説明

入力装置

【課題】操作子の2方向の移動操作に対する感触の付与並びに復帰を少ない部品点数で行わしめ得て、構造の簡素化を図り得るようにする。
【解決手段】磁石17と磁性体11とで、操作子2の、基台1と平行な方向の移動操作と基台1と交差する方向の移動操作とに対するそれぞれ感触の付与と復帰を行わしめ得るようにした。すなわち、操作子2の、基台1と平行な方向の移動操作と基台1と交差する方向の移動操作とに対する感触の付与並びに復帰を、共通の磁石17と共通の磁性体11という少ない部品点数で行わしめ得るものであり、もって構造の簡素化を図り得るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作子の2方向の移動操作に対する感触の付与並びに復帰をさせる構造を改良した入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の入力装置として、マルチファンクションスイッチが存在する。このマルチファンクションスイッチにおいては、操作子のスライドとプッシュという2方向の移動操作によって、そのそれぞれに応じた信号の入力がなされるようになっている。そして、その各操作時には操作した感触を付与する構造が各操作についてそれぞれ設けられ、又、各操作後には操作子並びにそれに連動した部品を操作前の位置に復帰させる構造が各操作についてそれぞれ設けられている。すなわち、操作子の2方向の移動操作に対する感触の付与並びに復帰をさせる構造が、操作子のその2方向の移動操作用でそれぞれに設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−294271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のものにおいては、操作子の2方向の移動操作に対する感触の付与並びに復帰をさせる構造が、操作子のその2方向の移動操作用でそれぞれに設けられていることにより、部品点数が多く、構造が複雑となっていた。
なお、上記特許文献1には、操作子が傾動操作されるもので、該操作子の傾動操作に対する感触の付与並びに復帰を一組の磁石によって行わしめる構造が記載されているが、しかし、それは操作子の傾動操作にのみ対するものであり、他の操作も記載されていなければ、それらの操作に対する感触の付与並びに復帰を行わしめる構造も記載されておらず、操作子の2方向の移動操作に対する要望が満たされない。
【0005】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、従ってその目的は、操作子の2方向の移動操作に対する感触の付与並びに復帰を少ない部品点数で行わしめ得て、構造の簡素化を図ることのできる入力装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の入力装置は、基台と、この基台に固定された磁気センサと、この磁気センサと対応する磁石と、この磁石を保持して、前記基台と平行な方向と前記基台と交差する方向とに移動操作可能に設けられた操作子と、前記基台に前記磁石と対応して固定された磁性体とを具備し、前記操作子の前記両方向の移動操作に伴う前記磁石の移動を前記磁気センサにより検知すると共に、その磁石の移動による前記磁性体に対する磁気吸引力の変化で前記操作子に感触を与え、且つ、その移動した磁石が磁性体に及ぼす磁気吸引力で前記操作子を原位置に復帰させるようにしたことを特徴とする(請求項1の発明)。
【発明の効果】
【0007】
上記手段によれば、磁石と磁性体とで、操作子の、基台と平行な方向の移動操作と基台と交差する方向の移動操作とに対するそれぞれ感触の付与と復帰を行わしめることができる。すなわち、操作子の、基台と平行な方向の移動操作と基台と交差する方向の移動操作とに対する感触の付与並びに復帰を、共通の磁石と共通の磁性体という少ない部品点数で行わしめ得るものであり、もって構造の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施例を示す全体の縦断面図
【図2】全体の外観斜視図
【図3】全体の分解斜視図
【図4】操作子をスライド操作した状態の全体の縦断面図
【図5】操作子の復帰の様子を示した関係部分の斜視図
【図6】操作子の復帰の様子を異なる形態で示した関係部分の斜視図
