説明

全方位監視画像表示処理システム

【課題】単眼カメラで撮影した各フレーム単位の360°監視映像について、その全体映像を細部に亘り明瞭に表示できるとともに、360°監視映像から切り出した切り出し画像に対して細部に亘り明瞭に表示することができる。
【解決手段】ブロッキング輝度伸張処理部20は、画像バッファメモリ13に記憶された楕円面の360°全周入力画像(Pa)とオブジェクト画像バッファメモリ19に記憶された切り出し画像(オブジェクト画像)を処理対象に、表示出力する画像に対して画素単位のブロッキング輝度伸張処理を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単眼カメラで撮影した全方位画像からその一部領域の画像を切り出し、監視画像として表示する表示処理機能を備えた全方位監視画像表示処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
単眼カメラに360°レンズを取り付け、当該カメラで撮影した映像をカメラの全周に亘る監視映像として出力する360°監視システムが種々開発され実用化されている。この種、従来の360°監視システムは、カメラの全周が1フレームに収まるNTSC映像であることから、部分映像の解像度が低く、360°の全周映像について、そのすべてを目視で監視するには限界があり、細部に亘る監視は困難であった。
【0003】
また、例え監視映像を高解像度にしても、360°の全周映像には、明るさの大きく異なる場所が含まれる場合が多く、明暗の大きく異なる部分のすべてを同時に目視にて監視することは困難であった。
【0004】
また、360°の全周映像から、一部領域の画像を切り出し、切り出した画像を監視画像として表示する場合においても、切り出し地点の明るさが大きく異なる場合が多く、明暗の大きく異なる部分の切り出し画像について明瞭な目視監視ができないという問題があった。
【0005】
この種の全方位監視カメラシステムとして、従来では、特定の動体画像のみを高画質で記録する監視カメラ技術(特許文献1)や、広角画像データを目視可能な通常画角の画像に変換して表示する監視カメラ技術(特許文献2)が存在した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−121320公報
【特許文献2】特開2005−303340公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、単眼カメラに360°レンズを取り付け、当該カメラで撮影した映像をカメラの全周に亘る監視映像として出力する360°監視システムにおいては、明るさの大きく異なる場所が含まれる場合が多く、明暗の大きく異なる部分のすべてを同時に目視にて監視することは困難であった。また、360°の全周映像から、一部の画像を切り出し、その切り出し画像を監視画像として表示する場合においても、360°の全周映像内のごく一部の領域に存在する監視対象物を明瞭に表示することができず、切り出した監視画像の細部に亘る表示が困難であった。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みなされたもので、単眼カメラで撮影した各フレーム単位の360°監視映像について、その全体映像を細部に亘り明瞭に表示できるとともに、360°監視映像の一部を切り出し、その切り出し画像を監視画像として表示する場合に、切り出した監視画像を細部に亘り明瞭に表示することのできる全方位監視画像表示処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、単眼カメラで撮影した360°全周監視映像に対してユーザが指定した位置指定情報に従う監視ビューを表示可能にした全方位監視画像表示処理システムであって、前記360°全周監視映像をフレーム単位にキャプチャする監視映像入力手段と、前記監視映像入力手段がキャプチャしたフレーム単位の監視映像に対して前記位置指定情報により指定された一部領域の画像を切り出す切り出し処理を実施し、切り出した画像に対して歪曲収差を補正する補正処理を実施する監視画像処理手段と、前記歪曲収差を補正した切り出し画像に対して画素単位のブロッキング輝度伸張処理を実施するブロッキング輝度伸張処理手段と、前記ブロッキング輝度伸張処理した切り出し画像を監視画像として表示する表示出力手段とを具備したことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、単眼カメラで撮影した360°全周監視映像に対してユーザが指定した位置指定情報およびビュー指定情報に従う監視ビューを表示可能にした全方位監視画像表示処理システムであって、前記360°全周監視映像をフレーム単位にキャプチャする監視映像入力手段と、前記監視映像入力手段がキャプチャしたフレーム単位の監視映像を入力画像として記憶する入力画像記憶手段と、前記監視映像入力手段がキャプチャしたフレーム単位の監視映像に対して前記位置指定情報により指定された一部領域の画像を切り出す切り出し処理を実施し、切り出した画像に対して歪曲収差を補正する補正処理を実施する監視画像処理手段と、前記歪曲収差を補正した切り出し画像をビュー指定監視画像として記憶する切り出し画像記憶手段と、前記切り出し画像記憶手段に記憶したビュー指定監視画像に対して画素単位のブロッキング輝度伸張処理を実施するブロッキング輝度伸張処理手段と、前記輝度伸張処理を施したビュー指定監視画像に対して、予め用意された監視形態を異にする複数のビュー形式から、前記ビュー指定情報により指定されたビュー形式に従う監視形態のビュー画面を作成するビュー作成処理手段と、前記ビュー作成処理手段が作成したビュー画面を表示する表示出力手段と、を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、単眼カメラで撮影した各フレーム単位の360°監視映像について、その全体映像を細部に亘り明瞭に表示できるとともに、360°監視映像の一部を切り出し、その切り出し画像を監視画像として表示する場合に、切り出した監視画像を細部に亘り明瞭に表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る全方位監視画像表示処理システムの構成を示すブロック図。
【図2】上記実施形態に係る画像処理部の機能構成を示すブロック図。
【図3】上記実施形態に係る処理の手順を示すフローチャート。
【図4】上記実施形態に係るブロッキング輝度伸張処理手段の構成要素を示すブロック図。
【図5】上記実施形態に係る輝度伸張処理部の輝度伸張処理動作を説明するための動作説明図。
【図6】上記実施形態に係るブロッキング輝度伸張処理動作を説明するための動作説明図。
【図7】上記実施形態に係るブロッキング輝度伸張処理動作を説明するための動作説明図。
【図8】上記実施形態に係る畳み込み処理動作を説明するための動作説明図。
【図9】上記実施形態に係る畳み込み処理動作を説明するための動作説明図。
