免疫機能の調節
i)Notchシグナル伝達経路の調節因子の有効量;およびii)免疫抑制剤の有効量:を同時に、同時期に、別々にまたは順次に投与することを含む、哺乳類において免疫系を調節するための方法が記載される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫機能の調節に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第98/20142号パンフレットは、Notchシグナル伝達経路の操作を、免疫療法にならびにT細胞媒介性疾患の予防および/または治療に用いる方法を記載する。特に、アレルギー、自己免疫、移植片拒絶、腫瘍によって誘導されたT細胞系の異常、および感染症を標的とすることができる。
【0003】
また、抗原特異的寛容を他のT細胞へ伝達することができる調節T細胞の一種を生じることが可能であることも示されており、伝染性寛容と呼ばれる過程である(国際公開第98/20142号パンフレット)。
【0004】
Notchシグナル伝達経路の説明およびそれによって影響される条件は、たとえば、下記の我々の公開されたPCT出願に見出すことができる;
PCT/GB97/03058(出願日1997年11月6日、国際公開第98/20142号;出願日1996年11月7日の英国特許第9623236.8号、出願日1997年7月24日の英国特許第9715674.9号、および出願日1997年9月11日の英国特許第9719350.2号の優先権を主張);
PCT/GB99/04233(出願日1999年12月15日、国際公開第00/36089号;出願日1999年12月15日の英国特許第9827604.1号の優先権を主張);
PCT/GB00/04391(出願日2000年11月17日、国際公開第0135990号;出願日1999年11月18日の英国特許第9927328.6号の優先権を主張);
PCT/GB01/03503(出願日2001年8月3日、国際公開第02/12890号;出願日2000年8月4日の英国特許第0019242.7号の優先権を主張);
PCT/GB02/02438(出願日2002年5月24日、国際公開第02/096952号;出願日2001年5月25日の英国特許第0112818.0号の優先権を主張);
PCT/GB02/03381(出願日2002年7月25日、国際公開第03/012111号;出願日2001年7月25日の英国特許第0118155.1号の優先権を主張);
PCT/GB02/03397(出願日2002年7月25日、国際公開第03/012441号;出願日2001年7月25日の英国特許第0118153.6号、出願日2002年4月5日の英国特許第0207930.9号、出願日2002年5月28日の英国特許第0212282.8号および出願日2002年5月28日の英国特許第0212283.6号の優先権を主張);
PCT/GB02/03426(出願日2002年7月25日、国際公開第03/011317号;出願日2001年7月25日の英国特許第0118153.6号、出願日2002年4月5日の英国特許第0207930.9号、出願日2002年5月28日の英国特許第0212282.8号および出願日2002年5月28日の英国特許第0212283.6号の優先権を主張);
PCT/GB02/04390(出願日2002年9月27日、国際公開第03/029293号;出願日2001年9月28日の英国特許第0123379.0号の優先権を主張);
PCT/GB02/05137(出願日2002年11月13日、国際公開第03/041735号;出願日2001年11月14日の英国特許第0127267.3号、出願日2002年7月25日のPCT/GB02/03426号、出願日2002年9月7日の英国特許第0220849.4号、出願日2002年9月10日の英国特許第0220913.8号および出願日2002年9月27日のPCT/GB02/004390号の優先権を主張);
PCT/GB02/05133(出願日2002年11月13日、国際公開第03/042246号;出願日2001年11月14日の英国特許第0127271.5号および出願日2002年9月10日の英国特許第0220913.8号の優先権を主張)。
【0005】
PCT/GB97/03058号(国際公開第98/20142号)、PCT/GB99/04233号(国際公開第00/36089号)、PCT/GB00/04391号(国際公開第0135990号)、PCT/GB01/03503号(国際公開第02/12890号)、PCT/GB02/02438号(国際公開第02/096952号)、PCT/GB02/03381号(国際公開第03/012111号)、PCT/GB02/03397号(国際公開第03/012441号)、PCT/GB02/03426号(国際公開第03/011317号)、PCT/GB02/04390号(国際公開第03/029293号)、PCT/GB02/05137号(国際公開第03/041735号)およびPCT/GB02/05133号(国際公開第03/042246号)のそれぞれは参照により本開示に含まれる。
【0006】
ホイネ(Hoyne)G.F.他(1999)Int Arch Allergy Immunol 118:122−124;ホイネ他(2000)Immunology 100:281−288;ホイネ,G.F.他(2000)Intl Immunol 12:177−185;ホイネ,G.他(2001)Immunological Reviews 182:215−227もまた参照される;そのそれぞれもまた参照により本開示に含まれる。
【0007】
本発明は、免疫系を調節するためのさらなる方法を提供することを目指す。
【0008】
ラパマイシン、シクロスポリンAおよびFK506といったイムノフィリン結合性免疫抑制剤は、免疫抑制作用を示すことが知られており、したがって移植片拒絶といった症状の治療のために一般に用いられている。
【0009】
免疫活性ステロイドは免疫抑制作用を示すことが知られており、たとえば、炎症性疾患の治療のために一般に用いられている。
【0010】
現在、そのような免疫抑制剤の免疫抑制作用はNotchシグナル伝達経路の調節因子の免疫調節作用を妨害しないこと、およびさらに、特にサイトカインプロファイルに関して、予想外に改善された活性のスペクトルおよび/または選択性を提供するためにそのような薬剤の組み合わせを使用しうることが見出されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の最初の一態様によると、免疫系の調節を目的とした同時の、同時期の、別々のまたは順次の使用のための組み合わせ調製物として、Notchシグナル伝達経路の調節因子(ここでは「Notchシグナル伝達の調節因子」ともいう)および免疫抑制剤を含む製品が提供される。
【0012】
本発明の別の一態様によると、Notchシグナル伝達経路の調節因子の有効量および免疫抑制剤の有効量を同時に、同時期に、別々にまたは順次に投与することを含む、哺乳類において免疫系を調節する方法が提供される。
【0013】
本発明の別の一態様によると、免疫系の調節における、同時の、同時期の、別々のまたは順次の使用のための、Notchシグナル伝達経路の調節因子と免疫抑制剤との組み合わせが提供される。
【0014】
本発明の別の一態様によると、免疫系の調節における免疫抑制剤との、同時の、同時期の、別々のまたは順次の組み合わせでの使用のための、Notchシグナル伝達経路の調節因子が提供される。
【0015】
本発明の別の一態様によると、免疫系の調節のための薬剤の製造における、Notchシグナル伝達経路の調節因子と免疫抑制剤との組み合わせの使用が提供される。
【0016】
本発明の別の一態様によると、免疫系の調節のための薬剤の製造における、免疫抑制剤と、同時に、同時期に、別々にまたは順次に組み合わせての、Notchシグナル伝達経路の調節因子の使用が提供される。
【0017】
本発明の別の一態様によると、Notchシグナル伝達経路の調節因子、および免疫抑制剤を含むキットが提供される。
【0018】
本発明の別の一態様によると、未処置T細胞を刺激シグナルおよび適当な量のNotchシグナル伝達の調節因子と免疫抑制剤との組み合わせに接触させ、調節T細胞への分化を促進することを含む、免疫系の調節のための方法が提供される。
【0019】
本発明の方法、製品、および用途は、生物学的または治療的効果の促進を提供する。ここで用いられる「生物学的または治療的効果の促進」の語は、たとえば、効力の増大、有効性の増大、副作用の減少、活性スペクトルの改善、などを含む。
【0020】
好ましい一実施形態では、免疫抑制剤はイムノフィリン結合性免疫抑制剤である。
【0021】
好ましい一実施形態では、免疫抑制剤は免疫学的に活性なステロイドである。
【0022】
一実施形態ではNotchシグナル伝達経路の調節因子およびイムノフィリン結合性免疫抑制剤または免疫学的に活性なステロイドは、相乗的な(適切には優加法的な)量で用いられる。これは、必要に応じて、より少ない量の活性物質を用いることができるという特有の長所を持つ。
【0023】
本発明の別の一態様によると、1つの処置手順でNotchシグナル伝達の調節因子の有効量を投与する;および別の処置手順で免疫抑制剤の有効量を投与する段階を(任意の順序で)含む、免疫系を調節するための方法が提供される。
【0024】
本発明の別の一態様によると、1つの処置手順でNotchシグナル伝達の調節因子の相乗作用的に有効な量を投与する;および別の処置手順で免疫抑制剤の相乗作用的に有効な量を投与する段階を(任意の順序で)含む、免疫系を調節するための方法が提供される。
【0025】
適切にはイムノフィリン結合性免疫抑制剤はシクロフィリンへ結合することによって作用しうる。
【0026】
代替的にイムノフィリン結合性免疫抑制剤はマクロフィリン/FKBPへ結合することによって作用しうる。
【0027】
代替的にイムノフィリン結合性免疫抑制剤はmTORまたはRAPTORへ結合することによって作用しうる。
【0028】
適切にはイムノフィリン結合性免疫抑制剤はラパマイシンまたはラパマイシン誘導体を含む。
【0029】
代替的に、または加えて、イムノフィリン結合性免疫抑制剤はシクロスポリンまたはシクロスポリン誘導体を含む。
【0030】
代替的に、または加えて、イムノフィリン結合性免疫抑制剤はFK506(タクロリムス)またはFK506誘導体を含む。
【0031】
好ましくはNotchシグナル伝達経路の調節因子 (「Notchシグナル伝達の調節因子」)はNotchシグナル伝達を活性化することができる物質である。好ましくはその物質は、リンパ球、好ましくはT細胞において、Notchシグナル伝達を活性化することができる。
【0032】
好ましくはNotchシグナル伝達経路の調節因子は、Notch1、Notch2、Notch3またはNotch4受容体といったNotch受容体を活性化することができる物質である。適切には、たとえば、その調節因子は、Notchリガンド、またはNotchリガンドの生物学的に活性な断片または誘導体、またはそのようなNotchリガンドのペプチドミメティックでありうる。好ましくはその物質は好ましくは哺乳類で、好ましくはヒトで、T細胞といったリンパ球において、Notch受容体を活性化することができる。
【0033】
適切にはNotchシグナル伝達経路の調節因子は、融合タンパク質を含みうるかまたは融合タンパク質をコードしうる。たとえば、調節因子はNotchリガンド細胞外ドメインのセグメントおよび免疫グロブリンFcセグメントを含む融合タンパク質を含みうるかまたはコードしうる。
【0034】
適切にはNotchシグナル伝達経路の調節因子は、Notchリガンド細胞外ドメインのセグメントおよび免疫グロブリンFcセグメント(たとえばIgG1 FcまたはIgG4 Fc)を含む融合タンパク質、またはそのような融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むことができる。適切なそのような融合タンパク質は、たとえば国際公開第98/20142号パンフレットの実施例2に記載されている。IgG融合タンパク質は、たとえば、米国特許第5428130号明細書(ジェネンテック社(Genentech))に記載のように、本分野でよく知られている通りに調製することができる。
【0035】
適切にはNotchシグナル伝達経路の調節因子は、NotchリガンドDSLまたはEGFドメイン、またはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体を含むタンパク質またはポリペプチドを含むかまたはコードする。
【0036】
好ましくはNotchシグナル伝達経路の調節因子は、1個のNotchリガンドDSLドメインおよび少なくとも1個のEGF様ドメイン、適切には少なくとも2個、適切には少なくとも3個、たとえば少なくとも3ないし16個またはより多くのEGF様ドメインを含むかまたはコードする。適切にはそのDSLおよびEGF配列は哺乳類配列であるかまたは哺乳類配列に対応する。好ましい配列はヒト配列を含む。
【0037】
代替的に、または加えて、Notchシグナル伝達経路の調節因子は、Notch細胞内ドメイン(NotchIC)またはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体、または、Notch細胞内ドメインまたはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体をコードするポリヌクレオチド配列を含みうる。
【0038】
適切にはNotchシグナル伝達経路の調節因子は、Deltaまたはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体、または、Deltaまたはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0039】
代替的に、または加えて、Notchシグナル伝達経路の調節因子は、Serrate/Jaggedまたはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体、または、Serrate/Jaggedまたはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体をコードするポリヌクレオチドを含みうる。
【0040】
代替的に、または加えて、Notchシグナル伝達経路の調節因子は、Notchまたはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体、または、Notchまたは断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体をコードするポリヌクレオチドを含みうる。
【0041】
代替的に、または加えて、Notchシグナル伝達経路の調節因子は、Notchシグナル伝達抑制因子の優性阻害型、またはNotchシグナル伝達抑制因子の優性阻害型をコードするポリヌクレオチドを含みうる。
【0042】
代替的に、または加えて、Notchシグナル伝達経路の調節因子は、NotchリガンドまたはNotchシグナル伝達経路の下流構成成分の発現または活性をアップレギュレートすることができるポリペプチド、またはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含みうる。
【0043】
適切にはNotchシグナル伝達経路の調節因子は、抗体、抗体断片または抗体誘導体、または、抗体、抗体断片または抗体誘導体をコードするポリヌクレオチドを含みうる。
【0044】
適切にはNotchシグナル伝達の調節因子は多量体化型で投与することができる。たとえば、一実施形態ではNotchシグナル伝達の調節因子は膜または担体に結合しうる。適切には複数または多数の調節因子(たとえば少なくとも5)が膜または担体に結合する。そのような膜または担体は本分野で既知であるものから選択することができる。好ましい一実施形態では、その担体は粒子状担体マトリクスである。さらにより好ましい一実施形態では、その担体はビーズである。そのビーズは、たとえば、磁気ビーズ(たとえば「ダイナル(Dynal)」の商品名で入手可能である通りの)、またはセファロース(Sepharose)ビーズといったポリマー性ビーズであることができる。
【0045】
記載の適切な活性物質は、抗原または抗原決定基(たとえばアレルゲン、移植抗原または自己抗原)または抗原または抗原決定基をコードするポリヌクレオチドと、前記抗原または抗原決定基に対する免疫反応を調節するように、好ましくは低下するように、同時の、別々の、または順次の組み合わせで投与される。
【0046】
好ましい一実施形態では本発明は:
i)ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体;および
ii)適切にはNotchリガンドDSLドメインおよび少なくとも1個のEGF様ドメイン、適切には少なくとも1ないし20、適切には少なくとも2ないし16、たとえば少なくとも2ないし10個のEGF様ドメインを含むかまたはコードする活性化因子である、Notch受容体の活性化因子;
および随意的に抗原または抗原決定基、または抗原または抗原決定基をコードするポリヌクレオチド
の組み合わせを用いる。
【0047】
別の一実施形態では、本発明は:
i)シクロスポリンまたはシクロスポリン誘導体;および
ii)適切にはNotchリガンドDSLドメインおよび少なくとも1個のEGF様ドメイン、適切には少なくとも1ないし20、適切には少なくとも2ないし16、たとえば少なくとも2ないし10個のEGF様ドメインを含むかまたはコードする活性化因子である、Notch受容体の活性化因子;
および随意的に抗原または抗原決定基、または抗原または抗原決定基をコードするポリヌクレオチド
の組み合わせを用いる。
【0048】
別の一実施形態では本発明は:
i)FK506またはFK506誘導体;および
ii)適切にはNotchリガンドDSLドメインおよび少なくとも1個のEGF様ドメイン、適切には少なくとも1ないし20、適切には少なくとも2ないし16、たとえば少なくとも2ないし10個のEGF様ドメインを含むかまたはコードする活性化因子である、Notch受容体の活性化因子;
および随意的に抗原または抗原決定基、または抗原または抗原決定基をコードするポリヌクレオチド
の組み合わせを用いる。
【0049】
本発明の別の一態様によると、イムノフィリン結合性免疫抑制剤は、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体およびシクロスポリンまたはシクロスポリン誘導体の組み合わせを含む。
【0050】
別の一実施形態によると、本発明は:
i)ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体;
ii)シクロスポリンまたはシクロスポリン誘導体;および
iii)適切にはNotchリガンドDSLドメインおよび少なくとも1個のEGF様ドメイン、適切には少なくとも1ないし20、適切には少なくとも2ないし16、たとえば少なくとも2ないし10個のEGF様ドメインを含むかまたはコードする活性化因子である、Notch受容体の活性化因子;
および随意的に抗原または抗原決定基、または抗原または抗原決定基をコードするポリヌクレオチド
の組み合わせを用いる。
【0051】
別の一実施形態によると、本発明は:
i)ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体;
ii)FK506またはFK506誘導体;および
iii)適切にはNotchリガンドDSLドメインおよび少なくとも1個のEGF様ドメイン、適切には少なくとも1ないし20、適切には少なくとも2ないし16、たとえば少なくとも2ないし10個のEGF様ドメインを含むかまたはコードする活性化因子である、Notch受容体の活性化因子;
および随意的に抗原または抗原決定基、または抗原または抗原決定基をコードするポリヌクレオチド
の組み合わせを用いる。
【0052】
別の好ましい一実施形態では本発明は:
i)免疫学的に活性なステロイド;および
ii)適切にはNotchリガンドDSLドメインおよび少なくとも1個のEGF様ドメイン、適切には少なくとも1ないし20、適切には少なくとも2ないし16、たとえば少なくとも2ないし10個のEGF様ドメインを含むかまたはコードする活性化因子である、Notch受容体の活性化因子;
および随意的に抗原または抗原決定基、または抗原または抗原決定基をコードするポリヌクレオチド
の組み合わせを用いる。
【0053】
好ましくは免疫系の調節はT細胞活性の調節を含む。
【0054】
一実施形態では免疫系の調節はT細胞活性の低下を含む。たとえば、免疫系の調節は、エフェクターT細胞活性の低下、たとえばヘルパー(TH)および/または細胞傷害性(TC)T細胞活性の低下を含みうる。適切には免疫系の調節は、Th1またはTh2免疫反応の低下を含みうる。
【0055】
代替的に、または加えて、免疫系の調節は、Tr1またはTh3調節T細胞活性の増大といった、調節T細胞(Treg)活性の増大を提供する。
【0056】
適切には免疫系の調節は、調節T細胞(Treg)の生成および/またはTreg活性の増大を含む。
【0057】
適切には免疫系の調節は、喘息、アレルギー、移植片拒絶、移植片対宿主病または自己免疫疾患の治療を含む。
【0058】
適切には本発明の組み合わせは、IL−10、IL−5、IL−4、IL−2、TNF−アルファ、IFN−ガンマまたはIL−13から選択されるサイトカインの発現の調節に用いることができる。
【0059】
適切には本発明の組み合わせは、IL−10発現の増加のための薬剤の製造に用いることができる。
【0060】
適切には本発明の組み合わせは、IL−2、IL−4、IL−5、TNF−アルファ、IFN−ガンマまたはIL−13から選択されるサイトカインの発現の低下のための薬剤の製造に用いることができる。
【0061】
適切には本発明の組み合わせは、IL−10発現の増加およびIL−4またはIL−5発現の減少を有する免疫調節サイトカインプロファイルを生じさせるための薬剤の製造に用いることができる。
【0062】
適切には本発明の組み合わせは、IL−10発現の増加およびIL−2、IFN−ガンマ、Il−4、IL−5、IL−13およびTNF−アルファ発現の減少を有する免疫調節サイトカインプロファイルを生じさせるための薬剤の製造に用いることができる。
【0063】
このように本発明はさらに、本発明に記載の活性物質の組み合わせを投与することによる、IL−10、IL−5、IL−4、IL−2、TNF−アルファ、IFN−ガンマまたはIL−13から選択されるサイトカインの発現の調節のための方法を提供する。
【0064】
さらに、本発明に記載の活性物質の組み合わせを投与することによる、IL−10またはIL−4発現の増加のための方法を提供する。
【0065】
さらに、本発明に記載の活性物質の組み合わせを投与することによる、IL−2、IL−5、TNF−アルファ、IFN−ガンマまたはIL−13から選択されるサイトカインの発現の減少のための方法を提供する。
【0066】
さらに、本発明に記載の活性物質の組み合わせを投与することによる、IL−10発現の増加およびIL−5発現の減少を有する免疫調節サイトカインプロファイルを生じさせるための方法を提供する。
【0067】
さらに、本発明に記載の活性物質の組み合わせを投与することによる、IL−10発現の増加およびIL−2、IFN−ガンマ、IL−5、IL−13およびTNF−アルファ発現の減少を有する免疫調節サイトカインプロファイルを生じさせるための方法を提供する。
【0068】
適切にはサイトカイン発現は、白血球、線維芽細胞または上皮細胞において、好ましくは樹状細胞、リンパ球またはマクロファージ、またはそれらの前駆細胞または組織特異的誘導体において改変されうる。
【0069】
本発明の別の一態様によると、寛容を促進することができるリンパ球または抗原提示細胞(APC)を作製する方法であって、患者または患畜から得られたリンパ球またはAPCを(i)Notchシグナル伝達経路の調節因子および(ii)ここに記載の通りの免疫抑制剤と共にインキュベートすることを含む方法が提供される。
【0070】
適切にはその方法は、患者または患畜から得られたリンパ球またはAPCを、(i)Notchシグナル伝達経路の調節因子および(ii)ここに記載の通りの免疫抑制剤の存在下で、APCと共にインキュベートすることを含む。
【0071】
本発明の別の一態様によると、T細胞に寛容を誘導することができるAPCを作製する方法であって、APCを(i)Notchシグナル伝達経路の調節因子および(ii)ここに記載の通りの免疫抑制剤と接触させることを含む方法が提供される。
【0072】
本発明の別の一態様によると、寛容を促進することができるリンパ球またはAPCを作製する方法であって、患者または患畜から得られたリンパ球またはAPCを、上記の通り作製されたリンパ球またはAPCと共にインキュベートすることを含む方法が提供される。
【0073】
適切にはそのような方法ではそのリンパ球またはAPCはin vivoまたはex−vivoのどちらかでインキュベートすることができる。
【0074】
適切には抗原または抗原決定基(または、抗原または抗原決定基をコードするポリヌクレオチド)もまた、本発明の方法、用途および製品の一部として投与することができる。その抗原または抗原決定基(または、抗原または抗原決定基をコードするポリヌクレオチド)は、抗原または抗原決定基に対する免疫反応を調節するように、好ましくは低下させるように、Notchシグナル伝達の調節因子および免疫抑制剤と、同時の、別々のまたは順次の組み合わせで投与することができる。
【0075】
一実施形態では抗原または抗原決定基は、自己抗原またはその抗原決定基、または、自己抗原またはその抗原決定基をコードするポリヌクレオチドでありうる。
【0076】
別のそのような一実施形態では、抗原または抗原決定基は、アレルゲンまたはその抗原決定基、または、アレルゲンまたはその抗原決定基をコードするポリヌクレオチドでありうる。
【0077】
別のそのような一実施形態では、抗原または抗原決定基は、移植抗原またはその抗原決定基、または、移植抗原またはその抗原決定基をコードするポリヌクレオチドでありうる。
【0078】
適切には本発明における用途のためのNotchシグナル伝達の調節因子は:
i)NotchリガンドDSLドメイン;
ii)1〜5個(および好ましくは5個以下)のNotchリガンドEGFドメイン;
iii)随意的に全部または一部のNotchリガンドN末端ドメイン;および
iv)随意的に1つ以上の異種アミノ酸配列;
を含むタンパク質またはポリペプチド、
またはそれをコードするポリヌクレオチド
を含みうる。
【0079】
適切にはNotchシグナル伝達の調節因子は:
i)NotchリガンドDSLドメイン;
ii)2〜4個(および好ましくは4個以下)のNotchリガンドEGFドメイン;
iii)随意的に全部または一部のNotchリガンドN末端ドメイン;および
iv)随意的に1つ以上の異種アミノ酸配列;
を含むタンパク質またはポリペプチド、
またはそれをコードするポリヌクレオチド
を含みうる。
【0080】
適切にはそのNotchシグナル伝達の調節因子のうち1個以上は:
i)NotchリガンドDSLドメイン;
ii)2〜3個(および好ましくは3個以下)のNotchリガンドEGFドメイン;
iii)随意的に全部または一部のNotchリガンドN末端ドメイン;および
iv)随意的に1つ以上の異種アミノ酸配列;
を含むタンパク質またはポリペプチド、
またはそれをコードするポリヌクレオチド
を含みうる。
【0081】
適切にはそのタンパク質またはポリペプチドは、下記の配列に対してその全長にわたって、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも90%、たとえば少なくとも95%のアミノ酸配列類似性(または好ましくは配列同一性)を有しうる:
MGSRCALALAVLSALLCQVWSSGVFELKLQEFVNKKGLLGNRNCCRGGAGPPPCACRTF
FRVCLKHYQASVSPEPPCTYGSAVTPVLGVDSFSLPDGGGADSAFSNPIRFPFGFTWPG
TFSLIIEALHTDSPDDLATENPERLISRLATQRHLTVGEEWSQDLHSSGRTDLKYSYRF
VCDEHYYGEGCSVFCRPRDDAFGHFTCGERGEKVCNPGWKGPYCTEPICLPGCDEQHGF
CDKPGECKCRVGWQGRYCDECIRYPGCLHGTCQQPWQCNCQEGWGGLFCNQDLNYCTHH
KPCKNGATCTNTGQGSYTCSCRPGYTGATCELGIDEC
【発明を実施するための最良の形態】
【0082】
本発明のさまざまな好ましい特性および実施形態を、非限定的な実施例を用いて、および添付の図を参照して、より詳細にここで説明する。
【0083】
本発明の実施は、別に指示されない限り、当業者の能力の範囲内にある化学、分子生物
学、微生物学、組み換えDNAおよび免疫学の従来の技術を用いる。そのような技術は文
献に説明されている。たとえば、J.サムブルック(Sambrook)、E.F.フリ
ッチェ(Fritsch)、およびT.マニアチス(Maniatis)、1989,『
分子クローニング;実験の手引き』(Molecular Cloning;A Labo
ratory Manual)第二版、1〜3巻、コールド・スプリング・ハーバー・ラ
ボラトリー・プレス社(Cold Spring Harbor Laboratory P
ress);アウスベル(Ausubel)、 F.M.他 (1995および定期補遺;
『分子生物学最新プロトコル』(Current Protocols in Molec
ular Biology)9,13,および16章,ジョン・ワイリー・アンド・サン
ズ社(John Wiley & Sons)、ニューヨーク州ニューヨーク;B.ロー(
Roe)、J.クラブツリー(Crabtree)およびA.カーン(Kahn)、19
96,『DNA単離および配列決定;基幹技術』(DNA Isolation and
Sequencing;Essential Techniques)ジョン・ワイリー
・アンド・サンズ社;J.M.ポラック(Polak)およびジェームスO’D.マクジ
ー(James O’D.McGee)、 1990,『In Situハイブリダイゼー
ション;原理と実践』(In Situ Hybridization;Principl
es and Practice);オックスフォード大学出版会(Oxford Uni
versity Press); M.J.ゲイト(Gait)(編集)、1984,『オ
リゴヌクレオチド合成;実践的手法』(Oligonucleotide Synthe
sis;A Practical Approach)Irl出版(Irl Press)
;D.M.J.リリー(Lilley)およびJ.E.ダールベルク(Dahlberg
)、1992,『酵素学の方法;DNA構造パートA;DNAの合成および物理分析』(
Methods of Enzymology;DNA Structure Part A
;Synthesis and Physical Analysis of DNA)Me
thods in Enzymology,アカデミックプレス社(Academic P
ress);およびJ.E.コリガン(Coligan)、A.M.クルイスビーク(K
ruisbeek)、D.H.マーグリース(Margulies)、E.M.シェバッ
ハ(Shevach)およびW.ストロバー(Strober)(1992および定期補
遺;『免疫学最新プロトコル』(Current Protocols in Immun
ology)、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ社、ニューヨーク州ニューヨーク)を
参照。これらの一般的文献のそれぞれは参照により本開示に含まれる。
【0084】
疑いを避けるため、ショウジョウバエ(Drosophila)および脊椎動物名は互
いに交換可能に用いられ、およびすべてのホモログは本発明の範囲内に含まれる。
【0085】
イムノフィリン結合性免疫抑制剤
ここで用いられる「イムノフィリン結合性免疫抑制剤」の語は、たとえば、シクロフィリン、FKBP12およびFKBP50といったFK506結合タンパク質(FKBP)、mTOR(「ラパマイシンの標的(Target Of Rapamycin)」)、RAPTORなどのようなイムノフィリンと結合して、免疫反応の抑制を引き起こす物質を意味する。これらのイムノフィリンの多くはカルモジュリン/カルシニューリンと相互作用する。
【0086】
(a)細胞周期のG1期からGS期へのT細胞の移行を阻害する物質
一実施形態では、イムノフィリン結合性免疫抑制剤は、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体といった、イムノフィリンに結合することによって細胞周期のG1期からGS期へのT細胞の移行を阻害する物質でありうる。
【0087】
元の(「天然」)ラパマイシン(別名シロリムス)は、細菌株ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)から単離された下記の構造を有するマクロライド化合物である:
【化1】
【0088】
ラパマイシンの多数の誘導体が既知であり、それらは同一の種類の活性を有し、およびまた本発明に従って使用することができる。
【0089】
したがって、ここで用いられる「ラパマイシン」の語は、天然ラパマイシンのエステル、エーテル、オキシム、ヒドラゾン、およびヒドロキシルアミン、および、たとえば酸化または還元を通じてラパマイシン核上の官能基が修飾されているラパマイシンを含む(「ラパマイシン類化合物」ともいう)。
【0090】
たとえば、米国特許第6399625号明細書(ワイス(Wyeth))で論述される
通り、ラパマイシンの42−および/または31−エステルおよびエーテルが下記の特許
で開示されており、それらの特許のすべてが参照により本開示に含まれる:ラパマイシン
のアルキルエステル(米国特許第4,316,885号明細書);アミノアルキルエステ
ル(米国特許第4,650,803号明細書);フッ化エステル(米国特許第5,100
,883号明細書);アミドエステル(米国特許第5,118,677号明細書);カル
バメートエステル(米国特許第5,118,678号明細書);シリルエーテル(米国特
許第5,120,842号明細書);アミノエステル(米国特許第5,130,307号
明細書);アセタール(米国特許第5,51,413号明細書);アミノジエステル(米
国特許第5,162,333号明細書);スルホン酸および硫酸エステル(米国特許第5
,177,203号明細書);エステル(米国特許第5,221,670号明細書);ア
ルコキシエステル(米国特許第5,233,036号明細書);O−アリール、−アルキ
ル、−アルケニル、および−アルキニルエーテル(米国特許第5,258,389号明細
書);炭酸エステル(米国特許第5,260,300号明細書);アリールカルボニルお
よびアルコキシカルボニルカルバメート(米国特許第5,262,423号明細書);カ
ルバメート(米国特許第5,302,584号明細書);ヒドロキシエステル(米国特許
第5,362,718号明細書);障害の大きいエステル(米国特許第5,385,90
8号明細書);複素環式エステル(米国特許第5,385,909号明細書);gem−
2置換エステル(米国特許第5,385,910号明細書);アミノカルボン酸エステル
(米国特許第5,389,639号明細書);リン酸カルバメートエステル(米国特許第
5,391,730号明細書);カルバメートエステル(米国特許第5,411,967
号明細書);カルバメートエステル(米国特許第5,434,260号明細書);アミジ
ノカルバメートエステル(米国特許第5,463,048号明細書);カルバメートエス
テル(米国特許第5,480,988号明細書);カルバメートエステル(米国特許第5
,480,989号明細書);カルバメートエステル(米国特許第5,489,680号
明細書);障害の大きいN−オキシドエステル(米国特許第5,491,231号明細書
);ビオチンエステル(米国特許第5,504,091号明細書);O−アルキルエーテ
ル(米国特許第5,665,772号明細書);およびPEGエステル(米国特許第5,
780,462号明細書)。これらのエステルおよびエーテルの調製は上に列記した特許
に開示されている。対応する1−オキソラパマイシンのエステルおよびエーテルの調製は
、これらの特許に開示される方法を用いて、1−オキソラパマイシンから開始して達成す
ることができる。
【0091】
ラパマイシンの好ましい27−エステルおよびエーテルは、参照により本開示に含まれ
る、米国特許第5,256,790号明細書に開示されている。これらのエステルおよび
エーテルの調製は上に列記した特許に開示されている。対応する1−オキソラパマイシン
のエステルおよびエーテルの調製は、これらの特許に開示される方法を用いて、1−オキ
ソラパマイシンから開始して達成することができる。
【0092】
ラパマイシンの好ましいオキシム、ヒドラゾン、およびヒドロキシルアミンは、参照に
より本開示に含まれる、米国特許第5,373,014号明細書、第5,378,836
号明細書、第5,023,264号明細書、および第5,563,145号明細書に開示
されている。これらのオキシム、ヒドラゾン、およびヒドロキシルアミンの調製は上に列
記した特許に開示されている。42−オキソラパマイシンの調製は、参照により本開示に
含まれる、米国特許第5,023,263号明細書に開示されている。対応する1−オキ
ソラパマイシンのオキシム、ヒドラゾン、およびヒドロキシルアミンの調製は、これらの
特許に開示される方法を用いて、1−オキソラパマイシンから開始して達成することがで
きる。
【0093】
特に好ましい1−オキソラパマイシンは、1−オキソラパマイシン、3−ヒドロキシ−
2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸との1−オキソラパマイシン42−
エステル[3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸とのラ
パマイシン42−エステルの調製については米国特許第5,362,718号明細書を参
照],および42−O−(2−ヒドロキシ)エチル1−オキソラパマイシン[42−O−
(2−ヒドロキシ)エチルラパマイシンの調製については米国特許第5,665,772
号明細書を参照;別名「SDZ−RAD」]を含む。
【0094】
ラパマイシン誘導体の他の例の一部は、たとえば下記を含む:
40−O−ベンジル−ラパマイシン
40−O−(4’−ヒドロキシメチル)ベンジル−ラパマイシン
40−O−[4’−(1,2−ジヒドロキシエチル)]ベンジル−ラパマイシン
40−O−アリル−ラパマイシン
40−O−[3’−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4(S)−イル]−プ
ロプ−2’−エン−1’−イル)−ラパマイシン
(2’E,4’S)−40−O−(4’,5’−ジヒドロキシペント−2’−エン−1’
−イル)−ラパマイシン
40−O−(2−ヒドロキシ)エトキシカルボニルメチル−ラパマイシン
40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン
40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン
40−O−(6−ヒドロキシ)ヘキシル−ラパマイシン
40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン
40−O−[(3S)−2,2−ジメチルジオキソラン−3−イル]メチル−ラパマイシ
ン
40−O−[(2S)−2,3−ジヒドロキシプロプ−1−イル]−ラパマイシン
40−O−(2−アセトキシ)エチル−ラパマイシン
40−O−(2−ニコチノイルオキシ)エチル−ラパマイシン
40−O−[2−(N−モルホリノ)アセトキシ]エチル−ラパマイシン
40−O−(2−N−イミダゾリルアセトキシ)エチル−ラパマイシン
40−O−[2−(N−メチル−N’−ピペラジニル)アセトキシ]エチル−ラパマイシ
ン
39−O−Desメチル−39,40−O,O−エチレン−ラパマイシン
(26R)−26−ジヒドロ40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン
28−O−メチル−ラパマイシン
40−O−(2−アミノエチル)−ラパマイシン
40−O−(2−アセトアミノエチル)−ラパマイシン
40−O−(2−ニコチンアミドエチル)−ラパマイシン
40−O−(2−(N−メチル−イミダゾ−2’−イルカルボキサミド)エチル)−ラパ
マイシン
40−O−(2−エトキシカルボニルアミノエチル)−ラパマイシン
40−O−(2−トリルスルホンアミドエチル)−ラパマイシン
40−O−[2−(4’,5’−ジカルボエトキシ−1’,2’,3’−トリアゾール−
1’−イル)−エチル]−ラパマイシン
40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン。
【0095】
(b)細胞周期のG0期からG1期へのT細胞の移行を阻害する物質
代替的に、または加えて、イムノフィリン結合性免疫抑制剤は、たとえばシクロスポリン(たとえばシクロスポリンA)またはFK506(タクロリムス)またはその誘導体のような、IL−2のようなサイトカインの転写を阻害する物質といった、イムノフィリンに結合することによって細胞周期のG0期からG1期へのT細胞の移行を阻害する物質でありうる。
【0096】
シクロスポリンA(CysA)は真菌から得られる環状ウンデカペプチド(CAS番号59865−13−3;米国特許第3,737,433号明細書)であり、下記の構造を有する:
【化2】
【0097】
ここで用いられる「シクロスポリン」の語は、免疫抑制薬活性を有する環状オリゴペプチドのグループのうち任意のものを意味し、既知のシクロスポリンA、シクロスポリンB、シクロスポリンC、シクロスポリンD、シクロスポリンE、シクロスポリンF、シクロスポリンG、シクロスポリンHおよびシクロスポリンI(「シクロスポリン類の化合物」ともいう)を含む。特に、この語はシクロスポリンA、別名シクロスポリンを含む。合成により製造された、天然由来のまたは精製された、および組み換えにより製造された部分がその定義の中に含まれ、これらのうちの任意のものの類縁物質、誘導体、および医薬品として許容される塩もまたその定義の中に含まれる。その語はまた、D−アミノ酸、DまたはL立体配座の修飾された、誘導体化された、または天然に存在しないアミノ酸、および/またはペプチドミメティックまたはプロドラッグ単位を、構造の一部として有するシクロスポリンを含む。シクロスポリンAが一般的に好ましい。
【0098】
代替的に、または加えて、イムノフィリン結合性免疫抑制剤は免疫抑制性のアスコマイシンまたはアスコマイシン誘導体(「アスコマイシン類の化合物」ともいう)でありうる。アスコマイシンは、そのうちFK−506およびアスコマイシンが最も良く知られているが、ラクタムマクロライドの一分類を形成し、そのうちの多数が強力な免疫抑制活性および抗炎症活性を有する。FK506は、ストレプトマイセス・ツクバエンシス(Streptomyces tsukubaensis)によって産生されるラクタムマクロライドである。アスコマイシンはたとえば米国特許第3,244,592号明細書に記載されている。アスコマイシン;FK506、同様の生物学的活性を有する他の天然に存在するマクロライド、およびそれらの誘導体、たとえば合成類縁物質および誘導体を集合的に「アスコマイシン」という。合成類縁物質または誘導体の例はたとえば、欧州特許出願公開第427,680号明細書に開示されるような33−エピ−クロロ−33−デスオキシ−−アスコマイシンといったハロゲン化アスコマイシン、欧州特許出願公開第626,385号明細書に開示されるようなテトラヒドロピラン誘導体である。
【0099】
FK506(別名タクロリムス)は下記の構造を有するマクロライドである:
【化3】
【0100】
FK506はストレプトマイセス・ツクバエンシス(Streptomyces tsukubaensis)No 9993によって産生されるマクロライド抗生物質である。FK506を調製する方法は 欧州特許第184162号明細書に記載されている。
【0101】
FK506の基本構造および少なくとも1つの生物学的性質(たとえば免疫学的性質)を保持している、FK506の多数の誘導体が知られている。そのような化合物の例は、たとえば、欧州特許第184162号明細書、欧州特許第315978号明細書、欧州特許第323042号明細書、欧州特許第423714号明細書、欧州特許第427680号明細書、欧州特許第465426号明細書、欧州特許第474126号明細書、国際公開第91/13889号パンフレット、国際公開第91/19495号パンフレット、欧州特許第484936号明細書、欧州特許第532088号明細書、欧州特許第532089号明細書、欧州特許第569337号明細書、欧州特許第626385号明細書および国際公開第93/5059号パンフレットに記載されている。
【0102】
FK506類の好ましい化合物は欧州特許第427680号に、たとえば実施例66aに開示されている(33−エピ−クロロ−33−デスオキシアスコマイシンともいう)。FK506類の他の好ましい化合物は欧州特許第465426号明細書、欧州特許第569337号明細書、および欧州特許第626385号明細書に開示されており、たとえば欧州特許第569337号明細書の実施例6dの化合物、または欧州特許第626385号明細書の実施例8の化合物である。
【0103】
免疫学的に活性なステロイド
ここで用いられる「免疫学的に活性なステロイド」の語は、免疫反応を改変することのできるステロイドを含む。好ましくは免疫学的に活性なステロイドは糖質コルチコイド(GC)受容体を活性化する。適切にはそのステロイドは、T細胞、B細胞または抗原提示細胞(APC)活性を改変する。好ましくはそのステロイドは、T細胞、B細胞または抗原提示細胞(APC)活性を低下させる。
【0104】
「免疫学的に活性なステロイド」の語は、天然に存在する免疫学的に活性なステロイドおよびその誘導体、およびステロイド様免疫活性を有する合成または半合成ステロイドアナログを含む。好ましくはそのステロイドは、副腎皮質ステロイドまたは糖質コルチコイドである。たとえば、多数のそのようなステロイドは、シクロペンタノフェナントレンを基礎とする融合環構造の核を持つ。具体的な天然および合成ステロイドの例は下記を含むがそれらに限定されない:アルドステロン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロプレドノール、コルチゾン、コルチバゾール、デオキシコルトン、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフルオロコルトロン、フルクロロロン、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロン、フルオシノニド、フルオコルチン ブチル、フルオロコルチゾン、フルオロコルトロン、フルオロメトロン、フルランドレノロン、フルチカゾン、ハルシノニド、ヒドロコルチゾン、アイコメタゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、チキソコルトールまたはトリアムシノロン、およびそのそれぞれの医薬として許容される塩または誘導体。そのようなステロイドの組み合わせもまた本発明において使用することができることが理解される。
【0105】
米国特許出願公開第 20002009037号明細書(DNAX)で論述される通り、糖質コルチコイド(GC) は、自己免疫疾患およびアレルギー疾患といった、炎症性疾患の治療に幅広く用いられている強力な抗炎症剤および免疫抑制剤である(ウィルケンス(Wilkens)およびデ・リイク(de Rijk)(1997) Immunol.Today 18:418−424;シュライマー(Schleimer),他 (1997年編)『喘息における吸入糖質コルチコイド:機構および臨床作用』(Inhaled Glucocorticoids in Asthma: Mechanisms & Clinical Actions)デッカー社(Dekker))。GCは、T細胞およびAPCの両方に対して、増殖およびサイトカイン産生のレベルで、ある条件下ではIFN−g、IL−4、およびIL−5のダウンレギュレーションを伴うがしかし別の条件下ではIL−4のアップレギュレーションを伴う、阻害作用を有することが示されている。ブロフタ(Blofta),他 (1997) J.Immunol.158:5589−5595;ラミレス(Ramirez),他 (1996) J.Immunol.156:2406−2412; およびデインズ(Daynes)およびアラネオ(Araneo)(1989) Eur.J.Immunol.19:2319−2325を参照。これは間接的作用の結果として生じる可能性があり、たとえば、APC、抗原、およびT細胞を含む培養中で、GCはAPCによるIL−12の産生、したがってT細胞によるIFN−g産生をダウンレギュレートし(ブロッタ(Blotta),他(1997)J.Immunol.158:5589−5595;ビエイラ(Vieira),他 (1998) J.Immunol.161:5245−5251; およびビッサー(Visser),他 (1998) Blood 91:4255−4264)、およびしたがって一部の場合にはIL−4 (Blotta,他 (1997) J.Immunol.158:5589−5595)およびまたはIL−5 (ビエイラ(Vieira),他 (1998) J.Immunol.161:5245−5251) および/または IL−10 (ビエイラ(Vieira),他 (1998) J.Immunol.161:5245−5251;およびビッサー(Visser),他(1998) Blood 91:4255−4264) の産生を間接的にアップレギュレートしうる。近年、GCはヒトCD8+T細胞分化を、高いIL−10および低いIFN−g、IL−4、IL−5およびIL−13産生を伴う安定した表現型へ進めることが示されている。リチャーズ(Richards)およびハウリロウイッツ(Hawrylowicz)(2000) Eur.J.Immunol.30:2344−2354を参照。
【0106】
糖質コルチコイドは細胞質GC 受容体(GR)と結合し、これは次いで核へ移行して標的遺伝子の転写活性化を阻害する。シュライマー(Schleimer),他(1997年編)『喘息における吸入糖質コルチコイド:機構および臨床作用』(Inhaled Glucocorticoids in Asthma: Mechanisms & Clinical Actions)デッカー社(Dekker)中のカリン(Karin)の総説;およびカリン(Karin)(1998) Cell 93:487−490を参照。糖質コルチコイドは:1)タンパク質−タンパク質相互作用を介して、AP−1およびNF−kBといった相互作用因子の機能に干渉すること(デ・ボッシャー(De Bosscher),他(1997)94:13504−13509);およびサイトカイン遺伝子プロモーターへのNFAT結合の阻害(チェン(Chen),他 (2000) J.Immunol.164:825−832);2)保存程度の低いネガティブGC応答配列(GRE)への直接のDNA結合;または3)IkBaといった阻害因子の発現を誘導すること(シュライマー(Schleimer),他(1997年編)『喘息における吸入糖質コルチコイド:機構および臨床作用』(Inhaled Glucocorticoids in Asthma: Mechanisms & Clinical Actions)デッカー社(Dekker)中でカリン(Karin)に総説されている)を通じて転写抑制を媒介する。さらに、GRはプラスミノーゲン活性化因子PAI−1遺伝子のTGF−b転写活性化を、リガンド依存性の方法で、Smad3およびSmad4C末端活性化ドメインの両方によって抑制する。ソング(Song),他 (1999) Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 96:11776−11781を参照。
