説明

共重合体ラテックス及び紙塗工用組成物

【課題】 塗工操業性と塗工紙のドライピック強度及び耐ブリスター性に優れた共重合体ラテックス及び紙塗工用組成物の提供。
【解決手段】(a)脂肪族共役ジエン系単量体20〜69.5重量%、(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体0.5〜20重量%、並びに(c)前記(a)成分および(b)成分と共重合可能な他のビニル系単量体10.5〜79.5重量%を乳化重合して得られる共重合体ラテックスにおいて、ラテックスフィルムのテトラヒドラフラン溶解分のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が2000以上10万未満であることを特徴とする共重合ラテックス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合体ラテックス及び紙塗工用組成物に関するものである。詳しくは、紙塗工用組成物にバインダーとして好適に使用される共重合体ラテックスであり、塗工紙製造工程での塗工操業性に優れ、かつ塗工紙のドライピック強度及び耐ブリスター性に優れた共重合体ラテックス及び該共重合体ラテックスを含有する紙塗工用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塗工紙は塗工原紙の表面に紙用塗被組成物を塗布、乾燥して製造される。塗工紙は印刷物に広く利用され、高品質の塗工紙を得るために顔料と水性バインダーとを主成分とした紙用塗被組成物の研究・改良が進められている。水性バインダーとしてはデンプンなどの天然バインダーやスチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスの合成エマルションバインダーが広く用いられている。中でもスチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスは、品質設計の自由度が大きく、今日では紙塗工用組成物に最も適したバインダーとして広く使用されており、スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスの性能が紙塗工用組成物の性能や塗工紙作成時の操業性あるいは最終的な塗工紙製品の表面強度、印刷光沢などの品質に影響することが知られている。
近年、紙加工分野において高速塗工化、高生産化が進められている中、スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスの品質設計や製造方法に関してはさまざまな検討がされ、技術改良が紹介されている。
【0003】
上記諸物性の高バランス化を目指し、2段以上の多段重合法において1段目で得られる共重合体の溶媒可溶部の分子量をコントロールする方法を用いたラテックスが提案されている。例えば特開平7−324112号公報では、1段目の共重合体のテトラヒドロフラン溶解分のポリスチレン換算重量平均分子量を10万以上とすることでさらなる塗工操業性と印刷適性の高バランス化が達成可能であると開示されている。また特開2002−241443号公報において、1段目に得られる共重合体部分の分子量および分子量分布を特定の範囲にすることで塗工操業性と塗工紙のピック強度と耐ブリスター性に優れる共重合体ラテックスが提案されている。さらには特開2000−154496号公報において、各特定組成の共重合体であってトルエン不溶分が80重量%以上で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定から得られる分子量分布において、ポリスチレン換算の分子量で110万に対応する溶出時間より早く検出される成分の割合が50%以上である共重合体を含むことを特徴とする共重合ラテックスが提案されている。
しかし、これらのさまざまな改良技術は、紙塗工用共重合体ラテックスに要求される高レベルの品質を満足するに至っておらず、更なる改良が強く求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−324112号公報
【0005】
【特許文献2】特開2002−241443号公報
【0006】
【特許文献3】特開2000−154496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、紙塗工用組成物の再分散性に優れることにより塗工操業性に優れ、またドライピック強度及び耐ブリスター性が良好な塗工紙が得られる共重合体ラテックスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(a)脂肪族共役ジエン系単量体20〜69.5重量%、(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体0.5〜20重量%、並びに(c)前記(a)成分および(b)成分と共重合可能な他のビニル系単量体10.5〜79.5重量%を乳化重合して得られる共重合体ラテックスであり、得られた共重合体ラテックスのフィルムのテトラヒドラフラン溶解分のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が2000以上10万未満であることを特徴とする共重合体ラテックスを提供する。また、該共重合体ラテックスを含有する紙塗工用組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、塗工紙作成時の塗工操業性に優れる紙塗工用組成物が得られ、また本発明の紙塗工用組成物を塗工することにより、ドライピック強度と耐ブリスター性に優れた塗工紙を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願発明の共重合体ラテックスは、脂肪族共役ジエン系単量体、エチレン系不飽和カルボン酸単量体およびこれらと共重合可能な他の単量体を乳化重合して得られる。
