説明

免震構造用鉛ダンパ−と固定フランジの熔着接合方法及び熔着接合構造

【目的】免震構造用鉛ダンパ−と固定フランジの熔着接合方法及び熔着接合構造を提供する。
【構成】免震構造用鉛ダンパ−と固定フランジの熔着接合方法及び熔着接合構造において、前記固定フランジの上面に環状の囲いを熔接により固着するか又は円形の窪みを形成し、前記鉛ダンパ−の両端部の端部の円柱部を前記固定フランジの上面の環状の囲い又は円形窪みの中に設置したのち固定フランジの反対側の面を押圧しつつ高温で加熱し、前記鉛ダンパ−の端部を溶解し、前記環状の囲い又は円形窪みの内側に前記溶解鉛を充満し、前記固定フランジの上面及び環状囲いの内面又は円形窪みの内面を結合材を介して熔着接合するように構成した免震構造用鉛ダンパ−と固定フランジの熔着接合方法及び熔着接合構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生活環境において建築構造物に繰り返し受ける震動特に地震等にて生ずる大きな横揺れ及び縦揺れの震動による建築構造物への悪影響に対応するために、建築構造物を安定的に支持して前記建築構造物が受ける震動エネルギ−を吸収し、建築構造物の損壊を防止するように構成された免震構造用鉛ダンパ−1であって、前記免震構造用鉛ダンパ−1の両端部2の端部2′に熔着により固定する固定フランジ3の構造を改良した熔着接合方法及び熔着接合構造に関し、詳しくは前記免震構造用鉛ダンパ−1の両端部2に鋼板製の固定フランジ3を一体的に強固に接合するに際し、鋼製の環状の囲い4を上面に固着して形成した固定フランジ3又は固定フランジ3の表面に円形窪み5を座繰りして形成した固定フランジ3を用い、前記環状の囲い4又は円形窪み5内にて前記鉛ダンパ−本体1の両端部2の端部2′を溶解して充満すると共にハンダ等の結合材8を介して固定フランジ3の表面3′及び環状の囲い4の内面4′又は円形窪み5の壁面5′に接合するようにした熔着接合方法及び熔着接合構造に関するものであり、建築構造物を支持している免震構造用鉛ダンパ−1の両端部2に熔着接合した固定フランジ3と建築構造物6及び基礎7との連結固定部分の更なる強度向上を図り、地震による横揺れ又は縦揺れの際に生じる大きな震動圧力を受けた際においても安定して受け止めることが出来るとともに鉛ダンパ−1と固定フランジ3との接合工程においても両者の接合位置の芯だしが極めて容易にかつ安定して行えるように、免震構造用鉛ダンパ−1の両端部2の端部2′に接合している固定フランジ3の表面3′との熔着接合方法及び熔着接合構造を改良したものである。
従来使用されている免震構造用鉛ダンパ−1の両端部2の端面2′と固定フランジ3の表面3′との接合箇所は、ホモゲン熔着法によつて完全に熔着固定され建築構造物に使用されている。また生活環境における震動特に地震等による大きな縦揺れ及び横揺れの震動を受けた際に、鉛は、塑性変形により生じたひずみが、常温での再結晶により解消されるという性質を持ち、極めて延性に富んだ特性を示すことから大変形領域でも正常に機能することが、学術的及び実物実験により検証され、近年建築構造物に採用されてきているのが現状である。
