説明

免疫刺激のためのサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分の使用

本発明は、免疫応答を抗原に対するTh1型応答に向けることを目的とする医薬組成物を調製するための、より具体的には、癌、感染症、およびアレルギーの予防および/または処置のためのサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分および前記抗原の使用に関する。相乗効果を有するアジュバント組成物、相乗効果を有するワクチン組成物、およびパーツキットも提供される。その個体の処置方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にアジュバントに関する。特に、本発明は、免疫応答を特定の抗原に対するTh1型応答に向けることを目的とする医薬組成物を調製するための、アジュバント効果を有するサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分の使用に関する。
【発明の背景】
【0002】
長年、ワクチン接種技術は、本質的に、感染性生物に対する免疫応答を誘発させるために、抗原(例えば、タンパク質、死滅または弱毒化ウイルス)を動物に導入することに基づいていた。80年代末以来、抗原をコードする核酸配列を含んでなるベクターを動物に導入することに基づく新しいワクチン接種技術が出現している。例えば、狂犬病糖タンパク質をコードする生菌ワクシニアウイルスは、西欧諸国において陸生狂犬病撲滅のために使用され、成功している(CLIQUET, et al. Elimination of terrestrial rabies in Western European countries. Developments in biologicals. 2004, vol.119, p.185-204)。核酸免疫化の主な利点は、コードされた抗原が、内因性および外因性経路の両方によりプロセスされ、ペプチドエピトープが、主要組織適合複合体(MHC)クラスIならびにクラスII複合体により提示されるため、細胞性免疫応答(CD4+およびD8+T細胞を含む)および体液性免疫応答の両方を誘導することができるということである(HAUPT, et al. The Potential of DNA Vaccination against Tumor-Associated Antigens for Antitumor Therapy. Experimental Biology and Medicine. 2002, vol.227, p.227-237)。
【0003】
細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を効率的に誘発させることにより、核酸ワクチン接種による癌の予防的処置または治療処置への道が開かれた。多くの腫瘍細胞は、TAA(腫瘍関連抗原の略)と呼ばれる特異的な抗原(群)を発現するが、これら抗原は、腫瘍の周辺では因子により下方制御される免疫系によってはあまり認識されない。TAAをコードする核酸を患者にワクチン接種することにより、免疫系が十分に有効な環境でのTAA発現がもたらされ、腫瘍細胞に対して特異的な免疫応答が誘発される。
【0004】
しかしながら、ワクチン接種は、現在まで最も成功した介入保健政策であり続けているものの、感染症および癌は、世界中で依然として主要な死因のままである。ワクチン接種が有効な免疫を誘発できない主な理由は、所望の免疫応答を開始することが可能な適切なアジュバントが欠如しているからである。更に、ほとんどの従来アジュバントは、新世代ワクチンに望ましい安全性および効能に関する厳格な基準を満たさない、組成が不明確で複雑な物質である。
【0005】
自然免疫を活性化することにより機能する新世代のアジュバントは、より安全でより強力なワクチンを開発する絶好の機会を提供する。トール様受容体(TLR)のファミリーは、高度に保存された病原体発現分子を検出するための自然免疫系に極めて重要な役割を果たすと考えられる。感染の迅速な検出を可能にするために、ヒトで発現されることが現在知られている10種類のTLRの各々は、宿主細胞で発現されないかまたはそれらがTLRに接触できない細胞区画に隔離されているかのいずれかである、あるタイプの病原体発現分子の存在下で刺激されるように進化したと考えられる。適切な病原体分子によるTLRの活性化は、適切な免疫防御を開始するための「警告シグナル」として作用する。これらTLR活性化因子を単独で使用して、病原体または腫瘍細胞に対して誘発された自然免疫応答を高めることにも成功している。例えば、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)は、ワクチンアジュバントとして、ならびに癌、感染症、喘息、およびアレルギーの処置において有望な結果を示すTLR9アゴニストである。それらの1つであるCPG−7909は、単独療法としてならびに化学療法および免疫療法と組合せたアジュバントとして癌の処置用に開発された。この薬物は、幾つかの造血器腫瘍および固形腫瘍において第I相および第I相治験で試験されている(MURAD, et al. CPG-7909 (PF-3512676, ProMune): toll-like receptor-9 agonist in cancer therapy. Expert opinion on biological therapy. 2007, vol.7, no.8, p.1257-66)。
【0006】
免疫応答の性質は、免疫化により刺激される抗原特異的リンパ球のプロファイルを反映する。リンパ球、特にT細胞は、異なるタイプの抗原により刺激され、異なるエフェクター機能を果たすことができる亜集団からなる。例えば、ウイルス感染では、ウイルス抗原は、感染細胞で合成され、MHCクラスI分子を介して提示され、CD8MHCクラスI限定CTLの刺激がもたらされる。対照的に、細胞外微生物抗原は、APCにより取り込まれ、プロセスされ、優先的にMHCクラスII分子を介して提示される。これにより、CD4、MHCクラスII限定ヘルパーT細胞が活性化され、抗体産生およびマクロファージ活性化がもたらされるが、CTLの発生は比較的非能率的である。CD4ヘルパーT細胞の集団内でさえ、抗原刺激に応答して特徴的なサイトカインを産生するサブセットが存在する。ナイーブCD4T細胞は、初めて抗原と遭遇した際に、主としてT細胞増殖因子、インターロイキン2(IL−2)を産生する。抗原刺激は、これら細胞が、サイトカインを産生するTh0と呼ばれる集団に分化すること、その後サイトカイン産生およびエフェクター機能に関する比較的限定されたプロファイルを有するTh1およびTh2と呼ばれるサブセットに分化することを引き起こすこともある。Th1細胞は、マクロファージを活性化するガンマインターフェロン(IFN−γ)、インターロイキン2(IL−2)を分泌し、細胞内微生物に対する細胞性免疫および遅延型過敏症反応の主要エフェクターである。Th1細胞により刺激された抗体アイソタイプは、補体を活性化し、食作用のために抗原をオプソニン化するのに効果的である。従って、Th1細胞は、食細胞媒介性宿主防御を引き起こす。細胞内微生物による感染は、微生物の食細胞性排除を促進するTh1サブセットへのナイーブT細胞の分化を誘導する傾向がある。その一方で、Th2細胞は、IgE抗体産生を刺激するインターロイキン4(IL−4)、好酸球活性化因子であるインターロイキン−5、ならびにインターロイキン4(IL−4)と共に細胞性免疫を抑制するインターロイキン10(IL−10)およびインターロイキン−13(IL−13)を産生する。従って、Th2細胞は、主として、IgEおよび好酸球により媒介される、例えばある種の蠕虫様寄生生物に対する食細胞非依存性宿主防御、ならびにマスト細胞および好塩基球のIgE依存性活性化によるアレルギー反応に関与する(ABBAS A. K. and al., Cellular and molecular Immunology, W. B. Saunders Co.)。
【0007】
Winklerら(WINKLER, S., M. Willheim, K. Baier, et al. 1998. Reciprocal regulation of Th1- and Th2-cytokine-producing T cells during clearance of parasitemia in Plasmodium falciparum malaria, Infect. Immun. 66:6040- 6044.)は、無併発性熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)マラリア患者において、ヒト抗マラリア宿主防御における重要な分子としてのIFN−γの役割を示し、Winklerらは、熱帯熱マラリア原虫寄生体の排除におけるインターロイキン4(IL−4)の直接的関与を支持していない。更に、同じ所与の抗原の場合、抗体反応中に主要なアイソタイプへと向かわせるのは、アジュバントであることが示されている(TOELLNER K. -M. et al. J. Exp. Med. 1998, 187: 1193)。例えば、アルハイドロゲル等のアルミニウム塩は、マウスにおいて本質的にTh2型応答を誘導し、IgG1の形成またはIgEの形成さえ促進することが知られおり(ALLISON A.C. In Vaccine design - The role of cytokine networks Vol. 293, 1-9 Plenum Press 1997)、これは、アレルギー体質を有する対象体で問題を起こす場合がある。
【0008】
この点で、免疫応答を抗原に対するTh1型応答に向けることが可能である利用可能なアジュバントの必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0009】
本出願者は、驚くべきことに、特定のサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のミトコンドリア核酸画分が、TLR活性化因子であり、免疫応答を抗原に対するTh1型応答に向けることが可能であることを見出した。
【0010】
本出願の全体にわたって使用されているように、「Th1型応答」とは、ガンマインターフェロン(IFN−γ)、インターロイキン−2(IL−2)、および/またはインターロイキン12(IL−12)の産生を刺激するものを指す。
【0011】
本出願の全体にわたって使用されているように、「1つ(a)」および「1つ(an)」は、明示されない限り、参照される成分または工程の「少なくとも1つ」、「少なくとも第1」、「1以上」または「複数」を意味するという意味で使用される。
【0012】
本出願の全体にわたって使用されているように、「および/または」は、本明細書のどこで使用されていようとも、「および」、「または」、および「前記用語よりに接続されている要素の全てまたは任意の他の組合せ」の意味を含む。
【0013】
本出願の全体にわたって使用されているように、「含んでなること」および「含んでなる」は、産物、組成物、および方法が、参照されている成分または工程を含むが、他を排除しないことを意味することが意図される。「から本質的になる」は、産物、組成物、および方法を定義するために使用される場合、あらゆる本質的に有意な他の成分または工程を除外することを意味するものとする。従って、列挙された成分から本質的になる組成物は、微量夾雑物および薬学的に許容される担体を除外しないことになる。「からなる」は、他の成分または工程の微量を超える要素を除外することを意味するものとする。
【0014】
本発明は、免疫応答を抗原に対するTh1型応答に向けることを目的とする医薬組成物の調製のための、サッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分および前記抗原の使用であって、前記サッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分が、
a)サッカロマイセス・セレビシエを、それらの増殖を可能にする培地で培養し、その後前記培養物を遠心分離する工程、
b)工程a)で得られたサッカロマイセス・セレビシエのペレットを粉砕する工程、
c)工程b)で得られた混合物を遠心分離する工程、
d)工程c)で得られた上清を超遠心分離する工程、
e)工程d)で得られたペレットから核酸を抽出する工程、
f)工程e)で得られた上清から核酸画分を回収する工程
を含んでなる方法により調製される、使用に関する。
【発明の具体的説明】
【0015】
サッカロマイセス・セレビシエ(S.c.)は、十分に記述されており(Meyen ex E.C. Hansen, 1883)、市販されている(例えば、S.c.DSM番号1333 ATCC9763;S.c.DSM番号70464 NCYC1414;S.c.DSM番号2155 ATCC7754;S.c.DSM番号70869;S.c.DSM番号70461 NCYC1412;S.c.AH109 クロンテック社製;S.c.Y187 クロンテック社製;S.c.W303 バイオケム社製)。本発明の好ましい実施形態では、使用されるサッカロマイセス・セレビシエは、実施例1に記述されたサッカロマイセス・セレビシエAH109(クロンテック社製)である。本発明の別の好ましい実施形態では、使用されるサッカロマイセス・セレビシエは、実施例1に記述されたサッカロマイセス・セレビシエW303(バイオケム社製)である。
【0016】
工程a)のサッカロマイセス・セレビシエを培養する方法は、当業者に周知である(Guthrie, C. & Fink, G. R. (1991) Guide to yeast genetics and molecular biology - Methods in Enzymology (Academic Press, San Diego, CA) 194:1-932 Heslot, H. & Gaillardin, C, eds. (1992) Molecular Biology and Genetic Engineering of Yeasts, CRC Press, Inc.)。サッカロマイセス・セレビシエの増殖を可能にする培地は、十分に記述されており(例えば、培地1017 YPG培地 DSMZ;培地186 YM培地 DSMZ;培地393 YPD培地 DSMZ)、幾つかは市販されている(例えば、YPD培地 クロンテック社製)。サッカロマイセス・セレビシエの増殖を可能にする培地は、少なくとも酵母抽出物、ペプトン、およびグルコースを含んでなる。使用される培地は、例えばアミノ酸、ビタミン、塩、および/またはその他等の1以上の栄養素で補完されていてもよい。それらの幾つかは、市販されている(例えば、アデニンで補完されたYPD培地に対応するYPDA培地 クロンテック社製)。例えば、栄養素、温度、および継続期間等の培養条件は、当業者に周知である(Guthrie, C. & Fink, G. R. (1991) Guide to yeast genetics and molecular biology - Methods in Enzymology (Academic Press, San Diego, CA) 194:1-932 Heslot, H. & Gaillardin, C, eds. (1992) Molecular Biology and Genetic Engineering of Yeasts, CRC Press, Inc.)。本発明の好ましい実施形態では、実施例1に記述された方法および条件が使用され、そこではサッカロマイセス・セレビシエAH109またはW303が、28℃〜30℃の温度で、アデニン(100μg/ml)で補完された、酵母抽出物(1%)、ペプトン(1%)、およびグルコース(2%)を含んでなる培地で培養される。
【0017】
以前に得られたサッカロマイセス・セレビシエの培養物を遠心分離する工程a)は、サッカロマイセス・セレビシエを全てペレット化するのに好適な加速度下および期間で実施される。当業者であれば、どの程度の速度およびどの程度の継続期間が最も適切であるかを決定することができる。以前に得られたサッカロマイセス・セレビシエの培養物を遠心分離する工程a)は、実施例1に記述されているように、好ましくは3500rpmの加速度下で少なくとも15分間実施される。
【0018】
工程a)で得られたサッカロマイセス・セレビシエのペレットを粉砕する工程b)は、乳鉢および乳棒を使用する手作業での粉砕;好ましくは直径が0.1〜5mmの、より好ましくは直径が0.7mmのガラスビーズの存在下でのボルテックス(例えば、卓上型ボルテックスTop Mix94323 Bioblock Scientifique社製)を使用する粉砕;ボルテックスミキサー(例えば、Labnet社から市販されている)を使用する粉砕;ダウンス型ホモジナイザー(例えば、Kontes社から市販されている)を使用した、Potter−Eivehjem型ホモジナイザー(例えば、Kontes社から市販されている)を使用した、またはSLM Aminco社製フレンチプレスを使用した、液体に基づくホモジナイゼーションによる粉砕;ワーリングブレンダーポリトロン(例えば、Brinkmann Instruments社から市販されている)を使用した機械的粉砕;ソニケーター(例えば、Biologics社;Misonix社;GienMills社から市販されている)を使用した超音波処理による粉砕;または凍結/解凍による粉砕等の、当業者に周知の方法、手段、および任意のシステムまたは装置により実施することができる(例えば、RIEDER SE, Emr SD, Overview of subcellular fractionation procedures for the yeast Saccharomyces cerevisiae, Curr Protoc Cell Biol. 2001 May; Chapter 3:Unit 3.7.;RIEDER SE, Emr SD, Isolation of subcellular fractions from the yeast Saccharomyces cerevisiae, Curr Protoc Cell Biol. 2001 May; Chapter 3:Unit 3.8.;HARJU S, Fedosyuk H, Peterson KR., Rapid isolation of yeast genomic DNA: Bust n' Grab, BMC Biotechnol. 2004 Apr 21;4:8.)。工程a)で得られたサッカロマイセス・セレビシエのペレットを粉砕する工程b)は、好ましくは4℃の温度で実施される。当業者であれば、特に、処理しようとする工程a)で得られたサッカロマイセス・セレビシエのペレットの初期量により、上記の粉砕方法のどれが最も適切であるかを決定することができる。更に、当業者であれば、例えば速度、継続期間等の、工程b)の粉砕条件を決定することができる。本発明の好ましい実施形態では、工程a)で得られたサッカロマイセス・セレビシエのペレットを粉砕する工程b)は、ガラスビーズの存在下でボルテックスを使用して粉砕することにより実施される。ガラスビーズは、好ましくは0.1〜5mmの直径、より好ましくは0.7mmの直径を有する。粉砕は、1サイクル当たり30秒から2分間、より好ましくは1サイクル当たり1分間の継続期間で好ましくは1〜20サイクル、より好ましくは5サイクルに基づき実施される。本発明のより好ましい実施形態では、工程a)で得られたサッカロマイセス・セレビシエのペレットを粉砕する工程b)は、実施例1に記述されているように、ガラスビーズの存在下でボルテックスを使用して粉砕することにより実施され、該ガラスは、0.7mmの直径を有し、粉砕は、1サイクル当たり1分間の継続時間の5サイクルに基づき実施される。