脂肪族共役ジエン系単量体としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換および側鎖共役ヘキサジエン類などが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特に1,3−ブタジエンの使用が好ましい。
【0011】
エチレン系不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などの1塩基酸または2塩基酸(無水物)を挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。
【0012】
上記脂肪族共役ジエン系単量体およびエチレン系不飽和カルボン酸単量体と共重合可能な他の単量体としては、アルケニル芳香族単量体、シアン化ビニル単量体、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体、ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体、不飽和カルボン酸アミド単量体等が挙げられる。
【0013】
アルケニル芳香族単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルα−メチルスチレン、ビニルトルエンおよびジビニルベンゼン等が挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にスチレンの使用が好ましい。
【0014】
シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にアクリロニトリルまたはメタクリロニトリルの使用が好ましい。
【0015】
不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にメチルメタクリレートの使用が好ましい。
【0016】
ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体としては、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジ−(エチレングリコール)マレエート、ジ−(エチレングリコール)イタコネート、2−ヒドロキシエチルマレエート、ビス(2−ヒドロキシエチル)マレエート、2−ヒドロキシエチルメチルフマレートなどが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にβ−ヒドロキシエチルアクリレートの使用が好ましい。
【0017】
不飽和カルボン酸アミド単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特にアクリルアミドまたはメタクリルアミドの使用が好ましい。
【0018】
さらに、上記単量体の他に、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等、通常の乳化重合において使用される単量体は何れも使用可能である。
【0019】
上記の単量体組成は、脂肪族共役ジエン系単量体20〜69.5重量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体0.5〜20重量%およびこれらと共重合可能な他の単量体10.5〜79.5重量%であることが必要である。
【0020】
脂肪族共役ジエン系単量体が20重量%未満では塗工紙のドライピック強度が劣り、また69.5重量%を超えると紙塗工用組成物の再分散性が劣り、塗工紙作成時の塗工操業性に悪影響を及ぼす。好ましくは30〜60重量%である。
【0021】
エチレン系不飽和カルボン酸単量体が0.5重量%未満では共重合体ラテックスの機械的安定性および放置安定性が劣り、また20重量%を超えるとラテックス自身の粘度が高くなりすぎ、送液ポンプによるラテックスの輸送搬送性が劣るなど、いずれも取り扱い性が悪化する。好ましくは1〜15重量%である。
【0022】
共重合可能な他の単量体が10.5〜79.5重量%の範囲から外れると、塗工紙のドライピック強度が著しく低下する。
【0023】
本発明の共重合体ラテックスの重合には、公知の乳化剤(界面活性剤)を使用することができる。例えば、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、脂肪族カルボン酸塩、デヒドロアビエチン酸塩、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、非イオン性界面活性剤の硫酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルフェニルエーテル型、アルキルエーテル型等のノニオン性界面活性剤が挙げられ、これらを1種又は2種以上使用することができる。
【0024】
本発明の共重合体ラテックスの重合には、公知の連鎖移動剤(分子量調整剤)を制限されることなく使用することができる。例えば、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物、アリルアルコール等のアリル化合物、ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物、α−ベンジルオキシスチレン、α−ベンジルオキシアクリロニトリル、α−ベンジルオキシアクリルアミド等のビニルエーテル、トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−エチルヘキシルチオグリコレート、ターピノレン、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。
