説明

全有機体炭素測定装置

【課題】試料水中の有機物を酸化分解して二酸化炭素に変換し、その試料水から二酸化炭素を移行させた測定水の導電率変化を測定することにより試料水中の有機物濃度を定量する方式のTOC計において、試料水のpHをリン酸などの酸を添加することなく一定値以下に調整することができるようにする。
【解決手段】陰イオンを含有する酸性のpH調整液が流れる流路と試料水が流れる流路とがイオン交換膜を介して接触し、両流路間に電圧を印加するための電極を備え、pH調整液が流れる流路側が陽極、試料水が流れる流路側が陰極となるように両流路間に電圧を印加することによりpH調整液から試料水へ陰イオンを移行させて試料水のpHを調整するpH調整部が設けられている。pH調整部を経た試料水がIC除去部、酸化分解部及び二酸化炭素抽出部へ順に導入されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全有機体炭素測定装置(TOC計)に関し、特に純水や超純水と呼ばれる不純物の少ない水の有機性汚染を評価するTOC計に関するものである。試料となるのは、製薬用水、半導体製造工程水、冷却水、ボイラー水、水道水などである。
【背景技術】
【0002】
TOC計は試料水に含まれる有機物を酸化させて二酸化炭素に変換し、その二酸化炭素濃度を測定することにより有機物に含まれていた有機物濃度を定量する装置である。有機物を酸化させる方法には、高温の炉で有機物を燃焼酸化させる燃焼式酸化法と紫外光と酸化剤を用いて有機物を化学的に酸化する湿式酸化法があるが、純水や超純水を試料水とする高感度測定には湿式酸化法が好適である。
【0003】
湿式酸化法を用いた全有機体炭素の測定方法としては、有機物を酸化分解するための酸化分解部の前後における試料水の導電率変化を計測する方法があるが、この方法は試料水に含まれる電解物質による干渉を受けやすい。そのため、酸化分解部を経た試料水から二酸化炭素を測定水に移行させて測定水の導電率変化を計測する方法が採られている。
【0004】
試料水から測定水へ炭酸ガスを移動させるための二酸化炭素抽出部は、ガス成分だけを透過させて液体成分は透過させない気液分離膜を介して試料水と測定水を接触させる構造である。試料水のpHが高いと二酸化炭素がイオン化して炭酸イオンになる割合が高くなり、炭酸イオンが気液分離膜を透過しないために正確な測定を行なうことができなくなる。そのため、予め試料水に大過剰の酸を添加してpHを例えば2以下まで下げておく必要がある。従来の装置では、試料水のpHを調整するために、例えばリン酸など不揮発性でかつ炭素成分を含まない酸を試料水に添加するpH調整部が設けられていた(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−214649号公報
【特許文献2】国際公開公報WO2008/047405
【特許文献3】国際公開公報WO2007/077607
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような、試料水に酸を添加してpHを調整する方法では、酸に有機物が混入すると誤差の原因となるため純度の高い酸を購入する必要があるし、保管中に大気中の有機物が酸へ溶け込むことや容器から溶出した不純物が酸へ溶け込むことを防止する必要もある。
【0007】
酸としてリン酸を用いた場合、試料水に添加されたリン酸は二酸化炭素抽出部を経た試料水とともに廃液として外部に排出されるが、水質汚染の原因となるために、リン酸の排出には決められた手順による処理が必要となる。
【0008】
また、試料をサンプリングする機構とリン酸を添加する機構を簡単にするために、複数のポートを備えたロータリーバルブの共通ポートにシリンジポンプを接続し、シリンジポンプで吸引する液体をロータリーバルブの切換えによって切り換えることができるように構成することがよく行なわれている。しかし、ロータリーバルブにはデッドボリュームがある。デッドボリュームによってロータリーバルブ内に液体が残存すると、TOC計を停止している間に大気中の二酸化炭素がロータリーバルブの部材に使用されているPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を通過してロータリーバルブ内に残存している液体に溶け込み、置換されにくい汚れとなる。その状態で有機物濃度測定を行なうと測定結果にその汚れの影響が出てしまう。特に試料水が超純水である場合には、その影響が顕著に現れる場合がある。そのため、超純水の有機物濃度を測定する場合には、数時間以上も超純水を流通させ続けてサンプリング系を洗浄する必要があり、正しい測定結果を得るまでに長時間を要していた。
