説明

入力装置

【課題】人間の下顎の動きに伴う表皮の変動を検出することにより、入力装置の製造コストを削減し、小型化することが可能な入力装置を提供する。
【解決手段】外部機器を制御する制御信号を外部機器に出力する入力装置1であって、人間の下顎の動きに伴う表皮の変動を検出する少なくとも1つのセンサ3a,3bと、表皮の変動に基づいて制御信号を生成する信号生成部4とを備える。なお、表皮の変動は、こめかみの表皮の変動である。また、センサ3a,3bは、表皮の変動を表皮に接触することなく検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサの検出結果に基づいて、外部機器に制御信号を出力する入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータをいつでもどこでも使用することが可能なユビキタスコンピューティングの検討が進んでいる。ユビキタスコンピューティングにおいて、特に、近年では、コンピュータを身につけることが可能なウェアラブルコンピュータが注目されている。ウェアラブルコンピュータは、日常生活の中で常時利用することができ、かつ、いわゆるハンズフリーで別の作業を行うことができるというメリットがある。
【0003】
このようなウェアラブルコンピュータに備えられる入力装置の一例として、例えば、ヘッドフォンを用いた視線インタフェースが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。すなわち、この視線インタフェースは、角膜が網膜に対して正に帯電していることを利用した視線検出方法(EOG;Electro Oculogram)を用いることにより、視線の方向に応じて、外部機器の制御信号を出力可能な装置である。具体的には、この視線インタフェースは、ヘッドフォンが装着される両耳近傍の位置に複数の電極を貼り付けることにより、人間の眼球運動に伴うEOGを検出信号として検出し、例えば、カルマンフィルタを用いることによって人間の視線の方向を推定する。視線インタフェースは、推定した視線の方向に応じて、外部機器の制御信号を出力する。
【非特許文献1】真鍋宏幸、福本雅朗、「ヘッドフォンを用いた常時装用視線インタフェース」、インタラクション2006論文集、社団法人情報処理学会、2006年、p23−24
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の入力装置は、人間の眼球運動に伴うEOGを検出信号として検出し、カルマンフィルタを用いることによって人間の視線の方向を推定するので、入力装置の処理が複雑化する。入力装置による処理が複雑化するので、複数かつ高機能な部品を用いて入力装置を構成する必要があり、入力装置の製造コストがかかる。また、入力装置が大型化する。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、人間の下顎の動きに伴う表皮の変動を検出することにより、入力装置の製造コストを削減し、小型化することが可能な入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明における入力装置は、外部機器を制御する制御信号を前記外部機器に出力する入力装置であって、人間の下顎の動きに伴う表皮部分の変動を検出する少なくとも1つのセンサと、前記表皮部分の変動に基づいて前記制御信号を生成する信号生成部とを備える。
【0007】
本発明の入力装置によれば、センサは、人間の下顎の動きに伴う表皮部分の変動を検出する。信号生成部は、表皮部分の変動に基づいて制御信号を生成する。これにより、上記従来の入力装置と比較して、入力装置の製造コストを削減し、小型化することができる。
【0008】
また、本発明の入力装置をユーザが装着した場合、このユーザは、下顎を動かすだけで、例えば、外部機器を動作させることが可能となる。下顎は、手足の動き、首の動き、眉の動き、瞬きなどと比較して、小さな動作で動かすことができ、かつ、下顎を動かしている本人以外の第三者からはこの下顎の動きに気付き難い。このため、ユーザが、例えば、公共の場において入力装置を使用した場合であっても、誰にも気付かれることなく、極めて自然な動きで、外部機器を動作させることが可能となる。また、ユーザは、視覚、聴覚、蝕運動覚、嗅覚、および、味覚などを損なうことなく、入力装置を使用することが可能となる。
【0009】
上記本発明における入力装置においては、前記センサは、人間のまぶたの動きに伴う表皮の変動をさらに検出する態様とするのが好ましい。
【0010】
この構成によれば、センサは、人間のまぶたの動きに伴う表皮の変動をさらに検出するので、信号生成部は、この表皮の変動に基づいて制御信号を生成することができる。一例として、信号生成部は、センサが人間の下顎の動きに伴う表皮の変動を検出した場合と、センサが人間のまぶたの動きに伴う表皮の変動を検出した場合とで、互いに異なる制御信号を生成することが可能となる。また、他の例として、信号生成部は、センサが人間の下顎の動きに伴う表皮の変動を検出した場合と、センサが人間のまぶたの動きに伴う表皮の変動を検出した場合とで、互いに同一の制御信号を生成することも可能となる。
【0011】
上記本発明における入力装置においては、前記センサは、前記表皮部分の変動を前記表皮部分に接触することなく検出する態様とするのが好ましい。この構成によれば、表皮部分の変動を表皮部分に接触して検出するセンサと比較して、人間の表皮部分における、例えば、汗などの影響を抑えることができる。
【0012】
上記本発明における入力装置においては、前記センサは、前記表皮部分に光を照射する光照射部と、前記表皮部分で反射した反射光を受光する受光部と、前記反射光の光量を検出する検出部とを含む態様とするのが好ましい。
【0013】
この構成によれば、センサは、光センサにて構成されているので、光センサと同様の非接触型の超音波センサや角速度センサ、CCDなどと比較して、安価となる。これにより、入力装置の製造コストを削減することができる。なお、光センサとしては、例えば、フォトリフレクタが好ましい。
【0014】
また、上記目的を達成するために本発明における入力装置は、外部機器を制御する制御信号を前記外部機器に出力する入力装置であって、人間の表皮部分に接触し、前記表皮部分の変動に伴って変動する接触部と、前記接触部の変動に伴って変動するセンサと、前記制御信号を生成する信号生成部とを備え、前記センサは、前記センサの変動に伴って変化する、前記センサと前記表皮部分とは異なる表皮部分との間の距離を検出し、前記信号生成部は、前記距離に基づいて前記制御信号を生成する。なお、前記表皮部分は、人間の下顎の動きに伴って変動する部分であることが好ましい。
【0015】
本発明の入力装置によれば、接触部は、人間の表皮部分に接触し、表皮部分の変動に伴って変動する。また、センサは、接触部の変動に伴って変動する。ここで、センサは、当該センサの変動に伴って変化する、当該センサと前記表皮部分とは異なる表皮部分との間の距離を検出する。信号生成部は、前記距離に基づいて前記制御信号を生成する。これにより、上記従来の入力装置と比較して、入力装置の製造コストを削減し、小型化することができる。
【0016】
上記本発明における入力装置においては、前記センサは、前記異なる表皮部分に光を照射する光照射部と、前記異なる表皮部分で反射した反射光を受光する受光部と、前記反射光の光量を検出する検出部とを含む態様とするのが好ましい。
【0017】
この構成によれば、センサは、光センサにて構成されているので、光センサと同様の非接触型の超音波センサや角速度センサ、CCDなどと比較して、安価となる。これにより、入力装置の製造コストを削減することができる。
【0018】
上記本発明における入力装置においては、前記接触部に接続され、前記接触部の変動に伴って変動する接続部をさらに備え、前記センサは、前記接続部に設けられ、前記接続部は、前記センサに前記接触部の変動を伝える態様とするのが好ましい。
【0019】
また、上記本発明における入力装置においては、前記接続部は、前記接触部の変動を増幅して前記センサに伝える態様とするのが好ましい。
【0020】
この構成によれば、接続部は、接触部の変動を増幅してセンサへ伝えるので、接触部の変動が微弱であっても、当該センサは、当該接触部の変動を確実に検出することが可能となる。
【0021】
上記本発明における入力装置においては、前記表皮部分は、人間のまぶたの動きに伴って変動する部分である態様とするのが好ましい。
【0022】
また、上記本発明における入力装置においては、前記表皮部分は、こめかみの表皮部分である態様とするのが好ましい。
