入力装置
【課題】 長期間使用しても液晶表示パネルに表示不良が発生することがなく、しかも入力操作時に充分なクリック感が得られるようにする。
【解決手段】 基板11上に間隔を置いて複数のドームスイッチ10Sを形成したスイッチシート10上に液晶表示パネル20を重ねて配置し、その液晶表示パネル20は、可撓性を有する透明な樹脂基板211,212間に液晶層213を挟持し、その各樹脂基板211,212の外側の面に偏光板22,23を接着して設け、ドームスイッチ10Sに対応する各表示領域20aごとに仮想操作ボタンを表示する。その液晶表示パネル20の各表示領域20aを視認側から押圧することにより、対応するドームスイッチ10Sを押圧してスイッチ動作させる。その液晶表示パネル20の各偏光板22,23の各表示領域20aの周囲に相当する部分にスリット22s,23sを形成した。
【解決手段】 基板11上に間隔を置いて複数のドームスイッチ10Sを形成したスイッチシート10上に液晶表示パネル20を重ねて配置し、その液晶表示パネル20は、可撓性を有する透明な樹脂基板211,212間に液晶層213を挟持し、その各樹脂基板211,212の外側の面に偏光板22,23を接着して設け、ドームスイッチ10Sに対応する各表示領域20aごとに仮想操作ボタンを表示する。その液晶表示パネル20の各表示領域20aを視認側から押圧することにより、対応するドームスイッチ10Sを押圧してスイッチ動作させる。その液晶表示パネル20の各偏光板22,23の各表示領域20aの周囲に相当する部分にスリット22s,23sを形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、押圧を感知するドームスイッチ(メンブレンスイッチやタクトスイッチともいう)を設けたスイッチシート上に、その各ドームスイッチに対応して仮想操作ボタンを表示する液晶表示パネルを重ねて設けた入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチシートと液晶表示パネルとを積層して配設し、液晶表示パネルによって表示される仮想操作ボタンの表示領域を指先で押圧(タッチ)することによって、スイッチシートのスイッチを動作させて、各種の選択や指示等を入力し、それに応じた様々な機能やサービスを提供する入力装置が広く知られている。
例えば、携帯電話機や各種事務機器などにこのような入力装置を採用し、同じタッチ領域で仮想操作ボタンの表示を切り替えることによって複数の異なる入力を可能にして、少ない面積のパネルで多くの種類の入力ができるようにすることが行われている。
【0003】
このような入力装置として、従来は液晶表示パネルの基板としては一般にガラス基板が使用されていたので、可撓性に乏しく押圧力をスイッチシートに伝達するのが困難であったため、スイッチシートの下側に液晶表示パネルを配置したものが多かった。
そのため、スイッチシートを構成する基板やドームスイッチの固定接点やドーム状の可動接点などを全て透明材料によって構成しなければならず、材料の制約が大きかった。また、液晶表示パネルによる仮想操作ボタンの表示をスイッチシートを通して視認することになるため、視認性が損なわれるという問題もあった。
【0004】
そこで、最近は液晶表示パネルの基板に透明な樹脂基板を使用して可撓性を持たせ、押圧力の伝達を可能にして、スイッチシートの上側に液晶表示パネルを重ねて設けた入力装置が実用化されてきた。例えば、特許文献1にはそのような入力装置が提案されている。
【0005】
この特許文献1に記載されている入力装置(入出力装置と称されている)は、上記スイッチシートに相当する座標検知手段がドーム状の凸部のない平坦なメンブレンスイッチであり、また、液晶表示パネルの上下の透明な樹脂基板のそれぞれ外側の面に接着して設けられた各偏光板は、樹脂製ではあっても樹脂基板より厚さが厚く剛性も高い。しかも、液晶表示パネルの視認側からの局所的な応力を分散させるために、視認側の樹脂基板と偏光板との間に緩衝層を設け、あるいはさらに下側の偏光板とメンブレンスイッチとの間に液晶表示パネルを保護する補強板を設けたりしている。
【0006】
このような入力装置では、液晶表示パネルの視認性はよく、局所的な応力も分散されるので、長期間使用しても液晶表示パネルが劣化して表示不良が発生することは殆どないと思料される。
しかし、液晶表示パネルを視認側から押圧してメンブレンスイッチをスイッチ動作させるとき、その押下力が剛性の高い偏光板によって周囲に分散され、さらに緩衝層や補強板を介して弱められてメンブレンスイッチに伝達され、そのスイッチも弾性変形量とその復帰力が小さい構造なので、操作感としてのクリック感が極めて乏しく、スイッチ動作が確実になされたか否か不安である。実際に液晶表示パネルの仮想操作ボタンの表示領域への押圧力が周囲に分散して、メンブレンスイッチに充分伝達されず、確実なスイッチ動作がなされない恐れもある。
【0007】
ここで、クリック感について図12を用いて簡単に説明する。図12はこのようなタッチ式入力装置における押圧のストロークSと操作力P1及び復帰力P2の関係を示す線図であり、クリック率は次の式で求められる。
クリック率=(P1−P2)/P1
したがって、操作力のピークと復帰力との差が大きい程クリック率が大きくなり、クリック感すなわち操作感が充分に得られることになる。
【0008】
このような入力装置におけるクリック感を増加させるために、例えば図13に示すように、スイッチシート100の各スイッチを可動接点部が上方に膨出したドーム状に形成されたドームスイッチ110とし、さらにその各ドームと液晶表示パネル200の下面との間に、押圧力を効率よくドームスイッチ110に伝達するためのアクチュエータ(押し子)300を介在させることが従来から行われている。
【0009】
この例のスイッチシート100は、基板120上に円形の固定接点111とその外周から間隔を置いたリング状の固定接点112を金属で形成し、球形の一部のようなバネ性を有するメタルドーム(可動接点)113の基部をリング状の固定接点112に接続するかその上に載置し、その外側に接着層114で樹脂シート115を貼り付けて、ドームスイッチ110を構成している。アクチュエータ300は、柔軟性のあるシート310によって保持されている。
【0010】
このような入力装置によれば、液晶表示パネル200の上面側からの押圧力がアクチュエータ300を介してドームスイッチ110に効率よく伝達され、メタルドーム113を弾性変形させて固定接点111と112を導通させた後、その復元力によって押し返されるので、確実なスイッチ動作がなされると共に、充分なクリック感が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3463501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、このような入力装置では多数回のスイッチ入力操作を繰り返すと、液晶表示パネルの下面のアクチュエータと当接する部分に集中的な応力が繰り返し加わるため、液晶表示パネルの樹脂基板が若干凹んで基板間のギャップむらや配向不良などが生じ、表示品質が劣化するという問題があった。クリック感を高めるためにアクチュエータの先端の面積を小さくするほど、このような表示不良が発生しやすくなる。
【0013】
この発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、上述したようなスイッチシート上に液晶表示パネルを重ねた入力装置において、長期間使用しても液晶表示パネルに表示不良が発生することがなく、しかも入力操作時に充分なクリック感が得られるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は上記の目的を達成するため、複数のドームスイッチを有するスイッチシートと、該スイッチシート上に配設された液晶表示パネルとを備え、該液晶表示パネルは、可撓性を有する2枚の基板間に液晶層を挟持し、2枚の基板のそれぞれ液晶層と接しない外側の面に偏光板を備えると共に、ドームスイッチに対応する各表示領域ごとに仮想操作ボタンを表示する機能を有し、該液晶表示パネルの各表示領域が視認側から押圧されることにより、スイッチシートに対応するドームスイッチが押圧されてスイッチ動作させるように構成された入力装置である。
そして、上記各偏光板の少なくとも一方における上記各表示領域の周囲に相当する部分にスリットを形成したことを特徴とする。
【0015】
上記スリットを、上記各偏光板の両方の上記各表示領域の周囲に相当する部分の対応する位置に形成するのが望ましい。
また、上記スリットを、上記偏光板の上記各表示領域に相当する部分を囲むように無端状(リング状等)にあるいは複数の部分(円弧状部分等)に分割して形成することができる。
【0016】
上記スリット形成するのに代えて、上記液晶表示パネルの上記2枚の基板のそれぞれ上記外側の面に設けられた各偏光板の少なくとも一方は、上記各表示領域に相当する領域にのみ設けてもよい。
