説明

免疫グロブリン製剤およびその調製の方法

治療上有効な量の抗体、ポリソルベート80、ポリソルベートの酸化を抑制する緩衝剤を含む安定な水性製剤ならびに製剤を調製する方法を記載する。また、一定の容量を維持し、変わりやすい体重を有する患者に使用することができる高濃度の抗体を含む製剤を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体の活性が保持され、また少量で投与することができ、それを必要とする体重の変わりやすい対象に投与することができる、ナタリズマブのようなタンパク質または抗体の安定な濃縮製剤を対象とする。
【背景技術】
【0002】
抗体およびタンパク質製剤は、当技術分野において知られている。しかし、化学的かつ生物学的に安定であるタンパク質製剤、例えば抗体製剤を調製することは、難問をはらんでいる。安定でありかつ高濃度のタンパク質、たとえば抗体を含んでいても小容量を維持し得る(すなわち、小容量の注入を可能とする)製剤を調製することもまた問題である。そのような製剤は必要とされている。例えば、一定容量中でタンパク質が濃縮されかつ安定である量は、体重が変わりやすい患者に特に有用であろう。例えば、体重の変わりやすい患者への液体の投与は、副作用をもたらす可能性がある。そのような製剤の開発は、非常に凝集し沈殿しやすいタンパク質または抗体自体によって阻まれてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、文献に以前に報告されたとはいえ、タンパク質および/または抗体を調製するための改善された方法が必要とされている。抗体またはタンパク質の活性が保持されている高濃度の抗体またはタンパク質を含む安定な製剤もまた必要とされている。また、一定容量を維持する濃縮されたタンパク質の安定な製剤が必要とされている。本出願人らは、抗体製剤、特に、推奨温度で保存したときに沈殿せずに安定である高濃度の抗体を含む製剤、を調製するためにさらに用いることができる安定な組成物を本明細書において開示する。高濃度に濃縮された安定な抗体製剤は、体重が変わりやすい対象の治療において医師の著しい助けとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様は、免疫グロブリン(または他のタンパク質)と、リン酸緩衝液と、ポリソルベートと塩化ナトリウムとを含む安定な水性薬剤を提供する。好ましくは、ポリソルベートはポリソルベート80であり、好ましくは約0.001%〜約2.0%(w/v)の量で製剤中に存在する。最も好ましくはポリソルベートは約0.02%の量で存在する。他の実施形態において、免疫グロブリンまたは他のタンパク質は、約0.1mg/mL〜約200mg/mLの量で製剤中に存在する。好ましくは製剤は、約3.0〜約7.0、最も好ましくは約6.0±0.5のpHに緩衝されている。製剤は、好ましくは等張である。製剤は、さらにヒスチジンを含んでいてよい。好ましくは、ヒスチジンはL−ヒスチジンである。
【0005】
本発明の他の態様において、上の製剤の免疫グロブリンは、ナタリズマブのような抗α−4インテグリン抗体または他のヒト化抗体またはモノクローナル抗体である。この抗体は、標準的な量または濃縮された量、例えば約15mg/mL以上の量で存在していてよい。好ましくは、ナタリズマブは約20mg/mL〜約150mg/mLの量で存在する。製剤が約15mg/mL以上の濃度で存在する場合、この製剤は、一定容量、例えば、約125mL中に維持される。
【0006】
ある症状のために体重が変わりやすい患者を治療量の免疫グロブリンを用いて治療する方法であって、前記患者に、上記およびここに述べる製剤を投与することを含み、前記症状が前記製剤の投与により治療される方法を提供することが本発明のさらなる目的である。この症状がα−4インテグリンによって媒介されるものであり、そのような症状において、免疫グロブリンは、ナタリズマブのようにα−4インテグリンを認識し、結合するものであることが本発明のさらなる態様である。
【0007】
本発明のさらなる態様は、リン酸ナトリウム、ポリソルベート、タンパク質およびNaClを含み、6.0±0.5のpHを有し、5℃〜8℃で長期間保存した場合に安定である組成物を提供する。
【0008】
本発明の他の態様は、リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ポリソルベートおよびタンパク質を混合し、混合物のpHをリン酸で約pH6.0±0.5に調整することを含む安定なタンパク質含有製剤を調製する方法を提供する。
【0009】
本発明の製剤中のタンパク質は、凍結乾燥されていてよい。ポリソルベートは好ましくは、約0.02%(w/v)の量で存在するポリソルベート80kであり、タンパク質は好ましくはナタリズマブである。製剤は、さらにヒスチジンを含んでいてよい。
【0010】
好ましくは、タンパク質は、5mMヒスチジン、20mg/mLスクロースおよびpH6の0.02%ポリソルベート80を含む溶液中で凍結乾燥されていて、20mg/mLの濃度のナタリズマブである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、上およびここに述べる安定な製剤を保持する容器を含む物品を提供することである。
【0012】
本発明のさらなる態様は、ある症状のために体重が変わりやすい患者を治療する方法であって、上およびここに述べる製剤と前記症状に対して有効な化合物または療法との治療上有効な組合せを患者に同時または逐次的に投与することを含む方法を提供する。
【0013】
ある症状の治療のための前記症状の治療に有効な医薬品を調製するための本明細書に記載の安定な製剤のいずれかの使用を提供することが本発明のさらなる態様である。この医薬品は、前記症状を治療するための第2の化合物および療法をさらに含んでいてよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
1.定義
「タンパク質」は、免疫グロブリン、酵素、受容体およびそのフラグメントを含むが、これらに限定されないことを意味する。製剤の議論は主として抗体または免疫グロブリンに関して記載するが、他のタンパク質は、開示した製剤中で交換可能と考えられる。
【0015】
「免疫グロブリン」は、抗体および抗体フラグメント(scFv、Fab、Fc、F(ab’)2)ならびに抗体の他の遺伝子工学的に処理した部分を含むが、これらに限定されないことを意味する。それらの重鎖の定常領域のアミノ酸配列によって、免疫グロブリンは異なるクラスに帰属させることができる。免疫グロブリンの5つの主要なクラス、すなわち、IgA,IgD,IgE、IgGおよびIgMが存在する。これらのうちのいくつかは、さらにサブクラス(イソ型)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4、IgA1およびIgA2にさらに分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常領域は、それぞれアルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)およびミュー(μ)と呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造および三次元配置は、よく知られている。好ましくは、免疫グロブリンは、α−4インテグリンを認識し、そこに結合する。
【0016】
「抗体」という用語は、最も広い意味で用いられ、特に、所望の生物学的活性を示す限り、モノクローナル抗体(アゴニストおよびアンタゴニスト抗体を含む)、ポリペプチド特異性を有する抗体組成物および抗体フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)2、scFvおよびFv)を含む。「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、「prematized(登録商標)」抗体および遺伝子工学により作製した他の抗体を含むことを意味する。