以上のことから、本発明はこれらの優れた特性を利用し、ダンパ−本体とフランジ部との接合部分の熔着接合方法及び熔着接合構造を改良し,免震構造用鉛ダンパ−1の免震特性を更に向上させることを目的として鉛ダンパ−本体1の両端部2の端部2′と固定フランジ3の表面3′との熔着接合箇所の接合構造をより強固に形成して大地震にて受ける縦揺れ及び横揺れの震動による前記免震構造用鉛ダンパ−1の両端部2の端部2′と固定フランジ3との熔着接合箇所への悪影響を可能な限り解消するように形成した免震構造用鉛ダンパ−1の両端部2の端部2′と固定フランジ3との熔着接合方法及び熔着接合構造を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来免震構造用鉛ダンパ−1は、例えば図10に示すように、前記鉛ダンパ−1の両端部2に固着して形成している固定フランジ3の取付手段は、前記鉛ダンパ−1の両端部2の端部2′と鋼材よりなる固定フランジ3の表面3′との接合をハンダ等の結合材8を介して両面を接合固着している。この接合固着箇所において生活環境において受ける震動特に大地震が発生した場合に前記鉛ダンパ−1の両端部と固定フランジ3との接合部分において大きな剪断圧力を受けることが想定され、ひいては建築構造物への悪影響が考えられる。
上記のような生活環境において発生する大地震により受ける建築構造物の損傷事故を可能な限り防止する目的で、例えば特開2003−27766号「免震構造用鉛ダンパ−及びその製造方法」或いは特開2003−74211号「免震構造用鉛ダンパ−及びその製造方法」等の新技術か開発されている。
前者の特開2003−27766号は、その特許請求の範囲の請求項4に記載されているように、取付板の表面を機械仕上げ又は/及び酸洗いしたのちソルダ−ペ−ストを塗布して半田層を形成するとともに、上記取付板の上面に堰を設け、その堰で囲まれた領域内に半田合金よりなる結合材を溶融させた状態で上記領域内にダンパ−本体を挿入することによって上記ダンパ−本体と取付板とを接合する免震構造用ダンパ−の製造方法が示されているが、この堰は半円形に形成した一対の板状の堰を互いに突き合わせて取付板の上面に配置し熔けた鉛の流出を防止するように形成したもので、前記堰の内側の結合材が冷却固化した後前記堰を取り外すように形成した免震構造用鉛ダンパ−及びその製造方法に関する技術が開示されている。しかしこの技術の場合は、半円形の一対の板状堰を組み合わせた後フリ−の状態で取付板の上面に載せた後その堰で囲まれた領域内に半田合金よりなる結合材を溶融させた状態で上記領域内にダンパ本体を挿入することによって上記ダンパ−本体と取付板を接合するので、溶融した結合材が凝固するまでダンパ−本体と取付板との芯ずれが発生しないように芯だしに作業者は神経を集中させなければならず更に両者の位置合わせに手間取り多大の調整手間及び取付け時間を要する欠点を有する。
また後者の特開2003−74211号は、その特許請求の範囲の請求項1に記載されているように、取付板の鉛ダンパ−本体取付部に凹部を形成し、その凹部内において鉛ダンパ−本体と取付板とを半田等の合金層を介して一体的に結合するように形成した免震構造用鉛ダンパ−及びその製造方法に関する技術が開示されている。
これら開発技術は優れた発想に基づいて開発されているが、半田合金層のみの接合では例え両者の接合面積を拡大したとしても、大地震が発生した場合に受ける想像を絶する大きな縦ゆれ及び横ゆれによる強力な震動圧力を確実に受け止め防止することは極めて困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上述した従来技術の問題点の改善及び開発された技術を更に改良して、免震構造用鉛ダンパ−1と固定フランジ3との熔着接合構造を改善し、大きな震動圧力をしっかり受け止めて、前記鉛ダンパ−1と固定ブランジ3との熔着接合部分からの剥離、離脱事故を防ぐように構成したした免震構造用鉛ダンパ−1と固定フランジ3の熔着接合方法及び熔着接合構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の免震構造用鉛ダンパ−1と固定フランジ3の熔着接合方法及び熔着接合構造は、地