説明

全面に印字可能な磁気カード及びその製造方法

【課題】
磁気記録層がカードの1部分に形成されている磁気カードであっても、磁気記録層が目立たず、磁気記録層の読み取りに支障がなく、かつ、磁気記録層面も含むカード全面に高意匠性で印字ができる磁気カード及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
カード表面の一部に磁気記録部を設けてなる磁気カードにおいて、前記磁気記録部がインクジェット受容層、隠蔽層及び磁気記録層からなり、前記カードが少なくともインクジェット受容層及びカード基材からなり、前記磁気記録部のインクジェット受容層及び前記カードのインクジェット受容層が、カチオン性ウレタン系樹脂とカチオン性フィックス剤とフィラーとを含み、前記磁気記録層が磁性体及びウレタン系樹脂を含み、前記磁気カードの前記磁気記録部を含めた磁気カード全面にインクジェット方式で印字ができることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気カードに関し、さらに詳しくは、ストライプ状などの形状を有する磁気記録層がカードの1部分に形成されてい磁気カードであっても、セキュリティー性に優れ、磁気記録層が目立たず、磁気記録層の読み取りに支障がなく、かつ、磁気記録層面も含むカード全面に印字ができ、意匠性に優れる磁気カードに関するものである。
【0002】
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。また、「PET」は「ポリエチレンテレフタレート」、「PVC」は「ポリ塩化ビニール」の略語、機能的表現、通称、又は業界用語である。
【背景技術】
【0003】
(主なる用途)本発明の磁気カードの主なる用途としては、クレジットカード、キャッシュカードなどの金融系カード、社員証、会員証、学生証などのIDカード、ギフト券、入場証、通行証、サービスポイントなどの、一定の金額を払い込んだ(プリペイドという)権利や資格などを証明するカードなどに適用できる。しかしながら、磁気記録層などの異材料がカードの1部分に形成されていても、磁気記録層面も含むカード全面に印字を必要とする用途であれば、特に限定されるものではない。
【0004】
(背景技術)磁気カードは保持者の確認手段として使われることが多く、不正に入手した他人が使用できないように、カード保持者毎に特有な暗証などの個人情報を磁気記録層に記憶させておき、カード保持者が記憶する暗証情報と照合して使用される。ところが、クレジットカードのように、商品やサービスの購入時に使用する場合では暗証情報を使用せず、磁気カードの裏面に記入された保持者の署名と、レシートの写しになされる署名との照合が行なわれるが、厳密な筆跡鑑定を行なうほどではないから、不正に入手したクレジットカードが使用されることがある。そこで、カードの表面にカード保持者の顔写真を形成して、使用者の顔と照合手段として使用することが行なわれている。また、顔写真以外にも、カードの用途に応じてカード名、愛称名、イラスト、会員番号や注意事項などの文字、記号などの画像が多く記載されている。顔写真や会員番号は保持者の個人情報であり、1人1人異なるために、予め大量に印刷しておけない。そこでカード名などの共通情報が印刷され、個人情報画像の入っていない生カードを量産しておき、該生カードの1枚1枚へ、1人1人の個人情報(可変情報)を印字した画像を記録することが行われている。顔写真などの画像はデジタル情報に基づいて、熱転写方式による印字で行われていた。画像は昇華転写方式による印字もあるが、カード及び磁気記録層の表面材料が制約される欠点がある。
また、磁気カードの磁気記録層はカードの1部に磁気ストライプなどの磁気部分を転写したり、磁性体を含む塗料を部分的に塗布したりするために、磁気カードの全面に印字方式により画像を形成しようとすると、磁気ストライプや磁気塗布部分が下層にある部分と無い部分とで、材料の差、表面凹凸、表面張力や吸収性などの物性の差、微妙な段差がある。このために、磁気ストライプ面とカード面とで、印字される画像の濃度の差、艶の差などが生じて、画像の品質が損なわれる。画像を磁気ストライプ面へ印字すると、画像の絵柄部分が凸状に形成され、磁気情報を記録し再生を行なう場合に、凸状の印刷インキの有無、厚み差のために磁気記録層表面と磁気ヘッドとの間のギャップが変化し、磁気記録層の場所によって信号出力の損失(スペースロス)や変動し、信号ジッターや出力レベルが異常をきたし磁気情報の記録や再生妨げとなる。このために、画像は磁気記録層以外のハード表面の余白部分又は裏面に施されるので、画像を印字する面積が減少してしまい、また、画像の位置が制約されるために、意匠性も悪かった。
