説明

免疫複合体の細胞傷害性副作用の低減及び有効性の改善方法

【課題】免疫複合体のターゲティング、特に腫瘍ターゲティングを向上させる方法、組成物、及びキットについて開示する。方法及び組成物は、免疫複合体が標的とする抗原を発現している非標的細胞の隔離に依存する。種々の方法によるこれらの非標的細胞の隔離を開示する。方法、組成物、及びキットにより、非標的細胞を適切に隔離し、同時に標的細胞に対する免疫複合体の高度な有効性も維持することが可能になる。
【解決手段】標的細胞上で発現している細胞結合抗原を標的とする免疫複合体のターゲティング、特に腫瘍ターゲティングを向上させる方法であって、(a)標的細胞に結合しているか、非標的細胞に結合しているか、或いは可溶性形態で存在している前記抗原を含む媒体を提供する工程と、(b)細胞結合抗原、可溶性抗原、及び抗原発現細胞の少なくともいずれかを隔離する工程と、(c)標的細胞上で発現している細胞結合抗原を標的とする免疫複合体であって、前記抗原の標的剤を含み、前記標的剤はエフェクタ分子に機能的に結合している免疫複合体を投与する工程と、を含み、(b)における前記隔離が、前記免疫複合体の標的細胞ターゲティングを向上させる方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国特許仮出願第61/016,613号明細書(2007年12月26日出願)、及び米国特許仮出願第61/016,630号明細書(2007年12月26日出願)の利益を主張し、これら両方の全体を参照することにより本願に援用する。
【0002】
本発明は、免疫複合体、特に標的細胞及び非標的細胞で発現している抗原に対する免疫複合体のターゲティングを改善する方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
免疫複合体は、様々な医薬適応症の治療、特に種々の癌の治療に関して有望な候補物質である。例えば、非特許文献1は、CD138陽性多発性骨髄腫細胞に対して、マイタンシノイド免疫複合体B−B4−DM1が優れた細胞傷害活性を有することを報告している(また、特許文献1も参照)。
【0004】
本発明を説明するために、特に実施に関連する更なる詳細情報を提供するために、本明細書で用いられる特許文献などの刊行物及びその他の資料は、参照することにより援用される。便宜上、これらの刊行物については、その著者と発行年度を以下の本文中に記載するか、或いは添付の参考文献に著者名のアルファベット順に従って列挙する。
【0005】
研究の実質的な主題は、エフェクタ剤を所望の位置及び細胞集団のいずれかに選択的に送達することができる系、即ち、より毒性副作用の少ない、より照準となる標的を絞って治療するための系の開発に、集中している。かなりの進歩が見られているにも関わらず、種々の疾患の治療、例えば癌の治療のためのこれらの送達系の多くは、依然として効果がない、及び患者をかなりの危険に曝す、の少なくともいずれかである。
【0006】
免疫複合体は、少なくとも1つのエフェクタ分子に結合している少なくとも1つの標的剤を含む。該免疫複合体は、そのエフェクタ分子によって、例えば、薬物免疫複合体、免疫毒素複合体、及び放射免疫複合体に分類することができる(非特許文献2)。
【0007】
標的細胞を死滅させる効率は、免疫複合体の有用性において鍵となる要因の1つである。効率は、エフェクタ分子の効力(非特許文献3)、エフェクタがその効力を保持する能力(非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7、及び非特許文献8)、腫瘍への接近可能性(非特許文献9)、標的細胞上における標的抗原の発現レベル、標的剤の親和性、及び標的細胞が免疫複合体を内在化させる能力(非特許文献10)により影響を受ける場合がある。
【0008】
効率を上げるための1つのアプローチは、放射免疫複合体ゼバリン(Zevalin)を用いるものである。Y−90ゼバリン(イットリウム−90標識イブリツモマブ−チウキセタン)及びIn−111ゼバリン(インジウム−111標識イブリツモマブ−チウキセタン)は、In−111及びY−90に対する親和性を有し、キレート剤チウキセタンと複合体化している、イブリツモマブ(リツキシマブのマウス相当物)に基づく放射免疫複合体(Biogen−IDEC)である。イブリツモマブ(マウス)及びリツキシマブ(ヒト)は両方とも、B細胞上で広く発現しているCD20に結合する。CD20は、内在化、調節、或いは脱落(shed)せず、恐らく細胞のCa2+流入及び流出の一因である。リツキシマブは、単独で投与されたとき(ゼバリン無しで)、細胞傷害性が高く、結果としてB細胞(癌性B細胞を含む)を排除するため、侵襲性リンパ腫の標準的な治療の一部となっている。排除されたB細胞は、リンパ幹細胞由来の健常B細胞に置換される。
【0009】
ゼバリンの治療レジメンは、非複合体化抗体リツキシマブ及び免疫複合体ゼバリンの両方を含む。一般に、10分間の静注として投与される固定用量のIn−111ゼバリンに先行して、リツキシマブの単回注入が行われる。7〜9日後、この工程に続いて、2回目のリツキシマブ注入を行った後10分間の静注としてY−90ゼバリンを投与することを含む第2の工程が行われる。リツキシマブで前処理することにより、バルクB細胞が除去され、一方、残りの細胞(リツキシマブによる治療に耐性を有する腫瘍細胞を含む可能性がある)は次にゼバリンの標的となり得る。In−111/Y−90ゼバリンは、一般に、患者の体全体に亘る放射活性のB細胞媒介性分布に起因する副作用のために、単独では使用されない。
【0010】
リツキシマブ難治性濾胞性非ホジキンリンパ腫の患者を含む、再発性及び難治性のいずれかである、低悪性度、濾胞性、或いは癌化B細胞非ホジキンリンパ腫の患者に使用されるこのゼバリン治療は、リツキシマブのみと比較すると、臨床試験においてより高い反応率を示した。それは、もはやリツキシマブに反応しない患者にとって有望な結果を示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0183971号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Tassone et al.,Blood,2004,104(12),pp.3688−3696
【非特許文献2】Payne,Cancer Cell.2003;3:207−212
【非特許文献3】Blaettler and Chari,2001.Anticancer Agents−Frontiers in Cancer Chemotherapy,American Chemical Society,Washington,DC,pp.317−338
【非特許文献4】Chari et al.,Cancer Res.1995;55:4079−4084
【非特許文献5】Liu et al.,Proc Natl Acad Sci USA.1996;93:8618−8623
【非特許文献6】Ojima et al.,2002.J.Med.Chem.45,pp.5620−5623.
【非特許文献7】Senter et al.,2002.Abstract#2062,American Assoication for Cancer Res.(San Francisco,CA:American Association for Cancer Res.),414
【非特許文献8】Sievers and Linenberger,2001.Curr. Opin. Oncol.13,pp.522−527
【非特許文献9】Carter,2001.Nat Rev Cancer. 2001;1:118−129
【非特許文献10】Wargalla,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.1989;86:5146−5150
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
免疫複合体は、特定のクラスの腫瘍細胞等の標的細胞集団に特異的に結合し、他のいずれの細胞にも、特にホスト生物において重要な機能を担う細胞には、殆ど或いは全く結合しないことが理想的である。一部の抗原は特定の疾患プロファイルに相関するが、殆どの場合、抗原は、疾患に関連しない細胞、即ち非標的細胞上でも発現する。生物に対するこれらの健常細胞の重要性に応じて、免疫複合体の成功は、これらの細胞が治療によりどの程度影響を受けるかということにかなりの部分依存している。
【0014】
よって、標的細胞の関連抗原を発現する非標的との相互作用に起因する、免疫複合体の副作用の可能性を低下させる必要性が依然として存する。副作用としては、特に、非標的細胞に対する細胞傷害性、及び標的細胞から解離している標的分子との会合による、免疫複合体の効率の全体的低下が挙げられる。非標的細胞に対する細胞傷害性の低下は、非標的細胞がホスト系において重要な役割を果たしているとき特に重要である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、
標的細胞上で発現している細胞結合抗原を標的とする免疫複合体のターゲティング、特に腫瘍ターゲティングを向上させる方法であって、
(a)標的細胞に結合しているか、非標的細胞に結合しているか、或いは可溶性形態で存在している前記抗原を含む媒体を提供する工程と、
(b)細胞結合抗原、可溶性抗原、及び抗原発現細胞の少なくともいずれかを隔離する工程と、
(c)標的細胞上で発現している細胞結合抗原を標的とする免疫複合体であって、前記抗原の標的剤を含み、前記標的剤はエフェクタ分子に機能的に結合している免疫複合体を投与する工程と、を含み、
(b)における前記隔離が、前記免疫複合体の標的細胞ターゲティングを向上させる方法に関する。好ましくは、抗原は、該抗原が結合しているか、及び該抗原が脱落を受けるかの少なくともいずれかである細胞に内在化する。非標的細胞は、上皮細胞、肝細胞、及び容易に再生されない他のいずれかの細胞のいずれか等の細胞を含んでいてもよい。
【0016】
具体的には、本発明は、
CD138を標的とする免疫複合体の腫瘍ターゲティングを向上させる方法であって、
(a)細胞結合CD138及び可溶性CD138の少なくともいずれかを含む媒体を提供する工程と、
(b)細胞結合CD138、可溶性CD138、及びCD138発現細胞の少なくともいずれかを隔離する工程と、
(c)細胞結合CD138を標的とする免疫複合体であって、CD138の標的剤を含み、前記標的剤はエフェクタ分子に機能的に結合している免疫複合体を投与する工程と、を含み、
(b)における前記隔離が前記免疫複合体の腫瘍ターゲティングを向上させる方法に関する。
【0017】
本発明はまた、標的細胞(例えば、腫瘍細胞)上で発現している細胞結合抗原(例えば、CD138)を標的とする免疫複合体であって、前記抗原の標的剤を含み、前記標的剤はエフェクタ分子に機能的に結合している免疫複合体と、非複合体化標的剤と、を含む医薬組成物及びキットに関する。
【0018】
本発明は、腫瘍を治療するための医薬の製造における、細胞結合CD138を標的とする免疫複合体であって、CD138の標的剤を含み、前記標的剤はエフェクタ分子に機能的に結合している免疫複合体を含む免疫複合体の使用であって、医薬が、細胞結合CD138、可溶性CD138、及びCD138発現細胞の少なくともいずれかが隔離されている患者に投与される使用を提供する。
【0019】
本発明は更に、腫瘍を治療するための医薬の製造における、細胞結合CD138を標的とする免疫複合体であって、CD138の標的剤を含み、前記標的剤はエフェクタ分子に機能的に結合している免疫複合体を含む免疫複合体の使用であって、医薬が、
(a)細胞結合CD138及び可溶性CD138の少なくともいずれかを含む媒体を提供する工程と、
(b)細胞結合CD138、可溶性CD138、及びCD138発現細胞の少なくともいずれかを隔離する工程と、
(c)免疫複合体を投与する工程と、
を含む治療レジメンの一部として投与される使用を提供する。
【0020】
加えて、本発明は、腫瘍の治療において使用するための、細胞結合CD138を標的とする免疫複合体であって、CD138の標的剤を含み、前記標的剤はエフェクタ分子に機能的に結合している免疫複合体を含む免疫複合体であって、細胞結合CD138、可溶性CD138、及びCD138発現細胞の少なくともいずれかが隔離されている患者に投与される、免疫複合体を提供する。
【0021】
更に、本発明は、腫瘍の治療において、同時に、別々に、或いは連続して使用するための複合製剤の製造における、細胞結合CD138を標的とする免疫複合体、及び非複合体化CD138標的剤の使用であって、免疫複合体が、CD138の標的剤であって、エフェクタ分子に機能的に結合している標的剤を含み、非複合体化CD138標的剤が、細胞結合CD138、可溶性CD138、及びCD138発現細胞の少なくともいずれかを隔離することができる、使用を提供する。
【0022】
また、本発明は、腫瘍の治療において、同時に、別々に、或いは連続して使用するための複合製剤として、細胞結合CD138を標的とする免疫複合体、及び非複合体化CD138標的剤を含む医薬であって、免疫複合体が、CD138の標的剤であって、エフェクタ分子に機能的に結合している標的剤を含み、非複合体化CD138標的剤が、細胞結合CD138、可溶性CD138、及びCD138発現細胞の少なくともいずれかを隔離することができる、医薬を提供する。
【0023】
具体的には、上記使用において、細胞結合CD138、可溶性CD138、及びCD138発現細胞の少なくともいずれかの隔離は、免疫複合体の腫瘍ターゲティングを向上させる。
【0024】
