免疫治療組成物、その製造方法及び使用方法
【課題】免疫系をモジュレーションするための組成物及び方法の提供。
【解決手段】FADD(内因性fas関連デスドメイン分子)依存性シグナリング経路モジュレーターを含む組成物。さらには、核酸及び/又はタンパク質、例えば、FADD依存性シグナリング経路モジュレーターを送達して、免疫応答の種々の経路をブーストするようにデザインされた、生物分解性マイクロ粒子、例えば、キトサンマイクロ粒子、又はPLGA/PEIマイクロ粒子の利用及び該生物分解性マイクロ粒子を製造する方法。また、キトサン及び他のポリカチオンマイクロ粒子を使用して、FADD依存性シグナリング経路モジュレーターを送達して、免疫系をモジュレーションし、感染性疾患及びガンを予防及び/又は処置する方法。
【解決手段】FADD(内因性fas関連デスドメイン分子)依存性シグナリング経路モジュレーターを含む組成物。さらには、核酸及び/又はタンパク質、例えば、FADD依存性シグナリング経路モジュレーターを送達して、免疫応答の種々の経路をブーストするようにデザインされた、生物分解性マイクロ粒子、例えば、キトサンマイクロ粒子、又はPLGA/PEIマイクロ粒子の利用及び該生物分解性マイクロ粒子を製造する方法。また、キトサン及び他のポリカチオンマイクロ粒子を使用して、FADD依存性シグナリング経路モジュレーターを送達して、免疫系をモジュレーションし、感染性疾患及びガンを予防及び/又は処置する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、それぞれ、2003年12月11日に出願されたU.S. Provisional Application Serial No.60/528,613及び2004年8月31日に出願されたU.S. Provisional Application Serial No.60/605,554からの優先権を主張する。両provisional applicationの全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の背景
本発明は、免疫治療の分野に関する。更に詳しくは、本発明は、内因性fas関連デスドメイン分子(fas-associated death domain molecule)(FADD)−RIP1依存性シグナリング経路及び外因性Toll様受容体(TLR)依存性経路のいずれか又は両方を活性化することができる組成物及び自然適応的免疫応答(innate adaptive immune responses)をより有効にカップリングさせるための方法に関する。組成物は、ウイルス、真菌(fungal)及びバクテリア病原体に対する自然免疫応答をモジュレーションする(modulate)のに特に有用であり、そしてガンを処置するのにも特に有用である。
【0003】
技術の背景
微生物病原体、例えば、ウイルス、バクテリア及び真菌(fungi)への宿主暴露は、自然免疫応答の活性化をトリガーして、初期宿主防御機構を刺激し(galvanize)、そして細胞傷害性T細胞活性及び抗体産生を伴う適応的免疫応答の活性化を促す(invigorate) [Medzhitov, et al., Semin. Immunol., 10:351-353, (1998)]。病原性微生物の認識及び自然免疫カスケードのトリガリングは、過去数年間にわたる熱心な研究の対象となった。
【0004】
病原性微生物の保存された成分(病原体関連分子パターン−PAMPsと呼ばれる)、例えば、リポ多糖及びCpG DNA(図1)を認識することを担っている重要表面分子として現れたToll様受容体(TLRs)の役割に最近特に注目が集まった[Medzhitov, et al., Semin. Immunol., 10:351-353, (1998)]。TLRsは、最初Drosophila(ショウジョウバエ)において同定され、そしてハエ発生並びに真菌及びグラム陽性菌に対する宿主の防御において重要な役割を演じていることが証明された。[Impler, et al., Curr. Top. Microbiol. Immunol., 270:53-79, (2002)]。
【0005】
TLRの関与は、細胞の核にシグナルを伝達し、細胞がある種のタンパク質、例えばサイトカインを産生するのを開始することを誘発させ、宿主防御の他の成分に警報を出す。哺乳動物細胞では、少なくとも10種のTLRメンバーが存在するらしく、その各々は細胞外リポ多糖(LPS)及びdsRNAを含む種々の異なる刺激に応答する[Takeda, et al., Ann. Rev. Immunol., 21:335-376, 2003]。リガンド結合に続いて、すべてのTLRsの細胞質ゾル領域に存在するToll/インターロイキン(IL)−1受容体(TIR)ドメインによりトリガーされるホモフィリック相互作用(homophilic interactions)をとおして、シグナリング経路が開始される[Akira,Jour.Biol.Chem., 278:38105-38108, 2003]。TLR−2、−4及び−5を含む多くのTLRsは、MYD88と呼ばれる共通のアダプタータンパク質を使用し、このMYD88はTIRドメイン及びデスドメイン(DD)を含有する。TRIF/TICAM、TRAM及びTIRAP/Malと呼ばれるMYD88と同様に機能する(DDを欠いているけれども)他のアダプター分子が今や単離され、そしてTLR活性のモジュレーションにおいて同様に機能する[Horng, et al., Nat. Immunol., 2:835-841, (2001); Oshiumi, et al., Nat. Immunol., 4:161-167, (2003); Yamamoto, et al., Science, 301:640-643, (2003); Yamamoto, et al., Natl. Immunol., 4: 1144-1150, (2003)]。MYD88の常在性DD(resident DD)は、IL−1受容体関連キナーゼ(IL-1 receptor-associated kinase)(IRAK)ファミリーのメンバー、例えば、TRAF−6のリン酸化及び活性化に関与するDD含有セリン−トレオニンキナーゼであるIRAK−1及び−4、との相互作用を多分促進する[Cao, et al., Science, 271:1128-1131, (1996); Ishida, et al., J. Biol. Chem., 271: 28745-28748, (1996); Muzio, et al., Science, 278:1612-1615, (1997); Suzuki, et al., Nature, 416: 750-756, (2002)]。
【0006】
すべてのTLRsは、結局、転写因子NF−κB並びにマイトジェンで活性化されるタンパク質キナーゼ(MAPKs)、細胞外シグナルで調節されるキナーゼ(ERK)、p38及びc−JunN−末端キナーゼ(JNK)の活性化をもたらす共通のシグナリング経路をトリガーする[Akira, J. Biol. Chem., 278:38105-38108, (2003)]。更に、TLR−3又は−4の刺激は、正確な機構はまだ明らかにされていないけれども、多分、非正統的IκBキナーゼ相同体(noncanonical IκB kinase homologues)、IκBキナーゼ−ε(IKKε)及びTANK結合キナーゼ1(TANK-binding kinase-1)(TBK1)のTRIF媒介活性化によって、転写因子インターフェロン調節因子(IRF)−3を活性化することができる[Doyle, et al., Immunity, 17: 251-263,(2002): Fitzgerald, et al., Nat. Immunol., 4: 491-496, (2003)]。
【0007】
NF−κB、ERK/JNK及びIRF−3応答シグナリングカスケードの活性化は、結局、炎症応答を含む自然免疫応答及び適応的免疫応答を調節する多数の遺伝子の転写刺激をもたらす。
【0008】
一次自然免疫応答遺伝子、例えば、IFN−βの活性化は、抗ウイルス遺伝子を誘発するのみならず、NK細胞が関与する自然免疫応答、DCsの成熟並びにケモカイン及びT細胞応答を促進するMHCの如き分子のアップレギュレーション、を促進する分子も誘発する。IFNは、抗体応答の産生のために決定的に重要であることも示された。かくして、自然免疫応答を理解し、そして強力に調節することは、自然免疫応答及び適応的免疫応答の両方のための、新規な治療及びワクチン接種方法並びに疾患をターゲティングする組成物を開発するための好機を与える。
【0009】
免疫治療の重要な観点は、有効な薬物/抗原送達システムの開発である。細胞に薬物、抗原及び他のシグナル分子を送達するための粒子担体が考案された[Aideh, et al., J. Microencapsul., 14:567-576 (1997); Akbuga, et al., Microencapsul., 13:161-167(1996); Akbuga, et al., Int. J.(1994); Aral, et al., STP Pharm. Sci., 10:83-88(2000)]。これらの送達担体の要件は用途に依存して異なる。例えば、ケモカインの担体は、長期間の時間(通常、日)ロードされた分子の安定な勾配を与える必要があり、そして粒子はファゴサイトーシスされるのを回避するために、相対的に大きい(200〜700μm)ことが必要である。
【0010】
他方、抗原がより小さな粒子により担われ、該粒子はそれらの表面を介して細胞と相互作用するのみならず、樹状細胞、マクロファージ又は他の抗原提示細胞(APCs)により飲み込まれることもできる場合、免疫感作はより強い。ファゴサイトーシスは、10μmより小さい粒子で最適であり、これは抗原担体のサイズを規定する。
【0011】
キトサンはキチン由来の天然産物である。それは、植物繊維の主要構成物であるセルロースに化学的に類似しており、そして繊維としての多くの性質を有する。キトサンは、粘膜に対する高い付着力(adhesion)及び良好な生物分解性を有し、そして粘膜表面を横切る大きな分子の侵入(penetration)を高める能力も有することが示された[Illum, et al., Pharm. Res., 9: 1326-1331 (1992)]。キトサンナノ粒子は、インシュリンの鼻吸収を改善するのに非常に有効であり、そして破傷風トキソイドに対する局部的及び全身系免疫応答においても非常に有効であることが証明された[Vila, et al., J Controlled Release, 17; 78(1-3): 15-24 (2002)]。免疫系の同様なブーストが、ジフテリアに対するキトサンマイクロ粒子による粘膜ワクチン接種 [Inez, et al., Vaccine, 21:1400-1408(2003)]:経口ワクチン接種後のDRに対する保護的全身系及び局所免疫応答及び鼻投与後のIgG産生の有意な増強において証明された。最近、キトサンは、結腸への送達薬物のための担体として有望であることが示された[Zhang, et al., Biomaterials, 23:2761-2766 (2002)]。
【0012】
発明の要約
本発明の1つの観点は、哺乳動物における自然免疫系をモジュレーションするための組成物に関する。この組成物は、ポリカチオンポリマーを含むマイクロ粒子;FADD依存性経路のモジュレーター及びTLR経路のモジュレーターを含み、該FADD依存性経路のモジュレーター及び該TLR経路のモジュレーターは、該マイクロ粒子と会合しており、そして、該マイクロ粒子は抗原提示細胞によりファゴサイトーシスされることができる。
【0013】
1つの態様では、FADD依存性経路のモジュレーターは、二本鎖RNA(dsRNA)、ポリ(IC)、FADD依存性経路の成分、FADD依存性経路の成分をコードするDNAプラスミド、バクテリア及び真菌(fungus)よりなる群から選ばれる。
【0014】
他の態様では、TLR経路のモジュレーターは、dsRNA、ポリ(IC)、ウイルスdsRNAの合成模倣物(synthetic mimetic)及びTLRのリガンド、バクテリア及び真菌よりなる群から選ばれる。
【0015】
他の態様では、マイクロ粒子は、抗原提示細胞に特異的に結合するターゲティング分子で更にコーティングされる。
【0016】
本発明の他の観点は、核酸及びタンパク質をロードされたファゴサイトーシス可能なキトサンマイクロ粒子を含む、宿主における免疫系をモジュレーションするための組成物に関する。
【0017】
本発明のなお更に他の観点は、有効量の上記した組成物を対象(subject)に投与することを含む、対象におけるウイルス、バクテリア、真菌感染及びガンを処置する方法に関する。
【0018】
本発明の更に他の観点は、免疫モジュレーションのための多機能性マイクロ粒子を製造する方法に関する。この方法は、沈殿、ゲル化及び噴霧によりキトサンマイクロ粒子を製造する(fabricating)工程、及びキトサンマイクロ粒子を、核酸、タンパク質又はその両方を含む溶液中でインキュベーションする工程を含む。
【0019】
本発明の他の観点は、自然及び適応的免疫応答を活性化することができる多重/多機能作用物質(multiple/multifunctional agents)を有する粒子を創造することに関する。
【0020】
本発明の更に他の観点は、FADDシグナリング経路に関する抗ウイルス遺伝子を同定する方法に関する。この方法は、FADD欠如細胞(FADD-deficient cells)及び対応する野生型細胞をポリ(IC)で処理する工程、ポリ(IC)処理されたFADD欠如細胞及びポリ(IC)処理された野生型細胞からRNAsを単離させる工程;単離されたRNAsを遺伝子アレイにハイブリダイゼーションさせる工程、及びポリ(IC)処理された野生型細胞と比べてポリ(IC)処理されたFADD欠如細胞において差次的に発現される(differentially expressed)遺伝子を同定する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】TLRsを介する宿主細胞によるPAMPsの検出を示す。
【図2】インターフェロンの抗ウイルス機構を示す。
【図3】TNF−α経路の略図である。
【図4】抗原のプロセッシング及び主要組織適合複合体(MHC)分子への送達の経路の略図である。
【図5】ポリ(IC)処理プロトコールの略図である。
【図6】2つのウイルスシグナリング経路、外因性TLR3依存性経路及び内因性FADD依存性経路を活性化してIFNを産生することにより自然免疫を高める提唱された方法の略図である。
【図7】キトサンの構造式である。
【図8】単球由来のヒト樹状細胞によりファゴサイトーシスされたポリスチレンビーズを示す顕微鏡写真である。
【図9】分岐状PEIの構造式である。
【図10】(1)酵母dsRNA、(2)スペルミジン−ポリグルシン−グルタチオンコンジュゲート及び(3)ハイブリッドタンパク質TBI−GSTからなる人工的ウイルス様粒子である。
【図11】図11a〜11fは、IFN予備処理後ですらMEFsにおけるVSV複製の阻止のためには、FADDが必要とされるがカスパーゼ−8は必要ではないことを示す実験データである。図11aは、FADD欠如MEFsは、IFN予備処理にもかかわらずVSV誘発CPE(VSV-induced CPE)に感受性であり、そして顕微鏡写真は感染の48時間後に撮られたことを示す。図11bは、FADD欠如MEFsがIFN予備処理によりVSVでトリガーされた細胞死から保護されないことを示す。細胞生存度は、トリパンブルー排除分析により感染後の指示された時間に決定された。図11cは、IFN予備処理は、FADD−/−EFsにおけるVSV複製を遅らせるが阻止はしないことを示す。図11dは、カスパーゼ8欠如は、MEFsにVSV誘発CPEに対する感受性を増加する素因を与えないことを示す。図11eは、カスパーゼ−8+/+及び−/−MEFsは、IFN予備処理によりVSV誘発細胞死から等しく十分に保護されることを示す。図11fは、IFN予備処理が、カスパーゼ−8+/+及び−/−EFsの両方においてVSV複製を有効に阻害することを示す。
【図12】図12a〜12dは、FADDの不存在は、脳心筋炎ウイルス(EMCV)及びインフルエンザウイルス(FLU)感染による感染に細胞を感作させることを示す実験データである。図12aは、EMCV誘発CPEに対して保護するのにFADDが必要であることを示す。細胞は感染の24時間後に写真に撮られた(倍率200倍)。図12bは、(a)における如く感染した細胞がトリパンブルー排除により細胞生存度について分析されたことを示す。図12cは、EMCV誘発CPEに対して保護するのにFADDが必要であることを示す。細胞は感染の24時間後に写真に撮られた(倍率200倍)。図12dは、(c)における如く感染した細胞がトリパンブルー排除により細胞生存度について分析されたことを示す。
【図13】図13a〜13fは、IFNシグナリングがFADD−/−MEFsにおいて破壊されないことを示す実験データである。図13aは、FADDの不存在下に正常なSTAT1リン酸化を示す。図13bは、IFN処理の後のSTAT1の核トランスロケーションがFADDの不存在下に正常に起こることを示す。図13cは、FADDは、IFNでトリガーされた遺伝子誘発のために必要ではないことを示す。図13dは、IFN応答プロモーターがFADD不存在下に正常に機能することを示す。図13eは、外因性IFN−βは、感染後に加えられると、VSV誘発CPEからFADD−/−MEFsを保護することができることを示す。細胞は感染の48時間後に写真に撮られた。図13fは、外因性IFN−βは、感染後に加えられると、VSV複製及びその結果としての細胞死からFADD−/−MEFsを保護することができることを示す。
【図14】図14a及び14bは、IFNα/β予備処理にもかかわらず、VSV感染の後野生型MEFsの連続した保護を与えるのに、IFN−βの新規な合成が必要であることを示す実験データである。図14aは、FADD+/−細胞は、IFNα/β予備処理にもかかわらず、中和性抗IFN−β抗血清の存在下に、VSVに感受性であることを示す。写真は感染の48時間後に撮られた(倍率、200倍)。図14bは、(a)における如く処理されたFADD+/−細胞を、VSV子孫収率又はトリパンブルー排除による細胞生存度について調べたことを示す。
【図15】図15a〜15gは、FADDの不存在下に細胞内dsRNAによる不完全なIFN−β遺伝子誘発を示す実験データである。図15aは、IFN−βプロモーターのトランスフェクションされたdsRNA媒介活性化はFADD−/−MEFsにおいて不完全であることを示す。図15bは、IFN−αのdsRNA誘発産生はFADDの不存在下では不完全であることを示す。図15cは、マウス(M)FADDのFADD−/−MEFsへの再構成は、dsRNAシグナリングを部分的に救済することができることを示す。図15dは、カスパーゼ−8は、細胞内dsRNAシグナリングのために必要ではないことを示す。図15eは、PKRは細胞内dsRNAシグナリングのために必要ではないことを示す。PKR+/+及びPKR−/−MEFsをIFN−β−Lucでトランスフェクションした。 図15fは、FADDのRNAi媒介ノックダウンが細胞内dsRNAシグナリングを無効にするが、PKR又はTLR3はそうではないことを示す。図15gは、TLR3の過剰発現は、細胞外dsRNAに対する応答を与えるが、細胞内dsRNAに対しては与えないことを示す。
【図16】図16a〜16eは、TLR3シグナリングはFADDを必要としないことを示す実験データである。図16aは、TLR3及び他のTLRシグナリング成分は、FADD−/−MEFsにおいてIFN−βを正常に誘発することを示す。図16bは、TRAF6欠如は、MEFsをIFNの存在下においてVSV感染を受けやすくしないことを示す。顕微鏡写真は、感染の48時間後に撮られた。図16c及び16dは、TRAF6−/−EFsがIFN予備処理によりVSVでトリガーされる細胞死から保護されることを示す。細胞生存度は、感染の48時間後にトリパンブルー排除分析により決定された。図16eは、IFN予備処理がTRAF6−/−MEFsをVSVから保護することを示す。
【図17】図17a〜17fは、RIP欠失はFADD機能破壊(FADD ablation)によく似ることを示す実験データである。図17aは、RIP欠如EFsは、IFN予備処理にもかかわらずVSV誘発CPEに非常に感受性であることを示す。図17bは、RIP欠失EFsは、IFN予備処理により、VSVでトリガーされた細胞死から保護されないことを示す。図17cは、IFN予備処理はRIPの不存在下にウイルス複製を有効に阻害することができないことを示す。図17d及び17eは、RIPの不存在下に不完全な(defective)細胞内dsRNAシグナリングを示す。図17fは、TLR3シグナリングのためにRIPが必要ではないことを示す。
【図18】図18a〜18jは、TBK−1/IKK−δ及びIRF−3を介するFADDシグナルを含む抗ウイルスシグナリングを示す実験データである。図18aは、IFNα/β(100Uml21)予備処理のあるなしで野生型又はIKK−α、IKK−β、IKK−γ及びIKK−δ欠如MEFsのVSV(MOI 1/4 10)による感染を示す。図18bは、選ばれた組の抗ウイルス遺伝子のDNAマイクロアレイ分析である。図18cは、ポリ(IC)によるトランスフェクション後の又はポリ(IC)単独による処理の後のIFN−β産生を示す。図18dは、指示された量のポリ(IC)によるトランスフェクション後の又はポリ(IC)単独による処理後のIFN−α産生を示す。図18eは、FADD+/−及びFADD−/−細胞において1時間ポリ(IC)でトランスフェクションした後のIRF−3の局在化である。図18fは、FADD−/−MEFsにおける不完全なIRF−3応答プロモーター活性化(defective IRF-3-responsive promoter activation)である。図18gは、IFNα/β(100Uml21)又はIFN−γ(0.5ng ml21)予備処理のあるなしでIrf3+/+及びIrf3−/−MEFsのVSV(MOI 1/4 10)による感染である。図18hは、ポリ(IC)によるトランスフェクション後の又はポリ(IC)単独による処理後のIFN−β産生を示す。図18iは、ポリ(IC)によるトランスフェクション後の又はポリ(IC)単独による処理後のIFN−αの産生を示す。図18jは、選ばれた組の抗ウイルス遺伝子についてのDNAマイクロアレイ分析である。誤差バーは平均±s.dを示す。
【図19】図19a〜19cは、FADD−/−細胞がグラム陽性及びグラム陰性細胞内バクテリアによる感染に対して感受性であることを示す実験データである。図19aは、FADD−/−細胞が、細胞内Listeria感染により誘発されたCPEに対して極めて感受性であることを示す。図19bは、FADD−/−細胞が、細胞内Listeria感染により誘発された細胞死に対して感受性であることを示す。図19cは、FADD−/−細胞が、細胞内Salmonella感染により誘発されたCPEに対して極めて感受性であることを示す。
【図20】乱流受け取り器を有する改変されたエレクトロスプレー装置である。
【図21】乱流攪拌を有する改変されたエレクトロスプレーにより製造されたキトサンマイクロ粒子のESEM像である。
【図22】ポリイノシン酸−ポリシチジル酸、ポリ(IC)の構造式である。
【図23】エチジウムホモ二量体の構造式である。
【図24】インターカレーションされたエチジウムホモ二量体の蛍光によりポリ(IC)を測定するための較正曲線を示す。
【図25】エチジウムホモ二量体インターカレーターをインターカレーションさせることを使用して束縛されていない及び結合したポリ(IC)を測定する比較を示す。 (A)溶液中の遊離ポリ(IC)を測定する; (B)マイクロ粒子中の結合したポリ(IC)を測定する。1−イルミネーター、2−検出器、3−フィルター、4−プレートウエル。
【図26】エチジウムホモ二量体と相互作用時のポリ(IC)をロードされたキトサン粒子の時間依存性蛍光を示す。
【図27】キトサンマイクロ粒子からのポリ(IC)の時間放出を示す。
【図28】図28a及び図28bは、一価銅のタンパク質及びビシンコニン酸との紫色の錯体を示す。 Aはペプチド窒素とのビウレット錯体である。 Bはビシンコニン酸とのキレート錯体である。
【図29】オブアルブミンのビシンコニン酸アッセイのための較正曲全を示す。
【図30】キトサンマイクロ粒子からのオブアルブミンの時間放出を表す。
【図31】図31a及び図31bは、凍結乾燥されたプロタサン/ポリ(IC)粒子のSEM像である。 Aはミクロンより上のサイズ粒子、X100である。バーは200μmを示す。 Bはサブミクロンサイズの粒子、X5000である。バーは5μmを示す。
【図32】図32a〜図32cは、異なるpHにおけるミクロンより上のプロタサン粒子によるポリ(IC)の収着である。 Aは収着の結果として減少するポリ(IC)の光学的スペクトルを示す。 Bは、ポリ(IC)の収着後の粒子のペレットを示す。 Cは異なるpHにおける粒子の収着容量を示す。
【図33】図33a及び図33bは、PLGA/PEI粒子の収着特性である。 Aは、異なる方法により得られた粒子のポリ(IC)の収着を示す。 Bは異なるpHにおけるポリ(IC)の収着を示す。
【図34】図34a及び図34bは、後で可溶化を伴う乾燥ステンレス鋼電極に対するエレクトロスプレーにより得られたPLGA/PEI/ポリ(IC)粒子を示す。 Aは、可溶化後のSEMX5000であり、そして Bは、収着容量を示す:高い又は低いイオン強度における可溶化により影響を受けた。
【図35】図35a及び図35bは、PLGA/PEI/ポリ(IC)の粒子を示す。 AはSEM像X5000であり、そして Bは希釈された水懸濁液の蛍光顕微鏡写真、X200である。
【図36a】ポリ(IC)を有するPLGA/PEI粒子によるヒト樹状細胞のDC1及びDC2サブセットにおけるIFN−β及びIFN−αの誘発を示す。
【図36b】ポリ(IC)を有するPLGA/PEI粒子によるヒト樹状細胞のDC1及びDC2サブセットにおけるIFN−β及びIFN−αの誘発を示す。
【図37a】ポリ(IC)を有するマイクロ粒子を介する細胞外TLR3誘発を示す。
【図37b】ポリ(IC)を有するマイクロ粒子を介する細胞外TLR3誘発を示す。
【図38】末梢ヒト血液サンプル中のDC2がPLGA/PEI又はプロタサン粒子(融合された(amalgamated)dsRNAを有するか又は有さない)に暴露され、そして粒子への暴露の3〜6時間後のIFN−α発現について監視されたことを示す。
【0022】
発明の詳細な説明
本発明は、抗原に対する自然免疫応答をモジュレーションするための方法及び組成物を提供する。この組成物は、fas関連デスドメイン分子(FADD)/RIP依存性経路のためのアクチベーターを含有する。FADDを含むシグナリング経路は、Toll様受容体(TLR)非依存性であることが見出され、それ故、FADDは、I型IFNの産生を含む、重要な抗ウイルス応答の誘発のために決定的に重要な細胞内dsRNA種の認識において機能することにより、ウイルス感染に対する自然免疫において必須の役割を演じ、そしてそのFADDは、バクテリア及び真菌の如き他の病原体の認識にも関与している。その結果として、FADD関連経路(FADD-related pathway)は、殆ど確実に、病原体による破壊(disruption)のための重要なターゲットであり、そして感染性疾患及びガンを含む種々の疾患における重要な役割を演じることができる。
【0023】
特許請求の範囲に与えられた範囲を含めて、明細書及び特許請求の範囲の明白な且つ首尾一貫した理解を提供するために、下記の定義が与えられる。
【0024】
以後使用される「抗原提示細胞」とは、抗原をプロセッシングし、そしてT細胞受容体に提示することにより細胞免疫応答を媒介する免疫担当細胞の異種グループ(heterogeneous group)を指す。伝統的抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞、ランゲルハンス細胞及びBリンパ球を含むが、それらに限定はされない。濾胞樹状細胞も抗原提示細胞であると考えられる。
【0025】
「自然免疫応答」は、身体が、微生物、ウイルス、及び身体に対して異物であり、そして潜在的に有害と認識された物質、に対してそれ自体を認識し、そして防御する方法である。自然免疫応答は、広範囲の感染性及び毒性作用物質に対する最初の防御線として機能する。歴史的には、この応答は、ファゴサイトーシス活性を有する細胞、例えばマクロファージ及び多形核細胞、及び/又は強力な細胞傷害性活性を有する細胞、例えば、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、マスト細胞及び好酸球に帰されてきた。これらの異なる細胞集団の活性は、集約的に急性期タンパク質として知られている多数の異なる可溶性分子、例えば、インターフェロン、補体カスケードの特異的成分及びサイトカインにより支援され(aided)そして支持され(abetted)、これらの分子は、ファゴサイトーシス及び細胞傷害性活性を高める働きをし、そして組織損傷の部位にこれらの細胞を蓄積させる。これらの最初の防御線が突破されると、次いで、適応的免疫応答の活性化が続いて起こり、多数の異なる特徴のいずれかを発揮することができる特異的免疫応答の形成をもたらす。この獲得免疫応答の発生は、リンパ球の専門的特性である。
【0026】
自然免疫と比較して、適応的免疫は、身体が種々の抗原にさらされるとき発生し、そしてその抗原に対して特異的な防御を構築する。
【0027】
以後使用される「免疫応答」とは、問題の抗原に対して体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答の哺乳動物対象における発生である抗原を指す。「細胞性免疫応答」とは、Tリンパ球及び/又は他の白血球により媒介される免疫応答である。細胞性免疫の1つの重要な観点は、細胞傷害性Tリンパ球(「CTL」s)による抗原特異的応答を含む。CTLsは、主要組織適合複合体(MHC)によりコードされたタンパク質と会合して存在し、そして細胞の表面に発現されたペプチド抗原、に対する特異性を有する。CTLsは、細胞内微生物の破壊又はこのような微生物に感染した細胞の溶解を誘発し、そして促進するのを助ける。
【0028】
本明細書で使用された「抗原」という用語は、抗体により認識されるいかなる作用物質(例えば、いかなる物質、化合物、分子[巨大分子を含む]又は他の部分(moiety))をも指すが、「免疫原」という用語は、個体において免疫学的応答を誘発することができるいかなる作用物質(例えば、如何なる物質、化合物、分子[巨大分子を含む]又は他の部分(moiety))をも指す。これらの用語は、個々の巨大分子を指すか、又は抗原性巨大分子の均質又は不均質集団を指すのに使用されうる。この用語は、1つ以上のエピトープを含有するタンパク質分子又はタンパク質分子の少なくとも1つの部分を包含することが意図される。多くの場合に、抗原は免疫原でもあり、かくして「抗原」という用語は、「免疫原」という用語と相互に交換可能にしばしば使用される。その場合に、この物質は、免疫感作された動物の血清中の適切な抗体の存在を検出するためのアッセイにおいて抗原として使用することができる。
【0029】
「腫瘍特異的抗原」は、哺乳動物において腫瘍発生の時点で腫瘍細胞中にのみ存在する抗原を指す。例えば、メラノーマ特異的抗原は、メラノーマ細胞においてのみ発現されるが、正常なメラニン細胞では発現されない抗原である。
【0030】
図2に示されたとおり、ウイルス感染の主要な結果、相当なdsRNA種を発生する事象は、一次自然免疫応答遺伝子、例えばIFN−βの活性化を含む。IFN−βの産生は、抗ウイルス遺伝子を誘発するのみならず、NK細胞が関与する免疫応答、DCsの成熟、並びにケモカイン及びT細胞応答を促進する分子、例えばMHCのアップレギュレーションを促進する分子も誘発する。
【0031】
図3に示されたとおり、細胞内及び細胞外dsRNAは多岐シグナリング経路を利用してIFN−βを誘発する。特に、ウイルス複製の結果として発生した細胞内dsRNA種は、TLR非依存性FADD関連経路により認識される。簡単に言えば、ウイルスdsRNAは細胞内受容体分子により認識され、これは、FADD及びRIP1を動員して「インネイテオソーム」複合体('innateosome' complex)とし、NF−κB、ERK/JNK及びIRF−3経路を活性化する。NF−κB、ERK/JNK及びIRF−3応答性シグナリングカスケードの活性化は、炎症性応答を含む自然及び適応的免疫応答を調節する多数の遺伝子の発現をもたらす。他方、dsRNA及びLPSを含む細胞外PAMPsは、TLR関連経路を介して認識され、これはNF−κB、ERK/JNK及びIRF−3応答シグナリングカスケードの活性化ももたらする。ウイルス感染に加えて、FADD依存性経路及びTLR依存性経路の両方共他の病原体、例えば、バクテリア及び真菌の認識にも関与している(例えば、Imler et al. Curr. Top. Microbiol. Immunol., 270: 53-79, (2002)及び実施例6を参照のこと)。
【0032】
免疫活性化における他の重要な問題は、MHC分子によるタンパク質抗原の有効な送達である。図4に示されたとおりMHC分子への抗原プロセッシング及び送達の経路、細胞質ゾルタンパク質は、プロテオソームにより分解されてペプチド断片を発生し、これは特殊化されたペプチドトランスポーター(TAP)により小胞体に輸送される。ペプチドがMHCクラスI分子に結合された後に、MHC/ペプチド複合体は、小胞体から放出されてゴルジ装置により細胞表面に移行する。MHCクラスI/ペプチド複合体はCD8T細胞のT細胞受容体(TCRs)に対するリガンドである。細胞外異物抗原は、細胞内小胞、エンドソームに取り込まれる。エンドソーム内のpHが次第に下がるにつれて、プロテアーゼが活性化されて、抗原を消化してペプチド断片にする。MHCクラスII分子を含有する小胞と融合した後、抗原ペプチドは抗原結合溝に配置される。ロードされたMHCクラスII/ペプチド複合体は細胞表面に輸送され、そこでそれらはCD4T細胞のTCRsにより認識される。更に、図4に示されたとおり、細胞外又は外因性抗原は、DCsによりファゴサイトーシスされ、このDCは、次いでこれらの抗原をリソソーム区画に局在化させ、そこでタンパク質分解酵素が抗原を消化し、そしてプロセッシングする。次いで抗原は、MHCクラスII分子上で細胞表面に移動させられ、決してDCの細胞質ゾル中にはない。対照的に、DCの細胞質ゾル中に存在する可溶性タンパク質は、プロテアソームにより連続的に分解される。これらの抗原性分子は、小胞体中のクラスIMHCと組み合わされ、小胞体はそれらを小胞を介して細胞表面に移動させる。