上記各偏光板の両方を、上記液晶表示パネルの上記各表示領域に相当する領域にのみ対向して設けてもよい。
これらの入力装置において、上記液晶表示パネルの上記スイッチシート側に可撓性を有する樹脂からなる導光板を配設し、その導光板を端面より照明する光源を設けるとよい。
【発明の効果】
【0017】
この発明による入力装置は、液晶表示パネルの2枚の基板より剛性が高い偏光板の各仮想操作ボタンを表示する表示領域の周囲に相当する部分にスリットを形成するか、偏光板を上記各表示領域に相当する領域にのみ設けるので、仮想操作ボタンが表示された領域を押下したとき、その押下力が偏光板によって周囲に分散されることがないか少なく、効率よくドームスイッチに伝達されるので、ドームスイッチのドーム状可動接片の弾性変形によるスイッチ動作を確実に行わせることができ、その復元力も液晶表示パネルの押下部に効率よく伝達されるので、充分なクリック感が得られる。
また、アクチュエータ(押し子)を設けていないので、繰り返し押圧操作しても液晶表示パネルにダメージを与えることがないので、表示不良が発生する恐れがない。さらに、入力装置の薄型化及び軽量化が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明による入力装置の第1の実施形態の外観を単純化して示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿う模式的な拡大断面図である。
【図3】図2における上下の偏光板の層構成を示す一部拡大断面図である。
【図4】偏光板に形成するスリットの形状を変更した実施形態の外観を単純化して示す斜視図である。
【0019】
【図5】液晶表示パネルの各仮想操作ボタンを表示する表示領域の形状が略正方形の場合に偏光板に分割した複数にスリットを形成する場合の例を示す部分的な拡大平面図である。
【図6】同じく表示領域の形状が略正方形の場合に偏光板に無端状のスリットを形成する場合の例を示す部分的な拡大平面図である。
【図7】この発明による入力装置の第2の実施形態の外観を単純化して示す斜視図である。
【図8】図7のB−B線に沿う模式的な拡大断面図である。
【0020】
【図9】液晶セルの一方の基板の内面に形成するセグメント電極の一例を示すレイアウト図である。
【図10】同じくセグメント電極の他の例を示すレイアウト図である。
【図11】この発明による入力装置を搭載した携帯電話機をメインディスプレイ部を開いた状態で示す斜視図である。
【図12】タッチ式入力装置における押圧のストロークSと操作力P1及び復帰力P2の関係を示す線図である。
【図13】従来のクリック感を増加させた入力装置の構成例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
〔第1の実施形態:図1〜図6〕
図1は、この発明による入力装置の第1の実施形態の外観を単純化して示す斜視図である。図2は図1のA−A線に沿う模式的な拡大断面図、図3はその上下の偏光板の層構成を示す一部拡大断面図である。
【0022】
図1に示す入力装置は、スイッチシート10上に液晶表示パネル20が積層して設けられている。その液晶表示パネル20はスイッチシート10の後述するドームスイッチに対応する各表示領域20aごとに仮想操作ボタンを表示し、その各表示領域20aを視認側から押圧することにより、スイッチシート10の対応するドームスイッチを押圧してスイッチ動作させるように構成されている。
【0023】
そして、その液晶表示パネル20の視認側に設けられた上偏光板22の各表示領域20aの周囲に相当する部分にスリット22sを形成している。この実施形態では円形の各表示領域20aの周囲を囲む円を4分割した各部分に相当する円弧状のスリット22sが、1個所の表示領域20aの周囲に4個ずつ形成され、上偏光板22のスリット22sの内側の表示領域20aに相当する部分とその外側の部分とは90°間隔で残されたスリットが形成されない部分で繋がって一体になっている。
【0024】
この入力装置の構成を図2及び図3によってさらに詳細に説明する。
この実施形態の入力装置は、図2の拡大断面図に示すように、スイッチシート10と可撓性を有する液晶表示パネル20とが導光板30を挟んで積層されている。40はその導光板を端面より照明する光源としての発光ダイオード(LED)である。
【0025】
スイッチシート10は、基板11上に間隔を置いて複数のドームスイッチ10Sを形成しており、その各ドームスイッチ10Sは、基板11上に円形の固定接点12とその外周から間隔を置いたリング状の固定接点13とが銅箔で形成されており、それらの上を間隔を置いて覆うようにドーム状可動接片14が配設され、その上を基板11に接着される固定シート15で覆って、ドーム状可動接片14を位置決め保持している。
【0026】
基板11はポリミド等の絶縁性の樹脂で形成され、厚さは0.025mm程度である。ドーム状可動接片14は、バネ性を有するSUS材(ステンレス鋼)で形成され、押圧されたときに弾性変形して周辺部が拡がって上部が下降し、固定接点12と13を導通させてスイッチをオン状態にする。押圧力が弱まると弾性復元力によって、図示のオフ状態に復帰する。
固定シート15はPET(ポリエチレンテレフタレート)等の絶縁性の樹脂で形成され、厚さは0.063mm程度である。
【0027】
液晶表示パネル20は総厚さが0.528mm程度であり、可撓性を有する透明な2枚の樹脂基板である上基板211と下基板212の間に液晶層213を挟持した液晶セル21と、その2枚の樹脂基板211,212のそれぞれ液晶層213と接しない外側の面に上偏光板22と下偏光板23を接着して設けており、スイッチシート10の各ドームスイッチ10Sに対応する各表示領域20aごとに仮想操作ボタンを表示する機能を有する。
【0028】
液晶セル21の上基板211と下基板212は、それぞれ例えばPC(ポリカーボネート)で厚さ0.126mm程度に形成され、液晶層213は、上基板211と下基板212と図示していないシール材とで形成された空間にTN(ツイストネマチック)液晶が注入された厚さ0.006mm程度の層である。この液晶層213の厚さを一定に保つため、ホトリソグラフィ法によって上基板211又は下基板212に固定されたスペーサ(図示は省略)が形成されている。
【0029】
さらに、上基板211と下基板212のいずれか一方の内面には全面にコモン電極が、他方には仮想操作ボタンの種別を表示するためのセグメント電極がそれぞれ透明なITO(酸化インジウム錫)膜によって形成され、その表面を含む内面全体にポリイミドによる配向膜が形成されているが、これらも図示を省略している。
上基板211と下基板212の材料としては、PCの他にPETやPES(ポリエーテルサルホン)なども使用できる。
【0030】
上偏光板22と下偏光板23は、図3の(a),(b)に示すように、いずれも厚さ0.03mm程度のPVA(ポリビニルアルコール)シート221,231の両側に厚さ0.04mm程度のTAC(セルローストリアセテートフィルム)222,223と232,233を密着積層している。そして、上偏光板22は下側のTAC223の下面に接着層224を厚さ0.025mm程度に形成し、下偏光板23は上側のTAC233の上面に接着層234を厚さ0.025mm程度に形成している。
【0031】
一般にTN型液晶表示パネルでは、上偏光板22と下偏光板23は、いずれも偏光軸に平行な方向の振動面を持つ直線偏光は透過し、偏光軸に直交する方向の振動面を持つ直線偏光は吸収する特性を有する吸収型偏光板であり、その偏光軸を互いに平行あるいは直交させて配置する。
液晶層213がTN液晶層の場合は、導光板30から下偏光板23と下基板212を通して液晶層213に入射した直線偏光は、電圧無印加状態の部分では液晶層213内で90°旋光されて上偏光板22に達する。
【0032】
そのため、上偏光板22と下偏光板23の偏光軸が平行な場合には上偏光板22で吸収されるためノーマル黒表示になり、コモン電極とセグメント電極の間に電圧が印加された部分では、液晶層213に入射した直線偏光はそのまま上偏光板22に達するので、それを透過して視認側に出射し、光源の色に応じた色で表示される。
この実施形態ではノーマル黒表示としたが、上偏光板22と下偏光板23の偏光軸を互いに直交させても良い。この場合、導光板30から下基板210を通して液晶層213に入射した直線偏光は、電圧無印加状態の部分では上偏光板22を透過して視認側に出射するので、ノーマル白(光源の色)表示で、電圧が印加されたセグメント電極の部分が黒く表示されることになる。このとき液晶表示パネル20と導光板30の間に半透過反射板を挿入し、反射型表示を可能としておくことが好ましい。
【0033】