【0017】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で用いているように、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す。すなわち、集団を構成する個々の抗体は、微量存在する可能性がある天然に存在する突然変異を除き、同じである。モノクローナル抗体は、単一抗原性部位に対して高度に特異的である。さらに、異なる抗原決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を一般的に含む通常の(ポリクローナル)抗体調製物と異なり、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一抗原決定基に対して誘導される。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、哺乳類細胞発現システムまたは形質転換技術により合成され、他の免疫グロブリンにより汚染されていない点が有利である。例えば、本発明により用いるべきモノクローナル抗体は、Behboodiら(2002)Transgenic cloned goats and the production of therapeutic proteins、In Principles of Cloning、Elsevier Science(USA)およびMeadeら(1999)、Expression of recombinant proteins in the milk of transgenic animals in Gene expression systems:using nature for the art of expression、J.M. FernandezおよびJ.P. Hoeffler編、Academic Pressにより記載のようにヤギにおいて発現させることができる。修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集団から得られる抗体の特性を示すものであり、特定の方法による抗体の生産を必要とすると解釈すべきではない。例えば、本発明により用いるべきモノクローナル抗体は、Shepherdら、Monoclonal Antibodies:A Practical Approach(Oxford University Press、2000)により記載された方法により調製することができる。
【0018】
「モノクローナル抗体」という用語は、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の種に由来または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一もしくは相同であり、一方、鎖の残りは、他の種に由来または他の抗体クラスもしくはサブクラス、ならびに所望の生物学的活性、例えば、α−4インテグリンに結合する能力を示す限り、そのような抗体のフラグメントに属する抗体の対応する配列と同一もしくは相同である、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)も含む。「モノクローナル抗体」は、例えば、Clacksonら、1991 Nature 352:624〜628頁およびMarksら、1991 J.Mol.Biol.、222:581〜597頁に記載されている技術を用いてファージ抗体ライブラリーから分離してもよい。非ヒト(例えば、マウス、ウサギ、ウシ、ウマ、ブタ等)抗体の「ヒト化」形は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小限の配列を含む、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそのフラグメント(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2または抗体の他の抗原結合配列)である。概して、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定部(CDR)の残基が所望の特異性、親和性および容量を有するマウス、ラットまたはウサギのような非ヒト種のCDR(ドナー抗体)の残基によって置換されているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの場合に、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が対応する非ヒト残基によって置換されている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入CDRまたはフレームワーク配列にも認められない残基を含んでいてよい。これらの修飾は、抗体の性能をさらに改善し、最適化するために行われる。一般的に、ヒト化抗体は、すべてまたは実質的にすべてのCDR部が非ヒト免疫グロブリンのそれらに対応し、すべてまたは実質的にすべてのFR領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のそれらである、実質的にすべての少なくとも1つ、および一般的に2つの可変領域を含む。ヒト化抗体は、最適には、一般的にヒト免疫グロブリンのそれである免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部も含む。
【0019】
「線状抗体」という表現も一般的用語「抗体」に含まれ、抗原結合領域の対を形成する縦列Fdセグメントの対(VH−CH1−VH−CH1)である。線状抗体は、二重特異性または単一特性であってよい。
【0020】
「変異抗体」(一般的用語「抗体」にも含まれる)は、親抗体配列における1つまたは複数のアミノ酸残基の付加、欠失および/または置換により、「親」抗体のアミノ酸配列とアミノ酸配列が異なる分子である。好ましい実施形態において、変異体は、親抗体の1つまたは複数の超可変領域における1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。例えば、変異体は、親抗体の1つまたは複数の超可変領域における少なくとも1つの置換、例えば、約1〜約10、好ましくは約2〜約5つの置換を含んでいてよい。通常、変異体は、親抗体重または軽鎖可変領域配列と少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%アミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。この配列に関する同一性または相同性は、本明細書では、最大の割合の配列同一性を達成するために必要な場合、配列のアライメントをとり、ギャップを導入した後に、親抗体残基と同一である候補配列におけるアミノ酸残基の割合と定義する。N末端、C末端または内部拡張、欠失または抗体配列への挿入のいずれも、配列同一性または相同性に影響を及ぼさないと解釈すべきである。
【0021】
そのような特性を分析するために、本明細書に開示した生物学的活性検定において抗体のフォーマットがその活性に影響することが見いだされたので、例えば、変異体のFab型を親抗体のFab型と、または変異体の全長型を親抗体の全長型と比較すべきである。特に興味深い変異抗体は、親抗体と比較したとき、少なくとも約10倍、好ましくは少なくとも約20倍、最も好ましくは少なくも約50倍の生物学的活性の増大を示すものである。「親」抗体は、変異体の調製に用いられるアミノ酸配列によってエンコードされるものである。好ましくは、親抗体は、ヒトフレームワーク領域を有し、ヒト抗体定常領域を有する。例えば、親抗体は、ヒト化またはヒト抗体であってよい。
【0022】