震等にて生ずる大きな震動に対応するために建築構造物を支持して前記建築構造物を安定的に保護するように構成された免震構造用鉛ダンパ−1の両端部2に一体的に接合する固定フランジ3との接合構造において、免震構造用鉛ダンパ−1の両端部2の端部2′付近の外周を円錐形状に膨出させて形成するとともにその端部2′に設けた円柱部9を若干延長し、一方免震構造用ダンパ−1の両端部2に熔着にて接合する固定フランジ3の上面3′に前記円柱部8の外径より10ミリ乃至50ミリ程度大きい径の内径を有し、かつ10ミリ乃至50ミリの高さを有する環状の囲い4を熔接により固着して形成し、前記免震構造用鉛ダンパ−1の端部2′の円柱部9を、固定フランジ3に固着した前記環状の囲い4の内部に設置したのち前記固定フランジ3の反対側の面3″を押圧しつつ高温で加熱し、前記固定フランジ3の上面3′に接触させている鉛ダンパ−1の端部2′付近の鉛を溶解して前記環状の囲い4の内部に溶解鉛を充満し前記鉛ダンパ−1の端部2′と固定フランジ3の上面3′及び環状の囲い4の内面4′をハンダ等の結合材8を介して熔着接合するように構成した免震構造用鉛ダンパ−1と固定フランジ3の熔着接合方法であり、請求項2の発明は地震等にて生ずる大きな震動に対応するために建築構造物6を支持するように構成された免震構造用鉛ダンパ−1の両端に一体的に接合する固定フランジ3との接合構造において、免震構造用鉛ダンパ−1の両端部2付近の外周を円錐形状に膨出させて形成するとともにその両端に設けた円柱部9を若干延長し、一方免震構造用鉛ダンパ−1の両端部2に熔着にて接合する固定フランジ3の上面に前記円柱部9の外径より10ミリ乃至50ミリ程度大きい内径を有しかつ10ミリ乃至50ミリの深さを有する円形窪み5を前記固定フランジ3の上面に形成し、前記免震構造用鉛ダンパ−1の両端円柱部9を固定フランジ3の上面に形成した円形窪み5の内部に設置したのち前記固定フランジ3の反対側の面3″を押圧しつつ高温で加熱し、前記固定フランジ3の上面に接触している鉛を熔解して前記円形窪み5の内部に熔解鉛を充満し前記免震構造用鉛ダンパ−1の端部2″と固定フランジ3の上面3′に形成した円形窪み5の内面5′及び壁面5″とを結合材8を介して熔着接合するように構成した免震構造用鉛ダンパ−1と固定フランジ3の熔着接合方法であり、請求項3の発明は前記固定フランジ3に固着した環状の囲い4の内面4′又は円形窪み5の壁面5′の下部全周に盗み部4″を設けた免震構造用鉛ダンパ−1と固定フランジ3の熔着接合構造であり、請求項4の発明は前記固定フランジ3に固着した環状の囲い4又は円形窪み5はその上部を内方に傾斜縮径させて形成した免震構造用鉛ダンパ−1と固定フランジ3の熔着接合構造であり、請求項5の発明は前記固定フランジ3を厚めに形成し、前記固定フランジ3の上面3′に免震構造用鉛ダンパ−1の端部2′位置決め用円形窪み10と前記位置決め用円形窪み10より10ミリ乃至50ミリ大きい径の円形窪み5を2段に座繰り形成した免震構造用鉛ダンパ−1と固定フランジ3の熔着接合構造に関するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明は上記のように、免震構造用鉛ダンパ−1の両端部2の端部2′と固定フランジ3の上面3′とを一体的に接合するに際し、固定フランシ3の上面3′に環状の囲い4を熔接により固着するか又は固定フランジ3の上面に円形の窪み4を座繰りして形成し、前記環状の囲い4又は円形窪み4の内部に前記鉛ダンパ−1の両端部2の端部2′を設置した後前記固定フランジ3の反対側の面3″を押圧しつつ高温で加熱し、前記固定フランジ3の上面3′に接触させている前記鉛ダンパ−1の端部2′付近の鉛を溶