【0107】
Notchシグナル伝達の調節因子
ここで用いられる「Notchシグナル伝達経路の調節」の語は、Notchシグナル伝達経路またはその標的シグナル伝達経路の生物学的活性の変化または改変をいう。「Notchシグナル伝達経路の調節因子」(または「Notchシグナル伝達の調節因子」)の語は、Notchシグナル伝達の拮抗因子または阻害因子、すなわちNotchシグナル伝達経路の正常な生物学的活性を、少なくともある程度、遮断する化合物をいうことができる。都合良く、ここではそのような化合物は阻害因子または拮抗因子ということができる。代替的に、および好ましくは「Notchシグナル伝達経路の調節因子」の語は、Notchシグナル伝達の作用因子(または部分作用因子) 、すなわちNotchシグナル伝達経路の正常な生物学的活性を、少なくともある程度、刺激またはアップレギュレートする化合物をいうことができる。都合良く、そのような化合物はアップレギュレーターまたは作用因子ということができる。好ましくは使用するNotchシグナル伝達の調節因子はNotchシグナル伝達の作用因子であり、および好ましくはNotch受容体の作用因子(たとえばNotch1,Notch2,Notch3および/またはNotch4受容体の作用因子で,好ましくはヒトNotch受容体である)。好ましくはそのような作用因子(「Notchの活性化因子」)は、好ましくはヒトNotch1、Notch2、Notch3および/またはNotch4といったヒトNotch受容体を含む、Notch受容体と結合しそれを活性化する。Notch受容体との結合および/またはその活性化は、たとえばここに記載されるようなin vitro結合測定法および活性測定法を含む本分野で既知のさまざまな技術によって評価することができる。
【0108】
たとえば、任意の特定の物質がNotchシグナル伝達を活性化するかどうか(たとえばNotchの活性化因子またはNotch作用因子である)は、任意の適当な測定法の使用によって、たとえばロランティス社(Lorantis Ltd)の名義の国際公開第03/012441号パンフレット(たとえばその実施例8および9を参照)に記載された型のCBF−1レポーター測定法の使用によって、容易に決定することができる。逆に、拮抗因子活性は、たとえば、ロランティス社(Lorantis Ltd)の名義の国際公開第03/012441号パンフレットまたは国際公開第03/041735号パンフレット(たとえば実施例10、11および12を参照)に記載されたように、既知のNotchシグナル伝達作用因子によるシグナル伝達を低下させることにおけるその物質の何らかの効果を監視することによって容易に測定することができる(すなわちいわゆる「拮抗因子」測定法で)。
【0109】
本発明の活性物質はたとえば有機化合物またはその他の化学物質でありうる。一実施形態では、調節因子は2個以上のヒドロカルビル基を含む有機化合物となる。ここで、「ヒドロカルビル基」の語は、少なくともCおよびHを含む基を意味し、および随意的に1つ以上の他の適当な置換基を含みうる。そのような置換基の例は、ハロ−、アルコキシ−、ニトロ−、アルキル基、環状基などを含みうる。置換基が環状基である可能性に加えて、置換基の組み合わせは環状基を形成しうる。ヒドロカルビル基が2個以上のCを含む場合、それらの炭素は必ずしも互いに結合している必要はない。たとえば、少なくとも2個の炭素は、適当な元素または基を介して結合することができる。このように、ヒドロカルビル基はヘテロ原子を含むことができる。適当なヘテロ原子は当業者に明らかとなり、たとえば、硫黄、窒素、および酸素を含む。調節因子候補は少なくとも1つの環状基を含みうる。環状基は、非融合型多環基といった多環基であることができる。一部の用途のためには、本物質は、別のヒドロカルビル基と結合した、前記環状基のうち少なくとも1つを含む。
【0110】
好ましい一実施形態では、調節因子はアミノ酸配列またはその化学誘導体である。別の好ましい一実施形態では、調節因子はヌクレオチド配列であって、センス配列またはアンチセンス配列でありうる。調節因子はまた抗体であることができる。
【0111】
「抗体」の語は、完全な分子および、抗原決定基と結合することができるFab、F(ab’)2、Fv、およびscFvといったその断片を含む。これらの抗体断片はその抗原または受容体と選択的に結合する能力の一部を保持し、およびたとえば下記を含む;
(i)Fabは、抗体分子の一価の抗原結合断片を含む断片であり、酵素パパインを用いての完全な抗体の消化によって作製することができ、完全な軽鎖および1つの重鎖の一部を生じる;
(ii)Fab’は、抗体分子の断片であり、完全な抗体をペプシンで処理し、その後還元して、完全な軽鎖および1つの重鎖の一部を生じることによって得ることができる;抗体分子あたり2個のFab’断片が得られる;
(iii)F(ab’)2は、抗体分子の断片であり、完全な抗体をペプシンで処理し、その後還元しないことによって得ることができる;F(ab’)2は2本のジスルフィド結合によって結びついた2個のFab’断片の二量体である;
(iv)scFvは、重鎖および軽鎖の可変領域を融合した一本鎖分子として含む、遺伝
子操作された断片を含む。
【0112】
これらの断片を作製する一般的方法は本分野で既知である。(たとえば、参照により本開示に含まれる、ハーロー(Harlow)およびレーン(Lane),『抗体:実験の手引き』(Antibodies:A Laboratory Manual)コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー社(Cold Spring Harbor Laboratory),ニューヨーク(1988)を参照)。
【0113】
たとえば、NotchおよびNotchリガンドに対する抗体は、米国特許第5648464号明細書、米国特許第5849869号明細書、および米国特許第6004924号明細書(エール大学/インペリアル・キャンサー・テクノロジー(Imperial Cancer Technology))に記載されており、その本文は参照により本開示に含まれる。
【0114】
Notch受容体に対して作製された抗体もまた、国際公開第0020576号パンフレット(その本文は参照により本開示に含まれる)に記載されている。たとえば、この文書はヒトNotch−1 EGF様反復11および12に対する抗体の作製を開示する。たとえば、特定の実施形態で、国際公開第0020576号パンフレットは、ATCC登録番号HB12654を有しA6で表されるハイブリドーマによって分泌されるモノクローナル抗体、ATCC登録番号HB12656を有しCllで表されるハイブリドーマによって分泌されるモノクローナル抗体、およびATCC登録番号HB12655を有しF3で表されるハイブリドーマによって分泌されるモノクローナル抗体を開示する。
【0115】
抗ヒト−Jagged1抗体はR&Dシステムズ社(R&D Systems, Inc)から整理番号MAB12771(クローン188323)として入手可能である。
【0116】
好ましくはNotchシグナル伝達の調節因子は多量体化された形であり、および好ましくは、少なくとも3、好ましくは少なくとも5、好ましくは少なくとも10、少なくとも30、または少なくとも50または100以上のNotchシグナル伝達の調節因子を含む構造を含みうる。
【0117】
たとえば、ビーズといった粒子状担体と結合したNotchリガンドタンパク質/ポリペプチドの形のNotchシグナル伝達の調節因子は、本文が参照により本開示に含まれる国際公開第03/011317号パンフレット(ロランティス社(Lorantis))およびロランティス社の同時出願中のPCT出願PCT/GB2003/001525(2003年4月4日出願)に記載されている(たとえば特にPCT/GB2003/001525の実施例17、18、19を参照)。
【0118】
高分子担体と結合したNotchリガンドタンパク質/ポリペプチドの形のNotchシグナル伝達の調節因子は、本文が参照により本開示に含まれるロランティス社(Lorantis Ltd)の同時出願中のPCT出願PCT/GB2003/003285(2003年8月1日出願、英国特許第0218068.5号の優先権を主張)に記載されている(たとえば特に、デキストラン複合体を開示するその実施例5を参照)。
【0119】
一形態では、Notchシグナル伝達経路の調節のための物質は、Notchシグナル伝達のためのタンパク質でありうる。
【0120】
Notchシグナル伝達のためのタンパク質とは、Notchの活性化、Notchシグナル伝達経路の下流現象、下流標的遺伝子の転写調節、および他の非転写的下流現象(たとえば既存のタンパク質の翻訳後修飾)を含む、Notch受容体を介したシグナル伝達に関与する分子を意味する。より具体的には、そのタンパク質は、Notchシグナル伝達経路の標的遺伝子の活性化を可能にするドメイン、またはそれをコードするポリヌクレオチド配列を含みうる。
【0121】
Notchシグナル伝達経路の非常に重要な成分は、Notch受容体/Notchリガンド相互作用である。このようにNotchシグナル伝達は、Notchリガンドまたは受容体またはそれらの結果として生じる切断産物の、発現、性質、量、または活性における変化に関与しうる。加えて、Notchシグナル伝達は、Notchシグナル伝達経路膜タンパク質またはG−タンパク質、またはプロテアーゼ、キナーゼ(たとえばセリン/スレオニンキナーゼ)、ホスファターゼ、リガーゼ(たとえばユビキチンリガーゼ)またはグリコシルトランスフェラーゼといったNotchシグナル伝達経路酵素の、発現、性質、量、または活性における変化に関与しうる。代替的にシグナル伝達は、転写因子といったDNA結合配列の、発現、性質、量、または活性における変化に関与しうる。
【0122】
本発明では、Notchシグナル伝達は好ましくは特異的シグナル伝達を意味し、シグナル伝達が、サイトカインシグナル伝達といった何らかの他の顕著な干渉するかまたは競合する原因でなく、実質的に、または少なくとも主に、Notchシグナル伝達経路から、および好ましくはNotch/Notchリガンド相互作用から結果として生じることを意味する。好ましくはしたがってここで用いられる「Notchシグナル伝達」の語は、サイトカインシグナル伝達を除外する。Notchシグナル伝達経路を下記により詳細に説明する。
【0123】
タンパク質またはポリペプチドは、「成熟」タンパク質の形でありうるかまたは、融合タンパク質または前駆体といった、より大きいタンパク質の一部でありうる。たとえば、精製の助けとなる、分泌配列またはリーダー配列または前配列を含む追加のアミノ酸配列(HISオリゴマー、免疫グロブリンFc、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、FLAGなどといった)を含めることはしばしば有利である。同様にそのような追加の配列は、組み換え産生の際に追加の安定性を与えるために時に望ましい可能性がある。そのような場合には、追加の配列を切断(たとえば化学的にまたは酵素的に)して最終産物を生じることができる。一部の場合には、しかし、追加の配列はまた望ましい薬理プロファイルも与える可能性があり(IgFc融合タンパク質の場合のように)、その場合は追加の配列が投与の際に最終産物中に存在するように、追加の配列を除去しないことが好ましい可能性がある。
【0124】
タンパク質またはポリペプチドは、「成熟」タンパク質の形でありうるかまたは、融合タンパク質または前駆体といった、より大きいタンパク質の一部でありうる。たとえば、精製の助けとなる、分泌配列またはリーダー配列または前配列を含む追加のアミノ酸配列(HISオリゴマー、免疫グロブリンFc、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、FLAGなどといった)を含めることはしばしば有利である。同様にそのような追加の配列は、組み換え産生の際に追加の安定性を与えるために時に望ましい可能性がある。そのような場合には、追加の配列を切断(たとえば化学的にまたは酵素的に)して最終産物を生じることができる。一部の場合には、しかし、追加の配列はまた望ましい薬理プロファイルも与える可能性があり(IgFc融合タンパク質の場合のように)、その場合は追加の配列が投与の際に最終産物中に存在するように、追加の配列を除去しないことが好ましい可能性がある。
【0125】
タンパク質またはポリペプチドは、「成熟」タンパク質の形でありうるかまたは、融合タンパク質または前駆体といった、より大きいタンパク質の一部でありうる。たとえば、精製の助けとなる、分泌配列またはリーダー配列または前配列を含む追加のアミノ酸配列(HISオリゴマー、免疫グロブリンFc、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、FLAGなどといった)を含めることはしばしば有利である。同様にそのような追加の配列は、組み換え産生の際に追加の安定性を与えるために時に望ましい可能性がある。そのような場合には、追加の配列を切断(たとえば化学的にまたは酵素的に)して最終産物を生じることができる。一部の場合には、しかし、追加の配列はまた望ましい薬理プロファイルも与える可能性があり(IgFc融合タンパク質の場合のように)、その場合は追加の配列が投与の際に最終産物中に存在するように、追加の配列を除去しないことが好ましい可能性がある。
【0126】
Notch依存性転写活性化の主要な標的は、Enhancer of split複合体の遺伝子(E[spl])である。さらにこれらの遺伝子は、Su(H)タンパク質による結合の直接の標的であること、およびNotchシグナル伝達に反応して転写活性化されることが示されている。哺乳類Su(H)ホモログCBF1と相互作用してそれを転写抑制因子から転写活性化因子へ変換するウイルスコアクチベータータンパク質であるEBNA2との類推によって、Notch細胞内ドメインは、おそらく他のタンパク質と共同して、Su(H)と結合してSu(H)がE(spl)および他の標的遺伝子の転写を活性化することを可能にする活性化ドメインに寄与しうる。Su(H)はすべてのNotch依存性の決定に必要ではないこともまた注目すべきであり、これは、Notchが他のDNA結合性転写因子と結合することによって、または細胞外シグナルを伝達する他の機構を用いることによって、一部の細胞運命選択を媒介することを示す。
【0127】
本発明の一態様によると、活性物質はNotch、またはNotchのシグナル伝達能力を保持するその断片、またはNotchのシグナル伝達能力を有するNotchのアナログであることができる。
【0128】
ここで用いられる「Notchのアナログ」の語は、Notchのシグナル伝達能力を保持しているその変異体を含む。「アナログ」には、Notchシグナル伝達能力を持つが、しかし一般的にNotchとは異なる進化的起源を有するタンパク質を含める。Notchのアナログは、EBNA2、BARF0、またはLMP2Aといった、エプスタイン・バーウイルス(EBV)由来のタンパク質を含む。
【0129】
Notchシグナル伝達活性化のためのタンパク質とは、Notch、Notchシグナル伝達経路またはNotchシグナル伝達経路の任意の1つ以上の成分を活性化することができる分子を意味する。
【0130】
一実施形態では、活性物質は、Notchリガンド、またはNotchリガンドをコードするポリヌクレオチドでありうる。本発明で有用であるNotchリガンドは、典型的にはたとえば造血幹細胞といったさまざまな哺乳類細胞の膜に存在するNotch受容体ポリペプチドと結合することができる内因性Notchリガンドを含む。
【0131】
ここで用いられる「Notchリガンド」の語は、Notch受容体と相互作用して生物学的効果を生じることができる物質を意味する。ここで用いられるその語はしたがって、DeltaおよびSerrate/Jaggedといった天然に存在するタンパク質リガンド、および天然リガンドに対応する生物学的作用を有するNotch受容体に対する抗体、ペプチドミメティックおよび低分子を含む。好ましくはNotchリガンドはNotch受容体と結合によって相互作用する。
【0132】
現在までに同定された哺乳類Notchリガンドの具体例は、Deltaファミリー、たとえばDeltaまたはDelta−loke1(Genbank登録番号AF003522−ヒト(Homo sapiens))、Delta−3(Genbank登録番号AF084576−ラット(Rattus norvegicus))およびDelta−like3(マウス(Mus musculus))(Genbank登録番号NM#016941−ヒト(Homo sapiens))および米国特許第6121045号明細書(ミレニアム社(Millennium))、Delta−4(Genbank登録番号AB043894およびAF253468−ヒト(Homo sapiens))、およびSerrateファミリー、たとえばSerrate−1およびSerrate−2(国際公開第97/01571号パンフレット、国際公開第96/27610号パンフレットおよび国際公開第92/19734号パンフレット)Jagged−1(Genbank登録番号U73936−ヒト(Homo sapiens))およびJagged−2(Genbank登録番号AF029778−ヒト(Homo sapiens))、およびLAG−2を含む。ファミリーメンバー間のホモロジーは大きい。
【0133】
別の一実施形態では、活性化因子は構成的に活性であるNotch受容体またはNotch細胞内ドメイン、またはそのような受容体または細胞内ドメインをコードするポリヌクレオチドであることができる。
【0134】
別の一実施形態では、Notchシグナル伝達の活性化因子はNotch受容体の下流で作用する。したがって、たとえば、Notchシグナル伝達の活性化因子は構成的に活性であるDeltexポリペプチドまたはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであることができる。本発明で有用であるNotchシグナル伝達経路の他の下流成分は、好ましくは構成的に活性な型での、Deltexによって触媒されるRas/MAPKカスケードに関与するポリペプチド、プレセニリン(Presenilin)といったNotchのタンパク質分解切断に関与するポリペプチド、およびNotch標的遺伝子の転写調節に関与するポリペプチドを含む。
【0135】
Notchシグナル伝達活性化のためのポリペプチドとは、Notch活性化の結果として発現する任意のポリペプチド、およびそのようなポリペプチドの発現に関与する任意のポリペプチド、またはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも意味する。
【0136】
好ましくは、阻害因子が受容体または受容体をコードする核酸配列である場合、受容体が活性化される。したがって、たとえば、その物質が核酸配列である場合、受容体は好ましくは発現された際に構成的に活性である。
【0137】
任意の1つ以上の適当な標的(たとえばアミノ酸配列および/またはヌクレオチド配列)を、Notchシグナル伝達経路を調節することができる化合物および/または標的化分子を同定するために、さまざまな医薬スクリーニング技術の任意のものにおいて、用いることができる。そのような試験に用いられる標的は、溶液中で遊離しているか、固体担体上に付加されているか、細胞表面上に保持されているか、または細胞内に位置することができる。
【0138】
医薬スクリーニングのための技術は、ゲイセン(Geysen)の1984年9月13日公開の欧州特許第0138855号明細書に記載の方法に基づくことができる。要約すると、多数の異なる小ペプチド候補調節因子または標的化分子が、プラスチックピンまたは何らかの他の表面といった固体基材上に合成される。ペプチド被験化合物を適当な標的またはその断片と反応させ洗浄する。結合物をその後に、たとえば本分野でよく知られた方法を適当に当てはめることによって、検出する。精製された標的はまた、医薬スクリーニング技術における使用のために、プレート上に直接被覆することができる。高処理量スクリーニング(HTS)用に有用であるプレートは、好ましくは96、384、または384を超えるウェル/プレートを有するマルチウェルプレートとなる。細胞はまた、「芝生状」として広げることができる。代替的に、非中和抗体を用いてペプチドを捕捉して固体担体上に固定化することができる。高処理量スクリーニングを、合成化合物について上述したように、有機候補調節因子および標的化分子を同定するためにもまた用いることができる。
【0139】
本発明はまた、標的と結合することができる中和抗体が、標的との結合について特異的に被験化合物と競合する、競合医薬スクリーニング分析の使用も考慮する。
【0140】
Notchシグナル伝達経路の成分と結合および調節することができる抗体、ペプチドミメティックおよび小有機分子といった物質のスクリーニングおよび開発のための技術は本分野でよく知られている。これらは、シグナル伝達タンパク質を発現するためのファージディスプレイ系の使用、およびトランスフェクションした大腸菌(E.coli)またはその他の微生物の培養を用いて結合化合物候補の結合試験のためのタンパク質を産生することを含む(たとえば、G.セサリーニ(Cesarini),FEBS Letters,307(1):66−70(1992年7月);H.グラム(Gram)他,J.Immunol.Meth.,161:169−176 (1993);およびC.サマー(Summer)他,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,89:3756−3760 (1992年5月)を参照)。他のライブラリおよびスクリーニング技術は、たとえば、米国特許第6281344号明細書(ファイロス(Phylos))に記載されている。
【0141】
ポリペプチド、タンパク質、およびアミノ酸配列
ここで用いられる「アミノ酸配列」の語は、「ポリペプチド」の語および/または「タンパク質」の語と同義である。一部の場合には、「アミノ酸配列」の語は「ペプチド」の語と同義である。一部の場合には、「アミノ酸配列」の語は「タンパク質」の語と同義である。
【0142】
「ペプチド」は通常、アミノ酸10個ないし40個の長さ、好ましくはアミノ酸10個ないし35個の、短いアミノ酸配列をいう。
【0143】
アミノ酸配列は適当な起源から調製および単離することができ、または合成によって作製することができ、または組み換えDNA技術を用いて調製することができる。
【0144】
本発明で有用な「タンパク質」の定義内で、問題のタンパク質がその内因性機能の少なくとも1つを保持するような方法で、特定のアミノ酸残基を修飾することができ、そのような修飾タンパク質を「変異体」という。変異体タンパク質は、天然に存在するタンパク質中に存在する少なくとも一個のアミノ酸の付加、欠失、および/または置換によって修飾されうる。
【0145】
典型的には、修飾された配列が、必要な標的活性を、またはNotchシグナル伝達を調節する能力を保持するという条件で、アミノ酸置換を、たとえば1、2または3ないし10または20個の置換を行うことができる。アミノ酸置換は、天然に存在しないアナログの使用を含みうる。
【0146】
本発明で有用であるタンパク質はまた、サイレント変異を生じおよび機能的に等価のタンパク質を結果として生じる、アミノ酸残基の欠失、挿入または置換を有しうる。標的または調節機能が保持される限り、極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、および/または残基の両親媒的性質における類似性に基づいて、意図的なアミノ酸置換を行いうる。たとえば、負に荷電したアミノ酸はアスパラギン酸およびグルタミン酸を含む;正に荷電したアミノ酸はリジンおよびアルギニンを含む;および、同様の親水性値を有する、非荷電の極性頭部基を持つアミノ酸は、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、フェニルアラニン、およびチロシンを含む。
【0147】
参照を簡略にするために、主要な天然に存在するアミノ酸の1文字記号および3文字記号(およびその対応するコドン)を下記に示す:
【0148】
保存的置換は、たとえば下記の表に従って行うことができる。2列目で同一区分にあり、および好ましくは3列目で同一行にあるアミノ酸は、互いに置換が可能である:
【0149】
ここで用いられる「タンパク質」の語は、一本鎖ポリペプチド分子、および個々の構成ポリペプチドが共有または非共有的方法によって結合している複数ポリペプチド複合体を含む。ここで用いられる「ポリペプチド」および「ペプチド」の語は、モノマーがアミノ酸でありおよびペプチドまたはジスルフィド結合を介して結びついているポリマーをいう。サブユニットおよびドメインの語はまた、生物学的機能を有するポリペプチドおよびペプチドをいうことができる。本発明で有用なペプチドは、少なくとも標的またはシグナル伝達調節能力を有する。「断片」はまた変異体でありその語は典型的には、結合測定法で対象であり、その結合相手が既知であるかまたは測定可能な、タンパク質の選択された領域をいう。「断片」はしたがって、完全長ポリペプチドの一部、たとえば長さが約8ないし約1500アミノ酸、典型的には長さが約8ないし約745アミノ酸、好ましくは約8ないし約300、より好ましくは約8ないし約200アミノ酸、およびさらにより好ましくは長さが約10ないし約50または100アミノ酸であるアミノ酸配列をいう。「ペプチド」は好ましくはアミノ酸10個ないし40個の長さ、好ましくはアミノ酸10個ないし35個の、短いアミノ酸配列をいう。
【0150】
そのような変異体は、部位特異的突然変異誘発といった標準的な組み換えDNA技術を用いて調製することができる。挿入を行う場合は、挿入部位の両側に天然に存在する配列に対応する5’および3’隣接領域と共に挿入部をコードする合成DNA。配列を適当な酵素を用いて切断することができ、および合成DNAを切断部に繋ぐことができるように、隣接領域は、天然に存在する配列中の部位に対応する便利な制限部位を含む。コードされたタンパク質を作製するために、DNAをその後に本発明にしたがって発現させる。これらの方法は、DNA配列の操作について本分野で既知である数々の標準技術の単なる例であり、および他の既知の技術もまた用いることができる。
【0151】
ヌクレオチド配列の変異体もまた作製することができる。そのような変異体は好ましくはコドンが最適化された配列を含む。コドン最適化は、RNA安定性、および、したがって遺伝子発現を増大させる方法として本分野で既知である。遺伝子コードの冗長性は、いくつかの異なるコドンが同一のアミノ酸をコードする可能性があることを意味する。たとえば、ロイシン、アルギニン、およびセリンはそれぞれ、6種類の異なるコドンによってコードされる。異なる生物はその異なるコドンの使用に優先性を示す。たとえば、HIVといったウイルスは、多数の稀なコドンを用いる。稀なコドンが対応する一般的に用いられる哺乳類コドンで置換されるようにヌクレオチド配列を変えることによって、哺乳類標的細胞における当該配列の発現増加を達成することができる。哺乳類細胞およびさまざまな他の生物について、コドン用法表は本分野で既知である。
【0152】
タンパク質またはポリペプチドは、「成熟」タンパク質の形でありうるかまたは、融合タンパク質または前駆体といった、より大きいタンパク質の一部でありうる。たとえば、精製の助けとなる、分泌配列またはリーダー配列または前配列を含む追加のアミノ酸配列(HISオリゴマー、免疫グロブリンFc、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、FLAGなどといった)を含めることはしばしば有利である。同様にそのような追加の配列は、組み換え産生の際に追加の安定性を与えるために時に望ましい可能性がある。そのような場合には、追加の配列を切断(たとえば化学的にまたは酵素的に)して最終産物を生じることができる。一部の場合には、しかし、追加の配列はまた望ましい薬理プロファイルも与える可能性があり(IgFc融合タンパク質の場合のように)、その場合は追加の配列が投与の際に最終産物中に存在するように、追加の配列を除去しないことが好ましい可能性がある。
【0153】
Notchシグナル伝達の調節因子または抗原/抗原決定基がヌクレオチド配列を含む場合、それは適切には、哺乳類細胞における発現のためにコドンを最適化されたものでありうる。好ましい一実施形態では、そのような配列は全体が最適化されている。
【0154】
核酸およびポリヌクレオチド
一実施形態ではNotchシグナル伝達の調節因子は、ポリヌクレオチド、たとえばDeltaまたはSerrateといったNotchリガンドまたはその活性部分をコードするポリヌクレオチドであることができる。適切には、たとえば、そのようなポリヌクレオチドは、NotchリガンドDSLドメインおよび少なくとも1個のEGFドメイン、好ましくは少なくとも3個のEGFドメインをコードすることができる。適切にはそのポリヌクレオチドはまた、Notchリガンド膜貫通ドメインおよび好ましくはまたNotchリガンド細胞内ドメインもコードすることができる。
【0155】
そのようなポリヌクレオチドは、たとえばDNAワクチン接種などといった従来のDNAデリバリー手法によって投与することができ、または注射することができ、または他の方法でたとえば針を用いない系によって配送することができる。非ウイルスデリバリー機構は、脂質媒介トランスフェクション、リポソーム、免疫リポソーム、リポフェクチン、陽イオン性界面両親媒性化合物(CFA)およびその組み合わせを含む。そのようなデリバリー機構のための経路は、粘膜、経鼻、経口、非経口、消化管、局所、または舌下経路を含むがそれらに限定されない。
【0156】
「ポリヌクレオチド」は、少なくとも長さ10塩基で最大10,000塩基以上のヌクレオチドの高分子型で、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドまたはどちらかの種類のヌクレオチドの修飾形をいう。その語はDNAおよびRNAの一本鎖および二本鎖型、およびタンパク質核酸(PNA)といった誘導体化型も含む。
【0157】
これらは標準的な組み換えDNA方法論を用いて構築することができる。核酸はRNAまたはDNAであることができ、および好ましくはDNAである。RNAである場合は、操作はcDNA中間体を用いて実施することができる。一般的に、第一の領域をコードする核酸配列が調製され、適当な制限部位が5’および/または3’末端に与えられる。便利に配列はpBR322またはpUC19を基礎とするプラスミドベクターといった標準の実験ベクター中で操作される(下記参照)。適当な技術の正確な詳細については、サムブルック(Sambrook)他著の『分子クローニング』(Molecular Cloning)(コールド・スプリング・ハーパー社(Cold Spring Harbor),1989)または同様の標準的参考書を参照することができる。
【0158】
第二の領域をコードする核酸は同様に、類似のベクター系において提供することができる。
【0159】
核酸の起源は、公表文献または、GenBankのようなデータバンクへの参照によって確認することができる。目的の第一または第二の配列をコードする核酸は、起源が材料を提供してくれる場合は学術的起源または商業起源から、または配列データのみが利用可能である場合は適当な配列を合成またはクローニングすることによって、入手することができる。一般的にこれは、問題の遺伝子のクローニングを記載する文献情報源を参照することによって行うことができる。
【0160】
代替的に、利用可能な配列データが限られている場合、または、既知の核酸と相同であるか、でなければ関連した核酸を発現したい場合は、本分野で既知である核酸配列とハイブリダイズするヌクレオチド配列として、典型的な核酸を特徴づけることができる。
【0161】
数々の異なるヌクレオチド配列が、遺伝子コードの縮重の結果として、本発明に用いられる同一のタンパク質をコードすることができることが当業者に理解される。加えて、当業者は、通常の技術を用いて、本発明のヌクレオチド配列によってコードされたタンパク質に影響しないヌクレオチド置換を行って、標的タンパク質または本発明のNotchシグナル伝達調節のためのタンパク質が発現される任意の特定の宿主生物のコドン用法を反映することができることが理解される。
【0162】
一般的に、本発明で用いられるヌクレオチド配列に関する「変異体」、「ホモログ」または「誘導体」の語は、結果として生じるヌクレオチド配列がNotchシグナル伝達の調節因子をコードし対応する活性を保持するという条件で、当該配列からまたは当該配列への一個(以上)の核酸の、任意の置換、変異、修飾、交換、欠失、または付加を含む。
【0163】
上記に示す通り、配列ホモロジーに関して、好ましくは参照配列に対して少なくとも40%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%のホモロジーが存在する。より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%のホモロジーが存在する。ヌクレオチドホモロジー比較は上記の通り実施することができる。好ましい配列比較プログラムは上記のGCGウィスコンシン・ベストフィット(GCG Wisconsin Bestfit)プログラムである。初期設定のスコアリングマトリクスは同一のヌクレオチドごとに10、およびミスマッチごとに−9の一致値を有する。初期設定のギャップ生成失点は−50であり、初期設定のギャップ延長失点はヌクレオチド当たり−3である。
【0164】
本発明はまた、選択的に参照配列、またはその任意の変異体、断片または誘導体、または上記のいずれかの相補鎖とハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列も包含する。ヌクレオチド配列は、好ましくは少なくとも長さが15ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも長さが20、30、40または50ヌクレオチドである。
【0165】
ここで用いられる「ハイブリダイゼーション」の語は、「それによって、核酸鎖が相補鎖と塩基対形成を介して結びつく過程」およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術で実施される増幅の過程を含むものとする。
【0166】
ここに示すヌクレオチド配列と、またはその相補鎖と、選択的にハイブリダイズすることができる、本発明で有用であるヌクレオチド配列は、一般的に、ここに示す対応するヌクレオチド配列と、少なくとも20、好ましくは少なくとも25または30、たとえば少なくとも40、60または100以上の連続したヌクレオチドの領域にわたって、少なくとも75%、好ましくは少なくとも85または90%、およびより好ましくは少なくとも95%または98%相同である。本発明の好ましいヌクレオチド配列は、そのヌクレオチド配列と好ましくは少なくとも80または90%およびより好ましくは少なくとも95%相同である、そのヌクレオチド配列と相同な領域を含む。
【0167】
「選択的にハイブリダイズ可能な」の語は、プローブとして用いられるヌクレオチド配列が、本発明の標的ヌクレオチド配列がバックグラウンドより有意に高いレベルでプローブとハイブリダイズすることが見出されている条件下で用いられることを意味する。バックグラウンドのハイブリダイゼーションは、たとえば、スクリーニングされているcDNAライブラリまたはゲノムDNAライブラリ中に存在する他のヌクレオチド配列のために起こりうる。この現象において、バックグラウンドとは、プローブとライブラリの非特異的DNAメンバーとの間の相互作用によって生じる、標的DNAとで観察される特異的相互作用よりも強度が10倍小さい、好ましくは100倍小さいシグナルのレベルを意味する。相互作用の強度は、たとえば32Pを用いてプローブをたとえば放射性標識することによって測定することができる。
【0168】
ハイブリダイゼーション条件は、ベルガー(Berger)およびキンメル(Kimmel)(1987,『分子クローニング技術の手引き』(Guide to Molecular Cloning Techniques),Methods in Enzymology,Vol 152,アカデミックプレス社(Academic Press)、米国カリフォルニア州サンディエゴ)に示された通り、核酸結合複合体の融点(Tm)に基づいており、下記に説明する「厳密性(ストリンジェンシー)」を与える。
【0169】
最大の厳密性は典型的には約Tm−5℃(プローブのTmの5℃下)で生じる;高い厳密性はTmの約5℃ないし10℃下で;中等度の厳密性はTmの約10℃ないし20℃下で;および低い厳密性はTmの約20℃ないし25℃下で生じる。当業者によって理解される通り、最大厳密性のハイブリダイゼーションを用いて同一のヌクレオチド配列を同定または検出することができる一方、中等度(または低)厳密性ハイブリダイゼーションを用いて類似または関連ポリヌクレオチド配列を同定または検出することができる。
【0170】
好ましい一態様では、本発明は、厳密条件下で(たとえば65℃および0.1xSSC{1xSSC=0.15M NaCl、0.015Mクエン酸Na3、pH7.0)本発明のヌクレオチド配列とハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列を含む。本発明のヌクレオチド配列が二本鎖である場合は、二重鎖の両方の鎖が、個別にまたは組み合わせで、本発明に包含される。ヌクレオチド配列が一本鎖である場合、そのヌクレオチド配列の相補配列もまた本発明の範囲内に含まれることが理解される。
【0171】
ヌクレオチド配列はいくつかの方法で得ることができる。ここに記載された配列の変異体は、たとえばある範囲の起源から作製されたDNAライブラリをプロービングすることによって得ることができる。加えて、他のウイルス/細菌または細胞ホモログ、特に哺乳類細胞(たとえばラット、マウス、ウシ、および霊長類細胞)で見出される細胞ホモログを得ることができ、およびそのようなホモログおよびその断片は一般的に、ここで配列一覧中に示された配列と選択的にハイブリダイズすることができる。そのような配列は、他の動物種に由来するゲノムDNAライブラリまたはそれから作製されたcDNAライブラリをプロービングし、およびそのようなライブラリを、参照ヌクレオチド配列の全部または一部を含むプローブを用いて、中等度ないし高厳密性の条件下でプロービングすることによって得ることができる。同様の検討が、本発明で有用なアミノ酸および/またはヌクレオチド配列の種ホモログおよび対立遺伝子変異体を得ることに適用される。
【0172】
変異体および系統/種ホモログはまた、本発明の配列内の保存されたアミノ酸配列をコードする変異体およびホモログ内の配列を標的とするように設計されたプライマーを使用する縮重PCRを用いて得ることができる。保存された配列は、たとえば、いくつかの変異体/ホモログに由来するアミノ酸配列を整列させることによって予測することができる。配列の整列は、本分野で既知であるコンピューターソフトウェアを用いて実施することができる。たとえばGCGウィスコンシン・パイルアップ(GCG Wisconsin PileUp)プログラムは広く用いられている。縮重PCRに使用されるプライマーは、1つ以上の縮重部位を含み、および既知の配列に対する単一の配列プライマーを使用する配列クローニングに用いられるよりも低い厳密性条件で用いられる。
【0173】
代替的に、そのようなヌクレオチド配列は、特徴づけられた配列の部位特異的突然変異誘発によって得ることができる。これは、たとえば、ヌクレオチド配列が発現されている特定の宿主細胞についてコドン優先性を最適化するため、配列にサイレントコドン変化が必要である場合に有用である。制限酵素認識部位を導入するため、またはヌクレオチド配列によってコードされるNotchシグナル伝達の調節因子の活性を変化させるため、他の配列変化が望まれる可能性がある。
【0174】
本発明で有用であるDNAポリヌクレオチドといったヌクレオチド配列は、組み換えによって、合成によって、または当業者が利用可能な任意の手段によって作製することができる。配列はまた標準的技術によってクローニングすることができる。一般的に、プライマーは、目的の核酸配列の、一度にヌクレオチド一個の段階的製法を含む合成手段によって作製される。自動化技術を用いてこれを達成するための技術は本分野で容易に利用可能である。
【0175】
より長いヌクレオチド配列は、一般的に組み換え手段を用いて、たとえばPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)クローニング技術を用いて作製される。これは、クローニングを望む標的配列の領域に隣接する一対のプライマー(たとえば約15ないし30ヌクレオチドの)を作製し、プライマーを動物またはヒト細胞から得られたmRNAまたはcDNAと接触させ、目的領域の増幅を引き起こす条件下でポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施し、増幅された断片を単離し(たとえばアガロースゲル上で反応混合物を精製することによって)、および増幅されたDNAを回収することを含む。増幅されたDNAを適当なクローニングベクターへクローニングすることができるように、プライマーは適当な制限酵素認識部位を含むように設計することができる。より大きな遺伝子については、この方法で一部を別々にクローニングし、その後に繋いで完全な配列を形成することができる。
【0176】
タンパク質およびポリペプチド発現
組み換え産生のためには、宿主細胞を遺伝子操作して発現系または本発明のポリヌクレオチドを組み込むことができる。ポリヌクレオチドの宿主細胞への導入はデービス(Davis)他およびサムブルック(Sambrook)他といった多数の標準的な実験手引書に記載された通りの、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、トランスベクション(transvection)、マイクロインジェクション、陽イオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、スクレープローディング(scrape loading)、弾丸導入(ballistic introduction)、および感染といった方法によって実施することができる。そのような方法はまた、in vitroまたはin vivoで薬物送達系として使用することもできることが理解される。
【0177】
適当な宿主の代表的な例は、連鎖球菌、ブドウ球菌、大腸菌(E.coli)、ストレ
プトミセス、および枯草菌(Bacillus subtilis)細胞といった細菌細
胞;酵母細胞およびアスペルギルス(Aspergillus)細胞といった真菌細胞;
ショウジョウバエ(Drosophila)S2およびヨトウガ(Spodoptera
)Sf9細胞といった昆虫細胞;CHO、COS、NSO、HeLa、C127、3T3
、BHK、293およびBowesメラノーマ細胞といった動物細胞;Jurkat細胞
といったT細胞株;A20細胞といったB細胞株;および植物細胞を含む。
【0178】
本発明で有用なポリペプチドを産生するためには、幅広い発現系を用いることができる
。そのようなベクターは、中でも、染色体由来、エピソーム由来、およびウイルス由来ベ
クター、たとえば、細菌プラスミド由来、バクテリオファージ由来、トランスポゾン由来
、酵母エピソーム由来、挿入配列由来、酵母染色体配列由来、バキュロウイルス、SV4
0といったパポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、オー
エスキー病ウイルスおよびレトロウイルスといったウイルス由来のベクター、およびコス
ミドおよびファージミドといったプラスミドおよびバクテリオファージ遺伝因子に由来す
るもののようなその組み合わせに由来するベクターを含む。発現系構造は、発現を調節す
ると共に引き起こす調節領域を含むことができる。一般的に、ポリヌクレオチドを維持、
増殖、または発現するためにおよび/または宿主においてポリペプチドを発現するために
適当な任意の系またはベクターを、この際に発現のために用いることができる。適当なD
NA配列は、たとえば、サムブルック(Sambrook)他に示されたもののような幅
広い既知で通常の技術のうち任意のものによって発現系に挿入することができる。
【0179】
翻訳されたタンパク質の、小胞体内腔へ、細胞膜周辺腔へ、または細胞外環境への分泌
のために、適当な分泌シグナルを発現ポリペプチドに組み込むことができる。これらのシ
グナルは、ポリペプチドに対して内因性であることができ、または異種シグナルであるこ
とができる。
【0180】
本発明における使用のための活性物質は、組み換え細胞培養から、硫安またはエタノー
ル沈澱、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、リン酸セルロースク
ロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィ
ー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含
むよく知られた方法によって回収および精製することができる。非常に好ましくは、高速
液体クロマトグラフィーが精製に用いられる。ポリペプチドが単離および/または精製の
間に変性する場合は、タンパク質再折りたたみのための技術を用いて活性立体構造を再生
することができる。
【0181】
Notchシグナル伝達のためのポリペプチドおよびポリヌクレオチド
Notchは最初にショウジョウバエ(Drosophila)で、2つの異なるリガンドDeltaおよびSerrateに対する受容体として機能する膜貫通タンパク質として記載された。脊椎動物は複数のNotch受容体およびリガンドを発現する(下記で論述)。少なくとも4種類のNotch受容体(Notch−1、Notch−2、Notch−3、およびNotch−4)が現在までにヒト細胞で同定されている(たとえばGenBank登録番号AF308602、AF308601およびU95299−ヒト(Homo sapiens)を参照)。
【0182】
Notchシグナル伝達経路は胚における細胞運命二択決定を導く。Notchは最初にショウジョウバエ(Drosophila)で、2つの異なるリガンドDeltaおよびSerrateに対する受容体として機能する膜貫通タンパク質として記載された。脊椎動物は複数のNotch受容体およびリガンドを発現する(下記で論述)。
【0183】
Notchタンパク質は単一のポリペプチド前駆体として合成され、フリン様転換酵素による切断を受けて2つのポリペプチド鎖を生じ、それがさらにプロセシングされて成熟受容体を形成する。原形質膜に存在するNotch受容体は2つのNotchタンパク質分解産物のヘテロ二量体を含み、一方は細胞外ドメインの一部から成るN末端断片、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含み、他方は細胞外ドメインの大部分を含む。受容体を活性化する、Notchのタンパク質分解による切断段階は、ゴルジ装置で起こり、およびフリン様転換酵素によって媒介される。
【0184】
Notch受容体は、最大36個の上皮成長因子(EGF)様反復[Notch1/2=36、Notch3=34、およびNotch4=29]、3個のシステインリッチ反復(Lin−Notch(L/N)反復)を含む細胞外ドメイン、および細胞質ドメインを含む1個の膜貫通サブユニットを含むヘテロ二量体分子として膜に挿入されている。Notchの細胞質ドメインは6個のアンキリン様反復、1個のポリグルタミン鎖(OPA)および1個のPEST配列を含む。RAM23という別の1個のドメインがアンキリン反復の近位側に存在し、および、ショウジョウバエ(Drosophila)ではHairless抑制因子(Suppressor of Hairless)[Su(H)]、脊椎動物ではCBF1として知られる転写因子との結合に関与している(タムラ(Tamura)K,他 (1995) Curr.Biol.5;1416−1423 (TAMURA))。Notchリガンドはまた、複数のEGF様反復を細胞外ドメイン中に、すべてのNotchリガンドに特徴的であるシステインに富むDSL(Delta−Serrate Lag2)ドメインと共に示す(アルタバニス・ツァコマス(Artavanis−Tsakomas)他(1995)Science 268:225−232、アルタバニス・ツァコマス(Artavanis−Tsakomas)他(1999)Science 284:770−776)。
【0185】
Notch 受容体は、Delta、SerrateおよびScabrousといった細胞外リガンドの、Notchの細胞外ドメインのEGF様反復との結合によって活性化される。Deltaは活性化のために切断を必要とする。DeltaはADAMディスインテグリンメタロプロテアーゼであるクズバニアン(Kuzbanian)によって細胞表面で切断され、その切断現象はDeltaの可溶性の活性型を放出する。ヒトNotch−1タンパク質の発がん性変異体、別名TAN−1は、短縮された細胞外ドメインを持つが、構成的に活性でありおよびT細胞リンパ芽球性白血病に関与することが見出されている。
【0186】
cdc10/アンキリン細胞内ドメイン反復は、細胞内シグナル伝達タンパク質との物理的相互作用を媒介する。非常に顕著なことに、cdc10/アンキリン反復は、Hairless抑制因子(Suppressor of Hairless)[Su(H)]と相互作用する。Su(H)は、B細胞のエプスタイン・バーウイルス誘導性不死化に関与する哺乳類DNA結合タンパク質であるC−プロモーター結合因子−1[CBF−1]のショウジョウバエ(Drosophila)ホモログである。少なくとも培養細胞において、Su(H)はcdc10/アンキリン反復と細胞質中で結合し、隣接する細胞上のリガンドであるDeltaとのNotch受容体の相互作用の際に、核へ移動することが示されている。Su(H)はいくつかの遺伝子のプロモーター中に見出される応答配列を含み、Notchシグナル伝達経路において重要な下流タンパク質であることが見出されている。転写におけるSu(H)の関与は、Hairlessによって調節されると考えられている。
【0187】
Notchの細胞内ドメイン(NotchIC)はまた、直接の核機能を有する(リーバー(Lieber)他(1993)Gene Dev 7(10):1949−65(Lieber))。近年の研究は実際に、Notch活性化は、Notch細胞内ドメインの6個のcdc10/アンキリン反復が核に到達し転写活性化に参加することを必要とすることを示している。Notchの細胞内尾部のタンパク質分解切断部位は、gly1743とval1744の間と同定されている(部位3、またはS3という)(シュレーター(Schroeter),E.H.他(1998)Nature 393(6683):382−6(Schroeter))。核への進入のためにcdc10/アンキリン反復を放出するタンパク質分解切断段階は、プレセニリン(Presenilin)活性に依存すると考えられている。
【0188】