【0019】
工程a)で得られたサッカロマイセス・セレビシエのペレットの粉砕は、プロテアーゼ酵素の存在下で消化した後でもよい。本発明により好ましく使用されるプロテアーゼ酵素は、例えば、チモリアーゼおよびオキサリチカーゼ(oxalyticase)を含むがこれらに限定されない(エンドまたはエキソ)β−1,3−グリカナーゼまたは(エンドまたはエキソ)β−1,4−グリカナーゼ等の、酵母細胞壁に由来するβ−グリカナーゼである。本発明によると、反応条件、溶液のpH、反応の温度および継続期間は、好ましくは、選択されたプロテアーゼ酵素(群)の活性に対する最適な条件に調整される。当業者であれば、これら条件を決定することができる(RIEDER SE, Emr SD, Overview of subcellular fractionation procedures for the yeast Saccharomyces cerevisiae, Curr Protoc Cell Biol. 2001 May; Chapter 3:Unit 3.7.;RIEDER SE, Emr SD, Isolation of subcellular fractions from the yeast Saccharomyces cerevisiae, Curr Protoc Cell Biol. 2001 May; Chapter 3:Unit 3.8.)。従って、本発明の別の好ましい実施形態では、工程a)で得られたサッカロマイセス・セレビシエのペレットを粉砕する工程b)は、工程a)で得られたサッカロマイセス・セレビシエのペレットを、1以上のプロテアーゼ酵素、好ましくはチモリアーゼまたはオキサリチカーゼまたはそれらの組合せの存在下で消化した後である。
【0020】
工程b)で得られた混合物を遠心分離する工程c)は、膜残屑ならびに核をペレット化するのに好適な加速度下および期間で実施される。当業者であれば、どの程度の速度およびどの程度の継続期間が最も適切であるかを決定することができる。工程b)で得られた混合物を遠心分離する工程c)は、実施例1に記述されているように、好ましくは4000rpmの加速度下で10分間実施される。工程b)で得られた混合物を遠心分離する工程c)は、好ましくは4℃の温度で実施される。
【0021】
工程c)で得られた上清を超遠心分離する工程d)は、ミトコンドリアをペレット化するのに好適な加速度下および期間で実施される。当業者であれば、どの程度の速度およびどの程度の継続期間が最も適切であるかを決定することができる。工程c)で得られた上清を超遠心分離する工程d)は、実施例1に記述されているように、好ましくは39000rpmの加速度下で90分間実施される。工程c)で得られた上清を超遠心分離する工程d)は、好ましくは、4℃の温度で実施される。
【0022】
核酸を抽出するための方法は、当業者に周知である。工程d)で得られたミトコンドリアを含んでなるペレットから核酸を抽出する工程e)は、例えば、フェノール−ジクロロメタン抽出またはフェノール−クロロホルム抽出により実施することができる(例えば、CHOMCZYNSKI P. and Sacchi N. (1987), "Single-step method of RNA isolation by acid guanidinium thiocyanate-phenol-chloroform extraction" Anal. Biochem. 162: 156-159)。本発明の好ましい実施形態では、工程d)で得られたミトコンドリアを含んでなるペレットから核酸を抽出する工程e)が、好ましくはフェノール−ジクロロメタン抽出により実施される、実施例1に記述された方法および条件が使用される。
【0023】
工程e)で得られた上清から核酸画分を回収する工程f)は、当業者に周知のアルコール沈殿により実施される(例えば、HARJU S, Fedosyuk H, Peterson KR., Rapid isolation of yeast genomic DNA: Bust n' Grab, BMC Biotechnol. 2004 Apr 21 ;4:8)。本発明の好ましい実施形態では、工程e)で得られた上清から核酸画分を回収する工程f)がエタノール沈澱により実施される、実施例1に記述された方法および条件が使用される。
【0024】
工程f)で回収された核酸画分は、ミトコンドリアリボ核酸(RNA)を含んでなる。実施例2(図1)に示されているように、サッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分(つまり、NA画分;NA−B2画分)は、RNAse感受性である。実施例3(表3)に示されているように、サッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリアの核酸画分(つまり、NA画分;NA−B2画分)の生物学的な特性は、RNAseの存在下で消失する。
【0025】
この点で、本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分に含まれる核酸は、好ましくはRNAである。
【0026】
本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分(つまり、NA画分;NA−B2画分)は、ヒトTLRに結合することができる。当業者であれば、実施例3に記述されているようなもの等の当技術分野で利用可能な技術を使用することにより、TLRに結合する核酸の能力を決定することができる。本発明のより好ましい実施形態では、本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分は、実施例3に記述されているように、ヒトTLR3、TLR4、およびTLR7に結合することができる。
【0027】
本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分(つまり、NA画分;NA−B2画分)は、免疫応答を抗原に対するTh1型応答に向けることを目的とする。より具体的には、本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分は、抗原に対するガンマインターフェロン(IFN−γ)、インターロイキン2(IL−2)、および/またはインターロイキン12(IL−12)の産生を誘導することを目的とする。当業者であれば、実施例4および実施例6に記述されているもの等の当技術分野で利用可能な技術を使用することにより、ガンマインターフェロン(IFN−γ)、インターロイキン2(IL−2)、およびインターロイキン12(IL−12)の産生を誘導する核酸の能力を決定することができる。本発明のより好ましい実施形態では、本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分は、以下のものの産生を誘導することを目的とする:
− 実施例4および実施例6に記述され、それぞれ図2および図4に示されるガンマインターフェロン(IFN−γ)、
− 実施例6に記述されており、図5に示されているインターロイキン12(IL−12)。
【0028】
実施例6に記述され、図6に示されるように、本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分は、アルファインターフェロン(IFN−α)の産生を誘導する能力はない。
【0029】
本出願の全体にわたって使用されているように、「抗原」は、宿主の免疫系を刺激して、体液性および/または細胞性の抗原特異的応答を作り出す1以上のエピトープを含有する分子を指す。この用語は、「免疫原」という用語と同義的に使用される。抗イディオタイプ抗体またはその断片等の抗体、および抗原または抗原決定基を模倣することができる合成ペプチドミモトープも、本明細書で使用される抗原の定義下にあるとみなされる。
【0030】
本発明によると、抗原は、好ましくは、腫瘍関連抗原、感染性生物に特異的な抗原、およびアレルゲンに特異的な抗原からなる群から選択される。
【0031】
本発明の第1の実施形態によると、抗原は腫瘍関連抗原である。本出願の全体にわたって使用されているように、「腫瘍関連抗原」(TAA)は、同じ組織タイプの非腫瘍細胞よりも腫瘍細胞において高頻度または高密度で検出される分子を指す。TAAの例としては、これらに限定されないが、以下のものが挙げられる:CEA、MART−1、MAGE−1、MAGE−3、GP−100、MUC−1(例えば、国際公開第92/07000号パンフレット;欧州特許第554344号明細書;米国特許第5,861、381号明細書;米国特許第6,054,438号明細書;国際公開第98/04727号パンフレット;国際公開第98/37095号パンフレットを参照)、MUC−2、点突然変異ras癌遺伝子、正常または点突然変異p53、過剰発現p53、CA−125、PSA、C−erb/B2、BRCA I、BRCA II、PSMA、チロシナーゼ、TRP−1、TRP−2、NY−ESO−1、TAG72、KSA、HER−2/neu、bcr−abl、pax3−fkhr、ews−fli−1、サバイビン、シンシチン(syncytin)(例えば、シンシチン−1、例えば、国際公開第99/02696号パンフレット;国際公開第2007/090967号パンフレット;米国特許第6,312,921号明細書を参照)、メソテリン、およびLRP。これら分子の配列は、従来技術に記述されている。本発明の好ましい実施形態では、抗原は、TAA MUC−1である。実施例5には、癌の処置を目的とする医薬組成物を調製するための、本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分(つまり、NA画分)およびMUC−1抗原の使用が記述されている。
【0032】
本発明の別の実施形態によると、抗原は、感染性生物に特異的な抗原である。本出願の全体にわたって使用されているように、「感染性生物に特異的な抗原」は、ウイルス、バクテリア、真菌、または寄生生物に特異的な抗原を指す。
【0033】
本出願の全体にわたって使用されているように、「ウイルス」としては、これらに限定されないが、以下のものが挙げられる:レトロウイルス科、ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス;エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス);カリシウイルス科(例えば、胃腸炎を引き起こす株);トガウイルス科(例えば、ウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス);フラビウイルス科(例えば、デング熱ウイルス、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス);コロナウイルス科(例えば、コロナウイルス);ラブドウイルス科(例えば、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);フィロウイルス科(例えば、エボラウイルス);パラミクソウイルス科(例えば、パラインフルエンザウイルス、おたふくかぜウイルス、麻疹ウイルス、RSウイルス);オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス);ブニヤウイルス科(例えば、ハンタンウイルス、ブニヤウイルス、フレボウイルス、およびナイロウイルス);アレナウイルス科(出血熱ウイルス);レオウイルス科(例えば、レオウイルス、オルビウイルス、およびロタウイルス);ビルナウイルス科;ヘパドナウイルス科(B型肝炎ウイルス);パルボウイルス科(パルボウイルス);パポーバウイルス科(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス);アデノウイルス科(ほとんどのアデノウイルス);ヘルペスウイルス科(ヘルペスシンプレックスウイルス(HSV)1および2、帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス;ポックスウイルス科(痘瘡ウイルス、ワクチニアウイルス、ポックスウイルス);およびイリドウイルス科(例えば、アフリカブタコレラウイルス)。ウイルス抗原としては、例えば、A型、B型、C型、D型、およびE型肝炎ウイルス、HIV、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、帯状疱疹、パピローマウイルス、エプスタイン−バーウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、ピコルナウイルス、ロタウイルス、RSウイルス、ポックスウイルス、ライノウイルス、風疹ウイルス、パポウイルス(papovirus)、パルボウイルス、おたふくかぜウイルス、麻疹ウイルスに由来する抗原が挙げられる。既知のウイルス抗原の幾つかの非限定的な例には、以下のものが含まれる:tat、nef、gp120若しくはgp160、gp40、p24、gag、env、vif、vpr、vpu、rev、若しくはそれらの部分および/または組合せ等のHIV−1に特異的な抗原;gH、gL gM gB gC gK gE、若しくはgD、若しくはそれらの部分および/または組合せ等のヒトヘルペスウィルス由来の特異的な抗原、またはHSV1もしくはHSV2に由来するICP27、ICP47、ICP4、ICP36等の前初期タンパク質;gBまたはその誘導体等のサイトメガロウイルス、特にヒトサイトメガロウイルスに由来する特異的な抗原;gp350またはその誘導体等のエプスタイン−バーウイルスに特異的な抗原;gpl、11、111、およびIE63等の帯状疱疹ウイルスに特異的な抗原;B型肝炎、C型肝炎、またはE型肝炎ウイルス抗原(例えば、HCVのenvタンパク質E1若しくはE2、コアタンパク質、NS2、NS3、NS4a、NS4b、NS5a、NS5b、p7、若しくはその部分および/または組合せ)等の肝炎ウイルスに特異的な抗原;ヒトパピローマウイルス(例えば、HPV6、11、16、18、例えば、L1、L2、E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7、若しくはそれらの部分および/または組合せ)に特異的な抗原;RSウイルス(例えば、FおよびGタンパク質またはそれらの誘導体)、パラインフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、おたふくかぜウイルス、フラビウイルス(例えば、黄熱ウイルス、デング熱ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス)、またはインフルエンザウイルス細胞(例えば、HA、NP、NA、Mタンパク質、若しくはそれらの部分および/または組合せ)等の他のウイルス病原体に特異的な抗原。本発明は、特に、p53への結合が変更されるかまたは少なくとも著しく低減された任意のHPV E6ポリペプチドの使用、および/またはRbへの結合が変更されるかまたは少なくとも著しく低減された任意のHPV E7ポリペプチドの使用を包含する(MUNGER, et al. Complex formation of human papillomavirus E7 proteins with the retinoblastoma tumor suppressor gene product. The EMBO journal. 1989, vol.8, no.13, p.4099-105.;CROOK, et al. Degradation of p53 can be targeted by HPV E6 sequences distinct from those required for p53 binding and trans-activation. Cell. 1991, vol.67, no.3, p.547-56.;HECK, et al. Efficiency of binding the retinoblastoma protein correlates with the transforming capacity of the E7 oncoproteins of the human papillomaviruses. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.. 1992, vol.89, no.10, p.4442-6.;PHELPS, et al. Structure-function analysis of the human papillomavirus type 16 E7 oncoprotein. Journal of Virology. 1992, vol.66, no.4, p.2418-27)。本発明の目的に好適な非発癌性HPV−16 E6変異体は、118位付近〜122位付近(+1は、天然HPV−16 E6ポリペプチドの最初のメチオニン残基を表す)に位置する1以上のアミノ酸残基が欠失しており、残基118〜122の完全な欠失が特に好ましい(CPEEK)。本発明の目的に好適な非発癌性HPV−16 E7変異体は、21位付近〜26位付近(+1は、天然HPV−16 E7ポリペプチドの最初のメチオニン残基を表す)に位置する1以上のアミノ酸残基が欠失しており、残基21〜26の完全な欠失が特に好ましい(DLYCYE)。好ましい実施形態によると、本発明で使用される1以上のHPV−16初期ポリペプチドは、MHCクラスIおよび/またはMHCクラスII提示を向上させるように、および/または抗HPV免疫を刺激するように更に修飾されている。HPV E6およびE7ポリペプチドは核タンパクであり、膜提示により、それらの治療効能を向上させることが可能であることが以前に示されている(例えば、国際公開第99/03885号パンフレットを参照)。従って、細胞膜にアンカーされるようにHPV初期ポリペプチド(複数可)の少なくとも1つを修飾することが望ましい場合がある。膜アンカーは、天然ポリペプチドが分泌配列(つまり、シグナルペプチド)を欠如している場合、HPV初期ポリペプチドに膜アンカー配列を組み込むことにより容易に達成することができる。膜アンカーおよび分泌配列は、当技術分野で公知である。手短に言えば、分泌配列は、膜提示または分泌ポリペプチドのN末端に存在し、小胞体(ER)へのそれらの移行を開始させる。分泌配列は、通常、15〜35個の本質的に疎水性のアミノ酸を含んでなり、その後それらは、ERに存在する特異的なエンドペプチダーゼにより取り除かれて、成熟ポリペプチドがもたらされる。膜アンカー配列は、通常、性質が高度に疎水性であり、細胞膜にポリペプチドをアンカーさせる役目を果たす(例えば、BRANDEN, et al. Introduction to protein structure. NY GARLAND, 1991. p.202-14を参照)。本発明の状況で使用することができる膜アンカーおよび分泌配列の選択肢は、莫大である。それらは、狂犬病糖タンパク質、HIVウイルスエンベロープ糖タンパク質、または麻疹ウイルスFタンパク質等のそれを含んでなる任意の膜アンカーおよび/または分泌ポリペプチド(例えば、細胞性またはウイルス性ポリペプチド)から得てもよく、または合成であってもよい。本発明により使用される初期HPV−16ポリペプチドの各々に挿入されている膜アンカーおよび/または分泌配列は、由来が共通であってもよく、または異なっていてもよい。分泌配列の好ましい挿入部位は、翻訳開始用コドンの下流にあるN末端であり、膜係留配列の好ましい挿入部位は、例えば、終止コドンのすぐ上流のC末端である。本発明で使用されるHPV E6ポリペプチドは、好ましくは、麻疹Fタンパク質の分泌および膜アンカーシグナルの挿入により修飾される。本発明で使用されるHPV E7ポリペプチドは、好ましくは、狂犬病糖タンパク質の分泌および膜アンカーシグナルの挿入により修飾される。この点で、本発明の好ましい実施形態では、抗原は、ヒトパピローマウイルス(HPV)に特異的な抗原、好ましくはHPV−16および/またはHPV−18に特異的な抗原、ならびにより好ましくはHPV−16および/またはHPV−18のE6初期コード領域、HPV−16および/またはHPV−18のE7初期コード領域、ならびにそれらの一部または組合せからなる群から選択される抗原である。実施例4には、免疫応答をHPV16 E7抗原に対するTh1型応答に向けることを目的とする医薬組成物を調製するための、本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分(つまり、NA画分;NA−B2画分)およびHPV16 E7抗原の使用が記述されている。
