【0064】
前記クラッド材料層12を硬化させる方法としては、例えば、オーブンやホットプレート等による熱処理等が用いられる。
【0065】
上記のような工程を経て、図1(c)に示すような光導波路が形成される。形成された光導波路は、前記コア13とこれを被覆するクラッド層(前記第1クラッド層12及び前記第2クラッド層18)によって形成されたものであり、前記コア13はクラッド層よりも屈折率が高く、内部を伝搬する光を全反射によってコア内に閉じこめるものである。このような光導波路は、主としてマルチモード導波路として形成される。前記光導波路の前記コア13のサイズは、例えば、20〜100μmの矩形形状、コア部を含む層の厚みを除いた下部の第1クラッド層12及び上部の第2クラッド層18の厚みはそれぞれ5〜15μm、コア部とクラッド層との屈折率差は0.5〜3%程度が適当であるがこれに限られるものではない。
【0066】
<電気回路形成工程>
電気回路形成工程は、図1(e)に示すように、形成した金属基材16に電気回路16aを形成させる工程である。電気回路16aの形成は、例えば、周知の回路形成のためのエッチング技術により行うことができる。ここで、第1クラッド層12と電気回路16aとの境界面が粗面となり、電気回路16aに形成された凹凸(粗面)によりアンカー効果が得られるため、電気回路16aは第1クラッド層12の上に密着性よく形成される。以上により、この電気回路形成工程によって、光回路と電気回路16aとを備えた光電気複合配線板19が得られる。
【0067】
前記電気回路形成加工としては、上述のエッチング処理の他に、例えば、スルーホール加工、金メッキ処理等を用いることができる。なお、光回路と電気回路の位置合わせは、例えば、外形基準や基板側面や基板裏面に設けたマーキングを利用することで可能となる。
【0068】
形成された光電気複合配線板19は、前記コア13とこれを埋設するクラッド層(前記第1クラッド層12及び前記第2クラッド層18)によって形成されたものであり、前記コア13はクラッド層よりも屈折率が高く、内部を伝搬する光を全反射によってコア内に閉じこめるものである。このような光導波路は、主としてマルチモード導波路として形成される。前記電気複合配線板19の前記コア13のサイズは、例えば、20〜100μmの矩形形状、コアを含む層の厚みを除いた下部の第1クラッド層12及び上部の第2クラッド層12の厚みはそれぞれ5〜15μm、コアとクラッド層との屈折率差は0.5〜3%程度が適当であるがこれに限られるものではない。また、前記第2クラッド層18上の金属基材16を用いて電気回路16aを形成させることによって、光電気複合配線板19を形成することができる。
【0069】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲は実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0070】
(実施例1)
はじめに、本発明の製造方法における光電気複合配線板を製造する。
【0071】
<光電気複合配線板の製造>
光電気複合配線板を製造するに先立ち、第1クラッド用硬化性フィルム、コア用硬化性フィルム及び第2クラッド用樹脂フィルムを作製した。
【0072】
[第1クラッド用硬化性フィルム]
固体状エポキシ付加物(ダイセル化学工業社製の「EHPE3150」)62質量部、フェノキシ樹脂(東都化成社製の「YP50」)18質量部、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂(東都化成社製の「エポトートYH300」)8質量部、液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製の「エピクロン850S」)12質量部、光カチオン硬化剤(アデカ社製の「SP−170」)0.5質量部、熱カチオン硬化剤(三新化学工業社製の「SI−150L」)0.5質量部、及び、表面調整剤(DIC社製の「F470」)0.1質量部を、トルエン30質量部とメチルエチルケトン70質量部との混合溶媒に溶解させ、孔径1μmのメンブランフィルタで濾過した後、減圧脱泡することにより、クラッド用エポキシ樹脂組成物のワニスを調製した。このワニスを、PETフィルム(東洋紡績社製の「A4100」)の上に、ヒラノテクシード社製のコンマコータヘッドのマルチコータを用いて塗布した後、溶剤を除去して乾燥させることにより、厚みが10μmのクラッド用硬化性フィルムを作製した。