【図10】上記実施形態に係るバイリニア補間処理動作を説明するための動作説明図。
【図11】上記実施形態に係る輝度伸張処理部の構成を示すブロック図。
【図12】上記実施形態に係る輝度伸張処理部の処理手順を示すフローチャート。
【図13】上記実施形態に係る全方位(360°全周)監視画像の一例を示す図。
【図14】上記実施形態に係る監視画像(任意の位置を指定して表示するPTZ(Pan-Tilt-Zoom)用ビュー)の表示形態を示す図。
【図15】上記実施形態に係る監視画像(登録した位置を切替えて表示するプリセット用ビュー)の表示形態を示す図。
【図16】上記実施形態に係る監視画像(複数地点を同時に表示する多地点用ビュー)の表示形態を示す図。
【図17】上記実施形態に係る監視画像(360°全周を同時に表示するパノラマ用ビュー)の表示形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面を参照して本発明の実施形態を説明する。この実施形態においては、ユーザが指定した監視用ビュー形式および切り出し位置に従う切り出し画像を例に、その表示処理機能の実現手段を説明する。なお、この実施形態では、単眼カメラから取り込んだ1フレーム(1画面)分の画像データを、単に画像若しくは監視映像と称している。
【0014】
本発明の実施形態に係る全方位監視画像表示処理システムは、1.3メガ(M)ピクセル以上の画素数を有する高画素(高精細)の単眼カメラ(1台のカメラ)に、360°レンズ(魚眼レンズ)を取り付け、この単眼カメラで撮影した映像から、予め指定された監視用ビューの設定パラメータ(プリセット情報など)とユーザ指定による監視用ビューの位置情報、監視用ビューの指示に従う各種監視用ビューの表示に適用可能である。この処理では、上記単眼カメラで撮影した360°全周高精細監視映像(全方位監視画像)を入力画像として、当該入力画像と、当該入力画像から切り出した切り出し画像を対象に、歪曲収差を補正後、ブロッキング輝度伸張による明暗補正を実施し、表示出力する。
【0015】
本発明の実施形態に係る全方位監視画像表示処理システムの構成を図1に示している。
本発明の実施形態に係る全方位監視画像表示処理システムは、図1に示すように、単眼カメラ(ipカメラ)11と、キャプチャ部12と、画像バッファメモリ13と、リサイズ部14と、監視用ビューの作成指示を行う入力デバイス16と、ビューパラメータ格納部(プリセット情報バッファメモリ)17と、注目領域画像作成処理部18と、切り出し画像バッファメモリ19と、ブロッキング輝度伸張処理部20と、表示ビュー作成処理部21と、表示部(表示デバイス)22とを具備して構成される。
【0016】
単眼カメラ11およびキャプチャ部12は、360°全周監視映像をフレーム単位にキャプチャする監視映像入力手段を構成する。
【0017】
単眼カメラ11は、撮像窓に360°魚眼レンズ11Aを取り付けた1.3Mピクセル以上の画素数を有する高精細の監視カメラを構成し、楕円面の360°全周高精細監視映像を監視画像(Pa)として出力する。ここでは、楕円面の長辺と短辺を、1フレームの幅と高さに合わせた、横×縦=1280×960画素の360°全周高精細監視映像を監視画像(Pa)として出力する。
【0018】
キャプチャ部12は、上記カメラ11が撮像したフレーム単位(1280×960画素)の監視画像(Pa)を入力画像として取り込み、画像バッファメモリ13に記憶する処理機能をもつ。
【0019】
画像バッファメモリ13は、キャプチャ部12がキャプチャしたフレーム単位の監視映像(Pa)を入力画像として記憶する入力画像記憶手段を構成する。ここでは横×縦=1280×960画素構成(Quad−VGA)の360°全周高精細監視映像(Pa)を入力画像として記憶する。なお、ここでは単眼カメラ11で撮影した直近の入力画像(ライブ映像)を表示処理対象の入力画像(Pa)として入力しているが、これに限らず、例えば図2に示すように、大容量記憶媒体10に記憶した時系列の録画映像を入力画像(Pa)として入力してもよい。
【0020】
リサイズ部14は、キャプチャ部12がキャプチャした、1280×960画素構成(Quad−VGA)の入力画像(Pa)を、表示部(表示デバイス)22の画素構成に合わせた640×480画素構成(VGA)の表示用入力画像にリサイズしてブロッキング輝度伸張処理部20に受け渡すリサイズ処理を実施する。
【0021】
入力デバイス16は、ここでは監視用ビューの作成指示を行うユーザ操作入力デバイスとして用いられるもので、ユーザの操作による、ビュー形式を指定するビュー指定情報(Ca)、および監視用ビューの位置指定情報(Cb)の入力を受け付け、受け付けたビュー指定情報(Ca)を後述する注目領域画像作成処理部18とブロッキング輝度伸張処理部20とビュー作成処理部21に送出し、ユーザが入力した各監視用ビューの位置指定情報(Cb)をプリセット情報としてビューパラメータ格納部17に格納する。ビュー指定情報(Ca)は監視用ビューの表示形態(ビュー形式)を指定する情報であり、この実施形態では図14に示すPTZビュー、図15に示すプリセットビュー、図16に示す多地点ビュー、図17に示すパノラマビューのうち、任意のビュー形式による監視用ビューを表示対象(監視画面)として指定する。監視用ビューの位置指定情報(Cb)は、上記各監視用ビューについて、360°全周の入力画像(Pa)から切り出す画像の矩形の位置および領域を指定する各種監視用ビュー形式のプリセット情報であり、注目領域画像作成処理部18の画像切り出し処理に供される。
【0022】
ビューパラメータ格納部17は、入力デバイス16から入力された、各種監視用ビュー形式のプリセット情報(PTZビュー用位置情報、プリセットビュー用位置情報、多地点ビュー用位置情報)を監視用ビューパラメータとして記憶する。ビューパラメータ格納部17は、入力デバイス16から予め指定された外部パラメータとしてプリセット情報を格納し、また入力デバイス16からの位置指定情報に従って、各監視用ビュー(PTZビュー、プリセットビュー、多地点ビュー、パノラマビュー)のプリセット情報を更新する。
【0023】
注目領域画像作成処理部18および切り出し画像バッファメモリ19は、ビュー指定情報(Ca)により監視用ビューが指定されているとき、上記ビューパラメータ格納部17に記憶された指定ビューのプリセット情報(位置情報に基づく矩形の領域の中心位置座標)をもとに、上記画像バッファメモリ13に記憶された入力画像(Pa)に対して切り出し処理を実施し、切り出した画像に対して歪曲収差を補正する補正処理を実施する監視画像処理手段を構成する。ここでは、入力画像(Pa)から切り出した切り出し画像(q)に対して歪曲収差を補正し、ビュー作成処理部21の処理に適した各プリセット情報に基づく表示画素構成に合わせた640×480画素構成(VGA)の切り出し画像として切り出し画像バッファメモリ19に貯える。この際の歪曲収差の補正処理については既知の技術が適用される。切り出し画像バッファメモリ19に貯えられた歪曲収差補正後の切り出し画像はビュー指定情報(Ca)により監視用ビューが指定されているとき、ブロッキング輝度伸張処理部20においてブロッキング輝度伸張処理による明暗補正が実施され、ビュー作成処理部21においてユーザが指定した描画画像(監視用ビュー)の作成処理が実施される。
