説明

共下がり防止治具およびヤットコ、鋼管矢板の打設方法

【課題】鋼管矢板の共下がり現象の発生を容易かつ確実に防止することが可能な共下がり防止治具およびヤットコ、鋼管矢板の打設方法を提供することを目的とする。
【解決手段】継手22,23の外側面に固定される一対の固定部2,2と、外周面に雄ネジが形成された軸部材3と、この軸部材3の軸方向に沿って摺動可能・周方向に沿って回転可能とされ、かつ略台形ブロック状に形成されたキャンバー4,5と、このキャンバー4,5を上下から挟み込むようにして軸部材3に螺合する複数の締結部材6,6とを備え、一対の継手22,23のうち、先行打設される鋼管矢板10側の継手22に位置するキャンバー4の傾斜面4aは下向きとされ、後行打設される鋼管矢板10側の継手23に位置するキャンバー5の傾斜面5aは上向きとされている。すなわち、キャンバー同士の当接を利用して鋼管矢板の共下がりを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先行打設された鋼管矢板の共下がり現象の発生を防止する共下がり防止治具と、この共下がり防止治具が取り付けられたヤットコと、このヤットコを用いる鋼管矢板の打設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より土木、建築工事等の現場で各種の鋼管矢板が用いられてきた。このような鋼管矢板の筒状本体の外側面には、軸方向に沿ってスリットが形成された小径の円形鋼管である一対の継手管が取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。
鋼管矢板の施工にあたっては、複数の鋼管矢板を、所定の並設方向に沿って並設するとともに、隣接する鋼管矢板の継手管同士のスリット部分を係合しながら、これら複数の鋼管矢板を地中に打設する、という方法が採られている。
また、鋼管矢板の打設の際には、その上端部に、筒状本体と、この筒状本体の外側面に取り付けられた一対の継手管とを有することによって該鋼管矢板の断面形状と略等しい形状に形成されたヤットコを連結し、このヤットコの長さ分、鋼管矢板を地中に深く打設する方法が採られる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−082654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、鋼管矢板の打設工事は、先行して打設された鋼管矢板に隣接して、さらに別の鋼管矢板を打設する工程で行われるが、このような打設工事中に、先行打設された鋼管矢板が、打設中の後行する鋼管矢板に追随して埋没する共下がり現象が発生する場合がある。共下がりしてしまった先行打設側の鋼管矢板は、クレーン等を用いて、その都度引き出さなければならず、手間である。
このような共下がり現象の発生を防止するため、例えば、継手管に潤滑剤を塗布して摩擦抵抗を減らしたり、先行打設側の鋼管矢板とH型鋼等の枠材と溶接によって仮止めし、枠材の抵抗によって先行打設側の鋼管矢板の沈下を防止したりする方法が採られている。
しかしながら、継手管に潤滑剤を塗布する方法では、鋼管矢板ごとに潤滑剤を塗布する手間がかかるだけでなく、共下がり現象の発生を防止する効果は確実性に欠ける。一方、鋼管矢板と枠材とを溶接して仮止めする方法では、溶接にかなりの時間を要するため施工性が悪い。
【0005】
本発明の課題は、鋼管矢板の共下がり現象の発生を容易かつ確実に防止することが可能な共下がり防止治具およびヤットコ、鋼管矢板の打設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、鋼管矢板の上端部に連結される筒状本体と、この筒状本体の外側面の反対側位置に該筒状本体の軸方向に沿って接合された一対の継手とを有するヤットコのうち、これら一対の継手の上端部にそれぞれ取り付けられる共下がり防止治具であって、
前記継手の外側面に、該継手の軸方向に所定間隔をあけて固定される一対の固定部と、これら一対の固定部間に架設されるとともに外周面に雄ネジが形成された軸部材と、この軸部材の軸方向に沿って摺動可能・周方向に沿って回転可能とされ、かつ略台形ブロック状に形成されたキャンバーと、このキャンバーを上下から挟み込むようにして前記軸部材に螺合する複数の締結部材とを備えており、
前記一対の継手のうち、前記ヤットコが連結する鋼管矢板よりも先行打設される鋼管矢板側の継手に位置するキャンバーの傾斜面は下向きとされており、前記ヤットコが連結する鋼管矢板よりも後行打設される鋼管矢板側の継手に位置するキャンバーの傾斜面は上向きとされていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の共下がり防止治具が取り付けられるヤットコであって、
前記筒状本体と、前記共下がり防止治具がそれぞれ取り付けられる一対の継手と、この筒状本体と前記鋼管矢板とを連結する連結手段とを有しており、
前記連結手段は、前記筒状本体の上端部に形成されるフランジ部と、
