説明

免疫調節治療剤

1群のペプチドを家畜哺乳動物から単離後、質量分析法により同定した。これらのペプチドはフィブリノーゲン活性化と補体カスケードの副産物である。最大活性のペプチドは(末端アルギニンの脱離により活性化された)活性化形態のフィブリノペプチドA及びフィブリノペプチドBと、補体成分3の免疫調節フラグメントである。これらの形態のフィブリノペプチドA及びBは免疫調節能が顕著であり、全種の感染性物質を含む異物の認識を強化し、炎症応答を抑え、血管外フィブリンの沈着を予防し、既に沈着しているフィブリンの吸収を刺激し、生体が悪性細胞を認識・排除する能力を強化し、アレルギー性鼻炎やアナフィラキシーを含むアレルギー反応の症状を抑え、自己抗体複合体の形成・沈着を抑え、慢性神経疾患の症状を改善し、慢性疼痛症候群の症状を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は体液(血液、血清又は滲出液)から単離された成分、天然資源からこのような成分を単離する方法、人体の正常機能を維持及び強化するためにこのような成分を利用する方法、並びに治療有効量の天然又は合成形態の単離成分の投与を含む疾患及び障害の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
健康な多細胞生物では、各種細胞機能のアップレギュレーションとダウンレギュレーションの厳密に調節されたバランスにより恒常性が完璧に維持される。細胞レベルでこの恒常性バランスが崩れると、慢性疾患となる。これらの細胞調節作用の結果、細胞間相互作用と系統間相互作用も生じる。これらの相互作用の結果、各体内臓器内の細胞間の複雑な関連と、これらの臓器/系統の各々の間の相互作用が生じる。この相互作用はサイトカイン、酵素及び循環細胞等の数種の形態の情報伝達により行われる。
【0003】
生体が著しく損傷すると、強い免疫調節効果をもつ1群のペプチドが放出される。これらのペプチドは広義分類のサイトカイン(特定刺激に対する応答として放出され、細胞間メディエーターとして作用する非抗体蛋白質)に分類されるものもあるし、酵素として作用するものもある。どちらの場合も、これらのペプチドは以下の特徴:
1)疼痛及び腫脹の迅速な抑制と持続的な鎮痛応答;
2)適応免疫応答の刺激;
3)フィブリン沈着物の分解・吸収の遅発刺激;
4)免疫系の監視細胞(NK細胞、Tキラーリンパ球)の刺激;又は
5)生体の基線状態から抗炎症状態へのシフト
の1種以上をもつ応答に生体をゆっくりと誘導する経路を誘発する。
【0004】
多数のサイトカインが同定され、特定応答におけるその役割の一部が報告されているが、この細胞調節の側面についてはまだ限られた情報しか得られていない。サイトカインの多くについて相反する作用が報告されていることから分かるように、これは非常に活発な研究分野である。サイトカインにより行われる複雑な細胞間情報伝達を完全に解明するには何年か更に研究を要するであろう。
【0005】
外皮系は全高等生物において病原体に対する唯一最大の防御を構成する。生体が外皮系の障害により病的損傷に暴露される危険が最も高いとき、生体はこの免疫系アップレギュレーションを利用して潜在的感染プロセスから自己防御する。サイトカイン/免疫細胞カスケードにおいて、これらのペプチドにより行われる型の調節はこの種の刺激によって通常生じる炎症を強く抑えながら、生体が皮膚断裂時に受け易い過剰な病的損傷を認識してこれに応答する能力を高める。これは免疫系細胞の活性化と、生体が他の病的損傷(急性及び慢性細菌感染症、急性及び慢性ウイルス感染症、寄生虫症、更には悪性プロセスも含む)を認識してこれに応答する能力を治療薬として強化することが可能なサイトカインの放出を含む。皮膚は感染に対する最も重要なバリアであるが、生得免疫系は外皮の断裂に起因する無数の攻撃に対する迅速な応答を可能にする。生得免疫系は病原体及び有害な外来分子を認識・根絶し、腫瘍の監視・排除に役割を果たす(Auf et al.,2001;Bacha et al,2004;Gorelik et al.,1995;Wu and Pruett,1999)。
【0006】
生得免疫系を刺激する以外に、この応答はフィブリンの吸収により創傷及び組織治癒も助長する。これらの沈着物は多数の慢性疾患の増悪因子であり、治癒メカニズムの多くを停止させ、損傷細胞の栄養供給を阻止する。この作用は慢性創傷だけでなく、多発性硬化症のプラーク、アルツハイマー病の神経原線維変化、アテローム性動脈硬化症のプラーク、自己免疫疾患の組織変化、及び免疫系から腫瘍を保護するシールドとして作用する癌細胞周囲のフィブリン沈着物でも認められる。
【0007】
この応答は更に損傷治癒を助長し、免疫調節はTキラーリンパ球の生成を刺激することにより不適切な抗体発現の効果を抑える。これらの細胞は不適切に自己抗体を産生しているB細胞を捜し出して破壊する。自己抗体産生を排除することにより、生体に対する攻撃は停止し、これらの抗体により生じる炎症が解消され、症状が軽減し、多くの場合には自己免疫疾患の最大原因が軽減する。これらのペプチドは更に生体がその細胞壁上に異常蛋白質を発現する細胞を認識・破壊する能力も強化する。全癌細胞はその細胞膜上に異常細胞を発現するので、これらのTキラーリンパ球は全種の癌の認識・破壊に不可欠である。
【0008】
この監視強化に加え、これらのペプチドは強い抗炎症活性をもつ。TH−2サイトカインの刺激により、これらのペプチドは急性傷害で予想される炎症応答を抑制する。更に、これらのペプチドは慢性プロセスからの炎症の阻止も助長すると思われる。この抗炎症活性は急性及び慢性両者の傷害の治癒を増進する。
【0009】
慢性疾患プロセスでは、血管外スペースにおけるフィブリン沈着が多数の疾患の進行の不可欠な部分である。これらの慢性フィブリン沈着物を移動させ、その沈着を防ぐことが現状では治療ターゲットになっているが、これらのメカニズムにより作用する治療薬の成功は従来認められていない。急性病理プロセスに応答してフィブリン沈着物が生じないようにすると、これらの急性プロセスが慢性疾患に移行するのを防止できる。
【0010】
フィブリノーゲンはAα、Bβ及びγ鎖各2本ずつからなる6本のポリペプチド鎖から構成される2価蛋白質である。これらの鎖はジスルフィド結合によりそのアミノ末端付近で相互に結合され、そのカルボキシ末端はトロンビンの作用を受ける。血管壁損傷に応答して、トロンビンが活性化され、フィブリノーゲンを分解し、フィブリンモノマーと、各々フィブリノペプチドA及びBの2個のペプチドを生じる。その後、これらのフィブリンモノマーは相互に結合し、血栓形成の緩い足場を形成する。放出されるフィブリノペプチドは特性決定されており、所定の種依存性活性をもつが、従来では免疫系のモジュレーターとみなされていない。フィブリノペプチドには血管透過性を急性低下させて内膜及び血管外スペースからのフィブリンの吸収の遅発刺激を誘発するという治療効果もあるが、この効果は従来では確認又は認識されていない。生体の系統全体で、生体の恒常性に変化を生じる任意作用はこの変化を逆転させるように逆のプロセスを刺激する。従って、血管からの漏出を生じるプロセスはこの漏出を修復するプロセスも伴うと予想される。フィブリン産生の場合には、これは、1)凝血塊を形成し、漏出領域を封鎖するメカニズムと、2)総血管透過性を低下させる分子を放出し、これらの分子が不要で有害となり得る領域へのこれらの分子の遊走を防ぐメカニズムの2つのメカニズムにより達成される。更に、血管外スペースと内膜下スペースにフィブリンが存在すると、長期的には有害であるが、急性には必要である。フィブリノペプチドAはこれらのフィブリン沈着物の遅発吸収を生じ、その慢性存在に伴う問題を防ぐ。この吸収が行われない場合には、慢性疾患となる。これらのペプチドの異種間活性は知られているが、この異種間活性のメカニズムは従来解明されていない。フィブリノペプチドBは異種間の相同性が殆ど〜全くないが、フィブリノペプチドAの末端配列は殆どの哺乳動物で有意相同性があり、この異種間活性の大半の原因であると思われる。更に、C3の一部は哺乳動物間で相同性が高い。
【0011】
フィブリンが冠動脈疾患では血管の内膜に沈着し、多くの他の疾患で血管外スペースに沈着する結果、これらの疾患は進行する。フィブリンの調節に関するデータは増大しつつあり、このフィブリン沈着が多くの慢性疾患プロセスの主要部分であることを示唆している。これは物理的バリア形態のフィブリンに起因する機能障害だけでなく、これらのスペースにおけるフィブリンの前炎症活性も原因である。更に、これらのスペースにフィブリンが存在すると、治癒に不可欠な所定の細胞の活動が抑制される。この1例として、血管外フィブリンはシュワン細胞の再生作用を不活性化させる。この数年間に、研究者らはこれらの疾患プロセスの多くで血管外フィブリンの除去の効果を実証できるようになっている。これらの研究はフィブリンの前炎症活性と、正常細胞/臓器機能の障害を明らかにしている。この障害は多数の疾患の病理プロセスの主要因子であり、このような疾患としては、限定されないが、多発性硬化症、関節リウマチ、末梢神経挫傷、アルツハイマー病、黄斑変性症、慢性創傷及びアテローム性動脈硬化症が挙げられる。これらの研究では、血管外フィブリンが新規治療薬の重要なターゲットであった。
【0012】
この数年間に、Th1及びTh2サイトカインも免疫/炎症応答の研究における顕著な対象となっている。当初は、Th2サイトカインが抗炎症性とみなされ、Th1サイトカインが前炎症性とみなされた。この一般論は炎症領域のこれらの両極端間の複雑で錯綜した相互作用を完全に説明するものではない。また、炎症応答は能動成分と受動成分にも分類されており、更に生得免疫系と適応免疫系で活性な部分に分類されている。全身応答にはほぼ常にTh1活性とTh2活性、生得免疫と適応免疫、及び能動性と受動性の免疫/炎症応答が併存するので、これらの分類はいずれもインビボで認められる応答を正しく説明していない。
【0013】
これらのペプチドに対する生体の応答でもこの組合せ活性が生じる。これらのペプチドは刺激性又は抑制性とみなすことができる一連の活性をサイトカインカスケードで生じるが、最終結果は免疫系の刺激、血管外スペースからのフィブリンの除去の刺激、及び炎症の抑制である。
【0014】
血流中を循環する多数の異なる蛋白質及びペプチドがヒト及び実験動物モデルで局所炎症プロセスに作用することは十分に認識されている。これらの蛋白質及びペプチドとしては、各種サイトカイン及びケモカインが挙げられる。これらの物質は局所炎症応答の程度を調節するフィードバックループを生じる。大半の慢性疾患では、炎症応答に対するこの制御が不適切であり、局所炎症の結果、健康な組織が破壊される。フィブリノペプチドAは各種疾患モデルで抗炎症効果があるため、局所組織破壊を抑え、疾患状態を改善する。本願ではこれらのモデルについて記載し、フィブリノペプチドAの抗炎症効果を立証する。この抗炎症応答の作用メカニズムは、特定の抗炎症性サイトカインの産生により主にTh1応答から主にTh2応答へとサイトカインパネルをシフトさせることができるというフィブリノペプチドAの固有の能力により立証される。このサイトカインシフトに加え、フィブリノペプチドAは血管透過性を低下させることができる。血管透過性のこの低下は血漿蛋白質(例えばフィブリン)を血管内に維持し、血管外スペースにおけるその前炎症活性を防止する効果がある。フィブリンは特に血管外スペースにおける前炎症性分子とみなされているが、フィブリノペプチドAは血流から血管外スペースへのフィブリンの遊走を著しく減らし、このスペースからのフィブリンの除去を促進することができる。この抗炎症活性(又は少なくとも前炎症活性の防止)は慢性炎症疾患の治療に密接な関係がある。
【0015】
1978年に、Ruhenstroth−bauerらはフィブリノペプチドA及びBの抗炎症活性を立証した。その研究において、Ruhenstroth−bauerらは病的攻撃に応答する炎症の固有原因を解明しようとした。彼らは先ず病的損傷後に放出された急性期蛋白質のシフトを立証した。次にこのシフトにより生じた蛋白質の抗炎症活性を特定した。米国特許第4215109号は更にこの抗炎症活性を先ずフィブリノーゲンに特定した後、ほぼ全病理プロセスで有益な効果があると考えられる応答であるこの生体抗炎症応答の発生源であることが確認されたフィブリノペプチドA及びBを更に試験する方法を記載している。彼らはカラゲナンで誘発したラット足浮腫モデルでこの効果を立証し、腹腔内注射したフィブリノーゲン増加の効果を立証した後、この有益な活性をフィブリノペプチドA及びBに特定した。しかし、彼らの研究はこの抗炎症活性の作用メカニズムについて記載しておらず、あるいはこの活性を特定ペプチドに特定することさえしていない。彼らは治療薬を製造するためにその研究を利用していない。
【0016】
この同一グループ(Scherer et.al,1981)は次にこの抗炎症効果を別の疾患モデルで立証した。ヒトフィブリノペプチドA及びBを毎日腹腔内注射することにより、モルモットとラット(多発性硬化症(MS)の疾患モデル)で実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)の進行が改善されることを立証した。これらの注射により、投与した動物では対照に比較して疾患状態が有意に改善した。投与した動物では不全麻痺の数、重篤度及び期間が低下したことから、疾患の臨床神経徴候の改善は明白であった。更に、血漿蛋白質の滲出と神経柔組織の浮腫に伴う血管透過性の炎症性変化はフィブリノペプチドを投与した動物のほうが有意に少なかった。最後に、これらの動物の血清中には循環免疫複合体の著しく高い力価が観測され、フィブリノペプチドA及びBを投与しても抗原攻撃に対する特異的免疫応答は変化しないことが立証された。従って、彼らはこの抗炎症応答が免疫抑制を犠牲にしていないと結論した。抗塩基性蛋白質及び抗脳抗体産生の変化は観測されなかった。EAEの特徴的な細胞浸潤物もフィブリノペプチドを投与した動物と食塩水を投与した対照との間で定性的又は定量的な有意差を示さなかった(Scherer et.al.1979)が、これらの所見と共に一般に認められる炎症は著しく弱かった。
【0017】
これらの研究が完了した直後に、Marusicらは任意型の腹膜炎の誘発で同様の所見を立証した。これらのペプチドは弱酸性であるので、Schererらによる研究は疑陽性の可能性があり、この経路については誰からもそれ以上研究発表されていないようである。フィブリン沈着はMSにおけるプラーク発生の主要因であり(Adams et al.2004)、これらの沈着物は血管漏出の結果として形成される。上記のように、Schererらはこの血管漏出がフィブリノペプチドA及びBの投与により改善されることを立証した。
【0018】
血管透過性の低下は更に免疫複合体の遊走を多少抑制し、血管外スペースにおけるフィブリン沈着を遅らせる。更に、フィブリンはシュワン細胞を非ミエリン形成状態に維持することによりシュワン細胞分化を調節することができる。フィブリンはシュワン細胞でERK1/2のリン酸化とp75NGF低親和性受容体の産生を誘導し、シュワン細胞を非ミエリン形成状態に維持し、フィブロネクチン産生を抑制し、ミエリン蛋白質の合成を妨げる(Akassoglou,et.al.,2002)。多くの慢性神経疾患では、血管外スペースにおけるフィブリンのこの持続的存在が疾患プロセスの持続と神経症状の進行に関係している。これらの症状としては、多発性硬化症プラークにおけるフィブリンの存在、アルツハイマー病神経原線維変化、パーキンソン病における基底核損傷、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーにおける末梢神経損傷及び他の多くの症状が挙げられる。これらのフィブリン沈着は神経系の外部の病理プロセスの重要な部分でもある。これはアテローム性動脈硬化性心疾患、慢性創傷、高血圧症、癌(癌細胞の周囲にバリアを形成)、黄斑変性症、自己免疫疾患及び他の多くの疾患の発症においてフィブリンが不可欠な役割を果たしていることから明らかである。
【0019】
抗アレルギー/抗アナフィラキシー作用も認められている。Masuda et.al.(2001)はフィブリノペプチドAフラグメント(本発明の目的とするものと同一のフラグメント)がマウス抗体IgEを脱グリコシル化することを立証した。この脱グリコシル化されたIgEは肥満細胞からのヒスタミン放出を刺激することができなくなるため、アナフィラキシー/アレルギー応答を防止できた。一方、この脱グリコシル化はIgEが抗原と相互作用する能力、肥満細胞及び他の免疫細胞と結合する能力には影響を与えず、又はこれらの細胞がIgE抗原/抗体複合体とその膜受容体の結合に起因する他の全正常活動を実施する能力を変化させなかった。彼らは更に合成形態のこのペプチド配列も同様にIgEを脱グリコシル化することを立証した。この脱グリコシル化が起きると、マウス全身アナフィラキシーを誘導することができなくなった(Masuda et.al.2001)。しかし、Masudaらはこの脱グリコシル化のメカニズムを解明していない。彼らは脱グリコシル化されたIgEが免疫応答に及ぼすと思われる他の効果についても評価しなかった。グリコシル化と脱グリコシル化によりサイトカインの全身効果が変化することは周知である。IgEのこの脱グリコシル化はフィブリノペプチドAがIgEに与える直接効果かもしれないし、免疫調節の付加効果かもしれない。この脱グリコシル化はそれにと続くヒスタミン応答の欠如はフィブリノペプチドA投与後に見られる血管透過性の低下の一因であると思われる。ヒスタミン応答の欠如の結果、損傷部位におけるフィブリン沈着が低減すると思われる。この脱グリコシル化が免疫系を抑制するとは思われず、IgEの抗原接着能を変化させることもないので、有益な効果は生体の免疫応答に有害な作用を伴わない。むしろ、この脱グリコシル化はアレルギー反応の原因となる有害な後天性過敏症を抑制する。
【0020】
フィブリノペプチドAが熱傷モデルで損傷の重症度を低下させることができることも立証されている(Wormser,Uri特許10/790888)。この特許では、フィブリノペプチドAをヒストンペプチドと併用すると、熱傷及び化学火傷からの損傷を防ぎ、既に発生している熱傷の治癒を速めることが判明した。著者らはこの治癒が主に抗炎症効果により生じると仮定している。これを立証するために、彼らは同一種の他の動物の熱傷からの滲出液で前処理した後、この効果をもたらす滲出液のフラクションを単離した。彼らはフィブリノペプチドAのみを含むフラクションには熱傷重症度を下げる強い保護効果があることを見出した。彼らはこの保護効果の作用メカニズムについて仮説を立てていない。この文献はこの効果のメカニズムが血漿蛋白質の滲出に起因する障害(リソソーム酵素の放出とスーパーオキシドアニオンの生成を含む)を防ぐ血管透過性の低下によると示唆している。
【0021】