解して前記環状の囲い4又は円形窪み4の内部に溶解鉛を充満し前記鉛ダンパ−1の端部2′と固定フランジ3の上面3′及び環状の囲い4又は円形窪み4の内面4′をハンダ等の結合材7を介して熔着接合するように構成しているので、前記鉛ダンパ−1の端部2′と固定フランジ3の上面3′との熔着接合強度が向上するばかりでなく環状の囲い4を前記固定フランジ3の上面3′に固着形成しているか又は円形窪み4を形成しているので鉛ダンパ−1の端部2′の鉛が溶解された際前記固定フランジ3の上面3′の環状の囲い4内又は円形窪み5内に充満されて広がることにより接合面積が大幅に拡大することと更に環状の囲い4内又は円形窪み5内に接触する鉛を熔着接合保持するので前記環状の囲い4内又は円形窪み5に存在する前記鉛ダンパ−1の端部2′の鉛は固定ダンパ−3の上面3′における横方向及び環状の囲い4の内面4′又は円形窪み5の内面5′の縦方向の熔着面積が増大することによる熔着強度が大幅に向上し更に上下動による縦方向及び横方向のの震動圧力を受けた際前記環状の囲い4及び内面4′又は円形窪み5及び内面5′によりその圧力を受け止めて剥離離脱を防止することが出来るのみならず鉛ダンパ−1の下部の溶解時に溶けた鉛が外方に流出するのを防止する優れた利点を有し、更に前記環状囲い4又は円形窪み4を形成して鉛ダンパ−1を固定フランジ3の上面3′に接触させた状態で下面から押圧しながら加熱して溶解させる方式なので作業者は鉛ダンパ−と固定フランジ3の芯だしが極めて容易であり、作業性が大幅に向上する利点を有するものである。
【発明の実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の免震構造用鉛ダンパ−1は、前記鉛ダンパ−1の両端部2に一体的に接合する固定フランジ3との接合構造において、前記鉛ダンパ−1の両端部2の端部2′付近の外周を円錐形状に膨出させて形成するとともにその端部2′の先端部分に設けた円柱部8を若干延長し、一方前記鉛ダンパ−1の両端部2の端部2′に熔着接合する固定フランジ3の上面3′に前記円柱部9の外径よりも10ミリ乃至50ミリ程度大きい径の内径を有しかつ10ミリ乃至50ミリの高さを有する環状の囲い4を熔接により固着するか又は固定フランジ3の上面に10ミリ乃至50ミリの深さを有する円形窪み5を座繰りにて形成し、前記鉛ダンパ−1の両端2′の円柱部9を、固定フランジ3の上面3′に固着した前記環状の囲い4又は円形窪み5の内部に設置したのち前記フランジ3の反対側の面3″を押圧しつつ高温で加熱し、前記固定フランジ3の上面3′に接触している鉛の端部2′を溶解して前記環状の囲い4又は円形窪み5の内部に溶解鉛を充満し前記鉛ダンパ−1の端部2′と固定フランジ3の上面3′及び環状の囲い4及びその内面4′又は円形窪み5及び内面5′を結合材8を介して熔着接合するように構成した免震構造用鉛ダンパ−1と固定フランジ3の熔着接合方法及び熔着接合構造である。
【実施例】
【0007】
以下、図面に基づき、本発明の1実施例にについて更に詳しく説明すると、図1〜図9は、本発明に係わる免震構造用鉛ダンパ−1に関する説明図であり、図1は免震構造用鉛ダンパ−1と固定フランジ3との熔着接合状態を示す断面図を示し、図2は固定フランジ3の上面3′に前記鉛ダンパ−1の端部2′を設置した状態の断面図を示し、図3は固定フランジ3の平面図を示し、図4は第3図の側断面図を示し、図5は第2実施例を示す断面図を示し、図6は第3実施例を示し、図7は固定フランジ3の上面に円形窪み5と鉛ダンバ−1の端部2′を位置決めする窪み10を設けた平面図、図8は図7のX−X断面図、図9は図8の第3実施例を示すX−X断面図、図10は従来の免震構造用鉛ダンパ−を建築構造物6に取り付けた状態を示す側面図である。