従って、ストライプ状などの形状を有する磁気記録層がカードの1部分に形成されている磁気カードであっても、セキュリティー性に優れ、磁気記録層が目立たず、磁気記録層の読み取りに支障がなく、かつ、磁気記録層面も含むカード全面に高意匠性で印字ができる磁気カードが求められている。
【0005】
(先行技術)従来、磁気記録媒体は、非磁性基体に磁気記録層を設け、その上に印刷のための多孔質層を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、基体の全面に磁気記録層を設けねばならず、第3図に磁気ストライプと思われる部分磁気記録層が図示されているが、予め磁気ストライプを事前に設けた生カードを作成した後に、多孔質層を設けねばならず、生カードの製造工程が極めて煩雑で高コストであるという問題点がある。
また、カード用の画像形成方法としては、基材層の表面に積層したインク定着層及び剥離可能に積層したインク受像層とを有するカードに対し、昇華性染料インクを用いてインクジェット方式でカードに画像の印刷を行い、加熱処理してインク受像層に保持した昇華性染料インクをインク定着層に拡散・発色させて画像を形成し、インク受像層を剥離する方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、インクジェット用インキに昇華性染料インクという特殊で高価なインキを用いなければならず、印字−加熱−剥離と工程が煩雑で、剥離して捨てる材料もあって、高コストであるという問題点がある。
さらに、本出願人も、磁気記録層上に隠蔽層、表面物性差緩和層及び受像層を順に積層して、磁気記録層の有無による物性の差を解消して印字できる部分的な磁気記録層を有する磁気カードを開示知している(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、磁気記録層上の厚みが厚くなり磁気信号の書き込み読み取りが不安定であったり、印字が昇華転写方式に限定されたりするという欠点があり、また、昇華又は熱転写インクリボンから一次転写では、一次転写を終わった昇華又は熱転写インクリボンには、転写印字されて抜けた部分があるインクリボンが排出され、該排出インクリボンの抜け部分は秘密にしたい個人情報などであり、該個人情報などが廃棄されるインクリボンから容易に知られてしまうという危険性もあった。
【0006】
【特許文献1】特開昭62−52719号公報
【特許文献2】特開2002−205454号公報
【特許文献3】特開2002−92581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は上記のような問題点を解消するために、本発明者らは鋭意研究を進め、本発明の完成に至ったものである。その目的は、ストライプ状などの形状を有する磁気記録層がカードの1部分に形成されている磁気カードであっても、セキュリティー性に優れ、磁気記録層が目立たず、磁気記録層の読み取りに支障がなく、かつ、磁気記録層面も含むカード全面に高意匠性で印字ができる磁気カード及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明に係わる磁気カードは、カード表面の一部に磁気記録部を設けてなる磁気カードにおいて、前記磁気記録部がインクジェット受容層、隠蔽層及び磁気記録層からなり、前記カードが少なくともインクジェット受容層及びカード基材からなり、前記磁気記録部のインクジェット受容層及び前記カードのインクジェット受容層が、カチオン性ウレタン系樹脂とカチオン性フィックス剤とフィラーとを含み、前記磁気記録層が磁性体及びウレタン系樹脂を含み、前記磁気カードの前記磁気記録部を含めた磁気カード全面にインクジェット方式で印字ができるように、したものである。
請求項2の発明に係わる磁気カードは、上記磁気記録部がストライプ状であり、上記磁気記録部の磁気記録層と上記カードのインクジェット受容層との間に接着層を有しないように、したものである。
