免震ユニット
【課題】振幅が大きな地震に対して、免震効果が得られる免震ユニットの提供。
【解決手段】上部構造物に固定されうる上側部材と、基礎部材に固定されうる下側部材と、上側部材と下側部材との間に摺動自在に挟まれた摺動部材とを具備し、上側部材の摺動部材との当接面と下側部材の摺動部材との当接面とが、いずれも凹面であり、上側部材と下側部材とが、いずれも周縁部において内側に突き出る突状部を有し、摺動部材が、上側部材と当接する凸状の上側面と、下側部材と当接する凸状の下側面と、上側面と下側面との間に存在する周状の側部とにより形成され、摺動部材の側部の周方向の全部又は一部に凹部が存在し、摺動部材が上側部材と下側部材との間で摺動する場合において、上側部材の周縁部の突状部と下側部材の周縁部の突状部とが、摺動部材の側部の凹部と係合しうる、免震ユニット。
【解決手段】上部構造物に固定されうる上側部材と、基礎部材に固定されうる下側部材と、上側部材と下側部材との間に摺動自在に挟まれた摺動部材とを具備し、上側部材の摺動部材との当接面と下側部材の摺動部材との当接面とが、いずれも凹面であり、上側部材と下側部材とが、いずれも周縁部において内側に突き出る突状部を有し、摺動部材が、上側部材と当接する凸状の上側面と、下側部材と当接する凸状の下側面と、上側面と下側面との間に存在する周状の側部とにより形成され、摺動部材の側部の周方向の全部又は一部に凹部が存在し、摺動部材が上側部材と下側部材との間で摺動する場合において、上側部材の周縁部の突状部と下側部材の周縁部の突状部とが、摺動部材の側部の凹部と係合しうる、免震ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は免震ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、免震装置において、支承する建築物や床上の物品の下側に、滑動又は転動をしうる部材を介在させることが知られている。
例えば、特許文献1には、免震面形成用上側基盤の下面中心部に、下端を露出させた状態で免震用球体を回転自在に収装した球体保持金具を固設し、当該上側基盤の下面側に対向させて設けた基礎面形成用下側基盤の中心部に、上記免震用球体の下端を転動可能に接触させるように成した免震作用を司る免震制御用基構部に対して、衝撃を吸収する無反発ゴム材で形成した復元用円筒状外装を、その上端縁を前記免震面形成用上側基盤の周縁に、また、その下端縁を上記基礎面形成用下側基盤の周縁にそれぞれ連結することによって、当該免震制御用基構部の側周面部分を覆うように構成してなる免震用盤体が記載されている。
また、特許文献2には、電子機器に突設される脚体と、前記脚体を摺動可能に支承する台座とよりなる電子機器の台足において、前記脚体の下端部が曲率半径を有する球面状の凸面に形成されるとともに、前記凸部と摺動可能な前記台座の受け面が、該曲率半径よりも大きい曲率半径を有する中央部と該中央部を中心としてすりばち状に傾斜した面とを備え、且つ前記台座の底面部が平滑面に形成されてなることを特徴とする電子機器の台足が記載されている。
【0003】
さらに、特許文献3には、上部構造物に固定され凹状の球面部分が形成された上側部材と、基礎部材に支持され凹状の球面部分が形成された下側部材と、前記上側部材と前記下側部材との間に介在する上下が対称的な凸状の球面部分を有する剛性の転動部材と、が備えられた制震装置であって、前記転動部材は、金属球と当該金属球を回転自在に保持する保持部材で構成され、前記保持部材は硬質ゴム性の弾性部材であることを特徴とする制震装置が記載されている。
さらに、特許文献4には、上部構造物に固定され内面が凹状の曲面部分が形成された上側部材と、基礎部材に支持され内面が凹状の曲面部分が形成された下側部材と、前記上側部材と前記下側部材との間に介在する上下が対称的な凸状の曲面部分を有する転動部材とを備えた免震装置であって、前記転動部材は、全体形状が略円盤状に形成されており、曲面に形成された中央部と、前記曲面に滑らかに接続する平板面が形成された周辺部を有することを特徴とする免震装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特開2007−24123号公報
【特許文献2】 特許第3058364号公報
【特許文献3】 実用新案登録第3117029号公報
【特許文献4】 特開2006−283959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の免震用盤体及び特許文献2に記載の電子機器の台足は、いずれも振幅が大きな地震に対して、効果が得られるものではなかった。
具体的には、家屋等の建築物においては、地震の振幅が増幅され、建築物自体が受ける揺れの振幅が大きくなるときがあるが、特許文献1に記載の免震用盤体は、球体が転動しうる範囲が狭いため、そのような振幅が大きい揺れに対して、効果が得られない。特許文献2に記載の電子機器の台足は、構造上、脚体の電子機器との接続部に大きな応力がかかりやすいため、大きな振幅の揺れでその接続部付近が破損しやすい。よって、振幅が大きな地震に対しては、破損が生じやすいという問題があった。
また、特許文献3に記載の制震装置及び特許文献4に記載の免震装置は、ある程度大きな揺れには対応することができるものの、上側部材が下側部材に対応する位置から完全にずれてしまうことを防止することができていない。
【0006】
したがって、本発明は、振幅が大きな地震に対して、免震効果が得られる免震ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の(1)〜(10)を提供する。
(1)上部構造物に固定されうる上側部材と、
基礎部材に固定されうる下側部材と、
前記上側部材と前記下側部材との間に摺動自在に挟まれた摺動部材と
を具備し、
前記上側部材の前記摺動部材との当接面と前記下側部材の前記摺動部材との当接面とが、いずれも凹面であり、
前記上側部材と前記下側部材とが、いずれも周縁部において内側に突き出る突状部を有し、
前記摺動部材が、前記上側部材と当接する凸状の上側面と、前記下側部材と当接する凸状の下側面と、前記上側面と前記下側面との間に存在する周状の側部とにより形成され、
前記摺動部材の前記側部の周方向の全部又は一部に凹部が存在し、
前記摺動部材が前記上側部材と前記下側部材との間で摺動する場合において、前記上側部材の前記周縁部の突状部と前記下側部材の前記周縁部の前記突状部とが、前記摺動部材の前記側部の前記凹部と係合しうる、免震ユニット(本発明の第1の態様)。
(2)前記摺動部材の前記上側面と前記下側面との両方又は一方が、曲面により形成されている、上記(1)に記載の免震ユニット。
(3)前記摺動部材の前記上側面と前記下側面との両方又は一方が、頂部が曲面により形成され、前記頂部の周囲が複数の平面により形成されている、上記(1)又は(2)に記載の免震ユニット。
(4)前記摺動部材の前記上側面と前記下側面との両方又は一方が、頂部が複数の平面により形成され、頂部の周囲が前記頂部の前記平面より水平方向に対する傾斜度の大きい複数の平面により形成されている、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の免震ユニット。
【0008】
(5)上部構造物に固定されうる上側部材と、
基礎部材に固定されうる下側部材と、
前記下側部材の上部に、前記上側部材と当接して前記上側部材との間で摺動自在に、かつ、首振り自在に設けられた摺動部材と
を具備し、
前記上側部材の前記摺動部材との当接面が、凹面であり、
前記上側部材が、周縁部において内側に突き出る突状部を有し、
前記摺動部材が、前記上側部材と当接する凸状の上側面と、前記上側面から連なる周状の側部とを有し、
前記摺動部材の前記側部の周方向の全部又は一部に凹部が存在し、
前記摺動部材が前記上側部材との間で摺動する場合において、前記上側部材の前記周縁部の突状部が、前記摺動部材の前記側部の前記凹部と係合しうる、免震ユニット(本発明の第2の態様)。
(6)前記摺動部材が、前記下側部材に首振り機構部を介して設けられている、上記(5)に記載の免震ユニット。
(7)前記摺動部材が、前記下側部材に弾性体を介して設けられている、上記(5)に記載の免震ユニット。
(8)前記摺動部材の前記上側面が、曲面により形成されている、上記(5)〜(7)のいずれかに記載の免震ユニット。
(9)前記摺動部材の前記上側面が、頂部が曲面により形成され、前記頂部の周囲が複数の平面により形成されている、上記(5)〜(7)のいずれかに記載の免震ユニット。
(10)前記摺動部材の前記上側面が、頂部が複数の平面により形成され、前記頂部の周囲が前記頂部の前記平面より水平方向に対する傾斜度の大きい複数の平面により形成されている、上記(5)〜(7)のいずれかに記載の免震ユニット。
【発明の効果】
【0009】
本発明の免震ユニットは、振幅が大きな地震に対しても、免震効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】 本発明の第1の態様の免震ユニットの一例を示す模式的な部分断面図である。
【図2】 振幅が極めて大きくなった場合における本発明の第1の態様の免震ユニットの一例の模式的な部分断面図である。
【図3】 摺動部材の一例の模式的な平面図である。
【図4】 摺動部材の一例の模式的な側面図である。
【図5】 摺動部材の一例の模式的な断面図である。
【図6】 摺動部材の別の一例の模式的な平面図である。
【図7】 摺動部材の別の一例の模式的な側面図である。
【図8】 摺動部材の別の一例の模式的な断面図である。
【図9】 本発明の第2の態様の免震ユニットの一例を示す模式的な部分断面図である。
【図10】 摺動部材の一例の模式的な側面図である。
【図11】 振幅が極めて大きくなった場合における本発明の第2の態様の免震ユニットの一例の模式的な部分断面図である。
【図12】 本発明の第2の態様の免震ユニットの別の一例を示す模式的な部分断面図である。
【図13】 摺動部材の別の一例の模式的な平面図である。
【図14】 本発明の第2の態様の免震ユニットの更に別の一例を示す模式的な部分断面図である。
【図15】 摺動部材の更に別の一例の模式的な平面図である。
【0011】
【図16】 本発明の第2の態様の免震ユニットの更に別の一例を示す模式的な部分断面図である。
【図17】 摺動部材の更に別の一例の模式的な平面図である。
【図18】 振幅が極めて大きくなった場合における本発明の第2の態様の免震ユニットの更に別の一例の模式的な部分断面図である。
【図19】 本発明の第2の態様の免震ユニットの更に別の一例を示す模式的な部分断面図である。
【図20】 摺動部材の更に別の一例の模式的な平面図である。
【図21】 本発明の第2の態様の免震ユニットの更に別の一例を示す模式的な部分断面図である。
【図22】 摺動部材の更に別の一例の模式的な平面図である。
【図23】 揺れが生じた場合における本発明の第1の態様の免震ユニットの一例の模式的な部分断面図である。
