説明

入歯診断システム

【課題】歯科医師に、患者に装着した入歯の噛み合わせの客観的な評価スコアを示し均一的な診断を容易にする入歯診断システムを提供する。
【解決手段】脳波計10により入歯を装着した患者の脳波を計測し、その脳波情報をケーブルで接続されたパソコン20へ送信する。パソコン20は、送られてきた脳波情報をサンプリングで統計的に導かれた判定指標27と比較することで評価スコアを計算し、画面に表示する。又、算出した評価スコアは、計測情報と共に診断履歴として記憶部22に記憶され、治療の時系列推移として確認することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科医における入歯の噛み合わせの均一的診断を可能とする入歯診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
入歯の噛み合わせについては、客観的な共通のものさしが無く、歯科医の主観的な判断に委ねるところが大きく、その結果、歯科医の知識や経験、技術による「ばらつき」があり、患者にとっては歯科医を選ぶことが最も重要で、且つ最も苦痛な事項となっている。又、噛み合わせの悪さは、体全体に機能に関係する自律神経や、臓器や組織の動きをつかさどる脊髄神経にまで悪影響を及ぼし、歯と関係ないようなところも不調をきたすことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−161652号
【特許文献2】特開平05−253248号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、歯科医の知識や経験、技術による入歯診断の「ばらつき」を減らし、客観的な定量的スコアでの評価が可能な入歯診断システムを提供することである。
本発明の他の目的は、噛み合わせの改善により、予防医学に寄与できる入歯診断システムを提供することである。
本発明のさらに他の目的は、入歯を必要とする患者から、「歯科医選び」や「治療結果に対する不安」等の苦痛を取り除く入歯診断システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る入歯診断システムは、脳波計から送られてきた脳波情報に基づいて診断を行う診断用処理装置を具備し、上記診断用処理装置は、脳波計からの脳波データを受信する受信手段と、受信した脳波データを診断パソコン内に取り込む取込手段と、取り込んだ脳波データに基づいて計算された計測値を表示する表示装置と、脳波計測時の事象(ノッチ)を入力する入力手段と、上記計測値を判定指標と比較することでスコアを計算する判定手段と、上記計測値と上記スコアを記憶する手段と、上記計測値をグラフ表示する表示手段と、上記計測値と上記スコアを印刷する印刷手段と、判定スコアの時系列推移を表示する表示手段と、上記計測値及び上記スコアからなる計測データを格納する記憶装置からなることを特徴とする。
【0006】
以下に、(発明を実施するための形態)で使用する符号を付して、課題を解決するための手段を記載する。
【0007】
本発明のパソコン(20)は、携帯型脳波計(10)で計測された脳波情報を受信する通信部(25)と、上記脳波のグラフや評価スコアを表示する表示部(24)と、上記脳波の計測時の事象(ノッチ)を入力する入力部(23)と、上記記録や判定指標、システムの設定値、および患者の基本情報を格納する記憶部(22)と、脳波情報から入歯の噛み合わせを判定する計測データ判定手段(34)を含む診断情報処理プログラム(30)を実行する演算部(21)と、を具備する。
【0008】
本発明のパソコン(20)が実行する診断情報処理プログラム(30)は、携帯型脳波計(10)内の脳波データを受信するプログラムを起動する受信プログラム起動手段(31)を備える。
【0009】
本発明のパソコン(20)が実行する診断情報処理プログラム(30)は、受信した脳波データを患者情報(26)と結びつけ、記憶部(22)内のデータベースに格納する計測データ取込手段(32)を備える。
【0010】