細胞内ドメインは核内に蓄積し、そこでCSLファミリータンパク質であるCBF1(ショウジョウバエ(Drosophila)ではHairless抑制因子(suppressor of hairless),Su(H)、線虫(C.elegans)ではLag−2)と転写活性化因子複合体を形成することが示されている(シュレーター(Schroeter);シュトルール(Struhl),G.他 (1998) Cell 93(4);649−60 (Struhl))。NotchIC−CBF1複合体はその後、bHLHタンパク質であるHES(hairy−enhancer of split like)1および5といった標的遺伝子を活性化する(ワインマスター(Weinmaster)G.(2000)Curr.Opin.Genet.Dev.10:363−369(Weinmaster)) 。このNotchの核機能はまた、哺乳類Notchホモログについても示されている(ルー(Lu),F.M.他(1996)Proc Natl Acad Sci 93(11);5663−7 (Lu))。
【0189】
S3プロセシングは、NotchリガンドDeltaまたはSerrate/Jaggedの結合に反応してのみ生じる。初期のNotch受容体のゴルジにおける翻訳後修飾(ムンロー(Munro)S,フリーマン(Freeman)M.(2000) Curr.Biol.10;813−820 (Munro);ユー(Ju)BJ,他 (2000) Nature 405;191−195 (Ju))は、少なくとも部分的に、2種類のリガンドのどちらが細胞表面上に発現されるかを調節するように見える。Notch受容体は、Lin/Notchモチーフに結合するグリコシルトランスフェラーゼ酵素であるフリンジ(Fringe)によって細胞外ドメインで修飾される。フリンジは、O−結合型フコース基をEGF様反復に付加することによってNotchを修飾する(モロニー(Moloney)DJ,他 (2000) Nature 406:369−375 (Moloney)、ブルッカー(Brucker)K,他 (2000) Nature 406:411−415 (Brucker))。フリンジによるこの修飾はリガンド結合を妨げないが、しかしリガンドに誘導されるNotchにおける立体構造変化に影響しうる。さらに、近年の研究は、フリンジの作用はNotchを修飾してSerrate/Jaggedリガンドと機能性に相互作用することを妨げるが、しかし優先的にDeltaと結合することを可能にすることを示唆する(パニン(Panin)VM,他 (1997) Nature 387;908−912 (Panin)、ヒックス(Hicks)C,他 (2000) Nat.Cell.Biol.2;515−520 (Hicks))。ショウジョウバエ(Drosophila)は単一のフリンジ遺伝子を持つが、脊椎動物は複数の遺伝子を発現することが知られている(Radical,ManicおよびLunatic Fringes)(アーヴィン(Irvine)KD (1999) Curr.Opin.Genet.Devel.9;434−441 (Irvine))。
【0190】
Notch受容体からのシグナル伝達は、2つの異なる経路を介して起こりうる(たとえば図1を参照)。よりよく定義された経路は、Notchの細胞内ドメイン(NotchIC)のタンパク質分解切断を含み、NotchICは核へ移動して、CSLファミリータンパク質のCBF1(ショウジョウバエ(Drosophila)ではsuppressor of hairless,Su(H)、線虫(C.elegans)ではLag−2)と転写活性化因子複合体を形成する。NotchIC−CBF1複合体はその後、bHLHタンパク質であるHES(hairy−enhancer of split like)1および5といった標的遺伝子を活性化する。Notchはまた、亜鉛フィンガーを含む細胞質タンパク質Deltexが関与するCBF1−非依存的な方法でシグナル伝達することができる。CBF1とは異なり、DeltexはNotch活性化後に核へ移動しないが、代わりにGrb2と相互作用しおよびRas−JNKシグナル伝達経路を調節することができる。
【0191】
Notchシグナル伝達経路の標的遺伝子は、Deltex、Hesファミリーの遺伝子(特にHes−1)、分割増強剤(Enhancer of Split)[E(spl)]複合体遺伝子、IL−10、CD−23、CD−4およびDll−1を含む。
【0192】
Deltexは、細胞内ドッキングタンパク質であり、Su(H)がNotchの細胞内尾部との相互作用部位から離れる際にSu(H)と置き換わる。Deltexは亜鉛フィンガーを含む細胞質タンパク質である(アルタバニス・ツァコマス(Artavanis−Tsakomas)他(1995)Science 268:225−232;アルタバニス・ツァコマス(Artavanis−Tsakomas)他(1999)Science 284:770−776;オズボーン(Osborne)B,ミーレ(Miele)L.(1999)Immunity 11;653−663 (Osborne))。DeltexはNotch細胞内ドメインのアンキリン反復と相互作用する。DeltexはGrb2と相互作用しおよびRas−JNKシグナル伝達経路を調節することにより、Notch経路活性化を促進することを研究が示している(マツノ(Matsuno)他(1995)Development 121(8):2633−44;マツノ(Matsuno)K,他(1998)Nat.Genet.19:74−78)。Deltexはまた、Su(H)がNotchの細胞内尾部と結合することを妨げるドッキングタンパク質として作用する(マツノ(Matsuno))。このように、Su(H)は核内へ放出され、そこで転写調節因子として作用する。近年の証拠はまた、脊椎動物B細胞系において、Su(H)ホモログのCBF1でなくDeltexが、E47機能の阻害を担っていることを示唆する(オルデントリッヒ(Ordentlich)他(1998)Mol.Cell.Biol.18:2230−2239 (Ordentlich))。Deltexの発現は、Notch活性化の結果として、正のフィードバックループによってアップレギュレートされる。ヒト(Homo sapiens)Deltex(DTX1)mRNAの配列はGenBank登録番号AF053700に見出される。
【0193】
Hes−1(Hairy−enhancer of Split−1)(タケバヤシ(Takebayashi K.)他(1994)J Biol Chem 269(7):150−6 (Takebayashi)) は、へリックス−ループ−へリックスの基本構造を有する転写因子である。Hes−1はCD4サイレンサー中の重要な機能部位と結合し、CD4遺伝子発現の抑制に結びつく。このように、Hes−1はT細胞運命の決定に強力に関与している。Hesファミリーからの他の遺伝子は、Notch活性化によってもまた発現がアップレギュレートされるHes−5(Splitホモログの哺乳類エンハンサー)、およびHes−3を含む。Hes−1の発現は、Notch活性化の結果としてアップレギュレートされる。マウス(Mus musculus)Hes−1の配列はGenBank登録番号D16464に見出される。
【0194】
E(spl)遺伝子複合体[E(spl)−C](ライマイスター(Leimeister)C.他(1999)Mech Dev 85(1−2):173−7 (Leimeister))は7個の遺伝子を含み、そのうちE(spl)およびGrouchoだけが、突然変異体の場合に目に見える表現型を示す。E(spl)はSplit突然変異を促進する能力に因んで命名され、SplitはNotchの別名である。実際、E(spl)−C遺伝子はachaete−scute複合体遺伝子発現の調節を介してDeltaを抑制する。E(spl)の発現は、Notch活性化の結果としてアップレギュレートされる。
【0195】
インターロイキン−10(IL−10)は、Th1細胞によるサイトカイン産生を抑制することができる、Th2細胞によって産生される因子としてマウスで最初に特徴づけられた。その後、IL−10はマクロファージ、ケラチノサイト、B細胞、Th0細胞、およびTh1細胞を含む多数の他の細胞型によって産生されることが示された。IL−10は、現在はウイルスIL−10と表されるエプスタイン−バーbcrf1遺伝子と、大きなホモロジーを示す。いくつかの免疫刺激効果が報告されているが、IL−10は主に免疫抑制性サイトカインと考えられている。T細胞応答のIL−10による阻害は、抗原提示細胞の付帯機能の低下を通じて主に媒介される。IL−10は特に、マクロファージによる数々の炎症促進性サイトカインの産生を抑制すること、および共刺激分子およびMHCクラスII発現を阻害することが報告されている。IL−10はまた、好中球および好酸球といった他の骨髄細胞に対して抗炎症作用を発揮する。B細胞に対しては、IL−10はアイソタイプ転換および増殖に影響する。より近年に、IL−10は調節T細胞の誘導において、およびその抑制作用の可能な媒介因子として、役割を果たすことが報告された。IL−10がNotchシグナル伝達経路の直接の下流の標的かどうかは不明であるが、その発現はNotch活性化と一致して強くアップレギュレートされることが見出されている。IL−10のmRNA配列はGenBank整理番号GI1041812に見出される。
【0196】
CD−23は、B細胞活性化および増殖のための重要な分子であるヒト白血球分化抗原CD23(FCE2)である。CD−23はIgEに対する低親和性受容体である。さらに、短縮型分子を分泌することができ、その後、強力な細胞分裂誘起性増殖因子として機能する。CD−23の配列はGenBank整理番号GI1783344に見出される。
【0197】
CTLA4(細胞傷害性Tリンパ球活性化タンパク質4)は、T細胞の表面上に見出される付属分子であり、気道炎症細胞動員の調節およびアレルゲン吸入後のTヘルパー細胞分化に役割を果たすと考えられている。CTLA4をコードする遺伝子のプロモーター領域はCBF1応答配列を有し、その発現はNotch活性化の結果としてアップレギュレートされる。CTLA4の配列はGenBank登録番号L15006に見出される。
【0198】
Dlx−1(distalless−1)( マクギネス(McGuinness)T.他(1996)Genomics 35(3):473−85 (McGuiness)) 発現は、Notch活性化の結果としてダウンレギュレートされる。Dlx遺伝子の配列はGenBank登録番号U51000〜3に見出される。
【0199】
CD−4発現は、Notch活性化の結果としてダウンレギュレートされる。CD−4抗原の配列はGenBank登録番号XM006966に見出される。
【0200】
上記の通り、Notch受容体ファミリーは、T細胞運命決定に影響する細胞−細胞シグナル伝達現象に関与する。このシグナル伝達において、NotchICは核に局在化し、および活性化された受容体として機能する。哺乳類NotchICは転写抑制因子CBF1と相互作用する。NotchIC cdc10/アンキリン反復はこの相互作用に必須であると提案されている。シェ(Hsieh)他(Hsieh et al.(1996) Molecular & Cell Biology 16(3):952−959)は、マウスNotchICのN末端114アミノ酸領域はCBF1相互作用ドメインを含むとさらに示している。また、NotchICは核内のDNAに結合したCBF1を標的にし、および抑制ドメインの遮蔽によりCBF1媒介抑制を止めることによって作用すると提案されている。エプスタイン・バーウイルス(EBV)不死化タンパク質EBNAもまた、CBF1拘束および抑制の遮蔽を利用して、CBF1に抑制されたB細胞遺伝子の発現をアップレギュレートすることが知られている。このように、Notchシグナル伝達の模倣が、EBVに導かれる不死化に関与する。ストローブル(Strobl)他(Strobl et al (2000) J Virol 74(4):1727−35)は、同様に「EBNA2はしたがって、活性化されたNotch受容体の機能的同等物とみなしうる」ことを報告する。このカテゴリに入る他のEBVタンパク質は、BARF0(クサノ(Kusano)およびラーブ・トルアブ(Raab−Truab)(2001) J Virol 75(1):384−395 (Kusano and Raab−Traub))およびLMP2Aを含む。
【0201】
Numb、Mastermind、およびDshといったNotchシグナル伝達経路に関与する他の遺伝子、およびNotch活性化によって発現が調節されるすべての遺伝子は、本発明の範囲に含まれる。
【0202】
Notchシグナル伝達活性化のためのポリペプチドおよびポリヌクレオチド
好ましい一実施形態では、Notchシグナル伝達の調節因子は、Notchシグナル伝達活性化のための物質、好ましくはNotchリガンドまたはその断片、変異体、誘導体、ホモログまたはミメティックとなる。
【0203】
現在までに同定された哺乳類Notchリガンドの例は、Deltaファミリー、たとえばDelta−1(Genbank登録番号AF003522−ヒト(Homo sapiens))、Delta−3(Genbank登録番号AF084576−ラット(Rattus norvegicus))およびDelta−like3(マウス(Mus musculus))、Serrateファミリー、たとえばSerrate−1およびSerrate−2(国際公開第97/01571号パンフレット、国際公開第96/27610号パンフレットおよび国際公開第92/19734号パンフレット)、Jagged−1およびJagged−2(Genbank登録番号AF029778−ヒト(Homo sapiens))、およびLAG−2を含む。ファミリーメンバー間のホモロジーは大きい。
【0204】
既知の哺乳類Notchリガンドの別のホモログは、標準的手法を用いて同定することができる。「ホモログ」によって、たとえば上述のような既知のNotchリガンドのうち任意の1つと、アミノ酸または核酸配列ホモロジーのどちらかである配列ホモロジーを示す遺伝子産物を意味する。典型的には、既知のNotchリガンドのホモログは、少なくとも10個、好ましくは少なくとも20個、好ましくは少なくとも50個、適切には少なくとも100個のアミノ酸の配列にわたって、またはNotchリガンドの全長にわたって、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、対応する既知のNotchリガンドとアミノ酸レベルで同一である。2つ以上のアミノ酸または核酸配列の間の配列ホモロジーを計算するための技術およびソフトウェアは本分野でよく知られている(たとえばhttp://www.ncbi.nlm.nih.govおよびアウスベル(Ausubel)他、『分子生物学の最新プロトコル』(Current Protocols in Molecular Biology)(1995)、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ社(John Wiley & Sons,Inc.)を参照)。
【0205】
上記の通り、現在までに同定されたNotchリガンドは、タンパク質のアミノ末端に20ないし22アミノ酸を含む診断的なDSLドメインを(D=Delta、S=Serrate、L=Lag2)、および細胞外表面上に14まで、またはそれ以上のEGF様反復を有する。したがって、Notchリガンドのホモログはまた、N末端にDSLドメインを、および細胞外表面上に14まで、またはそれ以上のEGF様反復を含むことが好ましい。
【0206】
加えて、適当なホモログは好ましくはNotch受容体と結合する能力がある。結合は、in vitro結合測定法を含む、本分野で既知であるさまざまな技術によって評価することができ、また受容体の活性化(作用因子または部分作用因子の場合)は、たとえば、本文書の実施例および、本文が参照により本開示に含まれる国際公開第03/012441号パンフレット(ロランティス社(Lorantis))に記載された通りの測定法の使用によって測定することができる。
【0207】
Notchリガンドのホモログは、いくつかの方法によって、たとえばゲノムライブラリまたはcDNAライブラリを、Notchリガンドをコードする核酸のすべてまたは一部を含むプローブを用いて、中等度ないし高厳密性条件下で(たとえば0.03M塩化ナトリウムおよび0.03Mクエン酸ナトリウム、約50℃ないし約60℃にて)プロービングすることによって同定することができる。代替的に、ホモログはまた、保存されたアミノ酸配列をコードする変異体およびホモログの中の配列を標的とするように設計されたプライマーを一般的に使用する縮重PCRを用いて得ることができる。そのプライマーは1つ以上の縮重位置を含み、および既知の配列に対して単一の配列プライマーを用いた配列クローニングに使用されるよりも低い厳密条件下で用いられる。
【0208】
ポリペプチド物質は、哺乳類細胞から精製するか、適当な宿主細胞における組み換え発現によって得るか、または購入することができる。代替的に、当該ポリペプチドをコードする核酸構造を用いることができる。別の一例として、DeltaまたはSerrateといったNotchまたはNotchリガンドの過剰発現は、SerrateまたはDelta遺伝子といった内因性遺伝子を活性化することができる核酸構造の導入によって引き起こすことができる。特に、遺伝子活性化は、標的細胞のゲノム中のSerrateまたはDeltaプロモーターといった天然プロモーターの代わりに異種プロモーターを挿入する、相同組み換えの利用によって達成することができる。
【0209】
本発明の活性化分子は、別の一実施形態では、Notch−タンパク質発現または細胞膜上の提示またはシグナル伝達経路を修飾することができる可能性がある。標的細胞表面上の完全に機能するNotch−タンパク質の提示を促進する物質は、ショウジョウバエ(Drosophila)のKuzbanian遺伝子の産物といったマトリクスメタロプロテイナーゼ(ドクツ(Dkuz)他(1997)Cell 90:271−280 (Dkuz))および他のADAMALYSIN遺伝子ファミリーメンバーを含む。
【0210】
Notchリガンドドメイン
上記で論述した通り、Notchリガンドは典型的にはいくつかの特徴的なドメインを含む。さまざまな天然に存在するヒトNotchリガンドについての一部の予想/候補ドメイン位置(前駆タンパク質中のアミノ酸番号付けに基づく)を下記に示す:
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0211】
DSLドメイン
典型的なDSLドメインは、下記の共通アミノ酸配列の大部分または全部を含みうる:
【0212】
好ましくはDSLドメインは下記の共通アミノ酸配列の大部分または全部を含みうる:
ここで:
AROは、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファンまたはヒスチジンといった芳香族アミノ酸残基である;
NOPは、グリシン、アラニン、プロリン、ロイシン、イソロイシンまたはバリンといった非極性アミノ酸残基である;
BASは、アルギニンまたはリジンといった塩基性アミノ酸残基である;および
ACMは、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギンまたはグルタミンといった酸またはアミドアミノ酸残基である。
【0213】
好ましくはDSLドメインは下記の共通アミノ酸配列の大部分または全部を含みうる:
(ここでXaaは任意のアミノ酸であることができ、およびAsxはアスパラギン酸またはアスパラギンのどちらかである)。
【0214】
さまざまな起源に由来するNotchリガンドからのDSLドメインの整列を図3に示す。
【0215】
使用するDSLドメインは、たとえばショウジョウバエ(Drosophila)、ツメガエル(Xenopus)、ラット、マウスまたはヒトを含む任意の適当な生物種に由来することができる。好ましくはDSLドメインは、脊椎動物、好ましくは哺乳類、好ましくはヒトNotchリガンド配列に由来する。
【0216】
適切には、たとえば、本発明における用途のためのDSLドメインは、ヒトJagged1のDSLドメインに対して、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有しうる。
【0217】
代替的に、本発明における用途のためのDSLドメインは、たとえば、ヒトJagged2のDSLドメインに対して、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有しうる。
【0218】
代替的に、本発明における用途のためのDSLドメインは、たとえば、ヒトDelta1のDSLドメインに対して、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有しうる。
【0219】
代替的に、本発明における用途のためのDSLドメインは、たとえば、ヒトDelta3のDSLドメインに対して、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有しうる。
【0220】
代替的に、本発明における用途のためのDSLドメインは、たとえば、ヒトDelta4のDSLドメインに対して、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有しうる。
【0221】
EGF様ドメイン
EGF様モチーフは、血液凝固カスケードに関与するものを含む、さまざまなタンパク質、およびEGFおよびNotchおよびNotchリガンドで見つかっている(フュリーおよびフュリー(Furie and Furie),1988,Cell 53;505−518)。たとえば、このモチーフは、血液凝固因子IXおよびXといった細胞外タンパク質で(リーズ(Rees)他,1988,EMBO J.7;2053−2061;フュリーおよびフュリー(Furie and Furie),1988,Cell 53:505−518)、他のショウジョウバエ(Drosophila)遺伝子で(クヌースト(Knust)他,1987 EMBO J.761−766;ロスバーグ(Rothberg)他,1988,Cell 55:1047−1059)、およびトロンボモジュリン(スズキ(Suzuki)他,1987,EMBO J.6:1891−1897)およびLDL受容体(ズドホフ(Sudhof)他,1985,Science 228:815−822)といった一部の細胞表面受容体タンパク質で見つかっている。タンパク質結合部位が、トロンボモジュリンおよびウロキナーゼ中のEGF反復ドメインにマッピングされている(クロサワ(Kurosawa)他,1988,J.Biol.Chem 263:5993−5996;アペラ(Appella)他,1987,J.Biol.Chem.262:4437−4440)。
【0222】
PROSITEによって報告された通り、典型的なEGFドメインは、(EGFにおいて)ジスルフィド結合に関与すると示されている6個のシステイン残基を含みうる。主構造は、二本鎖のβ−シートに続くループとその後のC末端の短い二本鎖のシートであると提案されているが必ずしも必要ではない。保存されたシステインの間のサブドメインは、典型的なEGF様ドメインの下記の略図に示す通り、長さが大きく異なる:
【化4】
ここで:
‘C’:ジスルフィド結合に関与する保存されたシステイン。
‘G’:しばしば保存されたグリシン
‘a’:しばしば保存された芳香族アミノ酸
‘x’:任意の残基
5番目と6番目のシステインの間の領域は、2個の保存されたグリシンを含み、そのうち少なくとも1個は大部分のEGF様ドメイン中に通常存在する。
【0223】
使用するEGF様ドメインは、たとえばショウジョウバエ(Drosophila)、ツメガエル(Xenopus)、ラット、マウスまたはヒトを含む任意の適当な生物種に由来することができる。好ましくはEGF様ドメインは、脊椎動物、好ましくは哺乳類、好ましくはヒトNotchリガンド配列に由来する。
【0224】
適切には、たとえば、本発明における用途のためのEGF様ドメインは、ヒトJagged1のEGF様ドメインに対して、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有しうる。
【0225】
代替的に、本発明における用途のためのEGF様ドメインは、たとえば、ヒトJagged2のEGF様ドメインに対して、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有しうる。
【0226】
代替的に、本発明における用途のためのEGF様ドメインは、たとえば、ヒトDelta1のEGF様ドメインに対して、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有しうる。
【0227】
代替的に、本発明における用途のためのEGF様ドメインは、たとえば、ヒトDelta3のEGF様ドメインに対して、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有しうる。
【0228】
代替的に、本発明における用途のためのEGF様ドメインは、たとえば、ヒトDelta4のEGF様ドメインに対して、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有しうる。
【0229】
実際問題として、任意の特定のアミノ酸配列が別の配列と少なくともX%同一であるかどうかは、従来は既知のコンピュータープログラムを用いて決定することができる。たとえば、クエリー配列と対象配列との間の最良の全体の一致は、全体配列整列ともいうが、たとえば、ブルトラグ(Brutlag)他(Comp.App.Biosci.(1990)6:237−245)のアルゴリズムに基づくFASTDBコンピュータープログラムといったプログラム、またはここに記載の他のアルゴリズムを用いて決定することができる。配列整列では、クエリー配列および対象配列は、両方ともヌクレオチド配列であるかまたは、両方ともアミノ酸配列である。全体配列整列の結果は、パーセント同一性として与えることができる。
【0230】
「NotchリガンドN末端ドメイン」の語は、Notchリガンド配列の、N末端からDSLドメインの開始までの部分を意味する。この語は天然に存在するドメインに対応する活性を有する配列変異体、断片、誘導体、およびミメティックを含むことが理解される。
【0231】
適切には、たとえば、本発明における用途のためのNotchリガンドN末端ドメインは、ヒトJagged1のNotchリガンドN末端ドメインに対して、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有しうる。
【0232】
代替的に、本発明における用途のためのNotchリガンドN末端ドメインは、たとえば、ヒトJagged2のNotchリガンドN末端ドメインに対して、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有しうる。
【0233】
代替的に、本発明における用途のためのNotchリガンドN末端ドメインは、たとえば、ヒトDelta1のNotchリガンドN末端ドメインに対して、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有しうる。
【0234】
代替的に、本発明における用途のためのNotchリガンドN末端ドメインは、たとえば、ヒトDelta3のNotchリガンドN末端ドメインに対して、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有しうる。
【0235】
代替的に、本発明における用途のためのNotchリガンドN末端ドメインは、たとえば、ヒトDelta4のNotchリガンドN末端ドメインに対して、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有しうる。
【0236】
ここで用いられる「異種アミノ酸配列」または「異種ヌクレオチド配列」の語は、天然の配列には見出されない配列(たとえばNotchリガンド配列の場合には、天然のNotchリガンド配列には見出されない)またはそのコード配列には見出されない配列を意味する。典型的には、たとえば、そのような配列は、IgFcドメイン、またはV5Hisタグといったタグでありうる。
【0237】
測定法
ある物質を、Notchシグナル伝達を調節するためにまたはNotch受容体を活性化するために用いることができるかどうかは、たとえば、国際公開第03/012441号パンフレットとして公開された我々の同時出願中の国際出願に記載されたような、ここで実施例に記載されたような、またはバーナム−フィニー(Varnum−Finney)他、Journal of Cell Science 113,4313−4318 (2000)に記載されたような、適切なスクリーニング測定法を用いて決定することができる。
【0238】
加えて、たとえば、Notchシグナル伝達は、タンパク質測定法によって、または核酸測定法によって監視することができる。Notch受容体の活性化は、その細胞質ドメインのタンパク質分解切断、および細胞核へのその移動に繋がる。ここでいう「検出可能なシグナル」は、Notchの切断された細胞内ドメインの存在に帰することができる任意の検出可能な徴候であることができる。したがって、Notchシグナル伝達の増加は、切断されたNotchドメインの細胞内濃度を測定することによって、タンパク質レベルで評価することができる。Notch受容体の活性化はまた、一連の下流の反応を触媒し、ある種の明確な遺伝子の発現のレベルの変化に繋がる。したがって、Notchシグナル伝達の増加は、たとえば特定のmRNAの細胞内濃度を測定することによって、核酸レベルで評価することができる。本発明の好ましい一実施形態では、測定法はタンパク質測定法である。本発明の別の好ましい一実施形態では、測定法は核酸測定法である。
【0239】
核酸測定法を用いることの利点は、核酸測定法は高感度であり少量の試料を分析することができることである。
【0240】
任意の時間に測定された、特定のmRNAの細胞内濃度は、対応する遺伝子のその時点での発現レベルを反映する。したがって、Notchシグナル伝達経路の下流標的遺伝子のmRNAのレベルは、免疫系のT細胞の間接的測定によって測定することができる。特に、Deltex、Hes−1および/またはIL−10 mRNAのレベルの上昇はたとえば誘導された免疫反応不顕性を示しうる一方、Dll−1またはIFN−γ mRNAのレベルまたはIL−2、IL−5およびIL−13といったサイトカインをコードするmRNAのレベルの上昇は反応性の改善を示しうる。
【0241】
さまざまな核酸測定法が既知である。既知であるかまたは後に開示される任意の従来の技術を用いることができる。適当な核酸測定法の例は下記に示され、増幅、PCR、RT−PCR、RNase保護、ブロッティング、分光分析、レポーター遺伝子測定法、遺伝子チップアレイおよび他のハイブリダイゼーション法を含む。
【0242】
特に、遺伝子の存在、増幅および/または発現は、試料中で直接に、たとえば、従来のmRNAの転写を定量するサザンブロッティング、ノーザンブロッティング、ドットブロッティング(DNAまたはRNA分析)、またはin situハイブリダイゼーションによって、適当に標識化されたプローブを用いて測定することができる。当業者は必要に応じて、これらの方法をどのように改変しうるかを容易に考えることができる。
【0243】
PCRは最初は、不純な試料からDNAを増幅する手段として開発された。その技術は、反応溶液を繰り返し加熱および冷却してプライマーを標的配列とアニーリングさせる温度サイクル、および複製娘鎖の形成のためのそれらのプライマーの伸長に基づく。RT−PCRは、逆転写酵素を用いた最初のcDNA鎖の生成に、RNAテンプレートを用いる。cDNAはその後、標準のPCR手順に従って増幅する。合成および変性の繰り返しサイクルの結果として、生じる標的DNAのコピー数の指数的増加が起こる。しかし、反応成分が限られてくるにつれ、増幅の速度は低下して停滞状態に達し、その後はPCR産物の正味の増加はほとんどまたは全く無い。核酸標的の開始コピー数が多いほど、この「終点(エンドポイント)」に到達するのは早い。
【0244】
リアルタイムPCRは、蛍光タグまたは蛍光色素で標識化されたプローブを用い、一定数のサイクル後の産物蓄積の測定のためでなく、蓄積していくPCR産物を検出するために用いられるという点で、定量測定のためのエンドポイントPCRとは異なる。反応は、標的配列の増幅が蛍光の有意な増加によって最初に検出される際のサイクル反応中の時点によって特徴づけられる。
【0245】
リボヌクレアーゼ保護(RNase保護)測定法は、溶液中の特定のRNAの定量のための極めて高感度な技術である。リボヌクレアーゼ保護測定法は、標的として細胞RNA全体またはポリ(A)選択されたmRNAについて実施することができる。リボヌクレアーゼ保護測定法の感度は、高い比活性で放射性標識された相補in vitro転写物プローブの使用に由来する。プローブおよび標的RNAは溶液中でハイブリダイズされ、その後、混合物は希釈されてリボヌクレアーゼ(RNase)で処理され、残っている一本鎖RNAすべてが分解される。プローブのハイブリダイズした部分は消化から保護され、変性ポリアクリルアミドゲル上での混合物の電気泳動とその後のオートラジオグラフィーによって可視化することができる。保護された断片は高分解能ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分析されるため、リボヌクレアーゼ保護測定法を用いてmRNA特性を正確にマッピングすることができる。プローブが標的RNAに関して過剰なモル数でハイブリダイズされるならば、結果として生じるシグナルは試料中の相補RNAの量に正比例する。
【0246】
遺伝子発現はまた、レポーター系を用いて検出することができる。そのようなレポーター系は、たとえば監視される遺伝子の発現系の調節下にある、容易に同定可能なマーカーを含むことができる。FACSによって検出および選別が可能である蛍光マーカーが好ましい。特に好ましいのはGFPおよびルシフェラーゼである。別の種類の好ましいレポーターは、細胞表面マーカー、すなわち細胞表面上に発現されしたがって容易に同定可能であるタンパク質である。
【0247】
一般的に、レポーター遺伝子の発現によってNotchシグナル伝達を検出するために有用なレポーター構造は、サムブルック(Sambrook)他(1989)の一般的教示に従って構築することができる。典型的には、本発明に記載の構造は、目的の遺伝子によるプロモーター、およびたとえばGFPまたはルシフェラーゼのような目的のレポーター構造をコードするコード配列を含む。GFPおよびルシフェラーゼをコードするベクターは本分野で既知でありおよび市販されている。
【0248】
遺伝子の発現の検出に基づく細胞の選別は、上記に例示された通り、本分野で既知である任意の技術によって実施することができる。たとえば、細胞はフローサイトメトリーまたはFACSによって選別することができる。全般的参考には、『フローサイトメトリーおよびセルソーティング:実験の手引き』(Flow Cytometry and Cell Sorting: A Laboratory Manual)(1992)A.ラドブルーフ(Radbruch)(編)、スプリンガー・ラボラトリー(Springer Laboratory)、ニューヨーク、を参照。
【0249】
フローサイトメトリーは、細胞を研究および精製するための強力な方法である。フローサイトメトリーは特に免疫学および細胞生物学で幅広い用途を見出している:しかし、FACSの能力は生物学の他の多数の分野で応用することができる。頭文字のF.A.C.S.はFluorescence Activated Cell Sorting(蛍光活性化細胞選別)を表し、および「フローサイトメトリー」と相互に交換可能に用いられる。FACSの原理は、液体の細流中にある個々の細胞に一種類以上のレーザー光線を通過させると、光の散乱が起こり蛍光色素がさまざまな周波数で光を放出することである。光電子増倍管(PMT)が光を電気シグナルに変換し、電気シグナルはソフトウェアで処理されて、当該細胞についてのデータを生成する。明確な特徴を持つ細胞の部分集団を特定し、および懸濁液から非常に高純度で(~100%)自動的に選別することができる。
【0250】
FACSを用いて、ポリペプチドをコードする組み換えDNAをトランスフェクションした細胞における遺伝子発現を測定することができる。これは、タンパク質産物の標識化によって直接的に、または、当該構造中のレポーター遺伝子を用いることによって間接的に達成することができる。レポーター遺伝子の例はβ−ガラクトシダーゼおよび緑色蛍光タンパク質(GFP)である。β−ガラクトシダーゼ活性はFACSによって、フルオレセインジガラクトシド(FDG)といった蛍光基質を用いて検出することができる。FDGは低張ショックによって細胞に導入され、および酵素によって切断されて蛍光産物を生じ、蛍光産物は細胞内に捕捉される。1つの酵素がしたがって大量の蛍光産物を生じることができる。GFP構造を発現している細胞は基質の添加無しで蛍光を発する。異なる励起周波数を有するが同一のチャンネルで蛍光を発するGFPの突然変異体が入手可能である。2レーザーFACS装置では、異なるレーザーで励起される細胞を識別することができ、およびしたがって2種類のトランスフェクションを同時に測定することができる。
【0251】
細胞選別の別の方法もまた使用することができる。たとえば、本発明は、mRNAと相補的な核酸プローブの使用を含む。そのようなプローブを用いて、ポリペプチドを発現している細胞を個別に同定することができ、そのため細胞をその後に手作業でまたはFACS選別を用いて選別することができる。mRNAと相補的な核酸プローブは、上記に示す教示に従って、前出のサムブルック(Sambrook)他(1989)によって記載された一般的手順を用いて調製することができる。
【0252】
好ましい一実施形態では、本発明は、mRNAと相補的な、FACS細胞選別に使用することができる蛍光団と結合した、アンチセンス核酸分子の使用を含む。
【0253】
遺伝子発現および同一性についての情報を、いわゆる遺伝子チップアレイまたは高密度DNAアレイを用いて得るための方法もまた記載されている(チー(Chee)) 。これらの高密度アレイは、診断および予測診断目的に特に有用である。In Vivo発現技術(IVET)もまた利用することができる(カミリ(Camilli))。IVETは、実験室培養と比較して、たとえば治療または疾患の際にアップレギュレートされる遺伝子を特定する。
【0254】
タンパク質測定法を用いることの利点は、Notch活性化を直接測定できることである。ポリペプチドのレベルを測定するために用いることができる測定法技術は当業者によく知られている。そのような測定法は、ラジオイムノアッセイ、競合結合測定法、ウェスタンブロット分析、抗体サンドイッチ測定法、抗体検出、FACS、およびELISA測定法を含む。
【0255】
上述の通り、Notchシグナル伝達の調節因子はまた、Notch、Notchリガンド、またはNotchシグナル伝達経路の発現または相互作用を調節するように処理された免疫細胞であることができる。そのような細胞は、たとえば、本文が参照により本開示に含まれるロランティス社(Lorantis Ltd)の名義の国際公開第00/36089号パンフレットに記載される通り、容易に調製することができる。
【0256】
免疫系の細胞
抗原提示細胞
状況によっては、抗原提示細胞(APC)は「専門の」抗原提示細胞であることができ、または抗原をT細胞へ提示するように誘導されうる別の細胞であることができる。代替的に、培養条件下で分化するかまたは活性化されてAPCを生じるAPC前駆細胞を用いることができる。本発明のex vivoの方法に用いられるAPCは、典型的には患者の体内で見出される腫瘍または末梢血から単離される。好ましくはAPCまたは前駆細胞はヒト起源である。しかし、適当な核酸配列を同定および試験するための予備in vitroスクリーニング手続にAPCが用いられる場合は、たとえば健康な被験者といった任意の適当な起源に由来するAPCを用いることができる。
【0257】
APCは、表面上にMHC分子(クラスIまたはII)を発現するように活性化されたかまたはトランスフェクションによって操作された、指状嵌入(interdigitating)DCまたは濾胞DCといった樹状細胞(DC)、ランゲルハンス細胞、PBMC、マクロファージ、Bリンパ球、または他の、上皮細胞、線維芽細胞または内皮細胞のような細胞型を含む。APCの前駆細胞は、CD34+細胞、単球、線維芽細胞および内皮細胞を含む。APCまたは前駆細胞は、培養条件によって修飾することができ、または、たとえば抗原提示に関与するタンパク質をコードする1つ以上の遺伝子および/または免疫増強作用を促進する選択されたサイトカイン遺伝子(たとえばIL−2、IL−12、IFN−γ、TNF−α、IL−18など)との組み合わせのトランスフェクションによって、遺伝子操作することができる。そのようなタンパク質は、MHC分子(クラスIまたはクラスII)、CD80、CD86、またはCD40を含む。非常に好ましくはDCまたはDC前駆細胞がAPCの起源として含まれる。
【0258】
樹状細胞(DC)はいくつかの方法で単離/調製することができ、たとえばDCは末梢血から直接精製することができ、または、たとえばGM−CSFを用いた処理による末梢血への移行後に、または骨髄から直接、CD34+前駆細胞から発生させることができる。末梢血から、接着性の前駆細胞をGM−CSF/IL−4混合物で処理することができ(イナバ(Inaba)K,他(1992) J. Exp. Med. 175:1157−1167 (Inaba))、または骨髄から、非接着性のCD34+細胞をGM−CSFおよびTNF−aで処理することができる(コー(Caux)C,他(1992) Nature 360:258−261 (Caux))。DCはまた、サルスト(Sallusto)およびランザベキア(Lanzavecchia)の方法(Sallusto F and Lanzavecchia A (1994) J. Exp. Med. 179:1109−1118)と同様に、精製末梢血単核球(PBMC)を用いておよび接着性細胞をGM−CSFおよびIL−4で2時間処理して、ヒト提供者の末梢血から定型的に調製することができる。必要に応じて、DCから磁気ビーズを用いてCD19+B細胞およびCD3+、CD2+T細胞を除去することができる(コフィン(Coffin)RS,他(1998) Gene Therapy 5:718−722 (Coffin))。培養条件は、GM−CSFまたはIL−4のような他のサイトカインを、樹状細胞または他の抗原提示細胞の維持および/または活性のために含むことができる。
【0259】
このように、ここで用いられる「抗原提示細胞など」の語は、APCに限られないことが意図されると理解される。当業者は、T細胞集団に提示することができる任意の媒介物を用いることができることを理解し、便宜上APCの語がこれらすべてをいうのに用いられる。上記に示す通り、適当なAPCの好ましい例は、樹状細胞、L細胞、ハイブリドーマ、線維芽細胞、リンパ腫、マクロファージ、B細胞または脂質膜のような合成APCを含む。
【0260】
T細胞
状況によっては、健常被験者といった任意の適当な起源由来のT細胞を、用いることができ、および血液または他の起源(たとえばリンパ節、脾臓、または骨髄)から得ることができる。T細胞は随意的に、標準的手順によって濃縮するかまたは精製することができる。T細胞は、同一のまたは別の個体から得られた、他の免疫細胞と組み合わせて用いることができる。代替的に、全血を、または白血球が濃縮された血液または精製白血球を、T細胞および他の細胞型の起源として用いることができる。ヘルパーT細胞(CD4+)を用いることが特に好ましい。代替的に、CD8+細胞のような他のT細胞を用いることができる。また、T細胞ハイブリドーマのような細胞株を用いることも便利である。
【0261】
APCおよびT細胞への核酸配列の導入
ex−vivo用途のためには、上記の通りのT細胞およびAPCはDMEMまたは他の定義された培地といった適切な培地中で、随意的にウシ胎仔血清の存在下で、培養される。
【0262】
T細胞および/またはAPC中でポリペプチドの発現を可能にする条件下で、ポリペプチドをコードする核酸構造/ウイルスベクターを細胞へ導入することによって、ポリペプチド物質をT細胞および/またはAPCへin vivoまたはex−vivoで投与することができる。同様に、アンチセンス構造をコードする核酸構造を、トランスフェクション、ウイルス感染またはウイルス形質導入によってT細胞および/またはAPCへ導入することができる。
【0263】
好ましい一実施形態では、Notchリガンド発現および/または活性のエンハンサーをコードするヌクレオチド配列は、プロモーター/エンハンサーおよび他の発現調節シグナルを含む調節配列に、調節可能に結合している。
【0264】
プロモーターは典型的には、哺乳類細胞中で機能するプロモーターから選択されるが、原核プロモーターおよび、他の真核細胞中で機能するプロモーターを用いることができる。プロモーターは典型的にはウイルス遺伝子または真核遺伝子のプロモーター配列に由来する。たとえば、発現が起こる細胞のゲノムに由来するプロモーターであることができる。真核プロモーターについては、遍在的な形で(a−アクチン、b−アクチン、チューブリンのプロモーターのように)または、代替的に、組織特異的な形で(ピルビン酸キナーゼ遺伝子のプロモーターのように)機能するプロモーターであることができる。リンパ球、樹状細胞、皮膚、脳細胞、および眼内の上皮細胞に特異的である、組織特異的プロモーターが特に好ましく、たとえばそれぞれCD2、CD11c、keratin14、Wnt−1およびロドプシンプロモーターである。好ましくは上皮細胞プロモーターSPCが用いられる。また、たとえばステロイドホルモン受容体に結合するプロモーターのように、特定の刺激に反応するプロモーターであることができる。たとえばモロニーマウス白血病ウイルス長末端反復(MMLV LTR)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーターまたはヒトサイトメガロウイルス(CMV)IEプロモーターといった、ウイルスプロモーターもまた用いることができる。
【0265】
異種遺伝子の発現のレベルを、細胞の生涯の間に調節することができるように、プロモーターは誘導性であることもまた有利でありうる。誘導性とは、当該プロモーターを用いて得られた発現のレベルを調節することができることを意味する。
【0266】
上記のプロモーターのうち任意のものを、別の調節配列、たとえばエンハンサー配列の付加によって修飾することができる。二つ以上の異なるプロモーター由来の配列要素を含むキメラプロモーターもまた用いることができる。
【0267】
代替的に(または加えて)、調節配列は、目的の遺伝子が本発明で有用な細胞でだけ発現されるように、細胞特異的であることができる。そのような細胞は、たとえば、APCおよびT細胞を含む。
【0268】
Notchリガンド発現をアップレギュレートすることができる核酸配列を含む、結果として得られるT細胞および/またはAPCが現在使用可能な状態である。必要に応じて、細胞の少量の一部をNotchリガンド発現のアップレギュレーションについて上述の通り試験することができる。その細胞は患者への投与のために準備することができ、またはT細胞と共にin vitro(ex vivo)でインキュベートすることができる。
【0269】
免疫反応および寛容化の測定法
上に記載された測定法(「測定法」を参照)のうち任意のものを、免疫細胞における反応性低下、免疫反応の変化および/または寛容化を測定または検出し、および、免疫反応の抑制および増大を臨床用途での使用のために検出するのに用いることができる
【0270】
免疫細胞活性は、当業者に既知である任意の適当な方法によって監視することができる。たとえば、細胞傷害性活性を監視することができる。ナチュラルキラー(NK)細胞は活性化後に細胞傷害性活性の増大を示す。したがって細胞傷害性の何らかの低下または安定化は、反応性の低下の徴候となる。
【0271】
一旦活性化されると、白血球はさまざまな新しい細胞表面抗原を発現する。NK細胞は、たとえば、トランスフェリン受容体、HLA−DRおよびCD25 IL−2受容体を活性化後に発現する。反応性低下はしたがってこれらの抗原の発現を監視することによって測定することができる。
【0272】
ハラ(Hara)他『ヒトT細胞活性化:III,12−0−テトラデカノイルホルボール−13−酢酸、マイトジェンおよび抗原によるリン酸化28kD/32kDジスルフィド結合初期活性化抗原(EA−1)の迅速誘導』(Human T−cell Activation:III,Rapid Induction of a Phosphorylated 28 kD/32kD Disulfide linked Early Activation Antigen (EA−1) by 12−0−tetradecanoyl Phorbol−13−Acetate,Mitogens and Antigens),J.Exp.Med.,164;1988(1986)、およびコスリッヒ(Cosulich)他『T細胞活性化の初期段階に関与する抗原(MLR3)の機能的特徴づけ』(Functional Characterization of an Antigen (MLR3) Involved in an Early Step of T−Cell Activation),PNAS,84:4205(1987)は、活性化の直後にT細胞上に発現される細胞表面抗原を記載している。これらの抗原、それぞれEA−1およびMLR3は、28kDおよび32kDの主要成分を有する糖タンパク質である。EA−1およびMLR3はHLAクラスII抗原ではなく、およびMLR3 MabはIL−1結合を遮断する。これらの抗原は、活性化されたT細胞上に18時間以内に出現し、したがって免疫細胞反応性を監視するために用いることができる。
【0273】
加えて、白血球反応性は、参照により本開示に含まれる欧州特許第0325489号明細書に記載の方法で監視することができる。要約すると、これは、ATCC番号HB−9627で表されるハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体に認識される細胞性抗原と相互作用するモノクローナル抗体(「抗Leu23」)を用いて達成される。
【0274】
抗Leu23は、活性化されたおよび抗原刺激された白血球上の細胞表面抗原を認識する。活性化NK細胞上では、その抗原Leu23は活性化後4時間以内に発現され、および活性化後72時間まで発現され続ける。Leu23は、少なくとも2個のN結合型糖鎖を有する24kDサブユニットから構成されるジスルフィド結合ホモ二量体である。
【0275】
Leu23のNK細胞上での出現が細胞傷害性の発生と相関するため、およびLeu23のある種のT細胞上での出現がT細胞抗原受容体複合体の刺激と相関するため、抗Leu23は白血球の反応性を監視するのに有用である。
【0276】
免疫細胞反応性の監視のための技術のさらなる詳細は、参照により本開示に含まれる:『ナチュラルキラー細胞』(The Natural Killer Cell)ルイス(Lewis)C.E.およびJ.O’D.マクジー(McGee)1992.オックスフォード大学出版会(Oxford University Press); トリンチエリ(Trinchieri)G.『ナチュラルキラー細胞の生物学』(Biology of Natural Killer Cells) Adv.Immunol.1989 vol 47 pp187−376;『免疫反応遺伝子ハンドブック』(Handbook of Immune Response Genes)の7章『免疫反応のサイトカイン』(Cytokines of the Immune Response)マク(Mak)T.W.およびJ.J.L.シマード(Simard)1998に見出すことができる。