【図24】 揺れが生じた場合における本発明の第2の態様の免震ユニットの更に別の一例の模式的な部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の免震ユニットを添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。初めに、本発明の第1の態様の免震ユニットについて説明する。
図1は、本発明の第1の態様の免震ユニットの一例を示す模式的な部分断面図である。
図1に示されるように、本発明の第1の態様の免震ユニット100は、
上部構造物1に固定されうる上側部材2と、
基礎部材3に固定されうる下側部材4と、
上側部材2と下側部材4との間に摺動自在に挟まれた摺動部材5と
を具備する。
【0013】
上部構造物1は、特に限定されないが、例えば、精密機器(例えば、コンピュータサーバ、多機能コピー機)、美術品収納ケース等の物品が挙げられる。
基礎部材3は、例えば、床、建築の基礎部が挙げられる。
【0014】
上側部材2の摺動部材5との当接面22と下側部材4の摺動部材5との当接面42とは、いずれも凹面である。
凹面の形状は、全体として周縁部から中央にかけて窪みが深くなっている形状であれば特に限定されず、全体が曲面により構成されていてもよく、一部又は全部が1個以上の平面により構成されていてもよい。このように、当接面22と当接面42とがいずれも凹面であることにより、揺れにより上側部材2と下側部材4との位置関係がずれた場合であっても、摺動部材5を介して、元に戻りやすい。
中でも、当接面22の凹面の形状は、摺動部材5の上側面51の形状よりも、曲率半径が大きいのが好ましい。この場合、摺動部材5の摺動がより円滑になる。また、同様に、当接面42の凹面の形状は、摺動部材5の下側面53の形状よりも、曲率半径が大きいのが好ましい。
上側部材2と下側部材4との平面形状は、特に限定されないが、円形(実質的に円形であるものを含む。)又は正多角形(好ましくは頂点が8個以上のもの)であるのが好ましい。このような平面形状であると、全方向の揺れに対して、均一に性能を発揮することが可能となる。
【0015】
上側部材2と下側部材4とは、それぞれ周縁部において内側に突き出る突状部21、41を有している。
図2は、振幅が極めて大きくなった場合における本発明の第1の態様の免震ユニットの一例の部分断面図である。図2に示されるように、突状部21、41は、振幅が極めて大きくなった場合に、摺動部材5の側部55の凹部52と係合した状態となり、これにより、本発明の第1の態様の免震ユニット100が大きな免震効果を発揮するようになる。
【0016】
上側部材と下側部材とにおいては、突状部が周縁部の全部にわたって形成されていてもよく、一部のみに形成されていてもよいが、一部のみに形成する場合であっても、摺動部材の側部の凹部と係合しうるものとする。
【0017】
上側部材2及び下側部材4の材質は、特に限定されず、例えば、金属、セラミックス、プラスチックが挙げられる。耐久性に優れる点では、金属が好ましく、鉄又は鉄合金、アルミニウム合金であるのがより好ましく、鉄又は鉄合金であるのが更に好ましい。また、重さが軽い点では、プラスチックが好ましい。中でも、廃プラスチック(廃プラ)は低価格である点で好ましい。
【0018】
上側部材2の摺動部材5との当接面22と下側部材4の摺動部材5との当接面42とには、摺動部材5の摺動を円滑にするために、あらかじめコーティング処理を施しておいたり、潤滑剤を塗布しておいたりするのが好ましい態様の一つである。
【0019】
摺動部材5は、上側部材2と当接する凸状の上側面51と、下側部材4と当接する凸状の下側面53と、上側面51と下側面53との間に存在する周状の側部55とにより形成されている。
図3〜図5は、摺動部材5を示す模式図である。図3は、摺動部材の一例の模式的な平面図であり、図4は、摺動部材の一例の模式的な側面図であり、図5は、摺動部材の一例の模式的な断面図である。
図3〜図5に示されるように、摺動部材5の凸状の上側面51及び下側面53は、いずれも、頂部50が曲面により形成され、頂部50の周囲が12個の平面により形成されている。
より詳細に説明すると、摺動部材5の上側面51及び下側面53においては、いずれも、頂部50がお椀状の曲面により形成され、頂部50の周縁は円を形成しており、頂部50の周囲が同一形状の12個の平面を有し、これらの平面が頂部50の周縁から上側面51及び下側面53の周縁部54まで存在している
【0020】
図6〜図8は、摺動部材5とは別の態様の摺動部材6を示す模式図である。図6は、摺動部材の別の一例の模式的な平面図であり、図7は、摺動部材の別の一例の模式的な側面図であり、図8は、摺動部材の別の一例の模式的な断面図である。
図6〜図8に示されるように、摺動部材6は、上側部材2と当接する凸状の上側面61と、下側部材4と当接する凸状の下側面63と、上側面61と下側面63との間に存在する周状の側部65とにより形成されている。
摺動部材6の凸状の上側面61及び下側面63は、いずれも、頂部60が12個の平面により形成され、頂部60の周囲が頂部60の平面より水平方向に対する傾斜度の大きい複数の平面により形成されている。
より詳細に説明すると、摺動部材6の上側面61及び下側面63においては、いずれも、頂部60が同一形状の12個の平面により形成され、頂部60の周縁は正12角形を形成しており、頂部60の周囲が同一形状の12個の平面を有し、これらの平面が頂部60の周縁から上側面61及び下側面63の周縁部64まで存在している。
【0021】
本発明の第1の態様においては、摺動部材の上側面及び下側面の形状は、これらに限定されない。以下、本発明の第1の態様における摺動部材の上側面及び下側面の形状について詳細に説明する。
【0022】
本発明の第1の態様においては、摺動部材の上側面及び下側面は、いずれも凸状であれば、特に限定されない。上側面及び下側面の形状は、同一であってもよく、異なっていてもよい。以下、上側面を例に挙げて説明するが、下側面についても同様である。
本発明の第1の態様においては、上側面は、曲面のみにより形成されている態様(以下「態様A」ともいう。)、頂部が曲面により形成され、前記頂部の周囲が複数の平面により形成されている態様(以下「態様B」ともいう。)、頂部が複数の平面により形成され、頂部の周囲が前記頂部の前記平面より水平方向に対する傾斜度の大きい複数の平面により形成されている態様(以下「態様C」ともいう。)、頂部が複数の平面により形成され、前記平面が頂部の中心から周縁部まで存在している態様(以下「態様D」ともいう。)が好適に挙げられる。中でも、態様A、態様B、態様Cが好ましい。
態様Aは、転がり抵抗が生じる状態と摩擦抵抗が生じる状態との相互の移行が円滑に生じる点、周縁方向における抵抗の変化が円滑に生じる点に利点がある。
態様Bは、摩擦抵抗が生じる状態において、摺動部材が上側部材及び下側部材とそれぞれ4点で接触するため、高い摩擦抵抗が生じる点に利点がある。
態様Cは、摩擦抵抗が生じる状態において、揺れが小さいと、摺動部材が上側部材及び下側部材とそれぞれ3点で接触し、揺れが大きいと、摺動部材が上側部材及び下側部材とそれぞれ4点で接触するため、揺れの大きさに応じて摩擦抵抗が変化する点に利点がある。特に、橋脚、細長いビル等の細長い形状の構造物に対して、免震効果が優れる。
【0023】
態様Aにおいては、曲面の形状は特に限定されないが、曲面の水平方向に対する傾斜度が、頂部から周縁部に向かって大きくなっていくのが好ましい。曲面の形状は、周縁方向において、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0024】
態様Bにおいては、曲面の形状は特に限定されないが、曲面の水平方向に対する傾斜度が、頂部から周縁部に向かって大きくなっていくのが好ましい。曲面の形状は、周縁方向において、同じであってもよく、異なっていてもよい。
頂部の周囲の平面の周縁方向の数は、複数(2個以上)である。中でも、4個以上であるのが好ましい。上記範囲であると、全方向の揺れに対して、均一に機能を発揮することができる。また、12個以下であるのが好ましい。上記範囲であると、製造が容易である。頂部の周囲の平面の周縁方向の数が4個である場合は、橋脚、細長いビル等の細長い形状の構造物に対して、免震効果が優れる。
複数の平面の形状は、同一であってもよく、異なっていてもよい。中でも、同一であるのが好ましい。
平面の存在位置は、頂部の周縁から、上側面の周縁部まで存在していてもよく、頂部の周縁と上側面の周縁部との間の任意の位置まで存在していてもよい。平面が頂部の周縁から頂部の周縁と上側面の周縁部との間の任意の位置まで存在している場合、その位置と周縁部との間までは、曲面により形成することができる。平面の存在位置は、周縁方向において、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
平面の放射方向の数は、頂部の周囲から上側面の周縁部まで1個であってもよく(例えば、図3〜図5に示される摺動部材5)、2個以上であってもよい。頂部の周囲から上側面の周縁部まで放射方向に2個以上の平面が配置されている場合、頂部の周囲から上側面の周縁部に向かうに従って水平方向に対する傾斜度が大きくなっているのが好ましい。
頂部の周縁付近において、平面の水平方向に対する傾斜度は、曲面の水平方向に対する傾斜度よりも大きくなっているのが好ましい。
【0025】
また、態様Cにおいては、頂部の平面の周縁方向の数は、複数(2個以上)である。中でも、4個以上であるのが好ましい。上記範囲であると、全方向の揺れに対して、均一に機能を発揮することができる。また、12個以下であるのが好ましい。上記範囲であると、製造が容易である。頂部の周囲の平面の周縁方向の数が4個である場合は、橋脚、細長いビル等の細長い形状の構造物に対して、免震効果が優れる。
複数の頂部の平面の形状は、同一であってもよく、異なっていてもよい。中でも、同一であるのが好ましい。
頂部の周囲の平面の存在位置は、頂部の周縁から、上側面の周縁部まで存在していてもよく、頂部の周縁と上側面の周縁部との間の任意の位置まで存在していてもよい。平面が頂部の周縁から上側面の周縁部との間の任意の位置まで存在している場合、その位置から上側面の周縁部までは、曲面により形成することができる。平面の存在位置は、周縁方向において、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
平面の放射方向の数は、頂部の周縁から上側面の周縁部まで1個であってもよく(例えば、図6〜図8に示される摺動部材6)、2個以上であってもよい。頂部の周囲から上側面の周縁部まで放射方向に2個以上の平面が配置されている場合、頂部の周囲から上側面の周縁部に向かうに従って水平方向に対する傾斜度が大きくなっているのが好ましい。
頂部の周縁付近において、平面の水平方向に対する傾斜度は、曲面の水平方向に対する傾斜度よりも大きくなっているのが好ましい。