【0025】
本発明の共重合体ラテックスの重合には、公知の重合開始剤として、過硫酸リチウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性重合開始剤、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、t−ブチルハイドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等の油溶性重合開始剤を適宜用いることができる。特に過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイドの使用が好ましい。重合開始剤の量は特に制限されないが、単量体組成、重合反応系のpH、他の添加剤などの組み合わせを考慮して適宜調整される。
【0026】
本発明において好ましく用いられる還元剤の具体例としては、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩、亜ニチオン酸塩、ニチオン酸塩、チオ硫酸塩、ホルムアルデヒドスルホン酸塩、ベンズアルデヒドスルホン酸塩、また、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸、酒石酸、クエン酸などのカルボン酸類及びその塩、更にはデキストロース、サッカロースなどの還元糖類、更にはジメチルアニリン、トリエタノールアミンなどのアミン類が挙げられる。特にL−アスコルビン酸、エリソルビン酸の使用が好ましい。
【0027】
本発明の共重合体ラテックスの重合には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の飽和炭化水素、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、4−メチルシクロヘキセン、1−メチルシクロヘキセン等の不飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などの炭化水素化合物を使用することができる。特に、沸点が適度に低く、重合終了後に水蒸気蒸留などによって回収、再利用しやすいシクロヘキセンやトルエンが、本発明の目的とは異なるものの、環境問題の観点から好適である。
【0028】
本発明の共重合体ラテックスの粒子径にはなんら制限はないが、200nm以下であることが好ましい。特に好ましくは50〜150nmである。
【0029】
本発明の共重合体ラテックスについて、ラテックスフィルムのテトラヒドラフラン溶解分のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、2000以上10万未満であることが必要である。Mwが2000未満であると、塗工紙のドライピック強度が低下する。また10万以上であると共重合体の架橋密度が高く、塗工紙のドライピック強度と耐ブリスター性のバランスが低下する。また、ポリスチレン換算数平均分子量(Mn)が2000以上8万未満であることが好ましい。さらには、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)とポリスチレン換算数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、1.3〜4.5であることが、塗工紙のドライピック強度と耐ブリスター性のバランスを向上させるために、特に好ましい。
【0030】
共重合体ラテックスフィルムのテトラヒドラフラン溶解分のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、重合温度、単量体の添加速度、連鎖移動剤の量を適宜設定することでコントロール可能である。Mw/Mnの比すなわち重合して得られる共重合体部分の分子量分布は、架橋密度が高くなると、大きくなる。Mw/Mnの比は、上記同様に重合温度、単量体の添加速度及び連鎖移動剤の量や添加方法によって調整でき、また架橋反応を引き起こす共役ジエン系単量体の量によってもコントロール可能である。本発明の共重合体ラテックスにおいては、架橋密度が高くなりすぎないことが諸物性のバランスを保つために必要であることから、たとえば重合後期に重合転化率が95%を超えてから連鎖移動剤を連続的に添加する方法、重合が進行するに従って全単量体中の共役ジエン系単量体の比率を少なくする方法、重合後期に炭化水素化合物を添加してラテックス粒子を膨潤させる方法などにより、過度の架橋体が生成しないようにすることが有効である。
【0031】
本発明の共重合体ラテックスの重合には、必要に応じて酸素補足剤、キレート剤、分散剤等の公知の添加剤を用いることも差し支えなく、これらは種類、使用量ともに特に限定されず、適宜適量使用することが出来る。更には消泡剤、老化防止剤、防腐剤、抗菌剤、難燃剤、紫外線吸収剤などの公知の添加剤を用いることも差し支えなく、これらも種類、使用量ともに特に限定されず、適宜適量使用することが出来る。また、本発明の共重合体ラテックスは、その使用目的に応じて他のラテックスと適宜適量ブレンドすることもできる。
【0032】
本発明の共重合体ラテックスの製造にあたって、単量体ならびにその他の成分の添加方法については特に制限されるものではなく、一括添加方法、分割添加方法、連続添加方法、パワーフィード方法の何れでも採用することができる。また、本発明においては、一段重合、二段重合又は多段階重合等何れも採用することができる。
【0033】