この実施形態では、図1で説明したように、上偏光板22におけるこの液晶表示パネル20が仮想操作ボタンを表示する各表示領域20aの周囲に相当する部分に、スリット22sを形成している。また、下偏光板23における各表示領域20aの周囲に相当する部分にも、上偏光板22のスリット22sと対応する位置にスリット23sを形成している。
【0034】
導光板30は、厚さ0.15mmのPC(ポリカーボネート)のシートであり、その一端面から、光源であるLED40の発光による照明光を導入する。そして、この照明光は、導光板30の表裏面で反射を繰り返して拡散し、バックライトとして液晶表示パネル20の下面をほぼ均一な明るさで照明して、液晶表示パネル20に表示をさせる。これにより、暗い環境でも明瞭な表示がなされる。なお、スリット22sからの光の漏れを防止するため、導光板30のスリット22s部に対応する部位は遮光層30sが印刷されている。
【0035】
LED40は一般には白色発光のものを使用するが、黄色や他の色の光を発光するものを使用してもよいし、赤、緑、青の多色発光のLEDを使用して表示色を切り替えたり、フィールドシーケンシャルカラー表示を行うようにしてもよい。光源として線光源や面光源を使用してもよい。しかし、このバックライトを構成する導光板30とLED40等の光源は、この発明に必須のものではない。
【0036】
この入力装置によれば、液晶表示パネル20の上基板211及び下基板212より剛性が高い上偏光板22と下偏光板23のそれぞれ各仮想操作ボタンを表示する表示領域20aの周囲に相当する部分にスリット22s,23sを形成したので、仮想操作ボタンが表示された領域20aを押下したとき、その押下力が偏光板22,23によって周囲に分散されることが極めて少なく、効率よくドームスイッチ10Sに伝達される。そのため、ドームスイッチ10Sのドーム状可動接片14の弾性変形によるスイッチ動作を確実に行わせることができ、その復元力も液晶表示パネル20の押下部に効率よく伝達されるので、充分なクリック感が得られる。
【0037】
また、アクチュエータ(押し子)を設けないので、繰り返し押圧操作しても液晶表示パネル20にダメージを与えることがなく、表示不良が発生する恐れもない。
さらに、アクチュエータや緩衝材、補強板などの付加的な部材を設けないので、入力装置の薄型化及び軽量化が容易になる。
【0038】
この実施形態では上偏光板22と下偏光板23の両方にスリットを形成しているので、クリック感を高める効果が大きいが、上偏光板22と下偏光板23のいずれか一方のみにスリットを形成しても、スリットを形成しない場合に比べればかなりクリック感を高めることができる。上偏光板22にスリット22sを形成すると、液晶表示パネル20の上面の平面性が若干損なわれ、用途によっては見栄えが悪くなるので、そのような場合には下偏光板23にのみスリット23sを形成すればよい。
【0039】
なお、液晶表示パネル20の一つの表示領域20aの周囲に相当する位置において、偏光板22,23に形成するスリットの数は4個に限るものではなく、2個又は3個あるいは5個以上に分けてもよく、その各スリットの長さが同じでなくてもよい。
【0040】
図4は偏光板に形成するスリットの形状を変更した実施形態の外観を単純化して示す斜視図である。この例では、液晶表示パネル20の上偏光板22の表示領域20aに相当する部分を囲むように無端状(図示の例ではリング状)にスリット22sを形成している。図2に示した下偏光板23の対応する位置にも無端状にスリット23sを形成する。あるいは、上偏光板22又は下偏光板23の一方にのみ無端状(リング状)のスリットを形成してもよい。
【0041】
このようにすれば、液晶表示パネル20の表示領域20aを押下したときの押下力が偏光板によって周囲に分散するのを一層確実に防いで、クリック感を高める効果を増すことができる。しかし、図1に示した例のようにスリットを分割して形成し、表示領域20aに対応する部分とスリットの外側の部分とを一部で接続し、偏光板を一体化しておいた場合、製造工程で偏光板を液晶セル21に貼り付ける作業が容易であるという利点がある。
【0042】
なお、上偏光板22と下偏光板23の一方における表示領域20aの周囲に相当する部分には分割した複数のスリットを形成し、他方には無端状のスリットを形成してもよい。
液晶表示パネル20の各仮想操作ボタンを表示する表示領域20aの形状は円形に限らず、楕円形や正方形、長方形など種々の形状に変更し得るが、その形状に合わせた形状で、上偏光板22と下偏光板23の少なくとも一方における表示領域20aの周囲に相当する部分にスリットを形成すればよい。
【0043】
図5及び図6は、液晶表示パネル20の各仮想操作ボタンを表示する表示領域20aの形状が略正方形の場合の例を示す。
図5は、上偏光板22と下偏光板23の少なくとも一方における略正方形の表示領域20aの周囲に相当する部分に、各辺の中央部のみを残して4分割したL字状のスリット22s、23sを形成した例を示している。
図6は、上偏光板22と下偏光板23の少なくとも一方における略正方形の表示領域20aの周囲に相当する部分に、その全周に亘って無端状(略正方形)のスリット22s、23sを形成した例を示している。
【0044】
〔第2の実施形態:図7及び図8〕
次に、この発明による入力装置の第2の実施形態について、図7及び図8によって説明する。図7はその入力装置の図1と同様な斜視図であり、図8はそのB−B線に沿う模式的な拡大断面図である。
この第2の実施形態において、前述した第1の実施形態と異なるのは偏光板と遮光層の形状だけであるので、図1及び図2と同じ部分には同一の符号を付してあり、それらの説明は省略する。
【0045】
この第2の実施形態の入力装置の液晶表示パネル20′は、液晶セル21の構成は第1の実施形態と同じであるが、上偏光板22′及び下偏光板23′を、液晶表示パネル20′の各仮想操作ボタンを表示する表示領域20aに相当する領域にのみ対向して設けている。これは、図4に示した例における上偏光板22又は図示していない下偏光板の無端状のスリットより外側の部分を全て除去したものに相当する。また遮光層30′sは、導光板30表面における上偏光板22′及び下偏光板23′のない部位に印刷されている。
【0046】
このような偏光板22′,23′を液晶セル21の上基板211及び下基板212に貼り付けるには、例えば、両面に保護シートを備え接着剤が予め塗布された大判の偏光板において、図3に示した接着層224又は234が無い方の全面に偏光板と保護シート間よりも粘着力が弱い剥離台紙を貼って、液晶セル21上の表示領域20aに相当する領域の周囲に偏光板の全厚さに及ぶ円形の切込を入れ、偏光板22′,23′として残す部分の接着剤側の保護シートを除去し、その偏光板の接着層224又は234のある方の全面を上基板211又は下基板212の外面に貼り付けた後、剥離台紙を剥がしてから偏光板22′,23′として残す部分以外の一体になっている部分を剥がすようにすればよい。
【0047】
この実施形態によれば、液晶表示パネル20′の表示領域20aを押下したときの押下力が偏光板によって周囲に分散するのを完全に防げるので、キー操作時のクリック感を大幅に高めることができる。その他の効果は、前述した第1の実施形態の場合と同様である。
【0048】
この実施形態でも、液晶セル21の上基板211側と下基板212側の一方の偏光板は全面に設け、他方の偏光板だけを表示領域20aに相当する領域にのみ設けるようにしてもよい。また、一方の偏光板には第1の実施形態と同様にスリットを形成し、他方の偏光板はこの実施形態のように表示領域20aに相当する領域にのみ設けるようにしてもよい。
また、上偏光板22′及び下偏光板23′の形状を、液晶表示パネル20′の各仮想操作ボタンを表示する表示領域20aの形状に合わせて、楕円形や正方形、長方形など種々の形状に変更し得ることも同様である。
【0049】
〔液晶セルのセグメント電極の例:図9及び図10〕
ここで、上述した各実施形態における液晶セル21の一方の基板211又は212の内面に形成するセグメント電極の形状例を図9及び図10によって説明する。
図9は同じ表示領域20a内の異なる部分で2つの文字を切り替え表示する場合のセグメント電極の例を示す。この例では表示領域20a内の左半部にローマ字の「A」の形のセグメント電極SAが、右半部にアラビア数字の「1」の形のセグメント電極S1が形成されており、図示していないコモン電極との間に電圧を印加した方のセグメント電極のパターン部分が透過状態になり、導光板30からの光が視認側に射出して「A」又は「1」を表示する。
【0050】
液晶表示パネルの表示領域20aを指先等で押圧すれば、そのとき表示されている文字あるいは記号(文字等と言う)に応じた入力をすることができる。
この例では同じ表示領域20a内でも表示する文字等によって、表示位置が変わるのと、表示領域20aの面積に比べて表示される文字等が小さくなるという欠点があるが、セグメント電極への配線数が極めて少なくて済むので、配線が簡単であるという実用上大きな利点がある。
【0051】