【0009】
そこで本発明は、試料水中の有機物を酸化分解して二酸化炭素に変換し、その試料水から二酸化炭素を移行させた測定水の導電率を測定することにより試料水中の有機物濃度を定量する方式のTOC計において、シリンジポンプを用いて試料水に酸を添加することなく試料水のpHを調整することができるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかるTOC計は、酸性のpH調整液が流れる流路と試料水が流れる流路とがイオン交換膜を介して接触し、両流路間に電圧を印加するための電極を備え、該電極によりpH調整液が流れる流路側が陽極、試料水が流れる流路側が陰極となるように両流路間に電圧を印加することによりpH調整液から試料水へ陰イオンを移行させて試料水のpHを酸性側に調整するpH調整部と、pH調整部を経た試料水から二酸化炭素を除去するIC除去部と、IC除去部を経た試料水中の有機物を酸化させて二酸化炭素に変換する酸化分解部と、酸化分解部を経た試料水が流れる流路と純水又は脱イオン水からなる測定水が流れる流路とが気液分離膜を介して接触しており、試料水中の二酸化炭素を測定水へ移行させるための二酸化炭素抽出部と、二酸化炭素抽出部を経た測定水の導電率を測定する導電率測定部と、を備えたものである。
【0011】
pH調整部を経たpH調整液が流れる流路と二酸化炭素抽出部を経た試料水が流れる流路とがイオン交換膜を介して接触し、両流路間に電圧を印加するための電極を備え、該電極によりpH調整液が流れる流路側が陰極、試料水が流れる流路側が陽極となるように両流路間に電圧を印加することにより試料水からpH調整液へ陰イオンを移行させる陰イオン回収部をさらに備え、陰イオン回収部を経たpH調整液がpH調整部へ供給されるように構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のTOC計では、試料水のpHを調整するためのpH調整部が、酸性のpH調整液が流れる流路と試料水が流れる流路とがイオン交換膜を介して接触し、両流路間に電圧を印加するための電極を備え、該電極によりpH調整液が流れる流路側が陽極、試料水が流れる流路側が陰極となるように両流路間に電圧を印加することによりpH調整液から試料水へ陰イオンを移行させるようになっているので、酸を添加することなく試料水のpHを調整することができる。酸を添加する必要がないので、リン酸などの酸を購入して補充する必要もなく、酸を試料水に添加するためのシリンジポンプやロータリーバルブも不要になる。ロータリーバルブが不要となることにより、サンプリングの系におけるデッドボリュームが小さくなるので、サンプリング系に残留する液体がほとんどなくなり、外部から二酸化炭素が侵入してサンプリング系内の液体に溶け込むこともなくなる。これにより、超純水など極めて有機物濃度の低い試料水を測定する場合でも、試料水を数時間も流し続ける必要がなくなり、従来のTOC計よりも迅速に超純水などの測定を行なうことができる。
【0013】
pH調整部を経たpH調整液が流れる流路と二酸化炭素抽出部を経た試料水が流れる流路とがイオン交換膜を介して接触し、両流路間に電圧を印加するための電極を備え、該電極によりpH調整液が流れる流路側が陰極、試料水が流れる流路側が陽極となるように両流路間に電圧を印加することにより試料水からpH調整液へ陰イオンを移行させる陰イオン回収部をさらに備えているようにすれば、試料水から陰イオンを回収することで酸性の試料水を廃液として排出することを防止でき、環境負荷を軽減することができる。陰イオン回収部を経たpH調整液がpH調整部へ供給されるように構成すれば、回収した陰イオンを試料水のpH調整に再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施例のTOC計を概略的に示すブロック図である。
【図2】同実施例におけるpH調整部の構造を示す断面図である。
【図3】同実施例における二酸化炭素抽出部の構造を示す断面図である。
【図4】同実施例における陰イオン回収部の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
TOC計の一実施例を説明する。図1は一実施例のTOC計を概略的に示すブロック図である。図2はpH調整部の構造の一例を具体的に示す断面図である。図3は二酸化炭素抽出部の構造の一例を具体的に示す断面図である。図4は陰イオン回収部構造の一例を具体的に示す断面図である。