【0008】
本発明の免震構造用鉛ダンパ−1について図1から図9に示す実施例に基づき具体的に説明すると、本発明の第1実施例は図1から図4に示されているとおり、免震構造用鉛ダンパ−1と前記鉛ダンパ−1の両端部2の端部2′に一体的に固着されている固定フランジ3との熔着接合構造を改良し、さらなる熔着接合強度の大幅向上を図った熔着接合方法及び熔着接合構造に関するものであり、先ず免震構造用鉛ダンパ−1の両端部2の端部2′に一体的に鋼板製固定フランジ3を熔着接合する構造として、免震構造用鉛ダンパ−1の両端部2の端部2′付近の外周を円錐形状に膨出させて形成するとともにその端部2′の先端に設けた円柱部9を若干延長し、一方前記鉛ダンパ−1の両端部2の端部2′にハンダ等の結合材8を介し熔着にて接合する前記固定フランジ3の上面3′に10ミリ乃至50ミリの高さを有する鋼製の環状囲い4を熔接により固着する。この環状の囲い4の内径は前記鉛ダンパ−1の端部2′の円柱部8を固定フランジ3の上面3′に設置して固着するために前記円柱部9の外径より10ミリ乃至50ミリ程度大きい径に形成している。また前記固定フランジ3の上面3′には前記円柱部9の端面2″を挿着して前記鉛ダンパ−1を固定フランジ3内に位置決めし固定するための5ミリ乃至10ミリ程度の深さを有する窪み10を形成している。
前記鉛ダンパ−1の両端部2の端部2′に固定フランジ3を接合する熔着接合方法を具体的にのべると、前記固定フランジ3の上面3′に設けた窪み10を含めた全面と環状の囲い4の内面4′にハンダ等の結合材8を予め熔着させておき、次いで前記鉛ダンパ−1の両端部2の端部2′の円柱部9の端面2″を前記環状の囲い4の内部に設けた窪み10内に設置して位置決めした後前記固定フランジ3の反対側の面3″に例えばジャッキ等で圧力を加えて押圧しつつガスバ−ナ−12等を用いて高温で加熱する。この結果前記窪み10内に設置している鉛ダンパ−1の両端部2の端部2′の円柱部9の端面2″近辺の鉛が溶解され前記環状の囲い4の内部に溶解鉛が充満される。前記溶解鉛が前記窪み10内に充満されて凝固する際にこの溶解鉛とハンダ等の結合材8とが熔着結合され、前記鉛ダンパ−1の端部2′に固定フランジ3が強固に熔着接合される。
なお環状の囲い4の第2実施例は、図5に示すように、固定フランシ3に熔接により固着された環状の囲い4の内面4′又は円形窪み5の内壁面5′の下部側に盗み部11を設けている。これは、前記盗み部11内に熔解鉛が充満されるように形成したものであり、この構成により地震等の大きな上下震動が発生した際の上下方向の離脱事故を防止するために形成したものである。
また環状の囲い4の第3実施例は、図6に示すように、固定フランジ3に熔接により固着された環状の囲い4の内面4′又は図8に示す円形窪み5の内壁5′を内方に傾斜縮径させ、その内壁部4″に第2実施例同様熔解鉛が充満されるように形成し、上下方向の離脱事故を防止するように形成したものである。
上記第2及び第3の実施例の場合は、その内面4′に熔融鉛が充填された際空気が籠もり巣が発生する恐れが有る場合は、環状の囲い4の下部にスリット或いは小孔を設けて残留空気を逃がすように形成すれば良い。
更に第4実施例として図7乃至図9に示すとおり、固定フランジ3を厚めに形成し、前記固定フランジ3の上面に免震構造用鉛ダンパ−1の端部位置決め用窪み10と円形窪み5を2段に座繰りして形成したものである。
【0009】