【0024】
ブロッキング輝度伸張処理部20は、上記画像バッファメモリ13に記憶された入力画像(Pa)と切り出し画像バッファメモリ19に記憶された切り出し画像を処理対象に、表示出力する画像に対して画素単位のブロッキング輝度伸張処理を実施する処理手段(ブロッキング輝度伸張処理手段)を構成する。この実施形態ではビュー指定情報(Ca)により監視用ビューが指定されているとき、切り出し画像バッファメモリ19に記憶された切り出し画像に対してブロッキング輝度伸張処理による画素レベルの明暗補正を実施し、監視用ビューが指定されていないとき(ビュー指定情報(Ca)が入力されていない状態にあるとき)、360°全周の入力画像(Pa)に対してブロッキング輝度伸張処理による画素レベルの明暗補正を実施する。このブロッキング輝度伸張処理部20による画素レベルのブロッキング輝度伸張処理により、監視対象の画像に対して明暗の大きく異なる部分が画素レベルで補正され、監視対象の画像が監視し易いダイナミックレンジの画像に補正される。
【0025】
このブロッキング輝度伸張処理部20は、輝度伸張処理の対象となる入力画像(ここではリサイズ部14でリサイズしたVGAの360°全周入力画像、または切り出し画像バッファメモリ19に貯えられたVGAの切り出し画像)について、当該画像領域(または設定された注目エリア)を複数のブロックに分割し、分割したブロック各々について、周囲のブロックの輝度値を畳み込んだ複数のブロックの輝度値をもとにブロック単位の輝度伸張パラメータを算出し、当該輝度伸張パラメータをもとにブロック単位の輝度変換テーブルを作成するブロック処理手段と、このブロック処理手段により作成されたブロック単位の輝度変換テーブルをもとに、分割したブロック各々の各画素について、ブロック毎に、周囲のブロックの輝度変換テーブルを参照してバイリニア補間を実施する補間処理手段と、この補間処理手段によりバイリニア補間を施した上記各ブロックの画素をもとに上記入力画像に対する輝度伸張出力画像を作成する画像変換手段とを具備し、画面全体の一部に存在する明暗の大きく異なる画像について、明暗の大きく異なる部分を画素レベルで補正し、監視し易い画像に補正する。このブロッキング輝度伸張処理部20の構成並びに輝度伸張処理については、図4乃至図12を参照して後述する。
【0026】
ビュー作成処理部21は、入力デバイス16から入力されたビュー指定情報(Ca)により監視用ビューが指定されているとき、ブロッキング輝度伸張処理部20でブロッキング輝度伸張処理した図13に示す基本画像(全周画像)をもとに、ユーザが指定した監視用ビューを作成して表示部(表示デバイス)22に表示出力する処理を実施する。またビューが指定されていないとき、ブロッキング輝度伸張処理部20で明暗補正した360°全周の監視画像を表示部(表示デバイス)22に表示出力する。
表示部(表示デバイス)22は上記輝度伸張処理を施した監視対象画像を表示する表示出力手段を構成する。この実施形態では、表示デバイスの表示画面が640×480画素で構成され、画像バッファメモリ13に貯えられた入力画像(Pa)をリサイズ部14でリサイズした360°全周入力画像と、切り出し画像バッファメモリ19に貯えられた切り出し画像とを表示対象に、そのいずれかの画像を選択して、若しくは表示領域を区分して同時に表示出力する。この実施形態では、監視用ビューが指定されていないとき(ビュー指定情報(Ca)が入力されていない動作状態にあるとき)、画像バッファメモリ13に貯えられた(リサイズ部14でリサイズされた)360°全周の入力画像(Pa)を表示し、ユーザが監視用ビューを指定しているとき(ビュー指定情報(Ca)が入力された動作状態にあるとき)、切り出し画像バッファメモリ19に貯えられた切り出し画像を用いた指定ビューを表示する。
【0027】
上記した全方位監視画像表示処理システムのソフトウェア(SW)構成を図2に示している。
【0028】
キャプチャ部12は、上記カメラ11が撮像したフレーム単位(1280×960画素)の監視画像、若しくは上記カメラ映像を大容量記憶媒体10に記憶した時系列の録画映像を入力画像(Pa)として取り込む。この入力画像(Pa)に対して、注目領域画像作成処理部18により、プリセット情報に従う部分画像(監視画像)の切り出し処理が実施される。
【0029】
注目領域画像作成処理部18は、ビューパラメータ格納部17(プリセット情報バッファメモリ)に記憶されたプリセット情報(矩形の領域の中心位置座標)をもとに、画像バッファメモリ13に記憶された入力画像(Pa)に対して切り出し処理を実施して、入力画像(Pa)から切り出した切り出し画像(q)に対し歪曲収差を補正し、ビュー作成処理部21の処理に適した各プリセット情報に基づく表示画素構成に合わせた640×480画素構成(VGA)の切り出し画像として切り出し画像バッファメモリ19に貯える。
【0030】
ブロッキング輝度伸張処理部20は、上記画像バッファメモリ13に記憶された入力画像(Pa)と、切り出し画像バッファメモリ19に記憶された切り出し画像を処理対象に、表示出力する監視画像に対して画素単位のブロッキング輝度伸張処理を実施する。ビュー指定情報(Ca)により監視用ビューが指定されているとき、切り出し画像バッファメモリ19に記憶された切り出し画像に対してブロッキング輝度伸張処理による画素レベルの明暗補正を実施し、監視用ビューが指定されていないとき、画像バッファメモリ13に記憶された入力画像(Pa)に対してブロッキング輝度伸張処理による画素レベルの明暗補正を実施する。
【0031】
ビュー作成処理部21は、ビュー指定情報(Ca)により監視用ビューが指定されているとき、画素レベルのブロッキング輝度伸張処理で微細なダイナミックレンジの画像補正がなされた監視画像に対して、ユーザが指定した監視用ビュー(図14に示すPTZビュー、図15に示すプリセットビュー、図16に示す多地点ビュー、または、図17に示すパノラマビュー)を作成し表示部(表示デバイス)22に出力する。また、監視用ビューが指定されていないとき、リサイズ部14でリサイズし、ブロッキング輝度伸張処理部20でブロッキング輝度伸張した360°全周の監視画像を表示部(表示デバイス)22に出力する。
【0032】
上記した全方位監視画像表示処理システムの処理手順を図3にフローチャートで示している。なお、各監視用ビュー(PTZビュー、プリセットビュー、多地点ビュー、パノラマビュー)を作成するためのビュー用パラメータの登録(各監視用ビューに対するプリセット情報のビューパラメータ格納部17への格納)は既に行われているものとする。
【0033】
キャプチャ部12は、上記カメラ11が撮像したフレーム単位(1280×960画素)の監視画像、若しくは上記カメラ映像を大容量記憶媒体10に記憶した時系列の録画映像を入力画像(Pa)として取り込む(ステップS11)。