【0034】
本出願の全体にわたって使用されているように、「バクテリア」には、グラム陽性菌およびグラム陰性菌が含まれる。グラム陽性細菌としては、これらに限定されないが、パスツレラ(Pasteurella)種、ブドウ球菌(Staphylococci)種、および連鎖球菌(Streptococcus)種が挙げられる。グラム陰性細菌としては、これらに限定されないが、大腸菌(Escherichia coli)、シュードモナス(Pseudomonas)種、およびサルモネラ(Salmonella)種が挙げられる。感染性バクテリアの特定の例としては、これらに限定されないが、以下のものが挙げられる:ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pyloris)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borelia burgdorferi)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophilia)、マイコバクテリア(Mycobacteria)種(例えば、結核菌(M. tuberculosis)、M.アビウム(M. avium)、M.イントラセルラーレ(M. intracellular)、M.カンサシイ(M.kansaii)、M.ゴルドネ(M.gordonae))、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)(A群連鎖球菌)、ストレプトコッカス・アガラクティアエ(Streptococcus agalactiae)(B群連鎖球菌)、連鎖球菌属(Streptococcus)(緑色連鎖球菌(viridans group))、糞便連鎖球菌(Streptococcus faecalis)、ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)、連鎖球菌(嫌気性種)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、病原性カンピロバクター(Campylobacter)種、エンテロコッカス(Enterococcus)種、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、炭疽菌(Bacillus antracis)、ジフテリア菌(corynebacterium diphtheriae)、コリネバクテリウム(corynebacterium)種、豚丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、ウェルチ菌(Clostridium perfringens)、破傷風菌(Clostridium tetani)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、パスツレラ・マルトシダ(Pasturella multocida)、バクテロイデス(Bacteroides)種、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、ストレプトバシラス・モニリフォルミス(Streptobacillus moniliformis)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidium)、フランベジアトレポネーマ(Treponema pertenue)、レプトスピラ(Leptospira)属、リケッチア(Rickettsia)属、およびイスラエル放線菌(Actinomyces israelii)。
【0035】
本出願の全体にわたって使用されているように、「真菌」としては、これらに限定されないが、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラスマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、ブラストミセス・デルマティティディス(Blastomyces dermatitidis)、クラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)、およびカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)が挙げられる。
【0036】
本出願の全体にわたって使用されているように、「寄生生物」としては、これらに限定されないが、以下の属が挙げられる:マラリア原虫属(Plasmodium)(例えば、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)、マラリア原虫種(Plasmodium spp.)、卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)、または三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax))、バベシア属(Babesia)(例えば、バベシア・ミクロチ(Babesia microti)、バベシア種(Babesia spp.)、または多型バベシア(Babesia divergens))、リーシュマニア属(Leishmania)(例えば熱帯リーシュマニア(Leishmania tropica)、リーシュマニア種(Leishmania spp.)、ブラジル・リーシュマニア(Leishmania braziliensis)、またはドノバン・リーシュマニア(Leishmania donovani))、トリパノゾーマ属(Trypanosoma)(例えば、ガンビア・トリパノソーマ(Trypanosoma gambiense)、トリパノゾーマ種(Trypanosoma spp.)、アフリカ睡眠病を引き起こすローデシア・トリパノソーマ(Trypanosoma rhodesiense)、またはシャーガス病を引き起こすクルーズ・トリパノソーマ(Trypanosoma cruzi))、およびトキソプラズマ属(Toxoplasma)(例えば、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii))。
【0037】
本出願の全体にわたって使用されているように、「アレルゲン」は、感受性対象体においてアレルギーまたは喘息反応を誘導し得る物質を指す。アレルゲンとしては、これらに限定されないが、花粉、昆虫毒、動物鱗屑埃(Animal dander dust)、真菌胞子、および薬物(例えば、ペニシリン)が挙げられる。天然、動物、および植物アレルゲンの例としては、これらに限定されないが、以下の属に特異的なタンパク質が挙げられる:イヌ属(イエイヌ(Canis familiaris));チリダニ類(dermatophagoides)(例えば、コナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae));ネコ属(例えば、イエネコ(Felis domesticus));ブタクサ属(例えば、ブタクサ(Ambrosia artemiisfolia));ロリウム属(例えば、ペレニアルライグラス(Lolium perenne)またはイタリアンライグラス(Lolium multiflorum));スギ属(例えば、スギ(Cryptomeria japonica));アルテルナリア属(例えば、葉上生息菌(Alternaria alternata);アルダー属(Alder);ハンノキ属(Alnus)(例えば、アルヌス・グルティノサ(Alnus gultinoasa));カバノキ属(Betula)(例えば、ベツラ・ベルコサ(Betula verrucosa));コナラ属(Quercus )(例えば、ケルクス・アルバ(Quercus alba));オリーブ属(Olea)(例えば、オリーブ(Olea europa));ヨモギ属(Artemisia)(例えば、アルテミシア・ブルガリス(Artemisia vulgaris));オオバコ属(Plantago)(例えば、ヘラオオバコ(Plantago lanceolata));ヒカゲミズ属(Parietaria)(例えば、パリエタリア・オフィチナリス(Parietaria officinalis)またはカベイラクサ(Parietaria judaica));チャバネゴキブリ属(Blattella)(例えば、チャバネゴキブリ(Blattella germanica));ミツバチ属(Apis)(例えば、アピス・ムルティフロルム(Apis multiflorum));イトスギ属(Cupressus)(例えば、イタリアイトスギ(Cupressus sempervirens)、アリゾナイトスギ(Cupressus arizonica)、またはモントレーイトスギ(Cupressus macrocarpa);ビャクシン属(Juniperus)(例えば、ジュニペラス・サビオノイデス(Juniperus sabinoides)、エンピツビャクシン(Juniperus virginiana)、セイヨウネズ(Juniperus communis)、またはジュニペラス・アシェイ(Juniperus ashei);クロベ属(Thuya)(例えば、コノテガシワ(Thuya orientalis));ヒノキ属(Chamaecyparis)(例えば、ヒノキ(Chamaecyparis obtusa));ゴキブリ属(Periplaneta)(例えば、ワモンゴキブリ(Periplaneta americana));カモジグサ属(Agropyron)(例えば、シバムギ(Agropyron repens));ライムギ属(Secale)(例えば、ライムギ(Secale cereale));コムギ属(Triticum)(例えば、コムギ(Triticum aestivum));カモガヤ属(Dactylis)(例えば、カモガヤ(Dactylis glomerata));ウシノケグサ属(Festuca)(例えば、ヒロハノウシノケグサ(Festuca elatior));イチゴツナギ属(Poa)(例えば、ナガハグサ(Poa pratensis)またはコイチゴツナギ(Poa compressa));カラスムギ属(Avena)(例えば、マカラスムギ(Avena sativa));シラゲガヤ属(Holcus)(例えば、シラゲガヤ(Holcus lanatus));ハルガヤ属(Anthoxanthum)(例えば、ハルガヤ(Anthoxanthum odoratum));オオカニツリ属(Arrhenatherum)(例えば、オオカニツリ(Arrhenatherum elatius));コヌカグサ属(Agrostis)(例えば、コヌカグサ(Agrostis alba));アワガエリ属(Phleum)(例えば、オオアワガエリ(Phleum pratense));クサヨシ属(Phalaris)(例えば、クサヨシ(Phalaris arundinacea));スズメノヒエ属(Paspalum)(例えば、バヒアグラス(Paspalum notatum));モロコシ属(Sorghum)(例えば、セイバンモロコシ(Sorghum halepensis));およびスズメノチャヒキ属(Bromus)(例えば、コスズメノチャヒキ(Bromus inermis))。
【0038】
本発明によると、抗原は、好ましくは、ペプチド、核酸(例えば、DNAもしくはRNA、またはそれらのハイブリッド)、脂質、リポペプチド、およびサッカライド(例えば、オリゴサッカライドまたはポリサッカライド)からなる群から選択される。また、抗原は、腫瘍関連抗原、感染性生物に特異的な抗原、またはアレルゲンに特異的な抗原からなる群から選択される抗原に対するTh1型応答に、免疫応答を特異的に向かわせることが可能な任意の化合物であってもよい。
【0039】
本発明の好ましい実施形態によると、抗原は、ベクターに含まれる。本発明によると、ベクターは、好ましくはプラスミドまたはウイルスベクターから選択される。
【0040】
プラスミドに関しては、例えば、pBR322(ギブコBRL社製)、pUC(ギブコBRL社製)、pBluescript(ストラタジーン社製)、pREP4、pCEP4(インビトロジェン社製)、またはpPoly(LATHE, et al. Plasmid and bacteriophage vectors for excision of intact inserts. Gene. 1987, vol.57, no.2-3, p.193-201.)から得られるプラスミドを起想することが可能である。一般的な様式で、プラスミドは、当業者に公知であり、多くのプラスミドは市販されており(例えば、以前に言及したプラスミド等)、遺伝子操作技術を使用してそれらを修飾または構築することも可能である。好ましくは、本発明の状況で使用されるプラスミドは、産生用細胞および/または宿主細胞で複製が開始されることを保証する複製起点を含有する(例えば、大腸菌で産生することを目的とするプラスミド用には、ColE1起点が選択され、プラスミドが哺乳動物宿主細胞で自己複製されるべきことが望ましい場合、oriP/EBNA1系が選択されるであろう。LUPTON, et al. Mapping genetic elements of Epstein-Barr virus that facilitate extrachromosomal persistence of Epstein-Barr virus-derived plasmids in human cells. Molecular and cellular biology. 1985, vol.5, no.10, p.2533-42.;YATES, et al. Stable replication of plasmids derived from Epstein-Barr virus in various mammalian cells. Nature. 1985, vol.313, no.6005, p.812-5.)。プラスミドは、トランスフェクション細胞の選択または特定を可能にする選択遺伝子を更に含んでなることができる(栄養素要求性突然変異の補完、抗生物質等に対する耐性をコードする遺伝子等)。当然、プラスミドは、所与の細胞中でのその維持および/またはその安定性を向上させる更なる要素を含有することができる(モノマー形態でのプラスミドの維持を容易にするcer配列(SUMMERS, et al. Multimerization of high copy number plasmids causes instability: ColE1 encodes a determinant essential for plasmid monomerization and stability. Cell. 1984, vol.36, no.4, p.1097-103.、細胞ゲノムに組み込むための配列)。
【0041】
ウイルスベクターに関しては、例えば、ポックスウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、アルファウイルス、泡沫状ウイルス、またはアデノウイルス関連ウイルスから得られるウイルスベクターを起想することが可能である。複製可能なウイルスベクターまたは複製欠損性のウイルスベクターを使用することが可能である。「複製可能なウイルスベクター」は、いかなるトランス補完性が存在しない場合でも宿主細胞中で複製することが可能なウイルスベクターを指す。「複製欠損性ウイルスベクター」は、ある形態のトランス補完性がないと、宿主細胞中で複製することができないウイルスベクターを指す。統合されないベクターの使用が更に好ましいであろう。この点で、アデノウイルスベクターおよびポックスウイルスから得られるベクターが、本発明を実施するのに非常に特に好適である。
【0042】
本発明の好ましい実施形態では、ウイルスベクターは、ポックスウイルス、好ましくはワクシニアウイルス(VV)およびより好ましくは改変ワクシニアウイルスAnkara(MVA)、またはそれらの誘導体から得られる。「誘導体」は、寄託された菌株と本質的に同じ複製特徴を示すが、そのゲノムの1以上の部分に差異を示すウイルスを指す。
【0043】
本出願の全体にわたって使用されているように、「ワクシニアウイルス」(VV)としては、これらに限定されないが、以下のものが含まれる:VV株Dairen I、IHD−J、L−IPV、LC16M8、LC16MO、Lister、LIVP、Tashkent、WR65−16、Wyeth、Ankara、Copenhagen、Tian Tan、Western Reserve(WR)、ならびに、例えば欠陥F2L遺伝子を含んでなるVV(国際公開第2009/065547号パンフレットを参照)、および欠陥I4Lおよび/またはF4L遺伝子を含んでなるVV(国際公開第2009/065546号パンフレットを参照)等のそれらの誘導体。VVは、大型二本鎖DNAゲノム(187キロベースペア)を含有しており、感染細胞の細胞質中で複製するDNAウイルスの唯一の既知ファミリーのメンバーである。VVは、欧州特許第83286号明細書に詳述されている。VV株Copenhagenのゲノムは、マッピングおよび配列決定されている(Goebel et al., 1990, Virol. 179, 247-266 and 517-563;Johnson et al., 1993, Virol. 196, 381-401)。
【0044】