【図7】操作子をプッシュ操作した状態の関係部分の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施例(一実施形態)につき、図面を参照して説明する。
まず、図2には、入力装置全体の外観を示しており、基台1に操作子2を被せ、操作子2の基台1側とは反対側(反基台1側)に覆い盤3を装着している。
【0010】
基台1は、詳細には図1及び図3に示すように、有底の短円筒状を成すもので、内部を下段1a、中段1b、及び上段1cの3段に段付き形成しており、そのうちの中段1bに回路基板4を載置して複数のねじ5により取付け固定している。
回路基板4は、この場合、十字状を成しており(図3参照)、上記基台1の中段1bには、その十字状の回路基板4を固定前に位置決めする凸部6を形成している。
【0011】
回路基板4の反基台1側の面(図で上面)もしくは基台1側の面(図で下面)には、あらかじめ必要な配線パターン(図示せず)を設けており、反基台1側の面の中央部に磁気センサ7を実装して固定し、ひいては回路基板4を介して磁気センサ7を基台1に固定している。この磁気センサ7は、この場合、縦(X)、横(Y)、及び高さ(Z)の3軸方向に有効な3軸磁気センサであり、回路基板4を介して基台1に固定されている。
【0012】
基台1の上段1cには、第1のホルダ8を載置して複数のねじ9により取付け固定している。この第1のホルダ8は円盤状のもので、中央部の基台1側の面に凹部10を有しており(図1参照)、この凹部10に磁性体11を嵌め込んで固定している。磁性体11は、第1のホルダ8より充分に小さな円盤状のもので、金属製であり、基台1に第1のホルダ8を介して固定されている。
【0013】
第1のホルダ8の中央部周りには、複数(この場合、4個)の円形の孔12を形成しており、そのほか、第1のホルダ8の基台1側の面の中央部周りには、複数(この場合、4個)の突起13を形成している。
第1のホルダ8の基台1側には第2のホルダ14を配設している。この第2のホルダ14は第1のホルダ8より径小な円盤状のもので、中央部に孔15を有すると共に、その孔15に連ねて基台1側の面に凹部16を有しており、この凹部16に磁石17を嵌め込んで固定している。
【0014】
磁石17は、第2のホルダ14より充分に小さな円盤状のもので、基台1側と反基台1側とにN極とS極とを分けて着磁しており、基台1側で前記磁気センサ7と対応している。又、磁石17には反基台1側で前記磁性体11が対応しており、その結果、磁石17が磁性体11を磁気吸引し、第2のホルダ14を第1のホルダ8の前記突起13に当接させている。なお、磁石17に対して、磁性体11はその径を磁石17の径以下(磁性体11の径≦磁石17の径)としている。
【0015】
更に、第2のホルダ14の反基台1側の面の周囲部には、複数(この場合、4個)の支柱18を突設しており、上記磁性体11に対する磁石17の磁気吸引力によって、この支柱18を前記第1のホルダ8の孔12を貫通させて反基台1側に突出させている。なお、支柱18に対して、第1のホルダ8の孔12は充分に径大で、それらの間(支柱18の周囲)には間隙G1を有している。
【0016】
第2のホルダ14及び第1のホルダ8の反基台1側には前記操作子2を配設している。この操作子2は基台1と対称的に有蓋の短円筒状を成すもので、基台1より径大であり、基台1に被せて複数のねじ19により第2のホルダ14の上記支柱18に取付けている。又、その結果、操作子2には前記磁石17が第2のホルダ14を介して保持されている。更に、その取付状態では、操作子2は基台1の周囲外方と反基台1側とに離間しており、すなわち、操作子2と基台1との間には、基台1の周囲外方に間隙G2を有し、反基台1側に間隙G3を有している。なお、操作子2はねじ19を通した取付孔20のほかに、幾つかの孔21,22を有するが、それらを覆い隠すように操作子2の反基台1側の面には前記覆い盤3を装着している。
【0017】
次に、上記構成の入力装置の作用を述べる。
上記構成においては、操作子2は、第1のホルダ8の孔12と第2のホルダ14の支柱18との間の間隙G1と、基台1の周囲外方の操作子2との間の間隙G2の分、基台1と平行な方向に移動操作可能であり、基台1の反基台1側の操作子2との間の間隙G3の分、基台1と交差(特には直交)する方向に移動操作可能である。すなわち、操作子2は前記3軸方向に操作移動可能である。
【0018】