請求項3の発明に係わる磁気カードの製造方法は、請求項2に記載の磁気カードの製造方法であって、(1)インクジェット受容層をカード基材の少なくとも一方の面に有するカード材料を準備するカード材料準備工程と、(2)転写基材と、該転写基材の一方の面に、離型層、インクジェット受容層、隠蔽層及び磁気記録層からなる、磁気転写箔を準備する磁気転写箔準備工程と、(3)前記磁気転写箔を前記磁気カードの短辺より小幅にスリットして、ストライプ状磁気転写箔とするスリット工程と、(4)前記カード材料のインクジェット受容層面へ、前記ストライプ状磁気転写箔の磁気記録層を重ね合せて加熱加圧した後に、転写基材及び離型層を剥離し除去して、インクジェット受容層、隠蔽層及び磁気記録層を転写する転写工程と、からなるように、したものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の本発明によれば、磁気記録層がカードの1部分に形成されている磁気カードであっても、セキュリティー性に優れ、磁気記録層が目立たず、磁気記録層の読み取りに支障がなく、かつ、磁気記録層面も含むカード全面に高意匠性で印字ができる磁気カードが提供される。
請求項2の本発明によれば、請求項1の効果に加えて、ストライプ状の磁気記録層を、接着層を設けず、材料費及び工程が少ないので、低コストな磁気カードが提供される。
請求項3の本発明によれば、セキュリティー性に優れ、磁気記録層が目立たず、磁気記録層の読み取りに支障がなく、かつ、磁気記録層面も含むカード全面に高意匠性で印字ができる、ストライプ状の磁気記録層を有する磁気カードの製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、本発明に用いるカード材料の断面図である。
図2は、本発明に用いる磁気転写箔の断面図である。
図3は、本発明の磁気カードの製造を説明する説明用断面図である。
図4は、本発明の1実施例を示す磁気カードの断面図である。
図5は、本発明の磁気カードの製造方法のステップ図である。
【0011】
(磁気カード)本発明の磁気カード100は、図4に示すように、カード表面の一部に磁気記録部31を設ける。磁気記録部31は、図2に示す磁気転写箔10から転写されてなるインクジェット受容層15、隠蔽層17及び磁気記録層19からなり、カード材料103は、図1に示すように、少なくともインクジェット受容層25及びカード基材101からなる。かつ、磁気記録部31のインクジェット受容層15及びカードのインクジェット受容層25が、カチオン性ウレタン系樹脂とカチオン性フィックス剤とフィラーとを含み、磁気記録層31が磁性体及びウレタン系樹脂を含む。このようにすることで、磁気カード100の磁気記録部31を含めた磁気カード100全面にインクジェット方式で印字して画像を形成することができる。
【0012】
(カード材料)カード材料103は、図1に示すように、少なくともインクジェット受容層25及びカード基材101からなる。
【0013】
(カード基材)カード基材101としては、磁気カードの担体となる基材であり、その材料としては特に限定されないが、例えばポリエチレン(PE)、PET、PVC、ポリカーボネイト(PC)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)など一般的に使用されるプラスチック材料、アート紙、コート紙、合成紙などの紙等を例示でき、これらの材料を単独又は複数を積層して用いてもよい。
【0014】
(インクジェット受容層)カード基材101へインクジェット受容層25を設ける。該インクジェット受容層25は少なくともカチオン性ウレタン系樹脂とカチオン性フィックス剤とフィラーとを含むようにする。また、カード基材101インクジェット受容層15との間には、接着性の向上など必要に応じて、例えばポリエステル系樹脂やウレタン系樹脂などからなる種々の公知の材料のプライマ層23を設けてもよい。
カチオン性ウレタン系樹脂としてはカチオン性基を有するポリカーボネート系ポリウレタン、ポリテトラメチレンエーテルグリコール系ポリウレタン、ポリエステルエーテル系ポリウレタン、ポリブチレンアジペート系ポリウレタン、ポリメチルペンタンアジペート系ポリウレタン、ポリノナンジオールアジペート/ポリオクタンアジペート系ポリウレタン、ポリメチルペンタンアジペート系ポリウレタンなどのウレタン系樹脂で、好ましくは自己乳化性又は水性で、カチオン性親水基を有するポリカーボネート系又はポリエステル系のポリオールと脂肪族イソシアネートの反応物が好ましい。カチオン性基としては1〜3級アミン或いは4級アンモニウム塩基などが例示できる。カチオン性フィックス剤としては、ポリアミン誘導体や第4級アンモニウム塩などの染料固着剤が例示できる。フィラーとしては、箔切れ性を良くし、透明性を害さない程度に含有させ、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、プラスチックピグメント等の透明性の高い微粒子やワックス等で、マイクロシリカが好ましい。
