説明

全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンド、該樹脂コンパウンドの製造方法、光ピックアップ用部品、及び該部品の製造方法

全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンド、該樹脂コンパウンドの製造方法、光ピックアップ用部品、及び該部品の製造方法が開示され、該全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンドは、溶融点の異なる2種の全芳香族液晶ポリエステル樹脂及び添加剤を含み、該樹脂のうち溶融点の低い樹脂は、その末端基のほとんどがカルボン酸基から構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンド、該樹脂コンパウンドの製造方法、光ピックアップ用部品、及び該部品の製造方法に係り、さらに詳細には、溶融点の異なる2種の全芳香族液晶ポリエステル樹脂及び添加剤を含み、前記樹脂のうち溶融点の低い樹脂は、その末端基のほとんどがカルボン酸基から構成されている全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンド、前記樹脂コンパウンドの製造方法、前記樹脂コンパウンドを含む光ピックアップ用部品、及び前記部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、耐熱性及び寸法安定性にすぐれ、溶融時に流動性が優秀であり、精密射出成形材料として、電子部品分野を中心に広く使われている。特に、寸法安定性と電気絶縁性とにすぐれ、電子材料用フィルム及び基板用素材として、その用途が拡大している。
【0003】
このような全芳香族液晶ポリエステル樹脂のうち荷重下の熱変形温度が250℃以上である樹脂は、光ピックアップ用部品などの高耐熱性の要求される用途に主に使われる。また、前記全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、その合成に使われる単量体の組成によって、分子構造の硬直性または直線性が変わるという特性がある。従って、前記特性を利用して、原料単量体の組成を適当に調節し、溶融点が400℃以上であり、荷重下の熱変形温度が320℃以上である高耐熱性の全芳香族液晶ポリエステル樹脂を得ることも可能である。
【0004】
しかし、このような高耐熱性の全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、溶融点が高く、加工が困難であるという問題点がある。
【0005】
また、光ピックアップ用部品などの軽薄短小化傾向によって、高耐熱性の全芳香族液晶ポリエステル樹脂の加工性、特に、高流動性が要求されており、併せて、前記樹脂の高温加工時に、脱ガスの発生量が多くあってはならない。
【0006】
本明細書で、「脱ガス」とは、全芳香族液晶ポリエステル樹脂及びこれを含む樹脂コンパウンドを高温で加工するとき、前記高温加工過程で、前記樹脂または前記樹脂コンパウンドから発生するガスを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一具現例は、溶融点の異なる2種の全芳香族液晶ポリエステル樹脂及び添加剤を含み、前記樹脂のうち溶融点の低い樹脂は、その末端基のほとんどがカルボン酸基から構成されている全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンドを提供する。
本発明の他の具現例は、前記全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンドを製造する方法を提供する。
本発明のさらに他の具現例は、前記全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンドを含む光ピックアップ用部品を提供する。
本発明のさらに他の具現例は、前記全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンドを使用する光ピックアップ用部品の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、高溶融点を有する第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂と、低溶融点を有する第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂と、添加剤と、を含み、前記第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂の高溶融点(Tm1)および前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂の低溶融点(Tm2)は、下記条件を満足する全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンドを提供する:
370℃≦Tm1≦440℃、
310℃≦Tm2≦380℃、
20℃≦Tm1−Tm2≦80℃。
【0009】
前記第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、全体反復単位において、芳香族ヒドロキシカルボン酸から由来する反復単位(A)40〜60モル%、芳香族ジオールから由来する反復単位(B)10〜30モル%、及び芳香族ジカルボン酸から由来する反復単位(C)10〜25モル%を含んでもよい。
【0010】
前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、芳香族ヒドロキシカルボン酸から由来する反復単位(A)、芳香族ジオールから由来する反復単位(B)、及び芳香族ジカルボン酸から由来する反復単位(C)を含み、前記反復単位(A)、(B)及び(C)は、下記条件を満足する:
40モル%≦反復単位(A)/全体反復単位≦60モル%、
10モル%≦反復単位(B)/全体反復単位≦30モル%、
80モル%≦反復単位(B)/反復単位(C)≦100モル%。
【0011】
前記反復単位(A)は、パラヒドロキシベンゾ酸及び2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸からなる群から選択された1種以上の化合物から由来し、前記反復単位(B)は、ビフェノール及びヒドロキノンのうち少なくとも1種以上の化合物から由来し、前記反復単位(C)は、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びテレフタル酸からなる群から選択される1種以上の化合物から由来してもよい。
【0012】
前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂のうち前記反復単位(C)は、下記条件を満足する:
15モル%≦イソフタル酸から由来する反復単位(C)/(テレフタル酸から由来する反復単位(C)+イソフタル酸から由来する反復単位(C))≦35モル%。
【0013】
前記第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂のうち前記反復単位(C)は、全体反復単位において、テレフタル酸から由来する反復単位(C)10〜25モル%、及びイソフタル酸から由来する反復単位(C)0〜5モル%を含んでもよい。
