説明

共焦点内視鏡装置、及び共焦点内視鏡システム

【課題】小型化設計に適した構成の共焦点内視鏡装置を提供すること。
【解決手段】共焦点内視鏡装置を、所定の点光源を二次元方向に移動自在に支持する点光源支持手段と、点光源から放射された光の集光点と共役の位置に配置された共焦点ピンホールと、点光源支持手段を共焦点ピンホールと共に二次元方向と直交する直交方向に移動自在に保持する保持手段と、点光源支持手段に支持された、所定の計測光の一部を反射する第一の反射面と、保持手段に支持された、第一の反射面を透過した計測光の少なくとも一部を反射する第二の反射面と、第一、第二の各反射面で反射された反射光を所定の光検出器に伝送する反射光伝送手段と、から構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、照射された被写体からの戻り光のうち共焦点光学系の焦点位置と共役の位置に配置されたピンホールを介した光のみを検出して画像化する共焦点内視鏡システム、及び該共焦点内視鏡システムが有する共焦点内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、体腔内の生体組織を観察するための共焦点内視鏡システムとして、共焦点光学系を備えた、いわゆる共焦点内視鏡システムが知られている。共焦点内視鏡システムは、被写体に対して照射光を照射する。共焦点内視鏡システムは、照射された被写体からの戻り光のうち共焦点光学系の焦点位置と共役の位置に配置されたピンホールを介した光のみを光検出器によって検出する。共焦点内視鏡システムは、光検出器において検出光の強度に応じて発生した信号を基に、通常の電子スコープやファイバスコープで観察される像よりも高倍率かつ高解像度の画像を生成する。この種の共焦点内視鏡システムの具体的構成例は、特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の共焦点内視鏡システムは、被写体への照明光とその戻り光を伝送する光ファイバの先端近傍を二次元方向に振動させるX−Y走査機構を備えている。X−Y走査機構は、Z軸アクチュエータによって、点光源として機能する光ファイバごとZ軸方向に進退自在に構成されている。すなわち、特許文献1に記載の共焦点内視鏡システムは、光ファイバを二次元方向に振動させつつZ軸方向に進退させることによって、被写体を三次元走査するように構成されている。
【0004】
Z軸アクチュエータは、通電による加熱によってZ軸方向に収縮する形状記憶合金を有している。X−Y走査機構は、形状記憶合金への通電を行って形状記憶合金をZ軸方向に収縮させると、形状記憶合金に引っ張られてZ軸方向に後退する。X−Y走査機構は、形状記憶合金が通電の停止によって常温に戻り、形状記憶効果による形状の復元が無くなると、スプリングの付勢力によってZ軸方向に押し出されて前進する。X−Y走査機構のZ軸方向の移動量は、二本の電線を接着剤で寄り合わせてコイル状に巻いた二重線コイル容量性センサの静電容量の変化量から検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−321792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種の共焦点内視鏡システムには、患者に対する低侵襲性を実現するため、挿入先端部を小型に設計することが恒常的に求められている。しかし、二重線コイル容量性センサ等の移動量を検出するためのセンサは、構造上小型化に限界があり、挿入先端部の小型化を妨げる要因となっている。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、小型化設計に適した構成の共焦点内視鏡装置、及び該共焦点内視鏡装置を有する共焦点内視鏡システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る共焦点内視鏡装置は、所定の点光源を二次元方向に移動自在に支持する点光源支持手段と、点光源から放射された光の集光点と共役の位置に配置された共焦点ピンホールと、点光源支持手段を共焦点ピンホールと共に二次元方向と直交する直交方向に移動自在に保持する保持手段と、点光源支持手段に支持された、所定の計測光の一部を反射する第一の反射面と、保持手段に支持された、第一の反射面を透過した計測光の少なくとも一部を反射する第二の反射面と、第一、第二の各反射面で反射された反射光を所定の光検出器に伝送する反射光伝送手段とを有することを特徴とした装置である。
【0009】