【0073】
また、PETフィルム上のワニスの塗布厚みを変えることにより、厚みが50μmのクラッド用硬化性フィルムを作製した。作製したフィルムの上に保護フィルムとして王子特殊紙社製の「OPP−MA420」を熱ラミネートした。
【0074】
[コア用硬化性フィルム]
液状の3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業社製の「セロキサイド2021P」)8質量部、固体状エポキシ付加物(ダイセル化学工業社製の「EHPE3150」)12質量部、固体状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製の「エピコート1006FS」)37質量部、3官能エポキシ樹脂(三井化学社製の「VG−3101」)15質量部、固形ノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製の「EPPN201」)18質量部、液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製の「エピクロン850S」)10質量部、光カチオン硬化剤(アデカ社製の「SP−170」)0.5質量部、熱カチオン硬化剤(三新化学工業社製の「SI−150L」)0.5質量部、及び、表面調整剤(DIC社製の「F470」)0.1質量部を、トルエン30質量部とメチルエチルケトン70質量部との混合溶媒に溶解させ、孔径1μmのメンブランフィルタで濾過した後、減圧脱泡することにより、コア用エポキシ樹脂組成物のワニスを調製した。
【0075】
このワニスを、PETフィルム(東洋紡績社製の「A4100」)の上に、ヒラノテクシード社製のコンマコータヘッドのマルチコータを用いて塗布した後、溶剤を除去して乾燥させることにより、厚みが40μmのコア用硬化性フィルムを作製した。作製したフィルムの上に保護フィルムとして王子特殊紙社製の「OPP−MA420」を熱ラミネートした。
【0076】
[第2クラッド材料用樹脂フィルム]
固体状エポキシ付加物(ダイセル化学工業社製の「EHPE3150」)62質量部、フェノキシ樹脂(東都化成社製の「YP50」)18質量部、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂(東都化成社製の「エポトートYH300」)8質量部、液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製の「エピクロン850S」)12質量部、熱カチオン硬化剤(三新化学工業社製の「SI−150L」)1.0質量部、及び、表面調整剤(DIC社製の「F470」)0.1質量部を、トルエン30質量部とメチルエチルケトン70質量部との混合溶媒に溶解させ、孔径1μmのメンブランフィルタで濾過した後、減圧脱泡することにより、樹脂層用エポキシ樹脂組成物のワニスを調製した。このワニスを、PETフィルム(東洋紡績社製の「A4100」)の上に、ヒラノテクシード社製のコンマコータヘッドのマルチコータを用いて塗布した後、溶剤を除去して乾燥させることにより、厚みが20μmの樹脂層用硬化性フィルムを作製した。
【0077】
[光導波路の作製]
まず、パナソニック電工株式会社製のR1766の、両面の銅をエッチングにより除去した。このエッチオフしたものを基板として用いた。この基板の表面に、上述の方法により製造した、厚み10μmの第1クラッド層用樹脂フィルムを、真空ラミネーター(V−130)を用いて、60℃、0.2MPaの条件でラミネートした。そして、超高圧水銀灯を用いて、2J/cmの条件で紫外光を第1クラッド層用樹脂フィルムに照射した。その後、第1クラッド層用樹脂フィルムの離型フィルムを剥離した。その後、150℃で30分間熱処理し、さらに、酸素プラズマ処理を施した。そうすることによって、基板上に、第1クラッド層用樹脂フィルムが硬化した第1クラッド層(下部クラッド層)が形成された。
【0078】
次に、第1クラッド層の表面に、上述の方法により製造した、厚み40μmのコア部用樹脂フィルムを、真空ラミネーター(V−130)を用いて、60℃、0.2MPaの条件でラミネートした。
そして、幅40μm、長さ120mmの直線パターンのスリットを形成したネガマスクを、コア部用樹脂フィルムの表面に載置した。その後、照射光が略平行光になるように調整された超高圧水銀灯で3J/cmの光量で紫外光を、コア部用樹脂フィルムの、スリットに対応する部分を光硬化させた。
【0079】