本発明のパソコン(20)が実行する診断情報処理プログラム(30)は、取得した脳波計測時の事象(ノッチ)入力をグラフ上で行うノッチ入力手段(33)を備える。
【0011】
本発明のパソコン(20)が実行する診断情報処理プログラム(30)は、取得した脳波データに基づいて計算された計測値と判定指標情報(27)とを比較しスコア計算を行う計測データ判定手段(34)を備える。
【0012】
本発明のパソコン(20)が実行する診断情報処理プログラム(30)は、上記計測値と上記スコアを記録する計測データ記憶手段(35)を備える。
【0013】
本発明のパソコン(20)が実行する診断情報処理プログラム(30)は、取得した計測データから5種類のグラフの表示を行う計測データ表示手段(36)を備える。
【0014】
本発明のパソコン(20)が実行する診断情報処理プログラム(30)は、取得した計測データから5種類のグラフと上記スコアの印刷を行う計測データ印刷手段(37)を備える。
【0015】
本発明のパソコン(20)が実行する診断情報処理プログラム(30)は、過去に取得した計測データから判定結果(評価スコア)の時系列推移グラフを表示する判定推移表示手段(38)を備える。
【0016】
本発明のパソコン(20)が実行する診断情報処理プログラム(30)は、診断情報処理プログラム(30)が使用する患者情報(26)、設定情報(29)の登録や変更を行うマスタ登録手段(39)を備える。
【0017】
本発明のパソコン(20)が記憶する患者情報(26)は、患者コード、患者氏名、誕生日、性別を含む。
【0018】
本発明のパソコン(20)が記憶する判定指標情報(27)は、脳の清明度と思考活動度の判定に利用する以下の項目の、各理想値と、その項目の重要度の割合(重み)を含む。
(脳の清明度):α%、β%ヒストグラムにおける以下の5項目
1α%(α波、β波を含む全体脳波に含まれるα波信号の割合)の最大値
2β%(α波、β波を含む全体脳波に含まれるβ波信号の割合)の最大値
3α%、β%の最大値の間隔
4α%の面積
5β%の面積
(思考活動度):β/αヒストグラムにおける以下の3項目
1β波/α波 の平均値
2β波/α波 の最大値
3β波/α波 の面積
これらの判定指標は、本発明用に実際にサンプリングした患者データを基に歯科医によって独自に導かれた指標であり、暗号化処理され記憶されている。
【0019】
本発明のパソコン(20)が記憶する計測情報(28)は、計測時毎の計測日時、計測した脳波データ、入力したノッチ情報、及び判定した評価スコアを含む。計測情報(28)は、患者情報と紐付けされた計測データとして、時系列的に記憶される。
【0020】
本発明のパソコン(20)が記憶する設定情報(29)は、本システムを使用する歯科医院情報、2つの評価スコアの及第点、スコア表示時の背景色、各グラフの色や線幅や線種、ノッチの項目情報を含む。
【発明の効果】
【0021】
以上詳記したように、本発明によれば、歯科医の知識や経験、技術による入歯診断の「ばらつき」が減り、客観的な定量的スコアでの評価が可能となり、患者に納得と安心の判断材料を、又、歯科医に治療完了の判断材料を示すことができる。さらに、噛み合わせの改善による予防医学への寄与も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明で使用される入歯診断システムの構成を示す。
【図2】図2は、入歯診断システムの機能ブロック図を示す。
【図3】図3は、入歯診断システムの操作フローを示す。
【図4】図4は、評価スコアの算出式を示す
【図5】図5は、評価スコアの算出フローを示す。
【図6】図6は、計測した脳波データを判定評価した結果の表示画面の例を示す。
【図7】図7は、計測した脳波データのグラフ表示画面の例を示す。
【図8】図8は、計測した脳波データのグラフと判定結果の印刷の例を示す。
【図9】図9は、今までに判定した評価スコアの時系列推移画面の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の入歯診断システムは、入歯を装着した患者の脳波を計測する携帯型脳波計10と、携帯型脳波計10と通信してその患者の脳波データを取得し、入歯の噛み合わせの診断とデータ処理を行う診断パソコン20と、その診断結果とデータ処理した結果を印刷するカラープリンタ40を含む。