フィブリノペプチドBがリソソーム酵素の放出又は線維芽細胞、単球及び好中球からのスーパーオキシドアニオンの生成を刺激せずに、損傷領域への好中球等の遊走を強化できることから、フィブリノペプチドB(及び恐らくA)が創傷治癒を助長できることも立証されている(Senior,et.al.,1986)。好中球に対するフィブリンの化学誘引作用に応答してこれらの物質が放出されると、多発性硬化症に見られる脱髄を生じると仮定される。更に、Gray et.al.(1990)はフィブリノーゲンα及びβ鎖が線維芽細胞の複製を刺激することができ、この作用はフィブリノーゲンを含有する溶液にトロンビンを加えることにより著しく強化されることを立証しており、この作用がこの開裂の産物と関係していることが強く示唆された。
【0022】
数十年前にこれらのペプチドが発見された後にこの分野で情報と研究が継続されなかったことから明らかなように、上記所見はこれらのペプチドを含有する治療薬を開発するために十分であるとは認められていなかった。このように研究が継続されなかった少なくとも一因は、これらの全研究者が炎症応答を抑えながら免疫系を強化するこれらのペプチドの免疫調節及び抗炎症能を認識することができなかった点にある。この免疫調節は慢性感染症の予防を助長し、著しく健康なTh2環境を促進し、治癒を遅らせて慢性創傷をもたらす損傷メカニズムを防ぎながら創傷治癒に必要な細胞の遊走を刺激する。
【0023】
新しい血管の増殖は数種類の異なる細胞が関与する複雑な多元的プロセスである。血管損傷が血流を遮断すると、治癒プロセスにより治癒細胞への血流を回復することが必要になる。このプロセスは損傷細胞及び血栓の分解及び吸収と、損傷欠陥を充填するための線維芽細胞の遊走により開始する。その後、血管細胞が分化して細管を形成し、最終的に血管に成熟する。血管新生は創傷治癒の正常な生理的プロセスに不可欠である。
【0024】
固形腫瘍では漏出血管の周囲にフィブリンが蓄積する(Brown,et.al.1988)。フィブリンは宿主−腫瘍界面で重合し、内皮細胞の接着、遊走、増殖及び分化を助けることにより腫瘍血管新生を促進することができるフィブリン網を形成することも示されている(Bootle−Wilbraham et.al.2001)。このフィブリン網が密になるにつれてこの血管新生促進は停止し、フィブリン網はこれらの内皮細胞の接着、遊走、増殖及び分化に対するバリアとなる。このバリアは免疫細胞が腫瘍細胞を認識・排除するのも妨げる。単に活性化フラグメントフィブリノペプチドA及びBを利用することにより、得られるサイトカインカスケードは腫瘍細胞を免疫攻撃から「防御」せずにこれらの有益な血管新生活性をもつ。この効果はインターロイキン1Bと炎症及び免疫細胞に及ぼすその効果に関する入手可能なデータの外挿により部分的に説明される。創傷床における細胞の遊走と分化はこのサイトカインと所定の他の免疫細胞(マクロファージとリンパ球)の存在により大きく影響される。IL−1Bは創傷床へのこれらの細胞の遊走を強化し、血管新生を生じ易い環境をもたらす。更に、フィブリノペプチドAのこの活性化フラグメントに応答するIL−10の上昇と、炎症カスケードに及ぼすフィブリノペプチドAの他の直接効果により、リソソーム酵素を放出せずに細胞及び他の異物を攻撃する能力を維持しながら、リンパ球、単球、マクロファージ及び単球がこれらの領域に遊走する能力は増進する。
【0025】
血管系の多くの疾患では血管壁にフィブリン沈着が生じる。フィブリノペプチドAがこれらのフィブリン沈着物を移動させ、それ以上沈着しないように防止する能力は全血管疾患に密接な関係がある。これらの疾患としては、限定されないが、冠動脈疾患、黄斑変性症、跛行及びアテローム性動脈硬化症の改善が挙げられる。多数の他の疾患でも、このプロセスは血流を促進し、大半の慢性疾患の転帰を改善する。これらのフィブリン沈着物のこの吸収は任意組織に損傷が生じるときに血管新生プロセスを生じ易い環境をもたらす。この最良の例は糖尿病性足潰瘍であり、大小血管における慢性フィブリン沈着の結果、血流が著しく妨げられ、患部への循環不足により組織を治癒できなくなる。
【0026】
フィブリノペプチドAが血管新生を刺激し、従って、健康な血管環境を刺激できることは従来のどの研究でも立証されていない。現に、Statonら(米国特許出願公開第20040039157号)はプラスミンによる開裂中に産生されたフィブリノペプチドAの1フラグメントが実際に非常に強い抗血管新生活性をもつとしている。Thompson et.al(1992)も中心ノットでプラスミンにより放出されるフィブリノーゲンの一部であるフラグメントEにフィブリノーゲンの血管新生活性を特定したが、初期にはフィブリノーゲンを分解するためにトロンビンを溶液中で使用したため、彼が治療活性があるとした溶液中に存在していたはずである副産物であるフィブリノペプチドAの潜在的治療効果を認めていなかった。
【0027】
フィブリノペプチドA及び/又はBが抗ウイルス剤又は抗生剤であることを立証する報告は発表されていない。フィブリノペプチドAを投与後にPonto Toroウイルスを接種したマウスの生存率の上昇が確認された。1)フィブリノペプチドA約3mgを含有すると予想される(ヤギフィブリノペプチドBと補体C3のフラグメントも含有する)ヤギ血清の濾過血清フラクションと、2)合成フィブリノペプチドAの2種類の異なるフィブリノペプチドAを利用した。これらの物質は直接抗ウイルス剤(予想転帰)ほど良好には機能しなかったが、結果をプラセボ群と比較すると、投与した動物の生存率の改善が明らかになった(図1参照)。この試験では、数種類の項目を分析した。これらの項目としては、肝臓、脾臓及び血清ウイルス力価;血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)定量;感染から3日目の肝臓黄疸に関する肝臓及び肺スコア;毎日体重測定;死亡までの平均日数;並びに総生存率が挙げられる。フィブリノペプチドAを含有する試験品を投与した2群は同等の成績であった。これらの投与群では、マウスの60%が生存したが、プラセボ群では25%しか生存しなかった。この改善はフィブリノペプチドA群の各々で独立して統計的に有意(P値=0.03)であり、これらの群を合算してフィブリノペプチドAによる総改善率を計算すると、統計的有意差は改善された(P値=0.015)。評価した他の疾患項目では観測可能な差が全くなかったにも拘わらず、この生存率上昇が生じ、ウイルスが疾患を生じる能力には差がないが、フィブリノペプチドAの単回投与後に生体が生死にかかわる感染を撃退する能力が増したと判断された。この試験では炎症又はフィブリン沈着の測定は行わなかった。フィブリノペプチドAとリバビリン対照の間には差があるが、この差は統計的に有意ではなかった(P値=0.08)。
【0028】
これらの結果から、フィブリノペプチドAには感染症分野で潜在的治療価値があり、治癒を強化し、症候期間を短縮できることが明らかである。感染症に対する生体の正常な応答の結果、強い前炎症性状態となるので、感染症が治癒された後でもこの状態は持続症状を生じることが多い。フィブリノペプチドAはこれらの症状を緩和することができるため、生体が感染を撃退する能力を妨げずに疾患の症候期を短縮することができる。この効果もフィブリノペプチドAが蛋白質を血管外スペースから移動させることができることに起因すると思われる。
【0029】
サイトカインパネルのシフトの遅延と、この明白なシフトの予想される効果を考慮すると、フィブリノペプチドAにより生じる免疫強化は生得免疫応答よりも適応免疫応答に著しく強い効果がある。この相違は生存率を更に著しく強化しながら疾患の他の全測定値が改善されないことを説明するものである。
【0030】
これらの物質をインフルエンザA H1N1に対して試験するために第2の試験を行った。この試験では、低用量リバビリンを対照とした。各群で全マウスが死亡し、予想よりも重度の感染であったと考えられた。このことからも、フィブリノペプチドAの存在により強化されるはずであった真の適応応答を生じるための時間がなかったことが明らかである。
【0031】
新生物疾患の治療における本発明のペプチドの抗新生物活性は、1)悪性細胞を排除するための免疫系による監視強化、2)癌細胞周囲のフィブリン沈着の防止又は排除、及び3)腫瘍細胞クラスター周囲の膨潤とこの膨潤に起因する症状の緩和の3種類の異なる作用メカニズムに起因する。
【0032】
主にIL−1Bの活性により、Tキラーリンパ球、NKリンパ球及びB細胞の免疫系生成は増加する。この分化により、生体の免疫系はその細胞膜上に発現された異常な蛋白質に基づいて癌細胞を捜し出し、破壊することができる。従って、これらのペプチドは化学療法に対する応答が不良な癌でも治療することができる。この作用メカニズムには既に広がっている癌を攻撃・除去するためには時間が必要になるが、この種の刺激は癌の発生を予防することもできる。
【0033】
血漿フィブリノーゲン値の上昇又は悪性腫瘍細胞自体によるフィブリノーゲンの分泌の結果、悪性腫瘍組織の細胞外マトリックス内へのフィブリノーゲン又はフィブリンの沈着を生じ、これらの因子は細胞外マトリックスの一部としての効果をもち、悪性腫瘍細胞の増殖、侵入及び転移を促進する(Rybarczyk et.al.2000)。従って、これらのペプチドは腫瘍細胞の周囲のマトリックスへのフィブリンの遊走を防ぐことができるため、宿主の免疫系からの癌細胞のこの保護を排除する効果があり、宿主による癌細胞の認識と排除を助長する。この効果に加え、これらのペプチドによる宿主免疫系の刺激は免疫系がこれらの細胞を破壊する能力を強化する。
【0034】
転移性癌の症状の多くは転移による炎症に起因するため、上記抗炎症活性はこれらの症状を軽減する。更に、一般に化学療法に起因する症状はこれらの薬剤の炎症活性とこれらの薬剤による細胞破壊にも起因する。
【0035】
以上の記載から明らかなように、これらのペプチドは、1)自己免疫抗体攻撃に対する炎症応答を弱め、2)自己免疫疾患病態の進行をもたらすフィブリン沈着を抑え、3)自己抗体を産生する細胞を捜し出して破壊するTキラーリンパ球の生成により自己抗体を産生するB細胞を破壊することにより、自己免疫疾患を治療することができる。この監視機能を行う能力の低下は最終的に自己免疫疾患の発症に繋がる。これらのペプチドはこの機能を回復させることができる。IL−1βは所定の疾患の破壊プロセスの進行に関与しているとされているが、この低レベル刺激にこれらの効果はなく、あるいはIL−10刺激の存在はこれらの効果を調節/防止すると思われる。
【0036】
Buckheit(WO/2006/116381)は癌細胞溶解液を接種したヤギに由来する血清フラクションにはこの特定癌に対する抗新生物活性があることを立証した。これは当初はヤギにおける抗体形成に派生すると考えられたが、その後、(免疫グロブリンを含む)高分子蛋白質を欠損させたこれらの動物に由来する血清フラクションにもこの抗新生物活性が維持されていることを立証した。彼らはある種の癌からの癌細胞溶解液を予め投与したヤギに由来する血清フラクションで別種の癌を治療できることも立証した。彼らはこの効果が抗体フラグメントと関係があると仮定した。
【0037】
免疫又はワクチン接種では特定病原体に対する免疫応答を刺激するために不活性化病原性抗原に患者を暴露する。この能動型免疫では一般にこの特定疾患に対する長期保護が得られる。数種類の一般的なウイルスに対する能動免疫を樹立する試みが広く行われているが、これまでのところでは成果が得られていないため、これらの疾患を治療するために受動免疫の利用が研究されるようになっている。この種の治療法は1又は多数の患者又は動物により産生された中和抗体を利用して別の患者又は動物を治療する。従来、各種疾患を治療するために受動免疫が利用されている。数十年前から、免疫不全患者の免疫を強化するためにIgGプールが投与されている。米国人の血液感染発生率の増加とモノクローナル抗体を生産できるようになったことに伴い、この治療法は一般的な軽度免疫系機能不全の治療には好まれなくなっている。抗体プール製剤は現在では暴露量が多いときに免疫系をブーストし、自己免疫疾患の攻撃を阻止するためにごく稀にしか使用されない。
【0038】
これらの要因にも拘わらず、受動免疫は依然として所定のウイルス及び細菌感染症の可能な治療薬として注目されている。しかし、免疫が樹立されている個体又は動物に由来する血清はウイルス又は細菌も含有している可能性があるため、血清の輸送により感染が生じる可能性もある。特定疾患に対する新規抗ウイルス剤及び抗生剤を開発するために、この高度免疫血清がこれらの疾患に罹患しているヒトに対する治療可能性を検討されている。これらのアプローチには超過敏反応の発生と付加感染の可能性という自明の問題があるが、明白な効力がある。最も簡単な形態のこの種の治療は単に宿主動物を特定病原体に暴露した後、動物から血液を抽出し、抗体を含有する血清フラクションを患者に注射することにより実施される。
【0039】
Karpas(米国特許第4,863,730号)はHIVを治療するために、HIV陽性患者の血漿から得られた高力価の異種ヒト中和抗体を含有する製剤を利用した。この方法はウイルス血症を抑え、AIDSの発症を遅らせるのに有益であることが分かったが、臨床応用と大量生産は特に問題がある。
【0040】
Davis(WO97/02839、WO01/60156、02/07760及びUS2002/006022)はHIV感染患者を治療するために、ウイルス溶解液(HIV)又は細菌溶解液(ブドウ球菌、連鎖球菌、大腸菌)をヤギに接種した後に、これらの高度免疫ヤギから得られた血清を注射する方法を利用した。彼の方法と、HIV及び他の感染症を治療するためにこの方法を利用して成功が得られたことは広く発表されている(Washington Post,April 9,2000;Dateline Houstonテレビジョン放送,Sept 18,1998等)。彼はその方法において、先ず血液を凝固させた後に、硫安沈殿とその後の濾過工程(透析又はゲル濾過)を含む標準単離・精製法を利用している。
【0041】
Gelderら(米国特許第6043347号、6258599号、6335017号及び6670181号)も所定のウイルスエピトープを認識すると仮定される中和抗体を作製するために高度免疫ヤギを利用する方法を開発した。彼らはヒトでは中和抗体の産生を誘発できないが、ヤギにより適切に利用される抗原を使用している。GelderはHIV−1MN及びHIV−2NZに由来する精製蛋白質をヤギに注射した後、高度に保存されたHIVエピトープを含むことが分かっている領域に由来する合成ペプチドで免疫を強化することにより、Davisにより記載された方法を複雑にした。この方法により、現在HIVの治療用として臨床試験中の薬剤(HRG214)が製造された。製造業者は更に、彼らの方法によりあるウイルスに暴露した動物から作製したその血清が他の型のウイルス疾患の治療にも有益であると主張している(Vironyxウェブサイト参照)。更に、高分子蛋白質の血清を欠損(全ての全長抗体の除去を含む)させても、効果は失われず、製造の安全性が増す。この効果は残留血清フラクションに抗体フラグメント(特にFabフラグメント)が存在するためであると仮定される。この研究に付随する情報には、30kDを上回る寸法の全蛋白質を除去し、実質的にヤギに接種して得られる全抗体及びフラグメントを排除することが最良であると述べられている。
【0042】
Dalgleish(WO03/004049,WO03/064472)はこれらの方法にはその活性を中和抗体の活性により完全に説明できないものもあることを認めている。そこで、彼はこれらの製剤の抗炎症活性が抗HLA及び/又は抗FAS抗体に依存するのではないかと仮定した。彼はこれらの抗体には正常ヒトHLAに似たウイルスエピトープにより免疫系の過剰刺激を防ぐ抗炎症効果があることを立証した。Dalglishらは、これらの抗HLA及び/又は抗FAS抗体含量の高い血清フラクションが(ウイルス及び細菌両方の)慢性感染症、局所癌(具体的には、肺癌、膵臓癌、肝臓癌、腸癌、リンパ節癌及び皮膚癌)及びHLA値上昇を伴う他の疾患(例えば糖尿病や多発性硬化症)等のHLA値の不適切な上昇を伴う多様な疾患の治療に有用であることを立証した。その研究において、Dalglishらは高度免疫ヤギを利用していない(採血前にヤギに抗原を投与していない)。
【0043】
Tolett(WO04/033665)もHIVに暴露した動物の血清又は血漿の未精製濾液を使用して異種血清混合物がHIVの治療に治療効果があると記載している。血清又は血漿混合物は単に各種動物に由来する血清の未処理混合物であり、精製工程に供していない。
【0044】
Ansley(米国特許第5,219,578号)はIgG血清フラクションを調製するために同様の調製方法を使用しているが、この特許では、ヤギの免疫系の前刺激を行っていない。病原体にまだ出会っていないこれらのヤギの血清を採取し、処理した後、各種動物疾患を予防及び治療するために利用している。これらの疾患としては、各種日和見菌に起因するウマ下部呼吸器疾患(ELRD)B.nodosusの各種血清型に起因するヒツジ及びラムのヒツジ腐蹄症、並びにウシ呼吸器疾患が挙げられる。Ansleyは非免疫ヤギ血清を投与後の動物に免疫系の非特異的活性化が誘導され、顕著な治療効果を生じることを立証した。
【0045】
Hammらはヤギ血清フラクションによりウマ下部呼吸器感染症を治療できることを立証した。
【0046】
Thacker(米国特許第7,358,044号)は免疫系を刺激するために低分子量ペプチドを含有する血清フラクションを使用することができ、致死量の各種病原体で攻撃した動物の生存率を著しく改善できることを立証した。この研究では、病原体にまだ出会っていない動物に由来する血清を薬剤の製造に使用した。この特許は更に、実質的に免疫グロブリンを含まないヤギ血清フラクションを細菌攻撃の24時間前に投与した場合、致死量のPasteurella multocidaで攻撃したニワトリに有意防御を付与できるという研究を引用している。致死量のネズミチフス菌で攻撃したマウスでも同様の結果が認められた。
【0047】
Buckheit(米国特許出願2006/0292162)はウイルス、細菌又は癌細胞からの溶解液を接種した動物に由来する血清又は血漿がこれらの溶解液の起源である疾患を治療する能力をもつことを立証した。この治療効果は全抗体及び高分子蛋白質を本質的に含まない血清フラクションで最大である。
【0048】
血清フラクションの効果を立証するこれらの研究に加え、数件の研究は中和モノクローナル抗体の使用を検討している。これらの研究の結果は期待外れであった(例えば、Burton D R et al.Science(1994)266:1024−1027;Trkola A.et al.J.Virol.(1996)70:1100−1108;Conley A J.et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1994)91:3348−3352参照)。これらの抗体はインビトロでは顕著な効果があると思われたが、インビボでは明白な効果を立証することができなかった(Stiehm,1995)。一般に、(粗血清から調製され、従って、本発明の活性ペプチドを含有する)異種抗体混合物はモノクローナル抗体よりも著しく有益であると思われ、この点からも抗体単独に代わる代替作用メカニズムになると思われる。これらの混合物は更に疾患の治療よりも疾患の予防に有益であると思われる(Montefiori,2001)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0049】