本発明はまた、患者を治療するための医薬の製造における、標的細胞上で発現している細胞結合抗原を標的とする免疫複合体であって、前記抗原の標的剤を含み、前記標的剤はエフェクタ分子に機能的に結合している免疫複合体の使用であって、医薬が、細胞結合抗原、可溶性抗原、及び抗原発現細胞の少なくともいずれかが隔離されている患者に投与される、使用を提供する。
【0025】
本発明は更に、個体を治療するための医薬の製造における、標的細胞上で発現している細胞結合抗原を標的とする免疫複合体であって、前記抗原の標的剤を含み、前記標的剤はエフェクタ分子に機能的に結合している免疫複合体の使用であって、前記医薬が、
(a)標的細胞に結合しているか、非標的細胞に結合しているか、或いは可溶性形態で存在している前記抗原を含む媒体を提供する工程と、
(b)細胞結合抗原、可溶性抗原、及び抗原発現細胞の少なくともいずれかを隔離する工程と、
(c)免疫複合体を投与する工程と、
を含む治療レジメンの一部として投与される使用を提供する。
【0026】
本発明はまた、個体の治療において使用するための、標的細胞上で発現している細胞結合抗原を標的とする免疫複合体であって、前記抗原の標的剤を含み、前記標的剤はエフェクタ分子に機能的に結合している免疫複合体であって、細胞結合抗原、可溶性抗原、及び抗原発現細胞の少なくともいずれかが隔離されている患者に投与される、免疫複合体を提供する。
【0027】
更に、本発明は、個体の治療において、同時に、別々に、或いは連続して使用するための複合製剤の製造における、標的細胞上で発現している細胞結合抗原を標的とする免疫複合体、及び非複合体化標的剤の使用であって、免疫複合体が、前記抗原の標的剤であって、エフェクタ分子に機能的に結合している標的剤を含み、非複合体化標的剤が、細胞結合抗原、可溶性抗原、及び抗原発現細胞の少なくともいずれかを隔離することができる、使用を提供する。
【0028】
また、本発明は、個体の治療において、同時に、別々に、或いは連続して使用するための複合製剤として、標的細胞上で発現している細胞結合抗原を標的とする免疫複合体、及び非複合体化標的剤を含む医薬であって、免疫複合体が、前記抗原の標的剤であって、エフェクタ分子に機能的に結合している標的剤を含み、非複合体化標的剤が、細胞結合抗原、可溶性抗原、及び抗原発現細胞の少なくともいずれかを隔離することができる、医薬を提供する。
【0029】
本発明の1つの実施形態では、上記使用における、細胞結合抗原、可溶性抗原、及び抗原発現細胞の少なくともいずれかの隔離は、前記免疫複合体の標的細胞ターゲティングを向上させる。
【0030】
具体的には、本発明は、標的細胞上で発現している標的抗原がまた、以下の少なくともいずれかである、個体の疾患の治療及び予防のいずれかのために適用することができる、
可溶性形態で存在する、
非標的健常細胞及び非標的健常細胞組織の少なくともいずれか上に存在する。
本発明の1つの実施形態では、標的細胞は、前癌細胞及び癌細胞のいずれかである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1A】図1Aは、FACS分析により決定された、NCI−H929及びMOLP−2(右)の表面上におけるCD138発現を示す。FITC−複合体化二次抗体を用いて検出された、結合nBT062抗体を、黒で示す。代表的なヒストグラムプロットでは、細胞数を、FITCチャネル(FL1−H)で測定した蛍光強度に対してプロットする。二次抗体のみで処理した細胞は、対照として用いた(白)。
【図1B】図1Bは、細胞生存率アッセイで測定した、nBT062−SPDB−DM4(複合体)、及び抗体部分を欠く遊離毒素に対する、NCI−H929及びMOLP−2細胞の感受性を示す。対応するIC50値を示す。細胞表面上におけるCD138の相対発現を、FACS分析により決定し、相対蛍光強度(RFI)を示す。加えて、QIFIKITを用いることにより定量した、細胞1個あたりの受容体の絶対数を示す。
【図1C】図1Cは、nBT062に対するMOLP−2細胞及びNCI−H929細胞の感受性を示す。
【図2A】図2Aは、濃度の上昇するnBT062の存在下における、NCI−H929細胞に対するnBT062−SPDB−DM4の細胞傷害性を示す。各プロットはまた、nBT062の非存在下で得られた用量/反応曲線も示す。遊離毒素に対するNCI−H929細胞の感受性を図2Aに示す(2番目のプロット)。
【図2B】図2Bは、濃度の上昇するnBT062の存在下における、NCI−H929細胞に対するnBT062−SPDB−DM4の細胞傷害性を示す。各プロットはまた、nBT062の非存在下で得られた用量/反応曲線も示す。
【図3A】図3Aは、濃度の上昇するnBT062の存在下における、MOLP−2細胞に対するnBT062−SPDB−DM4の細胞傷害性を示す。各プロットはまた、nBT062の非存在下で得られた用量/反応曲線も示す。遊離毒素に対するMOLP−2細胞の感受性を図3Aに示す(2番目のプロット)。
【図3B】図3Bは、濃度の上昇するnBT062の存在下における、MOLP−2細胞に対するnBT062−SPDB−DM4の細胞傷害性を示す。各プロットはまた、nBT062の非存在下で得られた用量/反応曲線も示す。
【図4】図4は、NCI−H929細胞及びMOLP−2細胞のIC50値に対する、濃度の上昇するnBT062の影響を示す。IC50値は、図2及び図3に示す用量反応曲線に基づいて計算し、プレインキュベーションに用いたnBT062の濃度に対してプロットした。
【図5】図5は、免疫複合体BT062における、エフェクタの抗体への機能的結合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、免疫複合体、特に標的として非標的細胞上でも発現している細胞結合抗原を有する免疫複合体の、ターゲティング、特に腫瘍ターゲティングを向上させる方法に関する。本発明の方法は、非複合体化標的剤(1及び複数のいずれか)を介して、細胞に結合していてもよく可溶性であってもよい抗原(例えば、CD138)を隔離することを含む。特定の実施形態では、本発明の方法はまた、細胞結合抗原を発現している細胞を隔離することを含む。隔離は、好ましくは、以下の少なくともいずれかの作用を有する、
免疫複合体により破壊されないよう非標的細胞を「遮蔽する」、
可溶性抗原及び非標的細胞上で発現している抗原の少なくともいずれかに結合する免疫複合体を減少させる。
よって、以下の少なくともいずれかの事象が生じる、
免疫複合体治療に起因する副作用が減少する、
結合効率が向上し、それぞれ副作用の発生が少ない低用量の免疫複合体及び高用量の免疫複合体の少なくともいずれかを投与することが可能になる。
【0033】
1つの実施形態では、本発明に係る非複合体化標的剤は、治療の必要のある被験体の細胞に投与される。非複合体化標的剤は、抗原(例えばCD138)に結合し、この抗原は細胞に結合していてもよく、していなくてもよい。免疫複合体は、その後、或いは同時に(例えば、単一剤形で、或いはキットの一部として)投与される。代わりに、或いは更に、例えば、先ず患者の血液を処理して(前処理)、可溶性抗原、細胞結合抗原、及び抗原発現細胞の少なくともいずれかを隔離する。免疫複合体の直接投与(即ち、非複合体化標的剤で前処理しない)に比べて、免疫複合体によって処理したときの接近可能な非標的細胞の生存率は、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、及びそれ以上のいずれかの割合向上する。
【0034】
第1の例では、非複合体化標的剤は、nBT062(DSM ACC287)であり、これは単回用量として癌患者に投与される。この例では、有効量のnBT062を静脈内投与すると、非複合体化標的剤は、可溶性CD138(CD138)、及び容易に接近可能な細胞結合CD138に速やかに到達する。4時間以内に、免疫複合体BT062(本明細書でより詳細に記載する)を、同一患者に有効量静脈内投与する。免疫複合体は内在化し、エフェクタ分子(1及び複数のいずれか)が、生体が本来有する手段により抗体(標的)から遊離される。5〜10日後、同一患者に対して投与手順を繰り返してもよい。使用されるnBT062:BT062の有効比は、それぞれ10:1及び3:1である。
【0035】
第2の例では、nBT062及びBT062を、腫瘍の治療を必要としている患者に、医薬組成物の一部として同時に投与する。標的細胞は、CD138発現腫瘍細胞である。nBT062及びBT062は両方とも、それぞれ有効量で投与される。組成物の個々の成分の用量、及びnBT062のBT062に対する有効比は、免疫複合体の腫瘍ターゲティングを向上させるために、投与前に細胞培養物を用いて決定する。具体的には、腫瘍標的細胞の生存率は、免疫複合体の直接投与に比べて、僅か1%しか減少しないが、一方接近可能な非標的細胞の生存率は、免疫複合体の直接投与に比べると、40%から80%に倍加する。有効量の免疫複合体が標的細胞に結合すると、免疫複合体は内在化し、エフェクタ分子(1及び複数のいずれか)が生体が本来有する手段により抗体(標的)から遊離される。
【0036】
第3の例では、アルファ遮断薬プラゾシンを、nBT062の前或いはnBT062と同時に、腫瘍の治療を必要としている患者に経口投与する。プラゾシンは、患者の末梢循環を刺激し、それによってnBT062がより効率的に目的地(非複合体化標的剤の場合、非標的細胞、例えば上皮細胞である)に到達することが可能になる。nBT062投与の翌日、有効量のBT062を前記患者に投与する。これにより、免疫複合体の腫瘍ターゲティングが向上する。1:1のnBT062/BT062の有効比を用いる。有効量の免疫複合体が標的細胞に結合すると、免疫複合体は内在化し、エフェクタ分子(1及び複数のいずれか)が生体が本来有する手段により抗体(標的)から遊離される。
【0037】
第4の例では、患者の血液を、カラムに充填されたセファロースビーズ上にnBT062が固定されているカラムに通す。sCD138(「可溶性」/「遮蔽されている」CD138)は、固定されているnBT062に結合する。処理を2時間継続して行う。このようにsCD138が枯渇した血液を患者に再導入し、生理食塩水でsCD138をカラムから洗い流して、次の手順のためにカラムを調製する。24時間以内に、患者を有効量のBT062で治療する。
【0038】
第5の例では、患者の血液を第3の例のように前処理するが、患者を、アンチトロンビン3及びBT062の組み合わせで処理する(この組み合わせはそれぞれの有効量、及び有効比で静脈内投与される)。
【0039】
第6の例では、患者の血液を、2時間血漿交換する。得られた血液細胞を、タンパク質を添加したリプレースメントドナーの血漿及び生理食塩水に再懸濁し、患者に再導入する。次いで、免疫複合体を例3及び4のいずれかのようにして患者に投与する。
【0040】
CD138、即ちシンデカン−1(SYND1、SYNDECAN、SDC、SCD1、CD138抗原としても記載される、SwissProtアクセッション番号:P18827 human)は、元来上皮起源の細胞上に存在すると記載されており、後に造血細胞で見出された(Sanderson,1989)膜内在性糖タンパク質である。悪性造血では、CD138は、多発性骨髄腫(MM)細胞、卵巣癌腫細胞、腎臓癌腫細胞、胆嚢癌腫細胞、乳癌腫細胞、前立腺癌細胞、肺癌細胞、結腸癌腫細胞、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫の細胞、慢性リンパ球性白血病(CLL)の細胞(Horvathova,1995)、急性リンパ球性白血病(ALL)の細胞、急性骨髄芽球性白血病(AML)の細胞(Seftalioglu,2003(a);Seftalioglu,2003(b))、胆嚢(GB)癌種(Roh et al,2008)、固形組織肉腫細胞、結腸癌腫細胞、その他の造血器悪性腫瘍細胞、及びCD138を発現する固形腫瘍細胞(Carbone et al.,1999;Sebestyen et al.,1999;Han et al.,2004;Charnaux et al.,2004;O’Connell et al.,2004;Orosz and Kopper,2001)の大部分で高度に発現する。
【0041】
CD138発現陽性であることが示されているその他の癌は、多くの卵巣腺癌、移行性細胞膀胱癌腫、腎臓明細胞癌腫、扁平上皮細胞肺癌腫;乳癌腫、及び子宮癌(例えば、Davies et al.,2004;Barbareschi et al.,2003;Mennerich et al.,2004;Anttonen et al.,2001;Wijdenes,2002を参照)である。
【0042】
正常なヒト造血コンパートメントでは、CD138発現は形質細胞に限定されており(Wijdenes,1996;Chilosi,1999)、CD138は、末梢血リンパ球、単球、顆粒球、及び赤血球では発現しない。特に、CD34幹細胞及びCD34前駆細胞は、CD138を発現せず、抗CD138 mAbは、造血幹細胞培養におけるコロニー形成単位の数に影響を与えない(Wijdenes,1996)。非造血コンパートメントでは、CD138は、肺、肝臓、皮膚、腎臓、及び腸内の単純及び重層化上皮上で主に発現する。内皮細胞上では僅かな染色しか見られなかった(Bernfield,1992;Vooijs,1996)。CD138は、ヒトリンパ腫細胞において多様な形で存在することが報告されている(Gattei,1999)。
【0043】
モノクローナル抗体B−B4、BC/B−B4、B−B2、DL−101、1 D4、MI15、1.BB.210、2Q1484、5F7、104−9、281−2、特にB−B4は、CD138に対して特異的であることが報告されている。これらのうちB−B4、1D4、及びMI15は、CD138のインタクトな分子とコアタンパク質の両方を認識し、同一或いは密接に関連するエピトープ、を認識することが示された(Gattei,1999)。これまでの研究では、B−B4は可溶性CD138を認識せず、膜に結合した形のCD138のみを認識することが報告されている(Wijdenes,2002)。
