説明

全光ネットワーク運用管理装置

【課題】全光ネットワークにおいて、光パスの信号光特性情報を収集することが可能な全光ネットワーク運用管理装置を提供する。
【解決手段】全光ネットワーク運用管理装置は、光パス経路情報から監視する光パス経路上の光ノードおよび光パス波長を選択し、光ノードに具備された信号光ビットレートおよび信号光変調方式に依存しない光信号品質監視装置に波長を設定し、光信号品質監視装置に前記波長の信号光特性情報の測定を指示し、測定した前記波長の信号光特性情報を受信し、データベースに保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全光ネットワークにおいて、光パスの信号光特性情報を収集する全光ネットワーク運用管理装置に関する。なお、全光ネットワークとは、各ノードにおいて、光電気変換処理を介さず光のまま経路切り替えを行う光ネットワークを示す。
【背景技術】
【0002】
従来の光ネットワークでは、各ノードにおいて信号光を光電気変換処理して、品質情報(ビット誤り率)を読み取る方式を用いて、光パス品質監視を行っている。また、全光ネットワークにおける波長ごとの品質管理や障害切り分けの機能を経済的に実現可能にする装置が特許文献1に記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2008−166935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、全光ネットワークでは、各ノードにおいて、光電気変換処理を介さず光のまま経路切り替えを行うため、従来の光電気変換処理に基づいた光パス品質監視手法を適用することが困難である。
【0005】
したがって、本発明は、信号光ビットレートおよび信号光変調方式に依存しない光信号品質監視装置を用いることによって、全光ネットワークにおいて、光パスの信号光特性情報を収集することが可能な全光ネットワーク運用管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するため本発明による全光ネットワーク運用管理装置は、全光ネットワークの光パス経路情報を保持する手段と、前記光パス経路情報から、監視する光パス経路上の光ノードおよび監視する光パス波長を選択する手段と、前記選択された光ノードに具備された信号光ビットレートおよび信号光変調方式に依存しない光信号品質監視装置に前記波長を設定する手段と、前記光信号品質監視装置に前記波長の信号光特性情報の測定を指示する手段と、前記光信号品質監視装置が測定した前記波長の信号光特性情報を受信する手段と、前記受信した信号光特性情報を保存する手段とを備えている。
【0007】
また、前記監視する光パスは、新規に生成された光パス、障害が発生した光パスまたは品質管理を要求されたパスであることも好ましい。
【0008】
また、全光ネットワークのトポロジー情報を保持する手段と、前記信号光特性情報と前記光パス経路情報を対応付ける手段と、前記トポロジー情報および前記対応付けから、前記信号光特性情報が劣化した光ノードと劣化していない光ノード間の光パス経路を求める手段とをさらに備え、前記光パス経路に障害が発生したと判断することも好ましい。
【0009】
また、前記光パス経路に障害が発生したと判断した場合、障害が発生した光パス経路の切り替えを実行する手段をさらに備えることも好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、信号光ビットレートおよび信号光変調方式に依存しない光信号品質監視装置を用いて全光ネットワークから信号光特性情報を収集することにより、全光ネットワークにおいても従来の光電気変換処理に基づいた信号光品質監視と同等の品質監視を行うことが可能となる。さらに、光パス情報と信号光特性情報をマッピングすることで、光パス品質の監視、およびリンク障害の検出・障害区間の特定を行う仕組みを提供することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を実施するための最良の実施形態について、以下では図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
図1は、本実施形態における全光ネットワークの概要を示す。全光ネットワークは、全光ネットワーク運用管理装置1、光信号品質監視装置2、光ノード3、および光送受信装置4を備えている。
【0013】
全光ネットワーク運用管理装置1は、全光ネットワークを管理するための装置であり、全光ネットワーク構成情報を保持している。本構成情報は、全光ネットワークのトポロジー情報、および光信号が経由するポート情報を含む光パス経路情報を含む。
【0014】
光信号品質監視装置2は、信号光ビットレートおよびフォーマット(信号光変調方式)に依存せずに信号光特性情報を収集する装置である。光ノード3に具備され、該光ノード3に伝送される光パスの信号光特性を監視し、信号光特性情報を測定する。なお、光信号品質監視装置2は、波長選択スイッチを内部に有しており、該波長選択スイッチは、外部から監視波長を設定されることにより複数方向からのWDM信号から監視波長のみを通過させる。このため、光信号品質監視装置2は、監視が必要な波長の信号光特性情報のみを収集することができる。
【0015】
