説明

共重合体及びその製造方法

【課題】共役ジエン化合物と該共役ジエン化合物以外のオレフィンとの共重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(I):


(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpRは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、Ra〜Rfは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す)で表されるメタロセン錯体等から選択される少なくとも1種類の錯体を含む重合触媒組成物の存在下に重合させる工程を含む共重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合体及び該共重合体の製造方法に関し、特に共役ジエン化合物部分のシス-1,4結合量が高い、共役ジエン化合物と該共役ジエン化合物以外のオレフィンとの共重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、配位アニオン重合に用いる触媒系では、オレフィンモノマー(特に、シクロオレフィン)に対する反応性が低く、該モノマーを重合させることは困難であった。一方、配位アニオン重合に用いる触媒系は、立体特異性重合をはじめ、重合体の幾何異性体構造の制御も可能であるため、該触媒系を利用した種々の重合体の生成反応が報告されている。例えば、特表2006−503141号公報(特許文献1)には、エチレンとブタジエンとの共重合体について、重合触媒としてメタロセン錯体を用いることにより、ブタジエンがtrans-1,2シクロヘキサン結合の形態で挿入されることが開示されている。
【0003】
ところで、シクロオレフィン系単量体の重合反応については、開環メタセシス重合の研究が盛んに行われているが、これに対し、シクロオレフィン系単量体の開環を伴わないビニル付加重合の例は希少である。
【0004】
【特許文献1】特表2006−503141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、新規なメタロセン錯体を用いた、共役ジエン化合物部分のシス-1,4結合量が高い、共役ジエン化合物と該共役ジエン化合物以外のオレフィンとの共重合体の製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記共役ジエン化合物以外のオレフィンとして環状オレフィンを用い、該環状オレフィンをビニル付加型の反応形式により重合させた、共役ジエン化合物と該共役ジエン化合物以外のオレフィンとの共重合体の製造方法を提供することにある。更に、本発明の他の目的は、かかる製造方法により得られる共重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定のメタロセン錯体を含む重合触媒組成物の存在下、共役ジエン化合物及び該共役ジエン化合物以外のオレフィンを重合させることにより、これら単量体からなる共重合体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明の共重合体の製造方法は、下記一般式(I):
【化1】

(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpRは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、Ra〜Rfは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す)で表されるメタロセン錯体、及び下記一般式(II):
【化2】

(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpRは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す)で表されるメタロセン錯体、並びに下記一般式(III):
【化3】

(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpR’は、無置換もしくは置換シクロペンタジエニル、インデニル又はフルオレニルを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示し、[B]は、非配位性アニオンを示す)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体からなる群より選択される少なくとも1種類の錯体を含む重合触媒組成物の存在下、共役ジエン化合物と、該共役ジエン化合物以外のオレフィンとを重合させる工程を含むことを特徴とする。
【0008】
ここで、メタロセン錯体は、一つ又は二つ以上のシクロペンタジエニル又はその誘導体が中心金属に結合した錯体化合物であり、特に、中心金属に結合したシクロペンタジエニル又はその誘導体が一つであるメタロセン錯体を、ハーフメタロセン錯体と称することがある。また、オレフィンは、脂肪族不飽和炭化水素で、炭素−炭素二重結合を1個以上有する化合物である。
【0009】
本発明の共重合体の製造方法の好適例においては、前記共役ジエン化合物以外のオレフィンが、非共役オレフィンである。
【0010】
本発明の共重合体の製造方法の他の好適例においては、前記共役ジエン化合物以外のオレフィンが、環状オレフィンである。ここで、上記環状オレフィンとしては、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ノルボナジエン、シクロヘキセン、エチリデンノルボルネンが好ましい。
【0011】
本発明の共重合体の製造方法の他の好適例においては、前記共役ジエン化合物以外のオレフィンが、非環状オレフィンである。
【0012】
また、本発明の共重合体は、上記一般式(I)及び一般式(II)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体からなる群より選択される少なくとも1種類の錯体を含む重合触媒組成物の存在下、共役ジエン化合物と、該共役ジエン化合物以外のオレフィンとを重合して得たことを特徴とする。