【0044】
B−B4(マウスIgG1 mAb)は、ヒトシンデカン−1(CD138)上のコアタンパク質の残基90〜95の線状エピトープに結合する(Wijdenes,1996;Dore,1998)。CD138の発現パターンに一致して、B−B4は、形質細胞株RPMI8226に強く反応するが、内皮細胞には反応しないことが示された。またCD138の発現パターンに一致して、B−B4はまた、上皮細胞株A431(ケラチノサイト由来)及びHepG2(肝細胞由来)と反応した。免疫毒素B−B4−サポリンはまた、形質細胞株RPMI8226に対する毒性が強く、実際に遊離サポリンより遥かに毒性が強かった。しかしながら、試験した2種の上皮細胞株から、B−B4−サポリンは、細胞株A431に対してのみ毒性を示したが、クローン原性アッセイでは、B−B4サポリンは、A431細胞の増殖に対して阻害効果を示さなかった(Vooijs,1996)。他の研究者が、MM−関連抗原が腫瘍に対して特異性を有しないことを報告した(Couturier,1999)。
【0045】
nBT062は、B−B4に基づくCD138特異的キメラヒト/マウス抗体であり、これはその親抗体であるB−B4と同じCD138に対する結合特異性を有する(B−B4キメラ抗体は、一般に、本明細書ではc−B−B4と称する)。nBT062を発現しているチャイニーズハムスター卵巣細胞は、2007年12月11日に、DSMZ−Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(Mascheroder Weg 1,D−38124 Braunschweig)に寄託されている。識別番号は、DSM ACC2875である。BT062は、リンカーを介して細胞増殖抑制性マイタンシノイド誘導体と複合体化している、CD138特異的キメラ抗体nBT062を含む免疫複合体である。nBT062及びマイタンシノイドエフェクタ分子を含む免疫複合体は、そのリンカー、及びマイタンシノイドエフェクタの観点で特徴付けられることが多く、例えばnBT062−SMCC−DM1は、nBT062、SMCC(チオエステル結合を含む切断不可能なリンカー)、及びエフェクタとしてDM1を含む免疫複合体である。より一般的に、nBT062及びエフェクタ分子を含む免疫複合体はまた、nBT062−リンカー−エフェクタ、或いは単にnBT062−エフェクタ(nBT062N、Nは本明細書に記載するエフェクタのいずれかである)のように記載することもある。
【0046】
本発明に係る「標的剤」は、標的細胞により発現される分子に結合することができ、ペプチド及び非ペプチドを含む。具体的には、本発明に係る標的剤としては、標的抗体、及び非免疫グロブリン標的分子が挙げられる。これらの分子は、AFFILIN(登録商標)分子、ANTICALINS(登録商標)、及びAFFIBODIES(登録商標)などの非免疫グロブリンタンパク質に基づいたものであってもよいが、非免疫グロブリンタンパク質はこれらに限定されない。非免疫グロブリン標的分子はまた、標的DNA及びRNAオリゴヌクレオチド(アプタマー)等の非ペプチド標的分子も含むが、生理学的リガンド、特にCD138等の、対象とする抗原のリガンドも含む。
【0047】
本発明に係る「標的抗体」は、天然の抗体であるか、天然の抗体に基づく抗体であるか、合成的或いは遺伝子工学的に産生され、対象細胞(1及び複数のいずれか)(標的細胞(1及び複数のいずれか))上の抗原に結合する。本発明に係る標的抗体としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片が挙げられる。標的抗体は、例えば、その標的細胞に対する親和性を改善する(Ross,2003)、或いはその免疫原性を低下させるように改変してもよい。標的抗体は、エフェクタ分子を含むリポソーム製剤に結合することができる(Carter,2003)。抗体断片は、インタクトな抗体の一部、好ましくはインタクトな抗体の抗原結合領域及び可変領域のいずれかを含む。本発明に係る抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFv断片が挙げられるが、二重特異性抗体;ドメイン抗体(dAb)(Ward,1989;米国特許第6,005,079号明細書);線状抗体;単鎖抗体分子;及び抗体断片から形成される多重特異性抗体も含む。単鎖可変断片抗体(scFv)では、重鎖及び軽鎖(VH及びVL)は、例えば、配列(グリシンセリン)を有する短いアミノ酸リンカーにより結合することができ、このリンカーは、2つのドメインが機能的抗原結合ポケットを構築することを可能にするのに十分な柔軟性を有する。種々のシグナル配列の付加により、標的抗体のより正確なターゲティングが可能になる場合がある。軽鎖定常領域(CL)の付加により、ジスルフィド結合を介した二量体化が可能になる場合があり、これによって安定性及び結合力が増す。scFvを構築するための可変領域は、対象とする標的に対するmAbが利用可能である場合、親ハイブリドーマから抽出されたmRNAの可変領域をクローン化するRT−PCRにより得ることができる。或いは、scFvは、ファージディスプレイ技術により新たに作製することができる(Smith,2001)。本明細書で使用する用語「機能的断片」は、標的抗体について用いられる場合、該標的抗体の一部分であって、該抗体が特異的に結合する抗原に特異的に結合することができる一部分を意味することを意図する。本発明の二重特異性抗体は、例えば、標的組織に対して反応性を有する少なくとも1本の腕と、リンカー部分に対して反応性を有する1本の腕を有することができる(米国特許出願公開第2002/0006379号明細書)。本発明の二重特異性抗体はまた、標的細胞上の2種以上の抗原に結合することができる(Carter,2003)。本発明の抗体は、例えば、チオール基を導入するために、システイン残基を導入することにより修飾してもよい(Olafsen,2004)。
【0048】
本発明に従って、標的抗体はいずれの源に由来してもよく、ラクダ抗体、マウス抗体、nBT062等のキメラヒト/マウス抗体、及びキメラヒト/サル抗体、特にカニクイザルに由来するサル部分を含むキメラヒト/サル抗体のいずれであってもよいが、これらに限定されない。
【0049】
ヒト化抗体は、ヒト抗体及び非ヒト抗体に由来する配列を含む抗体であり、これもまた本発明の範囲内である。抗体をヒト化するのに好適な方法としては、CDRグラフティング(相補性決定領域グラフティング)(欧州特許第0 239 400号明細書;国際公開第91/09967号;米国特許第5,530,101号明細書;及び米国特許第5,585,089号明細書)、ベニアリング(veneering)及び再表面化(resurfacing)(欧州特許第0 592 106号明細書;欧州特許第0 519 596号明細書;Padlan,199;Studnicka et al.,1994;Roguska et al.,1994)、鎖シャフリング(米国特許第5,565,332号明細書)のいずれか、並びにDeImmunosation(商標)(Biovation,LTD)が挙げられる。CDRグラフティングでは、例えば、mAb B−B4由来のマウス相補性決定領域(CDR)を、ヒト可変フレームワークにグラフトし、次いでこれをヒト定常領域に結合させて、ヒトB−B4抗体(hB−B4)を作り出す。MYLOTARG(Sievers et al.,2001)、及びHECEPTIN(Pegram et al,1998)を含む、CDRグラフティングによりヒト化された幾つかの抗体が、現在臨床使用されている。
【0050】
再表面化技術は、分子モデリング、統計解析、及び突然変異誘発の組み合わせを用いて、標的とするホストの既知の抗体の表面に類似するように、抗体可変領域の非CDR表面を変化させる。抗体を再表面化するためのストラテジー及び方法、並びに異なるホスト内で抗体の免疫原性を低下させるための他の方法は、例えば、米国特許第5,639,641号明細書に開示されている。ヒト抗体は、ファージディスプレイ法を含む、当該技術分野において既知である種々の方法により作製することができる。また、米国特許第4,444,887号、同第4,716,111号明細書、同第5,545,806号明細書、及び同第5,814,318号明細書;並びに国際公開第98/46645号、同第98/50433号、同第98/24893号、同第98/16654号、同第96/34096号、同第96/33735号、及び同第91/10741号を参照。
【0051】
完全ヒト抗体を用いてもよい。これらの抗体は、ファージディスプレイアプローチにより選択することができ、この場合CD138及びその抗原決定基のいずれかが用いられて、例えばB−B4可変領域を発現しているファージに選択的に結合する(Krebs,2001を参照)。このアプローチを、親和性成熟技術と組み合わせることは有利であり、これにより抗体の親和性が向上する。
【0052】
1つの実施形態では、標的抗体は、コンジュゲートされていない形態であり、中程度に内在化される、或いは内在化が不十分である。中程度の内在化は、37℃で3時間インキュベートした後の抗体の内在化の約30%〜約75%に相当し、不十分な内在化は、約0.01%〜約30%に相当する。他の好ましい実施形態では、標的抗体は、CD138、例えば、抗体B−B4、BC/B−B4、B−B2、DL−101、1 D4、MI15、1.BB.210、2Q1484、5F7、104−9、281−2、特にB−B4及びnBT062のいずれかに結合する。nBT062は、キメラ化B−B4抗体である。ハイブリドーマ細胞(SP02/0骨髄腫細胞をBalb/cマウスの脾臓細胞とハイブリダイズさせることにより作製した)は、2007年12月11日に、DSMZ−Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(Mascheroder Weg 1,D−38124 Braunschweig)に寄託されている。識別番号は、DSM ACC2874である。本発明の状況では、「nBT062標的抗体」のように、特定の抗体の名称を用語「標的抗体」と組み合わせたとき、これは、この標的抗体が抗体nBT062の結合特異性を有することを意味する。標的抗体が、特定の抗体に「由来する」と言う場合、これは、この標的抗体がこの抗体の結合特異性を有するが、標的抗体の上記記載に一致する任意の形態をとってもよいことを意味する。
【0053】
本発明に係る「非免疫グロブリン標的分子」は、非免疫グロブリンタンパク質、及び非ペプチド性標的分子に由来する標的分子を含む。この定義に含まれる小さな非免疫グロブリンタンパク質は、特に表面に発現するCD138に対して特異的親和性を有するよう設計される。これらの小さな非免疫グロブリンタンパク質としては、10kDa〜20kDa等の比較的低分子量のAffilin(登録商標)分子等の、スカフォールドに基づく改変された分子を含む。適切なスカフォールドとしては、例えば、ガンマクリスタリンが挙げられる。これらの分子は、天然の状態では、標的分子に対する非特異的結合活性を有する。溶媒に曝露されたアミノ酸の局所的に定義されたランダム化を通して、タンパク質表面を改変することにより、全く新しい結合部位が作り出される。前者の非結合タンパク質は、それによって特異的結合タンパク質に変換される。このような分子は、CD138等の標的に結合し、1種以上のエフェクタ分子の特異的送達を可能にするよう、特別に設計することができる(www.scilproteins.comにおけるscil Proteins GmbH,2004を参照)。別の種類の非免疫グロブリン標的分子は、リポカリンに由来し、例えば、若干免疫グロブリンの構造に類似している、ANTICALINS(登録商標)が挙げられる。しかしながら、リポカリンは、160〜180アミノ酸残基を有する単一ポリペプチドから構成されている。リポカリンの結合ポケットは、高親和性及び特異性により対象分子を認識するよう再形成することができる(例えば、Beste et al.,1999を参照)。商標Affibody(登録商標)(Affibody AB)として市販されているもの等の、人工細菌受容体もまた、本発明の範囲内である。これらの人工細菌受容体は、小さく単純なタンパク質であり、プロテインAのIgG結合ドメインのうち1つのスカフォールドに基づいた、3つのヘリックスバンドルから構成されていてもよい(Staphylococcus aureus)。これらの分子は、多くの免疫グロブリンに類似の結合特性を有するが、実質的に小さく(10kDaを超えない分子量を有することが多い)、また比較的安定である。好適な人工細胞受容体分子は、例えば、米国特許第5,831,012号明細書、同第6,534,628号明細書、及び同第6,740,734号明細書に記載されている。
【0054】
他の「非免疫グロブリン標的分子」は、対象とする抗原の生理学的リガンドである。CD138の生理学的リガンドとしては、例えば、ADAMTS4(アグリカナーゼ−1)、抗トロンビン−3、bFGF、カテプシンG、CCL5(RANTES)、CCL7、CCL11、CCL17、CD44、コラーゲン(1型コラーゲン、2型コラーゲン、3型コラーゲン、4型コラーゲン、5型コラーゲン、6型コラーゲン)、CXCL1、エラスターゼ、gp120、HGF[肝細胞増殖因子]、ラミニン−1、ラミニン−2、ラミニン−5、ミッドカイン、MMP−7、好中球エラスターゼ、及びプレイオトロフィン(HBNF、HBGF−8)が挙げられるが、これらに限定されない。非ペプチド標的分子としては、CD138(アプタマー)に結合する、DNA及びRNAオリゴヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