「分離抗体」は、その自然環境の成分から同定され、分離かつ/または回収されたものである。その自然環境の汚染物質成分は、抗体の診断または治療上の使用を妨害するような物質であり、酵素、ホルモンおよび他のタンパク質様または非タンパク質様溶質などである。好ましい実施形態において、抗体を(1)ローリー法により測定したとき95重量%を超えるまで、より好ましくは99重量%を超えるまで、(2)スピニングカップシークエネータを用いてN末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、または(3)クーマーシーブルーまたは好ましくは銀染色を用いて還元または非還元条件下でSDS−PAGEにより同質になるまで精製する。分離抗体は、抗体の自然環境の少なくとも1つの成分は存在しないので、組換え細胞内でのin situでの抗体を含む。しかし、通常、分離抗体は、少なくとも1つの精製工程により調製される。
【0023】
「抗体フラグメント」は、完全な抗体の一部、一般的に完全な抗体の抗原結合または可変領域を含む。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFvフラグメント、二重特異性抗体(diabodies)、線状抗体、単鎖抗体分子ならびに抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体などがある。「単鎖Fv」または「sFv」抗体フラグメントは、これらのドメインが単一ポリペプチド鎖に存在する抗体のVHおよびVLドメインを含む。一般的に、Fvポリペプチドは、sFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にする、VHドメインとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。
【0024】
「二重特異性抗体」という用語は、同じポリペプチド鎖(VH−VL)における軽鎖可変ドメイン(VL)に結合した重鎖可変ドメイン(VH)を含む、2つの抗原結合部位を有する小抗体フラグメントを指す。短すぎて、同じ鎖上の2つのドメインの間の対を形成させることができないリンカーを用いることによって、ドメインは他の鎖の相補的ドメインと対を形成し、2つの抗原結合部位を作ることを余儀なくされる。抗体の投与経路は、既知の方法によるものであり、よく知られており、例えば、静脈内、腹腔内、大脳内、筋肉内、眼内、動脈内もしくは病変内経路による、または持続性放出システムによる注射または注入を含む。抗体は、注入またはボーラス注射により連続的に投与することができる。治療用抗体組成物は一般的に、無菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針により貫通できる栓を有する静脈内液剤バッグまたはバイアルに入れる。「製薬上許容できる」医薬品添加剤(例えば、賦形剤、添加剤)は、用いる有効成分の有効量を供給するために対象哺乳類に合理的に投与することができるものである。「安定な」製剤は、その中のタンパク質が保存時にその物理的安定性および/または化学的安定性および/または生物学的活性を本質的に保持するものである。「安定な」も凝集および/または脱アミド化を含む不安定性の徴候をほとんどまたは全く示さない製剤を意味する。例えば、本発明により提供される製剤は、5〜8℃の温度で示されたように保存するとき、少なくとも2年間安定であり続けることができる。
【0025】
タンパク質の安定性を測定する様々な分析法は、当技術分野において利用でき、例えば、Peptide and Protein Drug Delivery、247〜301頁(Vincent Lee編、New York、N.Y.、1991)およびJones、1993 Adv.Drug Delivery Rev.10:29〜90頁においてレビューされている。安定性は、示した実施例により例示されているように、選択した温度で、選択した期間にわたり測定することができる。安定な製剤の保存は、もし好ましくければ少なくとも6カ月間、より好ましくは12カ月間、より好ましくは12〜18カ月間、より好ましくは2年またはそれを超える期間である。
【0026】
抗体またはそのフラグメントのようなタンパク質は、色および/または透明度の目視検査で、あるいはUV光散乱またはサイズ排除クロマトグラフィーにより測定したとき、凝集、沈殿、脱アミド化および/または変性の徴候を示さなければ、製剤中で「その物理的安定性を保持している」。
【0027】
所与の時点での化学的安定性が、タンパク質がその生物学的活性を依然として保持しているとみなされるものであるならば、タンパク質は製剤中で「その化学的安定性を保持している」。化学的安定性は、化学的に変化した形のタンパク質を検出し、定量することによって評価することができる。化学的変化は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、SDS−PAGEおよび/またはマトリックス援用レーザー脱離イオン化/時間飛行質量分析(MALDI/TOF MS)を用いて評価することができるサイズ修飾(例えば、クリッピング)を伴う。他の種類の化学的変化は、例えば、イオン交換クロマトグラフィーにより評価することができる電荷変化(例えば、脱アミド化として起こる)などである。所与の時点の抗体の生物学的活性が、例えば、抗原結合検定で測定したとき、製剤が調製された時点に示された生物学的活性の約10%以内(検定の誤差範囲内)である場合、抗体は製剤中で「その生物学的活性を保持している」。
【0028】
「等張」は、問題の製剤がヒト血液と本質的に同じ浸透圧を有することを意味する。等張製剤は、一般的に約250〜350mOsmの浸透圧を有する。等張性は、例えば、蒸気圧または氷凍結型浸透圧計を用いて測定することができる。
【0029】
本明細書で用いているように、「緩衝液」は、その酸塩基共役成分の作用によりpHの変化に抵抗する緩衝溶液を指す。本発明の緩衝液は、約3.0〜約7.5の範囲のpH、好ましくは約pH4.0〜約7.0、より好ましくは約pH5.0〜約6.5、最も好ましくは約6.0±0.5のpHを有する。上の範囲の間のいずれかの点のpHも考えられる。
【0030】
薬理学的意味では、本発明の状況においては、抗体の「治療上有効な量」は、抗体が有効である治療における障害の予防または治療に有効な量を指す。「障害」は、抗体またはタンパク質による治療から利益を得るようなあらゆる症状である。これは、哺乳類を問題の障害にかかりやすくする病的症状を含む慢性および急性障害または疾患を含む。
【0031】
「治療」は、治療処置と予防的処置を指す。治療を必要とする者は、障害を既に有する者ならびに障害を予防しなければならない者を含む。
【0032】
「保存薬」は、製剤中の細菌の作用を本質的に減弱させ、それにより、例えば、反復使用製剤の生産を促進するために製剤に含めることができる化合物である。可能な保存薬の例は、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム(アルキル基が長鎖化合物である塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウムの混合物)および塩化ベンゼトニウムなどである。他の種類の保存薬は、フェノール、ブチルおよびベンジルアルコールのような芳香族アルコール、メチルまたはプロピルパラベンのようなアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノールおよびm−クレゾールなどである。
【0033】
「患者」または「対象」は、あらゆる哺乳類を含むことを意味する。治療の目的のための「哺乳類」は、ヒト、家畜および養殖動物、ならびにイヌ、ウマ、ネコ、ウシなどの動物園、スポーツまたは愛玩動物を含むが、これらに限定されない哺乳類と分類される動物を指す。好ましくは、哺乳類はヒトである。
【0034】
「Antegren(登録商標)」は、AN100226(抗体コード番号)またはナタリズマブ(USAN名)としても知られている抗体を含むことを意味する。ナタリズマブは、組換えヒト化抗α−4インテグリン抗体である。好ましくは哺乳類における治療される疾患または症状は、治療上有効な量のナタリズマブを投与したときに変化するものである。