頂部の周縁付近において、頂部の平面の周縁方向の数と、頂部の周囲の平面の周縁方向の数とは、異なっていても、同一であってもよい。中でも、同一であるのが好ましく、さらに、頂部の平面の端部と頂部の周囲の平面の端部とが同じ位置にあるのがより好ましい。
【0026】
摺動部材5は、上述した形状の上側面51と下側面53と、それらの間に存在する周状の側部55とにより形成されている。
摺動部材5においては、側部55の周方向の全部に凹部52が存在するが、本発明の第1の態様はこれに限定されず、側部の周方向の一部に凹部が存在するものであってもよい。
摺動部材の側部の周方向の全部に凹部が存在する場合は、摺動部材の向きにかかわらず、上側部材及び下側部材の突状部と容易に係合することができる。
摺動部材の側部の周方向の一部のみに凹部が存在する場合は、凹部でない部分があるため、摺動部材の上下方向の強度がより高くなる。
【0027】
摺動部材5は、一体的に形成されていてもよく、複数の部材を組み合わせて形成されていてもよい。
【0028】
摺動部材5の材質は、特に限定されず、例えば、金属、セラミックスが挙げられる。中でも、耐久性の点で、金属であるのが好ましく、鉄又は鉄合金、アルミニウム合金であるのがより好ましく、鉄又は鉄合金であるのが更に好ましい。
【0029】
摺動部材5の上側面51と下側面53とには、摺動部材5の摺動を円滑にするために、あらかじめコーティング処理を施しておいたり、潤滑剤を塗布しておいたりするのが好ましい態様の一つである。
【0030】
摺動部材5は、上側部材2と下側部材4との間で摺動することができるように挟まれている。この場合において、上側部材2の周縁部の突状部21と下側部材4の周縁部の突状部41とが、摺動部材5の側部55の凹部52と係合しうるようになっている。
【0031】
本発明の第1の態様の免震ユニット100の作用について説明する。
図1に示されるように、免震ユニット100は、通常、摺動部材5が、上部構造物1に固定された上側部材2及び基礎部材3に固定された下側部材4と、これらの当接面22、42の各中央部において当接するように設置される(この位置を「当初位置」という。)。
【0032】
図23は、揺れが生じた場合における本発明の第1の態様の免震ユニットの一例の模式的な部分断面図である。
地震等により揺れが生じ、図23に示されるように、下側部材4が図中右にずれた場合は、下側部材4と当接している摺動部材5に力が伝達され、摺動部材5は図中反時計廻りに傾く。このように、摺動部材5が傾くことにより、揺れのエネルギーを吸収することができる。
また、摺動部材5は、傾いた状態、傾いた状態から自重で戻ろうとしている状態又は戻った状態において、上側部材2と下側部材4との間に挟まれながら摺動する。この摺動は、摺動部材5と上側部材2及び下側部材4との間に摩擦力を生じさせる。このように、摺動部材5が摺動することによっても、揺れのエネルギーを吸収することができる。
この摺動部材5の摺動は、揺れが生じて当初位置からずれた場合、上側部材2の摺動部材5との当接面22と下側部材4の摺動部材5との当接面42とがいずれも凹面であり、かつ、上側部材2と当接する上側面51と下側部材4と当接する下側面53とがいずれも凸状であるために生じる、当初位置に戻ろうとする復元力によっても引き起こされる。そのため、本発明の第1の態様の免震ユニットにおいては、揺れのエネルギーを吸収する効率が極めて高くなる。
このような動作は、水平方向の全方向に対して可能である。
【0033】
地震の振幅が極めて大きくなると、例えば、図2に示されるように、基礎部材3に固定された下側部材4が、上部構造物1に固定された上側部材2に対して、相対的に図中右側に大きくずれた状態となり、摺動部材5の側部55の凹部52の図中の左の部分が下側部材4の周縁部(図中、その左の部分)の突状部41と係合し、かつ、摺動部材5の側部55の凹部52の図中の右の部分が上側部材2の周縁部(図中、その右の部分)の突状部41と係合する。
このように、下側部材4が摺動部材5を介して上側部材2に対して引っ掛かり、この状態から更に(図中右側に)ずれることができないようになっている。よって、上側部材2が下側部材4に対応する位置から完全に外れてしまうことがない。
しかも、図2に示されるように、下側部材4が上側部材2に対して相対的に図中右側にずれるような力を受けている場合に、摺動部材5は、左側から下側部材4により右向きに力を受け、かつ、右側から上側部材2により左向きに力を受けているため、全体として左下から右上の方向にやや傾いた状態となっている。よって、摺動部材5の自重によって、上側部材2を右側に、下側部材4を左側に動かす力が生じ、この力は、振幅によってずれた向きと反対の向きに、すなわち、上側部材2及び下側部材4の相対位置を復元させるように働く。
【0034】
つぎに、本発明の第2の態様の免震ユニットについて説明する。
図9は、本発明の第2の態様の免震ユニットの一例を示す模式的な部分断面図である。
図9に示されるように、本発明の第2の態様の免震ユニット200は、
上部構造物1に固定されうる上側部材20と、
基礎部材3に固定されうる下側部材9と、
下側部材9の上部に、上側部材20と当接して上側部材20との間で摺動自在に、かつ、首振り自在に設けられた摺動部材7と
を具備する。
【0035】
上部構造物1及び基礎部材3は、上述した本発明の第1の態様におけるのと同様である。
【0036】
上側部材20の摺動部材7との当接面22は、凹面である。
凹面の形状は、全体として周縁部から中央にかけて窪みが深くなっている形状であれば特に限定されず、全体が曲面により構成されていてもよく、一部又は全部が1個以上の平面により構成されていてもよい。
中でも、当接面22の凹面の形状は、摺動部材7の上側面72の形状よりも、曲率半径が大きいのが好ましい。この場合、摺動部材7の摺動がより円滑になる。
上側部材20の平面形状は、特に限定されないが、円形(実質的に円形であるものを含む。)又は正多角形(好ましくは頂点が8個以上のもの)であるのが好ましい。このような平面形状であると、全方向の揺れに対して、均一に性能を発揮することが可能となる。
【0037】
上側部材20は、周縁部において内側に突き出る突状部21を有している。
図11は、振幅が極めて大きくなった場合における本発明の第2の態様の免震ユニットの一例の部分断面図である。図11に示されるように、突状部21は、振幅が極めて大きくなった場合に、摺動部材7の側部75の凹部76と係合した状態となり、これにより、本発明の第2の態様の免震ユニット200が大きな免震効果を発揮するようになる。
【0038】
上側部材においては、突状部が周縁部の全部にわたって形成されていてもよく、一部のみに形成されていてもよいが、一部のみに形成する場合であっても、摺動部材の側部の凹部と係合しうるものとする。
【0039】
上側部材20の材質は、特に限定されず、例えば、金属、セラミックスが挙げられる。中でも、耐久性の点で、金属であるのが好ましく、鉄又は鉄合金、アルミニウム合金であるのがより好ましく、鉄又は鉄合金であるのが更に好ましい。
【0040】
上側部材20の摺動部材7との当接面22には、摺動部材7の摺動を円滑にするために、あらかじめコーティング処理を施しておいたり、潤滑剤を塗布しておいたりするのが好ましい態様の一つである。
【0041】
摺動部材7は、上側部材20と当接する凸状の上側面72と、上側面72から連なる周状の側部75とを有する。
図10は、摺動部材7を示す模式的な平面図である。
図9及び図10に示されるように、摺動部材7の凸状の上側面72は、頂部71が曲面により形成され、頂部71の周囲が12個の平面により形成されている。
より詳細に説明すると、摺動部材7の上側面72においては、頂部71がお椀状の曲面により形成され、頂部71の周縁は円を形成しており、頂部71の周囲が同一形状の12個の平面を有し、これらの平面が頂部71の周縁から上側面72の周縁部73まで存在している。
【0042】
本発明の第2の態様においては、摺動部材の上側面の形状は、これに限定されない。本発明の第2の態様における摺動部材の上側面は、上述した本発明の第1の態様における摺動部材の上側面の形状と同様である。
【0043】
図12は、本発明の第2の態様の免震ユニットの別の一例を示す模式的な部分断面図であり、図13は、前記免震ユニットに用いられている摺動部材の別の一例の模式的な平面図である。
図12に示される本発明の第2の態様の免震ユニット201は、摺動部材7の代わりに摺動部材7aを有する以外は、免震ユニット200と同様である。
図12及び図13に示される摺動部材7aは、上側面72の代わりに、上側部材20と当接する凸状の上側面72aを有する以外は、摺動部材7と同様である。
摺動部材7aの凸状の上側面72aは、頂部71aが12個の平面により形成され、頂部71aの周囲が頂部71aの平面より水平方向に対する傾斜度の大きい複数の平面により形成されている。
より詳細に説明すると、摺動部材7aの上側面72aにおいては、頂部71aが同一形状の12個の平面により形成され、頂部71aの周縁は正12角形を形成しており、頂部71aの周囲が同一形状の12個の平面を有し、これらの平面が頂部71aの周縁から上側面72aの周縁部73aまで存在している。
【0044】
図14は、本発明の第2の態様の免震ユニットの更に別の一例を示す模式的な部分断面図であり、図15は、前記免震ユニットに用いられている摺動部材の更に別の一例の模式的な平面図である。
図14に示される本発明の第2の態様の免震ユニット202は、摺動部材7の代わりに摺動部材7bを有する以外は、免震ユニット200と同様である。
図14及び図15に示される摺動部材7bは、上側面72の代わりに、上側部材20と当接する凸状の上側面72bを有する以外は、摺動部材7と同様である。
摺動部材7bの凸状の上側面72bは、頂部71bが同一形状の12個の平面により形成され、前記平面が頂部71bの中心から上側面72bの周縁部73bまで存在している。
【0045】
図9及び図10に示される摺動部材7は、上述した形状の上側面72と、上側面72から連なる周状の側部75とを有する。
摺動部材7においては、側部75の周方向の全部に凹部76が存在するが、本発明の第2の態様はこれに限定されず、側部の周方向の一部に凹部が存在するものであってもよい。
摺動部材の側部の周方向の全部に凹部が存在する場合は、摺動部材の向きにかかわらず、上側部材の突状部と容易に係合することができる。
【0046】
摺動部材7は、一体的に形成されていてもよく、複数の部材を組み合わせて形成されていてもよい。
【0047】
摺動部材7の材質は、特に限定されず、例えば、金属、セラミックスが挙げられる。中でも、耐久性の点で、金属であるのが好ましく、鉄又は鉄合金、アルミニウム合金であるのがより好ましく、鉄又は鉄合金であるのが更に好ましい。
【0048】
摺動部材7の上側面72には、摺動部材7の摺動を円滑にするために、あらかじめコーティング処理を施しておいたり、潤滑剤を塗布しておいたりするのが好ましい態様の一つである。
【0049】