【0033】
最近、MHCI経路とMHCII経路の厳密な二分(strict dichotomy)は、外因性タンパク質から発生したペプチドが細胞質ゾルへのアクセスを得ることができ、それ故クラスIMHC分子上に提示されることができることを示したいくつかの研究によりチャレンジされた[Roake, et al., J. Exp. Med., 181:2237-2247, 1995; Cumbertach, et al., Immunology, 75:257, 1992; Paglia, et al., J. Exp. Med., 178: 1893-1901, 1993: Porgador, et al., J. Exp. Med., 182:255-260, 1995; Celluzzi, et al., J. Exp. Med., 183:283-287, 1996; Zitvogel, et al., J. exp. Med., 183: 87-97, 1996; Bender, et al., J. Exp. Med., 182:1663-1671, 1995 ]。固体ポリマー微小球(microspheres)に吸収された[Raychaudhuiri, et al., Nat. Biotechnol. 16:1025-1031, 1998]、微小球中にカプセル化された[Maloy, et al., IMMUNOLOGY, 81: 661-667, 1994]、又は抗体との免疫複合体の形態で凝集させた[Rodriguez, et al., Nat. Cell Biol., 1:362-368, 1999]、粒子状形態で送達された抗原は、抗原がクラスIMHC上にロードされることを可能とする有効な「交差提示("cross-presentation")」経路をトリガーすることが発見された。
【0034】
この理解に基づいて、本発明の1つの観点は、細胞内経路及び細胞外経路の両方を交差シグナリングすることができる自然免疫応答をモジュレーションするための組成物を提供する。更に、この組成物は、抗原がクラスIMHCにロードされることを可能とし、そしてウイルス感染又は腫瘍形成が起こる前にウイルス又は悪性腫瘍抗原に対する免疫反応の発生を可能とする「交差提示」経路をトリガーすることができる。
【0035】
1つの態様では、組成物は、細胞内FADD依存性シグナリング経路のための第1モジュレーター及び細胞外TLR非依存性シグナリング経路のための第2モジュレーターを含有する。モジュレーターは、専門的APC、例えばDCによりファゴサイトーシスされうるキトサンをベースとするマイクロ粒子にロードされる。本明細書で使用した、「ロードされた」という用語は、カプセル化又は表面付着によるマイクロ粒子へのアクチベーターの会合を指す。
【0036】
FADD依存性シグナリング経路のモジュレーターの例は、dsRNA、ポリ(IC)、ウイルスdsRNAの合成模倣物、FADD依存性経路の成分、例えば、FADD及びRIP1、FADD経路の成分をコードするDNA、並びにバクテリア、真菌、及びFADD依存性経路を活性化又は抑制することが知られている他の抗原を含むが、それらに限定はされない。
【0037】
TLR依存性シグナリング経路のモジュレーターの例は、TLRリガンド、例えば、dsRNA、ポリ(IC)、ウイルスdsRNAの合成模倣物及びLPS;TLR依存性経路の成分、例えば、MYD88、TRIF/TICAM、TRAM及びTIRAP/Mal、並びにバクテリア、真菌、及びTLR依存性経路を活性化又は抑制することが知られている他の抗原を含むが、それらに限定はされない。
【0038】
FADD依存性経路のモジュレーターはTLR依存性経路のモジュレーターとしても機能することができることに留意されるべきである。故に、本発明の組成物中の第1モジュレーターと第2モジュレーターは同じ分子であってもよい。例えば、dsRNA分子は、FADD依存性経路とTLR依存性経路の両方を活性化することができる。dsRNAがFADD依存性経路のサプレッサーをコードするならば、同じ分子が、FADD依存性経路を抑制しながら、TLR依存性経路を活性化することができる。逆に、もしdsRNAがTLR依存性経路のサプレッサーをコードするならば、同じ分子が、TLR依存性経路を抑制しながら、FADD依存性経路を活性化することができる。
【0039】
FADD依存性経路のモジュレーターは、ウイルス、バクテリア又は真菌感染により誘発又は抑制される遺伝子産物であることもできる。これに関して、本発明は、FADD−/−及びFADD+/+細胞を使用してFADD依存性経路を介して誘発された抗ウイルス遺伝子、抗バクテリア遺伝子及び抗真菌遺伝子を同定する方法も提供する。図5は、FADDシグナリング経路を介して誘発された抗ウイルス遺伝子を同定するための1つの態様を示す。簡単に言えば、FADD−/−及びFADD+/+細胞をポリ(IC)で処理する。処理された細胞から単離されたRNAを、遺伝子のDNAアレイにハイブリダイゼーションさせて、dsRNAで誘発された遺伝子を決定する。dsRNAで誘発された遺伝子の発現レベルを、定量的RT−PCRにより更に確認する。
【0040】
他の態様では、RNA干渉(RNAi)を発生させてdsRNAで誘発された遺伝子の発現を阻害し、そしてRNAi処理された細胞におけるウイルス感染に対する感受性を検査する。RNAiは、相同性mRNAの分解を引起すある種の生物及び細胞型へのdsRNAの導入の現象である。
【0041】
RNAiは、線虫Caenorhabditis elegansにおいて最初に発見され、そしてそれはそれ以来広範囲の生物で作動することが見出された。近年では、RNAiは、二本鎖RNAs(dsRNA)を使用して特定の転写産物をマークしてin vivoで分解する、外因性の、有効で強力な遺伝子特異的サイレンシング技術となった。RNAi技術は、例えば、U.S.Patent No.5,919,619及びPCT Publication Nos.WO99/14346及びWO01/29508に開示されている。
【0042】
1つの態様では、本発明の組成物の第1及び第2モジュレーターは、同じdsRNAである。dsRNAをロードされたマイクロ粒子は、TLRに結合し、そしてTLR依存性シグナリング経路を活性化するであろう。一方、dsRNAをロードされたマイクロ粒子は、ファゴサイトーシスされ(マクロファージ、DCs、単球により)、そしてFADD依存性シグナリング経路を活性化するであろう。好ましくは、dsRNAは、免疫アクチベーターをコードする。細胞の内側に入ると、dsRNAは開かれ(opened)、そして翻訳されて、自然免疫経路を更に活性化する免疫アクチベーターを産生する。例えば、dsRNAは、TLR経路の成分、例えば、細胞に導入されるとIFN−βのTLR媒介活性化及び他の自然免疫応答を増大させるTRIF又はIRAKsをコードすることができる。
【0043】
他の態様では、第1モジュレーターはdsRNAであり、そして第2モジュレーターはTLR経路の成分及びTLR経路の成分をコードするDNA分子である。
【0044】
他の態様では、第1モジュレーターはFADD依存性経路の成分、例えば、FADD、又はFADD依存性経路の成分をコードするDNA分子であり、そして第2モジュレーターはdsRNAである。
【0045】
他の態様では、第1及び第2モジュレーターは、抗原性産物、FADD経路の成分及び/又は免疫応答を更に高める産物、例えばサイトカイン、のいかなる組み合わせもコードするdsRNA又はDNA分子である。コードされた産物は、一旦細胞内で発現されると、それぞれ、細胞表面でのMHCI又はMHCII提示のためにエンドソーム経路又はリソソーム経路を介してプロセッシングされるであろう。dsRNAはFADD依存性自然免疫経路を活性化するであろう。このシナリオは、図6に略図で示される。細胞内経路は、免疫応答を促進するのに役割を演じることが提唱されたPKRの活性化もするようである。
【0046】
更に他の態様では、dsRNA含有マイクロ粒子は、TLR3に対するリガンドで更にコーティングして、TLR3経路を活性化するか、あるいはgp96又はVSVGタンパク質のような熱ショックタンパク質で更にコーティングして、専門的APCs、例えば、DCsをターゲットとすることができる。
【0047】
他の態様では、マイクロ粒子は、貪食に続いて抑制のための遺伝子をターゲットとすることができるサイレンシングRNAi(siRNAs)を表現するdsRNAをロードされることができる。1つの態様では、siRNAは、FADD依存性経路の成分、例えばFADDの発現を抑制し、そして抗原プロセッシングをダウンレギュレーションする。
【0048】
他の態様では、組成物は、ポジティブ鎖ウイルス(例えば、ペスチウイルス、ウシ下痢症ウイルス[BVDV]又はアルファウイルスからの)に基づく自己複製性RNA(レプリコン)を含有する。これらのRNA構築物は、バイシストロンであり(bicistronic)、レプリコンIRES機能にとって重要な5’末端ORFsからなり、そして翻訳のための天然開始コドンを含有する。異物遺伝子、例えば、インフルエンザウイルス又は他の病原体からの遺伝子は、第2IRESの下流に配置されることができる。レプリコンは、キトサン粒子上にロードすることができ、そしてex vivo又はin vivoで抗原特異的細胞をターゲットとするのに使用することができる。一旦ファゴサイトーシスされると、レプリコンは、それ自身を高いレベルに再現して、相当なdsRNAを発生させることができ、それは、FADD/RIP依存性経路を活性化し、上記したとおりアジュバントとして機能する。更に、レプリコンは、異物遺伝子を翻訳して、抗原を産生し、この抗原はMHCクラスI又はII経路を介してプロセッシングされて、使用される抗原に対して特異的なCD4及びCD8細胞を刺激する。レプリコンは、プロアポトーシス分子(pro-apoptotic molecules)、例えば、カスパーゼを共発現するために使用することができ、又は細胞死を誘発させるための精製されたプロアポトーシス分子(又は精製されたターゲット抗原)を共ロードされることができ、これは抗原提示プロセスを高めることができる。
【0049】
他の態様では、dsRNA(上記したとおり)のごとき細胞内又は細胞外FADD又はTOLL活性化分子をロードされたキトサン粒子は、精製された抗原、例えば、インフルエンザウイルス又はプロセッシングされてCD4、CD8細胞を刺激することができる他の病原体関連分子を共ロードされることができる。
【0050】
本発明は、FADD依存性経路及びTLR依存性経路のモジュレーターのための送達システムとしてポリカチオンマイクロ粒子を利用する。キチン及びキトサン(キチノサン(chitinosanes))は、水素イオンとの会合を介して中性pHで正の電荷を獲得する多数のアミノ基を有する生物分解性ポリマーである(図7)。他のポリマーから作られたマイクロ粒子と比較して、キトサンをベースとするマイクロ粒子は、減少した凝集及び負に帯電した分子、特に核酸のためのより良好なローディング能力を与える。プロタサン、キトサンのより精製されたバージョンは、本明細書では相互に交換可能に使用されるであろう。
【0051】
本発明の組成物のマイクロ粒子は、3重の目標:送達、身体における(主として)酵素による破壊からの一時的保護及びロードされた生物分子(例えば、dsRNA、DNA、タンパク質及びペプチド、モード抗原等)の暴露又は放出、を達成するようにデザインされる。一般に、本発明のマイクロ粒子は、会合したRNA/DNA/タンパク質分子をターゲット細胞に入った後に急速に放出又は暴露して、激しい免疫応答を与えるようにデザインされる。しかしながら、ある用途では、会合した分子、例えば、サイトカインを時間依存的方式で放出することが望ましいことがある。
【0052】
サイトカインの例は、IL−12、IL−1α、IL−1β、IL−15、IL−18、IFNα、IFNβ、IFNγ、IL−4、IL−10、IL−6、IL−17、IL−16、TNFα及びMIF;並びにケモカイン、例えば、MIP−3α、MIP−1α、MIP−1β、RANTES、MIP−3β、SLC、fMLP、IL−8、SDF−1α及びBLCを含むが、それらに限定はされない。
【0053】
キトサンマイクロ粒子は、当該技術分野で知られた方法を使用して製造することができる。Ravi Kumar et al.[Ravi Kumar, et al., Biomaterials, in press, 2003]は、その表面にDNAを有するキトサンで安定化されたPLGAカチオンナノ粒子を示し;このDNAは水溶液から簡単な混合により結合され、かくして分子の統合性(integrity)及びコンホメーション(conformation)を保存している。他方、担体溶液との激しい混合を伴う標準エマルジョン技術及びエマルゲーションスキーム(emulgation scheme)も、タンパク質抗原と共にプラスミドのキトサンカプセル化にも適当である[Thiele, et al., J.Controlled Release, 76:59-71, 2001]。これらのプロトコールを利用して、前記したdsRNA及び/又はDNAプラスミドと共にサイトカイン又は熱ショックタンパク質の種々の組を有する粒子を調製することができる。
【0054】
小さなマイクロ粒子(0.5〜50ミクロン)を製造するための好ましい方法は、マイクロガン及び改変されたエレクトロスプレー技術であり、これは実施例でより詳細に述べられる。「しわくちゃの紙("crumpled paper")」形状は、タンパク質及び核酸のための高い吸着容量のための高い表面積を有するこれらの粒子を可能とした。
【0055】
キトサンポリマーは、架橋剤で架橋することができる。架橋剤の例は、無機ポリイオン、例えば、トリポリホスフェート(TPP),硫酸ナトリウム及び有機作用物質、例えば、グルタルアルデヒド及びゲニピン(genipin)を含むが、それらに限定はされない。
【0056】
キトサン粒子中への核酸及び/又はタンパク質のローディングは、核酸及び/又はタンパク質をマイクロ粒子の製造期間中にキトサンと直接混合すること、予備製造されたマイクロ粒子を核酸及び/又はタンパク質溶液で外部的に飽和させること、又はそれらの組み合わせにより達成することができる。実施例で示されたとおり、外部的飽和方法は直接混合法よりも高いローディング効率を与える。しかしながら、2つの方法の組み合わせは、ローディング効率を高めるのに相乗効果を示した。
【0057】
本発明のマイクロ粒子は、APCs、例えばDCs及びマクロファージ並びにそれらの前駆体、例えば、単球により有効にファゴサイトーシスされ、そしてプロセッシングされるのに十分に小さい。好ましい態様では、マイクロ粒子のサイズは、0.5〜70ミクロンの範囲にあり、更に好ましくは、0.5〜20ミクロンの範囲にある。例えば、図8は、単球由来のヒトDCsによりファゴサイトーシスされたポリスチレンビーズ、4.5μmを示す[(Thiele et al., J cont. release 76:59-71(2001))
【0058】
他の態様では、マイクロ粒子のファゴサイトーシス的性質は、親水性キトサンポリマーと1種以上の疎水性ポリマーとの混合物を使用することにより改変される。マイクロ粒子のサイズ及び表面性質のモジュレーションは、TRR/FADD経路の活性化の相対的有効性を制御するための格別の手段となるであろうということが考えられる。ファゴサイトーシスには不適当なより大きく且つより親水性の粒子に切り替えることにより、dsRNAシグナル分子を主としてTRR表面に暴露することが可能である。ナノサイズのキトサン粒子は、実施例に記載の方法を使用して製造することができる。数百マイクロメートルまでのより大きいキトサン粒子は、Denkbas et al.のプロトコールを使用して合成することができる[Denkbas, et al.,Rreactive & Functional Polymers, 50: 225-232, (2002)]
【0059】
キトサン粒子からの核酸及び/又はタンパク質の放出速度は、キトサンの分子量、キトサンの脱アセチル化の程度、及びキトサンとロードされた生物分子間の重量/チャージ比(weight/charge ratios)を含むいくつかの因子を調節することにより制御されうる。
【0060】
1つの態様では、キトサンをベースとする、dsRNA/DNA/タンパク質をロードされたマイクロ粒子は、サイトカイン又は抗原を含有するポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)マトリックス/マイクロ粒子内にカプセル化される。PLGAは生物分解性であることが示され、そしてそれは身体から最終的に除去される毒物学的に許容されうる乳酸及びグリコール酸に分解する。サイトカイン及びキトサン粒子の放出速度は、モノマー比/PLGAの分子量を含む、PLGAカプセル化に関与するパラメーターを調節することにより更に制御されうる。キトサン/プロタサン(protasan)は親水性であるので、より疎水性のPLGA中にキトサン/プロタサン粒子をカプセル化することにより、細胞膜を横切る細胞への粒子の取り込みは高められうる。
【0061】
あるいは、他のタイプのポリマーを、キトサンをベースとするマイクロ粒子に組み込んで、ロードされた生物分子のための可変放出プロフィルを達成することができる。1つの例では、疎水性ポリマー、例えば、PLGAをより親水性のキトサンとブレンドして、カチオンPLGA粒子を形成することができる。他の適当なポリマーは、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(オキシブチレート)を含むが、それらに限定はされない。
【0062】
他の別法として、分岐した両親媒性ポリアミン、ポリ(エチレンイミン)(PEI)を、PLGA又は他の疎水性ポリマーとの組み合わせでキトサンの代わりに使用することができる(図9)。
【0063】
キトサン粒子へのより疎水性のドメインの付加は、細胞膜を横切る輸送を促進することができる。他の例は、Liu et al.により述べられたとおり[Liu, et al., k. J. Controlled Release, 43:65-74, 1997]、ポリカチオンキトサンにポリアニオンアルギン酸ナトリウムを添加することにより多孔性粒子を形成することを含む。ポリマーの比を調節することにより、細孔のサイズを制御し、それ故粒子からのdsRNA/サイトカインの放出速度を制御することができる。
【0064】
本発明は、送達ビヒクルとしてカチオンリポソームを使用することも意図する。カチオンリポソームは、RNA、DNA及びペプチドのための良好な担体である[Honda, et al., J. Virol. Meth., 58: 41-58, 1996; Nastruzzi, et al., J. Controlled Release, 68: 237-249, 2000; Borgatti, et al., Biochemical Pharmacology, 64: 609-616, 2002; Sioud, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 312:1220-1225; 2003]。一般に、リポソームは、合理的な放出速度論と共にRNAのためのより適切な保護及びより良好な安定化を与える。ファゴサイトーシス、表面電荷及び親水性に関する考慮はリポソームにそのまま適用可能である。リポソームを使用して、dsRNA及びそその免疫原性代替物、例えば、ポリ(IC)又はポリ(ICLC)を、小胞(vesicle)中にカプセル化するか及び/又は表面に付着させることができる。脂質カチオン粒子のファゴサイトーシスは、リポソーム表面の疎水性のため親水性コロイドキトサン粒子の場合よりもより顕著でありうる。脂質粒子の適切な1〜5μmサイズを制御してファゴサイトーシスを高めることに特別の注意が払われるであろう。
【0065】
1つの態様では、ファゴサイトーシスを介して内部FADD経路を刺激するためにリポソーム担体が使用されるが、これに対してdsRNAを表面TLRsに暴露する表面担体として、大きなキトサンマイクロ粒子が使用される。多くの組み合わせをもくろむことができる。
【0066】
中心にdsRNAを、そして表面にタンパク質HIV抗原を有するリポソーム様構造を使用してウイルス様粒子を創り出すことも可能である[Karpenko, et al., Vaccine, 21: 386-302, 2003](図10)。図10は、(1)酵母dsRNA、(2)スペルミジン−ポリグルシン(polyglucin)−グルタチオンコンジュゲート及び(3)ハイブリッドタンパク質TBI−GSTを含む人工的ウイルス様粒子を示す。1つの態様では、表面にdsRNAを、そして中心にタンパク質抗原を有する逆粒子を創り出す。
【0067】
1つの態様では、交差シグナリング自然免疫経路は、ファゴサイトーシスを受けるマイクロ粒子中にカプセル化されたバクテリア又は真菌で達成される。データは、TLR経路はグラム陽性菌に対する宿主防御に影響を与えるが、これに対してimd(FADD)経路は、グラム陰性菌及び真菌に対する活性を及ぼすことを示す。
【0068】
他の態様では、交差シグナリング自然免疫経路は、ファゴサイトーシスを受けるマイクロ粒子にカプセル化された腫瘍抗原又は腫瘍抗原をコードするポリヌクレオチドにより達成される。
【0069】
本発明の化合物及び方法の好ましい態様は、説明することを意図しており、限定することを意図しない。修飾(modifications)及び変異(variations)は、上記教示に照らして当業者によりなされうる。本発明を、ガスサンプル中のアセトンレベルを測定するという他の目的、例えば空気品質を監視するために使用することができることも、当業者には考えられうる。故に、特許請求の範囲により定められるとおりに記載されているその範囲内にある開示された特定の態様において変更(changes)がなされうることは理解されるべきである。
【0070】
本発明のなお更なる観点は、本発明の免疫活性化組成物を使用して種々の疾患を予防又は処置する方法に関する。
【0071】
1つの態様では、本発明の組成物は、感染性疾患の予防又は処置のために哺乳動物に投与される。感染性疾患の例は、ウイルス、例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV);インフルエンザウイルス(INV);脳心筋炎ウイルス(EMCV)、口内炎ウイルス(VSV)、パラインフルエンザウイルス;ライノウイルス;A型肝炎ウイルス;B型肝炎ウイルス;C型肝炎ウイルス;アプトウイルス(apthovirus);コクサッキーウイルス;風疹ウイルス;ロタウイルス;デンクウイルス(Denque virus);黄熱ウイルス;日本脳炎ウイルス;感染性気管支炎ウイルス;ブタ伝染性胃腸炎ウイルス;呼吸器合胞体ウイルス;パピローマウイルス;単純ヘルペスウイルス;水痘ウイルス(varicellovirus)、サイトメガロウイルス;痘瘡ウイルス;ワクシニアウイルス;スイポックスウイルス及びコロナウイルスにより引起される疾患を含むが、それらに限定はされない。
【0072】
感染性疾患の更なる例は、微生物、例えば、Actinobacillus actinomycetemcomitans; Bacille Calmette-Gurin; Blastomyces dermatitidis; Bordetella pertussis; Campylobactor consisus; Campylobacter recta; Candida albicans; Capnocytophaga sp.; Chlamydia trachomatis; Eikenella corrodens; Entamoeba histolitica; Enterococcus sp.; Escherichia coli; Eubacterium sp.; Haemophilus influenzae; Lactobacillus acidophilus; Leishmania sp.; Listeria monocytogenes; Mycobacterium vaccae; Neisseria gonorrhoeae; Neisseria meningitidis; Nocardia sp.; Pasteurella multocida; Plasmodium falciparum; Porphyromonas gingivalis; Prevotella intermedia; Pseudomonas aeruginosa; Rothia dentocarius; Salmonella typhi; Salmonella typhimurium; Serratia marcescens; Shigella dysenteriae; Streptococcus mutants; Streptococcus pneumoniae; Streptococcus pyogenes; Treponema denticola; Trypanosoma cruzi; Vibrio cholera; 及びYersinia enterocoliticaにより引起される疾患を含むが、それらに限定はされない。
【0073】
他の態様では、本発明の組成物は、ガンの処置のために哺乳動物に投与される。ガンの例は、乳ガン、結腸−直腸ガン、肺ガン、前立腺ガン、皮膚ガン、骨ガン(osteocarcinoma)及び肝臓ガンを含むが、それらに限定はされない。
【0074】
本発明は、更に、FADDアクチベーター及び薬学的に許容されうる担体を含む医薬組成物に関する。この医薬組成物は、皮下に、非経口的に、静脈内に、皮内に、筋肉内に、経皮的に、腹腔内に又は肺への吸入又はミストスプレー送達のどれかにより投与することができる。
【0075】
担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)又はそれらの適当な混合物及び/又は植物油、固体マイクロ粒子又はリポソームを含有する溶媒又は分散媒質であることができる。適当な流動性は、例えば、コーティング、例えばレシチンの使用、ディスパージョンの場合には必要な粒子サイズの維持及び界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の予防は、種々の抗バクテニア剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等により行うことができる。多くの場合に、等張剤、例えば、糖又は塩化ナトリウムを含むことが好ましいことがある。吸収を遅延させる作用物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物において使用することにより、注射可能な組成物の長期の吸収をもたらすことができる。
【0076】
水性溶液における非経口投与のためには、例えば、溶液は必要ならば適当に緩衝化されるべきであり、そして液体希釈剤は最初に十分な塩又はグルコースにより等張性とされる。これらの特定の水性溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、腫瘍内及び腹腔内投与に特に適当である。これに関連して、使用することができる無菌水性媒体は、本開示に照らして当業者に知られるであろう。例えば、1用量(one dosage)を等張性NaCl溶液1ml中に溶解させ、そして大量皮下注射流体(hypodermoclysis fluid)1000mlに加えるか、又は提唱された注入部位に注射することができる(例えば、"Remington's Pharmaceutical Science" 15th Edition, pages 1035-1038 and 1570-1580)。用量のいくらかの変動は、処置される対象の条件に依存してやむを得ず行われるであろう。いずれにせよ、投与の責任者が、個々の対象について適当な服用量(dose)を決定する。更に、ヒト投与では、製剤は、FDA Office of Biologics標準により要求される、無菌性、発熱原性(pyrogenicity)、一般的安全性及び純度標準を満足する必要がある。
【0077】
無菌注射液は、必要に応じて上記に列挙された種々の他の成分と共に適当な溶媒中に必要な量で活性化合物を加え、続いてろ過滅菌することにより製造される。一般に、ディスパージョンは、基本的分散媒体及び上記に列挙された成分からの必要な他の成分を含有する無菌ビヒクル中に種々の滅菌された活性成分を加えることにより製造される。無菌の注射液の製造用の無菌粉末の場合には、好ましい製造方法は、活性成分+任意の追加の所望の成分の粉末を、先に無菌ろ過されたそれらの溶液から生じさせる真空乾燥及び凍結乾燥技術である。本発明のマイクロ粒子は、Powderject System(Chiron, Corp. Emeryville, CA)を使用して表皮に投与することもできる。Powderjectの送達技術は、ヘリウムガスジェット内で超音速に微細な粒子を加速することにより働き、そして医薬及びワクチンを苦痛なしに又は針を使用しないで、皮膚及び粘膜注射部位に送達する。
【0078】
本明細書に開示された組成物は、中性又は塩形態で配合することができる。薬学的に許容されうる塩は、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と形成された)を含み、該酸付加塩は、無機酸、例えば塩酸又はリン酸、あるいは酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸等の如き有機酸と形成される。遊離カルボキシル基と形成される塩は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム又は水酸化第二鉄、並びにイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカイン等の如き有機塩基から誘導することもできる。処方(formulation)されると、溶液は、投与処方(dosage formulation)に適合性の方式で且つ治療的に有効であるような量で投与されるであろう。配合物(formulations)は、注射液、薬物放出カプセル等の如き種々の投与形態で容易に投与することができる。
【0079】
「薬学的に許容されうる」又は「薬理学的に許容されうる」という語句は、ヒトに投与されるときアレルギー反応又は同様な都合の悪い反応を生じない分子実体(molecular entities)及び組成物を指す。活性成分としてタンパク質を含有する水性組成物の製造は、当該技術分野で周知されている。典型的には、このような組成物は、注射可能な液体溶液又は懸濁液として製造され、注射の前に液体に溶解又は懸濁させるのに適当な固体形態も製造されうる。
【0080】
本明細書で使用された「治療的に有効な量」という用語は、器官又は組織における所望の治療効果又は予防効果を少なくとも部分的に達成するその量である。FADD欠失関連疾患(例えば感染性疾患及びガン)又は状態の予防及び/又は治療処置をもたらすのに必要なFADDアクチベーターの量は、それ自体固定されていない。有効量は、使用される組成物の本質及び形態、必要とされる保護の程度又は疾患の重篤性又は処置されるべき状態に必ず依存する。
【0081】
本発明を下記の実施例により更に説明するが、該実施例は限定するものとみなすべきではない。本願全体にわたり引用されたすべての参考文献、特許及び公開された特許出願並びに図及び表は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0082】
実施例1:FADD欠如繊維芽細胞はウイルス感染に対して感受性である。
FADDを欠いたマウス胚繊維芽細胞(MEFs)はウイルス感染に対して超感受性であるらしいと観察される[Balachandran, et al., J.Virol., 74:1513-1523, 2000]。この表現型を更に検査するために、IFN感受性、原型ラブドウイルス水痘性口内炎ウイルス(VSV)を使用するFADD+/−及びFADD−/−MEFsにおけるウイルス複製の詳細な分析を行った。
【0083】
簡単に言えば、FADD+/−及び−/−MEFsを、18時間のIFNα/β(500U/ml)又はIFN−γ(5ng/ml)予備処理のあるなしで、VSV(MOI=5)を感染させ、そして顕微鏡写真を感染の48時間後に撮った。感染の後、FADD−/−MEFsにおいてVSV複製が有意に増加した(>100倍)ことが観察され、これは付随的にその野生型対応物と比べて速い細胞溶解を受けた(図11a)。
【0084】
更に、カスパーゼ−8+/+及び−/−MEFsを、18時間のIFNα/β(500U/ml)又はIFN−γ(5mg/ml)予備処理のあるなしで、VSV(m.o.i.=5)を感染させ、そして顕微鏡写真を感染の48時間後に撮った。I型(α/β)又はII型(γ)IFNによる12時間のMEFsの処置は、正常な細胞における有意な抗ウイルス活性を発揮すると思われたが、予想されたように、これらの重要な抗ウイルスサイトカインは、24時間までの間FADD−/−MEFsにおいてウイルス複製の開始を遅らせただけであり、その後、ウイルス複製は抑制されないで進行した(図11b−e)(図11cにおいて、感染後の指示された時間に、培地をBHK細胞に関する標準プラークアッセイにより子孫ウイルスの存在を検査した)。観察された感染に対する感受性は、VSVに限定されなかった。何故ならば、FADDを欠いた細胞は、インフルエンザウイルス(INV)及び脳心筋炎ウイルス(EMCV)を含む他のウイルス型にも感受性であったからである(図12)。これらのデータは、FADDがウイルス感染に対する宿主防御において役割を発揮することを示すので、観察された抗ウイルス活性が規定カスパーゼ8依存性シグナリング経路により支配されているかどうかに関して更なる調査を行った[Muzio, et al., Cell, 85: 817-827, 1996]。しかしながら、カスパーゼ8を欠くMEFsは、コントロール細胞に比べてVSV感染に対する過剰な感受性を示さず、IFNの抗ウイルス効果に応答する能力を保持していた(図11f)。図11fにおいて、IFN予備処理は、カスパーゼ−8+/+及び−/−EFsの両方においてVSV複製を有意に阻害する。カスパーゼ−8+/+及び−/−MEFsを、18時間のIFNα/β(500U/ml)又はIFN−γ(5mg/ml)予備処理のあるなしで、VSV(m.o.i.=5)を感染させた。感染後の指示された時間に、培地をBHK細胞に関する標準プラークアッセイにより子孫ウイルスの存在を検査した。図11は、FADDがカスパーゼ−8非依存性経路をとおして抗ウイルス活性を発揮することを証明する。