【0035】
「安定な」は、凝集および/または脱アミド化を含む不安定性の徴候をほとんどまたは全く示さない製剤を意味する。さらに、「安定な」は、示されたように保存したとき、2年またはそれを超える期間にわたり不安定性の徴候を示さない製剤も指す。
【0036】
2.一般的説明
下の議論および続く実施例において、安定な抗体製剤に関する処方を開示する。開示した特定の安定な製剤は、高濃度の抗体を有するが、一定の容量を維持し、これらの製剤中の抗体は安定であり、抗体は溶液から沈殿または凝集しない。抗体以外のタンパク質も高濃度製剤用に考えられる。
【0037】
抗体は一般的に対象(例えば、ヒト)に約0.01mg/mL〜約200mg/mLの濃度で投与される。より一般的には、抗体の濃度範囲は、約0.1mg/mL〜約150mg/mLである。しかしながら、より高い濃度、例えば、約15mg/mL〜約200mg/mL、より好ましくは約15mg/mL〜150mg/mL、より好ましくは約20mg/mL〜約50mg/mL、最も好ましくは約20mg/mLおよび中間の整数値を患者に投与することを必要とする場合がある。
【0038】
抗体製剤は、既知の方法に従ってタンパク質による治療を必要とする哺乳類に投与することができる。これらの方法は、ボーラスとしての、もしくはある時間にわたる持続注入による静脈内投与、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液嚢内、鞘内、経口、局所または吸入経路を含むが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、抗体製剤は、静脈内投与により哺乳類に投与する。
【0039】
タンパク質の適切な用量は、例えば、治療する症状、症状の重症度および経過、タンパク質を予防目的または治療目的のために投与するのかどうか、これまでに施された療法、患者の臨床歴およびタンパク質に対する反応、用いるタンパク質の種類ならびに担当医の裁量に依存する。タンパク質は、1回または一連の治療中に患者に適切に投与され、診断以後のいずれの時点においても患者に投与することができる。タンパク質は、単独療法として、あるいは問題の症状の治療に有用な他の薬剤または療法と併用して投与することができる。本明細書で用いているように、2つの薬剤を同時に投与するとき、または薬剤が同時に作用するような方法で独立に投与するとき、2つ(またはそれを超える)薬剤は併用投与すると言われる。
【0040】
本発明の方法を実施するに際して、本発明の化合物は、単独で使用もしくは併用、または他の治療薬と併用することができる。特定の好ましい実施形態において、本発明の化合物は、一般的に受け入れられている医療に従ってこれらの症状に対して一般的に処方される他の化合物と併用投与することができる。例えば、本発明の製剤は、慢性関節リウマチ、多発性硬化症およびクローン病の治療のための他の治療薬または理学療法と組み合わせて投与することができる。
【0041】
2.1 抗体製剤を調製する方法
方法は、当業者に知られているように変更することができるが、一般的に以下のような手順に従うものであろう。問題の抗体またはタンパク質を生産する細胞を含む作業細胞バンクからアンプルを入手する。接種物を調製する。必要に応じて追加の栄養補給を行い、細胞を培養または発酵させる。遠心分離および/または濾過により細胞を収集/清澄化する。これは、例えば、回転濾過により細胞を10倍濃縮することにより行うことができる。0.2μm中間濾過による濾過の後に、プロテインA Sepharose Fast Flow(登録商標)(すなわち、アフィニティークロマトグラフィー)および逆溶出による精製を行う。次いで、抗体を含む組成物をpH3.6〜3.7で処理する。次いで、混合物をウイルス濾過した後、濃縮/透析濾過工程に供する。次いで、組成物をDEAE Sepharose Fast Flow(登録商標)(陰イオン交換)により精製することができる。この工程は、複数回実施することができる。この時点から、組成物をさらに濃縮した後、Sephacryl S300HR(登録商標)(すなわち、ゲル濾過クロマトグラフィー)システムを用いた精製工程に供する。ここで、用いた操作緩衝液はリン酸塩/NaClである。所望により、高濃度製剤(例えば、20mg/mL以上)を得るために抗体含有組成物をさらに濃縮することができる。抗体含有組成物にさらに緩衝剤を加え、0.02%(w/v)ポリソルベート80を加えて濃度を調整する。次いで、この組成物を0.2μmフィルターを用いた最終濾過にかけ、この時点に100mL〜10Lポリプロピレンびんに分注することができる。そのようにして得られた抗体または免疫グロブリンは、QC試験に供し、QAリリースすることができる。
【0042】
上のことを例えば、ナタリズマブについて、以下の流れ図に示すように行うことができる。
【0043】
【表1】

【0044】
2.2 抗体製剤
本発明の一態様において、10mMリン酸ナトリウム、140mM NaCl(pH6.0±0.5)および0.02%ポリソルベート80中約1.7、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、30.0、40.0または50.0mg/mLの濃度の免疫グロブリンを調製する。必要な場合、リン酸を用いてpHを6.0±0.5に調整する。
【0045】
種々の製剤のうちの一例を以下に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
上の製剤のいずれかを最適には滅菌バイアルに入れる。これらのバイアルは、例えば、アルミニウムシールを備えたHelvoet Pharma V9145/FM157/1灰色ブチルゴム栓付きタイプI EP中性ガラスバイアル(例えば、5.0または20mL容バイアル)であってよい。しかし、他の適切な滅菌バイアルも考えられる。例えば、製剤は以下のようにびん詰めすることができる。
【0048】
【表3】

【0049】
より具体的には、例えば、上記の手順により得られるナタリズマブは、次のようにびん詰めすることができる。ナタリズマブ200Lおよび2000L製剤は、バイアル洗浄、滅菌および発熱物質除去トンネルを装備した完全に自動化された充填ラインで充填することができる。栓、シールおよび充填装置は、使用前に洗浄し、滅菌する。この工程は、2000L発酵により生産される量と一致した大規模充填操作を可能にする。
【0050】
必要な場合、製剤処方緩衝液である約10mMリン酸塩、約140mM NaCl、pHを6.0±0.5、約0.02%ポリソルベート80緩衝液をクラス10000スイートで配合し、バルク製剤を最終濃度に希釈するのに用いることができる。濃度、pHおよび密度の工程内規格は濾過の前に達成されることが好ましい。
【0051】
製剤化されたナタリズマブまたは他の免疫グロブリンは、0.2μm Millipakフィルターを通して滅菌コア内部のステンレススチールサージタンク中に無菌濾過することができる。ナタリズマブの充填、施栓およびキャッピングは、完全に自動化されている。バルク無菌性の検査用工程内サンプルを採取し、充填操作中に充填重量およびヘッドスペース検査を行う。充填済み製剤を約2〜8℃の冷凍条件下で保存する。
【0052】
充填は、完全にバリデートされたクラス100無菌コア内で行われる。充填ラインは、5.0mLおよび20mL充填容量の予想される許容誤差範囲内の充填容量が得られることがバリデートされている。充填操作中、包括的環境モニタリングを実施し、この基準への継続的な適合を確認するために評価する。無菌的充填操作を裏付けるために、培地充填を四半期ごとに行う。
【0053】
あるいは、生成した200L薬剤物質を以下の実施例に従ってびん詰めすることができる。バイアル、充填針、濾過アセンブリおよびチューブは、使用前に準備し、滅菌する。栓は、供給者が準備することができる。次いで、栓は充填前に滅菌する。
【0054】