【特許文献1】米国特許第4215109号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第10/790888号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第20040039157号明細書
【特許文献4】国際公開第2006/116381号
【特許文献5】米国特許第4,863,730号明細書
【特許文献6】国際公開第97/02839号
【特許文献7】国際公開第01/60156号
【特許文献8】国際公開第02/07760号
【特許文献9】米国特許出願公開第2002/006022号明細書
【特許文献10】米国特許第6043347号明細書
【特許文献11】米国特許第6258599号明細書
【特許文献12】米国特許第6335017号明細書
【特許文献13】米国特許第6670181号明細書
【特許文献14】国際公開第03/004049号
【特許文献15】国際公開第03/064472号
【特許文献16】国際公開第04/033665号
【特許文献17】米国特許第5,219,578号明細書
【特許文献18】米国特許第7,358,044号明細書
【特許文献19】米国特許出願公開第2006/0292162号明細書
【非特許文献】
【0050】
【非特許文献1】Auf et al.,2001
【非特許文献2】Bacha et al,2004
【非特許文献3】Gorelik et al.,1995
【非特許文献4】Wu and Pruett,1999
【非特許文献5】Scherer et.al,1981
【非特許文献6】Scherer et.al.1979
【非特許文献7】Adams et al.2004
【非特許文献8】Akassoglou,et.al.,2002
【非特許文献9】Masuda et.al.(2001)
【非特許文献10】Senior,et.al.,1986
【非特許文献11】Gray et.al.(1990)
【非特許文献12】Brown,et.al.1988
【非特許文献13】Bootle−Wilbraham et.al.2001
【非特許文献14】Thompson et.al(1992)
【非特許文献15】Rybarczyk et.al.2000
【非特許文献16】Washington Post,April 9,2000
【非特許文献17】Dateline Houstonテレビジョン放送,Sept 18,1998
【非特許文献18】Vironyxウェブサイト
【非特許文献19】Burton D R et al.Science(1994)266:1024−1027
【非特許文献20】Trkola A.et al.J.Virol.(1996)70:1100−1108
【非特許文献21】Conley A J.et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1994)91:3348−3352
【非特許文献22】Stiehm,1995
【非特許文献23】Montefiori,2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0051】
本願に具体的及び広義に記載するように、本発明は医薬組成物、これらの組成物の栄養補助食品、動物血液に由来する哺乳動物血清の生物学的に活性なフラクションの作製方法、並びに前記フラクションから単離製造され、免疫系を調節し、各種条件下で免疫応答を強化するためのペプチドに関する。更に、本発明は合成形態のこれらのペプチドを包含し、更に本発明はこれらの治療及び予防効果を強化するこれらのペプチドの誘導体化と修飾を包含する。
【課題を解決するための手段】
【0052】
本発明の1態様は配列番号1〜5、7〜9、11〜13、15、16もしくは20〜22に記載の配列、フィブリノペプチドAの配列、フィブリノペプチドAを産生する哺乳動物種間で実質的に相同のフィブリノペプチドAの領域の配列、補体C3の配列、又は1以上の保存アミノ酸置換を導入した上記配列のいずれかを含むペプチドを含有する製剤であって、検出可能なフィブリノペプチドBを実質的に含有しない前記製剤に関する。好ましくは、前記製剤は更に、例えば、水、油脂、食用油、脂肪酸、脂質、多糖類、セルロース、グリセリン、グリコール及びその組合せ等の医薬的に許容可能な担体を含有する。好ましい食用油としては、例えば、レモン油、ペパーミント油又はブドウ種子油が挙げられる。好ましい製剤は製剤の生物学的に活性な形態を生理的に有効な濃度で患者の系統内に放出するように、経口、経粘膜、非経口、リンパ又は静脈内投与用に製剤化されている。栄養補助食品である製剤と、生物資源から精製されるか又は合成製造される製剤も好ましい。
【0053】
本発明の別の態様は、フィブリノペプチドA又はそのフラグメントと、医薬的に許容可能な担体を含有する医薬組成物であって、フィブリノペプチドA又はそのフラグメントが治療有効量である前記組成物に関する。好ましくは、治療有効量は0.1mg〜500mgである。治療有効濃度が冠動脈疾患の場合のように患者の血管外スペース内及び内膜下スペース内のフィブリンの沈着を予防し、吸収を刺激する組成物も好ましい。好ましくは、組成物は治療有効濃度で非毒性であり、検出可能なフィブリノペプチドBを実質的に含まない。組成物はヒト又は非ヒトに由来するフィブリノペプチドA又はそのフラグメントを含有することができるが、フィブリノペプチドAの哺乳動物配列が好ましい。フィブリノペプチドAの非ヒト配列を発現する哺乳動物としては、ウマ、ネコ、イヌ、ウシ、ヤギ、ヒツジ及びマウスが挙げられる。
【0054】
本発明の別の態様は、患者の疾患の治療又は予防方法であって、フィブリノペプチドBを含有せず、非ヒト哺乳動物に由来するフィブリノペプチドA又はそのフラグメントと、医薬的に許容可能な担体を含有する医薬組成物を準備する段階と;フィブリノペプチドA又はそのフラグメントが投与後5分以内に患者のリンパ系内で治療有効レベルに達するような用量の前記組成物を前記患者に経粘膜投与する段階を含む前記方法に関する。好ましくは、患者はヒトであり、同様に好ましくは、疾患は血管炎症又は冠動脈疾患である。組成物の好ましい単回用量は活性成分0.1mg〜10mgを含有し、好ましい投与は初期投与とその後の経口及び経粘膜両者の連続投与を含み、連続投与は少なくとも7日間反復しない。好ましくは、フィブリノペプチドA又はそのフラグメントはサイトカインIL1β、IL−10を放出し、IL−1、IL−4又はTNFαを放出しないように患者の細胞を刺激する。別の好ましい側面は例えばフィブリノペプチドB結合剤の投与により、患者のフィブリノペプチドBの活性を抑制する。
【0055】
本発明の別の態様は、患者の血管内のフィブリンの沈着を予防し、沈着したフィブリンを吸収する方法であって、フィブリノペプチドA又はそのフラグメントと医薬的に許容可能な担体を含有する医薬組成物を準備する段階と;フィブリノペプチドA又はそのフラグメントが患者のリンパ系内で治療有効レベルに達するように前記組成物を患者に投与する段階を含む前記方法に関する。好ましくは、患者はヒトであり、フィブリノペプチドA又はそのフラグメントはフィブリノペプチドAの非ヒト哺乳動物配列に由来する。組成物の投与は経粘膜投与によりリンパ系に直接投与することが好ましく、初期投与とその後の連続投与を含み、連続投与は1週間に1回以下とする。
【0056】
本発明の別の態様は、複数成分を含み、粒状物が除去されており、実質的に全成分が約1,200ダルトン〜約1.700ダルトンの分子量範囲内である哺乳動物の血清フラクションに関する。好ましくは、哺乳動物はウマ、ネコ、イヌ、ウシ、ヤギ、ヒツジ又はマウスである。
【0057】
本発明の別の態様は、配列番号6、10、14及び17〜19から構成される群から選択される配列、フィブリノペプチドBの配列、並びにフィブリノペプチドBを産生する哺乳動物種間で実質的に相同のフィブリノペプチドBの領域の配列を含むペプチドを含有しており、検出可能なフィブリノペプチドAを実質的に含有しない製剤に関する。好ましくは、製剤は更に、例えば、水、油脂、食用油、脂肪酸、脂質、多糖類、セルロース、グリセリン、グリコール及びその組合せ等の医薬的に許容可能な担体を含有する。好ましい食用油としては、例えば、レモン油、ペパーミント油又はブドウ種子油が挙げられる。好ましい製剤は製剤の生物学的に活性な形態を生理的に有効な濃度で患者の系統内に放出するように、経口、経粘膜、非経口、リンパ又は静脈内投与用に製剤化されている。栄養補助食品である製剤と、生物資源から精製されるか又は合成製造される製剤も好ましい。
【0058】
本発明の別の態様は、患者の疾患の治療又は予防方法であって、検出可能なフィブリノペプチドAを実質的に含有せず、非ヒト哺乳動物に由来するフィブリノペプチドB又はそのフラグメントと、医薬的に許容可能な担体を含有する医薬組成物を準備する段階と;フィブリノペプチドB又はそのフラグメントが投与後5分以内に患者のリンパ系内で治療有効レベルに達するような用量の前記組成物を前記患者に経粘膜投与する段階を含む前記方法に関する。好ましくは、患者はヒトであり、疾患は例えば、関節炎、クローン病、セリアック病、1型糖尿病、グレーブス病、特発性血小板減少性紫斑病、乾癬、強皮症、全身性エリテマトーデス又は潰瘍性大腸炎等の自己免疫疾患であり、あるいは疾患は例えば、免疫系機能亢進等の免疫調節障害である。好ましい単回用量は活性成分0.1mg〜10mgを含有する。
【0059】
本発明の別の態様は、複数成分を含み、粒状物が除去されており、実質的に全成分が約800ダルトン〜約2,300ダルトンの分子量範囲内である哺乳動物の血清フラクションに関する。好ましくは、哺乳動物はウマ、ネコ、イヌ、ウシ、ヤギ、ヒツジ及びマウスから構成される群から選択される。
【0060】
本発明の他の態様及び利点は以下の記載に明記すると共に、以下の記載から想到することができ、あるいは本発明の実施から認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】Ponto Toro感染マウスの生存率に及ぼす天然及び合成形態のフィブリノペプチドAの効果。活性化血清フラクションはヤギフィブリノペプチドA及びBと、補体C3のフラグメントを含む。
【図2】急性実験的アレルギー性脳脊髄炎マウスモデルにおけるペグ化及び非ペグ化合成フィブリノペプチドAの効果。
【図3】本発明のウシ血清フラクション態様のHPLCトレース。21.73及び22.84のピークをいずれもSERIM Aとし、22.59及び23.28のピークをSERIM Bとし、20.13秒の小ピークをSERIM Cとした。
【図4】本発明のウマ血清フラクション態様のHPLCトレース。21.32及び18.30のピークをSERIM Aとし、14.56及び23.53のピークをSERIM Bとし、11.62及び11.84のピークをSERIM Cとした。
【図5】本発明のヤギ血清フラクション態様のHPLCトレース。ウマ血清フラクションは最大相対量のウマSERIM Aを含有する(17.86のピーク)。この検体では他のペプチドは同定されなかったが、蛋白質データベースを調べると、ウマデータベースに他の2個のSERIMのシーケンシング情報はない。
【図6】本発明のヒト血清フラクション態様のHPLCトレース。図面から明らかなように、ヒトサンプルは動物サンプルよりも多くのペプチドを含んでいる。しかし、サンプルはやはりペプチド質量の大部分と相関する。29.46及び20.96のピークはいずれもペプチドAに対応する。25.27及び30.41のピークはペプチドBに対応し、19.16のピークはペプチドCに対応する。
【発明を実施するための形態】
【0062】
人体には重度の外傷後に治癒するという驚くべき能力がある。重度外傷者と軽度外傷者の傷害に対する応答の相違を検討すると、1)重度外傷者は免疫系応答が著しく強く、2)重度外傷者の初期傷害段階では腫脹が相対的に最小であり、3)重度外傷は麻痺作用を生じ、重度外傷者は軽度外傷者に比較して疼痛感覚が弱いという3つの相違がある。医学文献と現在の医学パラダイムはこれらの所見を「ストレス応答」とこの応答の一部としての内因性エンドルフィンの放出に結び付けている。このような傷害中に放出される1群のペプチドは驚くべきことにこのストレス応答の効果の多くに関係があることが発見された。これらのペプチドを慢性疾患で利用すると、この応答は患者に大きな効果がある。
【0063】
本願では、分子として従来同定されているが、サイトカイン活性を示されていないものも含めてペプチドの多数のサイトカイン活性を同定する。更に、従来では生物学的に活性な物質として認められなかった所定の分子も本願では特性決定する。所定のペプチドの配列は確定されている場合もあるが、これらの蛋白質の開裂と生物学的に活性なペプチドの放出については従来記載されていない。これらのペプチドは、1)血液凝固カスケードの一部として放出されるものと、2)補体系の一部として放出されるものの2種類に分けられる。血液凝固カスケードの一部として放出されるペプチドの多くは同定されているが、サイトカインの作用メカニズムは従来記載又は確認されていない。補体系のペプチドは親蛋白質からの開裂として従来記載されておらず、サイトカインとしてのその活性も従来記載されていない。本願の記載はこれらのペプチドが外皮の断裂に応答して放出されることを明らかにする。血管壁を損傷するに十分な重度の殆ど全ての病的損傷はこれらのペプチドの同様の放出を生じるであろう。
【0064】
血液凝固カスケードの開始中には凝血塊の骨組を形成する蛋白質の活性化で多くの低分子ペプチドが放出される。これらの分解生成物は常に比較的不活性なペプチドとみなされているが、血液凝固カスケード以外の何らかの副次的な活性も含むと考えられている。これらのペプチドは更に再循環するために十分長期間血流中に存在し、半減期はほんの数分である。しかし、他の生理的プロセスにおける各種系統間の複雑な相互作用を考慮すると、血液凝固の必要は一般に病原体暴露に一致するので、血液凝固カスケードからの分解生成物は免疫系をアップレギュレートすることができる。また、サイトカイン活性は通常では非常に低用量で生じる。体内半減期が非常に短いにも拘わらず、少量のこれらのペプチドが顕著な効果をもつことは意外である。予想外であるが、これは血管又は外皮の壁に断裂がある場合に免疫系のアップレギュレーションが必要になるためであると考えられる。
【0065】
本発明のペプチドはフィブリン及び関連物質の沈着を阻止するというこの能力をもつ。これはサイトカインカスケードの免疫調節及び刺激の結果の直接効果又は一部であるが、フィブリノペプチドAが直接又は間接的にフィブリン沈着を調節するという事実は、急性及び慢性両者の疾患の処置に大きな進展をもたらす。更に、補体系はこの同一種の損傷とその後の感染物質暴露に応答して活性化される。従来同定されていないペプチドが補体カスケードのC3蛋白質から放出され、この免疫調節活性に寄与する。
【0066】
本発明の1態様は配列番号1〜5、7〜9、11〜13、15、16又は20〜22に記載の配列を含むペプチドを含有する製剤に関する。フィブリノペプチドA又は補体C3の配列、及び夫々フィブリノペプチドA又は補体C3を産生する哺乳動物種間で実質的に相同のフィブリノペプチドA又は補体C3の領域の配列を含むペプチドも包含する。前記配列はヒト又は非ヒト起源に由来することができる。本発明は上記配列のいずれかの1以上の保存アミノ酸置換を含む配列にも関する。好ましくは、製剤は検出可能なフィブリノペプチドBを実質的に含有しない。好ましくは、製剤は更に、例えば、水、油脂、食用油、脂肪酸、脂質、多糖類、セルロース、グリセリン、グリコール及びその組合せ、並びにWO/010757、発明の名称「医薬組成物(Pharmaceutical Composition)」、発明者J.Arch and N.Bowring(本願に援用)に開示されているような多数の慣用担体のいずれか等の医薬的に許容可能な担体を含有する。好ましい食用油としては、例えば、レモン油、ペパーミント油もしくはブドウ種子油、又は植物に由来する他の天然油脂及び脂肪酸が挙げられる。好ましい製剤は製剤の生物学的に活性な形態を生理的に有効な濃度で患者の系統内に放出するように、経口、経粘膜、非経口、リンパ又は静脈内投与用に製剤化されている。生物資源から精製されるか又は合成製造される製剤も好ましく、いずれもペプチド配列自体を含む。本発明はこれらのペプチドをコードする核酸配列も包含する。
【0067】
本発明の別の態様は、栄養補助食品である上記及び以下に記載する製剤である。本発明の製剤はヒト及び動物摂取に安全であり、全有効用量で非毒性であり、内因性内毒素又は他の有害物質もしくは汚染物質を含有しない。栄養補助食品として投与する場合には、純形態の製剤として経粘膜投与することが好ましく、舌下等の口腔粘膜に直接吸収できるように、脂肪酸、糖もしくは多糖、油脂又は他の担体物質に懸濁するとより好ましい(例えば液剤、ゲル、ペースト、散剤、錠剤又はピル)。栄養補助食品として製剤を患者に投与することもできるし、飲食品等で他の成分と配合することもできる。
【0068】
本発明の別の態様は、フィブリノペプチドA又はそのフラグメントと、医薬的に許容可能な担体を含有する医薬組成物であって、フィブリノペプチドA又はそのフラグメントが治療有効量である前記組成物に関する。好ましくは、治療有効量は0.1mg〜500mgである。治療有効濃度が冠動脈疾患の場合のように患者の血管外スペース内及び内膜下スペース内のフィブリンの沈着を予防し、吸収を刺激する組成物も好ましい。好ましくは、組成物は治療有効濃度で非毒性であり、検出可能なフィブリノペプチドBを実質的に含まない。組成物はヒト又は非ヒトに由来するフィブリノペプチドA又はそのフラグメントを含有することができるが、フィブリノペプチドAの哺乳動物配列が好ましい。フィブリノペプチドAの非ヒト配列を発現する哺乳動物としては、ウマ、ネコ、イヌ、ウシ、ヤギ、ヒツジ及びマウスが挙げられる。
【0069】