試料水を流通させる試料水流路2上に、上流側から順にpH調整部4、IC除去部6、酸化分解部8、二酸化炭素抽出部10及び酸回収部12が設けられている。
【0016】
pH調整部4は、図2に示されているように、イオン交換膜27を間に挟んで重ねあわされた基板26a,26bからなる。基板26a,26bのそれぞれのイオン交換膜27側の面の対向する位置に試料水流路2及びpH調整液流路14の一部をなす流路が形成されている。すなわち、pH調整部4では、試料水とpH調整液とがイオン交換膜27を介して接している。後述するが、pH調整液流路14はpH調整液リザーバ16に貯留されたpH調整液を流通させるための流路である。イオン交換膜としては、例えばパーフルオロカーボン系イオン交換膜を用いる。具体的な製品としては、デュポン社製ナフィオンやアストム社製ネオセプタを用いる。pH調整液は例えば濃度が10〜100mMの硫酸である。
【0017】
基板26a,26bに形成されている両流路2,14の底面にはそれぞれ電極28a,28bが形成されている。試料水流路2側が陽極、pH調整液流路14側が陰極となるように両電極28a−28b間に電圧が印加され、pH調整液が硫酸である場合には、SO42-がイオン交換膜を透過して試料水へ移行するとともに、試料水流路2側では電気分解によってH+が生成されることにより試料水のpHが低下する。試料水を酸性にすることにより試料水中のIC(無機体炭素)が二酸化炭素に変換される。なお、試料水中の二酸化炭素がイオン化することを防止するために、試料水のpHは2以下に調整されることが好ましい。試料水のpHの調整はpH調整液の酸濃度、電極28a,28b間の印加電圧、及び試料水とpH調整液の流量などの条件を調整することにより行なう。試料水流路2は閉流路であるので、ここままでは試料水のpHを調整することはできるが、予備的な試験としてpH調整部4とIC除去部6の間の流路2から試料水を取り出してpHを測定し、所定のpHになるように条件の設定を行なう。
【0018】
pH調整液流路14はpH調整液をpH調整液リザーバ16−pH調整部4−酸回収部12−pH調整液リザーバ16の順で循環させるように構成されている。陰イオン回収部12については後述する。
図示は省略されているが、IC除去部6としては、試料水流路2の一部がガス透過膜で構成されるとともに真空ポンプで減圧されており、試料水中に溶存する二酸化炭素のみがガス透過膜を通過して試料水から除去されるようになっているものが挙げられる。
【0019】
酸化分解部8は試料水流路2を流れる試料水に短波長の紫外線を照射することにより、試料水中の有機物を酸化分解して二酸化炭素に変換するものである。酸化分解部8の構造としては、例えば紫外線ランプの周囲に試料水流路2がらせん状に巻かれたものや、2枚の基板の間に試料水流路2が形成され、その試料水流路2内に外部から紫外線が照射されるものが挙げられる。いずれの構造においても、酸化分解部8において試料水流路2を形成する管や基板は、例えば合成石英などの短波長の紫外線を透過させやすい材質からなるものであることが好ましい。紫外線ランプとしては低圧水銀ランプが挙げられる。
【0020】
二酸化炭素抽出部10は、図3に示されているように、気液分離膜31を間に挟んで重ね合わされた2枚の基板30a,30bからなる。基板30a,30bの気液分離膜31側の面の対向する位置に試料水流路2及び測定水流路18の一部をなす流路が形成されている。基板30aに形成されている試料水流路2には酸化分解部8を経た試料水が流れ、基板30bに形成されている測定水流路にはイオン交換部18を経た測定水リザーバ20からの測定水が流れる。気液分離膜31としては例えばPTFE製多孔質膜(具体的な製品としては例えば住友電工ファインポリマー社製のポアフロン)を用いる。
【0021】
気液分離膜10の試料水流路2を流れる試料水は試料水に含まれていた有機物が酸化分解部8において酸化分解されて生成された二酸化炭素を含んでおり、その試料水流路2と測定水流路18が気液分離膜31を介して接していることにより、ガス成分である二酸化炭素のみが気液分離膜31を透過して測定水流路18側へ移行する。
【0022】