本出願全体にわたって使用されているように、「改変ワクシニアウイルスAnkara(MVA)」は、VVのAnkara株のCEF(CVA)を516回連続継代することにより生成された高度に弱毒化されたVVウイルス(Mayr, A., et al. Infection 3, 6-14, 1975)およびその誘導体を指す。MVAウイルスは、以前に、寄託機関N602I−721の下でCollection Nationale de Cultures de Microorganismes(CNCM)に寄託された。MVAベクターおよびそのようなベクターを生成する方法は、欧州公開第83286号公報および欧州公開第206920号公報に、国際公開第07/147528号パンフレットに、およびSUTTER, et al. Nonreplicating vaccinia vector efficiently expresses recombinant genes. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.. 1992, vol.89, no.22, p.10847-51に詳述されている。MVAのゲノムは、マッピングおよび配列決定されている(Antoine et al., 1998, Virol. 244, 365-396)。より好ましい実施形態によると、抗原は、MVAベクターの欠失I、II、III、IV、V、およびVl、更により好ましくは欠失IIIに挿入することができる(MEYER, et al. Mapping of deletions in the genome of the highly attenuated vaccinia virus MVA and their influence on virulence. The Journal of general virology. 1991 , vol.72, no.Pt5, p.1031-8;SUTTER, et al. A recombinant vector derived from the host range-restricted and highly attenuated MVA strain of vaccinia virus stimulates protective immunity in mice to influenza virus. Vaccine. 1994, vol.12, no.11, p.1032-40.)。実施例5には、癌の治療を目的とする医薬組成物を調製するための、本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分(すなわち、NA画分)およびMUC−1抗原の使用が記述されており、そこではMUC−1抗原は、MVAベクターに含まれる。
【0045】
本発明の別の好ましい実施形態では、ウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノウイルス関連ウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、アルファウイルス、若しくは泡沫状ウイルス、またはそれらの誘導体から得られる。
【0046】
本発明により使用されるアデノウイルスベクターは、好ましくは、ベクターが宿主生物または環境内で増殖することを回避するために、複製に不可欠であり、かつ、E1、E2、E4、およびL1−L5領域から選択される少なくとも1つの領域の全てまたは一部を欠如したアデノウイルスベクターである。E1領域の欠失が好ましい。しかしながら、それは、欠損した必須機能が、補完細胞株および/またはヘルパーウイルスによりトランスで補完される程度に、特に、E2、E4、および/またはL1−L5領域の全てまたは一部に影響を及ぼす他の改変(群)−/欠失(群)と組合せることができる。この点で、最先端の第二世代ベクターを使用することが可能である(例えば、国際公開第94/28152号パンフレットおよび国際公開第97/04119号パンフレットを参照)。例示として、E1領域およびE4転写ユニットの大部分の欠失は、特に非常に有利である。クローニング能力を増加させるために、アデノウイルスベクターは、非必須E3領域の全てまたは一部を更に欠如していてもよい。別の代案によると、キャプシド形成にとって不可欠な配列、すなわち5’および3’ITR(逆方向末端反復)およびキャプシド形成領域を保持する最小アデノウイルスベクターを使用することが可能である。種々のアデノウイルスベクター、およびそれらを調製するための技術は公知である(例えば、GRAHAM, et al. Methods in molecular biology. Edited by MURREY. The human press inc, 1991. p.109-128を参照)。本発明によるアデノウイルスベクターの由来は、種の観点および血清型の観点の両方で異なっていてもよい。ベクターは、ヒトまたは動物(イヌ、トリ、ウシ、マウス、ヒツジ、ブタ、サル等)由来のアデノウイルスのゲノムから、または少なくとも2つの異なる由来のアデノウイルスゲノム断片を含んでなるハイブリッドから得ることができる。より具体的には、イヌ由来のCAV−IまたはCAV−2アデノウイルス、トリ由来のDAVアデノウイルス、またはウシの由来のBadタイプ3アデノウイルスに言及することができる(ZAKHARCHUK, et al. Physical mapping and homology studies of egg drop syndrome (EDS-76) adenovirus DNA. Archives of virology. 1993, vol.128, no.1-2, p.171-6.;SPIBEY, et al. Molecular cloning and restriction endonuclease mapping of two strains of canine adenovirus type 2. The Journal of general virology. 1989, vol.70, no.Pt 1, p.165-72;JOUVENNE, et al. Cloning, physical mapping and cross-hybridization of the canine adenovirus types 1 and 2 genomes. Gene. 1987, vol.60, no.1 , p.21-8;MITTAL, et al. Development of a bovine adenovirus type 3-based expression vector. The Journal of general virology. 1995, vol.76, no.Pt 1, p.93-102.)。しかしながら、好ましくは、血清型Cアデノウイルス、特にタイプ2または5血清型Cアデノウイルスから得られるヒト由来のアデノウイルスベクターが好ましいであろう。複製可能なアデノウイルスベクターを、本発明により使用することもできる。これら複製可能なアデノウイルスベクターは、当業者に周知である。これらの中でも、ONYX−015ウイルス(BISCHOFF, et al. An adenovirus mutant that replicates selectively in p53-deficient human tumor cells. Science. 1996, vol.274, no.5286, p.373-6;HEISE, et al. An adenovirus E1A mutant that demonstrates potent and selective systemic anti-tumoral efficacy. Nature Medicine. 2000, vol.6, no.10, p.1134-9;国際公開第94/18992号パンフレット)のように、55kDのp53阻害因子をコードするE1b領域に欠失のあるアデノウイルスベクターが特に好ましい。従って、このウイルスは、p53欠損の腫瘍性細胞に選択的に感染させ、死滅させるために使用することができる。当業者であれば、確立している技術により、アデノウイルス5または他のウイルスのp53阻害因子遺伝子を突然変異させ、および破壊することもできる。E1A Rb結合領域に欠失のあるアデノウイルスベクターを、本発明で使用することもできる。例えば、E1A領域に24塩基対の欠失を保持する突然変異アデノウイルスであるDelta24ウイルスである(FUEYO, et al. A mutant oncolytic adenovirus targeting the Rb pathway produces anti-glioma effect in vivo. Oncogene. 2000, vol.19, no.1, p.2-12.)。Delta24は、Rb結合領域に欠失を有しており、Rbと結合しない。従って、突然変異ウイルスの複製は、正常細胞ではRbにより阻害される。しかしながら、Rbが不活化され、細胞が腫瘍性になると、Delta24は、もはや阻害されない。その代わり、突然変異ウイルスは効率的に複製し、Rb欠損細胞を溶解する。本発明によるアデノウイルスベクターは、ライゲーションもしくは相同組換え(例えば、国際公開第96/17070号パンフレットを参照)、またはそうでなければ補完細胞株での組換えにより、大腸菌(E.coli)でイン・ビトロで産生することができる。
【0047】
レトロウイルスは、分裂細胞に対する感染特性、およびほとんどの場合は分裂細胞への組み込み特性を有し、この点に関して、癌関連使用に特に適切である。本発明による組換えレトロウイルスは、一般的に、LTR配列、キャプシド形成領域、およびレトロウイルスLTRまたは下記に記述されているもの等の内部プロモーターの制御下に配置されている本発明によるヌクレオチド配列を含有する。組換えレトロウイルスは、任意の由来(マウス、霊長類、ネコ、ヒト等)のレトロウイルス、特にMoMuLV(モロニーマウス白血病ウイルス)、MVS(マウス肉腫ウイルス)、またはフレンドマウスレトロウイルス(Fb29)から得ることができる。それは、ウイルス粒子を構成するのに必要であるウイルスポリペプチドgag、pol、および/またはenvをトランスで供給することができるキャプシド形成細胞株中で増殖する。そのような細胞株は、文献に記述されている(PA317、Psi CRIP GP+Am−12等)。本発明によるレトロウイルスベクターは、米国特許第5747323号公報に記述されるように、特にLTRにおける改変(該プロモーター領域の真核生物のプロモーターへの置換)またはキャプシド形成領域における改変(異種性キャプシド形成領域、例えばVL3Oタイプとの置換)を含有することができる。
【0048】
本発明によると、ベクターは、抗原が核酸である場合は、前記抗原の発現に必要なエレメントを更に含んでなる。発現に必要な要素は、核酸配列がRNAに転写され、mRNAがポリペプチドに翻訳されることを可能にする全ての要素からなっていてもよい。これら要素は、特に、調節可能であってもよくまたは構成的であってもよいプロモーターを含んでなる。当然、プロモーターは、選択されるベクターおよび宿主細胞に適したものである。言及することができる例は、以下のものである:PGK(ホスホグリセリン酸キナーゼ)、MT(メタロチオネイン;MCIVOR. Human purine nucleoside phosphorylase and adenosine deaminase: gene transfer into cultured cells and murine hematopoietic stem cells by using recombinant amphotropic retroviruses. Molecular and cellular biology. 1987, vol.7, no.2, p.838-46.)、α−1アンチトリプシン、CFTR、サーファクタント、免疫グロブリン、アクチン(TABIN, et al. Adaptation of a retrovirus as a eucaryotic vector transmitting the herpes simplex virus thymidine kinase gene. Molecular and cellular biology, 1982, vol.2, no.4, p.426-36.)、およびSRα(TAKEBE, et al. SR alpha promoter: an efficient and versatile mammalian cDNA expression system composed of the simian virus 40 early promoter and the R-U5 segment of human T-cell leukemia virus type 1 long terminal repeat. Molecular and cellular biology. 1988, vol.8, no.1, p.466-72.)遺伝子の真核生物プロモーター、SV40ウイルス(サルウイルス)の初期プロモーター、RSV(ラウス肉腫ウイルス)のLTR、HSV−I TKプロモーター、CMVウイルス(サイトメガロウイルス)の初期プロモーター、ワクシニアウイルスのp7.5K pH5R、pK1L、p28、p11プロモーター、ならびにE1AおよびMLPアデノウイルスプロモーター。また、プロモーターは、腫瘍または癌細胞における発現を刺激するプロモーターであってもよい。特に、乳癌および前立腺癌で過剰発現されるMUC−I遺伝子(CHEN, et al., Breast cancer selective gene expression and therapy mediated by recombinant adenoviruses containing the DF3/MUC1 promoter. The Journal of clinical investigation. 1995, vol.96, no.6, p.2775-82.)、結腸癌で過剰発現されるCEA(癌胎児性抗原の略)遺伝子(SCHREWE, et al. Cloning of the complete gene for carcinoembryonic antigen: analysis of its promoter indicates a region conveying cell type-specific expression. Molecular and cellular biology. 1990, vol.10, no.6, p.2738-48.)、メラノーマで過剰発現されるチロシナーゼ遺伝子(VILE, et al. Use of tissue-specific expression of the herpes simplex virus thymidine kinase gene to inhibit growth of established murine melanomas following direct intratumoral injection of DNA. Cancer res., 1993, vol.53, no.17, p.3860-4.)、乳癌および膵臓癌で過剰発現されるERBB−2遺伝子(HARRIS, et al Gene therapy for cancer using tumour-specific prodrug activation. Gene therapy. 1994, vol.1, no.3, p.170-5.)、および肝臓癌で過剰発現されるα−フェトプロテイン遺伝子(KANAI, et al. In vivo gene therapy for alpha-fetoprotein-producing hepatocellular carcinoma by adenovirus-mediated transfer of cytosine deaminase gene. Cancer res., 1997, vol.57, no.3, p.461-5.)のプロモーターを挙げることができる。サイトメガロウイルス(CMV)初期プロモーターが、特に非常に好ましい。しかしながら、ワクシニアウイルスに由来するベクター(例えば、MVAベクター)が使用される場合、チミジンキナーゼ7.5K遺伝子のプロモーターが、特に好ましい。更に、必要なエレメントには、本発明によるヌクレオチド配列の宿主細胞での発現またはその維持を向上させる更なる要素が含まれていてもよく、イントロン配列、分泌シグナル配列、核局在化配列、IRESタイプの翻訳再開始の内部部位、転写終結ポリA配列、トリパータイトリーダー(tripartite leader)、および複製起点を、特に挙げることができる。これら要素は、当業者に公知である。
【0049】
本発明による医薬組成物(ならびにより具体的にはアジュバント組成物およびワクチン組成物)は、トランスフェクション効率、および/または、サッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分および/または抗原の安定性を向上させる1以上の作用剤を更に含んでなることができる。前記作用剤は、好ましくは、脂質、リポソーム、サブミクロンの水中油型エマルジョン、マイクロ粒子、ISCOM、およびポリマーからなる群から選択される。組成物の種々の成分は、幅広い比率で存在することができる。例えば、本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分と、トランスフェクション効率、および/または、サッカロマイセス・セレビシエミトコンドリア核酸画分および/または抗原の安定性を向上させる作用剤とは、約1:200〜200:1、好ましくは約1:100〜100:1、より好ましくは約1:50〜50:1、更により好ましくは約1:10〜10:1、更により好ましくは約1:3〜3:1、および最も好ましくは約1:1の比率(容積/容積(v/v)および/または重量/重量(w/w))で使用することができる。
【0050】
本出願の全体にわたって使用されているように、「脂質」は、中性、双性イオン性、陰イオン性、および/または陽イオン性脂質を含んでなる。脂質としては、これらに限定されないが、リン脂質(例えば、天然または合成ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、またはホスファチジルセリン)、グリセリド(例えば、ジグリセリドまたはトリグリセリド)、コレステロール、セラミド、またはセレブロシドが挙げられる。好ましい脂質は、陽イオン性脂質である。種々の陽イオン性脂質は、当技術分野で公知であり、幾つかは市販されている(例えば、BALASUBRAMANIAM et al. (1996) Gene Ther., 3:163-172;GAO and HUANG (1995) Gene Ther., 2:7110-7122;米国特許第4,897,355号公報;欧州特許第901463号公報、およびより好ましくはpcTG90)。本発明の好ましい実施形態では、脂質は、陽イオン性脂質であり、より好ましくは欧州特許第901463号公報に記述された陽イオン性脂質であり、更により好ましくは欧州特許第901463号公報に記述されたpcTG90である。本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分および脂質は、約1:200〜200:1、好ましくは約1:100〜100:1、より好ましくは約1:50〜50:1、更により好ましくは約1:10〜10:1、更により好ましくは約1:3〜3:1、および最も好ましくは約1:1の比率(容積/容積(v/v)および/または重量/重量(w/w))で使用することができる。