すなわち、本発明によれば、点光源支持手段、保持手段にそれぞれ第一、第二の反射面を追加するという簡素な構成によって、保持手段に対する点光源支持手段の直交方向の移動量に応じた出力(第一、第二の各反射面で反射された反射光)を外部の光検出器に提供することができる。
【0010】
点光源支持手段は、先端が第一の反射面を有する第一のカバーガラスで封止され、点光源を内部に収容した第一の筒状部材を有する構成としてもよい。保持手段は、先端が第二の反射面を有する第二のカバーガラスで封止され、第一の筒状部材を内部に同軸で収容した第二の筒状部材を有する構成としてもよい。
【0011】
光源支持手段は、所定の光源から供給された光を伝送する共焦点用光ファイバの射出端近傍を二次元方向に移動自在に支持する構成としてもよい。この射出端は、点光源かつ共焦点ピンホールとして機能するように、集光点と共役の位置に配置されていることが望ましい。
【0012】
本発明に係る共焦点内視鏡装置は、所定の計測用光源から供給された計測光を第一及び第二の反射面に向けて伝送する計測用光ファイバを更に有する構成としてもよい。この場合、反射光伝送手段は、計測用光ファイバが兼ねることが望ましい。
【0013】
共焦点用光ファイバと計測用光ファイバは、単一の光ファイバで共用してもよい。
【0014】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る共焦点内視鏡システムは、上記の何れかに記載の共焦点内視鏡装置と、第一、第二の各反射面で反射された反射光を検出する反射光検出手段と、反射光検出手段の検知結果を基に、保持手段に対する点光源支持手段の直交方向の移動量を検出する移動量検出手段とを有することを特徴としたシステムである。
【0015】
移動量検出手段は、第一、第二の各反射面で反射された反射光の分光干渉波形を解析する解析手段と、解析された分光干渉波形に基づいて移動量を算出する移動量算出手段とを有する構成としてもよい。
【0016】
移動量検出手段は、第一、第二の各反射面で反射された反射光の反射光検出手段による検出タイミングの差を検知するタイミング差検知手段と、検知されたタイミングの差に基づいて移動量を算出する移動量算出手段とを有する構成としてもよい。
【0017】
本発明に係る共焦点内視鏡システムは、以前の診断条件を簡単に再現できるようにするため、保持手段に対する点光源支持手段の直交方向の現在の位置情報を保存する位置情報保存手段と、保存された位置情報を指定する位置情報指定手段と、位置情報で指定された位置に点光源支持手段を移動させる指定位置移動手段とを更に有する構成としてもよい。
【0018】
本発明に係る共焦点内視鏡システムは、共焦点ピンホールを介した光を受光して画像信号を検出する画像信号検出手段と、画像信号検出手段による画像信号の検出タイミングに応じて、各該画像信号に対する二次元平面の画素配置を決定すると共に、移動量検出手段によって検出された移動量に応じて、各該画像信号に対する該二次元平面と直交する深さ方向の画素配置を決定する画素配置決定手段と、決定された画素配置に従って各画像信号によって表現される画像情報を空間的に配列して被写体画像を作成する画像作成手段とを更に有する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、小型化設計に適した構成の共焦点内視鏡装置、及び該共焦点内視鏡装置を有する共焦点内視鏡システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態の共焦点内視鏡システムの構成を概略的に示す図である。
【図2】本発明の実施形態の共焦点内視鏡システムが有する電子スコープの挿入先端部に組み込まれた共焦点光学ユニットの構成を概略的に示す図である。
【図3】本発明の実施形態の共焦点光学ユニットの先端側の概略構成を拡大して示す図である。
【図4】本発明の実施形態の共焦点光学系を構成する点光源のZ軸方向の移動量を検出する移動量検出処理を示すフローチャートである。
【図5】別の実施形態の共焦点内視鏡システムの構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の共焦点内視鏡システムについて説明する。
【0022】
