説明

共焦点顕微鏡システム

【課題】コンパクトで場所をとらない共焦点顕微鏡システムを構成すると共に、調整箇所の少ない共焦点顕微鏡システムを提供する提供する。
【解決手段】
共焦点顕微鏡システムにおいて、
共焦点顕微鏡システムを構成する各装置を一体的に保護筐体に収めると共に、
対物レンズに対向して配置された試料を保護筐体の外側面に移動させ試料の出し入れを行う開口部側を前面としたときに、ニポウ式スキャナ部が対物レンズの奥側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共焦点顕微鏡システムに関し、特に、共焦点顕微鏡システムを構成する各装置を一体的に組込んで設置スペースの改善を図った共焦点顕微鏡システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明が適用される共焦点顕微鏡システムは、レーザ光による試料上の集光点を走査し、試料からの戻り蛍光を結像させて画像を得ることにより試料を観察するもので、生物やバイオテクノロジーなどの分野における生きた細胞の生理反応観察や形態観察、あるいは半導体市場におけるLSIの表面観察等に使用されている。
【0003】
はじめに共焦点顕微鏡システムについて簡単に説明する。
図7は、従来の共焦点顕微鏡システムの構成例を示す機能ブロック図である。
光源部50は、複数の多波長光源51a,51b,51cと光源からのレーザ光の通過と遮断を制御するスイッチング手段54と、光透過帯域の異なるフィルタ52a,52b,52cから構成されている。
【0004】
スイッチング手段54を通過したレーザ光はフィルタ52a,52b,52cを透過して光ファイバ55に入射し、光ファイバ55の他端から出射して、ミラー56に入射する。ミラー56で反射したレーザ光はコリメータレンズ57、マイクロレンズアレイディスク52、ピンホールディスク73、対物レンズ55などから構成されるスキャナ部25に入射する。
【0005】
光検出部70は、ダイクロイックミラー72a,72b,72cと、バリアフィルタ75a,75b,75cと、レンズ64a,64b,64cと撮像カメラ58a,58b,58cより構成されており、サンプル66で発光した蛍光を受光する。
【0006】
バリアフィルタ75a,75b,75cは透過波長特性の異なる複数のフィルタから構成されている。バリアフィルタ75a,75b,75cを透過した出力光はレンズ64a,64b,624cにより集光されて撮像カメラ58a,58b,58cに入射する。撮像カメラ58a,58b,58cは、撮像画像を増幅し、電気信号に変換して出力する。
【0007】
画像収集装置80は撮像カメラ58a,58b,58cが出力する電気信号を画像データに変換して保存する。画像表示装置74は、通常コンピュータが用いられ、画像収集装置80に格納された画像を読み出し、適宜に処理を行って表示画面に表示する。
【0008】
図8は上記の共焦点顕微鏡システムを示すもので、システムの一般的な配置例を示すものである。スキャナ部25は、顕微鏡61の観察接続ポートに取付けられ、内部に明視野光路62と共焦点光路63の2系統の光路を備えている。レーザ光源部50は励起用光源である。光ファイバ55はレーザ光源部50からの励起光をスキャナ部25に導入する。撮像素子58はCCDカメラなどからなり、スキャナ部25の明視野光路62と共焦点光路63の2系統の光路から出射される試料の蛍光画像のいずれかを検出する。画像表示装置74はパソコン、ソフトウェア、ボードなどからなり、撮像素子58からの画像データを取込む。画像回転ユニット73及び画像表示装置74は取り込んだ画像データに基づいて試料の蛍光画像をディスプレイに表示する。
【0009】
【特許文献1】特開2004−212434号公報
【特許文献2】特開2009−205083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような従来の共焦点顕微鏡システムにおいては、複数の構成要素を組み合わせて作られている。特に、スキャナ部は、顕微鏡のサイドポートに接続されることが多く、この場合、装置全体の横幅が非常に大きくなりスペースが必要という問題があった。
【0011】
また、レーザ光も一度精密な位置の調整を行って光ファイバに導入した後に、再度スキャナ部に導いた後でも精密に位置や角度を調整する必要があり、非常に煩わしいという課題があった。