「非複合体化標的剤」は、本明細書で使用するとき、本発明の特定の実施形態では、本明細書で定義する免疫複合体の一部ではない標的剤、即ちエフェクタ分子に結合していない標的剤である。しかしながら、他の実施形態では、以下に詳述するように、「非複合体化標的剤」は、非エフェクタ分子、例えばマトリックスに結合している。更に他の実施形態では、非複合体化標的剤は、モニタするために色素分子に結合していてもよい。本発明に係る非複合体化標的剤は、好ましくは、結合している細胞に対して全身細胞傷害性を有しない、即ち、時間が経過しても、非複合体化標的剤は、これら細胞集団の細胞死を誘導しない。
【0056】
本発明の標的剤は、標的細胞、特に腫瘍細胞上で発現している抗原だけでなく、非標的細胞上で発現している抗原にも結合するが、結合の程度は一般に様々である。本発明に係る非標的細胞としては、標的特異的抗原、即ちCD138等の、免疫複合体が標的とする抗原を発現してはいるものの、一般に、かなり低い濃度でしか発現せず(腫瘍細胞上での発現の3分の1、4分の1、5分の1、及び6分の1のいずれか)、且つ腫瘍細胞/疾患特性を有しない細胞が挙げられる。このような非標的細胞は抗原によって異なるが、上皮細胞、肝細胞、及び容易に再生されない他の細胞、のいずれかを含んでいてもよい。
【0057】
本発明に係る「エフェクタ分子」は、標的剤に結合し、例えば、標的細胞(1及び複数のいずれか)にアポトーシス、別の種類のいずれかの細胞死及び連続細胞周期停止のいずれか等の所望の効果を及ぼす分子及び誘導体のいずれか、並びにその類似体のいずれかである。本発明に係るエフェクタ分子は、標的細胞に所望の効果を及ぼすことができる分子を含み、毒素、薬物、特に低分子量細胞傷害性薬物、放射性核種、生物反応調節剤、ポア形成剤、リボヌクレアーゼ、アポトーシス誘導活性を有するアポトーシス性シグナル伝達カスケードのタンパク質、細胞傷害性酵素、プロドラッグ活性化酵素、アンチセンスオリゴヌクレオチド、抗体及びサイトカインのいずれか、並びにその機能的誘導体と、類似体/断片との少なくともいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。毒素は、ジフテリア毒素及び外毒素Aのいずれか等であるがこれらに限定されない細菌毒素、リシン等であるがこれらに限定されない植物毒素を含んでいてもよい。アポトーシス誘導活性を有するアポトーシス性シグナル伝達カスケードのタンパク質としては、グランザイムB、グランザイムA、カスパーゼ−3、カスパーゼ−7、カスパーゼ−8、カスパーゼ−9、切頭型Bid(tBid)、Bax、及びBakが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
ある実施形態では、エフェクタは、天然型であるとき(「非複合体化エフェクタ」)、全身毒性を含む、高い非選択的毒性を有する、即ち、1個以上の標的細胞或いは1種以上標的細胞、特に疾患標的に対して非選択的である。本発明のエフェクタ分子の「天然型」は、標的剤に結合して、免疫複合体を形成する前のエフェクタ分子である、即ち、標的剤に結合していないときに存在するものである。それはまた、単にエフェクタ分子、或いは非複合体化エフェクタとも称される。別の好ましい実施形態では、エフェクタ分子の非選択的毒性は、標的剤に複合体化することで実質的に排除される、即ち、排除されない非選択的毒性が臨床的に許容される程度になる。別の好ましい実施形態では、エフェクタ分子は、標的細胞に到達したとき、標的細胞において死及び連続細胞周期停止のいずれかを引き起こす。本発明に係る薬物−エフェクタ分子としては、例えば、マイタンシノイド、ドラスタチン、アウリスタチン、及びクリトフィシン等のチューブリン重合の阻害剤として作用する、高い細胞傷害性を有する小さい薬物;CC−1065類似体及び誘導体のいずれか、及びデュオカルマイシン等のDNAアルキル化剤(米国特許第5,475,092号明細書;同第5,585,499号明細書;同第6,716,821号明細書);カリチアマイシン及びエスペラミシン等のエイジイン抗生物質;並びに強力なタキソイド(タキサン)薬物(Payne,2003)、を含む薬物が挙げられるが、これらに限定されない。マイタンシノイド及びカリチアマイシンが特に好ましい。エフェクタマイタンシノイドとしては、合成マイタンシノール、並びにマイタンシノール類似体及び誘導体が挙げられるが、これらに限定されない、任意の起源のマイタンシノイドが挙げられる。ドキソルビシン、ダウノマイシン、メトトレキサート、ビンブラスチン、ネオカルチノスタチン、マクロマイシン、トレニモン、及びα−アマニチンは、本発明の範囲内の幾つかの他のエフェクタ分子である。また、エフェクタ分子としてのアンチセンスDNA分子も本発明の範囲内である。例えば、特定の薬物及び薬物のクラスのいずれかの名称を、本明細書で用語「エフェクタ」及び「エフェクタ分子」のいずれかと組み合わせるとき、その特定の薬物及び薬物のクラスのいずれかに基づく本発明に係る免疫複合体のエフェクタに言及する。
【0059】
マイタンシンは、元々エチオピアの灌木であるMaytenus serrataに由来する天然物である(Remillard,1975;米国特許第3,896,111号明細書)。この薬物は、チューブリン重合を阻害し、その結果有糸分裂の遮断、及び細胞死が生じる(Remillard,1975;Bhattacharyya,1977;Kupchan,1978)。マイタンシンの細胞傷害性は、ビンカアルカノイド及びタキソールのいずれか等の、チューブリン重合に影響を与える、臨床的に用いられている抗癌剤より200〜1000倍高い。しかしながら、マイタンシンの臨床試験により、その高い全身毒性のために治療域を欠くことが示された。マイタンシン及びマイタンシノイドは、細胞傷害性は高いが、それを癌治療において臨床的に使用することは、主に腫瘍に対する選択性が不十分であることに起因する、重篤な全身性副作用により非常に限定されている。マイタンシンを用いた臨床試験は、中枢神経系及び消化器系に重篤な副作用を示した。
【0060】
マイタンシノイドは、Trewia nudifloraの種子組織を含む、他の植物からも単離されている(米国特許第4,418,064号明細書)。
【0061】
ある微生物もまた、マイタンシノール、及びC−3マイタンシノールエステルのような、マイタンシノイドを産生する(米国特許第4,151,042号明細書)。
【0062】
本発明は、例えば、米国特許第4,137,230号明細書;同第4,248,870号明細書;同第4,256,746号明細書;同第4,260,608号明細書;同第4,265,814号明細書;同第4,294,757号明細書;同第4,307,016号明細書;同第4,308,268号明細書;同第4,308,269号明細書;同第4,309,428号明細書;同第4,313,946号明細書;同第4,315,929号明細書;同第4,317,821号明細書;同第4,322,348号明細書;同第4,331,598号明細書;同第4,361,650号明細書;同第4,362,663号明細書;同第4,364,866号明細書;同第4,371,533号明細書;同第4,424,219号明細書、及び同第4,151,042号明細書に開示されている、合成マイタンシノール及びマイタンシノール類似体を含む、任意の起源のマイタンシノイドに関する。
【0063】
好ましい実施形態では、マイタンシノイドは、チオールを含有するマイタンシノイドであり、より好ましくは米国特許第6,333,410号明細書(Chariら)及びChari et al.(Chari,1992)のいずれかに開示されているプロセスに従って製造される。
【0064】
DM−1(N−デアセチル−N−(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−マイタンシン)は、本発明の状況において好ましいエフェクタ分子である。DM1は、マイタンシンの3〜10倍細胞傷害性が高く、腫瘍関連抗原に対するモノクローナル抗体へ、ジスルフィド結合(1及び複数のいずれか)を介して、結合することにより、プロドラックに変換されている。あるこれらの複合体(時に「腫瘍活性化プロドラッグ」(TAP)と呼ばれる)は、血液コンパートメントにおいて細胞傷害性ではない。その理由は、それらは標的細胞に結合して活性化され、内在化し、それにより薬物を放出するためである(Blaettler,2001)。幾つかの抗体−DM1複合体が開発されており(Payne,2003)、臨床試験で評価されている。例えば、結腸直腸癌患者のhuC242−DM1治療は、耐容性良好であり、検出可能な免疫反応を全く誘導せず、循環時間が長かった(Tolcher,2003)。
【0065】
マイタンシノイドN2’−デアセチル−N2’−(4−メルカプト−1−オキソペンチル)−マイタンシン(「DM3」とも呼ばれる)、及びN2’−デアセチル−N2’−(4−メチル−4−メルカプト−1−オキソペンチル)−マイタンシン(「DM4」とも呼ばれる)等であるが、これらに限定されない、他の特に好ましいマイタンシノイドは、立体障害のあるチオール結合を含む側鎖を含む。
【0066】
DNAアルキル化剤はまた、エフェクタ分子として特に好ましく、CC−1065類似体及び誘導体のいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。CC−1065は、Streptomyces zelensisの培養物から単離された強力な抗腫瘍抗生物質であり、インビトロで極めて細胞傷害性が高いことが示されている(米国特許第4,169,888号明細書)。例えば、米国特許第5,475,092号明細書、同第5,585,499号明細書、及び同第5,739,350号に記載されているCC−1065類似体及び誘導体のいずれかも、本発明の範囲内である。当業者であれば容易に理解されるように、米国特許第5,846,545号明細書に記載されているような修飾されたCC−1065類似体及び誘導体のいずれか、並びに例えば米国特許第6,756,397号明細書に記載されているようなCC−1065類似体及び誘導体のいずれかのプロドラッグも、本発明の範囲内である。本発明のある実施形態では、CC−1065類似体及び誘導体のいずれかは、例えば、米国特許第6,534,660号明細書に記載されているように合成することができる。
【0067】
好ましいエフェクタ分子を作製する化合物の別の群は、特に非常に強力で、チオール及びジスルフィド基のいずれかを含むタキサンである。タキサンは、チューブリンの脱重合を阻害する紡錘体毒であり、結果として微小管の組み立て及び細胞死の速度を上昇させる。本発明の範囲内であるタキサンは、例えば、米国特許第6,436,931号明細書、同第6,340,701号明細書、同第6,706,708号明細書、並びに米国特許出願公開第2004/0087649号明細書、同第2004/0024049号明細書、及び同第2003/0004210号明細書に開示されている。他のタキサンは、例えば、米国特許第6,002,023号明細書、米国特許第5,998,656号明細書、米国特許第5,892,063号明細書、米国特許第5,763,477号明細書、米国特許第5,705,508号明細書、米国特許第5,703,247号明細書、及び米国特許第5,367,086号明細書に開示されている。当業者であれば、米国特許第6,596,757号明細書に記載されているもの等の、PEG化タキサンもまた本発明の範囲内であることが理解されよう。
【0068】
本発明に係るカリチアマイシンエフェクタ分子としては、ガンマ1l、N−アセチルカリチアマイシン、及び他のカリチアマイシン誘導体が挙げられる。カリチアマイシンは、配列特異的な方式で、DNAの副溝に結合し、再編成され、フリーラジカルに曝されるため、二本鎖DNAの破壊を導き、細胞のアポトーシス及び細胞死をもたらす。本発明の状況で用いることができるカリチアマイシンエフェクタ分子の1例は、米国特許第5,053,394号明細書に記載されている。
【0069】
本発明に係る免疫複合体は、少なくとも1種の標的剤、特に標的抗体と、1種のエフェクタ分子とを含む。免疫複合体は、例えば安定化のために更に分子を含んでいてもよい。免疫複合体について、用語「複合体」は、一般に、標的剤と1以上のエフェクタ分子との機能的結合を定義するために用いられ、機能的結合のいずれかの種類のみを指すことを意図せず、特に化学的「複合体化」に限定されるものではない。標的剤が標的部位に結合することができ、結合したエフェクタが、特に標的部位に送達されたときに、意図した通りに十分に機能する限り、どのような結合様式も好適である。本発明に係る複合体化法としては、エフェクタ分子、及び標的抗体の少なくともいずれかを予め修飾して、或いは修飾せずに、標的抗体にエフェクタ分子を直接結合させること、及びリンカーを介して結合させることのいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。リンカーは、例えば、酸に不安定なリンカー、感光性リンカー、酵素で切断可能なリンカーに、機能的に分類することができる。他の好適なリンカーは、スルホスクシニミジルマレイミドメチルシクロヘキサンカルボキシレート(SMCC)(これは化合物をSH−含有化合物と結合することができるヘテロ二官能性リンカーである)等であるが、これらに限定されない、ジスルフィド結合及び切断不可能な結合を含んでいてもよい。S−(2−チオピリジル)−L−システインヒドラジド(TPCH)等の、炭水化物指向性ヘテロ二官能性リンカー分子等の、二官能性及びヘテロ二官能性リンカー分子もまた、本発明の範囲内である(Vogel,2004)。マイタンシノイドのようなエフェクタ分子は、2段階反応プロセスを介して標的抗体と複合体化することができ、第1の工程として、N−スクシニミジルピリジルジチオプロピオネート(SPDP)のような架橋試薬によって、標的抗体を修飾して、標的抗体にジチオピリジル基を導入する工程を含む。第2の工程では、DM1及びDM4のいずれかのような、チオール基を有する反応性マイタンシノイドを、修飾された抗体に添加して、修飾された抗体におけるチオピリジル基の置換、及びジスルフィド結合した細胞傷害性マイタンシノイド/抗体複合体の産生を生じさせる(米国特許第5,208,020号明細書)。しかしながら、米国特許出願公開第20030055226号明細書(Chariら)に開示されているもののような1段階複合体化プロセスもまた、本発明の範囲内である。本発明の1つの実施形態では、同一種類及び異なる種類のいずれかの複数のエフェクタ分子が、標的抗体に結合する。図5は、免疫複合体BT062(nBT062−SPDP−DM4)中に存在する、代表的な機能的結合を示す。図に示すように、平均して、3.5分子のDM4が抗体に結合する。
