説明

光CDM送信回路、光CDM受信回路及び光CDM伝送システム

【課題】最大符号多重数/光周波数成分数=1とすることで、同一波長帯域内で送りうる情報量を増大し、周波数利用効率の制限を解決する光CDM送信回路、光CDM受信回路及び光CDM伝送システムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る光CDM送信回路、光CDM受信回路及び光CDM伝送システムは、従来の電気符復号化のプロセスにおける割り当て符号のうち固有符号として用いることのできなかった符号の利用を可能とすることで、従来方式よりも周波数利用効率の向上を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光符号分割多重通信に用いられる光CDM送信回路、光CDM受信回路及びこれらを備える光CDM伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
光符号分割多重(CDM:Code Division Multiplexing)方式は、固有符号に応じて符号拡散された光CDM信号を多重伝送する方式である。各々の光CDM送受信回路には、固有符号が割り当てられる。各送信回路は、割り当てられた固有符号に対応した符号化により拡散された光CDM信号を出力する。受信側では、多重された光CDM信号から、受信回路と同じ固有符号を割り当てられた送信回路が出力する光CDM信号のみを復号可能であり、所望の光CDM信号を選択的に受信する。
【0003】
これまでに、パルス信号光の各光周波数成分の光位相を、送信回路に割り当てられた固有符号に応じて変調することにより、パルス信号光を時間軸上に拡散する方式が提案されている(例えば、非特許文献1及び2を参照。)。また、SSFBG(Superstructured Fiber Bragg Grating)などを用いて、パルス信号光を直接的に時間軸上に拡散する方式も提案されている(例えば、非特許文献3を参照。)。
【0004】
しかしながら、これらの方式では、光位相の厳密な制御やチップ時間(=ビット時間/符号長)オーダの時間制御を行う光符復号デバイスが必要となる。また、多元接続干渉(MAI:Multiple Access Interference)や、複数の光CDM信号が同時に受信回路へ入力された際に検波時に生じるビート雑音により、符号多重数が制限される。そのため、信号光間での時間同期に基づく時間ゲートや、光媒質の非線形特性を用いた光閾値デバイス、前方誤り訂正(FEC: Forward Error Correction)の適用により、MAIやビート雑音の影響を低減することが必要となり、送受信回路構成の複雑化を招く。
【0005】
これに対し、図1のように、送信回路内の2値/多値変換手段における電気段符号拡散に基づいて生成された多値電気信号で、各光周波数成分を多値振幅変調(ASK: Amplitude Shift Keying)した多値ASK信号光を光周波数多重した多波長信号光を送受信する方式が提案されている(例えば、非特許文献4を参照。)。
【0006】
2値/多値変換手段は、N個(Nは2以上の整数)の2値信号から、2値信号と1対1に対応するN個の固有符号に基づき、K個(Kは2以上の整数)の多値信号を生成する。k番目(k=1,2,・・・,K)の多値信号のシンボル値は、対応する固有符号のk番目の符号要素が{1}である2値信号のシンボル値を加算した値である。図2に、2値/多値変換手段の構成例を示す。
【0007】
受信側では、光周波数ごとに分波した各光周波数成分をそれぞれ直接検波して生成した多値ベースバンド信号を、電気復号化手段において、対応する固有符号に応じて加減算を行う。ここで、生成される多値信号は、各シンボル値に対応する電圧レベルが等間隔であり、電圧レベル間隔は異なる光検波手段が生成する多値信号同士で一致する。よって、固有符号として各符号間で直交性を有する符号を用いる場合、加減算により非所望信号成分を除去することができる。また、光領域で信号光の多重を行わないため、検波時にビート雑音が生じない。つまり、この方式では、電気段で符復号化を行うために光符復号デバイスが不要である上、MAIやビート雑音低減のために非特許文献1〜3で必要であった時間ゲートや光閾値デバイスが不要である。
【0008】
更には、電気段での符号拡散を空間的に行うため、時間拡散において要求されるチップレート(=ビットレート´符号長)での動作(例えば、非特許文献5を参照。)が不要であり、ビットレートと同等の動作速度を有する電気回路で構成可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】V. J. Hernandez, et al., “A 320−Gb/s capacity (32−user ´ 10Gb/s) SPECTS O−CDMA network testbed with enhanced spectral efficiency through forward error correction,” J. Lightwave Technol., pp. 79−86, Jan. 2007
【非特許文献2】P. Toliver, et al., “Demonstration of high spectral efficiency coherent OCDM using DQPSK, FEC, and integrated ring resonator−based spectral phase encoder/decoders,” OFC2007, PDP7, 2007
【非特許文献3】T. Hamanaka, et al., “Compound data rate and data−rate−flexible 622 Mb/s−10 Gb/s OCDMA experiments using 511−chip SSFBG and cascaded SHG−DFG−based PPLN waveguide optical thresholder,” IEEE J. Selected Topics in Quantum Electron., pp. 1516−1521, Sep./Oct. 2007)
【非特許文献4】S. Kaneko, et al., “Beat−noise−free OCDM technique employing spectral M−ary ASK based on electrical−domain spatial code spreading,” OFC2009, OThI5, 2009
【非特許文献5】G. C. Gupta, et al., “A simple one−system solution COF−PON for metro/access networks,” J. Lightwave Technol., pp. 193−200, Jan. 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
非特許文献4の方式において、電気復号化手段での加減算により非所望信号成分を除去するためには、用いられる固有符号が各符号間で直交性を有する必要がある。固有符号としてアダマール符号を用いるとし、符号長をKとすると、K個の互いに直交する符号がとれる。ここで、K個の符号のうちの1つは、全ての符号要素が{1}であるが、この符号を電気復号化手段に割り当てた場合、全ての光検波手段からの多値ベースバンド信号が加算されるため、非所望信号成分を除去することができない。よって、実際に電気復号化手段へ割り当てることができる符号の数は、全ての符号要素が{1}である符号を除いたK−1個となる。
【0011】
ここで、送受信される多波長信号光の光周波数成分数は、電気復号化手段に割り当てられる符号の符号長と等しくKである。このため、非特許文献4の方式には、最大符号多重数/光周波数成分数が1未満に制限され、周波数利用効率が制限されるという課題がある。
【0012】
そこで、本発明は、最大符号多重数/光周波数成分数=1とすることで、同一波長帯域内で送りうる情報量を増大し、周波数利用効率の制限を解決する光CDM送信回路、光CDM受信回路及び光CDM伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係る光CDM送信回路、光CDM受信回路及び光CDM伝送システムは、従来の電気符復号化のプロセスにおける割り当て符号のうち固有符号として用いることのできなかった符号の利用を可能とすることで、従来方式よりも周波数利用効率の向上を可能とする。
【0014】
具体的には、本発明に係る光CDM送信回路は、2種の符号要素で構成され、符号長がK(Kは2以上の整数)以下のN個の固有符号を持ち、N個(Nは2以上の整数)の2値信号のそれぞれに前記固有符号を対応させて前記2値信号からK個の多値信号を生成する際に、前記2値信号に対応させた前記固有符号のk番目(k=1,2,・・・,K)の符号要素が前記2種の符号要素の一方である場合は前記2値信号のシンボル値をそのまま前記固有符号のk番目の符号要素に対応する拡散値とし、前記2種の符号要素の他方である場合は反転した前記2値信号のシンボル値を前記固有符号のk番目の符号要素に対応する拡散値とし、前記拡散値同士を加算してk番目の前記多値信号のシンボル値とする2値/多値変換手段と、互いに光周波数が異なる連続光である光搬送波が入力され、前記2値/多値変換手段が生成した前記多値信号で前記光搬送波を変調した多値信号光を出力する複数の光変調手段と、各々の前記光変調手段が出力する前記多値信号光を合波した多波長信号光を出力する光合波手段と、を備える。
【0015】
光CDM受信回路の電気復号化手段に、全ての符号要素が{1}である固有符号#h(h =1,2,・・・,K)が割り当てられたとすると、電気復号化手段は全ての光検波手段からの多値ベースバンド信号を加算する。光CDM送信回路内の2値/多値変換手段において固有符号#k(k≠h)に基づいて拡散される非所望の2値信号成分(シンボル値:D(t))に着目すると、電気符号化手段へ入力されるK個の多値ベースバンド信号は、半分がD(t)の成分を含み、残り半分がシンボル値が反転した1−D(t)の成分を含む。そのため、全部の多値ベースバンド信号の加算により、非所望信号成分が打ち消される。
【0016】
従って、本発明は、最大符号多重数/光周波数成分数=1とすることで、同一波長帯域内で送りうる情報量を増大し、周波数利用効率の制限を解決する光CDM送信回路を提供することができる。
【0017】
本発明に係る光CDM送信回路の前記2値/多値変換手段は、それぞれが対応する前記固有符号の符号長以上の個数の出力端を持ち、前記固有符号の各符号要素を前記出力端へ順に割り当て、前記2種の符号要素の一方を割り当てた前記出力端から、入力された前記2値信号のシンボル値と一致する前記拡散値を出力し、前記2種の符号要素の他方を割り当てた前記出力端から、入力された前記2値信号のシンボル値を反転した前記拡散値を出力するN個の拡散符号器と、各々の前記拡散符号器のk番目の出力端からの前記拡散値を加算してk番目の前記多値信号とするK個の加算器と、を有することを特徴とする。
【0018】