次に、コア部用樹脂フィルムの離型フィルムを剥離した。その後、140℃で2分間熱処理を行なった。そして、現像液として55℃に調整した水系フラックス洗浄剤(荒川化学工業株式会社製のパインアルファST−100SX)を用いて現像処理した。そうすることによって、コア部用樹脂フィルムの未露光部分が溶解除去される。そして、さらに、水で仕上げ洗浄した後エアブローした。その後、100℃で10分間乾燥させた。そうすることによって、図1(a)に示すようなコア部が形成された。
【0080】
次に、図1(b)に示すように、刃先の一方の面が、刃の面方向に平行な面であって、他方の面が、刃の面方向に対する角度(頂角)が45°である面である刃(株式会社ディスコ製のダイシングブレード(粒度5000番))を用い、回転数10000rpm、移動速度0.1mm/秒の条件で、コア部の両端部から10mmの位置を、2カ所切り込んだ。そうすることによって、図1(b)に示すように、45°傾斜面を有する凹部が、コア部を完全に切断するように形成された。
【0081】
次に、第1クラッド層用樹脂フィルムの製造する際に用いた樹脂ワニスを、トルエンとMEKとを、質量比で3:7にて混合した混合溶剤で50倍に希釈した溶液を、45°傾斜面にブラシで薄く塗布した。その後、100℃で30分間乾燥した後に、超高圧水銀灯で1J/cmの条件で紫外光を照射して露光した。その後、さらに120℃で10分間熱処理を行なった。そうすることによって、45°傾斜面が平滑化された。
次に、コア部や下部クラッド層に対して、膨潤工程、過マンガン酸処理工程、及び還元処理工程を施した。そうすることによって、コア部や下部クラッド層の表面がエッチングされ、その表面に凹凸が形成された。
【0082】
[第2クラッド材料層積層工程]
次に、図1(e)に示すように、下部クラッド層及びコア部を被覆するようにして、上述の方法により製造した、厚み50μmの第2クラッド材料積層金属基材を、加圧式真空ラミネータ(ニチゴー・モートン社製の「V−130」)を用いて、80℃、0.3MPaの条件でラミネートした。その後、第2クラッド層用樹脂フィルムのPETフィルムを剥離した。そうすることによって、第1クラッド層及びコア部を被覆するように、第2クラッド層(上部クラッド層)を形成した。なお、第2クラッド層は、コア部と、コア部の周辺の第1クラッド層とを被覆していればよい。
【0083】
[金属基材層形成工程]
次に、上述のラミネートと同じ条件で、表面粗さRzが2.7μm、厚みが12μmの銅箔(古河電工社製の「F2−WS」)の粗面化された面をクラッド側に対してラミネートし、光導波路の上に積層した(図1(f)参照)。
【0084】
[硬化工程]
150℃で30分間熱処理を行なうことにより、第2クラッド材料層が硬化した第2クラッド層18を形成した。
【0085】
[電気回路形成工程]
形成した金属基材16をエッチング技術により所定のパターンの電気回路16aに形成し、さらにソルダーレジストを形成した後、金メッキ処理、シルク印刷を行うことにより、光回路(光導波路)と電気回路16aとを備えた光電気複合配線板19を得た(図1(g)参照)。なお、この金属層のピール強度は、0.6N/mで実用レベルであった。
【0086】
(比較例1)
基板上に上記クラッド材料を硬化させ、その上に無電解メッキ及び電解メッキを施して、12μmの銅箔を形成し、表面の粗さRzを測定すると0.1μmであった。この銅箔を基板から剥離した。この銅箔上にバーコータにより50μmとなるように第2クラッド材料層を形成したものを用いた以外は上記実施例1と同様にして光電気複合配線板を作成した。
【0087】
<光電気複合配線板の損失評価>
実施例1によって得られた光電気複合配線板19の損失評価を行った。すなわち、受発光素子であるVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)からの光(850nm波長)を、コア径10μm、NA0.21の光ファイバーを通して、光電気複合配線板19の光導波路(光回路)の一方のミラー面10に、マッチングオイル(シリコーンオイル)を介して入射し、他方のミラー面10から、同じマッチングオイルを介して、コア径200μm、NA0.4の光ファイバーを通して出射される光のパワー(P1)をパワーメータで測定した。また、前記2つの光ファイバーの端部同士を直接突き当てて、光電気複合配線板19の第2クラッド層15及び光導波路を挿入しない状態で出射される光のパワー(P0)をパワーメータで測定した。そして、「(−10)log(P1/P0)」の計算式から、光電気複合配線板19の挿入損失を求めたところ、2.1dBと小さく、十分実用レベルであった。