図1は、本実施形態の共焦点内視鏡システム1の構成を概略的に示す図である。図1に示されるように、共焦点内視鏡システム1は、被写体を撮影するための電子スコープ100を有している。電子スコープ100は、可撓性を有するシース11aによって外装された挿入可撓管11を備えている。挿入可撓管11の先端には、硬質性を有する樹脂製筐体によって外装された挿入先端部12が連結されている。挿入可撓管11と挿入先端部12との連結箇所にある湾曲部14は、挿入可撓管11の基端に連結された手元操作部13からの遠隔操作(具体的には、湾曲操作ノブ13aの回転操作)によって屈曲自在に構成されている。この屈曲機構は、一般的な電子スコープに組み込まれている周知の機構であり、湾曲操作ノブ13aの回転操作に連動した操作ワイヤの牽引によって湾曲部14を屈曲させるように構成されている。挿入先端部12の方向が上記操作による屈曲動作に応じて変わることにより、電子スコープ100による撮影領域が移動する。
【0023】
共焦点内視鏡システム1には、二つの撮像システムが組み込まれている。一つは、被写体を標準的な倍率及び解像度で撮像する一般的な内視鏡撮像システムと同様の撮像システム(以下、「第一の撮像システム」と記す。)である。もう一つは、第一の撮像システムよりも高倍率かつ高解像度で被写体を撮像する撮像システム(以下、「第二の撮像システム」と記す。)である。まずは、第一の撮像システムについて説明する。
【0024】
共焦点内視鏡システム1は、第一の撮像システムを構成する第一のプロセッサ200を有している。第一のプロセッサ200は、自然光の届かない体腔内を電子スコープ100を介して照明する光源装置202と、電子スコープ100からの撮像信号を処理する信号処理装置204とを一体に備えた装置である。別の実施形態では、光源装置202と信号処理装置204とを別体で構成してもよい。電子スコープ100は、第一のユニバーサルケーブル15を介して、第一のプロセッサ200に電気的に及び光学的に接続されている。
【0025】
光源装置202から放射された照明光は、図示省略された絞り機構を介して適正な光量に制限されて、電子スコープ100が有するLCB(light carrying bundle)102の入射端に入射する。適正とされる映像の明るさの基準は、術者によるフロントパネル206の輝度調節操作に応じて設定変更される。
【0026】
LCB102は、入射端が光源装置202と結合する位置に配置され、射出端が挿入先端部12に配置されている。LCB102の入射端に入射した照明光は、LCB102の内部を全反射を繰り返すことによって伝播して、射出端から射出する。挿入先端部12には、第一の撮像システムを構成する配光レンズ104、対物レンズ106、固体撮像素子108が組み込まれている。射出端から射出した照明光は、配光レンズ104を介して被写体を照明する。被写体からの反射光は、対物レンズ106を介して固体撮像素子108の受光面上で光学像を結ぶ。
【0027】
固体撮像素子108は、例えばベイヤ型画素配置を有する単板式カラーCCD(Charge Coupled Device)であり、第一のプロセッサ200から供給されるクロックパルスに従って、映像のフレームレートに同期したタイミングで駆動する。固体撮像素子108は、受光面上の各画素で結像した光学像を光量に応じた電荷として蓄積して、R、G、Bの各色に応じた信号に変換する。変換された信号は、フォトカップラなどを使用した絶縁回路(不図示)を介して信号処理装置204に入力する。
【0028】
信号処理装置204は、固体撮像素子108の出力信号に、クランプ、ニー、γ補正、補間処理、AGC(Auto Gain Control)、AD変換等の所定の信号処理を施して、その処理信号を、図示省略されたフレームメモリにフレーム単位でバッファリングする。バッファリングされた信号は、所定のタイミングでフレームメモリから掃き出されて、NTSC(National Television System Committee)やPAL(Phase Alternating Line)等の所定の規格に準拠した映像信号に変換される。変換された映像信号がモニタ200Mに順次入力することにより、モニタ200Mに、標準的な倍率及び解像度の被写体のカラー画像が表示される。
【0029】
次に、第二の撮像システムについて説明する。第二の撮像システムは、挿入先端部12に組み込まれた共焦点光学ユニット120を有している。共焦点光学ユニット120は、共焦点顕微鏡の原理を応用して設計されたユニットであり、高倍率かつ高解像度の被写体を観察するのに好適に構成されている。第二の撮像システムを用いた共焦点観察は、共焦点光学ユニット120の前面に位置する挿入先端部12の端面12aを被写体に当て付けた状態で行う。一方、第一の撮像システムを用いて通常観察を行う場合は、ボケのない鮮明な被写体像を得るため、対物レンズ106の配置面(図1中、挿入先端部12の端面12b)を、例えば対物レンズ106の焦点距離相当分だけ被写体から離す必要がある。そこで、挿入先端部12の先端面は、端面12aが端面12bより所定量突出して位置するように形成されている。そのため、対物レンズ106は、端面12aを被写体に当て付けると、被写体を被写界深度に収める位置で安定する。