【0277】
初回抗原刺激を受けたAPCおよびリンパ球の調製
本発明の一態様によると免疫細胞を用いて抗原またはアレルゲンを提示することができ、および/または免疫細胞を処理してNotch、NotchリガンドまたはNotchシグナル伝達経路の発現または相互作用を調節することができる。したがって、たとえば、抗原提示細胞(APC)を、DMEMまたは他の明確な培地のような適当な培地中で、随意的にウシ胎仔血清といった血清の存在下で、培養することができる。最適サイトカイン濃度は滴定によって決定することができる。1つ以上のNotchシグナル伝達の調節因子およびインターフェロンを、その後、典型的には目的の抗原(または抗原決定基)と共に培地に添加する。抗原は、当該物質の前、後、またはそれと実質的に同時に、添加することができる。細胞は典型的には、当該物質および抗原と共に、少なくとも1時間、好ましくは少なくとも3時間、好ましくは少なくとも12または少なくとも24時間、約37℃にてインキュベートする。必要に応じて、細胞の少量を、標的遺伝子発現の調節について上記の通り試験することができる。代替的に、国際公開第98/20142号パンフレットに記載の通り、細胞活性はT細胞活性化の阻害によって、表面マーカー、サイトカイン分泌または増殖を監視することで測定することができる。
【0278】
上で論述した通り、APC中でポリペプチドの発現を可能にする条件下で、ポリペプチドをコードする核酸構造/ウイルスベクターを細胞へ導入することによって、ポリペプチド物質をAPCへ投与することができる。同様に、抗原をコードする核酸構造を、トランスフェクション、ウイルス感染またはウイルス形質導入によってAPCへ導入することができる。結果として生じる、Notchシグナル伝達のレベル上昇を示すAPCが現在使用可能な状態である。
【0279】
下記の技術はT細胞に関して説明されているが、しかしB細胞にも等しく適用可能である。使用した技術は、T細胞が一般的にAPCと共培養されること以外は、APC単独について記載されたものと本質的に同一である。しかし、初回抗原刺激を受けたAPCをまず作製し、次いでそれをT細胞とインキュベートするのが好ましい可能性がある。たとえば、初回抗原刺激を受けたAPCが一旦作製されると、それを沈澱させPBSで洗浄してから新しい培地に再懸濁することができる。このことは、たとえば、T細胞をAPCに用いた物質とは異なる物質で処理したい場合、T細胞がAPCに用いた別の物質と接触させられることがないという利点を有する。代替的に、T細胞をNotchシグナル伝達を調節する第一の物質(または物質の組)とインキュベートし、洗浄し、再懸濁し、次いでAPCを調節するために用いられた物質およびT細胞を調節するために用いられた物質の両方の非存在下で、初回抗原刺激を受けたAPCとインキュベートすることができる。代替的に、抗TCR抗体(たとえば抗CD3)といったAPC代替物を用いて、共刺激分子に対する抗体(たとえば抗CD28)と共にまたはそれ無しで、T細胞をAPCの非存在下で培養しおよび初回抗原刺激することができ、または代替的にT細胞をMHC−ペプチド複合体(たとえば四量体)を用いて活性化することができる。
【0280】
インキュベートは典型的には少なくとも1時間、好ましくは少なくとも3または6または12または24時間またはより長時間、適切な培地中で37℃で行う。免疫寛容の誘導といった免疫反応の変化は、続いてT細胞に抗原を負荷し、およびAPCに曝露されていない対照細胞と比較してIL−2産生を測定することによって測定することができる。
【0281】
この方法で初回抗原刺激を受けたT細胞またはB細胞は、本発明にしたがって、他のT細胞またはB細胞において免疫寛容を誘導するのに用いることができる。
【0282】
治療可能な症状
好ましくは免疫系の調節はT細胞活性の調節による。特に、本発明はT細胞に媒介され
る疾患および感染の治療に用いることができる。T細胞によって媒介されると説明されう
る疾患状態または感染状態は、喘息、アレルギー、移植片拒絶、自己免疫、腫瘍に誘発さ
れるT細胞系の異常、および、マラリア原虫(Plasmodium)の種、ミクロフィ
ラリア、蠕虫、マイコバクテリア、HIV、サイトメガロウイルス、シュードモナス、ト
キソプラズマ、エキノコッカス、B型インフルエンザ(ヘモフィルス・インフルエンザB
型)、麻疹、C型肝炎または回虫によって引き起こされるものといった感染症のいずれか
1つ以上を含むがこれらに限定されない。このように、治療または予防されうる、T細胞
によって媒介される特定の症状は、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、および糖尿病を含
む。本発明はまた、臓器移植術または骨髄移植術に用いることができる。
【0283】
上記に示す通り、本発明は、自己免疫疾患といった免疫疾患、または、同種異系移植片拒絶といった移植片拒絶の治療に有用である。
【0284】
たとえば、本発明は臓器移植(たとえば腎臓、心臓、肺、肝臓または膵臓移植)、組織移植(たとえば皮膚移植片)または細胞移植(たとえば骨髄移植または輸血)の処置に用いることができる。
【0285】
最も一般的な種類の臓器および組織移植の短い概観を下記に示す。
【0286】
1.腎臓移植:
腎臓は最も一般的に移植されている臓器である。腎臓は死亡者および生きたドナーの両方が提供することができ、および腎臓移植は数々の臨床徴候(糖尿病、さまざまな型の腎炎および腎不全を含む)を治療するのに用いることができる。腎臓移植術のための外科的手順は相対的に単純である。しかし、血液型および組織適合型を一致させることが、移植片拒絶を避けるために望ましい。最初の移植を拒絶後に多くの患者が「感作」されうるため、移植片が受容されることは実際に重要である。感作の結果として、腎臓抗原に対する抗体の形成および細胞機構の活性化が生じる。したがって、最初の移植片と共通する抗原を含むその後の移植片はどれも拒絶される可能性が高い。結果として、多数の腎臓移植患者はその後の生涯にわたって何らかの形の免疫抑制治療を受け続けなければならず、感染および代謝性骨疾患といった合併症の原因となる。
【0287】
2.心臓移植術
心臓移植術は非常に複雑で高リスクの手続である。ドナー心臓は、レシピエントに入れられた際に拍動を始めるような方法で維持しなければならず、したがって、限られた期間、非常に限定された条件下でのみ生存可能に保たれる。ドナー心臓はまた、脳死ドナーからのみ取ることができる。心臓移植を用いて、さまざまな型の心臓疾患および/または損傷を治療することができる。HLA適合は明らかに望ましいが、心臓の供給が限られていることおよび手続の緊急性のために、しばしば不可能である。
【0288】
3.肺移植術
肺移植術は、(単独でまたは心臓移植術と組み合わせて)嚢胞性線維症および肺への急性損傷(たとえば煙の吸入によって生じた)といった疾患の治療に用いられる。移植に用いられる肺は通常は脳死ドナーからしか回収することができない。
【0289】
4.膵臓移植術
膵臓移植術は主に、膵臓中のインシュリンを産生する膵島細胞の機能異常によって引き起こされる疾患である糖尿病を治療するために用いられる。移植術用の臓器は、死亡者からしか回収できないが、調節された方法でインシュリンを産生するのに必要な機能を再生するためには膵臓全体の移植術は必要ないことに注意すべきである。実際、膵島細胞の移植術だけで十分でありうる。腎不全が進行型糖尿病の高頻度な合併症であるため、腎臓および膵臓の移植はしばしば同時に実施される。
【0290】
5.皮膚移植
大部分の皮膚移植は自家組織を用いて行われる。しかし、重度の火傷(たとえば)の場合には、外来組織の移植片が必要である可能性がある(が、移植片は宿主上では増殖せず、一定期間で交換しなければならないため、これらの移植片は一般的に生物学的包帯剤として用いられることに注意すべきである)。真の同種異系皮膚移植の場合には、拒絶は免疫抑制療法の使用によって防ぐことができる。しかし、これは感染のより高いリスクに結びつき、したがって火傷患者の主な障害である。
【0291】
6.肝臓移植術
肝臓移植は、肝炎といったウイルス疾患によって、または有害化学物質への曝露によって(たとえば慢性アルコール症によって)引き起こされた臓器障害を治療するために用いられる。肝臓移植はまた、先天性異常を治療するために用いられる。肝臓は大きくおよび複雑な臓器であり、これは移植術に最初は技術的な問題があったことを意味する。しかし、大部分の移植(65%)は現在1年以上生存し、および、一人のドナーに由来する肝臓を分割して二人のレシピエントに与えることができることが見出されている。肺移植患者による移植片拒絶の率は相対的に低いが、ドナー臓器内の白血球は抗血液型抗体と共に、血液型不一致が存在する場合、レシピエント赤血球の抗体依存性溶血を媒介しうる。加えて、ドナーとレシピエントが血液型適合である場合でさえ、GVHDの顕在化が肝臓移植で起こっている。
【0292】
治療されうる疾患の例は、一般に自己免疫疾患と呼ばれる一群を含む。自己免疫疾患の範囲は、臓器特異的疾患(たとえば甲状腺炎、膵島炎、多発性硬化症、虹彩毛様体炎、ブドウ膜炎、精巣炎、肝炎、アジソン病、重症筋無力症)から、慢性関節リウマチまたはエリテマトーデスのような全身性疾患にわたる。他の疾患は、アレルギー反応のような免疫過敏性を含む。
【0293】
より詳細には:臓器特異的自己免疫疾患は、多発性硬化症、インシュリン依存性糖尿病、いくつかの型の貧血(再生不良性、溶血性)、自己免疫肝炎、甲状腺炎、膵島炎、虹彩毛様体炎、強膜炎、ブドウ膜炎、精巣炎、重症筋無力症、特発性血小板減少性紫斑病、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)を含む。
【0294】
全身性自己免疫疾患は:慢性関節リウマチ、若年性関節炎、強皮症および全身性硬化症、シェーグレン症候群、分類不能結合組織症候群、抗リン脂質症候群、さまざまな型の血管炎(結節性多発性動脈炎、アレルギー性肉芽腫性血管炎、ウェゲナー肉芽腫症、川崎病、過敏性血管炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、ベーチェット症候群、高安動脈炎、巨細胞性動脈炎、閉塞性血栓性血管炎)、エリテマトーデス、リウマチ性多発筋痛、本態性(混合)クリオグロブリン血症、尋常性乾癬および乾癬性関節炎、好酸球性または非好酸球性びまん性筋膜炎、多発性筋炎および他の特発性炎症性筋疾患、再発性脂肪織炎、再発性多発性軟骨炎、リンパ腫様肉芽腫症、結節性紅斑、強直性脊椎炎、ライター症候群、さまざまな型の炎症性皮膚炎を含む。
【0295】
疾患のより広範囲のリストは:慢性関節リウマチを含む関節炎を含む不必要な免疫反応および炎症、過敏性、アレルギー反応、喘息、全身性エリテマトーデス、コラーゲン疾患および他の自己免疫疾患に伴う炎症、アテローム性硬化症、動脈硬化症、アテローム硬化性心疾患、再潅流傷害、心停止、心筋梗塞、血管炎症性疾患、呼吸窮迫症候群または他の心肺疾患に伴う炎症、消化性潰瘍、潰瘍性大腸炎および消化管の他の疾患に伴う炎症、肝線維症、肝硬変または他の肝疾患、甲状腺炎または他の腺疾患、糸球体腎炎または他の腎および泌尿器疾患、耳炎または他の耳鼻咽喉疾患、皮膚炎または他の皮膚疾患、歯周疾患または他の歯科疾患、精巣炎または精巣・精巣上体炎、不妊症、精巣外傷または他の免疫関連精巣疾患、胎盤機能障害、胎盤機能不全、習慣流産、子癇、子癇前症および他の免疫および/または炎症性関連婦人科疾患、後部ブドウ膜、中間部ブドウ膜炎、前部ブドウ膜炎、結膜炎、脈絡網膜炎、ブドウ膜強膜炎、視神経炎、眼内炎症、たとえば網膜炎または嚢胞様黄斑浮腫、交感性眼炎、強膜炎、網膜色素変性症、変性眼底疾患の免疫および炎症性要素、眼外傷の炎症性要素、感染によって引き起こされる眼炎症、増殖性硝子体網膜症、急性虚血性視神経症、たとえば緑内障濾過手術後の過度の瘢痕、眼インプラントに対する免疫および/または炎症反応、および他の免疫および炎症性関連眼疾患、自己免疫疾患または症状に伴う炎症、または、中枢神経系(CNS)または任意の他の臓器の両方で、免疫および/または炎症抑制が有益である疾患、パーキンソン病、パーキンソン病の治療に由来する合併症および/または副作用、AIDS関連痴呆症候群、HIV関連脳症、デビック病、シデナム舞踏病、アルツハイマー病および他の変性疾患、症状、またはCNS疾患、脳卒中の炎症性要素、ポリオ後症候群、精神 疾患の免疫 および 炎症性 要素、脊髄炎、脳炎、亜急性硬化性全脳炎、脳脊髄炎、急性 神経障害、亜急性 神経障害、慢性 神経障害、ギラン・バレー症候群、シデナム舞踏病(chora)、重症筋無力症、特発性頭蓋内圧亢進症、ダウン症候群、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、CNS圧迫またはCNS外傷またはCNS感染の炎症性要素、筋萎縮症および筋ジストロフィーの炎症性要素、および、中枢および末梢神経系の免疫および炎症性関連疾患、症状または疾患、外傷後炎症、敗血性ショック、感染症、手術または臓器の炎症性合併症または副作用、遺伝子治療のたとえばウイルスキャリヤーの感染による炎症性および/または免疫合併症および副作用、または体液性および/または細胞性免疫反応を抑制または阻害するための、AIDSに関連する炎症、単球または白血球増殖性疾患、たとえば白血病を、単球またはリンパ球の量を減らすことによって治療または改善すること、角膜、骨髄、臓器、レンズ、ペースメーカー、天然または人工皮膚組織といった天然または人工細胞、組織、および臓器の移植術の場合に移植片拒絶の防止および/または治療のため、を含む。
【0296】
本発明はまたがん治療法において有用である。本発明は特に、腺がん、たとえば小細胞肺がん、および腎臓、子宮、前立腺(prostrate)、膀胱、卵巣、大腸および乳房のがんに関して有用である。
【0297】
医薬組成物
好ましくは本発明の活性物質(Notchシグナル伝達の調節因子およびインターフェロン、インターフェロンをコードするポリヌクレオチドおよび/またはインターフェロン誘導因子)は医薬組成物の形で投与される。当該医薬組成物は、ヒトおよび動物医学においてヒトまたは動物用途向けであることができ、および、1つ以上の活性物質に加えて、典型的には任意の1つ以上の、医薬品として許容される希釈剤、キャリヤー、または賦形剤を含む。治療的用途のための許容されるキャリヤーまたは希釈剤は医薬分野でよく知られており、たとえば、『レミントンの医薬科学』(Remington’s Pharmaceutical Sciences)マック・パブリッシング社(Mack Publishing Co.)(A.R.ジェナロ(Gennaro)編、1985)に記載されている。医薬キャリヤー、賦形剤または希釈剤の選択は、予定の投与経路および標準的な医薬実務に関して選ぶことができる。医薬組成物は、キャリヤー、賦形剤または希釈剤として、またはそれに加えて、任意の適当な結合剤、滑沢剤、懸濁剤、コーティング剤、可溶化剤を含むことができる。また、保存料、安定剤、色素および香料さえ、そのような医薬組成物中に提供することができる。保存料の例は、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、およびp−ヒドロキシ安息香酸のエステルを含む。抗酸化剤および懸濁剤もまた用いることができる。
【0298】
投与
典型的には、医師は個別の対象について最適となる実際の投与量を決定し、および投与量はその特定の患者の年齢、体重、および反応によって変化する。下記の投与量は、平均的な例の典型である。もちろん、より高いまたは低い用量範囲に値する個別の場合がありうる。
【0299】
一実施形態では、本発明に用いられる治療剤を患者に直接in vivoで投与することができる。代替的に、または加えて、当該治療剤を細胞(たとえばT細胞および/またはAPCまたは幹細胞または組織細胞)にex vivoの方法で投与することができる。たとえば、T細胞またはAPCといった白血球を、患者またはドナーから既知の方法で得て、本発明の方法でex vivoで処理/インキュベートし、その後、患者に投与することができる。
【0300】
一般的に、治療的に有効な一日量は、たとえば0.01ないし500mg/kg、たとえば0.01ないし50mg/治療される対象の体重kg、たとえば0.1ないし20mg/kgの範囲に及びうる。本発明の物質はまた、たとえば0.001〜10mg/kg/時間の範囲に及ぶ可能性が高い用量で、静脈輸液によって投与することができる。
【0301】
熟練した医師は、任意の特定の患者について、たとえば、その患者の年齢、体重、および症状に応じて、最適な投与経路および投与量を容易に決定することができる。好ましくは医薬組成物は単位用量剤形である。
【0302】
本発明の物質は、たとえば、経口、直腸内、経鼻、局所(皮内、経皮、エアロゾル、口内および舌下を含む)、膣内および非経口(皮下、筋肉内、静脈内および皮内を含む)投与経路を含むがそれに限定されない、任意の適当な手段によって投与することができる。
【0303】
適切には活性物質は、上記の「医薬組成物」の見出しの下に記載の通りの、医薬品として許容されるキャリヤーまたは希釈剤と組み合わせて投与される。医薬品として許容されるキャリヤーまたは希釈剤は、たとえば、滅菌等張生理食塩水溶液、またはリン酸緩衝生理食塩水のような他の等張溶液であることができる。本発明の物質は、任意の適当な結合剤、滑沢剤、懸濁剤、コーティング剤、可溶化剤と適切に混合することができる。
【0304】
一実施形態では、化合物を経口的に活性な形に処方することが望ましい可能性がある。このように、一部の用途については、活性物質は、デンプンまたは乳糖といった賦形剤を含む錠剤の形で、または、カプセル剤または胚珠状で単独でまたは賦形剤と混合して、または、香料または着色料を含むエリキシル剤、液剤または懸濁剤の形で、経口投与することができる。本物質を含む錠剤またはカプセル剤のような用量は、必要に応じて一度に1つずつまたは2個以上投与することができる。活性物質を徐放性処方で投与することもまた可能である。
【0305】
代替的に、または加えて、活性物質は吸入によって、経鼻的にまたはエアロゾルの形で、または坐剤またはペッサリーの形で投与することができ、または活性物質はローション、液剤、クリーム、軟膏、または散布剤の形で局所的に投与することができる。経皮投与の1つの選択手段は、皮膚パッチを用いることである。たとえば、活性物質はポリエチレングリコールまたは液体パラフィンの水系エマルジョンから成るクリームに取り入れることができ、たとえば重量で1ないし10%の濃度で、白ロウまたは白色軟質パラフィン基剤と共に必要に応じて安定剤および保存料から成る軟膏に取り入れることができる。
【0306】
ポリヌクレオチドおよびタンパク質/ポリペプチドといった活性物質もまた、ウイルス技術または非ウイルス技術によって投与することができる。ウイルスデリバリー機構は、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、およびバキュロウイルスベクターを含むがそれらに限定されない。非ウイルスデリバリー機構は、脂質媒介トランスフェクション、リポソーム、免疫リポソーム、リポフェクチン、陽イオン性界面両親媒性化合物(CFAs)およびその組み合わせを含む。そのようなデリバリー機構のための経路は、粘膜、経鼻、経口、非経口、消化管、局所、または舌下経路を含むがそれらに限定されない。活性物質はまた、表皮または真皮またはその他の粘膜表面のような部位へのデリバリーのための粒子の弾丸デリバリー(ballistic delivery)といった、針を用いない系によって投与することができる。
【0307】
活性物質はまた、非経口的に、たとえば海綿体内に、静脈内に、筋肉内にまたは皮下に注射することができる。
【0308】
非経口投与のためには、活性物質はたとえば、溶液を血液と等張にするための十分な塩または単糖といった他の物質を含みうる、無菌水溶液の形で用いることができる。
【0309】
口内または舌下投与のためには、物質はたとえば、従来の方法で処方することができる錠剤またはトローチ剤の形で投与することができる。
【0310】
対象(たとえば患者)への経口、非経口、口内および舌下投与のためには、活性物質およびその医薬品として許容される塩および溶媒和物の投与量レベルは、典型的には10ないし500mgでありうる(一回または分割用量で)。このように、および例として、錠剤またはカプセル剤は、必要に応じて一度に1つずつまたは2つ以上の投与について、5ないし100mgの活性物質を含みうる。上記に示す通り、医師は個別の患者について最適となる実際の投与量を決定し、およびその投与量はその特定の患者の年齢、体重、および反応によって変化する。上記の投与量は平均的な例の典型である一方、もちろん、より高いまたは低い用量範囲に値する個別の場合がありえ、およびそのような用量範囲は本発明の範囲内であることに注意する。
【0311】
当業者は任意の特定の患者について、たとえば、その患者の年齢、体重、および症状に応じて、最適な投与経路および投与量を容易に決定することができるため、記載の投与経路および投与量は単に指針として意図される。
【0312】
ここで用いられる治療または療法の語は、診断および予防用途を包含すると考える。
【0313】
本発明の治療は、ヒトの用途および獣医学用途の両方を含む。
【0314】
本発明の活性物質は、たとえば、免疫抑制剤、ステロイドまたは抗がん剤のような、他の活性物質と共に投与することができる。
【0315】
ex−vivoで処理される場合、本発明の修飾細胞は好ましくは患者のリンパ節への直接注射によって宿主へ投与される。典型的には104ないし108個の処理細胞、好ましくは105ないし107個の細胞、より好ましくは約106個の細胞が患者に投与される。好ましくは、細胞は濃縮された細胞集団から採取される。
【0316】
ここで用いられる「濃縮された」の語は、本発明の細胞集団に用いられるとき、天然に共存する他の細胞がより少ない、細胞のより均一な集団をいう。濃縮された細胞の集団は、本分野で既知であるいくつかの方法によって達成することができる。たとえば、T細胞の濃縮された集団は、T細胞上だけに見出される決定基に特異的なモノクローナル抗体を用いた免疫アフィニティクロマトグラフィーを用いて得ることができる。
【0317】
濃縮された集団はまた、混合細胞懸濁液から、ポジティブ選択(目的の細胞だけを回収する)またはネガティブ選択(望ましくない細胞を除去する)によって得ることができる。特異的な細胞をアフィニティ材料上に捕捉するための技術は本分野でよく知られている(ウィグゼル(Wigzel)他,J.Exp.Med.,128:23,1969;メイジ(Mage)他,J.Imnmunol.Meth.,15:47,1977;ウィソッキ(Wysocki)他,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,75:2844,1978;シュレンプ・デッカー(Schrempf−Decker)他,J.Immunol Meth.,32:285,1980;ミュラー・ジーブルク(Muller−Sieburg)他,Cell,44:653,1986)。
【0318】
成熟分化細胞に特異的な抗原に対するモノクローナル抗体が、望ましくない細胞を除去するさまざまなネガティブ選択法、たとえば、T細胞または悪性細胞をそれぞれ同種異系または自家骨髄移植片から除去するために用いられている(ジー(Gee)他,J.N.C.I.80:154,1988)。モノクローナル抗体および免疫磁気マイクロスフィアを用いたネガティブ選択によるヒト造血細胞の精製は、複数のモノクローナル抗体を用いて達成することができる(グリフィン(Griffin)他,Blood,63:904,1984)。
【0319】
細胞の分離のための手順は、抗体被覆磁気ビーズを用いる磁気分離、アフィニティクロマトグラフィー、たとえば、補体およびサイトトキシンのような、モノクローナル抗体と結合させたかまたはモノクローナル抗体と組み合わせて用いる細胞毒性物質、および、たとえば、プレートのような固体マトリクスに結合させた抗体を用いる「パンニング(濃縮)」、または他の便利な技術を含むことができる。正確な分離を提供する技術は、蛍光活性化セルソーターを含み、これはたとえば、複数の色チャンネル、低角度および鈍光散乱検出チャンネル、インピーダンスチャンネル、などといったさまざまな程度の高度機能を持つことができる。
【0320】
併用治療
本発明の活性物質が、他の活性物質、抗原または抗原決定基と共に投与される併用治療もまた本発明の範囲内にある。
【0321】
「同時に」とは、活性物質が実質的に同一の時に、および好ましくは同一の処方中で一緒に、投与されることを意味する。
【0322】
「同時期に」とは、活性物質が近い時間に投与されることを意味し、たとえば、1つの物質がもう1つの物質の前または後約1分間以内から約1日以内に投与される。任意の同時期の時間が有用である。しかし、同時に投与されない場合、物質は約1分間以内から約8時間以内、および好ましくは約1ないし約4時間より短い間に投与される場合が多い。同時期に投与される場合、物質は好ましくは動物の同一の部位に投与される。「同一の部位」の語は正確な位置を含むが、しかし約0.5ないし約15センチメートル以内、好ましくは約0.5ないし約5センチメートル以内であることができる。
【0323】
ここで用いられる「別々に」の語は、物質が、間隔を置いて、たとえば約1日ないし数週間または数ヶ月の間隔で投与されることを意味する。活性物質はどちらの順序でも投与することができる。
【0324】
ここで用いられる「順次に」の語は、物質が順番に、たとえば分、時間、日、または週間隔で投与されることを意味する。必要に応じて、活性物質は規則的な反復サイクルで投与することができる。
【0325】
一実施形態では本発明に用いられる治療剤は、直接的に患者にin vivo投与することができることが理解される。代替的に、または加えて、当該物質はT細胞および/またはAPCのような免疫細胞にex vivoの方法で投与することができる。たとえば、T細胞またはAPCのような白血球を、患者またはドナーから既知の方法で入手し、ex vivoで本発明の方法で処理/インキュベートし、その後患者に投与することができる。加えて、投与経路の組み合わせを必要に応じて用いることができることが理解される。たとえば、適切な場合には、1成分(たとえばNotchシグナル伝達の調節因子)をex−vivoで投与することができ、他方をin vivoで投与することができ、また逆も可能である。
【0326】
好ましくは活性物質は局所的に、経鼻的にまたは非経口的に(たとえば皮下に、皮内にまたは筋肉内に)、好ましくは同一の場所に投与され、および1つ以上を徐放型で投与することができる。
【0327】
化学的架橋化
化学的に結合した(架橋した)配列を、個別のタンパク質配列から調製しおよび既知の化学結合技術を用いて結合させることができる。複合体は、たとえば従来の溶液相または固相ペプチド合成法を用いて組み立てることができ、末端アミノ基だけが脱保護された反応性形である完全に保護された前駆体が得られる。この官能基は次いで、たとえばNotchシグナル伝達調節のためのタンパク質またはその適当な反応性誘導体と直接反応させることができる。代替的に、このアミノ基を、カーゴ部分またはリンカーを有する、反応に適した別の官能基へ変換することができる。このように、たとえば無水コハク酸とのアミノ基の反応は選択的に指定可能なカルボキシル基を与え、一方、システイン誘導体を用いたさらなるペプチド鎖伸長は、選択的に指定可能なチオール基を結果として生じる。適当な選択的に指定可能な官能基がデリバリーベクター前駆体中に一旦得られると、Notchシグナル伝達調節のためのタンパク質またはその誘導体を、たとえばアミド、エステル、またはジスルフィド結合形成を介して結合することができる。利用することができる架橋化試薬は、たとえば、ミーンズ(Means),G.E.およびフィーニー(Feeney),R.E.,『タンパク質の化学修飾』(Chemical Modification of Proteins)ホールデン・デイ社(Holden−Day),1974,pp.39−43で論述されている。
【0328】
Notchシグナル伝達調節の調節因子は、必要に応じて、直接的に、または適切にはリンカー部分を介して間接的に、結合することができる。直接結合は、チオール、ヒドロキシ、カルボキシまたはアミノ基といった、調節因子(たとえばNotchシグナル伝達調節のためのタンパク質)上の任意の便利な官能基を通じて生じうる。しばしば好ましい可能性がある間接結合は、連結部分を介して起こる。適当な連結部分は、マレイミド安息香酸誘導体、マレイミドプロピオン酸誘導体およびスクシンイミド誘導体のような、二官能性および多官能性アルキル、アリール、アラルキルまたはペプチド部分、アルキル、アリールまたはアラルキルアルデヒド酸エステルおよび無水物、スルフヒドリルまたはカルボキシル基を含み、または、臭化または塩化シアヌル、カルボニルジイミダゾール、スクシンイミジルエステルまたはハロゲン化スルホンなどに由来することができる。
【0329】
修飾/ヒト化抗体
好ましくは、ヒト患者を治療するための用途向けの抗体は、キメラ抗体またはヒト化抗
体である。抗体「ヒト化」技術は本分野でよく知られている。これらの技術は典型的には
、抗体分子のポリペプチド鎖をコードするDNA配列を操作するための、組み換えDNA
技術の使用を含む。
【0330】
米国特許第5859205号明細書に記載された通り、モノクローナル抗体(Mab)をヒト化するための初期の方法は、1つの抗体の完全な可変領域を含む抗原結合部位が、別の抗体に由来する定常領域と結合している、キメラ抗体の産生を含んだ。そのようなキメラ化手順は欧州特許出願公開第0120694号明細書(セルテック社(Celltech Limited))、欧州特許出願公開第0125023号明細書((ジェネンテック社(Genentech Inc.)およびシティ・オブ・ホープ(City of Hope))、欧州特許出願公開第0 171496号明細書(Res.Dev.Corp.Japan)、欧州特許出願公開第0 173 494号明細書(スタンフォード大学)、および国際公開第86/01533号パンフレット(セルテック社)に記載されている。たとえば、国際公開第86/01533号パンフレットは、マウスMAb由来の可変領域およびヒト免疫グロブリン由来の定常領域を有する抗体分子を調製するための製法を開示する。
【0331】
欧州特許出願公開第0239400号明細書(ウィンター(Winter))に記載さ
れた別の手法では、マウスMAbの相補性決定領域(CDR)がヒト免疫グロブリンの可
変領域の骨格領域に、部位特異的突然変異誘発によって長オリゴヌクレオチドを用いて移
植される。そのようなCDR移植されたヒト化抗体は、ヒト化キメラ抗体よりも、それら
が含む非ヒトアミノ酸配列の大幅に低い比率の点から、抗−抗体反応を生じる可能性が大
幅に低い。リゾチームを認識するマウスMAbおよびヒトT細胞上の抗原を認識するラッ
トMAbがCDR移植によってヒト化された例が、ヴェルヘイエン(Verhoeyen
)他(Science,239,1534−1536,1988)およびリーヒマン(R
iechmann)他(Nature,332,323−324,1988)によってそ
れぞれ記載されている。ヒトT細胞上の抗原に対するCDR移植抗体の作製もまた、国際
公開第89/07452号パンフレット(英国医療審議会)に記載されている。
【0332】
国際公開第90/07861号パンフレットにおいて、クイーン(Queen)らはヒ
ト化免疫グロブリンを設計するための4つの基準を提示している。第一の基準は、ヒトア
クセプターとして、ヒト化する非ヒトドナー免疫グロブリンと著しく相同である特定のヒ
ト免疫グロブリンに由来する骨格を用いるか、または多数のヒト抗体に由来する共通骨格
を用いることである。第二の基準は、ヒト配列について骨格の特定残基でヒトアクセプタ
ー残基が稀であってドナー残基が典型的である場合は、アクセプターでなくドナーアミノ
酸を用いることである。第三の基準は、CDRに直に隣接する位置では、アクセプターで
なくドナー骨格アミノ酸残基を用いることである。第四の基準は、CDRに直に隣接する
位置では、アクセプターでなくドナー骨格アミノ酸残基を用いることである。第四の基準
は、アミノ酸が、三次元免疫グロブリンモデルでCDRの約3A以内に側鎖原子を有し、
および抗原またはヒト化免疫グロブリンのCDRと相互作用が可能であると予測される場
合は、その骨格位置でドナー骨格アミノ酸残基を用いることである。基準2、3、または
4は基準1に加えて、またはその代替として適用することができ、および単独でまたは任
意の組み合わせで適用することができる。
【0333】
抗原およびアレルゲン
一実施形態では、本発明の物質は、抗原または抗原決定基(またはそれをコードするポリヌクレオチド)と同時、別々または順次の組み合わせで投与することができ、そのような抗原または抗原決定基に対する免疫反応を修飾(上昇または低下)することができる。
【0334】
本発明における用途に適した抗原は、免疫系によって認識されうる、および一般的に抗原受容体によって認識される、任意の物質であることができる。好ましくは本発明に用いられる抗原は免疫原である。宿主が、以前に遭遇した抗原に再曝露される時、アレルギー反応が起こる。
【0335】
抗原に対する免疫反応は一般的に細胞性(T細胞媒介殺作用)または体液性(完全な抗原の認識を介した抗体産生)のどちらかである。免疫反応に関与するTH細胞によるサイトカイン産生のパターンは、これらの反応型のどちらが優位になるかに影響を与えることができる: 細胞性免疫(TH1)は高いIL−2およびIFNγとしかし低いIL−4産生で特徴づけられる一方、体液性免疫(TH2)ではパターンは低いIL−2およびIFNγとしかし高いIL−4、IL−5およびIL−13である。分泌パターンは二次リンパ器官または細胞のレベルで調節されるため、特定のTHサイトカインパターンの薬理学的操作は、生じる免疫反応の種類および程度に影響を与えることができる。
【0336】
TH1−TH2バランスは、2つの異なる型のヘルパーT細胞の相対的な発現量をいう。2つの型は免疫系に対して大規模かつ相反する作用を有する。ある免疫反応がTH1細胞を優先する場合、これらの細胞は細胞応答を推進し、一方でTH2細胞は抗体に支配される反応を推進する。一部のアレルギー反応を担う種類の抗体はTH2細胞によって誘導される。
【0337】
本発明に用いられる抗原またはアレルゲン(またはその抗原決定基)は、ペプチド、ポリペプチド、糖質、タンパク質、糖タンパク質、または、タンパク質複合体、細胞−膜調製物、完全な細胞(生存可能なまたは生存不能な細胞)、細菌細胞またはウイルス/ウイルス成分のような、複数の抗原性エピトープを含むより複雑な材料であることができる。特に、ミエリン塩基性タンパク質(多発性硬化症に関連)、コラーゲン(慢性関節リウマチに関連)、およびインシュリン(糖尿病)、またはMHC抗原またはその抗原決定基のような非自己組織の拒絶に関連する抗原、といった自己免疫疾患に関連することが知られている抗原を用いることが好ましい。初回抗原刺激を受けた本発明のAPCおよび/またはT細胞が組織移植術手続に用いられる場合、抗原は組織ドナーから得ることができる。対象において発現される可能性がある抗原または抗原決定基をコードするポリヌクレオチドもまた用いることができる。
【0338】
本発明のさまざまな好ましい特性および実施形態をここで、非限定的な実施例を用いて、より詳細に説明する。
【実施例】
【0339】
実施例1
hDelta1−IgG4Fc融合タンパク質
ヒトIgG4のFcドメインと融合したヒトDelta1の細胞外ドメインを含む融合タンパク質(「hDelta1−IgG4Fc」)を、ヒトDelta1の細胞外ドメインをコードするヌクレオチド配列(たとえばGenbank登録番号AF003522を参照)を発現ベクターpCONγ(ロンザ・バイオロジックス社(Lonza Biologics)、英国スラウ(Slough))に挿入し、および結果として生じる構造をCHO細胞で発現することによって調製した。結果として生じる発現された融合タンパク質のアミノ酸配列は下記の通りであった:
ここで、第一の下線の配列はシグナルペプチド(成熟タンパク質から切断される)であり、および第二の下線の配列はIgG4Fc配列である。本タンパク質は通常は、システインジスルフィド結合によって結合した二量体として存在する(たとえば本文書の略図を参照)。
【0340】
実施例2
ラパマイシン存在下でのNotchシグナル伝達活性を検出するためのダイナビーズ(Dynabeads)ELISA測定法
(i)CD4+細胞精製
脾臓をマウス(各種のBalb/c雌、8〜10週、C57B/6雌、8〜10週、D011.10遺伝子導入雌、8〜10週)から摘出し、および0.2μm細胞ストレーナーを通して、20mlのR10F培地(R10F−RPMI 1640培地(ギブコ社(Gibco)カタログ番号22409)+2mM L−グルタミン、50μg/mlペニシリン、50μg/mlストレプトマイシン、5x10-5Mβ−メルカプト−エタノールを含む10%ウシ胎仔血清)へ入れた。細胞懸濁液を遠心分離し(1150rpm 5分間)および培地を除去した。
【0341】
細胞は脾臓1個当たり5mlのACK溶解緩衝液(0.15M NH4Cl、1.0M KHCO3、0.1mM Na2EDTAを含む二回蒸留水)を用いて4分間インキュベートした(赤血球を溶解するため)。細胞を次いでR10F培地を用いて1回洗浄しおよび計数した。CD4+細胞を磁気細胞分離装置(MACS)カラム(ミルテニー・バイオテク社(Miltenyi Biotec)、英国ビズリー(Bisley):カタログ番号130−042−401)でCD4(L3T4)ビーズ(ミルテニー・バイオテク社カタログ番号130−049−201)を用いて、取扱説明書に従って、懸濁液からポジティブ選択によって精製した。
【0342】
(ii)抗体被覆化
96ウェル平底プレートを、DPBS+1μg/ml抗ハムスターIgG抗体(ファー
ミンジェン社(Pharmingen)カタログ番号554007)+1μg/ml抗I
gG4抗体を用いて被覆した。ウェル当たり100μlの被覆化混合物を加えた。プレー
トを一夜4℃にてインキュベートし、次いでDPBSで洗浄した。各ウェルに次いで、1
00μl DPBS+抗CD3抗体(1μg/ml)または、100μl DPBS+抗C
D3抗体(1μg/ml)+hDelta1−IgG4Fc融合タンパク質(10μg/
ml;上記の通り)のどちらかを加えた。プレートを2〜3時間37℃にてインキュベー
トし、次いで、細胞(上記の通り調製した)を加える前に、DPBSを用いて再び洗浄し
た。
【0343】
(iii)一次ポリクローナル刺激およびELISA
CD4+細胞を、上記(ii)に従って予め被覆された96ウェル平底プレート中で培
養した。細胞を、計数後、R10F培地+4μg/ml抗CD28抗体(ファーミンジェ
ン社(Pharmingen)、カタログ番号553294、クローン番号37.51)
中に2x106/mlで再懸濁した。ウェル当たり100μlの細胞懸濁液を加えた。1
00μlのR10F培地を次いで各ウェルに加え、終容量200μlとした(2x105
細胞/ウェル、抗CD28終濃度2μg/ml)。ラパマイシン(シグマ社(Sigma
))をストック溶液(4mMを含むDMSO)から加え、終濃度0ないし5000nMと
した。プレートを次いで37℃にて72時間インキュベートした。
【0344】
上清125μlをその後各ウェルから取り、およびELISAによってIL−2、IL−10、IFNgおよびIL−13についてR&Dシステムズ社(R & D Systems)(英国アビンドン(Abingdon))の抗体対を用いて試験するまで−20℃にて保存した。結果を図9に示す。
【0345】
実施例3
シクロスポリンA存在下でのNotchシグナル伝達活性を検出するためのダイナビーズ(Dynabeads)ELISA測定法
ラパマイシンの代わりにシクロスポリンA(シグマ社(Sigma))を加え(4mMを含むエタノールのストック溶液から)、終濃度0ないし40nMを与えた点以外は、実施例2の手続を繰り返した。結果を図10に示す。
【0346】
実施例4
FK−506存在下でのNotchシグナル伝達活性を検出するためのダイナビーズ(Dynabeads)ELISA測定法
ラパマイシンの代わりにFK−506(カルビオケム社(Calbiochem))を加え(4mMを含むDMSOのストック溶液から)、終濃度0ないし8000nMを与えた点以外は、実施例2の手続を繰り返した。結果を図11に示す。
【0347】
実施例5
デキサメタゾン存在下でのNotchシグナル伝達活性を検出するためのダイナビーズ(Dynabeads)ELISA測定法
(i)CD4+細胞精製
脾臓をマウス(各種のBalb/c雌、8〜10週、C57B/6雌、8〜10週、D
011.10遺伝子導入雌、8〜10週)から摘出し、および0.2μm細胞ストレーナ
ーを通して、20mlのR10F培地(R10F−RPMI 1640培地(ギブコ社(
Gibco)カタログ番号22409)+2mM L−グルタミン、50μg/mlペニ
シリン、50μg/mlストレプトマイシン、5x10-5Mβ−メルカプト−エタノール
を含む10%ウシ胎仔血清)へ入れた。細胞懸濁液を遠心分離し(1150rpm 5分
間)および培地を除去した。
【0348】
細胞は脾臓1個当たり5mlのACK溶解緩衝液(0.15M NH4Cl、1.0M KHCO3、0.1mM Na2EDTAを含む二回蒸留水)を用いて4分間インキュベートした(赤血球を溶解するため)。細胞を次いでR10F培地を用いて1回洗浄しおよび計数した。CD4+細胞を磁気細胞分離装置(MACS)カラム(ミルテニー・バイオテク社(Miltenyi Biotec)、英国ビズリー(Bisley):カタログ番号130−042−401)でCD4(L3T4)ビーズ(ミルテニー・バイオテク社カタログ番号130−049−201)を用いて、取扱説明書に従って、懸濁液からポジティブ選択によって精製した。
【0349】
(ii)抗体被覆化
96ウェル平底プレートを、DPBS+1μg/ml抗ハムスターIgG抗体(ファー
ミンジェン社(Pharmingen)カタログ番号554007)+1μg/ml抗I
gG4抗体を用いて被覆した。ウェル当たり100μlの被覆化混合物を加えた。プレー
トを一夜4℃にてインキュベートし、次いでDPBSで洗浄した。各ウェルに次いで、1
00μl DPBS+抗CD3抗体(1μg/ml)または、100μl DPBS+抗C
D3抗体(1μg/ml)+hDelta1−IgG4Fc融合タンパク質(10μg/
ml;上記の通り)のどちらかを加えた。プレートを2〜3時間37℃にてインキュベー
トし、次いで、細胞(上記の通り調製した)を加える前に、DPBSを用いて再び洗浄し
た。
【0350】
(iii)一次ポリクローナル刺激およびELISA
CD4+細胞を、上記(ii)に従って予め被覆された96ウェル平底プレート中で培
養した。細胞を、計数後、R10F培地+4μg/ml抗CD28抗体(ファーミンジェ
ン社(Pharmingen)、カタログ番号553294、クローン番号37.51)
中に2x106/mlで再懸濁した。ウェル当たり100μlの細胞懸濁液を加えた。1
00μlのR10F培地を次いで各ウェルに加え、終容量200μlとした(2x105
細胞/ウェル、抗CD28終濃度2μg/ml)。デキサメタゾンをストック溶液(4m
Mを含むDMSO)から加え、終濃度0ないし5000nMとした。プレートを次いで3
7℃にて72時間インキュベートした。
【0351】
上清125μlをその後各ウェルから取り、およびELISAによってIL−2、IL−10、IFNgおよびIL−13についてR&Dシステムズ社(R & D Systems)(英国アビンドン(Abingdon))の抗体対を用いて試験するまで−20℃にて保存した。結果を図12に示す。IL−4およびIL−5を用いた別の結果を図13に示す。
【0352】
実施例6
Notchシグナル伝達活性を検出するためのルシフェラーゼ測定法
hDelta1−IgG4Fc融合タンパク質(実施例1)をストレプトアビジン−ダイナビーズ(Dynabeads)(英国ダイナル社(Dynal (UK) Ltd)のセレクション(CELLection)・ビオチン・バインダー・ダイナビーズ[カタログ番号115.21]、4.0x108個/ml;「ビーズ」)上に、ビオチニル化−IgG−4(ファーミンジェン社(Pharmingen)[カタログ番号555879]のクローンJDC14、0.5mg/ml)と組み合わせて下記の通り固定化した:
【0353】
測定した各試料について、ビーズ1x107個(ビーズ4.0x108個/mlで25μl)および2μgのビオチニル化α−IgG−4を用いた。PBSをビーズに加えて1mlとし、および混合物を13,000rpmにて1分間遠沈した。さらに1mlのPBSを用いて洗浄後、混合物を再び遠沈した。ビーズを次いで、ビオチニル化α−IgG−4を含む終容量100μlのPBSに、滅菌エッペンドルフチューブ中で再懸濁し、および振とう機上に室温にて30分間置いた。PBSを加えて1mlとし、および混合物を13,000rpmにて1分間遠沈し、次いで1mlのPBSでさらに2回洗浄した。
【0354】
混合物を次いで13,000rpmにて1分間遠沈し、およびビーズを試料当たり50μlのPBSに再懸濁した。50μlのビオチニル化α−IgG−4−被覆ビーズを各試料に加え、および混合物を回転振とう機上で4℃にて一夜インキュベートした。チューブを次いで1000rpmにて5分間室温にて遠心した。ビーズを次いで10mlのPBSで洗浄し、遠沈し、1mlのPBSに再懸濁し、滅菌エッペンドルフチューブに移し、さらに1mlのPBSで2回洗浄し、遠沈し、および終容量100μlのDMEM+10%(HI)FCS+グルタミン+P/Sに、すなわちビーズ1.0x105個/μlにて再懸濁した。
【0355】
N27#11細胞(完全長ヒトNotch2およびCBF1−ルシフェラーゼレポーター構造を発現しているCHO細胞;T80フラスコ;国際公開第03/012441号パンフレット、ロランティス社(Lorantis)に記載の通り、たとえばその実施例7を参照)を、0.02%EDTA(トリプシン含有)溶液(シグマ社(Sigma))を用いて採取し、遠沈し、およびDMEM+10%(HI)FCS+グルタミン+P/Sに再懸濁した。細胞10μlを計数し、および細胞密度を1.0x105個/mlへ、新しいDMEM+10%(HI)FCS+グルタミン+P/Sを用いて調整した。24−ウェルプレートのウェル当たり細胞1.0x105個を、容量1mlのDMEM+10%(HI)FCS+グルタミン+P/S中に播種し、および細胞をインキュベーター内に置いて少なくとも30分間沈降させた。
【0356】
ビーズ20μlを次いで2連で、一対のウェルへ加え、ビーズ2.0x106個/ウェル(ビーズ100個/細胞)とした。プレートをCO2インキュベーター内に一夜置いた。次いですべてのウェルから上清を除去し、100μlのステディグロー(SteadyGlo)(登録商標)ルシフェラーゼ測定試薬(プロメガ社(Promega))を加え、および結果として生じる混合物を室温に5分間置いた。
【0357】
混合物を次いでピペットで2回吸引上下して細胞溶解を確実にし、および各ウェルからの内容物を96ウェルプレート(V型ウェルの)へ移し、およびプレートホルダー中で5分間1000rpmで室温にて遠心した。
【0358】
清澄化した上清175μlを次いで白色96ウェルプレート(ヌンク社((Nunc))へ、ビーズ沈澱を残して移した。
【0359】
発光を次いでトップカウント(TopCount)(登録商標)(パッカード社(Packard))カウンターで読み取った。
参考文献(参照により本開示に含まれる)
Artavanis-Tsakonas S, et al. (1995) Science 268:225-232.
Artavanis-Tsakonas S, et al. (1999) Science 284:770-776.
Brucker K, et al. (2000) Nature 406:411-415.
Camilli et al. (1994) Proc Natl Acad Sci USA 91:2634-2638.
Chee M. et al. (1996) Science 274:601-614.
Dkuz (1997) Cell 90: 271-280
Hicks C, et al. (2000) Nat. Cell. Biol. 2:515-520.
Hoyne G.F. et al (1999) Int Arch Allergy Immunol 118:122-124;
Hoyne et al. (2000) Immunology 100:281-288;
Hoyne G.F. et al (2000) Intl Immunol 12:177-185;
Hoyne, G. et al. (2001) Immunological Reviews 182:215-227
Irvine KD (1999) Curr. Opin. Genet. Devel. 9:434-441.
Ju BJ, et al. (2000) Nature 405:191-195.
Leimeister C. et al. (1999) Mech Dev 85(1-2):173-7.
Li et al. (1998) Immunity 8(1):43-55.
Lieber, T. et al. (1993) Genes Dev 7(10):1949-65.
Lu, F. M. et al. (1996) Proc Natl Acad Sci 93(11):5663-7.
Matsuno K, et al. (1998) Nat. Genet. 19:74-78.
Matsuno, K. et al. (1995) Development 121(8):2633-44.
Medhzhitov et al. (1997) Nature 388:394-397.
McGuiness (1996) Genomics 35(3): 473-485
Meuer S. et al (2000) Rapid Cycle Real-time PCR, Springer-Verlag Berlin and Heidelberg GmbH & Co.
Moloney DJ, et al. (2000) Nature 406:369-375.
Munro S, Freeman M. (2000) Curr. Biol. 10:813-820.
Ordentlich et al. (1998) Mol. Cell. Biol. 18:2230-2239.
Osborne B, Miele L. (1999) Immunity 11:653-663.
Panin VM, et al. (1997) Nature 387:908-912.
Schroeter EH, et al. (1998) Nature 393:382-386.
Struhl G, Adachi A. (1998) Cell 93:649-660.
Struhl, G. et al. (1998) Cell 93(4):649-60.
Takebayashi K. et al. (1994) J Biol Chem 269(7):150-6.
Tamura K, et al. (1995) Curr. Biol. 5:1416-1423.
Valenzuela et al. (1995) J. Neurosci. 15:6077-6084.
Weinmaster G. (2000) Curr. Opin. Genet. Dev. 10:363-369.
Wilson and Hemmati-Brivanlou (1997) Neuron 18:699-710.