本発明に係る光CDM送信回路の第1形態は、前記光変調手段が出力する前記多値信号光が、入力される前記多値信号のシンボル値に応じて固有且つ等間隔の光強度レベルをもち、平均光強度がNによらず一定であることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る光CDM送信回路の第2形態は、前記光変調手段が出力する前記多値信号光が、入力される前記多値信号のシンボル値に応じて固有且つ等間隔の光電界振幅レベルをもち、前記光変調手段内での前記光搬送波の光位相シフト量が、前記多値信号のシンボル値に応じて、差がπである2値のいずれかであることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る光CDM送信回路の第3形態は、前記多波長信号光に含まれる前記多値信号光の光周波数と一致するK個の光周波数成分の連続光を、前記多波長信号光を出力する出力端において、前記光周波数成分が一致する前記多値信号光との光位相差が0又はπとなるように、且つ前記光周波数成分が一致する前記多値信号光との偏光状態が一致するように、前記多波長信号光又は前記光周波数成分が一致するそれぞれの前記多値信号光に混合して出力する光混合器をさらに備えることを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る光CDM受信回路は、前記光CDM送信回路からの前記多波長信号光を光周波数成分ごとに分波する光周波数分波手段と、前記光周波数分波手段からの信号光を検波して、前記多値信号を復調する複数の光検波手段と、1番目からN番目の前記固有符号のうちの1つが割り当てられ、前記光検波手段の各出力端が接続されており、割り当てられた前記固有符号を構成する前記符号要素を前記光検波手段の前記出力端へ順に対応させ、前記2種の符号要素のうちの一方に対応する前記出力端からの入力を正、前記2種の符号要素のうちの他方に対応する前記出力端からの入力を負として加える加減算を行うことで、前記2値/多値変換手段に入力された前記2値信号のうち、前記固有符号に対応する前記2値信号を選択的に取り出す電気復号化手段と、を備える。
【0022】
光CDM受信回路の電気復号化手段に、全ての符号要素が{1}である固有符号#h(h =1,2,・・・,K)が割り当てられたとすると、電気復号化手段は全ての光検波手段からの多値ベースバンド信号を加算する。光CDM送信回路内の2値/多値変換手段において固有符号#k(k≠h)に基づいて拡散される非所望の2値信号成分(シンボル値:D(t))に着目すると、電気符号化手段へ入力されるK個の多値ベースバンド信号は、半分がD(t)の成分を含み、残り半分がシンボル値が反転した1−D(t)の成分を含む。そのため、全部の多値ベースバンド信号の加算により、非所望信号成分が打ち消される。
【0023】
従って、本発明は、最大符号多重数/光周波数成分数=1とすることで、同一波長帯域内で送りうる情報量を増大し、周波数利用効率の制限を解決する光CDM受信回路を提供することができる。
【0024】
光CDM送信回路の第1形態に対応する光CDM受信回路の前記光検波手段は、前記光周波数分波手段からの信号光を2乗検波することを特徴とする。
【0025】
光CDM送信回路の第1形態に対応する光CDM受信回路の前記光検波手段は、出力する連続光の光周波数が、前記光周波数分波手段からの信号光と所定の周波数差となるように調整された局発光源と、前記局発光源からの連続光と前記光周波数分波手段からの信号光との混合光を2乗検波する光検波器と、前記光検波器の出力から、周波数が前記所定の周波数差と一致する搬送波が搬送する信号成分を透過するバンドパスフィルタと、前記バンドパスフィルタの出力を2乗検波する包絡線検波器と、を備えることを特徴とする。
【0026】
光CDM送信回路の第1形態に対応する光CDM受信回路の前記光検波手段は、出力する連続光の光周波数が、前記光周波数分波手段からの信号光との周波数差が前記2値信号の信号帯域より十分に小さくなるように調整された局発光源と、複数の出力端を有し、前記局発光源からの連続光と前記光周波数分波手段からの信号光との光位相差が、出力端間で所定の差となるように、前記局発光源からの連続光と前記光周波数分波手段からの信号光を混合する光ハイブリッドと、前記光ハイブリッドの出力端と1対1に接続され、入力光を2乗検波する複数の光検波器と、前記光検波器の出力を2乗する複数の2乗器と、各々の前記2乗器の出力を加算する加算器と、を備えることを特徴とする。
【0027】
光CDM送信回路の第2形態に対応する光CDM受信回路の前記光検波手段は、出力する連続光の光周波数が、前記光周波数分波手段からの信号光と所定の周波数差となるように調整された局発光源と、前記局発光源からの連続光と、前記光周波数分波手段からの信号光との混合光を2乗検波する光検波器と、前記光検波器の出力から、周波数が前記所定の周波数差と一致する搬送波が搬送する信号成分を透過するバンドパスフィルタと、VCO、ミキサー及びループフィルタを含み、電気帯域が前記2値信号の信号帯域より十分に狭い電気位相同期ループを有する位相同期検波回路と、を備え、前記VCOの出力の周波数および位相は、前記ループフィルタで前記搬送波と同期するように調整され、前記ミキサーは、前記バンドパスフィルタからの入力信号と前記VCOの出力を積算することを特徴とする。
【0028】
光CDM送信回路の第2形態に対応する光CDM受信回路の前記光検波手段は、局発光源、光検波器及びループフィルタを含み、電気帯域が前記2値信号の信号帯域より十分に狭い光位相同期ループを備え、前記局発光源が出力する連続光の光周波数および光位相は、前記ループフィルタにより、前記光周波数分波手段からの信号光の光搬送波と同期するように調整され、前記光検波器は、前記局発光源からの連続光と前記光周波数分波手段からの信号光との混合光を2乗検波することを特徴とする。
【0029】
光CDM送信回路の第3形態に対応する光CDM受信回路の前記光検波手段は、前記光周波数分波手段からの信号光を2乗検波することを特徴とする。
【0030】
本発明に係る光CDM伝送システムは、前記光CDM送信回路と、前記光CDM受信回路と、前記光CDM送信回路から前記光CDM受信回路へ前記多波長信号光を伝搬する光ファイバ伝送路と、を備える。
【0031】
本発明に係る光CDM伝送システムは、第1形態の光CDM送信回路と、これに対応する光CDM受信回路と、前記光CDM送信回路から前記光CDM受信回路へ前記多波長信号光を伝搬する光ファイバ伝送路と、を備える。
【0032】
本発明に係る光CDM伝送システムは、第2形態の光CDM送信回路と、これに対応する光CDM受信回路と、前記光CDM送信回路から前記光CDM受信回路へ前記多波長信号光を伝搬する光ファイバ伝送路と、を備える。
【0033】
本発明に係る光CDM伝送システムは、第3形態の光CDM送信回路と、これに対応する光CDM受信回路と、前記光CDM送信回路から前記光CDM受信回路へ前記多波長信号光を伝搬する光ファイバ伝送路と、を備える。
【0034】
本発明に係る光CDM伝送システムは、前述した光CDM送信回路と光CDM受信回路を備えるため、最大符号多重数/光周波数成分数=1とすることで、同一波長帯域内で送りうる情報量を増大し、周波数利用効率の制限を解決することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明は、最大符号多重数/光周波数成分数=1とすることで、同一波長帯域内で送りうる情報量を増大し、周波数利用効率の制限を解決する光CDM送信回路、光CDM受信回路及び光CDM伝送システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】光CDM伝送システムの構成例を説明する図である。
【図2】光CDM送信回路の2値/多値変換手段の構成例を説明する図である。
【図3】本発明に係る光CDM送信回路の2値/多値変換手段を説明する図である。
【図4】本発明に係る光CDM送信回路の2値/多値変換手段が有するプリバイアス回路を説明する図である。
【図5】本発明に係る光CDM送信回路の2値/多値変換手段が有するプリバイアス回路を説明する図である。
【図6】本発明に係る光CDM受信回路の光検波手段を説明する図である。
【図7】本発明に係る光CDM受信回路の光検波手段を説明する図である。
【図8】本発明に係る光CDM送信回路の2値/多値変換手段が出力する多値信号光の光電界状態を説明する図である。
【図9】本発明に係る光CDM送信回路の光変調手段を説明する図である。
【図10】本発明に係る光CDM受信回路の光検波手段を説明する図である。
【図11】本発明に係る光CDM受信回路の光検波手段を説明する図である。
【図12】本発明に係る光CDM送信回路を説明する図である。
【図13】本発明に係る光CDM送信回路を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。また、枝番号を付さずに説明する場合は、その構成要素全てに共通する説明である。
【0038】
(実施形態1)
実施形態1の光CDM伝送システムは、図1の光CDM伝送システムと同様に、光CDM送信回路201と複数の光CDM受信回路202とが光ファイバ伝送路203で接続された構成である。
【0039】
[光CDM送信回路]
光CDM送信回路201は、2種の符号要素で構成され、符号長がK(Kは2以上の整数)以下のN個の固有符号を持ち、N個(Nは2以上の整数)の2値信号のそれぞれに前記固有符号を対応させて前記2値信号からK個の多値信号を生成する際に、前記2値信号に対応させた前記固有符号のk番目(k=1,2,・・・,K)の符号要素が、前記2種の符号要素の一方である場合は前記2値信号のシンボル値をそのまま前記固有符号のk番目の符号要素に対応する拡散値とし、前記2種の符号要素の他方である場合は反転した前記2値信号のシンボル値を前記固有符号のk番目の符号要素に対応する拡散値とし、前記拡散値同士を加算してk番目の前記多値信号のシンボル値とする2値/多値変換手段111と、互いに光周波数が異なる連続光である光搬送波が入力され、2値/多値変換手段111が生成した前記多値信号で前記光搬送波を変調した多値信号光を出力する複数の光変調手段12と、各々の前記光変調手段が出力する前記多値信号光を合波した多波長信号光を出力する光合波手段13と、を備える。
【0040】
各々の光変調手段12は、光源14からそれぞれ光周波数が異なる連続光が入力され、入力された連続光の光強度を2値/多値変換手段111にて生成された多値信号のうちのいずれか1個を用いて変調した多値信号光を出力する。各光変調手段12が出力する多値信号光を、アレイ導波路回折格子(AWG: Arrayed Waveguide Grating)や多層膜フィルタ等の光周波数合波手段13や、光ファイバやPLC(Planar Lightwave Circuit)により作成された光カプラにより合波した多波長信号光が、光ファイバ伝送路203を介して、各光CDM受信回路202へ伝送される。ここで、多波長信号光の各光周波数成分の平均光強度は等しい。図1中の光CDM送信回路201のように出力光の光周波数が異なる各光源14と各光変調手段12を1対1に接続する構成の他、多波長光源の出力を光周波数成分ごとに分離して各光変調手段12へ入力する構成も可能である。単一モード光の出力を高周波正弦波で変調して多波長化する構成、モード同期レーザ等を多波長光源として用いることが可能である。
【0041】
2値/多値変換手段111は、シンボル値がD(t)〜D(t)であるN個の2値信号が入力され、2値信号と1対1に対応するN個の固有符号に基づき、シンボル値がD(t)〜D(t)であるK個の多値信号を生成する。固有符号は2種の符号要素で構成され、符号長はK以下である。k番目の多値信号のシンボル値は、1対1に対応する固有符号のk番目の符号要素が、とりうる2種の符号要素のうちの一方である2値信号のシンボル値をそのまま、他方である2値信号のシンボル値は反転させた上で、N個の2値信号のシンボル値を加算した値である。固有符号n(n=1,2,・・・,N)のk番目の符号要素をcn,kとすると、k番目の多値信号のシンボル値D(t)は、
【数1】