ナタリズマブ製剤または他のタンパク質は、成分のバッチ調製、自動化充填、即時施栓および後続のキャッピング操作を含む、半自動充填ラインで充填される。この操作は、小バッチ規模操作に適している。
【0055】
次いで、最終バルク溶液をクラス100環境内で0.2μm Millipakフィルターを通して滅菌ガラス受器中に無菌濾過する。定期的な較正および工程内検査により、充填許容誤差が±2%内に留まることが確保される。バイアルに直ちに施栓し、キャップを施す。充填済み製剤は、好ましくは2〜8℃で冷凍保存する。
【0056】
ガラス受器は、任意の数のバイアルであってよいが、例えば、Epsom GlassもしくはAMILCOにより供給される例えば5.0または20mL中性ガラスバイアルタイプI(EP)または例えば、KimbleもしくはWheatonにより供給される5.0mLまたは20mL USPタイプIホウケイ酸ガラスバイアルであってよい。これらのバイアルは、適切な閉鎖の手段を用いることができる。バイアル閉鎖具は、13mm Helvoet Pharma V9145/FM157/1灰色ブチルゴム栓または13mmおよび20mm Helvoet Pharma V9145/FM157/1灰色ブチルゴム栓または13mmおよび20mm West4432/50灰色ブチルゴム栓を含むが、これらに限定されない。次いで、ゴム栓をしたびんを、最も一般的には、Westにより製造されたようなアルミニウムシールを用いてシールする。
【0057】
本発明は以下の実施例に関連して詳細に記述したが、様々な修正は、本発明の精神から逸脱することなく行うことができ、当業者に容易に知られることが理解される。
【0058】
[実施例]
(実施例1)
ポリソルベート80の選択
ナタリズマブを投与する一般的な方法は、静脈内である。静脈内投与は、最終製剤が等張性であることを必要とする。50mM L−ヒスチジン、150mM NaCl、pH6.0中AN100226(ナタリズマブ)5mg/mLの製剤を最初に選択した(製剤番号1)。第II相試験中に、抗体のタンパク質の沈殿が、ナタリズマブの希釈および臨床投与装置内への導入中に認められた。認められたタンパク質の沈殿を解消するために、ポリソルベート80を製剤(製剤番号2)に導入した。好ましくは、本発明用のポリソルベートは、過酸化物が低いもの、すなわち、Sigma製のポリソルベート、製品番号P6479、ロット番号071K7283である。
【0059】
AN100226抗体の沈殿を加速することが示された2つの因子は、微量のシリコーン油の存在と空気−液体界面における変性である。シリコーン油は、シリコーン処理ゴム栓を装着した標準潤滑ポリプロピレン注射器の使用時に製品中に導入された。シリコーン油の導入は、緩やかな撹拌および室温保存時に製剤番号1中の識別できる抗体の沈殿を引き起こすのに十分である。空気−液体界面における変性によって引き起こされる凝集、脱アミド化およびその後の沈殿は、薬剤がより多くの臨床施設に輸送されることに伴ってより識別できる問題になった。タンパク質の沈殿の両原因は、0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート80の添加によって解消された。
【0060】
製剤番号2は、製品輸送中および臨床での取り扱い中の安定性の増加をもたらすと同時に、すべてのタンパク質特性確認検定においてヒスチジン/NaCl製剤(製剤番号1)と同等の安定性を示している。
【0061】
製剤へのポリソルベート80の添加は、より高いタンパク質含量を有する製剤を調製する場合の抗体の沈殿または凝集の問題も克服する。最初の試験は、50mg/mLを含む高たんぱく質濃度での撹拌誘発性凝集に重点を置いた。ボルテックス型混合器を用いて物質を撹拌に供することによって、凝集種がサイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SEC−HPLC)により検出された。このモデルによって、ポリソルベート80が凝集の有効な阻害物質であることが確認されたが、スクロースおよび他の緩衝成分はほとんど有用な効果を示さなかった。
【0062】
5mg/mLのタンパク質濃度での撹拌誘発性沈殿の予防における0.02%(w/v)ポリソルベート80の添加の有効性を、ナタリズマブ(ロット番号AN100226−0003)のバイアルへの10μLの10%ポリソルベート80溶液の添加後に評価した。バイアルを製剤番号1中ナタリズマブの数個のバイアルとともに横にして水平面内で1分間に150回振とうした。室温でのこの処理の3時間以内に、製剤番号1のバイアルは粒子が蓄積し、混濁して見えたが、0.02%(w/v)ポリソルベート80を含むバイアルは透明のままであり、粒子は存在しなかった。
【0063】
ポリソルベート80の非存在下でAN100226を完全に満たしたバイアルを長時間振とうした場合にはさらなる粒子の生成は誘発されなかったことから、認められた凝集は空気−液体界面により引き起こされたと推定される。
【0064】
0.02%(w/v)ポリソルベート80が微量のシリコーンによって促進されるタンパク質の沈殿を抑制する能力の評価を行った。ナタリズマブ(ロット番号AN100226−0003)のバイアルを0.02%(w/v)ポリソルベート80に調整し、市販の潤滑60mLポリプロピレン注射器中に吸引した。物質を室温で数時間放置した。バイアルの視察により、沈殿が発生しなかったことが確認された。次いで、物質を0.2μmフィルターを通して5mLバイアル中に濾過し、視察したところ、数日後に粒子が実質的に存在しないことが認められたが、ポリソルベート80の非存在下で同様に処理したバイアル(製剤番号1)は粒子が蓄積していた。
【0065】
(実施例2)
リン酸緩衝液の選択
ヒスチジンプラセボ(0.02%w/vポリソルベート80を含む)の放出試験中、新しい微量不純物が検出された。これらの不純物は、明らかに金属イオンとヒスチジンが関与した酸化反応によるポリソルベート80の分解から生じた。活性ナタリズマブ製剤については、これらの微量不純物は高温(例えば、25℃および40℃)で保存した後にのみ検出された。したがって、プラセボを改良し、緩衝液中のヒスチジンの代わりにリン酸塩を用いる決定をくだした。製品プラセボに用いたヒスチジンのロットは、活性ナタリズマブ製剤ロットAN100226−004およびAN100226−005に用いたものと異なっていた。ポリソルベート80の分解に対するヒスチジン供給源の影響を以下でより詳細に述べる。
【0066】
プラセボの試験中に、微量不純物がヒスチジン/NaCl/0.02%(w/v)ポリソルベート80プラセボ(製剤番号2)中に検出された。これらの不純物は、低波長紫外領域におけるそれらの吸光度により検出された。5℃、25℃および40℃で1カ月間保存したプラセボの200〜400nmの吸光度プロファイルを測定した。これらのデータから、不純物は温度の関数として増加することがわかる。
【0067】
抗体凝集をモニターするために用いたサイズ排除HPLC法を、微量不純物の検出の感度を増加させるためにカラム負荷を5倍の100μLに増加させて改良し、サンプルを10倍希釈でなく、未希釈で導入した。さらに、不純物の吸光度極大を反映させるために、吸光度を260nmでモニターする。抗体は溶出プロファイルにおいてはるかに早期に出現するので、この方法はプラセボおよび製品中のこれらの微量不純物の存在を評価するためのツールである。
【0068】
製剤番号1および2として調剤したプラセボおよびナタリズマブ最終製剤は、上記のSEC−HPLC法により分析した。0.02%(w/v)となるようにポリソルベート80をスパイクした製剤番号1のプラセボの分析をクロマトグラフィーの直前に行った。これは、微量不純物の非存在下では、ポリソルベート80、ヒスチジンおよび塩のUV吸光度を示す。16分における広いピークはポリソルベート80に関連し、約26〜27分におけるピークはヒスチジンおよび塩に帰属される。5℃で2カ月間保存したヒスチジン/NaCl/0.02%(w/v)ポリソルベート80プラセボ(製剤番号2)は、これらの不純物の生成におけるポリソルベート80の関連性を示唆する後期溶出ピークの著しい増加を示す。さらに、16分における溶出が消失し、ポリソルベート80が分解したことが示唆される。