【図面の簡単な説明】
【0360】
【図1】図1はNotchシグナル伝達経路の略図を示す。
【図2】図2はNotchリガンドJaggedおよびDeltaの略図を示す。
【図3】図3はさまざまなショウジョウバエ(Drosophila)および哺乳類Notchリガンド由来のDSLドメインのアミノ酸配列の整列を示す。
【図4】図4はヒトDelta−1、Delta−3およびDelta−4のアミノ酸配列を示す。
【図5】図5はヒトJagged−1およびJagged−2のアミノ酸配列を示す。
【図6】図6はヒトDelta−1のコード(ポリヌクレオチド)配列を示す。
【図7a】図7はヒトJagged−1のコード(ポリヌクレオチド)配列を示す。
【図7b】図7はヒトJagged−1のコード(ポリヌクレオチド)配列を示す。
【図8】図8は本発明において使用することができるさまざまなNotchリガンドドメイン/IgFcドメイン融合タンパク質の略図を示す。
【図9】図9は実施例2の結果を示す。
【図10】図10は実施例3の結果を示す。
【図11】図11は実施例4の結果を示す。
【図12】図12は実施例5の結果を示す。
【図13】図13は実施例5の結果を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫機能の調節に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第98/20142号パンフレットは、Notchシグナル伝達経路の操作を、免疫療法にならびにT細胞媒介性疾患の予防および/または治療に用いる方法を記載する。特に、アレルギー、自己免疫、移植片拒絶、腫瘍によって誘導されたT細胞系の異常、および感染症を標的とすることができる。
【0003】
また、抗原特異的寛容を他のT細胞へ伝達することができる調節T細胞の一種を生じることが可能であることも示されており、伝染性寛容と呼ばれる過程である(国際公開第98/20142号パンフレット)。
【0004】
Notchシグナル伝達経路の説明およびそれによって影響される条件は、たとえば、下記の我々の公開されたPCT出願に見出すことができる;
PCT/GB97/03058(出願日1997年11月6日、国際公開第98/20142号;出願日1996年11月7日の英国特許第9623236.8号、出願日1997年7月24日の英国特許第9715674.9号、および出願日1997年9月11日の英国特許第9719350.2号の優先権を主張);
PCT/GB99/04233(出願日1999年12月15日、国際公開第00/36089号;出願日1999年12月15日の英国特許第9827604.1号の優先権を主張);
PCT/GB00/04391(出願日2000年11月17日、国際公開第0135990号;出願日1999年11月18日の英国特許第9927328.6号の優先権を主張);
PCT/GB01/03503(出願日2001年8月3日、国際公開第02/12890号;出願日2000年8月4日の英国特許第0019242.7号の優先権を主張);
PCT/GB02/02438(出願日2002年5月24日、国際公開第02/096952号;出願日2001年5月25日の英国特許第0112818.0号の優先権を主張);
PCT/GB02/03381(出願日2002年7月25日、国際公開第03/012111号;出願日2001年7月25日の英国特許第0118155.1号の優先権を主張);
PCT/GB02/03397(出願日2002年7月25日、国際公開第03/012441号;出願日2001年7月25日の英国特許第0118153.6号、出願日2002年4月5日の英国特許第0207930.9号、出願日2002年5月28日の英国特許第0212282.8号および出願日2002年5月28日の英国特許第0212283.6号の優先権を主張);
PCT/GB02/03426(出願日2002年7月25日、国際公開第03/011317号;出願日2001年7月25日の英国特許第0118153.6号、出願日2002年4月5日の英国特許第0207930.9号、出願日2002年5月28日の英国特許第0212282.8号および出願日2002年5月28日の英国特許第0212283.6号の優先権を主張);
PCT/GB02/04390(出願日2002年9月27日、国際公開第03/029293号;出願日2001年9月28日の英国特許第0123379.0号の優先権を主張);
PCT/GB02/05137(出願日2002年11月13日、国際公開第03/041735号;出願日2001年11月14日の英国特許第0127267.3号、出願日2002年7月25日のPCT/GB02/03426号、出願日2002年9月7日の英国特許第0220849.4号、出願日2002年9月10日の英国特許第0220913.8号および出願日2002年9月27日のPCT/GB02/004390号の優先権を主張);
PCT/GB02/05133(出願日2002年11月13日、国際公開第03/042246号;出願日2001年11月14日の英国特許第0127271.5号および出願日2002年9月10日の英国特許第0220913.8号の優先権を主張)。
【0005】
PCT/GB97/03058号(国際公開第98/20142号)、PCT/GB99/04233号(国際公開第00/36089号)、PCT/GB00/04391号(国際公開第0135990号)、PCT/GB01/03503号(国際公開第02/12890号)、PCT/GB02/02438号(国際公開第02/096952号)、PCT/GB02/03381号(国際公開第03/012111号)、PCT/GB02/03397号(国際公開第03/012441号)、PCT/GB02/03426号(国際公開第03/011317号)、PCT/GB02/04390号(国際公開第03/029293号)、PCT/GB02/05137号(国際公開第03/041735号)およびPCT/GB02/05133号(国際公開第03/042246号)のそれぞれは参照により本開示に含まれる。
【0006】
ホイネ(Hoyne)G.F.他(1999)Int Arch Allergy Immunol 118:122−124;ホイネ他(2000)Immunology 100:281−288;ホイネ,G.F.他(2000)Intl Immunol 12:177−185;ホイネ,G.他(2001)Immunological Reviews 182:215−227もまた参照される;そのそれぞれもまた参照により本開示に含まれる。
【0007】
本発明は、免疫系を調節するためのさらなる方法を提供することを目指す。
【0008】
ラパマイシン、シクロスポリンAおよびFK506といったイムノフィリン結合性免疫抑制剤は、免疫抑制作用を示すことが知られており、したがって移植片拒絶といった症状の治療のために一般に用いられている。
【0009】
免疫活性ステロイドは免疫抑制作用を示すことが知られており、たとえば、炎症性疾患の治療のために一般に用いられている。
【0010】
現在、そのような免疫抑制剤の免疫抑制作用はNotchシグナル伝達経路の調節因子の免疫調節作用を妨害しないこと、およびさらに、特にサイトカインプロファイルに関して、予想外に改善された活性のスペクトルおよび/または選択性を提供するためにそのような薬剤の組み合わせを使用しうることが見出されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の最初の一態様によると、免疫系の調節を目的とした同時の、同時期の、別々のまたは順次の使用のための組み合わせ調製物として、Notchシグナル伝達経路の調節因子(ここでは「Notchシグナル伝達の調節因子」ともいう)および免疫抑制剤を含む製品が提供される。
【0012】
本発明の別の一態様によると、Notchシグナル伝達経路の調節因子の有効量および免疫抑制剤の有効量を同時に、同時期に、別々にまたは順次に投与することを含む、哺乳類において免疫系を調節する方法が提供される。
【0013】
本発明の別の一態様によると、免疫系の調節における、同時の、同時期の、別々のまたは順次の使用のための、Notchシグナル伝達経路の調節因子と免疫抑制剤との組み合わせが提供される。
【0014】
本発明の別の一態様によると、免疫系の調節における免疫抑制剤との、同時の、同時期の、別々のまたは順次の組み合わせでの使用のための、Notchシグナル伝達経路の調節因子が提供される。
【0015】
本発明の別の一態様によると、免疫系の調節のための薬剤の製造における、Notchシグナル伝達経路の調節因子と免疫抑制剤との組み合わせの使用が提供される。
【0016】
本発明の別の一態様によると、免疫系の調節のための薬剤の製造における、免疫抑制剤と、同時に、同時期に、別々にまたは順次に組み合わせての、Notchシグナル伝達経路の調節因子の使用が提供される。
【0017】
本発明の別の一態様によると、Notchシグナル伝達経路の調節因子、および免疫抑制剤を含むキットが提供される。
【0018】
本発明の別の一態様によると、未処置T細胞を刺激シグナルおよび適当な量のNotchシグナル伝達の調節因子と免疫抑制剤との組み合わせに接触させ、調節T細胞への分化を促進することを含む、免疫系の調節のための方法が提供される。
【0019】
本発明の方法、製品、および用途は、生物学的または治療的効果の促進を提供する。ここで用いられる「生物学的または治療的効果の促進」の語は、たとえば、効力の増大、有効性の増大、副作用の減少、活性スペクトルの改善、などを含む。
【0020】
好ましい一実施形態では、免疫抑制剤はイムノフィリン結合性免疫抑制剤である。
【0021】
好ましい一実施形態では、免疫抑制剤は免疫学的に活性なステロイドである。
【0022】
一実施形態ではNotchシグナル伝達経路の調節因子およびイムノフィリン結合性免疫抑制剤または免疫学的に活性なステロイドは、相乗的な(適切には優加法的な)量で用いられる。これは、必要に応じて、より少ない量の活性物質を用いることができるという特有の長所を持つ。
【0023】
本発明の別の一態様によると、1つの処置手順でNotchシグナル伝達の調節因子の有効量を投与する;および別の処置手順で免疫抑制剤の有効量を投与する段階を(任意の順序で)含む、免疫系を調節するための方法が提供される。
【0024】
本発明の別の一態様によると、1つの処置手順でNotchシグナル伝達の調節因子の相乗作用的に有効な量を投与する;および別の処置手順で免疫抑制剤の相乗作用的に有効な量を投与する段階を(任意の順序で)含む、免疫系を調節するための方法が提供される。
【0025】
適切にはイムノフィリン結合性免疫抑制剤はシクロフィリンへ結合することによって作用しうる。
【0026】
代替的にイムノフィリン結合性免疫抑制剤はマクロフィリン/FKBPへ結合することによって作用しうる。
【0027】
代替的にイムノフィリン結合性免疫抑制剤はmTORまたはRAPTORへ結合することによって作用しうる。
【0028】
適切にはイムノフィリン結合性免疫抑制剤はラパマイシンまたはラパマイシン誘導体を含む。
【0029】
代替的に、または加えて、イムノフィリン結合性免疫抑制剤はシクロスポリンまたはシクロスポリン誘導体を含む。
【0030】
代替的に、または加えて、イムノフィリン結合性免疫抑制剤はFK506(タクロリムス)またはFK506誘導体を含む。
【0031】
好ましくはNotchシグナル伝達経路の調節因子 (「Notchシグナル伝達の調節因子」)はNotchシグナル伝達を活性化することができる物質である。好ましくはその物質は、リンパ球、好ましくはT細胞において、Notchシグナル伝達を活性化することができる。
【0032】
好ましくはNotchシグナル伝達経路の調節因子は、Notch1、Notch2、Notch3またはNotch4受容体といったNotch受容体を活性化することができる物質である。適切には、たとえば、その調節因子は、Notchリガンド、またはNotchリガンドの生物学的に活性な断片または誘導体、またはそのようなNotchリガンドのペプチドミメティックでありうる。好ましくはその物質は好ましくは哺乳類で、好ましくはヒトで、T細胞といったリンパ球において、Notch受容体を活性化することができる。
【0033】
適切にはNotchシグナル伝達経路の調節因子は、融合タンパク質を含みうるかまたは融合タンパク質をコードしうる。たとえば、調節因子はNotchリガンド細胞外ドメインのセグメントおよび免疫グロブリンFcセグメントを含む融合タンパク質を含みうるかまたはコードしうる。
【0034】
適切にはNotchシグナル伝達経路の調節因子は、Notchリガンド細胞外ドメインのセグメントおよび免疫グロブリンFcセグメント(たとえばIgG1 FcまたはIgG4 Fc)を含む融合タンパク質、またはそのような融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むことができる。適切なそのような融合タンパク質は、たとえば国際公開第98/20142号パンフレットの実施例2に記載されている。IgG融合タンパク質は、たとえば、米国特許第5428130号明細書(ジェネンテック社(Genentech))に記載のように、本分野でよく知られている通りに調製することができる。
【0035】
適切にはNotchシグナル伝達経路の調節因子は、NotchリガンドDSLまたはEGFドメイン、またはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体を含むタンパク質またはポリペプチドを含むかまたはコードする。
【0036】
好ましくはNotchシグナル伝達経路の調節因子は、1個のNotchリガンドDSLドメインおよび少なくとも1個のEGF様ドメイン、適切には少なくとも2個、適切には少なくとも3個、たとえば少なくとも3ないし16個またはより多くのEGF様ドメインを含むかまたはコードする。適切にはそのDSLおよびEGF配列は哺乳類配列であるかまたは哺乳類配列に対応する。好ましい配列はヒト配列を含む。
【0037】
代替的に、または加えて、Notchシグナル伝達経路の調節因子は、Notch細胞内ドメイン(NotchIC)またはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体、または、Notch細胞内ドメインまたはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体をコードするポリヌクレオチド配列を含みうる。
【0038】
適切にはNotchシグナル伝達経路の調節因子は、Deltaまたはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体、または、Deltaまたはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0039】
代替的に、または加えて、Notchシグナル伝達経路の調節因子は、Serrate/Jaggedまたはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体、または、Serrate/Jaggedまたはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体をコードするポリヌクレオチドを含みうる。
【0040】
代替的に、または加えて、Notchシグナル伝達経路の調節因子は、Notchまたはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体、または、Notchまたは断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体をコードするポリヌクレオチドを含みうる。
【0041】
代替的に、または加えて、Notchシグナル伝達経路の調節因子は、Notchシグナル伝達抑制因子の優性阻害型、またはNotchシグナル伝達抑制因子の優性阻害型をコードするポリヌクレオチドを含みうる。
【0042】
代替的に、または加えて、Notchシグナル伝達経路の調節因子は、NotchリガンドまたはNotchシグナル伝達経路の下流構成成分の発現または活性をアップレギュレートすることができるポリペプチド、またはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含みうる。
【0043】
適切にはNotchシグナル伝達経路の調節因子は、抗体、抗体断片または抗体誘導体、または、抗体、抗体断片または抗体誘導体をコードするポリヌクレオチドを含みうる。
【0044】
適切にはNotchシグナル伝達の調節因子は多量体化型で投与することができる。たとえば、一実施形態ではNotchシグナル伝達の調節因子は膜または担体に結合しうる。適切には複数または多数の調節因子(たとえば少なくとも5)が膜または担体に結合する。そのような膜または担体は本分野で既知であるものから選択することができる。好ましい一実施形態では、その担体は粒子状担体マトリクスである。さらにより好ましい一実施形態では、その担体はビーズである。そのビーズは、たとえば、磁気ビーズ(たとえば「ダイナル(Dynal)」の商品名で入手可能である通りの)、またはセファロース(Sepharose)ビーズといったポリマー性ビーズであることができる。
【0045】
記載の適切な活性物質は、抗原または抗原決定基(たとえばアレルゲン、移植抗原または自己抗原)または抗原または抗原決定基をコードするポリヌクレオチドと、前記抗原または抗原決定基に対する免疫反応を調節するように、好ましくは低下するように、同時の、別々の、または順次の組み合わせで投与される。
【0046】
好ましい一実施形態では本発明は:
i)ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体;および
ii)適切にはNotchリガンドDSLドメインおよび少なくとも1個のEGF様ドメイン、適切には少なくとも1ないし20、適切には少なくとも2ないし16、たとえば少なくとも2ないし10個のEGF様ドメインを含むかまたはコードする活性化因子である、Notch受容体の活性化因子;
および随意的に抗原または抗原決定基、または抗原または抗原決定基をコードするポリヌクレオチド
の組み合わせを用いる。
【0047】
別の一実施形態では、本発明は:
i)シクロスポリンまたはシクロスポリン誘導体;および
ii)適切にはNotchリガンドDSLドメインおよび少なくとも1個のEGF様ドメイン、適切には少なくとも1ないし20、適切には少なくとも2ないし16、たとえば少なくとも2ないし10個のEGF様ドメインを含むかまたはコードする活性化因子である、Notch受容体の活性化因子;
および随意的に抗原または抗原決定基、または抗原または抗原決定基をコードするポリヌクレオチド
の組み合わせを用いる。
【0048】
別の一実施形態では本発明は:
i)FK506またはFK506誘導体;および
ii)適切にはNotchリガンドDSLドメインおよび少なくとも1個のEGF様ドメイン、適切には少なくとも1ないし20、適切には少なくとも2ないし16、たとえば少なくとも2ないし10個のEGF様ドメインを含むかまたはコードする活性化因子である、Notch受容体の活性化因子;
および随意的に抗原または抗原決定基、または抗原または抗原決定基をコードするポリヌクレオチド
の組み合わせを用いる。
【0049】
本発明の別の一態様によると、イムノフィリン結合性免疫抑制剤は、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体およびシクロスポリンまたはシクロスポリン誘導体の組み合わせを含む。
【0050】
別の一実施形態によると、本発明は:
i)ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体;
ii)シクロスポリンまたはシクロスポリン誘導体;および
iii)適切にはNotchリガンドDSLドメインおよび少なくとも1個のEGF様ドメイン、適切には少なくとも1ないし20、適切には少なくとも2ないし16、たとえば少なくとも2ないし10個のEGF様ドメインを含むかまたはコードする活性化因子である、Notch受容体の活性化因子;
および随意的に抗原または抗原決定基、または抗原または抗原決定基をコードするポリヌクレオチド
の組み合わせを用いる。
【0051】
別の一実施形態によると、本発明は:
i)ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体;
ii)FK506またはFK506誘導体;および
iii)適切にはNotchリガンドDSLドメインおよび少なくとも1個のEGF様ドメイン、適切には少なくとも1ないし20、適切には少なくとも2ないし16、たとえば少なくとも2ないし10個のEGF様ドメインを含むかまたはコードする活性化因子である、Notch受容体の活性化因子;
および随意的に抗原または抗原決定基、または抗原または抗原決定基をコードするポリヌクレオチド
の組み合わせを用いる。
【0052】
別の好ましい一実施形態では本発明は:
i)免疫学的に活性なステロイド;および
ii)適切にはNotchリガンドDSLドメインおよび少なくとも1個のEGF様ドメイン、適切には少なくとも1ないし20、適切には少なくとも2ないし16、たとえば少なくとも2ないし10個のEGF様ドメインを含むかまたはコードする活性化因子である、Notch受容体の活性化因子;
および随意的に抗原または抗原決定基、または抗原または抗原決定基をコードするポリヌクレオチド
の組み合わせを用いる。
【0053】
好ましくは免疫系の調節はT細胞活性の調節を含む。
【0054】
一実施形態では免疫系の調節はT細胞活性の低下を含む。たとえば、免疫系の調節は、エフェクターT細胞活性の低下、たとえばヘルパー(TH)および/または細胞傷害性(TC)T細胞活性の低下を含みうる。適切には免疫系の調節は、Th1またはTh2免疫反応の低下を含みうる。
【0055】
代替的に、または加えて、免疫系の調節は、Tr1またはTh3調節T細胞活性の増大といった、調節T細胞(Treg)活性の増大を提供する。
【0056】
適切には免疫系の調節は、調節T細胞(Treg)の生成および/またはTreg活性の増大を含む。
【0057】
適切には免疫系の調節は、喘息、アレルギー、移植片拒絶、移植片対宿主病または自己免疫疾患の治療を含む。
【0058】
適切には本発明の組み合わせは、IL−10、IL−5、IL−4、IL−2、TNF−アルファ、IFN−ガンマまたはIL−13から選択されるサイトカインの発現の調節に用いることができる。
【0059】
適切には本発明の組み合わせは、IL−10発現の増加のための薬剤の製造に用いることができる。
【0060】
適切には本発明の組み合わせは、IL−2、IL−4、IL−5、TNF−アルファ、IFN−ガンマまたはIL−13から選択されるサイトカインの発現の低下のための薬剤の製造に用いることができる。
【0061】
適切には本発明の組み合わせは、IL−10発現の増加およびIL−4またはIL−5発現の減少を有する免疫調節サイトカインプロファイルを生じさせるための薬剤の製造に用いることができる。
【0062】
適切には本発明の組み合わせは、IL−10発現の増加およびIL−2、IFN−ガンマ、Il−4、IL−5、IL−13およびTNF−アルファ発現の減少を有する免疫調節サイトカインプロファイルを生じさせるための薬剤の製造に用いることができる。
【0063】
このように本発明はさらに、本発明に記載の活性物質の組み合わせを投与することによる、IL−10、IL−5、IL−4、IL−2、TNF−アルファ、IFN−ガンマまたはIL−13から選択されるサイトカインの発現の調節のための方法を提供する。
【0064】
さらに、本発明に記載の活性物質の組み合わせを投与することによる、IL−10またはIL−4発現の増加のための方法を提供する。
【0065】
さらに、本発明に記載の活性物質の組み合わせを投与することによる、IL−2、IL−5、TNF−アルファ、IFN−ガンマまたはIL−13から選択されるサイトカインの発現の減少のための方法を提供する。
【0066】
さらに、本発明に記載の活性物質の組み合わせを投与することによる、IL−10発現の増加およびIL−5発現の減少を有する免疫調節サイトカインプロファイルを生じさせるための方法を提供する。
【0067】
さらに、本発明に記載の活性物質の組み合わせを投与することによる、IL−10発現の増加およびIL−2、IFN−ガンマ、IL−5、IL−13およびTNF−アルファ発現の減少を有する免疫調節サイトカインプロファイルを生じさせるための方法を提供する。
【0068】
適切にはサイトカイン発現は、白血球、線維芽細胞または上皮細胞において、好ましくは樹状細胞、リンパ球またはマクロファージ、またはそれらの前駆細胞または組織特異的誘導体において改変されうる。
【0069】
本発明の別の一態様によると、寛容を促進することができるリンパ球または抗原提示細胞(APC)を作製する方法であって、患者または患畜から得られたリンパ球またはAPCを(i)Notchシグナル伝達経路の調節因子および(ii)ここに記載の通りの免疫抑制剤と共にインキュベートすることを含む方法が提供される。
【0070】
適切にはその方法は、患者または患畜から得られたリンパ球またはAPCを、(i)Notchシグナル伝達経路の調節因子および(ii)ここに記載の通りの免疫抑制剤の存在下で、APCと共にインキュベートすることを含む。
【0071】
本発明の別の一態様によると、T細胞に寛容を誘導することができるAPCを作製する方法であって、APCを(i)Notchシグナル伝達経路の調節因子および(ii)ここに記載の通りの免疫抑制剤と接触させることを含む方法が提供される。
【0072】
本発明の別の一態様によると、寛容を促進することができるリンパ球またはAPCを作製する方法であって、患者または患畜から得られたリンパ球またはAPCを、上記の通り作製されたリンパ球またはAPCと共にインキュベートすることを含む方法が提供される。
【0073】
適切にはそのような方法ではそのリンパ球またはAPCはin vivoまたはex−vivoのどちらかでインキュベートすることができる。
【0074】
適切には抗原または抗原決定基(または、抗原または抗原決定基をコードするポリヌクレオチド)もまた、本発明の方法、用途および製品の一部として投与することができる。その抗原または抗原決定基(または、抗原または抗原決定基をコードするポリヌクレオチド)は、抗原または抗原決定基に対する免疫反応を調節するように、好ましくは低下させるように、Notchシグナル伝達の調節因子および免疫抑制剤と、同時の、別々のまたは順次の組み合わせで投与することができる。
【0075】
一実施形態では抗原または抗原決定基は、自己抗原またはその抗原決定基、または、自己抗原またはその抗原決定基をコードするポリヌクレオチドでありうる。
【0076】
別のそのような一実施形態では、抗原または抗原決定基は、アレルゲンまたはその抗原決定基、または、アレルゲンまたはその抗原決定基をコードするポリヌクレオチドでありうる。
【0077】
別のそのような一実施形態では、抗原または抗原決定基は、移植抗原またはその抗原決定基、または、移植抗原またはその抗原決定基をコードするポリヌクレオチドでありうる。
【0078】
適切には本発明における用途のためのNotchシグナル伝達の調節因子は:
i)NotchリガンドDSLドメイン;
ii)1〜5個(および好ましくは5個以下)のNotchリガンドEGFドメイン;
iii)随意的に全部または一部のNotchリガンドN末端ドメイン;および
iv)随意的に1つ以上の異種アミノ酸配列;
を含むタンパク質またはポリペプチド、
またはそれをコードするポリヌクレオチド
を含みうる。
【0079】
適切にはNotchシグナル伝達の調節因子は:
i)NotchリガンドDSLドメイン;
ii)2〜4個(および好ましくは4個以下)のNotchリガンドEGFドメイン;
iii)随意的に全部または一部のNotchリガンドN末端ドメイン;および
iv)随意的に1つ以上の異種アミノ酸配列;
を含むタンパク質またはポリペプチド、
またはそれをコードするポリヌクレオチド
を含みうる。
【0080】
適切にはそのNotchシグナル伝達の調節因子のうち1個以上は:
i)NotchリガンドDSLドメイン;
ii)2〜3個(および好ましくは3個以下)のNotchリガンドEGFドメイン;
iii)随意的に全部または一部のNotchリガンドN末端ドメイン;および
iv)随意的に1つ以上の異種アミノ酸配列;
を含むタンパク質またはポリペプチド、
またはそれをコードするポリヌクレオチド
を含みうる。
【0081】
適切にはそのタンパク質またはポリペプチドは、下記の配列に対してその全長にわたって、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも90%、たとえば少なくとも95%のアミノ酸配列類似性(または好ましくは配列同一性)を有しうる:
MGSRCALALAVLSALLCQVWSSGVFELKLQEFVNKKGLLGNRNCCRGGAGPPPCACRTF
FRVCLKHYQASVSPEPPCTYGSAVTPVLGVDSFSLPDGGGADSAFSNPIRFPFGFTWPG
TFSLIIEALHTDSPDDLATENPERLISRLATQRHLTVGEEWSQDLHSSGRTDLKYSYRF
VCDEHYYGEGCSVFCRPRDDAFGHFTCGERGEKVCNPGWKGPYCTEPICLPGCDEQHGF
CDKPGECKCRVGWQGRYCDECIRYPGCLHGTCQQPWQCNCQEGWGGLFCNQDLNYCTHH
KPCKNGATCTNTGQGSYTCSCRPGYTGATCELGIDEC
【発明を実施するための最良の形態】
【0082】
本発明のさまざまな好ましい特性および実施形態を、非限定的な実施例を用いて、および添付の図を参照して、より詳細にここで説明する。
【0083】
本発明の実施は、別に指示されない限り、当業者の能力の範囲内にある化学、分子生物
学、微生物学、組み換えDNAおよび免疫学の従来の技術を用いる。そのような技術は文
献に説明されている。たとえば、J.サムブルック(Sambrook)、E.F.フリ
ッチェ(Fritsch)、およびT.マニアチス(Maniatis)、1989,『
分子クローニング;実験の手引き』(Molecular Cloning;A Labo
ratory Manual)第二版、1〜3巻、コールド・スプリング・ハーバー・ラ
ボラトリー・プレス社(Cold Spring Harbor Laboratory P
ress);アウスベル(Ausubel)、 F.M.他 (1995および定期補遺;
『分子生物学最新プロトコル』(Current Protocols in Molec
ular Biology)9,13,および16章,ジョン・ワイリー・アンド・サン
ズ社(John Wiley & Sons)、ニューヨーク州ニューヨーク;B.ロー(
Roe)、J.クラブツリー(Crabtree)およびA.カーン(Kahn)、19
96,『DNA単離および配列決定;基幹技術』(DNA Isolation and
Sequencing;Essential Techniques)ジョン・ワイリー
・アンド・サンズ社;J.M.ポラック(Polak)およびジェームスO’D.マクジ
ー(James O’D.McGee)、 1990,『In Situハイブリダイゼー
ション;原理と実践』(In Situ Hybridization;Principl
es and Practice);オックスフォード大学出版会(Oxford Uni
versity Press); M.J.ゲイト(Gait)(編集)、1984,『オ
リゴヌクレオチド合成;実践的手法』(Oligonucleotide Synthe
sis;A Practical Approach)Irl出版(Irl Press)
;D.M.J.リリー(Lilley)およびJ.E.ダールベルク(Dahlberg
)、1992,『酵素学の方法;DNA構造パートA;DNAの合成および物理分析』(
Methods of Enzymology;DNA Structure Part A
;Synthesis and Physical Analysis of DNA)Me
thods in Enzymology,アカデミックプレス社(Academic P
ress);およびJ.E.コリガン(Coligan)、A.M.クルイスビーク(K
ruisbeek)、D.H.マーグリース(Margulies)、E.M.シェバッ
ハ(Shevach)およびW.ストロバー(Strober)(1992および定期補
遺;『免疫学最新プロトコル』(Current Protocols in Immun
ology)、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ社、ニューヨーク州ニューヨーク)を
参照。これらの一般的文献のそれぞれは参照により本開示に含まれる。
【0084】
疑いを避けるため、ショウジョウバエ(Drosophila)および脊椎動物名は互
いに交換可能に用いられ、およびすべてのホモログは本発明の範囲内に含まれる。
【0085】
イムノフィリン結合性免疫抑制剤
ここで用いられる「イムノフィリン結合性免疫抑制剤」の語は、たとえば、シクロフィリン、FKBP12およびFKBP50といったFK506結合タンパク質(FKBP)、mTOR(「ラパマイシンの標的(Target Of Rapamycin)」)、RAPTORなどのようなイムノフィリンと結合して、免疫反応の抑制を引き起こす物質を意味する。これらのイムノフィリンの多くはカルモジュリン/カルシニューリンと相互作用する。
【0086】
(a)細胞周期のG1期からGS期へのT細胞の移行を阻害する物質
一実施形態では、イムノフィリン結合性免疫抑制剤は、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体といった、イムノフィリンに結合することによって細胞周期のG1期からGS期へのT細胞の移行を阻害する物質でありうる。
【0087】
元の(「天然」)ラパマイシン(別名シロリムス)は、細菌株ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)から単離された下記の構造を有するマクロライド化合物である:
【化1】
【0088】
ラパマイシンの多数の誘導体が既知であり、それらは同一の種類の活性を有し、およびまた本発明に従って使用することができる。
【0089】
したがって、ここで用いられる「ラパマイシン」の語は、天然ラパマイシンのエステル、エーテル、オキシム、ヒドラゾン、およびヒドロキシルアミン、および、たとえば酸化または還元を通じてラパマイシン核上の官能基が修飾されているラパマイシンを含む(「ラパマイシン類化合物」ともいう)。
【0090】
たとえば、米国特許第6399625号明細書(ワイス(Wyeth))で論述される
通り、ラパマイシンの42−および/または31−エステルおよびエーテルが下記の特許
で開示されており、それらの特許のすべてが参照により本開示に含まれる:ラパマイシン
のアルキルエステル(米国特許第4,316,885号明細書);アミノアルキルエステ
ル(米国特許第4,650,803号明細書);フッ化エステル(米国特許第5,100
,883号明細書);アミドエステル(米国特許第5,118,677号明細書);カル
バメートエステル(米国特許第5,118,678号明細書);シリルエーテル(米国特
許第5,120,842号明細書);アミノエステル(米国特許第5,130,307号
明細書);アセタール(米国特許第5,51,413号明細書);アミノジエステル(米
国特許第5,162,333号明細書);スルホン酸および硫酸エステル(米国特許第5
,177,203号明細書);エステル(米国特許第5,221,670号明細書);ア
ルコキシエステル(米国特許第5,233,036号明細書);O−アリール、−アルキ
ル、−アルケニル、および−アルキニルエーテル(米国特許第5,258,389号明細
書);炭酸エステル(米国特許第5,260,300号明細書);アリールカルボニルお
よびアルコキシカルボニルカルバメート(米国特許第5,262,423号明細書);カ
ルバメート(米国特許第5,302,584号明細書);ヒドロキシエステル(米国特許
第5,362,718号明細書);障害の大きいエステル(米国特許第5,385,90
8号明細書);複素環式エステル(米国特許第5,385,909号明細書);gem−
2置換エステル(米国特許第5,385,910号明細書);アミノカルボン酸エステル
(米国特許第5,389,639号明細書);リン酸カルバメートエステル(米国特許第
5,391,730号明細書);カルバメートエステル(米国特許第5,411,967
号明細書);カルバメートエステル(米国特許第5,434,260号明細書);アミジ
ノカルバメートエステル(米国特許第5,463,048号明細書);カルバメートエス
テル(米国特許第5,480,988号明細書);カルバメートエステル(米国特許第5
,480,989号明細書);カルバメートエステル(米国特許第5,489,680号
明細書);障害の大きいN−オキシドエステル(米国特許第5,491,231号明細書
);ビオチンエステル(米国特許第5,504,091号明細書);O−アルキルエーテ
ル(米国特許第5,665,772号明細書);およびPEGエステル(米国特許第5,
780,462号明細書)。これらのエステルおよびエーテルの調製は上に列記した特許
に開示されている。対応する1−オキソラパマイシンのエステルおよびエーテルの調製は
、これらの特許に開示される方法を用いて、1−オキソラパマイシンから開始して達成す
ることができる。
【0091】
ラパマイシンの好ましい27−エステルおよびエーテルは、参照により本開示に含まれ
る、米国特許第5,256,790号明細書に開示されている。これらのエステルおよび
エーテルの調製は上に列記した特許に開示されている。対応する1−オキソラパマイシン
のエステルおよびエーテルの調製は、これらの特許に開示される方法を用いて、1−オキ
ソラパマイシンから開始して達成することができる。
【0092】
ラパマイシンの好ましいオキシム、ヒドラゾン、およびヒドロキシルアミンは、参照に
より本開示に含まれる、米国特許第5,373,014号明細書、第5,378,836
号明細書、第5,023,264号明細書、および第5,563,145号明細書に開示
されている。これらのオキシム、ヒドラゾン、およびヒドロキシルアミンの調製は上に列
記した特許に開示されている。42−オキソラパマイシンの調製は、参照により本開示に
含まれる、米国特許第5,023,263号明細書に開示されている。対応する1−オキ
ソラパマイシンのオキシム、ヒドラゾン、およびヒドロキシルアミンの調製は、これらの
特許に開示される方法を用いて、1−オキソラパマイシンから開始して達成することがで
きる。
【0093】
特に好ましい1−オキソラパマイシンは、1−オキソラパマイシン、3−ヒドロキシ−
2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸との1−オキソラパマイシン42−
エステル[3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸とのラ
パマイシン42−エステルの調製については米国特許第5,362,718号明細書を参
照],および42−O−(2−ヒドロキシ)エチル1−オキソラパマイシン[42−O−
(2−ヒドロキシ)エチルラパマイシンの調製については米国特許第5,665,772
号明細書を参照;別名「SDZ−RAD」]を含む。
【0094】
ラパマイシン誘導体の他の例の一部は、たとえば下記を含む:
40−O−ベンジル−ラパマイシン
40−O−(4’−ヒドロキシメチル)ベンジル−ラパマイシン
40−O−[4’−(1,2−ジヒドロキシエチル)]ベンジル−ラパマイシン
40−O−アリル−ラパマイシン
40−O−[3’−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4(S)−イル]−プ
ロプ−2’−エン−1’−イル)−ラパマイシン
(2’E,4’S)−40−O−(4’,5’−ジヒドロキシペント−2’−エン−1’
−イル)−ラパマイシン
40−O−(2−ヒドロキシ)エトキシカルボニルメチル−ラパマイシン
40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン
40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン
40−O−(6−ヒドロキシ)ヘキシル−ラパマイシン
40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン
40−O−[(3S)−2,2−ジメチルジオキソラン−3−イル]メチル−ラパマイシ
ン
40−O−[(2S)−2,3−ジヒドロキシプロプ−1−イル]−ラパマイシン
40−O−(2−アセトキシ)エチル−ラパマイシン
40−O−(2−ニコチノイルオキシ)エチル−ラパマイシン
40−O−[2−(N−モルホリノ)アセトキシ]エチル−ラパマイシン
40−O−(2−N−イミダゾリルアセトキシ)エチル−ラパマイシン
40−O−[2−(N−メチル−N’−ピペラジニル)アセトキシ]エチル−ラパマイシ
ン
39−O−Desメチル−39,40−O,O−エチレン−ラパマイシン
(26R)−26−ジヒドロ40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン
28−O−メチル−ラパマイシン
40−O−(2−アミノエチル)−ラパマイシン
40−O−(2−アセトアミノエチル)−ラパマイシン
40−O−(2−ニコチンアミドエチル)−ラパマイシン
40−O−(2−(N−メチル−イミダゾ−2’−イルカルボキサミド)エチル)−ラパ
マイシン
40−O−(2−エトキシカルボニルアミノエチル)−ラパマイシン
40−O−(2−トリルスルホンアミドエチル)−ラパマイシン
40−O−[2−(4’,5’−ジカルボエトキシ−1’,2’,3’−トリアゾール−
1’−イル)−エチル]−ラパマイシン
40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン。
【0095】
(b)細胞周期のG0期からG1期へのT細胞の移行を阻害する物質
代替的に、または加えて、イムノフィリン結合性免疫抑制剤は、たとえばシクロスポリン(たとえばシクロスポリンA)またはFK506(タクロリムス)またはその誘導体のような、IL−2のようなサイトカインの転写を阻害する物質といった、イムノフィリンに結合することによって細胞周期のG0期からG1期へのT細胞の移行を阻害する物質でありうる。
【0096】
シクロスポリンA(CysA)は真菌から得られる環状ウンデカペプチド(CAS番号59865−13−3;米国特許第3,737,433号明細書)であり、下記の構造を有する:
【化2】
【0097】
ここで用いられる「シクロスポリン」の語は、免疫抑制薬活性を有する環状オリゴペプチドのグループのうち任意のものを意味し、既知のシクロスポリンA、シクロスポリンB、シクロスポリンC、シクロスポリンD、シクロスポリンE、シクロスポリンF、シクロスポリンG、シクロスポリンHおよびシクロスポリンI(「シクロスポリン類の化合物」ともいう)を含む。特に、この語はシクロスポリンA、別名シクロスポリンを含む。合成により製造された、天然由来のまたは精製された、および組み換えにより製造された部分がその定義の中に含まれ、これらのうちの任意のものの類縁物質、誘導体、および医薬品として許容される塩もまたその定義の中に含まれる。その語はまた、D−アミノ酸、DまたはL立体配座の修飾された、誘導体化された、または天然に存在しないアミノ酸、および/またはペプチドミメティックまたはプロドラッグ単位を、構造の一部として有するシクロスポリンを含む。シクロスポリンAが一般的に好ましい。
【0098】
代替的に、または加えて、イムノフィリン結合性免疫抑制剤は免疫抑制性のアスコマイシンまたはアスコマイシン誘導体(「アスコマイシン類の化合物」ともいう)でありうる。アスコマイシンは、そのうちFK−506およびアスコマイシンが最も良く知られているが、ラクタムマクロライドの一分類を形成し、そのうちの多数が強力な免疫抑制活性および抗炎症活性を有する。FK506は、ストレプトマイセス・ツクバエンシス(Streptomyces tsukubaensis)によって産生されるラクタムマクロライドである。アスコマイシンはたとえば米国特許第3,244,592号明細書に記載されている。アスコマイシン;FK506、同様の生物学的活性を有する他の天然に存在するマクロライド、およびそれらの誘導体、たとえば合成類縁物質および誘導体を集合的に「アスコマイシン」という。合成類縁物質または誘導体の例はたとえば、欧州特許出願公開第427,680号明細書に開示されるような33−エピ−クロロ−33−デスオキシ−−アスコマイシンといったハロゲン化アスコマイシン、欧州特許出願公開第626,385号明細書に開示されるようなテトラヒドロピラン誘導体である。
【0099】
FK506(別名タクロリムス)は下記の構造を有するマクロライドである:
【化3】
【0100】
FK506はストレプトマイセス・ツクバエンシス(Streptomyces tsukubaensis)No 9993によって産生されるマクロライド抗生物質である。FK506を調製する方法は 欧州特許第184162号明細書に記載されている。
【0101】
FK506の基本構造および少なくとも1つの生物学的性質(たとえば免疫学的性質)を保持している、FK506の多数の誘導体が知られている。そのような化合物の例は、たとえば、欧州特許第184162号明細書、欧州特許第315978号明細書、欧州特許第323042号明細書、欧州特許第423714号明細書、欧州特許第427680号明細書、欧州特許第465426号明細書、欧州特許第474126号明細書、国際公開第91/13889号パンフレット、国際公開第91/19495号パンフレット、欧州特許第484936号明細書、欧州特許第532088号明細書、欧州特許第532089号明細書、欧州特許第569337号明細書、欧州特許第626385号明細書および国際公開第93/5059号パンフレットに記載されている。
【0102】
FK506類の好ましい化合物は欧州特許第427680号に、たとえば実施例66aに開示されている(33−エピ−クロロ−33−デスオキシアスコマイシンともいう)。FK506類の他の好ましい化合物は欧州特許第465426号明細書、欧州特許第569337号明細書、および欧州特許第626385号明細書に開示されており、たとえば欧州特許第569337号明細書の実施例6dの化合物、または欧州特許第626385号明細書の実施例8の化合物である。
【0103】
免疫学的に活性なステロイド
ここで用いられる「免疫学的に活性なステロイド」の語は、免疫反応を改変することのできるステロイドを含む。好ましくは免疫学的に活性なステロイドは糖質コルチコイド(GC)受容体を活性化する。適切にはそのステロイドは、T細胞、B細胞または抗原提示細胞(APC)活性を改変する。好ましくはそのステロイドは、T細胞、B細胞または抗原提示細胞(APC)活性を低下させる。
【0104】
「免疫学的に活性なステロイド」の語は、天然に存在する免疫学的に活性なステロイドおよびその誘導体、およびステロイド様免疫活性を有する合成または半合成ステロイドアナログを含む。好ましくはそのステロイドは、副腎皮質ステロイドまたは糖質コルチコイドである。たとえば、多数のそのようなステロイドは、シクロペンタノフェナントレンを基礎とする融合環構造の核を持つ。具体的な天然および合成ステロイドの例は下記を含むがそれらに限定されない:アルドステロン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロプレドノール、コルチゾン、コルチバゾール、デオキシコルトン、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフルオロコルトロン、フルクロロロン、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロン、フルオシノニド、フルオコルチン ブチル、フルオロコルチゾン、フルオロコルトロン、フルオロメトロン、フルランドレノロン、フルチカゾン、ハルシノニド、ヒドロコルチゾン、アイコメタゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、チキソコルトールまたはトリアムシノロン、およびそのそれぞれの医薬として許容される塩または誘導体。そのようなステロイドの組み合わせもまた本発明において使用することができることが理解される。
【0105】
米国特許出願公開第 20002009037号明細書(DNAX)で論述される通り、糖質コルチコイド(GC) は、自己免疫疾患およびアレルギー疾患といった、炎症性疾患の治療に幅広く用いられている強力な抗炎症剤および免疫抑制剤である(ウィルケンス(Wilkens)およびデ・リイク(de Rijk)(1997) Immunol.Today 18:418−424;シュライマー(Schleimer),他 (1997年編)『喘息における吸入糖質コルチコイド:機構および臨床作用』(Inhaled Glucocorticoids in Asthma: Mechanisms & Clinical Actions)デッカー社(Dekker))。GCは、T細胞およびAPCの両方に対して、増殖およびサイトカイン産生のレベルで、ある条件下ではIFN−g、IL−4、およびIL−5のダウンレギュレーションを伴うがしかし別の条件下ではIL−4のアップレギュレーションを伴う、阻害作用を有することが示されている。ブロフタ(Blofta),他 (1997) J.Immunol.158:5589−5595;ラミレス(Ramirez),他 (1996) J.Immunol.156:2406−2412; およびデインズ(Daynes)およびアラネオ(Araneo)(1989) Eur.J.Immunol.19:2319−2325を参照。これは間接的作用の結果として生じる可能性があり、たとえば、APC、抗原、およびT細胞を含む培養中で、GCはAPCによるIL−12の産生、したがってT細胞によるIFN−g産生をダウンレギュレートし(ブロッタ(Blotta),他(1997)J.Immunol.158:5589−5595;ビエイラ(Vieira),他 (1998) J.Immunol.161:5245−5251; およびビッサー(Visser),他 (1998) Blood 91:4255−4264)、およびしたがって一部の場合にはIL−4 (Blotta,他 (1997) J.Immunol.158:5589−5595)およびまたはIL−5 (ビエイラ(Vieira),他 (1998) J.Immunol.161:5245−5251) および/または IL−10 (ビエイラ(Vieira),他 (1998) J.Immunol.161:5245−5251;およびビッサー(Visser),他(1998) Blood 91:4255−4264) の産生を間接的にアップレギュレートしうる。近年、GCはヒトCD8+T細胞分化を、高いIL−10および低いIFN−g、IL−4、IL−5およびIL−13産生を伴う安定した表現型へ進めることが示されている。リチャーズ(Richards)およびハウリロウイッツ(Hawrylowicz)(2000) Eur.J.Immunol.30:2344−2354を参照。
【0106】
糖質コルチコイドは細胞質GC 受容体(GR)と結合し、これは次いで核へ移行して標的遺伝子の転写活性化を阻害する。シュライマー(Schleimer),他(1997年編)『喘息における吸入糖質コルチコイド:機構および臨床作用』(Inhaled Glucocorticoids in Asthma: Mechanisms & Clinical Actions)デッカー社(Dekker)中のカリン(Karin)の総説;およびカリン(Karin)(1998) Cell 93:487−490を参照。糖質コルチコイドは:1)タンパク質−タンパク質相互作用を介して、AP−1およびNF−kBといった相互作用因子の機能に干渉すること(デ・ボッシャー(De Bosscher),他(1997)94:13504−13509);およびサイトカイン遺伝子プロモーターへのNFAT結合の阻害(チェン(Chen),他 (2000) J.Immunol.164:825−832);2)保存程度の低いネガティブGC応答配列(GRE)への直接のDNA結合;または3)IkBaといった阻害因子の発現を誘導すること(シュライマー(Schleimer),他(1997年編)『喘息における吸入糖質コルチコイド:機構および臨床作用』(Inhaled Glucocorticoids in Asthma: Mechanisms & Clinical Actions)デッカー社(Dekker)中でカリン(Karin)に総説されている)を通じて転写抑制を媒介する。さらに、GRはプラスミノーゲン活性化因子PAI−1遺伝子のTGF−b転写活性化を、リガンド依存性の方法で、Smad3およびSmad4C末端活性化ドメインの両方によって抑制する。ソング(Song),他 (1999) Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 96:11776−11781を参照。
【0107】
Notchシグナル伝達の調節因子
ここで用いられる「Notchシグナル伝達経路の調節」の語は、Notchシグナル伝達経路またはその標的シグナル伝達経路の生物学的活性の変化または改変をいう。「Notchシグナル伝達経路の調節因子」(または「Notchシグナル伝達の調節因子」)の語は、Notchシグナル伝達の拮抗因子または阻害因子、すなわちNotchシグナル伝達経路の正常な生物学的活性を、少なくともある程度、遮断する化合物をいうことができる。都合良く、ここではそのような化合物は阻害因子または拮抗因子ということができる。代替的に、および好ましくは「Notchシグナル伝達経路の調節因子」の語は、Notchシグナル伝達の作用因子(または部分作用因子) 、すなわちNotchシグナル伝達経路の正常な生物学的活性を、少なくともある程度、刺激またはアップレギュレートする化合物をいうことができる。都合良く、そのような化合物はアップレギュレーターまたは作用因子ということができる。好ましくは使用するNotchシグナル伝達の調節因子はNotchシグナル伝達の作用因子であり、および好ましくはNotch受容体の作用因子(たとえばNotch1,Notch2,Notch3および/またはNotch4受容体の作用因子で,好ましくはヒトNotch受容体である)。好ましくはそのような作用因子(「Notchの活性化因子」)は、好ましくはヒトNotch1、Notch2、Notch3および/またはNotch4といったヒトNotch受容体を含む、Notch受容体と結合しそれを活性化する。Notch受容体との結合および/またはその活性化は、たとえばここに記載されるようなin vitro結合測定法および活性測定法を含む本分野で既知のさまざまな技術によって評価することができる。
【0108】
たとえば、任意の特定の物質がNotchシグナル伝達を活性化するかどうか(たとえばNotchの活性化因子またはNotch作用因子である)は、任意の適当な測定法の使用によって、たとえばロランティス社(Lorantis Ltd)の名義の国際公開第03/012441号パンフレット(たとえばその実施例8および9を参照)に記載された型のCBF−1レポーター測定法の使用によって、容易に決定することができる。逆に、拮抗因子活性は、たとえば、ロランティス社(Lorantis Ltd)の名義の国際公開第03/012441号パンフレットまたは国際公開第03/041735号パンフレット(たとえば実施例10、11および12を参照)に記載されたように、既知のNotchシグナル伝達作用因子によるシグナル伝達を低下させることにおけるその物質の何らかの効果を監視することによって容易に測定することができる(すなわちいわゆる「拮抗因子」測定法で)。
【0109】
本発明の活性物質はたとえば有機化合物またはその他の化学物質でありうる。一実施形態では、調節因子は2個以上のヒドロカルビル基を含む有機化合物となる。ここで、「ヒドロカルビル基」の語は、少なくともCおよびHを含む基を意味し、および随意的に1つ以上の他の適当な置換基を含みうる。そのような置換基の例は、ハロ−、アルコキシ−、ニトロ−、アルキル基、環状基などを含みうる。置換基が環状基である可能性に加えて、置換基の組み合わせは環状基を形成しうる。ヒドロカルビル基が2個以上のCを含む場合、それらの炭素は必ずしも互いに結合している必要はない。たとえば、少なくとも2個の炭素は、適当な元素または基を介して結合することができる。このように、ヒドロカルビル基はヘテロ原子を含むことができる。適当なヘテロ原子は当業者に明らかとなり、たとえば、硫黄、窒素、および酸素を含む。調節因子候補は少なくとも1つの環状基を含みうる。環状基は、非融合型多環基といった多環基であることができる。一部の用途のためには、本物質は、別のヒドロカルビル基と結合した、前記環状基のうち少なくとも1つを含む。
【0110】
好ましい一実施形態では、調節因子はアミノ酸配列またはその化学誘導体である。別の好ましい一実施形態では、調節因子はヌクレオチド配列であって、センス配列またはアンチセンス配列でありうる。調節因子はまた抗体であることができる。
【0111】
「抗体」の語は、完全な分子および、抗原決定基と結合することができるFab、F(ab’)2、Fv、およびscFvといったその断片を含む。これらの抗体断片はその抗原または受容体と選択的に結合する能力の一部を保持し、およびたとえば下記を含む;
(i)Fabは、抗体分子の一価の抗原結合断片を含む断片であり、酵素パパインを用いての完全な抗体の消化によって作製することができ、完全な軽鎖および1つの重鎖の一部を生じる;
(ii)Fab’は、抗体分子の断片であり、完全な抗体をペプシンで処理し、その後還元して、完全な軽鎖および1つの重鎖の一部を生じることによって得ることができる;抗体分子あたり2個のFab’断片が得られる;
(iii)F(ab’)2は、抗体分子の断片であり、完全な抗体をペプシンで処理し、その後還元しないことによって得ることができる;F(ab’)2は2本のジスルフィド結合によって結びついた2個のFab’断片の二量体である;
(iv)scFvは、重鎖および軽鎖の可変領域を融合した一本鎖分子として含む、遺伝
子操作された断片を含む。
【0112】
これらの断片を作製する一般的方法は本分野で既知である。(たとえば、参照により本開示に含まれる、ハーロー(Harlow)およびレーン(Lane),『抗体:実験の手引き』(Antibodies:A Laboratory Manual)コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー社(Cold Spring Harbor Laboratory),ニューヨーク(1988)を参照)。
【0113】
たとえば、NotchおよびNotchリガンドに対する抗体は、米国特許第5648464号明細書、米国特許第5849869号明細書、および米国特許第6004924号明細書(エール大学/インペリアル・キャンサー・テクノロジー(Imperial Cancer Technology))に記載されており、その本文は参照により本開示に含まれる。
【0114】
Notch受容体に対して作製された抗体もまた、国際公開第0020576号パンフレット(その本文は参照により本開示に含まれる)に記載されている。たとえば、この文書はヒトNotch−1 EGF様反復11および12に対する抗体の作製を開示する。たとえば、特定の実施形態で、国際公開第0020576号パンフレットは、ATCC登録番号HB12654を有しA6で表されるハイブリドーマによって分泌されるモノクローナル抗体、ATCC登録番号HB12656を有しCllで表されるハイブリドーマによって分泌されるモノクローナル抗体、およびATCC登録番号HB12655を有しF3で表されるハイブリドーマによって分泌されるモノクローナル抗体を開示する。
【0115】
抗ヒト−Jagged1抗体はR&Dシステムズ社(R&D Systems, Inc)から整理番号MAB12771(クローン188323)として入手可能である。
【0116】
好ましくはNotchシグナル伝達の調節因子は多量体化された形であり、および好ましくは、少なくとも3、好ましくは少なくとも5、好ましくは少なくとも10、少なくとも30、または少なくとも50または100以上のNotchシグナル伝達の調節因子を含む構造を含みうる。
【0117】
たとえば、ビーズといった粒子状担体と結合したNotchリガンドタンパク質/ポリペプチドの形のNotchシグナル伝達の調節因子は、本文が参照により本開示に含まれる国際公開第03/011317号パンフレット(ロランティス社(Lorantis))およびロランティス社の同時出願中のPCT出願PCT/GB2003/001525(2003年4月4日出願)に記載されている(たとえば特にPCT/GB2003/001525の実施例17、18、19を参照)。
【0118】
高分子担体と結合したNotchリガンドタンパク質/ポリペプチドの形のNotchシグナル伝達の調節因子は、本文が参照により本開示に含まれるロランティス社(Lorantis Ltd)の同時出願中のPCT出願PCT/GB2003/003285(2003年8月1日出願、英国特許第0218068.5号の優先権を主張)に記載されている(たとえば特に、デキストラン複合体を開示するその実施例5を参照)。
【0119】
一形態では、Notchシグナル伝達経路の調節のための物質は、Notchシグナル伝達のためのタンパク質でありうる。
【0120】
Notchシグナル伝達のためのタンパク質とは、Notchの活性化、Notchシグナル伝達経路の下流現象、下流標的遺伝子の転写調節、および他の非転写的下流現象(たとえば既存のタンパク質の翻訳後修飾)を含む、Notch受容体を介したシグナル伝達に関与する分子を意味する。より具体的には、そのタンパク質は、Notchシグナル伝達経路の標的遺伝子の活性化を可能にするドメイン、またはそれをコードするポリヌクレオチド配列を含みうる。
【0121】
Notchシグナル伝達経路の非常に重要な成分は、Notch受容体/Notchリガンド相互作用である。このようにNotchシグナル伝達は、Notchリガンドまたは受容体またはそれらの結果として生じる切断産物の、発現、性質、量、または活性における変化に関与しうる。加えて、Notchシグナル伝達は、Notchシグナル伝達経路膜タンパク質またはG−タンパク質、またはプロテアーゼ、キナーゼ(たとえばセリン/スレオニンキナーゼ)、ホスファターゼ、リガーゼ(たとえばユビキチンリガーゼ)またはグリコシルトランスフェラーゼといったNotchシグナル伝達経路酵素の、発現、性質、量、または活性における変化に関与しうる。代替的にシグナル伝達は、転写因子といったDNA結合配列の、発現、性質、量、または活性における変化に関与しうる。
【0122】
本発明では、Notchシグナル伝達は好ましくは特異的シグナル伝達を意味し、シグナル伝達が、サイトカインシグナル伝達といった何らかの他の顕著な干渉するかまたは競合する原因でなく、実質的に、または少なくとも主に、Notchシグナル伝達経路から、および好ましくはNotch/Notchリガンド相互作用から結果として生じることを意味する。好ましくはしたがってここで用いられる「Notchシグナル伝達」の語は、サイトカインシグナル伝達を除外する。Notchシグナル伝達経路を下記により詳細に説明する。
【0123】