【0023】
上記本発明における入力装置においては、前記信号生成部は、前記表皮部分の変動のパターンに応じて、前記制御信号を生成する態様とするのが好ましい。
【0024】
この構成によれば、センサと表皮部分との距離に依存することなく、信号生成部は、表皮部分の変動のパターンに応じて、制御信号を生成することが可能となる。これにより、例えば、本発明の入力装置をユーザが装着した場合、このユーザは、センサの位置を厳密に調整する必要がない。この結果、ユーザの手間を省くことができる。
【0025】
上記本発明における入力装置においては、前記制御信号は、2値の信号であり、前記信号生成部は、前記表皮部分の変動のパターンが第1のパターンである場合には、前記2値の信号のうちの一方を生成し、前記表皮部分の変動のパターンが第2のパターンである場合には、前記2値の信号のうちの他方を生成する態様とするのが好ましい。
【0026】
この構成によれば、信号生成部により生成された制御信号を、例えば、外部機器に対する電源のON/OFF信号、音楽プレーヤに対する再生/停止信号などに適用することが可能となる。
【0027】
上記本発明における入力装置においては、前記信号生成部は、少なくとも1つのパターン、および、前記少なくとも1つのパターンに対応する少なくとも1つの制御信号を格納する格納部と、前記少なくとも1つのパターンのうち、前記表皮部分の変動に一致するパターンを判定する判定部と、前記一致するパターンに対応する制御信号を出力する制御信号出力部とを含む態様とするのが好ましい。
【0028】
この構成によれば、格納部は、少なくとも1つのパターン、および、少なくとも1つのパターンに対応する少なくとも1つの制御信号を格納する。判定部は、少なくとも1つのパターンのうち、表皮部分の変動に一致するパターンを判定する。制御信号出力部は、一致するパターンに対応する制御信号を出力する。これにより、制御信号出力部は、様々な表皮の変動のパターンに応じて、様々な制御信号を出力することが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
以上のように、本発明の入力装置は、人間の下顎の動きに伴う表皮の変動を検出することにより、入力装置の製造コストを削減し、小型化することが可能であるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明のより具体的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0031】
[実施の形態1]
図1は、本実施形態に係る入力装置1の装着例を示す概略図である。なお、図1(a)は、本実施形態に係る入力装置1を装着した人間の顔を正面から見た図、図1(b)は、本実施形態に係る入力装置1を装着した人間の頭を上面から見た図である。
【0032】
すなわち、本実施形態に係る入力装置1は、装着部2、右センサ3a、左センサ3b、および、信号生成部4を備えている。
【0033】
装着部2は、人間の頭部Hにおける額に装着可能な器具である。装着部2は、例えば、U字型の固定用器具からなり、アルミニウム合金などの弾性部材から構成される。つまり、人間が手で装着部2を外側に広げて頭部Hに挿入し手を離すと、人間の頭部Hの内側に向けて弾性力が働くので、装着部2が人間の頭部Hに装着される。図1に示す例では、装着部2が、人間の頭部Hにおける額から耳にかけて装着されており、装着部2には、人間の右側のこめかみAに対応するように、右センサ3aが設けられ、人間の左側のこめかみAに対応するように、左センサ3bが設けられている。なお、信号生成部4は、右センサ3aの近傍に位置するように、装着部2に設けられている。右センサ3aおよび左センサ3bは、人間の表皮(皮膚)に対して非接触となるように、装着部2に設けられている。右センサ3aは、例えば、光センサから構成されており、人間の下顎の動きに伴う右側のこめかみAにおける表皮の変動を検出するセンサである。左センサ3bは、例えば、光センサから構成されており、人間の下顎の動きに伴う左側のこめかみAにおける表皮の変動を検出するセンサである。信号生成部4は、例えば、シングルチップマイコンから構成されており、右センサ3aおよび左センサ3bから検出されたこめかみAの表皮の変動に基づいて、外部機器を制御する制御信号を外部機器に出力する。
【0034】
なお、以下では、互いに同じ機能を有している部材を説明する際、特に区別する必要のある場合にのみ、例えば、右センサ3aのように、それぞれを区別するための英小文字を付して説明し、特に区別する必要がない場合、あるいは、総称する場合には、例えば、センサ3のように、英小文字を付さずに説明する。
【0035】
ここで、図1に示す例では、センサ3は、光センサにて構成されているので、人間の下顎の動きに伴う表皮の変動をこの表皮に対して非接触で検出することが可能である。これにより、センサ3が、例えば、筋電位、あるいは、ひずみセンサのように、接触型のセンサで構成されている場合と比較して、人間の表皮における、例えば、汗などの影響を抑えることができる。但し、人間の表皮における、例えば、汗などの影響を考慮する必要がない場合は、非接触型の光センサに代えて、接触型のセンサを用いても良い。また、非接触型のセンサとして、光センサの代わりに、超音波センサ、角速度センサ、CCD(Charge Coupled Device)などを用いても良い。すなわち、センサ3は、人間の下顎の動きに伴う表皮の変動を検出できれば、様々な任意のセンサを用い得る。
【0036】
図2は、咀嚼筋の一つである側頭筋の動作を説明するための説明図である。図2に示すように、咀嚼筋5は、主に、側頭筋5a、咬筋5b、および、下顎上筋群5cからなる。つまり、咀嚼筋5は、下顎6の運動(例えば、咀嚼運動)に関わる筋の総称である。ここで、人間が、例えば、咀嚼あるいは奥歯を噛み締めることにより下顎6を動かすと、咀嚼筋5の一つである側頭筋5aが収縮(変化)する。側頭筋5aが収縮するので、人間の耳7の近傍かつ略前方に位置するこめかみAの表皮が隆起する。こめかみAは、図示しない前頭骨、頬骨、および、側頭骨の頬骨突起に囲まれた凹みに位置している。本実施形態に係る入力装置1は、図1に示すように、右センサ3aおよび左センサ3bを、左右のこめかみAに対応させるように装着することで、左右のこめかみAの表皮の変動(隆起の有無)を検出する。
【0037】
図3は、本実施形態に係る入力装置1におけるセンサ3および信号生成部4の概略構成を示すブロック図である。
【0038】
センサ3は、例えば、光センサから構成されている。光センサとして、フォトリフレクタ(反射型フォトセンサ)であることが好ましい。フォトリフレクタは安価だからである。右センサ3aは、光照射部31a、受光部32a、および、検出部33aを備えている。左センサ3bも、光照射部31b、受光部32b、および、検出部33bを備えている。
【0039】
光照射部31は、こめかみAに検出光を照射する。光照射部31は、例えば、発光ダイオード、赤外線ダイオードなどから構成されている。受光部32は、こめかみAにて反射された検出光を反射光として受光する。受光部32は、例えば、フォトトランジスタから構成されている。検出部33は、受光部32が受光した反射光の光量を検出信号として検出する。すなわち、検出部33は、下顎6の動きに伴うこめかみAの表皮の変動を、受光部32が受光した反射光の光量の変化として検出する。検出部33は、検出した検出信号を信号生成部4に出力する。
【0040】
信号生成部4は、例えば、シングルチップマイコンから構成されており、センサ3から出力された検出信号に基づいて、“High”の制御信号または“Low”の制御信号を生成し、生成した“High”の制御信号または“Low”の制御信号を外部機器に出力する機能を有している。このため、信号生成部4は、信号処理部41a,41b、判定部42、および、制御信号出力部43を備えている。なお、本実施形態に係る外部機器は、単に、本実施形態に係る入力装置1に対して外部に存在する機器という意味である。すなわち、入力装置1と外部機器とを備えたシステムとして考えた場合、実際には、外部機器は主装置であって、入力装置1はこの主装置に対する入力インタフェースとなる。
【0041】
信号処理部41は、センサ3から出力された検出信号をデジタル信号に変換する。すなわち、信号処理部41は、検出信号を判定部42で処理可能なようにデジタル信号に変換する。このため、信号処理部41は、例えば、A/Dコンバータから構成される。A/Dコンバータとしては、逐次比較型のA/Dコンバータ、V/F変換型のA/Dコンバータなどが用いられる。信号処理部41は、変換したデジタル信号を判定部42に出力する。