【0015】
カチオン性ウレタン系樹脂とカチオン性フィックス剤とマイクロシリカの割合が質量基準でカチオン性ウレタン系樹脂:カチオン性フィックス剤:マイクロシリカ=100:5〜20:1〜10である。カチオン性フィックス剤の含有割合が上記範囲未満では定着性が悪く、上記範囲を越えると洗濯中に溶出して堅牢性を低下させる。マイクロシリカの含有割合が上記範囲未満ではインキ定着性と箔キレ性が悪く、上記範囲を越えると透明性が低下し画像が見えにくくなる。
【0016】
(定着性)従来の受容層はポリビニルアルコールなどの水溶性樹脂を主体とするもので、耐水性は著しく悪く、また、多孔質質のフィラーを用いたり、受容層塗工液の溶媒として良溶媒と貧溶媒を用いて、乾燥中に相分離、ゲル化させて多孔質の網目構造とさせたり、していたが、画像の定着性が充分でなく、洗濯時に画像が淡くなる問題点もあった。本発明のカード材料103のインクジェット受容層25によれば、インクジェット方式によって印画された画像は高画質で定着性がよく、洗濯堅牢度も向上する。定着性と洗濯堅牢度の両立は定かではないが、カチオン性ウレタン系樹脂とカチオン性フィックス剤とフィラーとを含むことで、塗膜自身の凝集状態が密ではなくかなり粗状になっているために、画像成分の浸透性や密着性が向上し、また、画像を構成する染料などがカチオン性ウレタン系樹脂やカチオン性フィックス剤と反応し不溶化するため、と推測される。
【0017】
(形成法)カチオン性ウレタン系樹脂とカチオン性フィックス剤とフィラーとを含み、必要に応じて添加剤を含ませて、溶媒で適宜粘度を調整して、インクジェット受容層組成物として、公知のグラビア印刷、ロールコーティングなどで塗布し乾燥すればよい。
【0018】
(磁気転写箔)磁気転写箔10は、図2に示すように、転写基材11と、該転写基材11の一方の面に、離型層13、インクジェット受容層15、隠蔽層17及び磁気記録層19からなる。
【0019】
(転写箔基材)転写箔基材11としては、従来の転写箔に使用されているものと同じ基材をそのまま用いることができ、特に限定するものではない。好ましい基材11の具体例としては、グラシン紙、コンデンサー紙またはパラフィン紙等の薄紙、あるいは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリエチレン誘導体、ポリメチルペンテン等のプラスチックの延伸または未延伸フィルムが挙げられる。また、これらの材料を2種以上積層した複合フィルムも使用することができる。基材フィルムの厚さは、その強度および耐熱性等が適切になるように材料に応じて適宜選択することができるが、通常は1〜100μm程度のものが好ましく用いられる。
【0020】
(離型層)離型層13としては、通常、離型性樹脂、離型剤を含んだ樹脂、電離放射線で架橋する硬化性樹脂などがある。離型層の形成は、該樹脂を溶媒へ分散又は溶解して、ロールコート、グラビアコートなどの公知のコーティング方法で、塗布し乾燥して、温度150℃〜200℃程度で焼き付ける。離型層の厚さとしては、通常は0.01μm〜5.0μm程度、好ましくは0.5μm〜3.0μm程度である。また、転写時の剥離性を向上させるために、離型層13面へ必要に応じて、剥離層を設けてもよく、離型層及び剥離層の両方を設け、離型層と剥離層との間で剥離させることで、より転写性を向上できる。剥離層は転写後には被転写体へ転写移行して、保護層としての機能を合わせ持つが、インクジェット方式でのインキの定着性は若干低下する。
【0021】
剥離層としては、一般的には酢酸セルロースなどのセルロース誘導体、ポリ(メタ)クリル酸エチルなどのアクリル系樹脂、ポリビニルブチラールなどのビニル共重合体の熱可塑性樹脂や、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノアルキッド樹脂などの熱硬化型の樹脂を用いて形成することができる。また、剥離層には箔切れ性を向上させるために、マイクロシリカやポリエチレンワックスなどのフィラーを含有させることが好ましい。剥離層は、上記の樹脂を溶媒へ分散又は溶解して、ロールコート、グラビアコートなどの公知のコーティング方法で、少なくとも1部に塗布し乾燥して塗膜を形成したりすれば良い。剥離層の厚さとしては、通常は0.1μm〜5μm程度、好ましくは0.5μm〜2μmである。
【0022】