以上述べたように本発明の免震構造用鉛ダンパ−1は、前記鉛ダンパ−1の両端部2の端部2′に一体的に接合する固定フランジ3との接合構造において、前記鉛ダンパ−1の両端部2の端部2′付近の外周を円錐形状に膨出させて形成するとともにその端部2′に設けた円柱部9を若干延長し、一方前記鉛ダンパ−1の両端部2の端部2′に熔着接合する固定フランジ3の上面3′に前記円柱部9の外径よりも10ミリ乃至50ミリ程度の大きい径を有しかつ10ミリ乃至50ミリの高さを有する環状の囲い4を熔接により固着するか又は厚めに形成した固定フランジ3の上面に免震構造用鉛ダンパ−1の端部位置決め用窪み10と円形窪み5を2段に座繰りして形成し、前記鉛ダンパ−1の端部2′に設けている円柱部9を、固定フランジ3の上面3′に固着した前記環状の囲い4又は円形窪み5の内部に設置したのち前記固定フランジ3の反対側の面3″を押圧しつつ高温で加熱し、前記固定フランジ3の上面3′に接触している鉛の端面2″を溶解して前記環状の囲い4又は円形窪み5の内部に溶解鉛を充満し前記鉛ダンパ−1の端部2′と固定フランジ3の上面3′及び環状の囲い4の内面4′又は円形窪み5の内面5′をハンダ等の結合材8を介して熔着接合するように構成しているので、前記鉛ダンパ−1の両端部2の端部2′と固定フランジ3の上面3′との熔着接合強度が向上するばかりでなく環状の囲い4を前記固定フランジ3の上面3′に固着しているか又は円形窪み5を座繰りして形成しているので前記鉛ダンパ−1の両端部2の端部2′の鉛が溶解された際に前記固定フランジ3の上面3′の環状の囲い4又は円形窪み5内に充満されて広がることにより接合面積が大幅に拡大することと更に環状の囲い4の内面4′又は円形窪み5の内壁5′に接触している鉛を熔着接合保持するので前記環状の囲い4又は円形窪み5内に存在する前記鉛ダンパ−1の両端部2の端部2′の鉛は固定フランジ3の上面3′における横方向及び環状の囲い4の内面4′の縦方向の熔着面積が増大することによる熔着強度が大幅に向上し更に上下動による縦方向及び横方向の震動圧力を受けた際前記環状の囲い4によりその圧力を受け止めて前記固定フランジ3の上面3′から前記鉛ダンパ−1の剥離離脱を防止することが出来るのみならず溶解した鉛が外部に流出してしまうことがなくなる等優れた利点を有し、更に上記の通り鉛ダンパ−1と固定フランジ3との芯たし作業が極めて容易に行えるようになったことから、これらの作業に従事する作業者が鉛ダンパ−1と固定フランジ3の芯だし作業に神経をすり減らすことがなくなり、またこの接合作業を容易に行えるようになったことから作業能率が大幅に向上し、鉛ダンパ−1の製造原価節減に寄与する等多くの優れた利点を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】 本発明に係わる免震構造用鉛ダンパ−1と固定ダンパ−3の熔着接合状態を示す断面図。
【図2】 固定フランジ3の上面3′に前記鉛ダンパ−1の端部2′を設置した状態の断面図。
【図3】 固定フランジ3の平面図。
【図4】 図3のX−X断面図。
【図5】 固定フランジ3の第2実施例を示す側断面図。
【図6】 固定フランジ3の第3実施例を示す側断面図。
【図7】 固定フランジ3の上面に位置決め用窪み10と円形窪み5の2段座繰りを施した平面図。
【図8】 図7のX−X断面図。
【図9】 図8の第3実施例を示すX−X断面図。
【図10】 従来の免震構造用鉛ダンパ−1を建築構造物6に取付けた状態を示す側面図。
【符号の説明】
【0011】
1. 免震構造用鉛ダンパ−。
2. 鉛ダンパ−1の両端部。
2′ 鉛ダンパ−1の両端部の端部。
2″ 鉛ダンパ−1の端部2′の端面。
3. 固定フランジ。
3′ 固定フランジの上面。
3″ 固定フランジの反対側の面。
4. 環状の囲い。
4′ 環状の囲いの内面。
5. 円形窪み。
5′ 円形窪みの内面。
6. 建築構造物。