【0030】
共焦点内視鏡システム1は、第二の撮像システムを構成する第二のプロセッサ300を有している。電子スコープ100は、第二のユニバーサルケーブル16を介して、第二のプロセッサ300に電気的に及び光学的に接続されている。
【0031】
第二のプロセッサ300は、被写体に対して励起光として作用する波長のレーザ光を放射するレーザ光源302を有している。レーザ光源302から放射されたレーザ光(例えば波長:488nm)は、光ファイバ304の内部を伝播して、フォトカップラ306を介して光ファイバ122の入射端に入射する。
【0032】
図2は、挿入先端部12に組み込まれた共焦点光学ユニット120の構成を概略的に示す図である。以降においては、共焦点光学ユニット120の構成を説明するにあたり、便宜上、共焦点光学ユニット120の長手方向をZ方向と定義し、Z方向に直交しかつ互いに直交する二方向をX方向、Y方向と定義する。
【0033】
図2に示されるように、共焦点光学ユニット120は、当該ユニットの各種構成部品を収容する金属製の外筒124を有している。外筒124は、外筒124の内壁面形状に対応する外壁面形状を持つ内筒126を、同軸でかつZ軸方向にスライド自在に保持している。光ファイバ122の射出端122aは、外筒124、内筒126の各基端面に形成された開口を通じて内筒126の内部に支持されており、第二の撮像システムの二次的な点光源として機能する。
【0034】
外筒124は、対物光学系128を有している。対物光学系128は、図示省略されたレンズ枠に保持された複数枚構成の光学レンズを有している。レンズ枠は、外筒124の内部において、内筒126と相対的に固定され支持されている。そのため、レンズ枠に保持された光学レンズ群は、外筒124の内部を内筒126と一体となってZ軸方向にスライドすることとなる。
【0035】
光ファイバ122の射出端122aの近傍は、図示省略された圧電アクチュエータによって振動する。この圧電アクチュエータは、第二のプロセッサ300が有するコントローラ308によって駆動制御される。射出端122aは、圧電アクチュエータによる振動によって、XY平面(厳密には、XY平面に近似する曲面)上を周期的に移動する。射出端122aから射出するレーザ光は、対物光学系128を介して焦点を結びつつ射出端122aのXY平面上の移動に伴って、被写体を二次元走査する。なお、射出端122aの移動曲面の曲率半径は極めて大きい。よって、射出端122aの移動曲面をXY平面とみなしても実質的に問題はない。
【0036】
共焦点光学ユニット120は、内筒126の基端面と外筒124の内壁面との間に、圧縮コイルばね130を有している。圧縮コイルばね130は、内筒126の基端面と外筒124の内壁面とによって、自然長からZ軸方向に初期的に圧縮した状態で狭持されている。
【0037】
共焦点光学ユニット120は、Z軸方向に長尺な棒状の形状記憶合金132を有している。形状記憶合金132は、一端が内筒126の基端面に、他端が外筒124の内壁面に、それぞれ固定されている。形状記憶合金132は、常温下で外力が加わると変形して、一定温度以上に加熱されると形状記憶効果によって所定の形状に復元する性質を有している。
【0038】
形状記憶合金132は、常温下では、圧縮コイルばね130の復元力が加わることによってZ軸方向に伸びている。形状記憶合金132は、形状記憶効果による復元力が圧縮コイルばね130の復元力より大きくなるように設計されている。
【0039】
形状記憶合金132の形状は、コントローラ308から形状記憶合金132への通電による形状記憶合金132自体の加熱によってコントロールされる。具体的には、形状記憶合金132は、通電によって加熱されると、圧縮コイルばね130の復元力に抗してZ軸方向に収縮する。形状記憶合金132の一端と固定されている内筒126は、形状記憶合金132の収縮に伴い、内筒126に支持された光ファイバ122と共に外筒124の内部をZ軸方向に後退する。形状記憶合金132の収縮量は、形状記憶合金132への通電量によって精密にコントロールされる。この通電量(換言すると、光ファイバ122のZ軸方向の移動量)は、術者による手元操作部13のZ軸移動量の調節操作に応じて変動する。
【0040】