【0069】
製剤番号1中でバルク薬剤物質として5℃で約5カ月間保存したAN100226をクロマトグラフィーの直前に0.02%(w/v)となるようにポリソルベート80をスパイクした後に分析した。抗体は、これらの過負荷条件を用いた場合、16〜18分に溶出した。プロファイルの残りは、ポリソルベート80をスパイクしたプラセボと類似している。ナタリズマブロット番号AN100226−004の2カ月安定性サンプルもこの方法により分析した。5℃ナタリズマブサンプルの溶出プロファイルは、別のピークの非存在および約26〜27分におけるヒスチジン/塩ピークの同等なレベルを示している。微量の不純物が25℃サンプルに2カ月目に検出され、高いレベルが2カ月40℃サンプルに存在している。したがって、これらの不純物は、5℃で保存される臨床供給品には検出されなかった。これらの微量不純物の出現は、ナタリズマブ中よりもプラセボ中にはるかに速やかに起こる。
【0070】
プラセボ中のこれらの不純物の生成を避けるために、プラセボ製剤中のヒスチジンの代わりに無機緩衝成分を用いた。臨床試験用のプラセボ製剤は、pH6.0の0.02%(w/v)ポリソルベート80を含む滅菌等張リン酸緩衝液である。ヒスチジンの代わりにリン酸を用いることにより、ポリソルベート80の分解の速度が有意に低下したことが示された。100μLのリン酸塩/NaCl/0.02%(w/v)ポリソルベート80プラセボ製剤を60℃で0時間および3日後に260nmでモニターするサイズ排除HPLCにより分析した。このインキュベーションの結果としてSEC−HPLCプロファイルにほとんど変化は認められない。60℃でわずか2日後のヒスチジン/NaCl/0.02%(w/v)ポリソルベート80製剤のSEC−HPLCプロファイルは、ポリソルベート80の分解に関連する有意なレベルの微量不純物を示している。これらのデータは、プラセボ製剤中のヒスチジンの代わりにリン酸塩を用いることによりポリソルベート80の分解が有意に妨げられることを示している。
【0071】
(実施例3)
ポリソルベート80とヒスチジンとを併せて含むナタリズマブ製剤
これらの微量不純物が生成されるメカニズムは、ポリソルベートの金属触媒酸化によると考えられている(Donbrowら、1978 J.Pharmaceutical Sciences、67(12):28頁)。Donbrowは種々のタイプのポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)において、保存中に自己酸化が起こることを述べている。光、温度および金属イオンも自己酸化に影響を及ぼす。Donbrowら(1978)。この反応が有意な速度で進行するにはヒスチジンとポリソルベート80の両方が必要であることが確認された。味の素社は、製剤に用いられる1つのヒスチジン供給源である。しかしながら味の素社から供給されたロットの間に反応速度の有意な差が認められた。
【0072】
反応の加速に役割を果たすさらなる因子は、金属の存在である。これは、50mMヒスチジン(ロット番号R016A008)および2%(w/v)ポリソルベート80を含むガラス容器中で60℃で5日間反応を行うことによって立証された。これらの条件下では、このヒスチジンロットにおいて最小限のレベルの微量不純物が生成した。次に、反応を次の3つの容器に分割した。(1)対照として最初の容器のままとした、(2)灰色ブチル容器閉鎖栓(栓)を第2の容器に加えた、(3)ステンレススチール針を第3の容器に加えた。これらの反応を60℃で4日間行い、200〜400nmのUVスキャンにより分析した。反応は、針の存在下ではこの時間を超えてさらに進行した。
【0073】
(実施例4)
不純物の評価−マウス単回投与限度試験
これらの不純物の潜在的毒性をマウス単回投与限度試験において評価した。40℃で6週間保存した製剤番号2のヒスチジンプラセボおよびナタリズマブサンプルを用いた。その理由は、これらのサンプルは最大量の不純物をもたらすからである。不純物に起因した毒性の徴候はなかった。予備的データは、申請書の非臨床セクションに記載されている。
【0074】
マウス単回投与限度試験に用いたサンプルの100μL注入のSEC−HPLCプロファイルを測定した。分析前にポリソルベート80をスパイクした製剤番号1のナタリズマブサンプルは、20分後に溶出する260nm吸収物質をほとんど有さない。34分に溶出するピークがポリソルベート80を添加しないこのロットのナタリズマブに認められ、したがって、ポリソルベート80の分解を示さない。これに対して、40℃で6週間保存した製剤番号2のプラセボは、曲線下総面積が12.8百万μV・秒であったので、完全な分解を示した。製剤番号2の40℃で6週間保存したナタリズマブサンプルは、完全に満たない分解を示した。分析により、40℃で保存し、マウス単回投与限度試験において試験したサンプルには分解したポリソルベート80が含まれていることが確認される。
【0075】
(実施例5)
不純物規格の設定
部分的に分解したポリソルベート80が依然として抗体凝集を防止することができるかどうかを評価するために、すべてのポリソルベート80を最大レベルの不純物に変換するために、製剤番号2を針の存在下で60℃で3日間加熱した。反応はすべてのポリソルベート80を分解させたことがSECおよび逆相HPLCによって確認した。この物質を製剤番号2中AN100226の10mg/mL溶液で1対1に希釈し、0.01%(w/v)ポリソルベート80および50%の最大レベルの分解ポリソルベート80を含む溶液を得た。これらの抗体溶液を振とうおよびシリコーン処理注射器に数時間曝露させたところ、抗体の凝集が防止された。同じ条件に曝露させたが、ポリソルベート80を含まない対照サンプルは、有意な沈殿を示した。
【0076】
この試験から、50%以下のポリソルベート80が分解される限り、この物質は抗体凝集を妨げる適切な環境を提供すると結論される。
【0077】
活性製剤中では非常にわずかなポリソルベート分解が起こっているが、この製剤が抗体の機能を損なわないことを確認するために、等電点電気泳動(IEF)パターンのモニタリングを行う。5℃、25℃および40℃保存条件における6週間の安定性評価時点のIEFプロファイルを測定した。5℃および25℃サンプルは、対照標準と同等であり、タンパク質の全体的充填の変化の証拠はない。40℃サンプルは、ポリソルベート80の存在下または非存在下で液剤中のこの製品に特有なより酸性の種への変化を示した。
【0078】
ポリソルベート80の分解の程度とSEC−HPLCによるピーク面積との関係を確立するために、0〜50%の分解ポリソルベート80の6濃度の希釈系列を評価した。製剤番号2を針とともに60℃で3日間加熱し、100%分解されることがSECおよび逆相HPLCによって確認した。次いで、反応混合物を、0.02%(w/v)ポリソルベート80を新たにスパイクした製剤番号1のAN100226精製バルクで希釈し、SEC−HPLCにより分析した。SECプロファイルは、260nmでモニターした。
【0079】
この希釈系列からのデータを、分解ポリソルベート80の比の関数としての約24分後の吸光度プロファイルの積分した総ピーク面積(μV・秒)によってプロットした。このプロットは、5百万μV・秒未満の面積は分解生成物へのポリソルベート80の約50%消失を表すことを示している。クロマトグラムにおける後期に溶出するピークについて、添加した酸化ポリソルベート80の量とピーク面積との間の直接的関係が存在する。
【0080】
ナタリズマブ中のこれらの微量不純物の予備的限度は、マウス単回投与限度試験、50%分解ポリソルベート80を含む抗体溶解度データおよびポリソルベート80分解の程度の推定に基づいて確立された。方法は進行中の安定性プログラムに含められ、限度が確立された。ヒスチジン緩衝液を含む別のロットを製造する場合、これらの限度は、リリースの時点にも適用されるであろう。
【0081】