このフランジ部に沿って複数並設されるとともに該筒状本体の下端部よりも下方に突出する複数の長ボルトと、
前記鋼管矢板の上端部付近に、該鋼管矢板の周方向に沿って複数設けられるとともに前記複数の長ボルトの下端部がそれぞれ螺合される長ボルト取付金具とを備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のヤットコにおいて、前記共下がり防止治具は、前記筒状本体と一対の継手とが並設する方向の両側面において前記一対の継手の上端部にそれぞれ取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載のヤットコを用いて、筒状本体と、この筒状本体の外側面の反対側位置に該筒状本体の軸方向に沿って接合された一対の継手とを有する鋼管矢板を、所定の並設方向に沿って継手しながら複数打設する鋼管矢板の打設方法であって、
先行打設する鋼管矢板を、その上端部が地上に露出するようにして所定深さまで地中に打設し、その後、この鋼管矢板の上端部にヤットコを取り付けるとともに、このヤットコの筒状本体と鋼管矢板とを前記連結手段によって連結し、さらに、この鋼管矢板を、前記ヤットコの上端部が地上に露出するようにして所定深さまで地中に打設する第1工程と、
先行打設された鋼管矢板に対し、所定の並設方向に沿って後行打設する鋼管矢板を隣接させるとともに隣り合う継手同士を係合しながら、該後行打設側の鋼管矢板を、その上端部が地上に露出するようにして所定深さまで地中に打設し、
その後、該後行打設側の鋼管矢板の上端部に、先行打設側のヤットコの継手と隣り合う継手とを係合しながら後行打設側のヤットコを取り付けるとともに、このヤットコの筒状本体と鋼管矢板とを前記連結手段によって連結し、さらに、この鋼管矢板を、前記ヤットコの上端部が地上に露出するようにして所定深さまで地中に打設する第2工程と、
先行打設側のヤットコの一方の継手に取り付けられた共下がり防止治具のキャンバーの上向きの傾斜面と、後行打設側のヤットコの他方の継手に取り付けられた共下がり防止治具のキャンバーの下向きの傾斜面とを当接させる第3工程と、
第2工程および第3工程を少なくとも1回以上繰り返し、所定の並設方向に沿って、上端部にヤットコが取り付けられた状態の複数の鋼管矢板を並設させた後、所定の並設方向に沿って並んだ複数のヤットコのうち最も先行打設側に位置するヤットコを引き抜き、
この引き抜いたヤットコの使用を完了するか、この引き抜いたヤットコを所定の並設方向の最も後行打設側に位置する鋼管矢板に隣接して新たに打設する鋼管矢板の上端部に再度取り付けるか、を選択する第4工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、互いに隣接するヤットコの係合し合う継手のそれぞれに取り付けられた共下がり防止治具のうち、先行打設された鋼管矢板側の共下がり防止治具のキャンバーの上向きの傾斜面と、後行打設された鋼管矢板側の共下がり防止治具のキャンバーの下向きの傾斜面とを当接させることができる。
したがって、この後行打設された鋼管矢板よりも、さらに後行打設される後々行打設側の鋼管矢板を地中に打設する際に、後行打設された鋼管矢板が、後々行打設される鋼管矢板に追随しようとする力が働くが、後行打設された鋼管矢板側の共下がり防止治具のキャンバーが、先行打設された鋼管矢板側の共下がり防止治具のキャンバーに当接しているために、共下がりしようとする力が抑えられることになる。
すなわち、互いに隣接するヤットコの係合し合う継手のそれぞれに取り付けられた共下がり防止治具のキャンバーの傾斜面同士を当接させるだけで、鋼管矢板の共下がり現象の発生を容易かつ確実に防止することができる。
また、施工誤差によってヤットコ同士が若干離間したり、若干近接したりする場合があるが、そのような場合は、キャンバーの傾斜面同士を当接させる際に、締結部材を緩めて、キャンバーを軸部材の軸方向に沿って摺動させることによって、双方のキャンバーの傾斜面同士を当接させることができる。したがって、ヤットコ同士の間隔に誤差が生じたとしても、双方の共下がり防止治具のキャンバーの傾斜面同士を当接させることができ、鋼管矢板の共下がり現象の発生を確実に防止することができる。
また、締結部材を緩めることによって、キャンバーを軸部材の軸方向に沿って摺動させるだけでなく、軸部材の周方向に沿って回転させることができるので、共下がり防止治具を継手に取り付けたまま、キャンバー同士が接触しないようにして、ヤットコを用いた鋼管矢板の打設工事を行うことができる。
さらに、ヤットコを地中から引き抜く際にもキャンバーを回転させて、傾斜面同士を離間させることで、共下がり防止機能を解除することができるので、先行打設された鋼管矢板側のヤットコであっても確実に引き抜くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の共下がり防止治具と、この共下がり防止治具が取り付けられた本発明のヤットコとを示す斜視図である。