【0034】
この入力画像(Pa)に対して、注目領域画像作成処理部18により、プリセット情報に従う部分画像の切り出し処理が実施される。また、360°全周の入力画像(Pa)に対してリサイズ部14により、640×480画素構成(VGA)へのリサイズ処理が実施される。
【0035】
注目領域画像作成処理部18は、ビュー指定情報(Ca)により監視用ビューが指定されているとき、すなわち、ユーザによりビュー形式(PTZビュー、プリセットビュー、多地点ビュー、パノラマビュー)が指定されているとき、指定されたビュー形式に従うプリセット情報を用い、360°全周の入力画像(Pa)に対して、プリセット情報に従う切り出し処理を実施し、切り出した画像に対して歪曲収差を補正する補正処理および表示デバイス22の画素構成に合わせたリサイズ処理を実施して、当該処理を実施した切り出し画像を切り出し画像バッファメモリ19に記憶する(ステップS12)。
【0036】
ブロッキング輝度伸張処理部20は、切り出し画像バッファメモリ19に記憶された切り出し画像に対して、画素単位のブロッキング輝度伸張処理を実施し、明暗の大きく異なる部分について画素レベルの補輝度正を行う(ステップS13)。
【0037】
ビュー作成処理部21は、ブロッキング輝度伸張処理部20によりブロッキング輝度伸張処理した切り出し画像を用いて、指定されたビューの構成画面を作成し、表示デバイス22に監視用ビューとして表示する(ステップS14)。
【0038】
なお、ユーザによりビュー形式が指定されていない場合は、リサイズ部14でリサイズ処理した360°全周の入力画像(Pa)がブロッキング輝度伸張処理部20により画素レベルで明暗補正され、ビュー作成処理部21を経由して表示デバイス22に監視用ビューとして表示される。
【0039】
上記した360°全周の入力画像(Pa)と、この入力画像(Pa)から切り出した切り出し画像を用いた各監視用ビュー(PTZビュー、プリセットビュー、多地点ビュー、パノラマビュー)の構成例を図13乃至図17に示している。
【0040】
ここでは、単眼カメラで撮影した360°全周監視映像に対して、ユーザが指定したビュー形式および位置指定情報に従う監視用ビューを表示可能にした全方位監視画像表示処理システムを実現している。このユーザ指定による監視用ビューの表示機能は、例えばユーザがビュー指定情報(Ca)によりビュー形式を指定したとき、ユーザが指定したビュー形式に従う切り出し画像を対象とした監視用ビューを表示する監視画像の表示機能を実現可能である。このユーザ指定による監視ビューの表示においても切り出し画像に対してブロッキング輝度伸張処理を実施して、監視が容易なダイナミックレンジの補正を行い、切り出した監視画像を細部に亘り明瞭に監視ビューとして表示する。
【0041】
ここで、上記ブロッキング輝度伸張処理を施した監視画像の表示モード選択機能について、図13乃至図17を参照して説明する。図13は上記実施形態に係る360°全周監視画像(全周画像)の一例を示す図、図14乃至図17は上記図13に示す全周画像を基本画像としてビュー作成処理部21により作成処理される各種監視画像の表示形態(監視用ビュー)の構成例を示す図である。図14乃至図17は、それぞれ上記図13に示す基本画像(全周画像)に対して、ユーザが指定したビュー形式に従い表示される監視用ビューの表示例を示している。このうち、図14は任意の位置を指定して表示するPTZ(Pan-Tilt-Zoom)用ビューの表示形態を示す図、図15は登録した位置を切替えて表示するプリセット用ビューの表示形態を示す図、図16は登録した複数地点を同時に表示する多地点用ビューの表示形態を示す図、図17は360°全周を同時にパノラマ表示するパノラマ用ビューの表示形態を示す図である。
【0042】
上記各監視用ビューを作成するための構成要素として、この実施形態では、ブロッキング輝度伸張処理部20と表示部(表示デバイス)22との間に、ビュー作成処理部21を設けた構成としている。また、このビュー作成処理部21に付随して、ユーザが操作入力を行う入力デバイス16、およびこの入力デバイス16の操作入力で入力された各種ビューの位置指定情報をプリセット情報として記憶するビューパラメータ格納部17を設けている。
【0043】
ビュー作成処理部21は、入力デバイス16から入力されたビュー指定情報(Ca)、および入力デバイス16から入力されビューパラメータ格納部17にプリセット情報として登録されたビューの位置指定情報(Cb)に従い、ブロッキング輝度伸張処理部20でブロッキング輝度伸張処理した図14に示す基本画像(全周画像)をもとに、ユーザが指定した図15乃至図18に示す各種表示形態(ビュー形式)の監視画像を作成し監視用ビューとして表示部(表示デバイス)22に表示出力する処理を実施する。
【0044】
入力デバイス16は、ユーザの操作による、ビュー指定情報(Ca)、およびビューの位置指定情報(Cb)の入力を受け付け、受け付けたビュー指定情報(Ca)をビュー作成処理部21に送出し、ビューの位置指定情報(Cb)をプリセット情報としてビューパラメータ格納部17に格納する。ここでは、ビュー形式を単位にプリセット情報(PTZビュー用位置情報、プリセットビュー用位置情報、多地点ビュー用位置情報)をそれぞれビューパラメータ格納部17に登録可能にしている。なお、図13の基本画像に示したq1〜q4はそれぞれユーザの位置指定情報(Cb)により指定された矩形の切り出し画像領域である。
【0045】
ブロッキング輝度伸張処理部20はリサイズ部14でリサイズされた360°全周の監視画像、またはパラメータで指定された位置指定に従う切り出し画像に対してブロッキング輝度伸張処理を実施し、ブロッキング輝度伸張処理した画像をビュー作成処理部21に送出する。
【0046】
ビュー作成処理部21はブロッキング輝度伸張処理した画像に対して、入力デバイス16から操作指示されたビュー指定情報(Ca)に従い、図14に示すビュー形式のPTZ用ビュー(任意の位置を指定して切り出し表示するPTZ用ビュー)、または、図15に示すビュー形式のプリセット用ビュー(登録した位置を切替えて切り出し表示するプリセット用ビュー)、または、図16に示すビュー形式の多地点用ビュー(複数地点を同時に切り出し表示する多地点用ビュー)、または、図17に示すビュー形式のパノラマ用ビュー(360°全周を半周ずつ区分して同時にパノラマ表示するパノラマ用ビュー)を作成し、監視用ビューとして出力する。
【0047】
表示部(表示デバイス)22はビュー作成処理部21で作成された監視ビューを表示出力する。この監視用ビューは、ビューパラメータ格納部17に格納(登録)されたパラメータ(位置情報)をユーザが書き換えることで、監視用ビューの表示に変更を加えることが可能である(入力デバイス16から予め指定された外部パラメータとしてプリセット情報をビューパラメータ格納部17に格納し、また入力デバイス16からの位置指定情報に従って、各監視用ビュー(PTZビュー、プリセットビュー、多地点ビュー、パノラマビュー)のプリセット情報を更新する)。