と表せる。固有符号としては、各符号間で直交性を有するアダマール符号などを用いる。ここで、多値信号は、各シンボル値に対応する電圧レベルが光多値変調における所望の間隔となるように、2値/多値変換手段111内にて調整されている。
【0042】
図3は、2値/多値変換手段111の構成例である。2値/多値変換手段111は、それぞれが対応する前記固有符号の符号長以上の個数の出力端23を持ち、前記固有符号の各符号要素を出力端23へ順に割り当て、前記2種の符号要素の一方を割り当てた出力端23から、入力された前記2値信号のシンボル値と一致する前記拡散値を出力し、前記2種の符号要素の他方を割り当てた出力端23から、入力された前記2値信号のシンボル値を反転した前記拡散値を出力するN個の拡散符号器121と、各々の拡散符号器121のk番目の出力端23からの前記拡散値を加算してk番目の前記多値信号とするK個の加算器22と、を有する。本実施形態では、2値/多値変換手段111は加算器22の後段にプリバイアス回路24を接続している。
【0043】
拡散符号器121は、対応する固有符号の符号長以上の個数の出力端23を有し、固有符号を構成する各符号要素{1},{0}を各出力端23へ順に割り当てた際に、符号要素{1}を割り当てられた各出力端23から、シンボル値が入力された2値信号と一致する信号(拡散値)を出力する。一方、符号要素{0}を割り当てられた各出力端23からは、シンボル値が入力された2値信号と反転した信号(拡散値)を出力する。図3は、すべての固有符号の符号長および出力端23数がKの場合である。例えば、固有符号1{1,1,0,・・・,0}が割り当てられた拡散符号器121−1の各出力端23の出力信号のシンボル値は、D(t)=1の場合は順に“1”,“1”,“0”,・・・,“0”となり、D(t)=0の場合は順に“0”,“0”,“1”,・・・,“1”となる。
【0044】
各拡散符号器121の出力信号は加算され、K個の多値信号が生成される。k番目の加算器22は、各拡散符号器121のk番目の出力端23−kからの出力信号を加算して、シンボル値D(t)が式(1)で表される多値信号を生成する。
【0045】
プリバイアス回路24は、加算器22の出力信号の各シンボル値に対応する電圧レベルの間隔を調整する。プリバイアス回路24の構成例を図4に示す。プリバイアス回路24は、多値信号の多値数をMとすると、M−1個以上の重み付け回路31を有する。入力された多値信号は分岐され、各重み付け回路31へ入力される。重み付け回路31は、入力信号の電圧レベルが閾値電圧以上の場合に1を、閾値電圧以下の場合に0を出力する識別器32と、識別器32の出力に所定の重み付け係数(X,X,・・・)を乗じて出力する乗算器33を含む。各重み付け回路31の出力は加算され、光変調手段12へ入力される。
【0046】
m番目(m=1,2,・・・,M−1)の重み付け回路31−mにおける識別器の閾値電圧VTh_mは、入力多値信号のシンボル値“m−1”に対応する電圧レベルと、シンボル値“m”に対応する電圧レベルとの間に設定される。ある時刻における入力多値信号がシンボル値“i”に対応する場合、重み付け回路31−1〜i内の識別回路32が1を出力し、他の識別回路32が0を出力するため、各重み付け回路31の出力を加算したプリバイアス回路24の出力は、X+X+・・・+Xとなる。同様に、入力多値信号がシンボル値“i+1”に対応する場合、プリバイアス回路24の出力は、X+X+・・・+X+Xi+1となる。よって、プリバイアス回路24が出力する多値信号の各シンボル値に対応する電圧レベルの間隔は、順に、X,X,・・・,XM−1となる。つまり、プリバイアス回路24は、重み付け係数X〜XM−1を変化させることにより、各シンボル値に対応する電圧レベルの間隔が所望の比である多値信号を柔軟に生成することが可能である。
【0047】
2値/多値変換手段111に入力されるN個の2値信号は、必ずしも信号間でビット同期していなくてもよく、信号速度が異なっていてもよい。また、拡散符号器121、加算器22およびプリバイアス回路24での演算を記憶させたメモリとD/Aコンバータとを組み合わせて2値/多値変換手段を構成することもできる。更には、拡散符号器121と加算器22での演算を記憶させたメモリと、シンボル値D(t)に応じてSW〜SWM−1のいずれかがONとなる図5のようなプリバイアス回路との組み合わせにより、D/Aコンバータを不要化し、D/Aコンバータのサンプリング速度を超えた高速化が図れる。
【0048】
光変調手段12が出力する多値信号光は、入力される多値信号のシンボル値に応じて固有且つ等間隔の光強度レベルをもち、平均光強度がNによらず一定である。光変調手段12は、2値/多値変換手段111から入力された多値信号のシンボル値に応じて固有の光強度をとり、とりうる光強度レベルが等間隔である多値信号光を出力する。光変調手段12へ入力される多値信号は、2値/多値変換手段111において各シンボル値に対応する電圧レベルが調整されている。光多値変調の非線形性を補償するように、電圧レベル間隔を調整することにより、各光強度レベルが等間隔である多値信号光が生成される。
【0049】
光周波数がfである連続光が入力されるk番目の光変調手段12−kが出力する多値信号光の光電界状態E(t)は、平均光強度、シンボル値に応じてとりうる光強度レベルの間隔、をそれぞれP、ΔPで与えると、
【数2】