【0042】
判定部42は、単位時間において、信号処理部41aから出力されたデジタル信号が、所定の変動パターンを示しており、かつ、信号処理部41bから出力されたデジタル信号が、所定の変動パターンを示している場合、“High”の制御信号の生成を指示する生成信号を出力する。本実施形態においては、人間が、下顎6を動かすことによって、1秒間程度奥歯を噛み締め続けた場合に、判定部42は、“High”の制御信号の生成を指示する生成信号を出力する。
【0043】
制御信号出力部43は、判定部42から出力された生成信号に基づいて、“High”の制御信号を生成する。制御信号出力部43は、生成した“High”の制御信号を外部機器に出力する。なお、制御信号出力部43は、判定部42から生成信号が出力されない場合、“Low”の制御信号を生成する。制御信号出力部43は、生成した“Low”の制御信号を外部機器に出力する。なお、制御信号出力部43は、制御信号が入力される外部機器の特性に合うように、制御信号を生成する機能を備えていても良い。
【0044】
以下では、本実施形態に係る判定部42による具体的な処理について、図4を参照しながら詳細に説明する。
【0045】
図4は、人間が1秒間程度奥歯を噛み締め続けた場合の検出信号の一例を示す図である。なお、図5は、人間がゆっくりと奥歯でガムを1回噛んだ場合の検出信号の一例を示す図である。図6は、人間が無意識に瞬きを1回行った場合の検出信号の一例を示す図である。図7は、人間が秒速1m程度の速度で舗装された平地を歩行した場合の検出信号の一例を示す図である。図8は、人間が任意の会話を発話した場合の検出信号の一例を示す図である。図4〜図8において、縦軸は電圧(mV)、横軸は時間(秒)を表す。
【0046】
本実施形態においては、センサ3が、図4に示す検出信号を信号生成部4へ出力したものとする。判定部42は、まず、時刻t1における電圧値V1と、時刻t2(時刻t1より大)おける電圧値V2とを比較する。図4に示す例では、判定部42は、時刻t1「0.05s」における電圧値V1「310mV」と、時刻t2「0.35s」における電圧値V2「460mV」とを比較する。そして、判定部42は、時刻t1〜時刻t2における電圧の増加値が所定の範囲ΔA内を示しているか否かを判定する。図4に示す例では、判定部42は、時刻t1〜時刻t2における電圧の増加値「150mV」が所定の範囲ΔA「73mV〜220mV」内を示していると判定する。
【0047】
時刻t1〜時刻t2における電圧の増加値が所定の範囲ΔA内を示している場合、判定部42は、時刻t2から一定時間Tが経過した時刻t3における電圧値V3と、時刻t4(時刻t3より大)における電圧値V4とを比較する。図4に示す例では、判定部42は、時刻t2から一定時間T「0.3s」が経過した時刻t3「0.65s」における電圧値V3「460mV」と、時刻t4「0.95s」における電圧値V4「455mV」とを比較する。そして、判定部42は、時刻t3〜時刻t4における電圧の変化値が所定の範囲ΔB内を示しているか否かを判定する。図4に示す例では、判定部42は、時刻t3〜時刻t4における電圧の変化値「−5mV」が所定の範囲ΔB「±48mV」内を示していると判定する。
【0048】
時刻t3〜時刻t4における電圧の変化値が所定の範囲ΔB内を示している場合、判定部42は、時刻t4における電圧値V4と、時刻t5(時刻t4より大)における電圧値V5とを比較する。図4に示す例では、判定部42は、時刻t4「0.95s」における電圧値V4「455mV」と、時刻t5「1.25s」における電圧値V5「453mV」とを比較する。そして、判定部42は、時刻t4〜時刻t5における電圧の変化値が所定の範囲ΔB内を示しているか否かを判定する。図4に示す例では、判定部42は、時刻t4〜時刻t5における電圧の変化値「−2mV」が所定の範囲ΔB「±48mV」内を示していると判定する。
【0049】
時刻t4〜時刻t5における電圧の変化値が所定の範囲ΔB内を示している場合、判定部42は、時刻t5における電圧値V5と、時刻t6(時刻t5より大)における電圧値V6とを比較する。図4に示す例では、判定部42は、時刻t5「1.25s」における電圧値V5「453mV」と、時刻t6「1.55s」における電圧値V6「325mV」とを比較する。そして、判定部42は、時刻t5〜時刻t6における電圧の減少値が所定の範囲ΔC内を示しているか否かを判定する。図4に示す例では、判定部42は、時刻t5〜時刻t6における電圧の減少値「128mV」が所定の範囲ΔC「48mV〜220mV」内を示していると判定する。
【0050】
時刻t5〜時刻t6における電圧の減少値が所定の範囲ΔC内を示している場合、判定部42は、“High”の制御信号の生成を指示する生成信号を出力する。すなわち、図4に示す例では、判定部42は、“High”の制御信号の生成を指示する生成信号を出力する。
【0051】
ここで、上記の一定時間T、所定の範囲ΔA、所定の範囲ΔB、および、所定の範囲ΔCは、判定部42の図示しないメモリに予め記録されている。
【0052】
なお、時刻t3〜時刻t4における電圧の変化値が所定の範囲ΔB内を示していない場合、判定部42は、時刻t3〜時刻t4における電圧の減少値が所定の範囲ΔC内を示しているか否かを判定し、時刻t3〜時刻t4における電圧の減少値が所定の範囲ΔC内を示している場合、“High”の制御信号の生成を指示する生成信号を出力するようにしても良い。
【0053】
また、時刻t4〜時刻t5における電圧の変化値が所定の範囲ΔB内を示していない場合、判定部42は、時刻t4〜時刻t5における電圧の減少値が所定の範囲ΔC内を示しているか否かを判定し、時刻t4〜時刻t5における電圧の減少値が所定の範囲ΔC内を示している場合、“High”の制御信号の生成を指示する生成信号を出力するようにしても良い。
【0054】
すなわち、本実施形態に係る判定部42は、人間がゆっくりと奥歯でガムを1回噛んだ場合(図5参照)、人間が無意識に瞬きを1回行った場合(図6参照)、人間が秒速1m程度の速度で舗装された平地を歩行した場合(図7参照)、人間が任意の会話を発話した場合(図8参照)などでは、生成信号を出力しない。つまり、本実施形態に係る判定部42は、上記より、人間が1秒間程度奥歯を噛み締め続けた場合(図4参照)に限って、生成信号を出力することが可能となる。
【0055】
また、本実施形態に係る判定部42は、センサ3とこめかみAの表皮との距離に依存することなく、信号処理部41から出力されたデジタル信号が、所定の変動パターンを示している場合に、生成信号を出力することが可能となる。これにより、本実施形態に係る入力装置1を装着したユーザは、センサ3の位置を厳密に調整する必要がない。それゆえ、ユーザの手間を省くことができる。
【0056】
これにより、本実施形態に係る入力装置1は、例えば、外部機器に対する電源のON/OFF、音楽プレーヤに対する再生/停止、マウスのクリック動作、目、耳、手、足などの不自由な身障者のための意思伝達装置、あるいは、咀嚼の指導用機器など、様々な用途に適用することが可能な入力インタフェースとなる。また、本実施形態に係る入力装置1を、例えば、ヘッドマウントディスプレイ、ヘッドホンスピーカ、骨伝導スピーカなどの外部機器に接続することにより、ウェアラブルコンピュータとして構成することも可能である。
【0057】
なお、上記では、判定部42は、単位時間において、信号処理部41から出力されたデジタル信号が、所定の変動パターンを示している場合、“High”の制御信号の生成を指示する生成信号を出力する例について説明したが、これに限定されない。例えば、判定部42は、単位時間において、信号処理部41から出力されたデジタル信号が、閾値以上を示している場合、“High”の制御信号の生成を指示する生成信号を出力するようにしても良い。
【0058】
ところで、上記の信号生成部4は、パーソナルコンピュータなどの任意のコンピュータにプログラムをインストールすることによっても実現される。すなわち、上記の信号処理部41、判定部42、および、制御信号出力部43は、コンピュータのCPUがこれらの機能を実現するプログラムに従って動作することによって具現化される。したがって、信号処理部41、判定部42、および、制御信号出力部43の機能を実現するためのプログラムまたはそれを記録した記録媒体も、本発明の一実施形態である。
【0059】
次に、上記の構成に係る入力装置1の動作について、図9を参照しながら説明する。
【0060】