【図2】共下がり防止治具による共下がり防止機能が作用している状態を示す斜視図である。
【図3】共下がり防止治具による共下がり防止機能を解除した状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の鋼管矢板の打設方法を示す概略図である。
【図5】本発明の鋼管矢板の打設方法の主要部の概要を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明に係る共下がり防止治具と、この共下がり防止治具が取り付けられたヤットコの一例を示す斜視図である。
図1において符号1は、共下がり防止治具を示し、符号20は、ヤットコを示す。
このヤットコ20は、図4および図5に示す鋼管矢板10の上端部に連結されるものであり、ヤットコ20とともに鋼管矢板10を杭打機32によって打設することによって、ヤットコ20の長さ分、鋼管矢板10を地中に深く打設できるようになっている。
【0013】
前記ヤットコ20は、円筒状の筒状本体21と、この筒状本体21の外側面の反対側位置に該筒状本体21の軸方向に沿って接合された一対の継手22,23と、筒状本体21と前記鋼管矢板10とを連結する連結手段とを有している。
【0014】
前記筒状本体21の下端部には、前記鋼管矢板10の内側面に差し込まれる環状の差込部21aが一体形成されている。この差込部21aの外径は、前記鋼管矢板10の内径よりも若干小さい外径に設定されている。
また、前記筒状本体21の上端部には、この筒状本体21を吊り上げるクレーンのフックが引っ掛けられる吊り治具27が一体的に設けられている。
【0015】
前記一対の継手22,23は、軸方向に沿ってスリット22a,23aが形成された小径の円形鋼管である。
また、スリット22aは、筒状本体21と一対の継手22,23とが直線状に並設する方向の一側面側に位置し、スリット23aは、他側面側に位置している。
ヤットコ20,20の隣り合う継手22,23同士は、互いのスリット22a,23aに対して、該継手22,23のスリット22a,23a側縁部を挿入しあうことによって互いに係合できるようになっている。すなわち、係合された継手22,23同士は、平面視において、C型の一方の継手22(23)と、逆C型の他方の継手23(22)とを組み合わせたような形状となっており、いわゆるP−P継手と呼ばれている。
【0016】
前記連結手段は、前記筒状本体21の上端部に形成されるフランジ部24と、このフランジ部24に沿って複数並設されるとともに該筒状本体21の下端部よりも下方に突出する複数の長ボルト25…と、前記鋼管矢板10の上端部付近に、該鋼管矢板10の周方向に沿って複数設けられるとともに前記複数の長ボルト25…の下端部がそれぞれ螺合される長ボルト取付金具14…とを備えている。
【0017】
前記フランジ部24は、一方の継手22から他方の継手23にかけて円弧状に形成されており、前記筒状本体21と一対の継手22,23との並設方向の両側面に設けられている。また、このフランジ部24には、円弧方向に沿って、前記長ボルト25…を挿通させるためのボルト挿通孔が形成されている。
また、このフランジ部24の下面には、このフランジ部24の延在方向に沿って点在するリブ部24a…が、前記筒状本体21の外側面とフランジ部24の下面とに一体的に設けられており、これらリブ部24a…によって前記フランジ部24を補強できるようになっている。
【0018】
前記長ボルト25…は、頭部が前記フランジ部24の上面に当接し、下端部が前記筒状本体21の下端部よりも下方に突出するようにして、前記筒状本体21の軸方向に沿って配置されており、少なくとも下端部付近の外周面には雄ネジが形成されている。
また、前記筒状本体21の下端部には、この長ボルト25…を挿通させるためのスリーブ26が、前記フランジ部24のボルト挿通孔の位置に対応して取り付けられており、これらスリーブ26に前記長ボルト25…を挿通させることによって、これら長尺な長ボルト25…の撓みやブレを防止できるようになっている。
【0019】
前記長ボルト取付金具14…は、前記長ボルト25…の下端部の位置に対応して前記鋼管矢板10の上端部に設けられており、前記長ボルト25…の下端部に形成された雄ネジに螺合する雌ネジが形成されている。
【0020】
以上のようなヤットコ20に対して、前記共下がり防止治具1は、前記筒状本体21と一対の継手22,23とが並設する方向の両側面において前記一対の継手22,23の上端部にそれぞれ取り付けられている。すなわち、この共下がり防止治具1は、前記ヤットコ20に対して、図1に示す2つと、裏側に2つの合計4つ取り付けられていることになる。
【0021】
この共下がり防止治具1は、図1〜図3に示すように、前記継手22(23)の外側面に、該継手22(23)の軸方向に所定間隔をあけて固定される一対の固定部2,2と、これら一対の固定部2,2間に架設されるとともに外周面に雄ネジが形成された軸部材3と、この軸部材3の軸方向に沿って摺動可能・周方向に沿って回転可能とされ、かつ略台形ブロック状に形成されたキャンバー4(5)と、このキャンバー4(5)を上下から挟み込むようにして前記軸部材3に螺合する複数の締結部材6…とを備えている。