図10は同じ表示領域20a内の同じ部分で2つの文字を切り替え表示する場合のセグメント電極の例を示す。この例ではローマ字の「A」とアラビア数字の「1」を同じ位置に表示できるように、6個のセグメント電極S2〜S7を僅かな隙間をあけて互いに分離して形成している。そして、セグメント電極S2〜S5に電圧を印加すれば、「A」が表示され、セグメント電極S3,S5,S6,S7に電圧を印加すれば、「1」が表示される。
【0052】
この例では、表示領域20a内の同じ部分に2つの異なる文字等を大きく切り替え表示することができるので、視認性がよいが、組み合わせる文字等によってセグメント電極のパターンが複雑で多数になり、セグメント電極の形成とその各セグメント電極への配線が複雑化して、製造コストが上昇するという問題がある。
また、アラビア数字や簡単な記号だけを切り替えて表示する場合は、一般のデジタル表示に使用されている「7セグメント」の電極を使用すればよい。
【0053】
〔この発明の変更例及び応用例〕
この発明の上述した各実施形態では、液晶表示パネル20又は20′を構成する液晶セル21における液晶層213がTN液晶からなる例で説明したが、液晶層213をSTN(スーパーツイストネマチック)液晶で形成する場合は、液晶セル21と上偏光板22又は22′との間に位相差板を介装する。
その場合には、その位相差板にも上偏光板22のスリット20sと同じ位置にスリットを形成するか、液晶表示パネル20′の仮想操作ボタンを表示する各領域20aにのみ位相差板と上偏光板22′を設けるようにすればよい。
【0054】
また、上述した各実施形態における液晶表示パネル20又は20′は、下面側に光源のLED40と導光板30によるバックライトを設けた透過型の液晶表示パネルであるが、バックライトを設けずに外光を利用して表示する反射型あるいは吸収型の液晶表示パネルに代えてもよい。
その場合には、液晶表示パネルの下偏光板の下面側に反射層(白色叉は明るい色の乱反射層、又は鏡面反射層などを含む)か、黒色又は暗い色の光吸収層を設ける。
【0055】
また、バックライトを設けた場合でも、下偏光板の下面側に半透過反射層又は半透過吸収層を設けて、明るい環境ではバックライトを使用せずに反射型又は吸収型の表示を行い、暗い環境ではバックライトを点灯して透過型の表示を行うようにすることもできる。
これらの場合には、液晶表示パネルの下偏光板の下面側に設ける反射層、光吸収層、あるいは半透過反射層又は半透過吸収層にも、下偏光板のスリットと同じ位置にスリットを形成するか、液晶表示パネルの仮想操作ボタンを表示する各領域にのみ下偏光板と共に上記いずれかの層を設けるようにすればよい。
【0056】
さらに、下偏光板として、偏光軸と平行する方向の振動面を持つ直線偏光は透過し、偏光軸と直交方向のする振動面を持つ直線偏光は全反射する特性を有する反射型偏光板を使用し、その下面側に吸収層やカラー層などを設けて、外光による明るい反射型あるいは吸収型の表示を行うこともできる。
その場合も、その反射型偏光板と吸収層やカラー層などに、前述の下偏光板に設けたのと同様なスリットを設けるか、液晶表示パネルの仮想操作ボタンを表示する各領域にのみ反射型偏光板と共に上記いずれかの層を設けるようにすればよい。
【0057】
また、上偏光板の上面に、紫外線吸収層や反射防止層など各種のコート層を設ける場合には、そのコート層にも前述の上偏光板に設けたのと同様なスリットを設けるか、液晶表示パネルの仮想操作ボタンを表示する各領域にのみ上偏光板とそのコート層を設けるようにすればよい。
【0058】
あるいは、この発明の応用例として、液晶表示パネルとして散乱型液晶表示パネルを使用した場合、すなわち液晶セル内の液晶層が高分子分散型(ポリマネットワーク型)等の光散乱型液晶層である場合には、その液晶層を挟む電極間に電圧を印加していない状態では、高分子材料と液晶の屈折率が異なるため光を散乱して不透明になっており、適当な大きさの電圧を印加すると、高分子材料と液晶の屈折率が略同じになるため透明になることにより表示がなされる。
【0059】
そのため、液晶セルの両側の偏光板は不要であるが、下基板の下面側に反射板を設ける必要がある。そこで、その反射板に前述の下偏光板に設けたのと同様なスリットを設けるか、液晶表示パネルの仮想操作ボタンを表示する各領域にのみその反射板を設けるようにすれば、クリック感を高めることができる。
【0060】
〔携帯電話機への搭載例〕
次に、この発明による入力装置の携帯電話機への搭載例を説明する。図11は、この発明による入力装置を搭載した携帯電話機をメインディスプレイ部を開いた状態で示す斜視図である。
【0061】
この携帯電話機60は本体部61とメインディスプレイ部62とが開閉可能に連結され、メインディスプレイ部62にはカラー液晶表示パネルによるメインディスプレイ63が設けられている。本体部の上面には、キーパッドとしてこの発明による入力装置6(上述したいずれの実施形態のものでもよい)が搭載されている。
【0062】
この入力装置6の液晶表示パネルの各仮想操作ボタンを表示する領域には、初期状態では通常の携帯電話機のキーパッドの各キーと同じテンキーや各種機能選択キー等の各キーが表示さており、その各キー表示領域をタッチすることによってダイヤル入力や機能選択などを行うことができる。また、機能選択に応じて仮想操作ボタンの表示を変化させることができ、次に操作可能なキーのみを表示することもできる。
【0063】
この携帯電話機60は、キーパッドとしてこの発明による入力装置6を搭載しているので、キー操作時にクリック感のある入力をすることができる。しかも、長期間使用しても液晶表示パネルによる仮想操作ボタンの表示不良が生じる恐れがない。
さらに、フィールドシーケンシャルカラー表示を行うようにすれば、入力モードにより入力可能なキーのみを特定の色で表示したり、メインパネルのキーの表示色とキーパッドのキーの表示色を関連させたり、ユーザがキーの色を自由に設定することもでき、ファッション性や操作性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0064】
この発明による入力装置は、入力操作時にクリック感が充分あり、しかも液晶表示パネルにダメージを与えることがないので、表示不良が発生する恐れがない。また、アクチュエータ等の付加部材を設けないので、入力装置の薄型化及び軽量化が容易になる。
そのため、携帯電話機や携帯端末などの各種携帯型電子機器のキーパットとして最適であり、その他の各種事務機器や電子機器などのオペレーションパネルにも適用できる。
【符号の説明】
【0065】
6:入力装置 10:スイッチシート 10S:ドームスイッチ
11:スイッチシートの基板 12:円形の固定接点
13:リング状の固定接点 14:ドーム状可動接片
15:固定シート 20,20′:液晶表示パネル
20a:表示領域 21:液晶セル 22,22′:上偏光板
23,23′:下偏光板 22s、23s:スリット
30:導光シート 30s,30′s:遮光層
40:光源である発光ダイオード(LED)
211:上基板(基板) 212:下基板(基板)
213:液晶層
【技術分野】
【0001】
この発明は、押圧を感知するドームスイッチ(メンブレンスイッチやタクトスイッチともいう)を設けたスイッチシート上に、その各ドームスイッチに対応して仮想操作ボタンを表示する液晶表示パネルを重ねて設けた入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチシートと液晶表示パネルとを積層して配設し、液晶表示パネルによって表示される仮想操作ボタンの表示領域を指先で押圧(タッチ)することによって、スイッチシートのスイッチを動作させて、各種の選択や指示等を入力し、それに応じた様々な機能やサービスを提供する入力装置が広く知られている。
例えば、携帯電話機や各種事務機器などにこのような入力装置を採用し、同じタッチ領域で仮想操作ボタンの表示を切り替えることによって複数の異なる入力を可能にして、少ない面積のパネルで多くの種類の入力ができるようにすることが行われている。
【0003】
このような入力装置として、従来は液晶表示パネルの基板としては一般にガラス基板が使用されていたので、可撓性に乏しく押圧力をスイッチシートに伝達するのが困難であったため、スイッチシートの下側に液晶表示パネルを配置したものが多かった。
そのため、スイッチシートを構成する基板やドームスイッチの固定接点やドーム状の可動接点などを全て透明材料によって構成しなければならず、材料の制約が大きかった。また、液晶表示パネルによる仮想操作ボタンの表示をスイッチシートを通して視認することになるため、視認性が損なわれるという問題もあった。
【0004】
そこで、最近は液晶表示パネルの基板に透明な樹脂基板を使用して可撓性を持たせ、押圧力の伝達を可能にして、スイッチシートの上側に液晶表示パネルを重ねて設けた入力装置が実用化されてきた。例えば、特許文献1にはそのような入力装置が提案されている。
【0005】