従って本発明は、コンパクトで場所をとらない共焦点顕微鏡システムを構成すると共に、調整箇所の少ない共焦点顕微鏡システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するために、本発明の共焦点顕微鏡システムは、請求項1においては、
少なくとも一つ以上のレーザ発振機を搭載するレーザユニットと
前記レーザユニットからのレーザ光を走査するニポウディスク式スキャナ部と
前記スキャナ部で走査されたレーザ光を試料に投射する投射光学系と
対物レンズに対向して配置された前記試料をテーブル上でXY駆動させるXY駆動装置と、
前記試料からの蛍光のうち、再びスキャナ部を通過した光を分離する分離光学系と
前記分離された蛍光を再び結像させる結像光学系と
前記結像光学系の結像面に配置された撮影装置と
を備えた共焦点顕微鏡システムにおいて、
前記共焦点顕微鏡システムを構成する各装置を一体的に保護筐体に収めると共に、
前記試料を前記保護筐体の外側面に移動させ試料の出し入れを行う開口部側を前面としたときに、前記ニポウ式スキャナ部が前記対物レンズの奥側に配置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項2においては、請求項1記載の共焦点顕微鏡システムにおいて、
前記レーザユニット及び前記撮影装置は前記ニポウ式スキャナ部よりも奥側に配置されていることを特徴とする。
【0014】
請求項3においては、請求項1または2に記載の共焦点顕微鏡システムにおいて、
前記レーザユニットの出射光軸と、前記撮影装置の光軸が概ね平行に配置されていることを特徴とする。
【0015】
請求項4においては、請求項1記載の共焦点顕微鏡システムにおいて、
前記対物レンズは鉛直方向の光軸を有すると共に、前記ニポウ式スキャナ部の光軸は水平方向に配置され、反射部材を介して光信号をそれぞれ直角方向に反射するように構成したことを特徴とする。
【0016】
請求項5においては、請求項1記載の共焦点顕微鏡システムにおいて、
前記保護筐体内には、ピンホール径の異なる複数のニポウディスク式スキャナ部が配置され、それらのスキャナ部の一つが選択的に使用可能に構成されていることを特徴とする
【0017】
請求項6においては、請求項1記載の共焦点顕微鏡システムにおいて、
前記ニポウ式スキャナ部と結像光学系は温調チャンバー内部に配置されると共に前記レーザユニット及び前記撮影装置は前記温調チャンバー外部に配置されていることを特徴とする。
【0018】
請求項7においては、請求項1乃至3及び6のいずれかに記載の共焦点顕微鏡システムにおいて、
前記レーザユニットの出射光軸を前記ニポウディスク式スキャナ部に対して調整可能な光軸調整手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したことから明らかなように本発明の請求項1〜4によれば、レーザユニット及び撮影装置が保護筐体の前面開口部側に対して奥側に配置されているので、保護筐体の幅を狭くすることができ、スペース効率が良い。
【0020】
請求項5によれば、スキャナ部の一つが選択的に使用可能に構成されているので、対物レンズを交換した場合などに最適なピンホール径を有するスキャナ部を用いることができる。
【0021】
請求項6によれば、レーザユニット及び撮影装置は温調チャンバーの外側に配置したので、熱によって性能が劣化することが少なくなり、熱によるノイズを低減すことができる。
【0022】
請求項7によれば、レーザユニットの出射部に光軸調整手段を設けたので、スキャナ部に入るレーザ光の調節を容易に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下図面を用いて本発明を詳しく説明する。
図1は本発明に係る共焦点顕微鏡システムの一実施例を示す平面図(a)及び正面図(b)である。
図1(a)、(b)において、共焦点顕微鏡システムは、保護筐体2によって覆われている。保護筐体2の内部には、温調チャンバー3が設けられており、内部をほぼ一定温度(例えば30℃)になるように調節している。保護筐体2は向かって右側面が前面とされ、温調チャンバー3の右側面が保護筐体2の前面に沿うように配置されている。
【0024】