【0051】
本出願の全体にわたって使用されているように、「リポソーム」は、非脂質成分(例えば、ステアリルアミン等)と随意に組合せた脂質を通常含む成分で形成された二分子膜に囲まれた小胞を指す。リポソームを形成するために使用されるリポソーム形成成分としては、中性、双性イオン性、陰イオン性、および/または陽イオン性脂質を挙げることができる。好ましいリポソームは、陽イオン性リポソームである。陽イオン性リポソームは、当業者が入手可能な文献に広く記述されており、幾つかは市販されている(例えば、FELGNER, et al. Cationic liposome mediated transfection. Proceedings of the Western Pharmacology Society. 1989, vol.32, p.115-21.;HODGSON, et al. Virosomes: cationic liposomes enhance retroviral transduction. Nature biotechnology. 1996, vol.14, no.3, p.339-42.;REMY, et al. Gene transfer with a series of lipophilic DNA-binding molecules. Bioconjugate chemistry. 1994, vol.5, no.6, p.647-54)。陽イオン性リポソーム(本出願の全体にわたって使用されているような)としては、これらに限定されないが、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)、1,2−ビス(オレオイルオキシ)−3−(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)、1,2−ビス(ヘキサデシロキシ)−3−トリメチルアミノプロパン(BisHOP)、3[ベータ][N−(N’N’−ジメチルアミノエタン)−カルバミル]コレステロール(DC−Chol)、またはリポソームアムホテリシンB(Gilead Sciences社からAmbisome(商標)の商標名で市販されている)が挙げられる。本発明の好ましい実施形態では、リポソームは、陽イオン性リポソームであり、より好ましくは、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)、およびリポソームアムホテリシンB、またはそれらの組合せから選択される。本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分およびリポソームは、約1:200〜200:1、好ましくは約1:100〜100:1、より好ましくは約1:50〜50:1、更により好ましくは約1:10〜10:1、更により好ましくは約1:3〜3:1、および最も好ましくは約1:1の比率(容積/容積(v/v)、および/または、重量/重量(w/w))で使用することができる。
【0052】
リポソームアムホテリシンBは、例えばAmbisome(商標)の商標名で市販されている(Gilead Sciences社製)。本発明の好ましい実施形態によると、サッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリアの核酸画分(つまりNA−B2画分)およびAmbisome(商標)は、実施例2に記述されているように、好ましくは、約1:3〜1:1(容積/容積);1:100(重量/重量)の比率で使用される。
【0053】
本発明による陽イオン性リポソームの好ましい組合せは、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)およびN−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)である。1:1(重量/重量)の比率のジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)およびN−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)は、Lipofectin(商標)(Invitrogen社製、カタログ番号18292−011またはカタログ番号18292−037)の商標名で市販されている。本発明の好ましい実施形態によると、サッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリアの核酸画分(つまり、NA画分;NA−B2画分)およびLipofectin(商標)は、実施例1(NA画分)および実施例2(NA−B2画分)に記述されているように、好ましくは約1:1(容積/容積および/または重量/重量)の比率である。本発明による別の好ましい組合せは、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)、およびリポソームアムホテリシンBである。当業者であれば、本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分、Lipofectin(商標)、およびリポソームアムホテリシンB間の比率はどれが最も適切であるかを決定することができる。
【0054】
本出願の全体にわたって使用されているように、「サブミクロンの水中油型エマルジョン」は、無毒で代謝可能な油類および市販の乳化剤を含んでなる。無毒で代謝可能な油類としては、これらに限定されないが、植物油、魚油、動物油、または合成的に調製された油が挙げられる。市販の乳化剤としては、これらに限定されないが、ソルビタンに基づく非イオン性界面活性剤(例えば、ソルビタントリオレエートまたはポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)または例えばラウリル、アセチル、ステアリル、およびオレイルアルコールに由来するポリオキシエチレン脂肪酸エーテルが挙げられる。サブミクロンの水中油型エマルジョンは、当業者が入手可能な文献に広く記述されている(例えば、国際公開第90/14837号パンフレット;TAMILVANAN S., Oil-in-water lipid emulsions: implications for parenteral and ocular delivering systems, Prog Lipid Res. 2004 Nov;43(6):489-533)。本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分およびサブミクロンの水中油型エマルジョンは、約1:200〜200:1、好ましくは約1:100〜100:1、より好ましくは約1:50〜50:1、更により好ましくは約1:10〜10:1、更により好ましくは約1:3〜3:1、および最も好ましくは約1:1の比率(容積/容積(v/v)および/または重量/重量(w/w))で使用することができる。
【0055】
本出願の全体にわたって使用されているように、「マイクロ粒子」は、限定ではないが、ポリ(α−ヒドロキシ酸)(例えば、ポリ(ラクチド)またはポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド))、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリビニルアルコール、およびエチレン酢酸ビニル等の、滅菌可能な無毒で生分解性の物質から形成される、直径が約100nm〜約150μmの粒子を指す。マイクロ粒子は、当業者が入手可能な文献に広く記述されている(例えば、RAVI KUMAR M. N. V., Nano and microparticles as controlled grud delivery devices, J. Pharm. Pharmaceut. Sci 3(2):234-258, 2000;国際公開第07/084418号パンフレット)。本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分およびマイクロ粒子は、約1:200〜200:1、好ましくは約1:100〜100:1、より好ましくは約1:50〜50:1、更により好ましくは約1:10〜10:1、更により好ましくは約1:3〜3:1、および最も好ましくは約1:1の比率(容積/容積(v/v)および/または重量/重量(w/w))で使用することができる。
【0056】
本出願の全体にわたって使用されているように、「ISCOM」は、トリテルペノイドサポニン(特に、Quil A)等のグリコシドと疎水性領域を含有する抗原との間で形成される免疫原性複合体を指す。ISCOMは、当業者が入手可能な文献に広く記述されている(例えば、BARR I. J. and GRAHAM F. M., "ISCOMs (immunostimulating complexes): The first decade", Immunology and Cell Biology (1996) 74, 8-25;国際公開第9206710号パンフレット)。本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分およびISCOMは、約1:200〜200:1、好ましくは約1:100〜100:1、より好ましくは約1:50〜50:1、更により好ましくは約1:10〜10:1、更により好ましくは約1:3〜3:1、および最も好ましくは約1:1の比率(容積/容積(v/v)および/または重量/重量(w/w))で使用することができる。
【0057】
本出願の全体にわたって使用されているように、「ポリマー」としては、これらに限定されないが、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、スペルミン、およびスペルミジンが挙げられる。本発明のサッカロマイセス・セレビシエミのトコンドリア核酸画分およびポリマーは、約1:200〜200:1、好ましくは約1:100〜100:1、より好ましくは約1:50〜50:1、更により好ましくは約1:10〜10:1、更により好ましくは約1:3〜3:1、および最も好ましくは約1:1の比率(容積/容積(v/v)および/または重量/重量(w/w))で使用することができる。
【0058】
本出願者は、驚くべきことに、リポソームアムホテリシンB(つまり、Ambisome(商標))と同時に投与された本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分(つまり、NA画分;NA−B2画分)が、本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分(つまり、NA画分;NA−B2画分)単独投与およびリポソームアムホテリシンB(つまり、Ambisome(商標))単独投与から得られた応答と比較して、Th1型応答(つまり、ガンマインターフェロン(IFN−γ):インターロイキン2(IL−2)および/またはインターロイキン12(IL−12)の産生)を統計的に有意に増加させ、本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分(つまり、NA画分;NA−B2画分)単独投与から生じる応答が、リポソームアムホテリシンB(つまり、Ambisome(商標))単独投与から生じる応答より高いことを見出した。そのような効果は、(本出願の全体にわたって使用されているように)「相乗効果」と同義的に呼ばれる。NA−B2画分およびリポソームアムホテリシンB(つまり、Ambisome(商標))の同時の投与から生じる相乗効果は、実施例6に記述されており、図4(ガンマインターフェロン(IFN−γ))および図5(インターロイキン12(IL−12))に示されている。
【0059】
この点で、本発明は、
(i)a)サッカロマイセス・セレビシエを、それらの増殖を可能にする培地で培養し、その後前記培養物を遠心分離する工程、
b)工程a)で得られたサッカロマイセス・セレビシエのペレットを粉砕する工程、
c)工程b)で得られた混合物を遠心分離する工程、
d)工程c)で得られた上清を超遠心分離する工程、
e)工程d)で得られたペレットから核酸を抽出する工程、
f)工程e)で得られた上清から該核酸画分を回収する工程を含んでなる方法により調製されるサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分、および
(ii)リポソームアムホテリシンB
を含んでなる相乗効果を有するアジュバント組成物にも関する。
【0060】
この点で、本発明は、
(i)a)サッカロマイセス・セレビシエを、それらの増殖を可能にする培地で培養し、その後前記培養物を遠心分離する工程、
b)工程a)で得られたサッカロマイセス・セレビシエのペレットを粉砕する工程、
c)工程b)で得られた混合物を遠心分離する工程、
d)工程c)で得られた上清を超遠心分離する工程、
e)工程d)で得られたペレットから核酸を抽出する工程、
f)工程e)で得られた上清から該核酸画分を回収する工程を含んでなる方法により調製されるサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分、
(ii)リポソームアムホテリシンB、および
(iii)抗原
を含んでなる相乗効果を有するワクチン組成物にも関する。
【0061】
本出願者は、驚くべきことに、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)およびN−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)(つまりLipofectin(商標))と同時に投与された本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分(つまり、NA画分;NA−B2画分)が、本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分(つまり、NA画分;NA−B2画分)単独投与およびジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)およびN−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)(つまりLipofectin(商標))単独投与から得られた応答と比較して、Th1型応答(つまり、ガンマインターフェロン(IFN−γ)、インターロイキン2(IL−2)、および/またはインターロイキン12(IL−12)の産生)を統計的に有意に増加させることを見出し、本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分(つまり、NA画分;NA−B2画分)単独投与から生じる応答が、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)およびN−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)(つまりLipofectin(商標))単独投与から生じる応答より高いことも見出した。そのような効果は、(本出願の全体にわたって使用されているように)「相乗効果」と同義的に呼ばれる。NA−B2画分、ならびにジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)およびN−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)(つまり、Lipofectin(商標))の同時投与から生じる相乗効果は、実施例6に記述されており、図5(インターロイキン12(IL−12))に示されている。
【0062】
この点で、本発明は、
(i)a)サッカロマイセス・セレビシエを、それらの増殖を可能にする培地で培養し、その後前記培養物を遠心分離する工程、
b)工程a)で得られたサッカロマイセス・セレビシエのペレットを粉砕する工程、
c)工程b)で得られた混合物を遠心分離する工程、
d)工程c)で得られた上清を超遠心分離する工程、
e)工程d)で得られたペレットから核酸を抽出する工程、
f)工程e)で得られた上清から該核酸画分を回収する工程を含んでなる方法により調製されるサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分、および
(ii)ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)およびN−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)
を含んでなる相乗効果を有するアジュバント組成物にも関する。
【0063】
この点で、本発明は、
(i)a)サッカロマイセス・セレビシエを、それらの増殖を可能にする培地で培養し、その後前記培養物を遠心分離する工程、
b)工程a)で得られたサッカロマイセス・セレビシエのペレットを粉砕する工程、
c)工程b)で得られた混合物を遠心分離する工程、
d)工程c)で得られた上清を超遠心分離する工程、
e)工程d)で得られたペレットから核酸を抽出する工程、
f)工程e)で得られた上清から該核酸画分を回収する工程を含んでなる方法により調製されるサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分、
(ii)ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)およびN−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA);および
(iii)抗原
を含んでなる相乗効果を有するワクチン組成物にも関する。
【0064】
本発明は、パーツキット(kit of part)にも関する。キットは、全ての成分(つまり、本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分;抗原;トランスフェクション効率、および/または、サッカロマイセス・セレビシエミトコンドリア核酸画分および/または抗原の安定性を向上させる作用剤)を一緒に収納する単一容器であってもよく、またはブリスター包装等の、個々の用量の成分を収容する複数の容器であってもよい。キットは、異なる成分の投与タイミングに関する説明書も有する。説明書により、対象体は、適切な時点で成分を摂取するように指図されるであろう。例えば、成分の送達に適切な時点は、症状が生じる際であってもよい。あるいは、成分の投与に適切な時点は、毎月または年1回等の定期的スケジュールであってもよい。異なる成分は、同時に投与されてもよく、またはそれらが時間的に十分に接近して投与されて相乗効果的な免疫応答をもたらす限り、別々に投与されてもよい。
【0065】
第1の好ましい実施形態によると、パーツキットは、少なくとも1つの本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分を含有する容器、および少なくとも1つの抗原を含有する容器並びに前記成分の投与タイミングに関する説明書を含んでなる。
【0066】