この特許文献1に記載されている入力装置(入出力装置と称されている)は、上記スイッチシートに相当する座標検知手段がドーム状の凸部のない平坦なメンブレンスイッチであり、また、液晶表示パネルの上下の透明な樹脂基板のそれぞれ外側の面に接着して設けられた各偏光板は、樹脂製ではあっても樹脂基板より厚さが厚く剛性も高い。しかも、液晶表示パネルの視認側からの局所的な応力を分散させるために、視認側の樹脂基板と偏光板との間に緩衝層を設け、あるいはさらに下側の偏光板とメンブレンスイッチとの間に液晶表示パネルを保護する補強板を設けたりしている。
【0006】
このような入力装置では、液晶表示パネルの視認性はよく、局所的な応力も分散されるので、長期間使用しても液晶表示パネルが劣化して表示不良が発生することは殆どないと思料される。
しかし、液晶表示パネルを視認側から押圧してメンブレンスイッチをスイッチ動作させるとき、その押下力が剛性の高い偏光板によって周囲に分散され、さらに緩衝層や補強板を介して弱められてメンブレンスイッチに伝達され、そのスイッチも弾性変形量とその復帰力が小さい構造なので、操作感としてのクリック感が極めて乏しく、スイッチ動作が確実になされたか否か不安である。実際に液晶表示パネルの仮想操作ボタンの表示領域への押圧力が周囲に分散して、メンブレンスイッチに充分伝達されず、確実なスイッチ動作がなされない恐れもある。
【0007】
ここで、クリック感について図12を用いて簡単に説明する。図12はこのようなタッチ式入力装置における押圧のストロークSと操作力P1及び復帰力P2の関係を示す線図であり、クリック率は次の式で求められる。
クリック率=(P1−P2)/P1
したがって、操作力のピークと復帰力との差が大きい程クリック率が大きくなり、クリック感すなわち操作感が充分に得られることになる。
【0008】
このような入力装置におけるクリック感を増加させるために、例えば図13に示すように、スイッチシート100の各スイッチを可動接点部が上方に膨出したドーム状に形成されたドームスイッチ110とし、さらにその各ドームと液晶表示パネル200の下面との間に、押圧力を効率よくドームスイッチ110に伝達するためのアクチュエータ(押し子)300を介在させることが従来から行われている。
【0009】
この例のスイッチシート100は、基板120上に円形の固定接点111とその外周から間隔を置いたリング状の固定接点112を金属で形成し、球形の一部のようなバネ性を有するメタルドーム(可動接点)113の基部をリング状の固定接点112に接続するかその上に載置し、その外側に接着層114で樹脂シート115を貼り付けて、ドームスイッチ110を構成している。アクチュエータ300は、柔軟性のあるシート310によって保持されている。
【0010】
このような入力装置によれば、液晶表示パネル200の上面側からの押圧力がアクチュエータ300を介してドームスイッチ110に効率よく伝達され、メタルドーム113を弾性変形させて固定接点111と112を導通させた後、その復元力によって押し返されるので、確実なスイッチ動作がなされると共に、充分なクリック感が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3463501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、このような入力装置では多数回のスイッチ入力操作を繰り返すと、液晶表示パネルの下面のアクチュエータと当接する部分に集中的な応力が繰り返し加わるため、液晶表示パネルの樹脂基板が若干凹んで基板間のギャップむらや配向不良などが生じ、表示品質が劣化するという問題があった。クリック感を高めるためにアクチュエータの先端の面積を小さくするほど、このような表示不良が発生しやすくなる。
【0013】
この発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、上述したようなスイッチシート上に液晶表示パネルを重ねた入力装置において、長期間使用しても液晶表示パネルに表示不良が発生することがなく、しかも入力操作時に充分なクリック感が得られるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は上記の目的を達成するため、複数のドームスイッチを有するスイッチシートと、該スイッチシート上に配設された液晶表示パネルとを備え、該液晶表示パネルは、可撓性を有する2枚の基板間に液晶層を挟持し、2枚の基板のそれぞれ液晶層と接しない外側の面に偏光板を備えると共に、ドームスイッチに対応する各表示領域ごとに仮想操作ボタンを表示する機能を有し、該液晶表示パネルの各表示領域が視認側から押圧されることにより、スイッチシートに対応するドームスイッチが押圧されてスイッチ動作させるように構成された入力装置である。
そして、上記各偏光板の少なくとも一方における上記各表示領域の周囲に相当する部分にスリットを形成したことを特徴とする。
【0015】
上記スリットを、上記各偏光板の両方の上記各表示領域の周囲に相当する部分の対応する位置に形成するのが望ましい。
また、上記スリットを、上記偏光板の上記各表示領域に相当する部分を囲むように無端状(リング状等)にあるいは複数の部分(円弧状部分等)に分割して形成することができる。
【0016】
上記スリット形成するのに代えて、上記液晶表示パネルの上記2枚の基板のそれぞれ上記外側の面に設けられた各偏光板の少なくとも一方は、上記各表示領域に相当する領域にのみ設けてもよい。
上記各偏光板の両方を、上記液晶表示パネルの上記各表示領域に相当する領域にのみ対向して設けてもよい。
これらの入力装置において、上記液晶表示パネルの上記スイッチシート側に可撓性を有する樹脂からなる導光板を配設し、その導光板を端面より照明する光源を設けるとよい。
【発明の効果】
【0017】
この発明による入力装置は、液晶表示パネルの2枚の基板より剛性が高い偏光板の各仮想操作ボタンを表示する表示領域の周囲に相当する部分にスリットを形成するか、偏光板を上記各表示領域に相当する領域にのみ設けるので、仮想操作ボタンが表示された領域を押下したとき、その押下力が偏光板によって周囲に分散されることがないか少なく、効率よくドームスイッチに伝達されるので、ドームスイッチのドーム状可動接片の弾性変形によるスイッチ動作を確実に行わせることができ、その復元力も液晶表示パネルの押下部に効率よく伝達されるので、充分なクリック感が得られる。
また、アクチュエータ(押し子)を設けていないので、繰り返し押圧操作しても液晶表示パネルにダメージを与えることがないので、表示不良が発生する恐れがない。さらに、入力装置の薄型化及び軽量化が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明による入力装置の第1の実施形態の外観を単純化して示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿う模式的な拡大断面図である。
【図3】図2における上下の偏光板の層構成を示す一部拡大断面図である。
【図4】偏光板に形成するスリットの形状を変更した実施形態の外観を単純化して示す斜視図である。
【0019】
【図5】液晶表示パネルの各仮想操作ボタンを表示する表示領域の形状が略正方形の場合に偏光板に分割した複数にスリットを形成する場合の例を示す部分的な拡大平面図である。
【図6】同じく表示領域の形状が略正方形の場合に偏光板に無端状のスリットを形成する場合の例を示す部分的な拡大平面図である。
【図7】この発明による入力装置の第2の実施形態の外観を単純化して示す斜視図である。
【図8】図7のB−B線に沿う模式的な拡大断面図である。
【0020】
【図9】液晶セルの一方の基板の内面に形成するセグメント電極の一例を示すレイアウト図である。
【図10】同じくセグメント電極の他の例を示すレイアウト図である。
【図11】この発明による入力装置を搭載した携帯電話機をメインディスプレイ部を開いた状態で示す斜視図である。
【図12】タッチ式入力装置における押圧のストロークSと操作力P1及び復帰力P2の関係を示す線図である。
【図13】従来のクリック感を増加させた入力装置の構成例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
〔第1の実施形態:図1〜図6〕
図1は、この発明による入力装置の第1の実施形態の外観を単純化して示す斜視図である。図2は図1のA−A線に沿う模式的な拡大断面図、図3はその上下の偏光板の層構成を示す一部拡大断面図である。
【0022】
図1に示す入力装置は、スイッチシート10上に液晶表示パネル20が積層して設けられている。その液晶表示パネル20はスイッチシート10の後述するドームスイッチに対応する各表示領域20aごとに仮想操作ボタンを表示し、その各表示領域20aを視認側から押圧することにより、スイッチシート10の対応するドームスイッチを押圧してスイッチ動作させるように構成されている。
【0023】