【0085】
実施例2:IFNシグナリングはFADDの不存在下に欠如しない
I型及びII型IFNへの暴露は、FADD−/−MEFsをウイルス複製から完全に保護することはできなかったので、JAK/STAT経路による効果的なIFNシグナリングは、活性のために機能的FADDを必要としうることはもっともと思われた。IFN媒介シグナリングにおけるFADDの潜在的要求を分析するために、FADD+/−及びFADD−/−MEFsを、I型及びII型IFNで処理し、そして重要なIFNシグナルトランスデューサーSTAT1の発現及び活性を測定した[Levy, et al., Nat. Rev. Mol. Cell. Biol. 3: 651-662, (2002)]。
【0086】
しかしながら、Y701のリン酸化もIFN媒介シグナリングも必要ではなく、STAT1のその後の核トランスロケーションはFADD−/−細胞において害されないようである(図13a−c)。図13aでは、FADD+/−及び−/−MEFsを、指示された時間IFNα/β(500U/ml)又はIFN−γ(5mg/ml)で処理し、STAT1ホスホ−トリオシン701特異的抗体(STAT1 phospho-tryosine 701-specific antibody)を使用するイムノブロッティングにより、STAT1リン酸化状態を決定した。図13bでは、FADD+/−及び−/−MEFsを、GFP−STAT1融合タンパク質をコードするプラスミドでトランスフェクションした。トランスフェクションの24時間後、細胞を、IFNα/β(500U/ml)又はIFN−γ(5mg/ml)により又はIFNα/β(500U/ml)又はIFN−γ(5mg/ml)なしで1時間処理し、そしてSTAT1局在化をGFP蛍光顕微鏡法により決定した。図13cでは、FADD+/−及び−/−MEFsを、IFNα/β(500U/ml)又はIFN−γ(5mg/ml)のあるなしで18時間処理した。これらの細胞から調製された溶解物を、指示されたIFNで誘発されたタンパク質についてイムノブロット分析に付した。
【0087】
同様に、IRF−1、PKR及びSTAT2を含む選ばれたI型及びII型IFNで誘発された遺伝子のIFNに応答する発現は、FADD−/−細胞では影響を受けなかったようである[Der, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95: 15623-15628, 1998]。最後に、I型IFN(ISRE)又はII型(GAS)の制御下のルシフェラーゼレポーター遺伝子は、IFNで処理されたFADD−/−細胞にトランスフェクションされると正常な活性を示した(図10d)。図13dでは、FADD+/−及びFADD−/−MEFsをインターフェロンで刺激される応答エレメント(ISRE−Luc)又はインターフェロンガンマアクチベート配列(GAS−Luc)の制御下にルシフェラーゼを発現するプラスミドでトランスフェクションした。24時間後、細胞をIFNα/β(500U/ml)又はIFN−γ(5ng/ml)のあるなしで刺激し、そしてルシフェラーゼ活性を処理の18時間後に測定した。これらの観察は、IFNシグナリング自体はFADDの不存在下で弱められないことを示す。
【0088】
実施例3:FADDの不存在下における細胞内dsRNAによるIFN−βの欠如した誘発
実施例1及び2における観察にもかかわらず、外因性IFNへの12時間の暴露により最初に確立された抗ウイルス状態は、短命であり、多分ウイルス感染の後絶え間ない新規な合成を必要とすることはもっともと思われる(図11a)。例えば、VSV感染の後にFADD−/−細胞の培地への組換えIFN−βの絶え間ない補充は細胞を細胞溶解から保護することが認められた(図13e−13f)。図13eにおいて、IFNで処理したFADD−/−MEFsをVSV(m.o.i.=5)で感染させ、次いでIFN−β(500U/ml)のあるなしで処理した。細胞を感染の48時間後に写真に撮った。図13fにおいて、IFNで処理したFADD−/−MEFsをVSV(m.o.i.=5)で感染させ、次いでIFN−β(500U/ml)のあるなしで処理した。細胞生存性及びウイルス子孫収率を感染の48時間後に測定した。
【0089】
IFN産生が常に必要であることは、正常な細胞のVSV感染の後、分泌されたIFN−βの抗体媒介中和が、ウイルス感染に対する感受性を再び引起す(図14a及び14b)ことを証明することにより更に強調された。図14aでは、FADD+/−細胞をIFNα/β(500U/ml)で処理し、又は未処理のままにした。次いでこれらの細胞をVSV(m.o.i.=5)で感染させ、そして中和性抗IFN−β抗血清の存在下又は不存在下に更に48時間インキュベーションした。感染の48時間後に写真を撮った(倍率、200倍)。図14bでは、図14aと同じく処理されたFADD+/−細胞をVSV子孫収率又はトリパンブルー排除による細胞生存性について検査した。
【0090】
これらの分析は、ウイルス感染後のIFN−βの産生の欠如は、ウイルス感染に対するFADD−/−細胞の感受性を説明するかもしれないことを示した。この可能性を検査するために、FADD+/−及びFADD−/−細胞をIFN−βプロモーターの制御下にルシフェラーゼレポーター構築物でトランスフェクションし、次いでウイルス感染後のIFN産生の一次トリガーであると考えられるポリ(IC)、ウイルスdsRNAの合成模倣物、を投与した[Kerr, et al., Philos. Trans. R. Soc. Lond. B Biol. Sci., 299:59-67, 1982]。簡単に言えば、FADD+/−及びFADD−/−MEFsを、ヒトIFN−βプロモーターの制御下にルシフェラーゼをコードするプラスミドでトランスフェクションした(IFN−β−Luc)。24時間後、これらの細胞を、ポリ(IC)のみ[50μg/ml]、トランスフェクションされたポリ(IC)[リポフェクタミン2000中の4mg/ml]又はLPS(5ml/ml)で処理し、そしてルシフェラーゼ活性を処理後6又は24時間目に測定した。データは、トランスフェクションされたポリ(IC)は、FADD+/−細胞においてIFN−βプロモーターの強い(>10倍)誘発をトリガーしたが、FADDを欠く細胞ではトリガーしなかったことを示す(図15a)。
【0091】
更に、FADD+/−及びFADD−/−MEFsを、ポリ(IC)のみ[50μg/ml]、トランスフェクションされたポリ(IC)[リポフェクタミン2000中の4mg/ml]又はLPS(5mg/ml)で処理し、そして上清中のIFN−αを処理の6又は24時間後にELISA(PBL)により測定した。トランスフェクションされたdsRNA及びVSVに応答するIFN産生の欠陥(defect)は、IFN産生に特異的なELISAの後のFADD欠如MEFsにおいて確認された(図15b、そしてデータは示されていない)。
【0092】
図15cにおいて、FADD−/−MEFsを、IFN−β−Lucと共に、空のベクター(pcDNA3Neo)又は完全長mFADをコードするpcDNA3Neoによりトランスフェクションした。24時間後に、細胞をポリ(IC)[リポフェクタミン2000中の4mg/ml]でトランスフェクションし、そしてルシフェラーゼ活性を6又は24時間後に測定した。結果は、IFN−βのポリ(IC)で誘発された活性化の回復は、FADD−/−MEFsにマウス(m)FADDを一過性にトランスフェクションすることにより達成されうることを示す(図15c)。
【0093】
更に、カスパーゼ−8+/+及びPKR−/−細胞をIFN−β−Lucでトランスフェクションした。24時間後に、これらの細胞をポリ(IC) [リポフェクタミン2000中の4mg/ml] でトランスフェクションし、そしてルシフェラーゼ活性を6時間後に測定した。ポリ(IC)で誘発されたIFN−β誘発の欠如は、カスパーゼ−8欠如MEFs(caspase-8 deficient MEFs)において明らかではなかった(図15d)。IFN−βの誘発はトランスフェクションされていない外因性ポリ(IC)のみを使用して強くは観察されなかったので、正常なMEFsにおいて観察されたIFN誘発は、殆ど確実に、細胞内dsRNA認識成分が関与し、そしてTLR3非依存性であると結論することができる(図15a−b)。しかしながら、シグナリングは、dsRNAで活性化された分子PKRが関与しないらしく、何故ならば、このキナーゼを欠いたMEFsは、トランスフェクションされたdsRNAに応答してIFN−β誘発を保持していたからである(図15e−f)。図15eにおいて、PKR+/+及びPKR−/−MEFsを、IFN−β−Lucでトランスフェクションした。24時間後、これらの細胞をポリ(IC)[リポフェクタミン2000中の4mg/ml]でトランスフェクションし、そしてルシフェラーゼ活性を6時間後に測定した。
【0094】
図15fでは、FADDのRNAi媒介ノックダウンは、細胞内dsRNAシグナリング経路を無効にするが、PKR又はTLR3はしなかった。HeLa細胞をmFADD、hFADD、PKR又はTLR3からのsiRNA配列で処理し、そしてそれぞれの遺伝子産物のノックダウンを、イムノブロッティング及びRT−PCRにより確認した(データは示されていない)。次いで、これらの細胞をIFN−β−Lucでトランスフェクションし、次いでポリ(IC)(リポフェクタミン2000中の4mg/ml)でトランスフェクションした。6時間後にルシフェラーゼ活性を測定した。
【0095】
更に、VSVで感染したPKR欠如マウスが、IFN−βを誘発する強い能力を保持していた(図15)。観察されたウイルス/dsRNA媒介活性はTLR3シグナリングをとおして説明することはできなかった。例えば、我々は、MEFs、HeLa及び293T細胞において殆どTLR3活性を見出さなかった(図15f−g)。HeLa細胞において、FADDのみのiRNA媒介欠乏(iRNA-mediated depletion)が、トランスフェクションされたポリ(IC)に応答してIFN−βプロモーター活性の殆ど完全な妨害をもたらし、PKR又はTLR3(又は同時に両方)はそうではなかった(図15g)。図15gにおいて、HeLa又はTLR3を、TLR3をコードするプラスミドでトランスフェクションし、そして発現をフローサイトメトリーにより確認した(左)。次いでこれらの細胞を、IFN−β−ルシフェラーゼ構築物でトランスフェクションし、次いでポリ(IC)のみ[50μg/ml]で処理するか又はポリ(IC)[リポフェクタミン2000中の4mg/ml]でトランスフェクションし、そしてルシフェラーゼ活性を6時間後に測定した。
【0096】
かくして、これらのデータは、真核細胞においてTLR3/PKR非依存性dsRNAシグナリング経路を推論させるであろう。FADD媒介抗ウイルス活性の性質を更に詳しく調べるために、IFN−βプロモーター活性化に関与した頂点シグナリングカスケード(apical signaling cascades)の各々、即ち、NF−κB、AP−1及びIRF3を個々に活性化するためのVSV又はポリ(IC)の能力を調べた[Agalioti, et al., Cell, 103: 667-678,2000; Thanos, et al., Cell, 83:1091-1100, 1995]。これらの3つの転写因子の各々に応答するレポーター構築物を使用して、非常に少ないIRF活性及び適度のAP−1/NF−κB活性が、トランスフェクションされたdsRNAに応答して正常なMEFsにおいて検出された。結果は、多分、これらの細胞型をトランスフェクションすることにおける固有の困難及び個々のプロモーターの弱い活性による(データは示されていない)。しかしながら、HeLa細胞におけるNF−κB及びAP−1の強いシグナリングが、トランスフェクションされたポリ(IC)に応答して観察され、これは、FADDの不存在下に明らかに弱くなったように見えた(図13f)。かくして、FADD媒介シグナリングは、NF−κB及びAP−1の活性化に関与する。
【0097】
実施例4:FADDの不存在下の正常なtoll受容体シグナリング
TLR3は細胞外dsRNAの認識に関与しており、これはIRAKファミリーメンバー及びTRAF6の活性化をとおしてIFN−βの誘発をもたらすことができる[Alexopoulou, et al., Nature, 413:732-738, 2001]ことが最近示された。FADDがTLR媒介シグナリングにおいて重要な役割を果たしているかどうかを更に明らかにするために、FADD+/−及び−/−MEFsを、IFN−β−ルシフェラーゼレポーター構築物及びTLRシグナリング経路の種々の成分(例えば、TLR3、IRAK−M、IRAK−1、MyD88、TIRAP/MAL、TRIF/TICAM−1及びTRAF6)をコードするプラスミドでトランスフェクションし、その多くは一過性過剰発現の後にIFN−β遺伝子発現を誘発することが示された[Akira, J. Biol. Chem., 278:38105-38108, 2003]。しかしながら、IFN−βのTLR媒介誘発の抑止は、FADD欠如細胞では観察されなかった(図16a)。図16aでは、指示されたTLRシグナリング成分をコードするプラスミドを、FADD+/−及びFADD−/−MEFsにIFN−β−Lucと共に共トランスフェクションし、そしてルシフェラーゼ活性をトランスフェクションの24時間後に測定した。更に、TLR3、TRIF及びIRAK1過剰発現は、FADD含有MEFs及びFADDを欠いているMEFsの両方において、IFN−βプロモーター活性の>10倍増加を刺激することができた(データは示されていない)。これらの結果は、TRIF欠如MEFsは、FADD−/−とは違って、トランスフェクションされたdsRNAに応答してIFN−βを誘発する能力を保持していたことを証明することにより立証された。
【0098】
これらの発見を更に確認するために、IFN−βのNF−κB/AP−1活性化をモジュレーションすることを担当するTLR活性の重要な下流中間体[Wu et al., Bioessays, 25:1096-1105(2003)]、抗ウイルス免疫におけるTRAF6の役割を調べた。従って、TRAF6+/+及びTRAF6−/−繊維芽細胞を、18時間のIFNα/β(500U/ml)又はIFN−γ(5ng/ml)予備処理の存在下又は不存在下にVSV(MOI=5)で感染させた。しかしながら、FADD−/−細胞と違って、IFNへの暴露は、野生型コントロール細胞と同様なVSV感染に対してTRAF6−/−MEFsを有効に保護したことが見出された(図16b)(顕微鏡写真は感染の48時間後に撮られた)。次に、細胞内ポリ(IC)のTRAF6−/−MEFsにおけるIFN−βプロモーターを活性化する能力を調べた。TRAF6+/+及びTRAF6−/−EFsを、18時間のIFNα/β(500U/ml)又はIFN−γ(5ng/ml)予備処理の存在下又は不存在下にVSV(MOI=5)で感染させた。細胞生存度を感染の48時間後にトリパンブルー排除により決定した。この分析は、トランスフェクションされたポリ(IC)がTRAF6の不存在下にIFN−βを活性化する能力を保持していたことを示し、これは、このアダプター分子が多分、FADD媒介dsRNA細胞内シグナリング(FADD-mediated dsRNA-intracellular signaling)において役割を演じないことを示す(図16c−d)。
【0099】
更に、他のTLR経路におけるFADDの重要な役割は観察されなかった(データは示されていない)。TLR3及びIRAK1がTRAF6−/−の不存在下にIFN−β誘発を媒介することができないことを証明することは、FADDがTLR3/TRAF6及びTRIF経路とは独立に機能することを総合的に示すであろう(図16e)。図16eは、IFN予備処理が、TRAF6−/−MEFsをVSVから保護することを示す。TRAF6+/+及びTRAF6−/−EFsを18時間のIFNα/β(500U/ml)又はIFN−γ(5ng/ml)予備処理の存在下又は不存在下にVSV(m.o.i.=5)で感染させた。この実験では、培地を、BHK細胞に関する標準プラークアッセイによる感染の48時間後の子孫ビリオン(progenyl virion)の存在について調べた。TRAF6の不存在下の正常な細胞内dsRNAシグナリング。TRAF6+/+及びTRAF6−/−EFsを、IFN−β−Lucで24時間トランスフェクションし、次いでポリ(IC)[リポフェクタミン2000中の4mg/ml]で6時間トランスフェクションし、その後ルシフェラーゼ活性を測定した。TLR3及びIRAK−1はIFN−β遺伝子誘発のためにTRAF6を必要とする。TRAF6+/+及びTRAF6−/−EFsを、IFN−β−Lucと共に、TLR3、IRAK−1又はTRAF6をコードするプラスミドでトランスフェクションし、そしてトランスフェクションの24時間後にルシフェラーゼ活性を測定した。
【0100】
実施例5:哺乳動物IMD様経路は抗ウイルス自然免疫を与える。
データは、FADDはウイルス感染に対する自然免疫において重要な役割を演じ、そしてTRAF6媒介TLR3経路から独立であることを示す。更に、FADDは、Drosophilaにおけるバクテリア感染に応答する自然免疫に関与していることが最近報告された。[Leulier, et al., Curr.Biol., 12: 996-1000, 2002; Naitza, et al., Immunity, 17: 575-581, 2002]。これらの生物では、免疫不全(imd)遺伝子産物、哺乳動物デスドメイン含有キナーゼのDrosophlaホモログ、RIPは、dFADDと会合してNF−κB関連経路の活性化及びその後の抗バクテリア遺伝子の誘発をトリガーする[Hoffmann, Nature, 426:33-38, 2003]。FADDが関与するIMD様経路が哺乳動物細胞中に存在するかどうかを決定するために、IFNで処理された又は未処理のRIP−/−MEFsをVSV(MOI=5)で感染させた。図17aは、RIP−/−細胞ではVSVで誘発された細胞溶解を示すが、コントロールでは示さない。この実験では、VSVで誘発された細胞溶解は、FADD−/−MEFsと同様、IFNの存在下ですら観察された。
【0101】
図17b及び17cに示されたとおり、野生型MEFsに比べてIFNで処理されたRIP−/−MEFsにおいて約10〜50倍多くのVSVが発生し、インフルエンザウイルス又はEMCVによる感染の後、同様な結果が得られる。図17bでは、FADD+/−及びFADD−/−EFsを、18時間のIFNα/β(500U/ml)又はIFN−γ(5ng/ml)予備処理の存在下又は不存在下にVSV(m.o.i.=5)で感染させた。感染後の指示された時間に、培地を子孫ビリオン産生について調べた。図17cでは、RIP+/+及び−/−EFsを、18時間のIFNα/β(500U/ml)又はIFN−γ(5ng/ml)予備処理の存在下又は不存在下にVSV(m.o.i.=5)で感染させた。感染後の指示された時間に、培地を子孫ビリオン産生について調べた。
【0102】
更に、RNAiを使用してRIP発現が抑止されたRIP欠如MEFs及びHeLa細胞は、IFN−βプロモーターの細胞内dsRNA媒介シグナリングに選択的に応答不能及び完全な応答不能を示した(図17d−e)。図14eでは、RIP+/+及び−/−EFs(左)又はRIPがRNAiにより特異的にノックダウンされた(右)HeLa細胞を、IFN−β−Lucで24時間トランスフェクションし、次いでポリ(IC)[リポフェクタミン2000中の4mg/ml]で6時間トランスフェクションし、その後ルシフェラーゼ活性を測定した。図17fにおいて、RIP+/+及び−/−EFsを、IFN−β−Lucと共に、TLR3、IRAK−1又はTRAF6をコードするプラスミドでトランスフェクションし、そしてトランスフェクションの24時間後にルシフェラーゼ活性を測定した。これらの結果は、TLR3、IRAK−1、TRAF6及びTRIFは、RIP−/−MEFsにおける一過性の過剰発現の後、IFN−βプロモーター活性を強く誘発することができることを示し、これは、細胞内及び細胞外dsRNAが様々なシグナリング経路を利用してIFN−βを誘発させるという更なる証拠を与える。
【0103】
Drosophilaにおいて、IKK−β/IRD5及びIKK−γ/KennyからなるI−κBキナーゼ(IKK)複合体を介したNF−κB相同体Relish(NF-κB homologue Relish)の活性化をとおして抗バクテリア遺伝子発現の誘発を刺激するのにimd及びdFADDが必要とされる。哺乳動物細胞において、IFN−βの誘発は、NF−κB及びIRF−3の活性化も伴う。図18aにおいて、野生型、又はIKK−α、IKK−β、IKK−γ及びIKK−δ欠如MEFsを、IFNα/β(100Um121)予備処理のあるなしでVSV(MOI 1/4 10)で感染させた。結果は、IFNによる予備処理は、ウイルス感染に対するIKK−α、−β又は−γを欠いているMEFsを有効に保護することができたことを示す(図18a)。この研究は、Tank結合キナーゼ1(TBK−1)/IKK−δを欠いているMEFsを調べることにより補充された。何故ならば、この分子は、MEFsにおいて一次IRF−3キナーゼであると思われるからである。この実験は、FADD−/−及びRIPk1−/−繊維芽細胞と同様に、TBK−1/IKK−δ欠如細胞は、IFNによる予備処理の後ですらウイルス複製及び細胞溶解に対して保護されないことを示した(図18a)。
【0104】
FADD−/−細胞と同様に、これらの結果は、TBK−1/IKK−δ欠如MEFsにおけるI型IFN誘発の欠如により説明されうる。DNAマイクロアレイ、RT−PCR及びELISA分析は、TBK−1/IKK−δの不存在下では、I型IFNのdsRNA応答誘発及び他の抗ウイルス遺伝子もひどく害されることを確認した(図18b−d)。これらの結果は、FADDが主としてIRF−3のTBK−1活性化を通してその効果を媒介することができることを示す。従って、TBK−1/IKK−δ及びIKK−1によるリン酸化の後に起こるIRF−3トランスロケーションは、トランスフェクションされたdsRNAで処理した後のFADD−/−細胞において欠如していることが見出された(図15e及びf)。特に、Irf3−/−MEFsは、I又はII型IFNへの暴露後のウイルス感染に対して完全には保護されなかった(図18g)。同様に、DNAマイクロアレイ、RT−PCR、ELISA及びRNA干渉分析は、細胞内dsRNAの、IRF3−/−MEFsにおけるI型IFN産生を誘発する能力の欠如を確認した(図18h〜j)。
【0105】
これらの結果は、ウイルスdsRNAsは、FADD及びRIP1を「インネイテオソーム("innateosome")」複合体に動員してIRF−3のTBK−1/IKK−δ媒介活性化を調節することができる細胞内受容体分子により認識されることを示唆する。FADD又はRIP1の損失は、IFN−β産生の欠如及びその結果としてのIRF−7の産生の遅れ及び抗ウイルス状態3の強化に必要なIFN−αファミリーのメンバーの産生の遅れをもたらすことが示された。TBK−1/IKK−δ欠如MEFsは、FADD欠如MEFs又はRIP1欠如MEFs単独よりも、dsRNA刺激に応答するI型IFNsの誘発のより深い欠如(profound defect)を示すが、これは、細胞内dsRNAで活性化された複合体はFADDの不存在下にいくらかの活性を保持していること、又は別のFADD非依存性細胞内シグナリングカスケードがTBK−1/IKK−δに収斂することを示唆しているらしいことに注目すべきである。このRIP1/FADD/TBK−1(RIFT)経路は、TLR3、PKR、TRIF/TICAM−1又はTRAF6から殆ど独立しているようであり、そしてDExD/HヘリカーゼRIG−Iの如き別の細胞内のdsRNA活性化シグナルトランスデューサーの存在を示唆する他の発見と合致している。
【0106】
実施例6:バクテリア感染に対する哺乳動物応答におけるFADDの役割
Drosophilaにおけるimd経路の役割が、グラム陽性菌感染に対する応答に関与することが報告され、そして抗ウイルス経路の存在はまだ決定されていない。哺乳動物細胞におけるFADD又はRIPの損失により生じる細胞内バクテリア感染に対する自然応答がどうであるかを調べ、そして図19に示す。簡単に言えば、FADD+/+、FADD−/−又はRIP−/−MEFsを、IFN−α/β又はIFN−γのあるなしで18時間処理し、そして細胞内グラム陽性菌、Lysteria monocytogenesの一夜培養物5μlで感染させ、そしてゲンタマイシン10ig/mlを含有する培地中で更に24時間インキュベーションし(図19a及び19b);あるいは、グラム陰性Salmonella typhimuriumの一夜培養物50μlで感染させ、そしてゲンタマイシン10ig/mlを含有する培地中で更に48時間インキュベーションした(図19c)。有意義なことに、バクテリア感染への暴露の後FADD及びRIP欠如繊維芽細胞において劇的な細胞死が起こることが観察された。この効果は、バクテリア複製の増加を伴っていた。このデータは、昆虫細胞と同様に、FADD経路は、バクテリア感染に対する自然免疫において重要であることを示す。
【0107】
実施例7:大きな表面積を有するキトサン粒子の予備製造
マイクロスプレーエアーガン(Micro Spray Air Gun)又はエレクトロスプレー(Electrospray)法を、キトサンマイクロ粒子予備製造のために使用した。マイクロスプレーエアーガン法では、キトサン溶液を、ガンについて可能な最小の寸法に乱流で分散させた。粒子のサイズは主として表面張力により制御され、そして〜20〜100ミクロンの範囲にあった。
【0108】
エレクトロスプレーは、液体の静電噴霧の方法である。静電界は、流体を毛細管電極から受け入れ対極に向けて強制的に噴出させる。クーロン反発による小滴の第2段階分割(splitting)及び微粉砕は、微細な微小滴のプルーム(plume)を生成させる。表面フィルム形成を防止するために、改変されたエレクトロスプレー法をセットアップした。
【0109】
架橋溶液(トリポリホスフェート、TPP)の静止した表面へのキトサンのエレクトロスプレーは、キトサン溶液の極めて微細な且つ均質な粉砕により、マイクロ粒子の代わりに安定化されたキトサンの薄い表面フィルムを形成した。この望ましくない効果を阻止するために、架橋溶液の乱流再循環を考案した(図20)。循環マイクロポンプは、フィルムの破壊に必須の受け取り電極板におけるTPP溶液のオープンループ循環を与えた。改変されたエレクトロスプレー装置を使用して、水及び25%エタノール中の1%、1.5%及び2%キトサン溶液を粉砕した。25Gステンレス鋼毛細管(EFD)は、粉砕電極として作用し、10%TPP溶液100mlを含有する10インチステンレス鋼板は受け取り対極として使用された。架橋TPP溶液の乱流攪拌を伴うエレクトロスプレーは、マイクロスプレーガンプルーム様式を使用して得られたマイクロ粒子よりも小さい粒子を創生した:サイズは〜5〜50ミクロンの分布で生じた(図21)。
【0110】
改変されたエレクトロスプレー法により予備製造されたキトサン小滴は、およそミクロンサイズであり:エレクトロスプレープルームによる赤色レーザービームの有意な90°散乱が観察され、これは光の波長に匹敵する小滴サイズを示している。乾燥粒子で観察されるより大きい見掛けのサイズは、その後の変換:TPP溶液と接触すると、表面張力は、微小滴をTPPの表面に極薄シートに広げる、により説明される。この格別の形状は顕微鏡で十分に見られた。凍結乾燥すると、マイクロシートは収縮してしわくちゃの紙に似た形状となり、そして再懸濁後に決して再び広がらない。マイクロ粒子を予備製造する上記した方法は、大きな表面積を有する広範囲のマイクロ粒子を生成する。より小さいサイズの粒子は、樹状細胞により飲み込まれうる。他方、これらの粒子の大きい表面積は、核酸及びタンパク質による外部飽和のための有意な利点を与える。
【0111】
実施例8:ポリイノシン酸−ポリシチジル酸をロードされたキトサン粒子
ポリイノシン酸−ポリシチジル酸、ポリ(IC)は、合成のミスマッチな二本鎖RNAからなるインターフェロン(IFN)誘発物質である。このポリマーは、ポリイノシン酸及びポリシチジル酸の各一本鎖から作られる(図22)。
【0112】
ポリアニオンであるので、ポリ(IC)は、ポリカチオンキトサンにより強く吸着される。ポリ(IC)をロードされたキトサン粒子の2つの製造方法を使用した:バルクキトサン溶液への混合及びポリ(IC)溶液中の空の粒子のインキュベーションによる予備製造されたキトサン粒子のポリ(IC)による外部飽和。
【0113】
1.ポリ(IC)による外部飽和
改変されたエレクトロスプレー法を使用して予備製造された粒子、普通は乾燥総計20〜50mgを、3.0mg/mlでPBS中に可溶化されたポリ(IC)(VWR International, Cat. #IC10270810)0.6ml中に入れた。室温で2時間の穏やかな振とうの後、粒子を、すべて1000Gで2分間5回遠心し、各回上清を捨て、そして蒸留水1.5mlで置き換えた。洗浄された粒子の得られる懸濁液を一夜凍結乾燥した。
【0114】
2.エチジウムホモ二量体を使用する溶液中のポリ(IC)の測定
溶液中のポリ(IC)の濃度を決定するために、エチジウム誘導体のインターカレーションによる20〜25倍の蛍光増強の効果を使用した。
【0115】
エチジウムホモ二量体(ETDH; Sigma-Aldrich, Cat. #46043)は、そのキレート構造により(図23)、DNA、RNAと及び遊離ヌクレオチドとさえ、特異的複合体を形成することが知られている。結果として、それはポリ(IC)を測定するための最も適当な蛍光インターカレーション剤と考えられた。Bio−TekKC−4多機能プレートリーダーを使用して、標準透明96ウエルプレート中のエチジウムホモ二量体(ETDH)でインターカレーションされたポリ(IC)を測定した(図24)。測定を行うための条件は表1に示される。
【0116】
【表1】
【0117】
粒子中のポリ(IC)の測定
KC−4リーダーを使用して固体キトサン粒子におけるポリ(IC)含有率の半定量的評価を行うことが可能であることが見出された。水溶液中のマイクロ粒子は、その小さなサイズのため、十分に透明であるとみなすことができ、そしてランダム散乱性物体とみなすことができる。ゆえに、ポリ(IC)の表面結合分子においてETDHがインターカレーションし、そしてポリ(IC)の残りを含有する粒子の内側に更に拡散すると、ETDH蛍光の有意な部分がKC−4リーダーにより集められることができる(図25)。
【0118】
粒子を溶液中に浸漬することによる、粒子のポリ(IC)による外部飽和は、キトサン溶液中にポリ(IC)を直接混合することよりもはるかに優れていることが見出された。これを図26に示す。ETDHの存在下のポリ(IC)粒子の時間依存性蛍光は、2つの異なる相:蛍光の速い(数秒)増強を伴う容易にアクセス可能な表面ポリ(IC)分子の即時のインターカレーション及び粒子の深部へのETDHのゆっくりした浸透による蛍光の安定した増加、を証明した。最大表面ローディングを有する、即ち、蛍光の高められた速い増強を示す、粒子を得ることが必要と考えられた。
【0119】
キトサン/ポリ(IC)粒子の製造のプロトコールについて、効率の下記の試験的順序が見出された。
【表2】
【0120】
エレクトロスプレーを使用して製造された最善の粒子におけるポリ(IC)の容易にアクセス可能な表面分子は、粒子1mg当たりポリ(IC)4.7μgを含んでいたが、これは直接混合によりマイクロガンを使用して製造された粒子の場合より〜12倍高かった(それぞれ、図26におけるグラフ7及び2)。
【0121】
4.キトサン粒子からのポリ(IC)の低い放出
キトサン溶液へのポリ(IC)の直接混合により製造された粒子、10mg乾燥重量をプラスチック試験管中のPBS1ml中に入れ、シールし、そしてシェーカー上で37℃で9日間インキュベーションした。粒子を或る時点で1000Gで5分間遠心し、上記したとおりのETDHの存在下に蛍光アッセイのために、上清を採取し、そして新たなPBSで置き換えた。観察された放出は、有意ではなく、227時間にわたり理論的最大値の0.5%未満で起こった(図27)。キトサン粒子からのポリ(IC)の不十分な放出は、混合及び飽和製造法の両方で得られた粒子で見出された。粒子がファゴサイトーシスされるべき場合には、このことはあまり重要ではないことがある。
【0122】
実施例9:OVA及びポリ(IC)をロードされた多機能性キトサン粒子
オブアルブミン(OVA)は、免疫学的実験でモデル抗原として使用することができる45kDa糖タンパク質である。OVA/ポリ(IC)をロードされたキトサン粒子の2つの製造方法を使用した:バルクキトサン溶液への混合及びOVA/ポリ(IC)によるマイクロ粒子の外部飽和。
【0123】
1.OVAのみ又はOVAとポリ(IC)との組み合わせによる外部飽和により製造されたキトサンマイクロ粒子。
エレクトロスプレーにより予備製造された粒子、全乾燥重量20〜50mgを、30mg/mlOVA(Sigma-Aldrich, Cat. #A-5503)又は30mg/mlOVA_2mg/mlポリ(IC)、1.5ml中に室温でロッカー上で2時間入れた。2時間の穏やかな振とうの後、粒子を各回1000Gで5回遠心し、上清をすて、そして蒸留水1.5mlで置き換えた。かくして洗浄された粒子の得られる懸濁液を一晩凍結乾燥した。
【0124】
2.OVAのビシンコニン酸アッセイ
タンパク質のビシンコニン酸(BCA)アッセイは、2つの主要な工程に基づいている:
● 第1工程は、Cu+2をCu+1に還元するビウレット反応である。