別の好ましい実施形態によると、パーツキットは、少なくとも1つの本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分を含有する容器と、少なくとも1つの抗原を含有する容器と、トランスフェクション効率、および/または、サッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分および/または抗原の安定性を向上させる少なくとも1つの作用剤(前記作用剤は、より好ましくはリポソームアムホテリシンBおよび/またはジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)およびN−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)である)を含有する容器と、前記成分の投与タイミングに関する説明書とを含んでなる。
【0067】
本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分は、例えば、癌、感染症、アレルギー、および/または自己免疫障害等の当業者に公知の任意の疾患に対して哺乳動物を予防および/または治療することを目的とする医薬組成物(ならびにより具体的にはアジュバント組成物およびワクチン組成物)の調製に使用することができる。
【0068】
「癌」、「新生物」、「腫瘍」、および「カルシノーマ」という用語は、本明細書では、比較的自律的な増殖を示し、そのため細胞増殖の著しい制御不能を特徴とする異常な増殖表現型を示す細胞を表わすために、同義的に使用される。一般的に、本出願における予防または治療の目的細胞としては、前癌性細胞(例えば、良性細胞)、悪性細胞、前転移性細胞、転移性細胞、および非転移性細胞が挙げられる。「癌」(本出願の全体にわたって使用されているような)としては、これらに限定されないが、肺癌(例えば、小細胞肺カルシノーマおよび非小細胞肺)、気管支癌、食道癌、咽頭癌、頭頸部癌(例えば、喉頭癌、口唇癌、鼻腔および副鼻腔癌、ならびに咽喉癌)、口腔癌(例えば、舌癌)、胃癌(gastric cancer)(例えば、胃癌(stomach cancer))、腸癌、消化管癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、肛門癌、肝臓癌、膵臓癌、尿路癌、膀胱癌、甲状腺癌、腎臓癌、カルシノーマ、腺癌、皮膚癌(例えば、メラノーマ)、眼癌(例えば、網膜芽細胞腫)、脳癌(例えば、神経膠腫、髄芽細胞腫、および大脳星状細胞腫)、中枢神経系癌、リンパ腫(例えば、皮膚B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、ホジキン症候群、および非ホジキンリンパ腫)、骨癌、白血病、乳癌、生殖路癌、子宮頚癌(例えば、子宮頚部上皮内腫瘍)、子宮癌(例えば、子宮内膜癌)、卵巣癌、膣癌、外陰癌、前立腺癌、精巣癌が挙げられる。「癌」は、これらに限定されないが、パピローマウイルス誘発性カルシノーマ、ヘルペスウイルス誘発性腫瘍、EBV誘発性B細胞リンパ腫、B型肝炎誘発性腫瘍、HTLV−1誘発性リンパ腫、およびHTLV−2誘発性リンパ腫を含むウイルス誘発性腫瘍をも指す。本発明の好ましい実施形態では、本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分は、実施例5に記述されているように、腎臓癌に対して哺乳動物を予防および/または治療することを目的とする医薬組成物の調製に使用することができる。
【0069】
本出願の全体にわたって使用されているように、「感染症」は、感染性生物により引き起こされるあらゆる疾患を指す。感染性生物としては、これらに限定されないが、ウイルス(例えば、一本鎖RNAウイルス、一本鎖DNAウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、RSウイルス(RSV)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、またはヒトパピローマウイルス(HPV))、寄生生物(例えば、マラリア原虫種、リーシュマニア属種、住血吸虫種、トリパノゾーマ種等の原生動物および後生動物病原体)、細菌(例えば、マイコバクテリア、特に結核菌、サルモネラ、連鎖球菌、大腸菌、またはブドウ球菌)、真菌(例えば、カンジダ種またはアスペルギルス種)、ニューモシスティス・カリニ(Pneumocystis carinii)、およびプリオンが挙げられる。本発明の好ましい実施形態では、本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分は、実施例4に記述されているように、ヒトパピローマウイルス(HPV)に対して哺乳動物を予防および/または治療することを目的とした医薬組成物の調製に使用することができる。
【0070】
本出願の全体にわたって使用されているように、「アレルギー」は、アレルゲン、例えば本発明により以前に言及されたアレルゲン等により引き起こされるあらゆるアレルギーを指す。
【0071】
本出願の全体にわたって使用されているように、「自己免疫障害」は、2つの一般的なタイプ:「全身性自己免疫疾患」(つまり、多数の器官または組織を損傷する障害)および「局所的自己免疫疾患」(つまり、単一の器官または組織のみを損傷する障害)に分類することができる。しかしながら、局所的自己免疫疾患の影響は、他の体内器官および系に間接的に影響を及ぼすことにより全身性であり得る。「全身性自己免疫疾患」としては、これらに限定されないが、関節、ならびに恐らくは肺および皮膚を冒す場合がある関節リウマチ;皮膚、関節、腎臓、心臓、脳、赤血球、および他の組織および器官を冒す場合がある全身性エリテマトーデス(SLE)を含む狼瘡;皮膚、腸、および肺を冒す場合がある強皮症;唾液腺、涙腺、および関節を冒す場合があるシェーグレン症候群;肺および腎臓を冒す場合があるグッドパスチャー症候群;洞、肺、および腎臓を冒す場合があるヴェーゲナー肉芽腫症;大型筋肉群を冒す場合があるリウマチ性多発性筋痛、および頭頸部の動脈を冒す場合がある側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎が挙げられる。「局所的自己免疫疾患」としては、これらに限定されないが、ランゲルハンス島を冒す1型糖尿病;甲状腺を冒す橋本甲状腺炎およびグレーブス病;胃腸管を冒すセリアック病、クローン病、および潰瘍性大腸炎;中枢神経系を冒す多発性硬化症(MS)およびギラン‐バレー症候群;副腎を冒すアジソン病;肝臓を冒す原発性胆汁性硬化症、硬化性胆管炎、および自己免疫性肝炎;ならびに指、足指、鼻、耳を冒す指虚血現象が挙げられる。
【0072】
本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分を含んでなる医薬組成物(ならびにより具体的にはアジュバント組成物およびワクチン組成物)は、薬学的に許容される担体を更に含んでなることができる。薬学的に許容される担体は、好ましくは等張性、低張性、または弱高張性であり、例えばスクロース溶液等のように比較的低いイオン強度を有する。更に、そのような担体は、任意の溶媒、または非発熱性滅菌水等の水性もしくは部分的に水性の液体を含有することができる。加えて、医薬組成物のpHは、イン・ビボ使用の必要条件を満たすように調整および緩衝化される。医薬組成物(ならびにより具体的にはアジュバント組成物およびワクチン組成物)は、薬学的に許容される希釈剤、アジュバント、または賦形剤、ならびに可溶化剤、安定化剤、および保存剤を含むこともできる。注射可能な投与の場合、水溶液、非水溶液、または等張性溶液中の製剤が好ましい。医薬組成物は、液体形態または適切な希釈剤で使用時に再構成することができる乾燥形態(粉末および凍結乾燥物等)の単回用量または複数用量で提供することができる。
【0073】
本発明は、哺乳動物において免疫応答を抗原に対するTh1型応答に向ける方法であって、抗原および本発明による方法により調製されたサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分を該哺乳動物に投与することを含んでなる方法も提供する。1つの実施形態では、本方法は、抗原および本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分の同時投与を含んでなる。あるいは、本方法は、抗原および本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分の順次投与を含んでなる。本明細書で使用されるように、「順次」という用語は、成分が、ある時間の枠内で対象体に次々と投与されることを意味する。従って順次投与により、1つの成分が、他の成分の投与後の数分または数時間程度以内に投与されてもよい。例えば、実施例5には、癌の治療を目的とする医薬組成物を調製するための、本発明サッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分(つまり、NA画分)およびMUC−1抗原の使用が記述されており、そこではサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分(つまり、NA画分)は、MUC−1抗原の1時間後に注射される。
【0074】
本発明の医薬組成物(ならびにより具体的にはアジュバント組成物およびワクチン組成物)を投与すること、より具体的には前記組成物の様々な成分(つまり、本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリアの核酸画分;抗原;トランスフェクション効率、および/または、サッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分および/または抗原の安定性を向上させる作用剤)を投与することは、当業者に公知な任意の手段により達成することができる。好ましい投与経路としては、これらに限定されないが、皮内、皮下、経口、非経口、筋肉内、鼻腔内、腫瘍内、舌下、気管内、吸入、眼内、膣、および直腸内が挙げられる。好ましい実施形態によると、本発明の医薬組成物(ならびにより具体的にはアジュバント組成物およびワクチン組成物)およびより具体的には前記組成物の成分は、皮下または皮内に送達される。本発明の更により好ましい実施形態によると、抗原および本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分は、同じ部位に投与される。例えば、実施例5には、癌の治療を目的とする医薬組成物を調製するための、本発明サッカロマイセス・セレビシエミトコンドリア核酸画分(つまり、NA画分)およびMUC−1抗原の使用が記述されており、そこではサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分(つまり、NA画分)およびMUC−1抗原は、同じ部位に皮下投与される。
【0075】
投与は、単回用量で行ってもよく、またはある時間的な間隔をおいた後で1回または数回繰り返される用量で行ってもよい。望ましくは、医薬組成物およびより具体的には前記医薬組成物の成分は、1週間間隔で1〜10回投与される。例えば、実施例5には、癌の治療を目的とする医薬組成物を調製するための、本発明サッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分(つまり、NA画分)およびMUC−1抗原の使用が記述されており、そこではサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分(つまり、NA画分)およびMUC−1抗原は、1週間間隔で3回投与される。
【0076】
また抗原の投与用量は異なるはずであり、種々のパラメーター、特に投与方法;使用される医薬組成物;宿主生物の年齢、健康、および体重;症状の性質および程度;併用治療の種類;治療の頻度;および/または予防もしくは治療の必要性の関数として適合させることができる。治療に適切な用量を決定するために必要な計算の更なる精密化は、関連する状況に照らして、開業医により日常的に行われる。
【0077】
一般的な指針として、MVAを含んでなる組成物に好適な用量は、約10〜1010pfu(プラーク形成単位)、望ましくは約10〜10pfuの範囲であるが、アデノウイルスを含んでなる組成物は、約10〜1013iu(感染単位)、望ましくは約10〜1012iuの範囲である。ベクタープラスミドに基づく組成物は、10μg〜20mg、有利には100μg〜2mgの用量で投与することができる。本発明の好ましい実施形態では、医薬組成物は、5 10pfu〜5 10pfuのMVAベクターを含んでなる用量(複数可)で投与される。例えば、実施例5には、癌の治療を目的とする医薬組成物を調製するための、本発明のサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分(つまり、NA画分)およびMUC−1抗原の使用が記述されており、そこではMVAベクターに含まれてなるMUC−1抗原は、5 10pfuで投与される。
【0078】
本発明による使用、方法、アジュバント組成物、ワクチン組成物、またはパーツキットが、癌の治療を目的とする場合、本発明の使用、方法、アジュバント組成物、ワクチン組成物、またはパーツキットは、1つまたは複数の従来治療法(例えば、放射線照射、化学療法、および/または外科手術)と共に実施することができる。複数の治療方法の使用は、より広範な介入を患者に提供する。1つの実施形態では、本発明の方法は、外科的介入の前であってもよく、または後であってもよい。別の実施形態では、本発明の方法は、放射線療法(例えば、ガンマ線照射)の前であってもよく、または後であってもよい。当業者であれば、適切な放射線療法プロトコールおよび使用することができるパラメーターを容易に処方することができる(例えば、PEREZ. Principles and practice of radiation oncology. 2nd edition. LIPPINCOTT, 1992.;当業者であれば容易に明白であるはずの適切な応用および改変を使用して)。
【0079】
更に、本発明は、化学療法剤による化学療法の治療を受けている癌患者の治療を向上させるための方法であって、上記で開示されている方法を共に用いて前記患者を併用治療することを含んでなる方法に関する。
【0080】
更に、本発明は、細胞毒薬物または放射線療法の細胞毒有効性を向上させる方法であって、上記で開示されている方法を共に用いて、そのような治療を必要とする患者を併用治療することを含んでなる方法に関する。
【0081】
本発明による使用、方法、アジュバント組成物、ワクチン組成物、またはパーツキットが、感染症の治療を目的とする場合、本発明の使用、方法、アジュバント組成物、ワクチン組成物、またはパーツキットは、抗生物質、抗真菌化合物、抗寄生虫化合物、および/または抗ウイルス化合物等の別の治療用化合物の使用と共に実施することができる。
【0082】
更に、本発明は、抗生物質、抗真菌剤、抗寄生虫剤、および/または抗ウイルス剤の治療効能を向上させる方法であって、上記で開示されている方法を共に用いて、そのような治療を必要とする患者を併用治療することを含んでなる方法に関する。
【0083】
別の実施形態では、本発明の使用、方法、アジュバント組成物、ワクチン組成物、またはパーツキットは、1以上の初回刺激組成物(群)および1以上の追加免疫組成物(群)の順次投与を含んでなるプライムブースト治療法により実施される。典型的には、初回刺激および追加免疫組成物には、少なくとも1つの共通した抗原性ドメインを含んでなるかまたはコードする異なる媒体が使用される。初回刺激組成物が、最初に宿主生物に投与され、その後追加免疫組成物が、1日〜12か月の範囲の期間後に同じ宿主生物に順次投与される。本発明の方法は、初回刺激組成物を1〜10回順次投与し、その後追加免疫組成物1〜10回順次投与することを含んでなる場合がある。望ましくは、注射間隔は、1週間〜6か月程度である。更に、初回刺激および追加免疫組成物は、同じ投与経路または異なる投与経路により同じ部位または別の部位に投与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1は、RNAseA処理を施したまたは施さなかった、1×TAE(Tris−酢酸−EDTA)緩衝液中のアガロースゲル(1%)でのNA画分、NA−B1画分、およびNA−B2画分を示す図である。
【図2】図2は、NA画分(25μg)またはNA−B2画分(0.4μg)とHPV16E7抗原(10μg)の皮下注射(0日目;7日目および14日目)から生じるイン・ビボELISpotガンマインターフェロン(IFN−γ)を示す図である。
【図3】図3は、3.10個のRenCa−MUC−1細胞を皮下注射(1日目)したB6D2マウスの腫瘍容積に対する、MUC1抗原およびhIL−2を発現する5.10pfuのMVA菌株(MVA9931)、および(その1時間後に)NA画分(50μg)を皮下投与(4日目、11日目、および18日目)した効果を示す図である。Na+Lipofectin(商標)(50μg+50μg)の腫瘍内(I.T.)投与(4日目、11日目、および18日目)の効果。腫瘍容積は、週二回測定した。
【図4】図4は、NA−B2画分(0.4μgまたは1.2μg)、Ambisome(商標)(120μg)、またはNA−B2+Ambisome(商標)(0.4μg+120μgまたは1.2μg+120μg)で処理したヒト未熟単球由来樹状細胞(moDC)におけるガンマインターフェロン(IFN−γ)の誘導を示す図である。
【図5】図5は、NA−B2画分(0.2μg)、Lipofectin(商標)(10μg)、Ambisome(商標)(80μg、120μg、または160μg)、NA−B2+Lipofectin(商標)(0.2μg+10μg)、およびNA−B2+Ambisome(商標)(0.2μg+120μg)で処理したヒト未熟moDCにおけるインターロイキン12(IL−12)の誘導を示す図である。
【図6】図6は、NA−B2画分(0.4μgまたは1.2μg)、Ambisome(商標)(120μgまたは240μg)、およびNA−B2+Ambisome(商標)(0.4μg+120μg、0.4μg+240μg、1.2μg+120μg、または1.2μg+240μg)で処理したヒト未熟moDCにおけるアルファインターフェロン(IFN−α)の誘導を示す図である。
【実施例】
【0085】
本発明を例示するために、以下の実施例が提供されている。実施例は、いかなる点でも本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0086】
実施例1:サッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分(NA画分)の調製。
【0087】
一定量の凍結サッカロマイセス・セレビシエ(S.c.)AH109(クロンテック社製)を、1%酵母抽出物、1%バクトペプトン、2%グルコース、2%寒天(BD Sciences社製)、および100μg/mlアデニン(Fluka社製 01830−5G)で構成されるYPGプレートに播種した。28°〜30℃で2日間増殖させた一定量のS.c.AH109をスパチュラで取り出し、100mlの液体YPG/アデニン培地に接種し、それを500mlバイアルに注いだ。28℃で撹拌(200rpm)しながら一晩インキュベーションした後、15mlのこの前培養物を、500mlのYPG/アデニン培地を含有する6つの2000mlバイアルにそれぞれ移した。これら培養物(合計で3リットル)を、28℃で撹拌(200rpm)しながら一晩インキュベートした。600nmで測定された光学濃度(OD600)が2+/−0.5の時に、培養物を、4℃で15分間3500rpmで遠心分離した(Sorvall社製遠心機、500mlチューブ)。