本発明の共重合体ラテックスを使用する紙塗工用組成物は、顔料として、例えば、カオリンクレー、炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、サチンホワイトなどの無機顔料、あるいはポリスチレンラテックスのような有機顔料をそれぞれ単独または混合して使用することができる。
また、紙塗工用組成物中の共重合体ラテックスの含有量は顔料100重量部(固形分)に対して2〜20重量部(固形分)を使用することが好ましい。共重合体ラテックスの含有量が2重量部以下では顔料を充分に接着できず好ましくなく、20重量部を超えると不透明度や白紙光沢が低下して好ましくない。
【0034】
また、必要に応じて澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉等の変性澱粉、大豆蛋白、カゼインなどの天然バインダー、あるいはポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性合成バインダーなどを使用しても差し支えない。さらに、ポリ酢酸ビニルラテックス、アクリル系ラテックスなどの合成ラテックス等を本発明の共重合体ラテックスと併用してもよい。
【0035】
本発明の共重合体ラテックスを用いて紙塗工用組成物を調整する際には、さらにその他の助剤、例えば分散剤(ピロリン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムなど)、消泡剤(ポリグリコール、脂肪酸エステル、リン酸エステル、シリコーンオイルなど)、レベリング剤(ロート油、ジシアンジアミド、尿素など)、防腐剤、離型剤(ステアリン酸カルシウム、パラフィンエマルジョンなど)、蛍光染料、カラー保水性向上剤(アルギン酸ナトリウムなど)を必要に応じて添加しても良い。
【0036】
さらに、紙塗工用組成物を塗工用紙へ塗布する方法には、公知の技術、例えばエアナイフコーター、カーテンコーター、ブレードコーター、ロールコーター、バーコーターなどのいずれの塗工機を使用しても差し支えない。また、塗工後、表面を乾燥し、カレンダーリングなどにより仕上げる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。なお実施例中、割合を示す部および%は特に断りのない限り重量基準によるものである。また実施例における諸物性の評価は次の方法に拠った。
【0038】
共重合体ラテックスフィルムのテトラヒドラフラン溶解分の重量平均分子量の測定
<試料調整方法>
ラテックスフィルムを作成し、テトラヒドラフラン(液クロ用)に溶解し、ラテックスフィルムの可溶部が、テトラヒドラフラン(液クロ用)10ml中に約0.02gとなるように調整した。
溶解後、ディスポーザブルフィルター(仕様:島津製作所、液クロ・非水系13N 孔径0.45μm)でろ過し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
<GPC条件>
測定装置:島津製作所LC−10AVP
データ処理装置:クロマトパック C−R7Aplus
分析カラム
:Shodex GPC KF―802.5
:Shodex GPC KF―805
:Shodex GPC KF―806
ガードカラム:島津製作所Shim-pack GPC-2000P
カラムオーブン:50℃
キャリアー液:テトラヒドロフラン(液クロ用)
流量:1ml/min
検出器:UV(254nm)
サンプル注入量:100μl
【0039】
共重合体ラテックスの数平均粒子径の測定
共重合体ラテックスの数平均粒子径を動的光散乱法により測定した。尚、測定に際しては、FPAR−1000(大塚電子製)を使用した。
【0040】
共重合体ラテックス(a)の合成
耐圧製の重合反応器に、重合水177部、炭酸水素ナトリウム0.01部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.35部、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム0.1部を仕込み、十分攪拌した後、表1に示した各単量体および他の化合物を加えて70℃にて重合を開始し、5時間反応させた。さらに2段目として表1に示した各単量体および他の化合物を4.5時間にわたって連続的に添加し重合を継続した。さらに3段目として表1に示した各単量体および他の化合物を1時間にわたって連続的に添加し重合を継続した。重合転化率が98%を超えた時点で重合を終了した。次いで、得られた共重合体ラテックスを、水酸化ナトリウムを用いてpH7に調整し、加熱減圧蒸留で未反応単量体および他の低沸点化合物を除去しラテックス(a)を得た。
【0041】
共重合体ラテックス(b)の合成
耐圧製の重合反応器に、重合水250部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5部を仕込み、十分攪拌した後、表1に示す1段目の各単量体および他の化合物を加えて65℃にて重合を開始し5.5時間反応させた。次いで表1に示す2段目の各単量体および他の化合物を3.5時間にわたって連続的に添加し75℃にて重合を継続した。さらに表1に示す3段目の各単量体および他の化合物を1時間にわたって連続的に添加し重合させた。重合転化率が98%を超えた時点で重合を終了した。
次いで、得られた共重合体ラテックスを、水酸化ナトリウムを用いてpH7に調整し、加熱減圧蒸留により未反応単量体および他の低沸点化合物を除去し、共重合体ラテックス(b)を得た。
【0042】
共重合体ラテックス(c)の合成