温調チャンバー3の内部には前面側にXY駆動装置15が配置され、このXY駆動装置15上にはXY方向に駆動される移動テーブル26が設けられている。この移動テーブル26には、試料が収められたガラスボトムディッシュ13を有する試料カセット14及が装着され、試料カセット14は移動テーブル26の移動にしたがってXY駆動装置15上をXY方向に移動する。
【0025】
試料カセット14の上方には対向してコンデンサレンズ16及び光源17が配置され、下方には試料カセット14に対向して対物レンズ11が配置されている。駆動ユニット12は対物レンズ11を矢印のZ方向に駆動する。
【0026】
XY駆動装置15の後方にはハブ6によって連結され、モータ7によって回転するマイクロレンズディスク4及びピンホールディスク5を有するスキャナ部25が配置されている。対物レンズ11の下方にはミラー10が配置され、このミラー10とスキャナ部25の間にはチューブレンズ9が配置されている。また、マイクロレンズディスク4とピンホールディスク5の間にはダイクロイックミラー8が配置されている。
【0027】
正面から見てスキャナ部25の奥側にはリレーレンズ18を介してミラー19が配置され、ミラー19の左方にはモータ21によって回転するフィルターホィール20が配置されている。温調チャンバー3の前面から見た奥手側の外側にはCCD23及びレーザユニット24が配置され、CCD23とフィルターホィール20の間にはリレーレンズ22が配置されている。このリレーレンズ22は温調チャンバー3内に配置されている。レーザユニット24は温調チャンバー3の前面から見た奥手側でスキャナ部25に対向して配置されている。
【0028】
図1において、チューブレンズ9、ミラー10及び対物レンズ11で構成される部分を投光光学系、ダイクロイックミラー8を分離光学系、リレーレンズ18,22、ミラー19、フィルターホイール20で構成される部分を結像光学系、CCDを撮影装置と称する。
【0029】
図2はレーザユニット24の詳細を示す正面図である。本実施例では3種類の異なる波長を出射するレーザ発振機30,32,34が所定の空間を隔てて縦方向に平行に並べられ、かつ平行光になるように調整されたレーザ光が水平方向に出射するように配置されている。なお、これらのレーザ発振機は半導体レーザでも固体レーザでも良い。
【0030】
レーザ発振機30の前方にはミラー31が配置され、レーザ発振機32の前方にはレーザ発振機32から出射したレーザ光の波長を反射し、レーザ発振機30から出射したレーザ光の波長を透過するダイクロイックミラー33が配置されている。また、レーザ発振機34の前方にはレーザ発振機34から出射したレーザ光の波長を反射し、レーザ発振機30及びレーザ発振機32から出射したレーザ光の波長を透過するダイクロイックミラー35が配置されていて、レーザ発振機30,32,34から出射した3種類のレーザ光はその光軸が等しくなるように調整されている。さらに光路の前方には概ね90度傾斜したミラー36が配置されおり、レーザ光はこのミラー36で反射して光軸調整手段37に導かれる。
【0031】
図3(a〜c)は光軸調整手段37の詳細を示し、図3(a)は正面図、図3(b)は平面図、図3(c)は右側面図である。光軸調整手段37には調節が可能な3枚のミラー40、41,42が配置されている。矢印(A)方向から入射したレーザ光はミラー40によって概ね90度曲げられ、ミラー41に向かう。ミラー41によってレーザ光は再び概ね90度曲げられ、さらにミラー42でも概ね90度に曲げられる。また、ミラー40は矢印b方向に調整可能に構成され、ミラー41は矢印c方向に調整可能に構成されている。また、ミラー42はその傾きが自在に調整可能に構成されている。
【0032】
この3回の反射によって、光軸調整手段37に入射するレーザ光の向きと、出射するレーザ光の向きはほぼ等しくなっている。また、ミラー41を矢印b方向に調節することにより、ミラー41での反射位置が異なり、光軸調整手段37を出射する光の高さ方向位置が調整できる。また、ミラー42をc方向に調節することにより、ミラー42での反射位置が異なり、光軸調整手段37を出射する光の横方向位置が調整できる。
【0033】
さらに、ミラー42の傾きを変えることにより、光軸調整手段37を出射するレーザ光の向きが調整できる。これらミラーはそれぞれ独立に調整が可能で、レーザユニット24を出るレーザ光の位置及び向きを容易に、かつ正確に調節が可能となっている。