【0088】
一方で、比較例1によって得られた光電気複合配線板における銅箔のピール強度は0.1N/mであり、実用レベルに満たないものとなった。これは、用いた金属基材の表面粗さRzが0.5μmより小さいものであったためであると考えられる。
【0089】
以上、具体例を挙げて詳しく説明したように、第1クラッド層12上に形成されたコアを埋設するように、未硬化の樹脂組成物を含む第2クラッド材料層17を積層する第2クラッド層形成工程と、前記第2クラッド材料層上に、少なくとも片側の表面が粗面化された金属基材層16を形成する金属基材層形成工程と、前記第2クラッド材料層17の未硬化樹脂組成物を硬化して第2クラッド層18とする硬化工程と、前記金属基材層16上に電気回路を形成する電気回路形成工程とが備えられているので、金属基材16の外表面に凹凸(粗面)が存在し、電気回路16aの密着性が高められる。また、第2クラッド層15の透明性が実用上問題のないレベルなので、電気回路16a上のVCSEL等の受発光素子と光導波路との結合損失が抑制される。
【0090】
また、すでに出来上がっている光導波路の上に金属基材16をビルドアップするので、コア13の側壁に荒れが生じず、光導波路の導波損失が抑制される。また、光回路と電気回路16aとをそれぞれ別々に作製し、あとでこれらを貼り合わせるというような製造方法ではなく、基板16に対してビルドアップにより光導波路を作製し、ビルドアップにより光回路と電気回路16aとを複合化していく製造方法なので、光電気複合配線板19を歩留りよく得ることができる。
【0091】
また、第2クラッド層形成工程で、エポキシ樹脂を含有する樹脂組成物フィルム(第2クラッド層フィルム)を積層する場合は、従来、プリント配線板の製造、又は光導波路の製造に使用される真空ラミネータのような量産実績のある設備に対応できるので、金属張積層板及び光電気複合配線板19の生産性が向上する。
【0092】
また、第2クラッド層18は、エポキシ樹脂として、固体状エポキシ樹脂と液状エポキシ樹脂とを含有するので、樹脂組成物の性質が多様化し、エポキシ樹脂成分の組み合わせにより所望の性質(屈折率を含む)の樹脂組成物を得ることができる。
【符号の説明】
【0093】
11 基板
12 第1クラッド層
13 コア
14 刃(ダイシングブレード)
15 凹部
15a 傾斜面
16 金属層
16a ミラー部
17 第2クラッド材料層
18 第2クラッド層
19 光電気複合配線板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された第1クラッド層上にコアを形成するコア形成工程と、
前記第1クラッド層上に形成されたコアを埋設するように、未硬化の樹脂組成物を含む第2クラッド材料層を積層する第2クラッド材料層積層工程と、
前記第2クラッド材料層上に、少なくとも片側の表面が粗面化された金属基材層を形成する金属基材層形成工程と、
前記第2クラッド材料層の未硬化樹脂組成物を硬化して第2クラッド層とする硬化工程と、
前記金属基材層上に電気回路を形成する電気回路形成工程と、を有することを特徴とする光電気複合配線板の製造方法。
【請求項2】
前記金属基材の表面粗さRzが、0.5μm以上5μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の光電気複合配線板の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂組成物がドライフィルムであることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の光電気複合配線板の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光電気複合配線板の製造方法によって得られたことを特徴とする光電気複合配線板。

【図1】
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【公開番号】特開2012−103381(P2012−103381A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250515(P2010−250515)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】