【0048】
上記した監視用ビューの表示機能により、単眼カメラで撮影した各フレーム単位の360°監視映像について、その全体映像を、例えばパノラマ用ビューとして、細部に亘り明瞭に表示することができるとともに、360°監視映像の一部を切り出し、その切り出し画像を、例えばPTZ用ビュー、プリセット用ビュー、または多地点用ビューとして、細部に亘り明瞭に表示することができる。
【0049】
このようにして、ブロッキング輝度伸張処理された、全周画像(360°全周の監視画像)またはパラメータの位置指定に従う切り出し画像が任意のビュー形式で監視用ビューとして表示部(表示デバイス)22に表示出力可能である。これにより360°全周監視画像の全てを対象に、任意領域の明瞭な監視画像をユーザの所望するビュー形式でユーザに提供することができる。
【0050】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に構成要素を適宜組み合わせてもよい。また上記実施形態に記載した手法は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、記憶媒体に格納して頒布することもできる。
【0051】
ここで、ブロッキング輝度伸張処理部20の構成並びに輝度伸張処理について、図4乃至図12を参照して説明する。
【0052】
ブロッキング輝度伸張処理部20は、上述したように、輝度伸張処理の対象となる入力画像(リサイズ部14でリサイズしたVGAの360°全周入力画像、または切り出し画像バッファメモリ19に貯えられたVGAの切り出し画像)について、当該画像領域(または設定された注目エリア)を複数のブロックに分割し、分割したブロック各々について、周囲のブロックの輝度値を畳み込んだ複数のブロックの輝度値をもとにブロック単位の輝度伸張パラメータを算出し、当該輝度伸張パラメータをもとにブロック単位の輝度変換テーブルを作成するブロック処理手段と、このブロック処理手段により作成されたブロック単位の輝度変換テーブルをもとに、分割したブロック各々の各画素について、ブロック毎に、周囲のブロックの輝度変換テーブルを参照してバイリニア補間を実施する補間処理手段と、この補間処理手段によりバイリニア補間を施した上記各ブロックの画素をもとに上記入力画像に対する輝度伸張出力画像を作成する画像変換手段とを具備して構成される。
【0053】
図4に示すブロッキング輝度伸張処理部20は、単眼カメラ11で撮影した画像を入力画像として、当該入力画像について輝度伸張処理(ガンマ補正)を施し、上記入力画像を当該入力画像の輝度値の分布状態から最適な階調に変換する。ここでは、VGA(640×480画素)の0〜255階調の入力画像を対象に設定された注目エリアの画像を輝度伸張処理する。
【0054】
この輝度伸張処理部1における輝度伸張処理では、ガンマ(γ)補正の理論を参考にし、ガンマ補正に必要とする輝度伸張のための輝度伸張パラメータを、入力画像における注目エリアを複数のブロックに分割したブロック単位の画像の平均輝度値をもとに自動算出する手段を具備した。
【0055】
ブロッキング輝度伸張処理部20は、輝度伸張処理の対象となる入力画像について、設定された注目エリアを複数のブロックに分割し、分割したブロック各々について、周囲のブロックの輝度値を畳み込んだ複数のブロックの輝度値をもとにブロック単位の輝度伸張パラメータを算出し、当該輝度伸張パラメータをもとにブロック単位の輝度変換テーブルを作成するブロック処理手段と、このブロック処理手段により作成されたブロック単位の輝度変換テーブルをもとに、分割したブロック各々の各画素について、ブロック毎に、周囲のブロックの輝度変換テーブルを参照してバイリニア補間を実施する補間処理手段と、上記補間処理手段によりバイリニア補間を施した上記各ブロックの画素をもとに上記入力画像に対する輝度伸張出力画像を作成する画像変換手段とを具備して構成される。
【0056】
図4に示すブロッキング輝度伸張処理部20の輝度伸張処理動作について、図5乃至図10を参照して説明する。図5は上記ブロッキング輝度伸張処理部20の輝度伸張処理動作を説明するための動作説明図、図6および図7はそれぞれ上記したブロック処理手段における輝度伸張処理の動作原理を説明するための動作説明図、図8および図9はそれぞれ上記したブロック処理手段における畳み込み処理の動作原理を説明するための動作説明図、図10は上記した補間処理手段におけるバイリニア補間処理の動作原理を説明するための動作説明図である。
【0057】
図5に示す、ブロッキング輝度伸張処理部20のブロック処理手段4aは、先ず、単眼カメラで撮影した入力画像(640×480画素)2について、予め設定された注目エリア3を複数のブロックに分割する。具体例を挙げると、入力画像を32×32画素単位、若しくは16×16画素単位、若しくは8×8画素単位等に分割し、注目エリア3(画像全体または設定された注目エリア)を複数のブロックに分割する。例えば注目エリア3の画面を16×16画素単位のブロック(40×30ブロック)に分割する。このブロック分割領域それぞれについて、周囲ブロックの輝度値を可変要素に、平均輝度を求める。
【0058】
この動作原理を図6乃至図9に示している。ここでは、図6および図7に示すように、画面をブロック分割した16×16画素のパターンを、1/2ブロック(8×8画素)分シフトしたブロック4パターンから1つの小ブロックの値を考える。ここでは、1/2ブロックシフトで、4パターンのブロックが重なったブロック(8×8画素)について、重なったブロックの輝度の平均、さらには輝度二乗の平均等を求め、この値をもとに、予め設定された輝度伸張処理方式に適用される輝度伸張用の輝度変換テーブルをブロック単位に作成する。さらにブロック処理手段4aは、分割したブロック各々について、ブロック毎の輝度総和を算出し、算出したブロック毎の輝度総和を用いて、前記ブロック毎に、当該ブロックとその周囲のブロックを含む重み付けおよび畳み込み処理した全ブロックの輝度総和を算出して、各ブロックの平均輝度を算出する。この際の畳み込み計数および畳み込み処理のイメージを図8および図9に示している。ここでは、図8に示すように、平均輝度の算出対象となる注目ブロックに対して「4」、注目ブロックの周囲8近傍のブロックのうち、上下左右の4ブロックに対してそれぞれ「2」、斜め4方向の各ブロックに対してそれぞれ「1」の畳み込み計数をもたせて、図9に示すデータの積み上げイメージで、上記各ブロックの輝度値を畳み込み、畳み込み演算することで、注目ブロックの輝度平均を求めることができる。このブロック毎の平均輝度値をもとに、予め設定された輝度伸張処理方式に適用されるブロック単位の輝度伸張パラメータおよび輝度変換テーブルを作成する。
【0059】