本発明の別の態様は、患者の疾患の治療又は予防方法であって、フィブリノペプチドA又は補体C3又はいずれかのフラグメントと、医薬的に許容可能な担体を含有する医薬組成物を準備する段階を含む前記方法に関する。好ましくは、組成物は検出可能な量のフィブリノペプチドBを含有せず、フィブリノペプチドA又は補体C3又はいずれかのフラグメントは非ヒト哺乳動物に由来し、更に前記方法はフィブリノペプチドA又は補体C3又はいずれかのフラグメントが投与後5分以内に患者のリンパ系内で治療有効レベルに達するような用量の前記組成物を前記患者に経粘膜投与する段階を含む。好ましくは、患者はヒトであり、同様に好ましくは、疾患は血管炎症又は冠動脈疾患である。組成物の好ましい単回用量は活性成分0.1mg〜10mg、より好ましくは0.1〜5mgを含有し、1mg未満がより好ましい。投与は周期的に行うことができ、好ましい投与は単回有効用量を数日間投与する初期投与後、1日置き、より好ましくは数日置き、より好ましくは1週間置き又はそれ以下の頻度で投与する。全用量の投与は経口及び舌下等の経粘膜が好ましい。好ましくは、フィブリノペプチドA又はそのフラグメントはサイトカインIL1β、IL−10を放出し、IL−1、IL−4又はTNFαを放出しないように患者の細胞を刺激する。別の好ましい側面は例えばフィブリノペプチドB結合剤の投与により、患者のフィブリノペプチドBの活性を抑制する。結合剤としては、フィブリノペプチドBに特異的なリガンド、抗体又は抗体フラグメントが挙げられ、好ましくは非毒性であり、フィブリノペプチドBをフィブリノペプチドAの活性に比較して相対的に不活性にする1種以上の物質(例えば液体又は化学物質)を含む。
【0070】
本発明の別の態様は、フィブリンの沈着を予防すると共に、患者の血管及び他の体内領域内に沈着したフィブリンを吸収する方法に関する。これらの方法は、フィブリノペプチドA又は補体C3又はいずれかのフラグメントと、医薬的に許容可能な担体を含有する医薬組成物を準備する段階と;フィブリノペプチドA又は補体C3又はいずれかのフラグメントが患者のリンパ系内で治療有効レベルに達するように組成物を患者に投与する段階を含む。好ましくは、患者はヒトであり、フィブリノペプチドA又は補体C3又はいずれかのフラグメントは同一分子の非ヒト哺乳動物配列に由来する。組成物の投与は経粘膜投与によりリンパ系に直接投与することが好ましく、初期投与とその後の連続投与を含み、連続投与は数日置きに1回以下(例えば1週間に1回又は1カ月に1回)とする。
【0071】
本発明の別の態様は、複数成分を含み、粒状物が除去されており、実質的に全成分が規定分子量範囲内である哺乳動物の血清フラクションに関する。分子量による血清の分画方法は周知であり、分子量カットオフ膜による透析、遠心及び塩分画が挙げられる。分子量範囲は好ましくは3,000ダルトン未満、より好ましくは約5800ダルトン〜約2,500ダルトン、より好ましくは約1,000ダルトン〜約2,000ダルトン、より好ましくは約1,200ダルトン〜約1,800ダルトン、より好ましくは約1,400ダルトン〜約1,800ダルトンである。好ましくは、哺乳動物はウマ類(ウマ)、イヌ類(イヌ)、ネコ類(類)、ウシ類(例えば雌牛、畜牛又は雄牛)、ヤギ類(ヤギ)、ヒツジ類(ヒツジ又はラム)、又はマウス類(マウス)であり、あるいはフィブリノペプチドA又は補体C3を産生する適切な任意哺乳動物とすることができる。
【0072】
本発明の別の態様は、配列番号6、10、14もしくは17〜19の配列、フィブリノペプチドBの配列、又はフィブリノペプチドBを産生する哺乳動物種間で実質的に相同のフィブリノペプチドBの領域の配列を含むペプチドを含有する製剤に関する。好ましくは、製剤は検出可能なフィブリノペプチドAを実質的に含有しない。好ましくは、製剤は更に、例えば、水、油脂、食用油、脂肪酸、脂質、多糖類、セルロース、グリセリン、グリコール及びその組合せ、又はWO/010757、発明の名称「医薬組成物(Pharmaceutical Composition」、発明者J.Arch and N.Bowring(本願に援用)に開示されているような別の慣用担体等の医薬的に許容可能な担体を含有する。好ましい食用油としては、例えば、レモン油、ペパーミント油もしくはブドウ種子油、又は他の任意植物性もしくは果実性油脂もしくは脂肪酸、又は植物性油脂、多糖類もしくは脂肪酸が挙げられる。好ましい製剤は製剤の生物学的に活性な形態を生理的に有効な濃度で患者の系統内に放出するように、経口、経粘膜、非経口、リンパ又は静脈内投与用に製剤化されている。好ましい投与は経口、舌下である。生物資源から精製されるか又は合成製造される製剤も好ましい。本発明はこれらのペプチドをコードする核酸配列も包含する。
【0073】
本発明の別の態様は、栄養補助食品である上記及び以下に記載する製剤である。本発明の製剤はヒト及び動物摂取に安全であり、全有効用量で非毒性であり、内因性内毒素又は他の有害物質もしくは汚染物質を含有しない。栄養補助食品として投与する場合には、純形態の製剤として経粘膜投与することが好ましく、舌下等の口腔粘膜に直接吸収できるように、脂肪酸、糖もしくは多糖、油脂又は他の担体物質に懸濁するとより好ましい(例えば液剤、ゲル、ペースト、散剤、錠剤又はピル)。栄養補助食品として製剤を患者に投与することもできるし、飲食品等で他の成分と配合することもできる。
【0074】
本発明の別の態様は、患者の疾患の治療又は予防方法であって、検出可能なフィブリノペプチドAを実質的に含有せず、非ヒト哺乳動物に由来するフィブリノペプチドB又はそのフラグメントと、医薬的に許容可能な担体を含有する医薬組成物を準備する段階と;フィブリノペプチドB又はそのフラグメントが投与後5分以内に患者のリンパ系内で治療有効レベルに達するような用量の前記組成物を前記患者に経粘膜投与する段階を含む前記方法に関する。好ましくは、患者はヒトであり、疾患は例えば、関節炎、クローン病、セリアック病、1型糖尿病、グレーブス病、特発性血小板減少性紫斑病、乾癬、強皮症、全身性エリテマトーデス又は潰瘍性大腸炎等の自己免疫疾患であり、あるいは疾患は例えば、免疫系機能亢進等の免疫調節障害である。好ましい単回用量は活性成分0.1mg〜10mg、又はより好ましくは0.1mg〜5mg、又はより好ましくは0.1mg〜1mgを含有する。
【0075】
本発明の別の態様は、複数成分を含み、従来公知の方法で粒状物が除去されており、実質的に全成分が約800ダルトン〜約2,700ダルトンの分子量範囲内である哺乳動物の血清フラクションに関する。好ましくは、成分は約1,000ダルトン〜約2,500ダルトン、より好ましくは約1,200ダルトン〜約1,800ダルトンの分子量範囲内である。好ましくは、哺乳動物はウマ、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ヒツジ及びマウスから構成される群から選択されるが、フィブリノペプチドBを産生する適切な任意哺乳動物とすることができる。
【0076】
天然又は合成フィブリノペプチドAは血管外スペースにおけるフィブリン沈着(このスペースにおけるフィブリン沈着とこのスペースからのフィブリン沈着物の移動の両方)を調節し、それにより疾患の進行を抑えると共に、この沈着に起因する症状を改善する。従って、本発明は内膜下スペースにおけるフィブリン沈着(このスペースにおけるフィブリン沈着とこのスペースからのフィブリン沈着物の移動の両方)を調節し、それにより疾患の進行を抑えると共に、この沈着に起因する症状を改善するための天然又は合成フィブリノペプチドAに関する。
【0077】
治療研究ではフィブリノペプチドA及びBの組合せが利用されている。しかし、これらの研究はペプチド間の活性を区別していない。更に、従来発表されている研究の殆どは種特異的フィブリノペプチドを使用しているため、異種間効果を立証することができない。本願では免疫調節剤としてのフィブリノペプチドAの活性を明らかにする。本願ではペプチドのC末端で異種間相同性の高い領域も明らかにする。
【0078】
フィブリノペプチドA及びBは強い直接抗炎症応答により血管透過性変化の重度を軽減することにより、主にEAE発症の免疫的非特異期に作用する。この応答は疾患プロセスにおいて急性炎症応答を改善する。従って、この種の応答は自己免疫攻撃の初期症状を著しく軽減するとは予想されないが、時間が経つにつれて攻撃を阻止し、攻撃からの治癒を強化すると予想される。
【0079】
フィブリノペプチドAはフィブリン及び血管外フィブリンの沈着と吸収を調節する。上記手法のいずれかにより血清を取得するための方法として記載されている方法によると、本発明のペプチドを多く含む血清が得られる。これらの製剤の大半では凝固阻害剤を利用していないので、ドナー動物又は患者から採血直後に凝固が自然に生じ、本発明の目的であるペプチドの一部又は全部が放出される。放出後、これらのペプチドは更に天然プロセシングを受け、活性なペプチドフラグメントを形成する。これらの特許に記載されている濾過方法はこれらの低分子ペプチドを血清から除去しないはずであり、フィブリノペプチドA及びBの効力は立証されているので、これらのペプチドはこれらの全製剤で認められる治療効果の一部又は全部を担っている。
【0080】
多くの慢性疾患は疾患進行の重要な病理部分としてフィブリン沈着物の存在を示す。これらの沈着物を防ぎ、既存沈着物を除去することはこれらの疾患の治療の重要なターゲットである。本願で評価するように、外傷に応答して放出されるこれらの同一ペプチドの効果は、これらのペプチドがフィブリンの沈着を防止又は遅延させ、フィブリンの吸収を刺激できることを立証する有意義なデータであった。これらのペプチドはフィブリンの活性化で時差的に放出される。開裂はフィブリンの沈着を阻害するフィブリノペプチドAを活性化させた後、フィブリンの沈着を促進するフィブリノペプチドBを活性化させる。しかし、併用すると、創傷修復が生じる。
【0081】
好ましくは3kD未満の寸法の物質のみを保持するようにサンプルを濾過した後に、質量分析法を利用して血清から1群の低分子ペプチドを単離した。本発明のこれらのペプチドの大部分は血液凝固カスケードの副産物であるが、治療剤として従来利用されていない。これらのペプチドの治療活性は、1)フィブリン沈着と既存フィブリン沈着物の吸収の調節、2)慢性疾患に見られる受動方式から能動監視方式への免疫系の転換、及び3)抗炎症活性の3種類に分けられる。
【0082】
血管外スペース内へのフィブリンの沈着の調節は、狼瘡、多発性硬化症、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ及びアルツハイマー病を含む各種疾患の治療の重要な潜在的ターゲットとして認められている。これらの疾患(及び他の多くの疾患)において、血管外スペース内へのフィブリンの沈着は疾患進行における重要なイベントである。このフィブリン沈着は特定疾患の原因ではないかもしれないが、このフィブリン沈着時に開始するプロセスは進行とこれらの疾患に起因する組織破壊に不可欠の病理要素である。この沈着は更に生体が損傷組織を治癒させるために通常利用するメカニズムを妨害する。これらのペプチドがこのフィブリン沈着を阻止できることは潜在的治療法として認められていなかった。更に、慢性フィブリン沈着はこれらの組織でフィブリンの存在に起因するカスケード効果により組織の正常治癒を妨げることがよく知られている。本発明のペプチドは更にこれらのフィブリン沈着物の吸収を誘発し、慢性疾患で自然治癒プロセスを再開させる。
【0083】
インターロイキン1B及び10の安定した上昇と、インターロイキン13、5、6及び8並びにTNF−αの変動性の上昇を実証するデータに表されるように、本発明のペプチドの注射により誘発される免疫カスケードはこの種のTh1/Th2組合せ応答を実証している。これらのインターロイキンは免疫細胞(マクロファージ、単球及びリンパ球)に由来する。
【0084】
フィブリノペプチドA及びBのペプチドの抗炎症応答は最初に1978年から刊行物に明記された(Ruhenstroth−bauer,et.al.米国特許第4,215,109号)。しかし、この活性に注目したその後の報告は非常に不足しており、特に実験的アレルギー性(自己免疫)脳脊髄炎モデルにおけるその後の研究発表が不足している。更に、上記著者らは抗炎症応答のメカニズムを明記しておらず、これらのペプチドの免疫刺激能についても明記していない。本願に示すように、この抗炎症応答の一因は本発明のペプチドがTh2サイトカインIL−10の放出を刺激できる点にある。この応答は急性疾患で重要であるが、急性疾患モデルは慢性疾患でこの応答の大きな効果を示すように設計されていない。フィブリノペプチドA単独で、種々の用量のペグ化フィブリノペプチドAを利用して3種類の試験を行った。この修飾はフィブリノペプチドAの測定可能な活性を低下させることが判明し、このペプチドの活性化ではフィブリノペプチドAの分解が重要であることが明らかになった。
【0085】
フィブリノペプチドA及びBのこの抗炎症性に加え、これらのペプチドにより開始されるカスケードは前炎症性サイトカインIL−1Bの産生も増加する。IL−1Bは炎症応答の重要なメディエーターであり、細胞増殖、分化及びアポトーシス(誘導細胞死)を含む各種細胞活動に関与している。IL−1は恐らくIL−2放出を誘導することにより胸腺細胞増殖及び分化を刺激するが、本発明者らの試験でIL−2の上昇は認められていない。IL−1は更にB細胞成熟及び増殖を刺激し、滑膜細胞から線維芽細胞成長因子とコラゲナーゼ(他のT及びBリンパ球の刺激剤)の放出を誘導する。IL−1はプロスタグランジンの放出を刺激できることから内因性パイロジェンとみなされている。これらのペプチドに見られるIL−1Bの増加は発熱応答を誘導するために十分であるとは思われないが、免疫系に及ぼす総合効果は極めて大きい。発熱性の低下は同時に刺激されるIL−10の抗炎症活性も一因であると思われる。
【0086】
外皮は感染攻撃に対する防御の最前線であるため、この外皮の断裂に応答して免疫調節カスケードが生じる。この種の断裂に応答するこれらのペプチドの放出はこの免疫調節活性の少なくとも有意部分を構成する。この免疫調節活性の活性成分を同定する方法において、これらのペプチドの生物学的に活性な形態は実際には従来記載されているペプチドのフラグメントであり、これらのフラグメントは全長ペプチドよりも著しく活性である。フィブリンを活性化させるために、フィブリノペプチドA及びBはフィブリノーゲンサブユニットAα及びBβのカルボキシル末端から開裂される。その後、フィブリノーゲンA及びBは更に生理的活性化工程を受け、強力な免疫調節剤となる。これらのペプチドには多くの弱い効果が認められているが、本願に開示する有意義又は実現可能な治療選択肢とみなされているものはない。
【0087】
外皮の断裂に対する応答又は感染性損傷に対する応答としての上記血液凝固因子の放出に加え、免疫系が異常細胞を捜し出して破壊する能力を強化する免疫カスケードが開始する。この免疫系刺激は生得応答と適応応答の2つの側面に分けることができる。異常細胞が体内に導入すると、生得免疫系は損傷を回避するように迅速に応答する。この応答の一部が感染菌を攻撃・破壊するように系統を活性化する補体カスケードの活性化である。これと共に、試験した全哺乳動物に由来する血清フラクションには補体C3蛋白質の従来同定されていないフラグメントが常に存在しており、この分子がこれらの血清フラクションの免疫調節活性に関与していると思われる。この蛋白質は免疫系の生得部分と適応部分の両方の全般的刺激を生じる。
【0088】
このペプチドを放出する開裂部位を示すものは従来確認されておらず、また、文献はこのフラグメントが生物活性をもつことも認めていない。このフラグメントはペプチドC3a〜gが脱離された後に残っているC3蛋白質の部分のアミン末端から脱離される。残りのフラグメントを補体C3α’鎖フラグメント2と呼ぶ。このフラグメントはC3fが開裂された後に残っている蛋白質である補体C3蛋白質のアミノ酸1321〜1663から構成され、補体カスケードに関与する。C3f(アミノ酸1304〜1320)の開裂後、付加的な酵素活性が生じることを本願では立証する。このペプチドの開裂は種依存性であり、アミン末端には明白に相同な配列をもつが、カルボキシ末端では相違する。カルボキシ末端の置換は他の哺乳動物に比較してヒトの開裂部位を変化させたが、この変化は分子の活性に影響を与えない。ヒト血清では、このペプチドはC3蛋白質の配列1321〜1336を構成し、SEETKENEGFTVTAEGK(配列番号16)の配列をもつ。確認された他の種では、この配列は1329位のグリシンがアルギニンで置換され、更に開裂部位の変化をもたらす置換を1333位に含む。従って、これらの置換の結果、大半の他の哺乳動物では、配列SEETKENERFTV(配列番号7)の短縮型ペプチドの開裂を生じる。種間の相同性は若干変動するため、配列ナンバリングも種間で変動する。このため、このペプチドの位置のアミノ酸ナンバリングは変化する。しかし、各種において、このペプチドは補体C3fの開裂後に次のセグメントとして放出される(C3gは配列C3fよりも更にアミン末端側に位置する)。上記の軽微な例外を除き、後者配列は補体C3蛋白質の全長配列が同定されている全種で強い相同性をもつ。いずれの場合も、この付加的開裂により有意免疫系刺激を含むフラグメントが分離される。この刺激は生得免疫系と適応免疫系の両方の活性を強化するため、著しく強い活性が得られる。
【0089】
免疫系の無制限な慢性刺激は他の免疫系刺激の多くで立証されているように長期副作用の危険が大きいが、この分子をフィブリノペプチドAの活性化フラグメントの抗炎症活性と併用すると、併用により免疫系が著しく強化され、フィブリノペプチドAの抗炎症活性は予想される副作用をほぼ完全に抑制する。これらの所見に加え、imf−C3のアミン末端とaf−FAのカルボキシ末端を構成する配列から構成される合成ペプチドはこの二重作用をもつ。
【0090】
このフラグメントの有用性を裏付けるデータの信憑性は、アミノ酸1320のアルギニンをグルタミンで置換する公知置換がC3低補体血症(C3アロタイプC3’F02’)をもたらすという事実により増す(Watanabe et al.,1993)。開裂部位を変化させると予想されるこの置換は免疫系に有意変化を生じ、病的攻撃に対する応答が不良になるため、正常免疫応答にはこの分子の存在が不可欠であることが明らかである。この分子が生得免疫系を刺激できることを立証するためにこのデータを更に外挿することもできる。
【0091】
補体C3の他の蛋白質フラグメントの各々が補体カスケードに関与しているように、この分子は明白に関与していない。治療用血清フラクションの一部として、この分子は免疫系の刺激により各種病理プロセスに多大な効果があることが本願では判明した。補体カスケードの慣習的命名法を利用すると、この蛋白質は補体C3hとなる。この蛋白質は補体カスケードに関与していないので、C3の免疫調節フラグメント(imf−C3)と呼び、補体カスケードの外側にあるこのペプチドの活性の種類を明確にする。
【0092】
本発明は治療用血清成分の獲得又は新規合成もしくは発酵法による血清成分中の活性ペプチドの合成と、感染性、炎症性、新生物及び自己免疫疾患の宿主を治療するためのこれらのペプチドの利用を包含する。本発明の1態様は免疫系で応答を活性化するために血液凝固カスケードからの生理的に活性化された分解生成物を利用する治療方法に関する。本願に具体的に記載しない他の動物の血清から同様に誘導又は合成されたペプチドは、他の動物に由来する相同ペプチドも同一治療活性をもつことを示すために十分な相同性と同様の特徴を含むので、記載する特定ペプチドに加えてこれらのペプチドも包含する。