(インクジェット受容層)磁気転写箔10のインクジェット受容層15としては、カード基材101のインクジェット受容層25と同じものを用いる。即ち、インクジェット受容層15も少なくともカチオン性ウレタン系樹脂とカチオン性フィックス剤とフィラーとを含むようにする。
【0023】
(隠蔽層)隠蔽層17は、後述する磁気記録層19は磁性体の色相に由来する暗色に着色しており、小さなカードでは、大いにデザイン上の支障となったり、磁気記録層の存在を知られたりするから、磁気記録層19を覆い隠す目的で積層する。隠蔽層17としては、蒸着層や塗布層の1又は複数の層を用いる。塗布層としては、バインダー樹脂中に、顔料及び/又は金属粒子、並びにその他の添加剤を溶剤および希釈剤と共に混合して、溶解もしくは分散させた塗料組成物を用い、公知のグラビアコーティング法、ロールコーティング法などにより、塗布し、乾燥すればよい。好ましくは金色、もしくは銀色等の金属色を呈する金属もしくは合金の粒子が主成分とし、必要に応じてさらに二酸化チタン等の隠蔽性の高い顔料を含む塗料組成物である。蒸着層としては、アルミニウムなどの金属を公知の真空蒸着法などで薄膜を形成すればよい。
【0024】
(磁気記録層)磁気記録層19は、クレジットカードのATM機等に見られるように、磁気ヘッドに接触させて、記録されている信号を読み取り、証明書が真正であるか、あるいは使用が正当である旨を判定するためのもので、磁性の酸化物をバインダ中に分散させたものである。磁気記録層19は、γ−Fe23、Fe34、CrO2、Fe、Fe−Cr、Fe−Co、Co−Cr、Co−Ni、MnAl、Baフェライト、Srフェライトなどの従来公知の磁性微粒子を、バインダへ分散されてなる組成物である。該組成物を溶剤などへ分散又は溶解させた組成物インキを用いて、公知のコーティング法で、カード基材21上へ、組成物インキを塗布して、乾燥し、必要に応じて、温度30℃〜70℃で適宜エージング、または、電離放射線(紫外線、電子線など)を照射して、形成すれば良い。コーティング法としては、例えば、ロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、コンマコート、ダイコートなどが適用できる。該塗布方法で磁気記録層19を形成する場合には、その膜厚は1〜100μm、好ましくは5〜20μm程度である。
【0025】
なお、γ−Fe23などの磁性微粒子が分散されるバインダの材料としては、ブチラール樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂、アクリル樹脂、スチレン/マレイン酸共重合体樹脂などが用いられ、必要に応じて、ニトリルゴムなどのゴム系樹脂あるいはウレタンエラストマーなどを添加することができる。また、必要に応じて、界面活性剤、シランカップリング剤、可塑剤、ワックス、シリコーンオイル、カーボンその他の添加剤を使用することができる。なお、磁気転写箔10の磁気記録層19のバインダとしてウレタン系樹脂を用い、カード材料103のインクジェット受容層25にもウレタン系樹脂を含むことで、磁気転写箔10に通常設ける接着層を設けなくとも、転写時に充分な密着が得られる。
【0026】
(製造方法)本発明の磁気カードの製造方法は、図5に示すように、(1)インクジェット受容層25をカード基材101の少なくとも一方の面に有するカード材料103を準備するカード材料準備工程と、(2)転写基材11と、該転写基材11の一方の面に、離型層13、インクジェット受容層15、隠蔽層17及び磁気記録層19からなる、磁気転写箔10を準備する磁気転写箔準備工程と、(3)前記磁気転写箔10を前記磁気カードの短辺より小幅にスリットして、ストライプ状磁気転写箔とするスリット工程と、(4)前記カード材料103のインクジェット受容層25面へ、前記ストライプ状磁気転写箔10の磁気記録層19を重ね合せて加熱加圧した後に、転写基材11及び離型層13を剥離し除去して、インクジェット受容層15、隠蔽層17及び磁気記録層19を転写する転写工程の4ステップからなる
【0027】
(カード材料準備工程)まず、カード材料103を準備する。前述した材料及び形成方法を用いて、カード基材101の少なくとも一方の面に、インクジェット受容層25を塗布し乾燥する。
【0028】
(磁気転写箔準備工程)次に、磁気転写箔10を準備する。前述した材料及び形成方法を用いて、転写基材11の一方の面に、離型層13、インクジェット受容層15、隠蔽層17及び磁気記録層19を形成する。
【0029】