【0070】
CC−1065類似体及び誘導体のいずれかは、例えば、米国特許第6,716,821号明細書に記載されているようなPEG結合基を介して、標的剤と複合体化することができる。
【0071】
カリチアマイシンは、リンカー(米国特許第5,877,296号明細書、及び米国特許第5,773,001号明細書)を介して、或いは米国特許第5,712,374号、及び米国特許第5,714,586号明細書に開示されている複合体化方法に従って、標的抗体と複合体化することができる。カリチアマイシン複合体を調製するための別の好ましい方法は、米国特許出願公開第20040082764号明細書に開示されている。本発明の免疫複合体は、組み換え融合タンパク質の形態をとってもよい。
【0072】
本発明の非複合体化標的剤及び免疫複合体の少なくともいずれかは、インビボ及びエキソビボで投与することができる。多くの実施形態では、治療レジメンは、インビボ部分及びエキソビボ部分を含む。例えば、患者の血液を先ず血漿交換してもよく、少なくとも血液細胞(例えば、血漿増量剤中)を患者に再導入した後、患者を免疫複合体で処理してもよい。他のエキソビボ方法としては、細胞上清の処理が挙げられる。具体的な治療レジメンに応じて、様々な媒体を非複合体化標的剤及び免疫複合体の少なくともいずれかと接触させてもよい。これらの媒体としては、血液、血漿、組織、及び骨髄が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
非複合体化標的剤は、好ましくは、可溶性(脱落)CD138(sCD138)等の可溶性形態で存在する抗原を含む、様々な構造を有する抗原に結合する。該sCD138は、例えば、脱落と称される過程中に生成される。脱落は、自然に発生する場合もあるが、例えばMM患者に投与される特定の薬物により誘導することもできる。
【0074】
非複合体化標的剤はまた、CD138等の細胞結合抗原にも結合することができる。この細胞結合抗原は、非標的細胞(標的細胞が腫瘍細胞であるとき、本明細書では非腫瘍細胞とも称する)の表面上で発現する場合もある。非複合体化標的剤は、非複合体化標的剤と同時及び非複合体化標的剤の後のいずれかに、或いは特定の実施形態では非複合体化標的剤の投与前に、投与される免疫複合体により破壊されないよう、様々な程度非腫瘍細胞/非標的細胞を遮蔽する程度に、該非腫瘍細胞/非標的細胞上で発現している抗原に結合することができる。
【0075】
非複合体化標的剤による「前処理」と、免疫複合体の投与との間の時間間隔は変動してもよく、最短で約20分、約30分であってもよく、また約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間であってもよいが、一般に24時間を超えない。
【0076】
非複合体化標的剤がCD138を発現している細胞を隔離すると言う場合、CD138を発現している細胞全体を隔離することを指す。例えば、マトリックスに結合している非複合体化標的剤は、このマトリックスに接触している血液から該細胞を隔離することができる。
【0077】
本明細書で使用するとき、血管拡張剤は、血管拡張活性を有するいずれかの剤である。具体的には、プラゾシン、テラゾシン、及びドキサゾシンのいずれか等であるが、これらに限定されない、アルファ1受容体拮抗剤、即ちアルファ遮断剤が含まれる。しかしながら、ニトロプルシドナトリウム、カルシウム拮抗剤、硝酸塩、及びACE阻害剤(アンギオテンシン変換酵素(ACE)の阻害剤)のいずれか等であるが、これらに限定されない、血管拡張活性を有する他のいずれかの剤も、この定義に含まれる。
【0078】
これらの剤は、様々な経路を用いて投与することができる。しかしながら、経口投与が好ましい。本発明の状況では、該血管拡張剤は、好ましくは、非複合体化標的剤の前に或いは非複合体化標的剤と共に投与することができる。一般に、この投与の後、好適な免疫複合体が投与される。好ましい実施形態では、免疫複合体の投与は、血管拡張剤の投与後少なくとも10〜12時間で行われる。しかしながら、最も適切なタイミングは、用いられる具体的な血管拡張剤に依存し、それは当業者の技能の範囲内である。免疫複合体の投与は、剤の血管拡張効果が実質的に低下した時間に行われることが好ましい。
【0079】
本発明に係る方法は、この方法に従って使用される免疫複合体が、それ以外の点は均等な条件(投与経路、濃度等)下で、免疫複合体を唯一の有効成分として用いるときより、より高い百分位数の腫瘍細胞に結合する、好ましくは破壊するとき、免疫複合体の「腫瘍ターゲティングが向上する」と言われる。本発明に係る腫瘍細胞は、固形腫瘍であってもよく、固形腫瘍でなくてもよい、癌細胞及び前癌細胞を含む。よって、異常増殖を示している細胞はいずれもこの定義に含まれる。
【0080】
本発明に係る方法は、標的細胞が疾患及び病状のいずれかに関連するが、必ずしも腫瘍細胞ではない場合、免疫複合体の標的細胞ターゲティングを向上させると言われる。
【0081】
ターゲティング、特に腫瘍ターゲティングの向上は、百分位数として表すことができる。例えば、腫瘍ターゲティングが約20%向上するとは、所定の量の免疫複合体が患者に投与されたとき、例えば、唯一の有効剤として投与されたときよりも、20%多い標的腫瘍細胞に結合することを意味する。
【0082】
本発明に係る方法はまた、非標的細胞、例えばCD138発現非腫瘍細胞が、好ましくは前記非腫瘍(非標的)細胞の破壊を防ぐ或いは減少させる程度に、好ましくは臨床的に許容される程度に(対象非腫瘍細胞、並びに投与部位及び投与経路に応じて変動してもよい)、免疫複合体と結合しないよう遮蔽されるとき、免疫複合体の「標的細胞ターゲティングを向上させる」、及び「腫瘍ターゲティングを向上させる」のいずれかと言われる。許容されるレベルの非標的/非腫瘍細胞の破壊は、広く変動してもよく、特定の実施形態では、患者の体内の特定の種類の接近可能な非標的細胞、及び特定の器官における非腫瘍細胞のいずれかの総個数の約1%程度であってもよく、或いは最高約2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、及び20%のいずれかであってもよい。特定の場合、特に投与が例えば特定の器官に限定され得るとき、この百分位数は更に高くなる場合がある。この状況では、免疫複合体の有効量は、免疫複合体が結合する腫瘍細胞を破壊する(好ましくは、アポトーシスによる)量を意味する。非複合体化標的剤の有効量は、例えば、CD138を発現している非腫瘍細胞を「遮蔽する」或いは「遮断する」量、即ち有効量の免疫複合体が非腫瘍細胞に接近するのを妨げ、或いは阻止し、その結果細胞の破壊を防ぐのに十分な非複合体化標的剤の量を意味する。非腫瘍細胞の遮断により、全ての接近可能な非腫瘍細胞/非標的細胞に対する免疫複合体の毒性は、許容される程度、例えば臨床的に許容される程度に限定される。特定の濃度の非複合体化標的剤は、全ての接近可能な非腫瘍細胞/非標的細胞の集団の、免疫複合体に対する感受性を低下させ得る。全ての非腫瘍細胞/非標的細胞の感受性の低下は、IC50値の増加に反映され得、隔離値により定量化することができる。
隔離[%]=100×(IC50処理/IC50直接)−100
IC50処理[nM]...細胞を非複合体化標的剤で処理(前処理及び同時処理のいずれか)したときの免疫複合体のIC50
IC50直接[nM]...細胞を非複合体化標的剤で直接処理したときの免疫複合体のIC50
【0083】
IC50処理値は、IC50直接値の2倍超、3倍超、4倍超、5倍超、6倍超、7倍超、8倍超、9倍超、10倍超であってもよく、その結果100%超、200%超、300%超、400%超、500%超、600%超、700%超、800%超、900%超、及び1000%超の隔離値が得られる。しかしながら、特定の実施形態では、20%超及び50%超のいずれか等の、より低い隔離値でさえ望ましい場合もある。
【0084】
接近可能な非標的細胞(例えば、低CD138細胞)及び接近可能な標的細胞(例えば、高CD138細胞)の両方について、IC50値及び隔離値を計算し、比較して、相対隔離値を計算することができる。
相対隔離値=隔離(接近可能な非標的細胞)/隔離(接近可能な標的細胞)
【0085】
1を超える値は、所定の濃度の非複合体化標的剤、例えばnBT062に対して、例えば低CD138細胞の方が、例えば高CD138細胞よりも遮蔽されていることを示す。
【0086】
本発明の状況では、10以上、20以上、30以上、40以上、及び50以上のいずれかの相対隔離値が好ましい。
【0087】
本明細書の他の箇所で説明するように、接近可能な非標的細胞、特に非腫瘍細胞を遮蔽するために非複合体化標的剤を投与したとき、非複合体化標的剤は標的細胞も遮蔽する。好ましい実施形態では、有効量の非複合体化標的剤は、腫瘍標的細胞の感受性を全く低下させない、或いは僅かしか低下させないため、生存腫瘍細胞は全く増加しない、或いは比較的僅かしか増加しない。投与される有効量の免疫複合体は、好ましくは更に、所望の程度腫瘍細胞を破壊することを可能にする。
【0088】
好ましい実施形態では、全ての接近可能な非標的細胞の感受性が臨床的に許容されるレベルに低下し、その結果、生存できる接近可能な非標的細胞の百分位数が、非複合体化標的剤で処理していない同細胞に比べて、例えば10%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、最大100%増加するが、標的、例えば腫瘍細胞の感受性の減少は、好ましくは数百分位数、例えば1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%のいずれかであり、0〜10%が好ましく、0〜5%が更により好ましいように、非複合体化標的剤の免疫複合体に対する比が選択される。従って、非複合体化標的剤の、免疫複合体に対する有効比は、接近可能な全ての非腫瘍/非標的細胞の感受性を臨床的に許容されるレベルに低下させる(従って、生存可能な非腫瘍細胞の百分率は増加する)が、腫瘍細胞の感受性を臨床的に望ましいレベルで保持する(従って、生存可能な腫瘍細胞の百分率は維持される、或いはほんの僅か増加する)比である。
【0089】
非標的細胞の破壊の許容性、及び標的細胞の生存の許容性の少なくともいずれか、延いては非複合体化標的剤の免疫複合体に対する比は、患者によって(例えば、患者の全身状態、及び病状のいずれかに応じて)、並びに投与形態及び投与部位によって(例えば、静脈内注入対特定の器官への内包注入(contained injection))変動してもよいが、以下の、非複合体化標的剤の免疫複合体に対する比が、本発明の1つの実施形態では、好ましくは約1:2〜約10:1、より好ましくは約1:1〜約8:1、更により好ましくは約1:1〜約5:1、特に約2:1、約3:1、約4:1である。本発明の1つの実施形態では、高い比の非複合体化標的剤/免疫複合体で投与を開始し、次第に低くしていく。例えば、最初の処理では、完全に非標的細胞を保護することができる約20:1の比を用い、次第に約10:1に低下させる。副作用が観察されない場合、比を約9:1、約8:1、約7:1、約6:1、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、及び約1:1の少なくともいずれか、並びに特定の実施形態では約1:2に低下させる。本発明の特定の実施形態では、例えば血管拡張剤で前処理することにより、比を約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、及び約1:5のいずれかに低下させることができる。しかしながら、当業者は、必要に応じて、具体的な状況及び患者に対して容易に比を調節することができる。
【0090】
免疫複合体の腫瘍ターゲティングの向上は、代わりに或いは更に、例えばsCD138及びCD138を発現している細胞全体のいずれかを物理的に分離することによる隔離によっても生じ得る。これらのうち後者の方法は、多発性骨髄腫等の、末期癌の治療において特に有効である。結果として、sCD138及びCD138を発現している細胞全体のいずれかが、例えば血液から除去されるため、投与された同量の免疫複合体がより多くの腫瘍細胞に結合する。これにより、所望の標的細胞破壊を達成するために投与すべき免疫複合体の用量を減少させることができ、従って、免疫複合体の潜在的副作用及び実際の副作用のいずれかが減少する。
【0091】
血漿交換は、例えばsCD138の物理的分離を達成するための1つの方法ではあるが、唯一の方法でない。血漿交換は、血液循環から、血漿(の成分)を除去し、処理し、戻すことを含む。次いで、不連続流遠心分離及び連続流遠心分離のいずれか、或いは血漿濾過を介して、細胞分離装置により血液から血漿を除去する。以下により詳細に記載するように、この方法は、非複合体化標的剤と併用してもよく、併用しなくてもよい。好ましくは、血漿交換中、可溶性抗原の百分位数は減少し、例えば、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、及びそれ以上のいずれか、患者の血液から除去される。