【0034】
図1に戻り、レーザユニット24の前方にはスキャナ部25が配置されている。このスキャナ部25はマイクロレンズディスク4とピンホールディスク5がハブ6で連結されており、モータ7によって回転自在になっている。
【0035】
図4はスキャナ部の詳細を示す斜視図である。マイクロレンズディスク4には多数のマイクロレンズ4aが螺旋状のパターンで配置されており、ピンホールディスク5にはピンホール5aが同じ螺旋状のパターンで配置されている。図4に示すようにマイクロレンズ4aとピンホール5aの螺旋状のパターンは1対1に対応し、マイクロレンズ4を通った光は対応するピンホールディスク5上で焦点を結ぶ構成となっている。
【0036】
また、2枚のディスク4,5の間にはダイクロイックミラー8が図示しない固定部材で固定されている。このダイクロイックミラー8はレーザユニット24から出射するレーザ光は透過して、それらのレーザ光に含まれる蛍光は反射するものを用いる。また、後述する透過照明の波長も反射するものが選ばれている。
【0037】
前述のようにマイクロレンズディスク4を通った光はピンホールディスク5の対応するピンホールで集光されて、ピンホールを通過した光はチューブレンズ9、対物レンズ11の作用で対物レンズ11の対応する位置でそれぞれ焦点を結ぶ。図4では2枚のレンズの作用をまとめて模式的に1枚のレンズとして示している。
【0038】
この焦点からの蛍光は同じ光路を通って再び同じピンホールを通過し、ダイクロイックミラー8で反射されてリレーレンズ18、22によって高感度CCD23に結像される。ここでも2枚のリレーレンズ18,22の動作を模式的に1枚のレンズとして示している。ここでモータ7によってマイクロレンズディスク4とピンホールディスク5を一体的に回転させることによって、対応する焦点も移動し、さらに高感度CCD23上に結像された蛍光も移動する。
【0039】
このように複数のレーザ光の焦点が高速で試料上を走査し、試料からの蛍光が高感度CCD23上に結像される。ここで焦点面を外れた光による蛍光は、レーザ光と同じ光路を通ることが無いため、対応するピンホールにはほとんど入ることが無い。従って、高感度CCD23で観察される像は、焦点面の極近傍の共焦点画像となる。
【0040】
また、図示しないコントローラによってZ駆動ユニット12を駆動することによって、試料上の最適な位置に焦点を合わせたり、深さの異なる断層像を撮影することが可能である。また、XY駆動機構15によって、ガラスボトムディッシュ13の所望の位置が観察可能となっている。
【0041】
また、コントローラはレーザユニット24内部のレーザ発振機30,32,34を選択的に切り換えると共に、フィルターホイールの中の最適なフィルタを選択することによって、複数の波長の蛍光画像の取得も可能である。さらに、レーザ光を発振しない状態で、透過観察のための光源17を点灯させて、透過照明を行い、蛍光と同じ光路を通る透過画像を観察することも可能である。
【0042】
図1に示すように、スキャナ部25の前方にはチューブレンズ9が配置され、チューブレンズ9の先にはミラー10が配置されており、レーザ光は上方に曲げられる。ミラー10の上方には対物レンズ11が配置され駆動ユニット12によってZ方向に移動可能に配置されている。対物レンズ11の上方にはXY駆動装置15が配置されている。XY駆動装置15には移動テーブル26が取り付けられており、移動テーブル26には試料カセット14が着脱可能に取り付けられている。
【0043】
試料カセット14の内部にはガラスボトムディッシュ13などの試料が搭載されている。また、試料カセット14が装着された時に、試料カセット内部が細胞の培養に最適な環境になるように、必要な水、2酸化炭素などが供給され、最適な温度で維持される。また、試料の上方には、透過観察のための透過照明の光源17とコンデンサレンズ16が配置されている。(図1b参照)
【0044】
レーザ光照射により試料が発する蛍光は対物レンズ11を透過してミラー10で反射された後に、チューブレンズ9によってピンホールディスク5に集光され、ダイクロイックミラー8に導かれる。