測定水流路18は測定水リザーバ20−イオン交換部22−二酸化炭素抽出部10−導電率測定部24−測定水リザーバ20の順で測定水が循環するように構成されている。測定水リザーバ20に貯留された測定水はイオン交換部22で二酸化炭素などの不純物を取り除かれた後、二酸化炭素抽出部10において試料水から抽出された二酸化炭素を保持し、導電率測定部24で導電率を測定される。測定水としては脱イオン水を挙げることができる。イオン交換部22はイオン交換膜を備えており、測定水をイオン交換膜に通すことによって不純物を取り除くことができる。脱イオン水の導電率は18.2MΩ/cm(25℃)に近いことが望ましい。導電率測定部24は二酸化炭素抽出部10を経た測定水の導電率を測定する。導電率測定部24において二酸化炭素抽出部10を経た測定水の導電率を測定することにより、二酸化炭素抽出部10において試料水から測定水へ移行した二酸化炭素濃度を計測でき、その二酸化炭素量から元来試料水中に含まれていた有機物濃度を定量することができる。つまり、脱イオン水である測定水の導電率は二酸化炭素抽出部10で試料水から移行した二酸化炭素が溶け込むことにより上昇するので、二酸化炭素抽出部10へ入る標準試料水の濃度と導電率測定部24の導電率測定値との関係を予め検量線として求めておくことにより、未知試料水の二酸化炭素濃度を測定することができるのである
【0023】
導電率測定部24、測定水ザーバ20、イオン交換部22及び二酸化炭素抽出部10の一部からなる導電率測定系の具体的な構成としては、例えば特許文献2に開示されている構造のものを使用することができる。
【0024】
陰イオン回収部12は、図4に示されているように、イオン交換膜33を間に挟んで重ね合わされた2枚の基板32a,32bからなる。基板32a,32bのイオン交換膜33側の面に試料水流路2及びpH調整液流路14の一部をなす流路が形成されている。基板32aに形成されている試料水流路2にはpH二酸化炭素抽出部10を経た試料水が流れ、基板32bに形成されているpH調整液流路14にはpH調整部4を経たpH調整液が流れる。すなわち、陰イオン回収部12では、二酸化炭素抽出部10を経た試料水とpH調整部4を経たpH調整液がイオン交換膜33を介して接している。
【0025】
基板32a,32bに形成された各流路2,14の底面に電極34a,34bが形成されている。イオン交換膜としては、例えばパーフルオロカーボン系イオン交換膜を用いる。具体的な製品としては、デュポン社製ナフィオンやアストム社製ネオセプタを用いる。陰イオン回収部12では、pH調整流路14側が陽極、試料水流路2側が陰極となるように両電極34a−34b間に電圧が印加され、試料水中のSO42-がイオン交換膜33を透過してpH調整液へ移行するとともに、陰極における水の電気分解によって試料水中にOH-が生成する。これにより、試料水はpHが上昇して中性付近になった状態で外部へ排出され、pH調整液はSO42-を回収することによって強酸となった状態で再びpH調整液リザーバ16に貯留される。
【0026】
両電極では、水の電気分解により水素ガスや酸素が発生する。特に、図2における試料水流路2を流れる試料水中に気泡が発生した場合、図1における二酸化炭素抽出部10で用いるガス交換膜が、例えばPTFE製多孔質膜だった場合は気泡が導電率測定部24へ移動し、移動した気泡が導電率測定に影響する可能性がある。その場合は、導電率測定部24に流れる純水の圧力を図1の試料水流路2に流れる試料水の圧力よりも高めて、PTFE製多孔質膜を通じて気泡が移動することを防ぐことが必要である。多孔質膜を挟んだ流路間の圧力差を利用して多孔質膜を通じた気泡の移動を制御できることについては特許文献3に詳細に記載されている。
【0027】
また、電気分解で水が水素ガスや酸素になるため、水は減っていく。したがって、時々純水を硫酸水溶液へ足すことが必要である。硫酸濃度はおおよそ10〜100mMである。
【0028】
同実施例のTOC計における有機物濃度測定動作を図1を参照しながら試料水の流れに沿って説明する。
このTOC計に導入された試料水はまずpH調整部4における電気分解とpH調整液からの陰イオンの提供によりpHが例えば2以下に調整される。このような強酸性となった試料水では、試料水中に含まれていたICが二酸化炭素に変換されるとともに、二酸化炭素のイオン化が防止される。
【0029】
pH調整部4を経た試料水に無機炭素(IC)として溶存する二酸化炭素はIC除去部6において除去される。
IC除去部6を経た試料水は酸化分解部8に導入される。酸化分解部8では、試料水中の有機物が紫外線照射されることにより酸化分解され、二酸化炭素に変換される。
【0030】
次に、酸化分解部8を経た試料水は二酸化炭素抽出部10に導入される。二酸化炭素抽出部10では、試料水が測定水と気液分離膜33を介して接しており、二酸化炭素のみが木液分離膜33を透過して測定水へ移行し、抽出される。二酸化炭素抽出部10を流れる測定水はイオン交換部22で二酸化炭素などの不純物を除去された脱イオン水である。試料水から二酸化炭素を抽出した測定水は導電率測定部24において導電率を測定された後、測定水リザーバ20に貯留される。測定水の導電率と試料水の有機物濃度は予め関係付けられており、測定水の導電率から試料水に含まれていた有機物濃度を定量することができる。