【0013】
本発明の共重合体の好適例においては、前記共役ジエン化合物と前記共役ジエン化合物以外のオレフィンとの重合が、付加重合である。
【0014】
本発明の共重合体の他の好適例においては、前記共役ジエン化合物以外のオレフィンが、非共役オレフィンである。
【0015】
本発明の共重合体の他の好適例においては、前記共役ジエン化合物以外のオレフィンが、非環状オレフィンである。
【0016】
本発明の共重合体においては、前記共役ジエン化合物と該共役ジエン化合物以外のオレフィンがランダムに重合することが好ましい。
【0017】
更に、本発明の共重合体は、共役ジエン化合物と該共役ジエン化合物以外の環状オレフィンとの共重合体である。
【0018】
本発明の共重合体の好適例においては、前記環状オレフィンの繰り返し単位が、環式構造を有する。
【0019】
本発明の共重合体の他の好適例においては、前記環状オレフィンが、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ノルボナジエン、シクロヘキセン、エチリデンノルボルネンからなる群より選択される少なくとも1種である。
【0020】
本発明の共重合体においては、前記共役ジエン化合物と該共役ジエン化合物以外の環状オレフィンがランダムに重合することが好ましい。
【0021】
本発明の共重合体の他の好適例においては、前記共役ジエン化合物部分のシス-1,4結合量が85%以上である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、特定のメタロセン錯体を含む重合触媒組成物の存在下、共役ジエン化合物及び該共役ジエン化合物以外のオレフィンを重合することで、これらの単量体からなる共重合体を製造することができる。また、上記共役ジエン化合物以外のオレフィンとして環状オレフィンを用いることにより、該環状オレフィンをビニル付加型の反応形式により重合させた共重合体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明の共重合体の製造方法は、上記一般式(I)及び一般式(II)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体からなる群より選択される少なくとも1種類の錯体を含む重合触媒組成物の存在下、共役ジエン化合物と該共役ジエン化合物以外のオレフィンとを重合させる工程を含むことを特徴とする。上記した通り、配位アニオン重合触媒では、オレフィンモノマー(特に、シクロオレフィン)に対する反応性が低く、該モノマーを重合させることが困難であった。そこで、発明者らは、配位アニオン重合に用いる触媒系において、主触媒に用いる中心金属と、該中心金属の配位子の最適化を行うことにより、共役ジエン化合物の重合反応に、該共役ジエン化合物以外のオレフィンを導入することができることを見出した。また、かかる触媒系を用いて得た、共役ジエン化合物と該共役ジエン化合物以外のオレフィンとの共重合体は、共役ジエン化合物部分のミクロ構造におけるシス-1,4結合量が高い。従って、本発明の製造方法により得られた共重合体は、共役ジエン化合物部分の伸張結晶性が高く、また、ガラス転移点(Tg)が低い状態で保持されるため、耐摩耗性の改良が可能であり、ゴム組成物中のゴム成分として好適に用いられる。
【0024】
本発明の共重合体の製造方法により得られる共役ジエン化合物と該共役ジエン化合物以外のオレフィンとの共重合体は、後で詳細に説明する重合触媒組成物を用いる以外は特に制限されず、例えば、通常の配位イオン重合触媒を用いる重合体の製造方法と同様にして、単量体である共役ジエン化合物と該共役ジエン化合物以外のオレフィンとの混合物を共重合して得ることができる。また、本発明の共重合体の製造方法においては、共役ジエン化合物と該共役ジエン化合物以外のオレフィンとの重合が、付加重合であることが好ましい。なお、重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法、液相塊状重合法、乳化重合法、気相重合法、固相重合法等の任意の方法を用いることができる。また、重合反応に溶媒を用いる場合、用いられる溶媒は重合反応において不活性であればよく、該溶媒の使用量は任意であるが、重合触媒組成物に含まれる錯体の濃度を0.1〜0.0001mol/lとする量であることが好ましい。
【0025】
単量体として用いる共役ジエン化合物としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン等が挙げられ、これらの中でも、1,3-ブタジエンが好ましい。なお、これら共役ジエン化合物は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
一方、単量体として用いるオレフィンは、上記の共役ジエン化合物を除いたオレフィンである限り特に制限されず、環状オレフィンでも、非環状オレフィンでもよいが、優れた耐熱性や、共重合体の主鎖中に占める二重結合の割合を減らし、結晶性を低下させることでエラストマーとしての設計自由度を高めることが可能であることから、非共役オレフィンが好ましく、炭素−炭素二重結合を1個のみ有するモノオレフィンが更に好ましい。また、上記共役ジエン化合物以外のオレフィンとして、具体的には、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ノルボナジエン、シクロヘキセン、エチリデンノルボルネン等の環状オレフィンが挙げられ、これらの中でも、ノルボルネン又はジシクロペンタジエンが特に好ましい。なお、これら共役ジエン化合物以外のオレフィンは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