7. 基礎。
8. 結合材。
9. 鉛ダンパ−の両端部2の端部2′の円柱部。
10.窪み。
11.囲い4の内面4′又は円形窪み5の下部に設けた盗み部。
12.バ−ナ−。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地震等にて生ずる大きな震動に対応するために建築構造物を支持するように構成された免震構造用鉛ダンパ−の両端部に一体的に接合する固定フランジとの接合構造において、免震構造用鉛ダンパ−の両端部付近の外周を円錐形状に膨出させて形成するとともにその両端に設けた円柱部を若干延長し、一方免震構造用鉛ダンパ−の両端部に熔着にて接合する固定フランジの上面に前記円柱部の外径より10ミリ乃至50ミリ程度大きい内径を有しかつ10ミリ乃至50ミリの高さを有する環状の囲いを溶接により固着し、前記免震構造用鉛ダンパ−の両端円柱部を固定フランジに固着した前記環状囲いの内部に設置したのち前記固定フランジの反対側の面を押圧しつつ高温で加熱し、前記固定フランジの上面に接触している鉛を溶解して前記環状囲いの内部に溶解鉛を充満し前記免震構造用鉛ダンパ−の端部と固定フランジの上面及び環状囲いの内面を結合材を介して熔着接合するように構成したことを特徴とする免震構造用鉛ダンパ−と固定フランジの熔着接合方法。
【請求項2】
地震等にて生ずる大きな震動に対応するために建築構造物を支持するように構成された免震構造用鉛ダンパ−の両端部に一体的に接合する固定フランジとの接合構造において、免震構造用鉛ダンパ−の両端部付近の外周を円錐形状に膨出させて形成するとともにその両端に設けた円柱部を若干延長し、一方免震構造用鉛ダンパ−の両端部に熔着にて接合する固定フランジの上面に前記円柱部の外径より10ミリ乃至50ミリ程度大きい内径を有しかつ10ミリ乃至50ミリの深さを有する円形窪みを前記固定フランジの上面に形成し、前記免震構造用鉛ダンパ−の両端円柱部を固定フランジの上面に形成した円形窪みの内部に設置したのち前記固定フランジの反対側の面を押圧しつつ高温で加熱し、前記固定フランジの上面に接触している鉛を熔解して前記円形窪みの内部に熔解鉛を充満し前記免震構造用鉛ダンパ−の端部と固定フランジの上面に形成した円形窪みの内面及び壁面とを結合材を介して熔着接合するように構成したことを特徴とする免震構造用鉛ダンパ−と固定フランジの熔着接合方法。
【請求項3】
前記固定フランジに固着した環状囲いの内面又は円形窪みの壁面の下部全周に盗み部を設けたことを特徴とする請求項1及び2に記載の免震構造用鉛ダンパ−と固定フランジの熔着接合構造。
【請求項4】
前記固定フランジに固着した環状囲いの内面又は円形窪みの壁面はその上部を内方に傾斜縮径させて形成したことを特徴とする請求項1及び2に記載の免震構造用鉛ダンパ−と固定フランジの熔着接合構造。
【請求項5】
前記固定フランジを厚めに形成し、前記固定フランジの上面に免震構造用鉛ダンパ−の端部位置決め用円形窪みと前記位置決め用円形窪みより10ミリ乃至50ミリ大きい径の円形窪みを2段に座繰り形成したことを特徴とする請求項1及び2に記載の免震構造用鉛ダンパ−と固定フランジの熔着接合構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−239425(P2007−239425A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−95674(P2006−95674)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(593127647)大阪化工株式会社 (8)
【Fターム(参考)】