【0024】
図1に本発明で使用される入歯診断システムの構成が示される。入歯診断システムは、携帯型脳波計10、診断パソコン20、カラープリンタ40を含む。携帯型脳波計10と診断パソコン20、カラープリンタ40と診断パソコン20はそれぞれケーブルで接続される。
【0025】
携帯型脳波計10は、脳波を計測できる携帯型脳波計である。数値化したα波とβ波の信号を診断パソコン20にケーブルを介して送信する。
【0026】
診断パソコン20は、演算部21、記憶部22、入力部23、表示部24、通信部25を具備する。演算部21は、CPUとメモリを具備する演算装置である。演算部21では、受信プログラム起動手段31、計測データ取込手段32、ノッチ入力手段33、計測データ判定手段34、計測データ記憶手段35、計測データ表示手段36、計測データ印刷手段37、判定推移表示手段38、マスタ登録手段39を含む診断情報処理プログラム30が実行される。
【0027】
受信プログラム起動手段31は、携帯型脳波計内の脳波データを受信するプログラムを起動する。起動された受信プログラムが正常に終了した後は、診断情報処理プログラム30に自動的に戻る。計測データ取込手段32は、受信した脳波データを患者情報26と結びつけ、記憶部22内のデータベースに格納する。ノッチ入力手段33は、グラフ化された計測データ上で、計測時に影響を与えた事象(ノッチ)をグラフ上でマウスによりマークし、その事象内容を入力することができる。入力された事象の有り無しはグラフ上に罫線として表示され、その罫線にマウスポインタを合わせることで、入力した事象内容が表示される。計測データ判定手段34は、受信した脳波データに基づいて計算した値を予め設定されている判定指標情報27とを比較し、評価スコアの計算を行う。評価スコアは、前頭前野の脳活動の活発さが現れるα波及びβ波の発生度合い分布のグラフ形状(α%,β%ヒストグラム)から判定する「脳の清明度」と、前頭前野の行動と意識活動に関係する思考活動値の発生分布のグラフ形状(β/αヒストグラム)から判定する「思考活動度」の2つである。「脳の清明度」については、一般的にα波及びβ波のグラフがきれいな山型で、左右に明確に分かれている時に前頭前野の脳活動が高いといわれる。又、「思考活動度」については、一般的にグラフの頂点が右にあるほど脳の活性度が高いといわれる。従って、2つの評価スコアは、以下に記された項目について、脳波計から送られてきた脳波から計算した各項目の測定値と、診断パソコン内に予め設定されている各項目の理想値との乖離率に、同じく診断パソコン内に予め設定されている各項目の重要度の割合(重み)を乗じて導き出される各項目のスコアを、脳の清明度のスコアとして5項目分、思考活動度のスコアとして3項目分集計した値とする。
A(脳の清明度):α%,β%ヒストグラムにおける以下の5項目
1α%(α波、β波を含む全体脳波に含まれるα波信号の割合)の最大値
2β%(α波、β波を含む全体脳波に含まれるβ波信号の割合)の最大値
3α%、β%の最大値の間隔
4α%の面積
5β%の面積
B(思考活動度):β/αヒストグラムにおける以下の3項目
1β波/α波 の平均値
2β波/α波 の最大値
3β波/α波 の面積
乖離率は、1−(│理想値 − 測定値│/ 理想値 )で計算する。すなわち、理想値と計測値との差異の絶対値を理想値で除し、1から減する。例えば、理想値が10で測定値が8の場合は、1−(2÷10)で0.8となる。各項目のスコアは、乖離率× 項目の重み で計算する。脳の清明度、思考活動度ともに項目の重みの合計は100となるように設定されている。上記例で、項目の重みが60の場合のスコアは、0.8×60で48点となる。前記計算式に示されるように、スコアは理想値に近いほど高く、理想値からかけ離れるほど低くなる。但し、測定値が理想値と2倍以上にかけ離れる場合は、その項目のスコアは0(ゼロ)とする。又、項目の重みが大きいほど高くなり、項目の重みが小さい項目は、理想値に近くても低くなる。図4に評価スコアの計算式が示される。