【0092】
標的剤は、マトリックスに結合することができる。CD138特異的標的剤がマトリックスに結合している場合、この標的剤を、本明細書では「CD138特異的吸着剤」と称する。例えば、生物学的流体からsCD138を枯渇させるために、nBT062等の標的剤をマトリックス上に固定してもよい。該固定化は、「還元的アミノ化」を介した、一級アミンによる、アルデヒド活性化ビーズ、及び他の表面のいずれかへの共有結合(カップリング等)だけでなく、nBT062のプロテインA及びプロテインGのいずれかへの結合、或いは例えばビオチン化抗体のストレプトアビジン及びアビジンのいずれかでコーティングされたマトリックスへの結合等の、非共有結合に基づく場合もある。当業者によれば理解されるように、典型的なマトリックスとしては、アガロース及びセファロースビーズのいずれか、ポリエステル及び活性化ポリエステル表面のいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
ターゲティングの向上、特に本発明の方法の腫瘍ターゲティングの向上は、特定の実施形態では、以下の少なくともいずれかに、少なくとも部分的に寄与し得る、
非標的/非腫瘍細胞に比べて、標的細胞、特に腫瘍細胞上でCD138等の抗原が比較的高レベルで発現する、
非腫瘍細胞に比べて、腫瘍細胞により例えばCD138がより速やかにプロセシング/内在化される。
Tassone et al.(2004)は、mRNAレベルに基づくCD138の発現が、原発性陽性多発性骨髄腫(MM)細胞では形質細胞の50〜200倍高いことを報告している。FACS分析により、MM細胞の表面上のCD138の量は形質細胞に比べて約6倍多いことが明らかになった。しかしながら、当業者に理解されるように、多くの方法を使用して、非腫瘍細胞に対する、腫瘍細胞上のCD138等の抗原の相対発現を決定することができ、これは上記方法だけでなく、例えば以下で更に説明するタンパク質レベルの直接比較及びQIFIKIT法のいずれかも含む。当業者が、腫瘍細胞と非腫瘍細胞との間の識別の根拠となると理解する、発現レベルの上昇(例えば、FACS及びQIFIKIT法のいずれかにより測定したとき、2、3、4、5、6、7、8、及び9倍のいずれか)はいずれも、本発明の範囲内である。従って、特定の用量の例えば非複合体化標的剤は、腫瘍細胞で発現しているCD138よりも高い百分位数の、非腫瘍細胞で発現しているCD138に結合することができる。特定の用量の非複合体化標的剤を投与することにより、例えば、平均して、非腫瘍細胞上で発現しているCD138の約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、及び更に多くのいずれかが、非複合体化標的剤に結合し、一方腫瘍細胞上で発現しているCD138では、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、及び更に多くのいずれか等のより低い百分位数が結合する。当業者によれば理解されるように、様々な百分位数の組み合わせが本発明の範囲内である。例えば、特定の用量の非複合体化標的剤では、平均して、非腫瘍細胞上で発現しているCD138の約50%が非複合体化標的剤に結合するが、一方、発現レベルの上昇、及び接近可能性の低下の少なくともいずれかに起因し(以下の考察を参照)、平均して、腫瘍細胞上で発現しているCD138は僅か約30%しか前記非複合体化標的剤に結合しない。比較的高水準の結合は、相当量の非腫瘍細胞(例えば、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%、及び約5%のいずれか)が免疫複合体により破壊されないよう有効に遮蔽する一方、大部分の、好ましくは実質的に全ての腫瘍細胞は依然として、例えば免疫複合体によるアポトーシスを受けることができる。
【0094】
図1Bでは、NCI−H929(高CD138)モデル細胞及びMOLP−2(低CD138)モデル細胞上におけるCD138発現を示す。図から分かるように、QIFIKITにより測定したとき、MOLP−2細胞上で発現しているCD138受容体の量に対する、NCI−H929細胞の表面上で発現しているCD138受容体の量は、一般に、形質細胞上でみられるCD138に対する多発性骨髄腫細胞上でみられるCD138の相対量に相関する、即ち、腫瘍細胞は非癌化(非腫瘍)細胞より著しく高いレベルのCD138を発現する。
【0095】
図1Bはまた、実験セクションに記載する細胞生存率アッセイの結果を詳述する。CD138特異的免疫複合体nBT062−SPDP−DM4に対する高CD138細胞の感受性(IC50(nM)で表す)は、この免疫複合体に対する低CD138細胞の感受性より高い。他方、遊離DM4に対する低CD138(MOLP−2)細胞の感受性は、高CD138(NCI−H929)細胞の感受性よりも高く、また遊離DM4毒素に対する高CD138細胞の感受性(これもIC50(nM)で表す)は、免疫複合体に対する感受性とほぼ等しい。
【0096】
これから、高CD138細胞と低CD138細胞との免疫複合体に対する感受性の差が、免疫複合体に特異的な性質であり、ただ免疫複合体のエフェクタ分子(ここではDM4)に対するMOLP−2細胞の感受性が低いことを反映しているものではないと結論づけられる。図1Bに示すように、高CD138細胞及び低CD138細胞の両方の細胞株についてのIC50値は、図2A及び3Aに示す用量反応曲線に基づいて計算した。
【0097】
高CD138細胞及び低CD138細胞と非複合体化標的剤、ここではnBT062とのプレインキュベーションの影響を、実験セクションに記載する細胞生存率アッセイにより示した。生存細胞の割合は、未処理細胞(100%生存細胞であると設定)を参照して計算した。図1Cは、MOLP−2(低CD138)細胞及びNCI−H929(高CD138)細胞上で非複合体化標的剤(nBT062)を単独でインキュベートすることの影響を示す。図から、用いられた非複合体化標的剤がいずれの細胞株にも細胞傷害効果を有しないことが明らかになる。
【0098】
図2A+B(NCI−H929細胞)及び図3A+B(MOLP−2細胞)は、異なるアッセイの結果を示す。濃度の上昇するnBT062とともに細胞をインキュベート(ここでは30分間プレインキュベート)すると、両方の細胞株に対して保護効果を示す。これは、非複合体化標的剤、ここではnBT062が、細胞結合CD138を遮蔽し、結果としてBT062処理に対する両方の細胞株の感受性を低下させることを示す。従って、nBT062の濃度の上昇は、その後投与される複合体nBT062−SPDB−DM4の、両方の細胞株に対するIC50値の上昇を導く、即ち、この免疫複合体に対する感受性を低下させる。しかしながら、重要なことに、同濃度のnBT062では、その後の所定の濃度のnBT062−SPDB−DM4処理に対する低CD138細胞の感受性が、高CD138細胞の感受性より著しく低下した。図4では、両方の細胞株についてBT062に対するIC50値を、予投与されたnBT062濃度に対してプロットする。図から分かるように、MOLP−2(低CD138)細胞では、予投与されたnBT062の特定の濃度範囲において、nBT062はBT062による処理より有効に細胞を遮蔽する、即ちIC50が大幅に増加するが、一方nBT062の同濃度範囲において、NCI−H929(高CD138)細胞は依然としてBT062に対する感受性が高い。非複合体化標的剤のこの濃度範囲は、非標的細胞が良く保護されているが、標的細胞は依然として有効に減少し得る濃度範囲を表すため、本発明の状況では有効である。
【0099】
上述のように、免疫複合体に対するnBT062媒介感受性低下を定量化するために、所定の濃度のnBT062における両方の細胞株の遮蔽の程度(即ち、より一般的には「隔離」)を、上記のように計算することができる。
【0100】
両方の細胞株のIC50値及び隔離値を表1に示す。相対隔離は、上記のように計算した。1より大きな値は、所定の濃度のnBT062について、低CD138細胞の遮蔽が、高CD138細胞の遮蔽より大きいことを示す(表1)。
【0101】
表1は、様々なnBT062濃度の非存在下及び存在下のいずれかにおける、MOLP−2細胞及びNCI−H929細胞のIC50値である。以下の式に基づいて計算された感受性の低下(IC50値の上昇)を、隔離(%)として示す。相対隔離は、各nBT062濃度について、個々の細胞株で得られた保護値に基づいて計算される(以下に示す式)。
【表1】

(1)隔離=100×(nBT062有のIC50値/nBT062無のIC50値)−100
(2)相対隔離=低CD138細胞の隔離/高CD138細胞の隔離
【0102】
結果は、特定の濃度の非複合体化標的剤では、相対隔離が実際に1より著しく高いことを示す。本発明の状況では、10以上、20以上、30以上、40以上、及び50以上のいずれかの相対隔離値が好ましい。
【0103】
表2では、同濃度の非複合体化標的剤中で増殖させた対照細胞と比べた、非複合体化標的剤による前処理後の、低CD138細胞及び高CD138細胞の生存率を示す。両方の細胞株を、0.4nM及び0.8nMのいずれかのnBT062−SPDB−DM4で処理し、nBT062で前処理しなかったか(最初の行)、或いは濃度の上昇するnBT062で前処理した。例えば、0.4nMの免疫複合体の濃度では、0.78nMの非複合体化標的剤で前処理することにより、モデル非標的細胞の生存率は41%から99%に上昇したが、モデル標的細胞の生存率は6%から10%とほんの僅かしか上昇しなかった。従って、2:1という非複合体化標的剤の免疫複合体に対する比において、高百分位数の低CD138細胞(非標的細胞)の生存、及び高CD138細胞(標的細胞)の低生存率を可能にする、非複合体化標的剤の免疫複合体に対する比を見つけるという目的は、ほぼ最適に達成された。従って、表2のデータは、特定の濃度の非複合体化標的剤とともに細胞をインキュベートすることにより、低CD138細胞(非標的細胞)は、免疫複合体の何らかの効果からほぼ完全に遮蔽され得る、即ち、その後の免疫複合体処理に対して殆ど或いは全く感受性がなくなるが、標的細胞に対するBT062の効率は僅かに低下するのみである。
【0104】
表2は、個々の細胞株について生存細胞(未処理対照(%))の百分率を、所定の濃度のBT062及びnBT062についての例として示す。
【表2】

【0105】
非標的細胞の破壊及び標的細胞の生存の少なくともいずれかの許容性、ひいては非複合体化標的剤の免疫複合体に対する比は、状態によって、患者によって(例えば、患者の全身状態及び病状のいずれかに応じて)、並びに投与形態及び投与部位によって(静脈内注射対例えば、特定の器官への内包注入)変動してもよい。
【0106】
細胞の接近可能性は、場所(投与部位)及び時間(標的細胞処理の状態)の点で異なる。よって、CD138発現非腫瘍細胞及びCD138発現腫瘍細胞の接近可能性が異なることは、特定の実施形態では、本発明の方法及び組成物を用いて達成される結果にも寄与する。例えば、nBT062は、可溶性CD138、及び少なくとも特定の種類の非腫瘍細胞、例えば、血液中を浮遊している細胞上で発現しているCD138の少なくともいずれかに、腫瘍細胞上で発現しているCD138よりも容易に結合することができる。後者の少なくとも一部は、本発明の特定の実施形態では、例えばnBT062に比較的接近が困難である場合がある。特定の実施形態では、かかる比較的接近が困難なCD138は、処理の過程中、より接近可能になる、これは免疫複合体が細胞でアポトーシスを引き起こすためである。アポトーシス後、死んだ細胞は例えば食作用により除去され、以前は接近不可能であった腫瘍細胞、及び接近が困難であった腫瘍細胞のいずれかに接近するようになる。
【0107】
本発明の状況では、可溶性及び細胞結合CD138のいずれか等の物質、並びに細胞のいずれかを「隔離する」とは、以下の(i)及び(ii)のいずれかを指す、
(i)特に免疫複合体による更なる結合を減少させる或いは防ぐ、物質及び細胞のいずれかの結合、
(ii)物質及び細胞のいずれかの物理的分離。
例えば非複合体化標的剤による個々のCD138抗原への結合は、免疫複合体の個々のCD138抗原に対する親和性を低下させる場合があり、更に個々のCD138を、CD138を標的とする免疫複合体による結合に利用できなくする場合もある。親和性の低下は、例えば、免疫複合体の標的剤とは異なる非複合体化標的剤を使用した結果であってもよい。例えば、非複合体化標的剤は、ADAMTS4等の生理学的CD138リガンドであってもよく、免疫複合体の標的剤は、nBT062であってもよい。
【0108】
従って、例えば非複合体化標的剤による結合は、免疫複合体の非腫瘍細胞との結合を減少させることができる。これは、非腫瘍細胞を、有効量の免疫複合体への結合から保護することによりターゲティングを向上させ(本明細書では「非腫瘍細胞の「遮蔽」或いは「遮断」とも称する」)、それにより免疫複合体の投与に関連する望ましくない副作用を減少させる。腫瘍ターゲティングの向上は、特定の用量の免疫複合体の有効性の増大に、或いは同等の効果を得るためにより低用量の免疫複合体を用いることができるという事実に反映され得る。
【0109】
上述のように、隔離はまた、単に物理的分離に基づく場合もある。例えば、血漿交換中、血漿は血液細胞から分離される。可溶性抗原(例えば、sCD138)は、血漿の一部となる。血漿の少なくとも一部を、血漿増量剤に置換し、それによって存在する可溶性CD138の全体量を減少させることができる。これによって、免疫複合体による結合に利用可能な非腫瘍結合CD138抗原の量が減少する。結果として、例えば、同用量の免疫複合体で、物理的分離による隔離を行わずに得られるよりも高程度である、腫瘍細胞結合CD138への結合を含む、高程度の細胞結合CD138への結合が生じる。