本発明の共重合体の製造方法において、上記共役ジエン化合物以外のオレフィンとして環状オレフィンを用いる場合、重合反応は、開環メタセシス重合により進行するのではなく、環状オレフィンの環式構造の開環を伴わないビニル付加重合により進行するため、環状オレフィンの繰り返し単位が該環状オレフィン由来の環式構造を有する共重合体が得られる。このように、共役ジエン化合物の重合反応において生成する重合体の主鎖中に、上記環状オレフィンをビニル付加型の反応形式により、環状オレフィン由来の環式構造の形態で導入することは、これまでにない新規な共役ジエン化合物と環状オレフィンとの共重合体の合成を可能とする製造方法である。なお、環状オレフィンと共役ジエン化合物との共重合体が生成され、該共重合体中の環状オレフィンの繰り返し単位が環式構造を有していることは、13C-NMRスペクトルにより確認できる。
【0028】
本発明の共重合体の製造方法に用いる重合触媒組成物は、上記一般式(I)及び式(II)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体からなる群より選択される少なくとも一種類の錯体を含むことを要し、更に、通常のメタロセン錯体を含む重合触媒組成物に含有される他の成分、例えば助触媒等を含むことが好ましい。
【0029】
上記一般式(I)及び式(II)で表されるメタロセン錯体において、式中のCpRは、無置換インデニル又は置換インデニルである。インデニル環を基本骨格とするCpRは、C97-XX又はC911-XXで示され得る。ここで、Xは0〜7又は0〜11の整数である。また、Rはそれぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることが更に好ましく、1〜8であることが一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられ、また、メタロイド基はヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。置換インデニルとして、具体的には、2-フェニルインデニル、2-メチルインデニル等が挙げられる。なお、一般式(I)及び式(II)における二つのCpRは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。
【0030】
上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体において、式中のCpR’は、無置換もしくは置換のシクロペンタジエニル、インデニル又はフルオレニルであり、これらの中でも、無置換もしくは置換のインデニルであることが好ましい。シクロペンタジエニル環を基本骨格とするCpR’は、C55-XXで示される。ここで、Xは0〜5の整数である。また、Rはそれぞれ独立してヒドロカルビル基;メタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることが更に好ましく、1〜8であることが一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられ、また、メタロイド基はヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。シクロペンタジエニル環を基本骨格とするCpR’として、具体的には、以下のものが例示される。
【化4】

(式中、Rは水素原子、メチル基又はエチル基を示す。)
【0031】
一般式(III)において、上記インデニル環を基本骨格とするCpR’は、一般式(I)のCpRと同様に定義され、好ましい例も同様である。
【0032】
一般式(III)において、上記フルオレニル環を基本骨格とするCpR’は、C139-XX又はC1317-XXで示され得る。ここで、Xは0〜9又は0〜17の整数である。また、Rはそれぞれ独立してヒドロカルビル基;メタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることが更に好ましく、1〜8であることが一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられ、また、メタロイド基はヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。
【0033】
一般式(I)、式(II)及び式(III)における中心金属Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムである。ランタノイド元素には、原子番号57〜71の15元素が含まれ、これらのいずれでもよい。中心金属Mとしては、サマリウムSm、ネオジムNd、プラセオジムPr、ガドリニウムGd、セリウムCe、ホルミウムHo、スカンジウムSc及びイットリウムYが好適に挙げられる。
【0034】
一般式(I)で表されるメタロセン錯体は、ビストリアルキルシリルアミド配位子[−N(SiR3)2]を含む。ビストリアルキルシリルアミドに含まれるアルキル基R(一般式(I)におけるRa〜Rf)は、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基であり、メチル基であることが好ましい。
【0035】
一般式(II)で表されるメタロセン錯体は、シリル配位子[−SiX3]を含む。シリル配位子[−SiX3]に含まれるXは、下記で説明される一般式(III)のXと同様に定義される基であり、好ましい基も同様である。
【0036】
一般式(III)において、Xは水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基及び炭素数1〜20の炭化水素基からなる群より選択される基である。ここで、上記アルコキシド基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等の脂肪族アルコキシ基;フェノキシ基、2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ基、2,6-ジイソプロピルフェノキシ基、2,6-ジネオペンチルフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-イソプロピルフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-ネオペンチルフェノキシ基、2-イソプロピル-6-ネオペンチルフェノキシ基等のアリールオキシド基が挙げられ、これらの中でも、2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ基が好ましい。