● 第2工程では、ビシンコニン酸(BCA)はビウレット錯体におけるペプチド基を置換して、Cu+1 とのビスキレート錯体を形成し、これは紫色であり、そして562nmで検出できる(図28)。
【0125】
商業的に入手可能なBCAキット(例えば、Sigma-Aldrich, Cat. #BCA1)は、通常BCA、酒石酸塩/重炭酸塩緩衝剤(pH11.25)及び4%硫酸銅溶液を含有する。アッセイの直前に、標準アルカリ性BCA溶液50部をアッセイ系として使用されるべき4%硫酸銅溶液1部と混合する。
【0126】
タンパク質は、溶液中及び不溶性物体中(緩衝剤中に懸濁させたマイクロ粒子;不溶性タンパク質含有フィルムのサンプル等)の両方においてBCAアッセイで測定することができる。しかしながら、ヘテロ相システムは、BCA溶液中のサンプルのより長い、そしてより高い温度での(溶液中のタンパク質での37℃に対して60℃)インキュベーションを必要とする。
【0127】
3.溶液中の及び不溶性物体中のOVAのアッセイ
アッセイ溶液ml当たり60μgまでタンパク質をストレッチすることを行った線形応答の面積を決定するために、新鮮なBCAアッセイ溶液をOVA標準により較正した(図29)。
【0128】
溶液中のOVAを下記の如く測定した:
タンパク質溶液のアリコートを、必要な過剰のアッセイ溶液に加えて2以下の最終光学的吸光(final optical extinction)及びアッセイの線形応答を完全に保証した。分析物をロッカー中で37℃で1時間インキュベーションした。すべての読みはタンパク質を含有しないブランクサンプルの読みに対して補正した。
【0129】
マイクロ粒子中のOVAを下記のとおりに測定した:
乾燥マイクロ粒子のサンプル(各々約1mg)を、分析天秤(Mettler-Toledo XS105)で0.01mgの正確度で重量を秤り、そして線形応答及び許容されうる光学密度(<2o.u.)を与えるように予備計算された対応する過剰のBCAアッセイ溶液中に懸濁させた。試験管中にシールされたサンプルをロッカー中で37℃で4時間又は水浴中で時々タンプリングしながら60℃で1時間インキュベーションした。両方の場合に、インキュベーション時間を、タンパク質の分子による二価の銅の一価の銅への完全な還元を与えるように実験的に決定した。管を、500gで5分間遠心して、粒子を分離し、そして透明な(clear)着色した溶液を562nmで分光光度計により読み取った。すべての読みは、タンパク質を含有しないブランク粒子で得られたサンプルの読みに対して補正した。
【0130】
実施例10:適度のローディングタンパク質及び核酸を有する多官能性マイクロ粒子
1.マイクロ粒子中のOVA含有率の評価
タンパク質を直接混合により粒子に加えると、粒子調製の異なる方法は、OVAの最終含有率に対して有意な効果はないようであると見出された。しかしながら、タンパク質が予備製造された粒子の外部飽和(浸漬(soaking))によりロードされると、結果は異なっていた。外部飽和は、3〜5倍高い最終OVA濃度を有するマイクロ粒子を造り出した。
【0131】
改変されたエレクトロスプレー及びマイクロスプレーガンは、しわくちゃの紙の幾何学及び形状を示す非常に高い表面積を有する小さな粒子の予備製造を可能とする。粒子の小さなサイズ及び大きな表面積のマイクロ粒子は、放出速度よりもむしろ高い吸収容量に貢献した。
【0132】
高い表面積は、溶液中のマイクロ粒子の外部飽和を介してNA及びタンパク質が付着するための大きな外表面を与える。
【0133】
【表3】
【0134】
2.マイクロ粒子からのオブアルブミンの時間放出を測定すること
ロードされた粒子のサンプル、各々10.0mgの乾燥重量を、プラスチック試験管中のPBS1.0ml中に入れ、パラフィンでシールし、そして37℃で18日までシェーカー上でインキュベーションした。管を、1000Gで5分間ある時点で遠心し;上清を上記したとおりのBCAアッセイのために採取した。
【0135】
タンパク質を混合することにより及びタンパク質溶液中に予備製造された粒子を浸漬することにより製造された粒子からのOVAの放出プロフィルにおいて大きな差が見出された(図30)。前者では、全体の放出は多日数で総ロードの2%を決して超えなかったが、後者では、放出は15%〜30%を達成し、そして最初の7〜10時間で起こった。OVAの総含有率に対する効果と同様に、OVA及びポリ(IC)を有する粒子の同時的飽和は、OVAの放出を見かけ上減少させた(図30)。
【0136】
実施例11:ポリイノシン酸−ポリシチジル酸を高度にロードされたキトサン粒子
エレクトロスプレーを使用して製造された最善の粒子におけるポリ(IC)のアクセス可能な表面付着分子は、粒子1mg当たり4.7μgポリ(IC)を含有していた。粒子のサイズは〜5〜50ミクロンに分布して生じており、そしてトリポリホスフェート(TPP)を架橋剤として使用した。ゆえに、最も近い目標は粒子の収着容量(sorption capacity)を増加させるように設定された。
【0137】
粒子の収着容量を高めるために、キトサン架橋剤を変えることが望ましいことが見出された。より軟質の粒子を造りだし、そして同時に核酸のホスフェート基に結合することに対してはるかに弱い競合者である有望なゲル化架橋剤として、硫酸ナトリウムNa2SO4(特記しない限り、蒸留水中10%)が選ばれた[Berthold, et al., J. Controlled Release, 39: 17-25(1996)]。
【0138】
ポリ(IC)をロードされたミクロより大きい(supra micro)(即ち、大きい)−及びサブミクロン(小さい)プロタサン粒子(Protasan particles)を製造した。ミクロより大きい粒子(20〜700ミクロン)は、ケモカイン又は薬物担体として使用されると思われ、又は細胞外TLR−3免疫経路を活性化すると思われ;それらは細胞により呑み込まれるのを回避するであろう。
【0139】
他方、抗原提示細胞により呑み込まれ、そして一次自然免疫応答の活性化のための中心である内部FADD/RIP/TRAF−2経路を介してプロセッシングされうるより小さな粒子(0.5〜10um)により核酸及び抗原が担持されると、免疫感作が有効であることが知られる。
【0140】
実施例12:ポリイノシン酸−ポリシチジル酸を高度にロードされたミクロンより大きいプロタサン粒子
100mlNa2SO4溶液pH5.5を含有する受け入れパンの上で層流モードにおいてマイクロエアーガンを使用する1%酢酸中のPROTASAN UP CL 213(NovelMatrix, Norway, cat#420101)の2%溶液10mlを噴霧して、より大きい粒子(100〜200ミクロンを得た。
【0141】
プロタサンを製造し、そして、cGMPのUS FDAガイドラインに従って証明した(21CFR210,211)。
【0142】
粒子を、繰り返し遠心/再懸濁手順を使用して蒸留水中で6回洗浄し、そして一夜凍結乾燥した。得られる粒子は、〜10〜200ミクロンの不規則でスポンジ状の断片を発生した(図31A)。
【0143】
1.ポリ(IC):可溶化及び測定
ポリ(IC)(Amersham, cat. #27-4729-01)50mgを、製造者により推奨されたとおり、1%NaCl35ml中に一晩溶解した。最終溶液は、260nmにおける吸光度A260〜14.0を有していたが、これはml当たり純粋な二本鎖ポリ(IC)700μgに相当した。故に、Amersham製剤中のポリ(IC)の総含有率は約49〜50%であり、すべての他の成分は緩衝性塩であつた。
【0144】
粒子中のポリ(IC)の量は、システムに加えられたポリ(IC)と粒子沈殿後の水相に残っているポリ(IC)との差として計算された[Bivas-Benitz, et al., Int. J. Pharm, 266: 17-27(2003)]。溶液中のポリ(IC)の濃度を測定するために、ポリ(IC)UVスペクトルの直接的読み取りを、製造に関与したポリ(IC)の非常に高い濃度により、蛍光法の代わりに使用した。
【0145】
2.予備製造された粒子によるポリ(IC)の収着の測定
異なる実験におけるポリ(IC)50〜700ug/mlを含有する酢酸塩又はリン酸塩緩衝剤0.5〜5mlの容積中に、既知の重量の粒子を懸濁させた。懸濁液を強く5分間ボルテックスし、次いで中間レベルでボルテックスして保ち、次いで更に15分間ロックした。その後、懸濁液を、7000gで5分間遠心し、そして上清中のポリ(IC)の濃度を1cm石英セルを使用して分光光度計で測定した。260nm及び400nmにおける吸光度の差を使用してポリ(IC)の濃度を決定し、ここで、どの1光学的単位も〜50μg/mlポリ(IC)に相当していた(American Biosciences, specification for the Product#27-4732)。
【0146】
3.pHに依存するミクロンより大きいプロタサン粒子の収着容量
ポリ(IC)0.7mg/mlの溶液を、3つの異なる緩衝剤:1%酢酸塩緩衝剤pH4.5;1%酢酸塩緩衝剤pH5.5;PBSpH7.4と1:1で混合した。各部分における乾燥プロタサン粒子、1.0+−0.04mgを、(ポリ(IC):緩衝剤)混合溶液1.0ml容積中に懸濁させた。ボルテックス及び遠心後に、ポリ(IC)の吸着されなかった残りを上記のように測定した。すべての3つのサンプルは、乾燥空粒子mg当たりポリ(IC)0.7mgに等しいか又はそれを超える、プロタサン粒子の同様な収着容量を示した(図32a)。けれどもサンプルの物理的状態は異なっていた。pH4.5のサンプルは、粒子の最もコンパクトな沈殿を示し、これに対してpH5.5のサンプルは大きく且つ圧縮できないペレットを示し、そしてpH7.4のサンプルは中間の圧縮を示した(図32B)。粒子の最大収着容量は、後でpH4.5で最も高いことが見出された(図32C)。
【0147】
上記発見の結果として、種々の粒子によるポリ(IC)の収着に関するすべてのその後の実験は、pH4.5で行われた。
【0148】
架橋剤として硫酸ナトリウムを使用して予備製造されたプロタサン粒子へのポリ(IC)の収着に関する実験は、pH4.5の最大収着容量は、空粒子1mg当たりポリ(IC)2mgを超えたことを証明した。この結果は、TPP架橋剤による結果に対して〜400倍の改良を示した。
【0149】
実施例13:ポリ(IC)を高度にロードされたサブミクロンプロタサン粒子
希釈した溶液からのプロタサン/ポリ(IC)/架橋剤凝集物のゆっくりした沈殿を用いてサブミクロン粒子を製造した。
【0150】
0.1%酢酸塩緩衝剤pH4.5中の200μg/mlのポリ(IC)溶液200mlを、室温で絶えず攪拌しながら0.1%酢酸塩緩衝剤中の200μg/mlプロタサン溶液200mlに15分以内に滴下により加えた。得られる溶液を30℃で1時間攪拌し、その後硫酸ナトリウムの10%溶液400mlを、15分以内に滴下により加えた。組み合わせた溶液の最終800mlを、30℃で2時間攪拌し、次いで5000Gでの遠心により沈殿させた。ペレットを上記したとおり蒸留水中で2回洗浄し、水中に再懸濁させ、次いで40umBD Falconセルストレーナーを通してろ過し(BD Biosciences, cat.#352340)、次いで再び沈殿させ、そして最後に〜5mg/mlで水中に再懸濁させた。これらの粒子のサイズは1〜20ミクロンの範囲に見出された(図31B)。これらの粒子の収着容量は、1mg/mlであると思われた。
【0151】
実施例14:疎水性カチオンPLGA/PEI/POLY(IC)組み合わせ粒子
PLGA/PEI/ポリ(IC)粒子を製造するために、Bivas-Benita et al.のプロトコールの種々の改変を用いた[Bivas-Benita et al., Eur. Jour. of Pharmaceutics and Biopharmaceutics, 58: 1-6(2004)]。実際に、ジクロロメタン中のPLGAの溶液及びアセトン中のPEIの溶液を種々の割合で組み合わせ、超音波乳化、エアーガン及びエレクトロスプレー微粒化を使用してマイクロ粒子を得た。
【0152】
1.超音波乳化
PLGA500mgをジクロロメタン5ml中に溶解し、そしてアセトン5mlに溶解したPEI100mgと組み合わせた(5:1最終PLGA:PEI比)。一緒にした溶液を室温でBranson−1510超音波処理浴中で絶えず超音波処理下に保たれた10%NaCl水溶液50ml中に滴下により注いだ。塩化ナトリウムを導入して、有機相を分散させること及び洗浄過程期間中再懸濁することを促進させた。混合物を高められた温度(50℃)で更に4時間後に超音波処理して、揮発性溶媒を除去した。得られるPLGA/PEI粒子を前記したように4回洗浄/沈降させ、そして凍結乾燥した。なかなかなくならない界面活性剤の排除により、洗浄パスの数を減少させることが可能であることが見出された。
【0153】
2.NaCl受け入れ水溶液に対するPLGA/PEI溶液のエアーガン及びエレクトロスプレー
CH2CL2/アセトン中の上記した5:1PLGA:PEI溶液をマイクロエアーガンを使用して10%NaClに対して及びエレクトロスプレーを使用して乱流10%NaCl溶液に対して噴霧した。集めたマイクロ粒子を4回洗浄/沈降させ、そして凍結乾燥した。
【0154】
界面活性剤なしで得られた粒子によるポリ(IC)の収着を、ポリ(IC)溶液〜70μg/mlにおいて上記した如く試験した。一般的収着容量は、ほぼエマルジョン技術と匹敵するオーダーに改良されることが見出され;pH4.5の酢酸塩緩衝剤は収着のために最も適当であることが再び見出された(図33a及びb)。
【0155】
エアーマイクロガンを使用して得られた粒子の収着容量は、エレクトロスプレーからの粒子よりも幾分高いことが見受けられたが、全体としての形状及びサイズ分布は、エレクトロスプレーの場合により良好であった。エアーガンは、10ミクロンより大きいサイズの不規則な凝集体を実際に生成し(示されていない)、そしてエレクトロスプレーからの粒子はサイズ範囲3〜10ミクロンのスフェロイドであった(データは示されていない)。
【0156】
3.乾燥金属電極に対してエレクトロスプレーを使用して得られた粒子
乾燥金属電極(ステンレス鋼製パン)上に電気的に分散された粒子を受け取り、そしてその後それらを可溶化することが可能であることが見出された。粒子の収着容量を更に上昇させるために、PLGA:PEI比を、2:1、即ち、前と同じく、同じ容積のCH2Cl2及びアセトン中のPLGA500mg対PEI250mgに増加させた。乾燥電極上に集められた粒子は、3〜7ミクロンのスフェロイドのように見えた(図34a)。
【0157】
乾燥電極に対してエレクトロスプレーし、その後付着物を蒸留水中に可溶化して製造されたPLGA/PEI粒子は、種々のエマルジョン法又は水溶液に対する分散に対してはるかに優れているように見えることを結論しても差し支えない。
【0158】
4.ファゴサイトーシスの観察のための蛍光PLGA/PEI/FITC粒子
ポリ(IC)を有する粒子のファゴサイトーシスに関する実験の開始を容易にするために、蛍光標識の簡単化されたバージョンを導入した。95%エタノール1ml中のFITC(Sigma-Aldrich, cat. #F-7250)2mgを標準的な組み合わせのPLGA:PEI=2:1溶液に加えて、乾燥電極に対するエレクトロスプレーの上記したプロトコールに従って粒子を合成した。
【0159】
粒子を超音波処理により蒸留水中に再懸濁させ、そして遊離FITCから4回洗浄した。第4回目の洗浄は、遊離FITCの痕跡がゼロであることを示した。強い黄色の得られるペレットを、一晩凍結乾燥し、そして上記した標準プロトコールを使用してポリ(IC)をチャージした。収着容量は、先に得られたFITCなしの粒子の場合よりも低いこと:100〜200μg/mlに対して〜70μg/ml、が見出された。粒子は、明るい緑色蛍光を示す、0.5〜5μmサイズの不規則で幾分スポンジ状のスフェロイドであった(図35)。
【0160】
5.ヒト樹状細胞におけるインターフェロンの誘発に関する予備的結果
約50,000の一次的なソーティングされたばかりの(primary freshly sorted)DC1又はDC2サブセットヒト細胞を、PLGA−PEI−ポリ(IC)粒子で処理し、そして培養上清を24時間後に集め、そしてヒトIFN−α及びβについてELISAに付した。β及びαインターフェロン両方の統計的に一貫したレベルが両サブセットについて見出された(図36)。
【0161】
【表4】
【0162】
実施例15:非ウイルス病原体に対する交差シグナリング防御経路
交差シグナリングストラテジーは、バクテリア及びウイルス関連疾患との戦いにおいて有用でありうる。これらの可能性を評価し、そしてTLR/FADD経路の刺激因子を有するマイクロ粒子は抗原特異的T細胞の交差プライミングを含む強力なアジュバント特性を発揮することを確認するために、ニワトリオブアルブミン(OVA)のためのT細胞受容体(TCR)を発現するOT−1トランスジェニックマウスをモデルとして使用する。これらの動物における大多数のCD8T細胞は、Kb分子と会合しているオブアルブミンペプチド(SIINFEKL)を認識する単一のVα2+Vβ5+TCRを発現する。これらの粒子は、OVA遺伝子を発現するように修飾されることができ、又はタンパク質を直接ロードされることができる。CFSEで標識された精製されたCD8+Vα2細胞を動物に養子移行させる。3日後、OVA含有粒子(遺伝子又はタンパク質)を動物に接種する(腹腔内)。この方法は、OVA特異的T細胞に対してgp96発現細胞からのOVAの増加した交差提示を証明することが最近示された。このアプローチを使用することにより、自然免疫応答の刺激に関与するマイクロカプセル化ストラテジーは、適応的免疫応答の有効なモジュレーターであることが示されうる。
【0163】
実施例16:ポリ(IC)をロードされたPLGA/PEI又はプロタサンマイクロ粒子は、細胞外TLR3経路を活性化することにより293細胞におけるIFN−β産生を誘発することの証明。
TLR3、外因性dsRNAのための受容体、を発現している又は発現していない293細胞を、IFN−βプロモーターの制御下にルシフェラーゼ遺伝子でトランスフェクションし、そしてPLGA/PEI粒子(融合したdsRNAを有する及び有していない)又はプロタサン粒子(融合したdsRNAを有する及び有していない)に暴露した。粒子への暴露時間は3〜6時間であった。図37bに示されたとおり、dsRNAを有する粒子のみが、ルシフェラーゼ遺伝子の細胞外TLR3媒介活性化をトリガーすることができた。コントロールとして、TLR3レポーターなしの293細胞を、IFN−βプロモーターの制御下にルシフェラーゼ遺伝子でトランスフェクションし、そしてPLGA/PEI粒子(融合したdsRNAを有する及び有していない)又はプロタサン粒子(融合したdsRNAを有する及び有していない)に暴露した(図37a)。有意なルシフェラーゼ活性は検出されなかったが、これはdsRNAを有するマイクロ粒子のみがTLR3を介してIFN−β経路を活性化することができたことを示す。293細胞は、非常に弱い細胞内経路を有し、かくして、主としてTLR3経路を活性化する理由を有する(データは示されていない)。
【0164】
コントロール:更なるコントロールとして、外因性dsRNAを、TLR3を発現している又は発見していない293細胞に加えた。両タイプの細胞をIFN−βプロモーターの制御下にルシフェラーゼ遺伝子でトランスフェクションし、そして外因性dsRNAで処理した。TLR3を発現する細胞のみがdsRNAにより活性化されて、IFN−βプロモーターを転写的に活性化することができた。
【0165】
実施例17:ポリ(IC)をロードされたPLGA/PEI又はプロタサンマイクロ粒子は、おそらく細胞外インネイテオソーム経路を活性化することによりDC2サブセット細胞におけるIFNα産生を誘発することの証明
末梢ヒト血液サンプルにおけるDC2サブセットを、PLGA/PEI又はプロタサン粒子(融合したdsRNAを有する及び有していない)に暴露し、そして図38に示されたとおり粒子への3〜6時間の暴露の後にインターフェロンα発現について監視した。DC2(プラズマサイトイドDCs(plasmacytoid DCs)はTLR3を欠き、それ故インターフェロンα誘発は別のdsRNAシグナリング経路によりトリガーされる)は、おそらく「インネイテオソーム」を介する細胞内経路を利用する。
【0166】
本発明の化合物及び方法の好ましい態様は、説明することを意図しており、限定を意図するものではない。改変及び変更は上記教示に照らして当業者によりなされうる。本発明は、例えば、空気品質を監視するために、ガスサンプル中のアセトンレベルを測定する他の目的に使用することができることも、当業者により考えられうる。故に、特許請求の範囲により規定された範囲内にある変更が、開示された特別な態様においてなされうることは理解されるべきである。
【技術分野】
【0001】
本願は、それぞれ、2003年12月11日に出願されたU.S. Provisional Application Serial No.60/528,613及び2004年8月31日に出願されたU.S. Provisional Application Serial No.60/605,554からの優先権を主張する。両provisional applicationの全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の背景
本発明は、免疫治療の分野に関する。更に詳しくは、本発明は、内因性fas関連デスドメイン分子(fas-associated death domain molecule)(FADD)−RIP1依存性シグナリング経路及び外因性Toll様受容体(TLR)依存性経路のいずれか又は両方を活性化することができる組成物及び自然適応的免疫応答(innate adaptive immune responses)をより有効にカップリングさせるための方法に関する。組成物は、ウイルス、真菌(fungal)及びバクテリア病原体に対する自然免疫応答をモジュレーションする(modulate)のに特に有用であり、そしてガンを処置するのにも特に有用である。
【0003】
技術の背景
微生物病原体、例えば、ウイルス、バクテリア及び真菌(fungi)への宿主暴露は、自然免疫応答の活性化をトリガーして、初期宿主防御機構を刺激し(galvanize)、そして細胞傷害性T細胞活性及び抗体産生を伴う適応的免疫応答の活性化を促す(invigorate) [Medzhitov, et al., Semin. Immunol., 10:351-353, (1998)]。病原性微生物の認識及び自然免疫カスケードのトリガリングは、過去数年間にわたる熱心な研究の対象となった。
【0004】
病原性微生物の保存された成分(病原体関連分子パターン−PAMPsと呼ばれる)、例えば、リポ多糖及びCpG DNA(図1)を認識することを担っている重要表面分子として現れたToll様受容体(TLRs)の役割に最近特に注目が集まった[Medzhitov, et al., Semin. Immunol., 10:351-353, (1998)]。TLRsは、最初Drosophila(ショウジョウバエ)において同定され、そしてハエ発生並びに真菌及びグラム陽性菌に対する宿主の防御において重要な役割を演じていることが証明された。[Impler, et al., Curr. Top. Microbiol. Immunol., 270:53-79, (2002)]。
【0005】
TLRの関与は、細胞の核にシグナルを伝達し、細胞がある種のタンパク質、例えばサイトカインを産生するのを開始することを誘発させ、宿主防御の他の成分に警報を出す。哺乳動物細胞では、少なくとも10種のTLRメンバーが存在するらしく、その各々は細胞外リポ多糖(LPS)及びdsRNAを含む種々の異なる刺激に応答する[Takeda, et al., Ann. Rev. Immunol., 21:335-376, 2003]。リガンド結合に続いて、すべてのTLRsの細胞質ゾル領域に存在するToll/インターロイキン(IL)−1受容体(TIR)ドメインによりトリガーされるホモフィリック相互作用(homophilic interactions)をとおして、シグナリング経路が開始される[Akira,Jour.Biol.Chem., 278:38105-38108, 2003]。TLR−2、−4及び−5を含む多くのTLRsは、MYD88と呼ばれる共通のアダプタータンパク質を使用し、このMYD88はTIRドメイン及びデスドメイン(DD)を含有する。TRIF/TICAM、TRAM及びTIRAP/Malと呼ばれるMYD88と同様に機能する(DDを欠いているけれども)他のアダプター分子が今や単離され、そしてTLR活性のモジュレーションにおいて同様に機能する[Horng, et al., Nat. Immunol., 2:835-841, (2001); Oshiumi, et al., Nat. Immunol., 4:161-167, (2003); Yamamoto, et al., Science, 301:640-643, (2003); Yamamoto, et al., Natl. Immunol., 4: 1144-1150, (2003)]。MYD88の常在性DD(resident DD)は、IL−1受容体関連キナーゼ(IL-1 receptor-associated kinase)(IRAK)ファミリーのメンバー、例えば、TRAF−6のリン酸化及び活性化に関与するDD含有セリン−トレオニンキナーゼであるIRAK−1及び−4、との相互作用を多分促進する[Cao, et al., Science, 271:1128-1131, (1996); Ishida, et al., J. Biol. Chem., 271: 28745-28748, (1996); Muzio, et al., Science, 278:1612-1615, (1997); Suzuki, et al., Nature, 416: 750-756, (2002)]。
【0006】
すべてのTLRsは、結局、転写因子NF−κB並びにマイトジェンで活性化されるタンパク質キナーゼ(MAPKs)、細胞外シグナルで調節されるキナーゼ(ERK)、p38及びc−JunN−末端キナーゼ(JNK)の活性化をもたらす共通のシグナリング経路をトリガーする[Akira, J. Biol. Chem., 278:38105-38108, (2003)]。更に、TLR−3又は−4の刺激は、正確な機構はまだ明らかにされていないけれども、多分、非正統的IκBキナーゼ相同体(noncanonical IκB kinase homologues)、IκBキナーゼ−ε(IKKε)及びTANK結合キナーゼ1(TANK-binding kinase-1)(TBK1)のTRIF媒介活性化によって、転写因子インターフェロン調節因子(IRF)−3を活性化することができる[Doyle, et al., Immunity, 17: 251-263,(2002): Fitzgerald, et al., Nat. Immunol., 4: 491-496, (2003)]。
【0007】
NF−κB、ERK/JNK及びIRF−3応答シグナリングカスケードの活性化は、結局、炎症応答を含む自然免疫応答及び適応的免疫応答を調節する多数の遺伝子の転写刺激をもたらす。
【0008】
一次自然免疫応答遺伝子、例えば、IFN−βの活性化は、抗ウイルス遺伝子を誘発するのみならず、NK細胞が関与する自然免疫応答、DCsの成熟並びにケモカイン及びT細胞応答を促進するMHCの如き分子のアップレギュレーション、を促進する分子も誘発する。IFNは、抗体応答の産生のために決定的に重要であることも示された。かくして、自然免疫応答を理解し、そして強力に調節することは、自然免疫応答及び適応的免疫応答の両方のための、新規な治療及びワクチン接種方法並びに疾患をターゲティングする組成物を開発するための好機を与える。
【0009】
免疫治療の重要な観点は、有効な薬物/抗原送達システムの開発である。細胞に薬物、抗原及び他のシグナル分子を送達するための粒子担体が考案された[Aideh, et al., J. Microencapsul., 14:567-576 (1997); Akbuga, et al., Microencapsul., 13:161-167(1996); Akbuga, et al., Int. J.(1994); Aral, et al., STP Pharm. Sci., 10:83-88(2000)]。これらの送達担体の要件は用途に依存して異なる。例えば、ケモカインの担体は、長期間の時間(通常、日)ロードされた分子の安定な勾配を与える必要があり、そして粒子はファゴサイトーシスされるのを回避するために、相対的に大きい(200〜700μm)ことが必要である。
【0010】
他方、抗原がより小さな粒子により担われ、該粒子はそれらの表面を介して細胞と相互作用するのみならず、樹状細胞、マクロファージ又は他の抗原提示細胞(APCs)により飲み込まれることもできる場合、免疫感作はより強い。ファゴサイトーシスは、10μmより小さい粒子で最適であり、これは抗原担体のサイズを規定する。
【0011】
キトサンはキチン由来の天然産物である。それは、植物繊維の主要構成物であるセルロースに化学的に類似しており、そして繊維としての多くの性質を有する。キトサンは、粘膜に対する高い付着力(adhesion)及び良好な生物分解性を有し、そして粘膜表面を横切る大きな分子の侵入(penetration)を高める能力も有することが示された[Illum, et al., Pharm. Res., 9: 1326-1331 (1992)]。キトサンナノ粒子は、インシュリンの鼻吸収を改善するのに非常に有効であり、そして破傷風トキソイドに対する局部的及び全身系免疫応答においても非常に有効であることが証明された[Vila, et al., J Controlled Release, 17; 78(1-3): 15-24 (2002)]。免疫系の同様なブーストが、ジフテリアに対するキトサンマイクロ粒子による粘膜ワクチン接種 [Inez, et al., Vaccine, 21:1400-1408(2003)]:経口ワクチン接種後のDRに対する保護的全身系及び局所免疫応答及び鼻投与後のIgG産生の有意な増強において証明された。最近、キトサンは、結腸への送達薬物のための担体として有望であることが示された[Zhang, et al., Biomaterials, 23:2761-2766 (2002)]。
【0012】
発明の要約
本発明の1つの観点は、哺乳動物における自然免疫系をモジュレーションするための組成物に関する。この組成物は、ポリカチオンポリマーを含むマイクロ粒子;FADD依存性経路のモジュレーター及びTLR経路のモジュレーターを含み、該FADD依存性経路のモジュレーター及び該TLR経路のモジュレーターは、該マイクロ粒子と会合しており、そして、該マイクロ粒子は抗原提示細胞によりファゴサイトーシスされることができる。
【0013】
1つの態様では、FADD依存性経路のモジュレーターは、二本鎖RNA(dsRNA)、ポリ(IC)、FADD依存性経路の成分、FADD依存性経路の成分をコードするDNAプラスミド、バクテリア及び真菌(fungus)よりなる群から選ばれる。
【0014】
他の態様では、TLR経路のモジュレーターは、dsRNA、ポリ(IC)、ウイルスdsRNAの合成模倣物(synthetic mimetic)及びTLRのリガンド、バクテリア及び真菌よりなる群から選ばれる。
【0015】
他の態様では、マイクロ粒子は、抗原提示細胞に特異的に結合するターゲティング分子で更にコーティングされる。
【0016】
本発明の他の観点は、核酸及びタンパク質をロードされたファゴサイトーシス可能なキトサンマイクロ粒子を含む、宿主における免疫系をモジュレーションするための組成物に関する。
【0017】
本発明のなお更に他の観点は、有効量の上記した組成物を対象(subject)に投与することを含む、対象におけるウイルス、バクテリア、真菌感染及びガンを処置する方法に関する。
【0018】
本発明の更に他の観点は、免疫モジュレーションのための多機能性マイクロ粒子を製造する方法に関する。この方法は、沈殿、ゲル化及び噴霧によりキトサンマイクロ粒子を製造する(fabricating)工程、及びキトサンマイクロ粒子を、核酸、タンパク質又はその両方を含む溶液中でインキュベーションする工程を含む。
【0019】
本発明の他の観点は、自然及び適応的免疫応答を活性化することができる多重/多機能作用物質(multiple/multifunctional agents)を有する粒子を創造することに関する。
【0020】
本発明の更に他の観点は、FADDシグナリング経路に関する抗ウイルス遺伝子を同定する方法に関する。この方法は、FADD欠如細胞(FADD-deficient cells)及び対応する野生型細胞をポリ(IC)で処理する工程、ポリ(IC)処理されたFADD欠如細胞及びポリ(IC)処理された野生型細胞からRNAsを単離させる工程;単離されたRNAsを遺伝子アレイにハイブリダイゼーションさせる工程、及びポリ(IC)処理された野生型細胞と比べてポリ(IC)処理されたFADD欠如細胞において差次的に発現される(differentially expressed)遺伝子を同定する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】TLRsを介する宿主細胞によるPAMPsの検出を示す。
【図2】インターフェロンの抗ウイルス機構を示す。
【図3】TNF−α経路の略図である。
【図4】抗原のプロセッシング及び主要組織適合複合体(MHC)分子への送達の経路の略図である。
【図5】ポリ(IC)処理プロトコールの略図である。
【図6】2つのウイルスシグナリング経路、外因性TLR3依存性経路及び内因性FADD依存性経路を活性化してIFNを産生することにより自然免疫を高める提唱された方法の略図である。
【図7】キトサンの構造式である。
【図8】単球由来のヒト樹状細胞によりファゴサイトーシスされたポリスチレンビーズを示す顕微鏡写真である。
【図9】分岐状PEIの構造式である。
【図10】(1)酵母dsRNA、(2)スペルミジン−ポリグルシン−グルタチオンコンジュゲート及び(3)ハイブリッドタンパク質TBI−GSTからなる人工的ウイルス様粒子である。