(スリット工程)磁気転写箔10を、適宜必要とする幅に、公知のスリット方法でスリットする。
【0030】
(転写工程)所望幅にスリットした磁気転写箔10の磁気記録層19を、カード材料103のインクジェット受容層25面へ重ね合せて加熱加圧した後に、転写基材11及び離型層13を剥離し除去して、インクジェット受容層15、隠蔽層17及び磁気記録層19を転写する転写工程で、図4に示すような、本発明の磁気カード100となる。
【0031】
(厚さ)隠蔽層17及びインクジェット受容層15の厚さが厚いと、磁気記録層19面の上に厚い層を形成ことになり、磁気記録層19を利用した書込みもしくは読出しが次第に困難となる。このために、実用上、磁気記録層19上に積層する、隠蔽層17及びインクジェット受容層15の各層の厚みの合計(他の層を積層する場合には、それらの層の厚みも含める。)が3〜15μm程度、好ましくは10μm以下である。一般的に用いられる塗布による隠蔽層17は、磁気記録層19を見えなく隠蔽するためで、通常3〜10μm程度、好ましくは4〜7μmである。また、インクジェット受容層15は、インクジェットインクを受容し保持するものであるから、薄すぎると得られる画像の濃度が低下するほか、インクジェット受容層15の厚みを均一に形成することが困難となることから、1〜10μm程度、好ましくは2〜5μmである。
【0032】
(磁気記録層カード)このようにして得られた磁気カード100の全面は、インクジェット受容層15及びインクジェット受容層25で覆われており、磁気カード100の全面にインクジェット方式で画像を形成することができる。もちろん、1部に画像を設けてもよい。インクジェット方式は特に限定されず、例えば、バブルジェット(登録商標)方式、パルスジェット方式、荷電制御方式などの公知のものでよい。画像の色も特に限定されず、カラー、単色、複色などいずれでもよい。画像のパターンも特に限定されず、文字、記号、数字、イラスト、写真などいずれでもよい。
【0033】
(インクジェット画像)インクジェット受容層15は下地に暗色の磁気記録層19を有するが、隠蔽層17で隠蔽されておりインクジェット受容層25の色調とほとんど差異がなく、磁気記録層は目立たず、磁気記録部が目視できないのでセキュリティー性に優れる。また、インクジェット受容層15及びインクジェット受容層25とでは磁気記録層19と隠蔽層17の厚さ分だけ段差があるが、その厚さは極めて薄く、インクジェット方式での印字に支障はなく、ストライプ状などの形状を有する磁気記録層がカードの1部分に形成されている本発明の磁気カードであっても、磁気記録層面も含むカード全面に、高画質で画像をインクジェット方式で印字ができる。従来の磁気記録層カードでは、画像は磁気記録層以外のカード表面の余白部分に施されるので、画像を印字する面積が減少してしまい、また、画像の位置が制約されるために、意匠性も悪かったが、本発明の磁気カードでは、磁気記録層面も含むカード全面に画像をインクジェット方式で印字ができるので、大きなデザインを自由に描け、意匠性を向上させることができる。
【0034】
(磁気情報)また、磁気記録層19へ磁気情報を記録したり、再生したりする場合に、凸状の印刷インキの有無、厚み差があると、磁気記録層19表面と磁気ヘッドとの間のギャップが変化し、信号出力の損失(スペースロス)したり、変動したりして磁気情報の記録や再生妨げとなる。しかしながら、本発明の磁気カードでは、インクジェット受容層15及びインクジェット受容層25とに跨って画像を形成しても、該画像はインクジェット受容層15にほとんどが吸収され定着されるので、画像部分の厚さが増して凸状となることはない。従って、磁気記録層19面の隠蔽層17と画像が形成されたインクジェット受容層15の厚さは変化せず、磁気情報の記録や再生の妨げにはならず、磁気記録層19の読み取りに支障がない。
【実施例】
【0035】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。なお、溶媒を除き、各層の各組成物は固形分換算の質量部である。
【0036】
(実施例1)(1)まず、カード基材101として、厚み250μmのPETフィルムの片面に、厚さが1μmのプライマ層23、厚みが5μmのインクジェット受容層25を下記の各層形成用組成物を用いて、順次積層して、20カードを面付けした大判サイズのカード材料103を準備した。なお、プライマ層23とインクジェット受容層25はグラビアコーティング方式により形成した。
・<プライマ層組成物途工液>
ポリエステル樹脂 10質量部