と表せる。mDは多値信号のシンボル値D(t)がとりうる最大値と最小値の中間値、θ(t)は光強度変調に伴う位相チャープ量、φ(t)は多値信号光の位相雑音である。
【0050】
光変調手段12として、LN強度変調器などのMach−Zehnder干渉計型の光強度変調器、電界吸収型(EA:Electro−absorption)変調器、半導体光増幅器(SOA:Semiconductor Optical Amplifier)変調器などを用いることができる。Dual−DriveのMach−Zehnder干渉計型の光強度変調器をPush−Pull動作させた場合、θ(t)=0となる。
【0051】
[光CDM受信回路]
光CDM受信回路202は、光CDM送信回路201からの前記多波長信号光を光周波数成分ごとに分波する光周波数分波手段42と、光周波数分波手段42からの信号光を検波して、前記多値信号を復調する複数の光検波手段43と、1番目からN番目の前記固有符号のうちの1つが割り当てられ、光検波手段43の各出力端が接続されており、割り当てられた前記固有符号を構成する前記符号要素を光検波手段43の出力端へ順に対応させ、前記2種の符号要素のうちの一方に対応する前記出力端からの入力を正、前記2種の符号要素のうちの他方に対応する前記出力端からの入力を負として加える加減算を行うことで、2値/多値変換手段111に入力された2値信号のうち、前記固有符号に対応する2値信号を選択的に取り出す電気復号化手段45と、を備える。
【0052】
光周波数分波手段42は、光CDM受信回路202へ入力された多波長信号光を光周波数成分ごとに分離して、多値信号光を光検波手段43へ出力する。本実施形態では、光検波手段43として光検波器(PD:Photo−Detector)を用いる。各光検波手段43は、光周波数分波手段42からの多値信号光を2乗検波して、各シンボル値に対応する電圧レベルが等間隔である多値ベースバンド信号を生成する。ここで、各光検波手段43で生成された多値ベースバンド信号間で、電圧レベル間隔は一致する。k番目の光検波手段43−kに入力される多値信号光の光電界状態が式(2)で表される光周波数がfである多値信号光とすると、多値ベースバンド信号R(t)(1)は、
【数3】

となり、電圧レベルがシンボル値D(t)に対して線形であることが分かる。
【0053】
電気復号化手段45は、複数の入力端と1個の出力端を備える。各入力端は、各光検波手段43の出力端と1対1に接続され、対応する固有符号を構成する各符号要素{1},{0}を各光検波手段43の出力端へ順に割り当てた際に、{1}が割り当てられた出力端からの入力を正、{0}が割り当てられた出力端からの入力を負として加える加減算を行う。上記加減算において、符号の直交性により非所望信号成分が除去され、所望の2値信号が選択的に取り出される。
【0054】
本実施形態においては、従来方式と異なり、全ての符号要素が{1}である固有符号#h(h =1,2,・・・,K)に対応し、全ての光検波手段43からの多値ベースバンド信号を加算する電気復号化手段45は、非所望信号成分の除去し、所望の2値信号を選択的に取り出すことが可能である。光CDM送信回路201内の2値/多値変換手段111において固有符号#k(k≠h)に基づいて拡散される非所望の2値信号成分(シンボル値:D(t))に着目すると、電気符号化手段45へ入力されるK個の多値ベースバンド信号は、半分がD(t)の成分を含み、残り半分がシンボル値が反転した1−D(t)の成分を含む。そのため、全部の多値ベースバンド信号の加算により、非所望信号成分が打ち消される。
【0055】
従来の光CDM伝送システムにおいては、互いに直交する符号長がKである符号のうち、全ての符号要素が{1}である符号を、固有符号として用いることができなかった。これに対し、本実施形態では、互いに直交する符号長がKである全ての符号を用いることが可能であり、同一符号長における符号多重数Nが拡大する。ここで、送受信される多波長信号光の光周波数成分数は符号長Kであり、多波長信号光の光周波数帯域は、従来の光CDM伝送システムと同じである。よって、従来方式と比較して、周波数利用効率が向上する。
【0056】
以下、固有符号として符号長がKであるアダマール符号を用いた場合に、全ての符号要素が{1}であるh番目の固有符号に対応する電気復号化手段45において、所望の2値信号を選択的に取り出せることを示す。電気復号化手段の出力S(t)(1)は、光検波手段からの多値ベースバンド信号R(t)(1)の和となる。ここで、式(4)−(6)が成り立つ。
【数4】

【数5】

【数6】

よって、
【数7】

となり、光CDM送信回路201内の2値/多値変換手段に入力されたh番目の2値信号のシンボル値D(t)に応じて、シンボル値が変化する所望の2値信号が取り出せることが分かる。
【0057】
(実施形態2)
実施形態2の光CDM伝送システムは、実施形態1の光CDM伝送システムの光CDM受信回路202内に、光検波手段43としてヘテロダイン包絡線検波回路を配置する。ヘテロダイン包絡線検波回路は、局発光源、光検波器、BPF(Bandpass Filter)、包絡線検波器を備え、光周波数分波手段からの多値信号光を検波して、各シンボル値に対応する電圧レベルが等間隔である多値ベースバンド信号を生成する。
【0058】
図6は、ヘテロダイン包絡線検波回路の一例である。すなわち、光検波手段43は、出力する連続光の光周波数が、光周波数分波手段42からの信号光と所定の周波数差となるように調整された局発光源51と、局発光源51からの連続光と光周波数分波手段43からの信号光との混合光を2乗検波する光検波器53と、光検波器53の出力から、周波数が前記所定の周波数差と一致する搬送波が搬送する信号成分を透過するBPF54と、BPF54の出力を2乗検波する包絡線検波器59と、を備える。
【0059】
局発光源51の光周波数は、多値信号光の光周波数とfIFだけ異なるように調整される。つまり、光電界状態が実施形態1中の式(2)で表される光周波数がfである多値信号光が入力されるk番目のヘテロダイン包絡線検波回路内では、局発光の光周波数をf−fIFとなるように調整する。その光電界状態E(t)は、
【数8】

と表せる。ここで、P,φ(t)は、それぞれ、局発光の光強度および位相雑音である。一方、多値信号光の光電界E(t)は、実施形態1中の式(2)で表せる。
【0060】
光検波手段43は、局発光と多値信号光との混合光を2乗検波する。その出力Q(t)(2)は、
【数9】

と表せる。ここで、
【数10】

とした。
【0061】
ヘテロダイン包絡線検波回路内では、局発光と多値信号光の少なくとも一方の偏波状態を調整することにより、局発光と多値信号光の偏波状態が一致するように調整する。図6では、偏波調整手段52が局発光の偏波を調整している。光CDM送信回路201において信号光の偏波状態を時間ごとに変化させる偏波スクランブルの構成や、直交する偏波状態を足し合わせた信号光を送信する構成や、光CDM受信回路202における偏波ダイバーシティの構成により、ヘテロダイン包絡線検波回路における偏波調整を省くことも可能である。
【0062】
BPF54は、fIF近傍に透過帯域を有し、直接検波成分を除去して、fIFを中心周波数とする中間周波信号(式(9)右辺第3項)を出力する。
【0063】
BPF54からの中間周波信号は、包絡線検波器59における2乗検波の後、LPF(Lowpass Filter)において低域濾波され、各シンボル値に対応する電圧レベルが等間隔である多値ベースバンド信号が生成される。ここで、各ヘテロダイン包絡線検波回路で生成される多値ベースバンド信号間で、電圧レベル間隔は一致する。k番目のヘテロダイン包絡線検波回路で生成される多値ベースバンド信号R(t)(2)は、
【数11】