【0014】
前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂の含有量は、前記第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂100重量部に対して、5〜40重量部であってもよい。
【0015】
前記添加剤は、無機添加剤及び有機添加剤のうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0016】
前記無機添加剤は、ガラスファイバ、滑石、炭酸カルシウム、雲母、粘土またはそれらのうち2以上の混合物を含み、前記有機添加剤は、炭素ファイバを含んでもよい。
【0017】
前記添加剤の含有量は、前記第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂及び前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂の合計含有量100重量部に対して、10〜100重量部であってもよい。
【0018】
本発明の他の側面は、前記全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンドを含む光ピックアップ用部品を提供する。
【0019】
本発明のさらに他の側面は、前記全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンドを、前記溶融点(Tm1)より10〜40℃高い温度で成形する段階を含む光ピックアップ用部品の製造方法を提供する。
【0020】
本発明のさらに他の側面は、高溶融点を有する第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂100重量部、低溶融点を有する第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂5〜40重量部、及び前記第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂と前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂との合計含有量100重量部を基準とする添加剤10〜100重量部を混合して溶融混練する段階を含み、前記第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂の高溶融点(Tm1)と、前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂の低溶融点(Tm2)は、下記条件を満足する全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンドの製造方法を提供する:
370℃≦Tm1≦440℃、
310℃≦Tm2≦380℃、
20℃≦Tm1−Tm2≦80℃。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一具現例によれば、溶融点の異なる2種の全芳香族液晶ポリエステル樹脂及び添加剤を含み、前記樹脂のうち溶融点の低い樹脂は、その末端基のほとんどがカルボン酸基から構成されることによって流動性が向上し、高温加工時に脱ガスの発生が抑制された全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンド、前記樹脂コンパウンドの製造方法、前記樹脂コンパウンドを含む光ピックアップ用部品、及び前記部品の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一具現例による全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンド、前記樹脂コンパウンドの製造方法、光ピックアップ用部品及び前記部品の製造方法について詳細に説明する。
【0023】
本発明の一具現例による全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンドは、高溶融点を有する第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂、低溶融点を有する第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂及び添加剤を含み、前記第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂の高溶融点(Tm1)と、前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂の低溶融点(Tm2)は、下記条件を満足する:
370℃≦Tm1≦440℃、
310℃≦Tm2≦380℃、
20℃≦Tm1−Tm2≦80℃。
【0024】
前記溶融点(Tm1)が370℃以上であるならば、全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンドの耐熱度低下の心配が少なく、440℃以下であるならば、最終全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンドの流動性低下の心配が少なくて射出成形が容易になる。また、前記溶融点(Tm2)が310℃以上であるならば、全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンドの耐熱度低下の心配が少なく、前記樹脂コンパウンドにブリスタが発生せず、380℃以下であるならば、全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンドの流動性上昇効果が大きい。また、前記溶融点(Tm1)−前記溶融点(Tm2)が20℃以上であるならば、全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンドの流動性上昇効果が明確であり、80℃以下であるならば、前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂が熱分解される心配が少ない。
【0025】
前記第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、全体反復単位において、芳香族ヒドロキシカルボン酸から由来する反復単位(A)40〜60モル%、芳香族ジオールから由来する反復単位(B)10〜30モル%、及び芳香族ジカルボン酸から由来する反復単位(C)10〜25モル%を含んでもよい。前記反復単位(A)、反復単位(B)及び反復単位(C)の含有量がそれぞれ前記範囲以内であるならば、前記第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂の耐熱度及び流動性低下の心配が少なくて射出成形が容易になる。
【0026】
また、前記第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂のうち前記反復単位(C)は、全体反復単位において、テレフタル酸から由来する反復単位(C)10〜25モル%、及びイソフタル酸から由来する反復単位(C)0〜5モル%を含んでもよい。