【0093】
本願に具体的及び広義に記載するように、本発明は医薬組成物と、免疫系を調節し、免疫応答を強化し、炎症反応を抑制し、各種条件下で他の哺乳動物の血管外フィブリンの慢性沈着を低減するための、動物血液に由来する哺乳動物血清の生物学的に活性なフラクションの作製方法に関する。本発明により作製される生物学的に活性なフラクションは多様な新規治療薬となるペプチドを単離する。本発明の1態様は、例えば、血清の生物学的に活性なフラクションを作製することにより前記ペプチドを提供する方法であって、(i)動物から採血する段階と;(ii)前記血液から血清を単離する段階と;(iii)これらのペプチドを含むフラクションを単離する段階を含む。動物は哺乳動物とすると更に好ましいが、家禽等の他の動物の血清にも同一の特徴が認められる。これらのペプチドを含む血清フラクションを作製するための好ましい方法としては、限定されないが、限外濾過、HPLC分離、他の形式のクロマトグラフィー、接線流濾過、透析、遠心、電気泳動及び他の方法が挙げられる。
【0094】
粗血清でも治療効果が得られるが、宿主動物に与えられる他の分子を制限するように血清を濾過することが好ましい。これにより6kDを上回る分子を除去することが理想的であり、3kDを上回る分子を除去することが好ましい。本発明の方法の好ましい態様において、血液は動脈血及び/又は静脈血である。別の好ましい態様において、前記方法は更に前記血液を生理的に又はトロンビンのインビトロ添加によりトロンビンの共存下でインキュベートする段階を含む。前記方法は好ましくは前記血清の凍結乾燥段階を含み、使用時近くまで血清フラクションを−80℃で凍結保存する。あるいは、凍結乾燥血清フラクションを適切な溶液に懸濁し、免疫系の正常機能を改善するために栄養補助食品として経口投与することもできる。
【0095】
治療
1)本発明の別の側面は、本発明の方法に従って作製可能であるか又は本発明の血清フラクションを含むように何らかの方法で作製された生物学的に活性な血清フラクションである。
2)本発明の別の側面は、宿主動物の利用を助長するための医薬グレードの他の各種添加剤のいずれかと共に本発明によるこの生物学的に活性な血清フラクションを含有する医薬製剤としてのこの血清フラクションの利用である。これらの添加剤としては、増量剤、担体、結合剤、吸着剤、防腐剤、希釈剤等が挙げられる。本発明の医薬製剤の好ましい態様において、製剤は皮下又は筋肉内注射用溶液として製剤化される。他の態様としては、ゲル、ローションもしくはパッチ等の局所製剤、舌下溶液もしくは製剤、座剤、ロゼンジ、カプセル剤又は錠剤等としての本発明の使用が挙げられる。
3)本発明の別の側面はヒト及び動物用の急性細菌感染症の治療用医薬の製造における本発明の生物学的に活性な血清フラクション又は本発明の医薬製剤の使用である。
4)本発明の別の側面はヒト及び動物用の慢性細菌感染症の治療用医薬の製造における本発明の生物学的に活性な血清フラクション又は本発明の医薬製剤の使用である。
5)本発明の別の側面はヒト及び動物用の細菌感染症の予防用医薬の製造における本発明の生物学的に活性な血清フラクション又は本発明の医薬製剤の使用である。
6)本発明の別の側面はヒト及び動物用の急性ウイルス感染症の治療用医薬の製造における本発明の生物学的に活性な血清フラクション又は本発明の医薬製剤の使用である。
7)本発明の別の側面はヒト及び動物用のHIV、HCV、HBV、HSV、HPV等の慢性ウイルス感染症の治療用医薬の製造における本発明の生物学的に活性な血清フラクション又は本発明の医薬製剤の使用である。
8)本発明の別の側面はヒト及び動物用の上記のようなウイルス感染症の予防用医薬の製造における本発明の生物学的に活性な血清フラクション又は本発明の医薬製剤の使用である。
9)本発明の別の側面は寄生虫症の治療用医薬の製造における本発明の生物学的に活性な血清フラクション又は本発明の医薬製剤の使用である。
10)本発明の別の側面はヒト及び動物用の寄生虫症の予防用医薬の製造における本発明の生物学的に活性な血清フラクション又は本発明の医薬製剤の使用である。
11)本発明の別の側面はヒト及び動物用の関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、混合結合組織病、シェーグレン病、乾癬、強直性脊椎炎及び反応性関節炎、ベーチェット症候群、血管炎、サルコイドーシス、多発性漿膜炎、アミロイドーシス、クローン病、潰瘍性大腸炎等を含む自己免疫疾患の治療用医薬の製造における本発明の生物学的に活性な血清フラクション又は本発明の医薬製剤の使用である。
12)本発明の別の側面はヒト及び動物用の脱髄疾患(多発性硬化症等)、変性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病等)、ニューロパチー(糖尿病性、特発性、中毒性等)及び他の慢性神経痛(RSD等)を含む神経疾患の治療用医薬の製造における本発明の生物学的に活性な血清フラクション又は本発明の医薬製剤の使用である。
13)本発明の別の側面はヒト及び動物用の癌、肉腫、白血病及びリンパ腫を含む新生物疾患の治療用医薬の製造における本発明の生物学的に活性な血清フラクション又は本発明の医薬製剤の使用である。
14)本発明の別の側面はヒト及び動物用の筋骨格系の炎症症状の治療用医薬の製造における本発明の生物学的に活性な血清フラクション又は本発明の医薬製剤の使用である。
15)本発明の別の側面はヒト及び動物用の高度免疫症状の治療(例えばアナフィラキシーの進行の緩和や季節性アレルギーの強度の低下)用医薬の製造における本発明の生物学的に活性な血清フラクション又は本発明の医薬製剤の使用である。
16)本発明の別の側面はヒト及び動物用の慢性圧力潰瘍、糖尿病性足潰瘍等を含む慢性創傷の治療用医薬の製造における本発明の生物学的に活性な血清フラクション又は本発明の医薬製剤の使用である。
17)本発明の別の側面はヒト及び動物用の他の形態の慢性疼痛の治療用医薬の製造における本発明の生物学的に活性な血清フラクション又は本発明の医薬製剤の使用である。
18)本発明の別の側面は、宿主動物の利用を助長するための食品グレードの他の各種添加剤のいずれかと共に本発明によるこの生物学的に活性な血清フラクションを含有する栄養補助食品製剤としてのこの血清フラクションの利用である。これらの添加剤としては、増量剤、担体、結合剤、吸着剤、防腐剤、希釈剤等が挙げられる。
【0096】
本発明の使用の別の好ましい態様において、医薬はこれらのペプチドの合成により合成製造される。これらの合成ペプチドは哺乳動物血清の濾過フラクションと同一の生物活性をもつ。この態様において、本発明は配列番号1〜21の配列とその保存置換配列及び修飾配列を含むペプチドの単離・製造に関する。本発明の別の態様では、これらの合成ペプチドを上記治療1〜18に利用する。
【0097】
本発明の別の好ましい態様において、医薬は活性化フラグメントの以下の特徴をもつ任意ペプチドである:1)N末端が8〜20アミノ酸を含む、2)この部分は一般に平均数を上回る酸性アミノ酸を含む、3)C末端が配列FLAEGGGV(配列番号22)、相同配列又は配列GGV(配列番号21)を含むこのC末端の一部を含む、及び4)カタログに掲載されているフィブリノペプチドAのペプチドに比較してC末端からアルギニンが欠失していると予想される。この末端配列は哺乳動物種で高度に保存されており、ペプチドの活性部分であると考えられる。
【0098】
本発明の別の態様はこれらの特徴を共有するペプチドであり、あるいは天然又は合成起源のいずれから得られるかに関係なく、これらの3種類のペプチドと相同の構造は本発明と同一の生物活性をもつ。好ましくは、これらのペプチドはフィブリノペプチドA又はその保存配列を含むフラグメントのアミノ酸の1個以上の保存アミノ酸置換に相当する。保存置換は蛋白質の構造と機能特性を維持するアミノ酸置換として定義される。
【0099】
この態様には、ヒトシーケンシングデータでフィブリノペプチドAのアミノ酸配列と相同の任意動物に由来するフィブリノーゲンα鎖から得られるペプチドが含まれる。
【0100】
本発明の別の態様では、これらの特徴をもつペプチドを上記治療1〜18に利用する。
【0101】
本発明の別の態様は、患者から採血し、上記特徴をもつペプチドを単離する任意精製/濾過工程を実施した後、ペプチドを自己注射として投与し、本発明の生物活性を生じる方法である。
【0102】
この態様では、血清を短時間処理した直後に再注入してもよいし、血清を大量に抽出した後に処理済みペプチドを含有する製剤の小部分を所定間隔で長期間投与してもよい。
【0103】
この態様では、限外濾過、HPLC分離、他の形式のクロマトグラフィー、接線流濾過、透析、遠心、電気泳動及び他の多くの方法を含む各種方法のいずれかにより自己注射用処理を実施することができる。
【0104】
この態様では、血液を採血した直後に遠心機に入れ、血清を分離した後に処理するか、又は血清の処理を行うまで凍結保存する。用量アリコートを注射直前まで凍結保存する。
【0105】
本発明の別の態様では、こうして自己注射用に処理したペプチドを上記治療1〜18に利用する。
【0106】
本発明の別の態様は、本発明のペプチドに対して特異的に反応性の抗体又は抗体フラグメントの作製である。
【0107】
本発明の別の態様は、本発明のペプチドをコードする核酸配列及び前記配列とハイブリダイズする配列に関する。
【0108】
以下、実施例により本発明の態様を例証するが、これらの実施例により本発明の範囲を限定するものとみなすべきではない。
【実施例】
【0109】
本発明は閲覧可能な文献を精査し、ヒト、ウシ、ネコ、ウマ及びヤギ血清の限外濾過フラクションからの質量スペクトルデータを分析した後、上記免疫調節能をもつとしてフラクション及び合成ペプチドを判定した結果である。動物又はヒトから採血する工程では、凝固阻害剤を利用しない限り、血液凝固プロセスが開始する。この限外濾過により得られた濾液中に存在するペプチドは主に血液凝固カスケードの副産物である。驚くべきことに、これらの従来規定されているペプチド中のC末端アルギニンは脱離していることが判明した。この活性はカルボキシペプチダーゼBの存在による。この酵素が血流中に存在すると、多数のペプチドを生理的に活性化する。この酵素は血清中に存在しており、カルボキシ末端アルギニンを含む分子で一定してこのアルギニン開裂を行うため、この酵素によりフィブリノペプチドA及びBとimf−C3からカルボキシ末端アルギニンが脱離することは起こり易い。この脱離によりこれらのペプチドは活性化され、強力な免疫調節剤となる。アルギニンが結合したままのペプチドの量は動物サンプル中でごく少量だったため、動物からの質量分析データで全長ペプチドを見出すことは困難であった(図1、2、3及び4参照)。全4種類の哺乳動物検体から単離された唯一のペプチドは配列番号12であったが、このペプチドはウシ及びウマ検体中には少量しか存在せず、交差汚染に結び付けられる。(同様に処理した)ヒトサンプルでは、末端アルギニンが結合したままのペプチドの量は遥かに多く(図4参照)、ヒト血清中でこのアルギニンがカルボキシペプチダーゼBにより脱離する工程は動物よりも著しく非効率的な工程であると判断された。
【0110】
上記フィブリノーゲンの活性化フラグメントに加え、ウマサンプル以外の各サンプルは上記C3補体の従来同定されていないフラグメントを含んでいた。このフラグメントは種に応じて12〜17アミノ酸を含む補体C3cα’鎖フラグメント2のN末端に位置する。3種類の異なるデータベースを検索した処、このC3補体はウマでは配列決定されていないようであり、恐らくそのためにこのペプチドはこのサンプル中で同定されていないのだと思われる。分析した他の種では、このフラグメントは特にアミン末端に顕著な相同性をもつ。ヒトC3補体フラグメントにおける相同セグメントもC3cα’鎖フラグメント2から開裂されることが確認されていない。このヒトC3α鎖フラグメントはN末端に高度に相同な配列をもち、最初から12個のアミノ酸のうちで1個のペプチドしか置換していない。データはヤギ及びウシ血清フラクション分析でこのペプチドの量が多いことを示しており、恐らくこのために入手可能なデータの多くではヤギ血清が優先的に使用されているのだと思われる。このペプチドは他の種よりもヤギ及びウシに著しく多量に存在すると思われるので、現在治療用に使用されている血清フラクション中の動物血清の主資源としてヤギが利用されているのはこの分子の活性によると思われる。MASCOT検索データベースを質量分析結果と併用した処、配列ヒットとしてウシ及びヤギサンプル中でこのペプチドが同定されたが、他のサンプルでは可能なヒットとしてしか同定されなかった。短いヤギ及びウシペプチドのほうが長いヒト天然ペプチドよりも活性が強いことも分かった。
【0111】
各種動物に由来するサンプル中に見られるフィブリノペプチドBフラグメントには有意相同性(フィブリノペプチドAとC3補体の上記フラグメントの両方の特徴)がないが、フィブリノペプチドBはやはり治療効果のいくつかの重要な部分であると思われる。有意相同性のこの欠如から判断すると、治療効果は種特異的である可能性が高く、ヒトペプチドの効果を立証するために動物モデルを使用する可能性は制限されると考えられる。実際に、各種哺乳動物からのシーケンシング情報を精査すると、フィブリノーゲンのb鎖のこの領域は近縁種間でも殆ど相同性がないことが明らかである(オランウータンはヒトフィブリノペプチドBと配列が著しく相違する)。
【0112】
これらのペプチドを同定後、血清フラクションにおける類似性を評価するために比較分析を実施した。ペプチドAのカルボキシ末端とペプチドCには高度の相同性が認められたが、ペプチドBには種間で有意相同性が認められなかった。異種間活性の殆どはペプチドA及びCに存在すると思われる。
【0113】
血清フラクションにおける抗感染活性に関するデータが最強であると思われたので、1)合成ヒト活性化フィブリノペプチドA、2)合成動物ペプチドimf−C3、及び3)試験して全3種類のペプチドを含有することが判明したヤギ由来濾過・凍結乾燥血清フラクションの3種類の異なる検体を使用し、Ponto ToroとインフルエンザA H1N1の動物モデルをこれらの2種類のウイルスに使用した。これらの物質は直接抗ウイルス剤ほど良好には機能しなかったが、結果をプラセボ群と比較すると、投与した動物の生存率の改善が明らかになった。
【0114】
この試験では、数種類の項目を分析した。これらの項目としては、肝臓、脾臓及び血清ウイルス力価;血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)定量;感染から3日目の肝臓黄疸に関する肝臓及び肺スコア;毎日体重測定;死亡までの平均日数;並びに総生存率が挙げられる。フィブリノペプチドAを含有する試験品を投与した2群は同等の成績であった。これらの投与群では、マウスの60%が生存したが、プラセボ群では25%しか生存しなかった。この改善はフィブリノペプチドA投与群での各々で独立して統計的に有意(P値=0.03)であり、これらの群を合算してフィブリノペプチドAによる総改善率を計算すると、統計的有意差は改善された(P値=0.015)。評価した他の疾患項目では観測可能な差が全くなかったにも拘わらず、この生存率増加が生じ、ウイルスが疾患を生じる能力には差がないが、ペプチドAの単回投与後に生体が生死にかかわる感染を撃退する能力が増したと判断された。この試験では炎症又はフィブリン沈着の測定は行わなかった。ペプチドAとリバビリン対照の間には差があるが、この差は統計的に有意ではなかった(P値=0.08)。
【0115】
これらの結果から、これらのペプチド(特にフィブリノペプチドA)には感染症分野で治療価値があり、治癒を強化し、症状期間を短縮できることが明らかである。感染症に対する生体の正常な応答の結果、強い前炎症性状態となるので、感染が除去された後でもこの炎症状態は持続症状を生じることが多い。フィブリノペプチドAはこれらの症状を緩和することができるため、生体が感染を撃退する能力を妨げずに疾患の症候期を短縮することができる。この効果もフィブリノペプチドAが蛋白質(特にフィブリン)を血管外スペースから移動させることができることが一因であると思われる。
【0116】
このPonto Toro試験に加え、これらの物質をインフルエンザA H1N1に対して試験するための試験を行った。この試験では、低用量リバビリンを対照とした。各群で全マウスが死亡し、予想よりも重度の感染であったと考えられた。
【0117】
作用メカニズムと治療活性をより十分に説明するために、これらの物質の投与後に健康なボランティアからサイトカインパネルを評価した。
【0118】
これらのペプチドの効果を立証するために、先ずヤギに由来する製剤を使用して本発明の製剤のペプチドを含有する濾過血清サンプル(ヤギ濾過フラクションのHPLCトレースである図5参照)を健康なボランティアに投与した。この投与の直前と、投与後所定間隔でサイトカイン12パネルを得た(投与後15分、1時間及び3時間;表1参照)。発表されている報告に基づき、これらの間隔の間にサイトカインパネルがシフトすると予想したが、著しく弱い効果しか観測されなかった。更に5週間後に著しく高用量の自己製剤を同一の健康なボランティアに投与した。表1の最終列では、インターロイキン10、13及び1βの初期値に著しい差があることに注目されたい。更に、インターロイキン2受容体の数値も僅かに上昇している。第1組のデータで軽微な変化があったため、当初に見られたサイトカインパネルの軽微なシフトが長期間かけて上昇し続けた。
【0119】
【表1】

【0120】
【表2】

【0121】
第2の試験は24時間に限って拡大したサイトカインパネルに注目するように設計した。この第2組のデータ(表2)では、12時間試験でこれらの同一サイトカインにシフトが生じていることに注目されたい。この場合も、評価した24時間の期間では、シフトは極めて軽微である。一般に、これらのシフトは個体の疾患状態に迅速な影響を生じると予想されないため、この群のペプチドの作用メカニズムを十分に説明するものではない。これらのシフトはこれらのペプチドの生物活性を立証するものであり、応答は臨床効果と一致するので、これらのペプチドの使用は有効であると確証される。
【0122】
第1組のサイトカイン12プロファイルに認められる上記の同一シフトだけでなく、初期評価の実施後5週間にわたる初期値間の顕著な相違にも注目されたい。これはサイトカインパネルの顕著なシフトが初期投与後数週間持続することを実証している。このシフトは非常に強い抗炎症活性をもつTh2サイトカインであるIL−13及びIL−10値で最も顕著である。更に、IL−1B値は投与前数値と注射から12時間後に行ったスパイクのどちらよりも著しく高いことに注目されたい。IL−1Bは注射後に免疫系細胞を刺激するため、前炎症性サイトカインとみなされる。更に、12時間ではTNF−α値の軽微な上昇があり、ここでも免疫系の強化が作用メカニズムの重要な部分であることを潜在的に立証している。