評価項目毎の理想値と重みの判定指標iは、本発明用に実際にサンプリングした患者データを基に歯科医によって独自に導かれた指標であり、診断パソコン内に判定指標情報(27)として暗号化処理され予め記憶されている。計測値Mは、脳波計から送られてきた脳波で計算した評価項目毎の計測値である。全部で前記8つの評価項目の値で、脳の清明度Aと思考活動度Bのスコアを算出する。Asは脳の清明度のスコアを導く為の5つの評価項目のスコアであり、それぞれ前記計算式で各スコア(S1〜S5)が算出され、これらS1〜S5を集計した値が脳の清明度のスコアAである。又、Bsは思考活動度のスコアを導く為の3つの評価項目のスコアであり、それぞれ前記計算式で各スコア(S6〜S8)が算出され、これらS6〜S8を集計した値が思考活動度のスコアBである。図5に評価スコアの算出フローが示される。F1からF6のステップは脳の清明度のスコアを算出するフローである。先ずα%の最大値のスコアを(F1)、β%の最大値のスコアを(F2)、α%とβ%の最大値間隔のスコアを(F3)、α%の面積のスコアを(F4)、β%の面積のスコアを(F5)それぞれ上記計算式で算出する。この際、測定値が理想値と2倍以上にかけ離れる場合は、その項目のスコアは0(ゼロ)として計算する。5つのスコアが全て算出されたら、それら5つのスコアを加算した値が脳の清明度のスコアである(F6)。又、F7からF10のステップが思考活動度のスコアを算出するフローである。先ずβ波/α波の平均値のスコアを(F7)、β波/α波 の最大値のスコアを(F8)、β波/α波の面積のスコアを(F9)それぞれ上記計算式で算出する。この際、測定値が理想値と2倍以上にかけ離れる場合は、その項目のスコアは0(ゼロ)として計算する。3つのスコアが全て算出されたら、それら3つのスコアを加算した値が思考活動度のスコアである(F10)。算出されたスコアについては、脳の清明度を表すα%,β%ヒストグラム、および思考活動度を表すβ/αヒストグラムと共に画面に表示される。図6にその表示画面の一例が示される。画面は、脳の清明度を表すα%,β%ヒストグラムと、思考活動度を表すβ/αヒストグラムの2種類があり、それぞれに、その数値とグラフ、算出されたスコア、前記各評価項目のスコア明細が表示される。前記各評価項目のスコアについては判り易いように図解で表示される。評価スコアの背景色を設定情報29のスコア範囲毎の色設定で変えることにより、治療合否を判りやすく表示できる。例えば、50ポイント未満は赤、50〜70ポイント未満は黄色、70ポイント以上は及第点として緑とかである。2つの評価画面の切り替えは画面上のボタンをクリックすることで行う。この患者の以前の計測情報が登録されている場合は、前データのボタンをクリックすることで前回の判定結果画面に画面表示を切り替えることができる。又、誤って取り込んだ計測情報は、この画面の削除ボタンによりデータベースから削除する事ができる。さらに、判定で使用される判定指標情報27の内容(理想値又は重み)が修正された場合は、再読込ボタンにより以前の計測データの評価スコアを最新の判定指標で再計算することも可能である。計測データ表示手段36は、取得した計測データから5種類のグラフの表示を行う。5種類のグラフとは、S波,α波,β波の時系列数値グラフ、α波,β波の時系列発生率グラフ、α波,β波の発生分布グラフ(α%,β%ヒストグラム)、思考活動値の時系列数値グラフ、思考活動値の発生分布グラフ(β/αヒストグラム)である。図7にその表示画面の一例が示される。S波とはα波,β波を含む全体脳波信号である。各グラフの切り替えは画面上のボタンをクリックする事で行う。グラフ表示と共にその数値も表示される。又、S波,α波,β波の時系列数値グラフ、α波,β波の時系列発生率グラフ、思考活動値の時系列数値グラフにおいては、範囲を指定しての拡大表示を可能とする。具体的には、範囲指定ボタンをクリック後にグラフ上をドラッグアンドドロップする事で拡大表示の範囲を指定し、再度範囲指定ボタンをクリックすると指定した範囲が拡大表示される。再度全体表示に戻す場合は再読込ボタンをクリックする。