となり、電圧レベルがシンボル値D(t)に対して線形であることが分かる。
【0064】
電気復号化手段45は、実施形態1と同様の構成であり、入力された多値ベースバンド信号を対応する固有符号に応じて加減算し、所望の2値信号を選択的に取り出す。本実施形態においては、従来方式と異なり、全ての符号要素が{1}である固有符号#h(h =1,2,・・・,K)に対応し、全ての光検波手段43からの多値ベースバンド信号を加算する電気復号化手段45は、非所望信号成分の除去し、所望の2値信号を選択的に取り出すことが可能である。光CDM送信回路201内の2値/多値変換手段111において固有符号#k(k≠h)に基づいて拡散される非所望の2値信号成分(シンボル値:D(t))に着目すると、電気符号化手段45へ入力されるK個の多値ベースバンド信号は、半分がD(t)の成分を含み、残り半分がシンボル値が反転した1−D(t)の成分を含む。そのため、全部の多値ベースバンド信号の加算により、非所望信号成分が打ち消される。
【0065】
従来の光CDM伝送システムにおいては、互いに直交する符号長がKである符号のうち、全ての符号要素が{1}である符号を、固有符号として用いることができなかった。これに対し、本実施形態では、互いに直交する符号長がKである全ての符号を用いることが可能であり、同一符号長における符号多重数Nが拡大する。ここで、送受信される多波長信号光の光周波数成分数は符号長Kであり、多波長信号光の光周波数帯域は、従来の光CDM伝送システムと同じである。よって、従来方式と比較して、周波数利用効率が向上する。
【0066】
(実施形態3)
実施形態3の光CDM伝送システムは、実施形態1の光CDM伝送システムの光CDM受信回路202内に、光検波手段43として位相ダイバーシティ・ホモダイン検波回路を配置する。位相ダイバーシティ・ホモダイン検波回路は、局発光源、光ハイブリッド、複数の光検波器および2乗器、加算器を備え、光周波数分波手段からの多値信号光を検波して、各シンボル値に対応する電圧レベルが等間隔である多値ベースバンド信号を生成する。
【0067】
図7は、位相ダイバーシティ・ホモダイン検波回路の一例である。すなわち、光検波手段43は、出力する連続光の光周波数が、前記光周波数分波手段からの信号光との周波数差が前記2値信号の信号帯域より十分に小さくなるように調整された局発光源51と、複数の出力端を有し、局発光源51からの連続光と光周波数分波手段42からの信号光との光位相差が、出力端間で所定の差となるように、局発光源51からの連続光と光周波数分波手段42からの信号光を混合する光ハイブリッド133と、光ハイブリッド133の出力端と1対1に接続され、入力光を2乗検波する複数の光検波器134と、光検波器134の出力を2乗する複数の2乗器135と、各々の2乗器135の出力を加算する加算器136と、を備える。
【0068】
局発光の光周波数は、多値信号光との光周波数差εが、光CDM送信回路201において2値/多値変換手段111へ入力される2値信号の信号帯域と比べて十分に小さくなるように調整される。光電界状態が実施形態1中の式(2)で表される光周波数がfである多値信号光が入力されるk番目の位相ダイバーシティ・ホモダイン検波回路内では、局発光の光電界状態E(t)は、
【数12】

と表せる。
【0069】
光ハイブリッド133は、複数の出力端を有し、局発光と多値信号光との光位相差が、出力端間で所定の差となるように、局発光と多値信号光とを混合して出力する。4個の出力端を備え、1番目の出力端における局発光と多値信号光との光位相差をψ(t)とすると、他の3つの出力端における光位相差がψ(t)+π/2,ψ(t)+π,ψ(t)+3π/2となる90°光ハイブリッドなどがこれにあたる。偏波を利用して所望の光位相関係を実現するλ/2板やλ/4板を組み込んだ空間系回路や、光ファイバやPLCなどで作成した光カプラに光位相調整部を組み込むことで、90°光ハイブリッドを構成できる。
【0070】
図7は、90°光ハイブリッド133の入力端において、偏波調整手段52が局発光と多値信号光の偏波状態を調整する構成である。光CDM送信回路201において信号光の偏波状態を時間ごとに変化させる偏波スクランブルの構成や、直交する偏波状態を足し合わせた信号光を送信する構成や、光CDM受信回路202における偏波ダイバーシティの構成により、位相ダイバーシティ・ホモダイン検波回路における偏波調整を省くことも可能である。
【0071】
90°光ハイブリッドの出力端#1,#2は差動検波器134−1に、出力端#3, #4は差動検波器134−2に接続される。ここで、出力端#1における局発光と多値信号光との光位相差をψ(t)とすると、出力端2〜4における光位相差は、順に、ψ(t)+π,ψ(t)+π/2,ψ(t)+3π/2となる。この時、差動検波器1の出力Q(t)(3)は、
【数13】

と表せる。同様にして、差動検波器2の出力Q(t)(3)は、次式で表せる。
【数14】

差動検波器の出力は、それぞれ2乗された後に加算され、各シンボル値に対応する電圧レベルが等間隔である多値ベースバンド信号が生成される。ここで、各位相ダイバーシティ・ホモダイン検波回路で生成される多値ベースバンド信号間で、電圧レベル間隔は一致する。k番目の位相ダイバーシティ・ホモダイン検波回路で生成される多値ベースバンド信号R(t)(3)は、
【数15】

となり、電圧レベルがシンボル値D(t)に対して線形であることが分かる。
【0072】
電気復号化手段45は、実施形態1と同様の構成であり、入力された多値ベースバンド信号を対応する固有符号に応じて加減算し、所望の2値信号を選択的に取り出す。本実施形態においては、従来方式と異なり、全ての符号要素が{1}である固有符号#h(h =1,2,・・・,K)に対応し、全ての光検波手段43からの多値ベースバンド信号を加算する電気復号化手段45は、非所望信号成分の除去し、所望の2値信号を選択的に取り出すことが可能である。光CDM送信回路201内の2値/多値変換手段111において固有符号#k(k≠h)に基づいて拡散される非所望の2値信号成分(シンボル値:D(t))に着目すると、電気符号化手段45へ入力されるK個の多値ベースバンド信号は、半分がD(t)の成分を含み、残り半分がシンボル値が反転した1−D(t)の成分を含む。そのため、全部の多値ベースバンド信号の加算により、非所望信号成分が打ち消される。
【0073】
従来の光CDM伝送システムにおいては、互いに直交する符号長がKである符号のうち、全ての符号要素が{1}である符号を、固有符号として用いることができなかった。これに対し、本実施形態では、互いに直交する符号長がKである全ての符号を用いることが可能であり、同一符号長における符号多重数Nが拡大する。ここで、送受信される多波長信号光の光周波数成分数は符号長Kであり、多波長信号光の光周波数帯域は、従来の光CDM伝送システムと同じである。よって、従来方式と比較して、周波数利用効率が向上する。
【0074】
(実施形態4)
実施形態4の光CDM伝送システムは、実施形態1の光CDM伝送システムと同様に、光CDM送信回路201と複数の光CDM受信回路202とが光ファイバ伝送路203により接続された構成である。実施形態1では光CDM送信回路201内の光変調手段12が光搬送波の光強度を変調するのに対して、実施形態4では光搬送波の光電界振幅および光位相を変調する。更に、実施形態4の光CDM受信回路202は、光検波手段43として、ヘテロダイン同期検波回路を配置する。
【0075】
光変調手段12が出力する前記多値信号光は、入力される前記多値信号のシンボル値に応じて固有且つ等間隔の光電界振幅レベルをもち、光変調手段12内での前記光搬送波の光位相シフト量が、前記多値信号のシンボル値に応じて、差がπである2値のいずれかである。
【0076】
光変調手段12が出力する多値信号光は、2値/多値変換手段111から入力された多値信号のシンボル値に応じて、固有の光電界振幅レベルをとり、とりうる光電界振幅レベルは等間隔である。また、光変調手段12内での光搬送波の光位相シフト量は、シンボル値に応じて差がπである2値のいずれかとなる。光変調手段12へ入力される多値信号は、2値/多値変換手段111において各シンボル値に対応する電圧レベルが調整されている。光多値変調の非線形性を補償するように、電圧レベル間隔を調整することにより、各光電界振幅レベルが等間隔である多値信号光が生成される。
【0077】
光周波数がfである連続光が入力されるk番目の光変調手段12−kが出力する多値信号光の光電界状態E(t)は、シンボル値に応じてとりうる光電界振幅レベルの間隔をΔEで与えると、
【数16】