摺動部材7は、下側部材9の上部に、上側部材20と当接して上側部材20との間で摺動することができるように設けられている。この場合において、上側部材20の周縁部の突状部21が、摺動部材7の側部75の凹部76と係合しうるようになっている。
【0050】
また、摺動部材7は、下側部材9の上部に、首振りをすることができるように設けられている。本発明において、「首振り」とは、摺動部材7が下側部材9との接続位置付近において、任意の向きに折れ曲がることをいう。
中でも、摺動部材7が首振り自在に、かつ、復元力を有するように設けられているのが好ましい。
【0051】
摺動部材7を首振り自在に設ける方法は、特に限定されない。例えば、首振り機構部を介して摺動部材を下側部材に設ける方法、弾性体を介して摺動部材を下側部材に設ける方法が挙げられる。
【0052】
首振り機構部は、特に限定されず、例えば、従来公知の首振り機構(例えば、レベリングフット、スタッドレベリングフット)を用いて構成することができる。
図9に示される摺動部材7は、下側部材9の上部に、六角ナットを用いたレベリングフットにより構成された首振り機構部8を介して設けられている。
具体的な設置方法は、特に限定されないが、例えば、摺動部材7の側部の下部と首振り機構部8の上部とを接続し、かつ、首振り機構部8の下部と下側部材9の上部とを接続する方法が挙げられる。
【0053】
弾性体は、特に限定されず、例えば、従来公知の弾性体を用いることができる。中でも、ゴム、金属が好ましく、振動吸収性能及び剛性に優れる点で、防振ゴム、振動吸収性金属・合金がより好ましい。
図16は、本発明の第2の態様の免震ユニットの更に別の一例を示す模式的な部分断面図であり、図17は、前記免震ユニットに用いられている摺動部材の更に別の一例の模式的な平面図である。
図16に示される本発明の第2の態様の免震ユニット203は、首振り機構部8の代わりに弾性体81を有する以外は、免震ユニット200とほぼ同様である。図17に示される摺動部材7は、図10に示される摺動部材7と同じである。
図16に示される摺動部材7は、下側部材9の上部に、弾性体81を介して設けられている。弾性体81は、摺動部材7の側部を形成している。
具体的な設置方法は、特に限定されないが、例えば、摺動部材7の上側面を構成する部分の下面と、円柱状の弾性体81の上面とを接着剤等により接続し、かつ、弾性体81の下面と下側部材9の上面とを接着剤等により接続する方法が挙げられる。
図18は、振幅が極めて大きくなった場合における本発明の第2の態様の免震ユニットの更に別の一例の模式的な部分断面図である。図18に示されるように、突状部21は、振幅が極めて大きくなった場合に、摺動部材7の側部の凹部と係合した状態となり、これにより、本発明の第2の態様の免震ユニット203が大きな免震効果を発揮するようになる。
【0054】
図19は、本発明の第2の態様の免震ユニットの更に別の一例を示す模式的な部分断面図であり、図20は、前記免震ユニットに用いられている摺動部材の更に別の一例の模式的な平面図である。
図19に示される本発明の第2の態様の免震ユニット204は、首振り機構部8の代わりに弾性体81を有する以外は、免震ユニット201とほぼ同様である。図20に示される摺動部材7aは、図13に示される摺動部材7aと同じである。
図19に示される弾性体81及びその設置方法については、図16に示される摺動部材7の弾性体81と同様である。
【0055】
図21は、本発明の第2の態様の免震ユニットの更に別の一例を示す模式的な部分断面図であり、図22は、前記免震ユニットに用いられている摺動部材の更に別の一例の模式的な平面図である。
図21に示される本発明の第2の態様の免震ユニット205は、首振り機構部8の代わりに弾性体81を有する以外は、免震ユニット202とほぼ同様である。図22に示される摺動部材7bは、図15に示される摺動部材7bと同じである。
図21に示される弾性体81及びその設置方法については、図16に示される摺動部材7の弾性体81と同様である。
【0056】
摺動部材7を復元力を有するように設ける方法は、特に限定されず、例えば、従来公知の方法を用いることができる。
【0057】
本発明の第2の態様の免震ユニット200の作用について説明する。
図9に示されるように、免震ユニット200は、通常、摺動部材7が、上部構造物1に固定された上側部材20と、当接面22の中央部において当接するように設置される(この位置を「当初位置」という。)。
【0058】
図24は、揺れが生じた場合における本発明の第2の態様の免震ユニットの更に別の一例の模式的な部分断面図である。
地震等により揺れが生じ、図24に示されるように、下側部材4が図中左にずれた場合は、下側部材4と当接している摺動部材7に力が伝達され、摺動部材7は図中時計廻りに傾く。このように、摺動部材7が傾くことにより、揺れのエネルギーを吸収することができる。
また、摺動部材7は、傾いた状態、傾いた状態から自重で戻ろうとしている状態又は戻った状態において、上側部材2に当接しながら摺動する。この摺動は、摺動部材7と上側部材2との間に摩擦力を生じさせる。このように、摺動部材7が摺動することによっても、揺れのエネルギーを吸収することができる。
この摺動部材7の摺動は、揺れが生じて当初位置からずれた場合、上側部材2の摺動部材7との当接面22が凹面であり、かつ、上側部材2と当接する上側面72が凸状であるために生じる、当初位置に戻ろうとする復元力によっても引き起こされる。そのため、本発明の第2の態様の免震ユニットにおいては、揺れのエネルギーを吸収する効率が極めて高くなる。
このような動作は、水平方向の全方向に対して可能である。
【0059】
地震の振幅が極めて大きくなると、例えば、図11に示されるように、基礎部材3に固定された下側部材9が、上部構造物1に固定された上側部材20に対して、相対的に図中左側に大きくずれた状態となり、摺動部材7の側部75の凹部76の図中の左の部分が上側部材20の周縁部(図中、その左の部分)の突状部21と係合する。
このように、下側部材9が摺動部材7を介して上側部材20に対して引っ掛かり、この状態から更に(図中左側に)ずれることができないようになっている。よって、上側部材20が下側部材9に対応する位置から完全に外れてしまうことがない。
しかも、図11に示されるように、下側部材9が上側部材20に対して相対的に図中左側にずれるような力を受けている場合に、摺動部材7は、左側から上側部材2により左向きに力を受け、かつ、下側が首振り自在に下側部材9の上部に接続されているため、全体として右下から左上の方向にやや傾いた状態となっている。よって、摺動部材7が首振り自在に、かつ、復元力を有するように設けられている場合には、上側部材20を左側に動かす力が生じ、この力は、振幅によってずれた向きと反対の向きに、すなわち、上側部材20及び下側部材9の相対位置を復元させるように働く。
【0060】
以上、本発明の第1の態様及び第2の態様の免震ユニットを好適な実施形態を例に挙げて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、各種の変更や改良を行ってもよい。
例えば、各部材は、一体的に形成されていてもよく、複数の部材を組み合わせて形成されていてもよい。各部材は、面取りを行ったものであってもよい。また、各部の構成は、同様の機能を発揮しうる任意の構成と置換することができる。
【0061】
上述したように、本発明の第1の態様及び第2の態様の免震ユニットは、上側部材が下側部材に対応する位置から完全に外れてしまうことがないため、振幅が大きな地震に対しても、免震効果を発揮することができる。したがって、本発明の第1の態様及び第2の態様の免震ユニットを用いると、精密機器(例えば、コンピュータサーバ、多機能コピー機)、美術品収納ケース等の物品の倒壊を防止し、被害を抑制することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 上部構造物
2、20 上側部材
3 基礎部材
4、9 下側部材
5、6、7、7a、7b 摺動部材
8 首振り機構部
21、41 突状部
22、42 当接面
50、60、71、71a、71b 頂部
51、61、72、72a、72b 上側面
52、62、76 凹部
53、63 下側面
54、64、73、73a、73b 周縁部
55、65、75 側部
81 弾性体
100、200、201、202、203、204、205 免震ユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は免震ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、免震装置において、支承する建築物や床上の物品の下側に、滑動又は転動をしうる部材を介在させることが知られている。
例えば、特許文献1には、免震面形成用上側基盤の下面中心部に、下端を露出させた状態で免震用球体を回転自在に収装した球体保持金具を固設し、当該上側基盤の下面側に対向させて設けた基礎面形成用下側基盤の中心部に、上記免震用球体の下端を転動可能に接触させるように成した免震作用を司る免震制御用基構部に対して、衝撃を吸収する無反発ゴム材で形成した復元用円筒状外装を、その上端縁を前記免震面形成用上側基盤の周縁に、また、その下端縁を上記基礎面形成用下側基盤の周縁にそれぞれ連結することによって、当該免震制御用基構部の側周面部分を覆うように構成してなる免震用盤体が記載されている。
また、特許文献2には、電子機器に突設される脚体と、前記脚体を摺動可能に支承する台座とよりなる電子機器の台足において、前記脚体の下端部が曲率半径を有する球面状の凸面に形成されるとともに、前記凸部と摺動可能な前記台座の受け面が、該曲率半径よりも大きい曲率半径を有する中央部と該中央部を中心としてすりばち状に傾斜した面とを備え、且つ前記台座の底面部が平滑面に形成されてなることを特徴とする電子機器の台足が記載されている。
【0003】
さらに、特許文献3には、上部構造物に固定され凹状の球面部分が形成された上側部材と、基礎部材に支持され凹状の球面部分が形成された下側部材と、前記上側部材と前記下側部材との間に介在する上下が対称的な凸状の球面部分を有する剛性の転動部材と、が備えられた制震装置であって、前記転動部材は、金属球と当該金属球を回転自在に保持する保持部材で構成され、前記保持部材は硬質ゴム性の弾性部材であることを特徴とする制震装置が記載されている。
さらに、特許文献4には、上部構造物に固定され内面が凹状の曲面部分が形成された上側部材と、基礎部材に支持され内面が凹状の曲面部分が形成された下側部材と、前記上側部材と前記下側部材との間に介在する上下が対称的な凸状の曲面部分を有する転動部材とを備えた免震装置であって、前記転動部材は、全体形状が略円盤状に形成されており、曲面に形成された中央部と、前記曲面に滑らかに接続する平板面が形成された周辺部を有することを特徴とする免震装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特開2007−24123号公報
【特許文献2】 特許第3058364号公報
【特許文献3】 実用新案登録第3117029号公報