つぎに、ブロッキング輝度伸張処理部20の補間処理手段4bにおいて、上記ブロック単位で求めた輝度伸張パラメータに従う輝度変換テーブルを用いた各ブロックの画素について、上記した補間手段により、ブロック毎に、当該ブロックと、その周囲4ブロックの輝度変換テーブルを用いてバイリニア補間を実施する。このバイリニア補間は図10に示すように、注目画素の変換値を、周囲4ブロック(A,B,C,D)の変換値の線形補間(バイリニア補間)にて決定し設定する。ここでは、注目画素が位置するブロック位置、および注目画素の当該ブロックとの位置差を小数点で求めて、当該ブロックと周囲ブロックの輝度変換テーブルの値に、ブロック位置差の係数を掛け、線形補間(バイリニア補間)の原理で輝度の変換値を求める。
【0060】
上記補間処理手段4bによりバイリニア補間を施した各ブロックの画素をもとに上記入力画像に対する輝度伸張出力画像5を作成する。
【0061】
このように、ブロッキング輝度伸張処理部20のブロック処理手段4aにおいて、画像ブロック単位の輝度伸張パラメータと輝度変換テーブルを求め、ブロッキング輝度伸張処理部20の補間処理手段4bにおいて、周囲ブロックを利用したバイリニア補間で変換輝度値を求めて、バイリニア補間を施した(周囲ブロックの輝度伸張パラメータを反映した)各ブロックの画素をもとに上記入力画像に対する輝度伸張出力画像5を作成する構成としたことにより、ブロック境界に輝度差が生じることなく、注目エリア内の一部に局所的に存在する明暗の各画像をそれぞれ明瞭に階調表示することができる。
【0062】
上記実施形態をより具現化した一例を図11および図12に示している。図11は実施形態に係るブロッキング輝度伸張処理部20の機能構成を示すブロック図、図12は上記ブロッキング輝度伸張処理部20の処理手順を示すフローチャートである。
【0063】
ブロッキング輝度伸張処理部20は、上述したブロック処理手段(4a)の機能と補間処理手段(4b)の機能を備え、ブロック処理機能により画像ブロック単位の輝度伸張パラメータと輝度変換テーブルを生成し、補間処理機能により周囲ブロックを利用したバイリニア補間で各ブロックの画素の変換輝度値を求めている。
【0064】
なお、図11に示す構成は、本願発明の実施形態に係るブロック分割輝度伸張処理機能を、非線形曲線(凸曲線、凹曲線)を用いた非線形輝度伸張処理方式に適用した例を示している。
【0065】
この非線形輝度伸張処理方式では、後述する平均輝度算出部222が算出した平均輝度値が256階調の中心輝度値(127)以下であるか超えているかを判定し、中心輝度値以下であるとき、凸曲線による参照テーブルを入力画像に対する輝度伸張用の輝度変換テーブルとして作成し、中心輝度値を超えるとき、凹曲線による参照テーブルを入力画像に対する輝度伸張用の輝度変換テーブルとして作成する。この非線形輝度伸張処理機能は、既に公知の特許第4340303号による非線形輝度伸張処理方式に適用したもので、その要旨は後述する。
【0066】
ブロッキング輝度伸張処理部20は、図11に示すように、ブロック参照輝度設定部221と、平均輝度算出部222と、累乗パラメータ算出部223と、参照テーブル判定部224と、画像変換部225と、線形補間(バイリニア補間)算出部226とを具備して構成される。
【0067】
ブロック参照輝度設定部221は、カメラ11で撮影し入力した入力画像の注目エリアを、外部より指定されたブロックサイズに従い、複数のブロックに分割し、ブロック毎に、各ブロックの輝度値の総和を算出する。ここでは、8×8画素、16×16画素、24×24画素、32×32画素のうちのいずれかのブロックサイズ(例えば16×16画素)が指定され、その指定サイズに従い、入力画像の注目エリアがブロック分割される。なお、入力画像のエッジ部分に指定ブロックサイズより小さい端数画素分の領域が生じた場合は、当該領域を輝度伸張処理対象から外すかまたは他の輝度伸張処理手段を適用するものとする。
【0068】
平均輝度算出部222は、ブロック参照輝度設定部221がブロック分割し、ブロック毎に算出した輝度総和をもとに、ブロック毎に、当該ブロックとその周囲のブロックを含む重み付けおよび畳み込み処理した全ブロックの輝度総和を算出してブロック単位の画像の平均輝度値(=M)を算出する。
【0069】
累乗パラメータ算出部223は、上記した非線形輝度伸張処理方式において適用されるもので、平均輝度算出部222が算出した平均輝度をもとに、後述する(1)式に従い、入力画像(注目エリア)に対する輝度伸張処理のための累乗パラメータを算出する。
【0070】
参照テーブル判定部224は、上記平均輝度値が上記中心輝度値(127)以下であるか上記中心輝度値(127)を超えているかを判定し、上記平均輝度値が上記中心輝度値(127)以下であるとき、テーブル作成部231により、上記累乗パラメータを用いて後述する(2)式に従う凸曲線による参照テーブルを入力画像に対する輝度伸張用の輝度変換テーブル(参照テーブル)232として作成し、上記平均輝度値が上記中心輝度(127)を超えるとき、テーブル作成部231により、上記累乗パラメータを用いて後述する(3)式に従う凹曲線による参照テーブルを入力画像に対する輝度伸張用の輝度変換テーブル232として作成する。
【0071】
画像変換部225は、参照テーブル判定部225が作成した輝度変換テーブル(参照テーブル)232を用いて、画像バッファ21に保持された入力画像(注目エリア)に輝度変換処理を施し、入力輝度に対して出力輝度を変換した画像を画像バッファ21に書き戻すことによって画像バッファ21上に輝度伸張画像を作成する。
【0072】
線形補間算出部226は、図10に示したように、ブロック単位で求めた輝度伸張パラメータに従う輝度変換テーブルを用いた各ブロックの画素について、ブロック毎に、当該ブロックと、その周囲4ブロックの輝度変換テーブルを用いてバイリニア補間を実施する。
【0073】
上記したブロッキング輝度伸張処理部20の処理手順を図12に示している。
【0074】
ブロッキング輝度伸張処理部20は、カメラ11が撮像したフレーム単位の入力画像がキャプチャ部12を介して画像バッファメモリ13に保持される毎に、図12に示す処理を実施する。
【0075】
画像バッファメモリ13に輝度伸張処理の対象となる入力画像(Pa)が保持されると、当該入力画像がリサイズ部14によりリサイズされてブロッキング輝度伸張処理部20に入力される。ブロッキング輝度伸張処理部20において、ブロック参照輝度設定部221は、カメラ11で撮影し入力した入力画像の注目エリア(画像全体または設定された注目エリア)を、外部より指定されたブロックサイズ(例えば16×16画素)に従い、複数のブロック(40×30ブロック)に分割し、ブロック毎に各ブロックの輝度値の総和を求めて当該ブロック単位の輝度総和を注目ブロックの輝度情報として平均輝度算出部222に送出する(ステップS21)。
【0076】
平均輝度算出部222は、ブロック参照輝度設定部221から注目ブロックの輝度情報(ブロック単位の輝度総和)を入力すると、この輝度情報をもとに、図8および図9に示したように、ブロック毎に、当該ブロックとその周囲のブロックを含む重み付けおよび畳み込み処理した全ブロックの輝度総和を算出してブロック単位(注目ブロック)の画像の平均輝度値を算出し、当該注目ブロックの画像の平均輝度値を累乗パラメータ算出部223と参照テーブル判定部224に送出する(ステップS22)。