と表せる。ω(t)は、D(t)に応じて、差がπである2値のいずれかをとる。ω(t)が、0またはπのいずれかとすると、多値信号光の光電界状態は、D(t)に応じて、図8のように遷移する。図8中のMは、光変調手段へ入力される多値信号の多値数である。
【0078】
図9は、光変調手段12の一例である。光変調手段12は、差動信号生成手段25と、光強度変調にともなう位相チャープがないゼロチャープ型の光強度変調器26を含む。ゼロチャープ型の光強度変調器26は、例えば、Dual−DriveのMach−Zehnder干渉計型の光強度変調器である。光強度変調器26は、差動信号生成手段25が2値/多値変換手段111からの多値信号から生成した極性が反転関係にある2つの信号を、差動信号生成手段25の出力信号がとりうる最大電圧と最小電圧の中間電圧が印加された時に透過率が最小となるようにバイアスし、所望の多値信号光を生成する。差動信号生成手段25は、ディバイダとインバータを組み合わせた構成の他、差動アンプを用いることができる。
【0079】
光CDM受信回路202に入力された多波長信号光は、光周波数分波手段42により光周波数成分ごとに分離され、各光検波手段43(ヘテロダイン同期検波回路)へ入力される。ヘテロダイン同期検波回路は、局発光源、光検波器、BPF、位相同期検波回路を備え、光周波数分波手段からの多値信号光を検波して、各シンボル値に対応する電圧レベルが等間隔である多値ベースバンド信号を生成する。
【0080】
図10は、ヘテロダイン同期検波回路の一例である。すなわち、光検波手段43は、出力する連続光の光周波数が、光周波数分波手段42からの信号光と所定の周波数差となるように調整された局発光源51と、局発光源51からの連続光と、光周波数分波手段42からの信号光との混合光を2乗検波する光検波器53と、光検波器53の出力から、周波数が前記所定の周波数差と一致する搬送波が搬送する信号成分を透過するBPF54と、VCO61、ミキサー62及びループフィルタ63を含み、電気帯域が前記2値信号の信号帯域より十分に狭い電気位相同期ループを有する位相同期検波回路55と、を備え、VCO61の出力の周波数および位相は、ループフィルタ63で前記搬送波と同期するように調整され、ミキサー62は、BPF54からの入力信号とVCO61の出力を積算することを特徴とする。
【0081】
局発光源51の光周波数は、光検波手段へ入力される多値信号光の光周波数とfIFだけ異なるように調整される。つまり、光電界状態が式(16)で表される光周波数がfである多値信号光が入力されるk番目のヘテロダイン同期検波回路では、局発光の光周波数はf−fIFとなるように調整され、その光電界状態E(t)は、光電界振幅をEとすると、
【数17】

と表せる。
【0082】
光検波器53は、局発光と多値信号光との混合光を2乗検波し、その出力Q(t)(4)は、
【数18】

と表せる。Δφ(t)の時間変動は、光CDM送信回路201にて2値/多値変換手段111へ入力される2値信号の信号速度と比べて、十分に緩やかである。
【0083】
ヘテロダイン同期検波回路内では、局発光と多値信号光の少なくとも一方の偏波状態を偏波調整手段52が調整することにより、局発光と多値信号光の偏波状態が一致するように調整する。光CDM送信回路201において信号光の偏波状態を時間ごとに変化させる偏波スクランブルの構成や、直交する偏波状態を足し合わせた信号光を送信する構成や、光CDM受信回路202における偏波ダイバーシティの構成などにより、ヘテロダイン同期検波回路における偏波調整を省くことも可能である。
【0084】
BPF54は、fIF近傍に透過帯域を有し、直接検波成分を除去して、fIFを中心周波数とする中間周波信号(式(18)右辺第3項)を出力する。
【0085】
位相同期検波回路55は、BPF54からの中間周波信号を同期検波して、各シンボル値に対応する電圧レベルが等間隔である多値ベースバンド信号を生成する。ここで、各光検波手段43(ヘテロダイン同期検波回路)で生成される多値ベースバンド信号間で、電圧レベル間隔は一致する。位相同期検波回路55内のミキサー62の出力T(t)(4)は、
【数19】

と表せる。ミキサー62の出力T(t)(4)をLPF56にて低域濾波した多値ベースバンド信号
【数20】

が電気復号化手段へ入力される。ω(t)は、D(t)に応じて、差がπである2値のいずれかをとるため、多値ベースバンド信号は、シンボル値D(t)に応じてとりうる電圧レベルがmDに対応する0Vを中心として対称かつ等間隔となることが分かる。
【0086】
電気復号化手段45は、実施形態1と同様の構成であり、入力された多値ベースバンド信号を対応する固有符号に応じて加減算し、所望の2値信号を選択的に取り出す。本実施形態においては、従来方式と異なり、全ての符号要素が{1}である固有符号#h(h =1,2,・・・,K)に対応し、全ての光検波手段43からの多値ベースバンド信号を加算する電気復号化手段45は、非所望信号成分の除去し、所望の2値信号を選択的に取り出すことが可能である。光CDM送信回路201内の2値/多値変換手段111において固有符号#k(k≠h)に基づいて拡散される非所望の2値信号成分(シンボル値:D(t))に着目すると、電気符号化手段45へ入力されるK個の多値ベースバンド信号は、半分がD(t)の成分を含み、残り半分がシンボル値が反転した1−D(t)の成分を含む。そのため、全部の多値ベースバンド信号の加算により、非所望信号成分が打ち消される。
【0087】
従来の光CDM伝送システムにおいては、互いに直交する符号長がKである符号のうち、全ての符号要素が{1}である符号を、固有符号として用いることができなかった。これに対し、本実施形態では、互いに直交する符号長がKである全ての符号を用いることが可能であり、同一符号長における符号多重数Nが拡大する。ここで、送受信される多波長信号光の光周波数成分数は符号長Kであり、多波長信号光の光周波数帯域は、従来の光CDM伝送システムと同じである。よって、従来方式と比較して、周波数利用効率が向上する。
【0088】
(実施形態5)
実施形態5の光CDM伝送システムは、実施形態4の光CDM伝送システムおいて、光CDM受信回路202内に、光検波手段43として、光位相同期ホモダイン検波回路を配置する。光位相同期ホモダイン検波回路は、局発光源、光検波器およびループフィルタにより構成される光位相同期ループを備え、光周波数分波手段からの多値信号光を検波して、各シンボル値に対応する電圧レベルが等間隔である多値ベースバンド信号を生成する。
【0089】
図11は、光位相同期ホモダイン検波回路の一例である。すなわち、光検波手段43は、局発光源51、光検波器53及びループフィルタ63を含み、電気帯域が前記2値信号の信号帯域より十分に狭い光位相同期ループを備え、局発光源51が出力する連続光の光周波数および光位相は、ループフィルタ63により、光周波数分波手段42からの信号光の光搬送波と同期するように調整され、光検波器53は、局発光源51からの連続光と光周波数分波手段42からの信号光との混合光を2乗検波することを特徴とする。
【0090】
ループフィルタ63は、局発光の光周波数および光位相を、多値信号光の光搬送波と同期するように調整する。光電界状態が実施形態4中の式(16)で表される光周波数がfである多値信号光が入力されるk番目の光位相同期ホモダイン検波回路では、光位相同期ループの電気帯域は、光CDM送信回路201にて2値/多値変換手段111へ入力される2値信号の信号帯域よりも十分に狭い。このため、ループフィルタ63は、θ(t)による2値信号の信号速度での電圧変動を感じずに、局発光の光位相はφ(t)と同期し、局発光の光電界状態E(t)は、
【数21】