【図11】図11a〜11fは、IFN予備処理後ですらMEFsにおけるVSV複製の阻止のためには、FADDが必要とされるがカスパーゼ−8は必要ではないことを示す実験データである。図11aは、FADD欠如MEFsは、IFN予備処理にもかかわらずVSV誘発CPE(VSV-induced CPE)に感受性であり、そして顕微鏡写真は感染の48時間後に撮られたことを示す。図11bは、FADD欠如MEFsがIFN予備処理によりVSVでトリガーされた細胞死から保護されないことを示す。細胞生存度は、トリパンブルー排除分析により感染後の指示された時間に決定された。図11cは、IFN予備処理は、FADD−/−EFsにおけるVSV複製を遅らせるが阻止はしないことを示す。図11dは、カスパーゼ8欠如は、MEFsにVSV誘発CPEに対する感受性を増加する素因を与えないことを示す。図11eは、カスパーゼ−8+/+及び−/−MEFsは、IFN予備処理によりVSV誘発細胞死から等しく十分に保護されることを示す。図11fは、IFN予備処理が、カスパーゼ−8+/+及び−/−EFsの両方においてVSV複製を有効に阻害することを示す。
【図12】図12a〜12dは、FADDの不存在は、脳心筋炎ウイルス(EMCV)及びインフルエンザウイルス(FLU)感染による感染に細胞を感作させることを示す実験データである。図12aは、EMCV誘発CPEに対して保護するのにFADDが必要であることを示す。細胞は感染の24時間後に写真に撮られた(倍率200倍)。図12bは、(a)における如く感染した細胞がトリパンブルー排除により細胞生存度について分析されたことを示す。図12cは、EMCV誘発CPEに対して保護するのにFADDが必要であることを示す。細胞は感染の24時間後に写真に撮られた(倍率200倍)。図12dは、(c)における如く感染した細胞がトリパンブルー排除により細胞生存度について分析されたことを示す。
【図13】図13a〜13fは、IFNシグナリングがFADD−/−MEFsにおいて破壊されないことを示す実験データである。図13aは、FADDの不存在下に正常なSTAT1リン酸化を示す。図13bは、IFN処理の後のSTAT1の核トランスロケーションがFADDの不存在下に正常に起こることを示す。図13cは、FADDは、IFNでトリガーされた遺伝子誘発のために必要ではないことを示す。図13dは、IFN応答プロモーターがFADD不存在下に正常に機能することを示す。図13eは、外因性IFN−βは、感染後に加えられると、VSV誘発CPEからFADD−/−MEFsを保護することができることを示す。細胞は感染の48時間後に写真に撮られた。図13fは、外因性IFN−βは、感染後に加えられると、VSV複製及びその結果としての細胞死からFADD−/−MEFsを保護することができることを示す。
【図14】図14a及び14bは、IFNα/β予備処理にもかかわらず、VSV感染の後野生型MEFsの連続した保護を与えるのに、IFN−βの新規な合成が必要であることを示す実験データである。図14aは、FADD+/−細胞は、IFNα/β予備処理にもかかわらず、中和性抗IFN−β抗血清の存在下に、VSVに感受性であることを示す。写真は感染の48時間後に撮られた(倍率、200倍)。図14bは、(a)における如く処理されたFADD+/−細胞を、VSV子孫収率又はトリパンブルー排除による細胞生存度について調べたことを示す。
【図15】図15a〜15gは、FADDの不存在下に細胞内dsRNAによる不完全なIFN−β遺伝子誘発を示す実験データである。図15aは、IFN−βプロモーターのトランスフェクションされたdsRNA媒介活性化はFADD−/−MEFsにおいて不完全であることを示す。図15bは、IFN−αのdsRNA誘発産生はFADDの不存在下では不完全であることを示す。図15cは、マウス(M)FADDのFADD−/−MEFsへの再構成は、dsRNAシグナリングを部分的に救済することができることを示す。図15dは、カスパーゼ−8は、細胞内dsRNAシグナリングのために必要ではないことを示す。図15eは、PKRは細胞内dsRNAシグナリングのために必要ではないことを示す。PKR+/+及びPKR−/−MEFsをIFN−β−Lucでトランスフェクションした。 図15fは、FADDのRNAi媒介ノックダウンが細胞内dsRNAシグナリングを無効にするが、PKR又はTLR3はそうではないことを示す。図15gは、TLR3の過剰発現は、細胞外dsRNAに対する応答を与えるが、細胞内dsRNAに対しては与えないことを示す。
【図16】図16a〜16eは、TLR3シグナリングはFADDを必要としないことを示す実験データである。図16aは、TLR3及び他のTLRシグナリング成分は、FADD−/−MEFsにおいてIFN−βを正常に誘発することを示す。図16bは、TRAF6欠如は、MEFsをIFNの存在下においてVSV感染を受けやすくしないことを示す。顕微鏡写真は、感染の48時間後に撮られた。図16c及び16dは、TRAF6−/−EFsがIFN予備処理によりVSVでトリガーされる細胞死から保護されることを示す。細胞生存度は、感染の48時間後にトリパンブルー排除分析により決定された。図16eは、IFN予備処理がTRAF6−/−MEFsをVSVから保護することを示す。
【図17】図17a〜17fは、RIP欠失はFADD機能破壊(FADD ablation)によく似ることを示す実験データである。図17aは、RIP欠如EFsは、IFN予備処理にもかかわらずVSV誘発CPEに非常に感受性であることを示す。図17bは、RIP欠失EFsは、IFN予備処理により、VSVでトリガーされた細胞死から保護されないことを示す。図17cは、IFN予備処理はRIPの不存在下にウイルス複製を有効に阻害することができないことを示す。図17d及び17eは、RIPの不存在下に不完全な(defective)細胞内dsRNAシグナリングを示す。図17fは、TLR3シグナリングのためにRIPが必要ではないことを示す。
【図18】図18a〜18jは、TBK−1/IKK−δ及びIRF−3を介するFADDシグナルを含む抗ウイルスシグナリングを示す実験データである。図18aは、IFNα/β(100Uml21)予備処理のあるなしで野生型又はIKK−α、IKK−β、IKK−γ及びIKK−δ欠如MEFsのVSV(MOI 1/4 10)による感染を示す。図18bは、選ばれた組の抗ウイルス遺伝子のDNAマイクロアレイ分析である。図18cは、ポリ(IC)によるトランスフェクション後の又はポリ(IC)単独による処理の後のIFN−β産生を示す。図18dは、指示された量のポリ(IC)によるトランスフェクション後の又はポリ(IC)単独による処理後のIFN−α産生を示す。図18eは、FADD+/−及びFADD−/−細胞において1時間ポリ(IC)でトランスフェクションした後のIRF−3の局在化である。図18fは、FADD−/−MEFsにおける不完全なIRF−3応答プロモーター活性化(defective IRF-3-responsive promoter activation)である。図18gは、IFNα/β(100Uml21)又はIFN−γ(0.5ng ml21)予備処理のあるなしでIrf3+/+及びIrf3−/−MEFsのVSV(MOI 1/4 10)による感染である。図18hは、ポリ(IC)によるトランスフェクション後の又はポリ(IC)単独による処理後のIFN−β産生を示す。図18iは、ポリ(IC)によるトランスフェクション後の又はポリ(IC)単独による処理後のIFN−αの産生を示す。図18jは、選ばれた組の抗ウイルス遺伝子についてのDNAマイクロアレイ分析である。誤差バーは平均±s.dを示す。
【図19】図19a〜19cは、FADD−/−細胞がグラム陽性及びグラム陰性細胞内バクテリアによる感染に対して感受性であることを示す実験データである。図19aは、FADD−/−細胞が、細胞内Listeria感染により誘発されたCPEに対して極めて感受性であることを示す。図19bは、FADD−/−細胞が、細胞内Listeria感染により誘発された細胞死に対して感受性であることを示す。図19cは、FADD−/−細胞が、細胞内Salmonella感染により誘発されたCPEに対して極めて感受性であることを示す。
【図20】乱流受け取り器を有する改変されたエレクトロスプレー装置である。
【図21】乱流攪拌を有する改変されたエレクトロスプレーにより製造されたキトサンマイクロ粒子のESEM像である。
【図22】ポリイノシン酸−ポリシチジル酸、ポリ(IC)の構造式である。
【図23】エチジウムホモ二量体の構造式である。
【図24】インターカレーションされたエチジウムホモ二量体の蛍光によりポリ(IC)を測定するための較正曲線を示す。
【図25】エチジウムホモ二量体インターカレーターをインターカレーションさせることを使用して束縛されていない及び結合したポリ(IC)を測定する比較を示す。 (A)溶液中の遊離ポリ(IC)を測定する; (B)マイクロ粒子中の結合したポリ(IC)を測定する。1−イルミネーター、2−検出器、3−フィルター、4−プレートウエル。
【図26】エチジウムホモ二量体と相互作用時のポリ(IC)をロードされたキトサン粒子の時間依存性蛍光を示す。
【図27】キトサンマイクロ粒子からのポリ(IC)の時間放出を示す。
【図28】図28a及び図28bは、一価銅のタンパク質及びビシンコニン酸との紫色の錯体を示す。 Aはペプチド窒素とのビウレット錯体である。 Bはビシンコニン酸とのキレート錯体である。
【図29】オブアルブミンのビシンコニン酸アッセイのための較正曲全を示す。
【図30】キトサンマイクロ粒子からのオブアルブミンの時間放出を表す。
【図31】図31a及び図31bは、凍結乾燥されたプロタサン/ポリ(IC)粒子のSEM像である。 Aはミクロンより上のサイズ粒子、X100である。バーは200μmを示す。 Bはサブミクロンサイズの粒子、X5000である。バーは5μmを示す。
【図32】図32a〜図32cは、異なるpHにおけるミクロンより上のプロタサン粒子によるポリ(IC)の収着である。 Aは収着の結果として減少するポリ(IC)の光学的スペクトルを示す。 Bは、ポリ(IC)の収着後の粒子のペレットを示す。 Cは異なるpHにおける粒子の収着容量を示す。
【図33】図33a及び図33bは、PLGA/PEI粒子の収着特性である。 Aは、異なる方法により得られた粒子のポリ(IC)の収着を示す。 Bは異なるpHにおけるポリ(IC)の収着を示す。
【図34】図34a及び図34bは、後で可溶化を伴う乾燥ステンレス鋼電極に対するエレクトロスプレーにより得られたPLGA/PEI/ポリ(IC)粒子を示す。 Aは、可溶化後のSEMX5000であり、そして Bは、収着容量を示す:高い又は低いイオン強度における可溶化により影響を受けた。
【図35】図35a及び図35bは、PLGA/PEI/ポリ(IC)の粒子を示す。 AはSEM像X5000であり、そして Bは希釈された水懸濁液の蛍光顕微鏡写真、X200である。
【図36a】ポリ(IC)を有するPLGA/PEI粒子によるヒト樹状細胞のDC1及びDC2サブセットにおけるIFN−β及びIFN−αの誘発を示す。
【図36b】ポリ(IC)を有するPLGA/PEI粒子によるヒト樹状細胞のDC1及びDC2サブセットにおけるIFN−β及びIFN−αの誘発を示す。
【図37a】ポリ(IC)を有するマイクロ粒子を介する細胞外TLR3誘発を示す。
【図37b】ポリ(IC)を有するマイクロ粒子を介する細胞外TLR3誘発を示す。
【図38】末梢ヒト血液サンプル中のDC2がPLGA/PEI又はプロタサン粒子(融合された(amalgamated)dsRNAを有するか又は有さない)に暴露され、そして粒子への暴露の3〜6時間後のIFN−α発現について監視されたことを示す。
【0022】
発明の詳細な説明
本発明は、抗原に対する自然免疫応答をモジュレーションするための方法及び組成物を提供する。この組成物は、fas関連デスドメイン分子(FADD)/RIP依存性経路のためのアクチベーターを含有する。FADDを含むシグナリング経路は、Toll様受容体(TLR)非依存性であることが見出され、それ故、FADDは、I型IFNの産生を含む、重要な抗ウイルス応答の誘発のために決定的に重要な細胞内dsRNA種の認識において機能することにより、ウイルス感染に対する自然免疫において必須の役割を演じ、そしてそのFADDは、バクテリア及び真菌の如き他の病原体の認識にも関与している。その結果として、FADD関連経路(FADD-related pathway)は、殆ど確実に、病原体による破壊(disruption)のための重要なターゲットであり、そして感染性疾患及びガンを含む種々の疾患における重要な役割を演じることができる。
【0023】
特許請求の範囲に与えられた範囲を含めて、明細書及び特許請求の範囲の明白な且つ首尾一貫した理解を提供するために、下記の定義が与えられる。
【0024】
以後使用される「抗原提示細胞」とは、抗原をプロセッシングし、そしてT細胞受容体に提示することにより細胞免疫応答を媒介する免疫担当細胞の異種グループ(heterogeneous group)を指す。伝統的抗原提示細胞は、マクロファージ、樹状細胞、ランゲルハンス細胞及びBリンパ球を含むが、それらに限定はされない。濾胞樹状細胞も抗原提示細胞であると考えられる。
【0025】
「自然免疫応答」は、身体が、微生物、ウイルス、及び身体に対して異物であり、そして潜在的に有害と認識された物質、に対してそれ自体を認識し、そして防御する方法である。自然免疫応答は、広範囲の感染性及び毒性作用物質に対する最初の防御線として機能する。歴史的には、この応答は、ファゴサイトーシス活性を有する細胞、例えばマクロファージ及び多形核細胞、及び/又は強力な細胞傷害性活性を有する細胞、例えば、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、マスト細胞及び好酸球に帰されてきた。これらの異なる細胞集団の活性は、集約的に急性期タンパク質として知られている多数の異なる可溶性分子、例えば、インターフェロン、補体カスケードの特異的成分及びサイトカインにより支援され(aided)そして支持され(abetted)、これらの分子は、ファゴサイトーシス及び細胞傷害性活性を高める働きをし、そして組織損傷の部位にこれらの細胞を蓄積させる。これらの最初の防御線が突破されると、次いで、適応的免疫応答の活性化が続いて起こり、多数の異なる特徴のいずれかを発揮することができる特異的免疫応答の形成をもたらす。この獲得免疫応答の発生は、リンパ球の専門的特性である。
【0026】
自然免疫と比較して、適応的免疫は、身体が種々の抗原にさらされるとき発生し、そしてその抗原に対して特異的な防御を構築する。
【0027】
以後使用される「免疫応答」とは、問題の抗原に対して体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答の哺乳動物対象における発生である抗原を指す。「細胞性免疫応答」とは、Tリンパ球及び/又は他の白血球により媒介される免疫応答である。細胞性免疫の1つの重要な観点は、細胞傷害性Tリンパ球(「CTL」s)による抗原特異的応答を含む。CTLsは、主要組織適合複合体(MHC)によりコードされたタンパク質と会合して存在し、そして細胞の表面に発現されたペプチド抗原、に対する特異性を有する。CTLsは、細胞内微生物の破壊又はこのような微生物に感染した細胞の溶解を誘発し、そして促進するのを助ける。
【0028】
本明細書で使用された「抗原」という用語は、抗体により認識されるいかなる作用物質(例えば、いかなる物質、化合物、分子[巨大分子を含む]又は他の部分(moiety))をも指すが、「免疫原」という用語は、個体において免疫学的応答を誘発することができるいかなる作用物質(例えば、如何なる物質、化合物、分子[巨大分子を含む]又は他の部分(moiety))をも指す。これらの用語は、個々の巨大分子を指すか、又は抗原性巨大分子の均質又は不均質集団を指すのに使用されうる。この用語は、1つ以上のエピトープを含有するタンパク質分子又はタンパク質分子の少なくとも1つの部分を包含することが意図される。多くの場合に、抗原は免疫原でもあり、かくして「抗原」という用語は、「免疫原」という用語と相互に交換可能にしばしば使用される。その場合に、この物質は、免疫感作された動物の血清中の適切な抗体の存在を検出するためのアッセイにおいて抗原として使用することができる。
【0029】
「腫瘍特異的抗原」は、哺乳動物において腫瘍発生の時点で腫瘍細胞中にのみ存在する抗原を指す。例えば、メラノーマ特異的抗原は、メラノーマ細胞においてのみ発現されるが、正常なメラニン細胞では発現されない抗原である。
【0030】
図2に示されたとおり、ウイルス感染の主要な結果、相当なdsRNA種を発生する事象は、一次自然免疫応答遺伝子、例えばIFN−βの活性化を含む。IFN−βの産生は、抗ウイルス遺伝子を誘発するのみならず、NK細胞が関与する免疫応答、DCsの成熟、並びにケモカイン及びT細胞応答を促進する分子、例えばMHCのアップレギュレーションを促進する分子も誘発する。
【0031】
図3に示されたとおり、細胞内及び細胞外dsRNAは多岐シグナリング経路を利用してIFN−βを誘発する。特に、ウイルス複製の結果として発生した細胞内dsRNA種は、TLR非依存性FADD関連経路により認識される。簡単に言えば、ウイルスdsRNAは細胞内受容体分子により認識され、これは、FADD及びRIP1を動員して「インネイテオソーム」複合体('innateosome' complex)とし、NF−κB、ERK/JNK及びIRF−3経路を活性化する。NF−κB、ERK/JNK及びIRF−3応答性シグナリングカスケードの活性化は、炎症性応答を含む自然及び適応的免疫応答を調節する多数の遺伝子の発現をもたらす。他方、dsRNA及びLPSを含む細胞外PAMPsは、TLR関連経路を介して認識され、これはNF−κB、ERK/JNK及びIRF−3応答シグナリングカスケードの活性化ももたらする。ウイルス感染に加えて、FADD依存性経路及びTLR依存性経路の両方共他の病原体、例えば、バクテリア及び真菌の認識にも関与している(例えば、Imler et al. Curr. Top. Microbiol. Immunol., 270: 53-79, (2002)及び実施例6を参照のこと)。
【0032】
免疫活性化における他の重要な問題は、MHC分子によるタンパク質抗原の有効な送達である。図4に示されたとおりMHC分子への抗原プロセッシング及び送達の経路、細胞質ゾルタンパク質は、プロテオソームにより分解されてペプチド断片を発生し、これは特殊化されたペプチドトランスポーター(TAP)により小胞体に輸送される。ペプチドがMHCクラスI分子に結合された後に、MHC/ペプチド複合体は、小胞体から放出されてゴルジ装置により細胞表面に移行する。MHCクラスI/ペプチド複合体はCD8T細胞のT細胞受容体(TCRs)に対するリガンドである。細胞外異物抗原は、細胞内小胞、エンドソームに取り込まれる。エンドソーム内のpHが次第に下がるにつれて、プロテアーゼが活性化されて、抗原を消化してペプチド断片にする。MHCクラスII分子を含有する小胞と融合した後、抗原ペプチドは抗原結合溝に配置される。ロードされたMHCクラスII/ペプチド複合体は細胞表面に輸送され、そこでそれらはCD4T細胞のTCRsにより認識される。更に、図4に示されたとおり、細胞外又は外因性抗原は、DCsによりファゴサイトーシスされ、このDCは、次いでこれらの抗原をリソソーム区画に局在化させ、そこでタンパク質分解酵素が抗原を消化し、そしてプロセッシングする。次いで抗原は、MHCクラスII分子上で細胞表面に移動させられ、決してDCの細胞質ゾル中にはない。対照的に、DCの細胞質ゾル中に存在する可溶性タンパク質は、プロテアソームにより連続的に分解される。これらの抗原性分子は、小胞体中のクラスIMHCと組み合わされ、小胞体はそれらを小胞を介して細胞表面に移動させる。
【0033】
最近、MHCI経路とMHCII経路の厳密な二分(strict dichotomy)は、外因性タンパク質から発生したペプチドが細胞質ゾルへのアクセスを得ることができ、それ故クラスIMHC分子上に提示されることができることを示したいくつかの研究によりチャレンジされた[Roake, et al., J. Exp. Med., 181:2237-2247, 1995; Cumbertach, et al., Immunology, 75:257, 1992; Paglia, et al., J. Exp. Med., 178: 1893-1901, 1993: Porgador, et al., J. Exp. Med., 182:255-260, 1995; Celluzzi, et al., J. Exp. Med., 183:283-287, 1996; Zitvogel, et al., J. exp. Med., 183: 87-97, 1996; Bender, et al., J. Exp. Med., 182:1663-1671, 1995 ]。固体ポリマー微小球(microspheres)に吸収された[Raychaudhuiri, et al., Nat. Biotechnol. 16:1025-1031, 1998]、微小球中にカプセル化された[Maloy, et al., IMMUNOLOGY, 81: 661-667, 1994]、又は抗体との免疫複合体の形態で凝集させた[Rodriguez, et al., Nat. Cell Biol., 1:362-368, 1999]、粒子状形態で送達された抗原は、抗原がクラスIMHC上にロードされることを可能とする有効な「交差提示("cross-presentation")」経路をトリガーすることが発見された。
【0034】
この理解に基づいて、本発明の1つの観点は、細胞内経路及び細胞外経路の両方を交差シグナリングすることができる自然免疫応答をモジュレーションするための組成物を提供する。更に、この組成物は、抗原がクラスIMHCにロードされることを可能とし、そしてウイルス感染又は腫瘍形成が起こる前にウイルス又は悪性腫瘍抗原に対する免疫反応の発生を可能とする「交差提示」経路をトリガーすることができる。
【0035】
1つの態様では、組成物は、細胞内FADD依存性シグナリング経路のための第1モジュレーター及び細胞外TLR非依存性シグナリング経路のための第2モジュレーターを含有する。モジュレーターは、専門的APC、例えばDCによりファゴサイトーシスされうるキトサンをベースとするマイクロ粒子にロードされる。本明細書で使用した、「ロードされた」という用語は、カプセル化又は表面付着によるマイクロ粒子へのアクチベーターの会合を指す。
【0036】
FADD依存性シグナリング経路のモジュレーターの例は、dsRNA、ポリ(IC)、ウイルスdsRNAの合成模倣物、FADD依存性経路の成分、例えば、FADD及びRIP1、FADD経路の成分をコードするDNA、並びにバクテリア、真菌、及びFADD依存性経路を活性化又は抑制することが知られている他の抗原を含むが、それらに限定はされない。
【0037】
TLR依存性シグナリング経路のモジュレーターの例は、TLRリガンド、例えば、dsRNA、ポリ(IC)、ウイルスdsRNAの合成模倣物及びLPS;TLR依存性経路の成分、例えば、MYD88、TRIF/TICAM、TRAM及びTIRAP/Mal、並びにバクテリア、真菌、及びTLR依存性経路を活性化又は抑制することが知られている他の抗原を含むが、それらに限定はされない。
【0038】
FADD依存性経路のモジュレーターはTLR依存性経路のモジュレーターとしても機能することができることに留意されるべきである。故に、本発明の組成物中の第1モジュレーターと第2モジュレーターは同じ分子であってもよい。例えば、dsRNA分子は、FADD依存性経路とTLR依存性経路の両方を活性化することができる。dsRNAがFADD依存性経路のサプレッサーをコードするならば、同じ分子が、FADD依存性経路を抑制しながら、TLR依存性経路を活性化することができる。逆に、もしdsRNAがTLR依存性経路のサプレッサーをコードするならば、同じ分子が、TLR依存性経路を抑制しながら、FADD依存性経路を活性化することができる。
【0039】
FADD依存性経路のモジュレーターは、ウイルス、バクテリア又は真菌感染により誘発又は抑制される遺伝子産物であることもできる。これに関して、本発明は、FADD−/−及びFADD+/+細胞を使用してFADD依存性経路を介して誘発された抗ウイルス遺伝子、抗バクテリア遺伝子及び抗真菌遺伝子を同定する方法も提供する。図5は、FADDシグナリング経路を介して誘発された抗ウイルス遺伝子を同定するための1つの態様を示す。簡単に言えば、FADD−/−及びFADD+/+細胞をポリ(IC)で処理する。処理された細胞から単離されたRNAを、遺伝子のDNAアレイにハイブリダイゼーションさせて、dsRNAで誘発された遺伝子を決定する。dsRNAで誘発された遺伝子の発現レベルを、定量的RT−PCRにより更に確認する。
【0040】
他の態様では、RNA干渉(RNAi)を発生させてdsRNAで誘発された遺伝子の発現を阻害し、そしてRNAi処理された細胞におけるウイルス感染に対する感受性を検査する。RNAiは、相同性mRNAの分解を引起すある種の生物及び細胞型へのdsRNAの導入の現象である。
【0041】
RNAiは、線虫Caenorhabditis elegansにおいて最初に発見され、そしてそれはそれ以来広範囲の生物で作動することが見出された。近年では、RNAiは、二本鎖RNAs(dsRNA)を使用して特定の転写産物をマークしてin vivoで分解する、外因性の、有効で強力な遺伝子特異的サイレンシング技術となった。RNAi技術は、例えば、U.S.Patent No.5,919,619及びPCT Publication Nos.WO99/14346及びWO01/29508に開示されている。
【0042】
1つの態様では、本発明の組成物の第1及び第2モジュレーターは、同じdsRNAである。dsRNAをロードされたマイクロ粒子は、TLRに結合し、そしてTLR依存性シグナリング経路を活性化するであろう。一方、dsRNAをロードされたマイクロ粒子は、ファゴサイトーシスされ(マクロファージ、DCs、単球により)、そしてFADD依存性シグナリング経路を活性化するであろう。好ましくは、dsRNAは、免疫アクチベーターをコードする。細胞の内側に入ると、dsRNAは開かれ(opened)、そして翻訳されて、自然免疫経路を更に活性化する免疫アクチベーターを産生する。例えば、dsRNAは、TLR経路の成分、例えば、細胞に導入されるとIFN−βのTLR媒介活性化及び他の自然免疫応答を増大させるTRIF又はIRAKsをコードすることができる。
【0043】
他の態様では、第1モジュレーターはdsRNAであり、そして第2モジュレーターはTLR経路の成分及びTLR経路の成分をコードするDNA分子である。
【0044】
他の態様では、第1モジュレーターはFADD依存性経路の成分、例えば、FADD、又はFADD依存性経路の成分をコードするDNA分子であり、そして第2モジュレーターはdsRNAである。
【0045】
他の態様では、第1及び第2モジュレーターは、抗原性産物、FADD経路の成分及び/又は免疫応答を更に高める産物、例えばサイトカイン、のいかなる組み合わせもコードするdsRNA又はDNA分子である。コードされた産物は、一旦細胞内で発現されると、それぞれ、細胞表面でのMHCI又はMHCII提示のためにエンドソーム経路又はリソソーム経路を介してプロセッシングされるであろう。dsRNAはFADD依存性自然免疫経路を活性化するであろう。このシナリオは、図6に略図で示される。細胞内経路は、免疫応答を促進するのに役割を演じることが提唱されたPKRの活性化もするようである。
【0046】
更に他の態様では、dsRNA含有マイクロ粒子は、TLR3に対するリガンドで更にコーティングして、TLR3経路を活性化するか、あるいはgp96又はVSVGタンパク質のような熱ショックタンパク質で更にコーティングして、専門的APCs、例えば、DCsをターゲットとすることができる。
【0047】
他の態様では、マイクロ粒子は、貪食に続いて抑制のための遺伝子をターゲットとすることができるサイレンシングRNAi(siRNAs)を表現するdsRNAをロードされることができる。1つの態様では、siRNAは、FADD依存性経路の成分、例えばFADDの発現を抑制し、そして抗原プロセッシングをダウンレギュレーションする。
【0048】
他の態様では、組成物は、ポジティブ鎖ウイルス(例えば、ペスチウイルス、ウシ下痢症ウイルス[BVDV]又はアルファウイルスからの)に基づく自己複製性RNA(レプリコン)を含有する。これらのRNA構築物は、バイシストロンであり(bicistronic)、レプリコンIRES機能にとって重要な5’末端ORFsからなり、そして翻訳のための天然開始コドンを含有する。異物遺伝子、例えば、インフルエンザウイルス又は他の病原体からの遺伝子は、第2IRESの下流に配置されることができる。レプリコンは、キトサン粒子上にロードすることができ、そしてex vivo又はin vivoで抗原特異的細胞をターゲットとするのに使用することができる。一旦ファゴサイトーシスされると、レプリコンは、それ自身を高いレベルに再現して、相当なdsRNAを発生させることができ、それは、FADD/RIP依存性経路を活性化し、上記したとおりアジュバントとして機能する。更に、レプリコンは、異物遺伝子を翻訳して、抗原を産生し、この抗原はMHCクラスI又はII経路を介してプロセッシングされて、使用される抗原に対して特異的なCD4及びCD8細胞を刺激する。レプリコンは、プロアポトーシス分子(pro-apoptotic molecules)、例えば、カスパーゼを共発現するために使用することができ、又は細胞死を誘発させるための精製されたプロアポトーシス分子(又は精製されたターゲット抗原)を共ロードされることができ、これは抗原提示プロセスを高めることができる。
【0049】
他の態様では、dsRNA(上記したとおり)のごとき細胞内又は細胞外FADD又はTOLL活性化分子をロードされたキトサン粒子は、精製された抗原、例えば、インフルエンザウイルス又はプロセッシングされてCD4、CD8細胞を刺激することができる他の病原体関連分子を共ロードされることができる。
【0050】
本発明は、FADD依存性経路及びTLR依存性経路のモジュレーターのための送達システムとしてポリカチオンマイクロ粒子を利用する。キチン及びキトサン(キチノサン(chitinosanes))は、水素イオンとの会合を介して中性pHで正の電荷を獲得する多数のアミノ基を有する生物分解性ポリマーである(図7)。他のポリマーから作られたマイクロ粒子と比較して、キトサンをベースとするマイクロ粒子は、減少した凝集及び負に帯電した分子、特に核酸のためのより良好なローディング能力を与える。プロタサン、キトサンのより精製されたバージョンは、本明細書では相互に交換可能に使用されるであろう。
【0051】
本発明の組成物のマイクロ粒子は、3重の目標:送達、身体における(主として)酵素による破壊からの一時的保護及びロードされた生物分子(例えば、dsRNA、DNA、タンパク質及びペプチド、モード抗原等)の暴露又は放出、を達成するようにデザインされる。一般に、本発明のマイクロ粒子は、会合したRNA/DNA/タンパク質分子をターゲット細胞に入った後に急速に放出又は暴露して、激しい免疫応答を与えるようにデザインされる。しかしながら、ある用途では、会合した分子、例えば、サイトカインを時間依存的方式で放出することが望ましいことがある。
【0052】
サイトカインの例は、IL−12、IL−1α、IL−1β、IL−15、IL−18、IFNα、IFNβ、IFNγ、IL−4、IL−10、IL−6、IL−17、IL−16、TNFα及びMIF;並びにケモカイン、例えば、MIP−3α、MIP−1α、MIP−1β、RANTES、MIP−3β、SLC、fMLP、IL−8、SDF−1α及びBLCを含むが、それらに限定はされない。
【0053】
キトサンマイクロ粒子は、当該技術分野で知られた方法を使用して製造することができる。Ravi Kumar et al.[Ravi Kumar, et al., Biomaterials, in press, 2003]は、その表面にDNAを有するキトサンで安定化されたPLGAカチオンナノ粒子を示し;このDNAは水溶液から簡単な混合により結合され、かくして分子の統合性(integrity)及びコンホメーション(conformation)を保存している。他方、担体溶液との激しい混合を伴う標準エマルジョン技術及びエマルゲーションスキーム(emulgation scheme)も、タンパク質抗原と共にプラスミドのキトサンカプセル化にも適当である[Thiele, et al., J.Controlled Release, 76:59-71, 2001]。これらのプロトコールを利用して、前記したdsRNA及び/又はDNAプラスミドと共にサイトカイン又は熱ショックタンパク質の種々の組を有する粒子を調製することができる。
【0054】
小さなマイクロ粒子(0.5〜50ミクロン)を製造するための好ましい方法は、マイクロガン及び改変されたエレクトロスプレー技術であり、これは実施例でより詳細に述べられる。「しわくちゃの紙("crumpled paper")」形状は、タンパク質及び核酸のための高い吸着容量のための高い表面積を有するこれらの粒子を可能とした。
【0055】
キトサンポリマーは、架橋剤で架橋することができる。架橋剤の例は、無機ポリイオン、例えば、トリポリホスフェート(TPP),硫酸ナトリウム及び有機作用物質、例えば、グルタルアルデヒド及びゲニピン(genipin)を含むが、それらに限定はされない。
【0056】
キトサン粒子中への核酸及び/又はタンパク質のローディングは、核酸及び/又はタンパク質をマイクロ粒子の製造期間中にキトサンと直接混合すること、予備製造されたマイクロ粒子を核酸及び/又はタンパク質溶液で外部的に飽和させること、又はそれらの組み合わせにより達成することができる。実施例で示されたとおり、外部的飽和方法は直接混合法よりも高いローディング効率を与える。しかしながら、2つの方法の組み合わせは、ローディング効率を高めるのに相乗効果を示した。
【0057】