【0077】
累乗パラメータ算出部223は、平均輝度算出部222が算出した平均輝度値をもとに、後述する(1)式に従い、入力画像(注目エリア)に対する輝度伸張処理のための累乗パラメータを算出し、当該パラメータを参照テーブル判定部224に送出する。
【0078】
参照テーブル判定部224は、平均輝度算出部222から入力した平均輝度値と累乗パラメータ算出部223から入力した累乗パラメータを輝度伸張パラメータとして、当該輝度伸張パラメータに従う輝度変換テーブルを作成する。ここでは、上記平均輝度値が上記中心輝度値(127)以下であるか上記中心輝度値(127)を超えているかを判定し、上記平均輝度値が上記中心輝度値(127)以下であるとき、テーブル作成部231により、上記累乗パラメータを用いて後述する(2)式に従う凸曲線による参照テーブルを入力画像に対する輝度伸張用の輝度変換テーブル(参照テーブル)232として作成し、上記平均輝度値が上記中心輝度(127)を超えるとき、テーブル作成部231により、上記累乗パラメータを用いて後述する(3)式に従う凹曲線による参照テーブルを入力画像に対する輝度伸張用の輝度変換テーブル232として作成する(ステップS23)。
【0079】
ここで、上記した凸曲線および凹曲線を用いた非線形輝度伸張処理方式における輝度伸張処理について記述する。
【0080】
累乗パラメータ算出部223は、注目エリアの平均輝度をもとに輝度伸張用の累乗パラメータγを下式(1)により自動的に算出する。
【0081】
γ=(α/Bmed)×(Iave−Bmed)+1.0・・・・式(1)
(ただし、αは固定値、Bmedは輝度中央値、Iaveは入力画像注目エリアの平均輝度)
上記平均輝度と上記入力画像の輝度階調範囲の中心輝度とを比較し、累乗パラメータγを用いて自動的に下式(2)又は下式(3)を切り替えて、凸曲線および凹曲線の輝度変換テーブルを作成する。
【0082】
I’=Bmax-((Bmax-I)/Bmax)γ×Bmax:Iave≦Bmed・・・・式(2)凸曲線
I’=I/Bmaxγ×Bmax:Iave>Bmed ・・・・式(3)凹曲線
(だたし、I’は出力輝度、Iは入力輝度、Bmedは輝度中央値、Bmaxは輝度最大値、Iaveは入力画像注目エリアの平均輝度)
この参照テーブル判定部224で作成された凸曲線および凹曲線の輝度変換テーブル232は画像変換部225に送出される(ステップS23)。
【0083】
画像変換部225は、参照テーブル判定部225が作成した輝度変換テーブル(参照テーブル)232を用いて、画像バッファ21に保持された入力画像(注目エリア)に輝度変換処理を施す。このブロック単位で輝度伸張された注目ブロックの各画素に対して、線形補間算出部226より、図7に示したように、注目ブロックと、その周囲4ブロックの輝度変換テーブルを用いて画素位置の距離差に応じたバイリニア補間が実施され、このバイリニア補間で輝度変換された画像が画像バッファ21に書き戻されることによって画像バッファ21上にブロック間のバイリニア補間を施した輝度伸張画像が作成される(ステップS24,S25)。
【0084】
なお、上記した実施形態では、VGA(640×480画素)の0〜255階調のカメラ映像を輝度伸張処理の対象となる入力画像としたが、これに限らず、他の画像構成を扱う画像処理装置においても本発明の実施形態に係る輝度伸張処理機能を適用することができる。また、上記実施形態において、輝度伸張処理機能を実現する20の構成要素(ブロック参照輝度設定部221、平均輝度算出部222、累乗パラメータ算出部223、参照テーブル判定部224、画像変換部225、線形補間算出部226等)について、その一部機能若しくはすべての機能をソフトウェア処理により実現可能である。
【0085】
また、上記した実施形態では、ブロック毎に各ブロックの輝度値の総和を求め、注目ブロックとその周囲のブロックを含む重み付けおよび畳み込み処理した全ブロックの輝度総和を算出してブロック単位(注目ブロック)の画像の平均輝度値を算出しているが、これに限らず、例えば、ブロック毎に輝度平均を算出し、このブロック毎の平均輝度を用いて重み付けおよび畳み込み処理を実施することも可能である。
【0086】
また、上記した実施形態では、本願発明の実施形態に係るブロック分割輝度伸張処理機能を、非線形曲線(凸曲線、凹曲線)を用いた非線形輝度伸張処理方式に適用した例を示しているが、これに限らず、例えばシグモイド関数曲線を利用したシグモイド輝度伸張処理方式や、その他の各種輝度伸張処理方式に適用可能である。
【0087】
上記したブロッキング輝度伸張処理により、明暗の大きく異なる部分が画素レベルで補正され、監視し易いダイナミックレンジを有した全周監視画像の表示機能を実現できる。
【0088】
上記した実施形態では、上記プリセット情報による切り出し画像が存在しない場合、ブロッキング輝度伸張処理した360°全周の入力画像(全周画像)を表示部(表示デバイス)22に表示し、上記プリセット情報による切り出し画像(ビュー表示)が指定されたとき、ブロッキング輝度伸張処理部20ブロッキング輝度伸張処理した切り出し画像を表示部21に表示する表示機能を実現しているが、上記プリセット情報による切り出し画像(ビュー表示)が指定されたとき、プリセット情報により指定された切り出し画像を全周画像とともに同時に表示することも可能である。この際、表示部21の表示画面全域に全周画像を表示し、切り出し画像を、全周画像の切り出し位置に対応付けるバルーン形式で全周画像に被せて(全周画像を覆って)表示させることも可能である。または、切り出し画像を、表示部21上の予め定めた一部表示領域に部分表示することも可能である。
【符号の説明】
【0089】
2…単眼カメラで撮影した画像(入力画像)、3…注目エリア対象画像、4a…ブロック処理手段、4b…補間処理手段、5…輝度伸張出力画像、10…大容量記憶媒体、11…カメラ(単眼カメラ(IPカメラ))、12…キャプチャ部、13…画像バッファメモリ、14…リサイズ部、16…ビューの作成指示を行う入力デバイス、17…ビューパラメータ格納部(プリセット情報バッファメモリ)、18…注目領域画像作成処理部、19…切り出し画像バッファメモリ、20…ブロッキング輝度伸張処理部、21…ビュー作成処理部、22…表示部(表示デバイス)、221…ブロック参照輝度設定部、222…平均輝度算出部、223…累乗パラメータ算出部、224……参照テーブル判定部、225…画像変換部、226…輝度伸張出力画像、231…テーブル作成部、232…輝度変換用テーブル(参照テーブル)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単眼カメラで撮影した360°全周監視映像に対してユーザが指定した位置指定情報に従う監視ビューを表示可能にした全方位監視画像表示処理システムであって、
前記360°全周監視映像をフレーム単位にキャプチャする監視映像入力手段と、