【0123】
Ponto Toro試験の結果に戻り、imf−C3から結果が得られないことを確認した後、健康なボランティアに合成imf−C3を投与し、サイトカインパネルを24時間追跡した。これらのサイトカインパネルは24時間の時間枠では変化を示さなかった。フィブリノペプチドAだけを投与するとインターロイキン13は上昇せず、フィブリノペプチドA単独を投与するだけでこれらのペプチドのブレンドを投与した場合には生じない前炎症応答の長期刺激が得られる。
【0124】
ペプチドを適切な媒体に懸濁し、健康なボランティアに製剤を2週間毎日投与し、サイトカイン12パネル用に5日置きに採血した。分子の寸法により、粘膜経路からの吸収の可能性は低いと思われ、厳密な経口経路ではペプチドが胃で迅速に消化されるとその効力がなくなると思われる。合成フィブリノペプチドAのIV投与直前にこの同一の健康なボランティアから採血検査した。投与は正常な血管内生体プロセスをシミュレートしていたので、IV投与はより顕著な治療効果があると予想された。驚くべきことに、合成フィブリノペプチドAのIV注射前に採取した初期サンプルは前の試験のどれよりも顕著なインターロイキン10及びインターロイキン1b値の上昇を示すことが分かった(表3)。
【0125】
【表3】

【0126】
これらの上昇に加え、インターロイキン6の軽微な上昇も認められた。インターロイキン6は前炎症性サイトカインであり、生得免疫系の非常に強い刺激剤である。同様に驚くべきことに、先に投与した皮下投与量の10倍の用量をIV投与しても、目立った応答はなかった。これらの試験の最も重要な点はIV投与から1カ月後に採血したことである。この試験では、何らかの経路で投与した他の用量の各々に存在していた少なくともIL−10及びIL−1βの著しい上昇が認められた。このデータは、特に以下に記載する実験的自己免疫性アレルギー性脳脊髄炎データと勘案すると、この分子がリンパ系において主要活性部位として重要であることを強く示唆している。血流中でこれらの分子は迅速に分解され、フィブリンの吸収と免疫系の刺激のプロセスを開始するために必要な細胞又は分子を刺激することも恐らくできなくなる。リンパ系は適応応答に強く関与しており、血管系は生得応答に強く関与しているので、この主要活性位置も適応免疫系が生得免疫応答よりも刺激されることを説明している。経粘膜吸収はほぼリンパ経路のみを介して行われ、吸収される分子では迅速に行われ、口腔粘膜下領域(特に舌下領域)は本発明のペプチドを不活性化する酵素から少なくとも部分的に保護されながらこの種の応答を生じる細胞と迅速に接触する長いリンパ排出管を備えるため、経口投与したフィブリノペプチドAに対する応答もこの活性位置を裏付けている。血管外スペースにおける慢性フィブリン沈着は常に病的で前炎症性であるため、患者がこれらの物質の除去を助長するようにこの沈着により誘発されるメカニズムをもつことは意外ではない。本願はこのメカニズムがフィブリノペプチドAの放出とこの沈着の開始により行われ、これらのフィブリン沈着物の遅発吸収を誘発することを立証する。これらの結果は更に、フィブリノペプチドAの活性の有意部分がフィブリノペプチドA投与から少なくとも3日後に生じ、これはフィブリン除去が開始する前に凝血塊が成熟して線維芽細胞で浸潤されるようにするために許容可能な時間であることを実証する。単回用量のフィブリノペプチドAには持続活性があり、これらのサイトカイン値を1カ月間にわたって上昇させることから、この前炎症性蛋白質を血管外スペースから完全に除去することの重要性が明らかである。血管外スペースから除去する必要性を伝達することにより、内膜下スペースでも同様の慢性沈着物に同一プロセスが行われるはずである。
【0127】
【表4】

【0128】
表5及び6に示すように経口(舌下)フィブリノペプチドAの効力を2人の患者で更に立証した。これらの患者の一方は先に使用した患者と同一とし、他方は従来のフィブリノペプチドA治療に比較的ナイーブな患者とした。この投与の約7週間前に患者に2回経口投与し、この前投与では検査しなかった。この患者に1種のフィブリノペプチドA製剤を1週間毎日経口投与した後、それ以上フィブリノペプチドAを投与せず、患者にフィブリノペプチドAを1週間休薬後に再び血液検査した。
【0129】
この患者におけるIL−10及びIL−1bの応答は他の患者と同様であったことに注目されたい。他方、この患者は他の患者よりも著しく短時間で基線値に戻り、この種の応答で予想される患者間の変動が強調された。このことからも抗炎症/免疫調節効果を達成するためには経口投与が有効であることが明白である。
【0130】
他方の患者にはフィブリノペプチドAの経口投与開始から1カ月前にフィブリノペプチドAを投与した。この初期サイトカインパネルはフィブリノペプチドAの従来の報告に見られたと同一の変化を示し、やはり優に1年以上サイトカインパネルの顕著な変化を生じる。しかし、表6に示すように、サイトカインパネルは試験終了時にはほぼ正常に戻っていた。このことからも、IV投与した場合にフィブリノペプチドAの効果がなく、フィブリノペプチドAを投与する場合にはリンパ経路を利用することが重要であり、恐らく他のペプチドも同様であることが明白である。
【0131】
【表5】

【0132】
表6のデータは更にリンパ投与によるこの持続的な合成活性化フィブリノペプチドA暴露に応答する免疫系の全側面のアップレギュレーションを実証する。IL−1βの顕著な上昇(他のサイトカインパネルで一貫して認められた所見)に加え、この場合には生得免疫系の非常に強力な刺激剤であるIL−6の顕著な上昇も認められたことから、適応免疫系の刺激が生じたと判断される。
【0133】
効果を最大にするためにはこの分子をどのように構造的に強化すればよいかを調べるために別の試験を実施した。この試験では、分解から保護することにより活性が著しく改善された数種類のペプチドを同定した。これは一般にペプチドの不活性部分に長い分子を付加することにより行った。活性化フィブリノペプチドAのカルボキシ末端がペプチドの活性部分とみなされたため、カルボキシ末端をペグ化した(ポリエチレングリコールの付加)。この分子を使用してEAE試験を実施した。この試験は1981年にこれらのペプチド2個を利用してRuhenstroth−Bauerにより実施され、大きくはないが、多少の効果を示した試験と同様にデザインした。合成ペグ化ペプチドは非ペグ化ペプチドよりも著しく良好に機能すると予想された。ペグ化ペプチドと非ペグ化ペプチドを比較するための陽性対照として合成非ペグ化ペプチドAを使用した。サイトカインプロファイルに何らかの効力がある経路であるという理由から、薬剤は皮下投与した。
【0134】
ペグ化ペプチドは殆ど又は全く応答しなかった。グラフ(図2)から明らかなように、試験品投与群のうちで担体を投与したマウスに対してEAE発症で有意差を示したものは皆無であった。試験品2(ペグ化ペプチド)を毎日、3日置き及び毎週投与したが、統計的有意差にも達しなかった。
【0135】
最初の22日間の試験期間では、試験品1(非ペグ化ペプチドAを毎日)を投与したマウスのEAE発症は担体を投与したマウスとよく似ていた。その後、この群のマウスは回復し始めたが、担体を投与したマウスは疾患の悪化を示した。これらの群間の疾患重篤度のこの相違は統計的有意差には達しなかった(p<0.1)。試験品1を投与したマウスは27〜28日に疾患が悪化し、担体投与群のマウスとよく似た疾患重篤度となった。統計的有意には達しなかったが、疾患重篤度にこの差が生じたのは、偶然であったのか、あるいは非ペグ化ペプチドAの何らかの効力の結果であったのかは不明である。
【0136】
第1に、ペグ化ペプチドには活性がなかったので、このペプチドを十分に活性化させるためには更に開裂が必要であると思われた。ペグ化は最大効果の部位であるリンパ又は少なくとも血管外区画への遊走を妨げたようである。ペプチドをペグ化すると、その寸法は約1500kDから30,000kDを上回るまで増加し、これは血管外スペースに容易に入り込めないと確実に予想される寸法差である。
【0137】
第2に、この試験ではこのペプチドの効果が自己免疫疾患の初期攻撃を阻止しないことが分かった。EAEの誘導の24時間前に最初の投与を行った。自己抗体の産生が当初増加したので、非ペグ化ペプチドの投与で症状が悪化すると予想された。IL−1bは自己抗体を産生するB細胞の監視と排除を強化するので、長期効果はこの種の全疾患を改善すると予想される。22〜26日から見られた統計的に有意ではない軽微な改善は、血管外スペースにおける炎症とフィブリン沈着の低下に起因すると思われる。
【0138】
この試験では、血管外スペースへの遊走を可能にするように寸法を小さくすることによりペプチド活性を強化する可能性も明らかになり、ペプチドの開裂/分解産物も活性を生じると判断された。
【0139】
現在、医科学界は少量の所定の物質が有用であるならば、多量のその物質はより有用であるという立場に立っている。サイトカインパネルに見られる型の変化は治療薬としてのこれらのペプチドの利用を認定するには不十分であると思われる。しかし、自然界では大半の薬剤に付随する恒常性の苛酷な調節は存在しない。これらのペプチドはこの種の温和な補正により、免疫状態を許容応答から能動応答にシフトすることにより、免疫系の正常な機能状態を回復することができる。この変化により、感染症や悪性腫瘍細胞に対する生体の監視を強化し、自己抗体を産生する細胞を排除し、炎症メカニズムの有害な側面を抑え、血管内腔外に沈着した有害分子の吸収と排除を刺激し、慢性疼痛に至る感覚ニューロンの慢性刺激を軽減することができる。
【0140】
作用メカニズムは少なくとも免疫強化、炎症応答低下、血管外及び内膜下スペースへのフィブリンの沈着防止と吸収刺激を含む。
【0141】
適応免疫強化
哺乳動物免疫系は2種類の免疫応答に分けられる。生得免疫系は急性損傷に対する保護と言われ、適応免疫系に引き継がれるまで生体を保護する。フィブリノペプチドAの活性化フラグメント(af−FA)、フィブリノペプチドBの活性化フラグメント(af−FB)及びC3補体の免疫調節フラグメント(imf−C3)のペプチドの活性は能動免疫応答か許容免疫応答かに従って異なる分類の免疫応答の利用を指示する。この概念の下に、活性免疫応答は生体が病原体又は外来もしくは異常特徴を含む細胞を認識し、捜し出し、破壊し、各種細胞傷害性細胞及び貪食細胞の刺激とB細胞及びT細胞の刺激によりこれらの細胞を破壊する能力を強化する。これは、一般に前炎症性と認められているサイトカインの放出により開始されるサイトカインカスケードにより部分的に達成される。しかし、これらのペプチドの投与により刺激される場合、臨床的に見た応答は実際には抗炎症/免疫刺激応答である。この応答はこれらのペプチドが異物の周囲の細胞又は病的細胞に生じる損傷を緩和しながら、これらの細胞の局所破壊能を著しく強化できることにより生じる。このメカニズムは、全身及び局所破壊反応を最小限にしながら免疫系が病原損傷を破壊する能力を著しく強化することにより、病原体に対する著しく局所的な直接作用を可能にする。通常では多面的反応は組織破壊を伴うが、NKリンパ球、マクロファージ及びTリンパ球の局所作用により、生体は組織破壊を伴わずに多面的反応により病原体に対して非常に強い攻撃を開始することができる。
【0142】
経時サイトカインパネル(表1及び6)はこの活性を解析するものである。直後及び持続的なサイトカインIL−1βの上昇は注射直後にサイトカインカスケードが開始することを裏付けている。単球及び/又はマクロファージは主要なIL−1β産生源であるため、これらの表面に受容体が発現されると考えられる。IL−1βは接着因子の存在量を増し、好中球及び他の白血球から細胞傷害性物質の放出を刺激せずに、感染部位へのこれらの細胞の遊走を可能にする。このプロセスは外皮の断裂源に局限する場合に多大な効果がある。全身では、このプロセスが刺激する監視増加により、生体が病原体、異常細胞又は異常蛋白質の沈着物さえも捜し出して破壊する能力が増す。IL−1βは従来から有害な神経炎症に関係があるとされているが、最近ではこの理論に反し、脳疾患におけるIL1βの刺激の明白な効果が立証されている(Shaftel,2008)。
【0143】
炎症応答低下
IL−1βの即時上昇に加え、インターロイキン10(IL−10)の発現も迅速に上昇する。IL−10は強い抗炎症効果をもつ多面的サイトカインとして認められている。IL−10は主に単球により産生されることからも、単球受容体に主に作用する作用モードであると考えられる。IL−10はTh1サイトカインの発現をダウンレギュレートするため、これらのペプチドには迅速で強い抗炎症活性がある。この抗炎症活性はTキラーリンパ球、NK細胞及び好中球の活性化の存在下で生じるため、生体が病原攻撃を排除する能力を強化しながら生体の症状が軽減される。IL−10は更にB細胞生存、増殖及び抗体産生も強化する。IL−1βの存在下では、IL−1βにより刺激されてTキラーリンパ球が増加し、自己抗体を産生する細胞を排除するため、自己免疫疾患を生じる可能性はなくなる。
【0144】
更に、IL−10は肥満細胞の炎症活性を抑制し、これらの細胞が超過敏反応で生じる作用を緩和する。IL−10は免疫応答と寛容の誘導に重要な役割を果たすT調節細胞の分化と機能にも重要な役割を果たす。IL−10は創傷治癒の重要な部分である血管新生を刺激することが示されている(Dace et al 2008)。
【0145】
IL−10と共に、IL−13値はこれらのペプチドの注射後に変動しながら上昇する。IL−13は細菌内毒素により誘導される炎症性サイトカイン産生を阻害する活性化Tリンパ球により産生される。これはナチュラルキラー細胞によるγインターフェロン産生も刺激し、インターロイキン2の作用を強化する。IL−13は反応性気道疾患を誘導することで最もよく知られているが、これらのペプチドによる免疫系の活性化におけるIL−13の役割にも拘わらず、この活性化から超過敏反応は認められなかった。反対に、閲覧可能な全文献は超過敏反応の治療にこれらのペプチドを使用することを支持している。これは、IL−10の活性化とこのIL−13アップレギュレーションの組合せによると思われ、原因となるIL−13の存在よりも生体内で喘息発作を止めようとするIL−13の役割を強く裏付けている。この応答がこれらの分子の活性に重要であるか否かについては更に研究が必要になろう。組合わせの存在が表6でフィブリノペプチドAの経口投与に見られる他の前炎症性サイトカインの数種の上昇を制限しながらこの上昇をもたらすとも考えられる。
【0146】
血管外及び内膜下スペースにおけるフィブリンの沈着の防止と吸収の刺激
フィブリノペプチドAは血管外スペースからのフィブリンの吸収を刺激することができる。フィブリノペプチドAが既に沈着しているフィブリンを移動できることは数件の研究に示唆されている。これらの研究のうちの2件では、血流からのフィブリノーゲンの取り込みと代謝を増加するためにアンクロッドを利用している。これらの研究のどちらも、低フィブリノーゲン血症状態を発症させると、血管外状態からのフィブリンの生体吸収が増加したと結論している。低フィブリノーゲン血症を誘導するこの方法はフィブリノペプチドAを放出する副作用がある。アンクロッドはトロンビンと同様に、Arg−Gly結合を開裂させ、フィブリノーゲンのAα鎖からフィブリノペプチドAを放出する。次にフィブリノペプチドAは末端アルギニンの脱離により更に活性化される。トロンビンとは異なり、アンクロッドはフィブリノペプチドBをフィブリノーゲンのBβ鎖と結合するArg−Gl結合を開裂させない。この高度に特異的な活性によりフィブリノペプチドAが放出され、残りのフィブリノーゲンフラグメント(desAA−フィブリンモノマー)は肝臓により迅速に取り込まれ、低フィブリノーゲン血症となる。
【0147】
アンクロッドは現在、動物モデルで低フィブリノーゲン血症を実験的に発症させる手段として一般に認められている手段である(商品名VIPRINEX(登録商標))。これらの適応症のうちで最新のものは急性虚血性脳卒中の治療であった。データによると、単にフィブリノペプチドAを投与するだけでこの治療の多大な治療効果が生じ、腫脹が著しく減り、血管漏出が減り、頭蓋内出血や他の凝固障害の危険を増すことなしにフィブリン溶解を助長する。
【0148】
更に、この低フィブリノーゲン血症状態は広範な治療作用に関与していると間違って理論化されている。この例としては紅斑性狼瘡の症状の有意改善(Cole et.al.1990)が挙げられ、アンクロッド投与により腎疾患の進行と凝血促進作用が著しく遅れ、アンクロッド療法で生存率が著しく改善されたとしている。別の報告では、糸球体腎炎を治療するためにアンクロッド療法が利用されている(Kim,et.al.1988)。同著者らは急性糸球体腎炎におけるアンクロッドフィブリン溶解の機能的、免疫学的及び組織病理学的作用を評価した。その短期改善の所見(14日間試験)によると、試験した全3領域で改善が明らかになった。彼らはC3及びC4の正常値に向かう増加、血清Igの減少、γグロブリン及び抗dsDNA抗体の減少、並びに糸球体C3及びIg沈着物の減少も立証しており、ループス腎炎患者で免疫因子が改善されることを示唆している。この試験からの組織病理学結果によると、これらの患者では糸球体硬化の進行の予防が立証された。
【0149】
最近では、2009年にロックフェラー大学でPaulらによりアルツハイマー病で同様の所見が発表された。その研究ではアルツハイマー病のトランスジェニックマウスモデルを使用し、フィブリン沈着がbアミロイド神経原線維変化病理の発生と血液脳関門透過性に重要な役割を果たすことを突き止めた。3種類の実験モデルを利用し、この原因活性を以下のように立証した。1)機能的プラスミノーゲンが遺伝的に低下したマウスは神経血管損傷が多いが、機能的フィブリノーゲンが遺伝的に低下したマウスは血液脳関門損傷が少ない;2)アルツハイマー病マウスにプラスミン阻害剤を投与すると、病態が増悪するが、アンクロッド投与によりフィブリノーゲンを除去すると、βアミロイド病変の周囲の炎症の進行が遅れる;3)アンクロッドを前投与すると、プラスミン阻害から病態進行が遅れた。これらの研究はフィブリンがアルツハイマー病の神経炎症プロセスに関与していることを示唆している。アルツハイマー病の主因はやはりβアミロイド蛋白質であると思われるが、この疾患はこの蛋白質が誘導するフィブリン沈着なしに進行するとは思われない。フィブリン沈着プロセスを遅延もしくは阻止するか、又は沈着したフィブリンの吸収を刺激することにより、アルツハイマー病の進行を抑え、症状を改善することができる。
【0150】