【特許文献4】 特開2006−283959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の免震用盤体及び特許文献2に記載の電子機器の台足は、いずれも振幅が大きな地震に対して、効果が得られるものではなかった。
具体的には、家屋等の建築物においては、地震の振幅が増幅され、建築物自体が受ける揺れの振幅が大きくなるときがあるが、特許文献1に記載の免震用盤体は、球体が転動しうる範囲が狭いため、そのような振幅が大きい揺れに対して、効果が得られない。特許文献2に記載の電子機器の台足は、構造上、脚体の電子機器との接続部に大きな応力がかかりやすいため、大きな振幅の揺れでその接続部付近が破損しやすい。よって、振幅が大きな地震に対しては、破損が生じやすいという問題があった。
また、特許文献3に記載の制震装置及び特許文献4に記載の免震装置は、ある程度大きな揺れには対応することができるものの、上側部材が下側部材に対応する位置から完全にずれてしまうことを防止することができていない。
【0006】
したがって、本発明は、振幅が大きな地震に対して、免震効果が得られる免震ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の(1)〜(10)を提供する。
(1)上部構造物に固定されうる上側部材と、
基礎部材に固定されうる下側部材と、
前記上側部材と前記下側部材との間に摺動自在に挟まれた摺動部材と
を具備し、
前記上側部材の前記摺動部材との当接面と前記下側部材の前記摺動部材との当接面とが、いずれも凹面であり、
前記上側部材と前記下側部材とが、いずれも周縁部において内側に突き出る突状部を有し、
前記摺動部材が、前記上側部材と当接する凸状の上側面と、前記下側部材と当接する凸状の下側面と、前記上側面と前記下側面との間に存在する周状の側部とにより形成され、
前記摺動部材の前記側部の周方向の全部又は一部に凹部が存在し、
前記摺動部材が前記上側部材と前記下側部材との間で摺動する場合において、前記上側部材の前記周縁部の突状部と前記下側部材の前記周縁部の前記突状部とが、前記摺動部材の前記側部の前記凹部と係合しうる、免震ユニット(本発明の第1の態様)。
(2)前記摺動部材の前記上側面と前記下側面との両方又は一方が、曲面により形成されている、上記(1)に記載の免震ユニット。
(3)前記摺動部材の前記上側面と前記下側面との両方又は一方が、頂部が曲面により形成され、前記頂部の周囲が複数の平面により形成されている、上記(1)又は(2)に記載の免震ユニット。
(4)前記摺動部材の前記上側面と前記下側面との両方又は一方が、頂部が複数の平面により形成され、頂部の周囲が前記頂部の前記平面より水平方向に対する傾斜度の大きい複数の平面により形成されている、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の免震ユニット。
【0008】
(5)上部構造物に固定されうる上側部材と、
基礎部材に固定されうる下側部材と、
前記下側部材の上部に、前記上側部材と当接して前記上側部材との間で摺動自在に、かつ、首振り自在に設けられた摺動部材と
を具備し、
前記上側部材の前記摺動部材との当接面が、凹面であり、
前記上側部材が、周縁部において内側に突き出る突状部を有し、
前記摺動部材が、前記上側部材と当接する凸状の上側面と、前記上側面から連なる周状の側部とを有し、
前記摺動部材の前記側部の周方向の全部又は一部に凹部が存在し、
前記摺動部材が前記上側部材との間で摺動する場合において、前記上側部材の前記周縁部の突状部が、前記摺動部材の前記側部の前記凹部と係合しうる、免震ユニット(本発明の第2の態様)。
(6)前記摺動部材が、前記下側部材に首振り機構部を介して設けられている、上記(5)に記載の免震ユニット。
(7)前記摺動部材が、前記下側部材に弾性体を介して設けられている、上記(5)に記載の免震ユニット。
(8)前記摺動部材の前記上側面が、曲面により形成されている、上記(5)〜(7)のいずれかに記載の免震ユニット。
(9)前記摺動部材の前記上側面が、頂部が曲面により形成され、前記頂部の周囲が複数の平面により形成されている、上記(5)〜(7)のいずれかに記載の免震ユニット。
(10)前記摺動部材の前記上側面が、頂部が複数の平面により形成され、前記頂部の周囲が前記頂部の前記平面より水平方向に対する傾斜度の大きい複数の平面により形成されている、上記(5)〜(7)のいずれかに記載の免震ユニット。
【発明の効果】
【0009】
本発明の免震ユニットは、振幅が大きな地震に対しても、免震効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】 本発明の第1の態様の免震ユニットの一例を示す模式的な部分断面図である。
【図2】 振幅が極めて大きくなった場合における本発明の第1の態様の免震ユニットの一例の模式的な部分断面図である。
【図3】 摺動部材の一例の模式的な平面図である。
【図4】 摺動部材の一例の模式的な側面図である。
【図5】 摺動部材の一例の模式的な断面図である。
【図6】 摺動部材の別の一例の模式的な平面図である。
【図7】 摺動部材の別の一例の模式的な側面図である。
【図8】 摺動部材の別の一例の模式的な断面図である。
【図9】 本発明の第2の態様の免震ユニットの一例を示す模式的な部分断面図である。
【図10】 摺動部材の一例の模式的な側面図である。
【図11】 振幅が極めて大きくなった場合における本発明の第2の態様の免震ユニットの一例の模式的な部分断面図である。
【図12】 本発明の第2の態様の免震ユニットの別の一例を示す模式的な部分断面図である。
【図13】 摺動部材の別の一例の模式的な平面図である。
【図14】 本発明の第2の態様の免震ユニットの更に別の一例を示す模式的な部分断面図である。
【図15】 摺動部材の更に別の一例の模式的な平面図である。
【0011】
【図16】 本発明の第2の態様の免震ユニットの更に別の一例を示す模式的な部分断面図である。
【図17】 摺動部材の更に別の一例の模式的な平面図である。
【図18】 振幅が極めて大きくなった場合における本発明の第2の態様の免震ユニットの更に別の一例の模式的な部分断面図である。
【図19】 本発明の第2の態様の免震ユニットの更に別の一例を示す模式的な部分断面図である。
【図20】 摺動部材の更に別の一例の模式的な平面図である。
【図21】 本発明の第2の態様の免震ユニットの更に別の一例を示す模式的な部分断面図である。
【図22】 摺動部材の更に別の一例の模式的な平面図である。
【図23】 揺れが生じた場合における本発明の第1の態様の免震ユニットの一例の模式的な部分断面図である。
【図24】 揺れが生じた場合における本発明の第2の態様の免震ユニットの更に別の一例の模式的な部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の免震ユニットを添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。初めに、本発明の第1の態様の免震ユニットについて説明する。
図1は、本発明の第1の態様の免震ユニットの一例を示す模式的な部分断面図である。
図1に示されるように、本発明の第1の態様の免震ユニット100は、
上部構造物1に固定されうる上側部材2と、
基礎部材3に固定されうる下側部材4と、
上側部材2と下側部材4との間に摺動自在に挟まれた摺動部材5と
を具備する。
【0013】
上部構造物1は、特に限定されないが、例えば、精密機器(例えば、コンピュータサーバ、多機能コピー機)、美術品収納ケース等の物品が挙げられる。
基礎部材3は、例えば、床、建築の基礎部が挙げられる。
【0014】
上側部材2の摺動部材5との当接面22と下側部材4の摺動部材5との当接面42とは、いずれも凹面である。
凹面の形状は、全体として周縁部から中央にかけて窪みが深くなっている形状であれば特に限定されず、全体が曲面により構成されていてもよく、一部又は全部が1個以上の平面により構成されていてもよい。このように、当接面22と当接面42とがいずれも凹面であることにより、揺れにより上側部材2と下側部材4との位置関係がずれた場合であっても、摺動部材5を介して、元に戻りやすい。
中でも、当接面22の凹面の形状は、摺動部材5の上側面51の形状よりも、曲率半径が大きいのが好ましい。この場合、摺動部材5の摺動がより円滑になる。また、同様に、当接面42の凹面の形状は、摺動部材5の下側面53の形状よりも、曲率半径が大きいのが好ましい。
上側部材2と下側部材4との平面形状は、特に限定されないが、円形(実質的に円形であるものを含む。)又は正多角形(好ましくは頂点が8個以上のもの)であるのが好ましい。このような平面形状であると、全方向の揺れに対して、均一に性能を発揮することが可能となる。
【0015】
上側部材2と下側部材4とは、それぞれ周縁部において内側に突き出る突状部21、41を有している。
図2は、振幅が極めて大きくなった場合における本発明の第1の態様の免震ユニットの一例の部分断面図である。図2に示されるように、突状部21、41は、振幅が極めて大きくなった場合に、摺動部材5の側部55の凹部52と係合した状態となり、これにより、本発明の第1の態様の免震ユニット100が大きな免震効果を発揮するようになる。
【0016】
上側部材と下側部材とにおいては、突状部が周縁部の全部にわたって形成されていてもよく、一部のみに形成されていてもよいが、一部のみに形成する場合であっても、摺動部材の側部の凹部と係合しうるものとする。
【0017】
上側部材2及び下側部材4の材質は、特に限定されず、例えば、金属、セラミックス、プラスチックが挙げられる。耐久性に優れる点では、金属が好ましく、鉄又は鉄合金、アルミニウム合金であるのがより好ましく、鉄又は鉄合金であるのが更に好ましい。また、重さが軽い点では、プラスチックが好ましい。中でも、廃プラスチック(廃プラ)は低価格である点で好ましい。
【0018】
上側部材2の摺動部材5との当接面22と下側部材4の摺動部材5との当接面42とには、摺動部材5の摺動を円滑にするために、あらかじめコーティング処理を施しておいたり、潤滑剤を塗布しておいたりするのが好ましい態様の一つである。
【0019】
摺動部材5は、上側部材2と当接する凸状の上側面51と、下側部材4と当接する凸状の下側面53と、上側面51と下側面53との間に存在する周状の側部55とにより形成されている。
図3〜図5は、摺動部材5を示す模式図である。図3は、摺動部材の一例の模式的な平面図であり、図4は、摺動部材の一例の模式的な側面図であり、図5は、摺動部材の一例の模式的な断面図である。
図3〜図5に示されるように、摺動部材5の凸状の上側面51及び下側面53は、いずれも、頂部50が曲面により形成され、頂部50の周囲が12個の平面により形成されている。
より詳細に説明すると、摺動部材5の上側面51及び下側面53においては、いずれも、頂部50がお椀状の曲面により形成され、頂部50の周縁は円を形成しており、頂部50の周囲が同一形状の12個の平面を有し、これらの平面が頂部50の周縁から上側面51及び下側面53の周縁部54まで存在している