前記監視映像入力手段がキャプチャしたフレーム単位の監視映像に対して前記位置指定情報により指定された一部領域の画像を切り出す切り出し処理を実施し、切り出した画像に対して歪曲収差を補正する補正処理を実施する監視画像処理手段と、
前記歪曲収差を補正した切り出し画像に対して画素単位のブロッキング輝度伸張処理を実施するブロッキング輝度伸張処理手段と、
前記ブロッキング輝度伸張処理した切り出し画像を監視画像として表示する表示出力手段と、
を具備したことを特徴とする全方位監視画像表示処理システム。
【請求項2】
単眼カメラで撮影した360°全周監視映像に対してユーザが指定した位置指定情報およびビュー指定情報に従う監視ビューを表示可能にした全方位監視画像表示処理システムであって、
前記360°全周監視映像をフレーム単位にキャプチャする監視映像入力手段と、
前記監視映像入力手段がキャプチャしたフレーム単位の監視映像を入力画像として記憶する入力画像記憶手段と、
前記監視映像入力手段がキャプチャしたフレーム単位の監視映像に対して前記位置指定情報により指定された一部領域の画像を切り出す切り出し処理を実施し、切り出した画像に対して歪曲収差を補正する補正処理を実施する監視画像処理手段と、
前記歪曲収差を補正した切り出し画像をビュー指定監視画像として記憶する切り出し画像記憶手段と、
前記切り出し画像記憶手段に記憶したビュー指定監視画像に対して画素単位のブロッキング輝度伸張処理を実施するブロッキング輝度伸張処理手段と、
前記輝度伸張処理を施したビュー指定監視画像に対して、予め用意された監視形態を異にする複数のビュー形式から、前記ビュー指定情報により指定されたビュー形式に従う監視形態のビュー画面を作成するビュー作成処理手段と、
前記ビュー作成処理手段が作成したビュー画面を表示する表示出力手段と、
を具備したことを特徴とする全方位監視画像表示処理システム。
【請求項3】
前記ビュー作成処理手段は、前記ビュー指定情報に従い、
前記位置指定情報が指定した任意地点の切り出し画像を任意のパン、チルト、ズーム指定に従い表示するPTZ用ビュー形式、
前記位置指定情報が指定した複数地点の切り出し画像を所定時間毎に順次切り替えて表示するプリセット用ビュー形式、
前記位置指定情報が指定した複数地点の切り出し画像を画面上の領域を区分して同時に表示する多地点用ビュー形式、
のいずれか一つのビュー形式に従う監視形態のビュー画面を作成することを特徴とする請求項2に記載の全方位監視画像表示処理システム。
【請求項4】
前記ブロッキング輝度伸張処理手段は、前記切り出し画像記憶手段に記憶したビュー指定監視画像および前記入力画像記憶手段が記憶した360°全周の入力画像のいずれかを対象に画素単位のブロッキング輝度伸張処理を実施し、
前記ビュー作成処理手段は、前記ビュー指定情報に従い、
前記位置指定情報が指定した任意地点の切り出し画像を任意のパン、チルト、ズーム指定に従い表示するPTZ用ビュー形式、
前記位置指定情報が指定した複数地点の切り出し画像を所定時間毎に順次切り替えて表示するプリセット用ビュー形式、
前記位置指定情報が指定した複数地点の切り出し画像を画面上の領域を区分して同時に表示する多地点用ビュー形式、
前記ブロッキング輝度伸張処理された360°全周の入力画像を半周ずつ上下に区分して同時に表示するパノラマ用ビュー形式、
のいずれか一つのビュー形式に従う監視形態のビュー画面を作成することを特徴とする請求項2に記載の全方位監視画像表示処理システム。
【請求項5】
前記ブロッキング輝度伸張処理手段は、前記ビュー指定が行われないとき、前記入力画像記憶手段が記憶した360°全周の入力画像に対してブロッキング輝度伸張処理を実施して、ブロッキング輝度伸張処理した監視画像を前記表示出力手段に送出することを特徴とする請求項1または4に記載の全方位監視画像表示処理システム。
【請求項6】
前記ブロッキング輝度伸張処理手段は、
輝度伸張処理の対象となる入力画像について、設定された注目エリアを複数のブロックに分割し、分割したブロック各々について、周囲のブロックの輝度値を畳み込んだ複数のブロックの輝度値をもとにブロック単位の輝度伸張パラメータを算出し、当該輝度伸張パラメータをもとにブロック単位の輝度変換テーブルを作成するブロック処理手段と、
前記ブロック処理手段により作成されたブロック単位の輝度変換テーブルをもとに、分割したブロック各々の各画素について、ブロック毎に、周囲のブロックの輝度変換テーブルを参照してバイリニア補間を実施する補間処理手段と、
前記補間処理手段によりバイリニア補間を施した前記各ブロックの画素をもとに前記入力画像に対する輝度伸張出力画像を作成する画像変換手段と、
を具備したことを特徴とする請求項1または2に記載の全方位監視画像表示処理システム。
【請求項7】
前記ブロック処理手段は、分割したブロックのうち、処理対象となる注目ブロックAについて、隣接する上下左右のブロックBと、隣接する斜め方向のブロックCとを用い、A>B>Cの重み付けにより前記畳み込みの処理を実施することを特徴とする請求項6に記載の全方位監視画像表示処理システム。
【請求項8】
前記ブロック処理手段は、
外部から指定されたブロックサイズに従い、前記注目エリアの画像を複数のブロックに分割するブロック分割手段と、
前記ブロック分割手段が分割したブロック各々についてブロック毎の輝度総和を算出し、算出したブロック毎の輝度総和を用いて、前記ブロック毎に、当該ブロックとその周囲のブロックを含む前記重み付けおよび畳み込み処理した全ブロックの輝度総和を算出する輝度総和算出手段と、
前記輝度総和算出手段が算出した輝度総和を用いて、前記ブロック毎に、当該ブロックの輝度平均を算出する輝度平均算出手段と、
前記輝度平均算出手段が算出したブロックの輝度平均をもとに、前記ブロック毎に、輝度伸張パラメータを算出する輝度伸張パラメータ算出手段と、
前記輝度伸張パラメータ算出手段が算出した輝度伸張パラメータをもとに、前記ブロック毎に、輝度伸張用の輝度変換テーブルを作成する輝度変換テーブル作成手段と、
を具備したことを特徴とする請求項7に記載の全方位監視画像表示処理システム。
【請求項9】
前記単眼カメラ11は、楕円面の長辺と短辺をフレームの幅と高さに合わせた、1.3Mピクセル以上の画素数を有する楕円面の360°全周高精細監視映像を出力し、
前記ブロッキング輝度伸張処理手段は、前記楕円面の360°全周高精細監視映像の画素構成を前記表示出力手段の画素構成に合わせてリサイズした監視映像を処理対象に画素単位でブロッキング輝度伸張処理を実施することを特徴とする請求項1または2に記載の全方位監視画像表示処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−244480(P2012−244480A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113732(P2011−113732)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000220620)東芝テリー株式会社 (116)
【Fターム(参考)】