形状記憶合金132は、通電が停止して常温に戻る(又は通電量の減少によって温度が低下する)と、形状記憶効果による復元力が無くなり(又は弱くなり)、圧縮コイルばね130の復元力によってZ軸方向に伸びる。内筒126は、圧縮コイルばね130の復元力によって基端面が押されて、光ファイバ122と共に外筒124の内部をZ軸方向に前進する。
【0041】
光ファイバ122の射出端122aから射出するレーザ光は、対物光学系128を介して被写体の表面又は表層で焦点を結ぶ。この焦点位置は、点光源である射出端122aの進退に応じてZ軸方向に変位する。すなわち、共焦点光学ユニット120は、圧電アクチュエータによる射出端122aの二軸方向の移動と、圧縮コイルばね130及び形状記憶合金132による射出端122aの一軸方向の移動とを行うことによって、被写体を三次元走査する。
【0042】
光ファイバ122の射出端122aは、対物光学系128の前側焦点位置に配置されている。そのため、射出端122aは、共焦点ピンホールとして機能する。すなわち、射出端122aには、レーザ光によって照明された被写体の散乱成分(蛍光)のうち射出端122aと光学的に共役な集光点からの蛍光のみが入射する。
【0043】
光ファイバ122の射出端122aに入射した蛍光は、光ファイバ122の内部を伝播する。光ファイバ122の内部を伝播した蛍光は、フォトカップラ306によってレーザ光源302からのレーザ光と分離された後、光ファイバ312を介して光検出器314によって検出される。この検出信号は、画像生成回路316に入力する。画像生成回路316は、順次入力する検出信号の検出タイミングに応じて、各検出信号によって表現される点像への画素アドレスの割当てを行う。画像生成回路316は、割り当てた画素アドレスに従って、各点像の空間的配列によって構成される画像の信号をフレームメモリにフレーム単位でバッファリングする。バッファリングされた信号は、所定のタイミングでフレームメモリから掃き出されて、NTSCやPAL等の所定の規格に準拠した映像信号に変換される。変換された映像信号がモニタ300Mに順次入力することにより、モニタ300Mに、高倍率かつ高解像度の被写体の三次元共焦点画像が表示される。
【0044】
ここで、三次元共焦点画像の倍率又は解像度を向上させるためには、共焦点光学系の構成要素である点光源をZ軸方向に微細に移動させることが不可欠である。これは、形状記憶合金132への精細な通電量制御を行い、光ファイバ122の射出端122aを微細に移動させることによって達成される。ところが、三次元共焦点画像の倍率又は解像度を向上させるためには、移動機構の分解能を高くするだけでは足りず、実際の移動量(又は位置)を検出して移動機構を高精度にフィードバック制御するため、移動量検出機構の分解能も向上させる必要がある。本出願人は、この点に着眼して、共焦点光学ユニット120に適した移動量検出機構を想起した。
【0045】
以下は、本実施形態の共焦点内視鏡システム1に搭載された移動量検出機構の説明である。図1に示されるように、第二のプロセッサ300は、光源320を有している。光源320は、例えば広波長帯域の光を射出するSLD(Super luminescent Diode)光源であり、光ファイバ122の射出端122aのZ軸方向の移動量を計測するための計測光を射出する。この計測光の波長帯域には、レーザ光源302の射出光又は被写体からの反射光(蛍光)の何れの波長帯域にも重複しない範囲が選択されている。計測光は、光源320から射出された後、ハーフミラー322、フォトカップラ306を介して光ファイバ122の入射端に入射する。計測光は、光ファイバ122の内部を全反射を繰り返すことによって伝播して、射出端122aから射出する。
【0046】
図3は、共焦点光学ユニット120の先端側の概略構成を拡大して示す図である。図3に示されるように、内筒126の先端は、カバーガラスCG1によって封止されている。カバーガラスCG1の光ファイバ122側の面には、所定の反射フィルタR1がコーティングされている。外筒124の先端は、カバーガラスCG2によって封止されている。カバーガラスCG2の対物光学系128側の面には、所定の反射フィルタR2がコーティングされている。反射フィルタR1、R2は、計測光を反射しつつ計測光以外の波長帯域の光を透過するという、同一の反射特性を有している。すなわち、反射フィルタR1、R2は、計測光を反射しつつも第二の撮像システムの光利用効率を低下させないため、レーザ光源302の射出光又は被写体からの反射光(蛍光)を実質的に100%透過させるように構成されている。
【0047】