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 10質量部
溶媒(MEK:トルエン=1:1) 80質量部
・<受容層組成物(pH=3.5)>
第4級アンモニウム塩型ポリカーボネート系ポリウレタン 20質量部
ダンフィックス505RE(日東紡績社製;ポリカチオン性フィックス剤)2質量部
マイクロシリカ(平均粒子径0.5μ) 1質量部
溶媒(水:IPA=3:1) 80質量部
(2)次に、基材11として厚さ25μmのPETフィルムを用い、該基材11の一方の面へ、厚さが2μmの離型層13、厚さが5μmのインクジェット受容層15、厚さが5μmの隠蔽層17、厚さが12μmの磁気記録層19を下記の各層形成用組成物を用いて、順次積層して、巻取り状の磁気転写箔10を準備した。なお、離型層13はグラビアコーティング方式で塗布し乾燥して180℃20秒間焼き付け、インクジェット受容層15と隠蔽層17はロールコティング方式、磁気記録層19はグラビアリバースコーティング方式で塗布し乾燥させて、さらに80℃で3日間エージングしてさせて形成した。
・<離型層組成物途工液>
TCM01メジューム(大日本インキ社製、メラミン樹脂商品名) 20質量部
溶媒(トルエン:メチルエチルケトン) 80質量部
・<受容層組成物(pH=3.5)>
第4級アンモニウム塩型ポリカーボネート系ポリウレタン 20質量部
ダンフィックス505RE(日東紡績社製;ポリカチオン性フィックス剤)2質量部
マイクロシリカ(平均粒子径0.5μ) 1質量部
溶媒(水:IPA=3:1) 80質量部
・<隠蔽層組成物>
ポリウレタン系樹脂 5質量部
ポリエステル系樹脂 5質量部
酸化チタン 36質量部
イソシアネート系硬化剤 1質量部
溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1) 105質量部
・<磁気記録層組成物>
バリウムフェライト(磁性材料) 36質量部
ウレタン樹脂 12質量部
カーボン 2質量部
イソシアネート系硬化剤 2質量部
溶媒(トルエン) 20質量部
溶媒(メチルエチルケトン:メチルイソブチルケトン=1:1)30質量部
(3)上記で作成した巻取り状の磁気転写箔10を6mm幅にスリットして、巻取り状のストライプ状磁気転写箔とした。
(4)4本の上記ストライプ状磁気転写箔10の磁気記録層19を大判サイズの上記カード材料103のインクジェット受容層25面の所定の位置へ重ね合せて加熱加圧した後に、転写基材11及び離型層13を剥離し除去した。インクジェット受容層15/隠蔽層17/磁気記録層19がストライプ状に転写された、インクジェット受容層25/プライマ層23/カード基材101からなる磁気カードを得た。該磁気カードをJISで定めるカードサイズ(86mm×54mm)に打抜き、実施例1の磁気カード100を得た。
【0037】
(評価)上記で得た実施例1の磁気カード100の磁気記録層19面にはインクジェット受容層15が、また、カード基材面にはインクジェット受容層25で覆われ、全面がインクジェット受容層で覆われていた。該受容層面へインクジェット印刷法で顔料系インキを用いて、顔写真、氏名、会社名、社員番号を印字し、同時に磁気記録層19ヘは社員番号を含む個人情報を磁気的に記録し社員証とした。該社員証の顔写真は高画質で、氏名、会社名、社員番号も問題なく画像が形成でき、また、磁気読取機(ゲート)で磁気情報を読んだところ、問題なく読み取れた。
【0038】
(実施例2)カード基材101としては、総厚さが0.76mmの表面側塩ビオーバーシート/表面側塩ビセンターコア/裏面側塩ビセンターコア/裏面側塩ビオーバーシートからなる4層の公知のクレジットカード用のカード基材を用い、磁気転写箔10としては、実施例1で作製した、基材11/離型層13/インクジェット受容層15/隠蔽層17/磁気記録層19からなる巻取り状の磁気転写箔10を6mm幅にスリットして、ストライプ状磁気転写箔として用いた。まず、20面付けした大判サイズの表面側塩ビオーバーシートの表面側へ、厚さが1μmのプライマ層23、厚みが5μmのインクジェット受容層25を下記の各層形成用組成物を用いて、順次積層した。なお、プライマ層23とインクジェット受容層25はグラビアコーティング方式により形成した。
・<プライマ層組成物途工液>
ポリエステル樹脂 10質量部
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 10質量部