さらに、この患者の別の計測情報が登録されている場合は、前データ又は次データのボタンをクリックすることで前回又は次回の計測データ表示に画面表示を切り替えることができる。計測データ印刷手段37は、患者情報と共に、取得した計測データから上記5種類のグラフと判定結果(スコア)の印刷をカラープリンタ40で行う手段である。図8にその印刷例が示される。A4用紙一枚に集約して印刷することでカルテと一緒に保管することができる。判定推移表示手段38は、今までに記憶した計測データから判定結果(スコア)の時系列推移グラフを表示する機能である。推移グラフは上記A(脳の清明度)と上記B(思考活動度)の2つのスコアの推移である。図9にその表示画面の一例が示される。2つのグラフの切り替えは画面上のボタンをクリックすることで行う。グラフ表示と共にその数値も表示される。又、グラフ上には治療合否判断の参考として設定情報29で設定された及第点のラインも表示される。歯科医はこの及第ラインに到達するまで入歯の調整を行い、このラインに到達した時点で治療はひとまず終了と判断する。さらに、計測日を選択し表示ボタンをクリックすることで、その計測データの前記5種類のグラフや各評価項目のスコアを表示することができる。表示範囲(計測日時や表示計測数)を画面から指定して表示の範囲を変更する事もできる。マスタ登録手段39は、診断情報処理プログラム30が使用する患者情報26、設定情報29の登録や変更を行う機能である。
【0028】
記憶部22は、ハードディスクに例示される記憶装置である。記憶部22は、診断情報処理プログラム30により参照される患者情報26、判定指標情報27、設定情報29、及び診断情報処理プログラム30により作成された計測情報28が記憶される。
【0029】
本発明のパソコン20が記憶する患者情報26は、患者コード、患者氏名、誕生日、性別を含む。
【0030】
本発明のパソコン20が記憶する判定指標情報27は、脳の清明度と思考活動度の判定に利用する以下の項目の、その項目の重要度の割合(重み)を含む。
(脳の清明度):α%、β%ヒストグラムにおける以下の5項目
1α%(α波、β波を含む全体脳波に含まれるα波信号の割合)の最大値
2β%(α波、β波を含む全体脳波に含まれるβ波信号の割合)の最大値
3α%、β%の最大値の間隔
4α%の面積
5β%の面積
(思考活動度):β/αヒストグラムにおける以下の3項目
1β波/α波 の平均値
2β波/α波 の最大値
3β波/α波 の面積
これらの判定指標は、本発明用に実際にサンプリングした患者データを基に歯科医によって独自に導かれた指標であり、暗号化処理され記憶されている。
【0031】
本発明のパソコン20が記憶する計測情報28は、計測時毎の計測日時、計測した脳波データ、入力したノッチ情報、及び判定した評価スコアを含む。計測情報28は、患者情報と紐付けされた計測データとして、時系列的に記憶される。
【0032】
本発明のパソコン20が記憶する設定情報29は、本システムを使用する歯科医院情報、2つの評価スコアの及第点、スコア表示時の背景色、各グラフの色や線幅や線種、ノッチの項目情報を含む。
【0033】
入力部23は、キーボード、マウスもしくはパネルタッチによる入力装置に例示される。表示部24は、ディスプレイ装置に例示される。入力部23及び表示部24は、診断パソコン20のオペレータが診断パソコン20を操作する場合も利用する。通信部25は、ケーブルを介して携帯型脳波計10と脳波データの送受信を行う通信装置である。
【0034】
カラープリンタ40は、インクジェットプリンタに例示される印刷装置である。
【0035】
図2に上記診断情報処理プログラム30の機能ブロック図が示される。脳波計50から送信される脳波データは脳波データ受信手段51で受信され、計測データ取込手段52に渡される。計測データ取込手段52は、脳波データとマスタ登録手段59で登録された患者情報とを結びつけデータベースに格納する。格納された計測データは計測データ判定手段54により、予め記憶されている判定指標情報60と比較されスコアが算出される。スコアという形で定量的に判定された判定情報は、ノッチ入力手段53で入力された計測時に影響を与えた事象(ノッチ)とともに計測データ記憶手段55でデータベースに記録される。記憶された計測データ及び判定情報から、計測データ表示手段56で5種類のグラフとスコアが表示装置上に表示される。又、記憶された計測データ及び判定情報から、計測データ印刷手段57で5種類のグラフの表示とスコアが印刷装置上に印刷される。さらに、今までに記憶した計測データと判定情報からスコアの時系列推移グラフが判定推移表示手段58で表示装置上に表示される。