光ファイバ122の射出端122aから射出された計測光は、その一部が反射フィルタR1で反射し、反射フィルタR1を透過した残りが反射フィルタR2で全て反射する。各反射フィルタで反射された計測光は、互いに干渉しつつ光路を戻り、フォトカップラ306、ハーフミラー322を介して分光器324に入射する。
【0048】
分光器324は、回折格子等の分光素子とCCD等の固体撮像素子を有している。分光器324に入射した干渉光は、分光素子によって波長毎に分光された後、固体撮像素子によって検出される。固体撮像素子によって検出された信号は、波長の干渉光強度分布を表しており、反射フィルタR1と反射フィルタR2とのZ軸方向の間隔(図3中、距離D)に応じて変化する。波形解析回路326は、この波長の干渉光強度分布を解析してコントローラ308に出力する。コントローラ308は、入力した解析結果に基づいて距離Dを算出する。コントローラ308は、算出した距離Dと前回の距離Dとの比較から内筒126の移動量を検出する。若しくは、算出した距離Dから内筒126の現在位置を検出する。コントローラ308は、検出した移動量と目標とする移動量とを比較して形状記憶合金132への通電量制御を行い、内筒126をZ軸方向に微細に移動させる。
【0049】
図4は、共焦点光学系を構成する点光源(光ファイバ122の射出端122a)のZ軸方向の移動量を検出する移動量検出処理を示すフローチャートである。図4の移動量検出処理は、共焦点内視鏡システム1の起動によって実行が開始されて、共焦点内視鏡システム1の電源が切断された時点で、又は共焦点内視鏡システム1が停止した時点で終了する。なお、以降の本明細書中の説明並びに図面において、処理ステップは「S」と省略して記す。
【0050】
光源320は、計測光を例えば共焦点内視鏡システム1の起動と共に射出する。そのため、干渉光強度分布の解析は、共焦点内視鏡システム1の起動直後から行われる。コントローラ308は、波形解析回路326から解析結果を受け取って、内筒126のZ軸方向の現在位置を検出する(S1)。
【0051】
コントローラ308は、次いで、内筒126のホームポジションへの移動を行う(S2)。ホームポジションは、製品出荷時に、例えば内筒126が外筒124に対してハードウェア的に移動できる最大範囲の中心位置に設定されている。但し、ホームポジションは、術者によるフロントパネル310又は手元操作部13の操作によって任意に設定変更することができる。ホームポジションの設定値は、第二のプロセッサ300が有するメモリ318に保存される。このとき、ホームポジションの設定値は、電子スコープ100のIDに関連付けられて保存され、電源切断後も保持される。なお、ここで参照されるIDは、システム起動時にコントローラ308によって電子スコープ100が有するメモリ(不図示)から予め読み出された型番等の識別情報である。
【0052】
S2の処理では、コントローラ308は、ホームポジションとして設定された位置が検出されるまで内筒126を移動させる。内筒126は、ホームポジションへの移動後、術者によるマニュアル操作に応じて、又はメモリ318に保存されている設定(後述のユーザ設定位置)に従って移動する。S3以降の処理における内筒126の移動は、第二の撮像システムによる三次元共焦点画像の撮像を想定した移動である。
【0053】
内筒126は、術者による手元操作部13の操作に応じて、所定の移動可能範囲内で微細に前進し又は後退する(S3:マニュアル操作、S4)。この所定の移動可能範囲は、各種部品の加工誤差や組立誤差を考慮して、ソフトウェア処理によってハードウェア的な移動可能範囲よりも制限されている範囲である。コントローラ308は、検出した移動量を画像生成回路316に逐次出力する。画像生成回路316は、各点像に対する被写体深さ方向の画素アドレスを該移動量に応じて決定する。これにより、内筒126(点光源)の微細な移動量に対応する高精細な共焦点画像が生成されて、モニタ300Mに表示される。
【0054】
術者は、フロントパネル310又は手元操作部13の操作を行い、内筒126のZ軸方向の現在位置(以下、「ユーザ設定位置」と記す。)を登録することができる。具体的には、コントローラ308は、ユーザ設定位置の登録操作を受け付けると(S5:YES)、現在位置に対応する距離Dをユーザ設定位置としてメモリ318に保存する(S6)。このとき、ユーザ設定位置は、電子スコープ100のIDに関連付けられて保存され、電源切断後も保持される。ユーザ設定位置は、一台の電子スコープ100に対して複数ポイント登録することができる。
【0055】