本発明のマイクロ粒子は、APCs、例えばDCs及びマクロファージ並びにそれらの前駆体、例えば、単球により有効にファゴサイトーシスされ、そしてプロセッシングされるのに十分に小さい。好ましい態様では、マイクロ粒子のサイズは、0.5〜70ミクロンの範囲にあり、更に好ましくは、0.5〜20ミクロンの範囲にある。例えば、図8は、単球由来のヒトDCsによりファゴサイトーシスされたポリスチレンビーズ、4.5μmを示す[(Thiele et al., J cont. release 76:59-71(2001))
【0058】
他の態様では、マイクロ粒子のファゴサイトーシス的性質は、親水性キトサンポリマーと1種以上の疎水性ポリマーとの混合物を使用することにより改変される。マイクロ粒子のサイズ及び表面性質のモジュレーションは、TRR/FADD経路の活性化の相対的有効性を制御するための格別の手段となるであろうということが考えられる。ファゴサイトーシスには不適当なより大きく且つより親水性の粒子に切り替えることにより、dsRNAシグナル分子を主としてTRR表面に暴露することが可能である。ナノサイズのキトサン粒子は、実施例に記載の方法を使用して製造することができる。数百マイクロメートルまでのより大きいキトサン粒子は、Denkbas et al.のプロトコールを使用して合成することができる[Denkbas, et al.,Rreactive & Functional Polymers, 50: 225-232, (2002)]
【0059】
キトサン粒子からの核酸及び/又はタンパク質の放出速度は、キトサンの分子量、キトサンの脱アセチル化の程度、及びキトサンとロードされた生物分子間の重量/チャージ比(weight/charge ratios)を含むいくつかの因子を調節することにより制御されうる。
【0060】
1つの態様では、キトサンをベースとする、dsRNA/DNA/タンパク質をロードされたマイクロ粒子は、サイトカイン又は抗原を含有するポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)マトリックス/マイクロ粒子内にカプセル化される。PLGAは生物分解性であることが示され、そしてそれは身体から最終的に除去される毒物学的に許容されうる乳酸及びグリコール酸に分解する。サイトカイン及びキトサン粒子の放出速度は、モノマー比/PLGAの分子量を含む、PLGAカプセル化に関与するパラメーターを調節することにより更に制御されうる。キトサン/プロタサン(protasan)は親水性であるので、より疎水性のPLGA中にキトサン/プロタサン粒子をカプセル化することにより、細胞膜を横切る細胞への粒子の取り込みは高められうる。
【0061】
あるいは、他のタイプのポリマーを、キトサンをベースとするマイクロ粒子に組み込んで、ロードされた生物分子のための可変放出プロフィルを達成することができる。1つの例では、疎水性ポリマー、例えば、PLGAをより親水性のキトサンとブレンドして、カチオンPLGA粒子を形成することができる。他の適当なポリマーは、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(オキシブチレート)を含むが、それらに限定はされない。
【0062】
他の別法として、分岐した両親媒性ポリアミン、ポリ(エチレンイミン)(PEI)を、PLGA又は他の疎水性ポリマーとの組み合わせでキトサンの代わりに使用することができる(図9)。
【0063】
キトサン粒子へのより疎水性のドメインの付加は、細胞膜を横切る輸送を促進することができる。他の例は、Liu et al.により述べられたとおり[Liu, et al., k. J. Controlled Release, 43:65-74, 1997]、ポリカチオンキトサンにポリアニオンアルギン酸ナトリウムを添加することにより多孔性粒子を形成することを含む。ポリマーの比を調節することにより、細孔のサイズを制御し、それ故粒子からのdsRNA/サイトカインの放出速度を制御することができる。
【0064】
本発明は、送達ビヒクルとしてカチオンリポソームを使用することも意図する。カチオンリポソームは、RNA、DNA及びペプチドのための良好な担体である[Honda, et al., J. Virol. Meth., 58: 41-58, 1996; Nastruzzi, et al., J. Controlled Release, 68: 237-249, 2000; Borgatti, et al., Biochemical Pharmacology, 64: 609-616, 2002; Sioud, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 312:1220-1225; 2003]。一般に、リポソームは、合理的な放出速度論と共にRNAのためのより適切な保護及びより良好な安定化を与える。ファゴサイトーシス、表面電荷及び親水性に関する考慮はリポソームにそのまま適用可能である。リポソームを使用して、dsRNA及びそその免疫原性代替物、例えば、ポリ(IC)又はポリ(ICLC)を、小胞(vesicle)中にカプセル化するか及び/又は表面に付着させることができる。脂質カチオン粒子のファゴサイトーシスは、リポソーム表面の疎水性のため親水性コロイドキトサン粒子の場合よりもより顕著でありうる。脂質粒子の適切な1〜5μmサイズを制御してファゴサイトーシスを高めることに特別の注意が払われるであろう。
【0065】
1つの態様では、ファゴサイトーシスを介して内部FADD経路を刺激するためにリポソーム担体が使用されるが、これに対してdsRNAを表面TLRsに暴露する表面担体として、大きなキトサンマイクロ粒子が使用される。多くの組み合わせをもくろむことができる。
【0066】
中心にdsRNAを、そして表面にタンパク質HIV抗原を有するリポソーム様構造を使用してウイルス様粒子を創り出すことも可能である[Karpenko, et al., Vaccine, 21: 386-302, 2003](図10)。図10は、(1)酵母dsRNA、(2)スペルミジン−ポリグルシン(polyglucin)−グルタチオンコンジュゲート及び(3)ハイブリッドタンパク質TBI−GSTを含む人工的ウイルス様粒子を示す。1つの態様では、表面にdsRNAを、そして中心にタンパク質抗原を有する逆粒子を創り出す。
【0067】
1つの態様では、交差シグナリング自然免疫経路は、ファゴサイトーシスを受けるマイクロ粒子中にカプセル化されたバクテリア又は真菌で達成される。データは、TLR経路はグラム陽性菌に対する宿主防御に影響を与えるが、これに対してimd(FADD)経路は、グラム陰性菌及び真菌に対する活性を及ぼすことを示す。
【0068】
他の態様では、交差シグナリング自然免疫経路は、ファゴサイトーシスを受けるマイクロ粒子にカプセル化された腫瘍抗原又は腫瘍抗原をコードするポリヌクレオチドにより達成される。
【0069】
本発明の化合物及び方法の好ましい態様は、説明することを意図しており、限定することを意図しない。修飾(modifications)及び変異(variations)は、上記教示に照らして当業者によりなされうる。本発明を、ガスサンプル中のアセトンレベルを測定するという他の目的、例えば空気品質を監視するために使用することができることも、当業者には考えられうる。故に、特許請求の範囲により定められるとおりに記載されているその範囲内にある開示された特定の態様において変更(changes)がなされうることは理解されるべきである。
【0070】
本発明のなお更なる観点は、本発明の免疫活性化組成物を使用して種々の疾患を予防又は処置する方法に関する。
【0071】
1つの態様では、本発明の組成物は、感染性疾患の予防又は処置のために哺乳動物に投与される。感染性疾患の例は、ウイルス、例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV);インフルエンザウイルス(INV);脳心筋炎ウイルス(EMCV)、口内炎ウイルス(VSV)、パラインフルエンザウイルス;ライノウイルス;A型肝炎ウイルス;B型肝炎ウイルス;C型肝炎ウイルス;アプトウイルス(apthovirus);コクサッキーウイルス;風疹ウイルス;ロタウイルス;デンクウイルス(Denque virus);黄熱ウイルス;日本脳炎ウイルス;感染性気管支炎ウイルス;ブタ伝染性胃腸炎ウイルス;呼吸器合胞体ウイルス;パピローマウイルス;単純ヘルペスウイルス;水痘ウイルス(varicellovirus)、サイトメガロウイルス;痘瘡ウイルス;ワクシニアウイルス;スイポックスウイルス及びコロナウイルスにより引起される疾患を含むが、それらに限定はされない。
【0072】
感染性疾患の更なる例は、微生物、例えば、Actinobacillus actinomycetemcomitans; Bacille Calmette-Gurin; Blastomyces dermatitidis; Bordetella pertussis; Campylobactor consisus; Campylobacter recta; Candida albicans; Capnocytophaga sp.; Chlamydia trachomatis; Eikenella corrodens; Entamoeba histolitica; Enterococcus sp.; Escherichia coli; Eubacterium sp.; Haemophilus influenzae; Lactobacillus acidophilus; Leishmania sp.; Listeria monocytogenes; Mycobacterium vaccae; Neisseria gonorrhoeae; Neisseria meningitidis; Nocardia sp.; Pasteurella multocida; Plasmodium falciparum; Porphyromonas gingivalis; Prevotella intermedia; Pseudomonas aeruginosa; Rothia dentocarius; Salmonella typhi; Salmonella typhimurium; Serratia marcescens; Shigella dysenteriae; Streptococcus mutants; Streptococcus pneumoniae; Streptococcus pyogenes; Treponema denticola; Trypanosoma cruzi; Vibrio cholera; 及びYersinia enterocoliticaにより引起される疾患を含むが、それらに限定はされない。
【0073】
他の態様では、本発明の組成物は、ガンの処置のために哺乳動物に投与される。ガンの例は、乳ガン、結腸−直腸ガン、肺ガン、前立腺ガン、皮膚ガン、骨ガン(osteocarcinoma)及び肝臓ガンを含むが、それらに限定はされない。
【0074】
本発明は、更に、FADDアクチベーター及び薬学的に許容されうる担体を含む医薬組成物に関する。この医薬組成物は、皮下に、非経口的に、静脈内に、皮内に、筋肉内に、経皮的に、腹腔内に又は肺への吸入又はミストスプレー送達のどれかにより投与することができる。
【0075】
担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)又はそれらの適当な混合物及び/又は植物油、固体マイクロ粒子又はリポソームを含有する溶媒又は分散媒質であることができる。適当な流動性は、例えば、コーティング、例えばレシチンの使用、ディスパージョンの場合には必要な粒子サイズの維持及び界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の予防は、種々の抗バクテニア剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等により行うことができる。多くの場合に、等張剤、例えば、糖又は塩化ナトリウムを含むことが好ましいことがある。吸収を遅延させる作用物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物において使用することにより、注射可能な組成物の長期の吸収をもたらすことができる。
【0076】
水性溶液における非経口投与のためには、例えば、溶液は必要ならば適当に緩衝化されるべきであり、そして液体希釈剤は最初に十分な塩又はグルコースにより等張性とされる。これらの特定の水性溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、腫瘍内及び腹腔内投与に特に適当である。これに関連して、使用することができる無菌水性媒体は、本開示に照らして当業者に知られるであろう。例えば、1用量(one dosage)を等張性NaCl溶液1ml中に溶解させ、そして大量皮下注射流体(hypodermoclysis fluid)1000mlに加えるか、又は提唱された注入部位に注射することができる(例えば、"Remington's Pharmaceutical Science" 15th Edition, pages 1035-1038 and 1570-1580)。用量のいくらかの変動は、処置される対象の条件に依存してやむを得ず行われるであろう。いずれにせよ、投与の責任者が、個々の対象について適当な服用量(dose)を決定する。更に、ヒト投与では、製剤は、FDA Office of Biologics標準により要求される、無菌性、発熱原性(pyrogenicity)、一般的安全性及び純度標準を満足する必要がある。
【0077】
無菌注射液は、必要に応じて上記に列挙された種々の他の成分と共に適当な溶媒中に必要な量で活性化合物を加え、続いてろ過滅菌することにより製造される。一般に、ディスパージョンは、基本的分散媒体及び上記に列挙された成分からの必要な他の成分を含有する無菌ビヒクル中に種々の滅菌された活性成分を加えることにより製造される。無菌の注射液の製造用の無菌粉末の場合には、好ましい製造方法は、活性成分+任意の追加の所望の成分の粉末を、先に無菌ろ過されたそれらの溶液から生じさせる真空乾燥及び凍結乾燥技術である。本発明のマイクロ粒子は、Powderject System(Chiron, Corp. Emeryville, CA)を使用して表皮に投与することもできる。Powderjectの送達技術は、ヘリウムガスジェット内で超音速に微細な粒子を加速することにより働き、そして医薬及びワクチンを苦痛なしに又は針を使用しないで、皮膚及び粘膜注射部位に送達する。
【0078】
本明細書に開示された組成物は、中性又は塩形態で配合することができる。薬学的に許容されうる塩は、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と形成された)を含み、該酸付加塩は、無機酸、例えば塩酸又はリン酸、あるいは酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸等の如き有機酸と形成される。遊離カルボキシル基と形成される塩は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム又は水酸化第二鉄、並びにイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカイン等の如き有機塩基から誘導することもできる。処方(formulation)されると、溶液は、投与処方(dosage formulation)に適合性の方式で且つ治療的に有効であるような量で投与されるであろう。配合物(formulations)は、注射液、薬物放出カプセル等の如き種々の投与形態で容易に投与することができる。
【0079】
「薬学的に許容されうる」又は「薬理学的に許容されうる」という語句は、ヒトに投与されるときアレルギー反応又は同様な都合の悪い反応を生じない分子実体(molecular entities)及び組成物を指す。活性成分としてタンパク質を含有する水性組成物の製造は、当該技術分野で周知されている。典型的には、このような組成物は、注射可能な液体溶液又は懸濁液として製造され、注射の前に液体に溶解又は懸濁させるのに適当な固体形態も製造されうる。
【0080】
本明細書で使用された「治療的に有効な量」という用語は、器官又は組織における所望の治療効果又は予防効果を少なくとも部分的に達成するその量である。FADD欠失関連疾患(例えば感染性疾患及びガン)又は状態の予防及び/又は治療処置をもたらすのに必要なFADDアクチベーターの量は、それ自体固定されていない。有効量は、使用される組成物の本質及び形態、必要とされる保護の程度又は疾患の重篤性又は処置されるべき状態に必ず依存する。
【0081】
本発明を下記の実施例により更に説明するが、該実施例は限定するものとみなすべきではない。本願全体にわたり引用されたすべての参考文献、特許及び公開された特許出願並びに図及び表は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0082】
実施例1:FADD欠如繊維芽細胞はウイルス感染に対して感受性である。
FADDを欠いたマウス胚繊維芽細胞(MEFs)はウイルス感染に対して超感受性であるらしいと観察される[Balachandran, et al., J.Virol., 74:1513-1523, 2000]。この表現型を更に検査するために、IFN感受性、原型ラブドウイルス水痘性口内炎ウイルス(VSV)を使用するFADD+/−及びFADD−/−MEFsにおけるウイルス複製の詳細な分析を行った。
【0083】
簡単に言えば、FADD+/−及び−/−MEFsを、18時間のIFNα/β(500U/ml)又はIFN−γ(5ng/ml)予備処理のあるなしで、VSV(MOI=5)を感染させ、そして顕微鏡写真を感染の48時間後に撮った。感染の後、FADD−/−MEFsにおいてVSV複製が有意に増加した(>100倍)ことが観察され、これは付随的にその野生型対応物と比べて速い細胞溶解を受けた(図11a)。
【0084】
更に、カスパーゼ−8+/+及び−/−MEFsを、18時間のIFNα/β(500U/ml)又はIFN−γ(5mg/ml)予備処理のあるなしで、VSV(m.o.i.=5)を感染させ、そして顕微鏡写真を感染の48時間後に撮った。I型(α/β)又はII型(γ)IFNによる12時間のMEFsの処置は、正常な細胞における有意な抗ウイルス活性を発揮すると思われたが、予想されたように、これらの重要な抗ウイルスサイトカインは、24時間までの間FADD−/−MEFsにおいてウイルス複製の開始を遅らせただけであり、その後、ウイルス複製は抑制されないで進行した(図11b−e)(図11cにおいて、感染後の指示された時間に、培地をBHK細胞に関する標準プラークアッセイにより子孫ウイルスの存在を検査した)。観察された感染に対する感受性は、VSVに限定されなかった。何故ならば、FADDを欠いた細胞は、インフルエンザウイルス(INV)及び脳心筋炎ウイルス(EMCV)を含む他のウイルス型にも感受性であったからである(図12)。これらのデータは、FADDがウイルス感染に対する宿主防御において役割を発揮することを示すので、観察された抗ウイルス活性が規定カスパーゼ8依存性シグナリング経路により支配されているかどうかに関して更なる調査を行った[Muzio, et al., Cell, 85: 817-827, 1996]。しかしながら、カスパーゼ8を欠くMEFsは、コントロール細胞に比べてVSV感染に対する過剰な感受性を示さず、IFNの抗ウイルス効果に応答する能力を保持していた(図11f)。図11fにおいて、IFN予備処理は、カスパーゼ−8+/+及び−/−EFsの両方においてVSV複製を有意に阻害する。カスパーゼ−8+/+及び−/−MEFsを、18時間のIFNα/β(500U/ml)又はIFN−γ(5mg/ml)予備処理のあるなしで、VSV(m.o.i.=5)を感染させた。感染後の指示された時間に、培地をBHK細胞に関する標準プラークアッセイにより子孫ウイルスの存在を検査した。図11は、FADDがカスパーゼ−8非依存性経路をとおして抗ウイルス活性を発揮することを証明する。
【0085】
実施例2:IFNシグナリングはFADDの不存在下に欠如しない
I型及びII型IFNへの暴露は、FADD−/−MEFsをウイルス複製から完全に保護することはできなかったので、JAK/STAT経路による効果的なIFNシグナリングは、活性のために機能的FADDを必要としうることはもっともと思われた。IFN媒介シグナリングにおけるFADDの潜在的要求を分析するために、FADD+/−及びFADD−/−MEFsを、I型及びII型IFNで処理し、そして重要なIFNシグナルトランスデューサーSTAT1の発現及び活性を測定した[Levy, et al., Nat. Rev. Mol. Cell. Biol. 3: 651-662, (2002)]。
【0086】
しかしながら、Y701のリン酸化もIFN媒介シグナリングも必要ではなく、STAT1のその後の核トランスロケーションはFADD−/−細胞において害されないようである(図13a−c)。図13aでは、FADD+/−及び−/−MEFsを、指示された時間IFNα/β(500U/ml)又はIFN−γ(5mg/ml)で処理し、STAT1ホスホ−トリオシン701特異的抗体(STAT1 phospho-tryosine 701-specific antibody)を使用するイムノブロッティングにより、STAT1リン酸化状態を決定した。図13bでは、FADD+/−及び−/−MEFsを、GFP−STAT1融合タンパク質をコードするプラスミドでトランスフェクションした。トランスフェクションの24時間後、細胞を、IFNα/β(500U/ml)又はIFN−γ(5mg/ml)により又はIFNα/β(500U/ml)又はIFN−γ(5mg/ml)なしで1時間処理し、そしてSTAT1局在化をGFP蛍光顕微鏡法により決定した。図13cでは、FADD+/−及び−/−MEFsを、IFNα/β(500U/ml)又はIFN−γ(5mg/ml)のあるなしで18時間処理した。これらの細胞から調製された溶解物を、指示されたIFNで誘発されたタンパク質についてイムノブロット分析に付した。
【0087】
同様に、IRF−1、PKR及びSTAT2を含む選ばれたI型及びII型IFNで誘発された遺伝子のIFNに応答する発現は、FADD−/−細胞では影響を受けなかったようである[Der, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95: 15623-15628, 1998]。最後に、I型IFN(ISRE)又はII型(GAS)の制御下のルシフェラーゼレポーター遺伝子は、IFNで処理されたFADD−/−細胞にトランスフェクションされると正常な活性を示した(図10d)。図13dでは、FADD+/−及びFADD−/−MEFsをインターフェロンで刺激される応答エレメント(ISRE−Luc)又はインターフェロンガンマアクチベート配列(GAS−Luc)の制御下にルシフェラーゼを発現するプラスミドでトランスフェクションした。24時間後、細胞をIFNα/β(500U/ml)又はIFN−γ(5ng/ml)のあるなしで刺激し、そしてルシフェラーゼ活性を処理の18時間後に測定した。これらの観察は、IFNシグナリング自体はFADDの不存在下で弱められないことを示す。
【0088】
実施例3:FADDの不存在下における細胞内dsRNAによるIFN−βの欠如した誘発
実施例1及び2における観察にもかかわらず、外因性IFNへの12時間の暴露により最初に確立された抗ウイルス状態は、短命であり、多分ウイルス感染の後絶え間ない新規な合成を必要とすることはもっともと思われる(図11a)。例えば、VSV感染の後にFADD−/−細胞の培地への組換えIFN−βの絶え間ない補充は細胞を細胞溶解から保護することが認められた(図13e−13f)。図13eにおいて、IFNで処理したFADD−/−MEFsをVSV(m.o.i.=5)で感染させ、次いでIFN−β(500U/ml)のあるなしで処理した。細胞を感染の48時間後に写真に撮った。図13fにおいて、IFNで処理したFADD−/−MEFsをVSV(m.o.i.=5)で感染させ、次いでIFN−β(500U/ml)のあるなしで処理した。細胞生存性及びウイルス子孫収率を感染の48時間後に測定した。
【0089】
IFN産生が常に必要であることは、正常な細胞のVSV感染の後、分泌されたIFN−βの抗体媒介中和が、ウイルス感染に対する感受性を再び引起す(図14a及び14b)ことを証明することにより更に強調された。図14aでは、FADD+/−細胞をIFNα/β(500U/ml)で処理し、又は未処理のままにした。次いでこれらの細胞をVSV(m.o.i.=5)で感染させ、そして中和性抗IFN−β抗血清の存在下又は不存在下に更に48時間インキュベーションした。感染の48時間後に写真を撮った(倍率、200倍)。図14bでは、図14aと同じく処理されたFADD+/−細胞をVSV子孫収率又はトリパンブルー排除による細胞生存性について検査した。
【0090】
これらの分析は、ウイルス感染後のIFN−βの産生の欠如は、ウイルス感染に対するFADD−/−細胞の感受性を説明するかもしれないことを示した。この可能性を検査するために、FADD+/−及びFADD−/−細胞をIFN−βプロモーターの制御下にルシフェラーゼレポーター構築物でトランスフェクションし、次いでウイルス感染後のIFN産生の一次トリガーであると考えられるポリ(IC)、ウイルスdsRNAの合成模倣物、を投与した[Kerr, et al., Philos. Trans. R. Soc. Lond. B Biol. Sci., 299:59-67, 1982]。簡単に言えば、FADD+/−及びFADD−/−MEFsを、ヒトIFN−βプロモーターの制御下にルシフェラーゼをコードするプラスミドでトランスフェクションした(IFN−β−Luc)。24時間後、これらの細胞を、ポリ(IC)のみ[50μg/ml]、トランスフェクションされたポリ(IC)[リポフェクタミン2000中の4mg/ml]又はLPS(5ml/ml)で処理し、そしてルシフェラーゼ活性を処理後6又は24時間目に測定した。データは、トランスフェクションされたポリ(IC)は、FADD+/−細胞においてIFN−βプロモーターの強い(>10倍)誘発をトリガーしたが、FADDを欠く細胞ではトリガーしなかったことを示す(図15a)。
【0091】
更に、FADD+/−及びFADD−/−MEFsを、ポリ(IC)のみ[50μg/ml]、トランスフェクションされたポリ(IC)[リポフェクタミン2000中の4mg/ml]又はLPS(5mg/ml)で処理し、そして上清中のIFN−αを処理の6又は24時間後にELISA(PBL)により測定した。トランスフェクションされたdsRNA及びVSVに応答するIFN産生の欠陥(defect)は、IFN産生に特異的なELISAの後のFADD欠如MEFsにおいて確認された(図15b、そしてデータは示されていない)。
【0092】
図15cにおいて、FADD−/−MEFsを、IFN−β−Lucと共に、空のベクター(pcDNA3Neo)又は完全長mFADをコードするpcDNA3Neoによりトランスフェクションした。24時間後に、細胞をポリ(IC)[リポフェクタミン2000中の4mg/ml]でトランスフェクションし、そしてルシフェラーゼ活性を6又は24時間後に測定した。結果は、IFN−βのポリ(IC)で誘発された活性化の回復は、FADD−/−MEFsにマウス(m)FADDを一過性にトランスフェクションすることにより達成されうることを示す(図15c)。
【0093】
更に、カスパーゼ−8+/+及びPKR−/−細胞をIFN−β−Lucでトランスフェクションした。24時間後に、これらの細胞をポリ(IC) [リポフェクタミン2000中の4mg/ml] でトランスフェクションし、そしてルシフェラーゼ活性を6時間後に測定した。ポリ(IC)で誘発されたIFN−β誘発の欠如は、カスパーゼ−8欠如MEFs(caspase-8 deficient MEFs)において明らかではなかった(図15d)。IFN−βの誘発はトランスフェクションされていない外因性ポリ(IC)のみを使用して強くは観察されなかったので、正常なMEFsにおいて観察されたIFN誘発は、殆ど確実に、細胞内dsRNA認識成分が関与し、そしてTLR3非依存性であると結論することができる(図15a−b)。しかしながら、シグナリングは、dsRNAで活性化された分子PKRが関与しないらしく、何故ならば、このキナーゼを欠いたMEFsは、トランスフェクションされたdsRNAに応答してIFN−β誘発を保持していたからである(図15e−f)。図15eにおいて、PKR+/+及びPKR−/−MEFsを、IFN−β−Lucでトランスフェクションした。24時間後、これらの細胞をポリ(IC)[リポフェクタミン2000中の4mg/ml]でトランスフェクションし、そしてルシフェラーゼ活性を6時間後に測定した。
【0094】
図15fでは、FADDのRNAi媒介ノックダウンは、細胞内dsRNAシグナリング経路を無効にするが、PKR又はTLR3はしなかった。HeLa細胞をmFADD、hFADD、PKR又はTLR3からのsiRNA配列で処理し、そしてそれぞれの遺伝子産物のノックダウンを、イムノブロッティング及びRT−PCRにより確認した(データは示されていない)。次いで、これらの細胞をIFN−β−Lucでトランスフェクションし、次いでポリ(IC)(リポフェクタミン2000中の4mg/ml)でトランスフェクションした。6時間後にルシフェラーゼ活性を測定した。
【0095】
更に、VSVで感染したPKR欠如マウスが、IFN−βを誘発する強い能力を保持していた(図15)。観察されたウイルス/dsRNA媒介活性はTLR3シグナリングをとおして説明することはできなかった。例えば、我々は、MEFs、HeLa及び293T細胞において殆どTLR3活性を見出さなかった(図15f−g)。HeLa細胞において、FADDのみのiRNA媒介欠乏(iRNA-mediated depletion)が、トランスフェクションされたポリ(IC)に応答してIFN−βプロモーター活性の殆ど完全な妨害をもたらし、PKR又はTLR3(又は同時に両方)はそうではなかった(図15g)。図15gにおいて、HeLa又はTLR3を、TLR3をコードするプラスミドでトランスフェクションし、そして発現をフローサイトメトリーにより確認した(左)。次いでこれらの細胞を、IFN−β−ルシフェラーゼ構築物でトランスフェクションし、次いでポリ(IC)のみ[50μg/ml]で処理するか又はポリ(IC)[リポフェクタミン2000中の4mg/ml]でトランスフェクションし、そしてルシフェラーゼ活性を6時間後に測定した。
【0096】
かくして、これらのデータは、真核細胞においてTLR3/PKR非依存性dsRNAシグナリング経路を推論させるであろう。FADD媒介抗ウイルス活性の性質を更に詳しく調べるために、IFN−βプロモーター活性化に関与した頂点シグナリングカスケード(apical signaling cascades)の各々、即ち、NF−κB、AP−1及びIRF3を個々に活性化するためのVSV又はポリ(IC)の能力を調べた[Agalioti, et al., Cell, 103: 667-678,2000; Thanos, et al., Cell, 83:1091-1100, 1995]。これらの3つの転写因子の各々に応答するレポーター構築物を使用して、非常に少ないIRF活性及び適度のAP−1/NF−κB活性が、トランスフェクションされたdsRNAに応答して正常なMEFsにおいて検出された。結果は、多分、これらの細胞型をトランスフェクションすることにおける固有の困難及び個々のプロモーターの弱い活性による(データは示されていない)。しかしながら、HeLa細胞におけるNF−κB及びAP−1の強いシグナリングが、トランスフェクションされたポリ(IC)に応答して観察され、これは、FADDの不存在下に明らかに弱くなったように見えた(図13f)。かくして、FADD媒介シグナリングは、NF−κB及びAP−1の活性化に関与する。
【0097】
実施例4:FADDの不存在下の正常なtoll受容体シグナリング
TLR3は細胞外dsRNAの認識に関与しており、これはIRAKファミリーメンバー及びTRAF6の活性化をとおしてIFN−βの誘発をもたらすことができる[Alexopoulou, et al., Nature, 413:732-738, 2001]ことが最近示された。FADDがTLR媒介シグナリングにおいて重要な役割を果たしているかどうかを更に明らかにするために、FADD+/−及び−/−MEFsを、IFN−β−ルシフェラーゼレポーター構築物及びTLRシグナリング経路の種々の成分(例えば、TLR3、IRAK−M、IRAK−1、MyD88、TIRAP/MAL、TRIF/TICAM−1及びTRAF6)をコードするプラスミドでトランスフェクションし、その多くは一過性過剰発現の後にIFN−β遺伝子発現を誘発することが示された[Akira, J. Biol. Chem., 278:38105-38108, 2003]。しかしながら、IFN−βのTLR媒介誘発の抑止は、FADD欠如細胞では観察されなかった(図16a)。図16aでは、指示されたTLRシグナリング成分をコードするプラスミドを、FADD+/−及びFADD−/−MEFsにIFN−β−Lucと共に共トランスフェクションし、そしてルシフェラーゼ活性をトランスフェクションの24時間後に測定した。更に、TLR3、TRIF及びIRAK1過剰発現は、FADD含有MEFs及びFADDを欠いているMEFsの両方において、IFN−βプロモーター活性の>10倍増加を刺激することができた(データは示されていない)。これらの結果は、TRIF欠如MEFsは、FADD−/−とは違って、トランスフェクションされたdsRNAに応答してIFN−βを誘発する能力を保持していたことを証明することにより立証された。
【0098】