限度:約24分後のピーク下総面積は、4×106μV・秒を超えてはならない。
【0082】
(実施例6)
1.7mg/mLナタリズマブ製剤
1.7mgナタリズマブ
1.4mgリン酸ナトリウム、USP
8.2mg塩化ナトリウム、USP
0.2mgポリソルベート80、NF
pHをリン酸、NFで6.0±0.5に調整する。1mL定容にする。好ましい保存5〜8℃。
【0083】
(実施例7)
5.0mg/mLナタリズマブ製剤
5.0mgナタリズマブ
1.4mgリン酸ナトリウム、USP
8.2mg塩化ナトリウム、USP
0.2mgポリソルベート80、NF
pHをリン酸、NFで6.0±0.5に調整する。1mL定容にする。好ましい保存5〜8℃。
【0084】
(実施例8)
20mg/mLナタリズマブ製剤
20.0mgナタリズマブ
1.4mgリン酸ナトリウム、USP
8.2mg塩化ナトリウム、USP
0.2mgポリソルベート80、NF
pHをリン酸、NFで6.0±0.5に調整する。1mL定容にする。好ましい保存5〜8℃。
【0085】
(実施例9)
50.0mg/mLナタリズマブ製剤
50.0mgナタリズマブ
1.4mgリン酸ナトリウム、USP
8.2mg塩化ナトリウム、USP
0.2mgポリソルベート80、NF
pHをリン酸、NFで6.0±0.5に調整する。1mL定容にする。好ましい保存5〜8℃。
【0086】
(実施例10)
5.0mg/mLナタリズマブ製剤
5.0mg/mLナタリズマブ
140mM NaCl
0.02%ポリソルベート80(w/v)
10mMリン酸ナトリウム
pHをリン酸で6.0±0.5に調整する。最適には、製剤を約5℃〜約8℃で保存する。
【0087】
(実施例11)
10mg/mLナタリズマブ製剤
10.0mgナタリズマブ
1.4mgリン酸ナトリウム、USP
8.2mg塩化ナトリウム、USP
0.2mgポリソルベート80、NF
pHをリン酸、NFで6.0±0.5に調整する。1mL定容にする。好ましい保存5〜8℃。
【0088】
(実施例12)
10mg/mLナタリズマブ製剤
10.0mgナタリズマブ
1.4mgリン酸ナトリウム、USP
8.2mg塩化ナトリウム、USP
0.1mgポリソルベート80、NF
pHをリン酸、NFで6.0±0.5に調整する。1mL定容にする。好ましい保存5〜8℃。
【0089】
(実施例13)
20mg/mLナタリズマブ製剤
20.0mg/mLナタリズマブ
140mM NaCl
0.02%ポリソルベート80(w/v)
10mMリン酸ナトリウム
pHをリン酸で6.0±0.5に調整し、容量を125mLにする。最適には、製剤を約5℃〜約8℃で保存する。
【0090】
(実施例15)
凍結乾燥ナタリズマブ製剤
20〜200mg/mLの高濃度の抗体のさらなる液体製剤は、3.0〜7.0のpH範囲で緩衝作用を有するように2〜50mMlの濃度範囲のリン酸塩または他の適切な緩衝剤(ヒスチジン、クエン酸塩、酢酸塩またはコハク酸塩など)から構成されていてよい。最も好ましくは、pHは6.0+/−0.5である。安定性を維持し、等張溶液とするために、塩化ナトリウムとともに様々な量のポリオール(ソルビトールおよびマンニトールなど)、二糖(スクロースまたはトレハロースなど)およびアミノ酸(グリシンなど)を添加することができる。ポリソルベートのような、またこれに限定されない界面活性剤の使用は、0.001〜2%の範囲で用いるとき安定性を加える。液体製剤を調製するために、ナタリズマブを約0.06%ポリソルベート80を含む10mMリン酸ナトリウム、140mM塩化ナトリウム、pH6中65mg/mLに濃縮した。得られる溶液は、わずかに乳光性であったが、粒子状物質を含んでいなかった。サンプルは、SECにより、99%を超える単量体を含み、高分子量凝集物または低分子量種は含まれていなかった。
【0091】
安定な凍結乾燥製剤が得られる。リン酸緩衝液は凍結時にpH変化を受けるので、リン酸塩の代わりに他の緩衝剤を用いる必要がある。この緩衝液は、3.0〜7.0のpH範囲で、最も好ましくは6.0+/−0.5の範囲で効果的に緩衝することができるヒスチジン、クエン酸塩またはコハク酸塩から構成されていてよい。
【0092】
ポリオール(マンニトールなど)および糖(スクロースなど)の使用は、凍結および分散防護を与えるのに必要である。これらのポリオールは、安定性を与え、張性を調節するために単独または組み合わせて用いることができる。さらに、10〜1000mMの濃度のアミノ酸(グリシンなど)は凝集を防止するために用いることができる。
【0093】
ポリソルベートまたはポロキサマーのような界面活性剤は、凍結乾燥前および再構成の後の安定性を与え、より早い再構成時間を得るために0.001%〜2.0%の濃度で用いることができる。
【0094】
タンパク質は、最終精製工程の後に、濃縮のための限外濾過および緩衝剤交換のための透析濾過を用いて製剤化することができる。タンパク質はまた、緩衝剤交換のためのカラムクロマトグラフィーを用いて製剤化することができる。これらの技術のある種の組合せも用いることができる。
【0095】
さらに、最終の所望タンパク質濃度は、所望の値より低いタンパク質および添加剤濃度で充填し、より小さい容量で再構成して得ることができる。例えば、40mg/mL溶液の2.5mL充填容量を用いた後、1mLを用いて再構成して100mg/mL溶液を得る。
【0096】
例えば、5mMヒスチジン、20mg/mLスクロースおよび0.02%ポリソルベート80、pH6を含む溶液中の20mg/mLの濃度のナタリズマブを凍結乾燥した。溶液を10mLホウケイ酸ガラスバイアルにバイアル当たり5mLで充填し、灰色ブチルゴム凍結乾燥栓を取り付けた。凍結乾燥は、Virtis Gensisモデル凍結乾燥装置を用いて行った。製品を−60℃のたな温度で10時間凍結し、次いで、たな温度を−40℃に上昇させた。一次乾燥は、−10℃のたな温度、100mトールのチャンバー圧力で20時間行った。二次乾燥は、25℃のたな温度、100mトールのチャンバー圧力で10時間行った。バイアルに真空下で栓をした。
【0097】
次いで、バイアルを1mLの滅菌WFIを用いて再構成して、100mL/mLのナタリズマブを含む製剤を得た。凍結乾燥の直後および凍結乾燥した形態で40℃で2週間保存した後にサンプルを分析した。両方の場合に、再構成時間は即時であった。再構成した溶液は透明かつ無色であり、粒子状物質は存在しなかった。サンプルは、SECにより、99%を超える単量体を含み、高分子量凝集体も低分子量種も存在しなかった。40℃で2週間保存した後に、サンプルは対照標準と比較して94%の効力を示した(規格80〜125%)。
【0098】
本出願において言及したすべての引用特許および刊行物は、すべての目的のためにそれらの全内容が参照として本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫グロブリンと、
リン酸緩衝液と、
ポリソルベートと、
塩化ナトリウムとを含むことを特徴とする安定な水性の製剤。
【請求項2】
前記ポリソルベートがポリソルベート80であることを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記ポリソルベート80が約0.001%〜約2.0%(w/v)の量で存在することを特徴とする請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
前記ポリソルベート80が約0.02%(w/v)の量で存在することを特徴とする請求項3に記載の製剤。
【請求項5】
前記免疫グロブリンが約0.1mg/mL〜約200mg/mLの量で存在することを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項6】
前記免疫グロブリンが約1.7mg/mLの量で存在することを特徴とする請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
前記免疫グロブリンが約5mg/mLの量で存在することを特徴とする請求項5に記載の製剤。
【請求項8】