【0037】
一般式(III)において、Xが表すチオラート基としては、チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオプロポキシ基、チオn-ブトキシ基、チオイソブトキシ基、チオsec-ブトキシ基、チオtert-ブトキシ基等の脂肪族チオラート基;チオフェノキシ基、2,6-ジ-tert-ブチルチオフェノキシ基、2,6-ジイソプロピルチオフェノキシ基、2,6-ジネオペンチルチオフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-イソプロピルチオフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-チオネオペンチルフェノキシ基、2-イソプロピル-6-チオネオペンチルフェノキシ基、2,4,6-トリイソプロピルチオフェノキシ基等のアリールチオラート基が挙げられ、これらの中でも、2,4,6-トリイソプロピルチオフェノキシ基が好ましい。
【0038】
一般式(III)において、Xが表すアミド基としては、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジイソプロピルアミド基等の脂肪族アミド基;フェニルアミド基、2,6-ジ-tert-ブチルフェニルアミド基、2,6-ジイソプロピルフェニルアミド基、2,6-ジネオペンチルフェニルアミド基、2-tert-ブチル-6-イソプロピルフェニルアミド基、2-tert-ブチル-6-ネオペンチルフェニルアミド基、2-イソプロピル-6-ネオペンチルフェニルアミド基、2,4,6-tert-ブチルフェニルアミド基等のアリールアミド基;ビストリメチルシリルアミド基等のビストリアルキルシリルアミド基が挙げられ、これらの中でも、ビストリメチルシリルアミド基が好ましい。
【0039】
一般式(III)において、Xが表すシリル基としては、トリメチルシリル基、トリス(トリメチルシリル)シリル基、ビス(トリメチルシリル)メチルシリル基、トリメチルシリル(ジメチル)シリル基、トリイソプロピルシリル(ビストリメチルシリル)シリル基等が挙げられ、これらの中でも、トリス(トリメチルシリル)シリル基が好ましい。
【0040】
一般式(III)において、Xが表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子のいずれでもよいが、塩素原子又は臭素原子が好ましい。また、Xが表す炭素数1〜20の炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等の直鎖又は分枝鎖の脂肪族炭化水素基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基;ベンジル基等のアラルキル基等の他;トリメチルシリルメチル基、ビストリメチルシリルメチル基等のケイ素原子を含有する炭化水素基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基、エチル基、イソブチル基、トリメチルシリルメチル基等が好ましい。
【0041】
一般式(III)において、Xとしては、ビストリメチルシリルアミド基又は炭素数1〜20の炭化水素基が好ましい。
【0042】
一般式(III)において、[B]で示される非配位性アニオンとしては、例えば、4価のホウ素アニオンが挙げられる。該4価のホウ素アニオンとして、具体的には、テトラフェニルボレート、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニル,ペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル),フェニル]ボレート、トリデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート等が挙げられ、これらの中でも、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが好ましい。
【0043】
上記一般式(I)及び式(II)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体は、更に0〜3個、好ましくは0〜1個の中性ルイス塩基Lを含む。ここで、中性ルイス塩基Lとしては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルアニリン、トリメチルホスフィン、塩化リチウム、中性のオレフィン類、中性のジオレフィン類等が挙げられる。ここで、上記錯体が複数の中性ルイス塩基Lを含む場合、中性ルイス塩基Lは、同一であっても異なっていてもよい。
【0044】
また、上記一般式(I)及び式(II)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体は、単量体として存在していてもよく、二量体又はそれ以上の多量体として存在していてもよい。
【0045】
上記一般式(I)で表されるメタロセン錯体は、例えば、溶媒中でランタノイドトリスハライド、スカンジウムトリスハライド又はイットリウムトリスハライドを、インデニルの塩(例えばカリウム塩やリチウム塩)及びビス(トリアルキルシリル)アミドの塩(例えばカリウム塩やリチウム塩)と反応させることで得ることができる。なお、反応温度は室温程度にすればよいので、温和な条件で製造することができる。また、反応時間は任意であるが、数時間〜数十時間程度である。反応溶媒は特に限定されないが、原料及び生成物を溶解する溶媒であることが好ましく、例えばトルエンを用いればよい。以下に、一般式(I)で表されるメタロセン錯体を得るための反応例を示す。
【化5】

(式中、X’’はハライドを示す。)
【0046】