そして、試料から発せられた蛍光や透過照明による透過光はダイクロイックミラー8で反射して、リレーレンズ18に導かれる。リレーレンズ18を通過した光は、ミラー19で反射した後にフィルターホイール20を通過する。
【0045】
フィルターホイール20には複数のフィルタ(図示省略)が搭載されており、モータ21でフィルターホイール20を回転させることにより、フィルタを選択的に選ぶことが可能になっている。このフィルターホイール20を通過した光はリレーレンズ22を通過した後に、高感度CCD23に導かれる。また、2枚のリレーレンズ18、22によって、ピンホールディスク面の像が、CCD23の面上に投影される構成となっている。このCCD23と前述のレーザユニット24は温調チャンバー3の外部に配置されている。
【0046】
図5は試料をセットする際に試料カセット14が保護筐体2の前面に移動した状態を示すもので、移動テーブル26をY方向の所定の位置に持ってくることによって、図示しない保護筐体2及び温調チャンバー3の開口部から、試料カセット14が出てくるように構成されている。その状態でこの試料カセット14を取り出して、その内部に試料を入れたガラスボトムディッシュ13をセットして、再び試料カセット14に装着して温度チャンバー3内部の所定の位置に搬送される。
【0047】
図2に示すように、レーザユニット24には波長の異なる3種類のレーザ光を出射するレーザ発振機30,32,34が配置され、これらのレーザ発振機は図示しないコントローラによってそれぞれの出力が必要に応じてON,OFF制御される。3種類のレーザ光はそれぞれコリメートされており、ミラー31やダイクロイックミラー33、35によって同軸になるように調整されている。これら3種類のレーザ光はミラー36によって光軸調整手段37に導かれる。
【0048】
レーザユニット24からのレーザ光はスキャナ部25に入射される。このスキャナ部のマイクロレンズディスク4上のマイクロレンズによって集光されるが、ダイクロイックミラー8を透過し、ピンホールディスク5上の対応するピンホール上で焦点を結ぶ。ここで、この焦点を正確にピンホール上に持ってくるには、前記のレーザ光の位置や傾きを正確に調整することが必要で、前記の光調整手段が有効に作用する。ピンホールディスク5を通った光は前方に配置されたチューブレンズ9によって、ピンホール位置に対応した傾きを有する平行光となる。
【0049】
この平行光はミラー10によって上方に曲げられ、対物レンズ11によってそれぞれ焦点を結ぶ。焦点位置に蛍光染色された試料がある場合、この蛍光の一部は再び対物レンズ11に入射し、前記のレーザ光と同様の光路を戻り、ミラー10によってチューブレンズ9に導かれ、チューブレンズ9によってそれぞれ対応するピンホール5a上で再び焦点を結ぶ。
【0050】
ここでピンホール5aを通過した光は、ダイクロイックミラー8によって反射され、リレーレンズ18を通りミラー19で反射されてフィルターホイール20を通過し、リレーレンズ22に導かれる。ここで2枚のリレーレンズ18、22によってピンホール上のそれぞれの焦点は高感度CCD23上の対応する位置に転送される。また、コントローラ(図示省略)はレーザユニットの中のレーザ光の内の一つを選択した場合に、このレーザの波長に対応する蛍光のみを透過する最適フィルタをフィルタホイール20の中から選択する。
【0051】
なお、本実施例では対物レンズ11が1本の例を示したが、これに限らず複数の対物レンズを選択的に使用できるようにしても構わない。また、レーザ光の調整として3つのミラーを用いた例を示したが、これに限らず2つのミラーで調整しても構わなく、またレーザユニット24の位置及び向きを調整しても構わなく、さらに別の方法でも構わない。
また、温調チャンバー3の外側を冷却してもよく、この場合レーザ発振機の寿命が伸びると共に、高感度CCDのノイズを低減することができる。
【0052】
図6(a〜c)は他の実施例を示す平面図である。
図1と同一要素には同一記号を付して説明は省略する。
図6(a)において、図1との相違点は、選択式スキャナ部90及び高感度CCDを追加搭載した点である。蛍光を観察するための光路の途中のフィルターホイール20の後方にミラー81を配置する。このミラー81は図示しないアクチュエータによって、光路中への挿脱が自在になっている。ミラー81で曲げられた光軸方向にはリレーレンズ61を介して、第2の高感度CCD62が着脱自在に配置されており、このCCD上に蛍光が結像される構成になっている。