これらの全研究では、低フィブリノーゲン血症を発症させるためにアンクロッドが利用された。研究者らは低フィブリノーゲン血症がこれらのプラス効果と共にその副作用の原因でもあると仮定している。データによると、血液凝固カスケードのこの種の著しい悪化から予想される副作用なしに、フィブリノペプチドAを利用するだけでプラスの結果を得ることができる。各参照文献において、研究者らは放出されたフィブリノペプチドAが沈着したフィブリンの再取り込みを刺激し、それ以上のフィブリン沈着を防止し、これらの疾患の急性及び慢性期の両者における炎症応答を著しく緩和できることを確認できなかった。
【0151】
このデータは、血管外及び内膜下スペースにおけるフィブリン沈着を遅らせてこれらのスペースからのフィブリンの吸収を刺激することによりフィブリノペプチドAがこれらの疾患を改善できることを立証している。1つのメカニズムは組織プラスミノーゲンアクチベーター、ウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーターの活性化又は組織プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤の阻害である。更に、プロテインCは重要な役割を果たす。総活性はフィブリン沈着の吸収を助長するので、ウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーターの活性化が慢性疾患のフィブリン沈着の除去に見られる効果を説明するメカニズムである。更に、フィブリノペプチドAは血管内スペースから血管外スペースへの全血清蛋白質の遊走を遅らせることができる。この効果はこれらのペプチドがこのスペースに遊走する白血球中の液胞から前炎症性分子の放出を防止できることにより得られる可能性が最も高い。これは本願で立証された抗炎症メカニズムに関与するインターロイキンであるIL−10により行われると思われる。
【0152】
これらのペプチドは血管外及び内膜下スペースにおけるフィブリンの沈着を抑制することができる。この活性は確認されていないが、有害な沈着物が生成されると、生体がこの沈着物を除去するメカニズムが誘導されるので、この活性は直感的に理解される。この活性はこれらのペプチドの活性の大半と同様に遅発性であるが、血管外スペースからフィブリンを除去するメカニズムの開始はこれらのペプチドの放出により刺激される。血管疾患ではフィブリンが血管の内膜下に沈着し、他の多くの疾患ではフィブリンが血管外スペースに沈着する結果、これらの疾患は進行・増悪する。この沈着が多くの慢性疾患プロセスの主要部分であることを示唆したデータが増大しているように、ここ数年間では、多くの研究がフィブリンの調節を対象にしている。フィブリンを調節することが可能な治療薬の発見に伴い、現在では益々研究が活発になっているが、フィブリン沈着の調節能についてはよく分かっていない。これらのフィブリン沈着物を除去する必要性は物理的バリア形態のフィブリノーゲンに起因する機能障害と、これらのスペースにおけるフィブリンの前炎症活性により明らかである。更に、これらのスペースにフィブリンが存在すると、治癒に不可欠の所定の細胞の活性を抑制することが現在では明らかになっている。この1例として、血管外フィブリンはシュワン細胞の再生活性を不活性化させる。この数年間に、研究者らはこれらの疾患プロセスの多くで血管外フィブリンの除去の効果を実証できるようになっている。これらの研究はフィブリンの前炎症活性と、その存在下における正常細胞/臓器機能の障害を明らかにしている。この障害は多数の疾患の病理プロセスの主要因子であり、このような疾患としては、限定されないが、多発性硬化症、関節リウマチ、末梢神経挫傷、アルツハイマー病、黄斑変性症及びアテローム性動脈硬化症が挙げられる。これらの研究において、研究者らは血管外フィブリンを新規治療薬の重要なターゲットとした。これらのペプチドはフィブリンの沈着と吸収の両方を調節できるため、多様な疾患の新規治療選択肢である。
【0153】
従って、af−FA、af−FB及びimf−C3はサイトカインと免疫系細胞の複雑な相互作用を開始し、患者の免疫系が外来蛋白質をより良好に認識する能力を強化することにより、患者の免疫系に大半の慢性疾患の源を認識させてこれに応答させることができる。同時に、自己免疫疾患に関与する抗体応答は、自己抗体を産生するB細胞の監視及び排除の強化と、強力な抗炎症活性により低下する。この治療により自己免疫疾患を治療すると、大半の慢性疾患が免疫系の機能不全に関係しているという確証も増す。
【0154】
治療機能−af−FA、af−FB及びimf−C3を含有する濾過製剤
・感染症の治療
慢性ウイルス(HIV、HBV、HPV、HSV等)
全ての慢性ウイルス疾患は生体がウイルスと結合した異物を認識・排除できないことに起因する。これはこのウイルスの蛋白質に対する免疫系の脱感作が少なくとも一因であると思われる。この治療薬の作用メカニズムにより、免疫系の強化により任意ウイルスの認識と排除が可能になり、急性症状を誘導しないウイルスの存在に耐える許容傾向を排除する。ウイルスを認識し、捜し出し、破壊する能力のこの強化により、エンベロープウイルスも含めた全種のウイルス感染の検出と排除が可能になる。
【0155】
後天性免疫不全症候群(AIDS)
AIDSはHIVウイルスが免疫系の細胞に感染して破壊する疾患であり、CD4リンパ球と呼ばれる特定種のTリンパ球値が200/mcl未満まで低下するときには生命を脅かす可能性がある。このレベルで生体は細胞(後天性)免疫が低下する。この結果、宿主は通常では免疫系のこの部分により防げられている各種疾患の危険に曝される。この症候群の患者は日和見疾患の症状を示すが、初期感染直後の軽度インフルエンザ様病態を除き、HIV感染症は無症候性である。ウイルスが免疫細胞と他の細胞を覆うにつれて、生体は徐々にこれらの細胞の表面に蛋白質を発現する許容アプローチをとる。ウイルスがより積極的に複製し始めると、生体はこれらの細胞上に発現された異常な蛋白質を認識・攻撃することができなくなり、あるいはこれらの細胞から放出された後にウイルス自体を攻撃することもできなくなる。複製プロセスはウイルスRNAの逆転写に依存するので、西洋医学のアプローチはHIVウイルスRNAのこの活性の予防に主眼をおいている。このアプローチは疾患進行を遅らせるのには成功しているが、ウイルスを破壊し、疾患を治癒させる薬剤はまだみつかっていない。
【0156】
HIV/AIDS患者に投与した場合のこれらのペプチドの治癒能力は確証されていない。本発明のペプチドの作用メカニズムはHIV感染集団にいくつかの効果を示し、これらのペプチドの潜在的治癒能力を示す。これらのペプチドの顕著な活性の1つは免疫系を許容状態から攻撃的ないし能動状態に戻すことである。こうして、患者自身の免疫系はこのウイルスに感染した細胞を捜し出し、Tキラーリンパ球により攻撃することができる。更に、これらのペプチドにより刺激されるサイトカインアップレギュレーションはCD4細胞を含むT−reg細胞に生成を直接強化すると予想される。これらの変化により、免疫系はウイルスとウイルスに覆われた細胞を捜し出し、破壊することができる。抗炎症活性は更に日和見感染の症状を軽減し、これらの感染に対する免疫応答を増加する。
【0157】
急性(インフルエンザ、Ponta Toro、HAV等)
慢性感染症におけるこの効果に加え、このペプチドは保護免疫系がウイルスと闘う能力を強化しながら組織内の炎症性及び反応性応答を減らすことにより急性感染症の症状と重篤度を著しく軽減する。af−FA、af−FB及びimf−C3は各種急性ウイルス疾患モデルにおいて動物の生存率を改善する。
【0158】
細菌
細菌感染症は系統の重度損傷に相当する。この最も緊急な形態の系統損傷の存在下で、af−FA、af−FB及びimf−C3は炎症増加に起因する症状を抑えながら、細菌損傷の排除に最も重要な免疫系の活性を強化する。患者に外皮の断裂がある場合には、顕著な細菌暴露が生じる。この暴露にも拘わらず、患者がその部位に感染を生じることは稀であり、更に全身感染を生じる頻度も低い。この保護応答の少なくとも一部はフィブリノーゲンが活性化されて系統の断裂を封鎖するにつれてフィブリノペプチドA及びBが血流中に放出されることにより生じる。急性感染に暴露された患者にaf−FA及びaf−FBを投与した場合にも同様の効果が生じる。この効果は暴露前に薬剤を投与した場合のほうが大きい。しかし、投与が暴露時であるか又は暴露後であるかに関係なく、どちらも感染を排除するプロセスに有益である。この刺激はT細胞、B細胞及びマクロファージを含む数種類の異なる免疫細胞により行われる。T40は特に重要な役割を果たす。
【0159】
寄生虫
同様に、af−FA及びaf−FB及びimf−C3はウイルス及び細菌に対する免疫応答を強化し、慢性であるか又は急性であるかに関係なく、生体が寄生虫症に応答する能力を強化する。
【0160】
スピロヘータは特に治療が困難であるが、af−FA、af−FB及びimf−C3により免疫系を調節すると、これらの菌も認識・破壊される。
【0161】
真菌及び酵母感染症は一般に日和見感染とみなされるが、af−FA、af−FB及びimf−C3を投与すると、患者の監視能が強化され、この種の感染の可能性が実質的になくなる。この種の感染患者において、これらのペプチドは免疫系が感染に応答してこれを根絶する能力を強化する。
【0162】
癌の治療
癌とは、1)細胞調節の低下、2)複製異常、及び3)浸潤又は圧迫による隣接組織の破壊等の所定の共通特徴をもつ無数の疾患を表す広義の用語である。これらの疾患も感染、放射線、毒素暴露及び遺伝的素因を含む各種因子が原因であると考えられる。細胞は癌特徴を発現後、一般に生体により破壊される。この誘導アポトーシスに失敗すると、癌が発症する。西洋医学のアプローチは癌細胞を破壊するために放射線と化学療法を使用するが、これらのアプローチはマイナスの副作用の問題を伴う。
【0163】
表面に異常蛋白質を発現する細胞(全癌細胞の共通特徴)の監視と破壊の強化により、これらのペプチドは伝統的な西洋医学の癌治療のあらゆるマイナスの副作用を伴わずに癌を予防することができ、治療することも可能である。癌の破壊に関するこの直接効果に加え、これらのペプチドは化学療法と放射線療法に応答して患者に発生する炎症を軽減するため、これらの治療法の症状を緩和することができる。
【0164】
この監視強化は免疫系が異物を認識するのを助長するばかりでなく、異常細胞を排除するアポトーシスプロセスも強化する。癌細胞はその表面に異常蛋白質を発現することが知られている。免疫系がこれらの蛋白質を認識してこれらの細胞にアポトーシスを誘導することができないと、癌が進行する。これらのペプチドはこのプロセスを刺激し、患者の免疫系が異常細胞を排除できるようにする。現在数種類の異なる自家ワクチンが癌を治療するために利用されている。現在の方法は癌細胞を処理した後に再注入すると、生体がこれらの異常蛋白質を認識した後に攻撃できるようにすることにより治療効果を生じると想定している。これらのワクチンの大半の処理方法が分かっており、ワクチンはまだ大量の本発明のペプチドを含有している可能性が高く、処理した細胞に暴露することに加え、免疫系はこれらの異常細胞をより完全に認識できるため、治療効果が得られる。本発明のペプチドはそれ自体この同一能力がある。
【0165】
この効果に加え、これらのペプチドは血管の漏出を減らし、この効果により腫瘍の周囲のフィブリン沈着を減らし、免疫系の攻撃を受け易くすることができる。
【0166】
所定の化学療法剤による免疫系の損傷を最小限にするためには、癌治療のアジュバントとしてIL−1bを使用することが好ましい。これらのペプチドはこのサイトカインの放出を刺激するので、この治療指示における効果は明白である。更に、これらのペプチドの抗炎症活性は化学療法と放射線療法の耐容性を著しく改善し、これらの治療に付随する疼痛と苦痛を軽減する。
【0167】
副作用が非常に弱く、免疫系が抑制されないため、全種の癌を治療するためのこの選択肢は従来の治療に勝る多くの利点がある。更に、生体内の他の細胞を破壊しないので、化学療法の非常にマイナスの副作用に耐える必要がなくなる。
【0168】
冠動脈疾患(CAD)の治療
冠動脈疾患(及び全種の血管疾患)は血管壁の内膜が損傷したとき、又は血流中の脂質が内膜下スペースに沈着し始めるために十分な量となったときに発生する。損傷又は脂質沈着の結果、進行性症状となり、最終的に血管の重度狭窄に至る。これらの病変では、脂質が病変の約30%に相当し、残りの70%はフィブリン、鉄及び他の蛋白質の沈着を含む。伝統的な西洋医学は強力な脂質低下能をもつ治療薬を利用しているが、これらは副作用の危険も大きい。強い副作用に加え、これらの薬剤を摂取した多くの患者は不快感があり、最少運動又は安静時でも筋肉痛を伴う。この種の治療は冠動脈疾患イベントの危険を減らすことが分かっている。
【0169】
脂質のこの沈着の抑制は常に行われており、今後もCAD治療の重要な側面であり続けるが、これらのペプチドが血管の壁内のフィブリン沈着物を移動させることができるならば、単に脂質の沈着を遅らせようとするよりもこの疾患の患者の長期健康に大きな効果となろう。単純計算によると、病変の30%を占める問題に対処するよりも、病変の70%を占める問題を処理するほうが有益であることは容易に理解できる。プラークの脂質部分もフィブリンキャップに保護されている。これらのペプチドは生体がこの保護フィブリンキャップの吸収を誘導することによりプラークのこの脂質部分を除去する能力を強化する。これらのペプチドは炎症を抑え、内膜下及び血管外スペースからフィブリン及び鉄の吸収を強化することができるので、全血管疾患に明白な治療効果がある。
【0170】
変形性関節症の治療
多くの疼痛症状は単に老化プロセスによる正常組織の変性の結果である。このプロセス自体は疼痛の原因ではないが、これらの破壊された組織は炎症カスケードを刺激し、慢性疼痛及び硬直を生じる。変形性関節症はこの種の慢性疼痛症状の1例である。初期プロセスは疲労又は損傷であると思われるが、その後の炎症は変性プロセスにもつながる。これらのペプチドは変性した組織を回復することはできないが、二次炎症プロセスを阻止する。このプロセスを阻止することにより、疼痛量と持続変性速度はいずれも劇的に低下する。
【0171】
自己免疫疾患(関節リウマチ、紅斑性狼瘡、強皮症等)の治療
自己免疫疾患には各々その疾患のみに固有の症状がある。自己免疫疾患は病原体に対するHLAハプロタイプ応答の結果として病原体のみならず、患者の生体の構成部分も攻撃する抗体が産生される遺伝的要素により開始する。これは全個体で起きるが、患者の免疫系がこの活性をもつB細胞を排除する能力を低下すると、その結果、抗体がこの場合には患者自身の組織である「病原損傷」を捜し出して破壊するにつれてこれらの細胞の持続的な刺激と不死化を生じる。これらの抗体が患者の組織に結合するにつれて、抗体は炎症カスケードを誘発し、先ず組織破壊が生じた後にフィブリン及び鉄沈着が生じ、炎症応答を更に撹乱する。こうして組織破壊、疼痛及び疾患病因の進行の悪循環が生まれる。
【0172】
これらのペプチドは、1)自己抗体を産生する細胞を捜し出して破壊する生体メカニズムを強化し、2)急性症状の多くの原因となる局所炎症を軽減し、3)沈着を阻止すると共に、自己抗体との生体反応の結果である有害な血管外フィブリン及び鉄沈着物の吸収を刺激し、4)静脈機能不全の原因となる血管内膜からのフィブリンの吸収を刺激することにより、自己免疫疾患患者の健康状態を改善する。これらの活性はいずれもこれらのペプチドがマクロファージ及び単球からIL−1B、IL−10及びIL−13の放出を刺激できることと、有害な血管外物質の除去の刺激により得られる。
【0173】
多発性硬化症の治療
多発性硬化症は神経誘導身体障害の進行をもたらす多数の特徴をもつ疾患である。この疾患において、初期イベントは中枢神経系におけるミエリンの自己免疫攻撃であると思われる。これらの損傷領域が進行するにつれて、これらの自己免疫攻撃領域の周囲の急性炎症の結果、種々の程度の神経改善が生じ、当初は炎症の軽減と共に解消する。「MS発作」が重なる毎に病変が進行し、神経損傷が広がり、病変の周囲のスペースへのフィブリンと鉄の沈着が増す。これらの沈着物は進行するにつれてより強い炎症応答を生じ、これらの領域を治癒できなくなるため、疾患は更に進行する。このプロセスは更に患部の静脈排出と共に進行し、静脈圧が上昇する。更に、MSにおけるフィブリン沈着はMSを含む多くの疾患プロセスで血管周囲にフィブリンカフを形成する。このフィブリンカフは血流を遅くし、栄養の供給を低下させ、血管鬱血を生じる。その結果、静脈不全となるため、MSの進行におけるその役割は今日科学文献において神経学者の間で大きな論争の種となっている。これらの静脈の閉塞領域にステントを配置することは進行性MSで調査中の治療であり、ヨーロッパ及びカナダからの予備データは大半の患者で実質的な改善を示している。研究者らはこの改善によりMSは自己免疫疾患というよりも血管疾患であると主張しているが、そのデータはこの非常に複雑な疾患の多元性を裏付けている。
【0174】
これらのペプチドはこのカスケードを逆転させることにより多発性硬化症を治療することができる。これは、1)自己抗体を産生する細胞を捜し出して破壊する生体メカニズムを強化し、2)神経症状の多くの原因となる局所炎症を軽減し、3)沈着を阻止すると共に、血管外スペースへのこれらの物質の血管漏出により沈着した有害な血管外フィブリン及び鉄の吸収を刺激し、4)進行性MSにおける静脈機能不全の原因となる内膜下フィブリンの吸収を刺激することにより行われる。これらの活性はいずれもこれらのペプチドがマクロファージ及び単球からのIL−1B、IL−10及びIL−13の放出を刺激できることと、有害な血管外物質の除去の刺激により得られる。これらの活性については各々上記背景技術のセクションに詳細に記載した。
【0175】
アルツハイマー病の治療
アルツハイマー病の原因はまだはっきり分かっていないが、これもまた多元的問題であると思われる。ニューロン間の結合組織にβアミロイド蛋白質が沈着して発症するというのが現在の定説である。その後、フィブリンと鉄の沈着が刺激され、MSについて記載したと多少似通った結果となるが、記憶中枢はβアミロイド蛋白質が最も沈着し易い場所であると思われるので、主に記憶中枢に沈着する。この蛋白質が沈着すると、血液脳関門(BBB)から漏れ易くなり、生体はβアミロイド蛋白質をフィブリン網に閉じ込め、脳神経変性プラークを形成する。これは、生体がこの蛋白質をこの場所で有害物質として認識することを示唆している。次にこれらのフィブリン沈着物は局所炎症応答を強め、疾患の進行に至る。Cortes−Cantoneli et.al.(2009)は先ずフィブリン沈着を増加した後にフィブリン沈着を低減するように設計した一連の実験により、フィブリン沈着のこの原因効果を立証している。他の多くの研究者もアルツハイマー病の発症における炎症の役割を立証している。更に、アルツハイマー病の血管変化はこれらの異常な蛋白質沈着物の原因又は結果である。
【0176】
アルツハイマー病で予想される効果の多くは推論であるが、これらのペプチドは蛋白質沈着物を移動させ、炎症を解消し、損傷組織に流入出する血流を強化/改善することにより、多大な効果があると思われる。