【0088】
細胞ペレットを、蒸留水、例えば3リットルの培養物からのペレット当たり1リットルの蒸留水で1回洗浄した。遠心分離した後(Sorvall社製、4℃で15分間、3500rpm)、その結果生じた懸濁液のOD600が約100になるように、細胞ペレットをPBSに溶解した(例えば、3リットルの培養物からの細胞ペレットを、40mlのPBSに溶解した)。この工程から、試料を常に冷却(4℃)し続け、30mlの前記細胞懸濁液を、125mlポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)フラスコに移し、30mlの滅菌ガラスビーズ(直径0.7mm)と混合した。混合物を、最高速度で1分間、氷上での1分間インキュベーションと交互させて、5回ボルテックスした(卓上型ボルテックスTOP MIX94323 BIOBLOCK Scientifique社製)。ガラスビーズの吸引を回避するために青色1000μl青色チップで延長された5mlガラスピペットを使用して、細胞溶解産物を回収し、ガラスビーズをすすぐために使用した10mlのPBSと共に50ml遠心分離チューブ(コーニング社製)に移した。
【0089】
細胞溶解産物を、4℃で10分間4000rpmで遠心分離し(Sorvall社製)、膜残屑および核をペレット化した。
【0090】
得られた上清を、12mlチューブでSW40ローターを用いて、4℃で90分間39000rpm(105000g)で超遠心分離して、ミトコンドリアをペレット化した。ペレットを、冷却PBSに溶解した(例えば、元々は9リットルだったS.c.培養物から得られたペレットを、100mlのPBSに溶解した)。その結果生じたミトコンドリア画分を、SNと称する。
【0091】
得られたSN画分をフェノールで処理して、タンパク質および脂質から核酸を抽出した。それに、等容積のTris緩衝化フェノール(Amresco社製)を添加して懸濁液にし、室温(RT)で1分間最高速度でボルテックスし、遠心分離した(例えば、Hareus社製遠心機を用いて、50mlファルコンチューブを、室温で10分間5000rpmで遠心分離した)。水性上部相を単離し、新しいチューブに移した。フェノール抽出を3回繰り返した。3回のフェノール抽出後に回収された水性上部相を、その後ジクロロメタン(p.A.;メルク社製)で2回抽出し、等容積のジクロロメタンを添加し、混合物を室温で30秒間ボルテックスし、遠心分離した(例えば、Hereaus社製遠心機を用いて、50mlファルコンチューブを室温で10分間5000rpmで遠心分離した)。水相を回収し、ジクロロメタン処理を繰り返した。
【0092】
核酸を、単離された上清からエタノール沈澱により回収した:上清容積の1/10の3M酢酸ナトリウムpH5、および2容積のエタノール(無水)を添加した。4℃で一晩インキュベーションした後、溶液を遠心分離した(例えば、Hareaus社製遠心機を用いて、50mlファルコンチューブを4℃で20分間)。ペレットを、70%冷却エタノールで洗浄した。完全に乾燥する前に、ペレットをTE pH7.5に溶解した{例えば、工程d)で得られた100ml懸濁液に由来するペレットを、20〜25mlのTE pH7.5に溶解し、その結果、260nmの光学濃度による測定で、約1μg/μlの核酸濃度がもたらされた}。その結果生じたミトコンドリア核酸画分をNA画分と称した。
【0093】
9リットルのS.c.培養物から開始した、サッカロマイセス・セレビシエの核酸画分(つまり、NA画分)の大規模調製を、上述の方法により独立して3回実施した。3つの調製物は、同等の特徴をもたらした。LALアッセイにより3つの調製物の全てで測定されたエンドトキシンレベルは、同等であり、低かった(0.5〜0.7EU/ml)。
【0094】
S.c.W303(Biochem社製)から開始した、サッカロマイセス・セレビシエの核酸画分(つまり、NA画分)の調製も実施した。
【0095】
NA画分−Lipofectin(商標)(以下の実施例において試験されることになる)を生成するために、NA画分(1μg/μl)を、1:1(容積:容積および重量:重量)の比率でLipofectin(商標)(1μg/μl;インビトロジェン社製、カタログ番号18292−011またはカタログ番号18292−037)と混合した。
【0096】
実施例2:NA画分からのミトコンドリアRNA(NA−B2画分)の単離。
【0097】
実施例1に記述されている方法により調製されたNA画分を、1×TAE(Tris−アセテート−EDTA)緩衝液中1%アガロースゲルに流した。
【0098】
図1に示されている結果は、DNAマーカーであるラムダ−HindIII/PhiX174−HaeIII(図1ではMと記されている)と比較して、以下の3つの群の核酸を明白に識別することができることを示す:
(1)20Kbp付近に移動する明瞭なバンド、これをNA−B1画分と称する;
(2)4Kbp付近に移動する明瞭なバンド、これをNA−B2画分と称する;および
(3)1000〜約100bpの間に移動する分子のスミア、これをNA−小型画分と称する。
【0099】
その後、NA−B1画分、NA−B2画分、およびNA−小型画分の精製は、低照度UVおよびメスを使用して、それぞれのバンドまたはバンド群をアガロースゲルから切り出すことにより実現した。切り出したアガロース片を、「二重チューブ構造体」(=加熱した針で底部に穴を開け、フィルターとして機能する綿で栓をした0.5mlチューブを、蓋を切り取った2mlチューブに挿入した)に移し、−60℃未満で凍結し、卓上型遠心分離機を用いて、室温で15分間5000rpmで遠心分離し(物質が完全に解凍されるまで)、その後14000rpmで2分間遠心分離した。下段チューブに回収された溶液を、新しいチューブに移した。核酸を、実施例1に記述されているように、酢酸ナトリウムおよびエタノールを使用して沈殿させた。ペレットを、TE pH7.5に溶解した。典型的には、アガロースゲルに流した3mgのNA画分から開始して、〜8μgのNA−B2画分を回収し、典型的には、TE pH7.5に溶解して20ng/μlの濃度にした。
【0100】
その後、NA画分、NA−B1画分、およびNA−B2画分を、RNAseA処理(100mg/ml:キアゲン社製)を施してまたは施さないで、1×TAE(Tris−アセテート−EDTA)緩衝液中1%アガロースゲルに流した。
【0101】
図1に示されている結果は、以下のことを示している:
(1) NA−B1画分は、HaelII感受性、RNAseA非感受性であることが判明し、NA−B1画分がDNAであることが実証された;
(2)NA−B2画分およびNA−小型画分は、HaelII非感受性、RNAseA感受性であり、これらの分子がRNAであることが実証された。
【0102】
S.c.AH109(クロンテック社製)から得られた画分およびS.c.W303(Biochem社製)から得られた画分で、同じ結果が得られた。
【0103】
NA−B2画分−Lipofectin(商標)(以下の実施例において試験されることになる)を生成するために、NA−B2画分(20ng/μl)を、1:1(容積:容積)の比率でLipofectin(商標)(1μg/μl;インビトロジェン社製、カタログ番号18292−011またはカタログ番号18292−037)と混合した。
【0104】
NA−B2画分−Ambisome(商標)(以下の実施例で試験されることになる)を生成するために、NA−B2画分(20ng/μl)を、1:1または1:3(容積:容積)の比率でAmbisome(商標)(4μg/μl;Gilead Sciences社製)と混合した。
【0105】
実施例3:NA画分およびNA−B2画分が、ヒトToll様受容体(TLR)を刺激する能力。
【0106】
細胞:ヒト胎児由来腎臓細胞293(HEK)を、1つまたは2つのヒト由来Toll様受容体(hTLR)の構成的発現を可能にするプラスミドで安定的にトランスフェクションした。その結果生じた細胞株293/hTLR2−CD14、293/hTLR3、293/hTLR4−MD2−CD14、293/hTLR5、293/hTLR2/6、293/hTLR7、293/hTLR8、および293/hTLR9は、InvivoGen社(サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)から購入した。細胞株は全て、10%ウシ胎仔血清、40μg/mlゲンタマイシン、2mMグルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム(シグマ社製)、および1×非必須アミノ酸(NEAA、ギブコ社製)で補完されたダルベッコ最少イーグル培地(DMEM)中、ブラスチシジンS(10μg/ml、InvivoGen社製)の存在下で培養した。293/hTLR2−CD14および293/hTLR4−MD2−CD14の場合、ヒグロマイシンBを100μg/mlの濃度になるように添加した。8つの細胞株は全て、NF−kB誘導可能レポータープラスミドであるpNiFty(InvivoGen社製)で安定的にトランスフェクションした。pNiFtyは、5つのNF−kB部位および近位ELAMプロモーターを組合せた遺伝子操作ELAM1プロモーターの制御下にホタルルシフェラーゼ遺伝子をコードしている。安定発現株を、100μg/mlゼオシン(InvivoGen社製)の存在下で選択した。出現したクローン「hTLRx−luc」を、それぞれの対照TLRリガンドに対するEC50および誘導倍数で特徴付けた。最も低いEC50および高い誘導倍数、ならびに良好な/許容される増殖挙動を示すクローンを選択した。確保されたクローンおよびそれらの特徴は、表1に列挙されている。
【0107】
【表1】

【0108】
対照細胞株293−luc−2−8(293−luc):HEK−293細胞を、NF−kB誘導可能レポータープラスミドpNiFty2で安定的にトランスフェクションした。安定発現株を、100μg/mlゼオシン(InvivoGen社製)の存在下で選択した。陽性クローン293−luc−2をサブクローンし、クローン293−luc−2−8を確保した。この対照細胞株は、NF−kB経路のTLR非依存性刺激の対照用に生成した。
【0109】
RT−PCR実験は、細胞株が全て、RLHファミリー(KR08001 p75、Renee Brandely、2008年10月)のメンバーであるrig−I(レチノイン酸誘導可能遺伝子1)およびmda−5(メラノーマ分化抗原5)メッセージに陽性であることを示した(データ省略)。加えて、細胞株が全て、供給業者によりMDA−5リガンドと記述され、調合されたPoly(I:C)「polyICLyoVec」(InvivoGen社製)により刺激することができた。この結果は、全ての細胞株(TLRおよび対照細胞株)でMDA−5が機能的であること示唆する。
【0110】
イン・ビトロにおけるTLR試験−方法:2%ウシ胎仔血清、40μg/mlゲンタマイシン、2mMグルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム(シグマ社製)、および1×MEM非必須アミノ酸(NEAA、ギブコ社製)で補完されたDMEMで希釈した細胞を、96穴プレートに播種した。翌日、NA画分(原液:1mg/ml)を、単独でまたはLipofectin(商標)と組合せてのいずれかで(実施例1に記述されているように)、16μg/mlの濃度およびその3倍系列希釈で添加した。陽性対照として、細胞株を、明確な量のそれぞれの基準リガンドで刺激した。刺激した1日(18〜20時間)後、125mM Tris pH7.8、10mM EDTA、5mM DTT、および5%トリトンX−100を含有する100μl緩衝液に細胞を溶解した。10μl溶解産物中のホタルルシフェラーゼ活性は、50μlルシフェラーゼ顕色緩衝液(1×ルシフェラーゼ顕色緩衝液:20mM Tris pH7.8、1.07mM MgCl、2.7mM MgSO、0.1mM EDTA、33.3mM DTT、470μMルシフェリン、530μM ATP、および270μM 補酵素A)を添加した後、フラッシュルミネセンスの測定を1秒間にわたって積分することにより定量化した(LB96 P Microlumat、ベルトールド社製)。その結果生じた相対発光量(RLU)を、対照リガンドと比較した誘導のパーセントとして表し、シグモイド型用量応答用の数式を使用して、Graph Pad Prism4ソフトウェアで分析した(EC50の決定)。
【0111】
イン・ビトロにおけるTLR試験 第1:NA画分の2つの独立したバッチ(ロット1:0.6EU/ml;ロット2:0.77EU/ml)を、単独でまたはLipofectin(商標)と組合せてのいずれかで、TLR細胞株および対照細胞株に対して、以前に記述されている方法により試験した。それぞれの対照リガンド(表1を参照)で観察されたもののパーセントで表された最大活性化は、表2に示されている。
【0112】
【表2】

【0113】
図2に示されている結果は、以下のことを示している:
(1)hTLR3、4、および7におけるNA画分で、活性化が観察される(ロット1ならびにロット2);
(2)NA単独で観察された活性化は、NAをLipofectin(商標)と混合すると、強力に増加する(ロット1ならびにロット2);
(3)Lipofectin(商標)単独、または1:1(重量:重量)の比率でニシン精子DNA(1μg/ml;シグマ社製)と混合したLipofectin(商標)は、いずれの細胞株も活性化しなかった。
【0114】
イン・ビトロにおけるTLR試験 第2:Lipofectin(商標)を添加する前にRNAseA(100mg/ml;キアゲン社製)で処理したNA−B1画分、NA−B2画分(1.3EU/ml)、およびNA画分(0.7EU/ml)を、TLR細胞株および対照細胞株に対して、以前に記述されている方法により試験した。結果は、表3に示されている。
【0115】
【表3】

【0116】
図3に示されている結果は、以下のことを示している:
(1) NA画分およびNA−B2画分は同様に、Lipofectin(商標)無しでも、293−lucを含む試験細胞株を刺激し、Lipofectin(商標)があればより強く刺激する;
(2)NA画分およびNA−Lipofectin(商標)による刺激は両方とも、NA画分をRNaseAで前処理した後で消失した。これは、活性分子がRNAであることを実証する。
(3)NA−B2画分およびNA−B2−Lipofectin(商標)による刺激は両方とも、NA−B2画分をRNaseAで前処理した後で消失した。これは、活性分子がRNAであることを実証する。
(4)NA−B1画分は、Lipofectin(商標)を有する場合もまたは有していない場合も、TLR細胞株を活性化しない;
(5)Lipofectin(商標)単独では効果を示さない。
【0117】
AH119(クロンテック社製)に由来するNA−B2で得られたHEK−293−TLR細胞株の活性化に関する結果は、S.c.系統W303(Biochem社製)に由来するNA−B2で得られた結果と同等である。
【0118】
実施例4:免疫応答をHPV16 E7抗原に対するTh1型応答に向けることを目的とする医薬組成物を調製するための、NA画分またはNA−B2画分およびHPV16 E7抗原の使用。
【0119】
動物モデル:SPF健常雌C57BL/6マウスを、チャールズ・リバー社(レ・ゾンサン、フランス)から取得した。動物は、到着時に6週齢だった。実験の開始時では、マウスは7週齢だった。動物は、毎時最低11回の空気交換を提供するように空調が施された一匹だけの単一の部屋に収容した。温度および相対湿度の範囲は、それぞれ20℃〜24℃および40〜70%であった。照明は、12時間の明期および12時間の暗期のサイクルをもたらすように自動的に制御した。特定病原体未感染状態を、歩哨動物を定期的に対照とすることにより検査した。研究の全体にわたって、動物は、滅菌食タイプRM1(Dietex France社製、サングラシアン)を自由摂取した。滅菌水を、ボトルにより自由摂取させた。
【0120】
イン・ビボにおけるELISpotガンマインターフェロン(IFN−γ)
【0121】
IFN−γ ELIspotアッセイは、イン・ビボで初回刺激したT細胞が、特定のペプチドを用いてイン・ビトロで再刺激した際にIFN−γを分泌する能力を測定するための機能性試験である。
【0122】
表4に記述されている調製物を、動物に1週間間隔で3回(0日目;7日目;14日目)(尾部の根元に)皮下注射した。
【0123】
【表4】

【0124】
その後、最後の注射をした7日後に動物を犠牲し、それらの脾細胞を使用して、再刺激の際にIFN−γを分泌するR9F特異的CD8+T細胞の頻度を測定した。
【0125】
ELISpotプレートを、滅菌DPBSで2.5μg/mlに希釈されたラット抗マウスIFN−γモノクローナル抗体(100μl/ウエル;BD Pharmingen社製、参照番号:551216)でコーティングした。その後プレートにカバーをかけ、室温で一晩か、または37℃で4時間か、または4℃で24時間のいずれかでインキュベートした。その後、滅菌PBS(200μl/ウエル)で5回の洗浄を実施した。その後プレートを、200μl/ウエルの完全培地を用いて37℃で1時間ブロッッキングした。
【0126】
実験用のリンパ球を調製するために、5mlの完全培地(RPMI;FBS10%;40μg/mlゲンタマイシン;2mMグルタミン;5×10−5M b−メルカプトエタノール)を、6穴プレートの各ウエルに入れた。同じ群のマウスからの脾臓を、6穴培養プレートのウエル中のセルストレーナー(BD Bioscience社製;参照番号352360)に貯溜した。脾臓を注射器ピストンで粉砕し、セルストレーナーを廃棄した。脾細胞を5mlの完全培地で収集し、その後氷上の15mlファルコンチューブに移した。その後400×gで3分間、室温(22℃)での遠心分離を実施した。細胞を、8mlの完全培地に室温で再懸濁した。8mlのリンパ球または脾細胞懸濁物を、4mlのLympholyte(商標)−M分離細胞培地(TEBU BIO社製、参照番号:CL5031)上に置いた。その後1500×gで20分間、室温(22℃)での遠心分離を実施した。リンパ球を収集し、叩いて、10mlのRPMI最少培地で3回すすいだ。遠心分離(400×gで3分間)を、すすぎ工程の各々の間に実施し、上清を廃棄した。その後リンパ球を、2mlのRBC溶解緩衝剤(BD Pharmingen社製;参照番号555899)に再懸濁した。溶解溶液を添加した直後に各チューブを穏やかにボルテックスし、その後15分間室温でインキュベートした。その後400×gで3分間の遠心分離を実施し、上清を廃棄した。細胞を10mlの完全培地で洗浄し、その後400×gで3分間遠心分離した。上清を廃棄した。6ml(ペレットの大きさに依存する)の完全培地に細胞を再懸濁した後、細胞を、Malassez cell上で計数し、細胞濃度を、完全培地で1ml当たり1×10細胞に調整した。
【0127】