【0022】
前記固定部2の継手22(23)への固定方法は、本実施の形態においては溶接による接合が採用されるが、これに限られるものではなく、例えば固定部2と継手22(23)との当接面に継手を設けたり、磁石による取り外し自在の固定形態を採用しても良いものとし、適宜変更可能である。
【0023】
前記軸部材3は、この軸部材3の上端部から下端部にわたって外周面に前記雄ネジが形成されたボルトであり、上端部および下端部は、前記一対の固定部2,2に螺合して固定されている。
【0024】
前記キャンバー4(5)は、図2に示すように、側面視において直角台形状に形成された金属性ブロックであり、直角台形状の2つの側面と、矩形状の傾斜面4a(5a)と、矩形状の上面4b(5b)と、矩形状の下面4c(5c)と、矩形状の垂直面とを有している。なお、隣り合う各面の角部が面取りされた面取り部も有しているものとする。
また、上面4b(5b)と下面4c(5c)とにわたって、前記軸部材3を挿通するための貫通孔(図示せず)が形成されている。この貫通孔の内周面は、前記軸部材3の外周面よりも大径に形成されており、これによって、キャンバー4(5)は前記軸部材3の軸方向に沿って摺動可能・周方向に沿って回転可能とされている。
【0025】
さらに、前記一対の継手22,23のうち、前記ヤットコ20が連結する鋼管矢板10よりも先行打設される鋼管矢板10側の継手22に位置するキャンバー4の傾斜面4aは下向きとされており、前記ヤットコ20が連結する鋼管矢板10よりも後行打設される鋼管矢板10側の継手23に位置するキャンバー5の傾斜面5aは上向きとされている。
すなわち、前記キャンバー4の上面4bは下面4cよりも長尺に形成されており、これら上面4bおよび下面4cの前記垂直面側端部とは反対の端部間に前記傾斜面4aが配置されているので、この傾斜面4aは下向きとなる。
一方、前記キャンバー5の上面5bは下面5cよりも短尺に形成されており、これら上面5bおよび下面5cの前記垂直面側端部とは反対の端部間に前記傾斜面5aが配置されているので、この傾斜面5aは上向きとなる。
なお、これらキャンバー4,5の傾斜面4a,5a同士は、該キャンバー4,5がそれぞれ設けられる軸部材3,3同士を平行に配置するとともに接近させた時に、互いに密接する角度に設定されている。
【0026】
前記締結部材6…は、内周面に前記軸部材3に螺合する雌ネジが形成されたナットであり、前記キャンバー4(5)の上方に2つ、下方に2つ設けられている。このように締結部材6…を上方および下方に2つずつ設けることによって、これら締結部材6…自体が緩みにくくなるので、締結部材6…の緩みによる前記キャンバー4(5)の挟み込みが途中で解除されてしまうようなことを確実に防げるようになっている。
【0027】
なお、図4および図5に示す鋼管矢板10は、円筒状の筒状本体11と、この筒状本体11の外側面の反対側位置に該筒状本体11の軸方向に沿って接合された一対の継手12,13とを有している。
筒状本体11は前記ヤットコ20の筒状本体21と略同径に形成されており、一対の継手12,13も前記ヤットコ20の一対の継手22,23と略同径に形成されている。
また、これら一対の継手12,13には、それぞれ、前記ヤットコ20の一対の継手22,23に形成されたスリット22a,23aと連続するスリット12a,13aが形成されている。したがって、隣り合う継手12,13同士は、互いのスリット12a,13aに対して、該継手12,13のスリット12a,13a側縁部を挿入しあうことによって互いに係合できるようになっている。
【0028】
このような鋼管矢板10の打設は、油圧ハンマーやエアハンマー、ディーゼルハンマー、バイブロハンマー等による打撃を行う杭打機によって行われるが、本実施の形態においては油圧ハンマーによる打撃を行う杭打機32が用いられる。
また、この杭打機32は、図示しない補助クレーンを有しており、この補助クレーンによってヤットコ20を吊り上げや地盤30からの引き抜き等を行えるようになっている。
また、この鋼管矢板10が打設される地盤30の近傍には、図4に示すように土留壁等の既設構造物31が設けられていることから、前記ヤットコ20が用いられる。すなわち、鋼管矢板10を地中に埋設する際にヤットコ20を用いることによって、周囲を過度に掘削したり、既設構造物31の撤去したりすることなく、鋼管矢板10を地中に埋設できるので、周囲への影響が少なくなるすることができる。
なお、鋼管矢板10の打設は、このような打撃による方法だけに限られず、適宜変更可能であり、例えば鋼管内をオーガーで掘削し、鋼管を圧入する方法や、鋼管を静的に地盤に圧入する方法等を採用してもよいものとする。
【0029】
次に、以上のような共下がり防止治具1が一対の継手22,23に対して取り付けられたヤットコ20を用いて、鋼管矢板10を、所定の並設方向に沿って継手しながら複数打設する方法について説明する。