【0177】
慢性創傷の治療
af−FA、af−FB及びimf−C3は慢性創傷の治癒を著しく強化し、これは種々の活性と、これらのペプチドによる線維芽細胞の直接刺激と、サイトカインカスケードにより刺激される血管新生強化により行われる。更に、殆どの慢性創傷は慢性低グレード感染症を伴う。af−FA、af−FB及びimf−C3はこの慢性感染症を認識・排除するように免疫系を刺激し、治癒を速める。
【0178】
af−FAがIgEを脱グリコシル化することにより不活性化できることは知られている。この活性に加え、これらのペプチドはIL−10及びIL−13の放出を誘導する。IL−10はこのプロセスで明らかに重要な役割を果たす。これらのペプチドを取得するために動物血清を使用した後に、高分子蛋白質を含むフラグメントを注射する場合でも、これらの血清フラクションにアナフィラキシーの可能性はないと思われる。
【0179】
慢性炎症症状の治療
af−FA、af−FB及びimf−C3の強い抗炎症活性の結果、全種の慢性炎症が改善される。感染症、自己免疫疾患及び変性疾患に続発する炎症患者にこれらのペプチドを投与すると、その疼痛症状は軽減されよう。
【0180】
慢性疼痛の治療
有意損傷が生じた直後に患者は比較的弱い疼痛期間を過ごす。これらのペプチドの注射に対して患者に見られる応答は、このサイトカイン発現変化が神経機能も変化させ、疼痛線維の感受性を低下させていることを示す。Th1(前炎症性)状態からTh2(抗炎症)状態へのシフトも慢性疼痛の治療に重要な役割を果たす。
【0181】
糖尿病性潰瘍の治療
糖尿病性創傷は2種類の異なるプロセスの結果として生じる。第1は小動脈と毛細血管における慢性動脈不全の発生である。上部組織は生命を維持するために十分な血流が得られないため、破壊し、潰瘍化する。このとき、創傷床は開いているが、循環不良の問題が続くため、創傷床の基部は治癒を促進するために十分な血流が得られない。従って、潰瘍は慢性創傷となり、最終的に感染し、切断が必要になる。他の型の糖尿病性潰瘍は糖尿病性ニューロパチーに起因する。この型の創傷では、患者は持続する不適切な圧力源(例えば足によく合わない靴や、靴の中の異物)を認識するに十分な感覚を患部にもたない。このため、圧力潰瘍が形成されるが、適正な神経支配の不足と循環不良により適正な治癒が妨げられる。
【0182】
これらの血清フラクションに存在するペプチドは、1)血流不良の原因となる脂質及びフィブリンの両者の沈着に作用することにより血管を広げ、2)神経の周囲の炎症変化を弱め、神経細胞の再ミエリン形成を促進し、3)これらの創傷の基部に形成されるフィブリン層を分解し、4)治癒を促進する抗炎症環境を助長し、5)これらの慢性創傷の感染性成分に対処するように免疫系を刺激し、6)線維芽細胞の複製と遊走を刺激し、7)血管細胞の分化を刺激し、血管新生を促進し、8)創傷床へのマクロファージの遊走を促進し、治癒を遅らせる物質の排除を強化する、といった数種類の作用によりこの治癒プロセスを助長する。これらの作用は生体の治癒能を抑える部位から迅速な治癒を促進する環境へと創傷の部位を転換する。
【0183】
反射性交感神経性ジストロフィー
反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)は複合性局所疼痛症候群(CRPS)とも呼ばれ、末梢神経系の神経障害である。RSDの主要症状は傷害の重度に比例しない連続的な激痛であり、時と共に好転せずに悪化する。RSDは腕、脚、手又は足の1本を冒すことが最も多い。疼痛が腕又は脚全体に広がることが多い。典型的な特徴としては、患部四肢又は胴体部分の皮膚の色及び体温の劇的な変化と、それに伴う激しい灼熱痛、皮膚過敏、発汗並びに腫脹が挙げられる。RSDの原因は未だ不明である。場合によっては、交感神経系が疼痛持続に重要な役割を果たす。別の理論によると、RSDは免疫応答の誘導に起因し、患部に発赤、熱及び腫脹の特徴的な炎症症状をもたらす。RSDの治癒法は存在しないので、現在容認されている処置は疼痛症状の緩和のみを目的としている。
【0184】
RSDの原因は不明であるが、これらのペプチドの効果は明らかである。これらのペプチドは免疫系の改善と神経細胞の炎症の軽減によりRSD患者の疼痛を軽減する。これらのペプチドの投与後、患者はほぼ即座に疼痛症状の多くが緩和され、効果は長時間持続する。これらのペプチドの注射に対して患者に認められた応答は、このサイトカイン発現変化が神経機能も変化させ、疼痛線維の感受性を低下させることを示す。Th1(前炎症性)状態からTh2(抗炎症性)状態へのシフトも慢性疼痛の治療に重要な役割を果たすと考えられる。
【0185】
発作、パーキンソン病、更には統合失調症を含む神経障害の治療としての使用
af−FA、af−FB及びimf−C3は刺激を受けた神経細胞における活性を抑え、これらの細胞の周囲の炎症を抑える。この応答は疼痛神経に強い効果があるだけでなく、発作、パーキンソン病、多発性硬化症、更には統合失調症の治療にも重要な役割を果たす。
【0186】
疾患の予防
本願ではこれらのペプチドが多大な治療効果をもつ多数の疾患のうちのごく少数について記載する。しかし、恐らくペプチドの最大の用途は疾患の予防にある。定期的に投与すると、これらのペプチドの活性は本質的に老化防止効果がある。総合すると、これらのペプチドを投与する効果は周知の老化プロセスと全く逆である。この最良の例は恐らくペプチドAが熱傷及び化学火傷による細胞及び組織損傷を阻止する能力である。これらのペプチドの1種(ペプチドA)の皮下投与後、同一度数の火傷に到達するために必要な化学火傷又は熱傷の量は実質的に増加した。これはこれらのペプチドの保護効果を立証するものである。更に、老化プロセスにおけるフィブリン沈着の役割は周知である。従って、これらの沈着物を予防することができるならば、老化プロセスは著しく遅れるであろう。また、成人に存在する後天性免疫を低下させずに、幼児の免疫応答に近似するように免疫応答を変化させる。免疫系の機能のこの変化はこれらの老化変化を防ぎ、既存の老化プロセスをある程度まで逆行させることもできる。
【0187】
本発明の実施例
af−FA、af−FB及びimf−C3を含む天然血清フラクション:これらのペプチドを含む多くの血清フラクションが既に疾患治療用に作製され、試験されている。しかし、これらのペプチドはこれらの製剤の活性成分とは認められていない。
【0188】
合成af−FA、af−FB及びimf−C3:これらのペプチドの天然形態は周知治療薬には従来認められていないが、治療薬によっては活性成分とすることができる。ヒトにおけるフィブリノペプチドAの合成形態も実験用に容易に入手可能であるが、動物又はヒト用に許容可能な形態は容易に入手できない。更に、分子を活性化させるために末端アルギニンを脱離することは認められておらず、注文合成でしか入手できない。この活性化は治療効果に重要であり、カルボキシペプチダーゼB活性はヒトでは他の哺乳動物よりも非常に低いので、注文合成が好ましい。
【0189】
治療活性を確証し、未活性化(末端アルギニンが結合したままの)af−FA、af−FB及びimf−C3を活性形態と比較するためには、天然に得られたペプチドとペプチドの合成形態を使用する比較試験を実施する必要がある。予備データによると、af−FA、af−FB及びimf−C3の合成形態は生物活性に関する限り、天然形態と同等である。更に、(末端アルギニンを脱離した)活性化形態は未活性形態よりも著しく生物活性が強い。このデータは上記プロセスを含む多数の疾患プロセスの治療薬として合成af−FA、af−FB及びimf−C3が有効であることを強く裏付けるものである。
【0190】
同様の特徴の合成産物:厳密な配列の使用に加え、異なる種に由来するこのペプチドの構造相同性から、類似構造をもつ任意ペプチドが生物学的に活性であると考えられる。これらの構造類似性をもつ任意型のペプチドが同一の生物活性を含むと考えられるが、天然由来配列が最も安全で最も活性であると予想される。
【0191】
自家ワクチン:動物及びヒト両者のaf−FA、af−FB及びimf−C3の天然及び合成形態の治療活性に加え、このデータによると、これらのペプチドを取得する資源として患者自身の血液も利用できる。日常的な分析用採血と同様に患者の血液を採取し、患者自身のaf−FA及びaf−FBの放出と活性化を助長するための簡単な工程を経た後、これらのペプチドを濾過し、患者に再注入する。この方法は任意型の外来蛋白質に付随する全問題を解消し、上記疾患を含む多数の異なる疾患プロセスを治療するために利用することができる。
【0192】
疾患予防用免疫:af−FA、af−FB及びimf−C3の作用メカニズムから判断すると、これらの分子は疾患の予防方法として利用できる。病原体に暴露されたことが分かっている患者において、この治療薬は生体が症候性になる前に生体が疾患を排除する能力を強化する。
【0193】
ワクチンアジュバントとしての利用:B細胞の寿命の延長と外来分子に対する活性増加から判断すると、この治療薬を現行ワクチン接種のアジュバントとして利用し、生体の応答を増加する環境にワクチン分子を提示することもできる。
【0194】
【表6】

【0195】
本発明の他の態様及び使用は本願に開示する本発明の詳細な説明と実施に鑑みて当業者に容易に理解されよう。全刊行物、米国及び外国特許及び特許出願を含めた全引用文献は本願に具体的に全文を援用するものとする。更に、「含む」なる用語は「から構成される」なる用語と「から本質的に構成される」なる用語を包含する。詳細な説明と実施例は単なる例示とみなし、本発明の真の範囲と趣旨は以下の特許請求の範囲に記載する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1〜5、7〜9、11〜13、15、16及び20〜22から構成される群から選択される配列、フィブリノペプチドAの配列、フィブリノペプチドAを産生する哺乳動物種間で実質的に相同のフィブリノペプチドAの領域の配列、補体C3の配列、並びに1以上の保存アミノ酸置換を含む上記配列を含むペプチドを含有する製剤であって、検出可能なフィブリノペプチドBを実質的に含有しない前記製剤。
【請求項2】
更に医薬的に許容可能な担体を含有する請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
医薬的に許容可能な担体が水、油脂、食用油、脂肪酸、脂質、多糖類、セルロース、グリセリン、グリコール及びその組合せから構成される群から選択される請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
食用油がレモン油、ペパーミント油又はブドウ種子油である請求項3に記載の製剤。
【請求項5】
経口、経粘膜、非経口、リンパ又は静脈内投与用に製剤化されている請求項1に記載の製剤。
【請求項6】
製剤の生物学的に活性な形態を生理的に有効な濃度で患者の系統内に放出する請求項1に記載の製剤。
【請求項7】
栄養補助食品である請求項1に記載の製剤。
【請求項8】
生物資源から精製されるか又は合成製造される請求項1に記載の製剤。
【請求項9】
フィブリノペプチドA又はそのフラグメントと、医薬的に許容可能な担体を含有する医薬組成物であって、フィブリノペプチドA又はそのフラグメントが治療有効量であり、治療有効量が0.1mg〜500mgである前記医薬組成物。
【請求項10】
治療有効濃度が患者の血管外及び内膜下スペース内のフィブリンの沈着を防止し、吸収を刺激する請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
治療有効濃度が冠動脈疾患に伴うフィブリン沈着物の沈着を防止し、吸収を刺激する請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
治療有効濃度で非毒性であり、検出可能なフィブリノペプチドBを実質的に含まない請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
フィブリノペプチドA又はそのフラグメントがフィブリノペプチドAのヒト配列に由来する請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
フィブリノペプチドA又はそのフラグメントがフィブリノペプチドAの非ヒト配列に由来する請求項9に記載の組成物。
【請求項15】
非ヒト配列が哺乳動物に由来する請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
哺乳動物がウマ、ネコ、イヌ、ウシ、ヤギ、ヒツジ及びマウスから構成される群から選択される請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
患者の疾患の治療又は予防方法であって、
フィブリノペプチドBを含有せず、非ヒト哺乳動物に由来するフィブリノペプチドA又はそのフラグメントと、医薬的に許容可能な担体を含有する医薬組成物を準備する段階と;
フィブリノペプチドA又はそのフラグメントが投与後5分以内に患者のリンパ系内で治療有効レベルに達するような用量の前記組成物を前記患者に経粘膜投与する段階を含む前記方法。
【請求項18】
患者がヒトである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
疾患が血管炎症である請求項17に記載の方法。
【請求項20】
疾患が冠動脈疾患である請求項17に記載の方法。
【請求項21】
単回用量が活性成分0.1mg〜10mgを含有する請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記用量の組成物を患者に投与する段階が初期投与とその後の連続投与を含み、連続投与を少なくとも7日間反復しない請求項17に記載の方法。
【請求項23】
経粘膜投与が経口である請求項17に記載の方法。
【請求項24】
フィブリノペプチドA又はそのフラグメントがサイトカインIL1β、IL−10の放出を刺激し、IL−1、IL−4又はTNFαの放出を刺激しない請求項17に記載の方法。
【請求項25】
患者のフィブリノペプチドBの活性を抑制する請求項17に記載の方法。
【請求項26】
フィブリノペプチドB結合剤の投与によりフィブリノペプチドBの活性を抑制する請求項25に記載の方法。
【請求項27】
フィブリンの沈着を予防し、患者の血管内に沈着したフィブリンを吸収する方法であって、
フィブリノペプチドA又はそのフラグメントと医薬的に許容可能な担体を含有する医薬組成物を準備する段階と;
フィブリノペプチドA又はそのフラグメントが患者のリンパ系内で治療有効レベルに達するように前記組成物を前記患者に投与する段階を含む前記方法。
【請求項28】
患者がヒトである請求項27に記載の方法。
【請求項29】
フィブリノペプチドA又はそのフラグメントが非ヒトフィブリノペプチドAの哺乳動物配列に由来する請求項27に記載の方法。
【請求項30】
組成物を経粘膜投与によりリンパ系に直接投与する請求項27に記載の方法。
【請求項31】
患者に投与する段階が初期投与とその後の連続投与を含み、連続投与が1週間に1回以下である請求項27に記載の方法。
【請求項32】
複数成分を含み、粒状物が除去されており、実質的に全成分が約1,200ダルトン〜約1,700ダルトンの分子量範囲内である哺乳動物の血清フラクション。
【請求項33】
哺乳動物がウマ、ネコ、イヌ、ウシ、ヤギ、ヒツジ及びマウスから構成される群から選択される請求項32に記載のフラクション。
【請求項34】
配列番号6、10、14及び17〜19から構成される群から選択される配列、フィブリノペプチドBの配列、並びにフィブリノペプチドBを産生する哺乳動物種間で実質的に相同のフィブリノペプチドのB領域の配列を含むペプチドを含有する製剤であって、検出可能なフィブリノペプチドAを実質的に含有しない前記製剤。
【請求項35】
更に医薬的に許容可能な担体を含有する請求項34に記載の製剤。
【請求項36】
医薬的に許容可能な担体が水、油脂、食用油、脂肪酸、脂質、多糖類、セルロース、グリセリン、グリコール及びその組合せから構成される群から選択される請求項35に記載の製剤。
【請求項37】
食用油がレモン油、ペパーミント油又はブドウ種子油である請求項36に記載の製剤。
【請求項38】
経口、経粘膜、非経口、リンパ又は静脈内投与用に製剤化されている請求項34に記載の製剤。
【請求項39】
製剤の生物学的に活性な形態を生理的に有効な濃度で患者の系統内に放出する請求項34に記載の製剤。
【請求項40】
栄養補助食品である請求項34に記載の製剤。
【請求項41】
生物資源から精製されるか又は合成製造される請求項34に記載の製剤。
【請求項42】
患者の疾患の治療又は予防方法であって、
検出可能なフィブリノペプチドAを実質的に含有せず、非ヒト哺乳動物に由来するフィブリノペプチドB又はそのフラグメントと、医薬的に許容可能な担体を含有する医薬組成物を準備する段階と;
フィブリノペプチドB又はそのフラグメントが投与後5分以内に患者のリンパ系内で治療有効レベルに達するような用量の前記組成物を前記患者に経粘膜投与する段階を含む前記方法。
【請求項43】
患者がヒトである請求項42に記載の方法。
【請求項44】
疾患が自己免疫疾患である請求項42に記載の方法。
【請求項45】
自己免疫疾患が関節炎、クローン病、セリアック病、1型糖尿病 、グレーブス病、特発性血小板減少性紫斑病、乾癬、強皮症、全身性エリテマトーデス及び潰瘍性大腸炎から構成される群から選択される請求項44に記載の方法。
【請求項46】
疾患が免疫調節障害である請求項42に記載の方法。
【請求項47】
免疫調節障害が免疫系機能亢進である請求項46に記載の方法。
【請求項48】
単回用量が活性成分0.1mg〜10mgを含有する請求項42に記載の方法。
【請求項49】
複数成分を含み、粒状物が除去されており、実質的に全成分が約800ダルトン〜約2,300ダルトンの分子量範囲内である哺乳動物の血清フラクション。
【請求項50】
哺乳動物がウマ、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ヒツジ及びマウスから構成される群から選択される請求項49に記載のフラクション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−520306(P2012−520306A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−554122(P2011−554122)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/026665
【国際公開番号】WO2010/104854
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(511219467)
【出願人】(511219478)
【Fターム(参考)】