図9は、入力装置1の動作の概要を示すフローチャートである。すなわち、図9に示すように、センサ3は、下顎6の動きに伴うこめかみAの表皮の変動を検出信号として検出する(工程Op1)。信号処理部41は、工程Op1にて検出された検出信号をデジタル信号に変換する(工程Op2)。
【0061】
次に、判定部42は、単位時間において、工程Op2にて変換されたデジタル信号が、所定の変動パターンを示しているか否かを判定する(工程Op3)。判定部42は、単位時間において、工程Op2にて変換されたデジタル信号が、所定の変動パターンを示していると判定すれば(工程Op3にてYES)、“High”の制御信号の生成を指示する生成信号を出力する(工程Op4)。制御信号出力部43は、工程Op4にて出力された生成信号に基づいて、“High”の制御信号を生成する(工程Op5)。制御信号出力部43は、工程Op5にて生成された“High”の制御信号を外部機器に出力する(工程Op6)。
【0062】
一方、判定部42は、単位時間において、工程Op2にて変換されたデジタル信号が、所定の変動パターンを示していないと判定すれば(工程Op3にてNO)、制御信号出力部43は、“Low”の制御信号を生成する(工程Op7)。制御信号出力部43は、工程Op7にて生成された“Low”制御信号を外部機器に出力する(工程Op8)。
【0063】
以上のように、本実施形態に係る入力装置1によれば、センサ3は、人間の下顎6の動きに伴うこめかみAの表皮の変動を検出する。信号生成部4は、こめかみAの表皮の変動に基づいて制御信号を生成する。これにより、上記従来の入力装置と比較して、入力装置の製造コストを削減し、小型化することができる。
【0064】
また、本実施形態に係る入力装置1をユーザが装着した場合、このユーザは、下顎6を動かすだけで、例えば、外部機器を動作させることが可能となる。下顎6は、手足の動き、首の動き、眉の動き、瞬きなどと比較して、小さな動作で動かすことができ、かつ、下顎6を動かしている本人以外の第三者からはこの下顎6の動きに気付き難い。このため、ユーザが、例えば、公共の場において入力装置1を使用した場合であっても、誰にも気付かれることなく、極めて自然な動きで、外部機器を動作させることが可能となる。また、ユーザは、視覚、聴覚、蝕運動覚、嗅覚、および、味覚などを損なうことなく、入力装置1を使用することが可能となる。
【0065】
なお、本実施形態に係る入力装置1では、人間が1秒間程度奥歯を噛み締め続けた場合に、“High”の制御信号を出力する例について説明したが、これに限定されない。例えば、奥歯を2回噛み締めた場合に、“High”の制御信号を出力するようにしても良い。すなわち、奥歯の噛み締め方(一定時間、回数など)を種々組み合わせることにより、人間がこの組み合わせに対応する動作を行った場合に、“High”の制御信号を出力するようにしても良い。また、人間が1秒間程度奥歯を噛み締め続けた場合に、“High”の制御信号を出力することに代えて、“Low”の制御信号を出力するようにしても良い。
【0066】
また、本実施形態に係る入力装置1では、センサ3が、下顎6の動きに伴うこめかみAの表皮の変動を検出する例について説明したが、これに限定されない。例えば、センサ3が、下顎6の動きに伴う頬の表皮の変動を検出するようにしても良いし、口の周囲における表皮の変動を検出するようにしても良い。すなわち、センサ3が、下顎6の動きに伴う表皮の変動を検出できれば、こめかみAの表皮には限定されない。
【0067】
[実施の形態2]
実施の形態1では、人間が1秒間程度奥歯を噛み締め続けた場合に、制御信号出力部が“High”の制御信号を外部機器に出力し、それ以外の場合に、制御信号出力部が“Low”の制御信号を外部機器に出力する例について説明した。これに対して、実施の形態2では、奥歯を噛み締める様々なパターンに応じて、制御信号出力部が様々な制御信号を外部機器に出力する例について説明する。
【0068】
図10は、本実施形態に係る入力装置1におけるセンサ3および信号生成部8の概略構成を示すブロック図である。なお、図10において、図3と同様の機能を有する構成については、同じ参照符号を付記し、その詳細な説明を省略する。
【0069】
なお、本実施形態においては、一例として、入力装置1に、有線あるいは無線で外部機器である音楽プレーヤが接続されている場合について説明する。
【0070】
図10に示す信号生成部8は、図3に示す信号生成部4に加えて、格納部81を備えている。また、図10に示す信号生成部8は、図3に示す判定部42および制御信号出力部43の代わりに、判定部82および制御信号出力部83を備えている。
【0071】
格納部81は、信号処理部41から出力されたデジタル信号が示す所定の変動パターン、および、この変動パターンに対応する制御信号を複数組格納する。なお、格納部81は、変動パターンおよび制御信号を1組のみ格納しても良い。図11は、格納部81に格納されたデータ例を模式的に示す図である。ここで、変動パターンAは、人間が奥歯を素早く噛み締めた後に一定時間噛み締め続けた場合のパターンである。変動パターンBは、人間が奥歯をゆっくりと噛み締めた後に一定時間噛み締め続けた場合のパターンである。変動パターンCは、人間が奥歯をゆっくりと噛み締め、そして、再度、奥歯をゆっくりと噛み締めた後に一定時間噛み締め続けた場合のパターンである。変動パターンDは、人間が奥歯を素早く噛み締め、そして、再度、奥歯を素早く噛み締めた後に一定時間噛み締め続けた場合のパターンである。なお、図11は、説明の便宜上、変動パターンおよび制御信号を模式的に示したが、実際は、格納部81には、変動パターンおよび制御信号が、信号生成部8で処理可能なように、バイナリデータにて格納されている。
【0072】
判定部82は、単位時間において、信号処理部41aから出力されたデジタル信号が、格納部81に格納されている複数の変動パターンのうちどの変動パターンを示しているのかを判定し、かつ、信号処理部41bから出力されたデジタル信号が、格納部81に格納されている複数の変動パターンのうちどの変動パターンを示しているのかを判定する。判定部82は、信号処理部41aおよび信号処理部41bから出力されたデジタル信号が示す変動パターンに対応する制御信号を格納部81から読み出す。判定部82は、読み出した制御信号の生成を指示する生成信号を出力する。
【0073】
ここで、本実施形態においては、信号処理部41aおよび信号処理部41bから出力されたデジタル信号が、人間が奥歯を素早く噛み締めた後に一定時間噛み締め続けた場合の信号であったものとする。すなわち、本実施形態においては、判定部82は、信号処理部41aおよび信号処理部41bから出力されたデジタル信号が、格納部81の変動パターンAを示していると判定する。判定部82は、変動パターンAに対応する制御信号“再生・停止”を格納部81から読み出す。判定部82は、“再生・停止”を示す制御信号の生成を指示する生成信号を出力する。
【0074】
制御信号出力部83は、判定部82から出力された生成信号に基づいて、“再生・停止”を示す制御信号を生成する。制御信号出力部83は、生成した“再生・停止”を示す制御信号を音楽プレーヤに出力する。なお、制御信号出力部83は、制御信号が入力される音楽プレーヤの特性に合うように、制御信号を生成する機能を備えていても良い。
【0075】
これにより、本実施形態に係る入力装置1は、例えば、音楽プレーヤが停止中である場合、“再生・停止”を示す制御信号に基づいて、楽曲を再生させることが可能な入力インタフェースとなる。また、例えば、音楽プレーヤが、楽曲を再生中である場合、“再生・停止”を示す制御信号に基づいて、楽曲を停止させることが可能な入力インタフェースとなる。
【0076】
以上のように、本実施形態に係る入力装置1によれば、格納部81は、少なくとも1つの変動パターン、および、少なくとも1つの変動パターンに対応する少なくとも1つの制御信号を格納する。判定部82は、少なくとも1つの変動パターンのうち、表皮の変動に一致する変動パターンを判定する。制御信号出力部83は、一致する変動パターンに対応する制御信号を出力する。これにより、制御信号出力部83は、様々な表皮の変動パターンに応じて、様々な制御信号を出力することが可能となる。
【0077】
なお、第1および第2の実施形態において、左右のこめかみAの表皮の変動を一対のセンサ3a,3bにて検出する例について説明したが、これに限定されない。例えば、左右のこめかみAのいずれかのこめかみAの表皮の変動を右センサ3aあるいは左センサ3bのいずれか一つのセンサにて検出するようにしても良い。
【0078】
[実施の形態3]