【0027】
前記反復単位(A)は、パラヒドロキシベンゾ酸及び2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸からなる群から選択された1種以上の化合物から由来したものであり、前記反復単位(B)は、ビフェノール及びヒドロキノンのうち少なくとも1種以上の化合物から由来したものであり、前記反復単位(C)は、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びテレフタル酸からなる群から選択される1種以上の化合物から由来したものであってもよい。
【0028】
前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、その末端基のほとんどがカルボン酸基から構成されており、高温加工時でもそれ以上が反応が起こらず、脱ガスの発生が抑制される。
【0029】
また、前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、芳香族ヒドロキシカルボン酸から由来する反復単位(A)、芳香族ジオールから由来する反復単位(B)、及び芳香族ジカルボン酸から由来する反復単位(C)を含み、前記反復単位(A)、(B)及び(C)は、下記条件を満足する:
40モル%≦反復単位(A)/全体反復単位≦60モル%、
10モル%≦反復単位(B)/全体反復単位≦30モル%、
80モル%≦反復単位(B)/反復単位(C)≦100モル%。
【0030】
前記反復単位(A)が全体反復単位において、40モル%以上であるならば、前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂の液晶性発現が良好であり、60モル%以下であるならば、前記樹脂の融点が過度に上がったり、あるいは分子鎖の過度のこわばりを防止することができる。また、前記反復単位(B)が全体反復単位において、10モル%以上30モル%以下であるならば、十分な大きさの分子量を得ることができる。また、前記反復単位(B)/反復単位(C)が80モル%以上であるならば、十分な大きさの分子量を得ることができ、100モル%以下であるならば、前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂が末端基としてカルボン酸基ではない他の種類の作用基を含まないようになり、高温加工時に末端基間で追加反応を起こさずに脱ガスの発生量が減少する。
【0031】
また、前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂のうち前記反復単位(C)は、テレフタル酸から由来する反復単位(C)と、イソフタル酸から由来する反復単位(C)とを下記割合で含んでもよい:
15モル%≦イソフタル酸から由来する反復単位(C)/(テレフタル酸から由来する反復単位(C)+イソフタル酸から由来する反復単位(C))≦35モル%。
【0032】
前記反復単位(C)/(反復単位(C)+反復単位(C))が15モル%以上であるならば、前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂の分子鎖が柔軟性を維持することができ、35モル%以下であるならば、前記樹脂の融点が過度に低くならずに適当なレベルを維持することができる。
【0033】
前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂の含有量は、前記第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂100重量部に対して、5〜40重量部であってもよい。前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂の含有量が、前記第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂100重量部に対して、5重量部以上であるならば、全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンドの流動性改善効果が顕著であり、40重量部以下であるならば、全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンドの耐熱度低下の心配を低減させることができる。
【0034】
前記全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンドの製造に使われる高溶融点を有する第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂、及び低溶融点を有する第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、それぞれ下記段階を経て製造可能である:
(a)2種以上の原料単量体を重縮合することによって、全芳香族液晶ポリエステル・プレポリマーを合成する段階、及び
(b)前記プレポリマーを固相重縮合することによって、全芳香族液晶ポリエステル樹脂を合成する段階。
【0035】
前記(a)段階で使われる原料単量体は、前述のように、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール及び芳香族ジカルボン酸を含んでもよい。
【0036】
前記(a)段階の合成方法としては、溶液重縮合法、塊状重縮合法(bulk condensation polymerization)が使用されてもよい。また、前記(a)段階で、重縮合反応を促進するために、アシル化剤(特に、無水酢酸のようなアセチル化剤)などの化学物質で前処理され、反応性が上昇した単量体(すなわち、アシル化された単量体)を使用することができる。
【0037】
また、前記(a)段階の全芳香族液晶ポリエステル・プレポリマーを合成する段階には、反応促進のための触媒として、酢酸金属塩が追加して使用されてもよい。前記酢酸金属塩触媒は、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸鉛、酢酸アンチモン及び酢酸コバルトからなる群から選択された少なくとも1種を含んでもよい。前記酢酸金属塩触媒の使用量は、例えば、前記原料単量体の総使用量100重量部を基準にして、0.001ないし0.10重量部であってもよい。
【0038】
前記(b)段階の固相重縮合反応のためには、前記プレポリマーに適当な熱が提供されねばならず、このような熱提供方法としては、加熱板を利用する方法、熱風を利用する方法、高温の流体を利用する方法などがある。固相重縮合反応時に発生する副産物を除去するために、不活性ガスを利用したパージや真空による除去を実施することができる。
【0039】
前記第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂及び前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂にそれぞれ含まれる前述の反復単位は、下記の化学式のうちいずれか一つで表示されてもよい。
(1)芳香族ヒドロキシカルボン酸から由来する反復単位(A):
【0040】
【化1】