これらの発見を更に確認するために、IFN−βのNF−κB/AP−1活性化をモジュレーションすることを担当するTLR活性の重要な下流中間体[Wu et al., Bioessays, 25:1096-1105(2003)]、抗ウイルス免疫におけるTRAF6の役割を調べた。従って、TRAF6+/+及びTRAF6−/−繊維芽細胞を、18時間のIFNα/β(500U/ml)又はIFN−γ(5ng/ml)予備処理の存在下又は不存在下にVSV(MOI=5)で感染させた。しかしながら、FADD−/−細胞と違って、IFNへの暴露は、野生型コントロール細胞と同様なVSV感染に対してTRAF6−/−MEFsを有効に保護したことが見出された(図16b)(顕微鏡写真は感染の48時間後に撮られた)。次に、細胞内ポリ(IC)のTRAF6−/−MEFsにおけるIFN−βプロモーターを活性化する能力を調べた。TRAF6+/+及びTRAF6−/−EFsを、18時間のIFNα/β(500U/ml)又はIFN−γ(5ng/ml)予備処理の存在下又は不存在下にVSV(MOI=5)で感染させた。細胞生存度を感染の48時間後にトリパンブルー排除により決定した。この分析は、トランスフェクションされたポリ(IC)がTRAF6の不存在下にIFN−βを活性化する能力を保持していたことを示し、これは、このアダプター分子が多分、FADD媒介dsRNA細胞内シグナリング(FADD-mediated dsRNA-intracellular signaling)において役割を演じないことを示す(図16c−d)。
【0099】
更に、他のTLR経路におけるFADDの重要な役割は観察されなかった(データは示されていない)。TLR3及びIRAK1がTRAF6−/−の不存在下にIFN−β誘発を媒介することができないことを証明することは、FADDがTLR3/TRAF6及びTRIF経路とは独立に機能することを総合的に示すであろう(図16e)。図16eは、IFN予備処理が、TRAF6−/−MEFsをVSVから保護することを示す。TRAF6+/+及びTRAF6−/−EFsを18時間のIFNα/β(500U/ml)又はIFN−γ(5ng/ml)予備処理の存在下又は不存在下にVSV(m.o.i.=5)で感染させた。この実験では、培地を、BHK細胞に関する標準プラークアッセイによる感染の48時間後の子孫ビリオン(progenyl virion)の存在について調べた。TRAF6の不存在下の正常な細胞内dsRNAシグナリング。TRAF6+/+及びTRAF6−/−EFsを、IFN−β−Lucで24時間トランスフェクションし、次いでポリ(IC)[リポフェクタミン2000中の4mg/ml]で6時間トランスフェクションし、その後ルシフェラーゼ活性を測定した。TLR3及びIRAK−1はIFN−β遺伝子誘発のためにTRAF6を必要とする。TRAF6+/+及びTRAF6−/−EFsを、IFN−β−Lucと共に、TLR3、IRAK−1又はTRAF6をコードするプラスミドでトランスフェクションし、そしてトランスフェクションの24時間後にルシフェラーゼ活性を測定した。
【0100】
実施例5:哺乳動物IMD様経路は抗ウイルス自然免疫を与える。
データは、FADDはウイルス感染に対する自然免疫において重要な役割を演じ、そしてTRAF6媒介TLR3経路から独立であることを示す。更に、FADDは、Drosophilaにおけるバクテリア感染に応答する自然免疫に関与していることが最近報告された。[Leulier, et al., Curr.Biol., 12: 996-1000, 2002; Naitza, et al., Immunity, 17: 575-581, 2002]。これらの生物では、免疫不全(imd)遺伝子産物、哺乳動物デスドメイン含有キナーゼのDrosophlaホモログ、RIPは、dFADDと会合してNF−κB関連経路の活性化及びその後の抗バクテリア遺伝子の誘発をトリガーする[Hoffmann, Nature, 426:33-38, 2003]。FADDが関与するIMD様経路が哺乳動物細胞中に存在するかどうかを決定するために、IFNで処理された又は未処理のRIP−/−MEFsをVSV(MOI=5)で感染させた。図17aは、RIP−/−細胞ではVSVで誘発された細胞溶解を示すが、コントロールでは示さない。この実験では、VSVで誘発された細胞溶解は、FADD−/−MEFsと同様、IFNの存在下ですら観察された。
【0101】
図17b及び17cに示されたとおり、野生型MEFsに比べてIFNで処理されたRIP−/−MEFsにおいて約10〜50倍多くのVSVが発生し、インフルエンザウイルス又はEMCVによる感染の後、同様な結果が得られる。図17bでは、FADD+/−及びFADD−/−EFsを、18時間のIFNα/β(500U/ml)又はIFN−γ(5ng/ml)予備処理の存在下又は不存在下にVSV(m.o.i.=5)で感染させた。感染後の指示された時間に、培地を子孫ビリオン産生について調べた。図17cでは、RIP+/+及び−/−EFsを、18時間のIFNα/β(500U/ml)又はIFN−γ(5ng/ml)予備処理の存在下又は不存在下にVSV(m.o.i.=5)で感染させた。感染後の指示された時間に、培地を子孫ビリオン産生について調べた。
【0102】
更に、RNAiを使用してRIP発現が抑止されたRIP欠如MEFs及びHeLa細胞は、IFN−βプロモーターの細胞内dsRNA媒介シグナリングに選択的に応答不能及び完全な応答不能を示した(図17d−e)。図14eでは、RIP+/+及び−/−EFs(左)又はRIPがRNAiにより特異的にノックダウンされた(右)HeLa細胞を、IFN−β−Lucで24時間トランスフェクションし、次いでポリ(IC)[リポフェクタミン2000中の4mg/ml]で6時間トランスフェクションし、その後ルシフェラーゼ活性を測定した。図17fにおいて、RIP+/+及び−/−EFsを、IFN−β−Lucと共に、TLR3、IRAK−1又はTRAF6をコードするプラスミドでトランスフェクションし、そしてトランスフェクションの24時間後にルシフェラーゼ活性を測定した。これらの結果は、TLR3、IRAK−1、TRAF6及びTRIFは、RIP−/−MEFsにおける一過性の過剰発現の後、IFN−βプロモーター活性を強く誘発することができることを示し、これは、細胞内及び細胞外dsRNAが様々なシグナリング経路を利用してIFN−βを誘発させるという更なる証拠を与える。
【0103】
Drosophilaにおいて、IKK−β/IRD5及びIKK−γ/KennyからなるI−κBキナーゼ(IKK)複合体を介したNF−κB相同体Relish(NF-κB homologue Relish)の活性化をとおして抗バクテリア遺伝子発現の誘発を刺激するのにimd及びdFADDが必要とされる。哺乳動物細胞において、IFN−βの誘発は、NF−κB及びIRF−3の活性化も伴う。図18aにおいて、野生型、又はIKK−α、IKK−β、IKK−γ及びIKK−δ欠如MEFsを、IFNα/β(100Um121)予備処理のあるなしでVSV(MOI 1/4 10)で感染させた。結果は、IFNによる予備処理は、ウイルス感染に対するIKK−α、−β又は−γを欠いているMEFsを有効に保護することができたことを示す(図18a)。この研究は、Tank結合キナーゼ1(TBK−1)/IKK−δを欠いているMEFsを調べることにより補充された。何故ならば、この分子は、MEFsにおいて一次IRF−3キナーゼであると思われるからである。この実験は、FADD−/−及びRIPk1−/−繊維芽細胞と同様に、TBK−1/IKK−δ欠如細胞は、IFNによる予備処理の後ですらウイルス複製及び細胞溶解に対して保護されないことを示した(図18a)。
【0104】
FADD−/−細胞と同様に、これらの結果は、TBK−1/IKK−δ欠如MEFsにおけるI型IFN誘発の欠如により説明されうる。DNAマイクロアレイ、RT−PCR及びELISA分析は、TBK−1/IKK−δの不存在下では、I型IFNのdsRNA応答誘発及び他の抗ウイルス遺伝子もひどく害されることを確認した(図18b−d)。これらの結果は、FADDが主としてIRF−3のTBK−1活性化を通してその効果を媒介することができることを示す。従って、TBK−1/IKK−δ及びIKK−1によるリン酸化の後に起こるIRF−3トランスロケーションは、トランスフェクションされたdsRNAで処理した後のFADD−/−細胞において欠如していることが見出された(図15e及びf)。特に、Irf3−/−MEFsは、I又はII型IFNへの暴露後のウイルス感染に対して完全には保護されなかった(図18g)。同様に、DNAマイクロアレイ、RT−PCR、ELISA及びRNA干渉分析は、細胞内dsRNAの、IRF3−/−MEFsにおけるI型IFN産生を誘発する能力の欠如を確認した(図18h〜j)。
【0105】
これらの結果は、ウイルスdsRNAsは、FADD及びRIP1を「インネイテオソーム("innateosome")」複合体に動員してIRF−3のTBK−1/IKK−δ媒介活性化を調節することができる細胞内受容体分子により認識されることを示唆する。FADD又はRIP1の損失は、IFN−β産生の欠如及びその結果としてのIRF−7の産生の遅れ及び抗ウイルス状態3の強化に必要なIFN−αファミリーのメンバーの産生の遅れをもたらすことが示された。TBK−1/IKK−δ欠如MEFsは、FADD欠如MEFs又はRIP1欠如MEFs単独よりも、dsRNA刺激に応答するI型IFNsの誘発のより深い欠如(profound defect)を示すが、これは、細胞内dsRNAで活性化された複合体はFADDの不存在下にいくらかの活性を保持していること、又は別のFADD非依存性細胞内シグナリングカスケードがTBK−1/IKK−δに収斂することを示唆しているらしいことに注目すべきである。このRIP1/FADD/TBK−1(RIFT)経路は、TLR3、PKR、TRIF/TICAM−1又はTRAF6から殆ど独立しているようであり、そしてDExD/HヘリカーゼRIG−Iの如き別の細胞内のdsRNA活性化シグナルトランスデューサーの存在を示唆する他の発見と合致している。
【0106】
実施例6:バクテリア感染に対する哺乳動物応答におけるFADDの役割
Drosophilaにおけるimd経路の役割が、グラム陽性菌感染に対する応答に関与することが報告され、そして抗ウイルス経路の存在はまだ決定されていない。哺乳動物細胞におけるFADD又はRIPの損失により生じる細胞内バクテリア感染に対する自然応答がどうであるかを調べ、そして図19に示す。簡単に言えば、FADD+/+、FADD−/−又はRIP−/−MEFsを、IFN−α/β又はIFN−γのあるなしで18時間処理し、そして細胞内グラム陽性菌、Lysteria monocytogenesの一夜培養物5μlで感染させ、そしてゲンタマイシン10ig/mlを含有する培地中で更に24時間インキュベーションし(図19a及び19b);あるいは、グラム陰性Salmonella typhimuriumの一夜培養物50μlで感染させ、そしてゲンタマイシン10ig/mlを含有する培地中で更に48時間インキュベーションした(図19c)。有意義なことに、バクテリア感染への暴露の後FADD及びRIP欠如繊維芽細胞において劇的な細胞死が起こることが観察された。この効果は、バクテリア複製の増加を伴っていた。このデータは、昆虫細胞と同様に、FADD経路は、バクテリア感染に対する自然免疫において重要であることを示す。
【0107】
実施例7:大きな表面積を有するキトサン粒子の予備製造
マイクロスプレーエアーガン(Micro Spray Air Gun)又はエレクトロスプレー(Electrospray)法を、キトサンマイクロ粒子予備製造のために使用した。マイクロスプレーエアーガン法では、キトサン溶液を、ガンについて可能な最小の寸法に乱流で分散させた。粒子のサイズは主として表面張力により制御され、そして〜20〜100ミクロンの範囲にあった。
【0108】
エレクトロスプレーは、液体の静電噴霧の方法である。静電界は、流体を毛細管電極から受け入れ対極に向けて強制的に噴出させる。クーロン反発による小滴の第2段階分割(splitting)及び微粉砕は、微細な微小滴のプルーム(plume)を生成させる。表面フィルム形成を防止するために、改変されたエレクトロスプレー法をセットアップした。
【0109】
架橋溶液(トリポリホスフェート、TPP)の静止した表面へのキトサンのエレクトロスプレーは、キトサン溶液の極めて微細な且つ均質な粉砕により、マイクロ粒子の代わりに安定化されたキトサンの薄い表面フィルムを形成した。この望ましくない効果を阻止するために、架橋溶液の乱流再循環を考案した(図20)。循環マイクロポンプは、フィルムの破壊に必須の受け取り電極板におけるTPP溶液のオープンループ循環を与えた。改変されたエレクトロスプレー装置を使用して、水及び25%エタノール中の1%、1.5%及び2%キトサン溶液を粉砕した。25Gステンレス鋼毛細管(EFD)は、粉砕電極として作用し、10%TPP溶液100mlを含有する10インチステンレス鋼板は受け取り対極として使用された。架橋TPP溶液の乱流攪拌を伴うエレクトロスプレーは、マイクロスプレーガンプルーム様式を使用して得られたマイクロ粒子よりも小さい粒子を創生した:サイズは〜5〜50ミクロンの分布で生じた(図21)。
【0110】
改変されたエレクトロスプレー法により予備製造されたキトサン小滴は、およそミクロンサイズであり:エレクトロスプレープルームによる赤色レーザービームの有意な90°散乱が観察され、これは光の波長に匹敵する小滴サイズを示している。乾燥粒子で観察されるより大きい見掛けのサイズは、その後の変換:TPP溶液と接触すると、表面張力は、微小滴をTPPの表面に極薄シートに広げる、により説明される。この格別の形状は顕微鏡で十分に見られた。凍結乾燥すると、マイクロシートは収縮してしわくちゃの紙に似た形状となり、そして再懸濁後に決して再び広がらない。マイクロ粒子を予備製造する上記した方法は、大きな表面積を有する広範囲のマイクロ粒子を生成する。より小さいサイズの粒子は、樹状細胞により飲み込まれうる。他方、これらの粒子の大きい表面積は、核酸及びタンパク質による外部飽和のための有意な利点を与える。
【0111】
実施例8:ポリイノシン酸−ポリシチジル酸をロードされたキトサン粒子
ポリイノシン酸−ポリシチジル酸、ポリ(IC)は、合成のミスマッチな二本鎖RNAからなるインターフェロン(IFN)誘発物質である。このポリマーは、ポリイノシン酸及びポリシチジル酸の各一本鎖から作られる(図22)。
【0112】
ポリアニオンであるので、ポリ(IC)は、ポリカチオンキトサンにより強く吸着される。ポリ(IC)をロードされたキトサン粒子の2つの製造方法を使用した:バルクキトサン溶液への混合及びポリ(IC)溶液中の空の粒子のインキュベーションによる予備製造されたキトサン粒子のポリ(IC)による外部飽和。
【0113】
1.ポリ(IC)による外部飽和
改変されたエレクトロスプレー法を使用して予備製造された粒子、普通は乾燥総計20〜50mgを、3.0mg/mlでPBS中に可溶化されたポリ(IC)(VWR International, Cat. #IC10270810)0.6ml中に入れた。室温で2時間の穏やかな振とうの後、粒子を、すべて1000Gで2分間5回遠心し、各回上清を捨て、そして蒸留水1.5mlで置き換えた。洗浄された粒子の得られる懸濁液を一夜凍結乾燥した。
【0114】
2.エチジウムホモ二量体を使用する溶液中のポリ(IC)の測定
溶液中のポリ(IC)の濃度を決定するために、エチジウム誘導体のインターカレーションによる20〜25倍の蛍光増強の効果を使用した。
【0115】
エチジウムホモ二量体(ETDH; Sigma-Aldrich, Cat. #46043)は、そのキレート構造により(図23)、DNA、RNAと及び遊離ヌクレオチドとさえ、特異的複合体を形成することが知られている。結果として、それはポリ(IC)を測定するための最も適当な蛍光インターカレーション剤と考えられた。Bio−TekKC−4多機能プレートリーダーを使用して、標準透明96ウエルプレート中のエチジウムホモ二量体(ETDH)でインターカレーションされたポリ(IC)を測定した(図24)。測定を行うための条件は表1に示される。
【0116】
【表1】
【0117】
粒子中のポリ(IC)の測定
KC−4リーダーを使用して固体キトサン粒子におけるポリ(IC)含有率の半定量的評価を行うことが可能であることが見出された。水溶液中のマイクロ粒子は、その小さなサイズのため、十分に透明であるとみなすことができ、そしてランダム散乱性物体とみなすことができる。ゆえに、ポリ(IC)の表面結合分子においてETDHがインターカレーションし、そしてポリ(IC)の残りを含有する粒子の内側に更に拡散すると、ETDH蛍光の有意な部分がKC−4リーダーにより集められることができる(図25)。
【0118】
粒子を溶液中に浸漬することによる、粒子のポリ(IC)による外部飽和は、キトサン溶液中にポリ(IC)を直接混合することよりもはるかに優れていることが見出された。これを図26に示す。ETDHの存在下のポリ(IC)粒子の時間依存性蛍光は、2つの異なる相:蛍光の速い(数秒)増強を伴う容易にアクセス可能な表面ポリ(IC)分子の即時のインターカレーション及び粒子の深部へのETDHのゆっくりした浸透による蛍光の安定した増加、を証明した。最大表面ローディングを有する、即ち、蛍光の高められた速い増強を示す、粒子を得ることが必要と考えられた。
【0119】
キトサン/ポリ(IC)粒子の製造のプロトコールについて、効率の下記の試験的順序が見出された。
【表2】
【0120】
エレクトロスプレーを使用して製造された最善の粒子におけるポリ(IC)の容易にアクセス可能な表面分子は、粒子1mg当たりポリ(IC)4.7μgを含んでいたが、これは直接混合によりマイクロガンを使用して製造された粒子の場合より〜12倍高かった(それぞれ、図26におけるグラフ7及び2)。
【0121】
4.キトサン粒子からのポリ(IC)の低い放出
キトサン溶液へのポリ(IC)の直接混合により製造された粒子、10mg乾燥重量をプラスチック試験管中のPBS1ml中に入れ、シールし、そしてシェーカー上で37℃で9日間インキュベーションした。粒子を或る時点で1000Gで5分間遠心し、上記したとおりのETDHの存在下に蛍光アッセイのために、上清を採取し、そして新たなPBSで置き換えた。観察された放出は、有意ではなく、227時間にわたり理論的最大値の0.5%未満で起こった(図27)。キトサン粒子からのポリ(IC)の不十分な放出は、混合及び飽和製造法の両方で得られた粒子で見出された。粒子がファゴサイトーシスされるべき場合には、このことはあまり重要ではないことがある。
【0122】
実施例9:OVA及びポリ(IC)をロードされた多機能性キトサン粒子
オブアルブミン(OVA)は、免疫学的実験でモデル抗原として使用することができる45kDa糖タンパク質である。OVA/ポリ(IC)をロードされたキトサン粒子の2つの製造方法を使用した:バルクキトサン溶液への混合及びOVA/ポリ(IC)によるマイクロ粒子の外部飽和。
【0123】
1.OVAのみ又はOVAとポリ(IC)との組み合わせによる外部飽和により製造されたキトサンマイクロ粒子。
エレクトロスプレーにより予備製造された粒子、全乾燥重量20〜50mgを、30mg/mlOVA(Sigma-Aldrich, Cat. #A-5503)又は30mg/mlOVA_2mg/mlポリ(IC)、1.5ml中に室温でロッカー上で2時間入れた。2時間の穏やかな振とうの後、粒子を各回1000Gで5回遠心し、上清をすて、そして蒸留水1.5mlで置き換えた。かくして洗浄された粒子の得られる懸濁液を一晩凍結乾燥した。
【0124】
2.OVAのビシンコニン酸アッセイ
タンパク質のビシンコニン酸(BCA)アッセイは、2つの主要な工程に基づいている:
● 第1工程は、Cu+2をCu+1に還元するビウレット反応である。
● 第2工程では、ビシンコニン酸(BCA)はビウレット錯体におけるペプチド基を置換して、Cu+1 とのビスキレート錯体を形成し、これは紫色であり、そして562nmで検出できる(図28)。
【0125】
商業的に入手可能なBCAキット(例えば、Sigma-Aldrich, Cat. #BCA1)は、通常BCA、酒石酸塩/重炭酸塩緩衝剤(pH11.25)及び4%硫酸銅溶液を含有する。アッセイの直前に、標準アルカリ性BCA溶液50部をアッセイ系として使用されるべき4%硫酸銅溶液1部と混合する。
【0126】
タンパク質は、溶液中及び不溶性物体中(緩衝剤中に懸濁させたマイクロ粒子;不溶性タンパク質含有フィルムのサンプル等)の両方においてBCAアッセイで測定することができる。しかしながら、ヘテロ相システムは、BCA溶液中のサンプルのより長い、そしてより高い温度での(溶液中のタンパク質での37℃に対して60℃)インキュベーションを必要とする。
【0127】
3.溶液中の及び不溶性物体中のOVAのアッセイ
アッセイ溶液ml当たり60μgまでタンパク質をストレッチすることを行った線形応答の面積を決定するために、新鮮なBCAアッセイ溶液をOVA標準により較正した(図29)。
【0128】
溶液中のOVAを下記の如く測定した:
タンパク質溶液のアリコートを、必要な過剰のアッセイ溶液に加えて2以下の最終光学的吸光(final optical extinction)及びアッセイの線形応答を完全に保証した。分析物をロッカー中で37℃で1時間インキュベーションした。すべての読みはタンパク質を含有しないブランクサンプルの読みに対して補正した。
【0129】
マイクロ粒子中のOVAを下記のとおりに測定した:
乾燥マイクロ粒子のサンプル(各々約1mg)を、分析天秤(Mettler-Toledo XS105)で0.01mgの正確度で重量を秤り、そして線形応答及び許容されうる光学密度(<2o.u.)を与えるように予備計算された対応する過剰のBCAアッセイ溶液中に懸濁させた。試験管中にシールされたサンプルをロッカー中で37℃で4時間又は水浴中で時々タンプリングしながら60℃で1時間インキュベーションした。両方の場合に、インキュベーション時間を、タンパク質の分子による二価の銅の一価の銅への完全な還元を与えるように実験的に決定した。管を、500gで5分間遠心して、粒子を分離し、そして透明な(clear)着色した溶液を562nmで分光光度計により読み取った。すべての読みは、タンパク質を含有しないブランク粒子で得られたサンプルの読みに対して補正した。
【0130】
実施例10:適度のローディングタンパク質及び核酸を有する多官能性マイクロ粒子
1.マイクロ粒子中のOVA含有率の評価
タンパク質を直接混合により粒子に加えると、粒子調製の異なる方法は、OVAの最終含有率に対して有意な効果はないようであると見出された。しかしながら、タンパク質が予備製造された粒子の外部飽和(浸漬(soaking))によりロードされると、結果は異なっていた。外部飽和は、3〜5倍高い最終OVA濃度を有するマイクロ粒子を造り出した。
【0131】
改変されたエレクトロスプレー及びマイクロスプレーガンは、しわくちゃの紙の幾何学及び形状を示す非常に高い表面積を有する小さな粒子の予備製造を可能とする。粒子の小さなサイズ及び大きな表面積のマイクロ粒子は、放出速度よりもむしろ高い吸収容量に貢献した。
【0132】
高い表面積は、溶液中のマイクロ粒子の外部飽和を介してNA及びタンパク質が付着するための大きな外表面を与える。
【0133】
【表3】
【0134】
2.マイクロ粒子からのオブアルブミンの時間放出を測定すること
ロードされた粒子のサンプル、各々10.0mgの乾燥重量を、プラスチック試験管中のPBS1.0ml中に入れ、パラフィンでシールし、そして37℃で18日までシェーカー上でインキュベーションした。管を、1000Gで5分間ある時点で遠心し;上清を上記したとおりのBCAアッセイのために採取した。
【0135】
タンパク質を混合することにより及びタンパク質溶液中に予備製造された粒子を浸漬することにより製造された粒子からのOVAの放出プロフィルにおいて大きな差が見出された(図30)。前者では、全体の放出は多日数で総ロードの2%を決して超えなかったが、後者では、放出は15%〜30%を達成し、そして最初の7〜10時間で起こった。OVAの総含有率に対する効果と同様に、OVA及びポリ(IC)を有する粒子の同時的飽和は、OVAの放出を見かけ上減少させた(図30)。
【0136】
実施例11:ポリイノシン酸−ポリシチジル酸を高度にロードされたキトサン粒子
エレクトロスプレーを使用して製造された最善の粒子におけるポリ(IC)のアクセス可能な表面付着分子は、粒子1mg当たり4.7μgポリ(IC)を含有していた。粒子のサイズは〜5〜50ミクロンに分布して生じており、そしてトリポリホスフェート(TPP)を架橋剤として使用した。ゆえに、最も近い目標は粒子の収着容量(sorption capacity)を増加させるように設定された。
【0137】
粒子の収着容量を高めるために、キトサン架橋剤を変えることが望ましいことが見出された。より軟質の粒子を造りだし、そして同時に核酸のホスフェート基に結合することに対してはるかに弱い競合者である有望なゲル化架橋剤として、硫酸ナトリウムNa2SO4(特記しない限り、蒸留水中10%)が選ばれた[Berthold, et al., J. Controlled Release, 39: 17-25(1996)]。
【0138】
ポリ(IC)をロードされたミクロより大きい(supra micro)(即ち、大きい)−及びサブミクロン(小さい)プロタサン粒子(Protasan particles)を製造した。ミクロより大きい粒子(20〜700ミクロン)は、ケモカイン又は薬物担体として使用されると思われ、又は細胞外TLR−3免疫経路を活性化すると思われ;それらは細胞により呑み込まれるのを回避するであろう。
【0139】
他方、抗原提示細胞により呑み込まれ、そして一次自然免疫応答の活性化のための中心である内部FADD/RIP/TRAF−2経路を介してプロセッシングされうるより小さな粒子(0.5〜10um)により核酸及び抗原が担持されると、免疫感作が有効であることが知られる。
【0140】
実施例12:ポリイノシン酸−ポリシチジル酸を高度にロードされたミクロンより大きいプロタサン粒子
100mlNa2SO4溶液pH5.5を含有する受け入れパンの上で層流モードにおいてマイクロエアーガンを使用する1%酢酸中のPROTASAN UP CL 213(NovelMatrix, Norway, cat#420101)の2%溶液10mlを噴霧して、より大きい粒子(100〜200ミクロンを得た。
【0141】
プロタサンを製造し、そして、cGMPのUS FDAガイドラインに従って証明した(21CFR210,211)。
【0142】
粒子を、繰り返し遠心/再懸濁手順を使用して蒸留水中で6回洗浄し、そして一夜凍結乾燥した。得られる粒子は、〜10〜200ミクロンの不規則でスポンジ状の断片を発生した(図31A)。
【0143】
1.ポリ(IC):可溶化及び測定
ポリ(IC)(Amersham, cat. #27-4729-01)50mgを、製造者により推奨されたとおり、1%NaCl35ml中に一晩溶解した。最終溶液は、260nmにおける吸光度A260〜14.0を有していたが、これはml当たり純粋な二本鎖ポリ(IC)700μgに相当した。故に、Amersham製剤中のポリ(IC)の総含有率は約49〜50%であり、すべての他の成分は緩衝性塩であつた。
【0144】
粒子中のポリ(IC)の量は、システムに加えられたポリ(IC)と粒子沈殿後の水相に残っているポリ(IC)との差として計算された[Bivas-Benitz, et al., Int. J. Pharm, 266: 17-27(2003)]。溶液中のポリ(IC)の濃度を測定するために、ポリ(IC)UVスペクトルの直接的読み取りを、製造に関与したポリ(IC)の非常に高い濃度により、蛍光法の代わりに使用した。
【0145】
2.予備製造された粒子によるポリ(IC)の収着の測定
異なる実験におけるポリ(IC)50〜700ug/mlを含有する酢酸塩又はリン酸塩緩衝剤0.5〜5mlの容積中に、既知の重量の粒子を懸濁させた。懸濁液を強く5分間ボルテックスし、次いで中間レベルでボルテックスして保ち、次いで更に15分間ロックした。その後、懸濁液を、7000gで5分間遠心し、そして上清中のポリ(IC)の濃度を1cm石英セルを使用して分光光度計で測定した。260nm及び400nmにおける吸光度の差を使用してポリ(IC)の濃度を決定し、ここで、どの1光学的単位も〜50μg/mlポリ(IC)に相当していた(American Biosciences, specification for the Product#27-4732)。
【0146】
3.pHに依存するミクロンより大きいプロタサン粒子の収着容量
ポリ(IC)0.7mg/mlの溶液を、3つの異なる緩衝剤:1%酢酸塩緩衝剤pH4.5;1%酢酸塩緩衝剤pH5.5;PBSpH7.4と1:1で混合した。各部分における乾燥プロタサン粒子、1.0+−0.04mgを、(ポリ(IC):緩衝剤)混合溶液1.0ml容積中に懸濁させた。ボルテックス及び遠心後に、ポリ(IC)の吸着されなかった残りを上記のように測定した。すべての3つのサンプルは、乾燥空粒子mg当たりポリ(IC)0.7mgに等しいか又はそれを超える、プロタサン粒子の同様な収着容量を示した(図32a)。けれどもサンプルの物理的状態は異なっていた。pH4.5のサンプルは、粒子の最もコンパクトな沈殿を示し、これに対してpH5.5のサンプルは大きく且つ圧縮できないペレットを示し、そしてpH7.4のサンプルは中間の圧縮を示した(図32B)。粒子の最大収着容量は、後でpH4.5で最も高いことが見出された(図32C)。
【0147】
上記発見の結果として、種々の粒子によるポリ(IC)の収着に関するすべてのその後の実験は、pH4.5で行われた。
【0148】
架橋剤として硫酸ナトリウムを使用して予備製造されたプロタサン粒子へのポリ(IC)の収着に関する実験は、pH4.5の最大収着容量は、空粒子1mg当たりポリ(IC)2mgを超えたことを証明した。この結果は、TPP架橋剤による結果に対して〜400倍の改良を示した。
【0149】
実施例13:ポリ(IC)を高度にロードされたサブミクロンプロタサン粒子
希釈した溶液からのプロタサン/ポリ(IC)/架橋剤凝集物のゆっくりした沈殿を用いてサブミクロン粒子を製造した。
【0150】
0.1%酢酸塩緩衝剤pH4.5中の200μg/mlのポリ(IC)溶液200mlを、室温で絶えず攪拌しながら0.1%酢酸塩緩衝剤中の200μg/mlプロタサン溶液200mlに15分以内に滴下により加えた。得られる溶液を30℃で1時間攪拌し、その後硫酸ナトリウムの10%溶液400mlを、15分以内に滴下により加えた。組み合わせた溶液の最終800mlを、30℃で2時間攪拌し、次いで5000Gでの遠心により沈殿させた。ペレットを上記したとおり蒸留水中で2回洗浄し、水中に再懸濁させ、次いで40umBD Falconセルストレーナーを通してろ過し(BD Biosciences, cat.#352340)、次いで再び沈殿させ、そして最後に〜5mg/mlで水中に再懸濁させた。これらの粒子のサイズは1〜20ミクロンの範囲に見出された(図31B)。これらの粒子の収着容量は、1mg/mlであると思われた。
【0151】
実施例14:疎水性カチオンPLGA/PEI/POLY(IC)組み合わせ粒子
PLGA/PEI/ポリ(IC)粒子を製造するために、Bivas-Benita et al.のプロトコールの種々の改変を用いた[Bivas-Benita et al., Eur. Jour. of Pharmaceutics and Biopharmaceutics, 58: 1-6(2004)]。実際に、ジクロロメタン中のPLGAの溶液及びアセトン中のPEIの溶液を種々の割合で組み合わせ、超音波乳化、エアーガン及びエレクトロスプレー微粒化を使用してマイクロ粒子を得た。
【0152】
1.超音波乳化
PLGA500mgをジクロロメタン5ml中に溶解し、そしてアセトン5mlに溶解したPEI100mgと組み合わせた(5:1最終PLGA:PEI比)。一緒にした溶液を室温でBranson−1510超音波処理浴中で絶えず超音波処理下に保たれた10%NaCl水溶液50ml中に滴下により注いだ。塩化ナトリウムを導入して、有機相を分散させること及び洗浄過程期間中再懸濁することを促進させた。混合物を高められた温度(50℃)で更に4時間後に超音波処理して、揮発性溶媒を除去した。得られるPLGA/PEI粒子を前記したように4回洗浄/沈降させ、そして凍結乾燥した。なかなかなくならない界面活性剤の排除により、洗浄パスの数を減少させることが可能であることが見出された。
【0153】
2.NaCl受け入れ水溶液に対するPLGA/PEI溶液のエアーガン及びエレクトロスプレー
CH2CL2/アセトン中の上記した5:1PLGA:PEI溶液をマイクロエアーガンを使用して10%NaClに対して及びエレクトロスプレーを使用して乱流10%NaCl溶液に対して噴霧した。集めたマイクロ粒子を4回洗浄/沈降させ、そして凍結乾燥した。
【0154】
界面活性剤なしで得られた粒子によるポリ(IC)の収着を、ポリ(IC)溶液〜70μg/mlにおいて上記した如く試験した。一般的収着容量は、ほぼエマルジョン技術と匹敵するオーダーに改良されることが見出され;pH4.5の酢酸塩緩衝剤は収着のために最も適当であることが再び見出された(図33a及びb)。
【0155】
エアーマイクロガンを使用して得られた粒子の収着容量は、エレクトロスプレーからの粒子よりも幾分高いことが見受けられたが、全体としての形状及びサイズ分布は、エレクトロスプレーの場合により良好であった。エアーガンは、10ミクロンより大きいサイズの不規則な凝集体を実際に生成し(示されていない)、そしてエレクトロスプレーからの粒子はサイズ範囲3〜10ミクロンのスフェロイドであった(データは示されていない)。
【0156】
3.乾燥金属電極に対してエレクトロスプレーを使用して得られた粒子
乾燥金属電極(ステンレス鋼製パン)上に電気的に分散された粒子を受け取り、そしてその後それらを可溶化することが可能であることが見出された。粒子の収着容量を更に上昇させるために、PLGA:PEI比を、2:1、即ち、前と同じく、同じ容積のCH2Cl2及びアセトン中のPLGA500mg対PEI250mgに増加させた。乾燥電極上に集められた粒子は、3〜7ミクロンのスフェロイドのように見えた(図34a)。
【0157】
乾燥電極に対してエレクトロスプレーし、その後付着物を蒸留水中に可溶化して製造されたPLGA/PEI粒子は、種々のエマルジョン法又は水溶液に対する分散に対してはるかに優れているように見えることを結論しても差し支えない。
【0158】
4.ファゴサイトーシスの観察のための蛍光PLGA/PEI/FITC粒子
ポリ(IC)を有する粒子のファゴサイトーシスに関する実験の開始を容易にするために、蛍光標識の簡単化されたバージョンを導入した。95%エタノール1ml中のFITC(Sigma-Aldrich, cat. #F-7250)2mgを標準的な組み合わせのPLGA:PEI=2:1溶液に加えて、乾燥電極に対するエレクトロスプレーの上記したプロトコールに従って粒子を合成した。