本実施形態において、光信号品質監視装置2は、信号光特性情報として、信号光品質(Q値)を測定する。該信号光品質は信号光のアイ波形を用いて測定される。具体的には、位相変調信号光の場合、光信号品質監視装置2は監視対象光信号を2分岐し、一方の光信号に0からπの範囲で周期的に変化する位相シフトを与えた後、2つの光信号を合波して信号光を復調した後に光信号の品質を測定する。このとき、アイ波形のアイ開口が最大の時を最適化の基準とする。位相変調信号光の復調では、2分岐間の光路に1シンボル間隔の遅延を与えるが、ここでは、完全に復調することが目的ではなく波形品質を監視し、その品質を定量化することが目的であるため、遅延量は1シンボル間隔の整数倍とすることができる。つまり、シンボル間隔が互いに整数倍の関係にある光信号であれば、これら光信号のシンボル間隔の最小公倍数に、遅延量を設定することで光信号の監視が可能である。また、振幅偏移変調信号光の場合、上記の信号光復調部分を光スイッチによりバイパスすることで、アイ波形を測定する。光信号の品質は、光信号のアイ波形から求められた品質指標Q値を求める(参考文献:ITU-T 勧告O.201,"Q-factor test equipment to estimate the transmission performance of optical channels")。Q値の測定は、上記合波光信号を電気信号に変換し波形観測を行い、続いて、この電気信号をサンプリングし、サンプリングした振幅の最大値I(1レベル)と最小値I(0レベル)の差、つまりアイ開口(I−I)から、計測に使用する期間を決定し、決定した期間における振幅の最大値の分布(σ)と、最小値の分布(σ)からQ値を
Q=(I−I)/(σ+σ
により求める。
【0016】
光ノード3は、光パスの経路を切り替えるスイッチであり、電気的処理を介さず経路切り替えを行う。光送受信装置4は、光信号を送受信するための装置である。
【0017】
光送受信装置4間に、図1の矢印で示す光パスが生成された場合、全光ネットワーク運用管理装置1は、光ネットワーク制御・管理網の制御回線を通して、光信号品質監視装置2に生成された光パスの波長の品質測定を要求する。この要求は、光パスの経路にある光ノード3が具備する光信号品質監視装置2に対して行われる。なお、この品質測定要求は、光パス生成時だけでなく、障害発生時およびユーザから光パスの品質管理を要求された時にも行われる。
【0018】
品質測定要求における全光ネットワーク運用管理装置1と光信号品質監視装置2との情報のやり取りおよび各装置の動作は、下記で詳細に説明される。
【0019】
図2は、本発明による全光ネットワーク運用管理装置と光信号品質監視装置間の情報のやり取りを示す。
【0020】
情報のやり取りは、全光ネットワーク運用管理装置1から光信号品質監視装置2に対して、監視対象となる光パスを指定する「監視光パス情報」、監視対象の光パス品質の測定を指示する「測定情報」、および光信号品質監視装置2から全光ネットワーク運用管理装置1に対して、信号光品質測定結果を返却する「品質情報」により構成される。
【0021】
監視対象となる光パスの波長やポート情報を有する「監視光パス情報」を受信した光信号品質監視装置2は、監視対象となる光パスの信号光品質を測定するために、測定対象となる信号光を選択する。次に「測定情報」を受信した光信号品質監視装置2は、「測定情報」が有するパラメータに従って被測定信号光の品質を測定する。測定後、被測定信号光の品質情報を「品質情報」に載せて全光ネットワーク運用管理装置1に返す。
【0022】
図3は、全光ネットワーク運用管理装置の光パス品質測定時のフローを示す。
【0023】
S1:全光ネットワーク運用管理装置1は、光パスが生成された時、光パスに障害が発生した時、またはユーザが要求した時に信号光の品質測定を開始する。
【0024】
S2:全光ネットワーク運用管理装置1は、全光ネットワーク運用管理装置1が有する光パス経路情報を基に、測定対象信号選択のための、ポートおよび波長情報を光信号品質監視装置2に送信する。
【0025】
S3:光信号品質監視装置2は、測定対象波長の選択を波長選択スイッチにより行う。なお、波長の選択には、光フィルタや波長ブロッカ等を用いることも可能である(参考文献:例えば、Jonathan Homa他、"ROADM Architecture and Their Enabling WSS technology," IEEE Communication magazine, June 2008, pp.150-154など)。
【0026】
S4:全光ネットワーク運用管理装置1は、同期測定もしくは非同期測定の選択を行う。測定対象の信号光ボーレート(Baud rate)が予め分かっている場合は、同期測定を選択する。信号光ボーレートが分からない場合は、非同期測定を選択する。この選択に基づき、信号光品質測定のためのパラメータを設定する。同期測定では、測定対象となる信号の時間軸を設定する。非同期測定では、時間軸を設定しない。
【0027】
S5:同期測定の場合、全光ネットワーク運用管理装置1は、測定対象信号のボーレート情報(測定情報)を光信号品質監視装置2に送信する。なお、非同期測定の場合は、ボーレートの送信は不要である。
【0028】
S6:光信号品質監視装置2は、S5の測定情報に従いボーレートを設定する。これにより、測定対象信号の時間軸を決めることができる。
【0029】
S7:全光ネットワーク運用管理装置1は光信号品質監視装置2に最適化を指示する。
【0030】
S8:光信号品質監視装置2は、光信号品質監視装置2の状態を最適化する。なお、最適化とは、最大品質を測定できる状態に光信号品質監視装置2を設定することを示す。また、光信号が位相偏移(PSK:Phase Shift Keying)変調方式の時、最適化が必要であるが、振幅偏移(ASK:Amplitude Shift Keying)変調方式、つまり、オンオフキーイング(OOK:On Off Keying)の時、最適化は不要である。
【0031】
S9:光信号品質監視装置2は、最適化が終了したとき、最適化終了メッセージを全光ネットワーク運用管理装置1に送信する。
【0032】