本実施の形態の鋼管矢板10…の打設方法は、先行打設する鋼管矢板10を、その上端部が地上に露出するようにして所定深さまで地中に打設し、その後、この鋼管矢板10の上端部にヤットコ20を取り付けるとともに、このヤットコ20の筒状本体21と鋼管矢板10とを前記連結手段によって連結し、さらに、この鋼管矢板10を、前記ヤットコ20の上端部が地上に露出するようにして所定深さまで地中に打設する(第1工程)。
また、先行打設された鋼管矢板10に対し、所定の並設方向に沿って後行打設する鋼管矢板10を隣接させるとともに隣り合う継手22,23同士を係合しながら、該後行打設側の鋼管矢板10を、その上端部が地上に露出するようにして所定深さまで地中に打設する。
その後、該後行打設側の鋼管矢板10の上端部に、先行打設側のヤットコ20の継手23と隣り合う継手22とを係合しながら後行打設側のヤットコ20を取り付けるとともに、このヤットコ20の筒状本体21と鋼管矢板10とを前記連結手段によって連結し、さらに、この鋼管矢板10を、前記ヤットコ20の上端部が地上に露出するようにして所定深さまで地中に打設する(第2工程)。
また、先行打設側のヤットコ20の一方の継手23に取り付けられた共下がり防止治具1のキャンバー5の上向きの傾斜面5aと、後行打設側のヤットコ20の他方の継手22に取り付けられた共下がり防止治具1のキャンバー4の下向きの傾斜面4aとを当接させる(第3工程)。
また、第2工程および第3工程を少なくとも1回以上繰り返し、所定の並設方向に沿って、上端部にヤットコ20が取り付けられた状態の複数の鋼管矢板20…を並設させた後、所定の並設方向に沿って並んだ複数のヤットコ20…のうち最も先行打設側に位置するヤットコ20を引き抜き、
この引き抜いたヤットコ20の使用を完了するか、この引き抜いたヤットコ20を所定の打設方向の最も後行打設側に位置する鋼管矢板10に隣接して新たに打設する鋼管矢板10の上端部に再度取り付けるか、を選択する(第4工程)。
以上のような第1〜第4工程を含んでいるものとする。
【0030】
ここで、図5は、複数の鋼管矢板10…を所定の並設方向に沿って継手しながら地中に打設している状態を示している。
このような複数の鋼管矢板10…の所定の並設方向のうち、最初に打設された鋼管矢板10と最後に打設される鋼管矢板10を除く、任意の位置に打設される鋼管矢板10の、最初に打設された鋼管矢板10側を先行打設側(図5中右側)と称し、最後に打設される鋼管矢板10側を後行打設側(図5中左側)と称する。
【0031】
なお、これら複数の鋼管矢板10…は、地盤30に対して形成された溝30aに沿って並設されている。つまり、この溝30aは、複数の鋼管矢板10…を並設する際のガイドとなる。
この溝30aは、前記複数の鋼管矢板10…によって形成される鋼管矢板壁等の形状に対応している。すなわち、例えば複数の鋼管矢板10…によって平面視円形の鋼管矢板壁を形成するのであれば、この溝30aは地盤30に対して円形に掘削形成される。
【0032】
そして、図5には、複数の鋼管矢板10…を前記溝30aに沿って並設するとともに地中に打設している状態を示しており、これら複数の鋼管矢板10…の所定の並設方向の始めに位置する箇所(図5において溝30aの最も右側)に1本目の鋼管矢板10が打設されており、その隣に、2本目の鋼管矢板10が打設されている。以降、4本目の鋼管矢板10まで打設されており、5本目の鋼管矢板10が途中まで打設された状態が示されている。
【0033】
1〜5本目までの鋼管矢板10の共通する基本的な打設手順は以下の通りである。
まず、ヤットコ20を取り付けない状態で、鋼管矢板10を、その上端部が地上に露出するようにして所定深さまで地中に打設する。
次いで、この鋼管矢板10の上端部に前記ヤットコ20を取り付けるとともに、前記連結手段によって連結する。
その後、このヤットコ20の上端部が地上に露出するようにして該鋼管矢板10を所定深さまで地中に打設する。
これによって、この鋼管矢板10を、その上端部が地上に露出しないように所定の深さまで地中に埋設できるようになっている。
【0034】
さらに、先行打設された鋼管矢板10に対して、後行打設された鋼管矢板10を隣接させながら地中に打設する方法は以下の通りである。なお、先行打設された鋼管矢板10の上端部にはヤットコ20が取り付けられたままとなっている。
まず、先行打設された鋼管矢板10の上端部のヤットコ20の一対の継手22,23のうち、後行打設側の継手23に形成されたスリット23aと、先行打設された鋼管矢板10の継手13に形成されたスリット13aとに対し、後行打設される鋼管矢板10の継手12を係合させる。
次いで、これらスリット23a,13aの延在方向に沿って、後行打設される鋼管矢板10を下方に移動させながら、該後行打設される鋼管矢板10を、その上端部が地上に露出するようにして地中に打設する。