タンパク質またはポリペプチドは、「成熟」タンパク質の形でありうるかまたは、融合タンパク質または前駆体といった、より大きいタンパク質の一部でありうる。たとえば、精製の助けとなる、分泌配列またはリーダー配列または前配列を含む追加のアミノ酸配列(HISオリゴマー、免疫グロブリンFc、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、FLAGなどといった)を含めることはしばしば有利である。同様にそのような追加の配列は、組み換え産生の際に追加の安定性を与えるために時に望ましい可能性がある。そのような場合には、追加の配列を切断(たとえば化学的にまたは酵素的に)して最終産物を生じることができる。一部の場合には、しかし、追加の配列はまた望ましい薬理プロファイルも与える可能性があり(IgFc融合タンパク質の場合のように)、その場合は追加の配列が投与の際に最終産物中に存在するように、追加の配列を除去しないことが好ましい可能性がある。
【0124】
タンパク質またはポリペプチドは、「成熟」タンパク質の形でありうるかまたは、融合タンパク質または前駆体といった、より大きいタンパク質の一部でありうる。たとえば、精製の助けとなる、分泌配列またはリーダー配列または前配列を含む追加のアミノ酸配列(HISオリゴマー、免疫グロブリンFc、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、FLAGなどといった)を含めることはしばしば有利である。同様にそのような追加の配列は、組み換え産生の際に追加の安定性を与えるために時に望ましい可能性がある。そのような場合には、追加の配列を切断(たとえば化学的にまたは酵素的に)して最終産物を生じることができる。一部の場合には、しかし、追加の配列はまた望ましい薬理プロファイルも与える可能性があり(IgFc融合タンパク質の場合のように)、その場合は追加の配列が投与の際に最終産物中に存在するように、追加の配列を除去しないことが好ましい可能性がある。
【0125】
タンパク質またはポリペプチドは、「成熟」タンパク質の形でありうるかまたは、融合タンパク質または前駆体といった、より大きいタンパク質の一部でありうる。たとえば、精製の助けとなる、分泌配列またはリーダー配列または前配列を含む追加のアミノ酸配列(HISオリゴマー、免疫グロブリンFc、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、FLAGなどといった)を含めることはしばしば有利である。同様にそのような追加の配列は、組み換え産生の際に追加の安定性を与えるために時に望ましい可能性がある。そのような場合には、追加の配列を切断(たとえば化学的にまたは酵素的に)して最終産物を生じることができる。一部の場合には、しかし、追加の配列はまた望ましい薬理プロファイルも与える可能性があり(IgFc融合タンパク質の場合のように)、その場合は追加の配列が投与の際に最終産物中に存在するように、追加の配列を除去しないことが好ましい可能性がある。
【0126】
Notch依存性転写活性化の主要な標的は、Enhancer of split複合体の遺伝子(E[spl])である。さらにこれらの遺伝子は、Su(H)タンパク質による結合の直接の標的であること、およびNotchシグナル伝達に反応して転写活性化されることが示されている。哺乳類Su(H)ホモログCBF1と相互作用してそれを転写抑制因子から転写活性化因子へ変換するウイルスコアクチベータータンパク質であるEBNA2との類推によって、Notch細胞内ドメインは、おそらく他のタンパク質と共同して、Su(H)と結合してSu(H)がE(spl)および他の標的遺伝子の転写を活性化することを可能にする活性化ドメインに寄与しうる。Su(H)はすべてのNotch依存性の決定に必要ではないこともまた注目すべきであり、これは、Notchが他のDNA結合性転写因子と結合することによって、または細胞外シグナルを伝達する他の機構を用いることによって、一部の細胞運命選択を媒介することを示す。
【0127】
本発明の一態様によると、活性物質はNotch、またはNotchのシグナル伝達能力を保持するその断片、またはNotchのシグナル伝達能力を有するNotchのアナログであることができる。
【0128】
ここで用いられる「Notchのアナログ」の語は、Notchのシグナル伝達能力を保持しているその変異体を含む。「アナログ」には、Notchシグナル伝達能力を持つが、しかし一般的にNotchとは異なる進化的起源を有するタンパク質を含める。Notchのアナログは、EBNA2、BARF0、またはLMP2Aといった、エプスタイン・バーウイルス(EBV)由来のタンパク質を含む。
【0129】
Notchシグナル伝達活性化のためのタンパク質とは、Notch、Notchシグナル伝達経路またはNotchシグナル伝達経路の任意の1つ以上の成分を活性化することができる分子を意味する。
【0130】
一実施形態では、活性物質は、Notchリガンド、またはNotchリガンドをコードするポリヌクレオチドでありうる。本発明で有用であるNotchリガンドは、典型的にはたとえば造血幹細胞といったさまざまな哺乳類細胞の膜に存在するNotch受容体ポリペプチドと結合することができる内因性Notchリガンドを含む。
【0131】
ここで用いられる「Notchリガンド」の語は、Notch受容体と相互作用して生物学的効果を生じることができる物質を意味する。ここで用いられるその語はしたがって、DeltaおよびSerrate/Jaggedといった天然に存在するタンパク質リガンド、および天然リガンドに対応する生物学的作用を有するNotch受容体に対する抗体、ペプチドミメティックおよび低分子を含む。好ましくはNotchリガンドはNotch受容体と結合によって相互作用する。
【0132】
現在までに同定された哺乳類Notchリガンドの具体例は、Deltaファミリー、たとえばDeltaまたはDelta−loke1(Genbank登録番号AF003522−ヒト(Homo sapiens))、Delta−3(Genbank登録番号AF084576−ラット(Rattus norvegicus))およびDelta−like3(マウス(Mus musculus))(Genbank登録番号NM#016941−ヒト(Homo sapiens))および米国特許第6121045号明細書(ミレニアム社(Millennium))、Delta−4(Genbank登録番号AB043894およびAF253468−ヒト(Homo sapiens))、およびSerrateファミリー、たとえばSerrate−1およびSerrate−2(国際公開第97/01571号パンフレット、国際公開第96/27610号パンフレットおよび国際公開第92/19734号パンフレット)Jagged−1(Genbank登録番号U73936−ヒト(Homo sapiens))およびJagged−2(Genbank登録番号AF029778−ヒト(Homo sapiens))、およびLAG−2を含む。ファミリーメンバー間のホモロジーは大きい。
【0133】
別の一実施形態では、活性化因子は構成的に活性であるNotch受容体またはNotch細胞内ドメイン、またはそのような受容体または細胞内ドメインをコードするポリヌクレオチドであることができる。
【0134】
別の一実施形態では、Notchシグナル伝達の活性化因子はNotch受容体の下流で作用する。したがって、たとえば、Notchシグナル伝達の活性化因子は構成的に活性であるDeltexポリペプチドまたはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであることができる。本発明で有用であるNotchシグナル伝達経路の他の下流成分は、好ましくは構成的に活性な型での、Deltexによって触媒されるRas/MAPKカスケードに関与するポリペプチド、プレセニリン(Presenilin)といったNotchのタンパク質分解切断に関与するポリペプチド、およびNotch標的遺伝子の転写調節に関与するポリペプチドを含む。
【0135】
Notchシグナル伝達活性化のためのポリペプチドとは、Notch活性化の結果として発現する任意のポリペプチド、およびそのようなポリペプチドの発現に関与する任意のポリペプチド、またはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも意味する。
【0136】
好ましくは、阻害因子が受容体または受容体をコードする核酸配列である場合、受容体が活性化される。したがって、たとえば、その物質が核酸配列である場合、受容体は好ましくは発現された際に構成的に活性である。
【0137】
任意の1つ以上の適当な標的(たとえばアミノ酸配列および/またはヌクレオチド配列)を、Notchシグナル伝達経路を調節することができる化合物および/または標的化分子を同定するために、さまざまな医薬スクリーニング技術の任意のものにおいて、用いることができる。そのような試験に用いられる標的は、溶液中で遊離しているか、固体担体上に付加されているか、細胞表面上に保持されているか、または細胞内に位置することができる。
【0138】
医薬スクリーニングのための技術は、ゲイセン(Geysen)の1984年9月13日公開の欧州特許第0138855号明細書に記載の方法に基づくことができる。要約すると、多数の異なる小ペプチド候補調節因子または標的化分子が、プラスチックピンまたは何らかの他の表面といった固体基材上に合成される。ペプチド被験化合物を適当な標的またはその断片と反応させ洗浄する。結合物をその後に、たとえば本分野でよく知られた方法を適当に当てはめることによって、検出する。精製された標的はまた、医薬スクリーニング技術における使用のために、プレート上に直接被覆することができる。高処理量スクリーニング(HTS)用に有用であるプレートは、好ましくは96、384、または384を超えるウェル/プレートを有するマルチウェルプレートとなる。細胞はまた、「芝生状」として広げることができる。代替的に、非中和抗体を用いてペプチドを捕捉して固体担体上に固定化することができる。高処理量スクリーニングを、合成化合物について上述したように、有機候補調節因子および標的化分子を同定するためにもまた用いることができる。
【0139】
本発明はまた、標的と結合することができる中和抗体が、標的との結合について特異的に被験化合物と競合する、競合医薬スクリーニング分析の使用も考慮する。
【0140】
Notchシグナル伝達経路の成分と結合および調節することができる抗体、ペプチドミメティックおよび小有機分子といった物質のスクリーニングおよび開発のための技術は本分野でよく知られている。これらは、シグナル伝達タンパク質を発現するためのファージディスプレイ系の使用、およびトランスフェクションした大腸菌(E.coli)またはその他の微生物の培養を用いて結合化合物候補の結合試験のためのタンパク質を産生することを含む(たとえば、G.セサリーニ(Cesarini),FEBS Letters,307(1):66−70(1992年7月);H.グラム(Gram)他,J.Immunol.Meth.,161:169−176 (1993);およびC.サマー(Summer)他,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,89:3756−3760 (1992年5月)を参照)。他のライブラリおよびスクリーニング技術は、たとえば、米国特許第6281344号明細書(ファイロス(Phylos))に記載されている。
【0141】
ポリペプチド、タンパク質、およびアミノ酸配列
ここで用いられる「アミノ酸配列」の語は、「ポリペプチド」の語および/または「タンパク質」の語と同義である。一部の場合には、「アミノ酸配列」の語は「ペプチド」の語と同義である。一部の場合には、「アミノ酸配列」の語は「タンパク質」の語と同義である。
【0142】
「ペプチド」は通常、アミノ酸10個ないし40個の長さ、好ましくはアミノ酸10個ないし35個の、短いアミノ酸配列をいう。
【0143】
アミノ酸配列は適当な起源から調製および単離することができ、または合成によって作製することができ、または組み換えDNA技術を用いて調製することができる。
【0144】
本発明で有用な「タンパク質」の定義内で、問題のタンパク質がその内因性機能の少なくとも1つを保持するような方法で、特定のアミノ酸残基を修飾することができ、そのような修飾タンパク質を「変異体」という。変異体タンパク質は、天然に存在するタンパク質中に存在する少なくとも一個のアミノ酸の付加、欠失、および/または置換によって修飾されうる。
【0145】
典型的には、修飾された配列が、必要な標的活性を、またはNotchシグナル伝達を調節する能力を保持するという条件で、アミノ酸置換を、たとえば1、2または3ないし10または20個の置換を行うことができる。アミノ酸置換は、天然に存在しないアナログの使用を含みうる。
【0146】
本発明で有用であるタンパク質はまた、サイレント変異を生じおよび機能的に等価のタンパク質を結果として生じる、アミノ酸残基の欠失、挿入または置換を有しうる。標的または調節機能が保持される限り、極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、および/または残基の両親媒的性質における類似性に基づいて、意図的なアミノ酸置換を行いうる。たとえば、負に荷電したアミノ酸はアスパラギン酸およびグルタミン酸を含む;正に荷電したアミノ酸はリジンおよびアルギニンを含む;および、同様の親水性値を有する、非荷電の極性頭部基を持つアミノ酸は、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、フェニルアラニン、およびチロシンを含む。
【0147】
参照を簡略にするために、主要な天然に存在するアミノ酸の1文字記号および3文字記号(およびその対応するコドン)を下記に示す:
【0148】
保存的置換は、たとえば下記の表に従って行うことができる。2列目で同一区分にあり、および好ましくは3列目で同一行にあるアミノ酸は、互いに置換が可能である:
【0149】
ここで用いられる「タンパク質」の語は、一本鎖ポリペプチド分子、および個々の構成ポリペプチドが共有または非共有的方法によって結合している複数ポリペプチド複合体を含む。ここで用いられる「ポリペプチド」および「ペプチド」の語は、モノマーがアミノ酸でありおよびペプチドまたはジスルフィド結合を介して結びついているポリマーをいう。サブユニットおよびドメインの語はまた、生物学的機能を有するポリペプチドおよびペプチドをいうことができる。本発明で有用なペプチドは、少なくとも標的またはシグナル伝達調節能力を有する。「断片」はまた変異体でありその語は典型的には、結合測定法で対象であり、その結合相手が既知であるかまたは測定可能な、タンパク質の選択された領域をいう。「断片」はしたがって、完全長ポリペプチドの一部、たとえば長さが約8ないし約1500アミノ酸、典型的には長さが約8ないし約745アミノ酸、好ましくは約8ないし約300、より好ましくは約8ないし約200アミノ酸、およびさらにより好ましくは長さが約10ないし約50または100アミノ酸であるアミノ酸配列をいう。「ペプチド」は好ましくはアミノ酸10個ないし40個の長さ、好ましくはアミノ酸10個ないし35個の、短いアミノ酸配列をいう。
【0150】
そのような変異体は、部位特異的突然変異誘発といった標準的な組み換えDNA技術を用いて調製することができる。挿入を行う場合は、挿入部位の両側に天然に存在する配列に対応する5’および3’隣接領域と共に挿入部をコードする合成DNA。配列を適当な酵素を用いて切断することができ、および合成DNAを切断部に繋ぐことができるように、隣接領域は、天然に存在する配列中の部位に対応する便利な制限部位を含む。コードされたタンパク質を作製するために、DNAをその後に本発明にしたがって発現させる。これらの方法は、DNA配列の操作について本分野で既知である数々の標準技術の単なる例であり、および他の既知の技術もまた用いることができる。
【0151】
ヌクレオチド配列の変異体もまた作製することができる。そのような変異体は好ましくはコドンが最適化された配列を含む。コドン最適化は、RNA安定性、および、したがって遺伝子発現を増大させる方法として本分野で既知である。遺伝子コードの冗長性は、いくつかの異なるコドンが同一のアミノ酸をコードする可能性があることを意味する。たとえば、ロイシン、アルギニン、およびセリンはそれぞれ、6種類の異なるコドンによってコードされる。異なる生物はその異なるコドンの使用に優先性を示す。たとえば、HIVといったウイルスは、多数の稀なコドンを用いる。稀なコドンが対応する一般的に用いられる哺乳類コドンで置換されるようにヌクレオチド配列を変えることによって、哺乳類標的細胞における当該配列の発現増加を達成することができる。哺乳類細胞およびさまざまな他の生物について、コドン用法表は本分野で既知である。
【0152】
タンパク質またはポリペプチドは、「成熟」タンパク質の形でありうるかまたは、融合タンパク質または前駆体といった、より大きいタンパク質の一部でありうる。たとえば、精製の助けとなる、分泌配列またはリーダー配列または前配列を含む追加のアミノ酸配列(HISオリゴマー、免疫グロブリンFc、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、FLAGなどといった)を含めることはしばしば有利である。同様にそのような追加の配列は、組み換え産生の際に追加の安定性を与えるために時に望ましい可能性がある。そのような場合には、追加の配列を切断(たとえば化学的にまたは酵素的に)して最終産物を生じることができる。一部の場合には、しかし、追加の配列はまた望ましい薬理プロファイルも与える可能性があり(IgFc融合タンパク質の場合のように)、その場合は追加の配列が投与の際に最終産物中に存在するように、追加の配列を除去しないことが好ましい可能性がある。
【0153】
Notchシグナル伝達の調節因子または抗原/抗原決定基がヌクレオチド配列を含む場合、それは適切には、哺乳類細胞における発現のためにコドンを最適化されたものでありうる。好ましい一実施形態では、そのような配列は全体が最適化されている。
【0154】
核酸およびポリヌクレオチド
一実施形態ではNotchシグナル伝達の調節因子は、ポリヌクレオチド、たとえばDeltaまたはSerrateといったNotchリガンドまたはその活性部分をコードするポリヌクレオチドであることができる。適切には、たとえば、そのようなポリヌクレオチドは、NotchリガンドDSLドメインおよび少なくとも1個のEGFドメイン、好ましくは少なくとも3個のEGFドメインをコードすることができる。適切にはそのポリヌクレオチドはまた、Notchリガンド膜貫通ドメインおよび好ましくはまたNotchリガンド細胞内ドメインもコードすることができる。
【0155】
そのようなポリヌクレオチドは、たとえばDNAワクチン接種などといった従来のDNAデリバリー手法によって投与することができ、または注射することができ、または他の方法でたとえば針を用いない系によって配送することができる。非ウイルスデリバリー機構は、脂質媒介トランスフェクション、リポソーム、免疫リポソーム、リポフェクチン、陽イオン性界面両親媒性化合物(CFA)およびその組み合わせを含む。そのようなデリバリー機構のための経路は、粘膜、経鼻、経口、非経口、消化管、局所、または舌下経路を含むがそれらに限定されない。
【0156】
「ポリヌクレオチド」は、少なくとも長さ10塩基で最大10,000塩基以上のヌクレオチドの高分子型で、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドまたはどちらかの種類のヌクレオチドの修飾形をいう。その語はDNAおよびRNAの一本鎖および二本鎖型、およびタンパク質核酸(PNA)といった誘導体化型も含む。
【0157】
これらは標準的な組み換えDNA方法論を用いて構築することができる。核酸はRNAまたはDNAであることができ、および好ましくはDNAである。RNAである場合は、操作はcDNA中間体を用いて実施することができる。一般的に、第一の領域をコードする核酸配列が調製され、適当な制限部位が5’および/または3’末端に与えられる。便利に配列はpBR322またはpUC19を基礎とするプラスミドベクターといった標準の実験ベクター中で操作される(下記参照)。適当な技術の正確な詳細については、サムブルック(Sambrook)他著の『分子クローニング』(Molecular Cloning)(コールド・スプリング・ハーパー社(Cold Spring Harbor),1989)または同様の標準的参考書を参照することができる。
【0158】
第二の領域をコードする核酸は同様に、類似のベクター系において提供することができる。
【0159】
核酸の起源は、公表文献または、GenBankのようなデータバンクへの参照によって確認することができる。目的の第一または第二の配列をコードする核酸は、起源が材料を提供してくれる場合は学術的起源または商業起源から、または配列データのみが利用可能である場合は適当な配列を合成またはクローニングすることによって、入手することができる。一般的にこれは、問題の遺伝子のクローニングを記載する文献情報源を参照することによって行うことができる。
【0160】
代替的に、利用可能な配列データが限られている場合、または、既知の核酸と相同であるか、でなければ関連した核酸を発現したい場合は、本分野で既知である核酸配列とハイブリダイズするヌクレオチド配列として、典型的な核酸を特徴づけることができる。
【0161】
数々の異なるヌクレオチド配列が、遺伝子コードの縮重の結果として、本発明に用いられる同一のタンパク質をコードすることができることが当業者に理解される。加えて、当業者は、通常の技術を用いて、本発明のヌクレオチド配列によってコードされたタンパク質に影響しないヌクレオチド置換を行って、標的タンパク質または本発明のNotchシグナル伝達調節のためのタンパク質が発現される任意の特定の宿主生物のコドン用法を反映することができることが理解される。
【0162】
一般的に、本発明で用いられるヌクレオチド配列に関する「変異体」、「ホモログ」または「誘導体」の語は、結果として生じるヌクレオチド配列がNotchシグナル伝達の調節因子をコードし対応する活性を保持するという条件で、当該配列からまたは当該配列への一個(以上)の核酸の、任意の置換、変異、修飾、交換、欠失、または付加を含む。
【0163】
上記に示す通り、配列ホモロジーに関して、好ましくは参照配列に対して少なくとも40%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%のホモロジーが存在する。より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%のホモロジーが存在する。ヌクレオチドホモロジー比較は上記の通り実施することができる。好ましい配列比較プログラムは上記のGCGウィスコンシン・ベストフィット(GCG Wisconsin Bestfit)プログラムである。初期設定のスコアリングマトリクスは同一のヌクレオチドごとに10、およびミスマッチごとに−9の一致値を有する。初期設定のギャップ生成失点は−50であり、初期設定のギャップ延長失点はヌクレオチド当たり−3である。
【0164】
本発明はまた、選択的に参照配列、またはその任意の変異体、断片または誘導体、または上記のいずれかの相補鎖とハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列も包含する。ヌクレオチド配列は、好ましくは少なくとも長さが15ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも長さが20、30、40または50ヌクレオチドである。
【0165】
ここで用いられる「ハイブリダイゼーション」の語は、「それによって、核酸鎖が相補鎖と塩基対形成を介して結びつく過程」およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術で実施される増幅の過程を含むものとする。
【0166】
ここに示すヌクレオチド配列と、またはその相補鎖と、選択的にハイブリダイズすることができる、本発明で有用であるヌクレオチド配列は、一般的に、ここに示す対応するヌクレオチド配列と、少なくとも20、好ましくは少なくとも25または30、たとえば少なくとも40、60または100以上の連続したヌクレオチドの領域にわたって、少なくとも75%、好ましくは少なくとも85または90%、およびより好ましくは少なくとも95%または98%相同である。本発明の好ましいヌクレオチド配列は、そのヌクレオチド配列と好ましくは少なくとも80または90%およびより好ましくは少なくとも95%相同である、そのヌクレオチド配列と相同な領域を含む。
【0167】
「選択的にハイブリダイズ可能な」の語は、プローブとして用いられるヌクレオチド配列が、本発明の標的ヌクレオチド配列がバックグラウンドより有意に高いレベルでプローブとハイブリダイズすることが見出されている条件下で用いられることを意味する。バックグラウンドのハイブリダイゼーションは、たとえば、スクリーニングされているcDNAライブラリまたはゲノムDNAライブラリ中に存在する他のヌクレオチド配列のために起こりうる。この現象において、バックグラウンドとは、プローブとライブラリの非特異的DNAメンバーとの間の相互作用によって生じる、標的DNAとで観察される特異的相互作用よりも強度が10倍小さい、好ましくは100倍小さいシグナルのレベルを意味する。相互作用の強度は、たとえば32Pを用いてプローブをたとえば放射性標識することによって測定することができる。
【0168】
ハイブリダイゼーション条件は、ベルガー(Berger)およびキンメル(Kimmel)(1987,『分子クローニング技術の手引き』(Guide to Molecular Cloning Techniques),Methods in Enzymology,Vol 152,アカデミックプレス社(Academic Press)、米国カリフォルニア州サンディエゴ)に示された通り、核酸結合複合体の融点(Tm)に基づいており、下記に説明する「厳密性(ストリンジェンシー)」を与える。
【0169】
最大の厳密性は典型的には約Tm−5℃(プローブのTmの5℃下)で生じる;高い厳密性はTmの約5℃ないし10℃下で;中等度の厳密性はTmの約10℃ないし20℃下で;および低い厳密性はTmの約20℃ないし25℃下で生じる。当業者によって理解される通り、最大厳密性のハイブリダイゼーションを用いて同一のヌクレオチド配列を同定または検出することができる一方、中等度(または低)厳密性ハイブリダイゼーションを用いて類似または関連ポリヌクレオチド配列を同定または検出することができる。
【0170】
好ましい一態様では、本発明は、厳密条件下で(たとえば65℃および0.1xSSC{1xSSC=0.15M NaCl、0.015Mクエン酸Na3、pH7.0)本発明のヌクレオチド配列とハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列を含む。本発明のヌクレオチド配列が二本鎖である場合は、二重鎖の両方の鎖が、個別にまたは組み合わせで、本発明に包含される。ヌクレオチド配列が一本鎖である場合、そのヌクレオチド配列の相補配列もまた本発明の範囲内に含まれることが理解される。
【0171】
ヌクレオチド配列はいくつかの方法で得ることができる。ここに記載された配列の変異体は、たとえばある範囲の起源から作製されたDNAライブラリをプロービングすることによって得ることができる。加えて、他のウイルス/細菌または細胞ホモログ、特に哺乳類細胞(たとえばラット、マウス、ウシ、および霊長類細胞)で見出される細胞ホモログを得ることができ、およびそのようなホモログおよびその断片は一般的に、ここで配列一覧中に示された配列と選択的にハイブリダイズすることができる。そのような配列は、他の動物種に由来するゲノムDNAライブラリまたはそれから作製されたcDNAライブラリをプロービングし、およびそのようなライブラリを、参照ヌクレオチド配列の全部または一部を含むプローブを用いて、中等度ないし高厳密性の条件下でプロービングすることによって得ることができる。同様の検討が、本発明で有用なアミノ酸および/またはヌクレオチド配列の種ホモログおよび対立遺伝子変異体を得ることに適用される。
【0172】
変異体および系統/種ホモログはまた、本発明の配列内の保存されたアミノ酸配列をコードする変異体およびホモログ内の配列を標的とするように設計されたプライマーを使用する縮重PCRを用いて得ることができる。保存された配列は、たとえば、いくつかの変異体/ホモログに由来するアミノ酸配列を整列させることによって予測することができる。配列の整列は、本分野で既知であるコンピューターソフトウェアを用いて実施することができる。たとえばGCGウィスコンシン・パイルアップ(GCG Wisconsin PileUp)プログラムは広く用いられている。縮重PCRに使用されるプライマーは、1つ以上の縮重部位を含み、および既知の配列に対する単一の配列プライマーを使用する配列クローニングに用いられるよりも低い厳密性条件で用いられる。
【0173】
代替的に、そのようなヌクレオチド配列は、特徴づけられた配列の部位特異的突然変異誘発によって得ることができる。これは、たとえば、ヌクレオチド配列が発現されている特定の宿主細胞についてコドン優先性を最適化するため、配列にサイレントコドン変化が必要である場合に有用である。制限酵素認識部位を導入するため、またはヌクレオチド配列によってコードされるNotchシグナル伝達の調節因子の活性を変化させるため、他の配列変化が望まれる可能性がある。
【0174】
本発明で有用であるDNAポリヌクレオチドといったヌクレオチド配列は、組み換えによって、合成によって、または当業者が利用可能な任意の手段によって作製することができる。配列はまた標準的技術によってクローニングすることができる。一般的に、プライマーは、目的の核酸配列の、一度にヌクレオチド一個の段階的製法を含む合成手段によって作製される。自動化技術を用いてこれを達成するための技術は本分野で容易に利用可能である。
【0175】
より長いヌクレオチド配列は、一般的に組み換え手段を用いて、たとえばPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)クローニング技術を用いて作製される。これは、クローニングを望む標的配列の領域に隣接する一対のプライマー(たとえば約15ないし30ヌクレオチドの)を作製し、プライマーを動物またはヒト細胞から得られたmRNAまたはcDNAと接触させ、目的領域の増幅を引き起こす条件下でポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施し、増幅された断片を単離し(たとえばアガロースゲル上で反応混合物を精製することによって)、および増幅されたDNAを回収することを含む。増幅されたDNAを適当なクローニングベクターへクローニングすることができるように、プライマーは適当な制限酵素認識部位を含むように設計することができる。より大きな遺伝子については、この方法で一部を別々にクローニングし、その後に繋いで完全な配列を形成することができる。
【0176】
タンパク質およびポリペプチド発現
組み換え産生のためには、宿主細胞を遺伝子操作して発現系または本発明のポリヌクレオチドを組み込むことができる。ポリヌクレオチドの宿主細胞への導入はデービス(Davis)他およびサムブルック(Sambrook)他といった多数の標準的な実験手引書に記載された通りの、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、トランスベクション(transvection)、マイクロインジェクション、陽イオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、スクレープローディング(scrape loading)、弾丸導入(ballistic introduction)、および感染といった方法によって実施することができる。そのような方法はまた、in vitroまたはin vivoで薬物送達系として使用することもできることが理解される。
【0177】
適当な宿主の代表的な例は、連鎖球菌、ブドウ球菌、大腸菌(E.coli)、ストレ
プトミセス、および枯草菌(Bacillus subtilis)細胞といった細菌細
胞;酵母細胞およびアスペルギルス(Aspergillus)細胞といった真菌細胞;
ショウジョウバエ(Drosophila)S2およびヨトウガ(Spodoptera
)Sf9細胞といった昆虫細胞;CHO、COS、NSO、HeLa、C127、3T3
、BHK、293およびBowesメラノーマ細胞といった動物細胞;Jurkat細胞
といったT細胞株;A20細胞といったB細胞株;および植物細胞を含む。
【0178】
本発明で有用なポリペプチドを産生するためには、幅広い発現系を用いることができる
。そのようなベクターは、中でも、染色体由来、エピソーム由来、およびウイルス由来ベ
クター、たとえば、細菌プラスミド由来、バクテリオファージ由来、トランスポゾン由来
、酵母エピソーム由来、挿入配列由来、酵母染色体配列由来、バキュロウイルス、SV4
0といったパポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、オー
エスキー病ウイルスおよびレトロウイルスといったウイルス由来のベクター、およびコス
ミドおよびファージミドといったプラスミドおよびバクテリオファージ遺伝因子に由来す
るもののようなその組み合わせに由来するベクターを含む。発現系構造は、発現を調節す
ると共に引き起こす調節領域を含むことができる。一般的に、ポリヌクレオチドを維持、
増殖、または発現するためにおよび/または宿主においてポリペプチドを発現するために
適当な任意の系またはベクターを、この際に発現のために用いることができる。適当なD
NA配列は、たとえば、サムブルック(Sambrook)他に示されたもののような幅
広い既知で通常の技術のうち任意のものによって発現系に挿入することができる。
【0179】
翻訳されたタンパク質の、小胞体内腔へ、細胞膜周辺腔へ、または細胞外環境への分泌
のために、適当な分泌シグナルを発現ポリペプチドに組み込むことができる。これらのシ
グナルは、ポリペプチドに対して内因性であることができ、または異種シグナルであるこ
とができる。
【0180】
本発明における使用のための活性物質は、組み換え細胞培養から、硫安またはエタノー
ル沈澱、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、リン酸セルロースク
ロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィ
ー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含
むよく知られた方法によって回収および精製することができる。非常に好ましくは、高速
液体クロマトグラフィーが精製に用いられる。ポリペプチドが単離および/または精製の
間に変性する場合は、タンパク質再折りたたみのための技術を用いて活性立体構造を再生
することができる。
【0181】
Notchシグナル伝達のためのポリペプチドおよびポリヌクレオチド
Notchは最初にショウジョウバエ(Drosophila)で、2つの異なるリガンドDeltaおよびSerrateに対する受容体として機能する膜貫通タンパク質として記載された。脊椎動物は複数のNotch受容体およびリガンドを発現する(下記で論述)。少なくとも4種類のNotch受容体(Notch−1、Notch−2、Notch−3、およびNotch−4)が現在までにヒト細胞で同定されている(たとえばGenBank登録番号AF308602、AF308601およびU95299−ヒト(Homo sapiens)を参照)。
【0182】
Notchシグナル伝達経路は胚における細胞運命二択決定を導く。Notchは最初にショウジョウバエ(Drosophila)で、2つの異なるリガンドDeltaおよびSerrateに対する受容体として機能する膜貫通タンパク質として記載された。脊椎動物は複数のNotch受容体およびリガンドを発現する(下記で論述)。
【0183】
Notchタンパク質は単一のポリペプチド前駆体として合成され、フリン様転換酵素による切断を受けて2つのポリペプチド鎖を生じ、それがさらにプロセシングされて成熟受容体を形成する。原形質膜に存在するNotch受容体は2つのNotchタンパク質分解産物のヘテロ二量体を含み、一方は細胞外ドメインの一部から成るN末端断片、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含み、他方は細胞外ドメインの大部分を含む。受容体を活性化する、Notchのタンパク質分解による切断段階は、ゴルジ装置で起こり、およびフリン様転換酵素によって媒介される。
【0184】
Notch受容体は、最大36個の上皮成長因子(EGF)様反復[Notch1/2=36、Notch3=34、およびNotch4=29]、3個のシステインリッチ反復(Lin−Notch(L/N)反復)を含む細胞外ドメイン、および細胞質ドメインを含む1個の膜貫通サブユニットを含むヘテロ二量体分子として膜に挿入されている。Notchの細胞質ドメインは6個のアンキリン様反復、1個のポリグルタミン鎖(OPA)および1個のPEST配列を含む。RAM23という別の1個のドメインがアンキリン反復の近位側に存在し、および、ショウジョウバエ(Drosophila)ではHairless抑制因子(Suppressor of Hairless)[Su(H)]、脊椎動物ではCBF1として知られる転写因子との結合に関与している(タムラ(Tamura)K,他 (1995) Curr.Biol.5;1416−1423 (TAMURA))。Notchリガンドはまた、複数のEGF様反復を細胞外ドメイン中に、すべてのNotchリガンドに特徴的であるシステインに富むDSL(Delta−Serrate Lag2)ドメインと共に示す(アルタバニス・ツァコマス(Artavanis−Tsakomas)他(1995)Science 268:225−232、アルタバニス・ツァコマス(Artavanis−Tsakomas)他(1999)Science 284:770−776)。
【0185】
Notch 受容体は、Delta、SerrateおよびScabrousといった細胞外リガンドの、Notchの細胞外ドメインのEGF様反復との結合によって活性化される。Deltaは活性化のために切断を必要とする。DeltaはADAMディスインテグリンメタロプロテアーゼであるクズバニアン(Kuzbanian)によって細胞表面で切断され、その切断現象はDeltaの可溶性の活性型を放出する。ヒトNotch−1タンパク質の発がん性変異体、別名TAN−1は、短縮された細胞外ドメインを持つが、構成的に活性でありおよびT細胞リンパ芽球性白血病に関与することが見出されている。
【0186】
cdc10/アンキリン細胞内ドメイン反復は、細胞内シグナル伝達タンパク質との物理的相互作用を媒介する。非常に顕著なことに、cdc10/アンキリン反復は、Hairless抑制因子(Suppressor of Hairless)[Su(H)]と相互作用する。Su(H)は、B細胞のエプスタイン・バーウイルス誘導性不死化に関与する哺乳類DNA結合タンパク質であるC−プロモーター結合因子−1[CBF−1]のショウジョウバエ(Drosophila)ホモログである。少なくとも培養細胞において、Su(H)はcdc10/アンキリン反復と細胞質中で結合し、隣接する細胞上のリガンドであるDeltaとのNotch受容体の相互作用の際に、核へ移動することが示されている。Su(H)はいくつかの遺伝子のプロモーター中に見出される応答配列を含み、Notchシグナル伝達経路において重要な下流タンパク質であることが見出されている。転写におけるSu(H)の関与は、Hairlessによって調節されると考えられている。
【0187】
Notchの細胞内ドメイン(NotchIC)はまた、直接の核機能を有する(リーバー(Lieber)他(1993)Gene Dev 7(10):1949−65(Lieber))。近年の研究は実際に、Notch活性化は、Notch細胞内ドメインの6個のcdc10/アンキリン反復が核に到達し転写活性化に参加することを必要とすることを示している。Notchの細胞内尾部のタンパク質分解切断部位は、gly1743とval1744の間と同定されている(部位3、またはS3という)(シュレーター(Schroeter),E.H.他(1998)Nature 393(6683):382−6(Schroeter))。核への進入のためにcdc10/アンキリン反復を放出するタンパク質分解切断段階は、プレセニリン(Presenilin)活性に依存すると考えられている。
【0188】
細胞内ドメインは核内に蓄積し、そこでCSLファミリータンパク質であるCBF1(ショウジョウバエ(Drosophila)ではHairless抑制因子(suppressor of hairless),Su(H)、線虫(C.elegans)ではLag−2)と転写活性化因子複合体を形成することが示されている(シュレーター(Schroeter);シュトルール(Struhl),G.他 (1998) Cell 93(4);649−60 (Struhl))。NotchIC−CBF1複合体はその後、bHLHタンパク質であるHES(hairy−enhancer of split like)1および5といった標的遺伝子を活性化する(ワインマスター(Weinmaster)G.(2000)Curr.Opin.Genet.Dev.10:363−369(Weinmaster)) 。このNotchの核機能はまた、哺乳類Notchホモログについても示されている(ルー(Lu),F.M.他(1996)Proc Natl Acad Sci 93(11);5663−7 (Lu))。
【0189】
S3プロセシングは、NotchリガンドDeltaまたはSerrate/Jaggedの結合に反応してのみ生じる。初期のNotch受容体のゴルジにおける翻訳後修飾(ムンロー(Munro)S,フリーマン(Freeman)M.(2000) Curr.Biol.10;813−820 (Munro);ユー(Ju)BJ,他 (2000) Nature 405;191−195 (Ju))は、少なくとも部分的に、2種類のリガンドのどちらが細胞表面上に発現されるかを調節するように見える。Notch受容体は、Lin/Notchモチーフに結合するグリコシルトランスフェラーゼ酵素であるフリンジ(Fringe)によって細胞外ドメインで修飾される。フリンジは、O−結合型フコース基をEGF様反復に付加することによってNotchを修飾する(モロニー(Moloney)DJ,他 (2000) Nature 406:369−375 (Moloney)、ブルッカー(Brucker)K,他 (2000) Nature 406:411−415 (Brucker))。フリンジによるこの修飾はリガンド結合を妨げないが、しかしリガンドに誘導されるNotchにおける立体構造変化に影響しうる。さらに、近年の研究は、フリンジの作用はNotchを修飾してSerrate/Jaggedリガンドと機能性に相互作用することを妨げるが、しかし優先的にDeltaと結合することを可能にすることを示唆する(パニン(Panin)VM,他 (1997) Nature 387;908−912 (Panin)、ヒックス(Hicks)C,他 (2000) Nat.Cell.Biol.2;515−520 (Hicks))。ショウジョウバエ(Drosophila)は単一のフリンジ遺伝子を持つが、脊椎動物は複数の遺伝子を発現することが知られている(Radical,ManicおよびLunatic Fringes)(アーヴィン(Irvine)KD (1999) Curr.Opin.Genet.Devel.9;434−441 (Irvine))。
【0190】
Notch受容体からのシグナル伝達は、2つの異なる経路を介して起こりうる(たとえば図1を参照)。よりよく定義された経路は、Notchの細胞内ドメイン(NotchIC)のタンパク質分解切断を含み、NotchICは核へ移動して、CSLファミリータンパク質のCBF1(ショウジョウバエ(Drosophila)ではsuppressor of hairless,Su(H)、線虫(C.elegans)ではLag−2)と転写活性化因子複合体を形成する。NotchIC−CBF1複合体はその後、bHLHタンパク質であるHES(hairy−enhancer of split like)1および5といった標的遺伝子を活性化する。Notchはまた、亜鉛フィンガーを含む細胞質タンパク質Deltexが関与するCBF1−非依存的な方法でシグナル伝達することができる。CBF1とは異なり、DeltexはNotch活性化後に核へ移動しないが、代わりにGrb2と相互作用しおよびRas−JNKシグナル伝達経路を調節することができる。
【0191】
Notchシグナル伝達経路の標的遺伝子は、Deltex、Hesファミリーの遺伝子(特にHes−1)、分割増強剤(Enhancer of Split)[E(spl)]複合体遺伝子、IL−10、CD−23、CD−4およびDll−1を含む。
【0192】
Deltexは、細胞内ドッキングタンパク質であり、Su(H)がNotchの細胞内尾部との相互作用部位から離れる際にSu(H)と置き換わる。Deltexは亜鉛フィンガーを含む細胞質タンパク質である(アルタバニス・ツァコマス(Artavanis−Tsakomas)他(1995)Science 268:225−232;アルタバニス・ツァコマス(Artavanis−Tsakomas)他(1999)Science 284:770−776;オズボーン(Osborne)B,ミーレ(Miele)L.(1999)Immunity 11;653−663 (Osborne))。DeltexはNotch細胞内ドメインのアンキリン反復と相互作用する。DeltexはGrb2と相互作用しおよびRas−JNKシグナル伝達経路を調節することにより、Notch経路活性化を促進することを研究が示している(マツノ(Matsuno)他(1995)Development 121(8):2633−44;マツノ(Matsuno)K,他(1998)Nat.Genet.19:74−78)。Deltexはまた、Su(H)がNotchの細胞内尾部と結合することを妨げるドッキングタンパク質として作用する(マツノ(Matsuno))。このように、Su(H)は核内へ放出され、そこで転写調節因子として作用する。近年の証拠はまた、脊椎動物B細胞系において、Su(H)ホモログのCBF1でなくDeltexが、E47機能の阻害を担っていることを示唆する(オルデントリッヒ(Ordentlich)他(1998)Mol.Cell.Biol.18:2230−2239 (Ordentlich))。Deltexの発現は、Notch活性化の結果として、正のフィードバックループによってアップレギュレートされる。ヒト(Homo sapiens)Deltex(DTX1)mRNAの配列はGenBank登録番号AF053700に見出される。
【0193】
Hes−1(Hairy−enhancer of Split−1)(タケバヤシ(Takebayashi K.)他(1994)J Biol Chem 269(7):150−6 (Takebayashi)) は、へリックス−ループ−へリックスの基本構造を有する転写因子である。Hes−1はCD4サイレンサー中の重要な機能部位と結合し、CD4遺伝子発現の抑制に結びつく。このように、Hes−1はT細胞運命の決定に強力に関与している。Hesファミリーからの他の遺伝子は、Notch活性化によってもまた発現がアップレギュレートされるHes−5(Splitホモログの哺乳類エンハンサー)、およびHes−3を含む。Hes−1の発現は、Notch活性化の結果としてアップレギュレートされる。マウス(Mus musculus)Hes−1の配列はGenBank登録番号D16464に見出される。
【0194】
E(spl)遺伝子複合体[E(spl)−C](ライマイスター(Leimeister)C.他(1999)Mech Dev 85(1−2):173−7 (Leimeister))は7個の遺伝子を含み、そのうちE(spl)およびGrouchoだけが、突然変異体の場合に目に見える表現型を示す。E(spl)はSplit突然変異を促進する能力に因んで命名され、SplitはNotchの別名である。実際、E(spl)−C遺伝子はachaete−scute複合体遺伝子発現の調節を介してDeltaを抑制する。E(spl)の発現は、Notch活性化の結果としてアップレギュレートされる。
【0195】
インターロイキン−10(IL−10)は、Th1細胞によるサイトカイン産生を抑制することができる、Th2細胞によって産生される因子としてマウスで最初に特徴づけられた。その後、IL−10はマクロファージ、ケラチノサイト、B細胞、Th0細胞、およびTh1細胞を含む多数の他の細胞型によって産生されることが示された。IL−10は、現在はウイルスIL−10と表されるエプスタイン−バーbcrf1遺伝子と、大きなホモロジーを示す。いくつかの免疫刺激効果が報告されているが、IL−10は主に免疫抑制性サイトカインと考えられている。T細胞応答のIL−10による阻害は、抗原提示細胞の付帯機能の低下を通じて主に媒介される。IL−10は特に、マクロファージによる数々の炎症促進性サイトカインの産生を抑制すること、および共刺激分子およびMHCクラスII発現を阻害することが報告されている。IL−10はまた、好中球および好酸球といった他の骨髄細胞に対して抗炎症作用を発揮する。B細胞に対しては、IL−10はアイソタイプ転換および増殖に影響する。より近年に、IL−10は調節T細胞の誘導において、およびその抑制作用の可能な媒介因子として、役割を果たすことが報告された。IL−10がNotchシグナル伝達経路の直接の下流の標的かどうかは不明であるが、その発現はNotch活性化と一致して強くアップレギュレートされることが見出されている。IL−10のmRNA配列はGenBank整理番号GI1041812に見出される。
【0196】
CD−23は、B細胞活性化および増殖のための重要な分子であるヒト白血球分化抗原CD23(FCE2)である。CD−23はIgEに対する低親和性受容体である。さらに、短縮型分子を分泌することができ、その後、強力な細胞分裂誘起性増殖因子として機能する。CD−23の配列はGenBank整理番号GI1783344に見出される。
【0197】
CTLA4(細胞傷害性Tリンパ球活性化タンパク質4)は、T細胞の表面上に見出される付属分子であり、気道炎症細胞動員の調節およびアレルゲン吸入後のTヘルパー細胞分化に役割を果たすと考えられている。CTLA4をコードする遺伝子のプロモーター領域はCBF1応答配列を有し、その発現はNotch活性化の結果としてアップレギュレートされる。CTLA4の配列はGenBank登録番号L15006に見出される。
【0198】
Dlx−1(distalless−1)( マクギネス(McGuinness)T.他(1996)Genomics 35(3):473−85 (McGuiness)) 発現は、Notch活性化の結果としてダウンレギュレートされる。Dlx遺伝子の配列はGenBank登録番号U51000〜3に見出される。
【0199】
CD−4発現は、Notch活性化の結果としてダウンレギュレートされる。CD−4抗原の配列はGenBank登録番号XM006966に見出される。
【0200】
上記の通り、Notch受容体ファミリーは、T細胞運命決定に影響する細胞−細胞シグナル伝達現象に関与する。このシグナル伝達において、NotchICは核に局在化し、および活性化された受容体として機能する。哺乳類NotchICは転写抑制因子CBF1と相互作用する。NotchIC cdc10/アンキリン反復はこの相互作用に必須であると提案されている。シェ(Hsieh)他(Hsieh et al.(1996) Molecular & Cell Biology 16(3):952−959)は、マウスNotchICのN末端114アミノ酸領域はCBF1相互作用ドメインを含むとさらに示している。また、NotchICは核内のDNAに結合したCBF1を標的にし、および抑制ドメインの遮蔽によりCBF1媒介抑制を止めることによって作用すると提案されている。エプスタイン・バーウイルス(EBV)不死化タンパク質EBNAもまた、CBF1拘束および抑制の遮蔽を利用して、CBF1に抑制されたB細胞遺伝子の発現をアップレギュレートすることが知られている。このように、Notchシグナル伝達の模倣が、EBVに導かれる不死化に関与する。ストローブル(Strobl)他(Strobl et al (2000) J Virol 74(4):1727−35)は、同様に「EBNA2はしたがって、活性化されたNotch受容体の機能的同等物とみなしうる」ことを報告する。このカテゴリに入る他のEBVタンパク質は、BARF0(クサノ(Kusano)およびラーブ・トルアブ(Raab−Truab)(2001) J Virol 75(1):384−395 (Kusano and Raab−Traub))およびLMP2Aを含む。
【0201】
Numb、Mastermind、およびDshといったNotchシグナル伝達経路に関与する他の遺伝子、およびNotch活性化によって発現が調節されるすべての遺伝子は、本発明の範囲に含まれる。
【0202】
Notchシグナル伝達活性化のためのポリペプチドおよびポリヌクレオチド
好ましい一実施形態では、Notchシグナル伝達の調節因子は、Notchシグナル伝達活性化のための物質、好ましくはNotchリガンドまたはその断片、変異体、誘導体、ホモログまたはミメティックとなる。
【0203】
現在までに同定された哺乳類Notchリガンドの例は、Deltaファミリー、たとえばDelta−1(Genbank登録番号AF003522−ヒト(Homo sapiens))、Delta−3(Genbank登録番号AF084576−ラット(Rattus norvegicus))およびDelta−like3(マウス(Mus musculus))、Serrateファミリー、たとえばSerrate−1およびSerrate−2(国際公開第97/01571号パンフレット、国際公開第96/27610号パンフレットおよび国際公開第92/19734号パンフレット)、Jagged−1およびJagged−2(Genbank登録番号AF029778−ヒト(Homo sapiens))、およびLAG−2を含む。ファミリーメンバー間のホモロジーは大きい。
【0204】
既知の哺乳類Notchリガンドの別のホモログは、標準的手法を用いて同定することができる。「ホモログ」によって、たとえば上述のような既知のNotchリガンドのうち任意の1つと、アミノ酸または核酸配列ホモロジーのどちらかである配列ホモロジーを示す遺伝子産物を意味する。典型的には、既知のNotchリガンドのホモログは、少なくとも10個、好ましくは少なくとも20個、好ましくは少なくとも50個、適切には少なくとも100個のアミノ酸の配列にわたって、またはNotchリガンドの全長にわたって、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、対応する既知のNotchリガンドとアミノ酸レベルで同一である。2つ以上のアミノ酸または核酸配列の間の配列ホモロジーを計算するための技術およびソフトウェアは本分野でよく知られている(たとえばhttp://www.ncbi.nlm.nih.govおよびアウスベル(Ausubel)他、『分子生物学の最新プロトコル』(Current Protocols in Molecular Biology)(1995)、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ社(John Wiley & Sons,Inc.)を参照)。
【0205】
上記の通り、現在までに同定されたNotchリガンドは、タンパク質のアミノ末端に20ないし22アミノ酸を含む診断的なDSLドメインを(D=Delta、S=Serrate、L=Lag2)、および細胞外表面上に14まで、またはそれ以上のEGF様反復を有する。したがって、Notchリガンドのホモログはまた、N末端にDSLドメインを、および細胞外表面上に14まで、またはそれ以上のEGF様反復を含むことが好ましい。
【0206】
加えて、適当なホモログは好ましくはNotch受容体と結合する能力がある。結合は、in vitro結合測定法を含む、本分野で既知であるさまざまな技術によって評価することができ、また受容体の活性化(作用因子または部分作用因子の場合)は、たとえば、本文書の実施例および、本文が参照により本開示に含まれる国際公開第03/012441号パンフレット(ロランティス社(Lorantis))に記載された通りの測定法の使用によって測定することができる。
【0207】
Notchリガンドのホモログは、いくつかの方法によって、たとえばゲノムライブラリまたはcDNAライブラリを、Notchリガンドをコードする核酸のすべてまたは一部を含むプローブを用いて、中等度ないし高厳密性条件下で(たとえば0.03M塩化ナトリウムおよび0.03Mクエン酸ナトリウム、約50℃ないし約60℃にて)プロービングすることによって同定することができる。代替的に、ホモログはまた、保存されたアミノ酸配列をコードする変異体およびホモログの中の配列を標的とするように設計されたプライマーを一般的に使用する縮重PCRを用いて得ることができる。そのプライマーは1つ以上の縮重位置を含み、および既知の配列に対して単一の配列プライマーを用いた配列クローニングに使用されるよりも低い厳密条件下で用いられる。
【0208】
ポリペプチド物質は、哺乳類細胞から精製するか、適当な宿主細胞における組み換え発現によって得るか、または購入することができる。代替的に、当該ポリペプチドをコードする核酸構造を用いることができる。別の一例として、DeltaまたはSerrateといったNotchまたはNotchリガンドの過剰発現は、SerrateまたはDelta遺伝子といった内因性遺伝子を活性化することができる核酸構造の導入によって引き起こすことができる。特に、遺伝子活性化は、標的細胞のゲノム中のSerrateまたはDeltaプロモーターといった天然プロモーターの代わりに異種プロモーターを挿入する、相同組み換えの利用によって達成することができる。
【0209】
本発明の活性化分子は、別の一実施形態では、Notch−タンパク質発現または細胞膜上の提示またはシグナル伝達経路を修飾することができる可能性がある。標的細胞表面上の完全に機能するNotch−タンパク質の提示を促進する物質は、ショウジョウバエ(Drosophila)のKuzbanian遺伝子の産物といったマトリクスメタロプロテイナーゼ(ドクツ(Dkuz)他(1997)Cell 90:271−280 (Dkuz))および他のADAMALYSIN遺伝子ファミリーメンバーを含む。
【0210】
Notchリガンドドメイン
上記で論述した通り、Notchリガンドは典型的にはいくつかの特徴的なドメインを含む。さまざまな天然に存在するヒトNotchリガンドについての一部の予想/候補ドメイン位置(前駆タンパク質中のアミノ酸番号付けに基づく)を下記に示す:
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0211】
DSLドメイン
典型的なDSLドメインは、下記の共通アミノ酸配列の大部分または全部を含みうる:
【0212】
好ましくはDSLドメインは下記の共通アミノ酸配列の大部分または全部を含みうる:
ここで:
AROは、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファンまたはヒスチジンといった芳香族アミノ酸残基である;
NOPは、グリシン、アラニン、プロリン、ロイシン、イソロイシンまたはバリンといった非極性アミノ酸残基である;
BASは、アルギニンまたはリジンといった塩基性アミノ酸残基である;および
ACMは、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギンまたはグルタミンといった酸またはアミドアミノ酸残基である。
【0213】
好ましくはDSLドメインは下記の共通アミノ酸配列の大部分または全部を含みうる:
(ここでXaaは任意のアミノ酸であることができ、およびAsxはアスパラギン酸またはアスパラギンのどちらかである)。
【0214】
さまざまな起源に由来するNotchリガンドからのDSLドメインの整列を図3に示す。
【0215】
使用するDSLドメインは、たとえばショウジョウバエ(Drosophila)、ツメガエル(Xenopus)、ラット、マウスまたはヒトを含む任意の適当な生物種に由来することができる。好ましくはDSLドメインは、脊椎動物、好ましくは哺乳類、好ましくはヒトNotchリガンド配列に由来する。
【0216】
適切には、たとえば、本発明における用途のためのDSLドメインは、ヒトJagged1のDSLドメインに対して、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有しうる。
【0217】
代替的に、本発明における用途のためのDSLドメインは、たとえば、ヒトJagged2のDSLドメインに対して、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有しうる。
【0218】
代替的に、本発明における用途のためのDSLドメインは、たとえば、ヒトDelta1のDSLドメインに対して、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有しうる。
【0219】
代替的に、本発明における用途のためのDSLドメインは、たとえば、ヒトDelta3のDSLドメインに対して、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有しうる。
【0220】
代替的に、本発明における用途のためのDSLドメインは、たとえば、ヒトDelta4のDSLドメインに対して、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有しうる。
【0221】
EGF様ドメイン
EGF様モチーフは、血液凝固カスケードに関与するものを含む、さまざまなタンパク質、およびEGFおよびNotchおよびNotchリガンドで見つかっている(フュリーおよびフュリー(Furie and Furie),1988,Cell 53;505−518)。たとえば、このモチーフは、血液凝固因子IXおよびXといった細胞外タンパク質で(リーズ(Rees)他,1988,EMBO J.7;2053−2061;フュリーおよびフュリー(Furie and Furie),1988,Cell 53:505−518)、他のショウジョウバエ(Drosophila)遺伝子で(クヌースト(Knust)他,1987 EMBO J.761−766;ロスバーグ(Rothberg)他,1988,Cell 55:1047−1059)、およびトロンボモジュリン(スズキ(Suzuki)他,1987,EMBO J.6:1891−1897)およびLDL受容体(ズドホフ(Sudhof)他,1985,Science 228:815−822)といった一部の細胞表面受容体タンパク質で見つかっている。タンパク質結合部位が、トロンボモジュリンおよびウロキナーゼ中のEGF反復ドメインにマッピングされている(クロサワ(Kurosawa)他,1988,J.Biol.Chem 263:5993−5996;アペラ(Appella)他,1987,J.Biol.Chem.262:4437−4440)。
【0222】