実施の形態1および2では、入力装置が、人間の下顎の動きに伴う表皮の変動を検出し、検出した表皮の変動に基づいて制御信号を生成し、生成した制御信号を外部機器へ出力する例について説明した。これに対して、実施の形態3では、入力装置が、人間のまぶたの動きに伴う表皮の変動を検出し、検出した表皮の変動に基づいて制御信号を生成し、生成した制御信号を外部機器へ出力する例について説明する。
【0079】
図12は、本実施形態に係る入力装置11の装着例を示す概略図である。なお、図12は、本実施形態に係る入力装置11を装着した人間の顔を斜めから見た図である。
【0080】
すなわち、本実施形態に係る入力装置11は、装着部12、センサ13、および、信号生成部14を備えている。
【0081】
装着部12は、眼鏡型の形状をしている。すなわち、本実施形態に係る入力装置11を用いて人間が通常の眼鏡をかけるようにすることで、図12に示すように、装着部12が人間の顔Fに装着される。ここで、図12に示す例では、装着部12には、人間の右側の部位Bに対応するように、センサ13が設けられている。センサ13は、人間の表皮(皮膚)に対して非接触となるように、装着部12に設けられている。センサ13は、例えば、光センサから構成されており、人間のまぶたを閉じる動きに伴う右側の部位Bにおける表皮の変動を検出するセンサである。なお、本実施形態に係る入力装置11は、図1に示す入力装置1とは異なり、装着部12にはセンサが1つのみ設けられている。信号生成部14は、例えば、シングルチップマイコンから構成されており、センサ13から検出された部位Bの表皮の変動に基づいて、外部機器を制御する制御信号を外部機器に出力する。
【0082】
図13は、眼輪筋の動作を説明するための説明図である。図13に示すように、眼輪筋15は、人間の目の周りにある筋肉である。ここで、人間が、例えば、意識的にまぶた16を閉じる動きをすると、眼輪筋15がまぶた16を閉じる動きに伴い変化する。眼輪筋15が変化するので、人間の目の後方の表皮が人間の目の方向へひっぱられる。これにより、部位Bの表皮が変動する。本実施形態においては、図12に示すように、センサ13を右側の部位Bに対応させるように入力装置11を人間の顔Fに装着することで、右側の部位Bの表皮の変動を検出する。つまり、部位Bの表皮が変動するので、センサ13と部位Bの表皮との間の距離が変化する。ここで、本実施形態に係る部位Bは、図2に示すこめかみAとは異なり、人間の目の近傍かつ後方にある領域である。
【0083】
なお、本実施形態においては、センサ13を右側の部位Bに対応させるように入力装置11を人間の顔Fに装着する例について説明したが、これに限定されない。すなわち、センサ13を左側の部位Bに対応させるように入力装置11を人間の顔Fに装着しても良い。これにより、センサ13は、左側の部位Bの表皮の変動を検出することができる。
【0084】
図14は、本実施形態に係る入力装置11におけるセンサ13および信号生成部14の概略構成を示すブロック図である。
【0085】
センサ13は、図1に示すセンサ3と同様の機能を有する。すなわち、センサ13は、図1に示すセンサ3と同様、光照射部131、受光部132、および、検出部133を備えている。光照射部131は、部位Bに検出光を照射する。受光部132は、部位Bにて反射された検出光を反射光として受光する。検出部133は、受光部132が受光した反射光の光量を検出信号として検出する。すなわち、検出部133は、人間のまぶた16を閉じる動きに伴う部位Bの表皮の変動を、受光部132が受光した反射光の光量の変化として検出する。検出部133は、検出した検出信号を信号生成部14に出力する。
【0086】
信号生成部14は、図1に示す信号生成部4と同様、例えば、シングルチップマイコンから構成されており、センサ13から出力された検出信号に基づいて、“High”の制御信号または“Low”の制御信号を生成し、生成した“High”の制御信号または“Low”の制御信号を外部機器に出力する機能を有している。このため、信号生成部14は、信号処理部141、判定部142、および、制御信号出力部143を備えている。
【0087】
信号処理部141は、図1に示す信号処理部41と同様の機能を有する。すなわち、信号処理部141は、センサ13から出力された検出信号をデジタル信号に変換する。
【0088】
判定部142は、単位時間において、信号処理部141から出力されたデジタル信号が、所定の変動パターンを示している場合、“High”の制御信号の生成を指示する生成信号を出力する。本実施形態においては、人間が、まぶた16を意識的に閉じる動作を行った場合に、判定部142は、“High”の制御信号の生成を指示する生成信号を出力する。なお、本実施形態において、意識的にまぶた16を閉じるとは、人間が0.3秒以上まぶた16をやや強めに閉じることを意味する。
【0089】
制御信号出力部143は、図1に示す制御信号出力部43と同様の機能を有する。すなわち、制御信号出力部143は、判定部142から出力された生成信号に基づいて、“High”の制御信号を生成する。制御信号出力部143は、生成した“High”の制御信号を外部機器に出力する。なお、制御信号出力部143は、判定部142から生成信号が出力されない場合、“Low”の制御信号を生成する。制御信号出力部143は、生成した“Low”の制御信号を外部機器に出力する。
【0090】
以下では、本実施形態に係る判定部142による具体的な処理について、図15を参照しながら詳細に説明する。
【0091】
図15は、人間がまぶた16を意識的に閉じた場合の検出信号の一例を示す図である。なお、図16は、人間がゆっくりと奥歯でガムを1回噛んだ場合の検出信号の一例を示す図である。図17は、人間が無意識に瞬きを1回行った場合の検出信号の一例を示す図である。図18は、人間が秒速1m程度の速度で舗装された平地を歩行した場合の検出信号の一例を示す図である。図19は、人間が任意の会話を発話した場合の検出信号の一例を示す図である。図15〜図19において、縦軸は電圧(mV)、横軸は時間(秒)を表す。
【0092】
本実施形態においては、センサ13が、図15に示す検出信号を信号生成部14へ出力したものとする。判定部142は、まず、時刻t1における電圧値V1と、時刻t2(時刻t1より大)おける電圧値V2とを比較する。図15に示す例では、判定部142は、時刻t1「0.2s」における電圧値V1「1885mV」と、時刻t2「0.5s」における電圧値V2「1650mV」とを比較する。そして、判定部142は、時刻t1〜時刻t2における電圧の減少値が所定の範囲ΔD内を示しているか否かを判定する。図15に示す例では、判定部142は、時刻t1〜時刻t2における電圧の減少値「235mV」が所定の範囲ΔD「146mV〜586mV」内を示していると判定する。
【0093】
時刻t1〜時刻t2における電圧の減少値が所定の範囲ΔD内を示している場合、判定部142は、“High”の制御信号の生成を指示する生成信号を出力する。すなわち、図15に示す例では、判定部142は、“High”の制御信号の生成を指示する生成信号を出力する。なお、上記の所定の範囲ΔDは、判定部142の図示しないメモリに予め記録されている。
【0094】
すなわち、本実施形態に係る判定部142は、人間がゆっくりと奥歯でガムを1回噛んだ場合(図16参照)、人間が無意識に瞬きを1回行った場合(図17参照)、人間が秒速1m程度の速度で舗装された平地を歩行した場合(図18参照)、人間が任意の会話を発話した場合(図19参照)などでは、生成信号を出力しない。つまり、本実施形態に係る判定部142は、上記より、人間がまぶた16を意識的に閉じた場合(図15参照)に限って、生成信号を出力することが可能となる。
【0095】
これにより、本実施形態に係る入力装置11は、図1に示す入力装置1と同様に、例えば、外部機器に対する電源のON/OFF、音楽プレーヤに対する再生/停止、マウスのクリック動作、目、耳、手、足などの不自由な身障者のための意思伝達装置など、様々な用途に適用することが可能な入力インタフェースとなる。また、本実施形態に係る入力装置11を、例えば、ヘッドマウントディスプレイ、ヘッドホンスピーカ、骨伝導スピーカなどの外部機器に接続することにより、ウェアラブルコンピュータとして構成することも可能である。
【0096】
さらに、本実施形態に係る入力装置11は、人間のまぶた16を閉じる動きに伴う表皮の変動を検出し、検出した表皮の変動に基づいて制御信号を生成し、生成した制御信号を外部機器へ出力している。このため、本実施形態に係る入力装置11は、実施の形態1および2に係る入力装置とは異なり、例えば、1秒間程度奥歯を噛み締め続けることができない咀嚼機能の低下した老人などであっても、まぶた16を意識的に閉じる動作を行うだけで、外部機器へ制御信号を出力することが可能となる。