そして、その液晶表示パネル20の視認側に設けられた上偏光板22の各表示領域20aの周囲に相当する部分にスリット22sを形成している。この実施形態では円形の各表示領域20aの周囲を囲む円を4分割した各部分に相当する円弧状のスリット22sが、1個所の表示領域20aの周囲に4個ずつ形成され、上偏光板22のスリット22sの内側の表示領域20aに相当する部分とその外側の部分とは90°間隔で残されたスリットが形成されない部分で繋がって一体になっている。
【0024】
この入力装置の構成を図2及び図3によってさらに詳細に説明する。
この実施形態の入力装置は、図2の拡大断面図に示すように、スイッチシート10と可撓性を有する液晶表示パネル20とが導光板30を挟んで積層されている。40はその導光板を端面より照明する光源としての発光ダイオード(LED)である。
【0025】
スイッチシート10は、基板11上に間隔を置いて複数のドームスイッチ10Sを形成しており、その各ドームスイッチ10Sは、基板11上に円形の固定接点12とその外周から間隔を置いたリング状の固定接点13とが銅箔で形成されており、それらの上を間隔を置いて覆うようにドーム状可動接片14が配設され、その上を基板11に接着される固定シート15で覆って、ドーム状可動接片14を位置決め保持している。
【0026】
基板11はポリミド等の絶縁性の樹脂で形成され、厚さは0.025mm程度である。ドーム状可動接片14は、バネ性を有するSUS材(ステンレス鋼)で形成され、押圧されたときに弾性変形して周辺部が拡がって上部が下降し、固定接点12と13を導通させてスイッチをオン状態にする。押圧力が弱まると弾性復元力によって、図示のオフ状態に復帰する。
固定シート15はPET(ポリエチレンテレフタレート)等の絶縁性の樹脂で形成され、厚さは0.063mm程度である。
【0027】
液晶表示パネル20は総厚さが0.528mm程度であり、可撓性を有する透明な2枚の樹脂基板である上基板211と下基板212の間に液晶層213を挟持した液晶セル21と、その2枚の樹脂基板211,212のそれぞれ液晶層213と接しない外側の面に上偏光板22と下偏光板23を接着して設けており、スイッチシート10の各ドームスイッチ10Sに対応する各表示領域20aごとに仮想操作ボタンを表示する機能を有する。
【0028】
液晶セル21の上基板211と下基板212は、それぞれ例えばPC(ポリカーボネート)で厚さ0.126mm程度に形成され、液晶層213は、上基板211と下基板212と図示していないシール材とで形成された空間にTN(ツイストネマチック)液晶が注入された厚さ0.006mm程度の層である。この液晶層213の厚さを一定に保つため、ホトリソグラフィ法によって上基板211又は下基板212に固定されたスペーサ(図示は省略)が形成されている。
【0029】
さらに、上基板211と下基板212のいずれか一方の内面には全面にコモン電極が、他方には仮想操作ボタンの種別を表示するためのセグメント電極がそれぞれ透明なITO(酸化インジウム錫)膜によって形成され、その表面を含む内面全体にポリイミドによる配向膜が形成されているが、これらも図示を省略している。
上基板211と下基板212の材料としては、PCの他にPETやPES(ポリエーテルサルホン)なども使用できる。
【0030】
上偏光板22と下偏光板23は、図3の(a),(b)に示すように、いずれも厚さ0.03mm程度のPVA(ポリビニルアルコール)シート221,231の両側に厚さ0.04mm程度のTAC(セルローストリアセテートフィルム)222,223と232,233を密着積層している。そして、上偏光板22は下側のTAC223の下面に接着層224を厚さ0.025mm程度に形成し、下偏光板23は上側のTAC233の上面に接着層234を厚さ0.025mm程度に形成している。
【0031】
一般にTN型液晶表示パネルでは、上偏光板22と下偏光板23は、いずれも偏光軸に平行な方向の振動面を持つ直線偏光は透過し、偏光軸に直交する方向の振動面を持つ直線偏光は吸収する特性を有する吸収型偏光板であり、その偏光軸を互いに平行あるいは直交させて配置する。
液晶層213がTN液晶層の場合は、導光板30から下偏光板23と下基板212を通して液晶層213に入射した直線偏光は、電圧無印加状態の部分では液晶層213内で90°旋光されて上偏光板22に達する。
【0032】
そのため、上偏光板22と下偏光板23の偏光軸が平行な場合には上偏光板22で吸収されるためノーマル黒表示になり、コモン電極とセグメント電極の間に電圧が印加された部分では、液晶層213に入射した直線偏光はそのまま上偏光板22に達するので、それを透過して視認側に出射し、光源の色に応じた色で表示される。
この実施形態ではノーマル黒表示としたが、上偏光板22と下偏光板23の偏光軸を互いに直交させても良い。この場合、導光板30から下基板210を通して液晶層213に入射した直線偏光は、電圧無印加状態の部分では上偏光板22を透過して視認側に出射するので、ノーマル白(光源の色)表示で、電圧が印加されたセグメント電極の部分が黒く表示されることになる。このとき液晶表示パネル20と導光板30の間に半透過反射板を挿入し、反射型表示を可能としておくことが好ましい。
【0033】
この実施形態では、図1で説明したように、上偏光板22におけるこの液晶表示パネル20が仮想操作ボタンを表示する各表示領域20aの周囲に相当する部分に、スリット22sを形成している。また、下偏光板23における各表示領域20aの周囲に相当する部分にも、上偏光板22のスリット22sと対応する位置にスリット23sを形成している。
【0034】
導光板30は、厚さ0.15mmのPC(ポリカーボネート)のシートであり、その一端面から、光源であるLED40の発光による照明光を導入する。そして、この照明光は、導光板30の表裏面で反射を繰り返して拡散し、バックライトとして液晶表示パネル20の下面をほぼ均一な明るさで照明して、液晶表示パネル20に表示をさせる。これにより、暗い環境でも明瞭な表示がなされる。なお、スリット22sからの光の漏れを防止するため、導光板30のスリット22s部に対応する部位は遮光層30sが印刷されている。
【0035】
LED40は一般には白色発光のものを使用するが、黄色や他の色の光を発光するものを使用してもよいし、赤、緑、青の多色発光のLEDを使用して表示色を切り替えたり、フィールドシーケンシャルカラー表示を行うようにしてもよい。光源として線光源や面光源を使用してもよい。しかし、このバックライトを構成する導光板30とLED40等の光源は、この発明に必須のものではない。
【0036】
この入力装置によれば、液晶表示パネル20の上基板211及び下基板212より剛性が高い上偏光板22と下偏光板23のそれぞれ各仮想操作ボタンを表示する表示領域20aの周囲に相当する部分にスリット22s,23sを形成したので、仮想操作ボタンが表示された領域20aを押下したとき、その押下力が偏光板22,23によって周囲に分散されることが極めて少なく、効率よくドームスイッチ10Sに伝達される。そのため、ドームスイッチ10Sのドーム状可動接片14の弾性変形によるスイッチ動作を確実に行わせることができ、その復元力も液晶表示パネル20の押下部に効率よく伝達されるので、充分なクリック感が得られる。
【0037】
また、アクチュエータ(押し子)を設けないので、繰り返し押圧操作しても液晶表示パネル20にダメージを与えることがなく、表示不良が発生する恐れもない。
さらに、アクチュエータや緩衝材、補強板などの付加的な部材を設けないので、入力装置の薄型化及び軽量化が容易になる。
【0038】
この実施形態では上偏光板22と下偏光板23の両方にスリットを形成しているので、クリック感を高める効果が大きいが、上偏光板22と下偏光板23のいずれか一方のみにスリットを形成しても、スリットを形成しない場合に比べればかなりクリック感を高めることができる。上偏光板22にスリット22sを形成すると、液晶表示パネル20の上面の平面性が若干損なわれ、用途によっては見栄えが悪くなるので、そのような場合には下偏光板23にのみスリット23sを形成すればよい。
【0039】
なお、液晶表示パネル20の一つの表示領域20aの周囲に相当する位置において、偏光板22,23に形成するスリットの数は4個に限るものではなく、2個又は3個あるいは5個以上に分けてもよく、その各スリットの長さが同じでなくてもよい。
【0040】
図4は偏光板に形成するスリットの形状を変更した実施形態の外観を単純化して示す斜視図である。この例では、液晶表示パネル20の上偏光板22の表示領域20aに相当する部分を囲むように無端状(図示の例ではリング状)にスリット22sを形成している。図2に示した下偏光板23の対応する位置にも無端状にスリット23sを形成する。あるいは、上偏光板22又は下偏光板23の一方にのみ無端状(リング状)のスリットを形成してもよい。
【0041】