続いて、後行打設側のヤットコ20の継手22を、前記先行打設側のヤットコ20の継手23に係合させ、この継手23のスリット23aの延在方向に沿って移動させながら、該後行打設側のヤットコ20を、前記地上に露出する後行打設側の鋼管矢板10の上端部に取り付けて連結する。
その後、この後行打設側のヤットコ20ごと、前記後行打設側の鋼管矢板10を、該後行打設側の鋼管矢板10の上端部が地上に露出しないように所定の深さまで打設して、地中に埋設する。
これによって、先行打設されたヤットコ20付きの鋼管矢板10と、後行打設されたヤットコ20付きの鋼管矢板10とを、所定の並設方向に沿って隣接させながら地中に埋設できるようになっている。
【0035】
また、このように先行打設側の鋼管矢板10と、後行打設側の鋼管矢板10とを隣接しながら地中に打設する際に、図2に示すように、先行打設側のヤットコ20の一方の継手23に取り付けられた共下がり防止治具1のキャンバー5の上向きの傾斜面5aと、後行打設側のヤットコ20の他方の継手22に取り付けられた共下がり防止治具1のキャンバー4の下向きの傾斜面4aとを当接させる。
なお、施工誤差により、隣接するヤットコ20,20同士が若干離間したり、若干近接したりする場合がある。
そのような場合は、前記キャンバー4,5を上下挟み込む複数の締結部材6…を緩めてキャンバー4,5の挟み込み状態を解除し、これらキャンバー4,5の位置を調節することによって、双方のキャンバー4,5の傾斜面4a,5a同士を当接できるようになっている。
【0036】
すなわち、複数の締結部材6…を、前記キャンバー4,5の上方または下方にそれぞれ緩めて移動させ、キャンバー4,5の摺動範囲を広げ、これらキャンバー4,5を、前記軸部材3の軸方向に沿って、傾斜面4a,5a同士が互いに当接する方向に摺動させる。
前記隣接するヤットコ20,20同士が離間している場合は、前記キャンバー4を上方に摺動させるとともに、前記キャンバー5を下方に摺動させることによって、これらキャンバー4,5の傾斜面4a,5a同士を互いに当接させることができる。
一方、前記隣接するヤットコ20,20同士が近接している場合は、前記キャンバー4を下方に摺動させるとともに、前記キャンバー5を上方に摺動させることによって、これらキャンバー4,5の傾斜面4a,5a同士を互いに当接させることができる。
そして、以上のように、先行打設側の共下がり防止治具1のキャンバー4に対して、後行打設側の共下がり防止治具1のキャンバー5が乗った状態となるので、この後行打設された鋼管矢板10よりも、さらに後行打設される後々行打設側の鋼管矢板10を地中に打設する際に、後行打設された鋼管矢板10が、後々行打設される鋼管矢板10に追随しようとする力(共下がり現象)が働いたとしても、先行打設側の共下がり防止治具1のキャンバー4によって、その力が抑えられることになる。
したがって、ヤットコ20の本数と、共下がり防止治具1の個数とが許す限り、所定の並設方向に沿って打設する複数の鋼管矢板10…の共下がり現象を全て防止することができる。
なお、共下がり防止治具1が取り付けられたヤットコ20は、少なくとも3セットが必要となる。3セット以上であれば特に限定されるものではない。
【0037】
また、間に少なくとも1本のヤットコ20が設けられるようにして離間するヤットコ20,20間では、先行打設側のヤットコ20の共下がり防止治具1が、離間する後行打設側のヤットコ20に対して共下がり防止機能を発揮しないため、このような先行打設側のヤットコ20は引き抜いてもよい。
このように引き抜かれたヤットコ20は、その後の鋼管矢板10の打設に必要がなければ、その使用を完了してもよい。
【0038】
また、用意したヤットコ20のセット数よりも鋼管矢板10の本数の方が多い場合は、所定の並設方向に沿って並んだ複数のヤットコ20のうち最も先行打設側に位置するヤットコ20を引き抜き、この引き抜いたヤットコ20を、所定の並設方向の最も後行打設側に位置する鋼管矢板10に隣接して新たに打設する鋼管矢板10の上端部に再度取り付けるようにする。
【0039】
以上のように先行打設側のヤットコ20を引き抜く際は、引き抜かれるヤットコ20の共下がり防止治具1のキャンバー5と、この引き抜かれるヤットコ20に隣接するヤットコ20の共下がり防止治具1のキャンバー4とが、隣接するヤットコ20の共下がりを防止するように当接しているので、これらキャンバー4,5の当接状態を解除しなければならない。
すなわち、前記複数の締結部材6…を緩めて、前記キャンバー4,5の挟み込み状態を解除し、これらキャンバー4,5を、図3に示すように軸部材3の周方向に沿って回転させることによって、これらキャンバー4,5の当接状態を解除することができる。これによって、先行打設側に位置するヤットコ20を引き抜くことができる。
【0040】
そして、以上のような方法を駆使することによって、鋼管矢板10を、所定の並設方向に沿って継手しながら複数打設することができる。また、この時、先行打設された鋼管矢板10の共下がりを防止することができる。
図5に示す具体例では、前記溝30aの右から5本目の鋼管矢板10を打設する際に、右から4本目の鋼管矢板10に対して、5本目の鋼管矢板10に追随しようとする力が働くことになる。