【0097】
[実施の形態4]
実施の形態1および2では、入力装置が、人間の下顎の動きに伴う表皮の変動を検出し、検出した表皮の変動に基づいて制御信号を生成し、生成した制御信号を外部機器へ出力する例について説明した。また、実施の形態3では、入力装置が、人間のまぶたの動きに伴う表皮の変動を検出し、検出した表皮の変動に基づいて制御信号を生成し、生成した制御信号を外部機器へ出力する例について説明した。これに対して、実施の形態4では、入力装置が、人間の下顎の動きに伴う表皮の変動と、人間のまぶたの動きに伴う表皮の変動とを検出し、検出した表皮の変動に基づいてそれぞれの制御信号を生成し、生成したそれぞれの制御信号を外部機器へ出力する例について説明する。
【0098】
図20は、本実施形態に係る入力装置21の装着例を示す概略図である。なお、図20(a)は、本実施形態に係る入力装置21を装着した人間の顔を正面から見た図、図20(b)は、本実施形態に係る入力装置21を装着した人間の頭を上面から見た図である。
【0099】
すなわち、本実施形態に係る入力装置21は、装着部22、センサ23、および、信号生成部24を備えている。つまり、本実施形態に係る入力装置21は、図1に示す入力装置1と同様に、装着部22が、人間の頭部Hにおける額から耳にかけて装着されており、装着部22には、人間の右側のこめかみAに対応するように、センサ23が設けられている。なお、本実施形態に係る入力装置21は、図1に示す入力装置1とは異なり、装着部22にはセンサが1つのみ設けられている。
【0100】
図21は、本実施形態に係る入力装置21におけるセンサ23および信号生成部24の概略構成を示すブロック図である。
【0101】
なお、本実施形態においては、一例として、入力装置21に、有線あるいは無線で外部機器であるマウスが接続されている場合について説明する。
【0102】
センサ23は、図1に示すセンサ3と同様の機能を有する。すなわち、センサ23は、図1に示すセンサ3と同様、光照射部231、受光部232、および、検出部233を備えている。光照射部231は、こめかみAに検出光を照射する。受光部232は、こめかみAにて反射された検出光を反射光として受光する。検出部233は、受光部232が受光した反射光の光量を検出信号として検出する。すなわち、検出部233は、人間の下顎の動きに伴うこめかみAの表皮の変動を、受光部232が受光した反射光の光量の変化として検出する。また、検出部233は、人間のまぶたを閉じる動きに伴うこめかみAの表皮の変動を、受光部232が受光した反射光の光量の変化として検出する。検出部233は、検出した検出信号を信号生成部24に出力する。
【0103】
信号生成部24は、図1に示す信号生成部4と同様、例えば、シングルチップマイコンから構成されており、センサ23から出力された検出信号に基づいて、“High”の制御信号または“Low”の制御信号を生成し、生成した“High”の制御信号または“Low”の制御信号を外部機器に出力する機能を有している。このため、信号生成部24は、信号処理部241、格納部242、判定部243、および、制御信号出力部244を備えている。
【0104】
信号処理部241は、図1に示す信号処理部41と同様の機能を有する。すなわち、信号処理部241は、センサ23から出力された検出信号をデジタル信号に変換する。
【0105】
格納部242は、信号処理部241から出力されたデジタル信号が示す所定の変動パターン、および、この変動パターンに対応する制御信号を複数組格納する。図22は、格納部242に格納されたデータ例を模式的に示す図である。ここで、変動パターンMは、センサ23が人間の下顎の動きに伴うこめかみAの表皮の変動を検出した場合のパターンである。つまり、変動パターンMは、人間が1秒間程度奥歯を噛み締め続けた場合のパターンである。変動パターンNは、センサ23が人間のまぶたを閉じる動きに伴うこめかみAの表皮の変動を検出した場合のパターンである。つまり、変動パターンNは、人間がまぶたを意識的に閉じる動作を行った場合のパターンである。
【0106】
判定部243は、単位時間において、信号処理部241から出力されたデジタル信号が、格納部242に格納されている複数の変動パターンのうちどの変動パターンを示しているのかを判定する。本実施形態においては、判定部243は、実施の形態1にて説明したように、電圧の増加値が所定の範囲ΔA内を示しており、電圧の変化値が所定の範囲ΔB内を示しており、かつ、電圧の減少値が所定の範囲ΔC内を示している場合に、人間が1秒間程度奥歯を噛み締め続けた場合のパターンであると判定する。また、判定部243は、実施の形態3にて説明したように、電圧の減少値が所定の範囲ΔD内を示している場合に、人間がまぶたを意識的に閉じる動作を行った場合のパターンであると判定する。判定部243は、信号処理部241から出力されたデジタル信号が示す変動パターンに対応する制御信号を格納部242から読み出す。判定部243は、読み出した制御信号の生成を指示する生成信号を出力する。
【0107】
ここで、本実施形態においては、信号処理部241から出力されたデジタル信号が、人間が1秒間程度奥歯を噛み締め続けた場合の信号であったものとする。すなわち、本実施形態においては、判定部243は、信号処理部241から出力されたデジタル信号が、格納部242の変動パターンMを示していると判定する。判定部243は、変動パターンMに対応する制御信号“右クリック”を格納部242から読み出す。判定部243は、“右クリック”を示す制御信号の生成を指示する生成信号を出力する。
【0108】
制御信号出力部244は、判定部243から出力された生成信号に基づいて、“右クリック”を示す制御信号を生成する。制御信号出力部244は、生成した“右クリック”を示す制御信号をマウスに出力する。なお、制御信号出力部244は、制御信号が入力されるマウスの特性に合うように、制御信号を生成する機能を備えていても良い。
【0109】
これにより、本実施形態に係る入力装置21は、例えば、人間が1秒間程度奥歯を噛み締め続けた場合に、マウスに対して、“右クリック”を示す制御信号を出力し、かつ、人間がまぶたを意識的に閉じる動作を行った場合に、マウスに対して、“左クリック”を示す制御信号を出力することが可能となる。
【0110】
なお、本実施形態に係る入力装置21では、センサ23が、人間の下顎の動きに伴うこめかみAの表皮の変動と、人間のまぶたを閉じる動きに伴うこめかみAの表皮の変動とを検出する例について説明したが、これに限定されない。例えば、センサ23が、こめかみAの代わりに、実施の形態3にて説明した部位Bの表皮の変動を検出するようにしても良い。すなわち、センサ23が、人間の下顎の動きに伴う表皮の変動と、人間のまぶたを閉じる動きに伴う表皮の変動とを検出できれば、こめかみAの表皮には限定されない。
【0111】
また、第3および第4の実施形態において、センサが、人間のまぶたを閉じる動きに伴う表皮の変動を検出する例について説明したが、これに限定されない。例えば、センサは、人間のまぶたを開く動きに伴う表皮の変動を検出しても良い。
【0112】
[実施の形態5]
実施の形態1では、入力装置が、人間の下顎の動きに伴う表皮の変動を検出する例について説明した。これに対して、実施の形態5では、入力装置が、人間の下顎の動きに伴う表皮の変動を増幅して検出する例について説明する。
【0113】
図23は、本実施形態に係る入力装置31の装着例を示す概略図である。なお、図23は、本実施形態に係る入力装置31を装着した人間の頭を上面から見た図である。
【0114】
すなわち、本実施形態に係る入力装置31は、取り付け枠32、固定部33、右接触部34a、左接触部34b、右接続部35a、左接続部35b、右センサ36a、左センサ36b、および、信号生成部37を備えている。
【0115】
取り付け枠32には、人間の頭部Hにおける後頭部(真後ろ)に対応するように、固定部33が設けられている。固定部33は、人間の頭部Hに装着された入力装置31がずれないように、入力装置31を人間の頭部Hに固定するための部材である。このため、固定部33は、人間の頭部Hにおける後頭部に接触するように、取り付け枠32に設けられている。
【0116】
また、取り付け枠32の端部には、人間の右側の部位Cに対応するように、右接触部34aが設けられている。また、取り付け枠32の端部には、人間の左側の部位Cに対応するように、左接触部34bが設けられている。ここで、接触部34は、例えば、プラスチックからなる部品と、この部品の上面に形成されたスポンジとで構成される。接触部34は、部位Cに接触するように、取り付け枠32に設けられている。なお、部位Cは、側頭筋に対応する表皮(皮膚)の一領域である。