【0036】
次に、図3を参照して入歯診断システムの一形態のフローが説明される。
図3に示されるように入歯診断システムの機能フェーズは4つに分けられる。脳波計からの計測データ取得(フェーズA)、計測データの判定評価(フェーズB)、計測時の事象入力(フェーズC)、計測データ及びスコアの表示/印刷(フェーズD)である。通常は、フェーズAからフェーズB、フェーズC、フェーズDの順に実施されるが、フェーズDについては記憶された計測データからの画面表示と印刷フェーズであるので、随時、見たい又は印刷したい患者を選択して実施する事ができる。又、フェーズCについては計測時に影響を与えた事象(ノッチ)があった場合のみ実施する。さらに、フェーズBで使用される判定指標情報27の内容(理想値又は重み)が修正された場合は、フェーズBを再実施する事により評価スコアの再計算を行うことも可能である。
【0037】
先ずオペレータは診断パソコン20で診断情報処理プログラム30を起動する。診断情報処理プログラム30が起動されると初期メニューが表示される。初期メニューには、患者を選択する欄と、脳波データ受信手段31、計測データ判定手段34、計測データ表示手段36、判定推移手段38、マスタ登録手段39の各機能ボタンが一覧として表示されている。計測データ判定手段34、計測データ表示手段36、判定推移手段38については、初期メニュー以外からでもそれぞれの画面間で自由に遷移する事もできる。計測データ印刷手段37については、計測データ表示手段36の画面より印刷ボタンで起動する。
【0038】
次にオペレータは、今から処理する患者を初期メニュー上で選択する。既に患者情報26に登録されている患者についてはその患者コードを入力する。患者コードが分からない患者については検索ボタンをクリック後、患者名で検索して選択する。初めての患者については、先にマスタ登録手段39を初期メニューから起動し、患者マスタ登録後に選択する。
【0039】
患者の選択が終わったら初期メニューより脳波データ受信のボタンをクリックし受信プログラムを起動する(A1)。受信プログラムが起動されると受信メニューが表示される。受信メニュー内の受信ボタンをクリックすることで脳波計と通信を行い、脳波計から送信される全ての脳波データを受信し、記憶部22に一時的に仮登録する(A2)。脳波計には測定した脳波データが複数件蓄積されている事もある。全ての脳波データの受信が終了したら受信メニューの終了ボタンをクリックして受信プログラムを終了する。
【0040】
受信が正常に終了した場合は自動的に計測データ取込手段が起動され、取込画面が表示される。受信が失敗した場合は取込画面が表示されず初期メニューに戻るので、オペレータは受信プログラムの起動(A1)からやり直す。取込画面には今回受信した脳波データの一覧が表示され、オペレータは今回診断したい脳波データを選択し取込開始ボタンをクリックすることで、計測情報28として記憶部22に登録される(A3)。複数の脳波データを取り込みたい場合は、複数選択する事も、さらに一括選択も可能である。
【0041】