この時、4本目の鋼管矢板10は、この4本目の鋼管矢板10のヤットコ20の継手22に取り付けられた共下がり防止治具1のキャンバー4の傾斜面4aが、3本目の鋼管矢板10のヤットコ20の継手23に取り付けられた共下がり防止治具1のキャンバー5の傾斜面5aに当接しているので、この3本目の鋼管矢板10側の共下がり防止治具1によって、4本目の鋼管矢板10の前記5本目の鋼管矢板10に追随しようとする力を抑えることが可能となっている。
また、4本目の鋼管矢板10が共下がりすることなく、5本目の鋼管矢板10の打設が完了すれば、3本目の鋼管矢板10に取り付けられたヤットコ20を取り外して引き抜くことができる。この引き抜いたヤットコ20は、その使用を完了するか、5本目の鋼管矢板10に隣接して新たに6本目の鋼管矢板10を打設するのであれば、この6本目の鋼管矢板10の上端部に引き抜いたヤットコ20を再度取り付けるかを選択する。
【0041】
本実施の形態によれば、互いに隣接するヤットコ20,20の係合し合う継手22,23のそれぞれに取り付けられた共下がり防止治具1,1のうち、先行打設された鋼管矢板10側の共下がり防止治具1のキャンバー5の上向きの傾斜面5aと、後行打設された鋼管矢板10側の共下がり防止治具1のキャンバー4の下向きの傾斜面4aとを当接させることができる。
したがって、この後行打設された鋼管矢板10よりも、さらに後行打設される後々行打設側の鋼管矢板10を地中に打設する際に、後行打設された鋼管矢板10が、後々行打設される鋼管矢板10に追随しようとする力が働くが、後行打設された鋼管矢板10側の共下がり防止治具1のキャンバー4が、先行打設された鋼管矢板10側の共下がり防止治具1のキャンバー5に当接しているために、共下がりしようとする力が抑えられることになる。
すなわち、互いに隣接するヤットコ20,20の係合し合う継手22,23のそれぞれに取り付けられた共下がり防止治具1,1のキャンバー4,5の傾斜面4a,5a同士を当接させるだけで、鋼管矢板10の共下がり現象の発生を容易かつ確実に防止することができる。
【0042】
また、施工誤差によってヤットコ20,20同士が若干離間したり、若干近接したりする場合があるが、そのような場合は、前記キャンバー4,5の傾斜面4a,5a同士を当接させる際に、前記締結部材6…を緩めて、前記キャンバー4,5を軸部材3の軸方向に沿って摺動させることによって、双方のキャンバー4,5の傾斜面4a,5a同士を当接させることができる。したがって、前記ヤットコ20,20同士の間隔に誤差が生じたとしても、双方の共下がり防止治具1,1のキャンバー4,5の傾斜面4a,5a同士を当接させることができ、鋼管矢板10の共下がり現象の発生を確実に防止することができる。
【0043】
また、前記締結部材6…を緩めることによって、前記キャンバー4,5を軸部材3の軸方向に沿って摺動させるだけでなく、軸部材3の周方向に沿って回転させることができるので、共下がり防止治具1を前記継手22,23に取り付けたまま、前記キャンバー4,5同士が接触しないようにして、前記ヤットコ20を用いた鋼管矢板10の打設工事を行うことができる。
さらに、前記ヤットコ20を地中から引き抜く際にもキャンバー4,5を回転させて、傾斜面4a,5a同士を離間させることで、共下がり防止機能を解除することができるので、先行打設された鋼管矢板10側のヤットコ20であっても確実に引き抜くことができる。
【0044】
また、前記連結手段は、前記ヤットコ20の筒状本体21の上端部に形成されるフランジ部24と、このフランジ部24に沿って複数並設されるとともに該筒状本体21の下端部よりも下方に突出する複数の長ボルト25…と、前記鋼管矢板10の上端部付近に、該鋼管矢板10の周方向に沿って複数設けられるとともに前記複数の長ボルト25…の下端部がそれぞれ螺合される長ボルト取付金具14…とを備えているので、前記鋼管矢板10とヤットコ20とを確実かつ強固に連結することができる。
また、このように長ボルト25…で前記鋼管矢板10とヤットコ20とを連結することで、前記鋼管矢板10の浮沈状況が確認可能となる。
【0045】
また、前記共下がり防止治具1は、前記ヤットコ20の筒状本体21と一対の継手22,23とが並設する方向の両側面において前記一対の継手22,23の上端部にそれぞれ取り付けられているので、前記筒状本体21と一対の継手22,23との並設方向の一側面だけに取り付けられる場合に比して、前記一対の継手22,23に取り付けできる共下がり防止治具1の数を増やすことができる。したがって、前記共下がり防止治具1を、前記筒状本体21と一対の継手22,23との並設方向の一側面だけに取り付ける場合に比して、共下がり防止機能をより確実に発揮することができる。
【0046】