【0041】
【化2】

【0042】
【化3】

【0043】
【化4】

【0044】
【化5】

【0045】
(2)芳香族ジオールから由来する反復単位(B):
【0046】
【化6】

【0047】
【化7】

【0048】
【化8】

【0049】
【化9】

【0050】
(3)芳香族ジカルボン酸から由来する反復単位(C):
【0051】
【化10】

【0052】
【化11】

【0053】
【化12】

【0054】
【化13】

【0055】
【化14】

【0056】
【化15】

【0057】
【化16】

【0058】
【化17】

【0059】
前記化学式で、R及びRはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルコキシ基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20ヘテロアルキル基、置換または非置換のC−C30アリール基、置換または非置換のC−C30アリールアルキル基、置換または非置換のC−C30ヘテロアリール基、あるいは置換または非置換のC−C30ヘテロアリールアルキル基を示す。
【0060】
本明細書で「置換」とは、少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン基、ヒドロキシル基、アルキル基、アルコキシ基、アミン基またはそれらが組み合わされた置換基で置換されたことを意味する。
【0061】
前記添加剤は、無機添加剤及び/または有機添加剤を含んでもよい。前記無機添加剤は、ガラスファイバ、滑石、炭酸カルシウム、雲母、粘土またはそれらのうち2以上の混合物を含み、前記有機添加剤は、炭素ファイバを含んでもよい。前記無機添加剤と有機添加剤は、射出成形時に、成形体の機械的強度を向上させる役割を行う。
【0062】
また、前記添加剤の含有量は、前記第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂及び前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂の合計含有量100重量部に対して、10〜100重量部であってもよい。前記添加剤の含有量が、前記第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂及び前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂の合計含有量100重量部に対して、10重量部以上であるならば、前記添加剤の添加効果が明確であり、100重量部以下であるならば、全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンドの成形性及び強度が低下することがなく、高いレベルに維持される。
【0063】
一方、本発明の一具現例による光ピックアップ用部品は、前記全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンドを含む。
【0064】
本明細書で、「光ピックアップ用部品」とは、CD(compact disc)、MD(MiniDisc)などのディスク再生/記録装置にソフトウェアを記録したり、あるいは前記装置でソフトウェアを再生するときに、情報を読み取って電気信号に変換させる部品を意味する。
【0065】
一方、本発明の一具現例による光ピックアップ用部品の製造方法は、前記全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンドを、前記溶融点(Tm1)より10〜40℃高い温度で成形する段階を含む。前記成形温度が、前記溶融点(Tm1)+10℃未満であるならば、前記樹脂コンパウンドの流動性が悪化し、前記成形温度が、溶融点(Tm1)+40℃を超えれば、脱ガスの発生量が増加し、前記樹脂コンパウンドの物性及び製造された光ピックアップ用部品の物性が低下する。
【0066】