と表せる。
【0091】
光検波器53は、局発光と多値信号光との混合光を2乗検波する。その出力R(t)(5)は、
【数22】

と表せる。局発光の光電界振幅を、多値信号光の光電界振幅よりも十分に大きくすると、多値信号光の直接検波成分(式(22) 右辺第2項)は、局発光と多値信号光のビート成分(式(22) 右辺第3項)と比べて無視できるため、R(t)(5)は各電圧レベルが等間隔である多値ベースバンド信号と見なせる。
【0092】
光位相同期ホモダイン検波回路内では、局発光と多値信号光の少なくとも一方の偏波状態を偏波調整手段52で調整することにより、局発光と多値信号光の偏波状態が一致するように調整する。光CDM送信回路201において信号光の偏波状態を時間ごとに変化させる偏波スクランブルの構成や、直交する偏波状態を足し合わせた信号光を送信する構成や、光CDM受信回路202における偏波ダイバーシティの構成により、光位相同期ホモダイン検波回路における偏波調整を省くことも可能である。
【0093】
光検波手段43として、光位相同期ホモダイン検波回路に代わり、局発光源、90°光ハイブリッド、差動光検波器、ディジタル信号処理(DSP: Digital Signal Processing)回路を備えるディジタルコヒーレント受信器を用いることが可能である。DSP回路において多値信号光と局発光の光位相差の推定が可能であるため、光位相同期ホモダイン検波において必要である多値信号光と局発光との光位相同期が不要である。この光検波手段を用いる場合、光強度変調手段へ入力される多値信号は差動符号化(Differential Encoding)される。
【0094】
電気復号化手段45は、実施形態1と同様の構成であり、入力された多値ベースバンド信号を対応する固有符号に応じて加減算し、所望の2値信号を選択的に取り出す。本実施形態においては、従来方式と異なり、全ての符号要素が{1}である固有符号#h(h =1,2,・・・,K)に対応し、全ての光検波手段43からの多値ベースバンド信号を加算する電気復号化手段45で、非所望信号成分の除去し、所望の2値信号を選択的に取り出すことが可能である。光CDM送信回路201内の2値/多値変換手段111において固有符号#k(k≠h)に基づいて拡散される非所望の2値信号成分(シンボル値:D(t))に着目すると、電気符号化手段45へ入力されるK個の多値ベースバンド信号は、半分がD(t)の成分を含み、残り半分がシンボル値が反転した1−D(t)の成分を含む。そのため、全部の多値ベースバンド信号の加算により、非所望信号成分が打ち消される。
【0095】
従来の光CDM伝送システムにおいては、互いに直交する符号長がKである符号のうち、全ての符号要素が{1}である符号を、固有符号として用いることができなかった。これに対し、本実施形態では、互いに直交する符号長がKである全ての符号を用いることが可能であり、同一符号長における符号多重数Nが拡大する。ここで、送受信される多波長信号光の光周波数成分数は符号長Kであり、多波長信号光の光周波数帯域は、従来の光CDM伝送システムと同じである。よって、従来方式と比較して、周波数利用効率が向上する。
【0096】
(実施形態6)
実施形態6の光CDM伝送システムは、実施形態4に記載の光CDM伝送システムおいて、光CDM送信回路201が、多波長信号光に加え、多波長信号光と光周波数が一致する光周波数成分を含む多波長連続光を出力する。光CDM送信回路201の出力端において、多波長信号光と多波長連続光は、光周波数が同じである光周波数成分同士で、光位相差が0またはπであり、偏波状態が一致する。更に、実施形態6の光CDM受信回路202では、光検波手段43として光検波器を配置する。
【0097】
図12は、光CDM送信回路201の構成例である。光CDM送信回路201は、前記多波長信号光に含まれる前記多値信号光の光周波数と一致するK個の光周波数成分の連続光を、前記多波長信号光を出力する出力端において、前記光周波数成分が一致する前記多値信号光との光位相差が0又はπとなるように、且つ前記光周波数成分が一致する前記多値信号光との偏光状態が一致するように、前記多波長信号光又は前記光周波数成分が一致するそれぞれの前記多値信号光に混合して出力する光混合器91をさらに備える。
【0098】
各光源14の出力光は、光強度変調手段12の前で分岐される。一方の経路では、経路内の光変調手段12が、入力光の光電界振幅および光位相を2値/多値変換手段111からの多値信号で変調して多値信号光が生成する。これに対し、他方の経路への入力光は、変調されずに連続光が出力される。その後、光混合器91が多値信号光と連続光を合波する。
【0099】
ここで、少なくとも一方の経路内に配置された光位相調整手段92により、多値信号光と連続光の光位相は、合波した際に光位相差が0またはπとなるように調整される。多値信号光と連続光の光強度は、連続光の光強度が多値信号光よりも十分に大きくなるように、少なくとも一方の経路内に配置された光強度調整手段93により調整される。多値信号光と連続光の偏波状態は、合波した際に一致するように、少なくとも一方の経路内に配置された偏波調整手段94により調整される。両経路内で偏波状態が保持される場合は、偏波調整手段94を省くこともできる。
【0100】
光周波数合波手段13は、光周波数がfである多値信号光及び連続光と、光周波数がf,・・・,fである多値信号光及び連続光と、を合波して多波長信号光および多波長連続光を出力する。多波長信号光と多波長連続光は、上記のように、f成分同士、f成分同士、・・・、f成分同士の光位相差が0またはπであればよく、f,f,・・・,f成分間の光位相関係は任意である。また、多波長信号光と多波長連続光は、f成分同士、f成分同士、・・・、f成分同士成分同士の偏波状態が一致しているが、f,f,・・・,f成分間の偏波状態は必ずしも一致していなくてよい。図12では、光位相調整手段92の出力を偏波調整手段94に入力する構成としたが、偏波調整手段94は、光位相調整手段92の前に配置してもよい。同様に、光強度調整手段93を光変調手段12の前に配置することも可能である。
【0101】
図12では、出力光の光周波数が異なる各光源と各光変調手段を1対1に接続する構成としたが、多波長光源の出力を光周波数成分ごとに分離して各光変調手段12へ入力する構成も可能である。また、図13のように、多波長光源の出力を光周波数分波手段16の前で分岐して、一方の経路を通過した多波長連続光を、光周波数合波手段13の後段で多波長信号光と合波する構成も可能である。
【0102】
光CDM受信回路202に入力された多波長信号光および多波長連続光は、光周波数分波手段42により光周波数成分ごとに分離され、各光検波手段43へ入力される。光検波手段43は、光周波数分波手段からの入力光を2乗検波して、各シンボル値に対応する電圧レベルが等間隔である多値ベースバンド信号を生成する。
【0103】
ここで、光周波数が同じである多値信号光と連続光の光位相は、光CDM送信回路201内において、光位相差が多値信号光のシンボル値に応じて0またはπとなるように調整されている。更に、これらの光の光ファイバ伝送中における位相変移量は等しいため、光CDM受信回路202内における光位相差も0またはπとなる。k番目の光検波手段43−kへの入力光の光電界状態ETotal(t)は、連続光の光電界ECW(t)と多値信号光の光電界E(t)の和となり、
【数23】