【0110】
結合に基づく隔離及び物理的分離に基づく隔離の組み合わせも可能であることが理解される。例えば、血漿交換中に血液細胞から分離された血漿中に含まれるsCD138は、例えば、CD138特異的吸着剤等の標的剤に結合することができ、その血漿を患者に再導入することもできる。上に概説したように、本発明は、エフェクタ分子(免疫複合体の一部としての)に機能的に結合した標的剤と、非複合体化標的剤とを区別する。例えば、CD138特異的吸着剤の場合、非複合体化標的剤は、マトリックス等の非エフェクタ分子(1及び複数のいずれか)に結合する、或いは会合する。
【0111】
本発明に係る非複合体化標的剤及び免疫複合体は、静脈内に、非経口的に、経口的に、筋肉内に、髄腔内に、及びエアゾールとしてのいずれかを含む、いずれの経路で投与してもよい。送達方式は、所望の効果に応じて決定される。当業者は、本発明に従って、特定の処理についての最良の投与経路を容易に知る。適切な用量は、投与経路、及び指示された処理に応じて決定され、現在の治療プロトコルを考慮して当業者が容易に決定することができる。
【0112】
非複合体化標的剤、及び活性成分として本発明の免疫複合体を含有する医薬組成物は、従来の医薬品調合技術に従って調製することができる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th Ed.(1985,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.)を参照。典型的には、有効量の活性成分を、薬学的に許容される担体と混合する。担体は、例えば、静脈内、経口、非経口、髄腔内、経皮、及びエアゾールのいずれかとして等、投与にとって望ましい製剤形態に応じて、広範な形態をとることができる。
【0113】
経口投与では、非複合体化標的剤及び免疫複合体の少なくともいずれかを、カプセル、丸剤、錠剤、ロゼンジ剤、溶解物(melt)、粉剤、懸濁液、及びエマルションのいずれか等の、固体製剤及び液体製剤のいずれかに配合することができる。経口剤形の組成物の調製では、経口液体製剤(例えば、懸濁液、エリキシル剤、及び溶液)の場合、例えば、水、グリコール、油、アルコール、着香剤、防腐剤、着色剤、懸濁剤等、或いは経口固体製剤(例えば、粉剤、カプセル、及び錠剤)の場合、デンプン、砂糖、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤等の、通常の医薬媒体のいずれを使用してもよい。投与が容易であるため、錠剤及びカプセルが最も有利な経口単位剤形を表し、この場合無論固体医薬担体が使用される。必要に応じて、錠剤は、標準的な技術により糖コーティングしてもよく、腸溶性コーティングを施してもよい。活性剤は、消化管を通過するために安定でなければならない。必要な場合、安定な通過に好適な薬剤を用いてもよく、文献に記載されているリン脂質及びレシチン誘導体のいずれか、並びにリポソーム、微粒子(ミクロスフィア及びマクロスフィアを含む)を含んでいてもよい。
【0114】
非経口投与では、非複合体化標的剤、及び免疫複合体の少なくともいずれかを、医薬担体に溶解させ、溶液及び懸濁液のいずれかとして投与されてもよい。好適な担体の例は、水、生理食塩水、リン酸緩衝溶液(PBS)、デキストロース溶液、フラクトース溶液、エタノール、並びに動物油、植物油、及び合成起源の油の少なくともいずれかである。担体はまた、他の成分、例えば、防腐剤、懸濁剤、可溶化剤、緩衝剤等を含有していてもよい。複合体化していない標的剤、及び免疫複合体の少なくともいずれかと、細胞傷害性剤との少なくともいずれかを、脳室内、及び髄腔内のいずれかに投与するとき、それらはまた脳脊髄液に溶解する場合もある。
【0115】
本発明に従って、例としてnBT062及びBT062を用いて、MMを以下のように処理する。この例は、如何なる方法によっても本発明を限定することを意図するものではなく、当業者は、本発明の範囲内である他の非複合体化標的剤及び免疫複合体の少なくともいずれか、並びにMM等の疾患の治療に利用できる他の治療レジメンを容易に決定することができる。2種の成分を、3:1の比(nBT062/BT062)で同時に、それを必要としている患者に投与する。nBT062の腫瘍細胞及び非腫瘍結合への結合により、BT062の非腫瘍結合に対する毒性は低下する。特に、非腫瘍結合の生存率は、特定の量のBT062の使用において、40%増加する、即ち40%から80%に増加する。患者のMM細胞におけるCD138の高発現、及びこれらの細胞上でのCD138の比較的高い代謝回転の少なくともいずれか等の様々な要因により、BT062は、nBT062の投与後でさえ、腫瘍細胞の破壊を引き起こす有効量腫瘍細胞に結合することができる。具体的には、腫瘍細胞の生存率は、ほんの数%しか(即ち6%から9%)増加しない。よって、本発明の実施形態の非複合体化標的剤及び免疫複合体は、副作用が臨床的に許容される程度である、エフェクタ分子が免疫複合体から放出され得る腫瘍細胞部位にエフェクタ分子を有効に投与する手段を提供する。このターゲティングされた送達及び放出により、多発性骨髄腫の治療に著しい進歩がもたらされる。
【0116】
本発明は、以下の実施例を参照して更に説明するが、実施例は例として提供するものであり、如何なる方法によっても本発明を限定することを意図するものではない。当該技術分野において周知である標準的な技術、及び以下に具体的に記載する技術のいずれかを利用する。
【0117】
実験セクション:材料及び方法
細胞株
MOLP−2は、ヒト多発性骨髄腫細胞株(DSMZ番号ACC607)であり、これは比較的少量のCD138を発現する(以下の詳細及び図1Bを参照)。この細胞株はまた、例えば毒素DM4に対して非常に感受性が高く、これは薬物処理に抵抗する内部機構の発達が、例え存在するとしても、不十分であることを示す。これらの事実は、この細胞株が、非標的細胞、特に非標的低CD138細胞の優れたモデルであることを強調する。
【0118】
NCI−H929は、ヒト多発性骨髄腫細胞株(DSMZ番号ACC163)であり、これはMOLP−2細胞と比べて、比較的多量のCD138を発現する(以下の詳細及び図1Bを参照)。この細胞株はまた、遊離エフェクタ分子、例えば毒素DM4に対する耐性が高く、これは薬物処理に抵抗する内部機構が、他の腫瘍細胞のように、十分発達していることを示す。これらの事実が、この細胞株を、例えば多発性骨髄腫に見られるような、腫瘍細胞、特に標的高CD138細胞の優れたモデルたらしめる。
【0119】
CD138発現を相対的に測定するためのFACS分析
1×10個のMOLP−2及びNCI−H929多発性骨髄腫細胞を、それぞれ別々にnBT062とともにインキュベートして、これらの細胞表面上のCD138分子を検出した。100μLのPBSで希釈したnBT062抗体を添加した後、30分間室温で細胞を2回洗浄した。このアッセイで用いた抗体濃度は、125〜0.98ng/mLであった。その後、PBSで1/50に希釈したFITC−複合体化ヤギ抗ヒトIgG(Immunotech,Inc.)とともに細胞をインキュベートし、FACS Calibure flow cytometer(Beckton Dickinson)を用いて、結合抗体を検出した。FITC蛍光をFL−1チャネル内で測定した。未処理細胞、アイソタイプ対照処理細胞、及び二次抗体のみで処理した細胞の平均蛍光(対照の平均値)を、得られた値から減じた。全ての測定を2連で行った。非複合体化抗体nBT062の結合を介して、FACS分析により、NCI−H929及びMOLP−2多発性骨髄腫細胞株の表面上のCD138発現を決定するためのデータを、図1Aのヒストグラムプロットに示す。
【0120】
QIFIKITを介したCD138受容体の絶対数の決定
QIFIKITアッセイ(DAKO USA)により、間接的免疫蛍光アッセイを用いて、フローサイトメトリーにより細胞表面抗原を定量化することが可能になる。この方法を用いて、MOLP−2及びNCI−H929多発性骨髄腫細胞の細胞表面上におけるCD138の受容体の絶対数を決定した。QIFIKITは、直径およそ10μmであり、異なる量であるが明確に定義された量のマウスモノクローナル抗体でコーティングが施されている、一連の6種のビーズ群から成る。6種のビーズ群上のモノクローナル抗体分子の数は、0から400,000〜800,000の範囲であり、キットに備えられている。ビーズは、特定の一次マウスモノクローナル抗体で標識された細胞を模倣している。検体細胞を、飽和濃度の一次マウスMabで標識した。この条件下では、一次Mabは、それぞれの細胞表面抗原に一価的に(monovalently)結合すると予測される。従って、結合した抗体分子の数は、抗原部位の数に一致する。細胞を飽和濃度で、並行して、QIFIKITビーズ、ポリクローナルヤギ抗マウス免疫グロブリン/FITC、ヤギF(ab’)とともにインキュベートする。
【0121】
検量線は、ビーズ上のMab分子数に対して、個々のビーズ群の蛍光強度をプロットすることにより構築した。次いで、検体細胞上の抗原部位の数を内挿により決定した。
【0122】
50μL/ウェルの細胞(1×10細胞/mL)を、様々な濃度のnBT062(125〜0.98ng/mL)とともに、4℃で45分間インキュベートした。ビーズの設定及び較正は、製造業者の推奨に従って準備した。ウェルを、100μLのPBSで2回洗浄した。結合したnBT062を、100μLのFITC−複合体化二次抗体を用いて検出した(PBSで1:50に希釈、インキュベート時間45分、遮光下で4℃)。サンプルを、製造業者の推奨に従ってフローサイトメトリーにより分析した。
【0123】
QIFIKITを用いて定量化したCD138の受容体の絶対数を、図1Bに示す。
【0124】
細胞生存率アッセイ
高CD138細胞及び低CD138細胞と、非複合体化標的剤とのプレインキュベーションの影響を評価するために、細胞生存率アッセイを実施した。NCI−H929及びMOLP−2多発性骨髄腫細胞株を、約5000細胞/ウェルの密度でマイクロタイタープレート内にて培養した。細胞を、様々な濃度の非複合体化nBT062とともに、30分間プレインキュベートした。その後、培養物を、濃度の上昇するBT062で処理した。培養物を5日間インキュベートし、その後10μLのテトラゾリウム塩含有WST−1試薬(Roche)を添加し、続いて更に1〜3時間インキュベートして、細胞生存率を測定した。ホルマザン代謝物の形成による発色を、マイクロプレートリーダーで690nm(参照波長)における吸光度に対する、450nmにおける吸光度を決定することにより定量化した。培地及びWST−1試薬を収容しているウェルが、ブランク対照として機能した。生存細胞の百分率を、標準増殖培地中における細胞増殖のデータ(100%に設定)と比較して、得られたデータから計算した。対照実験では、細胞を同条件下で、等モル濃度の遊離毒素、及び非複合体化nBT062のいずれかとともに処理し、細胞生存率を上記のように測定した。
【0125】
上記結果を、以下の共培養実験により確認する。
共培養における細胞生存率
CD138発現細胞に対するBT062の細胞傷害性を、フローサイトメトリーにより測定する。低レベルのCD138を発現している約2×10細胞(非標的細胞、低CD138細胞)を、製造業者の取扱説明書に従って、蛍光色素PKH67−GL(Sigma,Deisenhofen,Germany)とともに、室温(RT)で5分間インキュベートする。熱で不活性化したFBSを添加することにより、色素の取り込みを停止する。次いで、細胞を15mLのPBSで2回洗浄する。
【0126】
標識した細胞を、96ウェルのマイクロタイタープレートに、高レベルのCD138を発現している非標識細胞(「標的細胞」、高CD138細胞)とともに播種し、37℃で一晩インキュベートする。
【0127】
ある割合の結合部位をブロックするために、様々な濃度の非複合体化nBT062とともに、細胞をプレインキュベートする。対照サンプルでは、nBT062を除く。その後、共培養物を、濃度の上昇するBT062で処理する。更に24〜120時間インキュベートした後、培養物をポリプロピレンの試験管に移す。細胞を500gで5分間遠心分離し、上清を除去し、200μL/管のヨウ化プロピジウム(PI)溶液(1μg/mLのPBS溶液)を添加する。室温で5〜10分間インキュベートした後、FACS分析により蛍光を測定する。CellQuestProソフトウェア(BD Biosciences)を用いて、未処理細胞を参照して生存細胞の割合を計算する。生存低CD138細胞は、PKH67−GL陽性及びPI陰性として測定する。生存高CD138細胞(標的細胞)は、PKH67−GL陰性及びPI陰性として測定する。BT062が存在しないことを除いて同処理を行った培養物中で測定した、自然に溶解した細胞の数を加えた。代わりに、別の組の実験では、高CD138細胞をPKH67−GLで標識し、非標識低CD138細胞と共に共培養する。
【0128】
nBT062のプレインキュベーションを介した、BT062に対する低CD138非標的細胞の感受性低下