【0020】
図6〜図8は、摺動部材5とは別の態様の摺動部材6を示す模式図である。図6は、摺動部材の別の一例の模式的な平面図であり、図7は、摺動部材の別の一例の模式的な側面図であり、図8は、摺動部材の別の一例の模式的な断面図である。
図6〜図8に示されるように、摺動部材6は、上側部材2と当接する凸状の上側面61と、下側部材4と当接する凸状の下側面63と、上側面61と下側面63との間に存在する周状の側部65とにより形成されている。
摺動部材6の凸状の上側面61及び下側面63は、いずれも、頂部60が12個の平面により形成され、頂部60の周囲が頂部60の平面より水平方向に対する傾斜度の大きい複数の平面により形成されている。
より詳細に説明すると、摺動部材6の上側面61及び下側面63においては、いずれも、頂部60が同一形状の12個の平面により形成され、頂部60の周縁は正12角形を形成しており、頂部60の周囲が同一形状の12個の平面を有し、これらの平面が頂部60の周縁から上側面61及び下側面63の周縁部64まで存在している。
【0021】
本発明の第1の態様においては、摺動部材の上側面及び下側面の形状は、これらに限定されない。以下、本発明の第1の態様における摺動部材の上側面及び下側面の形状について詳細に説明する。
【0022】
本発明の第1の態様においては、摺動部材の上側面及び下側面は、いずれも凸状であれば、特に限定されない。上側面及び下側面の形状は、同一であってもよく、異なっていてもよい。以下、上側面を例に挙げて説明するが、下側面についても同様である。
本発明の第1の態様においては、上側面は、曲面のみにより形成されている態様(以下「態様A」ともいう。)、頂部が曲面により形成され、前記頂部の周囲が複数の平面により形成されている態様(以下「態様B」ともいう。)、頂部が複数の平面により形成され、頂部の周囲が前記頂部の前記平面より水平方向に対する傾斜度の大きい複数の平面により形成されている態様(以下「態様C」ともいう。)、頂部が複数の平面により形成され、前記平面が頂部の中心から周縁部まで存在している態様(以下「態様D」ともいう。)が好適に挙げられる。中でも、態様A、態様B、態様Cが好ましい。
態様Aは、転がり抵抗が生じる状態と摩擦抵抗が生じる状態との相互の移行が円滑に生じる点、周縁方向における抵抗の変化が円滑に生じる点に利点がある。
態様Bは、摩擦抵抗が生じる状態において、摺動部材が上側部材及び下側部材とそれぞれ4点で接触するため、高い摩擦抵抗が生じる点に利点がある。
態様Cは、摩擦抵抗が生じる状態において、揺れが小さいと、摺動部材が上側部材及び下側部材とそれぞれ3点で接触し、揺れが大きいと、摺動部材が上側部材及び下側部材とそれぞれ4点で接触するため、揺れの大きさに応じて摩擦抵抗が変化する点に利点がある。特に、橋脚、細長いビル等の細長い形状の構造物に対して、免震効果が優れる。
【0023】
態様Aにおいては、曲面の形状は特に限定されないが、曲面の水平方向に対する傾斜度が、頂部から周縁部に向かって大きくなっていくのが好ましい。曲面の形状は、周縁方向において、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0024】
態様Bにおいては、曲面の形状は特に限定されないが、曲面の水平方向に対する傾斜度が、頂部から周縁部に向かって大きくなっていくのが好ましい。曲面の形状は、周縁方向において、同じであってもよく、異なっていてもよい。
頂部の周囲の平面の周縁方向の数は、複数(2個以上)である。中でも、4個以上であるのが好ましい。上記範囲であると、全方向の揺れに対して、均一に機能を発揮することができる。また、12個以下であるのが好ましい。上記範囲であると、製造が容易である。頂部の周囲の平面の周縁方向の数が4個である場合は、橋脚、細長いビル等の細長い形状の構造物に対して、免震効果が優れる。
複数の平面の形状は、同一であってもよく、異なっていてもよい。中でも、同一であるのが好ましい。
平面の存在位置は、頂部の周縁から、上側面の周縁部まで存在していてもよく、頂部の周縁と上側面の周縁部との間の任意の位置まで存在していてもよい。平面が頂部の周縁から頂部の周縁と上側面の周縁部との間の任意の位置まで存在している場合、その位置と周縁部との間までは、曲面により形成することができる。平面の存在位置は、周縁方向において、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
平面の放射方向の数は、頂部の周囲から上側面の周縁部まで1個であってもよく(例えば、図3〜図5に示される摺動部材5)、2個以上であってもよい。頂部の周囲から上側面の周縁部まで放射方向に2個以上の平面が配置されている場合、頂部の周囲から上側面の周縁部に向かうに従って水平方向に対する傾斜度が大きくなっているのが好ましい。
頂部の周縁付近において、平面の水平方向に対する傾斜度は、曲面の水平方向に対する傾斜度よりも大きくなっているのが好ましい。
【0025】
また、態様Cにおいては、頂部の平面の周縁方向の数は、複数(2個以上)である。中でも、4個以上であるのが好ましい。上記範囲であると、全方向の揺れに対して、均一に機能を発揮することができる。また、12個以下であるのが好ましい。上記範囲であると、製造が容易である。頂部の周囲の平面の周縁方向の数が4個である場合は、橋脚、細長いビル等の細長い形状の構造物に対して、免震効果が優れる。
複数の頂部の平面の形状は、同一であってもよく、異なっていてもよい。中でも、同一であるのが好ましい。
頂部の周囲の平面の存在位置は、頂部の周縁から、上側面の周縁部まで存在していてもよく、頂部の周縁と上側面の周縁部との間の任意の位置まで存在していてもよい。平面が頂部の周縁から上側面の周縁部との間の任意の位置まで存在している場合、その位置から上側面の周縁部までは、曲面により形成することができる。平面の存在位置は、周縁方向において、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
平面の放射方向の数は、頂部の周縁から上側面の周縁部まで1個であってもよく(例えば、図6〜図8に示される摺動部材6)、2個以上であってもよい。頂部の周囲から上側面の周縁部まで放射方向に2個以上の平面が配置されている場合、頂部の周囲から上側面の周縁部に向かうに従って水平方向に対する傾斜度が大きくなっているのが好ましい。
頂部の周縁付近において、平面の水平方向に対する傾斜度は、曲面の水平方向に対する傾斜度よりも大きくなっているのが好ましい。
頂部の周縁付近において、頂部の平面の周縁方向の数と、頂部の周囲の平面の周縁方向の数とは、異なっていても、同一であってもよい。中でも、同一であるのが好ましく、さらに、頂部の平面の端部と頂部の周囲の平面の端部とが同じ位置にあるのがより好ましい。
【0026】
摺動部材5は、上述した形状の上側面51と下側面53と、それらの間に存在する周状の側部55とにより形成されている。
摺動部材5においては、側部55の周方向の全部に凹部52が存在するが、本発明の第1の態様はこれに限定されず、側部の周方向の一部に凹部が存在するものであってもよい。
摺動部材の側部の周方向の全部に凹部が存在する場合は、摺動部材の向きにかかわらず、上側部材及び下側部材の突状部と容易に係合することができる。
摺動部材の側部の周方向の一部のみに凹部が存在する場合は、凹部でない部分があるため、摺動部材の上下方向の強度がより高くなる。
【0027】
摺動部材5は、一体的に形成されていてもよく、複数の部材を組み合わせて形成されていてもよい。
【0028】
摺動部材5の材質は、特に限定されず、例えば、金属、セラミックスが挙げられる。中でも、耐久性の点で、金属であるのが好ましく、鉄又は鉄合金、アルミニウム合金であるのがより好ましく、鉄又は鉄合金であるのが更に好ましい。
【0029】
摺動部材5の上側面51と下側面53とには、摺動部材5の摺動を円滑にするために、あらかじめコーティング処理を施しておいたり、潤滑剤を塗布しておいたりするのが好ましい態様の一つである。
【0030】
摺動部材5は、上側部材2と下側部材4との間で摺動することができるように挟まれている。この場合において、上側部材2の周縁部の突状部21と下側部材4の周縁部の突状部41とが、摺動部材5の側部55の凹部52と係合しうるようになっている。
【0031】
本発明の第1の態様の免震ユニット100の作用について説明する。
図1に示されるように、免震ユニット100は、通常、摺動部材5が、上部構造物1に固定された上側部材2及び基礎部材3に固定された下側部材4と、これらの当接面22、42の各中央部において当接するように設置される(この位置を「当初位置」という。)。
【0032】
図23は、揺れが生じた場合における本発明の第1の態様の免震ユニットの一例の模式的な部分断面図である。
地震等により揺れが生じ、図23に示されるように、下側部材4が図中右にずれた場合は、下側部材4と当接している摺動部材5に力が伝達され、摺動部材5は図中反時計廻りに傾く。このように、摺動部材5が傾くことにより、揺れのエネルギーを吸収することができる。
また、摺動部材5は、傾いた状態、傾いた状態から自重で戻ろうとしている状態又は戻った状態において、上側部材2と下側部材4との間に挟まれながら摺動する。この摺動は、摺動部材5と上側部材2及び下側部材4との間に摩擦力を生じさせる。このように、摺動部材5が摺動することによっても、揺れのエネルギーを吸収することができる。
この摺動部材5の摺動は、揺れが生じて当初位置からずれた場合、上側部材2の摺動部材5との当接面22と下側部材4の摺動部材5との当接面42とがいずれも凹面であり、かつ、上側部材2と当接する上側面51と下側部材4と当接する下側面53とがいずれも凸状であるために生じる、当初位置に戻ろうとする復元力によっても引き起こされる。そのため、本発明の第1の態様の免震ユニットにおいては、揺れのエネルギーを吸収する効率が極めて高くなる。
このような動作は、水平方向の全方向に対して可能である。
【0033】
地震の振幅が極めて大きくなると、例えば、図2に示されるように、基礎部材3に固定された下側部材4が、上部構造物1に固定された上側部材2に対して、相対的に図中右側に大きくずれた状態となり、摺動部材5の側部55の凹部52の図中の左の部分が下側部材4の周縁部(図中、その左の部分)の突状部41と係合し、かつ、摺動部材5の側部55の凹部52の図中の右の部分が上側部材2の周縁部(図中、その右の部分)の突状部41と係合する。
このように、下側部材4が摺動部材5を介して上側部材2に対して引っ掛かり、この状態から更に(図中右側に)ずれることができないようになっている。よって、上側部材2が下側部材4に対応する位置から完全に外れてしまうことがない。