【0031】
二酸化炭素抽出部10を経た試料水は陰イオン回収部12に導入される。陰イオン回収部では、試料水がpH調整部4を経たpH調整液とイオン交換膜33を介して接している。陰イオン回収部12では試料水側が陰極、pH調整液側が陽極となるように電圧が印加されており、試料水中のSO42-がイオン交換膜33を透過してpH調整液に回収される。さらに、陰極側の電気分解によって試料水中にOH-が生成し、試料水のpHが上昇する。陰イオン回収部12を出た試料水は外部に排出されることから、陰イオン回収部12では試料水が中性になる程度にpHが調整されることが好ましい。
【0032】
なお、図示は省略されているが、試料水はポンプによって汲み上げられて試料水流路2に導入されている。pH調整液流路14上及び測定水流路18上にもそれぞれポンプが設けられており、それらのポンプによって各液体が各流路14,18内を流通する。
【0033】
以上のように、この実施例に示されているTOC計は、試料水にリン酸などの酸を添加するのではなく、試料水にイオン交換膜27を介してpH調整液である硫酸を接触させるとともに、試料水側が陽極、pH調整液側が陰極となるように電圧を印加することで、試料水のpHを調整して酸性にするように構成されているので、リン酸が不要となり、リン酸の補充やリン酸を廃棄するための特別の作業を行なう必要がなくなる。酸を添加する方式ではないので、シリンジポンプやロータリーバルブを使用しない。
【0034】
強酸となった試料水は陰イオン回収部12においてpH調整液によってSO42-を回収されるとともにpHが中性付近に調整されるため、試料水の排出に際して環境負荷を低減することができる。SO42-を回収したpH調整液は再び強酸となってpH調整液リザーバ16に戻されるため、再びpH調整部4における試料水のpH調整に使用することができ、酸を添加して試料水のpHを調整する方式に比べて、酸の消費量を低く抑えることができる。
【符号の説明】
【0035】
2 試料水流路
4 pH調整部
6 IC除去部
8 酸化分解部
10 二酸化炭素抽出部
12 陰イオン回収部
14 pH調整液流路
16 pH調整液リザーバ
18 測定水流路
20 測定水リザーバ
22 イオン交換部
24 導電率測定部
27,33 イオン交換膜
28a,28b,34a,34b 電極
31 気液分離膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性のpH調整液が流れる流路と試料水が流れる流路とがイオン交換膜を介して接触し、両流路間に電圧を印加するための電極を備え、該電極によりpH調整液が流れる流路側が陽極、試料水が流れる流路側が陰極となるように両流路間に電圧を印加することによりpH調整液から試料水へ陰イオンを移行させて試料水のpHを酸性側に調整するpH調整部と、
前記pH調整部を経た試料水から二酸化炭素を除去するIC除去部と、
前記IC除去部を経た試料水中の有機物を酸化させて二酸化炭素に変換する酸化分解部と、
前記酸化分解部を経た試料水が流れる流路と純水又は脱イオン水からなる測定水が流れる流路とが気液分離膜を介して接触しており、試料水中の二酸化炭素を測定水へ移行させるための二酸化炭素抽出部と、
前記二酸化炭素抽出部を経た測定水の導電率を測定する導電率測定部と、を備えた全有機体炭素測定装置。
【請求項2】
前記pH調整部を経たpH調整液が流れる流路と前記二酸化炭素抽出部を経た試料水が流れる流路とがイオン交換膜を介して接触し、両流路間に電圧を印加するための電極を備え、該電極によりpH調整液が流れる流路側が陰極、試料水が流れる流路側が陽極となるように両流路間に電圧を印加することにより試料水からpH調整液へ陰イオンを移行させる陰イオン回収部をさらに備え、
前記陰イオン回収部を経たpH調整液が前記pH調整部へ供給されるように構成されている請求項1に記載の全有機体炭素測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−216977(P2010−216977A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63825(P2009−63825)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】