操作子2を基台1と平行な方向に移動(スライド)操作すると、第2のホルダ14が上記間隙G1及び間隙G2の寸法の範囲内で操作子2と移動をともにすることにより、図4に代表して示すように、磁石17が磁性体11から平行にずれる。これにより、磁性体11に及ぶ磁石17の磁気吸引力が弱まり、その弱まりを使用者が感じることで、操作子2の基台1と平行な方向の移動操作に対する感触が付与される。
又、このときには、磁石17が磁気センサ7からも同方向にずれ、磁石17から磁気センサ7を通る磁束が変化することにより、操作子2の基台1と平行な方向の移動操作が検出される。
【0019】
そして、その後、操作子2に加えた操作力を解除すれば、磁性体11に対する磁石17の磁気吸引力により、図5に示すように、磁石17が磁性体11と同心の原位置に戻り、それに第2のホルダ14から操作子2が伴われることにより、操作子2が操作前の原位置(図1状態)に復帰される。
【0020】
なお、上記構成においては、磁性体11の径を磁石17の径以下(磁性体11の径≦磁石17の径)としていることにより、磁石17は磁性体11と同心の位置が磁気吸引の安定位置であり、よって、上述のように磁石17は磁性体11と同心の位置に戻るが、磁性体11の径が磁石17の径を超えるもの(磁性体11の径>磁石17の径)であれば、図6に示すように、磁石17は磁性体11の端部側で磁気吸引が安定するようになるため、磁性体11と同心の位置には戻らない。よって、この場合、操作子2も操作前の原位置に復帰されないものであり、従って、操作子2を操作前の原位置に確実に復帰させるには、磁性体11の径は磁石17の径以下とする必要がある。
【0021】
次いで、操作子2を基台1と交差する方向に移動(プッシュ)操作すると、第2のホルダ14が前記間隙G3の寸法の範囲内で操作子2と移動をともにすることにより、図7に示すように、磁石17が磁性体11から離れ、磁気センサ7に近づく。これにより、磁性体11に及ぶ磁石17の磁気吸引力が弱まり、その弱まりを使用者が感じることで、操作子2の基台1と交差する方向の移動操作に対する感触が付与される。
又、このときには、磁石17が磁気センサ7に近づいたことで、磁石17から磁気センサ7を通る磁束が変化し、それによって操作子2の基台1と交差する方向の移動操作が検出される。
【0022】
そして、その後、操作子2に加えた操作力を解除すれば、磁性体11に対する磁石17の磁気吸引力により、磁石17が磁性体11と近接する原位置に戻り、それに第2のホルダ14から操作子2が伴われることにより、操作子2が操作前の原位置(図1状態)に復帰される。
【0023】
このように上記構成の入力装置によれば、磁石17と磁性体11とで、操作子2の、基台1と平行な方向の移動操作と基台1と交差する方向の移動操作とに対するそれぞれ感触の付与と復帰を行わしめることができる。すなわち、操作子2の、基台1と平行な方向の移動操作と基台1と交差する方向の移動操作とに対する感触の付与並びに復帰を、共通の磁石17と共通の磁性体11という少ない部品点数で行わしめ得るものであり、もって構造の簡素化を図ることができる。
【0024】
なお、本発明は上記し且つ図面に示した実施例にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。
【符号の説明】
【0025】
図面中、1は基台、2は操作子、7は磁気センサ、11は磁性体、17は磁石を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
この基台に固定された磁気センサと、
この磁気センサと対応する磁石と、
この磁石を保持して、前記基台と平行な方向と前記基台と交差する方向とに移動操作可能に設けられた操作子と、
前記基台に前記磁石と対応して固定された磁性体とを具備し、
前記操作子の前記両方向の移動操作に伴う前記磁石の移動を前記磁気センサにより検知すると共に、その磁石の移動による前記磁性体に対する磁気吸引力の変化で前記操作子に感触を与え、且つ、その移動した磁石が磁性体に及ぼす磁気吸引力で前記操作子を原位置に復帰させるようにしたことを特徴とする入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−129462(P2011−129462A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289076(P2009−289076)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】