しかも、図2に示されるように、下側部材4が上側部材2に対して相対的に図中右側にずれるような力を受けている場合に、摺動部材5は、左側から下側部材4により右向きに力を受け、かつ、右側から上側部材2により左向きに力を受けているため、全体として左下から右上の方向にやや傾いた状態となっている。よって、摺動部材5の自重によって、上側部材2を右側に、下側部材4を左側に動かす力が生じ、この力は、振幅によってずれた向きと反対の向きに、すなわち、上側部材2及び下側部材4の相対位置を復元させるように働く。
【0034】
つぎに、本発明の第2の態様の免震ユニットについて説明する。
図9は、本発明の第2の態様の免震ユニットの一例を示す模式的な部分断面図である。
図9に示されるように、本発明の第2の態様の免震ユニット200は、
上部構造物1に固定されうる上側部材20と、
基礎部材3に固定されうる下側部材9と、
下側部材9の上部に、上側部材20と当接して上側部材20との間で摺動自在に、かつ、首振り自在に設けられた摺動部材7と
を具備する。
【0035】
上部構造物1及び基礎部材3は、上述した本発明の第1の態様におけるのと同様である。
【0036】
上側部材20の摺動部材7との当接面22は、凹面である。
凹面の形状は、全体として周縁部から中央にかけて窪みが深くなっている形状であれば特に限定されず、全体が曲面により構成されていてもよく、一部又は全部が1個以上の平面により構成されていてもよい。
中でも、当接面22の凹面の形状は、摺動部材7の上側面72の形状よりも、曲率半径が大きいのが好ましい。この場合、摺動部材7の摺動がより円滑になる。
上側部材20の平面形状は、特に限定されないが、円形(実質的に円形であるものを含む。)又は正多角形(好ましくは頂点が8個以上のもの)であるのが好ましい。このような平面形状であると、全方向の揺れに対して、均一に性能を発揮することが可能となる。
【0037】
上側部材20は、周縁部において内側に突き出る突状部21を有している。
図11は、振幅が極めて大きくなった場合における本発明の第2の態様の免震ユニットの一例の部分断面図である。図11に示されるように、突状部21は、振幅が極めて大きくなった場合に、摺動部材7の側部75の凹部76と係合した状態となり、これにより、本発明の第2の態様の免震ユニット200が大きな免震効果を発揮するようになる。
【0038】
上側部材においては、突状部が周縁部の全部にわたって形成されていてもよく、一部のみに形成されていてもよいが、一部のみに形成する場合であっても、摺動部材の側部の凹部と係合しうるものとする。
【0039】
上側部材20の材質は、特に限定されず、例えば、金属、セラミックスが挙げられる。中でも、耐久性の点で、金属であるのが好ましく、鉄又は鉄合金、アルミニウム合金であるのがより好ましく、鉄又は鉄合金であるのが更に好ましい。
【0040】
上側部材20の摺動部材7との当接面22には、摺動部材7の摺動を円滑にするために、あらかじめコーティング処理を施しておいたり、潤滑剤を塗布しておいたりするのが好ましい態様の一つである。
【0041】
摺動部材7は、上側部材20と当接する凸状の上側面72と、上側面72から連なる周状の側部75とを有する。
図10は、摺動部材7を示す模式的な平面図である。
図9及び図10に示されるように、摺動部材7の凸状の上側面72は、頂部71が曲面により形成され、頂部71の周囲が12個の平面により形成されている。
より詳細に説明すると、摺動部材7の上側面72においては、頂部71がお椀状の曲面により形成され、頂部71の周縁は円を形成しており、頂部71の周囲が同一形状の12個の平面を有し、これらの平面が頂部71の周縁から上側面72の周縁部73まで存在している。
【0042】
本発明の第2の態様においては、摺動部材の上側面の形状は、これに限定されない。本発明の第2の態様における摺動部材の上側面は、上述した本発明の第1の態様における摺動部材の上側面の形状と同様である。
【0043】
図12は、本発明の第2の態様の免震ユニットの別の一例を示す模式的な部分断面図であり、図13は、前記免震ユニットに用いられている摺動部材の別の一例の模式的な平面図である。
図12に示される本発明の第2の態様の免震ユニット201は、摺動部材7の代わりに摺動部材7aを有する以外は、免震ユニット200と同様である。
図12及び図13に示される摺動部材7aは、上側面72の代わりに、上側部材20と当接する凸状の上側面72aを有する以外は、摺動部材7と同様である。
摺動部材7aの凸状の上側面72aは、頂部71aが12個の平面により形成され、頂部71aの周囲が頂部71aの平面より水平方向に対する傾斜度の大きい複数の平面により形成されている。
より詳細に説明すると、摺動部材7aの上側面72aにおいては、頂部71aが同一形状の12個の平面により形成され、頂部71aの周縁は正12角形を形成しており、頂部71aの周囲が同一形状の12個の平面を有し、これらの平面が頂部71aの周縁から上側面72aの周縁部73aまで存在している。
【0044】
図14は、本発明の第2の態様の免震ユニットの更に別の一例を示す模式的な部分断面図であり、図15は、前記免震ユニットに用いられている摺動部材の更に別の一例の模式的な平面図である。
図14に示される本発明の第2の態様の免震ユニット202は、摺動部材7の代わりに摺動部材7bを有する以外は、免震ユニット200と同様である。
図14及び図15に示される摺動部材7bは、上側面72の代わりに、上側部材20と当接する凸状の上側面72bを有する以外は、摺動部材7と同様である。
摺動部材7bの凸状の上側面72bは、頂部71bが同一形状の12個の平面により形成され、前記平面が頂部71bの中心から上側面72bの周縁部73bまで存在している。
【0045】
図9及び図10に示される摺動部材7は、上述した形状の上側面72と、上側面72から連なる周状の側部75とを有する。
摺動部材7においては、側部75の周方向の全部に凹部76が存在するが、本発明の第2の態様はこれに限定されず、側部の周方向の一部に凹部が存在するものであってもよい。
摺動部材の側部の周方向の全部に凹部が存在する場合は、摺動部材の向きにかかわらず、上側部材の突状部と容易に係合することができる。
【0046】
摺動部材7は、一体的に形成されていてもよく、複数の部材を組み合わせて形成されていてもよい。
【0047】
摺動部材7の材質は、特に限定されず、例えば、金属、セラミックスが挙げられる。中でも、耐久性の点で、金属であるのが好ましく、鉄又は鉄合金、アルミニウム合金であるのがより好ましく、鉄又は鉄合金であるのが更に好ましい。
【0048】
摺動部材7の上側面72には、摺動部材7の摺動を円滑にするために、あらかじめコーティング処理を施しておいたり、潤滑剤を塗布しておいたりするのが好ましい態様の一つである。
【0049】
摺動部材7は、下側部材9の上部に、上側部材20と当接して上側部材20との間で摺動することができるように設けられている。この場合において、上側部材20の周縁部の突状部21が、摺動部材7の側部75の凹部76と係合しうるようになっている。
【0050】
また、摺動部材7は、下側部材9の上部に、首振りをすることができるように設けられている。本発明において、「首振り」とは、摺動部材7が下側部材9との接続位置付近において、任意の向きに折れ曲がることをいう。
中でも、摺動部材7が首振り自在に、かつ、復元力を有するように設けられているのが好ましい。
【0051】
摺動部材7を首振り自在に設ける方法は、特に限定されない。例えば、首振り機構部を介して摺動部材を下側部材に設ける方法、弾性体を介して摺動部材を下側部材に設ける方法が挙げられる。
【0052】
首振り機構部は、特に限定されず、例えば、従来公知の首振り機構(例えば、レベリングフット、スタッドレベリングフット)を用いて構成することができる。
図9に示される摺動部材7は、下側部材9の上部に、六角ナットを用いたレベリングフットにより構成された首振り機構部8を介して設けられている。
具体的な設置方法は、特に限定されないが、例えば、摺動部材7の側部の下部と首振り機構部8の上部とを接続し、かつ、首振り機構部8の下部と下側部材9の上部とを接続する方法が挙げられる。
【0053】
弾性体は、特に限定されず、例えば、従来公知の弾性体を用いることができる。中でも、ゴム、金属が好ましく、振動吸収性能及び剛性に優れる点で、防振ゴム、振動吸収性金属・合金がより好ましい。
図16は、本発明の第2の態様の免震ユニットの更に別の一例を示す模式的な部分断面図であり、図17は、前記免震ユニットに用いられている摺動部材の更に別の一例の模式的な平面図である。
図16に示される本発明の第2の態様の免震ユニット203は、首振り機構部8の代わりに弾性体81を有する以外は、免震ユニット200とほぼ同様である。図17に示される摺動部材7は、図10に示される摺動部材7と同じである。
図16に示される摺動部材7は、下側部材9の上部に、弾性体81を介して設けられている。弾性体81は、摺動部材7の側部を形成している。
具体的な設置方法は、特に限定されないが、例えば、摺動部材7の上側面を構成する部分の下面と、円柱状の弾性体81の上面とを接着剤等により接続し、かつ、弾性体81の下面と下側部材9の上面とを接着剤等により接続する方法が挙げられる。
図18は、振幅が極めて大きくなった場合における本発明の第2の態様の免震ユニットの更に別の一例の模式的な部分断面図である。図18に示されるように、突状部21は、振幅が極めて大きくなった場合に、摺動部材7の側部の凹部と係合した状態となり、これにより、本発明の第2の態様の免震ユニット203が大きな免震効果を発揮するようになる。
【0054】
図19は、本発明の第2の態様の免震ユニットの更に別の一例を示す模式的な部分断面図であり、図20は、前記免震ユニットに用いられている摺動部材の更に別の一例の模式的な平面図である。
図19に示される本発明の第2の態様の免震ユニット204は、首振り機構部8の代わりに弾性体81を有する以外は、免震ユニット201とほぼ同様である。図20に示される摺動部材7aは、図13に示される摺動部材7aと同じである。
図19に示される弾性体81及びその設置方法については、図16に示される摺動部材7の弾性体81と同様である。
【0055】
図21は、本発明の第2の態様の免震ユニットの更に別の一例を示す模式的な部分断面図であり、図22は、前記免震ユニットに用いられている摺動部材の更に別の一例の模式的な平面図である。
図21に示される本発明の第2の態様の免震ユニット205は、首振り機構部8の代わりに弾性体81を有する以外は、免震ユニット202とほぼ同様である。図22に示される摺動部材7bは、図15に示される摺動部材7bと同じである。
図21に示される弾性体81及びその設置方法については、図16に示される摺動部材7の弾性体81と同様である。
【0056】
摺動部材7を復元力を有するように設ける方法は、特に限定されず、例えば、従来公知の方法を用いることができる。
【0057】
本発明の第2の態様の免震ユニット200の作用について説明する。
図9に示されるように、免震ユニット200は、通常、摺動部材7が、上部構造物1に固定された上側部材20と、当接面22の中央部において当接するように設置される(この位置を「当初位置」という。)。