【0053】
図6(b)は選択式スキャナ部90の正面図(光軸方向から見た図)である。ここでは図1に示すスキャナ部25の代わりに、複数のスキャナ部が選択できる選択式スキャナ部90を用いている。図6(c)はディスク部分を側面から見た図を示している。
【0054】
この実施例では2つのスキャナ部25a、及び25bが用いられる。スキャナ部25aは図1に示すスキャナ部と同様マイクロレンズディスク4aとピンホールディスク5aがハブ6aで連結されており、モータ7aによって回転自在になっている。またスキャナ部25bも同様マイクロレンズディスク4bとピンホールディスク5bがハブ6bで連結されており、モータ7bによって回転自在になっている。
【0055】
それぞれのスキャナ部は図4に示すスキャナ部と同様の螺旋状のパターンとなっている。なお、ピンホールディスク5aとピンホールディスク5bは用いているピンホールの径が違っており、例えばピンホールディスク5bのピンホール径はピンホールディスク5aのものよりも小さいものが選択されている。これら2つのスキャナ部25a、25bは移動スライダ93に搭載されている。
【0056】
移動スライダ93には、それぞれの光が通過する場所に透過窓97、99が設けられている上、2つのスキャナ部の間にも透過窓98が設けられている。この移動スライダ93は2本のガイド機構91,92によって矢印F方向に移動可能に支持されている。さらに移動スライダ93にはその内部にボールナット(図示せず)を有する駆動部95が連結されており、この駆動部95のボールナットには、モータ96に連結されたボールネジ94が係合されており、モータ96を回転させることによって移動スライダ93を矢印F方向に移動可能な構成になっている。また、ダイクロイックミラー8は図1に示す実施例と同様に光軸上に固定されている。
【0057】
上記の構成によれば、選択式スキャナ部90によって使用するスキャナ部を選択することができる。図6(b)では光軸上にスキャナ部25aを配置している場合を示すが、対物レンズの倍率が低い場合など、より小さなピンホール径が好ましいときには、モータ96を回転させることによって、移動スライダ93を上方に移動させて、スキャナ部25bをその光軸に持ってくることができる。
【0058】
このように観察に用いる対物レンズに応じて、最適なピンホール径を選択できるようになる。さらに、光軸上に透過窓58を位置させることも可能でこの場合には、透過照明を用いて図1に示す実施例よりも明るい透過像を得ることができる。
【0059】
また、ミラー81の挿脱により使用するカメラを選択的に用いることができる。例えば第2の高感度CCD62には、第1の高感度CCD23よりも高精細なものを用いると、その必要に応じてカメラを使い分けることができる。また、ミラー81としてダイクロイックミラーを用いても良い。
【0060】
この場合、例えばフィルターホイール20のフィルタやダイクロイックミラー8を複数の波長に対応したものを選択し、さらにレーザユニット24の中のこれらの波長に対応した2つのレーザ光を用いることによって2波長の同時励起を行い、ミラー81としてダイクロイックミラーを用いた場合、それぞれの波長の蛍光を分離することによって、異なった波長のレーザによる蛍光を同時に観察することが可能になる。また、高感度CCD62は必要に応じて容易に着脱することができる。
また、対物レンズ11に応じた、ピンホールを選択でき、中間の透過窓58を使用することで、明るい透過像を得ることができ、2波長励起による同時観察も行うことができる。
【0061】
本発明の以上の説明は、説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。例えば図6では選択式スキャナ部と高感度CCDの両方を追加した例を示したが
、いずれか一方のみを追加したものであってもよい。
したがって本発明はその本質から逸脱せずに多くの変更、変形をなし得ることは当業者に明らかである。
特許請求の範囲の欄の記載により定義される本発明の範囲は、その範囲内の変更、変形を包含するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係る共焦点顕微鏡システムの一実施例を示す平面図(a)及び側面図(b)である。