上記一般式(II)で表されるメタロセン錯体は、例えば、溶媒中でランタノイドトリスハライド、スカンジウムトリスハライド又はイットリウムトリスハライドを、インデニルの塩(例えばカリウム塩やリチウム塩)及びシリルの塩(例えばカリウム塩やリチウム塩)と反応させることで得ることができる。なお、反応温度は室温程度にすればよいので、温和な条件で製造することができる。また、反応時間は任意であるが、数時間〜数十時間程度である。反応溶媒は特に限定されないが、原料及び生成物を溶解する溶媒であることが好ましく、例えばトルエンを用いればよい。以下に、一般式(II)で表されるメタロセン錯体を得るための反応例を示す。
【化6】

(式中、X’’はハライドを示す。)
【0047】
上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体は、例えば、次の反応により得ることができる。
【化7】

【0048】
ここで、一般式(IV)で表される化合物において、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpR’は、それぞれ独立して無置換もしくは置換シクロペンタジエニル、インデニル又はフルオレニルを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す。また、一般式[A][B]で表されるイオン性化合物において、[A]は、カチオンを示し、[B]は、非配位性アニオンを示す。
【0049】
[A]で表されるカチオンとしては、例えば、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アミンカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオン等が挙げられる。カルボニウムカチオンとしては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(置換フェニル)カルボニウムカチオン等の三置換カルボニウムカチオン等が挙げられ、トリ(置換フェニル)カルボニルカチオンとして、具体的には、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン等が挙げられる。アミンカチオンとしては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン等のトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオン等のN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン;ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオン等のジアルキルアンモニウムカチオン等が挙げられる。ホスホニウムカチオンとしては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオン等のトリアリールホスホニウムカチオン等が挙げられる。これらカチオンの中でも、N,N-ジアルキルアニリニウムカチオン又はカルボニウムカチオンが好ましく、N,N-ジアルキルアニリニウムカチオンが特に好ましい。
【0050】
上記反応に用いる一般式[A][B]で表されるイオン性化合物としては、上記の非配位性アニオン及びカチオンからそれぞれ選択し組み合わせた化合物であって、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が好ましい。また、一般式[A][B]で表されるイオン性化合物は、メタロセン錯体に対して0.1〜10倍モル加えることが好ましく、約1倍モル加えることが更に好ましい。なお、一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体を重合反応に用いる場合、一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体をそのまま重合反応系中に提供してもよいし、上記反応に用いる一般式(IV)で表される化合物と一般式[A][B]で表されるイオン性化合物を別個に重合反応系中に提供し、反応系中で一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体を形成させてもよい。また、一般式(I)又は式(II)で表されるメタロセン錯体と一般式[A][B]で表されるイオン性化合物とを組み合わせて使用することにより、反応系中で一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体を形成させることもできる。
【0051】
一般式(I)及び式(II)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体の構造は、X線構造解析により決定することが好ましい。
【0052】
上記重合触媒組成物に用いることができる助触媒は、通常のメタロセン錯体を含む重合触媒組成物の助触媒として用いられる成分から任意に選択され得る。該助触媒としては、例えば、アルミノキサン、有機アルミニウム化合物、上記のイオン性化合物等が好適に挙げられる。これら助触媒は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
上記アルミノキサンとしては、アルキルアミノキサンが好ましく、例えば、メチルアルミノキサン(MAO)、修飾メチルアルミノキサン等が挙げられる。また、修飾メチルアルミノキサンとしては、MMAO−3A(東ソーファインケム社製)等が好ましい。なお、上記重合触媒組成物におけるアルミノキサンの含有量は、メタロセン錯体の中心金属Mと、アルミノキサンのアルミニウム元素Alとの元素比率Al/Mが、10〜1000程度、好ましくは100程度となるようにすることが好ましい。
【0054】
一方、上記有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムクロライド、アルキルアルミニウムジクロライド、ジアルキルアルミニウムハイドライド等が挙げられ、これらの中でも、トリアルキルアルミニウムが好ましい。また、トリアルキルアルミニウムとしては、例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等が挙げられる。なお、上記重合触媒組成物における有機アルミニウム化合物の含有量は、メタロセン錯体に対して1〜50倍モルであることが好ましく、約10倍モルであることが更に好ましい。