【0117】
すなわち、本実施形態に係る入力装置31は、固定部33、右接触部34a、および、左接触部34bの3つの部材によって、人間の頭部Hに装着(固定)されることになる。つまり、人間が手で取り付け枠32を外側に広げて頭部Hに挿入し手を離すと、人間の頭部Hの内側に向けて弾性力が働くので、入力装置31が人間の頭部Hに装着される。
【0118】
さらに、取り付け枠32の端部には、右接続部35aおよび左接続部35bが設けられている。つまり、接続部35は、人間の顔の前方に向かって伸びるように、取り付け枠32の端部に設けられている。また、右接続部35aの端部には、人間の右側の部位Dに対応するように、右センサ36aが設けられている。また、左接続部35bの端部には、人間の左側の部位Dに対応するように、左センサ36bが設けられている。なお、部位Dは、部位Cよりもやや前方に位置する表皮の一領域である。
【0119】
センサ36は、部位Dに光を照射する光照射部と、部位Dで反射した反射光を受光する受光部と、反射光の光量を検出する検出部とを含む。
【0120】
なお、信号生成部37は、右センサ36aの近傍に位置するように、右接続部35aに設けられている。なお、本実施形態に係るセンサ36および信号生成部37は、図1に示すセンサ3および信号生成部4と同様の機能を有している。
【0121】
ここで、実施の形態1にて説明したように、人間が、例えば、咀嚼あるいは奥歯を噛み締めることにより下顎を動かすと、咀嚼筋の一つである側頭筋が収縮(変化)する。つまり、人間が、咀嚼あるいは奥歯を噛み締めることにより下顎を動かすと、側頭筋が盛り上がる。このため、人間が、咀嚼あるいは奥歯を噛み締めることにより下顎を動かした場合には、側頭筋が盛り上がるため、部位Cに対応して設けられた接触部34は、図23に示す矢印Pの方向へ押されることになる。
【0122】
すなわち、図23に示す矢印Pの方向へ、部位Cから接触部34へ力が加わるため、接触部34は力点となる。この場合において、固定部33は支点、センサ36は作用点として機能する。図24は、支点として機能する固定部33、力点として機能する接触部34、および、作用点として機能するセンサ36の関係を説明するための説明図である。なお、図24では、説明の便宜上、取り付け枠32を直線にて表している。図24に示すように、固定部33が支点、接触部34が力点、センサ36が作用点となるので、矢印Pの方向へ押された接触部34の移動量が増幅されてセンサ36へ伝わることになる。すなわち、センサ36は、矢印Pの方向と同じ方向である矢印P´の方向へ移動することになる。つまり、センサ36は、側頭筋の動き(側頭筋の盛り上がり)に同期して、部位Dから遠ざかるように移動することになる。ここで、矢印Pの方向への接触部34の移動量(変動量)をMとすれば、矢印P´の方向へのセンサ36の移動量(変動量)は当該Mが増幅されたM´となる(てこの原理)。このため、人間の下顎の動きに伴う表皮の変動(すなわち、部位Cの変動)が微弱であっても、センサ36は、センサ36の移動(変動)に伴って変化する、センサ36と部位Dとの間の距離を確実に検出することが可能となる。
【0123】
すなわち、例えば、センサ36により検出された検出信号を電気的に増幅した場合には、当該検出信号に含まれるノイズも増幅されてしまう。これに対して、本実施形態に係る入力装置31は、固定部33を支点、接触部34を力点、センサ36を作用点としたてこの原理を利用することにより、人間の下顎の動きに伴う表皮の変動を機械的に増幅しているので、ノイズが増幅されることがない。接続部35は、接触部34の変動を増幅してセンサ36に伝える。本実施形態に係る入力装置31は、電気的に増幅する態様よりも、人間の下顎の動きに伴う表皮の変動を確実に検出することが可能となる。
【0124】
信号生成部37は、センサ36と部位Dとの間の距離に基づいて制御信号を生成する。例えば、信号生成部37は、距離の変位のパターンに基づいて制御信号を生成する。
【0125】
本実施形態においては、接触部34の設けられる部位は、人間の下顎の動きに伴って変動する表皮部分に限定されない。人間の表皮の変動する部分であればよい。例えば、人間のまぶたの動きに伴って変動する部分でよい。
【0126】
人間の下顎の動きに伴って変動する表皮部分に髪の毛が在していてもよい。センサ36の移動(変動)に伴って変化する、センサ36と部位Dとの間の距離を検出するように構成することで、入力装置31の頭部に対する装着位置の自由度が増す。
【0127】
本実施形態においては、部位Dは、部位Cよりもやや前方に位置する表皮の一領域であるが、部位Dが部位Cと異なる部位であれば、部位Dの位置は問わない。
【0128】
なお、上述した実施形態は、本発明の実施形態の一具体例を示すものであり、種々の変更が可能である。
【0129】
図25は、変更例に係る入力装置の接触部34、接続部35、および、センサ36を拡大して表した図である。つまり、図25は、図23の視点から見た場合の、接触部34、接続部35、および、センサ36を拡大して表した図である。図25に示すように、変更例に係る入力装置は、取り付け枠32の端部にカバー38を設けている。また、カバー38には、当該カバー38に対して、接触部34、接続部35、および、センサ36が回動可能に支持される回動部39が設けられている。
【0130】
ここで、例えば、人間が下顎を動かすことにより、図25に示す矢印P1の方向へ、部位Cから接触部34へ力が加わる場合を考える。この場合、部位Cから接触部34へ力が加わる当該接触部34の点E1が力点となる。また、回動部39が支点、センサ36は作用点として機能する。すなわち、この場合には、力点と作用点との間に支点が位置することになる。このため、てこの原理(いわゆるシーソ)により、矢印P1の方向へ押された接触部34の移動量が増幅されてセンサ36へ伝わることになる。すなわち、センサ36は、矢印P1の方向と逆の方向である矢印P1´の方向へ移動することになる。つまり、センサ36は、側頭筋の動き(側頭筋の盛り上がり)に同期して、部位Dへ近づくように移動することになる。ここで、矢印P1の方向への接触部34の移動量をN1とすれば、矢印P1´の方向へのセンサ36の移動量は当該N1が増幅されたN1´となる。このため、人間の下顎の動きに伴う表皮の変動(すなわち、部位Cの変動)が微弱であっても、センサ36は、センサ36の移動(変動)に伴って変化する、センサ36と部位Dとの間の距離を確実に検出し、変更例に係る入力装置は、当該部位Cの変動を確実に検出することが可能となる。
【0131】
また、例えば、人間が下顎を動かすことにより、図25に示す矢印P2の方向へ、部位Cから接触部34へ力が加わる場合を考える。この場合、部位Cから接触部34へ力が加わる当該接触部34の点E2が力点となる。また、回動部39が支点、センサ36は作用点として機能する。すなわち、この場合には、支点と作用点との間に力点が位置することになる。このため、てこの原理(いわゆるシーソ)により、矢印P2の方向へ押された接触部34の移動量が増幅されてセンサ36へ伝わることになる。すなわち、センサ36は、矢印P2の方向と同じ方向である矢印P2´の方向へ移動することになる。つまり、センサ36は、側頭筋の動き(側頭筋の盛り上がり)に同期して、部位Dから遠ざかるように移動することになる。ここで、矢印P2の方向への接触部34の移動量をN2とすれば、矢印P2´の方向へのセンサ36の移動量は当該N2が増幅されたN2´となる。このため、人間の下顎の動きに伴う表皮の変動(すなわち、部位Cの変動)が微弱であっても、センサ36は、センサ36の移動(変動)に伴って変化する、センサ36と部位Dとの間の距離を確実に検出し、変更例に係る入力装置は、当該部位Cの変動を確実に検出することが可能となる。
【0132】
なお、上記の変更例においては、取り付け枠32の端部にカバー38を設けることに限定されない。取り付け枠32にカバー38の機能が備わっておれば、カバー38は不要である。
【0133】
なお、上記の実施形態および変更例においては、てこの原理を利用することにより、人間の下顎の動きに伴う表皮の変動を増幅して検出する例について説明したが、これに限定されない。例えば、人間の下顎の動きに伴う表皮の変動に従ってセンサが移動するように構成していれば、必ずしも、てこの原理を利用して、人間の下顎の動きに伴う表皮の変動を増幅しなくともよい。例えば、固定部33が頭部Hの頂点(頭の真上)に位置する場合には、当該固定部33は支点として機能しない。つまり、この場合には、てこの原理は利用できない。このため、図23に示す矢印Pの方向への接触部34の移動量をMとすれば、矢印P´の方向へのセンサ36の移動量もMとなる。すなわち、センサ36は、センサ36の移動(変動)に伴って変化する、当該移動量Mを検出することにより、入力装置31は人間の下顎の動きに伴う表皮の変動を検出する。