【図2】レーザユニットの詳細を示す正面図である。
【図3】光調整手段の正面図(a)、平面図(b)、及び側面図(c)である。
【図4】スキャナ部の詳細を示す斜視図である。
【図5】試料カセットが筐体の全面に移動した状態を示す正面図である。
【図6】他の実施例を示す正面図(a)、スキャナ部の詳細を示す平面図(b)及び(b)図のスキャナ部の側面図である。
【図7】従来の共焦点顕微鏡システムの構成例を示す機能ブロック図である。
【図8】従来の共焦点顕微鏡システムの一般的な配置例を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1 共焦点顕微鏡システム
2 保護筐体
3 温度チャンバー
4 マイクロレンズアレイディスク
4a マイクロレンズ
5 ピンホールディスク
5a ピンホール
6 ハブ
7,21,96 モータ
8,33,35 ダイクロイックミラー
9 チューブレンズ
10,19,31,36,41,42,81 ミラー
11 対物レンズ
12 駆動ユニット
13 試料台
14 試料カセット
15 テーブル
16 コンデンサレンズ
17 光源
18,22,61 リレーレンズ
20 フィルターホイール
23,62 CCD(撮像カメラ)
24 レーザユニット
25 スキャナ部
26 XY駆動装置
37 光調整手段
97,98,99 透過窓
90 選択式スキャナ部
91,92 ガイド機構
93 移動スライダ
94 ボールネジ
95 駆動部
97,98,99 透過窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つ以上のレーザ発振機を搭載するレーザユニットと
前記レーザユニットからのレーザ光を走査するニポウディスク式スキャナ部と
前記スキャナ部で走査されたレーザ光を試料に投射する投射光学系と
対物レンズに対向して配置された前記試料をテーブル上でXY駆動させるXY駆動装置と、
前記試料からの蛍光のうち、再びスキャナ部を通過した光を分離する分離光学系と
前記分離された蛍光を再び結像させる結像光学系と
前記結像光学系の結像面に配置された撮影装置と
を備えた共焦点顕微鏡システムにおいて、
前記共焦点顕微鏡システムを構成する各装置を一体的に保護筐体に収めると共に、
前記試料を前記保護筐体の外側面に移動させ試料の出し入れを行う開口部側を前面としたときに、前記ニポウ式スキャナ部が前記対物レンズの奥側に配置されていることを特徴とする共焦点顕微鏡システム。
【請求項2】
前記レーザユニット及び前記撮影装置は前記ニポウ式スキャナ部よりも奥側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の共焦点顕微鏡システム。
【請求項3】
前記レーザユニットの出射光軸と、前記撮影装置の光軸が概ね平行に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の共焦点顕微鏡システム。
【請求項4】
前記対物レンズは鉛直方向の光軸を有すると共に、前記ニポウ式スキャナ部の光軸は水平方向に配置され、反射部材を介して光信号をそれぞれ直角方向に反射するように構成したことを特徴とする請求項1記載の共焦点顕微鏡システム。
【請求項5】
前記保護筐体内には、ピンホール径の異なる複数のニポウディスク式スキャナ部が配置され、それらのスキャナ部の一つが選択的に使用可能に構成されていることを特徴とする請求項1記載の共焦点顕微鏡システム
【請求項6】
前記ニポウ式スキャナ部と結像光学系は温調チャンバー内部に配置されると共に前記レーザユニット及び前記撮影装置は温調チャンバー外部に配置されていることを特徴とする請求項1記載の共焦点顕微鏡システム。
【請求項7】
前記レーザユニットの出射光軸を前記ニポウディスク式スキャナ部に対して調整可能な光軸調整手段を有することを特徴とする請求項1に記載の共焦点顕微鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−180411(P2011−180411A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45102(P2010−45102)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】