高CD138細胞及び低CD138細胞の生存率に対する、細胞を非複合体化nBT062とともにプレインキュベートすることの効果を、共培養アッセイで分析する。後で行う細胞生存率アッセイにおいて標的細胞と非標的細胞とを区別できるようにするために、低CD138細胞を蛍光色素PKH67−GLで標識し、その後非標的高CD138細胞と共培養する。或いは、高CD138細胞を同じ色素で標識する。結合部位を部分的にブロックするために、共培養物を、様々な濃度の非複合体化nBT062で処理する。その後、BT062を細胞に添加し、PI染色と、その後FACS分析を行うことにより、細胞生存率を分析する。BT062で処理した後、共培養物中における非標的細胞の生存率は、非複合体化抗体nBT062とプレインキュベートすることにより上昇する。重要なことに、標的細胞に対するBT062の有効性は、ほんの僅かしか低下しない。この結果は更に、低CD138非標的細胞に対するBT062の細胞傷害性を、細胞をnBT062とともにプレインキュベートすることにより低下させることができ、それにより高CD138標的細胞に対するBT062の細胞傷害性が維持されることを示す。
【0129】
可溶性CD138の隔離
細胞培養上清中の可溶性CD138の測定
CD138発現細胞の細胞培養上清中における可溶性CD138(sCD138)のレベルを、製造業者の取扱説明書に従って固相サンドイッチELISA(ヒトCD138ELISAキット、Diaclone,Besancon,France)を用いて測定する。
【0130】
sCD138を添加した培養物における細胞生存率アッセイ
可溶性CD138を、標準的な手順に従って、抗CD138抗体B−B4をロードしたカラムを用いて、抗体親和性クロマトグラフィーにより、細胞培養上清から精製する。
【0131】
培養上清中に既知の濃度のsCD138を含むCD138陽性細胞の細胞培養物を得るために、新たに播種した細胞の培地に、様々な濃度の精製したsCD138を添加した。5000細胞/ウェル(浮遊細胞)及び900細胞/ウェル(付着細胞)のいずれかの密度で、マイクロタイタープレートにて細胞培養を行う。sCD138の結合部位をブロックするために、細胞を非複合体化nBT062とともにプレインキュベートする。その後、培養物を濃度の上昇するBT062で処理する。培養物を1〜5日間インキュベートし、その後10μLのテトラゾリウム塩含有WST−1試薬(Roche)を添加し、次いで1〜3時間更にインキュベートする。ホルマザン代謝物の形成による発色を、マイクロプレートリーダーで参照波長としての690nmにおける吸光度に対する、450nmにおける吸光度を決定することにより定量化する。培地及びWST−1試薬を収容しているウェルが、ブランクとして機能する。生存細胞の百分率を、標準増殖培地中で増殖した細胞のデータ(100%に設定)と比較して、これらのデータから計算する。
【0132】
可溶性CD138をnBT062で遮断することによる、高CD138標的細胞に対するBT062の細胞傷害活性の上昇
CD138発現多発性骨髄腫細胞に対するBT062の細胞傷害活性は、インビトロにおいては細胞培養上清中の可溶性CD138の存在により、インビボにおいては多発性骨髄腫患者或いは実験動物の血液及び組織のいずれかにおけるsCD138の存在により、低下する。sCD138が競合者として機能するのを防ぐために、nBT062をインビトロのモデル系で用いて、sCD138上の結合部位をブロックする。そして、CD138発現細胞を、sCD138を含有する条件培地、及び既知の濃度の精製したsCD138を添加した新鮮な細胞培養培地のいずれかとともに、マイクロタイタープレート内で培養する。非複合体化nBT062を培養物に添加して、その後或いは同時にBT062を添加する。細胞生存率を、WST−1細胞生存率アッセイで測定する。
【0133】
結果は、nBT062とともに細胞をプレインキュベートすることにより、BT062の活性を高め得ることを示す(非複合体化抗体nBT062でsCD138結合部位を遮断した結果)。
【0134】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的細胞上で発現している細胞結合抗原を標的とする免疫複合体のターゲティング、特に腫瘍ターゲティングを向上させる方法であって、
(a)標的細胞に結合しているか、非標的細胞に結合しているか、或いは可溶性形態で存在している前記抗原を含む媒体を提供する工程と、
(b)細胞結合抗原、可溶性抗原、及び抗原発現細胞の少なくともいずれかを隔離する工程と、
(c)標的細胞上で発現している細胞結合抗原を標的とする免疫複合体であって、前記抗原の標的剤を含み、前記標的剤はエフェクタ分子に機能的に結合している免疫複合体を投与する工程と、を含み、
(b)における前記隔離が、前記免疫複合体の標的細胞ターゲティングを向上させることを特徴とする方法。
【請求項2】
非複合体化標的剤が、細胞結合抗原、可溶性抗原、及び抗原発現細胞の少なくともいずれかを隔離する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
抗原が、該抗原が結合している細胞、及び該抗原が脱落を受けた細胞に内在化する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
非標的細胞が、上皮細胞、脳、心臓、腎臓、及び肝細胞等の、疾患再生細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
非複合体化標的剤が、標的抗体及び生理学的リガンドのいずれかである、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
非標的細胞の標的細胞に対する相対隔離が、5超及び10超のいずれか、好ましくは20超、最も好ましくは30超である、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
非複合体化標的剤の免疫複合体に対する比が、約10:1〜約1:2、好ましくは5:1〜2:1である、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
プラゾシン、テラゾシン、及びドキサゾシンのいずれか等の血管拡張剤が、非複合体化標的剤の前に或いはこれと同時に投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
抗原特異的吸着剤が、非複合体化標的剤を含み、可溶性抗原及び抗原発現細胞の少なくともいずれかが、前記抗原特異的吸着剤を介してエキソビボで隔離される、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
媒体が血液であり、隔離が、血漿交換中に血液細胞から可溶性抗原を隔離することを含み、前記可溶性抗原が血漿の一部である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
抗原がCD138であり、
−(a)の媒体が、細胞結合CD138及び可溶性CD138の少なくともいずれかを含み、
−細胞結合CD138、可溶性CD138、及びCD138発現細胞の少なくともいずれかが(b)で隔離され、
−CD138の標的剤であって、エフェクタ分子に機能的に結合している標的剤を含む、細胞結合CD138を標的とする免疫複合体が、(c)で投与される、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
非複合体化CD138標的剤が、細胞結合CD138、可溶性CD138、及びCD138発現細胞の少なくともいずれかを隔離する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
非複合体化CD138標的剤が、非複合体化標的抗体及び生理学的リガンドのいずれかである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
CD138発現非標的細胞のCD138発現標的細胞に対する相対隔離が、5超及び10超のいずれか、好ましくは20超、最も好ましくは30超である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
非複合体化CD138標的剤の免疫複合体に対する比が、約10:1〜約1:2、好ましくは5:1〜2:1である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
プラゾシン、テラゾシン、及びドキサゾシンのいずれか等の血管拡張剤が、非複合体化CD138標的剤の前に或いは同時に投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
CD138特異的吸着剤が、非複合体化CD138標的剤を含み、可溶性CD138及びCD138発現細胞の少なくともいずれかが、前記CD138特異的吸着剤を介してエキソビボで隔離される、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
媒体が血液であり、隔離が、血漿交換中に血液細胞から可溶性CD138を隔離することを含み、可溶性CD138が血漿の一部である、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
媒体が、血液、血漿、組織、及び骨髄のいずれかである、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
標的細胞結合CD138を標的とする免疫複合体が、非複合体化CD138標的剤と同時に或いはその投与後に投与される、請求項11及び15のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
(b)における隔離、及び(c)における投与が、ある時間間隔で隔てられている、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
時間間隔が、少なくとも20分である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
患者の血液中の可溶性CD138及びCD138発現細胞のいずれかの、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%が、血漿交換中に除去される、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
(b)及び(c)の少なくともいずれかにおける標的剤が、標的抗体である、請求項11に記載の方法。
【請求項25】
標的抗体が、抗体B−B4、及び抗体B−B4由来のいずれかである請求項24に記載の方法。
【請求項26】
抗体がnBT062である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
標的細胞上で発現している細胞結合抗原を標的とする免疫複合体であって、前記抗原の標的剤を含み、前記標的剤はエフェクタ分子に機能的に結合している免疫複合体と、
全身細胞傷害性ではない非複合体化標的剤と、
薬学的に許容される担体と、
を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項28】
抗原が、該抗原が結合している細胞に内在化する、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
非複合体化標的剤が、非複合体化標的抗体及び生理学的リガンドのいずれかである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
非複合体化標的剤及び免疫複合体が、約10:1〜約1:2、好ましくは約5:1〜約2:1の比で存在する、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項31】
免疫複合体が、細胞結合CD138を標的とし、CD138の標的剤を含む、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項32】
非複合体化CD138標的剤が、非複合体化CD138標的抗体、及びCD138の生理学的リガンドのいずれかである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
非複合体化標的剤及び前記免疫複合体が、約10:1〜約1:2、好ましくは約5:1〜約2:1の比で存在する、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項34】
1つの容器に、(a)標的細胞上で発現している細胞結合抗原を標的とする免疫複合体であって、前記抗原の標的剤を含み、前記標的剤はエフェクタ分子に機能的に結合している免疫複合体を含み、
別の容器に、(b)全身細胞傷害性ではない非複合体化標的剤を含み、
任意的に第3の容器に、(c)血管拡張剤を含み、
任意的に第4の容器に、(d)(a)及び(b)、並びに任意的に(c)の使用法についての取扱説明書を含むことを特徴とするキット。
【請求項35】
容器内の免疫複合体(a)が細胞結合CD138を標的とし、CD138の標的剤を含む、請求項34に記載のキット。
【請求項36】
(d)の取扱説明書が、約10:1〜約1:2、好ましくは約5:1〜約2:1である非複合体化標的剤の免疫複合体に対する比を含む治療レジメンについて詳細に説明している、請求項34に記載のキット。


【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−507933(P2011−507933A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540130(P2010−540130)
【出願日】平成20年12月23日(2008.12.23)
【国際出願番号】PCT/EP2008/068268
【国際公開番号】WO2009/080831
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(390035378)バイオテスト・アクチエンゲゼルシヤフト (13)
【出願人】(504039155)イミュノジェン・インコーポレーテッド (36)
【Fターム(参考)】