前記免疫グロブリンが約20mg/mLの量で存在することを特徴とする請求項5に記載の製剤。
【請求項9】
約3.0〜約7.0のpHを有することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項10】
pHが約5.5〜約6.5であることを特徴とする請求項9に記載の製剤。
【請求項11】
pHが約6.0±0.5であることを特徴とする請求項10に記載の製剤。
【請求項12】
前記製剤が一定の容量であり、前記免疫グロブリンが約50mg/mLの量で存在することを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項13】
前記免疫グロブリンがα−4インテグリンに結合していることを特徴とする請求項12に記載の製剤。
【請求項14】
前記免疫グロブリンがナタリズマブであることを特徴とする請求項13に記載の製剤。
【請求項15】
前記リン酸緩衝液のpHが6.0±0.5であり、前記ポリソルベートが約0.02%(w/v)の量で存在するポリソルベート80であり、前記免疫グロブリンがナタリズマブであり、約2℃〜約8℃の温度で少なくとも6カ月間安定であることを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項16】
前記ナタリズマブが約20mg/mL〜約150mg/mLの量で存在することを特徴とする請求項15に記載の製剤。
【請求項17】
等張であることを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項18】
前記免疫グロブリンがモノクローナル抗体であることを特徴とする請求項1から14または17のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項19】
前記モノクローナル抗体がナタリズマブであることを特徴とする請求項18に記載の製剤。
【請求項20】
前記抗体が約0.1mg/mL〜約200mg/mLの量で存在することを特徴とする請求項18または19に記載の製剤。
【請求項21】
前記抗体が約1mg/mL〜約150mg/mLの量で存在することを特徴とする請求項19に記載の製剤。
【請求項22】
前記抗体が約1.7mg/mL〜約50mg/mLの量で存在することを特徴とする請求項21に記載の製剤。
【請求項23】
前記抗体が約15mg/mL〜約50mg/mLの量で存在することを特徴とする請求項18に記載の製剤。
【請求項24】
前記抗体が約20mg/mLの量で存在することを特徴とする請求項18に記載の製剤。
【請求項25】
さらにヒスチジンを含むことを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項26】
前記ポリソルベートがポリソルベート80であることを特徴とする請求項25に記載の製剤。
【請求項27】
ある症状のために体重が変わりやすい患者を治療量の免疫グロブリンを用いて治療する方法であって、
前記患者に前記症状が投与により治療される請求項1に記載の製剤を投与する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項28】
前記免疫グロブリンがナタリズマブであることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
リン酸ナトリウムと、
ポリソルベートと、
タンパク質と、
NaClとを含み、
6.0±0.5のpHを有し、
約5℃〜8℃で6カ月を超える期間保存した場合に安定であることを特徴とする組成物。
【請求項30】
前記ポリソルベートがポリソルベート80であり、約0.001%〜約2.0%(w/v)の量で存在することを特徴とする請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記タンパク質が約0.01mg/mL〜約200mg/mLの量で存在する免疫グロブリンであることを特徴とする請求項29に記載の組成物。
【請求項32】
前記ポリソルベートがポリソルベート80であり、約0.02%(w/v)の量で存在し、前記NaClが150mMの量で存在し、前記リン酸緩衝液が10mMの量で存在し、前記免疫グロブリンがナタリズマブで、1.7mg/mL、5mg/mL、20mg/mLまたは50mg/mLの量で存在することを特徴とする請求項29の組成物。
【請求項33】
リン酸ナトリウムと、塩化ナトリウムと、ポリソルベートと、タンパク質とを混合する工程と、
前記混合物のpHをリン酸でpH6.0±0.5に調整する工程と、
を含むことを特徴とする安定なタンパク質含有製剤を調製する方法。
【請求項34】
前記リン酸ナトリウムが約10mMの量で存在し、前記塩化ナトリウムが約150mMの量で存在し、前記ポリソルベートがポリソルベート80であって約0.02%(w/v)の量で存在し、前記タンパク質がナタリズマブであることを特徴とする請求項33に記載の安定なタンパク質含有製剤を調製する方法。
【請求項35】
前記ナタリズマブが約20mg/mL〜約200mg/mLの量で存在することを特徴とする請求項33に記載の安定なタンパク質含有製剤を調製する方法。
【請求項36】
前記ナタリズマブが約150mg/mLの量で存在することを特徴とする請求項35に記載の安定なタンパク質含有製剤を調製する方法。
【請求項37】
請求項1に記載の製剤中の前記タンパク質が凍結乾燥されていることを特徴とする請求項33に記載の安定なタンパク質含有製剤を調製する方法。
【請求項38】
前記ポリソルベートがポリソルベート80であり、約0.02%(w/v)の量で存在し、前記タンパク質がナタリズマブであることを特徴とする請求項37に記載の安定なタンパク質含有製剤を調製する方法。
【請求項39】
さらにヒスチジンを含むことを特徴とする請求項37に記載の安定なタンパク質含有製剤を調製する方法。
【請求項40】
前記タンパク質が、5mMヒスチジンと、20mg/mLスクロースと、0.02%ポリソルベート80とを含むpH6の溶液中で凍結乾燥されており、かつ前記タンパク質が20mg/mLの濃度のナタリズマブであることを特徴とする請求項33に記載の安定なタンパク質含有製剤を調製する方法。
【請求項41】
請求項1から29のいずれか一項に記載の安定な製剤を保持する容器を含むことを特徴とする物品。
【請求項42】
ある症状のために体重が変わりやすい患者を治療する方法であって、
請求項1から24のいずれか一項に記載の製剤と、前記症状に対して有効な化合物または療法との治療上有効な組合せを前記患者に同時または逐次的に投与する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項1から24のいずれか一項に記載の安定な製剤の使用方法であって、体重が変わりやすい症状の患者の症状を治療するために、前記症状の治療に有効である医薬品を調製することを特徴とする使用方法。
【請求項44】
請求項1から24のいずれか一項に記載の安定な製剤の使用方法であって、体重が変わりやすい症状の患者の症状を治療するために、請求項1から24のいずれか一項に記載の製剤と、化合物または療法との組合せであり、前記症状の治療に有効であるの医薬品を調製することを特徴とする使用方法。

【公表番号】特表2006−517233(P2006−517233A)
【公表日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503453(P2006−503453)
【出願日】平成16年2月9日(2004.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/003873
【国際公開番号】WO2004/071439
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(399013971)エラン ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (75)
【Fターム(参考)】