【0134】
上記の実施形態および変更例では、接続部35を備えた入力装置を説明したが、入力装置が、接触部34と、センサ36と、信号生成部37とを備え、センサ36が、移動量を検出し得さえすれば、接続部35を備えなくてもよい。この場合は、例えば接触部34にセンサ36が設けられ、センサは、接触部の変動に伴って変動する。そして、センサ36は、センサの変動に伴って変化する、センサ36と部位Dとの間の距離を検出する。
【0135】
本発明は上述した第1〜第5の実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0136】
以上のように、本発明は、センサの検出結果に基づいて、外部機器に制御信号を出力する入力装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る入力装置の装着例を示す概略図であり、図1(a)は、人間の顔を正面から見た図、図1(b)は、人間の頭を上面から見た図である。
【図2】咀嚼筋の一つである側頭筋の動作を説明するための説明図である。
【図3】上記入力装置におけるセンサおよび信号生成部の概略構成を示すブロック図である。
【図4】人間が1秒間程度奥歯を噛み締め続けた場合の検出信号の一例を示す図である。
【図5】人間がゆっくりと奥歯でガムを1回噛んだ場合の検出信号の一例を示す図である。
【図6】人間が無意識に瞬きを1回行った場合の検出信号の一例を示す図である。
【図7】人間が秒速1m程度の速度で舗装された平地を歩行した場合の検出信号の一例を示す図である。
【図8】人間が任意の会話を発話した場合の検出信号の一例を示す図である。
【図9】上記入力装置の動作の概要を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る入力装置におけるセンサおよび信号生成部の概略構成を示すブロック図である。
【図11】上記格納部に格納されたデータ例を模式的に示す図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る入力装置の装着例を示す概略図である。
【図13】眼輪筋の動作を説明するための説明図である。
【図14】上記入力装置におけるセンサおよび信号生成部の概略構成を示すブロック図である。
【図15】人間がまぶたを意識的に閉じた場合の検出信号の一例を示す図である。
【図16】人間がゆっくりと奥歯でガムを1回噛んだ場合の検出信号の一例を示す図である。
【図17】人間が無意識に瞬きを1回行った場合の検出信号の一例を示す図である。
【図18】人間が秒速1m程度の速度で舗装された平地を歩行した場合の検出信号の一例を示す図である。
【図19】人間が任意の会話を発話した場合の検出信号の一例を示す図である。
【図20】本発明の第4の実施形態に係る入力装置の装着例を示す概略図であり、図1(a)は、人間の顔を正面から見た図、図1(b)は、人間の頭を上面から見た図である。
【図21】上記入力装置におけるセンサおよび信号生成部の概略構成を示すブロック図である。
【図22】上記格納部に格納されたデータ例を模式的に示す図である。
【図23】本発明の第5の実施形態に係る入力装置の装着例を示す概略図である。
【図24】支点として機能する固定部、力点として機能する増幅部、および、作用点として機能するセンサの関係を説明するための説明図である。
【図25】変更例に係る入力装置の増幅部、接続部、および、センサを拡大して表した図である。
【符号の説明】
【0138】
1 入力装置
11 入力装置
21 入力装置
31 入力装置
3a 右センサ
3b 左センサ
4 信号生成部
8 信号生成部
6 下顎
13 センサ
16 まぶた
23 センサ
34a 右接触部
34b 左接触部
36a 右センサ
36b 左センサ
81 格納部
41a 信号処理部
41b 信号処理部
42 判定部
43 制御信号出力部
82 判定部
83 制御信号出力部
141 信号処理部
142 判定部
143 制御信号出力部
241 信号処理部
242 格納部
243 判定部
244 制御信号出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部機器を制御する制御信号を前記外部機器に出力する入力装置であって、
人間の下顎の動きに伴う表皮部分の変動を検出する少なくとも1つのセンサと、
前記表皮部分の変動に基づいて前記制御信号を生成する信号生成部とを備える、入力装置。
【請求項2】
前記センサは、人間のまぶたの動きに伴う表皮の変動をさらに検出する、請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記センサは、前記表皮部分の変動を前記表皮部分に接触することなく検出する、請求項1または2に記載の入力装置。
【請求項4】
前記センサは、前記表皮部分に光を照射する光照射部と、前記表皮部分で反射した反射光を受光する受光部と、前記反射光の光量を検出する検出部とを含む、請求項3に記載の入力装置。
【請求項5】
外部機器を制御する制御信号を前記外部機器に出力する入力装置であって、
人間の表皮部分に接触し、前記表皮部分の変動に伴って変動する接触部と、
前記接触部の変動に伴って変動するセンサと、
前記制御信号を生成する信号生成部とを備え、
前記センサは、前記センサの変動に伴って変化する、前記センサと前記表皮部分とは異なる表皮部分との間の距離を検出し、
前記信号生成部は、前記距離に基づいて前記制御信号を生成する、入力装置。
【請求項6】
前記センサは、前記異なる表皮部分に光を照射する光照射部と、前記異なる表皮部分で反射した反射光を受光する受光部と、前記反射光の光量を検出する検出部とを含む、請求項5に記載の入力装置。
【請求項7】
前記接触部に接続され、前記接触部の変動に伴って変動する接続部をさらに備え、
前記センサは、前記接続部に設けられ、
前記接続部は、前記センサに前記接触部の変動を伝える、請求項5または6に記載の入力装置。
【請求項8】
前記接続部は、前記接触部の変動を増幅して前記センサに伝える、請求項7に記載の入力装置。
【請求項9】
前記表皮部分は、人間の下顎の動きに伴って変動する部分である、請求項5〜8のいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項10】
前記表皮部分は、人間のまぶたの動きに伴って変動する部分である、請求項5〜8のいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項11】
前記表皮部分は、こめかみの表皮部分である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項12】
前記信生成部は、前記表皮部分の変動のパターンに応じて、前記制御信号を生成する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項13】
前記制御信号は、2値の信号であり、
前記信号生成部は、前記表皮部分の変動のパターンが第1のパターンである場合には、前記2値の信号のうちの一方を生成し、前記表皮部分の変動のパターンが第2のパターンである場合には、前記2値の信号のうちの他方を生成する、請求項12に記載の入力装置。
【請求項14】
前記信号生成部は、
少なくとも1つのパターン、および、前記少なくとも1つのパターンに対応する少なくとも1つの制御信号を格納する格納部と、
前記少なくとも1つのパターンのうち、前記表皮部分の変動に一致するパターンを判定する判定部と、
前記一致するパターンに対応する制御信号を出力する制御信号出力部とを含む、請求項12に記載の入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2008−304451(P2008−304451A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50552(P2008−50552)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(801000061)財団法人大阪産業振興機構 (168)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】