【0055】
更に、上記重合触媒組成物においては、一般式(I)及び式(II)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体をそれぞれ、適切な助触媒と組み合わせることで、シス-1,4結合量や得られる共重合体の分子量を増大できる。
【0056】
本発明の共重合体の製造方法は、上記した通り、重合触媒として上述した重合触媒組成物を用いること以外は、従来の配位イオン重合触媒を用いる重合反応による重合体の製造方法と同様とすることができる。ここで、本発明の共重合体の製造方法は、例えば、(1)単量体として共役ジエン化合物及び該共役ジエン化合物以外のオレフィンを含む重合反応系中に、重合触媒組成物の構成成分を別個に提供し、該反応系中において重合触媒組成物としてもよいし、(2)予め調製された重合触媒組成物を重合反応系中に提供してもよい。また、(2)においては、助触媒によって活性化されたメタロセン錯体(活性種)を提供することも含まれる。なお、重合触媒組成物に含まれるメタロセン錯体の使用量は、共役ジエン化合物及び該共役ジエン化合物以外のオレフィンの合計に対して、0.0001〜0.01倍モルの範囲が好ましい。
【0057】
また、上記重合反応は、不活性ガス、好ましくは窒素ガスやアルゴンガスの雰囲気下において行われることが好ましい。
【0058】
上記重合反応の重合温度は、特に制限されないが、例えば-100℃〜200℃の範囲が好ましく、室温程度とすることもできる。なお、重合温度を上げると、重合反応のシス-1,4選択性が低下することがある。一方、上記重合反応の反応時間も特に制限されず、例えば1秒〜10日の範囲が好ましいが、重合される単量体の種類、触媒の種類、重合温度等の条件によって適宜選択することができる。
【0059】
また、本発明の共重合体の製造方法により得られる上記共役ジエン化合物と該共役ジエン化合物以外のオレフィンとの共重合体において、共重合体の数平均分子量(Mn)は、特に限定されず、低分子量化の問題が起きることもない。更に、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、4以下が好ましく、2.5以下が更に好ましい。ここで、平均分子量及び分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレンを標準物質として求めることができる。
【0060】
本発明の共重合体の製造方法により得られる上記共役ジエン化合物と該共役ジエン化合物以外のオレフィンとの共重合体は、共役ジエン化合物と該共役ジエン化合物以外のオレフィンがランダムに重合している。一般に、ランダムとは、共重合体の高分子鎖中の各繰り返し単位の配列が不規則なものをいい、本発明においては、共重合体のDSC測定(示差走査熱量測定)によって、ガラス転移点(Tg)が単一のピークで示され、且つガラス転移点(Tg)が、用いた共役ジエン化合物の単独重合体と比べて上昇している場合に、共重合体がランダムに重合していると判断した。ここで、共役ジエン化合物と該共役ジエン化合物以外のオレフィンとの共重合体がランダムに重合していれば、エラストマーとして均一にふるまうことで、相分離を抑制することができ、それによって、耐熱性等のメリットをもつ単量体を共重合体の主鎖中に導入できる。
【0061】
本発明の共重合体の製造方法により得られる上記共役ジエン化合物と該共役ジエン化合物以外のオレフィンとの共重合体は、共役ジエン化合物部分のシス-1,4結合量が高い。ここで、上記共役ジエン化合物部分のシス-1,4結合量は、85%以上であることが好ましい。共役ジエン化合物部分のシス-1,4結合量が85%以上であれば、高い伸長結晶性と低いガラス転移点(Tg)を保持することができ、これにより、耐摩耗性等の物性が改良される。また、共役ジエン化合物部分のシス-1,4結合量が85%未満では、伸長結晶性が著しく低下すると共に、ガラス転移点(Tg)が高くなることで、耐摩耗性等の耐久性が低下する場合がある。
【0062】
本発明の共重合体の製造方法により得られる上記共役ジエン化合物と該共役ジエン化合物以外のオレフィンとの共重合体は、共役ジエン化合物部分のビニル結合量が20%以下であることが好ましく、15%以下であることが更に好ましい。共役ジエン化合物部分のビニル結合量が20%を超えると、シス-1,4結合量が低下し、耐摩耗性の向上効果が十分に得られなくなる。
【0063】
本発明の共重合体の製造方法により得られる上記共役ジエン化合物と該共役ジエン化合物以外のオレフィンとの共重合体は、共役ジエン化合物以外のオレフィンの含有率が3〜98mol%の範囲であることが好ましい。共役ジエン化合物以外のオレフィンの含有率が上記の特定した範囲内にあれば、エラストマーとして均一にふるまいながら、耐熱性の向上効果を有する該オレフィンを主鎖中に導入していることのメリットが保存される。また、共役ジエン化合物以外のオレフィンの含有率が3mol%未満では、該オレフィンが主鎖中に導入されているメリットが失われる場合があり、一方、98mol%を超えると、共役ジエン化合物が主鎖中に導入されているメリット(例えば、架橋しやすさ等)が失われる場合がある。
【0064】
本発明の共重合体の製造方法により得られる上記共役ジエン化合物と該共役ジエン化合物以外のオレフィンとの共重合体は、結晶性を保ちながら架橋に有利であるため、エラストマー製品全般、特にタイヤ部材に用いることができる。
【実施例】
【0065】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0066】
(実施例1)