取込が終了すると今回取り込まれた脳波データが自動的に評価判定され、その結果が画面に表示される(B1)。この判定手段については、図4及び図5の説明で前記したとおりである。図6に判定結果画面の例が示される。画面は、脳の清明度を表すα%,β%ヒストグラムと、思考活動度を表すβ/αヒストグラムの2種類があり、それぞれに、その数値とグラフ、前記計算式で算出された評価スコア、各評価項目のスコア明細が表示される。各評価項目のスコアについては判り易いように図解で表示される。評価スコアの背景色を設定情報29のスコア範囲毎の色設定で変えることにより、治療合否を判りやすく表示できる。例えば、50ポイント未満は赤、50〜70ポイント未満は黄色、70ポイント以上は及第点として緑とかである。2つの評価画面の切り替えは画面上のボタンをクリックすることで行う。この患者の以前の計測情報が登録されている場合は、前データのボタンをクリックすることで前回の判定結果画面に画面表示を切り替えることができる。又、誤って取り込んだ計測情報は、この画面の削除ボタンによりデータベースから削除する事ができる。さらに、判定で使用される判定指標情報27の内容(理想値又は重み)が修正された場合は、再読込ボタンにより以前の計測データの評価スコアを最新の判定指標で再計算することも可能である。
【0042】
脳波計測時に影響を与えた事象(ノッチ)は、S波,α波,β波の時系列数値グラフ上でマウスにより事象発生時刻座標をマークしその事象内容を入力する(C1)。このフェーズについては計測時に影響を与えた事象があった場合のみ実施する。具体的には、グラフの任意の箇所をマウスでクリックすると、クリックされた時刻に最も近い脳波データが選択され、その位置に罫線が表示されると同時にノッチ設定画面が開く。ノッチの設定はノッチ設定画面の選択ボックスから設定内容を選択し、設定ボタンをクリックすることで行う。設定可能な事象項目はノッチマスタとして設定情報29に登録されている。例えば、「接触した」とか「動いた」とか「大きな音がした」とかである。入力された事象の有り無しはグラフ上に罫線として表示され、その罫線にマウスポインタを合わせることで入力した事象内容が確認できる。設定したノッチの削除はノッチ設定画面を開いて削除ボタンをクリックする事で行う。又、個別に削除をしないで全解除ボタンをクリックする事で一括で全てのノッチを削除する事もできる。この事象は直接には評価スコアに影響を与えないが、異常な脳波の乱れの原因として歯科医における診断の参考となる。
【0043】
計測データは、オペレータの指示により、グラフとして画面表示したり、カルテ添付用に印刷したり、今までの治療推移としての評価スコアの時系列推移をグラフ表示したりする事ができる(フェーズD)。このフェーズについては記憶された計測データからの画面表示と印刷フェーズであるので、随時、見たい又は印刷したい患者を選択して実施する事ができる。
【0044】
初期メニューの計測データ表示ボタンをクリックすると、計測データはグラフとして処理され、5種類のグラフとして表示される(D1)。5種類のグラフとは、S波,α波,β波の時系列数値グラフ、α波,β波の時系列発生率グラフ、α波,β波の発生分布グラフ(α%,β%ヒストグラム)、思考活動値の時系列数値グラフ、思考活動値の発生分布グラフ(β/αヒストグラム)である。図7にその表示画面の一例が示される。各グラフの切り替えは画面上のボタンをクリックする事で行う。グラフ表示と共にその数値も表示される。又、S波,α波,β波の時系列数値グラフ、α波,β波の時系列発生率グラフ、思考活動値の時系列数値グラフにおいては、範囲を指定しての拡大表示を可能とする。具体的には、範囲指定ボタンをクリック後にグラフ上をドラッグアンドドロップする事で拡大表示の範囲を指定し、再度範囲指定ボタンをクリックすると指定した範囲が拡大表示される。再度全体表示に戻す場合は再読込ボタンをクリックする。さらに、この患者の別の計測情報が登録されている場合は、前データ又は次データのボタンをクリックすることで前回又は次回の計測データ表示に画面表示を切り替えることができる。
【0045】
初期メニューの判定推移ボタンをクリックすると、今までに記憶されている計測情報から判定結果(評価スコア)の時系列推移グラフが表示される(D2)。推移グラフは、脳の清明度を表すα%,β%ヒストグラムと思考活動度を表すβ/αヒストグラムの2つの評価スコアの推移である。図9にその表示画面の一例が示される。2つのグラフの切り替えは画面上のボタンをクリックすることで行う。グラフ表示と共にその数値も表示される。又、グラフ上には治療合否判断の参考として設定情報(29)で設定された及第点のラインも表示される。歯科医はこの及第ラインに到達するまで入歯の調整を行い、このラインに到達した時点で治療はひとまず終了と判断する。さらに、計測日を選択し表示ボタンをクリックすることで、その計測データの前記5種類のグラフや各評価項目のスコアを表示することができる。表示範囲(計測日時や表示計測数)を画面から指定して表示の範囲を変更する事もできる。