また、上述のような前記共下がり防止治具1がそれぞれ取り付けられたヤットコ20を用いて、鋼管矢板10を、所定の並設方向に沿って継手しながら複数打設する方法を採用するので、後行打設される鋼管矢板10の共下がりを確実に防止しながら、複数の鋼管矢板10を所定の並設方向に沿って打設することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 共下がり防止治具1
2 固定部
3 軸部材
4 キャンバー
4a 傾斜面
5 キャンバー
5a 傾斜面
6 締結部材
10 鋼管矢板
11 筒状本体
12 継手
13 継手
20 ヤットコ
21 筒状本体
22 継手
23 継手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管矢板の上端部に連結される筒状本体と、この筒状本体の外側面の反対側位置に該筒状本体の軸方向に沿って接合された一対の継手とを有するヤットコのうち、これら一対の継手の上端部にそれぞれ取り付けられる共下がり防止治具であって、
前記継手の外側面に、該継手の軸方向に所定間隔をあけて固定される一対の固定部と、これら一対の固定部間に架設されるとともに外周面に雄ネジが形成された軸部材と、この軸部材の軸方向に沿って摺動可能・周方向に沿って回転可能とされ、かつ略台形ブロック状に形成されたキャンバーと、このキャンバーを上下から挟み込むようにして前記軸部材に螺合する複数の締結部材とを備えており、
前記一対の継手のうち、前記ヤットコが連結する鋼管矢板よりも先行打設される鋼管矢板側の継手に位置するキャンバーの傾斜面は下向きとされており、前記ヤットコが連結する鋼管矢板よりも後行打設される鋼管矢板側の継手に位置するキャンバーの傾斜面は上向きとされていることを特徴とする共下がり防止治具。
【請求項2】
請求項1に記載の共下がり防止治具が取り付けられるヤットコであって、
前記筒状本体と、前記共下がり防止治具がそれぞれ取り付けられる一対の継手と、この筒状本体と前記鋼管矢板とを連結する連結手段とを有しており、
前記連結手段は、前記筒状本体の上端部に形成されるフランジ部と、
このフランジ部に沿って複数並設されるとともに該筒状本体の下端部よりも下方に突出する複数の長ボルトと、
前記鋼管矢板の上端部付近に、該鋼管矢板の周方向に沿って複数設けられるとともに前記複数の長ボルトの下端部がそれぞれ螺合される長ボルト取付金具とを備えていることを特徴とするヤットコ。
【請求項3】
前記共下がり防止治具は、前記筒状本体と一対の継手とが並設する方向の両側面において前記一対の継手の上端部にそれぞれ取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載のヤットコ。
【請求項4】
請求項2または3に記載のヤットコを用いて、筒状本体と、この筒状本体の外側面の反対側位置に該筒状本体の軸方向に沿って接合された一対の継手とを有する鋼管矢板を、所定の並設方向に沿って継手しながら複数打設する鋼管矢板の打設方法であって、
先行打設する鋼管矢板を、その上端部が地上に露出するようにして所定深さまで地中に打設し、その後、この鋼管矢板の上端部にヤットコを取り付けるとともに、このヤットコの筒状本体と鋼管矢板とを前記連結手段によって連結し、さらに、この鋼管矢板を、前記ヤットコの上端部が地上に露出するようにして所定深さまで地中に打設する第1工程と、
先行打設された鋼管矢板に対し、所定の並設方向に沿って後行打設する鋼管矢板を隣接させるとともに隣り合う継手同士を係合しながら、該後行打設側の鋼管矢板を、その上端部が地上に露出するようにして所定深さまで地中に打設し、
その後、該後行打設側の鋼管矢板の上端部に、先行打設側のヤットコの継手と隣り合う継手とを係合しながら後行打設側のヤットコを取り付けるとともに、このヤットコの筒状本体と鋼管矢板とを前記連結手段によって連結し、さらに、この鋼管矢板を、前記ヤットコの上端部が地上に露出するようにして所定深さまで地中に打設する第2工程と、
先行打設側のヤットコの一方の継手に取り付けられた共下がり防止治具のキャンバーの上向きの傾斜面と、後行打設側のヤットコの他方の継手に取り付けられた共下がり防止治具のキャンバーの下向きの傾斜面とを当接させる第3工程と、
第2工程および第3工程を少なくとも1回以上繰り返し、所定の並設方向に沿って、上端部にヤットコが取り付けられた状態の複数の鋼管矢板を並設させた後、所定の並設方向に沿って並んだ複数のヤットコのうち最も先行打設側に位置するヤットコを引き抜き、
この引き抜いたヤットコの使用を完了するか、この引き抜いたヤットコを所定の並設方向の最も後行打設側に位置する鋼管矢板に隣接して新たに打設する鋼管矢板の上端部に再度取り付けるか、を選択する第4工程とを含むことを特徴とする鋼管矢板の打設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−132715(P2011−132715A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292008(P2009−292008)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【Fターム(参考)】