このようにすれば、液晶表示パネル20の表示領域20aを押下したときの押下力が偏光板によって周囲に分散するのを一層確実に防いで、クリック感を高める効果を増すことができる。しかし、図1に示した例のようにスリットを分割して形成し、表示領域20aに対応する部分とスリットの外側の部分とを一部で接続し、偏光板を一体化しておいた場合、製造工程で偏光板を液晶セル21に貼り付ける作業が容易であるという利点がある。
【0042】
なお、上偏光板22と下偏光板23の一方における表示領域20aの周囲に相当する部分には分割した複数のスリットを形成し、他方には無端状のスリットを形成してもよい。
液晶表示パネル20の各仮想操作ボタンを表示する表示領域20aの形状は円形に限らず、楕円形や正方形、長方形など種々の形状に変更し得るが、その形状に合わせた形状で、上偏光板22と下偏光板23の少なくとも一方における表示領域20aの周囲に相当する部分にスリットを形成すればよい。
【0043】
図5及び図6は、液晶表示パネル20の各仮想操作ボタンを表示する表示領域20aの形状が略正方形の場合の例を示す。
図5は、上偏光板22と下偏光板23の少なくとも一方における略正方形の表示領域20aの周囲に相当する部分に、各辺の中央部のみを残して4分割したL字状のスリット22s、23sを形成した例を示している。
図6は、上偏光板22と下偏光板23の少なくとも一方における略正方形の表示領域20aの周囲に相当する部分に、その全周に亘って無端状(略正方形)のスリット22s、23sを形成した例を示している。
【0044】
〔第2の実施形態:図7及び図8〕
次に、この発明による入力装置の第2の実施形態について、図7及び図8によって説明する。図7はその入力装置の図1と同様な斜視図であり、図8はそのB−B線に沿う模式的な拡大断面図である。
この第2の実施形態において、前述した第1の実施形態と異なるのは偏光板と遮光層の形状だけであるので、図1及び図2と同じ部分には同一の符号を付してあり、それらの説明は省略する。
【0045】
この第2の実施形態の入力装置の液晶表示パネル20′は、液晶セル21の構成は第1の実施形態と同じであるが、上偏光板22′及び下偏光板23′を、液晶表示パネル20′の各仮想操作ボタンを表示する表示領域20aに相当する領域にのみ対向して設けている。これは、図4に示した例における上偏光板22又は図示していない下偏光板の無端状のスリットより外側の部分を全て除去したものに相当する。また遮光層30′sは、導光板30表面における上偏光板22′及び下偏光板23′のない部位に印刷されている。
【0046】
このような偏光板22′,23′を液晶セル21の上基板211及び下基板212に貼り付けるには、例えば、両面に保護シートを備え接着剤が予め塗布された大判の偏光板において、図3に示した接着層224又は234が無い方の全面に偏光板と保護シート間よりも粘着力が弱い剥離台紙を貼って、液晶セル21上の表示領域20aに相当する領域の周囲に偏光板の全厚さに及ぶ円形の切込を入れ、偏光板22′,23′として残す部分の接着剤側の保護シートを除去し、その偏光板の接着層224又は234のある方の全面を上基板211又は下基板212の外面に貼り付けた後、剥離台紙を剥がしてから偏光板22′,23′として残す部分以外の一体になっている部分を剥がすようにすればよい。
【0047】
この実施形態によれば、液晶表示パネル20′の表示領域20aを押下したときの押下力が偏光板によって周囲に分散するのを完全に防げるので、キー操作時のクリック感を大幅に高めることができる。その他の効果は、前述した第1の実施形態の場合と同様である。
【0048】
この実施形態でも、液晶セル21の上基板211側と下基板212側の一方の偏光板は全面に設け、他方の偏光板だけを表示領域20aに相当する領域にのみ設けるようにしてもよい。また、一方の偏光板には第1の実施形態と同様にスリットを形成し、他方の偏光板はこの実施形態のように表示領域20aに相当する領域にのみ設けるようにしてもよい。
また、上偏光板22′及び下偏光板23′の形状を、液晶表示パネル20′の各仮想操作ボタンを表示する表示領域20aの形状に合わせて、楕円形や正方形、長方形など種々の形状に変更し得ることも同様である。
【0049】
〔液晶セルのセグメント電極の例:図9及び図10〕
ここで、上述した各実施形態における液晶セル21の一方の基板211又は212の内面に形成するセグメント電極の形状例を図9及び図10によって説明する。
図9は同じ表示領域20a内の異なる部分で2つの文字を切り替え表示する場合のセグメント電極の例を示す。この例では表示領域20a内の左半部にローマ字の「A」の形のセグメント電極SAが、右半部にアラビア数字の「1」の形のセグメント電極S1が形成されており、図示していないコモン電極との間に電圧を印加した方のセグメント電極のパターン部分が透過状態になり、導光板30からの光が視認側に射出して「A」又は「1」を表示する。
【0050】
液晶表示パネルの表示領域20aを指先等で押圧すれば、そのとき表示されている文字あるいは記号(文字等と言う)に応じた入力をすることができる。
この例では同じ表示領域20a内でも表示する文字等によって、表示位置が変わるのと、表示領域20aの面積に比べて表示される文字等が小さくなるという欠点があるが、セグメント電極への配線数が極めて少なくて済むので、配線が簡単であるという実用上大きな利点がある。
【0051】
図10は同じ表示領域20a内の同じ部分で2つの文字を切り替え表示する場合のセグメント電極の例を示す。この例ではローマ字の「A」とアラビア数字の「1」を同じ位置に表示できるように、6個のセグメント電極S2〜S7を僅かな隙間をあけて互いに分離して形成している。そして、セグメント電極S2〜S5に電圧を印加すれば、「A」が表示され、セグメント電極S3,S5,S6,S7に電圧を印加すれば、「1」が表示される。
【0052】
この例では、表示領域20a内の同じ部分に2つの異なる文字等を大きく切り替え表示することができるので、視認性がよいが、組み合わせる文字等によってセグメント電極のパターンが複雑で多数になり、セグメント電極の形成とその各セグメント電極への配線が複雑化して、製造コストが上昇するという問題がある。
また、アラビア数字や簡単な記号だけを切り替えて表示する場合は、一般のデジタル表示に使用されている「7セグメント」の電極を使用すればよい。
【0053】
〔この発明の変更例及び応用例〕
この発明の上述した各実施形態では、液晶表示パネル20又は20′を構成する液晶セル21における液晶層213がTN液晶からなる例で説明したが、液晶層213をSTN(スーパーツイストネマチック)液晶で形成する場合は、液晶セル21と上偏光板22又は22′との間に位相差板を介装する。
その場合には、その位相差板にも上偏光板22のスリット20sと同じ位置にスリットを形成するか、液晶表示パネル20′の仮想操作ボタンを表示する各領域20aにのみ位相差板と上偏光板22′を設けるようにすればよい。
【0054】
また、上述した各実施形態における液晶表示パネル20又は20′は、下面側に光源のLED40と導光板30によるバックライトを設けた透過型の液晶表示パネルであるが、バックライトを設けずに外光を利用して表示する反射型あるいは吸収型の液晶表示パネルに代えてもよい。
その場合には、液晶表示パネルの下偏光板の下面側に反射層(白色叉は明るい色の乱反射層、又は鏡面反射層などを含む)か、黒色又は暗い色の光吸収層を設ける。
【0055】
また、バックライトを設けた場合でも、下偏光板の下面側に半透過反射層又は半透過吸収層を設けて、明るい環境ではバックライトを使用せずに反射型又は吸収型の表示を行い、暗い環境ではバックライトを点灯して透過型の表示を行うようにすることもできる。
これらの場合には、液晶表示パネルの下偏光板の下面側に設ける反射層、光吸収層、あるいは半透過反射層又は半透過吸収層にも、下偏光板のスリットと同じ位置にスリットを形成するか、液晶表示パネルの仮想操作ボタンを表示する各領域にのみ下偏光板と共に上記いずれかの層を設けるようにすればよい。
【0056】
さらに、下偏光板として、偏光軸と平行する方向の振動面を持つ直線偏光は透過し、偏光軸と直交方向のする振動面を持つ直線偏光は全反射する特性を有する反射型偏光板を使用し、その下面側に吸収層やカラー層などを設けて、外光による明るい反射型あるいは吸収型の表示を行うこともできる。
その場合も、その反射型偏光板と吸収層やカラー層などに、前述の下偏光板に設けたのと同様なスリットを設けるか、液晶表示パネルの仮想操作ボタンを表示する各領域にのみ反射型偏光板と共に上記いずれかの層を設けるようにすればよい。
【0057】
また、上偏光板の上面に、紫外線吸収層や反射防止層など各種のコート層を設ける場合には、そのコート層にも前述の上偏光板に設けたのと同様なスリットを設けるか、液晶表示パネルの仮想操作ボタンを表示する各領域にのみ上偏光板とそのコート層を設けるようにすればよい。
【0058】