耐圧製の重合反応器に、重合水175部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.05部、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム0.7部、炭酸水素ナトリウム0.01部を仕込み、十分攪拌した後、表1に示す各単量体および他の化合物を加えて75℃にて重合を開始し、5時間反応させた。さらに表1に示す2段目の各単量体および他の化合物を3.5時間にわたって連続的に添加し70℃で重合を継続した。さらに表1に示す3段目の各単量体および他の化合物を1時間にわたって連続的に添加し72℃で重合を継続した。重合転化率が98%を超えた時点で重合を終了した。
次いで、得られた共重合体ラテックスを、水酸化ナトリウムを用いてpH7に調整し、加熱減圧蒸留で未反応単量体および他の低沸点化合物を除去しラテックス(c)を得た。
【0043】
共重合体ラテックス(d)の合成
耐圧製の重合反応器に、重合水175部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.05部、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム0.7部を仕込み、十分攪拌した後、表1に示す各単量体および他の化合物を加えて、42℃で6時間反応させた。さらに表1に示す2段目の各単量体および他の化合物を4時間で連続的に添加し、65℃で重合を継続した。続いて表1に示す3段目の各単量体および他の化合物を1時間にわたって連続的に添加し75℃で重合を継続した。重合転化率が98%を超えた時点で重合を終了した。
次いで、得られた共重合体ラテックスを、水酸化ナトリウムを用いてpH7に調整し、加熱減圧蒸留で未反応単量体および他の低沸点化合物を除去し、ラテックス(d)を得た。
【0044】
共重合体ラテックス(e)の合成
耐圧製の重合反応器に、重合水130部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.26部を仕込み、十分攪拌した後、表1に示す各単量体および他の化合物を加えて、65℃で重合を開始した。重合転化率が95%を超えた時点で重合を終了した。
次いで、得られた共重合体ラテックスを、水酸化ナトリウムを用いてpH7に調整し、加熱減圧蒸留で未反応単量体および他の低沸点化合物を除去し、ラテックス(e)を得た。
【0045】
共重合体ラテックス(f)の合成
耐圧製の重合反応器に、重合水180部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.20部、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム0.3部、炭酸水素ナトリウム0.05部を仕込み、十分攪拌した後、表2に示す各単量体および他の化合物を加えて、55℃で5時間反応させた。さらに表2に示す2段目の各単量体および他の化合物を0.5時間にわたって連続的に添加し70℃にて重合を継続した。さらに表2に示す3段目の各単量体および他の化合物を0.5時間にわたって連続的に添加し80℃で重合を継続した。重合転化率が95%を超えた時点で重合を終了した。
次いで、得られた共重合体ラテックスを、水酸化ナトリウムを用いてpH7に調整し、加熱減圧蒸留で未反応単量体および他の低沸点化合物を除去し、ラテックス(f)を得た。
【0046】
共重合体ラテックス(g)の合成
耐圧製の重合反応器に、重合水235部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.10部を仕込み、十分攪拌した後、表2に示す各単量体および他の化合物を加えて65℃で4時間反応させた。さらに表2に示す2段目の各単量体および他の化合物を4時間にわたって連続的に添加し68℃で重合を継続した。さらに表2に示す3段目の各単量体および他の化合物を反応温度0.5時間にわたって連続的に添加し70℃で重合を継続した。重合転化率が97%を超えた時点で重合を終了した。
次いで、得られた共重合体ラテックスを、水酸化ナトリウムを用いてpH7に調整し、加熱減圧蒸留で未反応単量体および他の低沸点化合物を除去し、ラテックス(g)を得た。
【0047】
共重合体ラテックス(h)の合成
耐圧製の重合反応器に、重合水100部、炭酸水素ナトリウム0.15部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.75部を仕込み、十分攪拌した後、表2に示す各単量体および他の化合物を加えて65℃で4時間反応させた。さらに表2に示す2段目の各単量体および他の化合物を4時間にわたって連続的に添加し68℃で重合を継続した。重合転化率が98%を超えた時点で重合を終了した。
次いで、得られた共重合体ラテックスを、水酸化ナトリウムを用いてpH7に調整し、加熱減圧蒸留で未反応単量体および他の低沸点化合物を除去し、ラテックス(h)を得た。
【0048】
共重合体ラテックス(i)の合成
耐圧製の重合反応器に、重合水150部、炭酸水素ナトリウム0.05部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.25部を仕込み、十分攪拌した後、表2に示す各単量体および他の化合物を加えて70℃で4時間反応させた。さらに表2に示す2段目の各単量体および他の化合物を4時間にわたって連続的に添加し70℃で重合を継続した。さらに表2に示す3段目の各単量体および他の化合物を反応温度0.5時間にわたって連続的に添加し70℃で重合を継続した。重合転化率が98%を超えた時点で重合を終了した。
次いで、得られた共重合体ラテックスを、水酸化ナトリウムを用いてpH7に調整し、加熱減圧蒸留で未反応単量体および他の低沸点化合物を除去し、ラテックス(i)を得た。
【0049】
共重合体ラテックス(j)の合成