ユーザ設定位置の登録操作がない場合(S5:NO)や、S6のユーザ設定位置の登録処理後は、S3の処理に戻る。術者は、フロントパネル310又は手元操作部13の操作を行い、内筒126をユーザ設定位置に移動させることができる。具体的には、コントローラ308は、ユーザ設定位置への移動操作を受け付けると(S3:ユーザ設定位置の指定操作)、S7の移動処理を行う。S7の移動処理では、指定されたユーザ設定位置に対応する距離Dがメモリ318から読み出される。読み出された距離Dと現在算出されている実際の距離Dとが比較され、その差分が算出される。コントローラ308は、この差分が無くなる方向及び量だけ内筒126を移動させる。術者は、このような簡易な操作によって、被写体を例えば前回の診断時と同じ深さで共焦点観察することができる。
【0056】
ユーザ設定位置は、前述の通り、電子スコープ毎に登録され管理される。しかし、別機を使用する際に、被写体を他機の使用時と同じ深さで共焦点観察したいという場面も想定される。この場合は、他機のIDに関連付けられたユーザ設定位置を別機で利用して、被写体を他機の使用時と同じ深さで共焦点観察できるようにしてもよい。
【0057】
本実施形態の共焦点内視鏡システム1によれば、各筒を封止するという不可欠な既存の構成要素であるカバーガラスを利用することによって、実質的な部品増加を伴うことなく、点光源のZ軸方向の移動量を検出する構成を挿入先端部12に組み込むことができる。すなわち、二重線コイル容量性センサ等の移動量を検出するための専用部品が不要であるため、挿入先端部12の小型化設計が容易である。
【0058】
以上が本発明の実施形態の説明である。本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば反射フィルタR1又はR2は、本実施形態の配置に限定されない。例えば反射フィルタR2は、対物光学系128とカバーガラスCG1との間に配置してもよい。
【0059】
内筒126の移動量の検出は、分光干渉法の原理を利用した本実施形態の検出方式に限定されない。図5に、内筒126の移動量を別の方式で検出する、別の実施形態の共焦点内視鏡システム1zの構成を概略的に示す。図5に示されるように、共焦点内視鏡システム1zは、ブロック構成として、分光器324と波形解析回路326の代わりに光検出器328を有している。
【0060】
別の実施形態において、光源320は、例えば800nm〜1000nmの波長帯域の計測光(変調光)を1パルス射出する。反射フィルタR1は、例えば850nm〜900nmの波長帯域(以下、「第一の波長帯域」と記す。)だけを反射する特性を持つ。このため、計測光のうち第一の波長帯域の光だけが反射フィルタR1で反射される。残りの波長帯域の計測光は、反射フィルタR1を透過して反射フィルタR2に入射する。反射フィルタR2は、例えば950nm〜1000nmの波長帯域(以下、「第二の波長帯域」と記す。)だけを反射する特性を持つ。よって、計測光のうち第二の波長帯域の光だけが反射フィルタR2で反射される。なお、第一又は第二の波長帯域以外の計測光は、被写体に到達して散乱する。しかし、計測光の波長帯域には、レーザ光源302の射出光の波長帯域、被写体からの反射光(蛍光)の波長帯域、可視域の何れにも重複しない範囲が選択されている。従って、被写体によって散乱された計測光が被写体のカラー画像や共焦点観察画像に実質的に影響を及ぼすことはない。
【0061】
各反射フィルタで反射された第一、第二の波長帯域の反射光は、干渉することなく光路を戻り、フォトカップラ306、ハーフミラー322を介して光検出器328によって検出される。説明を加えると、第二の波長帯域の反射光は、反射フィルタR1と反射フィルタR2とを往復した光路長差分だけ第一の波長帯域の反射光よりも遅延する。すなわち、距離Dが長くなるほど、光検出器328における第一と第二の波長帯域の反射光の検出タイミングの差が大きくなる。コントローラ308は、この検出タイミング差に従って距離Dを算出して、内筒126の移動量又は現在位置を検出する。
【0062】
別の実施形態においては、1パルスの計測光を各反射フィルタで反射させるだけで内筒126の移動量又は現在位置が直ぐさま検出できるというメリットがある。反射光のタイミング差の検出には構成が簡素な光検出器328を使用できるため、製造コスト面でメリットである。
【符号の説明】
【0063】
1 共焦点内視鏡システム
12 挿入先端部
100 電子スコープ
120 共焦点光学ユニット
124 外筒
126 内筒
130 圧縮コイルばね
132 形状記憶合金
308 コントローラ
324 分光器
326 波長解析回路
R1、R2 反射フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の点光源を二次元方向に移動自在に支持する点光源支持手段と、