S10:全光ネットワーク運用管理装置1は、光信号品質監視装置2の最適化が終了したことを確認する。
【0033】
S11:全光ネットワーク運用管理装置1は、信号光品質の測定を開始するため、信号光の品質測定開始のメッセージを光信号品質監視装置2に送信する。
【0034】
S12:光信号品質監視装置2は、信号光品質(Q値)の測定を実行する。
【0035】
S13:光信号品質監視装置2は、測定により得られた信号光品質(Q値)を取得し、全光ネットワーク運用管理装置1に送る。
【0036】
S14:全光ネットワーク運用管理装置1は、光信号品質監視装置2から送信された信号光品質(Q値)を、全光ネットワーク運用管理装置1のデータベースに保存する。
【0037】
S15:全光ネットワーク運用管理装置1は、信号光品質(Q値)取得後、1つの光信号品質監視装置2の測定を終了する。
【0038】
S16:光信号品質監視装置2は、測定対象の波長の選択を解除する。
【0039】
S17:全光ネットワーク運用管理装置1は、最終測定点であるかどうかを確認する。測定終了後、最終測定点でない場合は、光パス経路情報に従い、次ポートの測定(S2)に移る。最終測定点の場合は、測定を終了する。
【0040】
上記のような手順により、全光ネットワークの光ノードや中継器などの各点に配置した信号光ビットレートおよびフォーマットに無依存な光信号品質監視装置2を用いて、その装置から信号光品質を収集する。
【0041】
図4は、全光ネットワーク運用管理装置を用いた光パス品質監視、リンク障害検出、障害区間特定例を示す。図4aは、全光ネットワーク運用管理装置1が光ノード1から光ノード4より信号光品質情報を収集することを示している。図4bは、得られた品質情報と光パス経路をマッピングした一例を示している。
【0042】
全光ネットワーク運用管理装置1は、光パス経路に従って信号光品質を測定し、得られた品質情報と光パス経路をマッピングすることで、光パス経路に沿った信号光品質を把握することができる。これにより、信号光品質劣化または障害区間の特定を行うことが可能になる。また障害区間の特定後、光パス経路の切り替えを行うことができる。
【0043】
例えば、光ノード2と光ノード3間の光伝送路に障害が発生した場合、障害地点より下流の光ノード3および光ノード4で信号光品質が劣化する(Q値が低下する)。全光ネットワーク運用管理装置1は、全光ネットワーク構成情報としてトポロジー情報を保持しているため、光ノード3および光ノード4の上流は光ノード2であること、光ノード2の上流は光ノード1であることを認識している。また、光信号品質監視装置2からの品質情報と光パス経路を図4bのようにマッピングしている。このため、光ノード2と光ノード3の光パス経路に障害が発生したことを認識できる。
【0044】
また、以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様および変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲およびその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本実施形態における全光ネットワークの概要を示す。
【図2】本発明による全光ネットワーク運用管理装置と光信号品質監視装置間の情報のやり取りを示す。
【図3】全光ネットワーク運用管理装置の光パス品質測定時のフローを示す。
【図4】全光ネットワーク運用管理装置を用いた光パス品質監視、リンク障害検出、障害区間特定例を示す。
【符号の説明】
【0046】
1 全光ネットワーク運用管理装置
2 光信号品質監視装置
3 光ノード
4 光送受信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全光ネットワークの光パス経路情報を保持する手段と、
前記光パス経路情報から、監視する光パス経路上の光ノードおよび監視する光パス波長を選択する手段と、
前記選択された光ノードに具備された信号光ビットレートおよび信号光変調方式に依存しない光信号品質監視装置に前記波長を設定する手段と、
前記光信号品質監視装置に前記波長の信号光特性情報の測定を指示する手段と、
前記光信号品質監視装置が測定した前記波長の信号光特性情報を受信する手段と、
前記受信した信号光特性情報を保存する手段と、
を備えていることを特徴とする全光ネットワーク運用管理装置。
【請求項2】
前記監視する光パスは、新規に生成された光パス、障害が発生した光パスまたは品質管理を要求されたパスであることを特徴とする請求項1に記載の全光ネットワーク運用管理装置。
【請求項3】
全光ネットワークのトポロジー情報を保持する手段と、
前記信号光特性情報と前記光パス経路情報を対応付ける手段と、
前記トポロジー情報および前記対応付けから、前記信号光特性情報が劣化した光ノードと劣化していない光ノード間の光パス経路を求める手段と、
をさらに備え、前記光パス経路に障害が発生したと判断することを特徴とする請求項1または2に記載の全光ネットワーク運用管理装置。
【請求項4】
前記光パス経路に障害が発生したと判断した場合、障害が発生した光パス経路の切り替えを実行する手段をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の全光ネットワーク運用管理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−81297(P2010−81297A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247401(P2008−247401)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】