【0046】
計測データ表示画面で印刷ボタンをクリックすると、患者情報と共に、表示されている計測データの前記5種類のグラフと判定結果(2つの評価スコア)の印刷がカラープリンタ40から印刷される(D3)。図8にその印刷例が示される。A4用紙一枚に集約して印刷されるのでカルテと一緒に保管することができる。

【符号の説明】
【0047】
10 携帯型脳波計
20 診断パソコン
21 演算部
22 記憶部
23 入力部
24 表示部
25 通信部
26 患者情報
27 判定指標情報
28 計測情報
29 設定情報
30 診断情報処理プログラム
31 受信プログラム起動手段
32 計測データ取込手段
33 ノッチ入力手段
34 計測データ判定手段
35 計測データ記憶手段
36 計測データ表示手段
37 計測データ印刷手段
38 判定推移表示手段
39 マスタ登録手段
40 カラープリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入歯を装着した患者の脳波情報に基づいて入歯の噛み合わせの診断を行う診断用処理装置を具備し、上記脳波情報を基に計算した測定値を客観的な判定指標と比較することで入歯の噛み合わせの評価判定手段を行う診断パソコンを具備する、入歯診断システム。
【請求項2】
前記判定手段は、前頭前野の脳活動の活発さが現れるα波及びβ波の発生度合い分布のグラフ形状から判定する脳の清明度と、前頭前野の行動と意識活動に関係する思考活動値の発生分布のグラフ形状から判定する思考活動度の2つのスコアでの判定を特徴とする、「請求項1」の入歯診断システム。
【請求項3】
前記判定手段は、脳の清明度として、α%(α波、β波を含む全体脳波に含まれるα波の割合)の最大値、β%(α波、β波を含む全体脳波に含まれるβ波の割合)の最大値、α%とβ%の最大値の間隔、α%の面積、β%の面積の5項目、思考活動度として、(β波/α波)の平均値、(β波/α波)の最大値、(β波/α波)の面積の3項目について、脳波計から送られてきた脳波を基に計算した各項目の計算値と、診断パソコン内に予め設定されている各項目の判定指標との乖離率に、同じく診断パソコン内に予め設定されているその項目の重要度の割合(重み)を乗じて導き出される各項目のスコアを集計し、診断パソコン内に予め設定されている脳の清明度と思考活動度の各及第スコアとの比較で判定することを特徴とする、「請求項1」の入歯診断システム。
【請求項4】
前記診断用処理装置は、脳波計からの脳波データを受信する受信手段と、受信した脳波データを診断パソコン内に取り込む取込手段と、取り込んだ脳波データをグラフ表示する表示装置と、脳波計測時の事象(ノッチ)を入力する入力手段と、脳波データを基に計算した前記各項目の測定値を判定指標と比較することでスコアを計算する判定手段と、脳波データと算出スコアをデータベースに記憶する手段と、脳波データと算出スコアを印刷する印刷手段と、スコアの時系列推移を表示する表示手段と、脳波データ及び算出スコアからなる計測データを格納する記憶装置からなることを特徴とする、「請求項1」の入歯診断システム。
【請求項5】
コンピュータを、脳波計からの脳波データを受信する受信手段と、受信した脳波データに基づいて計算した値を予め設定されている判定指標と比較することで算出する入歯の噛み合わせのスコアによる判定手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−167271(P2011−167271A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32117(P2010−32117)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(309038834)ソフトフィールド株式会社 (1)
【Fターム(参考)】