一方、前記全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンドは、高溶融点を有する第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂100重量部、低溶融点を有する第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂5〜40重量部、及び前記第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂と前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂との合計含有量100重量部を基準とする添加剤10〜100重量部を混合して溶融混練することによって製造可能であり、前記第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂の溶融点(Tm1)と、前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂の溶融点(Tm2)は、下記条件を満足する:
370℃≦Tm1≦440℃、
310℃≦Tm2≦380℃、
20℃≦Tm1−Tm2≦80℃。
【0067】
また、前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール及び過量の芳香族ジカルボン酸を含む単量体を使用して合成可能である。
【0068】
前記溶融混練のために、回分式混練機、二軸圧出機またはミキシングロールなどが使用されてもよい。また、円滑な溶融混練のために、溶融混練時に滑剤を使用することができる。
【0069】
以下、実施例を挙げて、発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は、このような実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0070】
〔製造例1〕
高溶融点を有する全芳香族液晶ポリエステル樹脂(LCP A)の製造
温度調節が可能な100リットル容量の回分式反応器に、パラヒドロキシベンゾ酸20.72kg(150モル)、ビフェノール13.97kg(75モル)及びテレフタル酸12.46kg(75モル)を投入して窒素ガスを注入し、前記反応器の内部空間を不活性状態にした後、前記反応器にアセト酸無水物(acetic anhydride)31.60kgをより添加した。次に、後述する重縮合反応を円滑に進めるために、前記反応器に酢酸カリウム4.00gをさらに添加した。その後、反応器の温度を30分で150℃まで昇温させ、前記温度で2時間、前記単量体中のアルコール機能基をアセチル化させた。次に、前記アセチル化反応で生成された酢酸を除去しつつ、反応器温度を1℃/分の速度で320℃まで昇温させ、単量体の重縮合反応によって、全芳香族液晶ポリエステル・プレポリマーを製造した。また、前記プレポリマー製造時に、副産物として酢酸がさらに生成されるが、この酢酸も、前記アセチル化反応で生成された酢酸と共に、前記プレポリマー製造の間に連続して除去した。次に、前記プレポリマーを反応器から回収して冷却固化させた。
【0071】
その後、前記全芳香族液晶ポリエステル・プレポリマーを微細に粉砕した後、前記粉砕された全芳香族液晶ポリエステル・プレポリマー35kgを、100リットル容量のロータリーキルン反応機に投入し、窒素を1Nm/時間の流速で流し続けつつ、重量減量開始温度である200℃まで1時間で昇温させた後、さらに325℃まで10時間で昇温させて1時間維持することによって、全芳香族液晶ポリエステル樹脂(LCP A)を製造した。次に、前記反応器を常温にて1時間冷却させた後、前記反応器から全芳香族液晶ポリエステル樹脂(LCP A)を回収した。
【0072】
示差注射熱量計(TA Instruments社、DSC2910)を使用して、前記樹脂(LCP A)の溶融点を測定した結果、その値は、405℃であった。
【0073】
〔製造例2〕
低溶融点を有する全芳香族液晶ポリエステル樹脂(LCP B)の製造
温度調節が可能な100リットル容量の回分式反応器に、パラヒドロキシベンゾ酸23.40kg(169.4モル)、ビフェノール10.45kg(56.1モル)、テレフタル酸8.10kg(48.8モル)及びイソフタル酸1.50kg(9.0モル)を投入して窒素ガスを注入し、前記反応器の内部空間を不活性状態にした後、前記反応器にアセト酸無水物(acetic anhydride)31.63kgをさらに添加した。次に、後述する重縮合反応を円滑に進めるために、前記反応器に酢酸カリウム3.68gをさらに添加した。その後、反応器温度を30分で150℃まで昇温させ、前記温度で2時間、前記単量体中のアルコール機能基をアセチル化させた。次に、前記アセチル化反応で生成された酢酸を除去しつつ、反応器温度を0.9℃/分の速度で315℃まで昇温させ、単量体の重縮合反応によって、全芳香族液晶ポリエステル・プレポリマーを製造した。また、前記プレポリマー製造時に副産物として酢酸がさらに生成されるが、この酢酸も、前記アセチル化反応で生成された酢酸と共に、前記プレポリマー製造の間に連続して除去した。次に、前記プレポリマーを反応器から回収して冷却固化させた。