前記点光源から放射された光の集光点と共役の位置に配置された共焦点ピンホールと、
前記点光源支持手段を前記共焦点ピンホールと共に前記二次元方向と直交する直交方向に移動自在に保持する保持手段と、
前記点光源支持手段に支持された、所定の計測光の一部を反射する第一の反射面と、
前記保持手段に支持された、前記第一の反射面を透過した前記計測光の少なくとも一部を反射する第二の反射面と、
前記第一、前記第二の各反射面で反射された反射光を所定の光検出器に伝送する反射光伝送手段と、
を有することを特徴とする共焦点内視鏡装置。
【請求項2】
前記点光源支持手段は、
先端が前記第一の反射面を有する第一のカバーガラスで封止され、前記点光源を内部に収容した第一の筒状部材、
を有し、
前記保持手段は、
先端が前記第二の反射面を有する第二のカバーガラスで封止され、前記第一の筒状部材を内部に同軸で収容した第二の筒状部材、
を有することを特徴とする、請求項1に記載の共焦点内視鏡装置。
【請求項3】
前記点光源支持手段は、所定の光源から供給された光を伝送する共焦点用光ファイバの射出端近傍を前記二次元方向に移動自在に支持し、
前記射出端は、前記点光源かつ前記共焦点ピンホールとして機能するように、前記集光点と共役の位置に配置されていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の共焦点内視鏡装置。
【請求項4】
所定の計測用光源から供給された前記計測光を前記第一及び前記第二の反射面に向けて伝送する計測用光ファイバ、
を更に有し、
前記反射光伝送手段は、前記計測用光ファイバが兼ねることを特徴とする、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の共焦点内視鏡装置。
【請求項5】
前記共焦点用光ファイバと前記計測用光ファイバは、単一の光ファイバで共用することを特徴とする、請求項3を引用する請求項4に記載の共焦点内視鏡装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の共焦点内視鏡装置と、
前記第一、前記第二の各反射面で反射された反射光を検出する反射光検出手段と、
前記反射光検出手段の検知結果を基に、前記保持手段に対する前記点光源支持手段の前記直交方向の移動量を検出する移動量検出手段と、
を有することを特徴とする共焦点内視鏡システム。
【請求項7】
前記移動量検出手段は、
前記第一、前記第二の各反射面で反射された反射光の分光干渉波形を解析する解析手段と、
解析された前記分光干渉波形に基づいて前記移動量を算出する移動量算出手段と、
を有することを特徴とする、請求項6に記載の共焦点内視鏡システム。
【請求項8】
前記移動量検出手段は、
前記第一、前記第二の各反射面で反射された反射光の前記反射光検出手段による検出タイミングの差を検知するタイミング差検知手段と、
検知された前記タイミングの差に基づいて前記移動量を算出する移動量算出手段と、
を有することを特徴とする、請求項6に記載の共焦点内視鏡システム。
【請求項9】
前記保持手段に対する前記点光源支持手段の前記直交方向の現在の位置情報を保存する位置情報保存手段と、
保存された前記位置情報を指定する位置情報指定手段と、
前記位置情報で指定された位置に前記点光源支持手段を移動させる指定位置移動手段と、
を更に有することを特徴とする、請求項6から請求項8の何れか一項に記載の共焦点内視鏡システム。
【請求項10】
前記共焦点ピンホールを介した光を受光して画像信号を検出する画像信号検出手段と、
前記画像信号検出手段による前記画像信号の検出タイミングに応じて、各該画像信号に対する二次元平面の画素配置を決定すると共に、前記移動量検出手段によって検出された前記移動量に応じて、各該画像信号に対する該二次元平面と直交する深さ方向の画素配置を決定する画素配置決定手段と、
前記決定された画素配置に従って各前記画像信号によって表現される画像情報を空間的に配列して被写体画像を作成する画像作成手段と、
を更に有することを特徴とする、請求項6から請求項9の何れか一項に記載の共焦点内視鏡システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−98169(P2011−98169A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256497(P2009−256497)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】