【0159】
粒子を超音波処理により蒸留水中に再懸濁させ、そして遊離FITCから4回洗浄した。第4回目の洗浄は、遊離FITCの痕跡がゼロであることを示した。強い黄色の得られるペレットを、一晩凍結乾燥し、そして上記した標準プロトコールを使用してポリ(IC)をチャージした。収着容量は、先に得られたFITCなしの粒子の場合よりも低いこと:100〜200μg/mlに対して〜70μg/ml、が見出された。粒子は、明るい緑色蛍光を示す、0.5〜5μmサイズの不規則で幾分スポンジ状のスフェロイドであった(図35)。
【0160】
5.ヒト樹状細胞におけるインターフェロンの誘発に関する予備的結果
約50,000の一次的なソーティングされたばかりの(primary freshly sorted)DC1又はDC2サブセットヒト細胞を、PLGA−PEI−ポリ(IC)粒子で処理し、そして培養上清を24時間後に集め、そしてヒトIFN−α及びβについてELISAに付した。β及びαインターフェロン両方の統計的に一貫したレベルが両サブセットについて見出された(図36)。
【0161】
【表4】
【0162】
実施例15:非ウイルス病原体に対する交差シグナリング防御経路
交差シグナリングストラテジーは、バクテリア及びウイルス関連疾患との戦いにおいて有用でありうる。これらの可能性を評価し、そしてTLR/FADD経路の刺激因子を有するマイクロ粒子は抗原特異的T細胞の交差プライミングを含む強力なアジュバント特性を発揮することを確認するために、ニワトリオブアルブミン(OVA)のためのT細胞受容体(TCR)を発現するOT−1トランスジェニックマウスをモデルとして使用する。これらの動物における大多数のCD8T細胞は、Kb分子と会合しているオブアルブミンペプチド(SIINFEKL)を認識する単一のVα2+Vβ5+TCRを発現する。これらの粒子は、OVA遺伝子を発現するように修飾されることができ、又はタンパク質を直接ロードされることができる。CFSEで標識された精製されたCD8+Vα2細胞を動物に養子移行させる。3日後、OVA含有粒子(遺伝子又はタンパク質)を動物に接種する(腹腔内)。この方法は、OVA特異的T細胞に対してgp96発現細胞からのOVAの増加した交差提示を証明することが最近示された。このアプローチを使用することにより、自然免疫応答の刺激に関与するマイクロカプセル化ストラテジーは、適応的免疫応答の有効なモジュレーターであることが示されうる。
【0163】
実施例16:ポリ(IC)をロードされたPLGA/PEI又はプロタサンマイクロ粒子は、細胞外TLR3経路を活性化することにより293細胞におけるIFN−β産生を誘発することの証明。
TLR3、外因性dsRNAのための受容体、を発現している又は発現していない293細胞を、IFN−βプロモーターの制御下にルシフェラーゼ遺伝子でトランスフェクションし、そしてPLGA/PEI粒子(融合したdsRNAを有する及び有していない)又はプロタサン粒子(融合したdsRNAを有する及び有していない)に暴露した。粒子への暴露時間は3〜6時間であった。図37bに示されたとおり、dsRNAを有する粒子のみが、ルシフェラーゼ遺伝子の細胞外TLR3媒介活性化をトリガーすることができた。コントロールとして、TLR3レポーターなしの293細胞を、IFN−βプロモーターの制御下にルシフェラーゼ遺伝子でトランスフェクションし、そしてPLGA/PEI粒子(融合したdsRNAを有する及び有していない)又はプロタサン粒子(融合したdsRNAを有する及び有していない)に暴露した(図37a)。有意なルシフェラーゼ活性は検出されなかったが、これはdsRNAを有するマイクロ粒子のみがTLR3を介してIFN−β経路を活性化することができたことを示す。293細胞は、非常に弱い細胞内経路を有し、かくして、主としてTLR3経路を活性化する理由を有する(データは示されていない)。
【0164】
コントロール:更なるコントロールとして、外因性dsRNAを、TLR3を発現している又は発見していない293細胞に加えた。両タイプの細胞をIFN−βプロモーターの制御下にルシフェラーゼ遺伝子でトランスフェクションし、そして外因性dsRNAで処理した。TLR3を発現する細胞のみがdsRNAにより活性化されて、IFN−βプロモーターを転写的に活性化することができた。
【0165】
実施例17:ポリ(IC)をロードされたPLGA/PEI又はプロタサンマイクロ粒子は、おそらく細胞外インネイテオソーム経路を活性化することによりDC2サブセット細胞におけるIFNα産生を誘発することの証明
末梢ヒト血液サンプルにおけるDC2サブセットを、PLGA/PEI又はプロタサン粒子(融合したdsRNAを有する及び有していない)に暴露し、そして図38に示されたとおり粒子への3〜6時間の暴露の後にインターフェロンα発現について監視した。DC2(プラズマサイトイドDCs(plasmacytoid DCs)はTLR3を欠き、それ故インターフェロンα誘発は別のdsRNAシグナリング経路によりトリガーされる)は、おそらく「インネイテオソーム」を介する細胞内経路を利用する。
【0166】
本発明の化合物及び方法の好ましい態様は、説明することを意図しており、限定を意図するものではない。改変及び変更は上記教示に照らして当業者によりなされうる。本発明は、例えば、空気品質を監視するために、ガスサンプル中のアセトンレベルを測定する他の目的に使用することができることも、当業者により考えられうる。故に、特許請求の範囲により規定された範囲内にある変更が、開示された特別な態様においてなされうることは理解されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカチオンポリマーを含むマイクロ粒子;
FADD依存性経路のモジュレーター;及び
TLR経路のモジュレーターを含み、
該FADD依存性経路のモジュレーター及び該TLR経路のモジュレーターは、該マイクロ粒子と会合しており、そして、該マイクロ粒子は抗原提示細胞によりファゴサイトーシスされることができる、
哺乳動物における自然免疫系をモジュレーションするための組成物。
【請求項2】
該FADD依存性経路のモジュレーターは、dsRNA、ポリ(IC)、FADD依存性経路の成分、FADD依存性経路の成分をコードするDNAプラスミド、バクテリア及び真菌よりなる群から選ばれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
FADD依存性経路のモジュレーターがFADDをコードするdsRNAである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
FADD依存性経路のモジュレーターが、FADD依存性経路を抑制することができるサイレンシングRNAiを表すdsRNAである、請求項2に記載の組成物.
【請求項5】
サイレンシングRNAiはFADD発現を抑制する、請求項4に記載の組成物.
【請求項6】
該TLR経路のモジュレーターが、dsRNA、ポリ(IC)、ウイルスdsRNAの合成模倣物及びTLRのためのリガンド、バクテリア及び真菌よりなる群から選ばれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
該FADD依存性経路のモジュレーター及び該TLR依存性経路のモジュレーターが同じdsRNA分子である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
該マイクロ粒子が、抗原提示細胞に特異的に結合するターゲティング分子で更にコーティングされる、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
該ターゲティング分子が抗体である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
該ターゲティング分子が熱ショックタンパク質gp96である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
サイトカイン又は抗原を含有するポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)マトリックスを更に含み、該マイクロ粒子が該マトリックス中にカプセル化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
該マイクロ粒子中にカプセル化されたサイトカインを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
該サイトカインが、IL−12、IL−1α、IL−1β、IL−15、IL−18、IFNα、IFNβ、IFNγ、IL−4、IL−10、IL−6、IL−17、IL−16、TNFα及びMIFよりなる群から選ばれる、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
該マイクロ粒子は、サイトカインの所望の放出速度が達成されるように、1種以上の疎水性ポリマーを更に含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
該1種以上の疎水性ポリマーがPLGA、ポリ(カプロラクトン)又はポリ(オキシブチレート)を含む、請求項14に記載の組成物.
【請求項16】
該マイクロ粒子が両親媒性ポリマーを更に含む、請求項13に記載の組成物.
【請求項17】
該両親媒性ポリマーがポリ(エチレン)イミン(PEI)である、請求項16に記載の組成物.
【請求項18】
該組成物が、腫瘍抗原又は腫瘍抗原をコードするDNAを更に含み、該腫瘍抗原又は腫瘍抗原をコードするDNAが該マイクロ粒子と会合している、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
該マイクロ粒子が約0.5μm〜約20μmの範囲の直径を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
該ポリカチオンポリマーがキトサンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
薬学的に許容されうる担体を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
核酸及びタンパク質をロードされたファゴサイトーシス可能なキトサンマイクロ粒子を含む、哺乳動物の免疫系をモジュレーションするための組成物。
【請求項23】
該核酸が、dsRNA、ポリ(IC)、ウイルスdsRNAの合成模倣物又はDNA分子である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
該タンパク質がサイトカインである、請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
該サイトカインが、IL−12、IL−1α、IL−1β、IL−15、IL−18、IFNα、IFNβ、IFNγ、IL−4、IL−10、IL−6、IL−17、IL−16、TNFα及びMIFよりなる群から選ばれる、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
該タンパク質が抗原提示細胞に結合する抗体である、請求項22に記載の組成物。
【請求項27】
該核酸がdsRNAであり、該タンパク質がTLRリガンドである、請求項22に記載の組成物。
【請求項28】
該核酸がdsRNAであり、該タンパク質がFADDである、請求項22に記載の組成物。
【請求項29】
該キトサン粒子が疎水性ポリマーを更に含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項30】
該疎水性ポリマーが、PLGA、ポリ(カプロラクトン)及びポリ(オキシブチレート)よりなる群から選ばれる、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
該キトサン粒子がPEIを更に含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項32】
薬学的に許容されうる担体を更に含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項33】
哺乳動物に有効量の請求項22に記載の組成物を投与することを含む、哺乳動物におけるウイルス、バクテリア又は真菌感染を処置する方法。
【請求項34】
該ウイルス感染が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザウイルス(INV)、脳心筋炎ウイルス(EMCV)、口内炎ウイルス(VSV)、パラインフルエンザウイルス、ライノウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、アプトウイルス(apthovirus)、コクサッキーウイルス、風疹ウイルス、ロタウイルス、デンクウイルス(Denque virus)、黄熱ウイルス、日本脳炎ウイルス、感染性気管支炎ウイルス、ブタ伝染性胃腸炎ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、パピローマウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワリセロウイルス、サイトメガロウイルス、痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、スイポックスウイルス(suipoxvirus)及びコロナウイルスにより引起される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
該ウイルス感染がHIV、INV、EMCV又はVSVにより引起される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
哺乳動物に有効量の請求項22に記載の組成物を投与することを含む、哺乳動物におけるガンを処置する方法。
【請求項37】
該ガンが、乳ガン、結腸−直腸ガン、肺ガン、前立腺ガン、皮膚ガン、骨ガン又は肝臓ガンを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
ポリカチオンポリマーを含むマイクロ粒子、
自然免疫応答ブースターとしてのdsRNA又はポリ(IC)、及び
抗原を含み、
該dsRNA又はポリ(IC)及び該抗原は該マイクロ粒子と会合しており、該マイクロ粒子は抗原提示細胞によりファゴサイトーシスされることができる、哺乳動物における免疫応答をモジュレーションするための組成物。
【請求項39】
サイトカインを更に含み、該サイトカインは該マイクロ粒子と会合している、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
該サイトカインが、IL−12、IL−1α、IL−1β、IL−15、IL−18、IFNα、IFNβ、IFNγ、IL−4、IL−10、IL−6、IL−17、IL−16、TNFα及びMIFよりなる群から選ばれる、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
熱ショックタンパク質を更に含み、該熱ショックタンパク質は該マイクロ粒子と会合している、請求項38に記載の組成物。
【請求項42】
該dsRNA又はポリ(IC)及び該抗原が、表面付着、カプセル化又は表面付着とカプセル化との組み合わせにより該マイクロ粒子と会合している、請求項38に記載の組成物。
【請求項43】
該免疫応答が自然免疫応答である、請求項38に記載の組成物。
【請求項44】
該免疫応答が適応的免疫応答である、請求項38に記載の組成物。
【請求項45】
ポリカチオンポリマーを含むマイクロ粒子;
IRF3のTBK−1/IKK−δ媒介活性化を調節するインネイテオソーム複合体(innateosome complex)の形成を誘発することができる免疫アクチベーター、及び
TLR経路のモジュレーターを含み、
インネイテオソーム複合体のための該アクチベーター及びTLR経路の該モジュレーターが該マイクロ粒子と会合しており、該マイクロ粒子が抗原提示細胞によりファゴサイトーシスされることができる、
哺乳動物における自然免疫応答をモジュレーションするための組成物。
【請求項46】
該免疫アクチベーターがdsRNAである、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
該dsRNAがウイルスdsRNAである、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
(a)沈殿、ゲル化及び噴霧によりキトサンマイクロ粒子を製造すること、
(b)核酸、タンパク質又はその両方を含む溶液中で該キトサンマイクロ粒子をインキュベーションすること
を含む、哺乳動物の免疫モジュレーションのための多機能性マイクロ粒子を製造する方法。
【請求項49】
工程(b)の後、
(c)インキュベーション後にキトサンマイクロ粒子を洗浄し、そして
(d)洗浄したキトサンマイクロ粒子を乾燥する、
工程を更に含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
該核酸がdsRNA、ポリ(IC)、ウイルスdsRNAの合成模倣物及びDNAよりなる群から選ばれ、該タンパク質が抗体、サイトカイン、TLRリガンド、gp96及び腫瘍抗原よりなる群から選ばれる、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
該サイトカインが、IL−12、IL−1α、IL−1β、IL−15、IL−18、IFNα、IFNβ、IFNγ、IL−4、IL−10、IL−6、IL−17、IL−16、TNFα及びMIFよりなる群から選ばれる、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
沈殿、ゲル化及び噴霧によりキトサンマイクロ粒子を製造する前に、キトサンを、核酸、タンパク質又はその両方と混合すること、
を更に含む、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
FADD欠如細胞及び対応する野生型細胞をポリ(IC)で処理すること、
ポリ(IC)処理されたFADD欠如細胞及びポリ(IC)処理された野生型細胞からRNAsを単離させること、
単離されたRNAsを遺伝子アレイにハイブリダイゼーションさせること及び
ポリ(IC)処理された野生型細胞と比べてポリ(IC)処理されたFADD欠如細胞において差次的に発現される遺伝子を同定すること、
を含む、FADDシグナリング経路に関する抗ウイルス遺伝子を同定する方法。
【請求項1】
ポリカチオンポリマーを含むマイクロ粒子;
FADD依存性経路のモジュレーター;及び
TLR経路のモジュレーターを含み、
該FADD依存性経路のモジュレーター及び該TLR経路のモジュレーターは、該マイクロ粒子と会合しており、そして、該マイクロ粒子は抗原提示細胞によりファゴサイトーシスされることができる、
哺乳動物における自然免疫系をモジュレーションするための組成物。
【請求項2】
該FADD依存性経路のモジュレーターは、dsRNA、ポリ(IC)、FADD依存性経路の成分、FADD依存性経路の成分をコードするDNAプラスミド、バクテリア及び真菌よりなる群から選ばれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
FADD依存性経路のモジュレーターがFADDをコードするdsRNAである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
FADD依存性経路のモジュレーターが、FADD依存性経路を抑制することができるサイレンシングRNAiを表すdsRNAである、請求項2に記載の組成物.
【請求項5】
サイレンシングRNAiはFADD発現を抑制する、請求項4に記載の組成物.
【請求項6】
該TLR経路のモジュレーターが、dsRNA、ポリ(IC)、ウイルスdsRNAの合成模倣物及びTLRのためのリガンド、バクテリア及び真菌よりなる群から選ばれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
該FADD依存性経路のモジュレーター及び該TLR依存性経路のモジュレーターが同じdsRNA分子である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
該マイクロ粒子が、抗原提示細胞に特異的に結合するターゲティング分子で更にコーティングされる、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
該ターゲティング分子が抗体である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
該ターゲティング分子が熱ショックタンパク質gp96である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
サイトカイン又は抗原を含有するポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)マトリックスを更に含み、該マイクロ粒子が該マトリックス中にカプセル化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
該マイクロ粒子中にカプセル化されたサイトカインを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
該サイトカインが、IL−12、IL−1α、IL−1β、IL−15、IL−18、IFNα、IFNβ、IFNγ、IL−4、IL−10、IL−6、IL−17、IL−16、TNFα及びMIFよりなる群から選ばれる、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
該マイクロ粒子は、サイトカインの所望の放出速度が達成されるように、1種以上の疎水性ポリマーを更に含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
該1種以上の疎水性ポリマーがPLGA、ポリ(カプロラクトン)又はポリ(オキシブチレート)を含む、請求項14に記載の組成物.
【請求項16】
該マイクロ粒子が両親媒性ポリマーを更に含む、請求項13に記載の組成物.
【請求項17】
該両親媒性ポリマーがポリ(エチレン)イミン(PEI)である、請求項16に記載の組成物.
【請求項18】
該組成物が、腫瘍抗原又は腫瘍抗原をコードするDNAを更に含み、該腫瘍抗原又は腫瘍抗原をコードするDNAが該マイクロ粒子と会合している、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
該マイクロ粒子が約0.5μm〜約20μmの範囲の直径を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
該ポリカチオンポリマーがキトサンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
薬学的に許容されうる担体を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
核酸及びタンパク質をロードされたファゴサイトーシス可能なキトサンマイクロ粒子を含む、哺乳動物の免疫系をモジュレーションするための組成物。
【請求項23】
該核酸が、dsRNA、ポリ(IC)、ウイルスdsRNAの合成模倣物又はDNA分子である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
該タンパク質がサイトカインである、請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
該サイトカインが、IL−12、IL−1α、IL−1β、IL−15、IL−18、IFNα、IFNβ、IFNγ、IL−4、IL−10、IL−6、IL−17、IL−16、TNFα及びMIFよりなる群から選ばれる、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
該タンパク質が抗原提示細胞に結合する抗体である、請求項22に記載の組成物。
【請求項27】
該核酸がdsRNAであり、該タンパク質がTLRリガンドである、請求項22に記載の組成物。
【請求項28】
該核酸がdsRNAであり、該タンパク質がFADDである、請求項22に記載の組成物。
【請求項29】
該キトサン粒子が疎水性ポリマーを更に含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項30】
該疎水性ポリマーが、PLGA、ポリ(カプロラクトン)及びポリ(オキシブチレート)よりなる群から選ばれる、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
該キトサン粒子がPEIを更に含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項32】
薬学的に許容されうる担体を更に含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項33】
哺乳動物に有効量の請求項22に記載の組成物を投与することを含む、哺乳動物におけるウイルス、バクテリア又は真菌感染を処置する方法。
【請求項34】
該ウイルス感染が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザウイルス(INV)、脳心筋炎ウイルス(EMCV)、口内炎ウイルス(VSV)、パラインフルエンザウイルス、ライノウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、アプトウイルス(apthovirus)、コクサッキーウイルス、風疹ウイルス、ロタウイルス、デンクウイルス(Denque virus)、黄熱ウイルス、日本脳炎ウイルス、感染性気管支炎ウイルス、ブタ伝染性胃腸炎ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、パピローマウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワリセロウイルス、サイトメガロウイルス、痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、スイポックスウイルス(suipoxvirus)及びコロナウイルスにより引起される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
該ウイルス感染がHIV、INV、EMCV又はVSVにより引起される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
哺乳動物に有効量の請求項22に記載の組成物を投与することを含む、哺乳動物におけるガンを処置する方法。
【請求項37】
該ガンが、乳ガン、結腸−直腸ガン、肺ガン、前立腺ガン、皮膚ガン、骨ガン又は肝臓ガンを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
ポリカチオンポリマーを含むマイクロ粒子、
自然免疫応答ブースターとしてのdsRNA又はポリ(IC)、及び
抗原を含み、
該dsRNA又はポリ(IC)及び該抗原は該マイクロ粒子と会合しており、該マイクロ粒子は抗原提示細胞によりファゴサイトーシスされることができる、哺乳動物における免疫応答をモジュレーションするための組成物。
【請求項39】
サイトカインを更に含み、該サイトカインは該マイクロ粒子と会合している、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
該サイトカインが、IL−12、IL−1α、IL−1β、IL−15、IL−18、IFNα、IFNβ、IFNγ、IL−4、IL−10、IL−6、IL−17、IL−16、TNFα及びMIFよりなる群から選ばれる、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
熱ショックタンパク質を更に含み、該熱ショックタンパク質は該マイクロ粒子と会合している、請求項38に記載の組成物。
【請求項42】
該dsRNA又はポリ(IC)及び該抗原が、表面付着、カプセル化又は表面付着とカプセル化との組み合わせにより該マイクロ粒子と会合している、請求項38に記載の組成物。
【請求項43】
該免疫応答が自然免疫応答である、請求項38に記載の組成物。
【請求項44】
該免疫応答が適応的免疫応答である、請求項38に記載の組成物。
【請求項45】
ポリカチオンポリマーを含むマイクロ粒子;
IRF3のTBK−1/IKK−δ媒介活性化を調節するインネイテオソーム複合体(innateosome complex)の形成を誘発することができる免疫アクチベーター、及び
TLR経路のモジュレーターを含み、
インネイテオソーム複合体のための該アクチベーター及びTLR経路の該モジュレーターが該マイクロ粒子と会合しており、該マイクロ粒子が抗原提示細胞によりファゴサイトーシスされることができる、
哺乳動物における自然免疫応答をモジュレーションするための組成物。
【請求項46】
該免疫アクチベーターがdsRNAである、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
該dsRNAがウイルスdsRNAである、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
(a)沈殿、ゲル化及び噴霧によりキトサンマイクロ粒子を製造すること、
(b)核酸、タンパク質又はその両方を含む溶液中で該キトサンマイクロ粒子をインキュベーションすること
を含む、哺乳動物の免疫モジュレーションのための多機能性マイクロ粒子を製造する方法。
【請求項49】
工程(b)の後、
(c)インキュベーション後にキトサンマイクロ粒子を洗浄し、そして
(d)洗浄したキトサンマイクロ粒子を乾燥する、
工程を更に含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
該核酸がdsRNA、ポリ(IC)、ウイルスdsRNAの合成模倣物及びDNAよりなる群から選ばれ、該タンパク質が抗体、サイトカイン、TLRリガンド、gp96及び腫瘍抗原よりなる群から選ばれる、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
該サイトカインが、IL−12、IL−1α、IL−1β、IL−15、IL−18、IFNα、IFNβ、IFNγ、IL−4、IL−10、IL−6、IL−17、IL−16、TNFα及びMIFよりなる群から選ばれる、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
沈殿、ゲル化及び噴霧によりキトサンマイクロ粒子を製造する前に、キトサンを、核酸、タンパク質又はその両方と混合すること、
を更に含む、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
FADD欠如細胞及び対応する野生型細胞をポリ(IC)で処理すること、
ポリ(IC)処理されたFADD欠如細胞及びポリ(IC)処理された野生型細胞からRNAsを単離させること、
単離されたRNAsを遺伝子アレイにハイブリダイゼーションさせること及び
ポリ(IC)処理された野生型細胞と比べてポリ(IC)処理されたFADD欠如細胞において差次的に発現される遺伝子を同定すること、
を含む、FADDシグナリング経路に関する抗ウイルス遺伝子を同定する方法。
【図7】
【図8】
【図10】
【図21】
【図22】
【図23】
【図28】
【図31】
【図35】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図29】
【図30】
【図32】
【図33】
【図34】
【図36a】
【図36b】
【図37a】
【図37b】
【図38】
【図8】
【図10】
【図21】
【図22】
【図23】
【図28】
【図31】
【図35】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図29】
【図30】
【図32】
【図33】
【図34】
【図36a】
【図36b】
【図37a】
【図37b】
【図38】
【公開番号】特開2011−173909(P2011−173909A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−97522(P2011−97522)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【分割の表示】特願2006−544019(P2006−544019)の分割
【原出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(506009800)ヴァックスデザイン・コーポレーション (2)
【氏名又は名称原語表記】VAXDESIGN CORPORATION
【出願人】(507056483)ユニバーシティー・オブ・マイアミ (3)
【氏名又は名称原語表記】University of Miami
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97522(P2011−97522)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【分割の表示】特願2006−544019(P2006−544019)の分割
【原出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(506009800)ヴァックスデザイン・コーポレーション (2)
【氏名又は名称原語表記】VAXDESIGN CORPORATION
【出願人】(507056483)ユニバーシティー・オブ・マイアミ (3)
【氏名又は名称原語表記】University of Miami
【Fターム(参考)】
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