【0074】
その後、前記全芳香族液晶ポリエステル・プレポリマーを微細に粉砕した後、前記粉砕された全芳香族液晶ポリエステル・プレポリマー35kgを100リットル容量のロータリーキルン反応機に投入し、窒素を1Nm/時間の流速で流し続けつつ、重量減量開始温度である200℃まで1時間で昇温させた後、さらに320℃まで10時間で昇温させて1時間維持することによって、全芳香族液晶ポリエステル樹脂(LCP B)を製造した。次に、前記反応器を常温にて1時間冷却させた後、前記反応器から全芳香族液晶ポリエステル樹脂(LCP B)を回収した。
【0075】
示差注射熱量計(TA Instruments社、DSC2910)を使用して、前記樹脂(LCP B)の溶融点を測定した結果、その値は、345℃であった。
【0076】
〔実施例1〜3および比較例1,2〕
全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンドの製造
前記製造例1で製造した全芳香族液晶ポリエステル樹脂(LCP A)、前記製造例2で製造した全芳香族液晶ポリエステル樹脂(LCP B)、及びガラスファイバ(直径が10μmであり、平均長が3mmである粉砕ガラスファイバ)を各実施例及び比較例によって、下記表1に記載された割合でそれぞれ混合し、二軸圧出機(Dr.Collin社、ZK25)を使用して、420℃のシリンダ温度条件下で溶融混練することによって、全芳香族液晶ポリエステル樹脂のコンパウンドを製造した。前記樹脂コンパウンドの製造時、前記二軸圧出機を真空状態にして副産物を除去した。
【0077】
〔評価例〕
(耐熱度(=熱変形温度)の測定)
前記実施例1〜3及び比較例1,2で製造した全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンドで射出成形試験片を製造した後、前記試験片の耐熱度を評価して下記表1に示した。試験片の形状及び耐熱度の測定方法はASTM D648により、付与された圧力は、18.5kgf/cmである。
【0078】
(脱ガス発生量の測定)
前記実施例1〜3及び比較例1,2で製造したそれぞれの全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンド粉末を1mm以下に粉砕し、150℃で24時間熱処理した後、前記樹脂コンパウンドから発生する酢酸及びフェノールガスを、ガスクロマトグラフィを使用して定量分析した。具体的には、1mm以下に粉砕した前記樹脂コンパウンド粉末それぞれを定量し、蒸溜水で洗浄した後、真空乾燥させた25mlバイアルビンに入れ、テフロン(登録商標)材質からなるパッキングで密封した後、150℃に設定した熱風乾燥器内で24時間加熱し、前記樹脂コンパウンド粉末からガスを発生させた。次に、前記バイアルビンをヘッドスペース(Agilent 7694)、ガスクロマトグラフ(Agilent 6890)に装着し、前記バイアルビン内のガスを、DBWAX(Agilent社)を使用した20m長のカラムに注入し、FID検出器を使用して、初期温度50℃、昇温速度20℃/分、最終温度280℃の分析条件で前記ガスの量を測定した。
【0079】
(溶融粘度の測定)
溶融粘度測定装置(Rosand社、RH2000)を使用し、1.0mm×32mm毛細管で、425℃の温度及び1,000/sの剪断速度条件下で、前記製造例1で製造した全芳香族液晶ポリエステル樹脂(LCP A)、前記実施例1〜3及び比較例1,2で製造した全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンドの溶融粘度を測定し、下記表1に示した。
【0080】
(流動性の評価)
下記式によって、前記実施例1〜3及び比較例1,2で製造した全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンドの溶融粘度の比を評価して下記表1に示した。計算された溶融粘度の比の値が小さいほど、流動性が高いと見ることができる。
溶融粘度の比=(全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンドの溶融粘度)/(LCPAの溶融粘度)
【0081】
【表1】