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、十分に乾燥した30ml耐圧ガラスボトルに、ノルボルネン1.88g(20mmol)およびトルエン10mlを添加しボトルを打栓した。次に、グローブボックスからボトルを取り出し、1,3-ブタジエン1.08g(20mmol)を仕込み、モノマー溶液とした。一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器にビス(2-メチルインデニル)スカンジウムビス(トリメチルシリルアミド)[(2-MeC96)2ScN(SiMe3)2]20μmol、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph3CB(C65)4]20μmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド150μmolを仕込み、トルエン5mlに溶解させて触媒溶液とした。その後、グローブボックスから触媒溶液を取り出し、モノマー溶液へ添加し、室温で5分間重合を行った。重合後、BHT(2,6-ビス(t-ブチル)-4-メチルフェノール)の10質量%のメタノール溶液10mlを加えて反応を停止させ、さらに大量のメタノール/塩酸混合溶媒で共重合体を分離し、60℃で真空乾燥し、共重合体Aを得た。得られた共重合体Aの収量は1.10gであった。なお、共重合体Aの構造確認を1H-NMRスペクトル(図1)及び13C-NMRスペクトル(図2(a))で行い、共重合体Aが生成され、共重合体A中のノルボルネン部分がビニル付加型の反応形式により導入されていることを確認した。また、共重合体Aの13C-NMRスペクトル(図2(a))を、“J. P. S. partA”, 2003年, vol.41, p.2095-2106に記載されたノルボルネンのビニル付加型単独重合体の13C-NMRスペクトル(図3)と比較し、図2(a)のスペクトルチャートにおいて、ノルボルネンのビニル付加型単独重合体のシグナル(30.03ppm, 47.36ppm)が観測されないため、共重合体Aが、ポリマーブレンドではなく、ランダム共重合体であることを確認した。
【0067】
(実施例2)
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、十分に乾燥した30ml耐圧ガラスボトルに、ジシクロペンタジエン1.32g(10mmol)およびトルエン5mlを添加しボトルを打栓した。次に、グローブボックスからボトルを取り出し、1,3-ブタジエン0.54g(10mmol)を仕込み、モノマー溶液とした。一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器にビス(2-メチルインデニル)スカンジウムビス(トリメチルシリルアミド)[(2-MeC96)2ScN(SiMe3)2]20μmol、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph3CB(C65)4]20μmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド150μmolを仕込み、トルエン3mlに溶解させて触媒溶液とした。その後、グローブボックスから触媒溶液を取り出し、モノマー溶液へ添加し、室温で7分間重合を行った。重合後、BHT(2,6-ビス(t-ブチル)-4-メチルフェノール)の10質量%のメタノール溶液10mlを加えて反応を停止させ、さらに大量のメタノール/塩酸混合溶媒で共重合体を分離し、60℃で真空乾燥し、共重合体Bを得た。得られた共重合体Bの収量は0.40gであった。共重合体Bの構造確認を1H-NMRスペクトル及び13C-NMRスペクトル(図2(b))で行い、共重合体Bが生成され、共重合体B中のジシクロペンタジエン部分がビニル付加型の反応形式により導入されていることを確認した。
【0068】
(参考例1)
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、十分に乾燥した30ml耐圧ガラスボトルに、1,3-ブタジエン1.08g(20mmol)およびトルエン10mlを添加しボトルを打栓し、モノマー溶液とした。一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器にビス(2-メチルインデニル)スカンジウムビス(トリメチルシリルアミド)[(2-MeC96)2ScN(SiMe3)2]20μmol、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph3CB(C65)4]20μmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド150μmolを仕込み、トルエン5mlに溶解させて触媒溶液とした。その後、グローブボックスから触媒溶液を取り出し、モノマー溶液へ添加し、室温で5分間重合を行った。重合後、BHT(2,6-ビス(t-ブチル)-4-メチルフェノール)の10質量%のメタノール溶液10mlを加えて反応を停止させ、さらに大量のメタノール/塩酸混合溶媒で共重合体を分離し、60℃で真空乾燥し、ポリブタジエンを得た。得られたポリブタジエンの収量は1.01gであった。なお、ポリブタジエンの構造確認を1H-NMRスペクトル及び13C-NMRスペクトルで行った。
【0069】
上記のようにして製造した実施例1〜2の共重合体及び参考例1の重合体について、ミクロ構造及びガラス転移点(Tg)を下記の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0070】
(1)ミクロ構造
ミクロ構造を赤外法(モレロ法)で求めた。
【0071】
(2)ガラス転移点(Tg)
サンプルを10mg±0.5mg秤量し、アルミニウム製の測定パンに入れ蓋をしたものを、DSC装置(TAインスツルメント社製)にて、室温から50℃まで加温し、10分間安定させた後、-110℃まで冷却し、-110℃で10分間安定させてから、10℃/minの昇温速度で50℃まで昇温しながらガラス転移点(Tg)(℃)を測定した。
【0072】
(3)共役ジエン化合物以外のオレフィンの含有率
共重合体中の共役ジエン化合物以外のオレフィン部分の含有率(mol%)を1H-NMRスペクトルの積分比より求めた。なお、1H-NMRは重クロロホルムを溶媒とし、室温で測定を行った。
【0073】
【表1】

【0074】