あるいは、この発明の応用例として、液晶表示パネルとして散乱型液晶表示パネルを使用した場合、すなわち液晶セル内の液晶層が高分子分散型(ポリマネットワーク型)等の光散乱型液晶層である場合には、その液晶層を挟む電極間に電圧を印加していない状態では、高分子材料と液晶の屈折率が異なるため光を散乱して不透明になっており、適当な大きさの電圧を印加すると、高分子材料と液晶の屈折率が略同じになるため透明になることにより表示がなされる。
【0059】
そのため、液晶セルの両側の偏光板は不要であるが、下基板の下面側に反射板を設ける必要がある。そこで、その反射板に前述の下偏光板に設けたのと同様なスリットを設けるか、液晶表示パネルの仮想操作ボタンを表示する各領域にのみその反射板を設けるようにすれば、クリック感を高めることができる。
【0060】
〔携帯電話機への搭載例〕
次に、この発明による入力装置の携帯電話機への搭載例を説明する。図11は、この発明による入力装置を搭載した携帯電話機をメインディスプレイ部を開いた状態で示す斜視図である。
【0061】
この携帯電話機60は本体部61とメインディスプレイ部62とが開閉可能に連結され、メインディスプレイ部62にはカラー液晶表示パネルによるメインディスプレイ63が設けられている。本体部の上面には、キーパッドとしてこの発明による入力装置6(上述したいずれの実施形態のものでもよい)が搭載されている。
【0062】
この入力装置6の液晶表示パネルの各仮想操作ボタンを表示する領域には、初期状態では通常の携帯電話機のキーパッドの各キーと同じテンキーや各種機能選択キー等の各キーが表示さており、その各キー表示領域をタッチすることによってダイヤル入力や機能選択などを行うことができる。また、機能選択に応じて仮想操作ボタンの表示を変化させることができ、次に操作可能なキーのみを表示することもできる。
【0063】
この携帯電話機60は、キーパッドとしてこの発明による入力装置6を搭載しているので、キー操作時にクリック感のある入力をすることができる。しかも、長期間使用しても液晶表示パネルによる仮想操作ボタンの表示不良が生じる恐れがない。
さらに、フィールドシーケンシャルカラー表示を行うようにすれば、入力モードにより入力可能なキーのみを特定の色で表示したり、メインパネルのキーの表示色とキーパッドのキーの表示色を関連させたり、ユーザがキーの色を自由に設定することもでき、ファッション性や操作性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0064】
この発明による入力装置は、入力操作時にクリック感が充分あり、しかも液晶表示パネルにダメージを与えることがないので、表示不良が発生する恐れがない。また、アクチュエータ等の付加部材を設けないので、入力装置の薄型化及び軽量化が容易になる。
そのため、携帯電話機や携帯端末などの各種携帯型電子機器のキーパットとして最適であり、その他の各種事務機器や電子機器などのオペレーションパネルにも適用できる。
【符号の説明】
【0065】
6:入力装置 10:スイッチシート 10S:ドームスイッチ
11:スイッチシートの基板 12:円形の固定接点
13:リング状の固定接点 14:ドーム状可動接片
15:固定シート 20,20′:液晶表示パネル
20a:表示領域 21:液晶セル 22,22′:上偏光板
23,23′:下偏光板 22s、23s:スリット
30:導光シート 30s,30′s:遮光層
40:光源である発光ダイオード(LED)
211:上基板(基板) 212:下基板(基板)
213:液晶層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のドームスイッチを有するスイッチシートと、該スイッチシート上に配設された液晶表示パネルとを備え、
該液晶表示パネルは、可撓性を有する2枚の基板間に液晶層を挟持し、前記2枚の基板のそれぞれ前記液晶層と接しない外側の面に偏光板を備えると共に、前記ドームスイッチに対応する各表示領域ごとに仮想操作ボタンを表示する機能を有し、
該液晶表示パネルの前記各表示領域が視認側から押圧されることにより、前記スイッチシートに対応する前記ドームスイッチが押圧されてスイッチ動作させるように構成された入力装置であって、
前記各偏光板の少なくとも一方における前記各表示領域の周囲に相当する部分にスリットを形成したことを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記スリットが、前記各偏光板の両方の前記各表示領域の周囲に相当する部分の対応する位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記スリットが、前記偏光板の前記各表示領域に相当する部分を囲むように無端状にあるいは複数の部分に分割されて形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の入力装置。
【請求項4】
複数のドームスイッチを有するスイッチシートと、該スイッチシート上に配設された液晶表示パネルとを備え、
該液晶表示パネルは、可撓性を有する2枚の基板間に液晶層を挟持し、前記2枚の基板のそれぞれ前記液晶層と接しない外側の面に一対の偏光板を備えると共に、前記ドームスイッチに対応する各表示領域ごとに仮想操作ボタンを表示する機能を有し、
該液晶表示パネルの前記各表示領域が視認側から押圧されることにより、前記スイッチシートに対応する前記ドームスイッチが押圧されてスイッチ動作されるように構成された入力装置であって、
前記各偏光板の少なくとも一方は、前記各表示領域に相当する領域にのみ設けられたことを特徴とする入力装置。
【請求項5】
前記各偏光板の両方が、前記液晶表示パネルの前記各表示領域に相当する領域にのみ対向して設けられていることを特徴とする請求項4に記載の入力装置。
【請求項6】
前記液晶表示パネルの前記スイッチシート側に配設された可撓性を有する導光板と、該導光板を端面より照明する光源とをさらに備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項1】
複数のドームスイッチを有するスイッチシートと、該スイッチシート上に配設された液晶表示パネルとを備え、
該液晶表示パネルは、可撓性を有する2枚の基板間に液晶層を挟持し、前記2枚の基板のそれぞれ前記液晶層と接しない外側の面に偏光板を備えると共に、前記ドームスイッチに対応する各表示領域ごとに仮想操作ボタンを表示する機能を有し、
該液晶表示パネルの前記各表示領域が視認側から押圧されることにより、前記スイッチシートに対応する前記ドームスイッチが押圧されてスイッチ動作させるように構成された入力装置であって、
前記各偏光板の少なくとも一方における前記各表示領域の周囲に相当する部分にスリットを形成したことを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記スリットが、前記各偏光板の両方の前記各表示領域の周囲に相当する部分の対応する位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記スリットが、前記偏光板の前記各表示領域に相当する部分を囲むように無端状にあるいは複数の部分に分割されて形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の入力装置。
【請求項4】
複数のドームスイッチを有するスイッチシートと、該スイッチシート上に配設された液晶表示パネルとを備え、
該液晶表示パネルは、可撓性を有する2枚の基板間に液晶層を挟持し、前記2枚の基板のそれぞれ前記液晶層と接しない外側の面に一対の偏光板を備えると共に、前記ドームスイッチに対応する各表示領域ごとに仮想操作ボタンを表示する機能を有し、
該液晶表示パネルの前記各表示領域が視認側から押圧されることにより、前記スイッチシートに対応する前記ドームスイッチが押圧されてスイッチ動作されるように構成された入力装置であって、
前記各偏光板の少なくとも一方は、前記各表示領域に相当する領域にのみ設けられたことを特徴とする入力装置。
【請求項5】
前記各偏光板の両方が、前記液晶表示パネルの前記各表示領域に相当する領域にのみ対向して設けられていることを特徴とする請求項4に記載の入力装置。
【請求項6】
前記液晶表示パネルの前記スイッチシート側に配設された可撓性を有する導光板と、該導光板を端面より照明する光源とをさらに備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の入力装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−218878(P2010−218878A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64176(P2009−64176)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]