【0058】
図24は、揺れが生じた場合における本発明の第2の態様の免震ユニットの更に別の一例の模式的な部分断面図である。
地震等により揺れが生じ、図24に示されるように、下側部材4が図中左にずれた場合は、下側部材4と当接している摺動部材7に力が伝達され、摺動部材7は図中時計廻りに傾く。このように、摺動部材7が傾くことにより、揺れのエネルギーを吸収することができる。
また、摺動部材7は、傾いた状態、傾いた状態から自重で戻ろうとしている状態又は戻った状態において、上側部材2に当接しながら摺動する。この摺動は、摺動部材7と上側部材2との間に摩擦力を生じさせる。このように、摺動部材7が摺動することによっても、揺れのエネルギーを吸収することができる。
この摺動部材7の摺動は、揺れが生じて当初位置からずれた場合、上側部材2の摺動部材7との当接面22が凹面であり、かつ、上側部材2と当接する上側面72が凸状であるために生じる、当初位置に戻ろうとする復元力によっても引き起こされる。そのため、本発明の第2の態様の免震ユニットにおいては、揺れのエネルギーを吸収する効率が極めて高くなる。
このような動作は、水平方向の全方向に対して可能である。
【0059】
地震の振幅が極めて大きくなると、例えば、図11に示されるように、基礎部材3に固定された下側部材9が、上部構造物1に固定された上側部材20に対して、相対的に図中左側に大きくずれた状態となり、摺動部材7の側部75の凹部76の図中の左の部分が上側部材20の周縁部(図中、その左の部分)の突状部21と係合する。
このように、下側部材9が摺動部材7を介して上側部材20に対して引っ掛かり、この状態から更に(図中左側に)ずれることができないようになっている。よって、上側部材20が下側部材9に対応する位置から完全に外れてしまうことがない。
しかも、図11に示されるように、下側部材9が上側部材20に対して相対的に図中左側にずれるような力を受けている場合に、摺動部材7は、左側から上側部材2により左向きに力を受け、かつ、下側が首振り自在に下側部材9の上部に接続されているため、全体として右下から左上の方向にやや傾いた状態となっている。よって、摺動部材7が首振り自在に、かつ、復元力を有するように設けられている場合には、上側部材20を左側に動かす力が生じ、この力は、振幅によってずれた向きと反対の向きに、すなわち、上側部材20及び下側部材9の相対位置を復元させるように働く。
【0060】
以上、本発明の第1の態様及び第2の態様の免震ユニットを好適な実施形態を例に挙げて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、各種の変更や改良を行ってもよい。
例えば、各部材は、一体的に形成されていてもよく、複数の部材を組み合わせて形成されていてもよい。各部材は、面取りを行ったものであってもよい。また、各部の構成は、同様の機能を発揮しうる任意の構成と置換することができる。
【0061】
上述したように、本発明の第1の態様及び第2の態様の免震ユニットは、上側部材が下側部材に対応する位置から完全に外れてしまうことがないため、振幅が大きな地震に対しても、免震効果を発揮することができる。したがって、本発明の第1の態様及び第2の態様の免震ユニットを用いると、精密機器(例えば、コンピュータサーバ、多機能コピー機)、美術品収納ケース等の物品の倒壊を防止し、被害を抑制することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 上部構造物
2、20 上側部材
3 基礎部材
4、9 下側部材
5、6、7、7a、7b 摺動部材
8 首振り機構部
21、41 突状部
22、42 当接面
50、60、71、71a、71b 頂部
51、61、72、72a、72b 上側面
52、62、76 凹部
53、63 下側面
54、64、73、73a、73b 周縁部
55、65、75 側部
81 弾性体
100、200、201、202、203、204、205 免震ユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造物に固定されうる上側部材と、
基礎部材に固定されうる下側部材と、
前記上側部材と前記下側部材との間に摺動自在に挟まれた摺動部材と
を具備し、
前記上側部材の前記摺動部材との当接面と前記下側部材の前記摺動部材との当接面とが、いずれも凹面であり、
前記上側部材と前記下側部材とが、いずれも周縁部において内側に突き出る突状部を有し、
前記摺動部材が、前記上側部材と当接する凸状の上側面と、前記下側部材と当接する凸状の下側面と、前記上側面と前記下側面との間に存在する周状の側部とにより形成され、
前記摺動部材の前記側部の周方向の全部又は一部に凹部が存在し、
前記摺動部材が前記上側部材と前記下側部材との間で摺動する場合において、前記上側部材の前記周縁部の突状部と前記下側部材の前記周縁部の前記突状部とが、前記摺動部材の前記側部の前記凹部と係合しうる、免震ユニット。
【請求項2】
前記摺動部材の前記上側面と前記下側面との両方又は一方が、曲面により形成されている、請求項1に記載の免震ユニット。
【請求項3】
前記摺動部材の前記上側面と前記下側面との両方又は一方が、頂部が曲面により形成され、前記頂部の周囲が複数の平面により形成されている、請求項1又は2に記載の免震ユニット。
【請求項4】
前記摺動部材の前記上側面と前記下側面との両方又は一方が、頂部が複数の平面により形成され、頂部の周囲が前記頂部の前記平面より水平方向に対する傾斜度の大きい複数の平面により形成されている、請求項1〜3のいずれかに記載の免震ユニット。
【請求項5】
上部構造物に固定されうる上側部材と、
基礎部材に固定されうる下側部材と、
前記下側部材の上部に、前記上側部材と当接して前記上側部材との間で摺動自在に、かつ、首振り自在に設けられた摺動部材と
を具備し、
前記上側部材の前記摺動部材との当接面が、凹面であり、
前記上側部材が、周縁部において内側に突き出る突状部を有し、
前記摺動部材が、前記上側部材と当接する凸状の上側面と、前記上側面から連なる周状の側部とを有し、
前記摺動部材の前記側部の周方向の全部又は一部に凹部が存在し、
前記摺動部材が前記上側部材との間で摺動する場合において、前記上側部材の前記周縁部の突状部が、前記摺動部材の前記側部の前記凹部と係合しうる、免震ユニット。
【請求項6】
前記摺動部材が、前記下側部材に首振り機構部を介して設けられている、請求項5に記載の免震ユニット。
【請求項7】
前記摺動部材が、前記下側部材に弾性体を介して設けられている、請求項5に記載の免震ユニット。
【請求項8】
前記摺動部材の前記上側面が、曲面により形成されている、請求項5〜7のいずれかに記載の免震ユニット。
【請求項9】
前記摺動部材の前記上側面が、頂部が曲面により形成され、前記頂部の周囲が複数の平面により形成されている、請求項5〜7のいずれかに記載の免震ユニット。
【請求項10】
前記摺動部材の前記上側面が、頂部が複数の平面により形成され、前記頂部の周囲が前記頂部の前記平面より水平方向に対する傾斜度の大きい複数の平面により形成されている、請求項5〜7のいずれかに記載の免震ユニット。
【請求項1】
上部構造物に固定されうる上側部材と、
基礎部材に固定されうる下側部材と、
前記上側部材と前記下側部材との間に摺動自在に挟まれた摺動部材と
を具備し、
前記上側部材の前記摺動部材との当接面と前記下側部材の前記摺動部材との当接面とが、いずれも凹面であり、
前記上側部材と前記下側部材とが、いずれも周縁部において内側に突き出る突状部を有し、
前記摺動部材が、前記上側部材と当接する凸状の上側面と、前記下側部材と当接する凸状の下側面と、前記上側面と前記下側面との間に存在する周状の側部とにより形成され、
前記摺動部材の前記側部の周方向の全部又は一部に凹部が存在し、
前記摺動部材が前記上側部材と前記下側部材との間で摺動する場合において、前記上側部材の前記周縁部の突状部と前記下側部材の前記周縁部の前記突状部とが、前記摺動部材の前記側部の前記凹部と係合しうる、免震ユニット。
【請求項2】
前記摺動部材の前記上側面と前記下側面との両方又は一方が、曲面により形成されている、請求項1に記載の免震ユニット。
【請求項3】
前記摺動部材の前記上側面と前記下側面との両方又は一方が、頂部が曲面により形成され、前記頂部の周囲が複数の平面により形成されている、請求項1又は2に記載の免震ユニット。
【請求項4】
前記摺動部材の前記上側面と前記下側面との両方又は一方が、頂部が複数の平面により形成され、頂部の周囲が前記頂部の前記平面より水平方向に対する傾斜度の大きい複数の平面により形成されている、請求項1〜3のいずれかに記載の免震ユニット。
【請求項5】
上部構造物に固定されうる上側部材と、
基礎部材に固定されうる下側部材と、
前記下側部材の上部に、前記上側部材と当接して前記上側部材との間で摺動自在に、かつ、首振り自在に設けられた摺動部材と
を具備し、
前記上側部材の前記摺動部材との当接面が、凹面であり、
前記上側部材が、周縁部において内側に突き出る突状部を有し、
前記摺動部材が、前記上側部材と当接する凸状の上側面と、前記上側面から連なる周状の側部とを有し、
前記摺動部材の前記側部の周方向の全部又は一部に凹部が存在し、
前記摺動部材が前記上側部材との間で摺動する場合において、前記上側部材の前記周縁部の突状部が、前記摺動部材の前記側部の前記凹部と係合しうる、免震ユニット。
【請求項6】
前記摺動部材が、前記下側部材に首振り機構部を介して設けられている、請求項5に記載の免震ユニット。
【請求項7】
前記摺動部材が、前記下側部材に弾性体を介して設けられている、請求項5に記載の免震ユニット。
【請求項8】
前記摺動部材の前記上側面が、曲面により形成されている、請求項5〜7のいずれかに記載の免震ユニット。
【請求項9】
前記摺動部材の前記上側面が、頂部が曲面により形成され、前記頂部の周囲が複数の平面により形成されている、請求項5〜7のいずれかに記載の免震ユニット。
【請求項10】
前記摺動部材の前記上側面が、頂部が複数の平面により形成され、前記頂部の周囲が前記頂部の前記平面より水平方向に対する傾斜度の大きい複数の平面により形成されている、請求項5〜7のいずれかに記載の免震ユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2011−21739(P2011−21739A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185201(P2009−185201)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(390027661)株式会社金澤製作所 (29)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(390027661)株式会社金澤製作所 (29)
【Fターム(参考)】
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