【0082】
前記表1を参照すれば、実施例1〜3で製造した全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンドは、耐熱度及び流動性にすぐれつつも、脱ガスの発生量が少ないということが分かった。一方、比較例1,2で製造した全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンドは、流動性、脱ガス発生量及び耐熱度のうち少なくとも一つが過度に劣等していると分かった。
【0083】
従って、本発明の一具現例による全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンドは、高耐熱性が要求される光ピックアップ用部品の材料として有用に使用される。
【0084】
本発明は、具現例を参考にして説明したが、それらは例示的なものに過ぎず、本技術分野の当業者であるならば、それらから多様な変形及び均等な他の具現例が可能であるという点を理解するであろう。従って、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決まるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高溶融点を有する第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂と、
低溶融点を有する第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂と、
添加剤と、を含み、
前記第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂の高溶融点(Tm1)および前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂の低溶融点(Tm2)は、下記条件、
370℃≦Tm1≦440℃、
310℃≦Tm2≦380℃、
20℃≦Tm1−Tm2≦80℃、
を満足する全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンド。
【請求項2】
前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂は、芳香族ヒドロキシカルボン酸から由来する反復単位(A)、芳香族ジオールから由来する反復単位(B)、及び芳香族ジカルボン酸から由来する反復単位(C)を含み、
前記反復単位(A)、(B)及び(C)は、下記条件、
40モル%≦反復単位(A)/全体反復単位≦60モル%、
10モル%≦反復単位(B)/全体反復単位≦30モル%、
80モル%≦反復単位(B)/反復単位(C)≦100モル%、
を満足する請求項1に記載の全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンド。
【請求項3】
前記反復単位(A)は、パラヒドロキシベンゾ酸及び2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸からなる群から選択された1種以上の化合物から由来し、
前記反復単位(B)は、ビフェノール及びヒドロキノンのうち少なくとも1種以上の化合物から由来し、
前記反復単位(C)は、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びテレフタル酸からなる群から選択される1種以上の化合物から由来する請求項2に記載の全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンド。
【請求項4】
前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂のうち前記反復単位(C)は、下記条件、
15モル%≦イソフタル酸から由来する反復単位(C2)/(テレフタル酸から由来する反復単位(C1)+イソフタル酸から由来する反復単位(C2))≦35モル%、
を満足する請求項3に記載の全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンド。
【請求項5】
前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂の含有量は、前記第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂100重量部に対して、5〜40重量部である請求項1に記載の全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンド。
【請求項6】
前記添加剤は、ガラスファイバ、滑石、炭酸カルシウム、雲母、粘土またはそれらのうち2以上の混合物を含む無機添加剤、及び炭素ファイバを含む有機添加剤からなる群から選択された少なくとも1つの添加剤を含み、
前記添加剤の含有量は、前記第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂及び前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂の合計含有量100重量部に対して、10〜100重量部である請求項1に記載の全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンド。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のうち、いずれか1項に記載の全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンドを含む光ピックアップ用部品。
【請求項8】
高溶融点を有する第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂100重量部、低溶融点を有する第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂5〜40重量部、及び前記第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂と前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂との合計含有量100重量部に対して添加剤10〜100重量部を混合して溶融混練する段階を含み、
前記第1全芳香族液晶ポリエステル樹脂の高溶融点(Tm1)と、前記第2全芳香族液晶ポリエステル樹脂の低溶融点(Tm2)は、下記条件、
370℃≦Tm1≦440℃、
310℃≦Tm2≦380℃、
20℃≦Tm1−Tm2≦80℃、
を満足する全芳香族液晶ポリエステル樹脂コンパウンドの製造方法。


【公表番号】特表2013−508498(P2013−508498A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535126(P2012−535126)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際出願番号】PCT/KR2010/007215
【国際公開番号】WO2011/049378
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(500323513)三星精密化学株式会社 (22)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG FINE CHEMICALS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】190 YEOCHEON−DONG, NAM−GU, ULSAN−CITY 680−090, REPUBLIC OF KOREA
【Fターム(参考)】