溶媒(MEK:トルエン=1:1) 80質量部
・<受容層組成物(pH=3.5)>
第4級アンモニウム塩型ポリカーボネート系ポリウレタン 20質量部
ダンフィックス505RE(日東紡績社製;ポリカチオン性フィックス剤)2質量部
マイクロシリカ(平均粒子径0.5μ) 1質量部
溶媒(水:IPA=3:1) 80質量部
該表面側塩ビオーバーシートのインクジェット受容層25面の所定の位置へ、4本のストライプ状磁気転写箔を用いて加熱加圧して転写し、基材11/離型層13を剥離し除去して、インクジェット受容層15/隠蔽層17/磁気記録層19が移行した表面側塩ビオーバーシートを得た。該表面側塩ビオーバーシートを、表面側塩ビセンターコア、裏面側塩ビセンターコア及び裏面側塩ビオーバーシートを重ねて、公知の熱プレス法で積層して、インクジェット受容層15/隠蔽層17/磁気記録層19がストライプ状に転写された、インクジェット受容層25/プライマ層23/カード基材101からなる磁気カードを得た。該磁気カードをJISで定めるカードサイズ(86mm×54mm)に打抜き、実施例2の磁気カード100を得た。
【0039】
(評価)上記で得た実施例2の磁気カード100の磁気記録層19面にはインクジェット受容層15が、また、カード基材面にはインクジェット受容層25で覆われ、全面がインクジェット受容層で覆われていた。該受容層面へインクジェット印刷法で顔料系インキを用いて、顔写真、氏名、会社名、社員番号を印字し、同時に磁気記録層19ヘは社員番号を含む個人情報を磁気的に記録し社員証とした。該社員証の顔写真は高画質で、氏名、会社名、社員番号も問題なく画像が形成でき、また、磁気読取機(ゲート)で磁気情報を読んだところ、問題なく読み取れた。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に用いるカード材料の断面図である。
【図2】本発明に用いる磁気転写箔の断面図である。
【図3】本発明の磁気カードの製造を説明する説明用断面図である。
【図4】本発明の1実施例を示す磁気カードの断面図である。
【図5】本発明の磁気カードの製造方法のステップ図である。
【符号の説明】
【0041】
10:磁気転写箔
11:転写基材
13:離型層
15、25:インクジェット受容層
17:隠蔽層
19:磁気記録層
23:プライマ層
31:磁気記録部
100:磁気カード
101:カード基材
103:カード材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード表面の一部に磁気記録部を設けてなる磁気カードにおいて、前記磁気記録部がインクジェット受容層、隠蔽層及び磁気記録層からなり、前記カードが少なくともインクジェット受容層及びカード基材からなり、前記磁気記録部のインクジェット受容層及び前記カードのインクジェット受容層が、カチオン性ウレタン系樹脂とカチオン性フィックス剤とフィラーとを含み、前記磁気記録層が磁性体及びウレタン系樹脂を含み、前記磁気カードの前記磁気記録部を含めた磁気カード全面にインクジェット方式で印字ができることを特徴とする磁気カード。
【請求項2】
上記磁気記録部がストライプ状であり、上記磁気記録部の磁気記録層と上記カードのインクジェット受容層との間に接着層を有しないことを特徴とする請求項1に記載の磁気カード。
【請求項3】
請求項2に記載の磁気カードの製造方法であって、(1)インクジェット受容層をカード基材の少なくとも一方の面に有するカード材料を準備するカード材料準備工程と、(2)転写基材と、該転写基材の一方の面に、離型層、インクジェット受容層、隠蔽層及び磁気記録層からなる、磁気転写箔を準備する磁気転写箔準備工程と、(3)前記磁気転写箔を前記磁気カードの短辺より小幅にスリットして、ストライプ状磁気転写箔とするスリット工程と、(4)前記カード材料のインクジェット受容層面へ、前記ストライプ状磁気転写箔の磁気記録層を重ね合せて加熱加圧した後に、転写基材及び離型層を剥離し除去して、インクジェット受容層、隠蔽層及び磁気記録層を転写する転写工程と、からなることを特徴とする磁気カードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−104516(P2009−104516A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277430(P2007−277430)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】