耐圧製の重合反応器に、重合水120部、炭酸水素ナトリウム0.05部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.25部を仕込み、十分攪拌した後、表2に示す各単量体および他の化合物を加えて65℃で4時間反応させた。さらに表2に示す2段目の各単量体および他の化合物を5時間にわたって連続的に添加し70℃で重合を継続した。さらに表2に示す3段目の各単量体および他の化合物を反応温度0.5時間にわたって連続的に添加し70℃で重合を継続した。重合転化率が98%を超えた時点で重合を終了した。
次いで、得られた共重合体ラテックスを、水酸化ナトリウムを用いてpH7に調整し、加熱減圧蒸留で未反応単量体および他の低沸点化合物を除去し、ラテックス(j)を得た。
【0050】
紙塗工用組成物の作製と評価
下記に示した配合処方に従って共重合体ラテックスa〜hを用い、水酸化ナトリウム水溶液でpH9.5に調整して紙塗工用組成物を作製した。
(紙塗工用組成物の配合処方)
配合処方
カオリンクレー 60部
重質炭酸カルシウム 40部
変性デンプン 4部
共重合体ラテックス 10部
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
固形分濃度 64%
【0051】
塗工紙の作製と評価
塗工原紙(坪量67g/m)に、上記の紙塗工用組成物を片面あたりの塗被量が13g/mとなるようにワイヤーバーを用いて塗工し乾燥した後、線圧60kg/cm、温度50℃の条件でカレンダー処理を行って塗工紙を得た。得られた塗工紙を各試験に供して評価し、その結果を表1および表2に示した。
【0052】
紙塗工用組成物の再分散性の評価
NBR黒ゴム板上に各組成物サンプルを並べて#6ワイヤーバーにて塗布し60℃熱風循環式オーブンにて3分間乾燥させた後、30℃の流水で1分間洗浄してNBR黒ゴム板上に残った組成物の皮膜を目視にて観察した。皮膜の付着の少ない再分散性に優れるものを◎、皮膜の付着の多い再分散性に劣るものを×とし、下記のとおり目視にて相対的に評価した。
(優)◎ > ○ > △ > ×(劣)
【0053】
塗工紙のドライピック強度の評価
RI印刷機で各塗工紙試料を同時に印刷した際のピッキングの程度を肉眼で判定し、5級(優)から1級(劣)まで相対的に目視評価した。
【0054】
塗工紙の耐ブリスター性の評価
22℃×65%RHの恒温恒湿器中で調湿した各塗工紙試料の試験片(5cm×5cm)について、所定の温度に調節したオイルバスへ浸漬し、ブリスターが発生するか否かを観察した。オイルバスの温度を変化させて同様に試験を行い、ブリスターが発生する温度を測定した。発生温度が高いものほど耐ブリスター性に優れる。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
表1、2に示すとおり、本発明による共重合体ラテックスa〜eを用いた紙塗工用組成物はいずれも再分散性が良好で、かつこれら紙塗工用組成物を塗工して得られた塗工紙は、いずれもドライピック強度及び耐ブリスター性が良好である。
【0058】
比較例1は、ブタジエン量が20重量%未満で、Mwが10以上であることから、塗工紙のドライピック強度が大きく劣り、さらに耐ブリスター性も劣る。
比較例2及び3では、Mwが範囲外であることから、塗工紙のドライピック強度が劣る。
比較例4は、ブタジエン量が69.5重量%を超えており、紙塗工用組成物の再分散性が劣る。
比較例5は、Mwが2000未満であることから、塗工紙のドライピック強度が劣る。
【産業上の利用可能性】
【0059】
上記のとおり、本発明の共重合体ラテックスは、紙塗工用組成物に配合すると、再分散性に優れることにより、塗工操業性に優れる。また、本発明の紙塗工用組成物を塗工した塗工紙は、ドライピック強度にも耐ブリスター性にも優れ、極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)脂肪族共役ジエン系単量体20〜69.5重量%、(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体0.5〜20重量%、並びに(c)前記(a)成分および(b)成分と共重合可能な他のビニル系単量体10.5〜79.5重量%を乳化重合して得られる共重合体ラテックスにおいて、ラテックスフィルムのテトラヒドラフラン溶解分のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が2000以上10万未満であることを特徴とする共重合ラテックス。
【請求項2】
ラテックスフィルムのテトラヒドラフラン溶解分のポリスチレン換算数平均分子量(Mn)が2000以上8万未満であることを特徴とする請求項1に記載の共重合ラテックス。
【請求項3】
ラテックスフィルムのテトラヒドラフラン溶解分のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)とポリスチレン換算数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.3〜4.5の範囲内にあることを特徴とする請求項1または2に記載の共重合体ラテックス。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の共重合体ラテックスを含有する紙塗工用組成物。

【公開番号】特開2012−140518(P2012−140518A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293236(P2010−293236)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(399034220)日本エイアンドエル株式会社 (186)
【Fターム(参考)】