表1から、実施例1〜2の共重合体は、共役ジエン化合物部分のシス-1,4結合量の割合が高いことが分かる。なお、このシス-1,4結合量の割合は、参考例1の共役ジエン化合物の単独重合体の割合と比べて同等以上の値を示す。また、図示しないが、実施例1〜2の共重合体のガラス転移点(Tg)は単一のピークを示し、さらにまた表1に示す通り、参考例1の重合体のガラス転移点(Tg)と比べて上昇していることから、実施例1〜2の共重合体は、共役ジエン化合物と該共役ジエン化合物以外のオレフィンがランダムに重合していることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】ブタジエン−ノルボルネン共重合体の1H-NMRスペクトルチャートである。
【図2】(a)は、ブタジエン−ノルボルネン共重合体の13C-NMRスペクトルチャートであり、(b)は、ブタジエン−ジシクロペンタジエン共重合体の13C-NMRスペクトルチャートである。
【図3】ノルボルネンのビニル付加型単独重合体の13C-NMRスペクトルチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I):
【化1】

(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpRは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、Ra〜Rfは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す)で表されるメタロセン錯体、及び下記一般式(II):
【化2】

(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpRは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す)で表されるメタロセン錯体、並びに下記一般式(III):
【化3】

(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpR’は、無置換もしくは置換シクロペンタジエニル、インデニル又はフルオレニルを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示し、[B]は、非配位性アニオンを示す)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体からなる群より選択される少なくとも1種類の錯体を含む重合触媒組成物の存在下、共役ジエン化合物と、該共役ジエン化合物以外のオレフィンとを重合させる工程を含むことを特徴とする共重合体の製造方法。
【請求項2】
前記共役ジエン化合物以外のオレフィンが、非共役オレフィンであることを特徴とする請求項1に記載の共重合体の製造方法。
【請求項3】
前記共役ジエン化合物以外のオレフィンが、環状オレフィンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の共重合体の製造方法。
【請求項4】
前記環状オレフィンが、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ノルボナジエン、シクロヘキセン、エチリデンノルボルネンからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載の共重合体の製造方法。
【請求項5】
前記共役ジエン化合物以外のオレフィンが、非環状オレフィンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の共重合体の製造方法。
【請求項6】
上記一般式(I)及び一般式(II)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体からなる群より選択される少なくとも1種類の錯体を含む重合触媒組成物の存在下、共役ジエン化合物と、該共役ジエン化合物以外のオレフィンとを重合して得たことを特徴とする共重合体。
【請求項7】
前記共役ジエン化合物と前記共役ジエン化合物以外のオレフィンとの重合が、付加重合であることを特徴とする請求項6に記載の共重合体。
【請求項8】
前記共役ジエン化合物以外のオレフィンが、非共役オレフィンであることを特徴とする請求項6又は7に記載の共重合体。
【請求項9】
前記共役ジエン化合物以外のオレフィンが、非環状オレフィンであることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の共重合体。
【請求項10】
前記共役ジエン化合物と該共役ジエン化合物以外のオレフィンがランダムに重合したことを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の共重合体。
【請求項11】
共役ジエン化合物と該共役ジエン化合物以外の環状オレフィンとの共重合体。
【請求項12】
前記環状オレフィンの繰り返し単位が環式構造を有することを特徴とする請求項11に記載の共重合体。
【請求項13】
前記環状オレフィンが、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ノルボナジエン、シクロヘキセン、エチリデンノルボルネンからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項11に記載の共重合体。
【請求項14】
前記共役ジエン化合物と該共役ジエン化合物以外の環状オレフィンがランダムに重合したことを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の共重合体。
【請求項15】
前記共役ジエン化合物部分のシス-1,4結合量が85%以上であることを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載の共重合体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−280384(P2008−280384A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−123818(P2007−123818)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】