PROSITEによって報告された通り、典型的なEGFドメインは、(EGFにおいて)ジスルフィド結合に関与すると示されている6個のシステイン残基を含みうる。主構造は、二本鎖のβ−シートに続くループとその後のC末端の短い二本鎖のシートであると提案されているが必ずしも必要ではない。保存されたシステインの間のサブドメインは、典型的なEGF様ドメインの下記の略図に示す通り、長さが大きく異なる:
【化4】
ここで:
‘C’:ジスルフィド結合に関与する保存されたシステイン。
‘G’:しばしば保存されたグリシン
‘a’:しばしば保存された芳香族アミノ酸
‘x’:任意の残基
5番目と6番目のシステインの間の領域は、2個の保存されたグリシンを含み、そのうち少なくとも1個は大部分のEGF様ドメイン中に通常存在する。
【0223】
使用するEGF様ドメインは、たとえばショウジョウバエ(Drosophila)、ツメガエル(Xenopus)、ラット、マウスまたはヒトを含む任意の適当な生物種に由来することができる。好ましくはEGF様ドメインは、脊椎動物、好ましくは哺乳類、好ましくはヒトNotchリガンド配列に由来する。
【0224】
適切には、たとえば、本発明における用途のためのEGF様ドメインは、ヒトJagged1のEGF様ドメインに対して、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有しうる。
【0225】
代替的に、本発明における用途のためのEGF様ドメインは、たとえば、ヒトJagged2のEGF様ドメインに対して、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有しうる。
【0226】
代替的に、本発明における用途のためのEGF様ドメインは、たとえば、ヒトDelta1のEGF様ドメインに対して、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有しうる。
【0227】
代替的に、本発明における用途のためのEGF様ドメインは、たとえば、ヒトDelta3のEGF様ドメインに対して、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有しうる。
【0228】
代替的に、本発明における用途のためのEGF様ドメインは、たとえば、ヒトDelta4のEGF様ドメインに対して、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有しうる。
【0229】
実際問題として、任意の特定のアミノ酸配列が別の配列と少なくともX%同一であるかどうかは、従来は既知のコンピュータープログラムを用いて決定することができる。たとえば、クエリー配列と対象配列との間の最良の全体の一致は、全体配列整列ともいうが、たとえば、ブルトラグ(Brutlag)他(Comp.App.Biosci.(1990)6:237−245)のアルゴリズムに基づくFASTDBコンピュータープログラムといったプログラム、またはここに記載の他のアルゴリズムを用いて決定することができる。配列整列では、クエリー配列および対象配列は、両方ともヌクレオチド配列であるかまたは、両方ともアミノ酸配列である。全体配列整列の結果は、パーセント同一性として与えることができる。
【0230】
「NotchリガンドN末端ドメイン」の語は、Notchリガンド配列の、N末端からDSLドメインの開始までの部分を意味する。この語は天然に存在するドメインに対応する活性を有する配列変異体、断片、誘導体、およびミメティックを含むことが理解される。
【0231】
適切には、たとえば、本発明における用途のためのNotchリガンドN末端ドメインは、ヒトJagged1のNotchリガンドN末端ドメインに対して、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有しうる。
【0232】
代替的に、本発明における用途のためのNotchリガンドN末端ドメインは、たとえば、ヒトJagged2のNotchリガンドN末端ドメインに対して、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有しうる。
【0233】
代替的に、本発明における用途のためのNotchリガンドN末端ドメインは、たとえば、ヒトDelta1のNotchリガンドN末端ドメインに対して、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有しうる。
【0234】
代替的に、本発明における用途のためのNotchリガンドN末端ドメインは、たとえば、ヒトDelta3のNotchリガンドN末端ドメインに対して、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有しうる。
【0235】
代替的に、本発明における用途のためのNotchリガンドN末端ドメインは、たとえば、ヒトDelta4のNotchリガンドN末端ドメインに対して、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有しうる。
【0236】
ここで用いられる「異種アミノ酸配列」または「異種ヌクレオチド配列」の語は、天然の配列には見出されない配列(たとえばNotchリガンド配列の場合には、天然のNotchリガンド配列には見出されない)またはそのコード配列には見出されない配列を意味する。典型的には、たとえば、そのような配列は、IgFcドメイン、またはV5Hisタグといったタグでありうる。
【0237】
測定法
ある物質を、Notchシグナル伝達を調節するためにまたはNotch受容体を活性化するために用いることができるかどうかは、たとえば、国際公開第03/012441号パンフレットとして公開された我々の同時出願中の国際出願に記載されたような、ここで実施例に記載されたような、またはバーナム−フィニー(Varnum−Finney)他、Journal of Cell Science 113,4313−4318 (2000)に記載されたような、適切なスクリーニング測定法を用いて決定することができる。
【0238】
加えて、たとえば、Notchシグナル伝達は、タンパク質測定法によって、または核酸測定法によって監視することができる。Notch受容体の活性化は、その細胞質ドメインのタンパク質分解切断、および細胞核へのその移動に繋がる。ここでいう「検出可能なシグナル」は、Notchの切断された細胞内ドメインの存在に帰することができる任意の検出可能な徴候であることができる。したがって、Notchシグナル伝達の増加は、切断されたNotchドメインの細胞内濃度を測定することによって、タンパク質レベルで評価することができる。Notch受容体の活性化はまた、一連の下流の反応を触媒し、ある種の明確な遺伝子の発現のレベルの変化に繋がる。したがって、Notchシグナル伝達の増加は、たとえば特定のmRNAの細胞内濃度を測定することによって、核酸レベルで評価することができる。本発明の好ましい一実施形態では、測定法はタンパク質測定法である。本発明の別の好ましい一実施形態では、測定法は核酸測定法である。
【0239】
核酸測定法を用いることの利点は、核酸測定法は高感度であり少量の試料を分析することができることである。
【0240】
任意の時間に測定された、特定のmRNAの細胞内濃度は、対応する遺伝子のその時点での発現レベルを反映する。したがって、Notchシグナル伝達経路の下流標的遺伝子のmRNAのレベルは、免疫系のT細胞の間接的測定によって測定することができる。特に、Deltex、Hes−1および/またはIL−10 mRNAのレベルの上昇はたとえば誘導された免疫反応不顕性を示しうる一方、Dll−1またはIFN−γ mRNAのレベルまたはIL−2、IL−5およびIL−13といったサイトカインをコードするmRNAのレベルの上昇は反応性の改善を示しうる。
【0241】
さまざまな核酸測定法が既知である。既知であるかまたは後に開示される任意の従来の技術を用いることができる。適当な核酸測定法の例は下記に示され、増幅、PCR、RT−PCR、RNase保護、ブロッティング、分光分析、レポーター遺伝子測定法、遺伝子チップアレイおよび他のハイブリダイゼーション法を含む。
【0242】
特に、遺伝子の存在、増幅および/または発現は、試料中で直接に、たとえば、従来のmRNAの転写を定量するサザンブロッティング、ノーザンブロッティング、ドットブロッティング(DNAまたはRNA分析)、またはin situハイブリダイゼーションによって、適当に標識化されたプローブを用いて測定することができる。当業者は必要に応じて、これらの方法をどのように改変しうるかを容易に考えることができる。
【0243】
PCRは最初は、不純な試料からDNAを増幅する手段として開発された。その技術は、反応溶液を繰り返し加熱および冷却してプライマーを標的配列とアニーリングさせる温度サイクル、および複製娘鎖の形成のためのそれらのプライマーの伸長に基づく。RT−PCRは、逆転写酵素を用いた最初のcDNA鎖の生成に、RNAテンプレートを用いる。cDNAはその後、標準のPCR手順に従って増幅する。合成および変性の繰り返しサイクルの結果として、生じる標的DNAのコピー数の指数的増加が起こる。しかし、反応成分が限られてくるにつれ、増幅の速度は低下して停滞状態に達し、その後はPCR産物の正味の増加はほとんどまたは全く無い。核酸標的の開始コピー数が多いほど、この「終点(エンドポイント)」に到達するのは早い。
【0244】
リアルタイムPCRは、蛍光タグまたは蛍光色素で標識化されたプローブを用い、一定数のサイクル後の産物蓄積の測定のためでなく、蓄積していくPCR産物を検出するために用いられるという点で、定量測定のためのエンドポイントPCRとは異なる。反応は、標的配列の増幅が蛍光の有意な増加によって最初に検出される際のサイクル反応中の時点によって特徴づけられる。
【0245】
リボヌクレアーゼ保護(RNase保護)測定法は、溶液中の特定のRNAの定量のための極めて高感度な技術である。リボヌクレアーゼ保護測定法は、標的として細胞RNA全体またはポリ(A)選択されたmRNAについて実施することができる。リボヌクレアーゼ保護測定法の感度は、高い比活性で放射性標識された相補in vitro転写物プローブの使用に由来する。プローブおよび標的RNAは溶液中でハイブリダイズされ、その後、混合物は希釈されてリボヌクレアーゼ(RNase)で処理され、残っている一本鎖RNAすべてが分解される。プローブのハイブリダイズした部分は消化から保護され、変性ポリアクリルアミドゲル上での混合物の電気泳動とその後のオートラジオグラフィーによって可視化することができる。保護された断片は高分解能ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分析されるため、リボヌクレアーゼ保護測定法を用いてmRNA特性を正確にマッピングすることができる。プローブが標的RNAに関して過剰なモル数でハイブリダイズされるならば、結果として生じるシグナルは試料中の相補RNAの量に正比例する。
【0246】
遺伝子発現はまた、レポーター系を用いて検出することができる。そのようなレポーター系は、たとえば監視される遺伝子の発現系の調節下にある、容易に同定可能なマーカーを含むことができる。FACSによって検出および選別が可能である蛍光マーカーが好ましい。特に好ましいのはGFPおよびルシフェラーゼである。別の種類の好ましいレポーターは、細胞表面マーカー、すなわち細胞表面上に発現されしたがって容易に同定可能であるタンパク質である。
【0247】
一般的に、レポーター遺伝子の発現によってNotchシグナル伝達を検出するために有用なレポーター構造は、サムブルック(Sambrook)他(1989)の一般的教示に従って構築することができる。典型的には、本発明に記載の構造は、目的の遺伝子によるプロモーター、およびたとえばGFPまたはルシフェラーゼのような目的のレポーター構造をコードするコード配列を含む。GFPおよびルシフェラーゼをコードするベクターは本分野で既知でありおよび市販されている。
【0248】
遺伝子の発現の検出に基づく細胞の選別は、上記に例示された通り、本分野で既知である任意の技術によって実施することができる。たとえば、細胞はフローサイトメトリーまたはFACSによって選別することができる。全般的参考には、『フローサイトメトリーおよびセルソーティング:実験の手引き』(Flow Cytometry and Cell Sorting: A Laboratory Manual)(1992)A.ラドブルーフ(Radbruch)(編)、スプリンガー・ラボラトリー(Springer Laboratory)、ニューヨーク、を参照。
【0249】
フローサイトメトリーは、細胞を研究および精製するための強力な方法である。フローサイトメトリーは特に免疫学および細胞生物学で幅広い用途を見出している:しかし、FACSの能力は生物学の他の多数の分野で応用することができる。頭文字のF.A.C.S.はFluorescence Activated Cell Sorting(蛍光活性化細胞選別)を表し、および「フローサイトメトリー」と相互に交換可能に用いられる。FACSの原理は、液体の細流中にある個々の細胞に一種類以上のレーザー光線を通過させると、光の散乱が起こり蛍光色素がさまざまな周波数で光を放出することである。光電子増倍管(PMT)が光を電気シグナルに変換し、電気シグナルはソフトウェアで処理されて、当該細胞についてのデータを生成する。明確な特徴を持つ細胞の部分集団を特定し、および懸濁液から非常に高純度で(~100%)自動的に選別することができる。
【0250】
FACSを用いて、ポリペプチドをコードする組み換えDNAをトランスフェクションした細胞における遺伝子発現を測定することができる。これは、タンパク質産物の標識化によって直接的に、または、当該構造中のレポーター遺伝子を用いることによって間接的に達成することができる。レポーター遺伝子の例はβ−ガラクトシダーゼおよび緑色蛍光タンパク質(GFP)である。β−ガラクトシダーゼ活性はFACSによって、フルオレセインジガラクトシド(FDG)といった蛍光基質を用いて検出することができる。FDGは低張ショックによって細胞に導入され、および酵素によって切断されて蛍光産物を生じ、蛍光産物は細胞内に捕捉される。1つの酵素がしたがって大量の蛍光産物を生じることができる。GFP構造を発現している細胞は基質の添加無しで蛍光を発する。異なる励起周波数を有するが同一のチャンネルで蛍光を発するGFPの突然変異体が入手可能である。2レーザーFACS装置では、異なるレーザーで励起される細胞を識別することができ、およびしたがって2種類のトランスフェクションを同時に測定することができる。
【0251】
細胞選別の別の方法もまた使用することができる。たとえば、本発明は、mRNAと相補的な核酸プローブの使用を含む。そのようなプローブを用いて、ポリペプチドを発現している細胞を個別に同定することができ、そのため細胞をその後に手作業でまたはFACS選別を用いて選別することができる。mRNAと相補的な核酸プローブは、上記に示す教示に従って、前出のサムブルック(Sambrook)他(1989)によって記載された一般的手順を用いて調製することができる。
【0252】
好ましい一実施形態では、本発明は、mRNAと相補的な、FACS細胞選別に使用することができる蛍光団と結合した、アンチセンス核酸分子の使用を含む。
【0253】
遺伝子発現および同一性についての情報を、いわゆる遺伝子チップアレイまたは高密度DNAアレイを用いて得るための方法もまた記載されている(チー(Chee)) 。これらの高密度アレイは、診断および予測診断目的に特に有用である。In Vivo発現技術(IVET)もまた利用することができる(カミリ(Camilli))。IVETは、実験室培養と比較して、たとえば治療または疾患の際にアップレギュレートされる遺伝子を特定する。
【0254】
タンパク質測定法を用いることの利点は、Notch活性化を直接測定できることである。ポリペプチドのレベルを測定するために用いることができる測定法技術は当業者によく知られている。そのような測定法は、ラジオイムノアッセイ、競合結合測定法、ウェスタンブロット分析、抗体サンドイッチ測定法、抗体検出、FACS、およびELISA測定法を含む。
【0255】
上述の通り、Notchシグナル伝達の調節因子はまた、Notch、Notchリガンド、またはNotchシグナル伝達経路の発現または相互作用を調節するように処理された免疫細胞であることができる。そのような細胞は、たとえば、本文が参照により本開示に含まれるロランティス社(Lorantis Ltd)の名義の国際公開第00/36089号パンフレットに記載される通り、容易に調製することができる。
【0256】
免疫系の細胞
抗原提示細胞
状況によっては、抗原提示細胞(APC)は「専門の」抗原提示細胞であることができ、または抗原をT細胞へ提示するように誘導されうる別の細胞であることができる。代替的に、培養条件下で分化するかまたは活性化されてAPCを生じるAPC前駆細胞を用いることができる。本発明のex vivoの方法に用いられるAPCは、典型的には患者の体内で見出される腫瘍または末梢血から単離される。好ましくはAPCまたは前駆細胞はヒト起源である。しかし、適当な核酸配列を同定および試験するための予備in vitroスクリーニング手続にAPCが用いられる場合は、たとえば健康な被験者といった任意の適当な起源に由来するAPCを用いることができる。
【0257】
APCは、表面上にMHC分子(クラスIまたはII)を発現するように活性化されたかまたはトランスフェクションによって操作された、指状嵌入(interdigitating)DCまたは濾胞DCといった樹状細胞(DC)、ランゲルハンス細胞、PBMC、マクロファージ、Bリンパ球、または他の、上皮細胞、線維芽細胞または内皮細胞のような細胞型を含む。APCの前駆細胞は、CD34+細胞、単球、線維芽細胞および内皮細胞を含む。APCまたは前駆細胞は、培養条件によって修飾することができ、または、たとえば抗原提示に関与するタンパク質をコードする1つ以上の遺伝子および/または免疫増強作用を促進する選択されたサイトカイン遺伝子(たとえばIL−2、IL−12、IFN−γ、TNF−α、IL−18など)との組み合わせのトランスフェクションによって、遺伝子操作することができる。そのようなタンパク質は、MHC分子(クラスIまたはクラスII)、CD80、CD86、またはCD40を含む。非常に好ましくはDCまたはDC前駆細胞がAPCの起源として含まれる。
【0258】
樹状細胞(DC)はいくつかの方法で単離/調製することができ、たとえばDCは末梢血から直接精製することができ、または、たとえばGM−CSFを用いた処理による末梢血への移行後に、または骨髄から直接、CD34+前駆細胞から発生させることができる。末梢血から、接着性の前駆細胞をGM−CSF/IL−4混合物で処理することができ(イナバ(Inaba)K,他(1992) J. Exp. Med. 175:1157−1167 (Inaba))、または骨髄から、非接着性のCD34+細胞をGM−CSFおよびTNF−aで処理することができる(コー(Caux)C,他(1992) Nature 360:258−261 (Caux))。DCはまた、サルスト(Sallusto)およびランザベキア(Lanzavecchia)の方法(Sallusto F and Lanzavecchia A (1994) J. Exp. Med. 179:1109−1118)と同様に、精製末梢血単核球(PBMC)を用いておよび接着性細胞をGM−CSFおよびIL−4で2時間処理して、ヒト提供者の末梢血から定型的に調製することができる。必要に応じて、DCから磁気ビーズを用いてCD19+B細胞およびCD3+、CD2+T細胞を除去することができる(コフィン(Coffin)RS,他(1998) Gene Therapy 5:718−722 (Coffin))。培養条件は、GM−CSFまたはIL−4のような他のサイトカインを、樹状細胞または他の抗原提示細胞の維持および/または活性のために含むことができる。
【0259】
このように、ここで用いられる「抗原提示細胞など」の語は、APCに限られないことが意図されると理解される。当業者は、T細胞集団に提示することができる任意の媒介物を用いることができることを理解し、便宜上APCの語がこれらすべてをいうのに用いられる。上記に示す通り、適当なAPCの好ましい例は、樹状細胞、L細胞、ハイブリドーマ、線維芽細胞、リンパ腫、マクロファージ、B細胞または脂質膜のような合成APCを含む。
【0260】
T細胞
状況によっては、健常被験者といった任意の適当な起源由来のT細胞を、用いることができ、および血液または他の起源(たとえばリンパ節、脾臓、または骨髄)から得ることができる。T細胞は随意的に、標準的手順によって濃縮するかまたは精製することができる。T細胞は、同一のまたは別の個体から得られた、他の免疫細胞と組み合わせて用いることができる。代替的に、全血を、または白血球が濃縮された血液または精製白血球を、T細胞および他の細胞型の起源として用いることができる。ヘルパーT細胞(CD4+)を用いることが特に好ましい。代替的に、CD8+細胞のような他のT細胞を用いることができる。また、T細胞ハイブリドーマのような細胞株を用いることも便利である。
【0261】
APCおよびT細胞への核酸配列の導入
ex−vivo用途のためには、上記の通りのT細胞およびAPCはDMEMまたは他の定義された培地といった適切な培地中で、随意的にウシ胎仔血清の存在下で、培養される。
【0262】
T細胞および/またはAPC中でポリペプチドの発現を可能にする条件下で、ポリペプチドをコードする核酸構造/ウイルスベクターを細胞へ導入することによって、ポリペプチド物質をT細胞および/またはAPCへin vivoまたはex−vivoで投与することができる。同様に、アンチセンス構造をコードする核酸構造を、トランスフェクション、ウイルス感染またはウイルス形質導入によってT細胞および/またはAPCへ導入することができる。
【0263】
好ましい一実施形態では、Notchリガンド発現および/または活性のエンハンサーをコードするヌクレオチド配列は、プロモーター/エンハンサーおよび他の発現調節シグナルを含む調節配列に、調節可能に結合している。
【0264】
プロモーターは典型的には、哺乳類細胞中で機能するプロモーターから選択されるが、原核プロモーターおよび、他の真核細胞中で機能するプロモーターを用いることができる。プロモーターは典型的にはウイルス遺伝子または真核遺伝子のプロモーター配列に由来する。たとえば、発現が起こる細胞のゲノムに由来するプロモーターであることができる。真核プロモーターについては、遍在的な形で(a−アクチン、b−アクチン、チューブリンのプロモーターのように)または、代替的に、組織特異的な形で(ピルビン酸キナーゼ遺伝子のプロモーターのように)機能するプロモーターであることができる。リンパ球、樹状細胞、皮膚、脳細胞、および眼内の上皮細胞に特異的である、組織特異的プロモーターが特に好ましく、たとえばそれぞれCD2、CD11c、keratin14、Wnt−1およびロドプシンプロモーターである。好ましくは上皮細胞プロモーターSPCが用いられる。また、たとえばステロイドホルモン受容体に結合するプロモーターのように、特定の刺激に反応するプロモーターであることができる。たとえばモロニーマウス白血病ウイルス長末端反復(MMLV LTR)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーターまたはヒトサイトメガロウイルス(CMV)IEプロモーターといった、ウイルスプロモーターもまた用いることができる。
【0265】
異種遺伝子の発現のレベルを、細胞の生涯の間に調節することができるように、プロモーターは誘導性であることもまた有利でありうる。誘導性とは、当該プロモーターを用いて得られた発現のレベルを調節することができることを意味する。
【0266】
上記のプロモーターのうち任意のものを、別の調節配列、たとえばエンハンサー配列の付加によって修飾することができる。二つ以上の異なるプロモーター由来の配列要素を含むキメラプロモーターもまた用いることができる。
【0267】
代替的に(または加えて)、調節配列は、目的の遺伝子が本発明で有用な細胞でだけ発現されるように、細胞特異的であることができる。そのような細胞は、たとえば、APCおよびT細胞を含む。
【0268】
Notchリガンド発現をアップレギュレートすることができる核酸配列を含む、結果として得られるT細胞および/またはAPCが現在使用可能な状態である。必要に応じて、細胞の少量の一部をNotchリガンド発現のアップレギュレーションについて上述の通り試験することができる。その細胞は患者への投与のために準備することができ、またはT細胞と共にin vitro(ex vivo)でインキュベートすることができる。
【0269】
免疫反応および寛容化の測定法
上に記載された測定法(「測定法」を参照)のうち任意のものを、免疫細胞における反応性低下、免疫反応の変化および/または寛容化を測定または検出し、および、免疫反応の抑制および増大を臨床用途での使用のために検出するのに用いることができる
【0270】
免疫細胞活性は、当業者に既知である任意の適当な方法によって監視することができる。たとえば、細胞傷害性活性を監視することができる。ナチュラルキラー(NK)細胞は活性化後に細胞傷害性活性の増大を示す。したがって細胞傷害性の何らかの低下または安定化は、反応性の低下の徴候となる。
【0271】
一旦活性化されると、白血球はさまざまな新しい細胞表面抗原を発現する。NK細胞は、たとえば、トランスフェリン受容体、HLA−DRおよびCD25 IL−2受容体を活性化後に発現する。反応性低下はしたがってこれらの抗原の発現を監視することによって測定することができる。
【0272】
ハラ(Hara)他『ヒトT細胞活性化:III,12−0−テトラデカノイルホルボール−13−酢酸、マイトジェンおよび抗原によるリン酸化28kD/32kDジスルフィド結合初期活性化抗原(EA−1)の迅速誘導』(Human T−cell Activation:III,Rapid Induction of a Phosphorylated 28 kD/32kD Disulfide linked Early Activation Antigen (EA−1) by 12−0−tetradecanoyl Phorbol−13−Acetate,Mitogens and Antigens),J.Exp.Med.,164;1988(1986)、およびコスリッヒ(Cosulich)他『T細胞活性化の初期段階に関与する抗原(MLR3)の機能的特徴づけ』(Functional Characterization of an Antigen (MLR3) Involved in an Early Step of T−Cell Activation),PNAS,84:4205(1987)は、活性化の直後にT細胞上に発現される細胞表面抗原を記載している。これらの抗原、それぞれEA−1およびMLR3は、28kDおよび32kDの主要成分を有する糖タンパク質である。EA−1およびMLR3はHLAクラスII抗原ではなく、およびMLR3 MabはIL−1結合を遮断する。これらの抗原は、活性化されたT細胞上に18時間以内に出現し、したがって免疫細胞反応性を監視するために用いることができる。
【0273】
加えて、白血球反応性は、参照により本開示に含まれる欧州特許第0325489号明細書に記載の方法で監視することができる。要約すると、これは、ATCC番号HB−9627で表されるハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体に認識される細胞性抗原と相互作用するモノクローナル抗体(「抗Leu23」)を用いて達成される。
【0274】
抗Leu23は、活性化されたおよび抗原刺激された白血球上の細胞表面抗原を認識する。活性化NK細胞上では、その抗原Leu23は活性化後4時間以内に発現され、および活性化後72時間まで発現され続ける。Leu23は、少なくとも2個のN結合型糖鎖を有する24kDサブユニットから構成されるジスルフィド結合ホモ二量体である。
【0275】
Leu23のNK細胞上での出現が細胞傷害性の発生と相関するため、およびLeu23のある種のT細胞上での出現がT細胞抗原受容体複合体の刺激と相関するため、抗Leu23は白血球の反応性を監視するのに有用である。
【0276】
免疫細胞反応性の監視のための技術のさらなる詳細は、参照により本開示に含まれる:『ナチュラルキラー細胞』(The Natural Killer Cell)ルイス(Lewis)C.E.およびJ.O’D.マクジー(McGee)1992.オックスフォード大学出版会(Oxford University Press); トリンチエリ(Trinchieri)G.『ナチュラルキラー細胞の生物学』(Biology of Natural Killer Cells) Adv.Immunol.1989 vol 47 pp187−376;『免疫反応遺伝子ハンドブック』(Handbook of Immune Response Genes)の7章『免疫反応のサイトカイン』(Cytokines of the Immune Response)マク(Mak)T.W.およびJ.J.L.シマード(Simard)1998に見出すことができる。
【0277】
初回抗原刺激を受けたAPCおよびリンパ球の調製
本発明の一態様によると免疫細胞を用いて抗原またはアレルゲンを提示することができ、および/または免疫細胞を処理してNotch、NotchリガンドまたはNotchシグナル伝達経路の発現または相互作用を調節することができる。したがって、たとえば、抗原提示細胞(APC)を、DMEMまたは他の明確な培地のような適当な培地中で、随意的にウシ胎仔血清といった血清の存在下で、培養することができる。最適サイトカイン濃度は滴定によって決定することができる。1つ以上のNotchシグナル伝達の調節因子およびインターフェロンを、その後、典型的には目的の抗原(または抗原決定基)と共に培地に添加する。抗原は、当該物質の前、後、またはそれと実質的に同時に、添加することができる。細胞は典型的には、当該物質および抗原と共に、少なくとも1時間、好ましくは少なくとも3時間、好ましくは少なくとも12または少なくとも24時間、約37℃にてインキュベートする。必要に応じて、細胞の少量を、標的遺伝子発現の調節について上記の通り試験することができる。代替的に、国際公開第98/20142号パンフレットに記載の通り、細胞活性はT細胞活性化の阻害によって、表面マーカー、サイトカイン分泌または増殖を監視することで測定することができる。
【0278】
上で論述した通り、APC中でポリペプチドの発現を可能にする条件下で、ポリペプチドをコードする核酸構造/ウイルスベクターを細胞へ導入することによって、ポリペプチド物質をAPCへ投与することができる。同様に、抗原をコードする核酸構造を、トランスフェクション、ウイルス感染またはウイルス形質導入によってAPCへ導入することができる。結果として生じる、Notchシグナル伝達のレベル上昇を示すAPCが現在使用可能な状態である。
【0279】
下記の技術はT細胞に関して説明されているが、しかしB細胞にも等しく適用可能である。使用した技術は、T細胞が一般的にAPCと共培養されること以外は、APC単独について記載されたものと本質的に同一である。しかし、初回抗原刺激を受けたAPCをまず作製し、次いでそれをT細胞とインキュベートするのが好ましい可能性がある。たとえば、初回抗原刺激を受けたAPCが一旦作製されると、それを沈澱させPBSで洗浄してから新しい培地に再懸濁することができる。このことは、たとえば、T細胞をAPCに用いた物質とは異なる物質で処理したい場合、T細胞がAPCに用いた別の物質と接触させられることがないという利点を有する。代替的に、T細胞をNotchシグナル伝達を調節する第一の物質(または物質の組)とインキュベートし、洗浄し、再懸濁し、次いでAPCを調節するために用いられた物質およびT細胞を調節するために用いられた物質の両方の非存在下で、初回抗原刺激を受けたAPCとインキュベートすることができる。代替的に、抗TCR抗体(たとえば抗CD3)といったAPC代替物を用いて、共刺激分子に対する抗体(たとえば抗CD28)と共にまたはそれ無しで、T細胞をAPCの非存在下で培養しおよび初回抗原刺激することができ、または代替的にT細胞をMHC−ペプチド複合体(たとえば四量体)を用いて活性化することができる。
【0280】
インキュベートは典型的には少なくとも1時間、好ましくは少なくとも3または6または12または24時間またはより長時間、適切な培地中で37℃で行う。免疫寛容の誘導といった免疫反応の変化は、続いてT細胞に抗原を負荷し、およびAPCに曝露されていない対照細胞と比較してIL−2産生を測定することによって測定することができる。
【0281】
この方法で初回抗原刺激を受けたT細胞またはB細胞は、本発明にしたがって、他のT細胞またはB細胞において免疫寛容を誘導するのに用いることができる。
【0282】
治療可能な症状
好ましくは免疫系の調節はT細胞活性の調節による。特に、本発明はT細胞に媒介され
る疾患および感染の治療に用いることができる。T細胞によって媒介されると説明されう
る疾患状態または感染状態は、喘息、アレルギー、移植片拒絶、自己免疫、腫瘍に誘発さ
れるT細胞系の異常、および、マラリア原虫(Plasmodium)の種、ミクロフィ
ラリア、蠕虫、マイコバクテリア、HIV、サイトメガロウイルス、シュードモナス、ト
キソプラズマ、エキノコッカス、B型インフルエンザ(ヘモフィルス・インフルエンザB
型)、麻疹、C型肝炎または回虫によって引き起こされるものといった感染症のいずれか
1つ以上を含むがこれらに限定されない。このように、治療または予防されうる、T細胞
によって媒介される特定の症状は、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、および糖尿病を含
む。本発明はまた、臓器移植術または骨髄移植術に用いることができる。
【0283】
上記に示す通り、本発明は、自己免疫疾患といった免疫疾患、または、同種異系移植片拒絶といった移植片拒絶の治療に有用である。
【0284】
たとえば、本発明は臓器移植(たとえば腎臓、心臓、肺、肝臓または膵臓移植)、組織移植(たとえば皮膚移植片)または細胞移植(たとえば骨髄移植または輸血)の処置に用いることができる。
【0285】
最も一般的な種類の臓器および組織移植の短い概観を下記に示す。
【0286】
1.腎臓移植:
腎臓は最も一般的に移植されている臓器である。腎臓は死亡者および生きたドナーの両方が提供することができ、および腎臓移植は数々の臨床徴候(糖尿病、さまざまな型の腎炎および腎不全を含む)を治療するのに用いることができる。腎臓移植術のための外科的手順は相対的に単純である。しかし、血液型および組織適合型を一致させることが、移植片拒絶を避けるために望ましい。最初の移植を拒絶後に多くの患者が「感作」されうるため、移植片が受容されることは実際に重要である。感作の結果として、腎臓抗原に対する抗体の形成および細胞機構の活性化が生じる。したがって、最初の移植片と共通する抗原を含むその後の移植片はどれも拒絶される可能性が高い。結果として、多数の腎臓移植患者はその後の生涯にわたって何らかの形の免疫抑制治療を受け続けなければならず、感染および代謝性骨疾患といった合併症の原因となる。
【0287】
2.心臓移植術
心臓移植術は非常に複雑で高リスクの手続である。ドナー心臓は、レシピエントに入れられた際に拍動を始めるような方法で維持しなければならず、したがって、限られた期間、非常に限定された条件下でのみ生存可能に保たれる。ドナー心臓はまた、脳死ドナーからのみ取ることができる。心臓移植を用いて、さまざまな型の心臓疾患および/または損傷を治療することができる。HLA適合は明らかに望ましいが、心臓の供給が限られていることおよび手続の緊急性のために、しばしば不可能である。
【0288】
3.肺移植術
肺移植術は、(単独でまたは心臓移植術と組み合わせて)嚢胞性線維症および肺への急性損傷(たとえば煙の吸入によって生じた)といった疾患の治療に用いられる。移植に用いられる肺は通常は脳死ドナーからしか回収することができない。
【0289】
4.膵臓移植術
膵臓移植術は主に、膵臓中のインシュリンを産生する膵島細胞の機能異常によって引き起こされる疾患である糖尿病を治療するために用いられる。移植術用の臓器は、死亡者からしか回収できないが、調節された方法でインシュリンを産生するのに必要な機能を再生するためには膵臓全体の移植術は必要ないことに注意すべきである。実際、膵島細胞の移植術だけで十分でありうる。腎不全が進行型糖尿病の高頻度な合併症であるため、腎臓および膵臓の移植はしばしば同時に実施される。
【0290】
5.皮膚移植
大部分の皮膚移植は自家組織を用いて行われる。しかし、重度の火傷(たとえば)の場合には、外来組織の移植片が必要である可能性がある(が、移植片は宿主上では増殖せず、一定期間で交換しなければならないため、これらの移植片は一般的に生物学的包帯剤として用いられることに注意すべきである)。真の同種異系皮膚移植の場合には、拒絶は免疫抑制療法の使用によって防ぐことができる。しかし、これは感染のより高いリスクに結びつき、したがって火傷患者の主な障害である。
【0291】
6.肝臓移植術
肝臓移植は、肝炎といったウイルス疾患によって、または有害化学物質への曝露によって(たとえば慢性アルコール症によって)引き起こされた臓器障害を治療するために用いられる。肝臓移植はまた、先天性異常を治療するために用いられる。肝臓は大きくおよび複雑な臓器であり、これは移植術に最初は技術的な問題があったことを意味する。しかし、大部分の移植(65%)は現在1年以上生存し、および、一人のドナーに由来する肝臓を分割して二人のレシピエントに与えることができることが見出されている。肺移植患者による移植片拒絶の率は相対的に低いが、ドナー臓器内の白血球は抗血液型抗体と共に、血液型不一致が存在する場合、レシピエント赤血球の抗体依存性溶血を媒介しうる。加えて、ドナーとレシピエントが血液型適合である場合でさえ、GVHDの顕在化が肝臓移植で起こっている。
【0292】
治療されうる疾患の例は、一般に自己免疫疾患と呼ばれる一群を含む。自己免疫疾患の範囲は、臓器特異的疾患(たとえば甲状腺炎、膵島炎、多発性硬化症、虹彩毛様体炎、ブドウ膜炎、精巣炎、肝炎、アジソン病、重症筋無力症)から、慢性関節リウマチまたはエリテマトーデスのような全身性疾患にわたる。他の疾患は、アレルギー反応のような免疫過敏性を含む。
【0293】
より詳細には:臓器特異的自己免疫疾患は、多発性硬化症、インシュリン依存性糖尿病、いくつかの型の貧血(再生不良性、溶血性)、自己免疫肝炎、甲状腺炎、膵島炎、虹彩毛様体炎、強膜炎、ブドウ膜炎、精巣炎、重症筋無力症、特発性血小板減少性紫斑病、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)を含む。
【0294】
全身性自己免疫疾患は:慢性関節リウマチ、若年性関節炎、強皮症および全身性硬化症、シェーグレン症候群、分類不能結合組織症候群、抗リン脂質症候群、さまざまな型の血管炎(結節性多発性動脈炎、アレルギー性肉芽腫性血管炎、ウェゲナー肉芽腫症、川崎病、過敏性血管炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、ベーチェット症候群、高安動脈炎、巨細胞性動脈炎、閉塞性血栓性血管炎)、エリテマトーデス、リウマチ性多発筋痛、本態性(混合)クリオグロブリン血症、尋常性乾癬および乾癬性関節炎、好酸球性または非好酸球性びまん性筋膜炎、多発性筋炎および他の特発性炎症性筋疾患、再発性脂肪織炎、再発性多発性軟骨炎、リンパ腫様肉芽腫症、結節性紅斑、強直性脊椎炎、ライター症候群、さまざまな型の炎症性皮膚炎を含む。
【0295】
疾患のより広範囲のリストは:慢性関節リウマチを含む関節炎を含む不必要な免疫反応および炎症、過敏性、アレルギー反応、喘息、全身性エリテマトーデス、コラーゲン疾患および他の自己免疫疾患に伴う炎症、アテローム性硬化症、動脈硬化症、アテローム硬化性心疾患、再潅流傷害、心停止、心筋梗塞、血管炎症性疾患、呼吸窮迫症候群または他の心肺疾患に伴う炎症、消化性潰瘍、潰瘍性大腸炎および消化管の他の疾患に伴う炎症、肝線維症、肝硬変または他の肝疾患、甲状腺炎または他の腺疾患、糸球体腎炎または他の腎および泌尿器疾患、耳炎または他の耳鼻咽喉疾患、皮膚炎または他の皮膚疾患、歯周疾患または他の歯科疾患、精巣炎または精巣・精巣上体炎、不妊症、精巣外傷または他の免疫関連精巣疾患、胎盤機能障害、胎盤機能不全、習慣流産、子癇、子癇前症および他の免疫および/または炎症性関連婦人科疾患、後部ブドウ膜、中間部ブドウ膜炎、前部ブドウ膜炎、結膜炎、脈絡網膜炎、ブドウ膜強膜炎、視神経炎、眼内炎症、たとえば網膜炎または嚢胞様黄斑浮腫、交感性眼炎、強膜炎、網膜色素変性症、変性眼底疾患の免疫および炎症性要素、眼外傷の炎症性要素、感染によって引き起こされる眼炎症、増殖性硝子体網膜症、急性虚血性視神経症、たとえば緑内障濾過手術後の過度の瘢痕、眼インプラントに対する免疫および/または炎症反応、および他の免疫および炎症性関連眼疾患、自己免疫疾患または症状に伴う炎症、または、中枢神経系(CNS)または任意の他の臓器の両方で、免疫および/または炎症抑制が有益である疾患、パーキンソン病、パーキンソン病の治療に由来する合併症および/または副作用、AIDS関連痴呆症候群、HIV関連脳症、デビック病、シデナム舞踏病、アルツハイマー病および他の変性疾患、症状、またはCNS疾患、脳卒中の炎症性要素、ポリオ後症候群、精神 疾患の免疫 および 炎症性 要素、脊髄炎、脳炎、亜急性硬化性全脳炎、脳脊髄炎、急性 神経障害、亜急性 神経障害、慢性 神経障害、ギラン・バレー症候群、シデナム舞踏病(chora)、重症筋無力症、特発性頭蓋内圧亢進症、ダウン症候群、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、CNS圧迫またはCNS外傷またはCNS感染の炎症性要素、筋萎縮症および筋ジストロフィーの炎症性要素、および、中枢および末梢神経系の免疫および炎症性関連疾患、症状または疾患、外傷後炎症、敗血性ショック、感染症、手術または臓器の炎症性合併症または副作用、遺伝子治療のたとえばウイルスキャリヤーの感染による炎症性および/または免疫合併症および副作用、または体液性および/または細胞性免疫反応を抑制または阻害するための、AIDSに関連する炎症、単球または白血球増殖性疾患、たとえば白血病を、単球またはリンパ球の量を減らすことによって治療または改善すること、角膜、骨髄、臓器、レンズ、ペースメーカー、天然または人工皮膚組織といった天然または人工細胞、組織、および臓器の移植術の場合に移植片拒絶の防止および/または治療のため、を含む。
【0296】
本発明はまたがん治療法において有用である。本発明は特に、腺がん、たとえば小細胞肺がん、および腎臓、子宮、前立腺(prostrate)、膀胱、卵巣、大腸および乳房のがんに関して有用である。
【0297】
医薬組成物
好ましくは本発明の活性物質(Notchシグナル伝達の調節因子およびインターフェロン、インターフェロンをコードするポリヌクレオチドおよび/またはインターフェロン誘導因子)は医薬組成物の形で投与される。当該医薬組成物は、ヒトおよび動物医学においてヒトまたは動物用途向けであることができ、および、1つ以上の活性物質に加えて、典型的には任意の1つ以上の、医薬品として許容される希釈剤、キャリヤー、または賦形剤を含む。治療的用途のための許容されるキャリヤーまたは希釈剤は医薬分野でよく知られており、たとえば、『レミントンの医薬科学』(Remington’s Pharmaceutical Sciences)マック・パブリッシング社(Mack Publishing Co.)(A.R.ジェナロ(Gennaro)編、1985)に記載されている。医薬キャリヤー、賦形剤または希釈剤の選択は、予定の投与経路および標準的な医薬実務に関して選ぶことができる。医薬組成物は、キャリヤー、賦形剤または希釈剤として、またはそれに加えて、任意の適当な結合剤、滑沢剤、懸濁剤、コーティング剤、可溶化剤を含むことができる。また、保存料、安定剤、色素および香料さえ、そのような医薬組成物中に提供することができる。保存料の例は、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、およびp−ヒドロキシ安息香酸のエステルを含む。抗酸化剤および懸濁剤もまた用いることができる。
【0298】
投与
典型的には、医師は個別の対象について最適となる実際の投与量を決定し、および投与量はその特定の患者の年齢、体重、および反応によって変化する。下記の投与量は、平均的な例の典型である。もちろん、より高いまたは低い用量範囲に値する個別の場合がありうる。
【0299】
一実施形態では、本発明に用いられる治療剤を患者に直接in vivoで投与することができる。代替的に、または加えて、当該治療剤を細胞(たとえばT細胞および/またはAPCまたは幹細胞または組織細胞)にex vivoの方法で投与することができる。たとえば、T細胞またはAPCといった白血球を、患者またはドナーから既知の方法で得て、本発明の方法でex vivoで処理/インキュベートし、その後、患者に投与することができる。
【0300】
一般的に、治療的に有効な一日量は、たとえば0.01ないし500mg/kg、たとえば0.01ないし50mg/治療される対象の体重kg、たとえば0.1ないし20mg/kgの範囲に及びうる。本発明の物質はまた、たとえば0.001〜10mg/kg/時間の範囲に及ぶ可能性が高い用量で、静脈輸液によって投与することができる。
【0301】
熟練した医師は、任意の特定の患者について、たとえば、その患者の年齢、体重、および症状に応じて、最適な投与経路および投与量を容易に決定することができる。好ましくは医薬組成物は単位用量剤形である。
【0302】
本発明の物質は、たとえば、経口、直腸内、経鼻、局所(皮内、経皮、エアロゾル、口内および舌下を含む)、膣内および非経口(皮下、筋肉内、静脈内および皮内を含む)投与経路を含むがそれに限定されない、任意の適当な手段によって投与することができる。
【0303】
適切には活性物質は、上記の「医薬組成物」の見出しの下に記載の通りの、医薬品として許容されるキャリヤーまたは希釈剤と組み合わせて投与される。医薬品として許容されるキャリヤーまたは希釈剤は、たとえば、滅菌等張生理食塩水溶液、またはリン酸緩衝生理食塩水のような他の等張溶液であることができる。本発明の物質は、任意の適当な結合剤、滑沢剤、懸濁剤、コーティング剤、可溶化剤と適切に混合することができる。
【0304】
一実施形態では、化合物を経口的に活性な形に処方することが望ましい可能性がある。このように、一部の用途については、活性物質は、デンプンまたは乳糖といった賦形剤を含む錠剤の形で、または、カプセル剤または胚珠状で単独でまたは賦形剤と混合して、または、香料または着色料を含むエリキシル剤、液剤または懸濁剤の形で、経口投与することができる。本物質を含む錠剤またはカプセル剤のような用量は、必要に応じて一度に1つずつまたは2個以上投与することができる。活性物質を徐放性処方で投与することもまた可能である。
【0305】
代替的に、または加えて、活性物質は吸入によって、経鼻的にまたはエアロゾルの形で、または坐剤またはペッサリーの形で投与することができ、または活性物質はローション、液剤、クリーム、軟膏、または散布剤の形で局所的に投与することができる。経皮投与の1つの選択手段は、皮膚パッチを用いることである。たとえば、活性物質はポリエチレングリコールまたは液体パラフィンの水系エマルジョンから成るクリームに取り入れることができ、たとえば重量で1ないし10%の濃度で、白ロウまたは白色軟質パラフィン基剤と共に必要に応じて安定剤および保存料から成る軟膏に取り入れることができる。
【0306】
ポリヌクレオチドおよびタンパク質/ポリペプチドといった活性物質もまた、ウイルス技術または非ウイルス技術によって投与することができる。ウイルスデリバリー機構は、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、およびバキュロウイルスベクターを含むがそれらに限定されない。非ウイルスデリバリー機構は、脂質媒介トランスフェクション、リポソーム、免疫リポソーム、リポフェクチン、陽イオン性界面両親媒性化合物(CFAs)およびその組み合わせを含む。そのようなデリバリー機構のための経路は、粘膜、経鼻、経口、非経口、消化管、局所、または舌下経路を含むがそれらに限定されない。活性物質はまた、表皮または真皮またはその他の粘膜表面のような部位へのデリバリーのための粒子の弾丸デリバリー(ballistic delivery)といった、針を用いない系によって投与することができる。
【0307】
活性物質はまた、非経口的に、たとえば海綿体内に、静脈内に、筋肉内にまたは皮下に注射することができる。
【0308】
非経口投与のためには、活性物質はたとえば、溶液を血液と等張にするための十分な塩または単糖といった他の物質を含みうる、無菌水溶液の形で用いることができる。
【0309】
口内または舌下投与のためには、物質はたとえば、従来の方法で処方することができる錠剤またはトローチ剤の形で投与することができる。
【0310】
対象(たとえば患者)への経口、非経口、口内および舌下投与のためには、活性物質およびその医薬品として許容される塩および溶媒和物の投与量レベルは、典型的には10ないし500mgでありうる(一回または分割用量で)。このように、および例として、錠剤またはカプセル剤は、必要に応じて一度に1つずつまたは2つ以上の投与について、5ないし100mgの活性物質を含みうる。上記に示す通り、医師は個別の患者について最適となる実際の投与量を決定し、およびその投与量はその特定の患者の年齢、体重、および反応によって変化する。上記の投与量は平均的な例の典型である一方、もちろん、より高いまたは低い用量範囲に値する個別の場合がありえ、およびそのような用量範囲は本発明の範囲内であることに注意する。
【0311】
当業者は任意の特定の患者について、たとえば、その患者の年齢、体重、および症状に応じて、最適な投与経路および投与量を容易に決定することができるため、記載の投与経路および投与量は単に指針として意図される。
【0312】
ここで用いられる治療または療法の語は、診断および予防用途を包含すると考える。
【0313】
本発明の治療は、ヒトの用途および獣医学用途の両方を含む。
【0314】
本発明の活性物質は、たとえば、免疫抑制剤、ステロイドまたは抗がん剤のような、他の活性物質と共に投与することができる。
【0315】
ex−vivoで処理される場合、本発明の修飾細胞は好ましくは患者のリンパ節への直接注射によって宿主へ投与される。典型的には104ないし108個の処理細胞、好ましくは105ないし107個の細胞、より好ましくは約106個の細胞が患者に投与される。好ましくは、細胞は濃縮された細胞集団から採取される。
【0316】
ここで用いられる「濃縮された」の語は、本発明の細胞集団に用いられるとき、天然に共存する他の細胞がより少ない、細胞のより均一な集団をいう。濃縮された細胞の集団は、本分野で既知であるいくつかの方法によって達成することができる。たとえば、T細胞の濃縮された集団は、T細胞上だけに見出される決定基に特異的なモノクローナル抗体を用いた免疫アフィニティクロマトグラフィーを用いて得ることができる。
【0317】
濃縮された集団はまた、混合細胞懸濁液から、ポジティブ選択(目的の細胞だけを回収する)またはネガティブ選択(望ましくない細胞を除去する)によって得ることができる。特異的な細胞をアフィニティ材料上に捕捉するための技術は本分野でよく知られている(ウィグゼル(Wigzel)他,J.Exp.Med.,128:23,1969;メイジ(Mage)他,J.Imnmunol.Meth.,15:47,1977;ウィソッキ(Wysocki)他,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,75:2844,1978;シュレンプ・デッカー(Schrempf−Decker)他,J.Immunol Meth.,32:285,1980;ミュラー・ジーブルク(Muller−Sieburg)他,Cell,44:653,1986)。
【0318】
成熟分化細胞に特異的な抗原に対するモノクローナル抗体が、望ましくない細胞を除去するさまざまなネガティブ選択法、たとえば、T細胞または悪性細胞をそれぞれ同種異系または自家骨髄移植片から除去するために用いられている(ジー(Gee)他,J.N.C.I.80:154,1988)。モノクローナル抗体および免疫磁気マイクロスフィアを用いたネガティブ選択によるヒト造血細胞の精製は、複数のモノクローナル抗体を用いて達成することができる(グリフィン(Griffin)他,Blood,63:904,1984)。
【0319】
細胞の分離のための手順は、抗体被覆磁気ビーズを用いる磁気分離、アフィニティクロマトグラフィー、たとえば、補体およびサイトトキシンのような、モノクローナル抗体と結合させたかまたはモノクローナル抗体と組み合わせて用いる細胞毒性物質、および、たとえば、プレートのような固体マトリクスに結合させた抗体を用いる「パンニング(濃縮)」、または他の便利な技術を含むことができる。正確な分離を提供する技術は、蛍光活性化セルソーターを含み、これはたとえば、複数の色チャンネル、低角度および鈍光散乱検出チャンネル、インピーダンスチャンネル、などといったさまざまな程度の高度機能を持つことができる。
【0320】
併用治療
本発明の活性物質が、他の活性物質、抗原または抗原決定基と共に投与される併用治療もまた本発明の範囲内にある。
【0321】
「同時に」とは、活性物質が実質的に同一の時に、および好ましくは同一の処方中で一緒に、投与されることを意味する。
【0322】
「同時期に」とは、活性物質が近い時間に投与されることを意味し、たとえば、1つの物質がもう1つの物質の前または後約1分間以内から約1日以内に投与される。任意の同時期の時間が有用である。しかし、同時に投与されない場合、物質は約1分間以内から約8時間以内、および好ましくは約1ないし約4時間より短い間に投与される場合が多い。同時期に投与される場合、物質は好ましくは動物の同一の部位に投与される。「同一の部位」の語は正確な位置を含むが、しかし約0.5ないし約15センチメートル以内、好ましくは約0.5ないし約5センチメートル以内であることができる。
【0323】
ここで用いられる「別々に」の語は、物質が、間隔を置いて、たとえば約1日ないし数週間または数ヶ月の間隔で投与されることを意味する。活性物質はどちらの順序でも投与することができる。
【0324】
ここで用いられる「順次に」の語は、物質が順番に、たとえば分、時間、日、または週間隔で投与されることを意味する。必要に応じて、活性物質は規則的な反復サイクルで投与することができる。
【0325】
一実施形態では本発明に用いられる治療剤は、直接的に患者にin vivo投与することができることが理解される。代替的に、または加えて、当該物質はT細胞および/またはAPCのような免疫細胞にex vivoの方法で投与することができる。たとえば、T細胞またはAPCのような白血球を、患者またはドナーから既知の方法で入手し、ex vivoで本発明の方法で処理/インキュベートし、その後患者に投与することができる。加えて、投与経路の組み合わせを必要に応じて用いることができることが理解される。たとえば、適切な場合には、1成分(たとえばNotchシグナル伝達の調節因子)をex−vivoで投与することができ、他方をin vivoで投与することができ、また逆も可能である。
【0326】
好ましくは活性物質は局所的に、経鼻的にまたは非経口的に(たとえば皮下に、皮内にまたは筋肉内に)、好ましくは同一の場所に投与され、および1つ以上を徐放型で投与することができる。
【0327】
化学的架橋化
化学的に結合した(架橋した)配列を、個別のタンパク質配列から調製しおよび既知の化学結合技術を用いて結合させることができる。複合体は、たとえば従来の溶液相または固相ペプチド合成法を用いて組み立てることができ、末端アミノ基だけが脱保護された反応性形である完全に保護された前駆体が得られる。この官能基は次いで、たとえばNotchシグナル伝達調節のためのタンパク質またはその適当な反応性誘導体と直接反応させることができる。代替的に、このアミノ基を、カーゴ部分またはリンカーを有する、反応に適した別の官能基へ変換することができる。このように、たとえば無水コハク酸とのアミノ基の反応は選択的に指定可能なカルボキシル基を与え、一方、システイン誘導体を用いたさらなるペプチド鎖伸長は、選択的に指定可能なチオール基を結果として生じる。適当な選択的に指定可能な官能基がデリバリーベクター前駆体中に一旦得られると、Notchシグナル伝達調節のためのタンパク質またはその誘導体を、たとえばアミド、エステル、またはジスルフィド結合形成を介して結合することができる。利用することができる架橋化試薬は、たとえば、ミーンズ(Means),G.E.およびフィーニー(Feeney),R.E.,『タンパク質の化学修飾』(Chemical Modification of Proteins)ホールデン・デイ社(Holden−Day),1974,pp.39−43で論述されている。
【0328】
Notchシグナル伝達調節の調節因子は、必要に応じて、直接的に、または適切にはリンカー部分を介して間接的に、結合することができる。直接結合は、チオール、ヒドロキシ、カルボキシまたはアミノ基といった、調節因子(たとえばNotchシグナル伝達調節のためのタンパク質)上の任意の便利な官能基を通じて生じうる。しばしば好ましい可能性がある間接結合は、連結部分を介して起こる。適当な連結部分は、マレイミド安息香酸誘導体、マレイミドプロピオン酸誘導体およびスクシンイミド誘導体のような、二官能性および多官能性アルキル、アリール、アラルキルまたはペプチド部分、アルキル、アリールまたはアラルキルアルデヒド酸エステルおよび無水物、スルフヒドリルまたはカルボキシル基を含み、または、臭化または塩化シアヌル、カルボニルジイミダゾール、スクシンイミジルエステルまたはハロゲン化スルホンなどに由来することができる。
【0329】
修飾/ヒト化抗体
好ましくは、ヒト患者を治療するための用途向けの抗体は、キメラ抗体またはヒト化抗
体である。抗体「ヒト化」技術は本分野でよく知られている。これらの技術は典型的には
、抗体分子のポリペプチド鎖をコードするDNA配列を操作するための、組み換えDNA
技術の使用を含む。
【0330】
米国特許第5859205号明細書に記載された通り、モノクローナル抗体(Mab)をヒト化するための初期の方法は、1つの抗体の完全な可変領域を含む抗原結合部位が、別の抗体に由来する定常領域と結合している、キメラ抗体の産生を含んだ。そのようなキメラ化手順は欧州特許出願公開第0120694号明細書(セルテック社(Celltech Limited))、欧州特許出願公開第0125023号明細書((ジェネンテック社(Genentech Inc.)およびシティ・オブ・ホープ(City of Hope))、欧州特許出願公開第0 171496号明細書(Res.Dev.Corp.Japan)、欧州特許出願公開第0 173 494号明細書(スタンフォード大学)、および国際公開第86/01533号パンフレット(セルテック社)に記載されている。たとえば、国際公開第86/01533号パンフレットは、マウスMAb由来の可変領域およびヒト免疫グロブリン由来の定常領域を有する抗体分子を調製するための製法を開示する。
【0331】
欧州特許出願公開第0239400号明細書(ウィンター(Winter))に記載さ
れた別の手法では、マウスMAbの相補性決定領域(CDR)がヒト免疫グロブリンの可
変領域の骨格領域に、部位特異的突然変異誘発によって長オリゴヌクレオチドを用いて移
植される。そのようなCDR移植されたヒト化抗体は、ヒト化キメラ抗体よりも、それら
が含む非ヒトアミノ酸配列の大幅に低い比率の点から、抗−抗体反応を生じる可能性が大
幅に低い。リゾチームを認識するマウスMAbおよびヒトT細胞上の抗原を認識するラッ
トMAbがCDR移植によってヒト化された例が、ヴェルヘイエン(Verhoeyen
)他(Science,239,1534−1536,1988)およびリーヒマン(R
iechmann)他(Nature,332,323−324,1988)によってそ
れぞれ記載されている。ヒトT細胞上の抗原に対するCDR移植抗体の作製もまた、国際
公開第89/07452号パンフレット(英国医療審議会)に記載されている。
【0332】
国際公開第90/07861号パンフレットにおいて、クイーン(Queen)らはヒ
ト化免疫グロブリンを設計するための4つの基準を提示している。第一の基準は、ヒトア
クセプターとして、ヒト化する非ヒトドナー免疫グロブリンと著しく相同である特定のヒ
ト免疫グロブリンに由来する骨格を用いるか、または多数のヒト抗体に由来する共通骨格
を用いることである。第二の基準は、ヒト配列について骨格の特定残基でヒトアクセプタ
ー残基が稀であってドナー残基が典型的である場合は、アクセプターでなくドナーアミノ
酸を用いることである。第三の基準は、CDRに直に隣接する位置では、アクセプターで
なくドナー骨格アミノ酸残基を用いることである。第四の基準は、CDRに直に隣接する
位置では、アクセプターでなくドナー骨格アミノ酸残基を用いることである。第四の基準
は、アミノ酸が、三次元免疫グロブリンモデルでCDRの約3A以内に側鎖原子を有し、
および抗原またはヒト化免疫グロブリンのCDRと相互作用が可能であると予測される場
合は、その骨格位置でドナー骨格アミノ酸残基を用いることである。基準2、3、または
4は基準1に加えて、またはその代替として適用することができ、および単独でまたは任
意の組み合わせで適用することができる。
【0333】
抗原およびアレルゲン
一実施形態では、本発明の物質は、抗原または抗原決定基(またはそれをコードするポリヌクレオチド)と同時、別々または順次の組み合わせで投与することができ、そのような抗原または抗原決定基に対する免疫反応を修飾(上昇または低下)することができる。
【0334】
本発明における用途に適した抗原は、免疫系によって認識されうる、および一般的に抗原受容体によって認識される、任意の物質であることができる。好ましくは本発明に用いられる抗原は免疫原である。宿主が、以前に遭遇した抗原に再曝露される時、アレルギー反応が起こる。
【0335】
抗原に対する免疫反応は一般的に細胞性(T細胞媒介殺作用)または体液性(完全な抗原の認識を介した抗体産生)のどちらかである。免疫反応に関与するTH細胞によるサイトカイン産生のパターンは、これらの反応型のどちらが優位になるかに影響を与えることができる: 細胞性免疫(TH1)は高いIL−2およびIFNγとしかし低いIL−4産生で特徴づけられる一方、体液性免疫(TH2)ではパターンは低いIL−2およびIFNγとしかし高いIL−4、IL−5およびIL−13である。分泌パターンは二次リンパ器官または細胞のレベルで調節されるため、特定のTHサイトカインパターンの薬理学的操作は、生じる免疫反応の種類および程度に影響を与えることができる。
【0336】
TH1−TH2バランスは、2つの異なる型のヘルパーT細胞の相対的な発現量をいう。2つの型は免疫系に対して大規模かつ相反する作用を有する。ある免疫反応がTH1細胞を優先する場合、これらの細胞は細胞応答を推進し、一方でTH2細胞は抗体に支配される反応を推進する。一部のアレルギー反応を担う種類の抗体はTH2細胞によって誘導される。
【0337】