と表せる。ここで、ECWは、連続光の光電界振幅である。よって、光検波手段43−kの出力Q(t)(6)は、
【数24】

と表せる。光CDM送信回路201内において、連続光の光電界振幅が、多値信号光の光電界振幅よりも十分に大きくなるように調整されているため、多値信号光の直接検波成分(式(24) 右辺第2項)は、連続光と多値信号光のビート成分(式(24) 右辺第3項)と比べて無視できるため、Q(t)(6)は各電圧レベルが等間隔である多値ベースバンド信号と見なせる。
【0104】
光周波数が同じである多値信号光と連続光は、光CDM送信回路201内において偏波状態が一致するように調整されている。また、光ファイバ伝送中の偏波変移も一様であるため、光検波手段43の入力端においても偏波状態は揃っている。よって、本実施形態における光CDM受信回路202内では、通常のコヒーレント検波手段内で必要となる偏波状態の調整が不要である。
【0105】
電気復号化手段45は、実施形態1と同様の構成であり、入力された多値ベースバンド信号を対応する固有符号に応じて加減算し、所望の2値信号を選択的に取り出す。本実施形態においては、従来方式と異なり、全ての符号要素が{1}である固有符号#h(h =1,2,・・・,K)に対応し、全ての光検波手段43からの多値ベースバンド信号を加算する電気復号化手段45は、非所望信号成分の除去し、所望の2値信号を選択的に取り出すことが可能である。光CDM送信回路201内の2値/多値変換手段111において固有符号#k(k≠h)に基づいて拡散される非所望の2値信号成分(シンボル値:D(t))に着目すると、電気符号化手段45へ入力されるK個の多値ベースバンド信号は、半分がD(t)の成分を含み、残り半分がシンボル値が反転した1−D(t)の成分を含む。そのため、全部の多値ベースバンド信号の加算により、非所望信号成分が打ち消される。
【0106】
従来の光CDM伝送システムにおいては、互いに直交する符号長がKである符号のうち、全ての符号要素が{1}である符号を、固有符号として用いることができなかった。これに対し、本実施形態では、互いに直交する符号長がKである全ての符号を用いることが可能であり、同一符号長における符号多重数Nが拡大する。ここで、送受信される多波長信号光の光周波数成分数は符号長Kであり、多波長信号光の光周波数帯域は、従来の光CDM伝送システムと同じである。よって、従来方式と比較して、周波数利用効率が向上する。
【符号の説明】
【0107】
11、111:2値/多値変換手段
12、12−1、12−2、・・・、12−K:光変調手段
13:光周波数合波手段
14、14−1、14−2、・・・、14−K:光源
15:多波長光源
16:光周波数分波手段
21、21−1、21−2、・・・、21−N、121、121−1、121−2、・・・、121−N:拡散符号器
22、22−1、22−2、・・・、22−K:加算器
23、23−11、23−12、・・・:出力端
24、24−1、24−2、・・・、24−K:プリバイアス回路
25:差動信号生成手段
26:光強度変調器
31、31−1、31−2、・・・、31−M−1:重み付け回路
32:識別器
33:乗算器
42:光周波数分波手段
43、43−1、43−2、・・・、43−K:光検波手段
45、45−1、45−2、・・・、45−N:電気復号化手段
51:局発光源
52、:偏波調整手段
53、:光検波器
54:BPF
55:位相同期検波回路
56:LPF
57:電気位相同期ループ
59:包絡線検波器
61:VCO
62:ミキサー
63:ループフィルタ
87:光位相同期ループ
91:光混合器
92:光位相調整手段
93:光強度調整手段
94:偏波調整手段
133:90°光ハイブリッド
134、134−1、134−2:差動検波器
135、135−1、135−2:2乗器
136:加算器
201:光CDM送信回路
202、202−1、202−2、・・・、202−N:光CDM受信回路
203:光ファイバ伝送路
301:光CDM伝送システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種の符号要素で構成され、符号長がK(Kは2以上の整数)以下のN個の固有符号を持ち、N個(Nは2以上の整数)の2値信号のそれぞれに前記固有符号を対応させて前記2値信号からK個の多値信号を生成する際に、
前記2値信号に対応させた前記固有符号のk番目(k=1,2,・・・,K)の
符号要素が
前記2種の符号要素の一方である場合は前記2値信号のシンボル値をそのまま
前記固有符号のk番目の符号要素に対応する拡散値とし、
前記2種の符号要素の他方である場合は反転した前記2値信号のシンボル値を
前記固有符号のk番目の符号要素に対応する拡散値とし、
前記拡散値同士を加算してk番目の前記多値信号のシンボル値とする2値/多値変換手段と、
互いに光周波数が異なる連続光である光搬送波が入力され、前記2値/多値変換手段が生成した前記多値信号で前記光搬送波を変調した多値信号光を出力する複数の光変調手段と、
各々の前記光変調手段が出力する前記多値信号光を合波した多波長信号光を出力する光合波手段と、
を備える光CDM送信回路。
【請求項2】
前記2値/多値変換手段は、
それぞれが対応する前記固有符号の符号長以上の個数の出力端を持ち、前記固有符号の各符号要素を前記出力端へ順に割り当て、前記2種の符号要素の一方を割り当てた前記出力端から、入力された前記2値信号のシンボル値と一致する前記拡散値を出力し、前記2種の符号要素の他方を割り当てた前記出力端から、入力された前記2値信号のシンボル値を反転した前記拡散値を出力するN個の拡散符号器と、
各々の前記拡散符号器のk番目の出力端からの前記拡散値を加算してk番目の前記多値信号とするK個の加算器と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の光CDM送信回路。
【請求項3】
前記光変調手段が出力する前記多値信号光は、
入力される前記多値信号のシンボル値に応じて固有且つ等間隔の光強度レベルをもち、平均光強度がNによらず一定であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光CDM送信回路。
【請求項4】
前記光変調手段が出力する前記多値信号光は、
入力される前記多値信号のシンボル値に応じて固有且つ等間隔の光電界振幅レベルをもち、前記光変調手段内での前記光搬送波の光位相シフト量が、前記多値信号のシンボル値に応じて、差がπである2値のいずれかであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光CDM送信回路。
【請求項5】
前記多波長信号光に含まれる前記多値信号光の光周波数と一致するK個の光周波数成分の連続光を、
前記多波長信号光を出力する出力端において、
前記光周波数成分が一致する前記多値信号光との光位相差が0又はπとなるように、
且つ前記光周波数成分が一致する前記多値信号光との偏光状態が一致するように、
前記多波長信号光又は前記光周波数成分が一致するそれぞれの前記多値信号光に混合して出力する光混合器をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の光CDM送信回路。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の光CDM送信回路からの前記多波長信号光を光周波数成分ごとに分波する光周波数分波手段と、
前記光周波数分波手段からの信号光を検波して、前記多値信号を復調する複数の光検波手段と、
1番目からN番目の前記固有符号のうちの1つが割り当てられ、前記光検波手段の各出力端が接続されており、割り当てられた前記固有符号を構成する前記符号要素を前記光検波手段の前記出力端へ順に対応させ、前記2種の符号要素のうちの一方に対応する前記出力端からの入力を正、前記2種の符号要素のうちの他方に対応する前記出力端からの入力を負として加える加減算を行うことで、前記2値/多値変換手段に入力された前記2値信号のうち、前記固有符号に対応する前記2値信号を選択的に取り出す電気復号化手段と、
を備えることを特徴とする光CDM受信回路。
【請求項7】
前記光検波手段は、前記光周波数分波手段からの信号光を2乗検波することを特徴とする請求項3を引用する請求項6に記載の光CDM受信回路。
【請求項8】
前記光検波手段は、
出力する連続光の光周波数が、前記光周波数分波手段からの信号光と所定の周波数差となるように調整された局発光源と、
前記局発光源からの連続光と前記光周波数分波手段からの信号光との混合光を2乗検波する光検波器と、
前記光検波器の出力から、周波数が前記所定の周波数差と一致する搬送波が搬送する信号成分を透過するバンドパスフィルタと、
前記バンドパスフィルタの出力を2乗検波する包絡線検波器と、
を備えることを特徴とする請求項3を引用する請求項6に記載の光CDM受信回路。
【請求項9】
前記光検波手段は、
出力する連続光の光周波数が、前記光周波数分波手段からの信号光との周波数差が前記2値信号の信号帯域より十分に小さくなるように調整された局発光源と、
複数の出力端を有し、前記局発光源からの連続光と前記光周波数分波手段からの信号光との光位相差が、出力端間で所定の差となるように、前記局発光源からの連続光と前記光周波数分波手段からの信号光を混合する光ハイブリッドと、
前記光ハイブリッドの出力端と1対1に接続され、入力光を2乗検波する複数の光検波器と、
前記光検波器の出力を2乗する複数の2乗器と、
各々の前記2乗器の出力を加算する加算器と、
を備えることを特徴とする請求項3を引用する請求項6に記載の光CDM受信回路。
【請求項10】
前記光検波手段は、
出力する連続光の光周波数が、前記光周波数分波手段からの信号光と所定の周波数差となるように調整された局発光源と、
前記局発光源からの連続光と、前記光周波数分波手段からの信号光との混合光を2乗検波する光検波器と、
前記光検波器の出力から、周波数が前記所定の周波数差と一致する搬送波が搬送する信号成分を透過するバンドパスフィルタと、
VCO、ミキサー及びループフィルタを含み、電気帯域が前記2値信号の信号帯域より十分に狭い電気位相同期ループを有する位相同期検波回路と、
を備え、
前記VCOの出力の周波数および位相は、前記ループフィルタで前記搬送波と同期するように調整され、
前記ミキサーは、前記バンドパスフィルタからの入力信号と前記VCOの出力を積算することを特徴とする請求項4を引用する請求項6に記載の光CDM受信回路。
【請求項11】
前記光検波手段は、
局発光源、光検波器及びループフィルタを含み、電気帯域が前記2値信号の信号帯域より十分に狭い光位相同期ループを備え、
前記局発光源が出力する連続光の光周波数および光位相は、前記ループフィルタにより、前記光周波数分波手段からの信号光の光搬送波と同期するように調整され、
前記光検波器は、前記局発光源からの連続光と前記光周波数分波手段からの信号光との混合光を2乗検波することを特徴とする請求項4を引用する請求項6に記載の光CDM受信回路。
【請求項12】
前記光検波手段は、前記光周波数分波手段からの信号光を2乗検波することを特徴とする請求項5を引用する請求項6に記載の光CDM受信回路。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の光CDM送信回路と、
請求項6に記載の光CDM受信回路と、
前記光CDM送信回路から前記光CDM受信回路へ前記多波長信号光を伝搬する光ファイバ伝送路と、
を備える光CDM伝送システム。
【請求項14】
請求項3に記載の光CDM送信回路と、
請求項7から9のいずれかに記載の光CDM受信回路と、
前記光CDM送信回路から前記光CDM受信回路へ前記多波長信号光を伝搬する光ファイバ伝送路と、
を備える光CDM伝送システム。
【請求項15】
請求項4に記載の光CDM送信回路と、
請求項10又は11に記載の光CDM受信回路と、
前記光CDM送信回路から前記光CDM受信回路へ前記多波長信号光を伝搬する光ファイバ伝送路と、
を備える光CDM伝送システム。
【請求項16】
請求項5に記載の光CDM送信回路と、
請求項12に記載の光CDM受信回路と、
前記光CDM送信回路から前記光CDM受信回路へ前記多波長信号光を伝搬する光ファイバ伝送路と、
を備える光CDM伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−44593(P2012−44593A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186183(P2010−186183)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】