ELISpotアッセイそれ自体は、以下の通りに実施する:2〜4μg/mlの目的ペプチド(つまり、HPV16E7ペプチド抗原)を有するまたは有しない100μlの完全培地を、各ウエル添加した。100μlの細胞懸濁液を添加した。5%CO中、37℃で20時間インキュベーションした後、HO洗浄緩衝液(PBS、1%PBS)で洗浄工程を2回実施し、その後PBS洗浄緩衝液での洗浄工程を5回実施した(軽く叩いて乾燥させた)。ビオチン化ラット抗マウスIFN−γモノクローナル抗体(BD Pharmingen社製、参照番号:554410)を、抗体混合緩衝液で4μg/mlに希釈し、100μl/ウエルで分注した。プレートを、暗所で2時間室温でインキュベートした。PBS洗浄緩衝液(PBS、0.05%Tween20)での洗浄工程を5回実施した(軽く叩いて乾燥させた)。その後、ストレプトアビジン−アルカリホスファターゼを、抗体混合緩衝液で希釈した(1/1000)。100μl/ウエルで添加し、暗所で1時間室温でインキュベートした。PBS洗浄緩衝液での洗浄工程を5回実施し、その後PBSでの洗浄工程を2回実施した(軽く叩いて乾燥させた)。その後、100μl/ウエルのBCIP/NBT(シグマ社製;参照番号B5655)を添加し、青色スポットが発色するまで(最高2分間)、室温でインキュベートした。水でよくすすいだ後(軽く叩いて乾燥させた)、ELISpot読取器でELISpotプレートの分析を実施した。視覚的な品質管理(スキャンとプレートとの比較)を各ウエルに対して実施し、コンピューターからもたらされた計数が実際の画像と一致することを保証した(考え得るアーティファクトの排除)。生データをヒストグラムグラフに変換した。結果は、各三重重複測定毎の、1×10個のリンパ球当たりのスポット形成単位(sfu)の数(平均)として表されている。カットオフは、非再刺激ウエルを使用し、式:[平均(非再刺激ウエル)]+[2×SD(非再刺激ウエル)]を使用して決定した。非特異的なバックグラウンドレベルは、無関係なI8Lペプチド(HPV16E1)を用いた再刺激により明らかにする。
【0128】
図2に示されている結果は、以下のことを示す:
(1)HPV16E7を注射した際には、IFN−γを分泌するR9F特異的(HPV16E7タンパク質)T細胞は存在しない;
(2)HPV16E7タンパク質にNA画分(25μg)またはNA−B2画分(0.4μg)を添加した後では、IFN−γを分泌するR9F特異的細胞のレベルは顕著である。NA画分およびNA−B2画分には、再刺激の際にTh1サイトカインIFN−γを分泌することができる循環CD8+T細胞の頻度増加を顕著にもたらすアジュバント能力が賦与されている。
【0129】
実施例5:癌の治療を目的とする医薬組成物を調製するためのNA画分およびMUC−1抗原の使用。
【0130】
各ベクター構築体の名称および簡単な説明(表5を参照)。
【0131】
【表5】

【0132】
使用した動物モデルは、実施例3に記述したように、SPF健常雌B6D2マウスであった。
【0133】
RenCa−MUC−1腫瘍細胞:RenCaは、実験的マウス腎臓癌モデルである(Chakrabarty A. et al. Anticancer Res. 1994; 14:373-378;Salup R. et al. Cancer Res 1986 46: 3358-3363)。RenCa−MUC−1細胞を、MUC−1ペプチドを発現するプラスミドのトランスフェクション後に得た。そのような細胞は、それらの表面にMUC1抗原を発現した。RenCa−MUC−1細胞を、10%不活化ウシ胎仔血清、2mM L−グルタミン、0.04g/l ゲンタマイシン、および0.6mg/ml ヒグロマイシンを含有するDMEM中で培養した。
【0134】
免疫化:免疫療法実験の場合、1日目に、B6D2雌マウスを、3.10個のRenCa−MUC−1細胞を用いて右側腹の皮下に投与した。マウスを、媒体単独(緩衝液)、5.10pfuのMVA−ヌル(MVAN33)、NA画分(50μg)、Lipofectin(商標)(50μg;インビトロジェン社製、カタログ番号18292−011またはカタログ番号18292−037)、Na+Lipofectin(商標)(50μg+50μg)、単独、またはNA画分(50μg)もしくはNA+Lipofectin(商標)(50μg+50μg)と組合せたMUC1およびhlL−2を発現する5.10pfuのMVA株(MVA9931)を、4日目、11日目、および18日目に、3回皮下処置した(1群当たり13匹のマウス)。マウスを、4日目、11日目、および18日目に、Na+Lipofectin(商標)(50μg+50μg)のみで3回腫瘍内処置した。注射スキーム:MVA9931を最初に注射した;1時間後にNA画分またはNA+Lipofectin(商標)を同じ部位に注射した。マウスの生存をモニターした。また、カリパスを使用して、腫瘍容積を週2回モニターした。腫瘍サイズが直径25mmより大きくなった時、マウスを道義的理由で安楽死させた。
【0135】
統計:カプラン−マイヤー生存曲線を、Stastistica 7.1ソフトウェア(StatSoft社製)を使用して、ログランク検定により分析し、特定の対比較を行った。P<0.05を、統計的に有意であるとみなした。
【0136】
図3に示されている結果は、未処置対照と比較して、NA画分(50μg)またはNa+Lipofectin(商標)(50μg+50μg)と組合せたMVATG9931が、20日目(p:0.007752)および25日目(p:0.023046)に、腫瘍増殖に対して統計学的に有意な効果を示したことを示している。
【0137】
実施例6:NA−B2画分、Lipofectin(商標)、Ambisome(商標)、NA−B2+Lipofectin(商標)、および/またはNA−B2+Ambisome(商標)で処理されたヒト未熟単球由来樹状細胞(moDC)におけるサイトカイン ガンマインターフェロン(IFN−γ)、インターロイキン12(IL−12)、およびアルファインターフェロン(IFN−α)の誘導。
【0138】
細胞培養:健常志願者に由来する洗い分けされたヒト単球を、Etablissement Francais du Sang−Alsace(EFS)から取得した。凍結細胞を、1×10細胞/mlの濃度で、10%不活化ウシ胎仔血清、40μg/mlゲンタマイシン(シグマ社製)、2mM L−グルタミン(シグマ社製)、1mMピルビン酸ナトリウム(シグマ社製、S8636)、および1×非必須アミノ酸(MEM NEAA、ギブコ社製)で補完されたRPMI(ギブコ社製)の培養に入れた。洗い分けされた単球の樹状細胞(moDC)への分化を誘導するために、サイトカインGM−CSF(20ng/ml)、およびIL−4(10ng/ml)(ペプロテック社製)を添加した。3日後、細胞を計数し、遠心分離し、1×10細胞/mlの密度で新しい補完培地に入れた。2×10細胞を、12ウェルプレート(2ml/ウエル)に播種した。更に2〜3日後、未熟moDCとみなされた細胞を、下記に示されているように感染させおよび/または刺激した。
【0139】
刺激:NA−B2画分、Lipofectin(商標)(インビトロジェン社製、カタログ番号18292−011またはカタログ番号18292−037)、およびAmbisome(商標)(ギリアドサイエンシズ社製)を、moDCに添加した。16〜20時間後、細胞を遠心分離し、上清を−20℃で保管し、ELISAで分析した。
【0140】
Elisaによるサイトカインの検出:16〜20時間刺激した後、Bender Med System社から市販されているELISAキットを使用して、サイトカイン産生量を測定した(IFNγ、IL12(p70)、およびIFNα)。ELISAアッセイを、製造業者のプロトコールに従って実施した。サイトカイン濃度を、既知量の組換えサイトカインを使用して得られた検量線により測定した。
【0141】
結果:
【0142】
ガンマインターフェロン(IFN−γ)図4に示されているように、ガンマインターフェロン発現は、NA−B2画分単独(0.4μgまたは1.2μg)およびAmbisome(商標)単独(120μg)により誘導されたが、NA−B2画分1.2μgでヒト未熟moDCを処理することにより得られたガンマインターフェロン発現レベルは、Ambisome(商標)120μgでヒト未熟moDCを処理することにより得られたガンマインターフェロン発現レベルより高い。更に、まとめると、NA−B2画分およびAmbisome(商標)(0.4μg+120μgまたは1.2μg+120μg)は、相乗効果的様式でガンマインターフェロン発現を増加させる。
【0143】
インターロイキン12(IL−12)図5に示されているように、NA−B2画分0.2μgで処理されたヒト未熟moDCは、IL−12をわずかに産生するが、Lipofectine(商標)10μgまたはAmbisome(商標)80μg、120μg、もしくは160μgで処理されたヒト未熟moDCは、IL−12を分泌しない。ヒト未熟moDCsに添加されたNA−B2+Lipofectin(商標)の組合せ(0.2μg+10μg)およびNA−B2+Ambisome(商標)の組合せ(0.2μg+120μg)は、IL−12の分泌を明らかに刺激する(相乗効果)。
【0144】
アルファインターフェロン(IFN−α)図6に示されているように、NA−B2画分単独(0.4μgまたは1.2μg)、Ambisome(商標)単独(120μg)、およびNA−B2+Ambisome(商標)の組合せ(0.4μg+120μgまたは1.2μg+120μg)は、αインターフェロン(IFN−α)を誘導しない。
【0145】
上記の明細書で引用された文書(例えば、特許、特許出願、出版物)は全て、参照により本明細書に組込まれる。当業者であれば、本発明の範囲および趣旨から逸脱しない本発明の種々の改変および変異は明白であろう。本発明は特定の好ましい実施形態に関して記述されているが、請求されている本発明は、そのような特定の実施形態に過度に限定されるべきでないことが理解されるべきである。実際、当業者に明白である、本発明を実施するための記述されている方法の種々の改変は、添付の特許請求の範囲内にあることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫応答を抗原に対するTh1型応答に向けることを目的とする医薬組成物の調製のための、サッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分および抗原の使用であって、前記サッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分が、
a)サッカロマイセス・セレビシエを、それらの増殖を可能にする培地で培養し、その後前記培養物を遠心分離する工程、
b)工程a)で得られたサッカロマイセス・セレビシエのペレットを粉砕する工程、
c)工程b)で得られた混合物を遠心分離する工程、
d)工程c)で得られた上清を超遠心分離する工程、
e)工程d)で得られたペレットから核酸を抽出する工程、
f)工程e)で得られた上清から核酸画分を回収する工程
を含んでなる方法により調製される、使用。
【請求項2】
核酸が、リボ核酸(RNA)である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
抗原が、腫瘍関連抗原(TAA)、感染性生物に特異的な抗原、およびアレルゲンに特異的な抗原からなる群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
抗原が、ペプチド、核酸、脂質、リポペプチド、およびサッカライドからなる群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
TAAが、MUC−1である、請求項3に記載の使用。
【請求項6】
感染性生物に特異的な抗原が、ヒトパピローマウィルス(HPV)に特異的な抗原、好ましくはHPV−16および/またはHPV−18に特異的な抗原、ならびにより好ましくはHPV−16および/またはHPV−18のE6初期コード領域、HPV−16および/またはHPV−18のE7初期コード領域、ならびにそれらの一部または組合せからなる群から選択される抗原である、請求項3に記載の使用。
【請求項7】
抗原が、好ましくはプラスミドまたはウイルスベクターから選択されるベクターに含まれる、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
ウイルスベクターが、ポックスウイルス、好ましくはワクシニアウイルス、およびより好ましくは修飾ワクシニアウイルスAnkara(MVA)、またはそれらの誘導体から得られる、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
ウイルスベクターが、アデノウイルス、アデノウイルス関連ウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、アルファウイルス、または泡沫状ウイルス、またはそれらの誘導体から得られる、請求項7に記載の使用。
【請求項10】
抗原が核酸である場合、ベクターが、抗原の発現に必要なエレメントを更に含んでなる、請求項7に記載の使用。
【請求項11】
医薬組成物が、トランスフェクション効率、および/または前記サッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分および/または抗原の安定性を向上させ、好ましくは、脂質、リポソーム、サブミクロンの水中油型エマルジョン、マイクロ粒子、ISCOM、およびポリマーからなる群から選択される、1以上の作用剤を更に含んでなる、請求項1に記載の使用。
【請求項12】
リポソームが、好ましくはジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)、およびリポソームアムホテリシンB、またはそれらの組合せから選択される陽イオン性リポソームである請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記組合せが、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)およびN−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
癌、感染症、アレルギーおよび/または自己免疫障害の、予防および/または処置を目的とする医薬組成物を調製するための、請求項1に記載の使用。
【請求項15】
(i) a)サッカロマイセス・セレビシエを、それらの増殖を可能にする培地で培養し、その後前記培養物を遠心分離する工程、
b)工程a)で得られたサッカロマイセス・セレビシエのペレットを粉砕する工程、
c)工程b)で得られた混合物を遠心分離する工程、
d)工程c)で得られた上清を超遠心分離する工程、
e)工程d)で得られたペレットから核酸を抽出する工程、
f)工程e)で得られた上清から核酸画分を回収する工程
を含んでなる方法により調製されるサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分と、
(ii)リポソームアムホテリシンBと
を含んでなる相乗効果を有するアジュバント組成物。
【請求項16】
(i) a)サッカロマイセス・セレビシエを、それらの増殖を可能にする培地で培養し、その後前記培養物を遠心分離する工程、
b)工程a)で得られたサッカロマイセス・セレビシエのペレットを粉砕する工程、
c)工程b)で得られた混合物を遠心分離する工程、
d)工程c)で得られた上清を超遠心分離する工程、
e)工程d)で得られたペレットから核酸を抽出する工程、
f)工程e)で得られた上清から核酸画分を回収する工程
を含んでなる方法により調製されるサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分と、
(ii)リポソームアムホテリシンBと、
(iii)抗原と
を含んでなる相乗効果を有するワクチン組成物。
【請求項17】
(i) a)サッカロマイセス・セレビシエを、それらの増殖を可能にする培地で培養し、その後前記培養物を遠心分離する工程、
b)工程a)で得られたサッカロマイセス・セレビシエのペレットを粉砕する工程、
c)工程b)で得られた混合物を遠心分離する工程、
d)工程c)で得られた上清を超遠心分離する工程、
e)工程d)で得られたペレットから核酸を抽出する工程、
f)工程e)で得られた上清から核酸画分を回収する工程
を含んでなる方法により調製されるサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分と、
(ii)ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)およびN−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)と
を含んでなる相乗効果を有するアジュバント組成物。
【請求項18】
(i) a)サッカロマイセス・セレビシエを、それらの増殖を可能にする培地で培養し、その後前記培養物を遠心分離する工程、
b)工程a)で得られたサッカロマイセス・セレビシエのペレットを粉砕する工程、
c)工程b)で得られた混合物を遠心分離する工程、
d)工程c)で得られた上清を超遠心分離する工程、
e)工程d)で得られたペレットから核酸を抽出する工程、
f)工程e)で得られた上清から核酸画分を回収する工程
を含んでなる方法により調製されるサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分と、
(ii)ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)およびN−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)と、
(iii)抗原と
を含んでなる相乗効果を有するワクチン組成物。
【請求項19】
少なくとも1つのサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分を含有する容器と、少なくとも1つの抗原を含有する容器と、前記成分の投与タイミングに関する説明書とを含んでなるパーツキット。
【請求項20】
少なくとも1つのサッカロマイセス・セレビシエのミトコンドリア核酸画分を含有する容器と、少なくとも1つの抗原を含有する容器と、トランスフェクション効率および/またはサッカロマイセス・セレビシエミトコンドリア核酸画分および/または抗原の安定性を改善する少なくとも1つの作用剤を含有する容器と、前記成分の投与タイミングに関する説明書とを含んでなるパーツキット。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【公表番号】特表2012−515146(P2012−515146A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544869(P2011−544869)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050150
【国際公開番号】WO2010/081766
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(599082883)トランジェーヌ、ソシエテ、アノニム (32)
【氏名又は名称原語表記】TRANSGENE S.A.
【Fターム(参考)】