本発明に用いられる抗原またはアレルゲン(またはその抗原決定基)は、ペプチド、ポリペプチド、糖質、タンパク質、糖タンパク質、または、タンパク質複合体、細胞−膜調製物、完全な細胞(生存可能なまたは生存不能な細胞)、細菌細胞またはウイルス/ウイルス成分のような、複数の抗原性エピトープを含むより複雑な材料であることができる。特に、ミエリン塩基性タンパク質(多発性硬化症に関連)、コラーゲン(慢性関節リウマチに関連)、およびインシュリン(糖尿病)、またはMHC抗原またはその抗原決定基のような非自己組織の拒絶に関連する抗原、といった自己免疫疾患に関連することが知られている抗原を用いることが好ましい。初回抗原刺激を受けた本発明のAPCおよび/またはT細胞が組織移植術手続に用いられる場合、抗原は組織ドナーから得ることができる。対象において発現される可能性がある抗原または抗原決定基をコードするポリヌクレオチドもまた用いることができる。
【0338】
本発明のさまざまな好ましい特性および実施形態をここで、非限定的な実施例を用いて、より詳細に説明する。
【実施例】
【0339】
実施例1
hDelta1−IgG4Fc融合タンパク質
ヒトIgG4のFcドメインと融合したヒトDelta1の細胞外ドメインを含む融合タンパク質(「hDelta1−IgG4Fc」)を、ヒトDelta1の細胞外ドメインをコードするヌクレオチド配列(たとえばGenbank登録番号AF003522を参照)を発現ベクターpCONγ(ロンザ・バイオロジックス社(Lonza Biologics)、英国スラウ(Slough))に挿入し、および結果として生じる構造をCHO細胞で発現することによって調製した。結果として生じる発現された融合タンパク質のアミノ酸配列は下記の通りであった:
ここで、第一の下線の配列はシグナルペプチド(成熟タンパク質から切断される)であり、および第二の下線の配列はIgG4Fc配列である。本タンパク質は通常は、システインジスルフィド結合によって結合した二量体として存在する(たとえば本文書の略図を参照)。
【0340】
実施例2
ラパマイシン存在下でのNotchシグナル伝達活性を検出するためのダイナビーズ(Dynabeads)ELISA測定法
(i)CD4+細胞精製
脾臓をマウス(各種のBalb/c雌、8〜10週、C57B/6雌、8〜10週、D011.10遺伝子導入雌、8〜10週)から摘出し、および0.2μm細胞ストレーナーを通して、20mlのR10F培地(R10F−RPMI 1640培地(ギブコ社(Gibco)カタログ番号22409)+2mM L−グルタミン、50μg/mlペニシリン、50μg/mlストレプトマイシン、5x10-5Mβ−メルカプト−エタノールを含む10%ウシ胎仔血清)へ入れた。細胞懸濁液を遠心分離し(1150rpm 5分間)および培地を除去した。
【0341】
細胞は脾臓1個当たり5mlのACK溶解緩衝液(0.15M NH4Cl、1.0M KHCO3、0.1mM Na2EDTAを含む二回蒸留水)を用いて4分間インキュベートした(赤血球を溶解するため)。細胞を次いでR10F培地を用いて1回洗浄しおよび計数した。CD4+細胞を磁気細胞分離装置(MACS)カラム(ミルテニー・バイオテク社(Miltenyi Biotec)、英国ビズリー(Bisley):カタログ番号130−042−401)でCD4(L3T4)ビーズ(ミルテニー・バイオテク社カタログ番号130−049−201)を用いて、取扱説明書に従って、懸濁液からポジティブ選択によって精製した。
【0342】
(ii)抗体被覆化
96ウェル平底プレートを、DPBS+1μg/ml抗ハムスターIgG抗体(ファー
ミンジェン社(Pharmingen)カタログ番号554007)+1μg/ml抗I
gG4抗体を用いて被覆した。ウェル当たり100μlの被覆化混合物を加えた。プレー
トを一夜4℃にてインキュベートし、次いでDPBSで洗浄した。各ウェルに次いで、1
00μl DPBS+抗CD3抗体(1μg/ml)または、100μl DPBS+抗C
D3抗体(1μg/ml)+hDelta1−IgG4Fc融合タンパク質(10μg/
ml;上記の通り)のどちらかを加えた。プレートを2〜3時間37℃にてインキュベー
トし、次いで、細胞(上記の通り調製した)を加える前に、DPBSを用いて再び洗浄し
た。
【0343】
(iii)一次ポリクローナル刺激およびELISA
CD4+細胞を、上記(ii)に従って予め被覆された96ウェル平底プレート中で培
養した。細胞を、計数後、R10F培地+4μg/ml抗CD28抗体(ファーミンジェ
ン社(Pharmingen)、カタログ番号553294、クローン番号37.51)
中に2x106/mlで再懸濁した。ウェル当たり100μlの細胞懸濁液を加えた。1
00μlのR10F培地を次いで各ウェルに加え、終容量200μlとした(2x105
細胞/ウェル、抗CD28終濃度2μg/ml)。ラパマイシン(シグマ社(Sigma
))をストック溶液(4mMを含むDMSO)から加え、終濃度0ないし5000nMと
した。プレートを次いで37℃にて72時間インキュベートした。
【0344】
上清125μlをその後各ウェルから取り、およびELISAによってIL−2、IL−10、IFNgおよびIL−13についてR&Dシステムズ社(R & D Systems)(英国アビンドン(Abingdon))の抗体対を用いて試験するまで−20℃にて保存した。結果を図9に示す。
【0345】
実施例3
シクロスポリンA存在下でのNotchシグナル伝達活性を検出するためのダイナビーズ(Dynabeads)ELISA測定法
ラパマイシンの代わりにシクロスポリンA(シグマ社(Sigma))を加え(4mMを含むエタノールのストック溶液から)、終濃度0ないし40nMを与えた点以外は、実施例2の手続を繰り返した。結果を図10に示す。
【0346】
実施例4
FK−506存在下でのNotchシグナル伝達活性を検出するためのダイナビーズ(Dynabeads)ELISA測定法
ラパマイシンの代わりにFK−506(カルビオケム社(Calbiochem))を加え(4mMを含むDMSOのストック溶液から)、終濃度0ないし8000nMを与えた点以外は、実施例2の手続を繰り返した。結果を図11に示す。
【0347】
実施例5
デキサメタゾン存在下でのNotchシグナル伝達活性を検出するためのダイナビーズ(Dynabeads)ELISA測定法
(i)CD4+細胞精製
脾臓をマウス(各種のBalb/c雌、8〜10週、C57B/6雌、8〜10週、D
011.10遺伝子導入雌、8〜10週)から摘出し、および0.2μm細胞ストレーナ
ーを通して、20mlのR10F培地(R10F−RPMI 1640培地(ギブコ社(
Gibco)カタログ番号22409)+2mM L−グルタミン、50μg/mlペニ
シリン、50μg/mlストレプトマイシン、5x10-5Mβ−メルカプト−エタノール
を含む10%ウシ胎仔血清)へ入れた。細胞懸濁液を遠心分離し(1150rpm 5分
間)および培地を除去した。
【0348】
細胞は脾臓1個当たり5mlのACK溶解緩衝液(0.15M NH4Cl、1.0M KHCO3、0.1mM Na2EDTAを含む二回蒸留水)を用いて4分間インキュベートした(赤血球を溶解するため)。細胞を次いでR10F培地を用いて1回洗浄しおよび計数した。CD4+細胞を磁気細胞分離装置(MACS)カラム(ミルテニー・バイオテク社(Miltenyi Biotec)、英国ビズリー(Bisley):カタログ番号130−042−401)でCD4(L3T4)ビーズ(ミルテニー・バイオテク社カタログ番号130−049−201)を用いて、取扱説明書に従って、懸濁液からポジティブ選択によって精製した。
【0349】
(ii)抗体被覆化
96ウェル平底プレートを、DPBS+1μg/ml抗ハムスターIgG抗体(ファー
ミンジェン社(Pharmingen)カタログ番号554007)+1μg/ml抗I
gG4抗体を用いて被覆した。ウェル当たり100μlの被覆化混合物を加えた。プレー
トを一夜4℃にてインキュベートし、次いでDPBSで洗浄した。各ウェルに次いで、1
00μl DPBS+抗CD3抗体(1μg/ml)または、100μl DPBS+抗C
D3抗体(1μg/ml)+hDelta1−IgG4Fc融合タンパク質(10μg/
ml;上記の通り)のどちらかを加えた。プレートを2〜3時間37℃にてインキュベー
トし、次いで、細胞(上記の通り調製した)を加える前に、DPBSを用いて再び洗浄し
た。
【0350】
(iii)一次ポリクローナル刺激およびELISA
CD4+細胞を、上記(ii)に従って予め被覆された96ウェル平底プレート中で培
養した。細胞を、計数後、R10F培地+4μg/ml抗CD28抗体(ファーミンジェ
ン社(Pharmingen)、カタログ番号553294、クローン番号37.51)
中に2x106/mlで再懸濁した。ウェル当たり100μlの細胞懸濁液を加えた。1
00μlのR10F培地を次いで各ウェルに加え、終容量200μlとした(2x105
細胞/ウェル、抗CD28終濃度2μg/ml)。デキサメタゾンをストック溶液(4m
Mを含むDMSO)から加え、終濃度0ないし5000nMとした。プレートを次いで3
7℃にて72時間インキュベートした。
【0351】
上清125μlをその後各ウェルから取り、およびELISAによってIL−2、IL−10、IFNgおよびIL−13についてR&Dシステムズ社(R & D Systems)(英国アビンドン(Abingdon))の抗体対を用いて試験するまで−20℃にて保存した。結果を図12に示す。IL−4およびIL−5を用いた別の結果を図13に示す。
【0352】
実施例6
Notchシグナル伝達活性を検出するためのルシフェラーゼ測定法
hDelta1−IgG4Fc融合タンパク質(実施例1)をストレプトアビジン−ダイナビーズ(Dynabeads)(英国ダイナル社(Dynal (UK) Ltd)のセレクション(CELLection)・ビオチン・バインダー・ダイナビーズ[カタログ番号115.21]、4.0x108個/ml;「ビーズ」)上に、ビオチニル化−IgG−4(ファーミンジェン社(Pharmingen)[カタログ番号555879]のクローンJDC14、0.5mg/ml)と組み合わせて下記の通り固定化した:
【0353】
測定した各試料について、ビーズ1x107個(ビーズ4.0x108個/mlで25μl)および2μgのビオチニル化α−IgG−4を用いた。PBSをビーズに加えて1mlとし、および混合物を13,000rpmにて1分間遠沈した。さらに1mlのPBSを用いて洗浄後、混合物を再び遠沈した。ビーズを次いで、ビオチニル化α−IgG−4を含む終容量100μlのPBSに、滅菌エッペンドルフチューブ中で再懸濁し、および振とう機上に室温にて30分間置いた。PBSを加えて1mlとし、および混合物を13,000rpmにて1分間遠沈し、次いで1mlのPBSでさらに2回洗浄した。
【0354】
混合物を次いで13,000rpmにて1分間遠沈し、およびビーズを試料当たり50μlのPBSに再懸濁した。50μlのビオチニル化α−IgG−4−被覆ビーズを各試料に加え、および混合物を回転振とう機上で4℃にて一夜インキュベートした。チューブを次いで1000rpmにて5分間室温にて遠心した。ビーズを次いで10mlのPBSで洗浄し、遠沈し、1mlのPBSに再懸濁し、滅菌エッペンドルフチューブに移し、さらに1mlのPBSで2回洗浄し、遠沈し、および終容量100μlのDMEM+10%(HI)FCS+グルタミン+P/Sに、すなわちビーズ1.0x105個/μlにて再懸濁した。
【0355】
N27#11細胞(完全長ヒトNotch2およびCBF1−ルシフェラーゼレポーター構造を発現しているCHO細胞;T80フラスコ;国際公開第03/012441号パンフレット、ロランティス社(Lorantis)に記載の通り、たとえばその実施例7を参照)を、0.02%EDTA(トリプシン含有)溶液(シグマ社(Sigma))を用いて採取し、遠沈し、およびDMEM+10%(HI)FCS+グルタミン+P/Sに再懸濁した。細胞10μlを計数し、および細胞密度を1.0x105個/mlへ、新しいDMEM+10%(HI)FCS+グルタミン+P/Sを用いて調整した。24−ウェルプレートのウェル当たり細胞1.0x105個を、容量1mlのDMEM+10%(HI)FCS+グルタミン+P/S中に播種し、および細胞をインキュベーター内に置いて少なくとも30分間沈降させた。
【0356】
ビーズ20μlを次いで2連で、一対のウェルへ加え、ビーズ2.0x106個/ウェル(ビーズ100個/細胞)とした。プレートをCO2インキュベーター内に一夜置いた。次いですべてのウェルから上清を除去し、100μlのステディグロー(SteadyGlo)(登録商標)ルシフェラーゼ測定試薬(プロメガ社(Promega))を加え、および結果として生じる混合物を室温に5分間置いた。
【0357】
混合物を次いでピペットで2回吸引上下して細胞溶解を確実にし、および各ウェルからの内容物を96ウェルプレート(V型ウェルの)へ移し、およびプレートホルダー中で5分間1000rpmで室温にて遠心した。
【0358】
清澄化した上清175μlを次いで白色96ウェルプレート(ヌンク社((Nunc))へ、ビーズ沈澱を残して移した。
【0359】
発光を次いでトップカウント(TopCount)(登録商標)(パッカード社(Packard))カウンターで読み取った。
参考文献(参照により本開示に含まれる)
Artavanis-Tsakonas S, et al. (1995) Science 268:225-232.
Artavanis-Tsakonas S, et al. (1999) Science 284:770-776.
Brucker K, et al. (2000) Nature 406:411-415.
Camilli et al. (1994) Proc Natl Acad Sci USA 91:2634-2638.
Chee M. et al. (1996) Science 274:601-614.
Dkuz (1997) Cell 90: 271-280
Hicks C, et al. (2000) Nat. Cell. Biol. 2:515-520.
Hoyne G.F. et al (1999) Int Arch Allergy Immunol 118:122-124;
Hoyne et al. (2000) Immunology 100:281-288;
Hoyne G.F. et al (2000) Intl Immunol 12:177-185;
Hoyne, G. et al. (2001) Immunological Reviews 182:215-227
Irvine KD (1999) Curr. Opin. Genet. Devel. 9:434-441.
Ju BJ, et al. (2000) Nature 405:191-195.
Leimeister C. et al. (1999) Mech Dev 85(1-2):173-7.
Li et al. (1998) Immunity 8(1):43-55.
Lieber, T. et al. (1993) Genes Dev 7(10):1949-65.
Lu, F. M. et al. (1996) Proc Natl Acad Sci 93(11):5663-7.
Matsuno K, et al. (1998) Nat. Genet. 19:74-78.
Matsuno, K. et al. (1995) Development 121(8):2633-44.
Medhzhitov et al. (1997) Nature 388:394-397.
McGuiness (1996) Genomics 35(3): 473-485
Meuer S. et al (2000) Rapid Cycle Real-time PCR, Springer-Verlag Berlin and Heidelberg GmbH & Co.
Moloney DJ, et al. (2000) Nature 406:369-375.
Munro S, Freeman M. (2000) Curr. Biol. 10:813-820.
Ordentlich et al. (1998) Mol. Cell. Biol. 18:2230-2239.
Osborne B, Miele L. (1999) Immunity 11:653-663.
Panin VM, et al. (1997) Nature 387:908-912.
Schroeter EH, et al. (1998) Nature 393:382-386.
Struhl G, Adachi A. (1998) Cell 93:649-660.
Struhl, G. et al. (1998) Cell 93(4):649-60.
Takebayashi K. et al. (1994) J Biol Chem 269(7):150-6.
Tamura K, et al. (1995) Curr. Biol. 5:1416-1423.
Valenzuela et al. (1995) J. Neurosci. 15:6077-6084.
Weinmaster G. (2000) Curr. Opin. Genet. Dev. 10:363-369.
Wilson and Hemmati-Brivanlou (1997) Neuron 18:699-710.
【図面の簡単な説明】
【0360】
【図1】図1はNotchシグナル伝達経路の略図を示す。
【図2】図2はNotchリガンドJaggedおよびDeltaの略図を示す。
【図3】図3はさまざまなショウジョウバエ(Drosophila)および哺乳類Notchリガンド由来のDSLドメインのアミノ酸配列の整列を示す。
【図4】図4はヒトDelta−1、Delta−3およびDelta−4のアミノ酸配列を示す。
【図5】図5はヒトJagged−1およびJagged−2のアミノ酸配列を示す。
【図6】図6はヒトDelta−1のコード(ポリヌクレオチド)配列を示す。
【図7a】図7はヒトJagged−1のコード(ポリヌクレオチド)配列を示す。
【図7b】図7はヒトJagged−1のコード(ポリヌクレオチド)配列を示す。
【図8】図8は本発明において使用することができるさまざまなNotchリガンドドメイン/IgFcドメイン融合タンパク質の略図を示す。
【図9】図9は実施例2の結果を示す。
【図10】図10は実施例3の結果を示す。
【図11】図11は実施例4の結果を示す。
【図12】図12は実施例5の結果を示す。
【図13】図13は実施例5の結果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫系の調節を目的とした同時の、同時期の、別々のまたは順次の使用のための組み合わせ調製物として、
i)Notchシグナル伝達経路の調節因子;および
ii)免疫抑制剤;
:を含む製品。
【請求項2】
T細胞活性の調節のための、請求項1で請求される通りの製品。
【請求項3】
炎症、喘息、アレルギー、移植片拒絶、移植片対宿主病または自己免疫疾患の治療のための、請求項1または請求項2で請求される通りの製品。
【請求項4】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、DeltaまたはJaggedまたはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体、または、Delta、Jaggedまたはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体をコードするポリヌクレオチドを含む、前記請求項のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項5】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、Notchリガンド細胞外ドメインのセグメントおよび免疫グロブリンFcセグメントを含む融合タンパク質、またはそのような融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項1から4のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項6】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、DSLまたはEGF様ドメインを含むタンパク質またはポリペプチド、またはそのようなタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項1から4のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項7】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、NotchリガンドDSLドメイン、少なくとも1個のEGF様ドメインを含むタンパク質またはポリペプチド、またはそのようなタンパク質またはポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む、請求項6で請求される通りの製品。
【請求項8】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、Notch細胞内ドメイン(NotchIC)またはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体、または、Notch細胞内ドメインまたはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体をコードするポリヌクレオチド配列を含む、請求項1から3のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項9】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、Notchシグナル伝達抑制因子の優性阻害型、またはNotchシグナル伝達抑制因子の優性阻害型をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項1から3のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項10】
免疫抑制剤が免疫学的に活性なステロイドまたはステロイド誘導体である、前記請求項のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項11】
免疫抑制剤がイムノフィリン結合性免疫抑制剤である、請求項1から9のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項12】
免疫抑制剤が、シクロスポリンまたはシクロスポリン誘導体、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体、またはFK506またはFK506誘導体から選択される、請求項11で請求される通りの製品。
【請求項13】
ステロイドまたはステロイド誘導体が、アルドステロン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロプレドノール、コルチゾン、コルチバゾール、デオキシコルトン、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフルオロコルトロン、フルクロロロン、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロン、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオロコルチゾン、フルオロコルトロン、フルオロメトロン、フルランドレノロン、フルチカゾン、ハルシノニド、ヒドロコルチゾン、アイコメタゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、チキソコルトールまたはトリアムシノロン、およびそのそれぞれの医薬品として許容される塩または誘導体から選択される、請求項10で請求される通りの製品。
【請求項14】
アレルギー、移植片拒絶、移植片対宿主病または自己免疫疾患の治療のための、前記請求項のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項15】
i)Notchシグナル伝達経路の調節因子;および
ii)免疫抑制剤
:を組み合わせることによる、請求項1から14のうちいずれか1つで請求される通りの製品を調製するための方法。
【請求項16】
i)Notchシグナル伝達経路の調節因子の有効量;および
ii)免疫抑制剤の有効量
:を同時に、同時期に、別々にまたは順次に投与することを含む、哺乳類において免疫系を調節するための方法。
【請求項17】
T細胞を、刺激シグナルおよび、Notchシグナル伝達の調節因子および免疫抑制剤の組み合わせの適当な量と接触させ、調節T細胞への分化を促進することを含む、免疫系の調節のための方法。
【請求項18】
免疫系を調節することにおける、同時の、同時期の、別々のまたは順次の使用のための、
i)Notchシグナル伝達経路の調節因子;および
ii)免疫抑制剤;
の組み合わせ。
【請求項19】
免疫系の調節における使用のための、免疫抑制剤との同時の、同時期の、別々のまたは順次の組み合わせでの、Notchシグナル伝達経路の調節因子。
【請求項20】
免疫系の調節のための薬剤の製造における、
i)Notchシグナル伝達経路の調節因子;および
ii)免疫抑制剤;
の組み合わせの使用。
【請求項21】
免疫系の調節のための薬剤の製造における、免疫抑制剤との同時の、同時期の、別々のまたは順次の組み合わせでの、Notchシグナル伝達経路の調節因子の使用。
【請求項22】
Notchシグナル伝達経路の調節因子および免疫抑制剤を含む医薬キット。
【請求項23】
Notchシグナル伝達経路の調節因子および免疫抑制剤および随意的に医薬品として許容されるキャリヤーを含む医薬組成物。
【請求項24】
1つの処置手順でNotchシグナル伝達の調節因子の有効量を投与する段階;および別の処置手順で免疫抑制剤の有効量を投与する段階を含む、免疫系を調節するための方法。
【請求項25】
1つの処置手順でNotchシグナル伝達の調節因子の相乗作用的に有効な量を投与する段階;および別の処置手順で免疫抑制剤の相乗作用的に有効な量を投与する段階を含む、免疫系を調節するための方法。
【請求項26】
免疫系の調節を目的とした同時の、同時期の、別々のまたは順次の使用のための組み合わせ調製物として、
i)Notchシグナル伝達経路の調節因子;および
ii)イムノフィリン結合性免疫抑制剤;
:を含む製品。
【請求項27】
T細胞活性の調節のための、請求項26で請求される通りの製品。
【請求項28】
炎症、喘息、アレルギー、移植片拒絶、移植片対宿主病または自己免疫疾患の治療のための、請求項26または請求項27で請求される通りの製品。
【請求項29】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、DeltaまたはJaggedまたはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体、または、Delta、Jaggedまたはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項26から28のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項30】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、Notchリガンド細胞外ドメインのセグメントおよび免疫グロブリンFcセグメントを含む融合タンパク質、またはそのような融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項26から29のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項31】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、DSLまたはEGF様ドメインを含むタンパク質またはポリペプチド、またはそのようなタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項26から30のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項32】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、NotchリガンドDSLドメイン、少なくとも1個のEGF様ドメインを含むタンパク質またはポリペプチド、またはそのようなタンパク質またはポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む、請求項31で請求される通りの製品。
【請求項33】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、Notch細胞内ドメイン(NotchIC)またはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体、または、Notch細胞内ドメインまたはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体をコードするポリヌクレオチド配列を含む、請求項26から28のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項34】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、Notchシグナル伝達抑制因子の優性阻害型、またはNotchシグナル伝達抑制因子の優性阻害型をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項26から28のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項35】
イムノフィリン結合性免疫抑制剤が、シクロスポリンまたはシクロスポリン誘導体、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体、またはFK506またはFK506誘導体から選択される、請求項26から34のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項36】
アレルギー、移植片拒絶、移植片対宿主病または自己免疫疾患の治療のための、請求項26から35のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項37】
i)Notchシグナル伝達経路の調節因子;および
ii)イムノフィリン結合性免疫抑制剤
:を組み合わせることによる、請求項26から36のうちいずれか1つで請求される通りの製品を調製するための方法。
【請求項38】
i)Notchシグナル伝達経路の調節因子の有効量;および
ii)イムノフィリン結合性免疫抑制剤の有効量
:を同時に、同時期に、別々にまたは順次に投与することを含む、哺乳類において免疫系を調節するための方法。
【請求項39】
T細胞を、刺激シグナルおよび、Notchシグナル伝達の調節因子およびイムノフィリン結合性免疫抑制剤の組み合わせの適当な量と接触させ、調節T細胞への分化を促進することを含む、免疫系の調節のための方法。
【請求項40】
免疫系を調節することにおける、同時の、同時期の、別々のまたは順次の使用のための、
i)Notchシグナル伝達経路の調節因子;および
ii)イムノフィリン結合性免疫抑制剤;
の組み合わせ。
【請求項41】
免疫系の調節における使用のための、イムノフィリン結合性免疫抑制剤との同時の、同時期の、別々のまたは順次の組み合わせでの、Notchシグナル伝達経路の調節因子。
【請求項42】
免疫系の調節のための薬剤の製造における、
i)Notchシグナル伝達経路の調節因子;および
ii)イムノフィリン結合性免疫抑制剤;
の組み合わせの使用。
【請求項43】
免疫系の調節のための薬剤の製造における、イムノフィリン結合性免疫抑制剤との同時の、同時期の、別々のまたは順次の組み合わせでの、Notchシグナル伝達経路の調節因子の使用。
【請求項44】
Notchシグナル伝達経路の調節因子およびイムノフィリン結合性免疫抑制剤を含む医薬キット。
【請求項45】
Notchシグナル伝達経路の調節因子およびイムノフィリン結合性免疫抑制剤および随意的に医薬品として許容されるキャリヤーを含む医薬組成物。
【請求項46】
1つの処置手順でNotchシグナル伝達の調節因子の有効量を投与する段階;および別の処置手順でイムノフィリン結合性免疫抑制剤の有効量を投与する段階を含む、免疫系を調節するための方法。
【請求項47】
1つの処置手順でNotchシグナル伝達の調節因子の相乗作用的に有効な量を投与する段階;および別の処置手順でイムノフィリン結合性免疫抑制剤の相乗作用的に有効な量を投与する段階を含む、免疫系を調節するための方法。
【請求項48】
免疫系の調節を目的とした同時の、同時期の、別々のまたは順次の使用のための組み合わせ調製物として、
i)Notchシグナル伝達経路の調節因子;および
ii)免疫学的に活性なステロイド;
:を含む製品。
【請求項49】
T細胞活性の調節のための、請求項48で請求される通りの製品。
【請求項50】
炎症、喘息、アレルギー、移植片拒絶、移植片対宿主病または自己免疫疾患の治療のための、請求項48または請求項49で請求される通りの製品。
【請求項51】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、DeltaまたはJaggedまたはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体、または、Delta、Jaggedまたはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項48から50のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項52】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、Notchリガンド細胞外ドメインのセグメントおよび免疫グロブリンFcセグメントを含む融合タンパク質、またはそのような融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項48から51のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項53】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、DSLまたはEGF様ドメインを含むタンパク質またはポリペプチド、またはそのようなタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項48から52のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項54】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、NotchリガンドDSLドメイン、少なくとも1個のEGF様ドメインを含むタンパク質またはポリペプチド、またはそのようなタンパク質またはポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む、請求項53で請求される通りの製品。
【請求項55】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、Notch細胞内ドメイン(NotchIC)またはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体、または、Notch細胞内ドメインまたはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体をコードするポリヌクレオチド配列を含む、請求項48から50のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項56】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、Notchシグナル伝達抑制因子の優性阻害型、またはNotchシグナル伝達抑制因子の優性阻害型をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項48から50のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項57】
免疫学的に活性なステロイドまたはステロイド誘導体が、アルドステロン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロプレドノール、コルチゾン、コルチバゾール、デオキシコルトン、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフルオロコルトロン、フルクロロロン、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロン、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオロコルチゾン、フルオロコルトロン、フルオロメトロン、フルランドレノロン、フルチカゾン、ハルシノニド、ヒドロコルチゾン、アイコメタゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、チキソコルトールまたはトリアムシノロン、およびそのそれぞれの医薬品として許容される塩または誘導体から選択される、請求項48から56のうちいずれかで請求される通りの製品。
【請求項58】
アレルギー、移植片拒絶、移植片対宿主病または自己免疫疾患の治療のための、請求項48から57のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項59】
i)Notchシグナル伝達経路の調節因子;および
ii)免疫抑制剤.
:を組み合わせることによる、請求項48から58のうちいずれか1つで請求される通りの製品を調製するための方法。
【請求項60】
i)Notchシグナル伝達経路の調節因子の有効量;および
ii)免疫学的に活性なステロイドまたはステロイド誘導体の有効量
:を同時に、同時期に、別々にまたは順次に投与することを含む、哺乳類において免疫系を調節するための方法。
【請求項61】
T細胞を、刺激シグナルおよび、Notchシグナル伝達の調節因子および免疫学的に活性なステロイドまたはステロイド誘導体の組み合わせの適当な量と接触させ、調節T細胞への分化を促進することを含む、免疫系の調節のための方法。
【請求項62】
免疫系を調節することにおける、同時の、同時期の、別々のまたは順次の使用のための、
i)Notchシグナル伝達経路の調節因子;および
ii)免疫学的に活性なステロイドまたはステロイド誘導体;
の組み合わせ。
【請求項63】
免疫系の調節における使用のための、免疫学的に活性なステロイドまたはステロイド誘導体との同時の、同時期の、別々のまたは順次の組み合わせでの、Notchシグナル伝達経路の調節因子。
【請求項64】
免疫系の調節のための薬剤の製造における、
i)Notchシグナル伝達経路の調節因子;および
ii)免疫学的に活性なステロイドまたはステロイド誘導体;
の組み合わせの使用。
【請求項65】
免疫系の調節のための薬剤の製造における、免疫学的に活性なステロイドまたはステロイド誘導体との同時の、同時期の、別々のまたは順次の組み合わせでの、Notchシグナル伝達経路の調節因子の使用。
【請求項66】
Notchシグナル伝達経路の調節因子および免疫学的に活性なステロイドまたはステロイド誘導体を含む医薬キット。
【請求項67】
Notchシグナル伝達経路の調節因子および免疫学的に活性なステロイドまたはステロイド誘導体および随意的に医薬品として許容されるキャリヤーを含む医薬組成物。
【請求項68】
1つの処置手順でNotchシグナル伝達の調節因子の有効量を投与する段階;および別の処置手順で免疫学的に活性なステロイドまたはステロイド誘導体の有効量を投与する段階を含む、免疫系を調節するための方法。
【請求項69】
1つの処置手順でNotchシグナル伝達の調節因子の相乗作用的に有効な量を投与する段階;および別の処置手順で免疫学的に活性なステロイドまたはステロイド誘導体の相乗作用的に有効な量を投与する段階を含む、免疫系を調節するための方法。
【請求項1】
免疫系の調節を目的とした同時の、同時期の、別々のまたは順次の使用のための組み合わせ調製物として、
i)Notchシグナル伝達経路の調節因子;および
ii)免疫抑制剤;
:を含む製品。
【請求項2】
T細胞活性の調節のための、請求項1で請求される通りの製品。
【請求項3】
炎症、喘息、アレルギー、移植片拒絶、移植片対宿主病または自己免疫疾患の治療のための、請求項1または請求項2で請求される通りの製品。
【請求項4】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、DeltaまたはJaggedまたはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体、または、Delta、Jaggedまたはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体をコードするポリヌクレオチドを含む、前記請求項のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項5】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、Notchリガンド細胞外ドメインのセグメントおよび免疫グロブリンFcセグメントを含む融合タンパク質、またはそのような融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項1から4のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項6】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、DSLまたはEGF様ドメインを含むタンパク質またはポリペプチド、またはそのようなタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項1から4のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項7】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、NotchリガンドDSLドメイン、少なくとも1個のEGF様ドメインを含むタンパク質またはポリペプチド、またはそのようなタンパク質またはポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む、請求項6で請求される通りの製品。
【請求項8】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、Notch細胞内ドメイン(NotchIC)またはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体、または、Notch細胞内ドメインまたはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体をコードするポリヌクレオチド配列を含む、請求項1から3のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項9】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、Notchシグナル伝達抑制因子の優性阻害型、またはNotchシグナル伝達抑制因子の優性阻害型をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項1から3のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項10】
免疫抑制剤が免疫学的に活性なステロイドまたはステロイド誘導体である、前記請求項のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項11】
免疫抑制剤がイムノフィリン結合性免疫抑制剤である、請求項1から9のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項12】
免疫抑制剤が、シクロスポリンまたはシクロスポリン誘導体、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体、またはFK506またはFK506誘導体から選択される、請求項11で請求される通りの製品。
【請求項13】
ステロイドまたはステロイド誘導体が、アルドステロン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロプレドノール、コルチゾン、コルチバゾール、デオキシコルトン、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフルオロコルトロン、フルクロロロン、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロン、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオロコルチゾン、フルオロコルトロン、フルオロメトロン、フルランドレノロン、フルチカゾン、ハルシノニド、ヒドロコルチゾン、アイコメタゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、チキソコルトールまたはトリアムシノロン、およびそのそれぞれの医薬品として許容される塩または誘導体から選択される、請求項10で請求される通りの製品。
【請求項14】
アレルギー、移植片拒絶、移植片対宿主病または自己免疫疾患の治療のための、前記請求項のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項15】
i)Notchシグナル伝達経路の調節因子;および
ii)免疫抑制剤
:を組み合わせることによる、請求項1から14のうちいずれか1つで請求される通りの製品を調製するための方法。
【請求項16】
i)Notchシグナル伝達経路の調節因子の有効量;および
ii)免疫抑制剤の有効量
:を同時に、同時期に、別々にまたは順次に投与することを含む、哺乳類において免疫系を調節するための方法。
【請求項17】
T細胞を、刺激シグナルおよび、Notchシグナル伝達の調節因子および免疫抑制剤の組み合わせの適当な量と接触させ、調節T細胞への分化を促進することを含む、免疫系の調節のための方法。
【請求項18】
免疫系を調節することにおける、同時の、同時期の、別々のまたは順次の使用のための、
i)Notchシグナル伝達経路の調節因子;および
ii)免疫抑制剤;
の組み合わせ。
【請求項19】
免疫系の調節における使用のための、免疫抑制剤との同時の、同時期の、別々のまたは順次の組み合わせでの、Notchシグナル伝達経路の調節因子。
【請求項20】
免疫系の調節のための薬剤の製造における、
i)Notchシグナル伝達経路の調節因子;および
ii)免疫抑制剤;
の組み合わせの使用。
【請求項21】
免疫系の調節のための薬剤の製造における、免疫抑制剤との同時の、同時期の、別々のまたは順次の組み合わせでの、Notchシグナル伝達経路の調節因子の使用。
【請求項22】
Notchシグナル伝達経路の調節因子および免疫抑制剤を含む医薬キット。
【請求項23】
Notchシグナル伝達経路の調節因子および免疫抑制剤および随意的に医薬品として許容されるキャリヤーを含む医薬組成物。
【請求項24】
1つの処置手順でNotchシグナル伝達の調節因子の有効量を投与する段階;および別の処置手順で免疫抑制剤の有効量を投与する段階を含む、免疫系を調節するための方法。
【請求項25】
1つの処置手順でNotchシグナル伝達の調節因子の相乗作用的に有効な量を投与する段階;および別の処置手順で免疫抑制剤の相乗作用的に有効な量を投与する段階を含む、免疫系を調節するための方法。
【請求項26】
免疫系の調節を目的とした同時の、同時期の、別々のまたは順次の使用のための組み合わせ調製物として、
i)Notchシグナル伝達経路の調節因子;および
ii)イムノフィリン結合性免疫抑制剤;
:を含む製品。
【請求項27】
T細胞活性の調節のための、請求項26で請求される通りの製品。
【請求項28】
炎症、喘息、アレルギー、移植片拒絶、移植片対宿主病または自己免疫疾患の治療のための、請求項26または請求項27で請求される通りの製品。
【請求項29】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、DeltaまたはJaggedまたはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体、または、Delta、Jaggedまたはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項26から28のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項30】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、Notchリガンド細胞外ドメインのセグメントおよび免疫グロブリンFcセグメントを含む融合タンパク質、またはそのような融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項26から29のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項31】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、DSLまたはEGF様ドメインを含むタンパク質またはポリペプチド、またはそのようなタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項26から30のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項32】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、NotchリガンドDSLドメイン、少なくとも1個のEGF様ドメインを含むタンパク質またはポリペプチド、またはそのようなタンパク質またはポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む、請求項31で請求される通りの製品。
【請求項33】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、Notch細胞内ドメイン(NotchIC)またはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体、または、Notch細胞内ドメインまたはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体をコードするポリヌクレオチド配列を含む、請求項26から28のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項34】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、Notchシグナル伝達抑制因子の優性阻害型、またはNotchシグナル伝達抑制因子の優性阻害型をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項26から28のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項35】
イムノフィリン結合性免疫抑制剤が、シクロスポリンまたはシクロスポリン誘導体、ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体、またはFK506またはFK506誘導体から選択される、請求項26から34のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項36】
アレルギー、移植片拒絶、移植片対宿主病または自己免疫疾患の治療のための、請求項26から35のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項37】
i)Notchシグナル伝達経路の調節因子;および
ii)イムノフィリン結合性免疫抑制剤
:を組み合わせることによる、請求項26から36のうちいずれか1つで請求される通りの製品を調製するための方法。
【請求項38】
i)Notchシグナル伝達経路の調節因子の有効量;および
ii)イムノフィリン結合性免疫抑制剤の有効量
:を同時に、同時期に、別々にまたは順次に投与することを含む、哺乳類において免疫系を調節するための方法。
【請求項39】
T細胞を、刺激シグナルおよび、Notchシグナル伝達の調節因子およびイムノフィリン結合性免疫抑制剤の組み合わせの適当な量と接触させ、調節T細胞への分化を促進することを含む、免疫系の調節のための方法。
【請求項40】
免疫系を調節することにおける、同時の、同時期の、別々のまたは順次の使用のための、
i)Notchシグナル伝達経路の調節因子;および
ii)イムノフィリン結合性免疫抑制剤;
の組み合わせ。
【請求項41】
免疫系の調節における使用のための、イムノフィリン結合性免疫抑制剤との同時の、同時期の、別々のまたは順次の組み合わせでの、Notchシグナル伝達経路の調節因子。
【請求項42】
免疫系の調節のための薬剤の製造における、
i)Notchシグナル伝達経路の調節因子;および
ii)イムノフィリン結合性免疫抑制剤;
の組み合わせの使用。
【請求項43】
免疫系の調節のための薬剤の製造における、イムノフィリン結合性免疫抑制剤との同時の、同時期の、別々のまたは順次の組み合わせでの、Notchシグナル伝達経路の調節因子の使用。
【請求項44】
Notchシグナル伝達経路の調節因子およびイムノフィリン結合性免疫抑制剤を含む医薬キット。
【請求項45】
Notchシグナル伝達経路の調節因子およびイムノフィリン結合性免疫抑制剤および随意的に医薬品として許容されるキャリヤーを含む医薬組成物。
【請求項46】
1つの処置手順でNotchシグナル伝達の調節因子の有効量を投与する段階;および別の処置手順でイムノフィリン結合性免疫抑制剤の有効量を投与する段階を含む、免疫系を調節するための方法。
【請求項47】
1つの処置手順でNotchシグナル伝達の調節因子の相乗作用的に有効な量を投与する段階;および別の処置手順でイムノフィリン結合性免疫抑制剤の相乗作用的に有効な量を投与する段階を含む、免疫系を調節するための方法。
【請求項48】
免疫系の調節を目的とした同時の、同時期の、別々のまたは順次の使用のための組み合わせ調製物として、
i)Notchシグナル伝達経路の調節因子;および
ii)免疫学的に活性なステロイド;
:を含む製品。
【請求項49】
T細胞活性の調節のための、請求項48で請求される通りの製品。
【請求項50】
炎症、喘息、アレルギー、移植片拒絶、移植片対宿主病または自己免疫疾患の治療のための、請求項48または請求項49で請求される通りの製品。
【請求項51】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、DeltaまたはJaggedまたはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体、または、Delta、Jaggedまたはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項48から50のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項52】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、Notchリガンド細胞外ドメインのセグメントおよび免疫グロブリンFcセグメントを含む融合タンパク質、またはそのような融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項48から51のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項53】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、DSLまたはEGF様ドメインを含むタンパク質またはポリペプチド、またはそのようなタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項48から52のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項54】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、NotchリガンドDSLドメイン、少なくとも1個のEGF様ドメインを含むタンパク質またはポリペプチド、またはそのようなタンパク質またはポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む、請求項53で請求される通りの製品。
【請求項55】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、Notch細胞内ドメイン(NotchIC)またはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体、または、Notch細胞内ドメインまたはその断片、誘導体、ホモログ、アナログまたは対立遺伝子変異体をコードするポリヌクレオチド配列を含む、請求項48から50のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項56】
Notchシグナル伝達経路の調節因子が、Notchシグナル伝達抑制因子の優性阻害型、またはNotchシグナル伝達抑制因子の優性阻害型をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項48から50のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項57】
免疫学的に活性なステロイドまたはステロイド誘導体が、アルドステロン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロプレドノール、コルチゾン、コルチバゾール、デオキシコルトン、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフルオロコルトロン、フルクロロロン、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロン、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオロコルチゾン、フルオロコルトロン、フルオロメトロン、フルランドレノロン、フルチカゾン、ハルシノニド、ヒドロコルチゾン、アイコメタゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、チキソコルトールまたはトリアムシノロン、およびそのそれぞれの医薬品として許容される塩または誘導体から選択される、請求項48から56のうちいずれかで請求される通りの製品。
【請求項58】
アレルギー、移植片拒絶、移植片対宿主病または自己免疫疾患の治療のための、請求項48から57のうちいずれか1つで請求される通りの製品。
【請求項59】
i)Notchシグナル伝達経路の調節因子;および
ii)免疫抑制剤.
:を組み合わせることによる、請求項48から58のうちいずれか1つで請求される通りの製品を調製するための方法。
【請求項60】
i)Notchシグナル伝達経路の調節因子の有効量;および
ii)免疫学的に活性なステロイドまたはステロイド誘導体の有効量
:を同時に、同時期に、別々にまたは順次に投与することを含む、哺乳類において免疫系を調節するための方法。
【請求項61】
T細胞を、刺激シグナルおよび、Notchシグナル伝達の調節因子および免疫学的に活性なステロイドまたはステロイド誘導体の組み合わせの適当な量と接触させ、調節T細胞への分化を促進することを含む、免疫系の調節のための方法。
【請求項62】
免疫系を調節することにおける、同時の、同時期の、別々のまたは順次の使用のための、
i)Notchシグナル伝達経路の調節因子;および
ii)免疫学的に活性なステロイドまたはステロイド誘導体;
の組み合わせ。
【請求項63】
免疫系の調節における使用のための、免疫学的に活性なステロイドまたはステロイド誘導体との同時の、同時期の、別々のまたは順次の組み合わせでの、Notchシグナル伝達経路の調節因子。
【請求項64】
免疫系の調節のための薬剤の製造における、
i)Notchシグナル伝達経路の調節因子;および
ii)免疫学的に活性なステロイドまたはステロイド誘導体;
の組み合わせの使用。
【請求項65】
免疫系の調節のための薬剤の製造における、免疫学的に活性なステロイドまたはステロイド誘導体との同時の、同時期の、別々のまたは順次の組み合わせでの、Notchシグナル伝達経路の調節因子の使用。
【請求項66】
Notchシグナル伝達経路の調節因子および免疫学的に活性なステロイドまたはステロイド誘導体を含む医薬キット。
【請求項67】
Notchシグナル伝達経路の調節因子および免疫学的に活性なステロイドまたはステロイド誘導体および随意的に医薬品として許容されるキャリヤーを含む医薬組成物。
【請求項68】
1つの処置手順でNotchシグナル伝達の調節因子の有効量を投与する段階;および別の処置手順で免疫学的に活性なステロイドまたはステロイド誘導体の有効量を投与する段階を含む、免疫系を調節するための方法。
【請求項69】
1つの処置手順でNotchシグナル伝達の調節因子の相乗作用的に有効な量を投与する段階;および別の処置手順で免疫学的に活性なステロイドまたはステロイド誘導体の相乗作用的に有効な量を投与する段階を含む、免疫系を調節するための方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2006−513153(P2006−513153A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−542654(P2004−542654)
【出願日】平成15年10月9日(2003.10.9)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004402
【国際公開番号】WO2004/032969
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(503372060)ロランティス リミテッド (6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年10月9日(2003.10.9)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004402
【国際公開番号】WO2004/032969
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(503372060)ロランティス リミテッド (6)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]